第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、貴金属事業及び環境保全事業の拡大により発展を遂げ、環境と社会をつなぐ循環経済の担い手として、今後も社会貢献することで発展し続けていくことを目指しております。また、その過程においては、安定的な利益の確保と持続的な成長の維持との均衡を重視しており、これらを通して企業価値を高め、長期に亘って顧客、株主、従業員を含むすべてのステークホルダーの期待に応えることを基本方針としております。

 

(2)目標とする経営指標

経営の基本方針に基づき、連結売上収益と連結営業利益、また株主重視の観点から、株主資本当期利益率(ROE)をそれぞれ重要な指標と考えております。

 

(3)経営戦略等

当社グループは、2030年に向けた中長期ビジョンにおいて、ありたい姿を「環境と社会をつなぐ循環経済の担い手となる」とし、「地球環境に配慮した資源循環の推進」「脱炭素思考のウェイストマネジメント」をミッションに掲げています。社会の課題を解決する事が当社グループの価値を高めると考え、「収益性を高める事業基盤強化」「貴金属事業の新分野開拓」「一層のグローバリゼーション推進」「事業発展を支える人材形成」「バランスシートの最適化」の5つの戦略主題を定め、取り組みを推進しています。

 

(4)経営環境

当連結会計年度におけるわが国経済は緩やかな拡大を続けましたが、主要国の通商政策が世界経済全体に及ぼす影響に懸念が生じました。このような経営環境を踏まえながら、当社グループは持続的な利益成長に向けた取り組みを一層強化してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 貴金属事業セグメント

当社グループの中核的事業であり、以下の施策をもって収益の拡大を図ります。

○貴金属リサイクルの拡大やリサイクル工程の改善などにより、カーボンニュートラル戦略を推進する。

○製薬領域や水素製造などの工業分野における貴金属需要を開拓し、新分野への事業拡大を推進する。

○北米精錬事業、アジアの貴金属リサイクル事業をさらに拡大し、海外事業を強化する。

○人権・環境に配慮した貴金属製品の製造・販売事業を通して、付加価値の高い製品などを国内外のお客様に提供し、グローバルレベルのブランディングの確立を目指す。

○「責任ある貴金属管理」を徹底し、リスク管理を強化する。

○ITを活用して効率的な営業活動体制や技術プロセスを確立し、競争力を高める。

 

② 環境保全事業セグメント

当社グループの安定成長事業として、成長とともに収益性を重視した経営を行います。

また、以下の施策をもって収益の拡大を図ります。

○産業廃棄物業界のDX推進を通じて、産業全体の環境負荷の低減を推進する。

○デジタルプラットフォームの機能やサービスラインナップを拡充し、盤石な顧客基盤を構築する。

○持分法適用会社の事業を通じて、動静脈連携による循環型社会を推進する。

 

(6)内部管理体制の整備・運用状況

① コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びその施策の実施状況

当該事項につきましては、コーポレート・ガバナンスに関する報告書に記載しております。

② 内部管理体制の充実に向けた取り組みの最近1年間における実施状況

当社グループ内で「内部統制推進会議」を組織し、内部統制のためのルールについて運用状況を確認・評価するなど、内部統制強化のための継続的な活動を行っております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは「この手で守る自然と資源」をグループ共通のパーパスとして掲げ、長きにわたり事業活動を展開してきました。当社の事業活動はサステナビリティ貢献そのものであり、事業の成長が社会的課題の解決につながっています。持続可能な社会の実現を目指し、当社が優先的に解決に向けて取り組むべき社会的課題に対して、テーマおよび目標を設定し、その達成に向けて積極的に取り組んでいます。

 

①ガバナンス

 当社グループはグループ全体を通じてサステナビリティに取り組んでおり、その推進に向けてサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は代表取締役社長(CEO)を委員長とし、グループ会社の社長、技術や管理部門のトップ・メンバーで構成されます。サステナビリティ委員会は、当社のパーパス、持続可能な世界の実現に貢献するという観点から優先的に取り組むべき課題(SDGs重点テーマ)及びリスクと機会を特定し、指標と目標など当社のサステナビリティ推進において必要な事項を中長期的な観点から承認・監督しています。サステナビリティ委員会ではダイバーシティ&インクルージョン分科会、気候変動分科会を設置し、それぞれの分科会においてSDGs重点テーマとして特定された重要テーマについて進捗・実績を管理するとともに改善に向けた施策の検討を行い、四半期毎に開催されるサステナビリティ委員会で報告・付議しています。取締役会では、サステナビリティ委員会の報告・付議事項の報告を受けるとともに重要事項を決議し、それぞれの議案やSDGs重点テーマの目標値について社外取締役を中心に多様な意見が示され、サステナビリティ推進体制全体を監督しています。

 

当連結会計年度 サステナビリティ委員会・取締役会審議事項

開催年月

審議事項

2024年6月

・SDGs重点テーマの目標レビュー

・SDGs重点テーマの実績進捗確認

・サステナビリティ活動進捗確認と今後の取組内容検討

2024年9月

・サステナビリティ活動進捗確認と今後の取組内容検討

2024年12月

・SDGs重点テーマの実績進捗確認

・サステナビリティ活動進捗確認と今後の取組内容検討

2025年3月

・サステナビリティ活動進捗確認と今後の取組内容検討

 

②リスク管理

 当社グループは、サステナビリティに関連するリスクと機会を特定するプロセスとして、サステナビリティ委員会を設置すること等の課題特定のステップを通じて優先的に取り組むべき課題(SDGs重点テーマ)を決定いたしました。SDGs重点テーマの特定に際しては、部門横断のチームによって事業とSDGsの関連性を網羅的に把握し、リスクと機会の評価を通じて重要性を評価、取締役を交えた議論によって最終的に取り組むべき課題として決定し、目標を設定しました。リスクと機会を管理するプロセスとして、SDGs重点テーマに対するダイバーシティ&インクルージョン分科会、気候変動分科会の活動内容、実績が四半期毎に開催されるサステナビリティ委員会で報告・付議され、活動内容の評価とともに今後の取り組み、目標に対して審議が行われ、リスクと機会を継続的に評価します。サステナビリティ委員会の審議結果を基に、各分科会が各社・部門と連携して全社的な取り組みを推進します。

 当社グループの全社的なリスク管理については、取締役会の監督のもとで代表取締役社長(CEO)、グループ会社の社長、グループリスク管理部門が統括し、事業活動におけるリスクを網羅的に捕捉しています。捕捉されたリスクは、評価、識別した上で発生を防止しつつリスクを低減するリスク管理プロセスをとっています。サステナビリティに関連するリスクについては、各分科会での評価・検討によって全社的なリスクが評価・識別され、サステナビリティ委員会での審議を経た上でグループリスク管理部門に共有することで全社的なリスク管理のプロセスに組み込まれています。

 

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③戦略

 当社グループでは、当社グループの事業活動がサステナビリティ貢献そのものであり、事業成長がそのまま社会的課題解決の貢献へつながるとの考えのもと、優先的に取り組むべき課題(SDGs重点テーマ)を設定しています。特に社会や当社グループに与える影響が大きいと考えられる気候変動に対する取り組みについては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づいた取り組みも実施しています。

 

<優先的に取り組むべき課題(SDGs重点テーマ)>

 当社グループでは優先的に取り組むべき課題(SDGs重点テーマ)として5つのテーマを設定しています。それぞれの内容ならびにリスクと機会は次の通りです。

 

テーマ

内容

リスク

機会

事業マテリアリティ

1.貴金属リサイクルの拡大

限られた地球資源をよりいっそう有効に活用するために、貴金属リサイクルをグローバルに拡大・推進します。

・新しい種類の貴金属リサイクル技術開発にかかるコストの増加

・各国や地域における規制強化によるコストの増加や事業見直しの可能性

・貴金属価格下落が収益に影響を与える可能性

・リサイクル市場への新規参入企業増加による競争激化

・限りある資源と地球環境を守り、持続可能な世界の実現への貢献

・リサイクル技術向上による新たな特許やノウハウを生み出す可能性

2.人・社会・環境にやさしい貴金属供給

紛争鉱物を含まない原材料や貴金属含有スクラップから生産される人権や環境に配慮した貴金属製品の供給を拡大し、責任ある貴金属管理を推進します。

・人権や環境に配慮した貴金属調達の実施、認証取得等にかかるコストの増加

・各国や地域における規制強化によるコストの増加の可能性

・サプライチェーン上で紛争鉱物や人権侵害が発生した場合にブランド価値が損なわれる可能性

・人権や環境に配慮した貴金属製品供給によるブランド価値向上や競争優位性の確立

・人権や環境に配慮した貴金属の需要拡大による付加価値販売の強化

・紛争や人権問題の解決を通じた持続可能な世界の実現への貢献

3.CO2排出量の削減

各拠点での省エネ活動や次世代カーへの切り替え、CO2低排出電力プランへの切り替え等を通じて、グループ全体でCO2排出量の削減に取り組みます。

<気候変動に対する取り組み>に記載

<気候変動に対する取り組み>に記載

人材育成・

SDGsへの貢献

4.ワークライフバランスとダイバーシティの基盤充実

働き方改革・健康経営・ダイバーシティ推進等により、多様な人材が活躍できる基盤を充実させて、働きがいの向上に努めます。

・新しい制度導入による業務プロセスやコミュニケーションに一時的な混乱が生じる可能性

・従業員エンゲージメントの低下や人材流出の可能性

・人材獲得競争における優位性の確立

・従業員エンゲージメント向上による生産性や創造性の向上、離職率の低下

・人材の多様化によるイノベーション促進

5.SDGs活動の奨励・支援

個人・グループによるボランティア活動等、本業以外でSDGsに貢献する活動を「AREホールディングスSDGs活動」として奨励・支援します。

・SDGs活動の奨励・支援にかかるコストの増加

・SDGs活動への評価が見えにくいことによる従業員のモチベーション低下の可能性

・持続可能な世界の実現への貢献

・SDGs活動を通じた従業員のリーダーシップ、問題解決能力、多様性理解などのスキル向上

・地域社会をはじめとするステークホルダーとの繋がり強化

 

 

 このテーマは次のステップで特定しました。特定後もサステナビリティ委員会においてテーマや目標について見直しを行い、さまざまな事業環境の変化に合わせて最適な取り組みが出来る様努めています。

課題特定のステップ

STEP1

SDGs検討の開始

部門横断の「SDGs推進チーム」(現:サステナビリティ委員会)を編成し、SDGsの理解・検討を開始

STEP2

事業とSDGsの関連性確認

当社グループの各事業とSDGsの17のゴール、169のテーマとの関連を網羅的に確認し、リスクと機会の両面で整理

STEP3

重点テーマ・KPI案の検討

重要度の高いものについて各部門責任者と協議を実施し、2030年までの重点テーマと目標案を作成

STEP4

SDGs重点テーマの決定

取締役全員で重点テーマとKPIについてディスカッションを行い、当社グループが取り組むべき課題を決定

 

<気候変動に対する取り組み>

 2030年における当社貴金属事業(国内及び北米事業)、環境保全事業に影響を及ぼす気候変動関連のリスクと機会の抽出を行うとともに、「大」「中」「小」の3段階で定性的に評価しました。その際には2030年以降2050年に向けての気候変動の更なる影響についても考慮しました。その結果、「政策・法規制」「市場」「技術」などが特定されました。営業利益に与える影響をベースに、影響度合いを「大」「中」「小」の3つに区分しています。営業利益の3%以上の影響があるものは影響度「大」、営業利益の1%以上から3%未満の影響があるものについては影響度「中」、営業利益の1%未満の影響に留まるものは影響度「小」と定義しています。

項目

内容

2030年

2050年

対応策

4℃

1.5℃

リスク

移行

リスク

政策・法規制

・カーボンプライシング(含む炭素税)の適用によるコストの増加

・CO2フリー電力への切り替え、営業車両のEV化等を通じた2030年度CO2削減目標の達成

物理

リスク

急性

・台風や水害等の自然災害激甚化により施設が損傷し、長期間操業が停止

・ハザードマップに基づき影響が想定される事業所のBCMの拡充

・大型の設備投資時に、災害に強い立地の選定や災害対策を実施

機会

移行

リスク

政策・法規制

・カーボンプライシングの適用により、CO2排出が相対的に少ないリサイクル金属の評価向上、競争力増加

・規制対応や、CO2排出量報告の強化

・トレーサビリティを活かしたリサイクル金属の付加価値販売を強化

・CO2排出量分析等付加価値をつけた産業廃棄物管理システムの提供

・規制対応が難しい企業の支援を通じた事業の拡大

市場

・規制対応や、CO2排出量報告の強化

・低品位スクラップの取り扱い、取り扱い金属の拡充等リサイクル品目の拡充

技術

・水素等脱炭素に資する技術開発の早期化、早期商業化に向けたインセンティブの拡大

・余剰電力での水素活用等のさらなる推進

 

<人的資本に関する取り組み>

 当社が目指す中長期ビジョン達成のためには、従業員全員がAREグループウェイを理解し、実践する必要があると考えます。多様な従業員一人ひとりが人を大切にして協力しあい、自ら考えながら活き活きと挑戦し、革新を追い求めることで、組織全体の生産性が最大化すると私たちは信じます。そのため当社では“従業員一人ひとり”を大切なステークホルダーと位置づけ、優先的に取り組むべき課題(SDGs重点テーマ)の一つに「ワークライフバランスとダイバーシティの基盤充実」を設定しています。多様な従業員がそれぞれ仕事と生活全体との調和を得て自分らしく輝くための、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進や健康経営を基盤に据え、日々の仕事の中で学び続け、能力発揮をしていただくための環境を整えています。また今後人材の流動化がより進んでいくことが想定される労働市場においては、エンゲージメントの向上こそが最大のリテンションにつながると考えています。人的資本への投資により従業員エンゲージメントの向上をもたらし、AREグループウェイを核とした他社には真似できない組織ケイパビリティの保持を目指しています。ワークライフバランスとダイバーシティの基盤充実に向けた具体的な取り組みとして、新しい働き方や女性管理職比率向上施策などを推進しています。具体的な取り組みの詳細については、統合報告書や当社ウェブサイトをご参照ください。

<参考リンク>

ワークライフバランスとダイバーシティの基盤充実

https://www.are-holdings.com/sustainability/social/human_capital/diversity/

 

④指標と目標

 当社グループでは、優先的に取り組むべき課題(SDGs重点テーマ)に関する目標を以下の様に設定し、達成に向けて取り組んでいます。達成に向けた取り組みや進捗状況はサステナビリティ委員会でモニタリングを行い、取締役会においても管理・監督しています。さらにこの取り組みをより強固に推進するため、2025年度分の役員報酬より、取締役の報酬の一部がこの目標達成率に連動する算定方法を導入します。

 

テーマ

指標

対象

目標年度

内容

実績

(当連結会計年度)

事業マテリアリティ

貴金属リサイクルの拡大

貴金属リサイクル量の総量

(対象金属:金、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウム)

連結会社

2030年度

300t達成

428.2t

貴金属リサイクルによるCO2削減効果量

(対象金属:金、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウム、銅)

連結会社

2030年度

83.7万t-CO2達成

88.4万t-CO2

CO2排出量の削減

CO2排出量

(Scope1および2)

連結会社

2030年度

2015年度比△63%達成

2050年度

カーボンニュートラルを実現

人材育成・SDGsへの貢献

ワークライフバランスとダイバーシティの基盤充実

インターバル勤務11時間以上達成率

国内連結会社

毎年度

100達成

99.9

女性管理職比率

国内連結会社

2030年度

7.0達成

4.7

障がい者雇用率

国内連結会社

2030年度

法定雇用率以上の雇用率を満たす

3.3

年次有給休暇取得率

国内連結会社

2030年度

70達成

62.6

男性育児休業・男性育児目的休暇取得率

国内連結会社

2030年度

100達成

100

(注)1.CO2排出量の実績(当連結会計年度)については、実績集計を完了させる事が難しいため統合報告書2025において公表することを予定しています。

2.ワークライフバランスとダイバーシティの基盤充実の各目標については、日本国内で適用される法律等に基づいているため国内連結会社のみを対象としています。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。これらは投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えておりますが、記載した項目は当社グループが当該有価証券報告書提出日現在で認識しているものに限られており、全てのリスクが網羅されているわけではありません。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

当社グループは、事業活動上のリスクの把握・評価および対策を実施する体制として、監査等委員会の監督下に内部監査部門を設置してガバナンス強化に努めるとともに、内部統制推進会議や安全推進会議を定期的に開催して、コンプライアンスおよび安全体制を確立するなど、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行い、リスクの顕在化の未然防止を図っております。

 

(1)貴金属相場および為替相場について

当社グループの「貴金属事業」における主力製品である貴金属および希少金属は、国際市場で取引されており、その価格は、国際的又は地域的な需給、政治経済社会動向、為替相場、金融政策等、世界の様々な要因により変動しております。このため、当社グループは基本的に先渡取引等を通して貴金属価格をヘッジしていますが、ロジウムは流動性に乏しくヘッジ手段が限られているため、他の手段も活用しながら、リスクの軽減に取り組んでおります。また、主要な貴金属価格の変動状況等について適時経営陣に報告しております。貴金属相場および為替相場の変動の幅、先渡取引の環境等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2)法規制について

当社グループが事業展開している国および地域におきましては、事業の許可、輸出入・輸送規制、商取引、労働、租税、知的財産権、環境保全等のさまざまな法規制の適用を受けております。当社グループは、コンプライアンス重視の姿勢の下、全事業領域に関連する法改正情報を一元管理して現場へ周知徹底する仕組を構築し、法規制および社会的ルールの遵守を徹底しておりますが、万一、これらの法規制および社会的ルールが遵守できなかった場合や、法規制および社会的ルールの変化によって事業が制約を受ける等の事態が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3)経済変動について

当社グループの2つの事業セグメントである「貴金属事業」「環境保全事業」の取引業界のひとつである製造業に関しては、日本のみならずさまざまな国や地域の経済状況の影響を受けます。景気後退等に伴ってそれらの業界の需要が減少した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。また、貴金属リサイクル分野は、エレクトロニクス関連機器や自動車などの最終製品に含まれる貴金属をリサイクルしていることから、消費動向の影響を受けるため、一般消費水準の減退による個人消費の落ち込み等が当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(4)事業環境について

当社グループの2つの事業セグメントである「貴金属事業」「環境保全事業」は、事業分野毎の関連する法規制や許認可等の変更により顧客ニーズが大きく変化する可能性や、顧客企業の海外移転が想定以上に進展する可能性があります。また、業界再編など事業環境が大きく変化する可能性もあります。加えて新事業・新分野への挑戦を進めています。事業の実施の際には執行会議等で十分な検討を行い、必要に応じてリスク管理体制を講じていますが、事業環境が想定と異なった場合などにはリスクが顕在化する可能性があります。その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5)競合との競争激化について

当社グループの2つの事業セグメントである「貴金属事業」「環境保全事業」は、事業分野毎にさまざまな企業と競合しております。グループ各社は、営業努力をはじめ、技術・製品面やコスト対応面等での取り組みにより、顧客ニーズに的確にお応えすることで、競争優位性を確保すべく努力を続けておりますが、競合他社との競争の激化により、各社の製品・サービスが厳しい価格競争にさらされる可能性があります。その結果によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(6)海外事業展開について

当社グループは、海外事業の拡大を成長戦略の一つとして、北米・アジア等の国および地域において事業展開しておりますが、関税制度の変更を含む事業に不利な政治または経済的事象の発生、労働環境の違いによる労働争議等の発生、現地での適切な人材確保の不確実性、紛争・テロその他の要因による社会的混乱の可能性、ビジネスインフラ未整備による当該国および地域当局からの不当な介入等のリスクが内在しております。また北米精錬事業においては精錬を土台とした貴金属倉庫業や付加価値サービスを拡大しており、その中にはトレーディングや融資等も含まれています。事業の実施の際には十分なリスク分析を行うとともに、リスク管理部門の関与や取締役会等で議論を行うなど十分な管理体制を講じていますが、経済環境や取引先の信用状況が悪化した場合は、リスクが顕在化する可能性があります。これらの事態が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(7)企業買収について

当社グループは、これまで企業買収によって事業内容および事業規模の拡大を図ってきており、今後も当社グループのさらなる成長に資する案件に対して前向きに取り組んで行く予定です。対象事業および企業との統合効果を最大限に高めるために、当社グループの事業戦略やオペレーションとの統合・融合を図っておりますが、人材や資産の統合等が想定通り進まなかった場合には、期待した統合・融合効果をあげられず、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(8)のれん・固定資産の減損について

当社グループは、企業買収の際に生じたのれんや、事業用の様々な有形固定資産および無形資産を計上しております。買収時は、財務、法務、人事、設備等の観点から十分な調査を実施しておりますが、買収した企業や事業が、市場環境の変化等によって当初予定した業績を上げられず、経営成績や収益性が著しく悪化した場合、これらの資産の減損が発生する可能性があります。そのような場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9)自然災害・感染症について

大規模な地震・台風等の自然災害や新たな感染症の発生等によって、当社グループの生産・物流・販売および情報管理関連施設等の拠点に甚大な被害が発生する可能性があります。当社グループでは、事業継続マネジメント(BCM)の策定、水害対策、防災訓練、社員安否確認システムの構築などの対策を講じておりますが、これらは自然災害や未知の感染症等による被害を完全に排除できるものではなく、発生した場合には当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10)安全衛生について

当社グループは、労働災害や設備事故等の撲滅に向けて、経営陣も参加する「安全推進会議」を開催し必要な措置を講じるなど、安全管理体制の強化ならびに定期的な災害・事故防止活動を行っておりますが、これらの発生を完全に防止または軽減できる保証はありませんので、重大な労働災害や設備事故等が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11)人材について

当社グループの中長期的な成長は、多様な従業員一人ひとりが人を大切にして協力しあい、自ら考えながら、活き活きと挑戦し、革新を追い求めることで、組織全体の生産性が最大化することにより達成されると考えます。そのため、多様な社員がそれぞれ自分らしく仕事と生活全体との調和を得られるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進や健康経営を基盤に据えています。具体的には、障碍者雇用推進、女性活躍推進、週休3日モデルといった働き方改革、中長期的に中核人材を獲得するための採用活動や種々の人材育成プログラムを実施しています。しかしながら、事業展開のスピードが増し、優秀な人材の確保や必要な戦力の整備が適切なタイミングで実施できない場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(12)研究開発について

当社グループは、「貴金属のリサイクル」および「産業廃棄物の無害化・再資源化」を効果的に行うため、独自の研究開発と分析技術開発を進めております。しかしながら、新技術の研究開発は、市場環境の変化、競合状況、開発成果の事業化の可否等、様々な影響を受けることから、研究開発に要した費用の回収等について不確実性が高いと考えられます。そのため、当初想定した研究開発成果が上がらない場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(13)重要な知的財産権について

当社グループは、事業展開にとって重要な知的財産権を保護すべく、適切な管理を行っております。しかしながら、予期せぬ事態により外部に流出する可能性があり、また特定の地域においてはこれらの知的財産権を完全に保護することが不可能なため、第三者による当社グループの知的財産権を使用した類似製品・サービスの製造・販売等を効果的に防止できない可能性があります。さらに、当社グループが将来に向けて開発している製品・技術が、意図せず他社の知的所有権等を侵害してしまう場合や、社員との関係において、職務発明の扱い等について係争となる可能性もあります。それらの結果によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(14)製品品質保証・製造物責任について

当社グループは、品質保証部門が中心となり、お客様により安心・満足していただける製品を提供するためにISO9001を取得し、品質マネジメントシステムの継続的改善・品質の維持向上に努めるなど、製品の品質保証体制に万全を期しておりますが、当社グループの生産した製品に起因する損害が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(15)環境保護について

当社グループは、「環境方針」に基づいて「全社環境目標(年間計画)」を策定し、各拠点に環境委員会を設置して、環境法規制の遵守、計画の見直し、環境教育等を審議し経営層に報告するなど、地球環境保護に向けたさまざまな取り組みを継続しております。しかしながら、環境汚染等の環境に関するリスクを完全に防止または軽減できる保証はないため、当社グループに起因する重大な環境汚染等が発生した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(16)気候変動について

国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取り組みが世界的に進められております。当社グループにおいても、気候変動への取り組みを事業マテリアリティの一つとして、2030年までにCO2排出量を2015年比63%削減する目標を掲げ、削減に努めています。また2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言するとともに、CO2排出量(Scope1、2及び3)を計測し第三者による検証結果も受領しています。加えて、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、提言に沿った対応を実施しています。その結果、将来的な気候変動が与える影響の、移行リスクとして炭素税を含むカーボンプライシング制度が導入された場合や、物理リスクとして異常気象により自然災害が激甚化し、当社グループの設備等に甚大な影響を及ぼし、事業活動が長期間にわたって停止した場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(17)情報セキュリティについて

当社グループが利用しているパソコンやタブレット端末等には、最新のセキュリティ対策が施されており、これらの導入や運用に際しては、システムトラブルや情報の盗難・紛失が発生しないよう、十分な対策を講じるとともに、情報リテラシーを高めるための社員教育を定期的に実施しております。しかしながら、コンピュータウイルスへの感染やハッキングの被害、ソフトウエアの不備等によるシステム障害の発生、また外部からの想定を超える攻撃などによって、重要データの破壊、改ざん、情報の外部漏洩等の不測の事態が発生する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(18)訴訟・その他の法的手続きについて

当社グループが国内および海外で事業展開する上で、訴訟その他の法的手続きの対象になる可能性があり、当社グループにおいてすでに発生している、または発生のおそれのある重大な訴訟案件等については、適宜モニタリングを実施するとともに、必要に応じて対策を講じております。しかしながら、当社グループがその当事者となった場合には、多額の損害賠償金等が発生する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

① 業績

 

売上収益

(百万円)

営業利益

(百万円)

税引前利益

(百万円)

親会社の所有者に帰属する当期利益

(百万円)

基本的1株当たり当期利益

(円)

当連結会計年度

506,211

19,984

20,483

14,319

187.13

前連結会計年度

322,253

12,367

12,426

24,490

319.54

増減率(%)

57.1

61.6

64.8

△41.5

△41.4

 

貴金属事業セグメント

貴金属リサイクル事業に関して、宝飾分野および電子分野における回収量は前期比で増加しました。デンタル分野における回収量は前期比で同水準でした。触媒分野における回収量は前期比で減少しました。これらの結果、金の回収量は前期比で増加し、パラジウム・プラチナの回収量は前期比で同水準であり、ロジウムの回収量は前期比で減少しました。北米精錬関連事業に関して、土台である精錬分野は堅調でしたが、1オンスコインなどの金銀加工品の市場縮小が続いたため、加工分野から撤退してAsahi Refining Florida LLCを閉鎖するとともに同分野の固定資産等の減損損失を計上しました。他方、年度末にかけて金銀流通の将来に対する不安から裁定取引機会が増加したことによりトレーディング分野の営業利益が増加し、米国内への金銀流入が増加したことにより金100オンスバーなどの製品分野や倉庫分野の営業利益が増加しました。結果として、貴金属リサイクル事業と北米精錬関連事業を合わせた貴金属事業セグメントの売上収益および営業利益は前期比で増加しました。

 

環境保全事業セグメント

環境保全事業に関しては、前連結会計年度の業績において非継続事業に分類されたジャパンウェイスト株式会社の売上収益および営業利益が含まれない一方、当連結会計年度の業績において株式会社レナタスの持分法投資損益が営業利益に含まれております。

 

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益506,211百万円(前年同期比183,957百万円増、57.1%増)、営業利益19,984百万円(前年同期比7,617百万円増、61.6%増)、税引前利益20,483百万円(前年同期比8,056百万円増、64.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益14,319百万円(前年同期比10,170百万円減、41.5%減)となりました。セグメント別の売上収益は、貴金属事業が506,130百万円(前年同期比183,911百万円増、57.1%増)となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりです。

 

売上収益

セグメント利益(営業利益)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

貴金属事業

322,218

506,130

57.1

12,716

18,339

44.2

環境保全事業

△0

1,919

322,218

506,130

57.1

12,716

20,258

59.3

その他

34

80

131.1

△348

△273

合計

322,253

506,211

57.1

12,367

19,984

61.6

調整額

連結

322,253

506,211

57.1

12,367

19,984

61.6

 

② 財政状態の状況

 

前期末(百万円)

当期末(百万円)

増減(百万円)

増減率(%)

資産合計

317,998

490,037

172,038

54.1

資本合計

126,476

126,349

△127

△0.1

親会社所有者帰属

持分比率

39.8%

25.8%

△14.0ポイント

 

当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ172,038百万円増加し、490,037百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が10,674百万円、営業債権及びその他の債権が149,038百万円、棚卸資産が17,299百万円増加したことによるものです。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べ172,165百万円増加し、363,688百万円となりました。これは主に、営業債務及びその他の債務が17,916百万円、社債及び借入金が148,702百万円増加したことによるものです。

資本につきましては、前連結会計年度末に比べ127百万円減少し、126,349百万円となりました。これは主に、当期包括利益による増加6,636百万円、自己株式の取得1,000百万円、剰余金の配当による減少6,513百万円によるものであります。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の39.8%から25.8%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

12,621

14,685

2,064

投資活動によるキャッシュ・フロー

△28,707

250

28,958

財務活動によるキャッシュ・フロー

7,050

△6,207

△13,258

現金及び現金同等物期末残高

6,881

17,555

10,674

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より10,674百万円増加し、17,555百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は14,685百万円(前年同期比16.4%増)となりました。これは主に、税引前利益20,483百万円(前年同期比64.8%増)、減価償却費及び償却費2,764百万円(前年同期比23.9%減)、棚卸資産の増加額17,242百万円(前連結会計年度は6,555百万円の減少)、営業債権及びその他の債権の増加額183,858百万円(前連結会計年度は13,587百万円の減少)、営業債務及びその他の債務等の増加額178,214百万円(前連結会計年度は13,607百万円の減少)、法人所得税の支払額4,917百万円(前年同期比30.8%増)、法人所得税の還付額190百万円(前年同期比91.5%減)によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動の結果獲得した資金は250百万円(前連結会計年度は28,707百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出7,423百万円(前年同期比2.1%減)、貸付けによる支出11,442百万円(前年同期比41.7%減)があった一方、貸付金の回収による収入19,307百万円(前年同期比319.0%増)等があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は6,207百万円(前連結会計年度は7,050百万円の獲得)となりました。これは主に、長短借入金の純増加額6,072百万円(前連結会計年度は14,282百万円の増加)、社債の償還による支出5,000百万円、自己株式の取得による支出1,000百万円、配当金の支払額6,510百万円(前年同期比5.6%減)によるものであります。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注の実績については、「(1)業績等の概要 ① 業績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

 

販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

貴金属事業

506,130

157.1

環境保全事業

その他

80

231.1

合計

506,211

157.1

(注)1.最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

2.セグメント間の取引については相殺消去しております。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

三井物産㈱

61,607

19.1

164,603

32.5

Varinor SA

91,581

28.4

147,321

29.1

双日㈱

43,190

13.4

3.当連結会計年度の双日㈱に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

 当社グループは、戦略遂行の成果を、連結売上収益、連結営業利益、株主資本当期利益率(ROE)、自己資本比率の4つの経営目標でモニタリングしております。

 当連結会計年度の売上収益は506,211百万円(前年同期比57.1%増)、営業利益は19,984百万円(前年同期比61.6%増)、税引前利益は20,483百万円(前年同期比64.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は14,319百万円(前年同期比41.5%減)となりました。当社が経営効率化の指標としている株主資本当期利益率(ROE)は11.3%(前年同期比9.7ポイント減少)、自己資本比率は25.8%(前年同期比14.0ポイント減少)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況

(ⅰ)キャッシュ・フロー

「(1)業績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(ⅱ)財務政策

当社グループは、事業活動のための適切な資金確保及び適切な流動性の維持を図るにあたり、営業活動で得られた資金により設備投資の資金をまかなうことを基本方針としています。この基本方針のもと、持続的な利益成長によってキャッシュ・フローを創出し、資本効率の向上と財務ガバナンスの強化を通じて、財務面からグループ全体の企業価値の向上に努めていきます。

 

(ⅲ)資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、貴金属製品製造のための原材料の購入、製造経費、販売費および一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費、広告宣伝費および専門家への業務委託費用です。当社グループの研究開発費は様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めています。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場および北米拠点の工場を中心とした生産効率向上のための設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対して、財務基盤の安定と資本効率の向上を両立させながら積極的に対応する方針です。

 

(ⅳ)資金調達

当社グループの運転資金および設備投資資金は、主として営業活動で得られた資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。これらの借入金および社債について、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できるとともに、引き続き今後の成長に必要となる資金を適切に調達することが可能であると考えています。

なお、当社グループは、現在取引している金融機関と良好な関係を築いております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び同「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

5【重要な契約等】

 当社は、ローン契約と社債に付される財務上の特約を有する重要な契約があり、その内容は以下のとおりであります。

 

1.タームローン契約

① 締結日:2021年5月28日

② 借入先:株式会社国際協力銀行

③ 当初借入金額:70百万米ドル

④ 償還期限:2026年5月28日

⑤ 担保:なし

⑥ 財務上の特約:あり(注)

(注)詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.社債及び借入金(その他の金融負債含む)」に記載しております。

 

2.シンジケートローン契約

① 締結日:2021年5月25日

② アレンジャー兼エージェント:株式会社三菱UFJ銀行

③ 当初借入金額:5,085百万円

④ 償還期限:2026年5月28日

⑤ 担保:なし

⑥ 財務上の特約:あり(注)

(注)詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 16.社債及び借入金(その他の金融負債含む)」に記載しております。

 

6【研究開発活動】

(1)研究開発活動の方針

当社グループでは、各事業セグメントにおける競争力を高めるためにコストダウンや市場ニーズに応じた新技術・新商品の開発に積極的に取り組んでいます。

貴金属事業においては、北米におけるプライマリー原料と日本を含むアジアを中心とするセカンダリー原料からの貴金属精製に関して、組成分析から製品化までの一貫したプロセスの効率向上や新技術の開発を行い、持続可能な循環型社会の形成を目指しています。また、環境保全事業においては、日本国内の産業廃棄物の無害化や資源化に関して、処理コスト低減や新技術の開発を行い、地球環境保全への貢献を目指しています。

 

(2)研究開発活動の体制

当社グループの研究開発活動は、主にアサヒプリテック株式会社テクノセンターが担っています。同センターでは、新しい処理技術や製品および分析技術の開発を担当すると共に、関連する設備の設計や改善・改良および保守をも担当しています。さらに、各グループ会社との情報交換・共有化を図りながら、さまざまな技術課題を抽出してその解決に当たっています。また、技術情報の収集・管理や知的財産の保護および新規事業を含めた企画・開発についてもテクノセンターが中心となって各グループ会社と連携をとりながら、大学や研究所等の外部機関も積極的に活用し効率的に推進しています。当社は、持続可能な社会の実現に向けた技術革新を推進するため、環境省をはじめとする国の助成金を活用した研究開発を積極的に行っています。これらの助成金を活用することで、環境負荷の低減や資源効率的利用に貢献する技術の開発を加速し、企業の競争力向上に取り組んでいます。

 

(3)研究開発活動の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費

当社グループの研究開発活動は、コストダウン、製造期間短縮、品質向上、環境対策、安全性向上などの各種改善、および新商品の提供を目的として、

① 貴金属・希少金属の回収・分離・精製に関する技術

② 貴金属評価のための分析技術

③ 貴金属製品および製造技術

④ 有害物質の拡散防止および無害化に関する技術

⑤ 脱炭素社会に向けた水素製造に関する技術

⑥ サーキュラーエコノミー実現に向けた重水リサイクルに関する技術

等の開発を行っています。

 

主要課題と研究成果は次のとおりです。

 

<貴金属事業>

・貴金属精製技術の開発

 北米で実施しているプライマリー原料処理に対しては主に乾式貴金属精製技術の開発を行い、日本を中心にアジアで実施しているセカンダリー原料処理においては主に湿式貴金属精製技術の開発を進めています。また、乾式および湿式の両精製技術を融合させることによって、あらゆる原料に対応できる効果的な貴金属精製技術の確立を目指しています。当連結会計年度においては、2022年4月に茨城県坂東市で稼働したアサヒメタルファイン坂東工場において自動化、省力化の取り組みを進めました。金や銀などの製品製造工程でのロボット活用範囲を拡大し無人生産を実現することで、生産能力拡大とともに生産コストを削減しました。また、2025年竣工予定のアサヒプリテック坂東工場に導入する新プロセスの技術開発を進めました。アサヒプリテック坂東工場では、新技術および新設備を導入することにより電子触媒事業分野での競争力強化を図ります。自動車触媒、化学触媒等に含まれる貴金属の回収工程において、新技術を導入することで貴金属収率の向上および工程期間の短縮を目指します。また、原料の焼成工程においても、排熱の再利用や水素をはじめとするCO2排出量の少ない燃料への変更等を実施することで、CO2排出量低減に向けて取り組みます。

・貴金属剥離技術の開発

半導体やLED産業の製造で使用する部材・冶具等の表面に付着した貴金属を安全かつ確実に回収するために、化学剥離技術および物理剥離技術の開発を進めています。当連結会計年度においては、昨年度開発した化学剥離速度を大幅に向上させる技術を有した設備を尼崎工場に導入しました。この設備を活用して処理量拡大に貢献していきます。

・貴金属分析技術の開発

 製品の品質維持およびお客様との取引を正確かつ迅速に行うために、X線や誘導結合プラズマ発光分析(ICP)を用いた分析技術の開発を進めています。当連結会計年度においては、ICP分析で用いる貴金属標準液を高精度化する開発に取り組み、実用を開始しました。これにより、顧客から預かったサンプルの分析精度が向上し、顧客満足度の向上に繋がりました。

・リサイクル由来の貴金属を原料としたメッキ化成品製造技術の開発

 当社で製造するリサイクル由来(セカンダリー原料)の貴金属は、人・社会・環境に優しい貴金属としてお客様にニーズがあります。そのようなお客様のニーズに応えるために、2022年度にリサイクル由来の貴金属を原料としたメッキ化成品製造ラインを導入しました。当連結会計年度においては、メッキ化成品の生産販売を開始しました。リサイクル原料から製造した貴金属を化成品として販売することで、リサイクル由来の貴金属の価値向上に繋げていきます。

 

<環境保全事業>

・産業廃棄物の処理技術および資源回収技術の開発

当社グループ全体で回収される産業廃棄物の適正処理技術と資源回収技術を開発しています。産業廃棄物の焼却事業に関してはこれまで九州地区を中心に展開しておりましたが、新たに関東地区においても排熱回収発電能力を有した新焼却炉の建設計画を進めています。廃棄物処理量拡大と同時に環境負荷の低減、地域社会への貢献を目指した新技術導入を進めます。

・脱炭素社会に向けた技術開発

廃棄物発電によって得られる電力を有効活用し、水素を製造・圧縮・搬送する取り組みを進めています。この取り組みは環境省が公募した「令和5年度 廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業」に採択され、当連結会計年度においては、横浜工場(現ジャパンウェイスト株式会社)へ、産業廃棄物処理装置、水電解装置、水素圧縮装置の導入に向けた工事を開始しました。今後、実用化に向け設備導入を進め、水素の普及拡大ならびに温室効果ガス排出削減へ貢献します。

 

当連結会計年度における研究開発費は503百万円です。なお、研究開発費については、基礎研究分野にかかわる費用をセグメント別に関連づけることが困難であるため、その総額を記載しています。