第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

当社グループは企業理念として「感動と安心を世界の人々へ」提供することを掲げています。経営方針、行動指針は以下のとおりです。

※当社グループの企業ビジョン「感動と安心を世界の人々へ」を企業理念として再定義しています。

 

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(2)目標とする経営指標

当社は、2023年度を開始年度とする中期経営計画「VISION2025」を2023年4月に策定しました。

「VISION2025」の中間年度にあたる当連結会計年度(2024年度)は、売上収益、事業利益、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)、ROIC(投下資本利益率)の最終年度目標を上回る実績を前倒しで達成しました。

2025年度は、関税影響により減収予想も、売上収益以外の目標達成を見込んでいます。

 

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*上記目標数値は、当社が現在入手している情報をもとに、本有価証券報告書提出日現在における当社の判断に基づいて作成されたものであり、また、一定の前提(仮定)の下に作成されています。当社は、上記目標数値の達成を保証するものではなく、実際の結果は上記と大幅に異なる可能性があります。

*ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷期中平均親会社の所有者帰属持分×100

*ROIC(投下資本利益率)= (税引き後事業利益+持分法損益)÷投下資本(株主資本+有利子負債)

 

 

(3)経営環境・成長戦略

① 中期経営計画「VISION2025」について

地政学リスク増大によるサプライチェーンの見直しや世界経済動向の不透明化等、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しています。当社はこうした事業環境の変化を踏まえて、今回新たに企業価値最大化の観点から2023年4月に「変革と成長」の基本戦略を強化した、2025年度を最終年度とする新中期経営計画「VISION2025」を2023年4月策定しました。

 

② 中期経営計画「VISION2025」の位置付け

当社は企業理念として「感動と安心を世界の人々へ」提供することを掲げており、この理念の実現に向けて「たくましさ」と「したたかさ」を併せ持つエクセレント・カンパニーへの飛躍を目指しています。

「VISION2025」では「VISION2023」で掲げた基本戦略「変革と成長」をさらに進化させ、事業ポートフォリオを最適化することで成長モメンタムを加速し、企業価値最大化を目指していきます。

 

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③ 中期経営計画「VISION2025」の基本戦略:「変革と成長」

<基本戦略>

「VISION2025」では、「変革と成長」を基本戦略とした事業ポートフォリオとキャピタル・アロケーションの最適化を図るとともにサステナビリティ経営を推進し、企業価値の最大化に向けて取り組んでいきます。

 

④ 企業価値の最大化に向けた事業ポートフォリオの最適化

「VISION2025」では企業価値最大化の観点で、中期的な事業の成長性と自社の資本効率性を考慮した資源配分を行い、事業ポートフォリオの最適化をさらに進め、持続的な企業価値と株主価値の向上に取り組んでいます。

※2023年度~2025年度の3カ年における売上成長率

 

*「VISION2025」中間年度の振り返り

「VISION2025」の中間年度にあたる当連結会計年度(2024年度)は、モビリティ&テレマティクスサービス分野、セーフティ&セキュリティ分野、エンタテインメント ソリューションズ分野の3分野全てが前連結会計年度比で増収となったことから、事業利益以下、親会社の所有者に帰属する当期利益までの段階損益は過去最高益となりました。

これに伴い、全社の売上収益、事業利益、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)、ROIC(投下資本利益率)などの「VISION2025」で掲げた主要な経営指標については、最終年度の目標を上回る結果となりました。

 

「無線システム事業」 北米公共安全市場は引き続き堅調

当連結会計年度(2024年度)は、成長牽引事業である無線システム事業が、世界的な需要増や新商品投入効果を主因とした受注高拡大により、受注残増加とともに受注残の出荷が進み、売上高は順調に拡大しました。

2025年度は、前年度を上回る受注を獲得し、引き続き成長軌道を維持する見込みです。

 

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⑤ 財務戦略

<キャピタル・アロケーションの考え方>

「VISION2025」では、資本コストを上回る資本収益性の達成に向けて、利益成長を実現する営業キャッシュ・フロー創出に重点を置いた上で、成長投資、戦略投資等の使途を明確化して、キャピタル・アロケーションの最適化を図ります。

成長投資には設備投資や経営基盤強化に向けた投資を、戦略投資には新規事業等への投資や株主還元、有利子負債返済を織り込んでいき、戦略的なキャピタル・アロケーションを実行していきます。

 

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<株主還元方針について>

当社は、安定的な利益還元及び今後の成長に向けて経営資源を確保することを経営上の最重要課題の一つと考え、収益力及び財務状況を総合的に考慮して、総還元性向を株主還元の指標としました。業績に応じた株主還元策とした配当に加え、中長期的な利益成長に向けた資本活用、資本効率性改善効果のバランスを踏まえつつ、機動的に自己株式取得を行い、総還元性向30~40%を目安に株主への安定的な利益還元を実施していく方針です。

上記配当政策に基づき、当事業年度の中間配当は、2024年10月31日開催の取締役会で、2008年の経営統合以降初めての実施となる1株当たり5円(普通配当)といたしました。期末配当は、利益実績を踏まえ、2025年5月14日開催の取締役会で、1株当たり10円(普通配当)とすることを決議しました。なお、1株当たり15円の年間配当(約22.6億円)と約65億円(2025年6月完了分の約20億円を含む)の自己株式取得により、総還元性向は約43%となりました。

2025年度は、業績及び財務状況の向上に努め、年間配当予想を1株当たり18円(中間配当金:6円、期末配当金:12円)としています。

 

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⑥ サステナビリティ戦略

当社グループは、企業理念「感動と安心を世界の人々へ」に基づき、事業を通じてあらゆるステークホルダーの期待に応えていくことが重要だと考えます。社会から信頼され、社会に貢献する企業であり続けることは、企業としての持続的な成長にもつながると考えています。

「VISION2025」では、「利益ある成長」と「グローバルでの社会課題解決」を両輪とするサステナビリティ経営の推進活動をさらに深化させ、企業価値向上を目指します。

 

<サステナビリティ戦略の方向性>

E:環境への取り組み

環境負荷削減に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献

S:社会への取り組み

イノベーションを実現する人材の育成及び組織能力強化と、

サステナビリティ調達の推進

G:ガバナンス

サステナビリティ経営を確実に実行する推進体制

持続的な企業価値向上に向けた取締役会実効性評価の継続的な取り組み

 

当社グループのサステナビリティ戦略についての詳細は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

当社は前述の経営環境のもと、中期経営計画「VISION2025」で掲げた各種施策を継続推進することにより、最終年度である2025年度の経営目標達成を目指し、持続的な企業価値向上を強化していきます。

上記の成長戦略を進めるにあたり当社が認識している対処すべき課題は以下のとおりです。

2025年度は、セーフティ&セキュリティ分野の無線システム事業については、北米公共安全市場の堅調な需要の継続が見込まれ、当社は同市場での事業拡大を図るため人員増強などの先行投資を継続的に実施します。加えて、無線システム事業では2024年度の第4四半期連結会計期間に引き続き、2025年度の第1四半期連結会計期間以降にも部品供給不足による影響の発生が見込まれるため、この影響のミニマイズを図るべく様々な対策を実施していきます。また、モビリティ&テレマティクスサービス分野では、海外OEM事業、国内用品事業の堅調な販売を見込み、エンタテインメント ソリューションズ分野ではエンタテインメント事業のコンテンツビジネスの堅調な販売に加え、メディア事業で2024年度に実施した損失引当による効果の発現を見込んでおります。

一方で米国の関税措置が当社グループの事業及び業績への影響を及ぼす可能性があります。当社の2025年3月期の全社売上収益に占める米国向けの比率は約25%であり、主に以下の事業・製品で構成されています。

 

モビリティ&テレマティクスサービス分野

 

ディスプレイオーディオ

オーディオ

スピーカー

 

セーフティ&セキュリティ分野

無線システム事業

 

業務用無線機

付属品

 

エンタテインメント ソリューションズ分野

メディア事業

 

ヘッドホン

イヤホン

プロジェクター

 

 

当社は、当該関税措置が当社グループの事業及び業績へ与える影響を最小限とするべく、米国相互関税緊急対応プロジェクトを設置しました。このプロジェクトを軸に、短期的な施策として製品への価格転嫁や中国産品の販売抑制などを実施していきますが、モビリティ&テレマティクスサービス分野やエンタテインメント ソリューションズ分野においては、これらの施策による生産・販売数量の減少や米国及び中国の景気減速によるマイナス影響が想定されます。一方で、米国向けの構成比が大きいセーフティ&セキュリティ分野の無線システム事業については、価格転嫁を中心とした施策によって現時点で想定される関税影響はほぼ吸収できる見込みです。

これらの結果、2025年4月25日時点の当該関税措置による次期のマイナス影響額は、売上収益で130億円、事業利益で50億円と見込んでおります。

 

<ご参考>2025年4月25日時点の米国関税

国別

中国

145%

 

メキシコ

25%

3月4日発動 一部除外中

品目別

自動車関連

25%

4月3日発動(部品は5月3日発動予定)

全世界

相互関税

(一律関税10%を含む)

日本24%、マレーシア24%、
インドネシア32%、タイ36%

(一律関税10%を除き)90日間停止

 

 

(5)環境保全・社会貢献活動に向けた取り組み

当社グループは、2021年度に環境ビジョンと環境基本方針を策定し、地球環境保全に対する基本的な考え方を示しました。2023年度には、環境基本方針の見直しを行い「JKグリーン2030」を策定し、「気候変動への対応」「資源の有効活用」「環境保全・管理」「生物多様性の保全」の4項目でそれぞれ目指すべきゴールを再設定しました。特に、気候変動への対応については、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2030年に向けたScope1+2と3でそれぞれCO₂排出量削減の目標を設定しています。

「気候変動への対応」「資源の有効活用」の目標達成に向けた活動として、環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO14001認証取得を継続するとともに、CO₂の排出量削減進捗管理、資源利用に関する目標達成進捗を定期的に評価し、事業活動における環境への影響を軽減または回避するために努力を続けています。

「環境保全・管理」「生物多様性の保全」に対して、自社及びサプライチェーンにおいて環境に配慮した方針の実現に向けて積極的に活動しています。活動事例として従業員に対する定期的な環境研修による啓発活動、環境法規制遵守に基づいた飛散性アスベストの除去及び保管している高濃度PCB汚染廃棄物も計画的に無害化処理を進める等の環境リスクの低減を推し進めています。

製品開発においては、要素技術開発や商品設計に際してアセスメントを行う事によってRoHS(電気・電子機器における特定有害物質の使用規制)やREACH(化学物質の登録・評価・認可・制限・情報伝達に関するEU規則)等製品の有害化学物質管理や各国の法規制に対応しています。

さらに、バリューチェーン全体におけるScope3(購入品の製造、輸送、販売した製品の使用等)のCO₂排出量削減及び環境負荷の低減を目指して製品の消費電力低減、プラスチック使用量削減、個装箱の小型化による積載効率の向上等にも取り組んでいます。

また、社会貢献活動については、取り組みを通じて得られた知見や社会とのつながりが事業活動のさらなるレベルアップにつながると考えており、当社グループが有する社会課題を解決する製品を有効に活用しつつ、活動を展開しています。このような考えのもと持続可能な社会づくりのため、「災害対策への貢献」「健康と豊かな心や生活への貢献」「次世代育成への貢献」「地域コミュニティへの貢献」等の社会貢献活動の重点テーマとしています。これらの重点テーマは、当社グループの企業理念、中期経営計画「VISION2025」における事業戦略やマテリアリティの考え方と連動しており、社会貢献活動が当社グループの事業戦略と相乗効果を発揮できるよう取り組んでいます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、企業理念「感動と安心を世界の人々へ」に基づき、事業を通じてあらゆるステークホルダーの期待に応えていくことが重要だと考えます。社会から信頼され、社会に貢献する企業であり続けることは、企業としての持続的な成長にもつながります。事業を通じて企業と社会のサステナビリティを推進すべく、さまざまな社会課題を解決する取り組みを継続していきます。

また、当社が関わるすべてのステークホルダーと深い信頼関係を築きながら、事業を通じた社会課題の解決に取り組むことで、持続的な企業価値の向上と社会への貢献を図っていきます。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

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サステナビリティ推進におけるガバナンス体制として、2018年4月より、取締役会の監督のもと担当役員を置き、その傘下にサステナビリティ推進室を設置し、サステナビリティ経営の推進を迅速に実行するための体制を整備しました。サステナビリティ推進室は、全社的なサステナビリティ推進戦略の実行とその進捗管理の役割を担っており、マテリアリティ(重要課題)やKPIs(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)の定期的な見直しや、サステナビリティ関連情報の開示拡充に取り組んでいます。

また、サステナビリティ推進戦略を全社的に推進するためには、社内におけるサステナビリティに関する問題意識の醸成や理解促進も不可欠です。そのため、サステナビリティ推進室は、関連各部署と積極的なコミュニケーションを図りながら、事業とサステナビリティを結び付ける取り組みを主導しています。

 

<サステナビリティ推進体制>

2023年4月には、サステナビリティ全般についての推進主体組織である「サステナビリティ委員会」をCEO直轄組織として設置しました。同委員会は、毎年2回の定例開催に加え、必要に応じて臨時開催し、議論の内容を執行役員会や取締役会に報告します。また、委員会の下部組織として、テーマごとに担当役員を責任者とする専門部会(サステナビリティ経営戦略部会、環境部会及びサプライヤー部会)を設置し、それぞれのテーマの課題の抽出、目標や実施計画、具体的対応等を協議し、推進していきます。取締役会は、これらの委員会及び専門部会を監視、監督し、意思決定を行います。さらに、ESG強化に向けて、ESGインパクト分析などを活用し、中長期的な活動を推進していきます。

 

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<マテリアリティの設定>

当社は、中期経営計画「VISION2025」の策定に合わせ、マテリアリティ(重要課題)の見直しを行いました。見直しにあたっては、国際的な動向やイニシアチブからの要請といった社会課題の視点と、事業環境や企業理念、中期経営計画「VISION2025」などの自社視点の両面から検討しました。2023年度にマテリアリティ特定において、社会視点として持続可能な開発目標(SDGs)の全17ゴールのうち、当社グループが解決に貢献できると考えられる社会課題テーマと特に関連が深い8ゴールを優先的に取り組むゴールとし、取締役会における審議・承認を経て、3つのマテリアリティを再特定しました。各マテリアリティに対して、確実な課題解決の実現に向けて事業計画と整合したKPIを設定し、進捗状況をモニタリングしています。

 

参考:https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/group/materiality/

 

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<3つのマテリアリティ>

3つのマテリアリティとして、「①安心・安全への取り組み」「②環境への対応」「③持続可能なものづくり」と、「企業基盤の強化」の取り組みを策定しました。また、各マテリアリティと「企業基盤の強化」の取り組みに紐づくサブマテリアリティ、取り組みテーマ、KPIを設定しました。

 

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<マテリアリティと取り組みテーマ>

マテリアリティ/企業基盤の強化

サブマテリアリティ

取り組みテーマ

SDGs

マテリアリティ

①安心・安全への取り組み

●安心・安全なまちづくり

●交通事故の抑制・抑止

▶ セーフティ&セキュリティ分野における価値創出

・ 業務用無線システムの販売台数

▶ モビリティ&テレマティクスサービス分野における価値創出

・ カーナビゲーション及びディスプレイオーディオの販売台数

・ ドライブレコーダーの販売台数

 

 

 

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②環境への対応

●気候変動への対応

●資源の有効活用

▶ 気候変動への対応

・ CO₂排出量削減(Scope1+2)

・ CO₂排出量削減(Scope3)(カテゴリ1、4、11)

▶ 資源の有効活用

・ 廃棄物リサイクル率

・ 廃棄物排出量の削減(売上高原単位)

・ 容器包装プラスチック使用量の削減

・ 水使用量の削減

 

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③持続可能なものづくり

●責任あるサプライチェーンへの取り組み

●ものづくり改革

●イノベーションの加速

▶ 人権に関する取り組み

・ 調達・物流管理関連部門向け「人権に関する研修」の実施

・ 取引先向け「人権に関する研修」の実施

・ 外部救済窓口の設置と運用

▶ サステナビリティ調達

・ 新規口座開設時のCSR調達ガイドラインへの賛同署名回収

・ 取引先に対するCSR自己監査の実施依頼及び課題が見つかった取引先に対する是正措置の実施

・ RBAなどのアライアンスへの参画と、グローバルフレームワークの活用

 

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企業基盤の強化

●ダイバーシティ&インクルージョン

●従業員の活躍推進

●ガバナンス

▶ ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)

・ 女性管理職比率

▶ コーポレート・ガバナンス

・ 取締役会における審議の充実

・ 社外取締役に対するトレーニング/オフサイトミーティングなどの実施

・ 取締役会と経営層のダイバーシティ強化

▶ 情報セキュリティ

・ IT セキュリティ研修受講率

・ 標的型メール訓練(開封者研修の受講率)

 

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参考:https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/economy/change/automotive/

参考:https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/economy/change/iot/

 

1. 気候変動への対応

当社は、気候変動問題の緩和に貢献し、適応する取り組みは重要な経営課題と捉え、調達、製品開発、製造、製品・サービスの提供といったバリューチェーン全体を通じて、気候変動がもたらすグループへの影響の回避・低減に取り組みます。その取り組みにおいて、Scope1+2, Scope3のCO₂排出量削減や、生産工数の削減や省エネ機器導入等を通したエネルギー利用の削減を進めています。

 

Scope1は、組織境界における温室効果ガスの排出源からの直接的な大気中への温室効果ガスの排出量(直接排出量)、Scope2は、他者から供給を受けた電気、熱の利用により発生した電気、熱の生成段階での CO₂排出量(エネルギー起源間接排出量)、Scope3は、直接排出量、エネルギー起源間接排出量以外の事業者のサプライチェーンにおける事業活動に関する間接的な温室効果ガス排出量(その他の間接排出量)をいいます。

 

また、2023年4月に金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動のリスク・機会をより一層意識した経営戦略の策定を進めていきます。

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(1)ガバナンス

気候変動問題に対応するガバナンス体制として、脱炭素化に向けた戦略の策定や施策の検討を「サステナビリティ委員会」において行い、同委員会の下部組織である環境部会において、気候変動問題に関する課題の抽出、目標や実施計画、具体的対応等を協議し、推進しています。

環境部会における2024年度の具体的な活動として、「TCFD提言に基づく開示内容の更新」「CO2排出量集計における課題と対応策」等について審議を行い、承認されました。

また、サプライヤー部会においては、Scope3における「カテゴリ1:原材料・部品及び購入した物品に伴う排出量」及び「カテゴリ4:原材料・製品の輸送に伴う排出量」の算定精度向上と排出量削減に向けた取り組みを推進しています。

 

(2)リスク管理

当社では、職場と経営層が協働して取り組むリスクマネジメントの一環として、全世界の職場でリスクサーベイランスプロセスを毎年実施しています。

 

当社グループのリスクマネジメントプロセスは以下のサイクルで運営しています。

① 最高経営責任者(CEO:Chief Executive Officer)が主宰し、リスク管理担当役員を議長、議長が指名した役員及び本社部門長を構成員として設置される全社リスク管理会議を設置、各事業部・地域が洗い出した「事業拠点リスク」と経営課題・事業課題を踏まえ、経営への影響度や緊急性、インシデント発生状況などを勘案して選定したリスク課題を「最優先で取り組むべきグローバル重要リスク」と位置付けリスク解決に向けた施策を策定し、経営層レベルによる全社的視点での取り組みとして当該リスク管掌担当役員を対応推進責任者に指名します。

② 重要リスク対応推進責任者は、連結会計年度の事業達成へ向けて「グローバル重要リスク」に対する施策を各事業部・地域に落とし込んで改善するサイクルを実施し、その進捗をモニタリングします。

③ 当社グループの全部門は毎年リスクサーベイランスを行い、各事業部・地域において事業の現場で直面するリスクを洗い出して「事業拠点リスク」と位置付け、影響度・発生頻度及び対応状況を踏まえた評価を行うとともに、対応策を策定し実行します。また、施策進捗をモニタリングし改善するサイクルをそれぞれの部門で回します(リスクサーベイランスプロセス)。

 

リスクサーベイランスにおけるリスク項目の中に自然災害リスク等が含まれており、気候変動に関する事項も含めてリスクの特定、評価、管理を行っています。具体的には2023年度からリスクサーベイランスプロセスにおいて、検討対象とするリスクカテゴリ内にTCFD提言に沿ったリスク管理(気候変動問題に起因する移行リスク・物理的リスク及びその分類項目)を追加しました。これにより、気候変動に起因するリスクを明確に管理すると同時に、他の一般的なリスクと統合した形での対応策の進捗管理を実現しています。

 

 

<TCFD提言に沿ったリスク管理(気候変動問題に起因する移行リスク・物理的リスク及びその分類項目)>

リスクカテゴリ

リスク事象

大分類

中分類

小分類

気候変動関連のリスク

移行リスク(低炭素経済に移行する際に発生するリスク)

政策・法規制

炭素税の導入

GHG排出量規制/排出量報告義務

省エネ政策/設備投資によるコスト増

法規制・燃費規制等

市場

原材料・エネルギーコスト増/調達困難

消費者の行動変化

重要商品/製品価格の増減

技術

再エネ・省エネ技術開発の遅れ

環境配慮製品開発の研究開発投資増加

評判

顧客の評判変化

投資家の評判変化

ブランド棄損

物理的リスク(気候変動による物理的変化により発生するリスク)

急性

異常気象の激甚化(台風・洪水)

BCP対応によるコスト増加

慢性

平均気温の上昇

降水・気象パターンの変化

海面の上昇

 

(3)戦略

当社は、TCFD提言に沿って「1.5℃シナリオ」を含む複数のシナリオを考慮の上、気候変動に関するリスクと機会について「シナリオ分析」を行い、その結果、自然災害の激甚化による物理的なリスク、被害を軽減するために導入される各種規制から生じる移行リスクを特に重要なリスクとして識別し、これらに対して、脱炭素に貢献する製品展開の拡大、省エネ・省資源にともなうコスト低減等の対応策と、さらなる成長に寄与する機会の再検討を行いました。

再検討によるTCFD提言に沿った「シナリオ分析」の実施により特定されたリスク概要、リスクに対応する機会及び事業に対する影響度は、以下のとおりです。

 

 

『リスクと機会』の特定と事業に対する影響度

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特定したリスク及びリスクに対応する機会に関して、環境配慮型製品や防災・減災に対応した製品の開発、導入を進め、新たな市場の開拓に取り組んでいます。また、中期経営計画「VISION2025」と連動した日本国内市場向けの製品において「国内生産回帰」、生産総量を考慮した生産拠点レイアウトの最適化、環境負荷の低減を考慮した製品開発、天然資源設備の代替検討、再生可能エネルギー電力の使用といった対応策を実施することなどにより、エネルギー消費量やCO2排出量を削減し、製造・輸送などの企業活動のプロセスの効率性を向上させ、さまざまなリスクに対応していきます。

 

 

(4)指標及び目標

当社は、2023年度に更新した環境基本方針(JKグリーン2030)における4項目の重点項目である、「気候変動への対応」「資源の有効利用」「環境保全・管理」「生物多様性の保全」に関して、環境負荷の低減へ向けてさまざまな取り組みを行っています。

このうち、「気候変動への対応」として、グローバルでのCO₂排出量削減の長期目標として2050年までにカーボンニュートラルを実現すべく、2030年度までにCO₂排出量(Scope1+Scope2)を2019年度比で46.2%削減することを掲げています。

また、Scope3におけるCO₂排出量削減目標として、カテゴリ1、4、11について2019年度比で13.5%削減することに取り組んでいます。

 

<当社の環境ビジョン、環境基本方針「JKグリーン2030」並びに指標及び目標>

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CO₂排出量(Scope1+Scope2)を2030年度までに2019年度比46.2%削減目標と排出量推移

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※2019~2023年度については、国内/海外のCO₂排出量の実績値を記載しています。

 

※算出範囲等の条件については、下記URLを参照ください。

https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/activity/climate_change/save_energy.html

 

参考:https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/activity/climate_change.html

 

2. 人的資本

 

(1)戦略

当社グループは、2023年度を開始年度とする中期経営計画「VISION2025」を2023年4月に策定しました。そして、経営方針である、「イノベーションを実現する人材の育成と組織能力の強化」を実現するにあたり、経営戦略と連動した以下のような人的資本施策を推進します。

 

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針

<人材戦略>

「VISION2025」では、経営戦略と連動した人材要件の策定、またそれを実現するための人材育成計画を策定し実行します。また、2024年に完成した「Value Creation Square」を中核とした新たな働き方の実現を目指しています。

 

 

<VISION2025での人材戦略>

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<JVCKENWOOD Career Design>

自らの経験を生かしながら「将来のありたい姿」の実現を支援するため、従業員に積極的に学んでもらえる環境を整えています。職種別の人材要件定義書を整備し、当社でのキャリアデザインを見える化することで、社員に積極的に学んでもらえる環境を作ります。同時に、経営方針や事業方針とその実現のための人材育成計画を連動させることで、当社の業績向上に貢献します。

また、人事部内にCD(キャリアデザイナー)を設置し、人材育成計画方針の策定を行うと共に、全職種共通の人材要件に関する研修企画、個別のキャリア相談、キャリアに関する交流会などを実施し、社員の自律的なキャリア形成の支援を行っています。

  従業員一人一人が目指す姿の実現のサポートを強化することで、価値創造力の向上と企業価値の最大化につなげていきます。

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<ダイバーシティ&インクルージョン>

当社では、「ダイバーシティ&インクルージョン推進」を企業基盤強化のための重要な取り組みの一つと位置付けています。当社がさらなる飛躍を遂げるためには、すべての従業員が各々のポジションで最大限の力を発揮することが不可欠です。人種・国籍・宗教・文化・障がい・働き方・年齢・性別・性的指向・性自認など、さまざまな背景を持った従業員が生き生きと活躍できる組織を実現し、一人一人のエンゲージメントを高めることが、組織の活性化やパフォーマンス向上につながると考えています。多様性が尊重される組織風土づくりに継続して取り組むことで、イノベーションの創出と事業を通じた持続的社会への貢献を目指します。

 

 

(女性活躍推進)

女性の管理職比率については、当社における中長期課題として認識しており、組織で長く活躍できる人材を育成し、管理職候補を増やしていく取り組み(研修の実施、育児休暇等の休暇制度の充実などのサポート)を継続して行っています。2024年度の女性管理職比率は8.1%となり、中期目標を達成しました。

当社は、2018年3月に厚生労働大臣より、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」に基づく「えるぼし」に認定され、最高位(3段階目)を取得しました。

 

(男性の育児休業取得推進)

男性育休取得推進の取り組みとして、全管理職を対象とした男性育休取得推進研修の実施と妊娠・出産を申し出た従業員への育休取得意向確認面談の実施、育児目的休暇の整備などを実施し、男性育休取得率100%達成に向けて取り組んでいます。

 

(LGBTQ+*に関する取り組み)

LGBTQ+の取り組みとして、事実婚の相手方と同性パートナーを社内制度上の配偶者に含める人事施策を導入しています。

当社は、2018年度以降、企業・団体などにおける性的マイノリティに関する取り組みの評価指標「PRIDE指標2023」(wwP策定)において、最高位の「ゴールド」を6年連続で受賞しています。

 

*  LGBTQ+:レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)、クィア/クエスチョニング(Q)等のセクシャル・マイノリティの総称

 

ダイバーシティ概念図

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えるぼし認定マーク

 

「PRIDE指標2024」ゴールド受賞ロゴ

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② 社内環境整備に関する方針

<健康経営>

当社グループでは、企業理念「感動と安心を世界の人々へ」の実現のため、「変革」と「成長」に取り組んでいます。その源泉は従業員であり、従業員一人一人が共に健康であることを重要な経営課題と認識し、「JVCケンウッド健康宣言」を発信して「全ての従業員が健康で生き生きと働くことができる職場環境」の整備を持続的に目指していきます。当社は、経済産業省・日本健康会議が共同で運営する「健康経営優良法人認定制度」の大規模法人部門において、優良な健康経営を実践している企業として2018年度から8年連続で認定されており、2025年度は4年連続7回目となる「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)ホワイト500」の認定を受けました。また、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行う企業として、スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー」に2022年から4年連続で認定されています。

 

当社では「JVCケンウッド健康宣言」のとおり、「全ての従業員が健康で生き生きと働くことができる職場環境」づくりに取り組み、「従業員のパフォーマンス向上」を、健康経営で解決したい経営課題と認識しています。この目指す姿に向けて、健康経営を通じて従業員一人ひとりの心身の健康の維持・向上を図り、「アブセンティーイズムの低減」「プレゼンティーイズムの改善」「ワークエンゲージメントの向上」「ワーク・ライフ・バランスの充実と向上」を目指します。そして、健康投資や、その効果、目標指標などをまとめた「健康経営取り組みMAP」に沿って、全従業員が一体となって取り組みを推進しています。

 

<JVCケンウッド健康宣言>

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<健康経営取り組みMAP>

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参考:https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/social/health.html

 

<人権に関する取り組み>

当社グループは、事業活動及びサプライチェーンに関わる、すべてのステークホルダーの人権を尊重しています。企業の事業運営のグローバル化にともなう人権への影響に対する関心の高まりを背景に、事業活動において人権を尊重する意思をより明確に表明するため、当社グループは「JVCケンウッドグループ人権方針」を策定しました。

また、ビジネスと人権を取り巻く社会情勢の変化や当社における人権デューディリジェンス推進状況を踏まえ、2024年度に人権方針の改定を行いました。

本方針は当社役員及び従業員だけでなく、事業を通じて影響を及ぼす可能性のあるビジネスパートナーやサプライヤーを含むバリューチェーン上のすべての外部パートナーにも遵守することを求め、ステークホルダーエンゲージメントを通じて適切な対処を積極的に働きかけていきます。同方針に基づき、事業活動における人権尊重の取り組みを今後より一層進めていきます。

 

参考:https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/social/human_rights/

 

人権リスクマネジメント推進において「JVCケンウッドグループ人権方針」によるコミットメントを受け、事業活動対する下記の人権デューディリジェンスプロセスを実施することで、人権への負の影響を特定、防止、軽減するように努めています。年単位の継続的なサイクルとしてPDCA(Plan / Do / Check / Act)を回し、継続的に運用しています。

 

人権デューディリジェンスプロセス

 

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2024年度も、上記プロセスに基づき人権デューディリジェンスを実施し、2023年度の人権デューディリジェンスにて特定した4項目の人権リスクのうち、「サプライチェーンにおける個人情報保護」「従業員の差別・ハラスメント」「サプライチェーンにおける強制労働・児童労働」の3項目を、引き続き対応が必要となる顕著な人権リスクとして再特定しました。

 

① サプライチェーンにおける個人情報保護

② 従業員の差別・ハラスメント

③ サプライチェーンにおける強制労働・児童労働

 

一方、「サプライチェーンにおける救済処置」については、従来から設置しているお客様相談窓口や従業員向け通報窓口に加え、2024年度、当社は一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が運営する『対話救済プラットフォーム』に参加し、国内外のステークホルダーからの人権侵害に関する苦情の受付を目的として、外部ステークホルダー向け通報窓口を新たに設置しました。通報内容については、必要に応じて、専門的な知見を有するJaCERから助言等の支援を受けながら、適切に対応できる体制を整えています。これらの施策により、外部ステークホルダーを含む救済措置の整備が進み、一定の成果が得られたことから、今年度は上記の3項目に絞り、継続的な取り組みを進めています。

 

※一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)は、「国連 ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して非司法的な苦情処理プラットフォームである「対話救済プラットフォーム」を提供し、 専門的な立場から会員企業の苦情処理の支援・推進を目指す組織です。

参考:JaCER通報受付窓口(外部リンク) https://jacer-bhr.org/application/index.html

 

2024年度に特定した人権リスクへの悪影響発生の予防・軽減策と進捗は、以下のとおりです。

 

①サプライチェーンにおける個人情報保護

当社の事業活動におけるお客さまや取引先、従業員の個人情報保護の重要性の認識のもと、個人情報の保護に関する各国の法令、ガイドライン、その他の規範並びに、「JVCケンウッドグループ個人情報保護方針」を遵守し、個人データの安全管理のために、規程、マニュアル、ガイドラインを定め、必要かつ適切な措置(個人データの取り扱いルール、従業員に対する教育等含む)を講じています。また、サプライチェーン上の個人情報を保護するための体制構築を目指し、関係部門と連携しながら必要な対策を継続的に行っていきます。

 

 

② 従業員の差別・ハラスメント

「JVCケンウッドグループ人権方針」のコミットメントに「人権の尊重と差別の排除」を明記し、あらゆる企業活動の場面において、基本的人権を尊重し、人種、信条、年齢、社会的身分、門地、国籍、民族、宗教、性別、性的指向・性自認及び障がいの有無などの理由によるあらゆる形態の差別を禁止しています。また、労働者の人権を尊重し、精神的・肉体的な虐待、強制、ハラスメントなどの非人道的な扱い、並びにそのような可能性のある行為を労働者に対して行うことを容認しません。

従業員に対しては、定期的にハラスメントに関する内容を取り扱った研修を実施しており、継続的に啓発を行うことでハラスメントの防止に取り組んでいます。特に管理職や管理者に対しては、定義等の知識インプットを行うだけでなく、実例をもとに未然防止策の検討や、事案発生時の対応を体感するなど、実践的なハラスメント教育を展開しています。

 

③ サプライチェーンにおける強制労働・児童労働

当社は、カーナビゲーションや業務用無線システムといった電子部品を組み込んだ多くの商材を取り扱っているため、原材料調達における強制労働・児童労働や、人権に関わる鉱物に関連してリスクが発生する可能性があると考えています。製品のサプライチェーン、特に原材料調達の過程において強制労働や児童労働などが発生するリスクを低減するために、サプライヤーへの質問票調査(SAQ調査)を継続的に行っています。SAQ調査の確認項目の中でも強制労働と児童労働を重要視しており、リスクのあるサプライヤーに対しては状況の追加確認と改善の依頼、改善状況の進捗確認を行っています。また、「JVCケンウッドCSR調達ガイドライン」にも強制労働と児童労働の防止を定め、新規、既存の取引先に対して賛同署名を求めるとともに、パートナーズミーティングにおいてその内容を周知しています。

 

(2)指標及び目標

当社グループでは、「VISION2025」における取組テーマである、「人材戦略」、「多様性」、「健康経営推進」を行う上で、採用人数、研修人員数、エンゲージメント指標、自己都合退職率、生産性指標、休職者率を重要な指標と捉え、個々の施策を進めていきます。経営戦略との連動を意識した人材育成や採用方針をたて、結果として「働き甲斐のある職場」を新設の「Value Creation Square」にて実現していきます。2025年3月期においては、すべての指標において目標を達成しており、「VISION2025」の最終年度である2026年3月期においても維持改善に努めます。

 

重要視する指標の進捗(提出会社)

 

 

 

 

2025年3月31日現在

主要指標 注1.

2023年度

2024年度

2023年~2025年の目標

休職者率(アブセンティーズム) 注2.

1.7%

1.8

2%未満

WLQ-J(生産性指標・プレゼンティーズム) 注3.

94.1%

94.1

94%以上

エンゲージメント指数 注4.

58%

68

60%以上

自己都合退職率(離職率)

2.2%

2.2

2.5%未満

採用数

112名

111

3年300名以上

デザイン経営研修受講者数 注5.

102名

217

3年300名以上

(注)1.各関係会社における労働慣行が異なり、流動性が高い国外の関係会社について当社と同等のレベルで採用数や離職率を管理することが困難であるため、当社単体の目標及び実績を記載しています。

2.年度内にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上年休、欠勤、休職による休業した労働者。

3.経産省推奨する5つの評価指標のひとつ。全25問が4つの尺度(「時間管理」、「身体活動」、「集中力・対人関係」、「仕事の結果」)で構成。質問結果から生産性を図る指標。100%が最高値。

4.当社従業員意識調査「エンゲージメント」関連設問における「好意的回答」の割合。なお、2023年度は実施していないため、2022年度のスコアを記載している。

5.中期経営計画「VISION2025」の取り組みとしてデザイン経営の浸透を掲げ、そのエッセンスを研修化し受講している。

 

詳細は、当社ホームページの下記URL(ESGデータ)を参照ください。また、女性管理職比率、男性育児休業等取得率、男女間賃金格差については、「第1 企業の状況 5.従業員の状況」に記載しています。

 

参考:https://www.jvckenwood.com/jp/sustainability/esgdata.html

 

3【事業等のリスク】

当社グループに関するリスクのうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載します。ただし、これらの記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。当社グループの事業、業績及び財務状況は、係るリスク要因のいずれによっても著しい悪影響を受ける可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

<当社グループにおけるリスク管理体制>

当社グループでは、リスクを「事業計画の達成を阻害する可能性があるもの」と捉え、全世界で事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、影響及び損害の最小化を図るとともに、これらを機会として活かすための体制を整備しています。全社的な視点でリスクマネジメントを統括・推進する役員を置き、配下に各事業分野、グループ会社責任者を配置し、リスク管理担当部門を事務局としてリスクマネジメントプロセスに基づいて各職場が主体的に直面し得るリスクを定期的に洗い出し、リスクの事前把握と、発現した際の迅速な対応含め施策を進めています。

また、2023年度よりTCFD提言に沿った気候変動リスクへの取り組みを推進するため、リスク管理体制を強化しており、気候変動問題に起因する移行リスク※1、物理的リスク※2は、一般的なリスクとは別に分類した上で、重要度評価を行い、他のリスクと統合した形で管理しています。

※1 低炭素社会に移行する際に発生するリスク

※2 気候変動による物理的変化によって発生するリスク

気候変動に関するリスク管理体制の詳細につきましては、上記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 1.気候変動への対応 (2)リスク管理」を参照ください。

 

<当社グループにおけるリスクマネジメントプロセス>

・当社グループの全部門を対象に毎年リスクサーベイランスを行い、各事業部、地域、グループ会社において事業の現場で直面するリスクを洗い出して「事業拠点リスク」と位置付けて、影響度・緊急性・発生頻度及び対応状況を踏まえてリスク評価するとともに対策を策定し実行、施策進捗をモニタリングし改善するサイクルを、それぞれの部門において実施

・最高経営責任者(CEO:Chief Executive Officer)が主宰し、リスク管理担当役員を議長、議長により指名された本社部門長及び各事業分野の担当役員を構成員として設置される全社リスク管理会議において、各事業部・地域により洗い出された「事業拠点リスク」と経営課題・事業課題を踏まえ、経営への影響度や緊急性、インシデント発生状況等を勘案して抽出したリスク課題を「最優先で取り組むべきグローバル重要リスク」と位置付けてリスク解決に向けた施策を策定し、経営層レベルによる全社的視点での取り組みとして当該リスク管掌担当役員を対応推進責任者に指名

・対応推進責任者は、連結会計年度の事業計画の達成へ向けて、グローバル重要リスクに対する施策を各事業部・地域に落とし込んで改善するサイクルを実施し、進捗をモニタリング

 

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(1)事業環境の変化等にともなうリスク

① 原材料等の調達の外部依存について

当社グループ製品の開発・製造活動において、外部より十分な品質の原材料、部品、機器、ソフトウエア、サービス等について競争力を有するコストでタイムリーに必要なだけ入手することは重要です。当社グループにおいては外部の部品開発業者、生産業者、部品供給業者、製品開発業者、ソフトウエア開発業者等からの購入、生産委託、又は共同開発等により、外部業者に対して一定程度以上の依存をしています。したがって、外部業者との関係悪化、外部業者自身の経営問題、外部業者の自然災害や事故等の罹災、パンデミック等によるグローバルな社会環境・事業環境の変化等様々な要因での供給の遅滞や停止や当社グループ製品に関する開発の遅滞や停止等が発生した場合、製品開発・製造活動に支障が生じ、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、ロシア・ウクライナイ紛争の継続・長期化に加え、中東情勢、台湾情勢、米中間における貿易摩擦や先端技術を巡る輸出規制、制裁関税措置の応酬など、国際的な政治・経済の不確実性が高まる中で、当社グループが間接的に依存するサプライチェーン上のリスクが拡大しております。とりわけ、特定地域や供給元に依存している半導体、電子部品、金属系材料等の一部品目については、調達制約や納期遅延、価格高騰のリスクが引き続き存在します。関税影響の軽減を図るために生産場所を他の国に移しても当該品目の輸出規制が行われると、同様のリスクを避けられない可能性があります。また、国際的なエネルギー価格の高騰、為替相場の急激な変動、港湾混雑・輸送コスト上昇等の物流リスクも継続しており、これらが当社グループの製品開発・製造活動に直接的または間接的に影響を及ぼす可能性があります。更に、主要部分の一部にトレンドではない半導体を使用しているセーフティー&セキュリティ分野においては、製造元の歩留まり悪化、生産設備の故障、撤退等に起因した当社製品の生産停止リスク及び特定供給元の依存リスクが他分野よりも高く、当社グループは、主要サプライヤーとの連携のもと、原材料・部材の供給に関する状況の早期把握に努め、調達面でのリスク低減と供給安定の確保に取り組んでおりますが、これらの対策が常に有効に機能する保証はありません。

 

当該リスクに対し、外部業者との友好な取引関係の確立・維持に努めることは当然ながら、開発のバックアップや調達の停止リスク回避を考慮した取引先の複数確保、BCP在庫の適正保有、汎用部品の優先採用、商社活用による在庫確保等の対策を打ち、急激なコストの上昇や、当社グループの国内・海外の生産工場における製造活動の停止等が起きないように対策を講じています。以上のような多層的な調達リスク対策を通じて、本会計年度では一定の安定調達を実現していますが、部品の安定供給や価格動向等については依然として不確実性をともなう状況にあり、これらの施策を講じていたとしても、当社グループが想定する規模や期間を上回る外部事業者側の事情や事業環境等の変化(悪化)があったような場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 物流リスクについて

当社グループ製品の生産・販売活動の多くは日本国外で行われており、物流活動もグローバルに展開されています。各国・各地域の物流上の問題が当社グループのグローバルサプライチェーン全体に波及し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループはアジア地域での生産が多く、その拠点からグローバルに供給を行っています。新型コロナウイルスのパンデミック後における欧米を中心とした経済活動の再開により出荷物量は回復してきていますが、一方でイスラエル・パレスチナ紛争の影響で、輸送ルートの変更を余儀なくされ、物流リードタイムの長期化・物流コストが上昇する場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクの発現に対し、販売への影響を低減させるために、販売拠点での在庫水準や搬送手段の見直しを行い、供給量の安定化を図る等の施策を進めています。

一方で、日本国内での当社グループ製品の生産・販売にともなう物流活動では、2024年4月からの働き方改革関連法の施行(いわゆる「2024年問題」)と昨今の人件費や燃料コスト等の高騰を受け、当社グループにおいても物流コストの上昇と輸送能力の低下が生じることが予測されています。加えて、2025年1月の米国政権交代にともなう関税に関する施策が米中間の物量低下や国際物流市況の乱れを起こしかねない状況となっています。これらは、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、製品総原価の見直しにより上昇する輸送コストの吸収を目指すとともに、輸送能力の低下に応じ、出荷頻度の見直しを行い、供給量の安定化を図る等の施策により、販売への影響が及ぶ可能性を低減しています。

 

③ サプライチェーンリスクについて

当社グループ製品のサプライチェーンシステムにおいては多くの取引先がステークホルダーとして存在していますが、これらのそれぞれの取引先での社会的責任の遂行状況は、当社グループ製品のサプライチェーンシステム自体が社会的責任を果たしているかに直結します。取引先で生じた問題が当社グループのグローバルサプライチェーン全体に波及し、当社グループが社会的責任を果たせなくなる結果として、当社グループの事業、業績、財務状況及び社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、人権や環境に配慮した健全なサプライチェーンの構築を目的として、サプライヤー向けSAQ(Self Assessment Questionnaire)による実態調査を実施し、取引先に調達方針、 CSR 調達ガイドラインへの理解と実行を要請しています。その活動状況についてはサプライヤーミーティング、SAQ等を通じて定期的に検証・共有し、社会的責任を果たす取り組みを推進します。

 

④ 経済状況等の変化によるリスクについて

当社グループの製品・サービスに対する需要は、その販売国又は地域の経済状況の影響を受けるため、当該市場における景気後退にともなう需要の減少が、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。個人顧客を主要な購買層とするものについては、個人顧客のライフスタイルや嗜好の変化、可処分所得の増減等により販売数量が左右されやすい性質を持っています。これら個人向け製品の販売動向は、その販売地域における経済状況、景気動向等、個人消費に影響を与える諸要因によって大きく変動する傾向があり、これらの諸要因が当社グループにとって有利に作用しない場合、それに対応した当社グループの事業改革が想定どおりに功を奏しない場合や、これらの悪化要因に対応した製品を適時に開発、製造して市場に提供できない場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、各国の政府・官公庁等の公的機関や企業等の法人顧客を主要な購買層とするものについても、経済状況、景気動向、顧客が所在する国・地域の政治・財政動向等によって販売量が左右され、それによって当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクは、発生の時期・内容・規模・地域等が不明確であり、事前に影響の測定が困難なものですが、当社グループは当社グループの予測からの変化を常にモニタリングし、日々のオペレーション対応からコンティンジェンシープランの実施まで、リスク規模に合わせた迅速でフレキシブルな対応をリスクマネジメントプランに則り対応し、リスクの回避又は影響の最小化を図っています。ただし、国際紛争やパンデミックの長期化・拡大等により、当社グループが想定する規模や期間を上回る経済環境の変化(悪化)があった場合は、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 為替相場及び金利の変動による影響について

当社グループの売上収益に占める海外向の割合は5割以上あり、拠点及び取引先は世界各国にわたっています。外貨建てで取引されている海外での製品・サービスのコスト及び価格は為替相場の変動により影響を受け、加えて連結財務諸表作成にあたり海外の現地通貨建ての資産・負債等が円換算されることから為替相場の変動による影響を受けるため、為替相場の変動が当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。一般的に、当社グループの為替感応は、ユーロに対する円高で業績は悪化し、米ドルに対する円高で業績は良化します。また、金利の変動は、支払利息、受取利息あるいは金融資産及び負債の価値に影響を与え、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、主要通貨での予定取引及び資産・負債の一部に対して為替予約等ヘッジ取引を実施することにより、急激な為替レートの変動リスクの軽減に努めています。また、一部の通貨においては各国規制等によりヘッジできていない取引及び債権・債務が存在するものの、当社グループの経営成績等の全体に及ぼす影響は限定的になっています。しかしながら、主要通貨において当社グループの想定を超える長期的な為替相場の不利な変動が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 顧客の資金状況・財務状況について

当社グループは、代金後払いの条件で顧客へ製品等の販売を行っている取引があります。当社グループが多額の営業債権を有する顧客の財務状況が悪化し、期限どおりの支払いを得られない場合、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し当社グループは、取引先毎の財務状況調査により財務体力に応じた与信限度の設定、L/C取引、取引信用保険の付保等の対応を行いリスクの回避に努めています。

 

 

⑦ 業界動向の変化

当社グループが事業を営む業界は、ネットワーク化やブロードバンド化等を含む科学・技術の進歩やビジネスの進化による製品・サービスの融合により、同一業界内にとどまらず、隣接する業界やその他の業界との垣根を超えた新たな市場開拓と機会を秘めています。そのような状況下、競合他社による組織再編やM&Aにより、同一業界内又は隣接する業界やその他の業界における企業間での地位や競争の構造が変化し、あるいは業界内でのビジネススキームの変化や標準規格の変更等が生じることにより、当社グループが規模のメリット、技術開発力、価格競争力、ブランド力、資金調達能力、原材料調達、生産地、販路、持続可能性の評価等において劣後することとなり、業界における現在の地位を維持できなくなる可能性があります。あるいは、当社グループが業界再編の当事者となることにより、当社グループの経営の柔軟性や自由度が失われる可能性があります。このような業界再編等により競争の構図が刷新されるような状況においては、当社グループが当社グループ製品の業界における現在の地位をその後も維持し発展していくことができるとの保証は無く、係る場合に当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループは、業界他社動向を常に注視しつつ、他社にない製品・サービスの開発を推進し、業界の変化に左右されない地位の維持、拡大に努めています。

 

⑧ 市場における競争の激化

当社グループ製品の市場においては、国際的な大企業から小規模ながら急成長中の新興企業まで、さまざまなタイプの企業が激しい競争を展開しています。それらの競合他社のうち当社グループよりも大きな財務、技術及びマーケティング資源を有し得る企業が、市場におけるシェアの拡大や寡占化を実現する目的で大規模な投資を行うことや、商品の低価格化を進めることがあります。このような市場環境において、当社グループがそれらの競合他社との競争に勝つことができない場合、当社グループ製品の需要が減少し、当社グループ製品の価格が下落したり、当社グループのブランド価値が下落したりする恐れや、当社グループが優位にある市場の規模が縮小したりあるいは収益性が悪化したりする恐れがあり、それらの結果、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループはコスト削減、高付加価値商品の開発に取り組んでいますが、市場における激しい競争において当社グループのそうした企業努力を上回る価格下落圧力が生じ、当社グループにとって十分に利益を確保できる製品価格の設定を困難にし、当社グループの利益の維持に深刻な影響を与える可能性があり、係る影響は製品の需要が低迷した場合に特に顕著となります。

当該リスクに対し、当社グループは、各事業分野において、企業方針に基づき、顧客価値創造を目指した高付加価値な製品及びサービスの企画を継続し、競合優位な企業を目指します。

 

⑨ 技術革新における競争について

技術革新が重要な競争要因になっているなかで、当社グループとして絶えず研究開発活動への資金・資源を投入し続ける必要があります。当社グループの新たな製品開発に必要、又は市場から要求される必要な技術は常に高度化していると共に、近年では、持続可能な社会実現への期待も増してきており、技術の高度化や持続可能な社会への貢献に伴いそれらの対応に要する資金が増加していく可能性がありますが、当社グループがそのような研究開発活動のために十分な資金・資源の注入を将来にわたって安定的に行うことができるとの保証はなく、また、当社グループが将来の市場ニーズに応える新技術や社会的責任を正しく予想して研究開発に取り組み、商品化した際には当社グループの業績向上に確実に寄与するとの保証もありません。更には、予測を超える広範・大規模な技術革新や社会的要請に急激な変化が起こった場合、研究開発活動等に十分な資金・資源の投入ができない場合及び有能かつ熟練した研究開発要員を確保できず、あるいは外部に流出してしまった場合には、十分な商品化開発が進まず、売上収益を確保できないリスクがあります。また、構成部品の市況変化による高騰等から総原価が増大した場合、当社グループの業績・財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。

当該リスクに対し、当社グループは、リスクを最小化するために、変化する市場環境、社会的要請、技術トレンド、構成部品及び第三者ソリューションの市況を含めた技術開発・製品化ロードマップを適時改訂するとともに、技術者の人財能力育成も計画的なプログラムを実施し、発生し得るリスクを早期に察知・可視化するモニタリング活動を重要視して事業活動を展開していきます。

 

 

⑩ 国際的な事業活動におけるリスク

当社グループは海外で幅広くビジネスを展開しており、現地における労使関係、宗教や文化、規制の相違、政情・経済上の不安、商慣習等に関する障害や、予期しない会計基準や法規制の導入、持続可能性の評価要件の違い、税務当局との見解の相違等により、コスト、税負担のほか、事業活動上の様々な障害や制約に晒される可能性があります。また、国内外での製品輸入通関申告手続について適切な関税分類に従って実施していますが、輸出国の通関当局との見解の相違により、通関申告への修正を後日当局より要請される可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループは、各国関連子会社、地域経済団体、当局、弁護士、コンサルタント等との間で情報共有又は連携し、また、AEO特定輸出申告制度に係る法令遵守規則を規程化の上、安全管理と法令遵守に関する従業員研修を定期的に実施する等、事前の必要な対策とリスクが顕在化した際の影響の最小化に向けた準備・対応を行うとともに、持続可能な社会の実現に向けてグループ一体となって取り組んでいきます。

 

(2)事業オペレーションにともなうリスク

① 情報セキュリティリスクについて

当社グループは、お客様の個人情報、取引情報及びサプライチェーンパートナー企業との間で交換される重要な機密情報を扱っています。このような情報が、標的型サイバー攻撃等の悪意ある行為や不注意により外部に流出するリスクは常に存在します。さらに、当社グループの商品ラインナップには、外部デバイスやメディアとネットワークを経由し連携する商品やサービスが含まれています。これらの商品やサービスには、サイバー攻撃等による誤動作を引き起こすセーフティリスク、デバイス操作情報の流出によるセキュリティリスク、そして接続しているシステムや製品が正常に処理できないリライアビリティリスク等が存在します。このようなリスクが現実となった場合、顧客や関係者への損害賠償、対応に必要なコスト、さらには当社グループ及びサービスに対する社会的信頼の損失といった事象が起こり得ます。これらは、当社グループの事業、業績、そして財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

そこで、当社グループは、このような情報の取り扱いに際して、その安全性を確保することを最優先事項と、情報セキュリティの維持は、当社事業の継続性及び社会的信頼の確保に直接関わる重要な要素と位置づけています。

現在、情報セキュリティの3要素(機密性・完全性・可用性)の維持を目標として、CISO(Chief Information Security Officer)指導のもと、JK-CIRT/CC(JVCKENWOOD Central Incident Response Team /Coordination Center)を中心に、情報セキュリティインシデント対応チームの体制を構築しています。体制は各SIRT(5つのカテゴリー(※)で構成される情報セキュリティインシデント対応チーム)を全社に機能配置し、情報セキュリティインシデントへの迅速な対応にあたっています。これら各SIRTは本社部門や事業関連部門と連携し、社内の通信インフラ、開発ツール、サーバ、クラウド、ポータブル記録デバイスに至るまで、製品及びサービスのセキュリティ体制の強化を進めています。

加えて、社内規程の定期見直し、セキュリティポリシーの遵守を通じて、継続的な情報セキュリティ管理体制の見直しと改善に努めています。また、一般的な情報セキュリティ教育とは別に、技術部門に対する専門性の高いセキュリティ技術講習を実施し、全社的な情報セキュリティリテラシーと技術力向上を図っています。

今年度の情報セキュリティインシデントは人為的な事案が多く発生しました。新たに実施しているセキュリティ施策への理解と重要性を再度セキュリティ教育の一環としてリテラシー向上を目指します。また2024年2月に発生した生産拠点でのインシデントを受け、CSIRT/FSIRT協力し生産拠点のセキュリティ管理見直しと改善を推進しています。

引き続き、お客様とサプライチェーンパートナー企業様からの信頼を基盤とし、これら情報セキュリティの維持と向上に取り組み、安全かつ信頼性の高いサービス提供に尽力していきます。

(※)5つのカテゴリ:C(コンピュータ)、P(プロダクト)、F(ファクトリー)、S(サービス)、Pr(プロキュアメント)

 

② ITシステムの安定的な稼働ができないリスクについて

製造、販売などの事業運営を司る基幹ITシステムが安定的に稼働できない場合に、当社グループの事業、業績、そして財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

システム障害、データ損失に対しては、データセンターやSaaS(Software as a Service)システムの高度なセキュリティ対策と冗長化されたインフラストラクチャによりシステムのダウンタイムを最小限に抑えるとともに、定期的なデータバックアップより業務継続性の維持を推進しています。また、サイバー攻撃に対しては、ゼロトラストを基本概念としたネットワークの境界を超えたセキュリティ対策の強化によりITシステムの安定的な稼働を推進しています。

これらの対策を確実に実行するために、大規模災害やパンデミック、サイバー攻撃などの緊急事態に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、訓練を通じて定期的な見直しを行っています。

 

 

③ 品質問題の発生について

当社グループは、様々な製品を製造・販売しており、その製品の特性上、製品に欠陥が発生し、欠陥に起因する損害(間接損害を含む)が発生する可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループは、企画・開発・生産の各工程において、品質を重視した各プロセスの基準遵守と有効なフェイズゲートを設け、品質に問題が生じぬよう徹底したチェックを行っています。しかし、それでも品質問題が起こる可能性はゼロではないため、製造物賠償責任保険へ加入しています。併せて、重大製品事故(PL(Product Liability:製造物責任)法問題含む)を含む品質問題防止にむけた全社の取り組みとして、1)新機種の製品安全評価、2)重要安全部品管理強化、3)製品安全マネジメント体制の維持・強化(PL情報のデータベース化及びオペレーション明確化と迅速化)、4)品質向上・安全性確保に向けた設計及び評価ノウハウの全社共有の推進をしています。また、上記仕組みの構築だけでなく品質月間等のイベント実施や定期的に社内外の品質情報を社内展開する等、従業員の品質に対する意識の向上を図っています。

 

しかしながら、このような努力をもってしても、当社グループの製品の欠陥を完全に防止できるものではなく、また、製造物責任の範囲が当社グループの加入する製造物賠償責任保険の対象範囲を超える等、当社グループの想定を超える場合には、賠償責任の可能性や、品質対策費用の発生、更には当社グループのイメージ・評価の低下、ブランド価値の低下等を引き起こし、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 人材の確保、喪失、高齢化

当社グループの全ての事業活動の成果の多くは人材に大きく依存しています。特に高度な専門知識や経験を持った有能かつ熟練した従業員が賃金水準、待遇の相対的低下、労働環境の悪化等の事情によって当社グループ外に流出した場合や、人員構成比率の高い50代の従業員が退職した後の人材補充が適正に行われない場合や省人化による生産性向上が十分でない場合には、当社グループの将来の事業活動に悪影響を与え、技術や業務ノウハウの伝承が円滑に行われず、企業競争力の低下を招く等、事業の持続可能性に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループでは、「VISION2025」で掲げている、経営戦略と人材戦略の連動やエンゲージメントの向上を柱とした人的資本経営の実践にむけて、人材の多様性(ダイバーシティ)を尊重し、異なる考え方を受け入れる(インクルージョン)、ダイバーシティ&インクルージョンの推進とそれを可能にする制度作りに積極的に取り組んでいます。多様な発想や価値観を持った人々が互いを尊重し、刺激し合うことで、革新的なアイデアが生みだされ、それにより世界中のお客さまの多様なニーズに応えることができると考えます。また、当社グループは「VISION2025」の達成に向けて「新卒採用の拡充」「中途採用の多角的実施」等により多様な人材を確保するとともに、「JVCKENWOOD CAREER DESIGN]というプログラムを立ち上げ、従業員のキャリアパスの見える化やキャリア相談機会の創出に力を入れることで従業員のキャリア開発を促進し、テレワークと出社を効率よく行うハイブリッドワークを中心とした働き方改革との相乗効果で、従業員の定着と年齢構成の適正化、リバランスを進め、企業競争力の維持、事業継承に対するリスク低減に取り組んでいます。

 

⑤ M&A・他社との提携の成否

当社グループは、新製品・サービスの提供や、企業価値の向上、新たな事業展開を目的とし、他社とのパートナーシップが必要と判断した場合には、M&A、業務・資本提携や合弁会社設立等を行っています。実施に当たっては、リスク分析、当社グループとの相乗効果の可能性等十分に検討を行い進めていますが、市場や競合関係、技術イノベーションの変化等において著しい変化があった場合、当初想定した成果を出すことができず、投資額を回収できなくなる可能性があります。また、当社グループがこれらのパートナーを十分にコントロール又はモニタリングできない場合等、事業展開の過程で相手先が当社グループの利益に反する決定を行う可能性があり、加えて、これらのパートナーが事業戦略を変更した場合等には、当社グループは提携関係を維持することが困難になる可能性があります。その場合には当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 持分法適用関連会社の業績・財務状況

当社グループは、持分法適用関連会社の株式を保有しています。係る関連会社は通常、自らの方針のもとで、経営を行っており、こうした関連会社が損失を計上する場合には、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)財務・会計に関するリスク

① 有利子負債に付された財務制限条項を維持できない場合

当社グループの有利子負債に係るコミットメントライン契約及びターム・ローン契約には財務制限条項を含む期限前弁済条項が付されており、これらの条件が維持できない場合には、期限前弁済を行わなければならない可能性があり、その場合には当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループは、キャッシュ・マネージメント・システム等によるグループ資金の効率化を図り、有利子負債を圧縮するとともに、主要取引金融機関との関係強化に努めています。

 

(4)法的規制に関するリスク

① 法的規制

当社グループは、日本及び諸外国・地域の法規制に従って事業を行っています。法規制には、商取引、独占禁止、知的財産権、製造物責任、環境保護、消費者保護、個人情報保護、税制、会計制度、金融取引、内部統制等に加え、事業及び投資を行うために必要とされる政府の許認可、電気通信事業及び電気製品の安全性に関する法規制、国の安全保障に関する法規制及び輸出入に関する法規制等があります。今後こうした法的規制がより厳格となったり、技術的観点や経済的観点等から当社グループがこれらの法的規制に従うことが困難となった場合には、事業活動が制限を受けたり、法規制等を遵守するための費用が増加するリスクがあります。

当該リスクに対し、当社グループは、事業活動に纏わる全ての関連法規に基づき、それらに則ったプロセスや結果となっているか厳重なチェック体制を維持するとともに、現場管理者向け研修等を定期的に実施して、その重要性を現場に浸透させ、対応を進めることに努めています。

 

② コンプライアンス

当社グループは、全世界で業務を遂行するにあたり、各国のさまざまな法令、諸規制及び社内規則の適用を受けており、これらを遵守すべく、役員・従業員へのコンプライアンス意識の向上と体制構築に努めています。しかしながら、これらに対する違反等が発生する可能性は皆無と言えず、発生した場合には、社会的信用を失い、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループは、JVCケンウッドグループ コンプライアンス行動基準及び諸規程を整備するとともに、それらの実効性を確保するために適宜見直しを行っています。さらに、運用状況のモニタリング、コンプライアンス研修等を通じた規程の制定/改定等についての教育・指導を行っています。

 

③ 知的財産権

現在、他社から使用許諾を受けている特許等の知的財産権について、将来使用できなくなったり、条件が不利に変更されたりすることで、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、意図せず第三者の知的財産権を侵害することにより、訴訟その他解決に係る費用の増加、製品差し止めによる事業損失、損害賠償責任、当社グループの評判、ブランド価値の低下を引き起こすリスクがあります。

当該リスクに対し、当社グループは、本社知的財産部が中心となり、他社特許権を侵害しない管理体制の構築・運用等全社的に知的財産リスクの回避に取り組むとともに、強化に努めています。

 

④ 過重労働、安全配慮義務違反

過重労働や安全配慮義務違反により、人財喪失や損害賠償責任等の直接的な損害が発生しうることに加え、当社グループに対する社会的評価の低下やブランドイメージ悪化につながるリスクがあります。

当該リスクに対し、当社は日々の残業労働時間確認に加え、人事部門においても残業労働時間の全部門確認を行い、経営層との状況共有や対策実施を行っています。また、年休取得やストレスチェックの実施により従業員の健康維持に注力した取り組みを組織的に行っています。加えて、テレワークが増える昨今の状況を考慮し、PCログの取得や休日、深夜早朝時間帯における就労申請外勤務者のPCロック等のIT施策を加え就労状況の見える化に取り組んでいます。

 

⑤ 環境保護について

当社グループは、気候変動、大気汚染、水質汚濁、有害物質の使用制限・除去、廃棄物処理、製品リサイクル、及び土壌・地下水汚染等に関する国内外におけるさまざまな環境関連法令の遵守義務が生じており、これらの対応等に関連する費用負担や事故、法令抵触事項等が発生した場合の賠償により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。またRoHS(電気・電子機器における特定有害物質の使用規制)やREACH(化学物質の登録・評価・認可・制限・情報伝達に関するEU規則)等、環境に関する規制の見直しにより、有害物質等を除去する義務が更に追加された場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、これらの環境に関する規制への取り組みにおいて、事故等の発生により環境基準を超過して制限物質が自然環境に放出されることを、完全に防止又は軽減することを保証することはできません。また、当社グループの工場跡地等の土壌に制限物質が基準を超えて残留することによりその除去や浄化に費用が発生する可能性、あるいはそれらの工場跡地等の売却価格に影響が出る可能性を完全に無くすこともできず、これらが当社グループの社会的評価や、事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

当該リスクに対し、当社グループは、地球環境保全を念頭に適宜改正される製品及び事業所の環境関連法令への対応に努めており、必要な情報を常に収集し、当社の製品及びサービスへの対応を図っています。また、気候変動をはじめとした中長期的な視点での環境関連リスクと機会の特定を行い、当社の事業への影響とその対応について検討、開示を行っています。

 

(5)災害等に関するリスク

① 自然災害、人的災害

当社グループは、日本国内及び東南アジア・中国地区をはじめとして海外にも生産拠点を保有し、各国の営業拠点等を通じて世界中のお客様に製品を供給しています。そのため、予測が難しい自然災害(地震、津波、火災、洪水等)、感染症によるパンデミック等、又は火災や爆発、輸送機関の事故及び戦争、騒乱、騒擾等の人的災害が発生した場合には、当社グループの拠点の施設や設備又は従業員が損害を被り、事業活動が中断され、更には当社グループの拠点のみならず、部品調達先や取引先、ロジスティクスを含めて操業、就労が中断され、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対し、当社グループは、危機対応を想定した各種マニュアルを整備し、有事に備えて防災訓練・事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)訓練、安否確認訓練を実施し、日頃から役員・従業員の防災意識向上に取り組んでいます。このような当社グループ一体となった事業継続、災害からの早期復旧と、生産・出荷・サービス提供の迅速な再開など、リスク最小化に向けた事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)を進めています。

また、国内外の工場においても該当国の規制を遵守し、稼働停止による当社グループに対する影響を最小限に抑える活動を推進していますしかしながら、感染症や自然災害、人的災害の発生などに対しては、一企業グループとして最善と考えられる施策を展開した場合でも、そのリスクを完全に回避することは困難であり、当社の想定を上回る被害が生じた場合等においては、当社グループの事業、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要は以下のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

1)経営成績

当連結会計年度における当社及び連結子会社の全社売上収益は、モビリティ&テレマティクスサービス分野、セーフティ&セキュリティ分野、エンタテインメント ソリューションズ分野の3分野全てが増収となったことから、前年同期比で増収となりました。

これにより、全社事業利益以下、親会社の所有者に帰属する当期利益までの段階損益は前年同期比で大幅増益となり、過去最高益を更新しました。

なお、第3四半期連結会計期間に製品ミックスの悪化影響などを受けたセーフティ&セキュリティ分野の無線システム事業の事業利益は、当第4四半期連結会計期間には想定以上に回復しました。さらに業務用システム事業も堅調に推移したことから、セーフティ&セキュリティ分野全体の事業利益は、四半期として過去最高益を更新しました。

当連結会計年度の連結経営成績のサマリーは以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

前年同期比

増減率

売上収益

359,459

370,308

+10,849

+3.0%

事業利益

19,710

25,307

+5,597

+28.4%

営業利益

18,226

21,792

+3,565

+19.6%

税引前利益

18,245

23,490

+5,244

+28.7%

親会社の所有者に帰属する

当期利益

13,016

20,276

+7,259

+55.8%

※売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除することにより算出され、主として一時的な要因からなるその他の収益、その他の費用、為替差損益などを含みません。セグメントの業績評価は「事業利益」を使用して説明します。

 

また、当連結会計年度の決算に使用した損益為替レートは以下のとおりです。

 

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

損益為替レート

米ドル

約156円

約150円

約152円

約153円

 

ユーロ

約168円

約164円

約163円

約161円

前期(参考)

米ドル

約137円

約145円

約148円

約149円

 

ユーロ

約150円

約157円

約159円

約161円

 

* 売上収益

当連結会計年度における売上収益は、モビリティ&テレマティクスサービス分野、セーフティ&セキュリティ分野、エンタテインメント ソリューションズ分野の3分野全てで増収となったことから、前年同期比で約108億円増(3.0%増収)となる3,703億8百万円となりました。

 

*事業利益

当社は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除したものを「事業利益」としています。

当連結会計年度における事業利益は、増収効果に加えて前期に実施した構造改革効果が発現したことなどから、前年同期比で約56億円の大幅増(28.4%増益)となる253億7百万円となりました。

 

*営業利益

当連結会計年度における営業利益は、事業利益が増益となったことなどから、前年同期比で約36億円の大幅増(19.6%増益)となる217億92百万円となりました。

 

 

* 税引前利益

当連結会計年度における税引前利益は、営業利益が増益となったことに加え、持分法適用関連会社の利益が増加したことなどから、前年同期比で約52億円の大幅増(28.7%増益)となる234億90百万円となりました。

 

* 親会社の所有者に帰属する当期利益

当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益が増益となったことに加え、繰延税金資産を計上したことなどから、前年同期比で約73億円の大幅増(55.8%増益)となる202億76百万円となりました。

 

2)財政状態

*資産

資産合計は、営業債権及びその他の債権は増加しましたが、現金及び現金同等物や棚卸資産などの流動資産が減少したことなどから、前連結会計年度末比で約35億円減となる3,133億36百万円となりました。

 

*負債

負債合計は、営業債務及びその他の債務の減少に加えて、銀行借入金の返済を進めたことなどから、前連結会計年度末比で約137億円減となる1,819億37百万円となりました。

 

*資本

資本合計は、自己株式の取得による減少はありましたが、利益剰余金が約181億円増加したことなどから、前連結会計年度末比で約102億円増となる1,313億99百万円となりました。

 

なお、親会社所有者帰属持分比率は、親会社の所有者に帰属する持分合計が増加したことから、前連結会計年度末比で3.7ポイント増加し39.9%となりました。

 

② セグメントごとの売上収益及び損益

セグメントごとの売上収益及び事業利益は以下のとおりです。

(百万円)

 

 

 

 

 

セグメントの名称

2024年3月期

2025年3月期

前連結会計年度比

 

 

 

 

 

モビリティ&テレマティクス

売上収益

199,435

203,243

+3,807

サービス分野

事業利益

3,871

4,881

+1,009

セーフティ&セキュリティ分野

売上収益

93,755

100,008

+6,252

 

事業利益

16,485

18,579

+2,093

エンタテインメント

売上収益

55,978

57,936

+1,957

ソリューションズ分野

事業利益

△257

1,849

+2,106

その他

売上収益

10,289

9,120

△1,168

 

事業利益

△389

△1

+387

合計

売上収益

359,459

370,308

+10,849

 

事業利益

19,710

25,307

+5,597

 

* モビリティ&テレマティクスサービス分野

当連結会計年度におけるモビリティ&テレマティクスサービス分野の売上収益は、前年同期比で約38億円増(1.9%増収)となる2,032億43百万円、事業利益は同約10億円の大幅増(26.1%増益)となる48億81百万円となりました。

なお、事業利益には為替ヘッジによるマイナス影響として約6億円が含まれています。

(売上収益)

OEM事業は、車載用スピーカー、アンプ、アンテナ、ケーブル、レンズなど海外OEM事業の販売が好調に推移したことや、国内の用品事業が堅調に推移したことなどから、前年同期比で増収となりました。

アフターマーケット事業は、第1四半期連結会計期間に国内において自動車販売減の影響を受けたものの、中間連結会計期間以降は回復傾向となり、前年同期並みの実績となりました。

テレマティクスサービス事業は、損害保険会社向け通信型ドライブレコーダーなどのテレマティクスソリューション関連商品の販売が大幅に減少したことから、前年同期比で大幅な減収となりました。

 

(事業利益)

OEM事業が増収効果により増益となったことに加え、アフターマーケット事業が流通在庫正常化にともなう生産回復により増益となったことから、テレマティクスサービス事業の減収影響や為替ヘッジによるマイナス影響を受けたものの、モビリティ&テレマティクスサービス分野全体では、前年同期比で増益となりました。

 

* セーフティ&セキュリティ分野

当連結会計年度におけるセーフティ&セキュリティ分野の売上収益は、前年同期比で約63億円増(6.7%増収)となる1,000億8百万円、事業利益は同約21億円増(12.7%増益)となる185億79百万円となり、過去最高の売上収益及び事業利益となりました。

(売上収益)

無線システム事業は、北米の公共安全市場向け業務用無線機の販売が好調に推移したことに加え、一部出荷の前倒し影響などから、前年同期比で約76億円の増収となりました。

業務用システム事業は、医用画像表示モニターの販売が減少したことなどから、前年同期比で約13億円の減収となりました。

(事業利益)

無線システム事業は、当第4四半期連結会計期間に部品供給不足による影響を受けたものの、北米の公共安全市場向けの販売が好調に推移したことなどにより増益となり、業務用システム事業も固定費削減効果の発現などにより損益が改善したことなどから、セーフティ&セキュリティ分野全体でも、前年同期比で増益となりました。

 

* エンタテインメント ソリューションズ分野

当連結会計年度におけるエンタテインメント ソリューションズ分野の売上収益は、前年同期比で約20億円増(3.5%増収)となる579億36百万円、事業利益は同約21億円の大幅増となる18億49百万円となり、黒字に転換しました。

(売上収益)

メディア事業は、プロジェクター、ポータブル電源などの販売が堅調に推移したことなどから、前年同期比で約20億円の増収となりました。

エンタテインメント事業は、有力アーティストの新譜などコンテンツビジネスの販売が堅調に推移したことなどから、前期に引き続き堅調な売上収益を確保しました。

(事業利益)

メディア事業の業務用カメラ事業において、当第4四半期連結会計期間に追加で部材の損失引当約5億円を計上したものの、前期に実施した構造改革効果に加え、固定費削減効果が発現したこと及びエンタテインメント事業が前期に引き続き堅調な利益を稼ぎ増益となったことなどから、エンタテインメント ソリューションズ分野全体では前年同期比で大幅な増益となり、黒字に転換しました。

 

③ キャッシュ・フロー

* 営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において営業活動により増加した資金は314億52百万円となり、前年同期比で約17億円収入が減少しました。主な要因は、税引前利益は増加しましたが、運転資金が増加したことなどによるものです。

 

* 投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において投資活動により減少した資金は215億45百万円となり、前年同期比で約55億円支出が増加しました。主な要因は、有形固定資産の売却による収入は増加したものの、設備投資による支出が増加したことなどによるものです。

 

* 財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において財務活動により減少した資金は187億93百万円となり、前年同期比で約6億円支出が減少しました。主な要因は、銀行借入金の返済は進めたものの、自己株式の取得による支出が減少したことなどによるものです。

 

なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年同期比で約93億円減となる485億97百万円となりました。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

* 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

モビリティ&テレマティクスサービス分野

200,670

3.46

セーフティ&セキュリティ分野

98,698

0.09

エンタテインメント ソリューションズ分野

58,375

7.61

その他

9,120

△11.36

合計

366,864

2.73

(注)金額は販売価格で計上しており、消費税等は含まれていません。

 

* 受注実績

当社グループの製品のうち、モビリティ&テレマティクスサービス分野、セーフティ&セキュリティ分野、エンタテインメント ソリューションズ分野、その他については原則として見込生産によっています。ただし、エンタテインメント ソリューションズ分野におけるエンタテインメント事業の一部は受注生産によっていますが、これらは受注と同時に生産・引渡しを行うため受注高と販売高はほぼ同額です。

 

* 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②セグメントごとの売上収益及び損益」に、セグメントごとに記載しています。なお、主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が100分の10以上を占める相手先がないため、記載を省略しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討事項

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討事項は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。詳細につきましては、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1) 経営成績

当連結会計年度の経営成績は、以下のとおりとなりました。なお、当社グループは、2024年10月31日付で2025年3月期通期連結業績予想の修正を行っています。

(百万円)

 

(参考)

2025年3月期
通期連結業績予想
(2024年4月26日付
期初業績予想)

2025年3月期
通期連結業績予想

(2025年10月31日付
修正業績予想)

2025年3月期
通期連結実績

(参考)

2025年3月期

通期連結業績予想比

(2025年4月26日付
期初業績予想比)

2025年3月期
通期連結業績予想比

(2025年10月31日付

修正業績予想比)

売上収益

362,000

364,000

370,308

102.3%

101.7%

営業利益

18,200

22,000

21,792

119.7%

99.1%

税引前利益

18,000

23,000

23,490

130.5%

102.1%

親会社の所有者に帰属する
当期利益

12,500

17,000

20,276

162.2%

119.3%

 

当連結会計年度の経営成績は、モビリティ&テレマティクスサービス分野、セーフティ&セキュリティ分野、エンタテインメント ソリューションズ分野の3分野全てが増収となったことから、売上収益は3,703億8百万円、営業利益は217億92百万円、税引前利益は234億90百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は202億76百万円となり、全社営業利益以下、親会社の所有者に帰属する当期利益までの段階損益は、過去最高益を更新しました。

 

 

2) 財政状態

財政状態の分析の詳細は、「(1)経営成績等の状況の概況 ①財政状態及び経営成績の概要 2)財政状態」に記載しています。

 

3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

*キャッシュ・フロー

当社は、円滑な事業活動に必要な資金について、主として銀行等金融機関から借入金により資金調達を行っており、借入金の年度別返済額を平準化することで借り換えリスクの低減を図っています。

また、一時的な資金需要の増加にも対応できるように銀行とコミットメントライン契約を締結し、十分な流動性を確保しています。

なお、当社は、営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動で支出されたキャッシュ・フローの合計をフリーキャッシュ・フローとして定義し、当社はこの指標を戦略的投資又は借入金返済に充当可能な資金、或いは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、有用な指標と考えており、以下のとおりフリーキャッシュ・フローを算出しています。

 

また、これらの分析の詳細は、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。

(百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

営業活動によるキャッシュ・フロー

33,172

31,452

投資活動によるキャッシュ・フロー

△16,062

△21,545

フリーキャッシュ・フロー

17,110

9,906

 

*資金需要

当社の運転資金のうち主なものは、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び宣伝販促費等のマーケティング費用です。当社グループの研究開発費は営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めています。

 

*財務政策

当社は、株主への安定的な利益還元を図っていくとともに、今後の成長に向けた投資、財務基盤の強化を図り、大きな成長を実現する事業の構築を推進して行き、その時々の経営状況に鑑みて、株主還元、有利子負債の返済、投融資に配分して資金を使用します。

この2年間での資金配分は以下のとおりとなっています。

(百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

株主還元

8,963

7,066

投融資

22,402

26,460

有利子負債の返済

10,283

11,155

※1. 投融資は、投資キャッシュ・フローから定期預金の増減、資産売却及び分配による収入を除外した額。

※2. 有利子負債は、借入金純増減額の減少額とリース負債の返済額の合計額で、合計額がマイナスの場合は「-」(増加(収入)となる。)となります。

 

4) 経営成績に重要な影響を与える要因についての分析

当社グループにおいては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載した各種の要因が、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5【重要な契約等】

1.技術受入契約

当社グループが提供を受けている主な技術受入契約は以下のとおりです。

契約会社名

相手先

国名

技術受入契約の内容

契約期間

株式会社

JVCケンウッド

Via Licensing Alliance, LLC

米国

AVC/H.264 エンコーダー/デコーダー等に関する特許実施権

2010年1月から

特許権満了日まで

 

2.技術援助を与えている契約

当社グループが提供している主な技術援助に係る契約は以下のとおりです。

契約会社名

相手先

国名

技術援助契約の内容

契約期間

株式会社

JVCケンウッド

アルダージ株式会社

日本

ARIB規格関連製品に関する特許再実施権の許諾

2007年1月から

最終特許満了日まで

株式会社

JVCケンウッド

One-Blue, LLC

米国

BD&DVD規格関連製品に関する特許再実施権の許諾

2011年9月から

最終特許満了日まで

株式会社

JVCケンウッド

Access Advance, LLC

米国

HEVC規格関連製品に関する特許再実施権の許諾

2019年9月から

最終特許満了日まで

 

3.ローン契約に付される財務上の特約

当社のローン契約に関する内容等は次のとおりです。

 

財務上の特約の内容

A. 各3月末(一部各9月末も追加)の「連結」の「親会社の所有者に帰属する持分合計からその他資本の構成要素を除外した金額」を前年度3月末の75%以上

B. 各3月末の「連結」の「事業利益」が「連続」して損失とならない

契約先

契約内容

契約日

契約満了日

元本総額

(百万円)

財務上の特約の内容

地方銀行

シンジケートローン

2020年8月27日

2025年8月31日

625

A、B

都市銀行

シンジケートローン

2021年3月26日

2026年3月31日

3,600

A、B

その他

タームローン

2021年9月27日

2026年9月30日

5,000

A、B

その他

タームローン

2021年12月27日

2026年12月30日

3,080

A、B

地方銀行

相対借入

2022年3月31日

2027年3月31日

1,000

B

都市銀行

シンジケートローン

2022年9月27日

2027年9月30日

7,000

A、B

都市銀行

相対借入

2023年2月17日

2028年3月31日

1,800

A、B

地方銀行

相対借入

2023年12月4日

2028年12月31日

1,875

B

都市銀行

シンジケートローン

2024年1月26日

2029年1月31日

2,400

A、B

(注)当該全債務に付された担保はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、当社のモビリティ&テレマティクスサービス分野、セーフティ&セキュリティ分野、エンタテインメント ソリューションズ分野の各事業分野及びその他分野に含まれる未来創造研究所、イノベーションデザインセンターによって行われています。

当社グループの当連結会計年度における基礎技術の研究開発に係る費用は17億円、量産設計に係る費用は174億円、総額は191億円です。

 

*モビリティ&テレマティクスサービス分野

市販国内ナビゲーションでは、スマートフォン機能をナビゲーション本体ディスプレイで使える「Apple CarPlay」と「Android AutoTM」に対応しました。ワイヤレスでも接続でき、スマートフォンのさまざまな機能との連携が可能となり、音声だけで操作できる iPhone の Siri や Google アシスタント にも対応するモデルを商品化しました。市販ドライブレコーダーでは当社初となる日本製ドライブレコーダー前後2カメラモデル「DRV-G50W」、1カメラモデル「DRV-R30S」を商品化しました。日本製・3年保証の安心感に加えて2.7V型の大型ディスプレイを搭載し商品力を向上しています。また関連商品として、大手メーカーでは初となる市販電子ミラー 「LZ-X20EM」を商品化しました。59fpsの高フレームレートに対応することで大幅に視認性を向上させています。国内用品ドライブレコーダーでは、国内自動車メーカーの高い客先要求仕様に対応した本体・カメラ一体型モデルや前後カメラと本体が分離したモデルを開発しました。

当連結会計年度の主な研究開発活動及び製品開発の成果は、以下のとおりです。

 

(1)大画面9V型の高精細HDパネルを搭載し、ハイレゾ音源再生に対応したAVナビゲーションシステム「彩速ナビ」の最上位シリーズの2024年モデルとして「MDV-M911HDF」(フローティングモデル)、「MDV-M911HDL」(インダッシュモデル)を開発、商品化しました。ワイヤレス接続により、スマートフォンの機能をナビゲーション本体ディスプレイで使える「Apple CarPlay」及び「Android AutoTM」に対応し、スマートフォンの機能と連携が可能となりました。さらに、音声だけで操作できる iPhone の Siri や Google アシスタント にも対応しました。同商品のパッケージは、世界包装機構主催の国際コンテストにおいて「ワールドスター賞」を受賞しました。また、「2024日本パッケージングコンテスト」において「電気・機器包装部門賞」を受賞しました。従来の発泡スチロール(EPS)から紙(パルプモールド)に素材を変更し、プラスチック包装材の使用量を66%削減、生産時のCO排出量を年間約47トン削減しています。

(2)高感度CMOSセンサー「STARVISTM」とHDR機能を搭載し、昼夜を問わず明るく鮮明な映像を記録できるドライブレコーダー「DRV-G50W」を開発し、商品化しました。この商品は、当社独自の映像・車載技術「Hi-CLEAR TUNE」により、自然でクリアな映像表示を実現しています。さらに、駐車監視機能、衝撃検知に加え、フロントカメラによる動体検知にも対応しています。徹底した品質管理のもと日本国内で生産し、3年間の長期製品保証を付与しています。廃棄時には、個人情報を消去できる「製品セキュリティ」機能も備えました。また、10V型高画質液晶を搭載したデジタルルームミラー「LZ-X20EM」を開発、商品化しました。後方映像をワイドに表示し、荷物や車体による死角を軽減することで、広い視界を確保し「Hi-CLEAR TUNE」の技術により、自然でクリアな映像表示を実現しました。

(3)国内用品車両メーカー向けに、客先要求仕様に対応したナビゲーション、ディスプレイオーディオ、カーオーディオ、ドライブレコーダーやリアカメラなどの車載製品を開発しました。

(4)海外用品車両メーカー向けに、客先要求仕様に対応したディスプレイオーディオ、カーオーディオ等の車載製品を開発しました。

(5)通信型ドライブレコーダー「STZ-DR20J」のバージョンアップを行い、Vieureka株式会社が提供する遠隔での保守・管理が可能なクラウド型ツール「Vieureka Managerサービス」に対応しました。これにより複数端末に対して、ソフトウエアのアップデート、ログや端末情報の収集、設定値の変更等を遠隔にて一元管理できるようになりました。

(6)当社のクラウド型タクシー配車システム「CABmee」について、お客様のスマートフォンからQRコードを使い所定の施設・地点へタクシーを呼ぶサービス「ココベル」、配車アプリ「TAXI.come」を両備タクシー以外の他社タクシー車両への配車サービスと連携させることでお客様の利便性やタクシー事業者収益の向上に向け、CABmee導入事業者である両備グループ(両備タクシーユニット、株式会社両備システムズ)と共同で開発しました。また、株式会社ミックウェアのタクシー配車サービス「T-ASSIGN」では当社車載端末が採用されました。本車載端末は、Vieureka株式会社のサービスを利用した端末管理及び、OTA(※) によるソフトウエア更新を実現するための開発を進めています。

(※):Over The Airの略。デバイスのソフトウエアやファームウェアをインターネットや無線通信等でアップデートする技術です。

当分野に係る研究開発費の金額は、120億円です。

 

 

*セーフティ&セキュリティ分野

無線システム事業では、独自の業務用デジタル無線規格「NXDN™」に対応した「NEXEDGE®」無線システム・端末や業界標準の業務用デジタル無線規格「DMR」に対応した無線システム・端末、米国の公共安全市場向けに開発されたデジタル無線規格である「P25」に対応した無線システム・端末を開発、商品化しています。

ヘルスケア事業では、高精細医用画像表示モニターを主軸とした医用画像ソリューションなどを開発、商品化しており、業務用システム事業では、業務用音響システムや映像監視システム向けに機器・ソフトウエアを開発、商品化しています。

当連結会計年度の主な研究開発活動及び成果は、以下のとおりです。

 

(1)次世代無線機の開発に向けて、米国の半導体メーカーAnalog Devices, Inc.(アナログ・デバイセズ社)とMOU(基本合意書)を締結しました。防災やBCP対策の高まりを背景に無線システム需要が拡大、公共安全分野での当社無線システムの拡充採用に応えるため、低消費電力で妨害耐性に優れた無線機のコアパーツ(SoC(※))開発に取り組みます。アナログ・デバイセズ社の最新トランシーバソリューション「Nevis」をベースに、厳しい使用環境にも対応可能な高性能SoCを共同開発し、無線機の主要パーツの安定供給にも努めます。今後は無線機器の多機能化やブロードバンド連携にも対応し、付加価値の高い製品提供を目指します。

(※):System on a Chipの略。複雑なシステムレベルの機能を1枚の半導体(チップ)に集積したもの。

(2)国内自治体の防災対策に貢献する無線システム/ソリューション

1.「NEXEDGE® CR」

総務省の制度改正により利用可能となったデジタル簡易無線の中継用チャンネルを活用し、資格不要で低コストかつ広域通信が可能な中継システム「NEXEDGE® CR」を提案しました。中継器である「TCB-D239CR」を適切な場所に設置することで、スマートフォンやインターネットの圏外エリアでも通信手段を確保でき、山間部や広大施設など従来カバーできなかった場所でも通話が可能となりました。さらに、見通しの良い場所では通話エリアを約2倍に拡大できるソリューションです。

2.「市町村向け移動系デジタル防災行政無線システム」

低廉かつ安定した通信を自営回線で実現する、4値FSK方式の「市町村向け移動系デジタル防災行政無線システム」を提案しました。シンプルなシステム構築を可能としながら、多彩な機器構成により、さまざまな運用形態に対応します。また、IP回線を経由して基地局の無線装置を監視・制御することも可能です。

3.「Soko-co Forest」

森林や山間部等スマートフォンが圏外でも、デジタル簡易無線機とスマートフォンを併用して通信できるソリューション「Soko-co Forest」(株式会社BREAKTHROUGH開発)を提案しました。専用アプリで位置情報を共有し、危険エリア接近時に警告を発報できる他、事故時にはエマージェンシー信号で周囲に救助の要請も可能です。

4. 災害時などの有事における「Starlink Business」と連携した無線通信ソリューション

災害時に地上インフラが損傷した場合に備え、ソフトバンクの衛星通信サービス「Starlink Business」と連携した無線通信ソリューションを提案しました。通常、自営回線は災害時に有効ですが、通信範囲が限られるため遠隔地との連絡が困難です。本ソリューションにより、通信エリア外からも指揮拠点と現場間で速やかに連絡が可能となります。さらに「Soko-co Forest」と併設することで、作業員や危険箇所の位置把握も支援します。

(3)北米市場において新型KENWOOD PKT-300 ProTalk®業務用無線機を開発、発売しました。重さわずか約138gでコンパクトかつ持ち運びやすく、回転式ベルトクリップホルスターを標準装備しています。KENWOODならではの高品質な音声、堅牢な2ワットの送信出力、バックライト付きの大型ディスプレイにより、騒がしい場所や暗所での作業にも最適です。2200mAhのリチウムイオンバッテリーにより、充電なしで複数シフトに対応可能、特に小売、ホスピタリティ、倉庫業務、エンターテインメント等、スピードと顧客対応力が求められる現場に最適な無線機です。

(4)米国フロリダ州で開催された「APCO 2024」にて、公共安全市場向けデジタル無線機の新商品「VM8000」や、P25対応システム「ATLAS™」、「StarGate™」等の無線ソリューション、IoT/AIを活用したマルチプロトコル対応システムなどの開発成果を展示しました。新製品として展示した業務用デジタル無線機「VM8000」は、北米公共安全市場向け「Viking」シリーズ初の車載用トライバンド機で、強固なプラットフォームで複数規格に対応し、警察・消防・救急・民間セキュリティ間の相互通信が可能な無線機です。

(5)有明GYM-EXで開催された「アマチュア無線フェスティバル ハムフェア2024」に出展、現在開発中の APRS®/D-STAR®対応の新型アマチュア無線カートランシーバーを初公開しました。モービル機「TM-D710G」等で好評のデータ通信システム APRS®(Automatic Packet Reporting System)に加え、アマチュア無線ハンディトランシーバー「TH-D75」等で好評のD-STAR®も搭載した、APRS®/D-STAR®両対応の新型機種として展開予定です。

(6)株式会社サイエンスアーツとのIP(※)無線領域においての資本業務提携契約を締結し、IP無線機・サービスを共同開発、国内市場への販売を拡大し、グローバル市場への展開を目指すことを発表しました。業務用無線は危機管理やBCP対応、業務効率化ニーズにより需要が拡大しており、特に広域通信が可能なIP無線市場が成長しています。JVCケンウッドは長年の無線技術を活かし、公共安全・民間市場でグローバルシェアNo.3を獲得しました。一方、サイエンスアーツは、IP無線アプリ「Buddycom」で国内シェアNo.1を持ち、多様な業種で導入実績を持っています。両社は、IP無線分野での強力なパートナーシップを通じて、互いの経営資源を活かし持続的成長と企業価値向上を目指していきます。

(※):IP=Internet Protocol の略。スマートフォンなどの機器を用いてインターネット通信を行う際に、ネットワーク上でデータを送受信する宛先となるIPアドレスを指定し、パケットが適切な場所に到達するようにルーティングする役割を担う技術仕様。

(7)米国ラスベガスで開催された業務用無線通信機器及びシステムの展示会「IWCE 2025(International Wireless Communications Expo 2025)」に出展しました。新開発のデジタルトランキングシステム「Trunking 2.5」を展示しました。本システムは、国際規格であるDMR(Digital Mobile Radio)をベースにした高効率な無線通信方式を採用し、周波数運用効率の向上とシンプルな設営・運用を実現しています。北米民間市場向けに発売を開始しており、テキサス州の石油採掘現場での採用が決定しています。

(8)イタリアの無線システム関連子会社のRadio Activity S.r.l.(以下「RA」)が、イタリア消防庁向けに業務用デジタル無線システムを供給する大型契約を獲得したことを発表しました。このシステムは、イタリアの10州の消防庁向けに、RAのDMRサイマルキャスト対応レピーターシステムを供給し、安定した緊急通信ネットワークを提供します。システムはアナログとデジタルの自動切り替え機能を備え、スムーズな移行を実現します。RAは、DMR規格に対応した無線システムを提供しており、これを基盤に当社は欧州市場での無線システムの販売拡大を進めています。

(9)「GSDFキャリブレーション機能付き画像診断用ディスプレイ」が厚生労働省により、特定保守管理医療機器に指定されたことを受け、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に11機種の画像診断用モニターの製造販売届を行いました。診断画像を表示する画像診断用モニターが医療機器として扱われることにより、表示性能・品質管理・保守点検が法的に求められるようになりました。

(10)鉄道事業者の運行管理を支援するアナログカメラ「TK-HD9701」の後継機種「TK-HD9702」を開発、商品化しました。先行機種同等以上のワイドダイナミックレンジ性能と140ms以下の低遅延アナログ信号出力を実現し、逆光補正性能、低遅延、高い耐ノイズ性を活かし、システムでの追加・置換えに対応します。

(11)議会・会議の円滑な会議運営を実現するフルデジタル会議システム「PM-5000」シリーズ専用の会議システムソフトウエア「jmee」をバージョンアップしました。新たに赤外線マイクシステムに対応し、これまでのWi-Fiタイプだけのシステムでは難しい複数個所の部屋での運用を実現しました。

(12)工場、物流施設、インフラ施設における車両のスムーズな受付を可能にし、長時間滞留を改善する車番認証ソフトウエアについて、「TZ-CN200」をバージョンアップしました。認証エンジンの更新、他社カメラとの接続性、及びバース予約対応の拡大を図り物流問題に広く対応します。

当分野に係る研究開発費の金額は、54億円です。

 

*エンタテインメント ソリューションズ分野

エンタテインメント ソリューションズ分野は、原音原画再現を探究しコンテンツ制作者の意図を忠実に再現するための商品開発を行っています。また、隣接市場や新規市場に向けての商品やソリューションの開発を行いました。

当連結会計年度の主な研究開発活動及び成果は、以下のとおりです。

 

(1)プロジェクター事業では更なるブランドステータスの向上のため、製品のアップデートや新製品の導入を行いました。ホームシアター製品においては、コントラストを大幅に高めた第三世代0.69型4K「D-ILA」デバイスを搭載することで、業界最高(※)のネイティブコントラスト比150,000:1を実現し、独自のレーザー光源技術「BLU-Escent」の進化による高輝度化も同時に実現した8Kプロジェクター「DLA-V900R/V800R」を商品化しました。

(※):当社報道発表時における、ネイティブ4Kデバイス搭載のプロジェクターとして。

(2)従来モデル「DLA-V70R」と比較して体積を35%削減し、低価格化を実現した世界最小(※)のネイティブ4Kプロジェクター「DLA-Z7/Z5」を開発、発売しました。「DLA-Z7」は、当社D-ILA製品の強みである高コントラスト性能等、卓越した映像品質と小型化の両立を実現しました。

(※):当社報道発表時における、ネイティブ4Kデバイス搭載のプロジェクターとして。

(3)“プロが認めた音”が楽しめる完全ワイヤレスイヤホンの新ラインアップとしてシルク(絹)を採用した大口径11mmのシルクレイヤーカーボン振動板を搭載した完全ワイヤレスイヤホン「HA-FX550T」を商品化しました。磁気回路やボイスコイル等には有線ハイクラスイヤホンと同等のパーツを採用し、さらに音響用チャンバー構成部品にはステンレスを採用した設計により、なめらかでみずみずしく豊かに響く音を実現しました。

(4)耳をふさがない“ながら聴き”リスニングスタイルを提案する“nearphones”シリーズの第3弾として、開放型の完全ワイヤレスイヤホン「HA-NP1T」を商品化しました。アクセサリー感覚で身に着けられるイヤーカフ型を採用し、イヤホン本体には、より着脱しやすく、つけていることを感じさせない軽く快適な着け心地を実現する当社独自の「フレキシブルアジャスト」機構を搭載しました。メタリックパーツを施した本体デザインに、アクセサリー感覚でコーディネートしやすい5色をラインアップし、音の聴けるアクセサリー“音アクセ”として、さまざまなシーンで周囲の音を聴きながら音楽や通話が楽しめます。

 

 

(5) ハイブリッドノイズキャンセリング機能を搭載したワイヤレスヘッドホン「HA-S99N」を発売しました。本機は長時間装着しても快適にリスニングが楽しめるよう各機構や各パーツの強度を確保しつつ、約195gのビクター史上最軽量(※)のボディを実現しました。オーバーイヤー形状による高い密閉性との相乗効果により、騒がしさが気になる環境でも快適なリスニングが可能です。

(※):当社報道発表時における、当社ヘッドバンド型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホンにおいて。

(6)NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発」に採択された「次世代型の高解像度LCOSによる波長選択スイッチの研究開発」を実施し、光通信向けに大幅な消費電力削減を実現した737万画素のLCOSを開発しました。ポスト5G時代を支える超多ポート・マルチバンド対応が可能な次世代型LCOSの開発に成功しました。

当分野に係る研究開発費の金額は、17億円です。

 

*その他

未来創造研究所は「人と時空をつないで未来を創造する」という技術開発戦略のもと、常に10年先の未来を見据えた新たな価値の創造を目指し要素技術開発に特化することをミッションとしています。

イノベーションデザインセンターは「顧客起点でのデザイン経営」を実践する組織として、稼げるビジネスの仮説を立て概念検証を行うことで「新たな価値」たるイノベーションの創出を図り、事業創出活動を通じて人材育成と知的財産網構築の実現を目指します。

当連結会計年度の主な研究開発活動及び成果は、以下のとおりです。

 

(1)宇都宮大学との共同研究により、ヘッドマウントディスプレイ等のデバイス装着なく、あらゆる方向から複数人が3D映像を視認する事が可能なレーザー描画によるボリュメトリックディスプレイシステムを開発し、コンピュータグラフィクス分野のトップカンファレンスである「SIGGRAPH2024」にて展示発表しました。また、オープンソースを使用したローカル5Gシステム開発や独自仮想空間プラットフォーム開発等、未来のデジタルツイン市場へ向けて空間再構成に必要な要素技術の研究開発と知的財産創出を進めています。

(2)究極の半導体といわれるダイヤモンド半導体の研究開発に関して、本研究で実績のある佐賀大学との共同研究に関して基本合意しました。社会実装へ向けて有効な知的財産の権利化を推進・協働していきます。

(3)LCOS技術の応用である光通信用波長選択スイッチ(WSS)の価値最大化へ向けて、次世代技術である光電融合技術(シリコンフォトニクス)の開発を推進し、事業化に向けた試作を経て様々な性能確認を実施、次世代での社会実装に向けて有効な要素技術開発成果を知的財産として権利化継続しています。

(4)製品・サービス開発におけるセキュリティテスト工数削減を目的とした、最適ファジングデータセットを量子コンピュータ技術により生成し追加検証を可能とするセキュリティツール開発や、画像中のあらゆる被写体の推論による認識を目標にした、信頼できるAIに関わる要素技術研究等、次世代コンピューティング研究開発を進めています。また、円滑な研究開発活動を推進するためのAI倫理基本規定やAI倫理マネジメント基本規程を策定しました。

(5)お客様・企業様・地域社会との直接対話で新たな事業機会の可能性を検証するとともに新たな事業領域の創造を目指して概念検証を実施しています。特に、五感を刺激する感覚拡張技術やAIによる音楽・映像生成等、先進的なソリューションなどを開示し、共創パートナーとの新たな連携機会を数多く創出し、事業化プランを具体化しています。ウェアラブルAIサポートツールやウッドスピーカー等のプロトタイプを体験型展示として紹介、地域社会とのつながりを深めながら、未来の生活スタイルに寄り添う技術開発推進中です。

(6)天然木を使用した「木の響きが溶け込み、豊かな日常を紡ぐ」スピーカーのトライアル販売を開始しました。受注生産とすることで、個々のライフスタイルに合わせた製品提供を実現し、持続可能なものづくりも推進しています。

その他の分野に係る研究開発費の総額は、17億円です。そのうち16億円は、各報告事業セグメントに配賦しています。