当社グループを取り巻く事業環境は、公共投資については国土強靭化や2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた社会インフラ整備などの発注は増加しているものの、全体発注量は横這いから縮小に転じ、依然熾烈な受注競争が続いています。
一方、民間投資においては、投資マインド改善により旺盛な投資が見られ、首都圏を中心とした再開発計画や製造業をはじめとした倉庫・工場の建設需要が活況を呈しており、全体として堅調に推移しました。
しかし、公共投資・民間投資とも2019年に需要のピークアウトを迎える可能性が高く、当社グループにおいては、2020年以降のポスト五輪を見据え、安定的・継続的な成長に向けた事業構造への転換が喫緊の課題と認識し、今まで以上に社会から必要とされる企業を目指した諸施策を展開してきています。
その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、受注高121,589百万円(前連結会計年度比9.9%増)、売上高95,153百万円(同8.6%減)となりました。収益面は、営業利益3,052百万円(同20.8%増)、経常利益は2,632百万円(同3.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,674百万円(同19.3%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)
(鉄構セグメント)
鉄構セグメントにおきましては、橋梁事業においては首都高大規模更新で最初の工事となる羽田線(東品川・鮫洲)更新工事をはじめとした大型工事や国土交通省発注工事の受注を積み上げることができ、鉄骨事業においては渋谷駅再開発プロジェクトをはじめとした首都圏大型案件を受注できたことにより、受注高は62,192百万円(前連結会計年度比13.1%増)となり、前連結会計年度を大幅に上回る受注量を確保できました。売上高は、橋梁事業において工期が長い工事の進捗が伸びなかったことに加え、鉄骨事業において鉄骨製作が端境期となったことにより42,447百万円(同14.4%減)となりました。収益面は、原価低減と設計変更の獲得に粘り強く取り組んだことに加え、高採算工事の進捗が堅調に推移した結果、営業利益2,628百万円(同430.4%増)となり、大幅な改善となりました。
(土木セグメント)
土木セグメントにおきましては、高速道路会社の大型工事や都道府県発注工事の受注を積み上げることができたことにより、受注高は29,013百万円(前連結会計年度比8.9%増)となり、前連結会計年度を上回る受注量を確保できました。売上高は、他社施工の橋梁下部工事の遅れ等により大型工事の進捗が伸びなかったことにより24,696百万円(同8.9%減)となりました。収益面は、当第4四半期に設計変更の獲得ができたものの、売上高減少に伴う間接費の増加等により工事原価が悪化したことにより、営業利益258百万円(同73.4%減)となりました。
(建築セグメント)
建築セグメントにおきましては、システム建築においてリピーター顧客を中心に大型案件を確実に受注に結びつけることができたことにより、受注高は17,940百万円(前連結会計年度比5.5%増)となり、前連結会計年度を上回る受注量を確保できました。売上高は、大型工事の進捗が順調に推移したことにより、17,562百万円(同3.4%増)となりました。収益面は、営業利益1,615百万円(同3.3%減)と前年同期を若干下回ったものの高い利益率を保つことができました。
(その他)
その他におきましては、売上高は12,128百万円(前連結会計年度比1.8%増)と前連結会計年度より若干増加しましたが、収益面につきましては、伸縮装置販売等の減少及び航空機使用事業の費用増加により営業利益81百万円(同90.2%減)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、981百万円減少し6,075百万円(前連結会計年度比△13.9%)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における営業活動によるキャッシュ・フローは、7,623百万円の資金増加(前連結会計年度は1,457百万円の資金減少)となりました。これは主に、売上債権の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,822百万円の資金減少(前連結会計年度は1,190百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度末における財務活動によるキャッシュ・フローは、6,781百万円の資金減少(前連結会計年度は4,086百万円の資金増加)となりました。これは主に、借入金の返済によるものであります。
(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しています。
セグメントの名称 | 受注高(百万円) | 前期比(%) | 受注残高(百万円) | 前期比(%) |
鉄構 | 62,192 | +13.1 | 75,280 | +35.6 |
土木 | 29,013 | +8.9 | 32,802 | +15.2 |
建築 | 17,940 | +5.5 | 11,857 | +3.3 |
その他 | 12,442 | +4.1 | 1,507 | +26.4 |
合計 | 121,589 | +9.9 | 121,448 | +25.6 |
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前期比(%) |
鉄構 | 42,447 | △14.4 |
土木 | 24,696 | △8.9 |
建築 | 17,562 | +3.4 |
その他 | 12,128 | +1.8 |
合計 | 96,834 | △8.3 |
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していません。
なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。
| 前事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 当事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
| 金額(百万円) | 金額(百万円) |
鉄構 | 48,818 | 42,099 ( 13.8%減 ) |
建築 | 17,017 | 17,313 ( 1.7%増 ) |
その他 | 1,219 | 877 ( 28.1%減 ) |
合計 | 67,055 | 60,291 ( 10.1%減 ) |
(注) 1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。
2 生産高には、外注生産高が含まれています。
期別 | セグメント | 前期繰越工事高 | 当期受注工事高 | 計 | 次期繰越工事高 |
(百万円) | (百万円) | (百万円) | (百万円) | ||
前事業年度
(自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 鉄構 | 50,711 | 54,109 | 104,820 | 55,535 |
建築 | 11,459 | 17,012 | 28,472 | 11,480 | |
その他 | 126 | 1,325 | 1,451 | 237 | |
合計 | 62,297 | 72,447 | 134,745 | 67,253 | |
当事業年度
(自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) | 鉄構 | 55,535 | 61,866 | 117,402 | 75,286 |
建築 | 11,480 | 17,940 | 29,420 | 11,857 | |
その他 | 237 | 453 | 691 | ― | |
合計 | 67,253 | 80,260 | 147,514 | 87,144 |
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。
2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額30億円以上の主なものは、次のとおりであります。
渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体 | 渋谷駅街区東棟新築工事 | 平成29年6月完成予定 |
首都高速道路㈱ | 高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事 | 平成37年7月 〃 |
中日本高速道路㈱ | 名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋 (鋼上部工)工事 | 平成31年5月 〃 |
住金物産㈱ | 六本木三丁目東地区第一種市街地再開発事業施設建築物新築工事 | 平成28年6月 〃 |
東日本高速道路㈱ | 北海道横断自動車道 塩谷川橋(鋼上部工)工事 | 平成29年12月 〃 |
セグメントの名称 | 前事業年度 (自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | 当事業年度 (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) |
金額(百万円) | 金額(百万円) | |
鉄構 | 49,285 | 42,115 ( 14.5%減 ) |
建築 | 16,992 | 17,562 ( 3.4%増 ) |
その他 | 1,213 | 691 ( 43.0%減 ) |
合計 | 67,491 | 60,369 ( 10.6%減 ) |
(注) 1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
西日本高速道路㈱ | 近畿自動車道 守口ジャンクション(鋼上部工)工事 |
西日本高速道路㈱ | 四国横断自動車道 今切川橋(鋼上部工)工事 |
東日本高速道路㈱ | 首都圏中央連絡自動車道 桶川第1高架橋(鋼上部工)工事 |
川崎臨港倉庫埠頭㈱ | 川崎臨港倉庫埠頭㈱新倉庫・事務所新築工事 |
住金物産㈱ | (仮称)日本橋二丁目北地区7番街区新築工事・地上部 |
当事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
戸田建設㈱ | 大手町一丁目第3地区第一種市街地再開発事業 |
関東地方整備局 | 横浜港臨港道路南本牧ふ頭本牧線(6工区)橋梁上部 工事 |
首都高速道路㈱ | YK11工区(1)・(3)上部・橋脚工事 |
日本梱包運輸倉庫㈱ | (仮称)日本梱包運輸倉庫㈱北上営業所新築工事 |
日本梱包運輸倉庫㈱ | 日本梱包運輸倉庫㈱小川営業所寄居出張所新築工事 |
2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
100分の10以上の相手先はありません。 |
当事業年度
日本梱包運輸倉庫㈱ 6,297百万円 10.4% |
当社グループが属する建設業界は、公共投資は縮小傾向ながらも堅調に推移しており、民間投資は回復の動きを見せています。しかしながら、工事現場における人手不足や建設コストの高止まりなど、需要回復の足かせとなり得るリスクも顕著化してきています。
このような状況のもとで、当社グループは市場や環境の変化に柔軟に対応できる経営体制を構築するとともに、一段の生産効率化やコスト削減に努め、更なる企業価値の向上を目指してまいります。そのために、当社グループは以下に掲げる課題の解決に向け取り組みを開始しています。
常に生産性の向上を図り、より高い品質を確保し、全体最適を志向することでコスト競争力を高め、収益力の更なる向上を目指します。
限られた経営資源の中でグループ総合力を発揮し、グループガバナンスの強化を図るとともに、グループ連携による一体経営を推進することで収益力の向上を目指します。
収益力の向上と営業キャッシュ・フローの改善によって、内部留保の更なる充実を図るとともに、有利子負債の削減を目指します。
現在の建設業界の状況を踏まえ、優秀な人材の確保・教育が今後の成長戦略には欠かせないものと考えており、グループ社員一人ひとりがやりがいと誇りを感じることのできる環境作りや研修制度の充実を目指します。
当社グループは、「安心で快適な生活環境の創造」の経営理念に則りそれぞれの事業を推進していくとともに、企業の社会的責任を十分に認識し、地域社会をはじめとする全てのステークホルダーから信頼され続ける企業となるべく努力してまいります。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、記載のうち将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断しています。
当社グループの鉄構セグメントにおける鋼橋事業並びに土木セグメントにおけるPC橋事業は、その大半が国、地方自治体及び高速道路会社からの発注であります。また建築セグメントにおける建築事業は、国内民間設備投資による発注であります。各種経済政策による公共投資の増加や、民間設備投資の回復が見られるものの、財政再建を目的として公共投資が減少した場合や景気後退等により国内民間設備投資が縮小した場合には、今後の受注動向に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの鉄構セグメントの主要材料は鋼材であり、アジアにおける鋼材消費量、並びに鉄鉱石・石炭等の原材料価格の動向により、鋼材価格は変動します。また技能労働者不足に伴う労務費の上昇が続いている中、当社グループはこれらの価格上昇を請負金額に転嫁する努力を続けています。しかしながら、請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し、それを請負金額に反映することが困難な場合には、コスト増加につながり、利益が悪化する可能性があります。
当社グループは、工場製作及び現場施工に携わる事業が大半を占めており、事故防止のための安全管理・対策には万全を期していますが、万が一事故が発生した場合には、事故による損害賠償だけでなく、顧客の信頼が失墜し結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループで製作している製品及び現場施工の品質につきまして、顧客満足を念頭に細心の注意を払い品質管理を行っていますが、万が一重大な瑕疵担保責任が発生した場合には、損害賠償だけでなく、顧客の信頼が失墜し結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業は、建設業法等の法的規制を受けます。これらの規則を遵守できなかった場合、指名停止等の処分により業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。
景気後退や建設市場の縮小などにより、発注者・協力業者などの取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性があります。
当社グループの持分法適用会社は海外事業を行っており、工事代金の回収は外貨建となっています。為替の変動により業績に影響を及ぼす可能性があります。
契約会社名 | 相手方の名称 | 契約品目 | 契約内容 | 契約期間 |
川田建設㈱ | 極東鋼弦コンクリート振興㈱ | フレシネー工法 | 1. フレシネージャッキの有償借入 2. PC鋼材及び定着装置・ケーブル付属品の有償購入 | 昭和52年10月11日より |
ブイ・エス・エル | 超高強度コンクリート素材ダクタル技術 | 同技術の再実施権許諾契約 | 平成17年2月1日より | |
㈱橋梁メンテナンス | S.A.S FPC (フランス国) | シーペックジョイント | 同製品の国内製作・販売ライセンス契約 | 平成27年7月11日より |
(注) 上記の技術受入契約においては、それぞれロイヤルティとして、資・機材の利用あるいは売上に対して一定額を支払っています。
当社グループは、高い技術力をもって社会に奉仕し、経営理念である「安心で快適な生活環境の創造」を実現することを基本方針としています。このため、鉄構、土木、建築、ITサービスの各ビジネスフィールドでの研究開発を積極的に推進し、新しい技術や知見の獲得に努めています。
研究体制としては、川田テクノロジーズ㈱技術研究所が次世代技術及びグループをまたぐ技術の研究開発を担当し、グループ各社では現業事業に直結する内容の研究開発を担当して実施しています。
当連結会計年度における研究開発費は749百万円であり、各セグメント別の主な内容は、次のとおりであります。
(鉄構セグメント)
主に川田工業㈱の鋼構造事業部が、鋼構造に関する研究開発を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は167百万円であり、材料構造技術、施工技術、工場での製作技術などに関する新技術の研究開発を行っています。主な研究開発の状況は次のとおりであります。
① 複合構造に関する研究開発
当社グループの得意とする複合構造物では、これまでにプレビームやSCデッキなどを開発し数多くの実績を収めており、これからも現状にとどまることなく常に改善を進めていきます。
プレビームに関しては、近い将来に見込まれている限界状態設計法への移行に対応するため、プレビーム固有のクリープ・乾燥収縮の特性の把握や継手部のひび割れ対策、主桁ウェブ部分の防錆等に関する研究開発を進めています。
また、SCデッキに関しては、さらなる施工性の向上、コストダウンを目指して、横リブ形状の改善、スタッドジベル本数の低減などの構造検討と実験を進めています。
② 橋梁保全技術に関する研究開発
今後展開される、高速道路のRC床版の大規模更新事業に対して、既設RC床版の急速取替方法に関する施工技術の開発、及び耐疲労性や製作性に優れた高性能取替鋼床版の開発を進めています。
また定期橋梁点検を支援する目的でマルチコプタを利用した橋梁点検システムの開発も進めています。これは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業として平成26年度より実施しているもので、川田テクノロジーズ㈱技術研究所が担当しています。当連結会計年度においては、開発品の実証試験を行い、一定の評価を得ることができました。委託事業としての開発は当連結会計年度で終了しましたが、平成28年度から2年間、NEDOの助成事業として、実用化に向けた研究開発を実施する予定です。川田テクノロジーズ㈱技術研究所は引き続きフィールドロボティクス応用分野での研究開発に努力してまいります。
(土木セグメント)
川田建設㈱は、コンクリート構造物に関する研究開発を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は47百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。
① 新設橋の品質・耐久性向上技術に関する研究開発
コンクリート施工の基本である締固め・仕上げ・養生の研究、各種施工管理システムの開発を推進しています。また、新設PC橋の合理化技術として、従来品より強度が30%向上した高強度PC鋼材を高速道路橋に適用し、実物大施工試験による検証を行いました。現在この検証を経て施工を進めています。
② 環境負荷低減技術に関する研究開発
高炉スラグ微粉末配合に加えて、フライアッシュ配合の開発を進めており、実績第1号として道路橋プレキャストT桁に適用しました。高耐久化が要求される更新用PC床版への適用を目指し、今後はASR対策への効果を確認していきます。
さらに、今後需要が増大する橋梁の改修・更新技術に着目して、PC中間定着工法、更新用PC床版、PC向け の非破壊検査技術についても着実な改善を積み重ねて、研究開発を継続して推進しています。
(建築セグメント)
川田工業㈱の建築事業部が新事業企画本部、川田テクノロジーズ㈱技術研究所と協力して研究開発を実施しています。
当連結会計年度における研究開発費は37百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。
① システム建築における新商品開発などの研究開発
地震災害時における建物の健全性を、建物に設置したセンサーによって判断する構造ヘルスモニタリングを開発し、平成5年竣工の「牛久大仏」で監視を開始しました。また数年前より開発が続いた多層階倉庫の床組構法については、既に実物件での採用を始め実績を重ねています。
施工面においては、将来の職人不足と工期短縮に対応するため、現場で作成するプレキャストコンクリート製腰壁の開発に取り組みました。また、多層階建物の外壁施工を上層階から始め、1階の施工状況に工期を左右されない外壁工法を開発し、実物件で工期短縮の成果をあげています。
② 環境関連事業に関する研究開発
水遣りが基本的に不要な屋上緑化システム「みどりちゃん」について、水が貴重な海外での展開を目指しており、当連結会計年度ではオーストラリアにおいて現地造園会社と共同で「みどりちゃん」システムが問題なく機能するかどうかの施工試験を開始しました。今後、「みどりちゃん」システムに適した土壌、植物の組み合わせを選定し、既に実績のある香港に引き続き、近い将来、オーストラリアでの販売を目指します。
また、新しいユニット型壁面緑化システムの開発も開始しました。「みどりちゃん」システムを壁面緑化ユニットに取り込むことで、灌水量を大幅低減できるものを目指しています。当連結会計年度においてはユニットの試作品を製作しており、今後は試作品を使った実験施工を行い、先進的な壁面緑化システムの開発に努力します。
さらに、地中熱ヒートポンプ冷暖房システム「GEOneo」は施工実績を着実に積み重ねており、CO2削減などの環境問題の解決に貢献しています。当連結会計年度では遠隔監視技術の開発に取り組み、先進的な地中熱ヒートポンプシステム開発に向けた基礎技術の確立を行いました。
(その他)
カワダロボティクス㈱及び川田工業㈱ロボティクス事業部は平成27年10月に統合し、新生カワダロボティクス㈱として双腕型ロボットに関する研究開発を実施しました。
当連結会計年度における研究開発費は497百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。
① 双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」に関する研究開発
双腕型産業用ロボット関連では、NEXTAGEの性能・機能向上を目的とした要素技術開発を実施いたしました。NEXTAGEの各要素部品の性能向上及び低コスト化、機能向上の成果を上げています。
② ロボットの適用分野拡大に関する研究開発
双腕ロボットの適用分野拡大に向けた研究開発として、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトに参画し適用用途の調査開拓、各分野向けシステムインテグレーション方式の開発及び現場実証を実施しました。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。その詳細は「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されています。
これらの中で当連結会計年度の報告に大きく影響を与えるものに工事進行基準の適用があり、これによる売上高は、82,912百万円を計上しています。
また、前連結会計年度同様、工事損失引当金の計上は大きな影響があります。当連結会計年度末においては、当社グループは、昨今の受注環境の悪化を背景とした未成工事の将来の損失に備え、1,211百万円を計上しています。
また、見積りの中で大きな影響を持つものとして、繰延税金資産の評価があります。当社グループは、各社の将来の収益力を源泉とした課税所得に基づくタックスプランニングを行い、充分に回収可能性を検討し同資産の評価額を決定しています。当連結会計年度においては、グループ各社の回収可能性を検討した結果、短期繰延税金資産は99百万円となっています。
このほか、当社グループの保有する資産に将来キャッシュ・フローを見積もり、その見積もった将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで直接減額しています。当連結会計年度において検討した結果、減損損失として502百万円を計上しています。
(2) 当連結会計年度の財政状態の分析(前連結会計年度比較)
当連結会計年度末における「資産の部」は105,918百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,753百万円(前連結会計年度比△5.2%)減少しました。これは主に売上高の減少により、現金預金が996百万円、受取手形・完成工事未収入金等が2,738百万円減少したこと等によるものであります。
また、「負債の部」は70,236百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,428百万円(前連結会計年度比△9.6%)減少しました。これは主に、工事出来高が減少したことにより支払手形・工事未払金等が3,334百万円減少したこと、短期借入金及び長期借入金が4,839百万円減少したこと等によるものであります。
一方、「純資産の部」は35,682百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,674百万円(前連結会計年度比+4.9%)増加しました。これは、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。
(3) 当連結会計年度の経営成績の分析(前連結会計年度比較)
当連結会計年度における売上高は95,153百万円となり、前連結会計年度に比べ8,922百万円(前連結会計年度比△8.6%)減少しました。これは主に、鉄構セグメントにおける鋼橋工事と土木セグメントにおけるPC橋工事の売上が減少したことによるものであります。
また、営業利益が3,052百万円となり、前連結会計年度に比べ525百万円(前連結会計年度比+20.8%)増加しました。これは主に、工事原価の縮減及び設計変更による受注増により原価率が改善したことによるものであります。
営業外収支では、持分法適用会社の佐藤工業㈱の持分法による投資利益が710百万円減少したことなどにより、経常利益は前連結会計年度に比べ86百万円(前連結会計年度比+3.4%)増加し2,632百万円となりました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度は1,457百万円のキャッシュを使用しており、当連結会計年度は7,623百万円のキャッシュを得ています。これは主に売上債権の減少2,738百万円によるものであります。
② 投資活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度は1,190百万円のキャッシュを使用し、当連結会計年度も有形固定資産の取得による1,838百万円のキャッシュの使用等により、1,822百万円のキャッシュを使用しました。
③ 財務活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度は4,086百万円のキャッシュを得ており、当連結会計年度は6,781百万円のキャッシュを使用しています。これは主として短期借入金の返済によるものです。連結有利子負債は、前連結会計年度の34,705百万円から当連結会計年度29,435百万円となり、5,269百万円減少しました。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
① 当社グループを取り巻く事業環境は、基本的に建設市場が縮小していく中での供給過剰状態にあり競争が熾烈であります。
② 鉄構セグメントの鋼橋事業、土木セグメントのPC橋事業、その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売の市場は公共工事予算、特に道路関係予算の影響を直接受けます。発注先の入札制度等の改革も大きな影響があります。
③ 鉄構セグメントの鉄骨事業は、超高層ビルを主体としたオフィス需要の影響を受け、建築セグメントの建築事業は民間非住宅需要や住宅マンション需要による民間設備投資に影響を強く受けます。
④ 鉄構セグメントの主要な材料は熱延鋼板等の鋼材であり、原料価格、高炉各社の供給体制・経営戦略、海外のインフラ需要等の影響を強く受けます。
⑤ 地震等の自然災害や突発的事象に起因する生産工場等の設備の損壊、電力・水道等のインフラ途絶による操業の中断は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループとしましては、法令等遵守意識の徹底はもとより、内部統制システムを効率的に実施することにより、信頼の確保に最大限の努力をしてまいります。
当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることであります。当社グループのコアコンピタンスである公共建設事業においては、入札制度改革の中で技術力による差別化の重要性を強く認識し、設計・製作・施工技術の強化を図るとともに、発注価格を市場価格ととらえ、グループ全体としてのコスト縮減を図り、利益を確保することにより、内部留保の厚みを増すと共に、配当を安定的かつ継続的に行うことを重要課題として取り組みます。
① 鉄構セグメントにおける鋼橋分野では、複合構造橋梁・合成床版の拡販と海外市場並びに土木・海洋土木構造物市場への展開に努力してまいります。鉄骨分野では、採算性を重視した選別受注に努め、大重量を扱える利点を損なうことなく新たな構造への対応を図るとともに、鉄骨建方への挑戦を続けてまいります。また、海外市場へは十分なリスク管理のもとで展開を図ってまいります。
② 土木セグメントにおけるPC橋分野では、「PC」・「保全」・「プレキャスト」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図ります。
③ 建築セグメントにおける建築分野では、工事規模の適正化を図り、技術提案等によるコスト削減を更に進め、システム建築市場の拡張を図ります。
④ その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売事業は新商品の拡販と引き続き固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。ロボティクス事業では、人間型ロボット等で蓄積されたデバイス技術の商用化と位置づけた次世代産業型ロボットの受注機会拡大と収益力の向上を図ります。
⑤ 持分法適用会社である佐藤工業㈱との業務提携につきましても、技術交流、保有資産の相互利用等を通じ、相互補完体制の確立・強化を図っています。