第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当社グループを取り巻く事業環境は、公共投資である橋梁事業においては、新設発注量が横ばいから縮小に転じる一方で、高度経済成長期に集中的に整備された既設橋梁に対する老朽化対策の需要が高まっている中、大規模更新事業や床版取替を中心とした更新・保全工事の発注が増加しています。

 民間投資においては、首都圏を中心とした再開発や企業収益の改善による活発な投資が見られ、民間建設需要は底堅く推移しています。

 しかし建設業界においては、慢性的な技能労働者不足や資機材価格の上昇などによる収益への影響リスクが懸念され、また東京オリンピック・パラリンピック後における市場環境の悪化も内在しています。

 こうした状況の中、当社グループはコンプライアンスを遵守する企業文化とガバナンス体制を確立することで顧客の更なる信頼と満足に応える企業を目指すとともに、既存事業における受注及び利益の確保に努めるとともに、市場環境を的確に捉えた事業展開を加速させています。

 その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高103,473百万円(前連結会計年度比8.7%増)、営業利益5,904百万円(同93.5%増)、経常利益は持分法による投資利益3,391百万円を計上したことにより8,701百万円(同230.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,140百万円(同386.2%増)となりました。受注高につきましては108,392百万円(同10.9%減)となりました。

 

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)

 

(鉄構セグメント)

 鉄構セグメントにおきましては、売上高は、橋梁事業において高速道路会社をはじめとした大型工事の進捗が堅調に推移したことや鉄骨事業において渋谷駅街区東棟、渋谷駅南街区プロジェクト工事をはじめとした首都圏の大型案件の製作が順調に進んだことにより、45,940百万円(前連結会計年度比8.2%増)となりました。損益面は、橋梁事業、鉄骨事業とも大型工事における設計変更が獲得できたことに加え、採算性が高い工事の進捗が伸びたことにより、営業利益4,161百万円(同58.4%増)となり、大幅に改善いたしました。受注高は、橋梁事業において国交省・高速道路会社を中心とした大型工事の受注を積み重ねることができたものの、前連結会計年度において大型更新工事の受注があった反動で前連結会計年度を下回りました。また鉄骨事業においては東京オリンピック・パラリンピック関連施設や首都圏を中心とした大型工事の受注は好調であったものの関西地区での受注は伸び悩みました。その結果、鉄構セグメント全体の受注高は47,312百万円(同23.9%減)となり、前連結会計年度を下回る結果となりました。しかしながら前連結会計年度からの豊富な次期繰越高を抱えている状況の中、売上高が若干の増加に留まったことで、当連結会計年度における次期繰越高は前連結会計年度を上回る水準を維持してます。

(土木セグメント)

 土木セグメントにおきましては、売上高は、前連結会計年度からの豊富な繰越高の中、高速道路会社をはじめとした大型工事の進捗が堅調に推移したことで、28,921百万円(前連結会計年度17.1%増)となり、前連結会計年度を大幅に上回りました。損益面は、高速道路会社をはじめとした大型工事における採算性の改善や設計変更が獲得できたことにより、営業利益914百万円(同253.4%増)なり、大幅に改善いたしました。受注高は、当第四半期までは大型工事の受注が少なく前年同四半期を下回っていたものの、当第四半期に入り高速道路会社・都道府県を中心とした受注を積み重ねることができたことにより、30,809百万円(同6.2%増)となり、引き続き高い水準での次期繰越高を維持することができました。

(建築セグメント)

 建築セグメントにおきましては、売上高は、システム建築の特徴である短工期で施工ができる中、引き続き大型工事の進捗が堅調に伸びたことで、18,308百万円(前連結会計年度4.2%増)となり、前連結会計年度を上回りました。損益面は、リピーター顧客を中心として大型工事における採算性が良かったことに加え、その他の工事においても全般的に原価低減が図れたことにより、営業利益2,306百万円(同42.8%増)となり、大幅に改善いたしました。受注高は、システム建築、一般建築を中心に順調に受注を積み重ねることができたことにより、18,297百万円(同2.0%増)となり、前連結会計年度と同水準の次期繰越高を維持することができました。

(その他)

 その他におきましては、売上高は12,101百万円(前連結会計年度0.2%減)となり、損益面につきましては、橋梁付属物の販売事業及び航空機使用事業の損益改善により営業利益200百万円(同144.1%増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,295百万円増加し8,371百万円(前連結会計年度末比37.8%増)となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、13,855百万円の資金増加(前連結会計年度は7,623百万円の資金増加)となりました。これは主に、売上債権の減少によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、3,338百万円の資金減少(前連結会計年度は1,822百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、8,223百万円の資金減少(前連結会計年度は6,781百万円の資金減少)となりました。これは主に、借入金の返済によるものであります。

 

(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示しています。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)受注状況

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄構

47,312

△23.9

76,652

+1.8

土木

30,809

+6.2

34,689

+5.8

建築

18,297

+2.0

11,847

△0.1

その他

11,973

△3.8

1,379

△8.5

合計

108,392

△10.9

124,568

+2.6

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。

2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(2)販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

鉄構

45,940

+8.2

土木

28,921

+17.1

建築

18,308

+4.2

その他

12,101

△0.2

合計

105,271

+8.7

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。

2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の状況」は記載していません。

 

 なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。

 

① 生産実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

42,099

45,736( 8.6%増)

建築

17,313

18,073( 4.4%増)

その他

877

363(58.6%減)

合計

60,291

64,174( 6.4%増)

(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。

2 生産高には、外注生産高が含まれています。

 

② 受注状況

期別

セグメントの名称

前期繰越工事高(百万円)

当期受注工事高(百万円)

(百万円)

当期完成工事高(百万円)

次期繰越工事高(百万円)

前事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

鉄構

55,535

61,866

117,402

42,115

75,286

建築

11,480

17,940

29,420

17,562

11,857

その他

237

453

691

691

合計

67,253

80,260

147,514

60,369

87,144

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

鉄構

75,286

47,097

122,384

45,723

76,660

建築

11,857

18,297

30,155

18,308

11,847

その他

164

164

164

合計

87,144

65,559

152,704

64,196

88,508

(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。

2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額30億円以上の主なものは、次のとおりであります。

渋谷駅街区東棟新築工事共同企業体

渋谷駅街区東棟新築工事

成29年12月完成予定

首都高速道路㈱

高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事

平成37年7月  〃

中日本高速道路㈱

名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋(鋼上部工)工事

平成31年5月  〃

東日本高速道路㈱

北海道横断自動車道 塩谷川橋(鋼上部工)工事

平成30年10月  〃

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 上粕屋高架橋他5橋(鋼上部工)工事

平成33年2月  〃

③ 販売実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

42,115

45,723( 8.6%増)

建築

17,562

18,308( 4.3%増)

その他

691

164(76.2%減)

合計

60,369

64,196( 6.3%増)

(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。

戸田建設㈱

大手町一丁目第3地区第一種市街地再開発事業

関東地方整備局

横浜港臨港道路南本牧ふ頭本牧線(6工区)橋梁上部 工事

首都高速道路㈱

YK11工区(1)(3)上部・橋脚工事

日本梱包運輸倉庫㈱

(仮称)日本梱包運輸倉庫㈱北上営業所新築工事

日本梱包運輸倉庫㈱

日本梱包運輸倉庫㈱小川営業所寄居出張所新築工事

当事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。

日鉄住金物産㈱

六本木三丁目東地区再開発

東日本高速道路㈱

東京外環自動車道 高州高架橋(鋼上部工)北工事

首都高速道路㈱

(高負)YK42工区(1-2)YK43工区(B(1)・D(1)連結路)上部・橋脚工事

㈱竹中工務店

朝日中之島西地区タワー

西日本高速道路㈱

新名神高速道路 八幡ジャンクション橋(鋼上部工)工事

2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。

前事業年度

日本梱包運輸倉庫㈱    6,297百万円  10.4%

当事業年度

100分の10以上の相手先はありません。

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループは、「安心で快適な生活環境の創造」の経営理念に則りそれぞれの事業を推進していくとともに、企業の社会的責任を十分に認識し、地域社会をはじめとする全てのステークホルダーから信頼され続ける企業となるべく努力しています。

 当社グループが属する建設業界においては、公共工事における新設橋梁は緩やかな減少傾向にあるものの、今後老朽化した橋梁の大規模更新・大規模修繕事業の需要増大が見込まれています。民間工事については、首都圏における再開発案件や東京オリンピック・パラリンピックに向けた関連投資等で概ね堅調に推移しています。一方で、建設需要の拡大に伴う労務費や資材費の高止まりが続く状況となりました。

 このような状況のもとで、当社グループは主力事業である鋼構造事業PC関連事業での「安定的な受注と利益の確保」を最重要課題と位置づけ、さまざまな対策を講じるとともに、それ以外の事業の更なる拡大を目指した取り組みを行っており、この動きを一層加速させ、当社グループの継続的な成長を目指してまいります。そのために、当社グループは以下に掲げる基本方針を軸として課題の解決に向け取り組んでいます。

① コンプライアンスの徹底

 法令等の遵守はもとより、社会規範に則した誠実・公正で透明性のある企業活動を遂行し、社員一人ひとりが高い倫理観に基づいた行動を実践することを目指します。

② 既存事業における収益力の強化と効率化への投資

 原価管理体制を強化するとともに、生産体制を再構築することで既存事業の収益力向上を目指します。

③ 経営基盤の強化

 収益力の向上で営業キャッシュ・フローを確保し、競争力の維持・強化に向けた投資や内部留保の充実により健全な財務体質の確立を目指します。

④ 新しい成長領域の構築

 新たな事業領域での成長の加速に向け、積極的な投資を行います。

⑤ 人材育成と組織能力の向上

 永続的な成長を維持するため、優秀な人材を確保するとともに教育・訓練制度の充実や職場環境の改善を図り、現在叫ばれています働き方改革へ積極的に取り組みつつ、グループ連携による一体運営を推進することで安定した事業経営を目指します。

 

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

4【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、記載のうち将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断しています。

(1)市場リスク

 当社グループの鉄構セグメントにおける鋼橋事業並びに土木セグメントにおけるPC橋事業は、その大半が国、地方自治体及び高速道路会社からの発注であります。また鉄構セグメントにおける鉄骨事業と建築セグメントにおける建築事業は、国内民間設備投資による発注であります。現状では老朽化した橋梁の増加に伴い更新事業、保全補修事業のニーズ拡大や、東京オリンピック・パラリンピックに向けた民間設備投資意欲の高まりが見られる一方、新設橋梁は緩やかな減少が見込まれており、今後公共投資が減少した場合や景気後退等により国内民間設備投資が縮小した場合には、今後の受注動向に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)主要材料及び労務単価の変動リスク

 当社グループの鉄構セグメントの主要材料は鋼材であり、アジアにおける鋼材消費量、並びに鉄鉱石・石炭等の原材料価格の動向により、鋼材価格は変動します。また技能労働者不足に伴う労務費の上昇が懸念される中、当社グループはこれらの価格上昇を請負金額に転嫁する努力を続けています。しかしながら、請負契約締結後に予想を超えて大幅に上昇し、それを請負金額に反映することが困難な場合には、コスト増加につながり、利益が悪化する可能性があります。

 

(3)事故によるリスク

 当社グループは、工場製作及び現場施工に携わる事業が大半を占めており、事故防止のための安全管理・対策には万全を期していますが、万が一事故が発生した場合には、事故による直接・間接の損害賠償だけでなく、顧客の信頼が失墜し結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)品質不具合による瑕疵等のリスク

 当社グループで製作している製品及び現場施工の品質につきまして、顧客満足を念頭に細心の注意を払い品質管理を行っていますが、万が一重大な瑕疵担保責任が発生した場合には、損害賠償だけでなく、顧客の信頼が失墜し結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)法令等に関わるリスク

 当社グループの事業は、建設業法等の法的規制を受けます。これらの規則を遵守できなかった場合、指名停止、営業停止等の処分により業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)取引先の信用リスク

 景気後退や建設市場の縮小などにより、発注者・協力業者などの取引先が信用不安に陥った場合には、資金の回収不能や施工遅延などの事態が発生する可能性があります。

 

(7)為替の変動リスク

 当社グループの持分法適用会社は海外事業を行っており、工事代金の回収は外貨建となっています。為替の変動により業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

契約会社名

相手方の名称

契約品目

契約内容

契約期間

川田建設㈱

(連結子会社)

極東鋼弦コンクリート振興㈱

フレシネー工法

1.フレシネージャッキの有償借入

2.PC鋼材及び定着装置・ケーブル付属品の有償購入

昭和52年10月11日より

昭和57年10月11日まで

以後2年毎更新

ブイ・エス・エル・ジャパン㈱

超高強度コンクリート素材ダクタル技術

同技術の再実施権許諾契約

平成17年2月1日より

平成30年11月26日まで

㈱橋梁メンテナンス

(連結子会社)

S.A.S FPC

(フランス国)

シーペックジョイント

同製品の国内製作・販売ライセンス契約

平成27年7月11日より

平成30年7月9日まで

(注) 上記の技術受入契約においては、それぞれロイヤルティとして、資・機材の利用あるいは売上に対して一定額を支払っています。

6【研究開発活動】

 当社グループは、社会のニーズに高い技術で応えることができるよう、研究開発活動を積極的に推進し、新しい技術や知見の獲得に務めています。研究開発体制としては、川田テクノロジーズ㈱技術研究所がグループを跨いだ分野の技術開発を担当し、グループ各社が現業事業に直結する内容の研究開発を担当しています。

 当連結会計年度における研究開発費は763百万円であり、各セグメント別の主な内容は、次のとおりであります。

 

(鉄構セグメント)

 主に川田工業㈱の鋼構造事業部が、鋼構造に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は185百万円であり、材料構造技術、施工技術、保全技術などに関する新技術の研究開発を行っています。主な研究開発の状況は以下のとおりであります。

① 複合構造に関する研究開発

 当社グループが得意とする複合構造物では、プレビーム合成桁、鋼・コンクリート合成床版(SCデッキ)、鋼・コンクリート混合桁など複合構造物の開発に注力し、多くの実績を収めてきています。

 プレビーム合成桁に関しては、次期道路橋示方書の改定に合わせ、「プレビーム合成桁橋設計施工指針」の改訂を行いますが、特にプレビーム固有のクリープ・乾燥収縮、ひび割れ制御、ウェブ防錆方法などに着目し、さらなる競争力を高めるための研究開発を行っています。

 また、SCデッキに関しては、横リブ、底鋼板の構造改善に着目し、長支間での競争力を高めるための研究開発を進めています。

② 橋梁保全技術に関する研究開発

 高速自動車道などで計画されている既設橋の大規模更新を睨み、特にRC床版の撤去方法、急速施工に着目した早強コンクリート、疲労耐久性に優れた鋼床版、耐久性に優れた塗料など、客先ニーズに応え、競争力のある固有の研究開発を行っています。

 また、平成26年度からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業として実施しているマルチコプタを利用した橋梁点検システムの研究開発については、過去2年間に開発した成果に対して現場の意見を取り入れ、より実用的なロボットシステムとなるように改良開発を行っています。本プロジェクトは平成29年度が最終年度となっており、ロボットの社会実装の実現に向け、引き続き努力してまいります。

 この研究開発は川田テクノロジーズ㈱技術研究所が実施しています。

③ 生産技術の研究開発

 最近の高層ビル鉄骨はトラス構造や免震構造を含むメガ部材が増加し、形状も複雑化してきています。これに対応するため、組立て精度の確保や溶接作業の効率化を目的とした研究開発を進めています。

 

(土木セグメント)

 川田建設㈱が、コンクリート構造物に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は82百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 新設構物の品質・耐久性向上技術に関する研究開発

 各種施工管理システムの高精度化・自動化を目的として研究開発を推進しています。また、高炉スラグ微粉末配合に加えて、フライアッシュ配合の開発を進めており、昨年実績第1号として適用した道路橋プレキャストT桁の長期挙動のモニタリングを継続して実施しています。

② 更新技術に関する研究開発

 今後需要が増大する橋梁の改修・更新技術に着目して、更新用プレキャストPC床版とPC中間定着工法の研究開発を継続して推進しています。前者については特許取得とNETIS登録を行うとともに、NEXCOでの4件目の受注に結びつきました。後者については北陸地整において2件の工事に採用され、その成果により平成28年度PC工学会賞(技術開発部門)を受賞しました。

③ 保全技術に関する研究開発

 既設PC橋梁の維持管理をターゲットにした非破壊検査技術、延命化・長寿命化技術について、大学や専門会社と共同して基礎的な研究開発を続けています。また、補修工事における作業環境改善対策として、作業補助装置の開発にも挑戦しています。

 

 

 

(建築セグメント)

 川田工業㈱の建築事業部が、事業企画部、川田テクノロジーズ㈱技術研究所と連携して研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は54百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

耐震/制振用の座屈拘束ブレースに関する研究開発

 神奈川大学の開発した技術を取り入れて、耐震/制振用の座屈拘束ブレース「ハイパー・ブレース」を開発しました。当連結会計年度では試験体を製作し、漸増と定振幅の載荷実験を行ったところ結果が良好であり、一般財団法人日本建築センターの一般評定を取得しました。次年度において自社案件での採用を目指すと共に、製作コストの低減や製作精度改善等を目指して研究開発を継続します。

② 環境関連事業に関する研究開発

 水遣りが基本的に不要な屋上緑化システム「みどりちゃん」は、国外では香港において着実に実績を積み重ねており、今後も海外での展開を目指して積極的な研究開発を行います。当連結会計年度ではオーストラリアにおいて現地造園会社と共同で「みどりちゃん」システムが問題なく機能するかどうかの施工試験を行い、問題なく機能することが実証されました。今後、オーストラリアでの展開を検討していきます。

 また「みどりちゃん」システムを壁面緑化ユニットに取り込んだ新しいユニット型壁面緑化システムの開発も行っています。試作品を製作し実証実験を行い、既存壁面緑化システムと比較して灌水量を大幅に低減することができました。次年度に製品化を目指します。

 さらに、地中熱ヒートポンプ冷暖房システム「GEOneo」に関して、異なる熱源からのエネルギーをインテリジェントにマネジメントするハイブリッドシステムを構築し、熱交換効率の向上に向けた基盤技術を確立しました。

 

(その他)

 カワダロボティクス㈱が双腕型ロボットに関する研究開発を継続して実施しています。当連結会計年度における研究開発費は440百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」に関する研究開発

 双腕型産業用ロボット関連では、NEXTAGEの性能・機能向上を目的とした要素技術開発を実施いたしました。NEXTAGEの各要素部品の性能向上及び低コスト化、機能向上の成果を上げています。

② ロボットの適用分野拡大に関する研究開発

 双腕ロボットの適用分野拡大に向けた研究開発として、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトに参画し、適用用途の調査開拓、各分野向けシステムインテグレーション方式の開発及び現場実証を実施しました。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。その詳細は「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されています。

 これらの中で当連結会計年度の報告に大きく影響を与えるものに工事進行基準の適用があり、これによる売上高は、91,147百万円を計上しています。

 また、前連結会計年度同様、工事損失引当金の計上は大きな影響があります。当連結会計年度末においては、当社グループは、昨今の受注環境の悪化を背景とした未成工事の将来の損失に備え、1,550百万円を計上しています。

 また、見積りの中で大きな影響を持つものとして、繰延税金資産の評価があります。当社グループは、各社の将来の収益力を源泉とした課税所得に基づくタックスプランニングを行い、充分に回収可能性を検討し同資産の評価額を決定しています。当連結会計年度においては、グループ各社の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産は695百万円となっています。

 このほか、当社グループの保有する資産に将来キャッシュ・フローを見積もり、その見積もった将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで直接減額しています。当連結会計年度において検討した結果、減損損失として286百万円を計上しています。

 

(2)当連結会計年度の財政状態の分析

 当連結会計年度末における「資産の部」は108,754百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,835百万円(前連結会計年度比+2.7%)増加しました。これは主に、現金預金が2,294百万円、繰延税金資産が596百万円及び関係会社株式が2,980百万円それぞれ増加し、受取手形・完成工事未収入金等が4,379百万円減少したこと等によるものであります。

 また、「負債の部」は64,895百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,341百万円(前連結会計年度比△7.6%)減少しました。これは主に、短期借入金及び長期借入金が6,777百万円減少したこと等によるものであります。

 一方、「純資産の部」は43,859百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,177百万円(前連結会計年度比+22.9%)増加しました。これは、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の33.3%から39.9%となりました。

 

(3)当連結会計年度の経営成績の分析

 当連結会計年度の経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1) 業績」に記載しています。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 資本の財源及び資金の流動性についての分析につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

① 当社グループを取り巻く事業環境は、基本的に建設市場が縮小していく中での供給過剰状態にあり競争が熾烈であります。

② 鉄構セグメントの鋼橋事業、土木セグメントのPC橋事業、その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売の市場は公共工事予算、特に道路関係予算の影響を直接受けます。発注先の入札制度等の改革も大きな影響があります。

③ 鉄構セグメントの鉄骨事業は、超高層ビルを主体としたオフィス需要の影響を受け、建築セグメントの建築事業は民間非住宅需要や住宅マンション需要による民間設備投資に影響を強く受けます。

④ 鉄構セグメントの主要な材料は熱延鋼板等の鋼材であり、原料価格、高炉各社の供給体制・経営戦略、海外のインフラ需要等の影響を強く受けます。

⑤ 地震等の自然災害や突発的事象に起因する生産工場等の設備の損壊、電力・水道等のインフラ途絶による操業の中断は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6)経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループとしましては、法令等遵守意識の徹底はもとより、内部統制システムを効率的に実施することにより、信頼の確保に最大限の努力をしてまいります。

 当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることであります。当社グループのコアコンピタンスである公共建設事業においては、入札制度改革の中で技術力による差別化の重要性を強く認識し、設計・製作・施工技術の強化を図るとともに、発注価格を市場価格ととらえ、グループ全体としてのコスト縮減を図り、利益を確保することにより、内部留保の厚みを増すと共に、配当を安定的かつ継続的に行うことを重要課題として取り組みます。

① 鉄構セグメントにおける鋼橋分野では、複合構造橋梁・合成床版の拡販と海外市場並びに土木・海洋土木構造物市場への展開に努力してまいります。鉄骨分野では、採算性を重視した選別受注に努め、大重量を扱える利点を損なうことなく新たな構造への対応を図るとともに、鉄骨建方への挑戦を続けてまいります。また、海外市場へは十分なリスク管理のもとで展開を図ってまいります。

② 土木セグメントにおけるPC橋分野では、「PC」・「保全」・「プレキャスト」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図ります。

③ 建築セグメントにおける建築分野では、工事規模の適正化を図り、技術提案等によるコスト削減を更に進め、システム建築市場の拡張を図ります。

④ その他のソフトウエア事業並びに橋梁用品販売事業は新商品の拡販と引き続き固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。ロボティクス事業では、人間型ロボット等で蓄積されたデバイス技術の商用化と位置づけた次世代産業型ロボットの受注機会拡大と収益力の向上を図ります。

⑤ 持分法適用会社である佐藤工業㈱との業務提携につきましても、技術交流、保有資産の相互利用等を通じ、相互補完体制の確立・強化を図っています。