文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「安心で快適な生活環境の創造」の経営理念に基づき、安全で高い品質の社会インフラ、サービスの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、誠実・公正で透明性のある企業活動と社員一人ひとりの高い倫理観に基づいた行動を通じて、あらゆるステークホルダーから信頼され続ける企業となるべく努力してまいります。さらに、安定的な受注と利益を確保し、市場競争力の維持・強化に努め、新しい成長領域の構築に向けた投資を推進しながら、企業価値の向上を目指してまいります。
(2)経営環境
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セグメント |
経 営 環 境 |
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鉄 構 |
(橋梁事業) ○市況 ・新設鋼製橋梁の発注量は、暫定2車線で開通している高速道路の4車線化や関西方面での大型案件などがあり堅調な事業環境にあるも、長期的には緩やかな減少傾向 ・大規模更新・大規模修繕については高速道路会社を中心として発注量は大幅な増加傾向 ○競合他社との差別化 ・橋梁に関する技術と経験ある人材を多く確保し、長大橋や複合橋梁の実績が豊富 ・鋼製橋梁の設計から架設までを網羅的にカバーでき、新設とともに補修・補強にも強み (鉄骨事業) ○市況 ・首都圏におけるオリンピック後の大型再開発プロジェクトの本格化の兆し ・西日本地区においては関西の大阪・関西万博関連施設や九州などにおける都市再開発と半導体工場建設など堅調な事業環境 ○競合他社との差別化 ・工場製作から現場施工(建方含む)までの一括請負 ・他社製作鉄骨の現場施工(建方含む)を含めた現場総合マネジメント力 |
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土 木 |
○市況 ・新設プレストレスト・コンクリート橋梁の発注量は減少傾向 ・高速道路会社による大規模更新・大規模修繕は大幅な増加傾向 これに伴い1件当たりの工事の大型化とゼネコンなどのPC橋梁専門会社以外の参入が顕著 ○競合他社との差別化 ・長年の首都高速道路における保全工事を通じて蓄積してきた各種保全技術ノウハウ |
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建 築 |
○市況 ・建設技能労働者不足や建設資材高騰などにより在来工法からのシフトが進みシステム建築市場が拡大 ・ネット販売等の拡大による大型物流施設の需要が旺盛 ・働きやすく、災害に強く、環境性能に優れた倉庫需要の増加 ○競合他社との差別化 ・鉄のエキスパートとして企画・提案から設計・施工・アフターメンテナンスまでONE STOPサービス |
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セグメント |
経 営 環 境 |
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ソリューション |
(ソフトウエア関連事業) ○市況 ・防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策などにより建設コンサルタント市場は伸長 ・BIM/CIMなど建設業におけるDXの推進に対する投資が伸長 ○競合他社との差別化 ・建設業BIM/CIMに対応した土木関連ソフトウエアの創出と提供 ・建設DX推進に対応したシステムインテグレーションサービスの展開 (ロボット関連事業) ○市況 ・電気電子産業向けロボット需要は回復傾向 ・ロボットの導入が進んでいなかった産業における汎用工程に対するロボットによる自動化・省人化ニーズが期待されている状況に変化なし ○競合他社との差別化 ・6軸の双腕とビジョン、コントローラー、ソフトウエアが一つのパッケージになったオールインワンタイプのヒト型ロボット |
なお、上記経営環境に関しましては、今後全てのセグメントにおいて新型コロナウイルス感染症の影響を受ける可能性があります。特にいわゆる民間事業の市況は大きく影響を受けることが見込まれますが、それらに係る事業上のリスクは、「2 事業等のリスク (14)COVID-19等感染症によるリスク」に記載したとおりであります。
(3)会社の優先的に対処すべき課題
当社グループは2020年度を初年度とする第2次中期経営計画(2020年度から2022年度まで)を策定し、当社グループ全体として以下のとおりテーマ、その実現のために4つの基本方針、そして、3つの経営目標数値を定めています。
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テーマ |
収益基盤の強化と変革の加速 |
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基本方針 |
①既存事業の収益力強化 ・質を重視した受注の推進 ・生産性向上による徹底的なコスト削減 |
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②事業ポートフォリオの全体最適化 ・事業環境の変化を先取りした効率的な経営資源の投入 |
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③イノベーションの加速 ・新たな事業領域へのチャレンジ |
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④人材の確保・育成、働き方改革の推進 ・多様な人材の確保 ・社員のスキルアップ ・「働きがい」の継続的な向上 |
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経営目標数値 |
①売上高(3か年平均※) 1,160億円 ②営業利益(3か年平均※) 42億円 ③自己資本比率(2019年度比) 3%以上改善 ※当社グループは複数年に亘る事業を行っており、工事の進捗や設計変更獲得状況などにより年度ごとの数値にバラツキが生じるため、3か年平均の数値を設定しています。 |
そして、2021年度までの2か年終了した時点では経営目標数値としていました「営業利益」と「自己資本比率」は概ね順調に推移しています。最終年度である2022年度につきましては、売上高1,160億円、営業利益40億円と予想していることから、営業利益と自己資本比率は達成できる見通しでありますが、売上高につきましては厳しい状況であります。
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数値目標 |
2020年度 (実績) |
2021年度 (実績) |
2年平均 (実績) |
2022年度 (予想) |
3年平均 (予想) |
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売上高 (3か年平均) |
1,160億円 |
1,155億円 |
1,037億円 |
1,096億円 |
1,160億円 |
1,117億円 |
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営業利益 (3か年平均) |
42億円 |
55億円 |
64億円 |
59億円 |
40億円 |
53億円 |
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自己資本比率 (2019年度比) |
3%以上改善 |
1.8%改善 |
10.2%改善 |
- |
3%以上改善 |
- |
しかし、次の各セグメントにおける課題への対応を図ることで、すべての目標達成に向けた取り組みを最後までグループ一丸となって取り組んでまいります。
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セグメント |
対処すべき課題 |
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鉄 構 |
(橋梁事業) ・製作部門におけるコスト競争力の強化と各種土木・海洋構造物など新規分野への挑戦 ・施工部門における現場作業の省人化・DX化による収益性の向上と新たな収益源の開拓 ・大規模更新工事への対応の促進 (鉄骨事業) ・超高層建築物における躯体構造の変化に対応した製作、施工そして営業体制の再構築 ・橋梁、鉄骨以外の工場製作物(制震壁等)への営業・生産体制の強化 |
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土 木 |
・全国エリアごとに、新設PC橋梁、更新工事、保全工事を設計・施工できる体制の確立 ・床版取り替えを中心とした大規模更新案件の大型化への対応 |
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建 築 |
・付加価値を持つ物流倉庫への対応の促進 |
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ソリューション |
(ソフトウエア関連事業) ・既存事業実績拡大と生産性向上による成長 ・DXに対応したシステムインテグレーションサービスの展開強化 (ロボット関連事業) ・営業力・商品力・開発力の強化 |
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(当社グループ全体) 企業価値向上のための人的・知的・製造資本、DX、新規事業関連、サステナ関連への投資やグループ事業全体の最適化のために人材をはじめとした経営資源の最適配分 |
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なお、各事業を通して、「安全は全てに優先される」との強い認識のもと、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取り組みも含め、事故などの根絶に向けた不断の努力を継続してまいります。また、このような取り組みの中から生み出される社会インフラ、サービスを高い品質とともに提供していけるよう今後も取り組んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市場リスク
鉄構セグメントにおける鋼橋事業及び土木セグメントにおけるPC橋事業(以下「橋梁事業」)は、その相当部分が国、地方自治体、高速道路会社からの発注であり、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化する可能性があります。今後の発注量については、一時的には回復すると予測していますが、中長期的な発注量は不透明な状況であります。
また、橋梁事業においては、市場が新設から保全・補修へとシフトしていることで、工場製作を中心とした事業から現場を中心とした事業へと変わりつつあり、この変化に適切に対応できない場合、業績に影響が出る可能性があります。
次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業及び建築セグメントにおける建築事業は、民間設備投資による発注であるため、景気動向に左右される傾向にあります。
当社グループでは、今後ともそれぞれの事業における受注活動を強化しリスクの低減を図ってまいりますが、受注が低迷した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)収益変動リスク
当社グループは、工事契約における履行義務について、工事の進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。工事契約に係る売上高は、工事収益総額及び進捗度に基づき算定され、進捗度の測定は発生原価に基づくインプット法(発生原価が工事原価総額に占める割合)によっています。工事原価総額は過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、特に橋梁事業等工期が長期に亘る工事においては、工事期間中に鋼材等の原材料や輸送費、労務費の上昇リスクが内在しています。当初の契約締結後に想定を超えて増加したコストについては発注者と協議を行い、追加の契約を獲得する努力をいたしますが、それらを請負金額に反映することが困難となった場合には、採算性が悪化するリスクがあります。
またロボット等の製造において、半導体不足の影響やサプライチェーンの混乱による調達制約など、部品調達の長期化及び高騰により生産計画を見直す状況になった場合、売上高の減少、コストの増加等、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これら採算性の悪化リスクを回避・軽減するため、早期調達及び多様な調達先の確保を図るとともに発注者との交渉を早期に進めるなどの対策を実施しています。
(3)事故によるリスク
当社グループのコア事業である橋梁事業や鉄骨事業、建設事業においては、工場製作及び現場施工が大半を占めています。また、当社グループでは航空関連事業を行っていますが、これら事業におきましては安全管理・対策には万全を期していますが、万が一事故が発生した場合には、事故による直接的な損害と補償費用が発生するだけでなく、指名停止等の処分や工事成績評点への影響などで、今後の受注活動にも影響が生じるため、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおいては、事故防止のための各種安全教育や事故防止策を徹底するなどの対策を継続的に実施しています。
(4)品質不具合による瑕疵等のリスク
当社グループで製作している製品及び現場施工の品質につきまして、細心の注意を払い品質管理を行っていますが、万が一重大な瑕疵が発生した場合には、その損害賠償だけでなく、顧客の信頼が失墜し結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)工事遅延リスク
工事の遂行にあたっては、鋼材や購入品が当初予定した時期に納品されない場合に工程が遅れ、工期が伸びる可能性があります。また実際の現場の状況が想定と異なった場合や下部工工事の遅れなどが生じた場合、発注者と協議のうえ架設工法を見直すことがあります。これらの変更については発注者と設計変更契約の協議を行いますが、架設工法変更に伴う原価の発生時期と設計変更契約の締結時期にずれが生じた場合、原価が先行することで一時的に収益が悪化するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)法令等に関わるリスク
当社グループの事業は、建設業法や労働安全衛生法等の各種法的規制を受けます。監査部門による内部監査や法務部門による講習会実施、安全品質環境本部長又は事業部長による全現場パトロールの実施により法令遵守の徹底に努めていますが、万が一法令違反が発生した場合には、指名停止、営業停止等の処分により業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。
(7)取引先の信用リスク
当社グループでは、新たな取引先については契約前に取引先の信用調査を実施し、リスクの軽減を図っていますが、発注者・協力業者などの取引先に信用不安が発生した場合には、貸し倒れの発生や引当金の計上、工程の遅延などにより業績が悪化する可能性があります。
(8)為替の変動リスク
当社グループの持分法適用会社は海外での事業を行っているため、外貨建の債権債務が発生します。このため大幅な為替変動が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)担い手不足によるリスク
当社グループの主要セグメントが属しています建設業界におきましては、建設業従事者の数が減少すると予測されています。加えて2019年4月に施行された改正労働基準法により、建設業では2024年4月から時間外労働の上限が規定され、これを見据えた「働き方改革」が、業界各社の緊喫の課題となっています。
今後、人材の確保・育成をより一層強化していくとともに、現場作業の効率化を推進してまいりますが、担い手不足が解消できなかった場合に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)自然災害等大規模災害によるリスク
当社グループは鉄構セグメント及び土木セグメントにおいて全国5か所に工場を保有しています。従いましてそれらが所在する地域におきまして大規模災害等で操業に支障が出た場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。また、橋梁事業や建築事業に関しては屋外での作業が中心となりますので、季節や天候などの自然条件の影響を受ける可能性があります。
(11)固定資産の減損に関わるリスク
当社グループは鉄構セグメント及び土木セグメントの事業に係る固定資産として全国5か所に工場を保有しています。今後経営環境や収益状況が悪化した場合には減損損失を計上する必要性が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
(12)有利子負債への依存と金利変動によるリスク
当社の橋梁事業や鉄骨事業につきましては、その事業形態から運転資金の立て替えが発生します。特に近年の橋梁事業では案件の大型化や長期化が進んでいることからその傾向が強まっています。
当社グループにおける運転資金は金融機関からの長期及び短期借入金により調達しており、2022年3月末時点での借入金は合計184億円となっています。当社グループでは取引銀行15行との当座貸越契約の弾力的な運用と年度計画に沿った長期借入金の調達で対応しており、平素より当社グループの業績や見込等を適時適切に説明し、円滑な調達に努めています。
その一方で常に相当額の借入金残高が存在しますので、将来において金利水準が大幅に上昇した場合には業績に影響を与える可能性があります。
(13)情報セキュリティに関わるリスク
当社グループにおきましては、業務の効率化のためICT化、ネットワーク化を進めておりますが、その社内システムに対し外部からのサイバー攻撃や従業員の不正等により保管しているデータが消失・損壊した場合や個人情報、機密情報が漏洩した場合、その復旧費用や損害賠償だけではなく、事業遂行に大きな影響や社会的な信用が失墜し結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは当該リスクへの対応策として、「情報セキュリティポリシー」を制定し、情報管理体制を確立するとともに、リスクの変化に応じた技術的な対策及び教育・啓発等の人的マネジメント対策を継続的に実施することで、個人情報、機密情報の漏洩防止に努めてまいります。
(14)COVID-19等感染症によるリスク
COVID-19のような大規模な感染症が発生した場合、その感染対応や感染予防のために工期の遅延等が発生し、結果として売上高の減少、コストの増加等、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの企業活動におけるリスク対応策として、テレワークや時差出勤等の制度化や各種感染予防策の徹底などを推進しています。
(15)不適切な財務報告リスク
当社グループは、財務報告の適正性を確保するために内部統制体制を整備していますが、従業員の不正や誤謬等により財務報告が適正に行われなかった場合には、ステークホルダーからの信用が失墜し、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは当該リスクへの対応策として、会計処理がマニュアルに則って適正に行われているかのモニタリング、正確な財務報告に関する啓発教育を継続的に行い、内部統制の実効性確保に努めています。
(16)気候変動問題に係るリスク
昨今、世界では気候変動をはじめとする環境課題が深刻化しています。日本国内でも異常気象による大規模な自然災害が多発するなど大きな影響をもたらし、今や気候変動は企業にとって看過できない状況となっています。
当社グループは、その製造過程で多くの温室効果ガスを発生させる鋼材を主たる材料とする鉄鋼事業や航空関連事業を営んでいます。これら事業において、温室効果ガスを発生させていることから、今後将来に向け発生量を実質ゼロに向けて圧縮することが求められており、これに適切に対応できない場合には事業遂行に制約が出る可能性があります。
当社グループでは、2021年にサステナビリティ推進室を設置し、この課題解決を含めサステナビリティ経営への取り組みに着手しています。
当社グループは、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しています。
なお、経営成績の状況の当連結会計年度の各数値は、収益認識会計基準等を適用した後の数値となっていることから、前連結会計年度と比較した増減額及び対前期増減率は記載していません。収益認識会計基準等の適用に関する詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご覧ください。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末における「資産の部」は133,337百万円となり、前連結会計年度末に比べ14,070百万円(△9.5%)減少しました。これは主に、受取手形・完成工事未収入金等が10,326百万円、未成工事支出金が3,742百万円それぞれ減少したことによるものであります。
また、「負債の部」は61,415百万円となり、前連結会計年度末に比べ19,027百万円(△23.7%)減少しました。これは主に、短期借入金が15,072百万円、支払手形・工事未払金等が4,834百万円それぞれ減少したことによるものであります。
一方、「純資産の部」は71,921百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,957百万円(+7.4%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の44.8%から53.2%となりました。
② 経営成績の状況
当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、鋼材をはじめとした資材価格や輸送コストなどの上昇が続いており、これまで以上に不透明で厳しい状況が予想されます。
鉄構セグメントの鋼製橋梁事業や土木セグメントに大きく影響する公共投資は、中長期的には新設橋梁の発注量の減少が見込まれる一方で、政府の経済対策に「防災・減災、国土強靭化の推進」が盛り込まれたこともあり、高速道路会社の床版取替を中心とした大規模更新や補修・保全などの発注は引き続き堅調に推移すると思われます。そのような中、大規模更新市場は市場規模の拡大と発注金額の大型化で、ゼネコンの参入が顕著となっており、受注競争が激化してきています。当社グループとしてはこのような環境変化に対応すべく、受注戦略の再検討や経営資源の配分の最適化を図ってまいります。
鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントが関わる民間投資につきましては、建設コストの高騰により今後計画の見直しや中止が危惧されるものの、鉄骨事業においては首都圏・関西圏ともに大型再開発案件が一定程度見込まれていることや建築事業においては物流施設をはじめとした当社が得意とするシステム建築の需要が底堅く見込まれています。しかし鋼材をはじめとした調達コストの急騰が続いていることから、手持工事に加え、今後受注する案件においても損益管理を今まで以上に強化してまいります。
ソリューションセグメントは、国土交通省がDX政策推進の一環として取り組んでいるBIM/CIMの適用拡大を受け、ソフトウエア関連事業が堅調に推移すると思われます。
こうした中、当社グループは2020年6月に「KAWADA VISION~10年後のあるべき姿~」を策定し、その実現に向けた「第2次中期経営計画(2020年度~2022年度)」を公表し、すべての目標達成に向けグループ一丸となって取り組んでいます。
その結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高103,760百万円(前連結会計年度は115,545百万円)、営業利益6,412百万円(同5,565百万円)、経常利益7,689百万円(同8,048百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,176百万円(同6,340百万円)となりました。受注高につきましては119,584百万円(同118,978百万円)となりました。
当連結会計年度より「その他」に含まれていた「ソリューション事業」について量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法に変更しています。
セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)
(鉄構セグメント)
当セグメントの中の鋼製橋梁事業につきましては、受注高は第3四半期までの高速道路会社発注の大型工事に加え、当第4四半期においても国土交通省発注の大型工事を積み重ねることができましたが、前連結会計年度において大型特定更新工事の受注があった反動で前連結会計年度を下回る結果となりました。売上高は大型特定更新工事をはじめとした保全工事は概ね順調に進捗したものの、新設の大型工事が前連結会計年度に集中的に竣工したことで、前連結会計年度より減少いたしました。営業利益は保全工事の原価改善に加え、今期竣工を迎えた案件を中心に設計変更が獲得できたことで前連結会計年度を大幅に上回る結果となりました。
鉄骨事業につきましては、当第4四半期における半導体関連施設の大型案件や関西圏を中心とした受注に加え、漸く動き始めた首都圏再開発案件の受注を積み上げることができたことで、前連結会計年度を上回る結果となりました。売上高は、首都圏再開発案件の一部工事の工程が大幅に延伸した影響により前連結会計年度を下回ったものの、営業利益は大型工事での工場での原価改善に加え、設計変更契約交渉を粘り強く続けた結果、採算性の改善が図れたことで前連結会計年度を上回ることができました。
セグメント全体では売上高50,033百万円(前連結会計年度は61,287百万円)、営業利益5,425百万円(同4,406百万円)となりました。また、受注高は59,006百万円(同65,193百万円)となりました。
(土木セグメント)
土木セグメントにつきましては、受注高は第3四半期までは特に新設事業と更新事業で苦戦していましたが、当第4四半期において、国土交通省発注の新設事業と高速道路会社発注の更新事業を積み上げることができたことで31,405百万円(前連結会計年度は31,315百万円)と前連結会計年度と同水準の受注を確保することができました。
売上高は、更新事業及び保全事業を中心に工事が順調に進捗したものの、新設事業での減少を補うまでに至らず、33,037百万円(同34,625百万円)となり、また営業利益につきましても2,380百万円(同2,524百万円)といずれも前連結会計年度実績に届きませんでした。
(建築セグメント)
建築セグメントにつきましては、第3四半期に大型物流施設2件を受注できたことに加え、当第4四半期においても大型倉庫を受注できたことにより、受注高は15,715百万円(前連結会計年度は10,390百万円)と前連結会計年度を大幅に上回ることができました。売上高は繰越工事の減少に加え、当連結会計年度前半での受注が伸び悩んだことにより9,607百万円(同10,647百万円)となり、また営業利益につきましては、厳しい受注競争が続く中で、手持ち案件の採算性の低下に加え、一部採算性の厳しい工事で工事損失引当金を計上したことで56百万円(同648百万円)という結果となりました。
(ソリューションセグメント)
ソリューションセグメントにつきましては、当第4四半期においてもソフトウエア関連事業及び設計受託事業が順調に推移したことに加え、収益認識会計基準等の適用により収益認識方法を一部変更した影響もあり、受注高6,276百万円(前連結会計年度は5,119百万円)、売上高5,603百万円(同4,760百万円)、営業利益1,252百万円(同749百万円)といずれも大幅に改善いたしました。
(その他)
その他につきましては、航空関連事業において改善が見られたものの、橋梁付属物の販売が前連結会計年度を下回ったことで売上高は7,159百万円(前連結会計年度は6,973百万円)、営業損失297百万円(前連結会計年度は営業損失317百万円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,907百万円増加し13,674百万円(前連結会計年度比+27.0%)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、20,391百万円の資金増加(前連結会計年度は2,547百万円の資金減少)となりました。これは主に、売上債権の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,948百万円の資金減少(前連結会計年度は4,183百万円の資金減少)となりました。これは主に、設備投資による固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、15,811百万円の資金減少(前連結会計年度は8,220百万円の資金増加)となりました。これは主に、借入金の返済によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高(百万円) |
前期比(%) |
|
鉄構 |
59,006 |
- |
77,869 |
- |
|
土木 |
31,405 |
- |
47,256 |
- |
|
建築 |
15,715 |
- |
17,965 |
- |
|
ソリューション |
6,276 |
- |
2,734 |
- |
|
その他 |
7,181 |
- |
508 |
- |
|
合計 |
119,584 |
- |
146,334 |
- |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。受注高、受注残高は当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前期比(%)は記載していません。
3 当連結会計年度から、「その他」に含まれていた「ソリューション事業」について量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法に変更しています。
b.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
|
鉄構 |
50,033 |
- |
|
土木 |
33,037 |
- |
|
建築 |
9,607 |
- |
|
ソリューション |
5,603 |
- |
|
その他 |
7,159 |
- |
|
合計 |
105,441 |
- |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。
2 当連結会計年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。販売高は当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前期比(%)は記載していません。
3 当連結会計年度から、「その他」に含まれていた「ソリューション事業」について量的な重要性が増したため報告セグメントとして記載する方法に変更しています。
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。
なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。
a.生産実績
|
セグメントの名称 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(百万円) |
金額(百万円) |
|
|
鉄構 |
61,605 |
49,830(19.1%減) |
|
建築 |
10,575 |
9,506(10.1%減) |
|
その他 |
105 |
147(40.0%増) |
|
合計 |
72,287 |
59,484(17.7%減) |
(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。
2 生産高には、外注生産高が含まれています。
b.受注実績
|
期別 |
セグメントの名称 |
前期繰越工事高(百万円) |
当期受注工事高(百万円) |
計 (百万円) |
当期完成工事高(百万円) |
次期繰越工事高(百万円) |
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前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
鉄構 |
68,689 |
65,107 |
133,797 |
61,380 |
72,416 |
|
建築 |
12,114 |
10,390 |
22,505 |
10,647 |
11,857 |
|
|
その他 |
- |
164 |
164 |
164 |
- |
|
|
合計 |
80,803 |
75,663 |
156,467 |
72,192 |
84,274 |
|
|
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
鉄構 |
68,896 |
58,948 |
127,845 |
49,975 |
77,869 |
|
建築 |
11,857 |
15,715 |
27,573 |
9,607 |
17,965 |
|
|
その他 |
- |
156 |
156 |
156 |
- |
|
|
合計 |
80,754 |
74,821 |
155,575 |
59,740 |
95,835 |
(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。
2 当事業年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。当事業年度の前期繰越工事高は当該会計基準等を適用した後の金額となっています。
3 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額60億円以上の主なものは、次のとおりであります。
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西日本高速道路㈱ |
中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事 |
2024年6月完成予定 |
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首都高速道路㈱ |
高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事 |
2025年7月 〃 |
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㈱竹中工務店 |
八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業新築工事 A-1街区 |
2022年6月 〃 |
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西日本高速道路㈱ |
新名神高速道路 高槻高架橋西(鋼上部工)工事 |
2027年2月 〃 |
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清水建設㈱ |
鉄骨関連その他工事 |
2022年7月 〃 |
c.販売実績
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セグメントの名称 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
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金額(百万円) |
金額(百万円) |
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鉄構 |
61,380 |
49,975(-) |
|
建築 |
10,647 |
9,607(-) |
|
その他 |
164 |
156(-) |
|
合計 |
72,192 |
59,740(-) |
(注)1 当事業年度の期首より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しています。販売実績は当該会計基準等を適用した後の金額となっているため、前事業年度と比較した増減率は記載していません。
2 前事業年度の完成工事高のうち請負金額20億円以上の主なものは、次のとおりであります。
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西日本高速道路㈱ |
新名神高速道路 八幡ジャンクションBランプ1号橋他4橋(鋼上部工)工事 |
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中日本高速道路㈱ |
名古屋第二環状自動車道 西蟹田第一高架橋他6橋(鋼上部工)工事 |
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国土交通省 |
国道45号 気仙沼湾横断橋小々汐地区上部工工事 |
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国土交通省 |
福岡208号 筑後川橋上部工(P4-P8)工事 |
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東急不動産㈱ |
(仮称)浅草二丁目計画新築工事 |
当事業年度の完成工事高のうち請負金額40億円以上の主なものは、次のとおりであります。
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首都高速道路㈱ |
(修)上部工補強工事1-207 |
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中日本高速道路㈱ |
名古屋第二環状自動車道 服部高架橋他2橋(鋼上部工)工事 |
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中日本高速道路㈱ |
名古屋第二環状自動車道 大西南第二高架橋他10橋(鋼上部工)工事 |
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国土交通省 |
平成30-32年度 新町川橋上部工事 |
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中日本高速道路㈱ |
新東名高速道路 上粕屋高架橋他5橋(鋼上部工)工事 |
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
100分の10以上の相手先はありません。
当事業年度
西日本高速道路㈱ 9,590百万円 16.1%
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態
財政状態の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度におきましては前連結会計年度終盤から当連結会計年度にかけて鉄構セグメントの中の鋼橋事業において複数の大型案件が竣工を迎えたことから運転資金が大幅に減少しました。その結果、資産の部では売掛債権(受取手形・完成工事未収入金等)が10,326百万円、未成工事支出金が3,742百万円、負債の部では短期借入金が15,072百万円、いずれも前連結会計年度に比べ減少いたしました。
また、関係会社株式が同じく604百万円増加していますが、これは持分法適用会社に係る持分法による投資利益を883百万円計上したことによるものであります。
(ロ)経営成績
当連結会計年度は第2次中期経営計画の2年目でしたが、当連結会計年度においても新型コロナウイルス感染症の影響で民間設備投資が抑制されたことで民間関連事業の受注が低迷し、引き続き厳しい事業環境となりました。
当連結会計年度の経営成績の具体的な内容としましては、売上高は、鉄構セグメントは鋼橋事業において前連結会計年度終盤から当連結会計年度にかけて複数の大型新設工事や大規模更新工事が竣工した反動で大きく減少しました。また、土木、建築セグメントも繰越工事の減少で減収となりました。この結果、売上高は103,760百万円(前連結会計年度は115,545百万円)となりました。営業利益は、売上高が減少した土木や建築セグメントで減益となりましたが、鉄構セグメントが鋼橋事業で工事竣工に際しての設計変更が想定以上に獲得できたことや工場における採算性の改善で増加したことに加え、当連結会計年度より独立させましたソリューションセグメントが好調に推移したことで、6,412百万円(同5,565百万円)となりました。経常利益は持分法による投資利益が前連結会計年度より1,633百万円減少したことなどで、7,689百万円(同8,048百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失などの特別損失が352百万円発生したことなどで、5,176百万円(同6,340百万円)となりました。
なお、セグメントごとの経営成績の状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(ハ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの事業は基本的に個別受注方式でありますので、それぞれの事業の市場環境や発注状況が事業ボリュームや採算性に大きな影響を与えますが、その具体的な内容は以下のとおりです。
鉄構セグメントにおける鋼橋事業及び土木セグメントにおけるPC橋梁事業の市場は、その相当部分が公共事業となる国や地方自治体からの発注と、同様の色彩が強い高速道路会社からの発注であるため、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化します。次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業及び建築セグメントの建築事業が対象とする市場は、民間設備投資に係るものであるため、景気動向に左右される傾向にあります。
また、当社グループの損益においては持分法適用関連会社である佐藤工業株式会社を筆頭とする佐藤工業グループの持分法投資損益が大きく影響する傾向にあります。すなわち当社グループは佐藤工業株式会社の49.9%の株式を保有しており、佐藤工業グループの資本及び対応する期間損益が持分割合に応じて当社グループの損益に反映されることになりますが、佐藤工業グループの事業規模が当社グループより大きいこともあり、その資本及び対応する期間損益の状況によって当社グループの経常損益以下に影響が生じる可能性があります。
その他の影響を与える要因やリスクにつきましては「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(ニ)セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について
当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることでありますが、セグメント別の認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
鉄構セグメントの鋼橋事業では、当面は関西方面での大型案件や「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に係る道路の4車線化に向けた発注等が見込まれることから、一定程度の発注量が見込まれていますが、新設は長期的には緩やかな減少が想定されています。そのため、今後ますます受注競争が激化することが見込まれますが、当社グループでは受注力の強化に向けて入札における技術提案力を向上させ、適切な入札価格の設定を行うことで適正な事業量と収益の維持・拡大を目指します。また、新設鋼橋市場の縮小により工場製作する鋼構造製品の減少に備え、複合構造橋梁・合成床版の拡販と土木・海洋構造物市場等への展開に努力してまいります。
次に同セグメントの鉄骨事業では、首都圏を中心とした大型再開発案件を中心に事業展開を行っていますが、五輪後の大型案件までの端境期が長引いていました。しかしながら前連結会計年度の終盤より漸く商談が本格化する兆しが出てきています。今後、鉄骨の製作とともに鉄骨建方まで一貫して対応できる強みを生かしつつ、事業収益の拡大を目指してまいります。
土木セグメントではPC橋梁市場において「新設」・「更新」・「保全」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクト・マネジメントを取り入れ、受注と利益拡大、固定費圧縮、原価低減の徹底を図っています。
そういう中、高速道路会社の床版取替えを中心とした更新工事市場は近年急速に拡大したことに伴いゼネコンの進出が顕著となってきており、また案件の大型化に伴い、選別受注を余儀なくされる事態となっています。
今後はJVでの受注を含め受注戦略を再検討するなど、受注の安定的な確保と採算性の向上で一層の収益拡大を目指してまいります。
建築セグメントでは、新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く受けていましたが、当連結会計年度の後半には得意とするシステム建築で複数の大型案件を受注することができました。今後は技術提案等によるコスト削減を進め、収益性の高いセグメントを目指します。
当連結会計年度より独立させましたソリューションセグメントにつきましては、国土交通省が推進するDX化の流れに乗って、設計から工事までのBIM/CIMが本格化する中、3次元CADを基軸とした当社グループの製品群が好調に推移したことに加え、これまで行ったM&Aの効果等もあり好調に推移しました。この事業環境は当面続くと想定されることから、当社グループとして引き続き積極的に取り組んでまいります。
その他では航空関連事業は前連結会計年度からの新型コロナウイルス感染症の影響で業績の低迷が続きましたが、徐々に改善してきています。また、受注の伸び悩みで業績が悪化した橋梁付属物販売事業につきましては今後受注の確保と固定費の圧縮を行うことにより採算性の向上を図ります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
その中で、当連結会計年度のキャッシュ・フローの特徴的な点として税金等調整前当期純利益が7,359百万円に止まったにも関わらず、営業活動によるキャッシュ・フローは20,391百万円のプラスとなっています。これは前連結会計年度において、鉄構セグメントの鋼橋事業で長期の大型案件が複数進行していたことで膨れ上がった運転資金が、それら案件の竣工に伴い売上代金が順調に回収されたことが主な要因です。これに伴い、短期借入金を15,072百万円減少させて対応しましたので、財務活動によるキャッシュ・フローは15,811百万円のマイナスとなりました。
・資金需要
当社グループの事業活動における資金需要には大きく分けて運転資金と設備資金があります。
運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、一般管理費等があります。当連結会計年度におきましては上述のとおり特に鉄構セグメントで減少いたしました。
また、設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空関連事業を営むに必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。当連結会計年度におきましては全体で2,554百万円の設備投資を行っていますが、その内訳は「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。
・財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部資金の活用とともに金融機関からの借入を中心とした資金調達を行っています。
運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。そのことを踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期借入と長期借入を組み合わせ、資金調達の弾力性を確保しています。短期資金については金融機関15行との間で総額210億円の当座貸越契約を個別に締結し、十分な借入枠を確保するとともに、長期資金については年間の調達計画を作成の上、その計画に沿って随時調達を行っています。
金融機関に対しては平素より業績や資金の状況について説明を行うことで信頼関係を維持し、財務の安定性と弾力性を確保しています。
また、金利面につきましては過度の金利変動リスクを回避すべく、一部の借入については金利スワップなどの手段で金利の固定化を図り、変動金利部分と固定金利部分のバランスを取っています。
・経営資源の配分
当社グループでは事業活動から得られる営業キャッシュ・フローについては将来に向けての「設備投資」と「株主還元」、「財務体質強化」に適切なバランスをもって配分する方針としています。そういう中で現在の当社グループの置かれた状況を踏まえ、2020年度を初年度とする第2次中期経営計画においてはその期間中の配分計画は以下のとおりとしています。
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営業キャッシュ・フロー(3年間計) 150億円 |
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設備投資 100億円 |
株主還元 15億円 |
財務体質強化 35億円 |
2年目となります当連結会計年度までの累計といたしまして、設備投資5,878百万円、株主還元1,064百万円を実施しており、概ね順調に推移していると判断しています。引き続き、上記配分計画の達成を目指してまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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契約会社名 |
相手方の名称 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
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川田建設㈱ (連結子会社) |
極東鋼弦コンクリート振興㈱ |
フレシネー工法 |
1.フレシネージャッキの有償借入 2.PC鋼材及び定着装置・ケーブル付属品の有償購入 |
1977年10月11日より 1982年10月11日まで 以後2年毎更新 |
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㈱橋梁メンテナンス (連結子会社) |
S.A.S FPC (フランス国) |
シーペックジョイント |
同製品の国内製作・販売ライセンス契約 |
2015年7月11日より 2018年7月9日まで 以後3年毎更新 |
(注) 上記の技術受入契約においては、それぞれロイヤルティとして、資・機材の利用あるいは売上に対して一定額を支払っています。
当社グループでは、社会のニーズに高い技術で応えることができるよう、研究開発活動を積極的に推進し新しい技術の開発や知見の獲得に務めています。研究開発体制としては、川田テクノロジーズ㈱がグループを跨いだ生産性向上技術や新しい市場を目指した技術開発を担当し、グループ各社が事業活動に直結する研究開発を担当しています。
当連結会計年度における研究開発費は
(鉄構セグメント)
主に川田工業㈱の橋梁事業部が、鋼構造・複合構造に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は
① 複合構造に関する研究開発
当社グループが得意とする鋼材とコンクリートの複合構造物では、鋼・コンクリート合成床版やプレビーム合成桁等の製品で多くの実績を収めてきました。合成床版に関しては、施工性や耐久性を大幅に向上させた「SCデッキ・スタッドレス」の実績が急増しており、引き続き、様々なニーズに応えるための開発を進めています。また、今後ニーズが高まる橋梁の架け替えに適したSCスラブ橋等の製品に関しても、適用範囲の拡大や、競争優位性をさらに高めるためのリニューアルを進めています。
② 橋梁保全技術に関する研究開発
高速道路の高架橋から地方自治体の一般橋梁まで、「最小限の労力と費用で適切な維持管理が可能な保全アイテムの創造」をコンセプトに開発を進めています。既に開発済みの鋼床版桁疲労き裂部に対する補強工法の応用として、鋼製橋脚の支点部ダイヤフラムに設置する補強工法を開発し、試験施工を完了しています。また、歴史的鋼橋に多く利用されているリベット接合に対して、取替可能なリベット施工システムを開発し、知財の取得を完了しています。今後迎える保全事業を主体とした時代を見据え、多種多様なニーズに応えるためのラインナップを整えています。
③ 生産技術に関する研究開発
高能率・高品質で低コストの新たなアーク溶接法の開発、溶接部疲労強度向上施工法の開発、溶接の可視化による溶接現象の解明と理解を通した最適溶接条件の検討等を進めています。また、川田テクノロジーズ㈱技術研究所と共同でハイダイナミックレンジ画像処理技術を用いた溶接技量評価技術及び溶接品質判定技術の開発も進めています。製作工場では部材寸法計測装置(レーザートラッカー、3Dスキャナ)を新しく導入し、出来形管理の高精度化と計測作業の省力化を進めています。
④ 現場の生産性向上に関する研究開発
橋梁の架設現場での生産性向上を図るために新たに開発したIoTに対応した測量システムや塗装品質管理システムを投入し、データの取得から書類作成までの工程をデジタル化することで着実な省力化、省人化の効果を上げています。またAIを利用した検査技術の開発や、今後拡大する保全事業を視野に入れた機械開発を川田テクノロジーズ㈱技術研究所と共同で行い、現場の品質保証能力を高めつつ、施工の効率化を推進しています。
(土木セグメント)
川田建設㈱が、コンクリート構造物に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は
① 新設構造物の品質・耐久性向上技術に関する研究開発
各種施工管理システムの高精度化・全自動化を目的として研究開発を推進しています。ジャッキの油圧ポンプ操作を含めてタブレットで集中管理できる全自動緊張管理システムを遠隔臨場の形でも適用しました。また、高炉スラグ微粉末やフライアッシュを配合した高品質・高耐久性コンクリートの研究開発を継続実施しており、今年度は九州工場を対象に海洋構造物仕様の試験練りを実施し、来年度から性能データを取得していきます。今後とも当社プレキャスト製品のJIS認定範囲を拡張することで、製品の販路拡大を図っていきます。
② 更新技術に関する研究開発
今後需要が増大する橋梁の改修・更新技術に着目して、更新用プレキャストPC床版とPC中間定着システムの研究開発を継続して推進しています。前者についてはNEXCOでの12件目の工事受注に結びつき、昨年度から現場作業の省力化技術の検討を開始しています。競争力向上のために開発を進めていた繊維補強軽量プレキャストPC床版は輪荷重走行試験が完了し、NEXCO規準における100年相当の耐疲労性が確認でき、NETIS登録を申請しているところです。後者については適用PC鋼材種類の増加に伴い、金具の更なるコンパクト化を検討するとともに、拡幅工事に適用可能な特殊接続具等の開発も進めています。
③ 保全技術に関する研究開発
既設PC橋梁の維持管理をターゲットにした非破壊検査技術、延命化・長寿命化技術について工法化を目指して、大学や専門会社と共同して基礎的な研究開発を継続しています。非破壊検査技術として塩害劣化したプレキャスト桁におけるPC鋼材の破断検知の研究を継続し、長寿命化技術としてKKグラウト注入工法が完成し、予防保全技術として簡易な塩分除去工法を研究中です。また、補修工事における作業環境改善対策として、川田テクノロジーズ㈱技術研究所と共同で現場ビューワーによるデジタルツイン化や作業補助装置の開発を継続しています。
(建築セグメント)
川田工業㈱建築事業部が、川田工業㈱事業企画部と連携して研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は
① 耐震/制振用の座屈拘束ブレースに関する研究開発
研究・開発を継続している座屈拘束ブレース「ハイパー・ブレース」は、市販の一貫構造計算ソフトに製品のデータベース組み込みが完了しました。製品番号の入力により「ハイパー・ブレース」の設計が可能になり、今後の拡販に期待できます。
② 耐火断熱仕様の外壁材の研究開発
多層階建物や都市部に建設する建物の外壁には耐火性能が要求されます。また、倉庫・工場建築においては室内の温度環境を重視する案件が少なくなく、外壁に断熱性能も求められます。これらの要求に応えるため、システム建築用の鋼板外壁材と断熱材を組み合わせた耐火断熱仕様の外壁材を開発し、商品化を目指しています。
③ システム建築設計におけるDXの取組
システム建築における設計技術の伝承と若手社員の生産性向上を目的とした設計支援システムを、川田テクノロジーズ㈱技術研究所と共同で開発に着手しました。今まで蓄積されてきた物件情報をデータ化して、類似案件の検索や構造断面の推測を可能にするシステムを目指しています。
④ 環境事業に関する研究開発
水やりが基本的に不要な屋上緑化システム「みどりちゃん」は、フィリピンにおいて新たに実験施工を行いました。北アメリカ、シンガポール、インド、タイにて施工済みの実験場のモニタリングを継続的に実施しており、実験結果に基づく研究開発を引き続き行い、香港に続く海外市場の開拓を目指します。
また、「みどりちゃん」が有する機能を壁面緑化に応用したローメンテナンスでデザイン性に優れた新しい壁面緑化システム「Stand by みどりちゃん」を開発し、実証実験を国内で実施しました。今後、実証実験に基づく改良を行い、製品リリースの準備に入ります。
(ソリューションセグメント)
川田テクノシステム㈱が建設向けソフトウエアソリューションに関する研究開発を、カワダロボティクス㈱が産業用双腕ロボットに関する研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は
① 3DCADシステムを用いたインフラ設計に関する研究
3DCADシステムを単なる描画システムとしてではなく、設計システム及び積算システムなど周辺システムとコネクトすることで設計事業における業務効率化と高度化、品質向上を実現しています。
② 情報統合表示に関する研究
電子地図を基盤とし、3Dモデル、2D図面、点群データのほか、動画や写真など関連情報を統合表示及びグラフィカル表示を実施しています。多様な情報を統合管理することで意思決定や情報把握の効率を飛躍的に向上しました。
③ 情報分析及び表現技術の研究
DXの普及により、情報共有システム「basepage」には多様な情報が集積されています。これらの価値を創出するため、情報分析・解析及び視覚的表現を実施できるコンテンツ群を構築しました。
④ 双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」に関する研究開発
双腕ロボット関連では、川田テクノロジーズ㈱基盤技術研究室と共同で「NEXTAGE」のハードウエア及びソフトウエアの性能・機能、拡張性向上を目的とした要素技術開発を実施しています。成果として、当連結会計年度では、NEXTAGEシリーズの新型ロボットFillie(フィリー)としてリリースされました。
⑤ 外部研究機関との共同開発
国際的な先端研究機関であるエディンバラ大学(イギリス)、テクナリア(スペイン)などの外部研究機関との共同開発により、ビジュアルフィードバック、APIを使用した様々な周辺機器・装置への接続などの双腕ロボットの市場価値を高めるための技術開発を継続して実施しています。
この他、特定のセグメントに関連付けされない研究開発を実施しています。これらの当連結会計年度における研究開発費は159百万円であります。主な研究開発の状況は次のとおりです。
川田工業㈱では、非平衡プラズマによる気相化学反応を利用した水素製造やCO₂分離還元技術の研究開発に取り組んでいます。本研究開発は、国立大学法人東海国立大学機構(岐阜大学)と澤藤電機㈱(本社:群馬県太田市、代表取締役社長:吉川昭彦)と共同で、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトである「カーボンリサイクル技術の共通基盤技術開発」の中の「放電プラズマによるCO₂還元・分解反応の基盤研究開発」として実施中です。また、川田テクノロジーズ㈱では、㈱オリィ研究所(本社:東京都中央区、代表取締役:吉藤健太朗)と共同で、外出困難者の社会参加を目指した遠隔操作ロボットの開発を行っています。当連結会計年度は双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」を応用した分身ロボットシステム「Tele-Barista」の継続的な運用の実証試験を兼ねて開始しました。
当社グループでは引き続きサステナブル社会の実現に向け、関係機関と協力しながら研究開発を続けて参ります。