文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、トータル試作部品加工から各種金型製作、量産加工までの総合加工メーカーのトップランナーとして、また、著しい成長が見込まれるサービス・サポート系ロボット分野におけるスタートアップ企業の包括的事業化支援企業として、高い技術力と夢とチャレンジ精神を持って、顧客には信頼と満足を、社員には生きがいと幸福の実現を提供し、また環境との調和を図り、地域社会・地球環境に対し良き会社であり続けることにより、社会に貢献します。
(2) 経営環境及び戦略
当社グループの置かれている環境としましては、主要顧客であるデジタルカメラ、時計、事務機器等の精密電子機器メーカーならびに自動車関連部品メーカー等の研究開発及び生産状況は、当年度後半から市場の需要ならびに開発意欲等に回復傾向が見られましたが、参入企業も多く、単価の下落傾向も継続するなど、競争環境は引続き芳しくなく、当連結会計年度は年度を通じて前年度並みの厳しい結果となりました。先行きに関しても不透明な状況が続いておりますが、当社グループといたしましては、新規市場であるホビー関連、半導体分野に対し引続き注力していくとともに、5G対応、携帯/ウエアラブル端末、環境/省エネ/再生可能エネルギー分野への参入を目指して参ります。製造工程の改善による超短納期化とそれに起因する製造コスト削減への取り組み、技術力・設備力を生かした切削加工・金型製造分野の探索などのほか、大手メーカーとの連携による国内・海外のOEM案件の発掘に注力していきたいと考えています。
また、著しい成長が見込まれるサービス・サポート系ロボット分野において、これまで培った総合ものづくり力を生かし開発・試作・量産などの製造面の支援だけでなく、資金調達・販売・保守などの事業化面の支援も引続き実施して、「包括的な事業化支援企業」としての地位を確立し、グループとしての収益機会の拡大、企業価値向上を図ります。
(3) 対処すべき課題等
① 競争力の強化
当社グループの主たる顧客である精密機器、電気機器の完成品メーカーの多くは、近年、中国をはじめとしたアジア諸国への生産拠点移転が進んでおり、アジア諸国の金型製造技術の向上は、日本国内金型市場へのアジア製品進出の契機となり、競争状態を激化させることとなっております。
また、昨今、急速に製造業においてもリモート化・DX化の波が押し寄せ、更なる短納期化・低価格化が求められております。
国内においても、試作品製造に参入する製造会社が増加しており、競争の激化に拍車をかけております。さらに、完成品メーカーの研究開発投資動向は安定的ではなく、開発投資の循環が存在しており、試作企業、金型製造企業はこの循環において、円滑な事業機会獲得に向けて、持続的に経営の最適化を図っております。
このような経営環境に適合して事業を推進するために、当社グループとして、当社独自の「一括一貫体制」による総合ものづくり力をさらに強化し、リモート化・DX化に取り組み、迅速に正確な情報を収集するとともに、難易度の高い仕様や短納期、新規材料への対応を可能とする技術水準向上や操業度の確保に努めることによって、競合他社との差別化を図り、競争力を強化するとともに、積極的に新規分野への営業展開を拡大していくことが重要であると考えております。
② 人材の確保、育成
変化する事業環境に最適な企業構造を保ちつつ、長期的な成長を担保するために、優秀な人材の確保、育成が急務であると考えております。従業員のキャリアアップに重点をおいた個別のプログラムを策定し、外部・内部研修、資格取得支援、OJT(On-the-Jobtraining)を積極的に推進し、従業員のエンゲージメント向上に取り組んでおります。また、対象製造品は、部品単位からユニット・製品単位となり、多岐にわたり、他社との連携の必要性を背景に多様な知見を有し、これら連携を円滑に推進する事業プロデューサーの育成が肝要と考えております。一方で、少子高齢化、多様な働き方による製造業での人材不足に直面し、電気電子・制御・調達等の専門性の高い分野においては、経験豊富なシルバー人材も有効に活用してまいります。
このような背景に対し、当社は、今後の日本の製造業の中心分野の一つになる可能性のあるサービス・サポート系ロボット分野に注力し、多岐にわたるスタートアップ企業との連携により、魅力ある事業を展開することで人材を確保し、さらに、次世代を担う新しい技術を習得したマルチな幹部候補生を育成し、継続的な事業環境を創造してまいります。
③ 技術の研鑽
精密機器、電子機器の技術革新は、その部品構造の微細化を要求することとなり、このことは、当社グループの顧客要求仕様の高難易度化をもたらしております。特に加工寸法精度については、従来の100分の2~3mm程度から1000分台へと大幅に水準が上昇しております。一方、加工対象の形状についても、曲面加工が要求される機会が多くなるなど、複雑化する傾向にあります。
このような技術環境に対して、当社は常に新しい加工技術を導入することに挑戦し、高精度の最新製造設備の導入と、創業以来培ってきた「匠の技」の伝承を継続的に実施することで、より短納期に資する工程改善に取り組むことにより、更なる競争優位をもたらす技術力を育むことが重要であると考えております。
④ 新規事業の創出
現在、当社は、サービス・サポート系ロボットを中心とした成長著しいスタートアップとの連携構築を強化しております。「ものづくりメカトロ研究所」ではこれまでに蓄積してきた高精度製作技術に加え、電気、制御技術等を含めた製品製造の技術の蓄積、受託開発、製品試作、量産品製造を推進するとともに、国内外で定められている多様な安全規格に基づいた製品としての品質保証体制の構築、医療機器製造の認可の取得にも注力しております。
また、発展途上であるサービス・サポート系ロボット産業分野において、ユーザーニーズの取得、新規製品の啓蒙のため、マーケティング・販売活動を推進することも重要であると考えております。実際に見て・触れて・体験して頂く「東京ショールーム」を活用した情報発信・収集、また、当社をハブとしてスタートアップの販売網を共有化することで顧客開拓を推進する「クロスセル」の取り組みに注力しております。加えて、資金面の支援を実行するため、「ロボットものづくりスタートアップ支援ファンド」を通じて資金支援しております。またスタートアップ関連製品の販売体制、サービス運用体制、製品の全国的な保守を行うための企業連携を通じて保守体制を整備し、これまでの製造支援だけでなく、経営全般を包括的に支援することで、受託型加工企業からスタートアップとの連携プラットフォームを構築する総合的なスタートアップ事業化支援企業へと成長を図ってまいります。
近年は、単に製品を創出するのではなく、環境・社会・経済を両立させるSDGsの目標に沿ったテクノロジーの創出が求められており、当社は連携プラットフォームによって多くのスタートアップと連携しながら、社会の課題解決に寄与するソリューションを提供してまいります。
⑤ サステナビリティ経営への取り組み
SDGsへの取組みが求められる中、当社グループは、「サステナビリティの基本方針」に基づき、サステナビリティ委員会を設置し、ガバナンスの強化により、企業活動のリスク軽減に努めるとともに、健康経営・働き方改革を推進し、従業員の多様性を重視し、技術者の育成・確保に取組み、従業員のワークエンゲージメントを向上させます。また、CO2の削減目標を設定し、環境負荷軽減への取組みにも注力いたします。そのために適切な成長投資を継続的に実施し、環境や社会に貢献するモノづくりを志向して、社会から信頼され、長期にわたって市場から求められるように努めます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
2023年8月、「当社取締役会の実効性に関する評価結果の概要について」で、当社が事業活動を通じて重要な社会課題「マテリアリティ」として特定することとしました。
a. マテリアリティのリスクとしては、
・ 環境リスク:企業活動が環境に悪影響を与えることにより、課題が生じる可能性があります。
・ 社会リスク:企業活動が地域社会やステークホルダーに対して問題を引き起こす可能性があります。
・ 経済リスク:企業活動が市場環境や競合環境に影響を与え、事業戦略を変更する必要性が生じる可能性があります。
サステナビリティ重要課題として当社が事業活動を通じて解決していく重要な社会課題である「マテリアリティ」として再定義しました。
b. マテリアリティの機会としては、
・ 持続可能なビジネスモデルの構築
・ ステークホルダーへの信頼構築
・ 新たなビジネスチャンスの創出
以上のように、マテリアリティは企業が事業活動を行う上で大変重要な視点となります。リスクを適切に把握し、機会を確認することが、企業の持続可能な成長につながることとしました。
当社グループを取り巻く事業環境は、国際情勢や原料高騰等の環境が大きく変わるなか、今まで以上に変化しております。このように変化する事業環境に迅速かつ的確に対応し、安定的な成長を実現するため、取締役会を中心とした体制を構築し、経営基盤を強化し、事業環境の拡大と課題解決を図って参ります。
社会・事業環境の変化に伴うサステナビリティに関する取り組みについても、サステナビリティの基本方針を制定するとともに、2024年6月開催の取締役会にて、従来の「CSR委員会」を「環境」「社会」「経営」の3分野を腑瞰する「サステナビリティ委員会」に体制を変更しています。サステナビリティ委員会は、総務担当取締役を委員長とし、委員長が指名したメンバーにより委員会を運営し、現状把握、問題点の抽出、推進策等の検討を行い、取締役会に対して適宜、委員長である総務担当取締役より活動の報告を行い、助言を受け活動の活性化と推進を図ってまいります。
また、重要な課題については、中期経営計画のなかで取り上げるなど、対応策の推進を行っております。
当社グループは、経営理念、グループ企業行動規範に基づき、お客様、取引先、株主・投資家、従業員、地域社会など全てのステークホルダーとの対話を尊重し、以下の5項目を重要課題と定め、実行していくことで持続可能な社会の構築に積極的に役割を果たすとともに、企業価値の向上に努めます。
① 品質向上
常にお客様が期待される水準の品質を提供できるように努めます。
② 地域社会への参画・貢献
事業活動などの活動を通じて、地域社会の活性化に積極的な役割を果たします。
③ 人材育成
従業員の健康・安全を企業成長の基盤と考えています。
健康経営を実践することで、労働環境の向上に努めるとともに、従業員のエンゲージメントを向上させ、従業員の育成に取り組みます。当連結会計年度においては、特にハラスメントの撲滅を目指し、研修会・個別面談の実施等に取り組みました。従業員の多様性も重視し、社員の能力開発のための教育の機会を積極的に提供することを目的に、個人のキャリア形成のプランニング策定とそれに伴った育成計画の策定、外部教育機関への講習受講を推進しています。
④ 人権の尊重
性別や国籍などの属性に関係なく全てのステークホルダーの人権を尊重します。
⑤ 環境への取り組み
事業活動を通じて積極的に環境問題に取組むとともに、環境問題に積極的に取り組むスタートアップを積極的に支援して参ります。また、CO2削減計画を策定し、環境負荷軽減に取り組みます。
当社は、直接的あるいは間接的に当社の経営または事業運営に支障をきたす可能性のあるリスクに迅速かつ的確に対処するため、各管轄取締役より取締役会へリスクの報告を行い、取締役会にて対処方針を決定し、継続的に取り組んで参ります。
当社では、人材育成、人権尊重の観点から、健康経営に取り組んでいます。中期経営計画の最終年度である2026年度までに、経済産業省の[健康経営優良法人認定制度]における認定法人を目指しており、前連結会計年度に前倒しで健康経営優良法人2024(大規模法人部門)の認定法人となりましたが、従業員の減員により、新たに(中小規模法人部門)への認定継続のため、健康保険組合「銀の認定」の取得に取り組んでおります。
また、環境への取り組みの一環として、二酸化炭素の排出量削減に努めております。当社では電気使用料削減目標を2030年までに基準年度(2018年度)比30%、且つ前年度比1%の削減に取り組んでおります。当連結会計年度は、基準年度比23.3%、前年度比1%の削減を実現し、二酸化炭素の排出量の削減にも貢献しております。
当社は、「女性の活躍企業データベース」に未登録ですが、2025年6月の取締役会にて、自社の女性活躍の状況の把握、課題分析、育児休暇、男女の賃金格差などの状況の考え方及び取組みについて、課題を共有しました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 市場環境の変化について
当社グループの顧客は、自動車、時計部品、事務機器メーカーなどであり、開発試作モデルの設計から金型製造及び機構・内装部品等の製造、並びに量産製品の製造を受注しております。従いまして、当社グループの経営成績及び財政状態は、取引先の新製品開発計画、モデルチェンジの周期、開発予算及び市場の需要動向等の影響を受ける可能性があります。当社では、毎月開催の定例役員会において取引先の状況や見積り動向(件数、価額等)、受注単価動向等の情報の共有を行い、毎週1回開催の役員連絡会では取引先の動向、仕入先の動向等の情報を共有し、役員並びに会議参加者が担当部署への情報伝達を行い、稼働調整やリモート化・DX化を推進して機動的で幅広い情報収集など徹底を図っております。需要回復ならびに顧客の開発意欲の回復機運は徐々に高まっているものの、依然として米国の金融政策、東欧情勢不安、電子機器部品の世界的な供給懸念など影響も残り、先行きに関しましては、未だ不透明な状況が続いております。
(2) 試作レスについて
従来の製品開発では、図面に基づきいくつもの「試作機」をつくり、実験や検証を繰り返し、新しい課題の発見や開発者の間のイメージの共有などを行ってきました。当社は、創業以来、生産などに関する様々な技術を蓄積伝承し、それらをもとに精密金型技術を基盤とした現在の事業を展開しております。最近ではコンピューターの仮想環境で試作機に相当するモデルを作成し、性能や品質の評価が行われるようになりました。当社の予測の範囲を超えた技術革新がなされた場合には、当社の技術競争力が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 内部管理体制について
当社グループは、コーポレート・ガバナンスのさらなる充実に努めており、財務報告に係る内部統制を含め、内部統制システムの充実強化を図っています。しかしながら、事業環境の変化に対応しながら事業拡大に取り組む中で内部体制の整備が追い付かない状況が発生した場合には、ステークホルダーの信頼を一挙に失うことにもなりかねず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 新規事業の開発について
当社グループの独自製品であるマッスルスーツ、ドローン、配送ロボット等を始めとしたサポート・サービスロボットの開発・製造に積極的に取り組んでいますが、人材の不足、開発の遅れ、各種実証や認証の対応等に時間を要する等のリスクが潜んでおり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(5) 機密保持について
当社グループは、顧客の新製品の開発や研究等、高度な機密情報を数多く取扱っており、機密情報の管理は経営の重要な課題と認識しております。このため「情報管理規程」を制定し、社内研修の実施、社内入出管理、作業指定区域の指定、データ・図面・製品・仕掛品・文書等の管理を行い、全従業員及び外注先に対する機密保持誓約書の徴求を行うなどして、制度・管理の両面において機密保持に関する十分な注意を払っております。しかしながら、万一機密情報が外部へ流失した場合、当社グループの信用失墜に伴う受注減少や賠償責任の発生等により経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(6) 製品の品質について
当社グループは、顧客と合意した仕様(寸法、材料、加工方法)を満たすものか否かにつき充分な検査を実施したうえで、製品を出荷いたします。さらに、当社製造過程の過失により製品欠陥が発生した場合に備え、製造物責任賠償保険に加入しております。しかしながら、製品欠陥が生じた場合は、当該保険範囲を超過した賠償請求の発生および当社グループの信用失墜によって、経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(7) 納期について
当社グループの試作・金型事業では、顧客の試験研究・新規開発に使用される試作品を製造しているため、開発競争の激化による新製品開発サイクルの短期化等の要因により、従来にも増して当社グループへの短納期化が求められている状況であります。当社グループでは、納期を厳守するために製造管理をしておりますが、納期遅延が発生した場合には、継続的な受注が確保出来なくなるおそれもあり、この結果当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(8) 原材料価格の変動等について
当社グループ製品は、概ね金属や樹脂を材料としております。鉄、銅、真鍮等の金属や、原油の市況高騰によって、材料の入手が困難となった場合には、製品の製造遅延及び原価上昇等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(9)人材確保及び育成について
当社グループの事業成長や安定的な経営体制確立のため、経営管理部門及び製造部門における人的資本の充実が必須であると考えられます。しかし、提出会社の従業員の平均年齢は45.7歳(2025年4月末)となっており、国内での少子高齢化による労働人口の減少、人員基準を満たす人材獲得に積極的に取り組んでおりますが、生産技術の継承に支障が生じる可能性があります。現状は、危機意識をもって行動のできる従業員、周りを見ることができる(前後の工程に配慮できる)従業員の貢献に支えられています。今後の業容拡大や熟練技術者の退職により、人材確保及び技術者育成等が追いつかない場合、納期遅延、品質低下等の問題が発生し、継続的な受注が確保できなくなることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(10) 為替変動の影響について
当社グループは、経営戦略に基づき、海外(中国及び韓国)での製造業務を行っており、その製品の一部を当社が仕入れております。従いまして当社グループでは、為替変動リスクの軽減、回避に努めておりますが、外貨建取引においては、為替変動が取引価格や売上高、当該取引に係る資産及び負債の日本円換算額等に影響を与え、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(11) 製造拠点の集中について
当社グループの工場は、東京都八王子市及び福島県下に集中しております。この地域において、当社の想定を超える自然災害等が発生し、人的・物的被害を受けた場合は、工場の生産能力が著しく低下することが予想され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(12) 技術力の向上について
当社グループが提供する金型・試作及び量産の技術による製品は、顧客の試験研究・新規開発に使用されます。開発競争の激化による新製品開発サイクルの短期化等の要因により、新技術開発の必要性が高まっており、従来にも増して技術力の向上を図っておりますが、顧客の要求を満たす新しい技術を常時提供できる保証はないため、今後当社が同業他社と比較して優位性ある提案等ができず、受注機会を逸した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(13) 継続企業の前提に関する重要事象等について
当社グループの業績は、試作・金型および量産製品において、従前のコンシューマエレクトロニクス分野における新規開発案件が継続して減少しておりましたが、当連結会計年度末に於きましては、徐々にではありますが回復基調となっており、新規分野の開拓に一定の成果は見られました。
また、拡大に注力しているロボット・装置等含めた製品においても、グループのスタートアップが資金調達を実施し、開発の推進ならびに受注の拡大となりました。
この結果、前連結会計年度末には純資産額が金融機関との間で締結している、タームローン契約に付されている財務制限条項に抵触していましたが、当連結会計年度末において財務制限条項への抵触は解消しました。
一方で、引続き営業損失が発生していることから、継続企業の前提に関する重要な疑義が存在していますが、営業活動量の増加、新規分野開拓、安定収益層拡大のため量産製品分野の拡大等による受注拡大の施策を推進するとともに、社内組織の統合による生産諸効率化、購買ネットワークの強化による直接費の削減、研究開発費の厳密な管理等に取り組み収益性の改善を計画しております。資金面では、保有する上場有価証券を有効利用することにより、手元資金は確保できるものと判断しております。
以上の状況により、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないと判断しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の状況)
当連結会計年度における我が国の経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要に支えられて緩やかな回復基調をたどりましたが、原材料価格やエネルギー価格の高止まり、米国の相互関税政策による貿易摩擦等により景気下振れが懸念され先行き不透明な状況にあります。
このような状況のもと、当社グループの売上高及び受注の状況は、依然として厳しい状況が続いております。しかしながら、当社の主要顧客である時計、事務機器等の精密電子機器メーカーならびに自動車関連部品メーカー等の研究開発及び生産状況は、前年比では市場の需要ならびに開発意欲等に緩やかながら回復傾向が見られたほか、新規の取り組みであるホビー関連も継続的に受注を拡大させ、試作品製造・金型製造及び量産品製造の受注・生産の状況は前年比増加となりました。ロボット・装置関連製品については、サポート・サービスロボット分野のスタートアップ企業への包括事業化支援を掲げた取組みにより、受託開発や受託製造の引き合いは拡大傾向にあります。しかしながら、株式市場でのスタートアップ分野への資金流入が引き続き慎重な姿勢であること、市場開拓が十分に進まないこと等を背景に、各社開発・製品化への取組み速度が鈍化しております。そのため、高収益案件への発展が限定的となり、ロボット・装置関連製品の売上高は、前年を上回ることが出来ましたが、利益面では計画比弱含みの結果となりました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は5,456百万円(前年同期比4.7%増)となり、売上総利益は1,001百万円(同2.2%減)、営業損失が520百万円(前年同期は649百万円の営業損失)となりました。助成金収入ならびに受取配当金等の営業外収益262百万円を計上し、投資事業組合運用損等の営業外費用191百万円を計上した結果、経常損失が450百万円(前年同期は977百万円の経常損失)となりました。
さらに、投資有価証券売却益、補助金収入ならびに持分変動利益等の特別利益729百万円を計上し、固定資産圧縮損、関係会社債権放棄損及び減損損失等の特別損失194百万円を計上いたしました。これに、税金費用101百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は43百万円(前年同期は818百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
(財政状態の状況)
当連結会計年度末における総資産は、8,563百万円となり、前連結会計年度末と比べ255百万円(前期末比2.9%)の減少となりました。主な増加要因は、流動資産における現金及び預金734百万円(同42.7%)、未収入金231百万円(同2,557.5%)の増加です。一方、主な減少の内訳は、投資その他の資産における投資有価証券1,117百万円(同37.2%)の減少です。
負債は、3,159百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,271百万円(前期末比28.7%)の減少となりました。主な増加の内訳は、流動負債における1年以内返済予定の長期借入金171百万円(同67.3%)の増加です。一方、主な減少要因は、流動負債における短期借入金180百万円(同47.4%)、固定負債における長期借入金942百万円(同83.5%)の減少です。
純資産は、5,404百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,016百万円(前期末比23.2%)の増加となりました。主な増加の内訳は、資本剰余金1,107百万円(同55.7%)の増加です。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ734百万円増加し、2,212百万円(前期末比49.7%増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による営業キャッシュ・フローは、663百万円の支出超過(前年同期は493百万円の支出超過)となりました。主な収入要因は、投資事業組合運用損112百万円、減価償却費146百万円、税金等調整前当期純利益84百万円、売上債権及び契約資産の減少36百万円、主な支出要因は、投資有価証券売却益580百万円、法人税等の支払額199百万円、仕入債務の減少51百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは833百万円の収入超過(前年同期は181百万円の収入超過)となりました。主な収入要因は、投資有価証券の売却による収入931百万円、主な支出要因は、生産設備への投資による有形固定資産の取得による支出77百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、574百万円の収入超過(前年同期は210百万円の収入超過)となりました。主な収入要因は、非支配株主からの払込みによる収入1,152百万円、主な支出要因は、長期借入金の純減額751百万円です。
当社グループは「金属製品加工事業」の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当社グループは「金属製品加工事業」の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。
当社グループは「金属製品加工事業」の単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
(注)主要顧客ごとの情報
前連結会計年度及び当連結会計年度においては、総販売実績の10%を超えている該当先はありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、年度前半は受注状況が低調に推移しましたが、年度後半には、既存先を中心に試作・金型製品、量産品、ロボット・装置等すべての部門において、受注状況が堅調に推移し、試作・金型は前年同期2.0%増加の2,752百万円、量産製品は同2.4%増加の1,417百万円、ロボット・装置等は同14.4%増加の1,249百万円、その他・ガンマカメラ関連等は同6.7%増加の37百万円となり、全体では同4.7%増加の5,456百万円となりました。
売上原価については売上高の増加となりましたが、価格転嫁の遅れや効率化推進効果遅れにより、前年同期比6.4%の増加の4,454百万円となりました。
その結果、売上総利益は、受注競争の激化の影響等もあり、前年同期比21百万円減少の1,001百万円となり、売上総利益率は同2.2%悪化の18.4%となりました。
販売費及び一般管理費は、研究開発費の減少106百万円等により、前年同期比9.0%減少の1,522百万円となりました。
営業損益は売上原価の増加がありましたが、研究開発費の減少により、前年同期比128百万円の改善となり、520百万円の営業損失(前年同期は649百万円の営業損失)となりました。
営業外収益は、助成金収入等の増加により、前年同期比99百万円増加の262百万円となりました。
営業外費用は、投資事業組合運用損、持分法による投資損失等により、前年同期比299百万円減少の191百万円となりました。
経常損益は、営業外収入の増加ならびに営業外費用の減少により、450百万円の経常損失(前年同期は977百万円の経常損失)となりました。
特別利益は、投資有価証券売却益及び補助金収入の増加により、前年同期比429百万円増加の729百万円となりました。
特別損失は、投資有価証券評価損、減損損失、固定資産圧縮損等により、前年同期比155百万円増加の194百万円となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額は、前年同期比4百万円減少の101百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、43百万円(前年同期は818百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
b. 経営成績に重要な影響を及ぼす可能性のある事項
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c. 財政状態及び経営成績の状況
当社グループの財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループのキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、資金需要は主に運転資金、設備投資資金であります。
現在、設備投資資金につきましては、内部資金、銀行借入金により資金調達することとしております。
2025年4月30日現在、借入金の残高は812百万円であります。また、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計680百万円の当座貸越契約及び貸出タームローン契約を締結しており、このうち借入未実行残高は80百万円であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 」に記載しております。
当社は2023年2月22日に株式会社三菱UFJ銀行をエージェントとして、シンジケートローンの形態を貸出タームローンとして更新しております。当該貸出タームローン(2025年4月30日現在の借入残高:1年内返済予定の長期借入金400,000千円)について財務制限条項が付されております。当該の契約に関する詳細等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の貸借対照表関係及び「(2)財務諸表 注記事項」の貸借対照表に記載しているため、記載を省略しております。
(1) 研究開発活動の目的
①既存事業にて培われた技術基盤
当社グループは、主に精密電子機器、事務機器及び自動車部品等のメーカーを顧客として、顧客の製品開発及び生産活動に貢献する試作品、金型、量産品の製造を行っております。これら製造に用いられる金型設計・製作、板金加工、機械加工、成形加工、プレス加工等の各技術は、先端製造設備と当社創業以来培ってまいりました「匠の技」の融合によって構築されております。
②「匠の技」の活用による自社製品創出
当社グループにおいて、創業より培ってまいりましたものづくりのノウハウ、すなわち「匠の技」は競争力の源泉であります。当社はこれを既存事業に活用するのみならず、新規事業(自社製品)の開発に投入し、次世代の収益源として育むべく「ものづくりメカトロ研究所」を社内に設置し、研究開発活動を推進しております。大学や研究機関で生み出された先端の要素技術やアイデアは、それを具現化するマーケティングや実証なども含めたプロセスが重要であり、このプロセスに対し「“匠の技”によるものづくり」を施すことによって、開発側の思いだけで製品化するのではなく、ユーザーのニーズに即した運用性に優れた革新的な製品の創出を図っております。

(2) 研究開発体制(組織、人員)
当社「ものづくりメカトロ研究所」は、「ものづくり」によって培われた「匠の技」を有する技術者、そして 機械工学に精通した技術者、合計15名によって運営されております。更に、高度先端シード技術の導入等を目的として、国内外の大学、研究機関との提携関係を構築しております。そのうえ、研究開発が進展した場合には、ものづくりの実践として先端製造設備を有する当社工場を活用いたします。これらの体制をもって研究開発活動を運営しております。
(3) 研究開発テーマ
①ロボット開発
当社は、分野毎にそれぞれ秀でた技術を有する大学、ならびに当社グループ関係会社との連携において、以下の各種ロボット開発を推進しております。また、注力して推進するスタートアップ企業への包括的事業化支援事業「プラットフォーム構想」の取り組みにおいて、多くのスタートアップ企業の開発を支援しております。
a. マッスルスーツ
持分法適用関連会社の株式会社イノフィスは、東京理科大学が開発した腰痛防止・疲労軽減を目的とした筋力補助装具「マッスルスーツ」を製造・物流・農林水産業・介護等の産業分野へ提供しております。当連結会計年度においては、フレームのないサポータ型「SOFT-POWER」シリーズのエントリーモデル「EASY LIFT」や高所作業時の保護具フルハーネスと一体化させる「HARNESS PLUS」の販売を開始しました。また、主力製品である外骨格型の「EVERY」シリーズの後継機の開発、ならびに運搬を支援するマテリアルハンドリングロボット、熱中症対策の温調服などの開発を進めており、アシストを中心に重作業現場の課題解決に資する製品の創出に取り組んでおります。
b. ドローン
連結子会社のイームズロボティクス株式会社は、ドローン市場拡大に寄与する安全性・信頼性の高い、安価な量産機体の開発に取り組み、国産ドローンの標準化を志向しており、当社はOEM量産提供を連携して実施できる体制構築に取り組んでおります。当連結会計年度においては、国プロであるSBIR(経済産業省)、ReAMOプロジェクト(NEDO)などから受託を受け、有人地帯目視飛行に対応する量産機体開発を進め、国土交通省に「第二種型式認証」を取得するとともに、「第一種型式認証」の取得に引き続き取り組んでおり、物流・防災分野への適用を目指しております。また、開発・販売にとどまらず、サービスの提供や運用システムの構築にも取り組んでおります。特に「一対多運行」による効率的な運用を通じたコストダウンにも取り組むとともに様々な規制改革への対応や、社会実装モデルの構築にも積極的に取り組んでおります。
c. 歩行支援ロボット
連結子会社のWALK-MATE LAB株式会社は、東京工業大学が開発したパーキンソン病患者の歩行安定化や高齢者の歩行促進を目的とした歩行支援ロボットを開発・販売しております。当連結会計年度においては、医療機器認証を取得して、歩行状況の保険診療が可能な「歩行分析 WM GAIT CHECKER PRO」を各医療機関に向けて販売を推進するとともに、歩行と疾患の相関を分析して、疾患予知・予防のシステム構築の開発に取り組んでおります。
d. 案内ロボット
連結子会社のSOCIAL ROBOTICS株式会社は、「働くサービスロボットBUDDY」の製造・販売しております。本ロボットは、飲食店での配膳・下膳業務のほか、宿泊施設や工場・物流センターにおける運搬作業の補助、医療・介護施設やアミューズメント施設等での間接業務の支援など幅広い分野での活用を進めています。当連結会計年度においては、AIカメラとの連動による警備機器として活用、画像認識、音声認識、エレベータや呼び出しボタン連動など、SIerと連携してユーザビリティの高度化を図りました。また従来のマーカ認識駆動タイプに加え、画像認識駆動タイプの製品化にも取り組み、販売を開始しました。
e. 手術支援ロボット
連結子会社TCC Media Lab株式会社は、臨床外科手術について、遠隔操作、微細操作を可能とするための手術支援ロボットの開発を推進しております。当連結会計年度においては、AIを活用した鍼灸支援用超音波モニタリングシステムの臨床データの蓄積を鍼灸院と連携して取り組み、実用化の準備を推進しました。
f.高効率モータ
連結子会社株式会社マグネイチャーは、高出力・高効率を実現する「マグネイチャーモータ」を開発しております。「マグネイチャーモータ」は、コアレス構造の「軽量かつ鉄損が発生しないというメリット」を生かしながら、トルクが小さいという弱点を「強電界を発生させることができるハルバッハ配列を生かしたロータを設置すること」で克服した、いずれの速度域でも、安定したトルク性能と高出力を発揮することを実現するハイブリッドモータです。当連結会計年度においては、高出力の電気自動車に搭載する第5世代サンプルモデルを試作して、性能試験に取り組むとともに、ドローンなどに搭載する比較的小出力モデルの試作に取り組みました。
② その他
当社の微細加工技術を生かしたデバイス開発、新たな加工技術の創出にも取り組んでいます。
a. ホットチャンバ式アルミダイカスト
純度の高いアルミを鋳造する技術の開発を推進しております。本技術で製造された部品は、従来品に比べ、放熱性、表面加工性が高く、微細構造が可能となります。当連結会計年度には、製造装置の量産性向上の開発を推進するとともに具体的な適用分野に対しテストサンプルを多数製作し、適用範囲の拡大に取り組みました。
(4) 研究開発費
当連結会計年度において支出した研究開発費は
ただし、販売費及び一般管理費における研究開発費は415,011千円となっております。これは、研究開発に係る助成金収入を、販売費及び一般管理費の控除項目として処理したことによるものです。