文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2009年4月1日、㈱バイタルネットと㈱ケーエスケーの株式移転により共同持株会社「㈱バイタルケーエスケー・ホールディングス」を設立し、バイタルケーエスケー・グループとしてスタートを切り、今年で16年が経過しました。
当社グループは、「人々が安心して健康に暮らせるよう、地域のヘルスケアを支える」ことをパーパスに掲げ、その実現に向けて日々「経営のスピードアップと市場開拓の強化」「IT技術の駆使と長年培った医薬品流通技術の融合・進化」「シナジーの発揮による収益力の向上」に取り組んでいます。
〇長期ビジョン2035の目指す姿(事業別売上高・営業利益の構成比)
当社グループは2035年度(2036年3月期)に目指す姿として、事業別の売上高と営業利益の構成比目標を次のとおりに設定しています。
(注1)長期ビジョン2035の策定の直前期。
〇中期経営計画2027(FY2025~FY2027)の主な経営指標
当社グループは、2026年3月期から2028年3月期までの3年間の計画である「中期経営計画2027」において、下記の定量目標を掲げています。
(注2)製薬事業の研究開発費控除前の営業利益を売上高で除した値。
(注3)製薬事業の研究開発費控除前の当期純利益を自己資本で除した値。
(注4)10%未満にする計画は2030年3月期を予定しています。
当社グループは、2023年5月に「長期ビジョン2035」を策定しましたが、この度の「中期経営計画2027」の策定において、新規事業として「製薬事業への参入」を決定したことを受けて、「長期ビジョン2035」の実践課題を下記のとおりに変更しました。
「垣根を越えて 薬の先へ “つなぐ”ことで医療の未来を革新する」
・物流機能の高度化
・医薬品卸売事業の刷新
・メディカル関連商材の拡張
・製薬事業への参入(注5)
・レンタル事業の強化
・行政・自治体との連携強化
・薬局事業、動物用医薬品卸売事業の強化(注5)
・ライフサポート事業の展開(注5)
(注5)太字が変更箇所。なお、最後の「ライフサポート事業の展開」は、当初は「ライフサポートの充実」でしたが、今後は前者の表現に変更いたします。
当社グループは、今般、2026年3月期から2028年3月期までの3年間にわたる「中期経営計画2027-Move on to the Next Stage-」を策定しました。その中計の概要は次のとおりです。
「次代を見据えたビジネスモデルの革新―フェーズ2-」
当社は、東証プライム上場企業として、本格的に資本コストを意識したグループ経営の考え方を取り入れ、グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、既存事業の収益力強化と事業そのものの見直しに加えて、積極的な成長投資を行って前中期経営計画よりも、もう一段ステップアップした「ビジネスモデルの革新」を実践していく所存です。そのため、中期経営計画2027の中期ビジョンを「次代を見据えたビジネスモデルの革新―フェーズ2-」に設定し、次の3つの重点施策を実践していきます。
〔3つの重点施策〕
ROICの向上と安定したフリーキャッシュフローを創出するため、次の実践課題に果敢に取り組む。
・流通改善ガイドラインの率先垂範と貢献利益管理の徹底
・都市部や地方の地域特性に合わせた効率的・効果的な配送体制の構築
・DXやAIを活用した業務の効率化や生産性の向上
・デジタルマーケティング強化による新たな収益の獲得
・がん、ワクチン、ウィメンズヘルスケア、地域連携等特色ある医薬流通に注力
・MAPsやLab Access部による新次元の病院MS活動の強化
・難病患者と専門医、薬剤師をつなぐ「おくすりあうん」の事業領域の拡大等
ハードルレートを上回るROICの達成を目指し、次の実践課題に取り組む。
1)連結・非連結子会社の経営統合
2)過剰資本の解消によるROIC改善
3)新規出店やM&Aの展開
ROICの向上と安定したフリーキャッシュフローを創出するため、次の実践課題に取り組む。
1)昨年買収した同業者との事業シナジーの最大化
2)新規事業のペットフード事業の拡大
日本のドラッグラグ・ロスの解消に少しでも寄与しつつ、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するため、欧米承認で国内未承認の有望な医薬品を導入支援する事業に参入する。
1)中期経営計画2027は研究開発期間に充当。早期承認を目指しできるだけ前倒しで研究開発費を投入
従来の「その他事業セグメント」という名称を「介護レンタルその他事業セグメント」に改め、介護レンタル事業の拡大、物流受託事業の拡大、その他周辺事業の撤退や縮小、収益力の強化を図り、ROICとCAGRを改善する。
1)資本収益性が高い介護レンタル事業をM&Aにより事業拡大し牽引。
2)3PL事業の拡大に必要な倉庫・運送業を営む企業のM&Aにより業容を拡大
3)資本収益性が低い事業・部門は、再構築か撤退を判断。
財務健全性と資本効率を両立させる最適な資本構成を意識したバランスシートの管理を行うため、資金調達方針、株主還元方針、資産取得・圧縮方針を定め実行する。
当社が目指す事業ポートフォリオの実現に向けて、注力すべき事業や未来の成長のための投資と株主還元をバランスよく実施する。
東証プライム上場企業に相応しいガバナンス体制を強化するとともに、サステナビリティ関連の取組みも強化し、持続可能な社会の実現に貢献しながら、自社の成長にも繋げていくため、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)のそれぞれに課題を設定し実行する。
以上のとおり、中期経営計画2027の概要について記載しました。詳細については、当社WEBサイト(https://www.vitalksk.co.jp/ir/management/plan2027/)をご参照ください。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、持続可能なヘルスケア提供体制の構築への貢献などといった、社会課題解決を通した企業価値の向上を目指すサステナビリティ経営をより一層推進するべく、2022年10月にサステナビリティ委員会を設置しました。本委員会は代表取締役副社長を委員長、取締役に加え各部門長を構成員としており、サステナビリティ経営の推進を目的としています。
本委員会では、気候変動への対応やコンプライアンス、人的資本といったサステナビリティに関する基本方針や目標、行動計画の策定、目標に対する進捗管理や評価、個別施策の審議等を原則として年4回実施し、重要議題の1つとして気候変動に係る事項も取り扱っております。本委員会にて決定した内容は、年2回の頻度で取締役会に付議・報告され、取締役会による監督の下、グループ全体の経営に反映しています。

当社グループにおける、気候変動関連に関する方針並びに人材の育成及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。
当社グループでは、シナリオ分析を実施することにより、気候変動がもたらす、当社グループのメイン事業である医薬品卸売事業へのリスクと機会に関する影響を分析しました。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とIEA(国際エネルギー機関)が公表しているシナリオを用いて、1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)と4℃シナリオにおけるシナリオ分析を行い、気候変動がもたらす医薬品卸売事業への影響を明らかにしました。1.5℃シナリオは、気候変動に対する積極的な政策により気温上昇を抑えることに成功したシナリオであり、4℃シナリオは、気候変動に対する限定的な政策により気候変動が進んだシナリオです。また、上記の各シナリオで分析のために参考にした、IPCCから報告されているRCPシナリオを用いて気候変動がもたらす物理的な影響を分析し、IEAから報告されているシナリオを用いて脱炭素社会に向けた移行に伴う影響の分析を行いました。


※顕在化時期の定義
「短期」:~3年 「中期」:4~10年 「長期」:11年~30年
※財務的影響度の定義
「大」:事業の大幅な縮小、または拡大するほどの影響がある。
「中」:事業の一部に影響がある。
「小」:ほとんど影響を受けない。
1.5℃シナリオでは、脱炭素化社会への移行に伴い、炭素税の導入や再エネ・省エネといった政策・法規制の推進などの影響が起こることが想定されます。
医薬品卸売事業へのリスクとしては、炭素価格に係る制度やGHG排出規制、再エネ・省エネ政策への対応を要求されることが挙げられました。そのため、太陽光発電をはじめとした再エネ由来電力の活用やHV・EV車の導入、省エネ設備の導入といった対応に取り組んでおります。
一方で、新たに獲得できる機会としては、気候変動に対する取り組みに伴う顧客や投資家からの評価向上や、温室効果ガス(GHG)排出権取引制度の拡充に伴う新たな事業収益源の獲得が挙げられました。そのため、全社的な気候変動に対する取り組みと情報開示はもちろん、低炭素輸送に積極的に取り組み、GHG排出量の削減分を付加価値として販売することを検討しています。
4℃シナリオでは、気候変動がもたらす異常気象による物理的な影響が発生することが予想されます。
医薬品卸売事業へのリスクとしては、当社グループおよびサプライヤー企業が所有する設備の風水害による被災や、それに伴う配送遅延および事業停止の発生が挙げられました。そのため、BCPの策定や物流センターへの災害対策の導入といった対策を行っています。
一方で、新たに獲得できる機会としては、気候変動による感染症の増加に伴い医療物品の需要が拡大した際に、当社グループの物流体制の強みを活かした迅速な医療物品普及が挙げられました。そのため、これまで培ってきた「地域に深く根ざしたネットワーク」を活かすとともに、有事に備えた物流体制の構築に引き続き取り組んでまいります。
・環境負荷低減に貢献する取り組み
当社グループは、2022年4月から2025年3月までの3年間にわたる「第5次中期経営計画」の今後の成果と今後(中期経営計画2027)当社グループの地域密着経営を活かした輸送網や物流拠点の最適化を推進することで、輸送に係るGHG排出量削減に取り組んでまいります。
各事業会社による環境負荷低減の取り組み
◆株式会社バイタルネット(https://www.vitalnet.jp/csr/stakeholder)
◆株式会社ケーエスケー(https://www.web-ksk.co.jp/csr-community/eco_co2.php)
◆株式会社オオノ(https://www.hikari-pharmacy.co.jp/sdgs)
当社グループの事業活動におけるGHG排出量の削減に向けて、以下の取り組みを進めております。

当社グループは、既存の事業のみならず、新たなビジネスモデルを構築し、地域になくてはならない企業(選ばれる企業集団)に変革を遂げていきます。
そのためには、多様な価値観を持った人材の専門性、独自性を活かして「知の探索」と「知の深化」を実行し、従業員の可能性を伸ばして社会に貢献できる人材を育成することが不可欠です。
具体的には、医療制度や医薬品、医療機器等の技術の変化を先読みし、従業員のスキルの向上に繋がる実践的な研修を実施することに加えて、従業員を率いる次世代のリーダー育成にも積極的に取り組んでいます。
1.経営戦略実現に必要な人材ポートフォリオ(量と質)に向けた通年採用、キャリア採用、アルムナイ採用、リファラル採用といった採用活動の多様化
2.階層別に求められるスキルの向上と次世代を担う人材の育成
3.様々な部門での業務経験を通じて、従業員個々の能力を引き出すことにより、多様性の構築と創造性を発揮
4.他部門で活躍する上級職社員との交流により視野を広げるメンタリング研修
5.コミュニケーション向上のため、さん付け運動やオフィスレイアウトの工夫
6.大学院等への派遣を通じた視野の拡大
7.自己申告制度に基づく従業員のキャリア構築の支援
当社の企業理念、長期ビジョンを基に作成した経営戦略を実現するため、人材への投資を一層加速させ、役職や部門を超えたコミュニケーションの推進、社員に多くの経験を積ませる施策を通して、多様な人材が実力を発揮できる社内環境を整備していきます。そして、社員個々が自身の能力、スキルを発揮し、やりがいや働きがいを感じ主体的に業務に取り組める環境を構築し続けます。
我々はともに働く人々に誠実かつ公正に対応することで人権を尊重し、今後も地域における課題解決に挑戦し続けます。
当社グループは、生命や健康の維持にかかわる事業に携わっており、事業を取り巻く様々なリスクを想定・対処するために、細心の配慮のもとにリスクマネジメント体制を構築しています。そのうえで、気候変動がもたらすリスクに関しても、物流を事業の核とする当社グループにおける重大なリスクの1つとしてとらえ、全社的なリスクマネジメント体制に統合しています。
気候変動がもたらすリスク及び機会に関しては、サステナビリティ委員会にて年1回調査・評価され、対応方針の議論が行われた後に、取締役会に報告されます。また、気候変動以外の事業に係るリスクに関しては、リスク・コンプライアンス委員会にて調査・評価および対応方針の議論が行われた後に、取締役会に報告されます。サステナビリティ委員会は原則年4回、リスク・コンプライアンス委員会は年2回の頻度で開催されており、各委員会での決定・報告事項は、取締役会における監督の下、全社的なリスク管理体制として、グループ会社の同様の委員会委員長よりグループ全体に周知され、取り組みを推進・実行しています。
当社グループは、サステナブルな経営を実現するべくGHG排出量を指標として設定し、気候変動に対する影響を評価・管理してまいります。
当社グループは、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に、可能な限り1.5℃に抑える努力をするというパリ協定で示された世界共通の長期目標と、日本政府が掲げる2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを達成するという目標に準拠すべく、当社グループのGHG排出量削減目標として、2030年度30%削減(2021年度比)と設定し、GHG排出量削減を推進してまいります。
今後、サプライチェーン全体の排出量を把握するため、Scope3の排出量算定を検討してまいります。 なお、当社グループ全拠点におけるScope1及びScope2のGHG排出量の実績は以下のとおりです。
温室効果ガス排出量[t-CO2]

対象範囲:株式会社バイタルケーエスケー・ホールディングス 全子会社を含む
算定期間:2023年4月~2024年3月
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績は以下のとおりです。
※管理職とは、部下を持つ課長以上と定義し、計算しております。
※男性の育児休業は、該当年度における配偶者が出産した従業員を分母とし、その年度内に育児休業を取得した従業員を分子として計算しております。したがって年度を跨いで育児休業を取得した従業員は翌年度の計算対象としております。
※労働者の賃金差異においては、非正規労働者の時間換算を行わず、人員数で計算しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
政府は、後期高齢者医療保険制度の改革、医師不足の解消、新型インフルエンザ等への対応およびがん・肝炎対策の拡充、地域包括ケアシステムの構築等、医療崩壊を食い止めるべく新たな医療保険制度体系の実現に取り組んでいます。また、当社グループの主要な取扱商品である医療用医薬品は薬価基準に収載されております。薬価基準は保険医療で使用できる医薬品の範囲と使用した医薬品の請求価格を厚生労働省が定めたもので、薬価基準は販売価格の上限として機能しております。この薬価基準は実勢価格を反映させるために2年に一度4月に本改定が実施され、大半の品目の薬価基準が引き下げられます。また、近年は本改訂以外の年の4月にも部分改定が行われ、毎年薬価改定が行われるようになりました。さらに、効能追加等により一定規模以上の市場拡大があった品目等については、年4回改定されます。このように薬価基準改定を含めた医療保険制度が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの主たる事業である医薬品卸売事業の売上総利益の主な構成は、販売価格と仕入価格の差である売買差益と、一定期間の仕入金額や販売金額等に応じて製薬メーカーから支払われる割戻金及び販売報奨金からなります。仕入価格は主に薬価改定時に見直されます。割戻金及び販売報奨金は随時見直されるため、メーカーの方針及び営業戦略の変更により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、割戻金及び販売報奨金獲得のため、随時、メーカーとの取引条件の見直しやメーカーとの取り組みの提案を行っております。
日本の医療用医薬品流通の大部分が医薬品卸を経由しており、医薬品卸業界では厚生労働省が定めた「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)」に則り医薬品ごとの価値に基づく単品単価取引に取り組んでいるところですが、競合他社の地域戦略などを要因とした過度の価格競争が発生する可能性があります。過度の価格競争が発生した場合には市場価格が低下し、当社においても価格対応せざるを得ない場合があります。また、価格対応できない場合には販売品目が減少する場合があります。このように過度の価格競争が発生した場合、当社グループの業績に影響を与えることがあります。
当社グループは引き続き流通改善ガイドラインに則り適正価格での納入を維持する努力を続けてまいります。
当社グループの主たる事業である医薬品卸売業界においては、納入価格未決定のまま医療機関等に納入し、その後に価格交渉を行うという特有の取引慣行があります。流通改善のテーマの1つである早期妥結に取り組む一方で、同じく流通改善のテーマである医薬品の価値に見合った適正価格での販売にも取り組んでおり、価格交渉が長期化する場合があります。価格交渉が長期化した場合には、合理的な見積による決定予想価格を算出し、売上計上しております。決定予想価格と決定した価格が異なった場合には、当社グループの業績に影響を与えることがあります。
当社グループは引き続き流通改善ガイドラインに則り適正価格での納入を維持する努力を続けてまいります。
当社グループは株式等の投資有価証券を所有しております。時価のある株式については、個別銘柄毎に当連結会計年度末の市場価格と取得原価とを比較し、下落率が50%以上の銘柄については全て減損処理を行い、過去2年間にわたり下落率が30%以上50%未満の範囲で推移した銘柄、または、下落率が30%以上50%未満で株式の発行会社が債務超過の状態である銘柄については、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。このように、保有する投資有価証券の時価が下落した場合には、当社グループの業績に影響を与えることがあります。
当社グループでは、保有する投資有価証券につきましては、毎年取締役会において保有の合理性を判断し、合理性が認められる投資有価証券のみ保有いたします。
予期せぬ事態により情報の流出が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償責任、取引停止処分が発生し、当社グループの業績に影響を与えることがあります。
当社グループでは、個人情報の保護についての基本方針、情報セキュリティーポリシー及び関連諸規程を制定するとともに、従業員教育を徹底し、保有する顧客情報は厳正な保護・管理に努めております。
当社グループは、事業活動を行うにあたりコンピュータシステム及びネットワークに大きく依拠しております。事故や災害またはランサムウェアをはじめとするマルウェア等で大規模なシステムトラブルが発生した場合には、当社グループの業績に影響を与えることがあります。
システムトラブルの発生を防ぐため、コンピュータ機器は24時間・365日状態監視をしており、障害検知時には迅速に復旧作業に移行する体制をとっております。また、電源喪失を伴うような災害が発生した場合においても、継続してシステム稼動ができるよう非常用発電機を設置しています。さらに、ネットワークに関しても冗長化構成をとっており、継続利用が可能な環境となっております。
当社グループは、これまでの自然災害を体験した経験を基に十分な災害対策を施してはおりますが、大規模な自然災害や事故が発生した場合には、事業活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を与えることがあります。
災害が発生した場合でも、医薬品の安定供給を継続するために、BCPや災害対応マニュアルを策定するとともに、主要な物流センター及び拠点において非常用発電設備や災害対策車両を導入しております。
当社グループは、医療用医薬品の卸売業を主たる事業としております。したがって、事業活動を行うにあたり、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」及び関連法規等の規制により、免許・許可の登録及び指定や、開発、製造、輸入に関し様々な承認許可が必要となります。監督官庁の許認可の状況により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンス綱領を制定するとともに、従業員教育を徹底し、法令遵守に努めております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当連結会計年度における売上高は、600,370百万円(前期実績は587,481百万円)となりました。これは、主に、医療用医薬品市場全体の伸長に加え、抗がん剤や新型コロナウイルス感染症治療薬の販売が好調に推移したことによるものです。
売上総利益は、49,214百万円(前期実績は48,301百万円)となりました。これは、主に上述の販売増や取引コストを意識した価格交渉を徹底したことによるものです。
販売費及び一般管理費は、43,508百万円(前期実績は42,745百万円)となりました。これは、業績賞与やインフレ手当の支給等の賃上げ等によるものです。
以上の結果、営業利益は、5,706百万円(前期実績は5,556百万円)となりました。
経常利益は、受取配当金、受取賃貸料等の営業外収益を1,471百万円計上したことで6,970百万円(前期実績は6,557百万円)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、主に投資有価証券売却益からなる特別利益4,276百万円と、減損損失353百万円等の特別損失556百万円を計上したことで、最終的に7,308百万円(前期実績は5,843百万円)となりました。
(a)医薬品卸売事業
当社グループの主たる事業である医薬品卸売事業におきましては、薬価改定の影響及び前年同期に計上した新型コロナウイルス感染症の治療薬や検査キット等の販売が減少するなどマイナスの影響はあったものの、インフルエンザの流行による検査キットや治療薬の販売の伸長に加え、抗がん剤を中心とした新薬創出加算品および子宮頸がんワクチンや、10月から接種が開始された新たなコロナワクチン等の販売の伸長が減収分を上回り増収となりました。
また利益面においては、前年に計上した大口先の貸倒引当金の戻入益の反動や、国や自治体から受託したコロナワクチン配送収益の剥離、並びに事業投資費等の計上があったものの、上述の増収効果や、一貫して取り組んできた取引コストを意識した価格交渉によって、営業利益は増益になりました。
その結果、医薬品卸売事業セグメントの外部顧客への売上高は564,614百万円(前期実績は552,870百万円)となり、セグメント利益は5,163百万円(前期実績は4,913百万円)となりました。
ここで、医薬品卸売事業の主たる事業子会社の株式会社バイタルネットと株式会社のケーエスケーについても主な業績の概況を説明します。
ア)株式会社バイタルネット
東北・新潟を主な商圏とする㈱バイタルネットでは、抗がん剤や新型コロナウイルスワクチン等の販売増により、売上高は298,622百万円(前期実績は282,874百万円)となりました。営業利益は、この増収効果に加えて、取引コストを意識した価格交渉に取り組んだことによって、2,895百万円(前期実績は2,776百万円)となりました。
イ)株式会社ケーエスケー
近畿2府4県を商圏とする㈱ケーエスケーでは、新型コロナ治療薬の公費負担が終了したことによる
影響が大きく、売上高は277,769百万円(前期実績は281,969百万円)となりました。
営業利益については、新型コロナワクチン、HPVワクチンなど、ワクチン類の販売増加が寄与し、
2,340百万円(前期実績は2,110百万円)となりました。
(b)薬局事業
薬局事業におきましては、受付処方箋枚数は減少したものの、調剤技術料収入及び薬学管理料収入の増大に努めたことなどにより、外部顧客への売上高は19,552百万円(前期実績は19,115百万円)となりました。
一方利益面においては、薬価改定の影響のほか、処方日数の長期化などによりセグメント利益は251百万円(前期実績は310百万円)となりました。
(c)動物用医薬品卸売事業
動物用医薬品卸売事業におきましては、一部商品がメーカー直販になったため商品切り替えのマイナス等の影響がありましたが、2024年8月のアローメディカル㈱(本社:横浜市)の連結子会社化もあり、外部顧客への売上高は11,626百万円(前期実績は11,027百万円)となりました。一方、セグメント利益は仕入価格の上昇等が影響し、314百万円(前期実績は350百万円)となりました。
(d)その他事業
(注)その他事業は報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、農薬等の卸売業、運送業、介護サービス業、医療機関に対するコンサルティング業、スポーツ関連施設運営事業等を含んでおります。
その他事業におきましては、各事業において売上が回復したことなどにより、外部顧客への売上高は4,577百万円(前期実績は4,468百万円)、セグメント損失は78百万円(前期実績は109百万円のセグメント損失)となりました。
①連結財政状態の概況
流動資産は前連結会計年度末比15,407百万円減少の187,896百万円となりました。これは主に、前期の決算期末日が金融機関の休業日のため支払いが当期にずれ込んだこと等により現金及び預金が11,612百万円減少したこと等によります。
固定資産は前連結会計年度末比2,424百万円減少の111,529百万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却等で投資その他の資産合計が2,265百万円減少したこと等によります。
以上の結果、資産合計は前連結会計年度末比17,831百万円減少の299,426百万円となりました。
流動負債は前連結会計年度末比18,527百万円減少の174,880百万円となりました。これは主に、前期の決算期末日が金融機関の休業日のため支払いが当期にずれ込んだこと等により支払手形及び買掛金が16,682百万円減少したこと等によります。
固定負債は前連結会計年度末比670百万円減少の17,240百万円となりました。これは主に、長期借入金が、返済により970百万円減少したこと等によります。
以上の結果、負債合計は前連結会計年度末比19,197百万円減少の192,120百万円となりました。
純資産は前連結会計年度末比1,366百万円増加の107,306百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益7,308百万円の計上、及び配当金の支払額2,187百万円、自己株式の取得2,505百万円等によります。
以上の結果、負債及び純資産合計は前連結会計年度末比17,831百万円減少の299,426百万円となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末比11,050百万円減少し、20,074百万円となりました。
当連結会計年度において、営業活動による資金の減少は8,024百万円(前連結会計年度は23,570百万円の増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益10,691百万円の計上等の増加要因があったものの、仕入債務の減少額16,879百万円(前連結会計年度は14,545百万円の増加)、法人税等の支払額2,923百万円等の減少要因があったことによるものです。
当連結会計年度において、投資活動による資金の増加は3,516百万円(前連結会計年度は1,822百万円の減少)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出2,563百万円(前連結会計年度は1,845百万円)、無形固定資産の取得による支出1,774百万円(前連結会計年度は3,253百万円)等の減少要因があったものの、投資有価証券の売却による収入6,085百万円(4,537百万円)等の増加要因があったことによるものです。
当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は6,543百万円(前連結会計年度は5,769百万円の減少)となりました。これは配当金の支払額2,183百万円(前連結会計年度は2,365百万円)、自己株式取得による支出2,505百万円(前連結会計年度は1,626百万円)等の減少要因があったことによるものです。
当社グループの資金調達の方法は、通常の事業活動の展開や支店・倉庫の新設や更新投資等においては、営業活動から得られる資金で賄うことをベースに考えますが、必要に応じて、銀行借入で賄うこともあります。一方、大型の物流センターの建設やM&A等の実施の場合には、銀行借入の他に、社債発行や株式発行等による調達方法も選択肢に加え柔軟に検討いたします。
当社グループは、営業活動から得られた資金と外部調達から得られた資金を事業の運転資金や設備・システムの新設・更新・維持投資、それに新規事業投資やM&A等に振り向けるほか、必要な手許資金を残して、余剰資金を適切に株主還元に充当していく考えです。
当社グループは、株主還元を経営の重要課題と位置付け、当期の株主還元策については、総還元性向50%以上、配当については単年度の業績変動の影響を受けにくい株主資本配当率(DOE)を採用し、DOE2.0%以上を基本方針として実施しました。
具体的には、自己株式につきましては、取得株数200万株、取得総額2,505百万円を取得しました。
配当金につきましては、中間配当金を1株につき21円、期末配当金は1株につき24円とし、合わせて年間で1株につき45円(連結配当性向30.2%)とさせていただきました。
次期につきましては、中期経営計画2027における株主還元策の方針変更により、キャッシュ・フローを製薬事業や物流事業等の成長投資に回すため、従来の「総還元性向50%以上」の方針を取りやめる一方、配当金については、「DOE3%以上」に変更します。これによって、次期の中間配当金は1株につき34円、期末配当金も1株につき34円とし、年間で1株につき23円増配の68円とする予定です。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて作成しています。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりです。
のれんについては、毎年、四半期ごとに、薬局事業内ののれんの発生元における事業環境や将来の業績見通しの悪化、事業戦略の変化等を考慮しながら、減損の必要性を自社内で確認しています。もし、減損の必要があると判定された場合には、独立した外部の評価機関に適正な割引率の算定を委託し、これを基に減損損失を計上することにしています。
以下に示すその他の重要な会計方針の見積り項目につきましても、上記①に記載した当社の仮定に基づき評価等をしております。
個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を貸倒引当金に計上しております。
回復可能性等を考慮して必要と認められる額につきまして減損処理を行っております。
将来の課税所得を見積り、回収可能と判断しております。
支給見込額に基づき計上しております。
国債の市場利回りなどの経済状況を勘案して決定しております。
(5) 生産、受注及び販売の状況
① 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.主な相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上に該当するものはありません。
当連結会計年度における当社グループの経営上の重要な契約は、以下のとおりです。
(1)研究開発販売基本契約
(2)Shield Therapeutics plcが創製した鉄欠乏症治療薬ACCRUFeR®の開発および販売に関する独占的ライセンス契約
該当事項はありません。