第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社は、『人の気持ちをつなぐ』ことをミッションとし、音楽・映像・書籍・一般商材などのデータベース及びそれらの過程で制作する感性メタデータを活用した感性AIを開発し、主にインターネットを通じ「レコメンドサービス」「パーソナライズサービス」「検索サービス」「アナリティクス(データ分析)サービス」「データ提供サービス」などデータ関連サービスを提供しております。

人間の想像力は無限であり、人の感性や感情は想像力を生み出します。

感性や感情(喜怒哀楽など)のデータ化は人とAIの共創の可能性を広げ、感性データを活用し、世界中のクリエイター、開発者、マーケター、サービサーの想い・こだわり・ストーリー、人々(ファン)と共に紡ぎだし、クリエイティブなエンターテイメント、ライフスタイルの誕生と広がりに貢献することが当社のパーパス(存在意義)となります。

世界中のクリエイターと開発者、生産者、マーケター、サービサー、それぞれの志や想いの連帯に貢献することで、人の心と日々の時間がもっと豊かに深まることに役に立ちます。

そのような豊かで深い心を持った人と人との気持ちが繋がることはきっと社会の平和につながります。

私達の企業活動を通じて、多くのセレンディピティ(幸せな偶然の出会い)を実現し人それぞれの人生にとって出会いというかけがえのない瞬間を生むことを可能とします。

 

今後の社会においてAIがますます普及されることが予想されます。その中でも米国や中国をはじめ国際的に様々な生成AIの開発が進みその競争はより一層激しくなることが予想されております。そのような一般的な生成AIは根拠となるデータがWeb上から収集された大規模なデータセットであり、幅広く汎用的ではありますが、一方で分野を特化した場合の情報の鮮度や専門性という品質面において課題があります。また日本語独特の情緒的な解釈も課題としております。当社は感性メタ含むドメインに特化した独自のデータベースでこれらの課題を解決します。さらに生成AIの大きな問題とされているハルシネーション(事実でない誤った回答)や回答の根拠の不透明性にも課題があります。当社の知識ベースの堅牢な推論手法を独自データベースと組み合わすことでこれら課題を解決し、根拠となる推論の透明性を担保し信頼性を確保します。

このような取り組みにより生成AIと感性AIの最適なコラボレーションを実現し、人間の複雑な感性や感情を理解する感性AIを活用したエンターテイメント分野とマーケティング分野で独自のデータサービスを展開し「心を豊かにするAIにより社会により貢献してまいります。

 

短期的には、独自の感性データ・テクノロジーにより

・エンターテイメント市場の発展に貢献すること

・感性マーケティング市場を開拓していくこと

を行い、その上でそれらを繋ぎ組み合わせたエンターテイメント×感性マーケティングの事業活動により、日本

のクリエイター、アーティスト、コンテンツの発掘から制作、国内外流通、プロモーションまでをデータでマネジメントを行うことを実現してまいります。

それらを実現するための基本方針として

 ① 『人の気持ちをつなぐ』ことに役に立つ価値あるサービスを確かなモノづくりにて実現するために、新しいテクノロジーが切り開く可能性を信じ、研究開発とデータ開発を重視します。

 ② 常にユーザー視点、顧客価値を大切にし、真に価値のあるオリジナリティの高いサービスの実現へ向けサービス開発を続けます。

 ③ エンターテイメントが生む様々なエモーション、シチュエーション、オケージョンをデータベースとして解釈し、人間の多様な創造性、想像力を科学する技術を開発します。

 ④ より一層の心が豊かな社会の実現に向けた価値ある新しいサービスを生み出す技術力と企画力を育成し続けるために、多様性と自主性に富む人材の採用・育成、成長への環境づくりに努めます。

 ⑤ 当社の企業理念や志を共有する従業員、取引先、株主などと共に成長し、貢献します。そのための企業文化を育てます。

 

これらを継続的かつ長期的かつ日常的に行うことで、その結果として、収益力の向上、持続的な成長を実現させることが、人それぞれの思い、こだわり、感性や感情を大切にし、思いやりと多様性に溢れる豊かな社会への貢献となり、一層の企業価値の向上に繋がるものと考えております。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

エンターテイメントは人の感情を動かし感性を豊かにします。そして人間の営みの中で大事な要素である想像力を育みます。今後ますますAI社会が進む中、AIが得意とはいえない、人間にとってかけがいのない想像力が社会に生まれ、育ち、発展することに貢献するデータと技術の開発が当社の創業来のパーパスであります。

そのために当社独自の感性メタデータと感性AIを磨き続けます。

今後の世界から見た日本のあり方の一つとして、日本に数多く存在するアニメ、コミック、ライトノベル、J-POPなどを中心とした日本独自文化の発掘や世界へ向けた国際流通をより発展させることにあると想定されております。当社は創業来、音楽、アニメ、ドラマ、映画、コミックなどエンターテイメントを網羅するメタデータの構築を進めている中、当社エンターテイメントに特化したメタデータやデータ技術が、クリエイター、アーティスト、コンテンツ、イベント、これらのIP※の発掘に貢献してまいります。

※楽曲、アニメ、ドラマ、小説、コミック、キャラクターなどのIP(Intellectual Property:知的財産)

 

またIPの発掘のみならず制作、プロモーション、タイアップなどのマーケティングまで一貫したサポートを当社のデータベース・データ技術で行なうことを可能とする独自の仕組みの開発を進めてまいります。

これらの取り組みより、日本のクリエイター、アーティスト、コンテンツがより多く生まれ、コラボレーションやプロモーションを推進するデータサービスを展開することにより、IP立国日本の未来に貢献してまいります。

 

その実現に向け当社は、音楽・映像・書籍・テレビ・イベントなどのエンターテイメント分野において国内随一のデータベースをより拡充し、独自の感性AIを活用しエンターテイメント体験機会の増加に貢献してまいります。あわせて、当社データの利活用範囲をインターネット上に留まらず、コンテンツ制作、ライブ、グッズ(マーチャンダイズ)など、リアルな体験機会の領域にも広げてまいります。

その上で、感性メタデータの開発・提供をエンターテイメント分野のみならず美容、健康、ファッション、食、飲料、旅、住、金融など暮らし全般の非エンターテイメント分野まで広げ、ライセンス提供先を流通業界、製造業界、小売業界、美容業界、旅行業界、飲食業界、広告業界、不動産業界、金融業界などに展開してまいります。そのプロセスとして、独自の感性ターゲティング広告サービス「Trig’s」を広げ、日本国内におけるPMP(Private Market Place)といわれるブランド・サービスの共感を繋ぐ広告サービスとして、様々なメディアや企業の信頼性と収益性の向上に貢献してまいります。

これら現在進めているエンターテイメントデータサービスと感性マーケティングサービスを掛け合わせることで、次世代に向けたIPデータテクノロジーサービスの展開を加速します。

その先には、個人と企業とクリエイターやアーティストが垣根を越えて「共感を軸に協創するプラットフォームサービス」の構築があります。

生活者、クリエイター、アーティスト、コンテンツ、企業、製品、開発者、生産者、それぞれの持つストーリーや世界観を繋げることで、セレンディピティあふれる体験の連鎖により、人の内面的な成長に寄与しQuality of Lifeの向上に貢献します。

それらの実現のために、当社独自の人の感性や感情を体系的に情報化したオリジナルデータベースの開発およびそのデータを利活用する感性AI関連技術開発を進めてまいります。

 

・エンターテイメントデータサービスの質、量の継続的な改良

・エンターテイメントデータサービス外部アライアンス強化

・独自の感性マーケティングサービス進展

・エンターテイメントデータサービスと感性マーケティングサービスを掛け合わせたIP関連事業の推進

・上記事業及びデータの海外連携、展開

以上を行なってまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社では、感性メタデータ・感性AI関連技術を活用した新しいサービスの開発、品質向上を継続的に行い、より多くの皆様に当社独自の人の気持ちが繋がるサービスを提供し、顧客満足度の向上を図ることが当社の企業価値の向上に繋がると認識しております。そのための経営指標として「成長性」と「収益性」を重要な経営上の指標としております。

当社の中期的な経営指標として、社会により深く役に立ち、かつ独自性が高い事業の指標として「売上総利益率60%以上」を目標としています。それらを達成するにあたり、当社データ関連サービス技術の事業モデルにおいて一時的な受託開発・運用モデルではなくユーザー数の拡大が直接的もしくは間接的な収益拡大に繋がる事業モデル、月々の継続的な収入となるサブスクリプション(定額制)事業モデル、当社が独自に開発した感性AIを最大限活用したIP事業モデルなどのライセンス型ビジネスモデルへの転換を進めております。

中期的な経営指標として「売上成長率年間20%以上」を目標としております。

またあわせて、「月間ライセンス提供数および額」「新規ライセンス提供数」「既存ライセンス継続率」「ライセンス型ビジネスモデルの売上構成比」「売上に占める研究開発費やデータ開発などの先行投資額比率」の管理に取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

インターネット関連、データ関連、AI関連分野の技術革新、生活者や企業の目的や嗜好の多様化、新規参入など変化の激しく起こりうる事業環境の中で、当社が長期的に持続可能な成長を見込み、経営戦略を確実に遂行していくために、以下のような課題に対処してまいります。

 

①優秀な人材の確保、育成

継続的な成長の原資である人材は、当社にとって、最も重要な経営資源と認識しております。当社独自の技術開発力や企画力およびサービス運営力を維持し、継続的に発展、強化していくために、優秀な社員を継続的に雇用し、その成長の機会を提供し、かつ事業規模を拡大させていくための人材を獲得する必要があります。

人的基盤を強化するために、全役職員を対象としたクレド(行動規範)など企業文化の熟成、採用体制の強化、新入社員・中堅社員・管理職向けなど段階に応じた教育・育成、研修制度、人事評価制度、より弾力的な報酬制度、多様な働き方を実現する勤務体系の充実など、各種施策を進める方針であります。

 

②開発・品質管理体制の強化

当社が開発を手掛けるアプリケーション、データベースおよびサービスは、技術革新の中で、開発内容が複雑化する可能性があります。また、ライセンス事業モデルの中でも顧客においては、開発スピードのさらなる向上やコストの軽減、高付加価値化を求めてくることが想定されるため、これらへの対応力の強化が必要となります。

このため当社では、企画営業部門と開発部門における連携面での見直し、開発・運用ルールの統一化、自社開発ツールの構築、開発体制の一体化など全社的な技術資産の共有を行うことで、開発・品質管理体制の一層の強化を図っていきます。

 

③収入モデルの多様化

現在の当社の主な収入モデルは、ライセンス収入モデル、開発収入モデル、運用収入モデルなどであります。

現在主力であるライセンス収入モデルの多様化を一層進めてまいります。

低い金額でライセンス提供可能なライト版ライセンス、初めは無料で提供するフリー版ライセンス、付加価値向上に合わせたアップグレード版ライセンス、また当社サービスの外部の代理店による販売などのエージェント型ライセンスなど収入モデルなどの多様化に一層取り組んでいきます。

さらに、当社感性メタデータ、感性AI活用の収入モデルとして、利用成果に応じて権利の一部を共有するなどのIP(知的財産を活用し収益を得る)事業モデルの構築に取り組んでまいります。

 

④内部管理体制、コーポレート・ガバナンスの充実

当社では継続的な成長を実現していくために、事業規模に応じた内部管理体制の充実が不可欠であると認識しております。金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制の評価へ対応すべく、業務の適正性や効率性、財務報告の信頼性の確保に努める必要があります。

今後も事業規模の拡大に合わせ管理部門の一層の強化による内部管理体制の整備を図るとともに、会議体および職務権限の見直しや社外役員の積極的な導入など、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組む方針であります。

 

⑤インターネット関連技術・サービスなど企業との連携

今後、国内外のインターネット技術やサービスは、ますます連携や融合されていくことと予想され、当社はこの流れへの対応力の強化が必要となります。

このため、当社では独自のデータベース及びデータサービスの開発を通じて通信事業者、デバイスメーカーやインターネット関連企業およびサービス提供企業との連携や権利元との調整などアグリゲーション力を強化していく方針であります。

 

⑥営業体制およびコンサルティング能力の向上

既存事業のエンターテイメント分野向けデータサービスから新規事業の感性マーケティング分野へのデータサービスまで事業領域が広がる中で、営業人員および営業体系の強化、提案時または案件成立後のサポートともいえるコンサルティング能力の向上がより一層必要となります。業界経験者の採用、若手人材の育成、またエンターテイメント分野と感性マーケティング分野にまたがる営業とコンサルティングを可能とするスペシャリストの採用などを通じて、体制の強化、能力の向上に努めてまいります。

 

(5)その他、会社の経営上重要な事項

大株主との取引等

当社は、KDDI株式会社より出資を受けており、当事業年度末において同社は当社の議決権の9.8%を保有する大株主となっております。当社は同社へインターネットサービスにおけるデータベースやアプリケーションの開発・提供などを行っております。なお、同社との取引条件につきましては、同社以外の取引先と同様に、価格交渉などの手続きを行った上、その都度決定しております。また、当社はカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下「CCC」といいます)より出資を受け、当事業年度末において同社はKDDI株式会社と同数の当社株式を保有しております。今後のマーケティング分野におけるCCCグループとの連携を目指し、データベースの開発およびその利活用に引き続き取り組んでおります。なお、CCCグループとの取引条件につきましても同社以外の取引先と同様に、価格交渉などの手続きを行った上、その都度決定しております。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、当社独自の感性データ技術を用いて、人間の想像力が広がることに役に立ち、ひとりひとりが自分らしく社会と共に生きる、自らのライフスタイルを見つけてより良く暮らすなど、ウェルビーイングとも言われる様々なニーズに応えていくことをミッションとしております。ひとりひとりが自身の内面に深く向き合いつつも、新しいマーケティング活動、コミュニケーション活動を通じて、社会との本質的な接続を可能とするために、当社独自の感性・感情解釈のデータ技術を通じて社会の役に立ち続けていくことを当社のパーパスとしております。

これらの考えのもと、全てのヒトやモノが多様性と生産性を失うことなく、将来にわたって継続、発展することができるよう、また、長期的な視点で持続的に社会価値と経済価値を創出できるように、当社の保有する技術、サービスの提供によりITやDXを通じて、様々なサステナビリティに関する取り組みを横断的に継続していきます。

 

(1)ガバナンス

当社は取締役会を経営の基本方針および重要課題ならびに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則月1回開催しております。また、事業経営にスピーディーな意思決定と柔軟な組織対応を可能にするため、取締役および事業責任者等が出席する経営執行会議を随時開催し、各部門の責任者が参加する経営情報会議については原則月2回開催しております。加えて、業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の遵守状況、業務活動の適正性かつ有効性の監査のため、監査役が取締役会に出席することで議事内容や手続き等につき逐次確認いたしております。また、内部監査人を置き、内部監査を実施し、監査結果を定期的に代表取締役社長に報告しております。詳細は、「第4提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要②コーポレート・ガバナンス体制の概要及び当該体制を採用する理由」をご参照ください。

 

(2)戦略

当社の感性や感情を解釈する技術やサービスは、人間の想像力を掻き立て、自己もしくは他者または社会をより広く深い視野で見ることに役に立ちます。そのようなサステナビリティにとって重要な人間の想像力の発展に役に立つ技術やサービスは、この先100年に渡っても本質的に必要とされるという認識のもと、当該関連技術の向上に中・長期に渡り努め続けることが、当社の基本戦略であります。一方で当該関連技術は、当社独自の感性AI技術で構成されますが、昨今の生成系AIの技術発展は、当社事業リスクになり得る面と拡大チャンスになり得る面の、両面の可能性があります。今後もAI技術の動向をよく洞察し、当社独自感性AIとの連携を図ることで、リスクへの対処ならびにチャンス拡大への取り組みを進めてまいります。

関連技術に関わるエンジニアの採用と教育を継続的に強化していくのみならず、営業からバックオフィスまで、サステナビリティや社会との共生に貢献する企業文化を育成・共有することに対する投資を中・長期に渡り行ってまいります。

 

(3)リスク管理

サステナビリティを企業活動の前提とする人的資本へのリスクに関しては、学習制度、教育制度の充実を継続して行ってまいります。合わせて当社独自の行動規範の共有と実践を通じて、良質な企業文化の醸成を進めることで、短期的な事業環境に左右されない体制の構築を進めてまいります。

また、状況に応じて外部の専門家(弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等)にアドバイスを受けられる体制を整えており、潜在的なリスクの早期発見、発生時の被害の最小化、再発防止に努めております。

詳細は、「第4提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要③企業統治に関するその他の事項」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

目に見えない価値を見つけるセレンディピティを生む当社独自の感性AIを活用したサービスの発展が、社会のサステナビリティの進展に直接的に繋がることから、当社事業の発展が目標とする指標になりえます。

そのための目標管理として、中期的な経営指標でもある「ライセンス型ビジネスモデルの売上構成比を全社売上のうち80%以上」「データベース関連事業の売上成長率」「新規ライセンス提供数」「月間ライセンス提供数および額」「売上に占める研究開発費やデータ開発などの先行投資額比率」の管理に取り組んでまいります。

詳細は、「第2事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。

 

また、当社は感性メタを活用した「レコメンドサービス」「パーソナライズサービス」「アナリティクス(データ分析)サービス」を提供するデータベース・サービスカンパニーであることから、人的資本についても重要視し、人的資本およびその他の資本の最大化を図ることが様々な資本価値創造の源泉であると考えております。当社ビジネスを通じて、人的資本が財務資本を強化し、技術開発を通して知的資本を拡大し、顧客開発を通して社会関係資本を創造し増大させると考えます。そのため、人的資本について重要視し投資を行うことで、持続的にその他の様々な資本を増強しております。

人的資本(知的財産)への投資として、2024年度は71,837千円の研究開発費を支出しておりますが、今後も引き続き、売上の25%を一つの指標に積極的な投資を継続していきます。

また、当社の持続的な発展のためには人的資本への投資が重要課題であるとの認識のもと、以下の取り組みを進めております。

 

①ダイバーシティの推進と人権の尊重

当社は、国籍、性別、人種、障がいなどの有無に関わらず、社員がそれぞれの個性を活かし、能力を十分に発揮出来るように、働きやすい職場環境の整備に取り組んでおります。また、全社員が人権を尊重し、関係法令・国際ルールおよびその精神を遵守すると共に、社会的良識をもって持続可能な社会の創造に向けて自主的に行動し、人種、信条、肌の色、性別、宗教、国籍、言語、身体的特徴、財産、出身地等の理由で差別を受けない健全な職場環境を確保しております。主な取り組みとして、新入社員研修や社内講習会を通じて人権意識の向上を図ると共に、従業員のハラスメントに関する相談・苦情等に対応する専用窓口を設置しております。

 

②環境整備

当社は社員ひとりひとりの健康にも留意し、自分らしく活躍できる環境づくりを行っており、安全衛生委員会による教育の実施、産業医による健康相談窓口を設置しております。

また、治療・介護・育児と仕事の両立を支援する社内制度の整備も推進しております。

 

③人財育成

当社は、企業価値向上・事業成長を実現するべく、企業価値を最大化させる人財の育成および自己啓発やチャレンジを尊重しております。

主な取り組みとして、社員のスキルアップやモチベーションのアップ、品質意識向上を目的とした社内での技術交流会や各種検定、各種資格取得の推進と奨励金支給制度を運用しています。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営

成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業環境について

①インターネットに関する技術およびサービスの変化

当社は、インターネット関連テクノロジーに基づいて事業を展開しております。インターネット関連テクノロジー業界では、新技術や新サービスが相次いで開発されており、技術および顧客ニーズなどの変化の速度が速いという特徴があります。

このため、当社は独自でかつ付加価値の高いサービスの実現に向け積極的な研究開発に注力しております。人の感性や感情を捕捉し得る「感性AI」関連技術開発を推進し、当社ならではの新たな技術やサービスの開発を進めております。しかし、研究開発の遅れ、顧客ニーズの見誤りや優秀な人材の確保の遅れ等により市場の変化に合った技術革新のスピードに適切に対応できない場合には当社の技術およびサービスが陳腐化し競争力が低下することが考えられ、当社の事業展開および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②生成AIの進展

世界的な規模で各種生成AIの開発はより一層進むことが予想されます。

これらの技術の進化は、社会的な構造の改革を伴うものであり、かつ当社の関わるインターネット関連テクノロジー、データサービス分野にも大きな影響を及ぼすことが見込まれます。そのような環境の中、当社は独自の感性メタデータおよび感性AIの開発を進め、日本ならではの感性・感情情報を解釈することを強みとし、合わせて生成AIとの連携強化を進めます。

 

③競合について

当社に関連したインターネット分野のデータサービス分野におきましては、今後も引き続き新規参入企業が増加することが予想されます。

一方で当社では、独自に開発した感性メタデータを中心とした独自データベースを最大限に利活用するビジネスモデルの構築をより強化し、他企業との差別化を図っております。また同時に、エンターテイメント分野において10年以上に及ぶ感性メタデータの開発・運用実績を踏まえた独自の分析技術や利活用技術開発を積極的に進め、「人の感性・感情を科学する」付加価値の高いサービスの質を実現し続けると共に、新規サービスの提供や既存サービスに対する新機能の実装を効率的に実現しております。しかしながら、競合となり得る会社が当社を上回る開発スピードやサービスの質を実現した場合、当社における事業展開および経営成績に影響を与える可能性があります。またインターネット広告市場においては、国内外の有力企業との競合があります。このためより独自の感性・感情の可視化・体系化を実現する技術に磨きをかけ、独自性を高めることとあわせ、必要に応じて有力企業との連携、提携も検討してまいります。

 

(2)事業内容について

①プログラム等のバグ(不良箇所)について

当社のアプリケーション、システムおよびデータベースの開発に関しては、社内の検証専門チームに加えて、外部の検証専門企業も活用することにより、納品する際のテスト・検証について専用の体制を構築し、開発・品質管理体制の強化を図っております。

しかしながら、完全にプログラム等のバグを排除することは難しく、プログラム等に重大なバグが生じた場合、当該プログラム等を使用したソフトウエア等によるサービスの中断・停止等が生じる可能性があります。この場合、当社の信用力低下や取引先あるいはユーザーからの損害賠償の提起等により、当社の事業展開および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②ソフトウエア資産について

当社では、アプリケーション、データベースおよびエンジンを開発し、それらを活用したデータベースサービスを推進しております。それらの開発に係るコストについては、原則として研究開発費をはじめとした販売管理費として費用計上しております。そのなかで一部事業パートナーとの契約があるものについては自社サービス用ソフトウエアとして無形固定資産に計上しております。事業パートナーとの契約変更などにおいてこれらを一部または全部を除却処理する可能性があります。その場合、一時に費用が発生するため、当社の経営成績に影響を与える可能性があります。一方で自社サービス用ソフトウエアの開発および研究開発については、プロジェクト推進体制を整備し、慎重な計画の立案・遂行に努めております。

③システム障害・通信トラブルについて

当社では、主にサーバーを利用し、機能やサービス提供をしております。サーバー運用に際しては、クラウドサービスの活用を中心とし、安全性を重視したネットワークおよびセキュリティシステムを確保および構築し、24時間のシステム監視をはじめ、セキュリティ対策も積極的に行っております。

しかしながら、自然災害、火災、コンピュータウイルス、通信トラブル、第三者による不正行為、サーバーへの過剰負荷等あらゆる原因によりサーバーおよびシステムが正常に稼動できなくなった場合、当社のサービスが停止する可能性があります。この場合において、当社のサービス提供先との契約に基づき損害賠償の請求を受けることがあった場合、当社の経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(3)組織体制について

①人材の確保や育成について

当社において優秀な社内の人材の確保、育成および定着は最重要課題であり、将来に向けた積極的な採用活動、人事評価制度の整備や研修の実施等の施策を通じ、社内リーダー層への幹部教育、新入社員および中途入社社員の育成、定着に取り組んでおります。

しかしながら、これらの施策が効果的である保証はなく、また、必要な人材を確保できない可能性があります。また、必ずしも採用し育成した役職員が、当社の事業に寄与し続けるとは限りません。このような場合には、当社の事業展開および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②特定の役員への依存について

当社創業者である代表取締役社長浦部浩司は、当社の最高経営責任者であり、事業の立案や実行等会社運営において、多大な影響を与えてまいりました。

現在当社では、事業規模の拡大にともなった権限の委譲や業務分掌に取り組み、同氏への依存度は低下しつつありますが、今後不慮の事故等何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の事業展開および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)法的規制等について

①法的規制について

現時点で、今後の当社事業そのものに対する法的規制はないと認識しておりますが、インターネットを活用したサービスに関しては、不正アクセス対策、電子商取引におけるトラブル対策、知的財産権の保護、個人情報の保護など今後新たな法令等の整備が行われる可能性があります。

例えば、2017年5月および2022年4月の「改正個人情報保護法」の全面施行などに見られるように、個人情報を生活者にとってより有効的に利用することに取り組んでいく方向はこれからの社会にとっても当社の事業機会にとっても価値がある一方で、プライバシー保護、セキュリティ保護などに関しては一層の留意が必要であります。

同法を始めとする今後の法令等の制定、改正あるいは社会情勢の変化によって既存の法令等の解釈に変更がなされ、当社の事業分野において新たな法的規制が発生した場合、当社の事業展開に制約を受けたり、対応措置をとる必要が生じる可能性があります。

 

②個人情報の取り扱いについて

当社が開発・提供する各種サービスの利用者は、主にスマートフォン等のデバイスを利用した個人であり、当社が運営を行うサービスにおけるユーザーサポート等において、氏名・電話番号等の当社グループサービスの利用者を識別できる個人情報を取得する場合があります。また、通常の取引の中で、業務提携先や業務委託先等取引先についての情報を得ております。

当社は、個人情報の管理強化のため、個人情報保護マネジメントシステムマニュアルの制定、役職員への周知徹底を図ると共に、これらの個人情報は、契約先である外部の大手データセンターへ格納し、高度なセキュリティ体制のもとで管理しております。

なお、2010年6月より現在に至るまで継続的に一般財団法人日本情報経済社会推進協会より個人情報の適切な取り扱いを実施している事業者であることを認定する「プライバシーマーク(R)」使用許諾事業者の認定を受けております。

今後につきましても、社内体制整備と共に、外部のデータセンターと継続的にセキュリティ対策強化を行い、いかなる個人情報も流出しないよう細心の注意を払ってまいります。しかしながら、当社の管理体制の問題、または当社外からの不正侵入および業務提携や業務委託先等の故意または過失等により、これらのデータが外部へ漏洩した場合、当社の信用力低下やユーザーからの損害賠償の提起等により、当社の事業展開および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③知的財産権について

当社は、知的財産権の保護については、会社のコンプライアンスおよび社会的責任において重要な課題であると認識しております。

開発、コンテンツの提供、日常業務でのソフトウエアの使用等の中で、当社の従業員による第三者の知的財産権の侵害が故意または過失により起きた場合、当社は損害賠償の提起等を受ける可能性があります。

 

(5)その他

ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について

 ストック・オプション制度は、会社の利益と、役職員個々の利益とを一体化し、ビジョンの共有や目標の達成等、職務における動機付けをより向上させること、また監査役においては適正かつ厳格な監査による企業価値向上の意欲を高めることを目的として導入したものであり、今後も資本政策において慎重に検討しながらも、基本的には継続的に実行していく考えであります。

 新株予約権には一定の権利行使条件がついており、原則として2年を経過した日から段階的な行使を基本としておりますが、これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、米国の政治情勢から端を発する世界経済の不安定さ、依然と続く国際的な物価上昇も関連する地域格差の広がり、先行きが明るいとはいえない地球規模でのエネルギー・環境問題など様々な複合的な要素の中、不透明感が増していく1年間でした。その中でも全体的にいえば景況感が減退するようなことはなく、一定の水準で成長基調にあるともいえました。資本市場においては2024年夏より市場の不安定さは増しており、国内の家計における景況感との乖離も出てきておりました。社会として変化性や多様性が富み予測の困難性がより増していく状況にありました。

このようにますます複雑性が増す社会において、社会全体が包摂性を育みひとりひとりがより自分らしく生きるというウェルビーイングの重要性はより強まる時代に進んでおります。一方では生成AIをはじめとしたAI技術の進展は凄まじく、AIと人間のあるべき関係性において今後ますます大きな課題と可能性の相反に向き合う状況が進むことが予想されております。

そのような時代背景において、当社は、通常のAIでは捉えきれない人間の感性や感情をデータで理解することに引き続き注力しております。事業としてエンターテイメント×感性マーケティングという分野を開拓し、独自の感性AIを活用し人それぞれの“ありたい自分”を見つけて過ごす価値ある時間(Quality of Life)の増加に貢献する事業活動を行なっております。

今後より変化性や多様性が富む時代において、経済活動においても、機能性や経済性の重要性はもちろんのこと、情緒的価値、感性価値を軸とした経済活動は、従来以上に重要な要素となり、当社独自の人の気持ちを繋ぐ感性AI、感性メタデータ活用先、活用方法は広がる社会環境にあります。

具体的に言えば、エンターテイメント分野でのデータサービスにおいては、音楽・映像のインターネット配信市場の進化に向けて、着実に成長しております。また感性AI技術の活用先は、エンターテイメント分野以外の美容、健康、ファッション、食、飲料、旅、住、金融など日々の暮らしに関わる領域に広がっており、インターネット媒体での記事・コンテンツのレコメンド(おすすめ)や広告などにおいて利活用が一層進んでおります。

当社独自の感性データ技術は、これらのエンターテイメントデータサービスや広告サービスを通じて生活者視点でいえば、自分の“好き”や“推し”に出会う、自分らしく生きる、社会と共に生きる、自らのライフスタイルをみつけてより良く暮らす、そうした欲求を繋ぎ広げることを可能とする技術です。企業視点から見ても、エンターテイメント分野においては、お気に入りの楽曲、アーティスト、アニメ、ドラマ、映画、俳優、クリエイターなどと出会う機会の増加や音楽、視聴経験の向上への貢献、広告サービスにおける感性マーケティング分野においては、短期的ではない中期的な視点による企業が持つそれぞれのフィロソフィー、カルチャー、ストーリー、こだわり、パーパスなどを丁寧に訴求することで、自社の感性価値、情緒的価値をきっかけに企業と生活者が共感で繋がるより深いコミュニケーション活動への貢献が可能となってきております。

当社が培ったエンターテイメント分野でのデータベースやデータマネジメント技術を活用し感性マーケティング分野に繋げることで、多くのアーティスト、クリエイターの才能を発見し、それぞれのストーリーや世界観を可視化し、結果として新たなコンテンツ(IP※)の発掘から制作、流通、プロモーション、コラボレーション、二次展開までのサポートを行うことを可能とします。創業より25年培ったエンターテイメント分野でのデータ関連技術を活用し、当社は今後のIP立国日本に貢献してまいります。

※楽曲、アニメ、ドラマ、小説、コミック、キャラクターなどのIP(Intellectual Property:知的財産)

当社の強みは、感性メタデータを活用した独自の感性AIの開発と音楽、映像を中心としたエンターテイメント分野を通じて人間が持つ感性や感情を体系的、網羅的、詳細にデータベース化を行い、国内最大級の感性データベースであるメディアサービスデータベース(以下「MSDB」といいます)として開発、運用しているところにあります。それらのデータ・技術開発を通じて、人間の感性と感情に寄り添う「セレンディピティ=偶然の幸せな出会い」を生む独自のデータサービスを可能とします。

当社は、「データベース・サービスカンパニー」として、創業以来『人の気持ちをつなぐ』というビジョンのもと、コンテンツに紐づく情報をデータベース化したオリジナルのMSDBを開発し、具体的には現在、「音楽データサービス」「映像データサービス」「感性ターゲティング広告サービス」の3事業を展開しております。

これらのサービスについては、ユーザーベースをもつパートナー企業への技術ライセンス提供として、KDDI株式会社、株式会社レコチョクを通じた株式会社NTTドコモ、LINEヤフー株式会社、楽天グループ株式会社、

LINE MUSIC株式会社、HJホールディングス株式会社(サービス名「Hulu」)、株式会社フジテレビジョン(サービス名「FOD」)、株式会社集英社、株式会社世界文化ホールディングス、株式会社CCCメディアハウス、株式会社ハースト婦人画報社、株式会社講談社などのサービスにて利用されております。

開発・運用型売上ではなく、技術ライセンス収入主体への事業モデルの転換に向けたデータ・テクノロジーライセンス事業に一段と主力事業がシフトする一方で、研究開発やデータ開発を引き続き、売上の25%を目処に積極的な投資を実行しております。それら事業活動の結果として、当期の売上高は前事業年度比102.1%の1,039,861千円、売上原価は、前事業年度比102.5%の563,913千円となりました。販売費及び一般管理費については、将来成長に向けた先行投資としての研究開発活動を積極的に継続し、前事業年度比100.8%の552,612千円となりました。この結果、営業損失76,663千円(前事業年度は営業損失79,289千円)、経常損失80,272千円(前事業年度は経常損失78,943千円)また、特別損失として、減損損失16,997千円、支払精算金として著作権使用料51,421千円を計上したことにより当期純損失は139,132千円(前事業年度は当期純損失100,264千円)となりました。

当事業年度末における総資産は、814,728千円(前事業年度末比156,125千円減)となりました。流動資産につきましては696,749千円(同188,699千円減)となりました。増減の主な要因としましては、現金及び預金の減少(同213,693千円減)、売掛金の増加(同26,512千円増)であります。固定資産につきましては、2025年6月に予定している本社移転などによる敷金及び保証金の増加(同32,574千円増)により、117,979千円(32,574千円増)となりました。

負債は、262,482千円(同2,317千円減)となりました。増減の主な要因としましては、買掛金の減少(同4,354千円減)、未払費用の減少(同5,320千円減)、契約負債の減少(同5,014千円減)、預り金の増加(5,619千円増)、未払法人税等の減少(同1,522千円減)、未払消費税等の減少(同1,189千円減)、退職給付引当金の増加(同11,135千円増)であります。

以上の結果、純資産は、552,246千円(同153,807千円減)となり、自己資本比率は、前事業年度末の68.7%から63.9%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます)は前事業年度末に比べ、213,693千円減少し、464,965千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、151,772千円となりました。主な収入要因としては、退職給付引当金の増加11,135千円がありました。一方で主な支出要因としては、売上債権の増加26,512千円、税引前当期純損失138,602千円の計上があります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、54,592千円となりました。主な支出要因としては、無形固定資産の取得による支出9,903千円、本社移転による敷金及び保証金の差入による支出40,574千円があります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、7,327千円となりました。主な支出要因としては、配当金の支払額7,326千円があります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。

 

b.受注実績

当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

当社は単一セグメントとしているため、当事業年度の販売実績をサービスライン別に示すと次のとおりであります。

名称

前事業年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

金額(千円)

前年同期比(%)

メディアビジネス

1,018,576

102.5

1,039,861

102.1

コンテンツビジネス

221

30.8

合計

1,018,798

102.4

1,039,861

102.1

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

LINE MUSIC株式会社

203,000

19.9

199,172

19.1

楽天グループ株式会社

159,934

15.7

143,203

13.7

 

(2)経営者による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

これらの財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績などを勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社の財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5経理の状況 1.財務諸表等(1)財務諸表〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②経営者の視点による経営成績等の状況及び資本の財源、資金の流動性についての分析

当事業年度においては、独自技術資産を活用したデータライセンス提供に関連する事業を主体にした事業モデルを進めてきました。従来のエンターテイメント分野向けのデータサービスに加えて、新規事業として感性マーケティング事業の育成を行いました。結果、データライセンス事業売上が売上の約7割を占める水準まで伸長しておりますが、この事業構造の変化により売上は2.1%増加しました。今後も収益性の高い独自のデータサービスの成長を基軸に収益性の向上を進めてまいります。

また、当社の主な資金需要は運転資金および研究開発費用であります。

運転資金は人件費支払いに充てるためのものであり、原則として営業活動による収入で賄うこととしております。

研究開発費用は、感性や感情を解釈する感性AI関連の技術開発、社内で使用するソフトウエアの開発や、ソフトウエア開発に使用するサーバー等の利用にかかる支払いに充てるためのものであり、基本的には営業活動による収入を主たる財源としておりますが、無借金であることから資金繰り、金融情勢を勘案し、良好な関係にある金融機関から借入による資金調達も必要に応じ、検討可能な状況であります。

 

(3)経営戦略の現状と見通し

現代の世界的に先行きが不透明な時代にある中で、生成AIのさらなる進化など技術やデータ活用の進化により新たな産業革命ともいわれる大きな変化が生まれております。その変化は経済活動のみならず生活のあらゆる領域での変革をもたらし、それらは人々の価値観の変化にも繋がっていきます。

自身の存在意義、パーパスなどに向き合うことがより重視されると共に、社会の多様性、包摂性、複雑性への理解の重要性が高まっています。社会と共生しながら自分らしくより良く生きる、ウェルビーイングやSDGsなど精神的な熟成を伴う価値観の浸透がさらに大事になってきています。それらの実現性によりまさに地球の将来を決める大きな変化をもたらす可能性があります。

このような時代背景の中、人間の感性や感情を解釈する技術はますます重要になります。これらの技術は「目に見えないものを感じる想像力」を育みます。ひとりひとりの想像力が成長することにより、個々人の精神性の熟成や人間性の回復が今後より進み、志を持つ個々人と企業の様々なコラボレーション(共創)が進化していきます。それらのコラボレーションは結果として社会や経済の多様性と自主性を伴った熟成された世界のより良い発展に寄与することとなります。

当社のエンターテイメントデータサービスは、音楽や映像作品・コンテンツに宿るクリエイターのメッセージ、ストーリー、世界観などを社会に多く繋ぐことで、人々が想像力を育む一助になりえます。また日本国内の音楽や映像作品・コンテンツは、日本はもとより、グローバル規模での流通が今後、言語の壁を越えて、ますます進んでいくことが予想されます。

 

エンターテイメント関連市場においては、

①基盤となるエンターテイメントデータベースの品質(質・量)を上げ、エンターテイメント関連市場への貢献を視座に、データ企業との連帯を強化します。

②インターネットを活用した音楽体験、映像体験といった体験価値がこの10年ほど熟成されてきた中で、次の10年を見据えたNext Experience(次なるエンターテイメント体験)をパートナーシップを組みながら開発を進めます。

③①②の活動を踏まえ、日本のエンターテイメント作品・コンテンツが海外でより多く広まることに、独自のデータサービスで寄与します。

 

感性ターゲティング広告をはじめとした感性マーケティングサービスは、企業・ブランド・製品・サービスが持つ想い、こだわりを生活者に感性的、情緒的価値を伴い繋げることで、共感に基づいた出会うべき生活者と企業・ブランド・製品・サービスを繋ぎます。その結果、生活者の時間と心の豊かさを生み、企業・ブランド・製品・サービスに付加価値や収益を生むことを可能とします。

 

感性マーケティング関連市場においては、

①感性ターゲティング広告を国内でも立ち上がる可能性が高いPMP(private market place=従来のアドネッ

トワークとは異なり企業広告や出稿メディアにおいて広告の質を最重要視した世界的に普及が進んでいる新しいインターネット広告)市場において、当社広告サービスのTrig’sの普及に努めます。

②PMP市場において、企業・ブランド・製品・サービスが持つ、ストーリーや世界観を独自の感性AIで可視

化し共感が連鎖する広告サービスに発展させます。

③①②を行いつつ、投資先行の現在から収益化のスピードを上げてまいります。

 

またその先には、「エンターテイメント×感性マーケティング」の事業を実現し、生活者、クリエイター、アーティスト、開発者、マーケター、生産者が持つストーリーや世界観を繋ぎます。

具体的にはIP(知的財産となるエンターテイメントコンテンツやクリエイター)の発掘、制作、流通、マーケティングまでを独自のデータ・テクノロジーで繋ぎ支援します。

 

結果として日本のこれからの未来であるIP立国日本に貢献する会社として成長してまいります。

 

これらを実現する重要な要素は創業以来の当社の注力領域である人間の持つ「感性」や「感情」のデータベース

化およびその利活用にあります。当社は「人の感性や感情を理解する技術」の開発をより一層進めてまいりま

す。そのための土台となるのが、当社独自感性データベースおよび感性AIの技術となります。

 

その上で、中長期的に自社にてユーザーベースを持ちうる当社独自のデータベース活用サービスを展開し、国内外で一人でも多くの利用者を増やしていくことで、当社ミッションである世界中の『人の気持ちをつなぐ』ことに寄与していきます。

 

(4)経営者の問題意識と今後の方針について

短期的には、収益基盤の改善と強化のペースを一層上げて進めます。この短期的な改善・強化を徹底して実現した上で、中長期の戦略の実行を進めてまいります。

また将来を見据えたリーダー層の育成、企業文化のさらなる熟成、浸透などの人材育成およびマネージメント面の強化についてもペースを上げて行っていきます。

その上で当社の経営陣は、現在の事業環境および入手可能な情報に基づき最善の経営戦略を立案し、実行するように努力しておりますが、当社の属するインターネット業界は開発スピードが速く、その内容も複雑化してきております。また、提供するサービスについても、ユーザーの嗜好や流行の変化を捉え、柔軟な事業展開が必要となり、競合他社との競争が激化することも予想されます。あわせてあらゆる分野で大きな変革をもたらすであろう生成系AIの進展は、予想を超えて進む可能性を持っております。

そのような事業環境の中で、当社は、人の感性と感情を解釈する技術およびサービス開発に特化し集中することで、徹底的に独自性を磨き、感性メタデータを基盤とした事業モデルにて収益拡大を強化してまいります。また独自技術を活用した収益モデルの多様化とパートナーシップの強化を図り、収益の柱を増強、確立してまいります。

 

5【重要な契約等】

契約会社名

相手方の名称

契約の名称

契約内容

契約期間

株式会社メディアソケット(注)1

KDDI株式会社

取引基本契約書

KDDI株式会社との取引に関する基本契約

2006年5月19日から1年間(以降1年毎自動更新)

株式会社ソケッツ

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社他2社

(注)2

データベースの構築・利用等に関する業務提携契約書

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社他2社との業務提携に関する契約(注)2

契約締結日

2013年9月30日

(注)1.当社は2007年8月1日付で、株式会社ソケッツに商号変更をしております。

2.他2社とは、株式会社T-MEDIAホールディングス(2016年4月1日付で株式会社TSUTAYA

(現:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)に吸収合併)、株式会社CSマーケティングになります。本契約は4社間での業務提携になります。

 

6【研究開発活動】

当社は、競争力の源泉である感性メタデータおよびその利活用技術の開発、MSDBの利用範囲を拡大し、収益モデルの多様化を実現していくためのデータベース強化と関連技術の研究などに取り組んでおります。

以上から、当事業年度における研究開発費の総額は、71,837千円となっております。