第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 「大幸薬品は『自立』『共生』『創造』を基本理念とし、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供します。」という企業理念を実現するに当たり、「健康社会の『ないと困る』を追求する。」をスローガンとして掲げすべての企業活動の指針としております。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは事業の持続的成長を図る観点より、売上高及び営業利益の成長性を重視しております。また、資本の効率化による株主利益の最大化を目指し、自己資本利益率(ROE)も重視しております。

 しかしながら、当連結会計年度は大幅な赤字を計上するに至りました。前連結会計年度より進めております構造改革の成果を発揮し、まずは黒字化を早期に達成できるよう目指してまいりたいと考えております。

 

(3) 経営環境、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 医薬品事業

 国内市場においては、人口の高齢化等に伴う医療費の高騰が社会問題化する中で、セルフケアとしてのセルフメディケーションの推進により、一般用医薬品の市場はさらに拡大するものと予測されます。当社の主力製品「正露丸」が属する止瀉薬市場は、新型コロナウイルス感染症の影響から回復し、堅調な推移となっております。高まる市場需要を背景に供給体制の強化に努めているものの、当該需要に応えることができず、一部で店頭欠品が発生する等、安定供給が喫緊の課題となっております。

 このような中、吹田工場を中心に適切な増産体制を構築するとともに、京都工場・研究開発センターにおける医薬品生産ラインの立ち上げを進めてまいります。

 また、「正露丸」シリーズの液体カプセルタイプ「正露丸クイックC」においては、2023年7月のリニューアル以降、若年層向けのWEBマーケティングを強化したことにより販売が伸長しており、引き続き若年層を中心とした新規ユーザーの獲得とラッパブランド全体の強化を図ってまいります。

 海外市場においては、特に当社グループの主要市場である中国本土、香港、台湾を含むアジア地域で高い評価を頂いており、需要拡大の期待が持たれます。引き続き、現地の販売代理店と連携を強化し、営業・マーケティング体制を整備し、国内で蓄積した経験・ノウハウ等を活かしながら、主力製品「正露丸」、「セイロガン糖衣A」の販売を強化してまいります。

 

② 感染管理事業

 感染管理事業においては、「クレベリン」の主成分である二酸化塩素の有効性や安全性に関するエビデンス強化によって信頼回復に取り組んでまいりますが、「クレベリン」の属する除菌市場は売上予測が難しい状況が続いていることから、広告宣伝費等のコストコントロールを強化することにより、収益性の改善を目指してまいります。

 

③ 財務体質の改善

 当連結会計年度に発行した行使価額修正条項付第10回新株予約権の行使や、保有資産の売却等によって財務体質の改善は進んでおります。医薬品事業及び感染管理事業における採算性の改善に加え、事業規模のスリム化等を通じて固定費の圧縮を図り、収益体質の強化を目指すとともに、更なる財務体質の改善に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する全体方針

 当社グループでは、「『自立』『共生』『創造』を基本理念とし、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供します。」という企業理念の下、企業活動を通じて、環境・エネルギー問題や社会課題に対応してまいります。

 医薬品事業においては、人口の高齢化等に伴い医療費の高騰が社会問題化する中で、当社「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」の安全性と有効性を世界に広めていくことにより、セルフケアとしてのセルフメディケーション(自己管理治療)の推進に寄与してまいります。また、感染管理事業においては、低濃度二酸化塩素ガスの特許技術を用いて、衛生対策や換気を補うことによるCO2排出量の削減に貢献できるよう様々なエビデンス強化に取り組んでまいります。

 

①ガバナンス

 サステナビリティ関連のリスク及び機会の監視及び管理については、リスクマネジメント委員会にて実施しております。代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会は、各部門長及び監査等委員で構成され、四半期に一度の定期開催に加えて必要に応じて臨時に開催しております。サステナビリティに関することを含めてリスク及び機会の識別・評価を行い、対応策の協議を行っております。なお、取締役会への報告体制については整備に向けて検討中でありますが、リスクマネジメント委員会には代表取締役社長及び社外取締役が参加しているため、必要な情報の連携は図られております。

 

②リスク管理

 当社グループでは、リスクマネジメント規程に基づき、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行うため、リスクマネジメント委員会を設置しております。各部門において発生しうるリスク及び機会を抽出し、サステナビリティを含むリスク及び機会を網羅的に識別するとともに、各リスク及び機会について、発生頻度や予測される影響度などに基づき、評価及び対応策の検討や対応状況の管理等を進めております。

 マテリアリティ(重要課題)については、特定に向けてリスクマネジメント委員会及び関係部署にて協議を進めております。

 

(2)人的資本に関する戦略と指標及び目標

 当社グループは、企業理念を実現できる人材育成のための機会と環境の提供を進めております。

具体的には、体系的な教育プログラムの構築、多様な人材の活躍推進、働きやすさの向上を目的とした社内環境整備を通して実現を目指しております。

 企業理念を実現できる人材とは、理念に基づき、スローガンである「健康社会の『ないと困る』を追求する」を実践できる人材であり、具体的には、自分で考え、目標を達成するために他者と協力し、新しい価値を生み出していける人材と定義しております。これらの人材の育成及び定着のために、以下の戦略を設定しております。

 

①戦略

(ⅰ)人材育成

 当社は、『自立』『共生』『創造』という基本理念の考え方に則り、従業員の能力開発と自立を促進するための体系的な教育プログラムの構築をしてまいります。教育体制は、従業員が自らのスキルを継続的に向上させ、変化するビジネス環境に効果的に対応できるよう支援することを目的としております。

 

(ⅱ)経営戦略の実現を目指した多様な人材の活躍推進

 当社は、性別、国籍、職歴、年齢、育児中の社員など、多様な背景を持つ人材が存在することが組織の強みとなると認識しております。多様性を活かし、経営戦略の実現に向けた人材の活躍を推進し、会社全体の成長に繋げてまいります。

 

(ⅲ)働きやすさの向上を目的とした社内環境整備

 従業員一人ひとりがライフスタイルに合わせて最適な働き方を選択できるよう、多様な勤務形態の提供をしております。在宅勤務やフレックス勤務制度等の利用を促進することで、繁忙期と平時で柔軟に勤務時間を選択でき総労働時間の削減に繋がると考えております。

 

②指標及び目標

戦略

具体的施策

指標及び目標並びに実績(注)2

人材育成

体系立てた教育体制(※)の確立による企業理念を実践できる人材の育成

※全社員向け研修、マネジメント研修、階層別研修

経営戦略の実現を目指した多様な人材の活躍推進

高卒者、リファラル、アルムナイ採用等、採用手法の多様化等による、多様な背景を持つ人材の活躍の推進

60歳以降の就業希望者の働きがい向上を目指した制度改定の実施

育児中の社員の就業支援(注)3

育児中の社員の制度利用の促進と育児休業からの復帰率100%を目指す(2023年度実績:100%)

男性労働者の育児休業等及び育児目的休暇の取得率の100%維持を目指す(2023年度実績:100%)

働きやすさの向上を目的とした社内環境整備

在宅勤務、フレックス勤務、育児時短勤務など多様な働き方を提供するための制度利用を推進

1人当たり総労働時間対前年比削減率

(有休取得率向上、残業時間の削減)

(注)1.人材育成・社内環境整備は連結子会社各社で行われていますが、規模・制度の違いがあるため、一律の設定が困難であることから、当連結会計年度については、当社単体について記載しております。

2.表中に記載の指標も含め、適切な指標の設定について現在検討中であります。

3.育児中の社員の就業支援を除く実績については、2024年度より実績の集計を開始するため、記載しておりません。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。当社グループでは、これらリスク顕在化の未然防止及びリスク顕在化の最小化のための対策を講じるよう努めております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)特定製品への依存について

 当社グループにおける売上高の大半が「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」、「クレベリン 置き型」によって構成されております。品質等に問題が発生した場合には販売中止・回収を余儀なくされることも考えられ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、当該製品の製造につきましては、培ってきたノウハウをもとに万全の品質管理・品質保証体制をもって臨むとともに、当社グループの強みとなる商品を軸に、研究やマーケティングリソースの分散を避けながら、製品ラインナップを拡げていくことを考えております。

 

(2)特定取引先への依存について

 当社グループの売上高のうち、国内においてはアルフレッサヘルスケア㈱、㈱PALTAC、海外においては香港の一徳貿易有限公司の上位3社への売上高が当連結会計年度において全体の約79%と大きな割合を占めております。これら取引先の経営施策や取引方針の変化、財政状態の悪化等により、販売機会の一時的な喪失等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、取引先の状況を早期に把握できるよう定期的に与信調査等の顧客管理を実施しており、また、新規取引先や新規販売チャネルの開拓も継続して検討してまいります。

 

(3)海外事業展開に伴うリスク

 当社グループは、中国本土・香港・台湾を中心とする海外市場において、従来より「正露丸」、「セイロガン糖衣A」等の販売をしております。当該地域における政治、経済、法律、文化、ビジネス慣習、競合企業、為替、その他様々なカントリーリスク等による予想し得ない事象が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、海外市場の各地域におけるリスク情報を継続的に収集し対応策を検討するとともに、さらなる各地域への事業展開については慎重かつ迅速に行ってまいります。

 

(4)類似品の存在について

 当社グループが製造・販売しております「正露丸」及び「セイロガン糖衣A」は、他社においても同一又は類似した名称で製造・販売が行われております。このため、当社グループが製造・販売しております製品と類似した商品が市場には多数存在しており、特に類似したパッケージの場合には消費者が当社グループの製品と誤認して購入する可能性が否定できません。また、感染管理事業における主要製品である「クレベリン」についても他社から類似品の製造・販売が行われており、消費者が当社グループの製品と誤認して購入する可能性を否定できません。

 さらには、これらの類似品において品質問題等が発生した場合には、当社グループの製品のイメージダウン及び予期せぬ風評被害が発生する可能性も否定できず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、さらなるブランド力の強化、継続的な新製品の市場投入、エビデンスの蓄積・公表等により、類似品との差別化を図り消費者の当社製品への理解が深まるような事業活動を継続してまいります。

 

(5)急激な需要の変化等に関するリスク

 感染管理事業においては、衛生管理製品を市場に提供していくために二酸化塩素ガス特許技術を応用した製品等の企画・開発・販売を進めております。そのため、当該事業は感染対策を中心とした市場環境に影響を受け、新たな感染症の流行拡大及び予防意識の動向等によっては、製品の需要に急激な変化が生じます。想定以上の需要の変化が生じた場合には、一時的な製品供給不足や過剰生産能力、過剰在庫に陥る可能性があり、その結果として当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、急激な需要の変化に柔軟に応じられるサプライチェーンマネジメント体制の強化に取り組んでまいるとともに、長期的な需要を冷静に分析し、投資を意思決定する仕組みを強化してまいります。

 

(6)原材料価格及び調達に関するリスク

 当社グループは、原材料等について急激に価格が高騰した場合、あるいは一部の原材料等について供給が滞り、代替の調達先が確保できない場合には、製品の利益率の悪化や機会損失の発生により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、複数の仕入先の確保、供給能力の高い仕入先との取引等により供給体制強化・安定化を図ってまいります。

 

(7)製造物責任に関するリスク

 当社グループの製品については、品質管理体制を整備し、高い品質水準の確保に努めておりますが、予期せぬ事情により大規模なリコールや生産物賠償責任につながるような大きな品質問題が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、当社に起因する生産物責任における損害賠償に備えた適切な保険に加入しております。

 

(8)競合に関するリスク

 医薬品事業における「正露丸」、「セイロガン糖衣A」を中心とする当社グループの製品について認知率と市場シェアをより高めるためのマーケティング施策を実施しており、その結果安定的な収益の獲得が出来ております。 また、感染管理事業における製品については、当社の有する特許技術や蓄積されたエビデンス等が他社にとって高い参入障壁となっており、競合の数が限定的となっております。しかし、他社の優れた製品の出現や競合品の価格引き下げが行われた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、ブランド力の一層の強化、継続的な新製品の市場投入、さらなるエビデンスの蓄積・公表等により、当社の競争力を高めてまいります。

 

(9)法的規制等に関するリスク

 当社グループの属する医薬品事業は、国内市場においては、薬機法やGMP省令等の関連法規、また、中国本土・香港・台湾を中心とする海外市場においても同等の法規の厳格な規制を受けており、各事業活動の遂行に際して許認可等を受けております。これらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現時点におきましては当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、予期しない法令違反等によりその許認可等が取り消された場合や何等かの事由により許認可等の更新が出来なかった場合には、当社グループの運営に支障をきたし事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)情報セキュリティに関するリスク

 当社グループでは、事業や業務を効率的に進めるため、デジタル・ITの活用を進めており、これらのシステムにおいては機密性の高い情報や個人情報を取り扱っております。社内外からの不正アクセスやサイバー攻撃等により、データ漏洩やシステムダウン等によるビジネスオペレーションの停止等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうしたリスクへの対応策として、適切なセキュリティサービスを選択するとともに、定期的なセキュリティ研修を実施しております。

 

(11)継続企業の前提に関する重要事象等について

 当社グループは、前連結会計年度から業績状況は着実に改善しているものの、感染管理事業における需要の減少によって3期連続の営業損失及び経常損失を計上するに至ったことから、前連結会計年度に引き続き継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しておりますが、当連結会計年度末において現金及び預金5,484百万円を保有しており、コミットメントライン契約による追加の資金調達余力もあることから、事業運営に必要な資金については確保していると判断しております。また、当社グループでは、当該事象又は状況の解消に向けて、以下の対応策を実施することにより収益性の向上に取り組んでまいります。

 

① 医薬品事業の安定した収益の獲得

  堅調な需要状況に対し、当連結会計年度に整備を進めてきたシフト生産体制や京都工場の医薬品ラインの立ち上げ等の施策を本格的な実行フェーズへ進展させ、市場への安定供給を行うとともに、出荷価格の見直しによる適正利益の確保によって安定した収益の獲得を目指してまいります。

② 感染管理事業の収益性改善

  感染管理事業においては、「クレベリン」の主成分である二酸化塩素の有効性や安全性に関するエビデンス強化によって信頼回復に取り組んでまいりますが、「クレベリン」の属する除菌市場は売上予測が難しい状況が続いていることから、広告宣伝費等のコストコントロールを強化することにより、収益性の改善を目指してまいります。

③ コスト削減

  茨木工場の転貸やオフィススペースの縮小等により引き続き固定費の圧縮を図るとともに、販売費及び一般管理費の効率化及びコストコントロールを強化することにより、収益性の改善に取り組んでまいります。

 

 以上のことから、現時点で当社グループにおいて、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次の通りであります。

 

① 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナという。)の5類感染症への移行によって社会経済活動が正常化に向かっており、景気は緩やかな持ち直しの動きが見られておりますが、ウクライナ情勢の長期化に伴うエネルギー・資源価格の高騰、継続的な物価上昇による消費の冷え込み等、依然として景気の見通しは不透明な状況が続いております。

 このような中、当社グループは医薬品事業において、市場への安定供給という課題に対する取り組みを進めたものの、原料メーカー起因による一部製造ロットの自主回収や仕掛品のロットアウトの発生、設備トラブルによる一時的な生産遅延が発生するなど、安定供給の課題解消には至りませんでした。しかしながら、製造人員の増強やシフト生産体制の構築、京都工場の医薬品ラインの立ち上げ等の増産施策に関する整備は着実に進捗したことから、翌連結会計年度は製造品質を維持しつつ、供給体制の強化を図ってまいります。また、感染管理事業では、二酸化塩素のエビデンス強化に係る研究開発を通じた製品訴求力の向上や、「クレベリン 置き型」の除菌機能試験を再現した新CM「事実、クレベリン。」篇の放映をするなど、消費者の皆様への信頼醸成に向けたマーケティング施策に取り組んでまいりました。

 これらの結果、当連結会計年度の売上高につきましては、主に医薬品事業の増収により、対前期比21.4%増の6,120百万円となりました。売上総利益につきましては、医薬品事業の増収影響や感染管理事業の棚卸資産廃棄損の減少等により対前期比139.0%増の2,577百万円となりました。

 販売費及び一般管理費につきましては、感染管理事業のCM放映等に伴う広告宣伝費の増加はあったものの、前期から進めている構造改革によって在庫保管費用や人件費が減少したほか、継続的なコスト削減施策の実行により対前期比13.8%減少し3,583百万円となりました。

 これらの結果、当連結会計年度の営業損失は1,005百万円(前期は3,079百万円の営業損失)、経常損失は1,248百万円(前期は3,352百万円の経常損失)となりました。特別利益につきましては、当社の出資先であるクオリプス株式会社が2023年6月27日東証グロース市場へ上場し、保有株式の一部を売却したことから投資有価証券売却益221百万円を計上したほか、一部土地の売却に伴う固定資産売却益76百万円を計上しております。特別損失につきましては、茨木工場の固定費負担軽減に向け転貸契約を締結したことから、転貸損失引当金繰入額77百万円を計上しております。また、当社の固定資産について減損会計を適用し、減損損失2,502百万円を計上致しました。その結果、親会社株主に帰属する当期純損失につきましては3,611百万円(前期は4,895百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

 セグメント別の経営成績につきましては以下の通りであります。

 

(医薬品事業)

 医薬品事業につきましては、国内の止瀉薬市場(2023年12月累計)が対前期比で113.3%となり、コロナの影響から回復し、コロナ前の水準を上回ってきております。堅調な需要に対し、シフト生産体制による操業時間拡大等の取り組みが進捗した一方で、原料の製造メーカーにおいて製造方法の承認書からの逸脱が判明し、一部製造ロットの自主回収や仕掛品のロットアウトが発生するなど、供給課題は依然解消には至らず、出荷制限をしながらの販売が継続致しました。製品関連では「ラッパのマークの正露丸」シリーズの液体カプセルタイプ「正露丸クイックC」のリニューアルを7月に行うとともに、「ラッパ整腸薬BF」も10月にリニューアルし、SNSやWEBでのマーケティングを強化したことで販売は好調に推移致しました。この結果、国内向けの売上高につきましては、対前期比32.0%増の3,336百万円となりました。海外向けにつきましては、国内市場との生産調整によって遅れていた供給を一部再開できたことや、出荷価格の見直しによる値上げ影響等により香港や中国、台湾といった主要市場で大幅な増収となったことから、対前期比68.5%増の1,849百万円となりました。

 これらの結果、医薬品事業につきましては、対前期比43.1%増の5,185百万円の売上高となりました。また、セグメント利益につきましては、主に増収影響やコスト削減等により、対前期比307.2%増の1,212百万円となりました。

 

(感染管理事業)

 感染管理事業につきましては、ドラッグストア等の販売店における通年商品化に向けた営業活動強化に加え、「クレベリン 置き型3個入り」や「クレベリンスプレー250ml」を新たに発売し、秋冬の需要期に向けた店頭展開強化を図ってまいりました。また、「クレベリン 置き型」の除菌機能試験を再現した新CM「事実、クレベリン。」篇の放映をするなど、消費者の皆様への理解促進に向けたマーケティングの強化を図ってまいりました。当社のシェアは回復しているものの、市場需要は引き続き低水準で推移しており、売上高は対前期比34.0%減の929百万円となりました。また、セグメント損失につきましては、棚卸資産廃棄損等の減少や各種費用の抑制により対前期比で987百万円改善し1,192百万円となりました。

 これらの結果、売上高は1,408百万円(前期は6,942百万円)、セグメント損失は2,179百万円(前期は4,936百万円のセグメント損失)となりました。

 

(その他事業)

 その他事業につきましては、主に木酢液を配合した入浴液や園芸用木酢液等の製造販売を行っております。売上高は5百万円、セグメント損失は28百万円となりました。

 

② 財政状態の状況

 当連結会計年度末における資産合計は13,220百万円(前連結会計年度末比1,825百万円減)となりました。また、負債合計は6,480百万円(同521百万円減)、純資産合計は6,739百万円(同1,304百万円減)となりました。前連結会計年度末からの主な変動要因は、現金及び預金の増加等による流動資産1,552百万円の増加、有形固定資産の減少等による固定資産3,378百万円の減少、未払金や短期資産除去債務等の増加による流動負債253百万円の増加、長期借入金の返済等による固定負債775百万円の減少、主に親会社株主に帰属する当期純損失に伴う利益剰余金の減少による純資産1,304百万円の減少であります。

 なお、自己資本比率は前連結会計年度末から2.5ポイント減少し、51.0%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)が前連結会計年度より2,447百万円増加し、当連結会計年度末残高は5,244百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は307百万円(前期は1,994百万円の使用)となりました。主に税金等調整前当期純損失3,563百万円、課徴金の支払額607百万円等の減少要因の一方で、減損損失2,502百万円、減価償却費704百万円、棚卸資産の減少581百万円等の増加要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果獲得した資金は1,166百万円(前期は190百万円の獲得)となりました。主に投資有価証券の売却による収入621百万円、投資有価証券の償還による収入400百万円等の増加要因によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は1,539百万円(前期は997百万円の使用)となりました。主に新株予約権の行使による株式の発行による収入2,119百万円、長期借入れによる収入500百万円等の増加要因の一方で長期借入金の返済による支出1,053百万円等の減少要因によるものであります。

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

医薬品事業

(百万円)

5,200

172.3

感染管理事業

(百万円)

698

41.6

その他事業

(百万円)

6

97.7

合計

(百万円)

5,906

125.6

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。医薬品事業につきましては、堅調な需要に対し、シフト生産体制による操業時間拡大等の取り組みが進捗したことによるものです。また、感染管理事業につきましては、需要低迷を受けて生産調整をしたことによるものです。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

医薬品事業

(百万円)

48

121.0

感染管理事業

(百万円)

その他事業

(百万円)

合計

(百万円)

48

10.8

 (注)当連結会計年度において、商品仕入実績に著しい変動がありました。感染管理事業につきましては、クレベ&アンドブランドの仕入が販売低調により発生しなかったことによるものです。

 

c.受注実績

当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

d.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

医薬品事業

(百万円)

5,185

143.1

感染管理事業

(百万円)

929

66.0

その他事業

(百万円)

5

67.5

合計

(百万円)

6,120

121.4

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.医薬品事業につきましては、堅調な需要と他社製品欠品の影響により増加しております。

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

アルフレッサヘルスケア㈱

1,003

19.9

1,874

30.6

一徳貿易有限公司

919

18.2

1,501

24.5

㈱PALTAC

1,250

24.8

1,464

23.9

 

⑤ 経営成績等に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。

 

⑥ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払い等によるものです。投資を目的とした資金需要は、企業価値の向上を図るための設備投資や研究開発等の投資等によるものです。

 当連結会計年度のキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入や新株予約権の行使による株式の発行による収入等があり、前連結会計年度から2,447百万円増加し、現金及び現金同等物の期末残高は5,244百万円となりました。

 今後の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、取引銀行4行とシンジケーション方式コミットメントライン契約を締結しており、総額3,000百万円の融資枠を確保しております。

 

⑦ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

   (コミットメントライン契約の締結)

  当社は、2022年7月22日開催の取締役会の決議に基づき、2022年8月10日付けで新たに総額50億円のシンジケーション方式コミットメントライン契約を締結致しました。なお、2023年12月19日付けで本契約を総額30億円に減額しております。

 

 (1)コミットメントライン契約締結の目的

  運転資金の確保及び財務基盤の安定性向上のために、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保することを目的としております。

 

 (2)コミットメントライン契約の概要

 

トランシェA

トランシェB

①借入極度額

15億円

15億円

②契約締結日

2022年8月10日

③契約期間

2023年2月1日~2024年1月31日

(2024年2月1日より1年更新)

2023年8月1日~2024年7月31日

(2024年8月1日より1年更新)

④借入利率

借入期間に対応する全銀協TIBOR+スプレッド

⑤アレンジャー

株式会社三菱UFJ銀行

⑥ジョイント・アレンジャー

株式会社三井住友銀行

⑦エージェント

株式会社三菱UFJ銀行

⑧参加金融機関

株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行

株式会社みずほ銀行、株式会社りそな銀行

  なお、本契約につきましては、増担保物件に対する処分等制限条項及び増担保条項が付されております。当連結会計年度末において、増担保条項のうち、当社グループの連結決算数値等に関連する財務維持要件に抵触したため、当社の一部の土地及び建物に根抵当権が設定されております。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは「自立」、「共生」、「創造」の基本理念を実践し、世界のお客様に健康という大きな幸せを提供することを使命と考え、生活者が健康で快適な生活を送るために必要とされる製品を提供すべく研究開発活動を行っております。

 現在の研究開発は主に当社の京都工場・研究開発センターにおいて、医薬品事業及び感染管理事業を中心に推進されております。

 当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次の通りであります。

 

(1)医薬品事業

 消化器管関連医薬品のスペシャリティ・ファーマとして、下痢のメカニズムの解明や、100有余年にわたり利用されてきた「正露丸」の主成分である日局木クレオソートについて、薬理薬効の研究を続けてまいりました。日局木クレオソートの有効性や安全性等の研究成果については、国内外の専門学術雑誌を中心に成果の発表を行うとともに、新規効能に対する研究を各大学と提携し進めてきました。さらに、健康サポート薬局に対応するエビデンスとして、日局木クレオソートの薬物相互作用の研究を行い、他の薬物と相互作用が起こらないことを学会発表致しました。また、糖尿病の治療薬であるメトホルミンが下痢を誘導することが知られており、糖尿病モデルマウスを用いて木クレオソートがメトホルミン誘導性下痢の症状を改善し、さらにメトホルミンの血糖値低下作用に影響しないことを解明しました。なお、この結果については既に論文発表致しました。現在は医師主導型臨床研究を進めております。

 また、日局木クレオソートが腸内細菌に対して影響を及ぼさないことを臨床研究で検証して、その薬理作用は腸内の殺菌ではなく腸の蠕動運動や水分調節であることを示しました。日局木クレオソートを使用した薬剤の開発も行っており、その効果有効性を周知させるための薬剤の開発も行っております。

 さらに、日局木クレオソートの止瀉以外の有用性研究として、アニサキスに対する運動抑制作用も既に論文発表しており、現在は動物実験モデルを用いた研究を進めております。

 

(2)感染管理事業

 「クレベリン」を主として感染管理製品は消費者庁より景品表示法に基づく措置命令を受けたことに伴い、二酸化塩素の研究だけでなく、製品としてのエビデンス強化を図ってまいります。

 二酸化塩素の基礎応用研究としましては、微生物に対する作用メカニズムの研究、各種ウイルス、細菌、真菌等に対する有効性の研究(二酸化塩素関連製品を用いた研究を含む。)、各種応用研究、安全性の研究を自社及び各研究機関と連携をとりながら進めております。これまで実施してきた多くの基礎研究をより高めるため、低濃度二酸化塩素ガス及び二酸化塩素ガス溶存液の付着菌や付着ウイルス、浮遊菌や浮遊ウイルスへの効果試験も継続して行っており、製品の信頼性を一層高めるよう努めております。新型コロナウイルス及びその変異株に対する二酸化塩素の有効性の研究も進めており、作用機序の解明を行い、既に論文発表しましたが、二酸化塩素ガスの効果について研究を続けてまいります。

 また、大阪大学大学院医学研究科の空間感染制御学共同研究講座におきまして、二酸化塩素ガスの細胞レベルの安全性と細胞培養における有効性の検証として、ヒト臍帯由来間葉系幹細胞及びiPS細胞を用いた研究を続けてまいります。

 順天堂大学大学院医学研究科に設置した集団感染予防学共同研究講座で、教育機関や医療空間の環境感染対策での二酸化塩素の有用性と応用について臨床的な検証を行い、小学校の新型コロナウイルス感染に対する二酸化塩素ガス製品の効果についても昨年論文発表を行いました。

 一方、製品開発は、二酸化塩素製品の市場拡大を推進させるべく、新しい発生機構を持つ新製品の開発に加え、無人空間でのくん蒸施工を想定した新しいジャンルの製品開発を進めております。

 また、濃度長期保持型二酸化塩素ガス溶存液は、衛生製品として製造販売しておりますが、日本国内では動物用を視野に入れた研究開発活動を推進しております。

 その他、現在着手している研究開発活動は以下の通りであります。

 ・安定した二酸化塩素ガスを発生させる装置の開発を行うことで、標準ガスを作り出すことが可能となり、多方面での活用用途が広がります。

・低濃度の二酸化塩素ガスを検知できる二酸化塩素濃度センサーについて基礎研究を行うことで、低濃度二酸化塩素ガス濃度を検出する機器の開発につなげ、信頼性と安全性が向上することでお客様に最適な空間除菌を提供することが可能となり、感染管理事業の拡大が図れます。

・二酸化塩素ガス発生装置から発生させた二酸化塩素ガスの実空間での分布や拡散についてシミュレーションで予測する研究も行っており、実空間でのより高度な二酸化塩素ガス濃度制御を目指しております。

 

(3)その他事業

 当社の蒸留木酢液を使用した種子消毒製品の農薬開発に取り組んでおりましたが、天然物由来のイネ種子消毒剤として、2023年3月23日付けで新規農薬登録を取得致しました(農薬の名称:タイコーゼⓇ、農薬の種類:くん液蒸留酢酸液剤)。

 また、大学等との研究機関との共同研究により、当社木酢液の植物生育や土壌に対する作用についても研究を進めており、イネ苗の生育促進作用について論文発表を行いました。これらの研究を推進するとともに、当社木酢液の用途開拓を行っております。

 

 なお、当連結会計年度における研究開発費をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

医薬品事業

101

感染管理事業

133

その他事業

11

合計

245