文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが合理的と判断する一定の前提に基づいたものであり、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
(1)企業理念の再構築
① 当社グループの原動力/重要課題/コアの価値
当社グループは2025年に北海道での創業から100周年を迎えました。創業100周年を機に、次の100年も社会から必要とされ続ける企業であるために、「我々は事業活動を通じてどのような社会を実現したいのか」という我々の根幹にあたる企業理念を再構築することといたしました。
当社グループは「日本国内における安定的で豊かな食生活の充実」という、創業当時の社会課題解決に向けた創業者たちの想いから始まり、その想いを創業者たちは「健土健民」という言葉に込めました。
企業理念に相当する存在意義・志の検討にあたり、創業の精神である「健土健民」の考えに立ち戻りつつも、これからの時代において我々を動かす原動力、取り組むべき重要課題、そして我々のコアの価値が何かを明らかにしました。
当社グループの原動力は、健土健民の再解釈である「社会課題を解決する精神」であり、重要課題は、現代の社会課題である「食の持続性の実現」である、と整理しました。
そして、当社グループのコアの価値は創業からこれまでの間に培われた「価値をめぐらせる力」です。当社グループは創業以来、生産者からいただいた乳の価値を向上させ、取引先や消費者へ提供し、需要を創造していくことで、地域社会や生産者や投資家にも価値をめぐらせてきました。その「価値をめぐらせる力」こそが当社グループのコアの価値であると考えました。
<当社グループのコアの価値>

② 存在意義・志
再構築した企業理念では、我々の原動力である”社会課題を解決する精神”とコアの価値である”価値をめぐらせる力”のどちらも示すものとして、「健土健民」を存在意義・志に掲げました。また、存在意義・志のステートメントを「私たちは社会課題に挑む精神で、人と自然が健やかにめぐる食の未来を育んでいきます。」と定めました。このステートメントには、パイオニア精神を持ちながら、その時代の社会課題解決に挑む「健土健民の再解釈」、ステークホルダーとともに価値を創造し豊かな循環を生み出す「価値提供の考え方」、食の持続性の実現も含め食の可能性を切り拓く「取り組む社会課題」が示されています。
そして、存在意義・志とそのステートメントに込めた思いを端的に表現するコーポレートスローガンを「Love Earth.Love Life.」としました。このコーポレートスローガンには、人と自然が健やかにめぐるように、地球と大地を愛し、生命と人生を愛するという意味が込められています。

(2) 未来ビジョン2050・Next Design 2030の策定
当社グループは、2023年4月1日「未来ビジョンプロジェクト」を発足しました。未来ビジョンプロジェクトでは、創業100周年を迎えるにあたり、当社グループが実現したい未来、「雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050」を策定しました。
また、「Next Design 2030」は、当社グループを取り巻く中長期的な環境認識のもと「未来ビジョン2050」から遡り、実現したい未来までの道筋を描いています。

① 未来ビジョン2050
当社グループは、「雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050」を、「EGAO-MEGUMITOWN」という「まち」に表現しました。ビジョンの中には「酪農・農業」「健康」「フードテック」「宇宙」の4つのエリアがあり、それぞれのエリアが目指すべき方針や内容を示しています。
創業者のひとり、黒澤酉蔵は自然の循環を活かし持続可能な農業を実現することを目指した「循環農法」を唱えました。この考え方は、環境に優しく資源を効率的に活用する持続可能な農業を推進するものであり、現在の「サステナビリティ」に通じる理念であると同時に、近年様々な分野で注目を集めている「リジェネラティブ」=「持続的」で「好循環」な社会の形成にも通じるものです。
当社グループは新たな100年に向けて、「EGAO-MEGUMITOWN」をビジョンとして掲げ、「リジェネラティブな社会」の実現を目指します。

※雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050 https://www.meg-snow.com/mirai-vision2050/
② Next Design 2030
ア.経営環境認識と「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」の振り返り
A.当社グループを取り巻く中長期的な環境認識
わが国で深刻化している少子高齢化の問題は、今後世界中に広がると予想されています。また、食料生産システムの限界や、タンパク源不足の問題によって、今後の食料供給不安定化が懸念されます。食に関する社会課題は2050年に向けて世界全体の課題になると考えられます。
一方で、世界的人口増加はタンパク源不足リスクでありながら、当社グループが乳で培った知見を活かせる機会にもなり得ます。

B.雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025の振り返り
当社グループは、2023年5月に、「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」(以下、中計2025)を策定しました。中計2025では「強靭性の獲得」をテーマに掲げ、3つの柱である事業戦略と基盤戦略、およびそれらを支える財務戦略で構築しております。
2025年3月までに、一部の施策については着実に進捗し成果を残しています。各種コストの増加に対しては価格改定を行うことで対応し、安定した収益性を維持することができました。販売物量においても、競合他社に対し優位性を発揮し、市場でのプレゼンス向上に取り組みました。DX推進や人的資本への取り組みについても、計画通りに進捗を見せており、組織全体の効率化と人材の活用を今後もさらに加速させていきます。
一方、PBRは若干の改善を見せているものの、依然として1倍割れの状態が続いており、当初中計2025の中で早期に目指すとしていた、1倍超の水準には到達していません。工場の老朽化が進むに伴い、生産体制の変革が不可欠となっていますが、具体的かつ有効な改善の方針や対策を示すことができていない状況です。
以上のことから、当社グループが中計2025の積み残し課題を解決することに加え、従来の延長ではない意欲的な施策に打って出る必要があると考えています。
<中計2025:連結経営指標>

イ.「Next Design 2030」の概要
A.「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」から「Next Design 2030」へ
当社グループは2025年5月に新たな経営計画「Next Design 2030」を発表しました。2025年度は中計2025の最終年度となりますが、「Next Design 2030」へと発展的に移行し、飛躍的な成長を目指します。
当社グループは存在意義・志である「健土健民」のもと、社会課題に挑む精神で人と自然が健やかにめぐる食の未来を育んでいきます。そして、事業活動を通じてこれからの社会課題であり、現代を生きる我々が取り組むべき重要課題でもある「食の持続性」に取り組み、長期的に企業価値を向上し、企業としての存在価値を確立していきます。

B.Next Design 2030コンセプト
「Next Design 2030」では、当社グループの新たな100年に向けた、第2の創業ともいうべきアセットの変革を断行します。新たな発想での生産体制の進化と、無形資産投資による競争力の強化により、乳の価値を上げ、乳の価値と需給構造の大転換を図ります。
国内生乳需給上の、乳脂肪分(Fat)・無脂乳固形分(SNF)のアンバランス課題解消に向けて、チーズ市場における事業の拡大を図ります。また、白物飲料の収益性向上に注力し、市場でのプレゼンスを高め、需要を創出し、製品の価値評価を上げることを目指します。さらに、当社グループがこれまで乳で培った知見や技術を応用して、社会への価値提供を拡大し、適正な利潤を追求していきます。既存事業での競争力を維持しつつ、代替食品事業や海外展開といった新たな領域へ進出し、新市場で確固たる地位を築いていきます。
そして、これらの取り組みを力強く推し進めることによって「社会的価値」と「経済的価値」を同期させ、「食の持続性の実現」による企業価値の最大化を実現します。

C.事業ポートフォリオ変革
当社グループのポートフォリオの考え方は「食の持続性貢献度」による評価を縦軸とし、「市場成長性」と「当社収益性」を掛け合わせた指標を横軸としています。
「食の持続性貢献度」とは「食の持続性」を高めるための売上規模や国内酪農基盤への貢献度などを勘案した、当社グループ独自の指標です。本業を通じて、市場成長性×当社収益性で示す「経済的価値」をしっかりと高め、同時に、国内酪農基盤への貢献を目指すことで「社会的価値」を同期させ「食の持続性」を実現します。
「雪印メグミルクアセットの大変革」により、事業ポートフォリオを変革させ、食の持続性貢献分野の資本効率の改善を進め、高付加価値化を図っていきます。具体的には、重点領域に保有資源を集中し、レバレッジをかけ、強化していきます。また、成長促進領域は、当社グループの成長をドライブするカテゴリーであり、一定のリスクを取りながら、ハイリターンを目指します。一方で、酪農基盤領域は事業資産の圧縮や他社との協業など、アセットライトを志向すると同時に、収益性改善のため、市場の変革にも挑戦していきます。

D.戦略の“4つの柱”、重要な“7つの戦略課題”
「Next Design 2030」は、事業戦略を「4つの柱」と「7つの戦略課題」で構成しています。
1つ目の柱、「成長の果実の育成と収穫」では、中計2025で取り組んできた「海外展開強化」、「機能付加商品の育成」、「プラントベースフードへの参入」、といった「新たな成長のタネづくり」を着実に進め、成長性とリターンを可視化します。具体的には、海外展開における輸出力強化や、代替食品拡充による収益源としての定着化などを戦略課題としています。
2つ目の柱、「乳の産業価値を高める構造の変革」では、「チーズの徹底拡大」と「白物飲料でのプレゼンス拡大」を戦略課題としています。2025年5月に発表した「チーズの生産体制整備」では、北海道でナチュラルチーズを生産する「なかしべつ工場」と、茨城県でプロセスチーズを生産する「阿見工場」で合わせて約475億円の設備投資を行い、2028年上期に両工場で新たな生産体制が稼働する予定です。この投資により、新たな需要を創造する商品の生産が可能となり、当社の強みであるチーズカテゴリーでの成長を加速すると同時に、酪農乳業界の課題である無脂乳固形分(SNF)需要の拡大に対して、これまでとは一線を画すアプローチで解決に臨みます。
3つ目の柱、「リジェネラティブな酪農の実現」では、「守る」「維持する」国内酪農基盤の強化・支援から、「再生」に向けて動き出します。酪農乳業界の発展に寄与する研究・ビジネスへの参入により、自給飼料需要拡大に取り組みます。
4つ目の柱、「社会とのつながりの進化」では、当社グループが乳で培った知見や機能を社会へ還元し、他業界への応用ビジネスの展開を目指します。

E.戦略課題KPIおよび経営指標
2030年度の営業利益目標は350億円です。2024年度の実績対比では約160億円増加する計画です。このうち、海外事業では全体の利益に対して20%の構成を占めることをKPIとし、金額として70億円を目標としています。機能性素材販売の拡大や、東南アジアを拠点としたチーズの拡大の他、2026年度にはAGRO SNOW PTE.LTD.(アグロスノー)によるプラントベースフード(エンドウ)原料製造工場が稼働し、収益源としてプラントベースフードの早期定着化を図ります。
国内の成長領域では、2030年度に150億円の営業利益を計画しています。対象としている4つの事業領域は、今後の市場の成長が期待できるカテゴリーです。これらの領域で高い成長率を実現するために、今後実施する生産体制進化のための投資では、付加価値生産性の向上と、他社との協業等による効率性の向上を同時に実現するイノベーティブな取り組みを推進していきます。
また、経営上のコミットメントは、2030年までに資産売却を除く調整後ROE9.0%以上、ROIC6.0%以上としています。



F.キャッシュアロケーションおよび投資方針
当社グループは、これまでの安定的な営業キャッシュフローの創出により、有利子負債の割合は一貫して減少し、直近では過去最低レベルまで減少しています。このことは、当社グループが自己資本を積極的に積み上げるステージから、その自己資本を有効活用し、企業価値の向上を図るステージへ移行していることを示しています。今後は、資産売却や有利子負債の効果的な活用により、ROE9.0%以上の達成に向けて、戦略的なキャッシュアロケーションおよび投資基準を策定します。

投資方針は、投資の目的に応じた「基盤投資」、「フロンティア投資」、「戦略投資」の三つのカテゴリーに区分し、投資配分を設定して、個々の案件を決定していきます。投資総額は2030年までの6年間で約3,200億円を計画しています。それぞれの投資区分詳細は次の通りです。
また、企業としての成長を加速し、調整後ROE9.0%の早期達成に向けた有効手段として、当社グループとのシナジーや事業領域拡大が見込まれる分野等に対し、積極的にM&Aを活用します。

G.株主還元及び資本効率改善について
財務の基本方針として、財務の健全性を維持したうえで、営業キャッシュフロー・BSマネジメント・有利子負債活用によって基盤・成長投資を実施し、安定配当と機動的な自己株式の取得を行い株主還元も強化します。資本政策では、株価や資本構成の状況や成長投資資金需要を考慮しながら、資本効率向上に向けて機動的な自己株式の取得を実施し、取得した株式は全額消却する予定です。また、配当方針として、配当下限を100円に設定し、資産売却益を除く配当性向は40%以上としています。資本構成は、ネットDEレシオ0.5を目安とし、投資の状況に合わせ段階的に最適化していきます。
資産効率向上の施策としては、政策保有株式が2025年度純資産比率10%未満となるよう売却を進める他、工場再編や本社移転等により遊休となった資産の売却も検討します。

(3) 次期の経営環境及び優先的に対処すべき課題
今後のわが国経済の見通しにつきましては、米国の通商政策による世界経済の不確実性の高まりや、金融資本市場の変動等が国内に及ぼす影響に十分注意する必要があります。
食品業界においては、外食需要におけるインバウンド効果や、健康志向の高まりによる高付加価値商品の開発等で堅調な市場拡大が期待される一方で、原材料価格や輸送コスト等の上昇といった厳しい経営環境が継続することが想定されます。
酪農乳業界においては、生乳生産量の減少が見込まれ、夏季の需要期においては飲用牛乳の安定供給に向けた計画的な対応がますます重要となります。脱脂粉乳・バターの需要アンバランスの改善に取り組み、脱脂粉乳の在庫量は減少基調で推移していますが、対策を講じない場合は再び在庫が積み増すことが見込まれています。
当社グループは「Next Design 2030」のスタートの年にあたる2025年度の経営方針を「Brand-NEW」とし、以下の重要な施策に対し積極的な取り組みを進めてまいります。


〈当社グループのサステナビリティ経営〉

※重要課題(マテリアリティ)の詳細は、
https://www.meg-snow.com/csr/materiality/
〈サステナビリティ経営の実効性を確保するための推進体制〉

「健土健民」と、その具体的な実現手法である「循環農法」の考え方は、当初は酪農・乳業の発展と安定的で豊かな食生活の実現のために掲げられたものでした。100年を経て、社会課題は食の持続性の実現に変わっています。食の持続性の実現のためには、健全な人間社会だけでなく、動物、植物、地球環境の好循環が必要であり、循環型社会を目指す基本的な思想は100年前も現在も同じです。
当社グループのサステナビリティ経営は、環境に配慮した生産システムの構築と付加価値の高い商品の供給により社会課題を解決する、持続可能な事業活動によって実現するものです。重要課題(マテリアリティ)とKPI(重要管理指標)に沿って、これからもコンプライアンスの徹底を基本として社会的価値と経済的価値が同期化したサステナビリティ経営を推進し、食の持続性の実現を目指します。
(ガバナンス)
当社グループ全体のサステナビリティの取組みを経営レベルで推進していくため、当社社長が委員長を務めるグループサステナビリティ委員会を設置し、重要課題(マテリアリティ)のKPI進捗確認や達成に向けた協議を行い、内容を取締役会に報告しています。さらに、グループサステナビリティ委員会の下にサステナビリティ担当役員が部会長を務め、委員として社長が参加するサステナビリティ推進部会を設置しています。この部会では担当役員が分科会長を務める「脱炭素分科会」、「脱プラ分科会」、「人権分科会」、「TNFD分科会」からの報告を受け、具体的な取組みを協議しています。
当社の各部署とグループ会社にはサステナビリティリーダーが配置され、サステナビリティグループ活動を行うなど、従業員へのサステナビリティの理解・浸透や、現場での具体的な取組みを推進しています。
※
〈2024年度の開催実績と討議内容〉
①2050年カーボンニュートラル宣言
当社では、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル宣言を2023年5月に行い、2030年度までにCO2排出量を2013年度比50%削減する目標をKPIとして、グループ一体で脱炭素の取組みを推進しています。
②TCFD提言への取組み
気候変動問題はグローバル社会の最重要課題の一つであり、食の持続性の実現を目指す当社グループの事業に大きな影響を及ぼすため、課題解決に向けて積極的に取り組む必要があります。当社では2021年10月にTCFDへの賛同を表明し、2022年9月より「雪印メグミルクレポート(統合報告書)」にてTCFDに基づく非財務情報の開示を始め、年に一度、内容の見直しを行っています。
「(1)サステナビリティ共通」に記載しております。
移行リスクと物理的リスクから、2つのシナリオ(1.5℃上昇シナリオ、4℃上昇シナリオ)でリスクと機会に分類し、脱炭素ロードマップに基づき取組みを推進しました。将来的には現在取り組んでいるTNFDとの統合を目指します。また、2030年と2050年を時間軸として、事業インパクト評価を実施しました。
気候変動リスク・機会と当社における対応
事業インパクト評価
■影響度「大、中、小」の定義(金額範囲) 大:50億~30億、中:30億~10億、小:10億未満
③脱炭素ロードマップ(2030年度までの移行計画:参考)

・本ロードマップは雪印メグミルク㈱単体のものであり、グループ会社を含むグループ全体のCO2排出量
の数値とは異なります。
・2025年4月時点の脱炭素ロードマップであり、a~fの施策の進捗状況に応じ、毎年見直しを行います。
そのため、2025年度以降の数値は参考値となります。
④2024年度の主な取組み
A.炭素価格
脱炭素ロードマップ((2) 気候変動への対応③脱炭素ロードマップ参照)で掲げた施策に沿ってCO2排出量の低減を進めています。
ア.ボイラ設備の燃料転換(施策a)
なかしべつ工場では、2024年10月にボイラのエネルギーを重油からLNGへ切り替えました。これ
により、年間5,200tのCO2排出量の削減が見込めます。2025年度は京都工場で更新工事を行い、2026
年6月稼働を予定しています。
イ.再生可能電力活用(太陽光発電設備導入)(施策c)
再生可能エネルギーの利用拡大に向け、太陽光発電設備の導入を進めており、2024年度は京都工場
と阿見工場で稼働を開始しました。2025年度は大樹工場、磯分内工場、野田工場、豊橋工場での稼働
を予定しています。
ウ.再生可能電力活用(バーチャルPPA)(施策d)
2024年9月に、東芝エネルギーシステムズ株式会社と再生可能エネルギーを活用したバーチャルP
PA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)を新たに締結しました。バーチャルPPAは、
電力需要家が敷地外の発電所で発電された再生可能エネルギーの環境価値(非化石証書)を調達す
る手段です。今回調達する環境価値(非化石証書)は、川越工場のCO2排出量削減として使用しま
す。これにより、埼玉県の「目標設定型排出量取引制度」における第4削減計画期間(2025年度か
ら2029年度)の温室効果ガスの削減目標に対する取組みを推進します。
エ.その他(水素サプライチェーン)(施策f)
幌延工場では、2025年度下期より水素エネルギーの利活用による実証実験に取り組みます。近隣(豊富温泉)から産出された未利用ガスから創出された水素と既存ボイラ燃料であるLNGを混焼させ、ボイラ設備の燃料として使用します。

オ.ICP導入
インターナル・カーボン・プライシング制度を2024年4月から導入しました。
カ.サステナビリティ・リンク・ローンの活用
サステナビリティ・リンク・ローン(以下「SLL」)は、借り手の経営戦略に基づくサステナビリティ目標と連携したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下「SPT」)を設定し、借入条件とSPTの達成状況を連動させる借入です。
雪印メグミルクグループでは、2030年度CO2排出量50%削減をSPTとして、2022年3月に80億円
の調達を行いました。このSPTを基に借入期間の目標値を定めています。なお、CO2排出量は、
第三者機関による検証を実施しております。
<雪印メグミルクグループ全体のCO2削減率の目標及び実績値>
※1 2022年度、2024年度、2026年度の数値はSLLで設定したSPT
※2 2024年度数値は見込み
キ.グリーンボンドレポーティングの進捗状況
グリーンボンドは、環境問題の解決に貢献する事業に要する資金を調達するために発行する債券です。2022年12月に発行した50億円のグリーンボンドの対象事業の概要、調達資金の対象事業への充当状況及び環境効果に関する指標等を、実務上可能な範囲で年次で当社ウェブサイト上に開示しております。
※
グリーンボンドで開示するプロジェクト
B.消費者意識の変化
ア.石油由来プラスチックの削減に向けて
当社グループでは、容器包装における石油由来プラスチックを削減するため、2030年度に石油由来
のプラスチック使用量を2018年度比で25%削減(売上原単位)することをKPIと定め、脱プラ分科
会で削減施策を検討しています。2025年3月から「ナチュレ 恵 megumi」「牧場の朝ヨーグルト」
「恵 megumi ビフィズス菌SP株ヨーグルト」の3ブランドにバイオマスプラスチックを10%配合し
た容器を導入します。この取組みにより当社の石油由来プラスチック使用量は年間で500t超の削減見
込みとなり、大きな効果が期待されます。
※集計中のため、
C.平均気温の上昇
ア.生産拠点の節水の取組み
生産拠点の用水使用量について、2030年度に2013年度比9%削減とするKPIを定め、2023年度に
は前倒しでKPIを達成しました。2024年度は更に幌延工場圧空冷却塔導入、阿見工場蒸気ドレン排
出方法改善、海老名工場ボイラ回収水活用、池上製造所給水設備改造など用水使用量の削減に努め、
約10.9万立方メートル/年を削減しました。

イ.森林保全による水の涵養の取組みについて
植林などの森林保全や森林由来のJ-クレジット購入を通じ、森林保護や水源の涵養への取組みを強
化しています。2024年度より、京都工場と京都工場池上製造所(ナカエの森地球がよろこぶ森林プロ
ジェクト)、阿見工場(栃毛木材の森林プロジェクト)でのJ-クレジット活用を新たに開始しまし
た。今後も持続可能な森林保全活動を支援していきます。
D.異常気象の頻発化と深刻化(豪雨、洪水等)
ア.生産拠点の水リスク評価
生産拠点の水リスクについて、リスクの再評価を行いました。アキダクト(世界資源研究所(WRI)
が開発した水リスク評価のグローバルツール)による評価では、リスクが高い対象事業所はありません
でした。また、当社の独自評価として用水、排水、洪水に関するリスク評価を実施し、対応を進めま
した。
イ.プラントベースフード(代替食品)への参入
2024年3月に、プラントベースフードの新ブランド「Plant Label」(プラントラベル)を立ち上げ、販売を開始しました。プラントベースフードは、世界人口の増加を背景に食料の安定供給が求められる中、たんぱく質の新たな選択肢として注目されています。市場規模は世界的に拡大傾向にあり、その中でも成長が著しい植物性素材は「えんどう豆」です。大豆やアーモンドと比べて生産時の水の使用量やCO2排出量が少ないサステナブルな原料でありながら、脂質が少なく、高たんぱくで食物繊維が豊富という特徴があります。2024年9月には、えんどう豆の味わいが楽しめる「Plant Label えんどう豆由来のおつまみ しお味/スモーク味」を発売しました。当社がこれまでに乳で培ってきた幅広い知見や機能を活かし、プラントベースフード市場という新たな領域に挑戦します。
E.酪農基盤
当社グループの主力事業である牛乳・乳製品は豊かな食生活と日本の食料自給率向上に欠かせない
ものですが、酪農生産における環境負荷低減は社会課題となっており、対応を強化していく必要があ
ります。
ア.TNFD提言に基づく開示
2024年8月に初期的開示(※1)を公表しました。当社を中心とするバリューチェーン全体における
自然への依存とインパクトについてENCORE(※2)を活用して評価し、また、当社工場の周辺地域にお
ける自然の評価としてロケーション分析を実施し、自然関連のリスクと機会を確認しました。これら
のリスクは、中長期的には当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。なお、TNFD提
言に準拠した本格的な開示は2025年夏を予定しています。
※ 1
※ 2 企業の業務が生物多様性にどのような影響を及ぼすか、またその影響が企業自身にどのような
リスクや機会をもたらすかを評価し、その影響を管理するためのツール 「Exploring Natural
Capital Opportunities, Risks and Exposure」の略
イ.牛の腸管由来温室効果ガスの計測
当社の酪農総合研究所では生産団体(JA北オホーツク)および研究機関(北里大学)と連携し、牛の腸管由来温室効果ガスの計測を実施しました。
ウ.メタンの発生を抑制する牧草・飼料原料の研究開発
当社グループの雪印種苗㈱は、ソラマメ属植物に牛のルーメン液(第一胃消化液)のメタン発生を抑制する成分があることを発見しました。今後、酪農・畜産業での温室効果ガス削減に活用できるよう、更に研究開発を進めていきます。
エ.大樹工場での酪農家由来バイオメタンガス活用
大樹工場では2023年5月よりホエイから有用成分を回収した残渣をメタン発酵させ、バイオガスとして活用する取組みを進めています。2025年1月より、当工場で生成したメタンガスと、酪農家でふん尿処理時に発生したバイオメタンガスを混合させ、メタンガスボイラの燃料として利用する国内初の取組みを開始しました。
オ.酪農由来のJ-クレジット活用
2025年度より酪農由来のJ-クレジットを活用した持続可能な酪農への支援を開始します。家畜の排せつ物を堆肥化する過程で温室効果ガスが発生しますが、強制発酵設備を導入することで従来4~6か月を要していた堆肥化の処理時間が24時間に短縮され、温室効果ガスを削減できます。この方法論で創出されたJ-クレジットを活用することで、北海道の酪農家の設備導入にかかる費用負担を支援します。
カ.牧草・飼料作物種子の作付面積拡大
自給飼料型酪農の推進のため、グループ会社の雪印種苗㈱の牧草・飼料作物種子による作付面積を2030年度までに2019年度比で3%拡大することをKPIに設定し取り組んでいます。
※集計中のため、
キ.酪農総合研究所シンポジウム開催について
持続的酪農経営を行うための経営管理・技術的支援として、2025年1月に酪農総合研究所シンポジウムを開催しました。2024年度は「今こそ飼料の国産化を! PartⅢ~次の一手を考える~」をテーマに、330人が参加し、自給飼料の利用拡大に向けた議論を行いました。
(リスク管理)
気候変動リスクはサステナビリティ推進部会で報告・協議され、グループサステナビリティ委員会を通じ、進捗状況をグループ全体で共有しています。また、当社内で定期開催しているリスク連絡会ではグループ全体のリスクとトラブルの管理を行っています。
※推進体制は2サステナビリティに関する考え方及び取組(1) サステナビリティ共通参照
(指標と目標)
抽出されたリスクに対し、KPIを設定し、取り組みました。
2024年度の主なKPIの進捗状況
※集計中のため、
「ビジネスと人権」に関する企業の対応への要請はますます強まっており、当社グループの事業活動を行う上で直接的・間接的に影響を与える全ての人々の人権を尊重する必要があります。
2021年6月制定の「雪印メグミルクグループ 人権方針」に人権デュー・ディリジェンスの実施を掲げ、以降、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って実践しています。
※
〈人権デュー・ディリジェンスの実施ステップ〉

「(1) サステナビリティ共通」に記載しておりますので、参照願います。
2021年度、当社のサプライチェーンでの人権デュー・ディリジェンスを開始しました。関係部署参画のもと特定した「優先的に取り組む人権リスク」に対して、2030年度までのロードマップに沿って外部の人権専門家による人権影響評価を順次実施しています。2024年9月には社会環境の変化に伴いリスクの見直しを行い、労働時間などの問題が指摘されている「物流ドライバー」を、「優先的に取り組む人権リスク」に追加しました。2025年2月、直販配送㈱のドライバーに対して外部専門家(特定非営利活動法人 経済人コー円卓会議日本委員会)による人権影響評価(インタビュー)を実施し、特筆すべき人権課題は確認されなかったとの報告を受けました。
外国人労働者に対しては、全ての事業所において細やかに人権影響を確認するため、外部専門家による人権影響評価と併せて人権分科会のメンバーによるインタビュー(内部による確認)を2023年度より行っています。
2024年12月、取組みを当社グループ全体に拡大するため、外部専門家のアドバイスを受け、人権デュー・ディリジェンスの先行実施会社として2社(ニチラク機械㈱、雪印種苗㈱)を選定しました。2025年3月、当該2社の役員およびサプライチェーンの責任者を対象とした人権教育をそれぞれ実施しました。

〈ロードマップ〉
●…人権影響評価(外部による評価)○…人権影響評価(内部による確認) ※2022~2024年度は実績、2025年度以降は計画
人権への負の影響を防止・軽減するための対応(人権デュー・ディリジェンス)が不十分な場合は、調達や生産、取引関係におけるマイナス影響や、当社グループのブランド価値毀損にもつながります。そのため、「優先的に取り組む人権リスク」に対して、人権分科会およびサステナビリティ推進部会で対応結果の確認と今後の方向性の協議を行っています。その内容は全て、グループサステナビリティ委員会を通じてグループ全体に共有しています。また、グループサステナビリティ委員会の内容は取締役会に報告しています。
当社内で定期的に開催しているリスク連絡会では、グループ全体の人権に関するリスクやトラブルに関する迅速な情報共有を行い、対応を確認しています。
(機会)
人権尊重の取組みは、当社グループにおける人材確保にも寄与しています。人権が守られた安全で働きやすい労働環境、コミュニケーションの円滑な職場を築くことにより外国人労働者のモチベーションは高く、良い評判が伝わることで、紹介を通じて新しい人材が集まっています。
重要課題(マテリアリティ)の重点取組みテーマ「人権の尊重」に定めたKPI※に沿って、計画的に人権デュー・ディリジェンスや啓発活動を進めていきます。
※KPI 「雪印メグミルクグループ 人権方針」に基づき人権デュー・ディリジェンスや啓発活動を行い、事業活動における人権リスクの特定・防止・軽減を図る。
<2024年度までの進捗状況(抜粋)>
(ガバナンスおよびリスク管理)
当社グループは、「最大の経営資源は『人材』である」と考えています。
世の中の大きな環境変化と先行きが不透明な中で、企業理念を実現し、持続的に成長するためには、その源泉となる付加価値を生み出す「人材」の成長と活躍が不可欠であり、存在意義・志を達成するための行動において、当社グループの役職員一人ひとりが大切に考える共通の姿勢・価値観として、「主体性」・「チャレンジ」・「チームワーク」の3つを「雪印メグミルク バリュー」として定めています。

当社グループは、人的資本、多様性における事業活動のリスクを、少子高齢化に伴う労働人口の減少・雇用の流動化が進む中、多様な人材や求める人材の確保・定着ができないこと、デジタル技術の急速な進化等、既存スキルの陳腐化が起こり得る市場環境下において、「雪印メグミルク バリュー」の対局にある、「指示待ち」・「前例踏襲」・「セクショナリズム」といった組織体質に陥ることと認識しています。
これらのリスクに対応し、「存在意義・志」を達成していくため、新たな経営計画「Next Design 2030」では、「DXの推進」と「人的資本の活用・成長」を基盤戦略に位置づけ、基盤戦略に基づいた人事戦略および施策を以下のとおり定めています。
また、人事戦略の実現に向けて、「グループの持続的成長を支える人材の育成」・「個人の能力開発を通じた社員一人ひとりの自己実現」・「DE&Iの推進」を軸として、「雪印メグミルク バリュー」を実践する多様な人材が、個性や能力を十二分に発揮できる環境づくりと人事施策を推進し、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、付加価値を創造する人材を育成します。
①戦略・指標の実績および目標値
(注)1.一部研修等において連結グループ共通の取組を実施しているものの、必ずしも全ての会社で取組を行われていないことや、数値の集約が困難であることから、数値は、連結グループ全体における利益の過半を占める、提出会社の実績値を記載しています。
2.自己都合退職率は、定年退職および会社都合(役員への就任や解雇など)以外の事由を自己都合として算出しています。
3.エンゲージメントスコアは、当社の全従業員を対象に行った外部機関による調査(2025年1月調査の回答率97.2%)の結果であり、「職務」・「自己成長」・「支援」・「人間関係」・「承認」・「健康」・「理念戦略」・「組織風土」・「環境」の9つのキードライバーに基づく設問に対して、自己の状況を7段階から選択したものをスコア化した数値です。
4.アブセンティーズムは、病気で休業している状態を表す数値として、傷病休職・休暇制度の利用日数および傷病欠勤日数の合計日数の平均値を記載しています。
5.プレゼンティーズムは、何らかの健康問題を抱えたまま仕事をすることで労働機能に与える程度を測定するための指標として、WFunによる測定を行い、組織の労働機能を総合評価した数値を記載しています。
6.総労働時間は一般職一人当たりの年間時間数です。
7.時間外労働時間数は一般職一人当たりの月間所定労働時間に対する時間数です。
8.年次有給休暇取得率は非正規社員を含む全従業員の年間付与日数に対する取得率です。
9.女性管理職比率は、各年度終了日の翌日(2024年度であれば、2025年4月1日)時点の従業員数を基に算出しています。
10.育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第71条の6第1号における正社員の育児休業等の取得割合を算出しています。
11.育児休業取得日数(男性)は、育児休業を取得した正社員の男性の、各年度に復職した者の平均取得日数を記載しています。なお、分割して取得した者は、最後に復帰した年度に数値を含んでおります。
12.障がい者雇用率は、障害者雇用状況報告書(各年度6月1日時点)に基づき算出しています。なお、出向者は出向元の従業員として算出しています。
②人事戦略に基づく取組
ア.経営戦略と連動した人材の獲得・配置
a.雪印メグミルクグループアワードの開催
2021年度より毎年開催している本制度は、2024年度からはグループ会社にも取組を拡大し、「雪印メグミルク バリューの発揮」・「収益性」・「社会課題貢献度」の3点より企業価値の向上につながる活動を審査・表彰しています。2024年度は、京都工場池上製造所における「デジタルツールを用いたSF改革」が最優秀賞を受賞しました。
最優秀賞の内容や主体者の取組姿勢などは、社内の研修やグループ活動を通して、従業員全体に周知することで、好事例の水平展開につなげています。
b.DX人材の育成
当社グループは、「自らの課題を発見し解決・改善につなぐサイクルを高速化することで、経営意思決定の高度化、イノベーションの実現を図る」・「一人ひとりが高いデジタルリテラシーを獲得する」ことをDXビジョンとして掲げています。
2024年度は、当社の正社員全員を対象にDXリテラシー研修を実施し、2025年度以降は、研修をグループに広げつつ継続するとともに、より高度なDX教育を公募・選抜して行うことで、DXの推進に努めます。
また、当社独自のチャットボットである「YuMe*ChatAI」等DXにつながる新しい仕組み・取組は、事例発表会や各工場・部署での勉強会の開催に加え、鮮度の高い情報を従業員間で共有する場として開設したポータルサイトを通じた従業員間での相互コミュニケーション等を通して、一部署の業務変革の取組を複数の部署でDX化の促進に取組んでいます。
イ.エンゲージメントの向上
a.エンゲージメント調査と施策への反映
当社は、従業員のエンゲージメント向上が、従業員一人ひとりが働きがいを感じながら成長し、グループの持続的成長につながると考えています。
そのため、エンゲージメントを指標化するための調査を2023年度より開始し、2024年度からは、PDCAサイクルを加速するため、調査回数を年2回に増やしました。
2023年度の調査結果では、「ワークライフ・バランス」、「同僚からの困難時の支援」等がポイントの高い項目として挙げられる一方、「ミッション・ビジョンへの共感」「挑戦する風土」はポイントが低めの項目として挙げられました。
この結果から、経営と従業員、上司と部下をはじめとする各層間での社内の「対話」が不足しているのではないかと推察し、2024年度からは、各場所の長がエンゲージメント向上の取組を自場所のアクションプランに落とし込むことで、活動を具体化し、推進する仕組みづくりを行いました。
この結果2024年度の調査では全体のスコアは65.2ポイントとなり、前年より1.9ポイント向上しました。項目別では「ミッション・ビジョンへの共感」・「挑戦する風土」・「経営陣に対する信頼」で大きく向上しており、「対話」不足の解消を課題とし活動推進した結果と考えています
2025年度も、「対話」不足の解消に向けた活動を継続することに加え、エンゲージメントスコアの目標進捗を役員の報酬決定要素に加えることや、経営職以上を対象とした心理的安全性セミナーを実施するなど、経営層による関与を強めることで、更なる向上に努めます。
b.健康経営の取組
当社では、食の楽しさや健康をお届けし、食の未来を創造する企業として、従業員が心身ともに健康であることを尊び、健康の維持・増進に向け、自ら行動することが重要と考えていることから、2021年より「雪印メグミルク健康宣言」を掲げ、以下の取組を推進しています。

また、経営課題の解決につながる指標を、「雪印メグミルク健康経営戦略マップ」としてまとめ、取組みを進めています。
この結果、2021年3月より5年連続健康経営優良法人の認定を受けています。

ウ.DE&Iの推進
a.女性活躍推進の取組
当社は、2015年12月の「女性活躍推進」宣言以来、「女性活躍」を多様性の中核と位置づけ、企業戦略として推進しています。
具体的な取組みとしては、女性リーダーの育成やキャリアアップに向けた社内外におけるキャリア開発プログラムの展開、育成プランの策定、LGBTQ+を含むアンコンシャスバイアスの理解促進を目的とした社内フォーラムの開催やeラーニングの実施等に取組んでいます。
その結果、女性管理職比率は、2015年度の2.5%から2025年度期首には8.6%まで増加しました。引き続き10%以上の目標達成に向けて取組んでいきます。

b.育児・介護の両立支援
当社は、男性従業員の育児休業の取得促進を目的に、「産後パートナー休暇」として28日間の有給休暇制度を設けています。また、子の看護等のための休暇制度について、小学校6年までを対象としています。加えて、男女を問わず育児休職開始時10日間を有給とする制度(正社員のみ)を設ける等、育児休暇の取得促進に努めています。その結果、2024年度の育児休業取得率は男性においても94.2%となり、3年連続で85%を達成しました。
更に、育児休務からの復帰者の早期戦力化を目的とした「育児休務者両立支援プログラム」を導入し、休職期間中の上司とのコミュニケーションを可能とする体制づくりに取組んでいるほか、育児に取り組む従業員同士の意見交換を、2020年度から毎年テーマを変えながらワークショップとして開催するなど、スムーズな復職のための仕組みづくりにも工夫を凝らしています。
また、介護については、介護保険や施設、認知症などの情報を提供するセミナーを開催することで、従業員の介護への意識醸成を図っています。
c.DE&Iプロジェクト
働き方改革、各種制度の拡充と環境整備が進む中、次のステージとして、2023年度から人事担当役員、サステナビリティ担当役員を責任者とし、各部門の実務担当者から構成する「DE&Iプロジェクト」を発足しました。
各部門からの課題抽出を行う中で、2024年度は一工場を「特区」と定め意見交換をした結果、体力に不安がある年齢の高い従業員や女性従業員など体力的差異に関わらず、より多くの現場作業を担当できるよう設備導入を行っており、2025年度も多様な従業員が働ける体制づくり・環境づくりを推進します。
エ.キャリア開発とグループ人材
a.人材育成体系
当社は、従業員の人材育成として、従業員の成長に合わせて行う「階層別研修」、従業員の自発的な意欲に応じて行う「公募型ビジネススキル研修」、従業員の年齢に合わせて自身のキャリアを意識させる「キャリア開発研修」、各専門部署の専門知識の深耕をはかる「専門研修」と、従業員のキャリアや意欲に応じた様々な研修に取組んでいます。
加えて、各部署・グループ会社に人材育成責任者、担当者を配置することで、当社グループの持続的成長を支える人材の育成、個々の能力開発を通じた社員一人ひとりの自己実現に向け、実行力を高める体制を整えています。
b.次世代リーダーの育成および活躍機会の提供
2023年度より、選抜型リーダーシップ開発研修と役員研修を繋ぐプログラムとして、次の経営層候補を対象とした、リーダー開発に主眼を置いた所属長研修を導入し、グループ経営の次世代を担うリーダー群の育成をしています。
また、性別や年齢(若手・中堅・シニア)に関係なく、やる気と熱意を持った従業員に対しては、社内公募やキャリアチャレンジ制度、プロジェクトへの参画、グループ会社への派遣等を通じて、能力開発と活躍の機会を提供しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。
なお、当社グループは、以下のような経営および事業リスクの発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、2025年3月末では、子会社35社および関連会社15社となっております。
① 財政状態及び経営成績の状況
〈連結経営成績〉
〈セグメント別概況〉
(注) 1.報告セグメントの売上高は、主に「商品または製品の販売に係る収益」によるものです。
2.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、共同配送センター事業および不動産賃貸事業等が含まれております。売上高は、主に「配送サービスに係る収益」によるものです。
当連結会計年度の財政状態は次のとおりです。 (単位:百万円)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。
(単位:百万円)
③ 生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
イ.受注実績
当社グループ(当社および連結子会社)は一部受注生産を行なっておりますが、金額に重要性がないため、記載を省略しております。
ウ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.前連結会計年度および当連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当期のわが国経済は、雇用・所得環境が改善する状況下で、各種政策の効果もあって、 緩やかに回復しており、今後も続くことが期待されます。先行きについては、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっていることに加え、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要があります。
食品業界においては、外食需要がインバウンド需要の増加等も受けて、回復傾向にあります。一方で、世界的な原材料価格や物流コストの上昇により、厳しい経営環境が継続しています。また、賃上げ等による所得の伸びがみられるものの、食料品等身近な物価の上昇もあり、消費マインドの改善は足踏みの状況です。
このような環境下、当社グループは「新たな成長のタネづくり」、「基盤活用による物量の拡大」、「国内酪農生産基盤の強化・支援」に向けた取組みを事業戦略の3つの柱とする中計2025を2023年度よりスタートいたしました。
その2年目となる2024年度は、「雪印メグミルクグループ経営方針2024」におけるテーマを「MOVE」とし、(1)新たな成長のタネづくり、(2)基盤活用による物量の拡大、(3)国内酪農生産基盤の強化・支援、(4)基盤戦略の推進、(5)サステナビリティ課題への取組みを重要取組み事項と位置付け、積極的な取組みを進めております。
当連結会計年度の業績(セグメントを含む)は次のとおりです。なお、売上高につきましては、外部顧客に対する金額を記載しております。
当社グループの連結売上高は615,819百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益19,125百万円(前年同期比3.6%増)、経常利益20,262百万円(前年同期比1.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、13,904百万円(前年同期比28.4%減)となりました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
〈乳製品〉

当セグメントには、乳製品(チーズ、バター、粉乳等)、油脂、ニュートリション事業(機能性食品、粉ミルク等)等の製造・販売が含まれております。
売上高は263,324百万円(前年同期比1.6%増)、営業利益は10,405百万円(前年同期比5.2%増)となりました。
(売上高の状況)
バターは、プロモーション活動により市場を上回る需要を獲得し好調に推移しました。
油脂は、増量キャンペーンやブランドプロモーションの推進等により、前年を上回りました。
チーズは、主力の「さけるチーズ」や「6Pチーズ」で各種プロモーション活動を展開した他、発売70周年を迎えた「6Pチーズ」の新商品「6Pチーズ酪農大地の恵み」の発売もあり、チーズ全体でも前年を上回りました。
機能性食品は、モール型ECサイトでのマーケティング活動等により堅調に推移しました。海外市場の機能性素材の販売が伸長したものの、粉ミルク等が減収となりました。その結果、ニュートリション事業全体では前年を下回りました。
(営業利益の状況)
各種プロモーション活動の推進等による売上高の増加により、前年を上回りました。
〈飲料・デザート類〉

当セグメントには、飲料(牛乳類、果汁飲料等)、ヨーグルト、デザートの製造・販売が含まれております。
売上高は264,326百万円(前年同期比3.2%増)、営業利益は5,653百万円(前年同期比0.2%減)となりました。
(売上高の状況)
飲料は、機能性表示食品の「MBPドリンク」シリーズ、大容量タイプの「毎日骨太MBP」、「すっきりCa鉄」、中容量タイプの「雪印コーヒー500ml」、小容量タイプの「DoleLL200ml」等が好調に推移しました。その結果、飲料全体では前年を上回りました。
ヨーグルトは、「牧場の朝ヨーグルト」や「ナチュレ恵megumi」等のファミリーユース商品が好調に推移しました。「恵megumiガセリ菌SP株ヨーグルト」シリーズなどの機能付加商品のプロモーション活動の強化等により、ヨーグルト全体では前年を上回りました。
デザートは、主力の「CREAM SWEETS」シリーズや、「アジア茶房」シリーズ等が好調に推移し、前年を上回りました。
(営業利益の状況)
各種プロモーション活動を推進したものの、固定経費の負担増などにより、前年並みで推移しました。
〈飼料・種苗〉

当セグメントには、牛用飼料、牧草・飼料作物種子、野菜種子の製造・販売、造園事業が含まれております。
売上高は48,485百万円(前年同期比4.6%減)、営業利益は363百万円(前年同期比22.9%増)となりました。
(売上高の状況)
配合飼料の販売単価下落による減収が主な要因となり、当セグメント全体で前年を下回りました。
(営業利益の状況)
売上高は減少したものの、コストダウンの取組み等により前年並みとなりました。
〈その他〉
当セグメントには、共同配送センター事業、不動産賃貸事業等が含まれております。
売上高は39,683百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益は2,676百万円(前年同期比0.9%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
キャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりです。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
※自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利息の支払額
(注) 1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている負債を対象としております。
〈資金需要の動向〉
当社グループの主な資金需要は、中計2025に掲げる「強靭性の獲得」に向けた「既存事業への基盤・成長投資」、「未来価値創造投資」であります。
〈資金調達の方法〉
当社グループは、運転資金、投資資金についてはまず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分については金融機関からの借入、社債の発行および資産売却等により資金調達を実施していきます。外部からの資金調達につきましては、D/Eレシオ0.5以下を目処として長期と短期のバランスを勘案しながら、低コストかつ安定的に資金を確保するよう努めていきます。
なお、当連結会計年度において、中計2025のキャッシュアロケーションに基づき政策保有株式などの資産売却を行い、「既存事業への基盤・成長投資」、「未来価値創造投資」に充当いたしました。
資金の流動性につきましては、現預金に加え、金融機関とコミットメントライン契約および当座貸越契約を締結し、十分な資金を確保しています。また、グループ各社における資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を含むグループファイナンス制度を導入しています。
③ 目標とする経営指標の達成状況等
詳細は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 未来ビジョン2050・Next Design 2030の策定-② Next Design 2030-ア.経営環境認識と「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」の振り返りをご参照ください。
④ 中計2025の実績報告
当社グループは2023年5月に中計2025を策定いたしました。目標とする経営指標に対し、2年目となる当年度の達成状況は以下のとおりです。
売上高は6,158億円、営業利益は191億円となりました。財務面では、自己資本比率が50%以上を安定的に維持しました。配当性向の水準は、30%以上から40%以上へと引き上げ株主還元の拡充を図りました。資産売却を除く調整後ROEは5.4%でした。
※詳細は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 未来ビジョン2050・Next Design 2030の策定-② Next Design 2030-ア.経営環境認識と「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」の振り返りをご参照ください。
⑤ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
連結財務諸表を作成する際には、一部について見積りや仮定を用いることが必要になりますが、これらは期末日における資産・負債の金額および開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。見積りや仮定を行なう場合は、その時点で入手できる事実に基づき、可能な限り客観的に実施することを目指しておりますが、実際の結果とは異なる場合もあります。
重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
(1)研究の目的
当社グループ(当社および連結子会社)の研究開発部門では、「食の持続性」の実現に向けて、既存の事業戦略上急務となっている課題に対する研究開発や、中長期的成長の基盤となる基礎研究を幅広く実施しております。
また、新規事業創出につながる新たな価値や技術を創造し、グループの持続的発展と事業の戦略的拡大を目指しております。中期経営計画2025においては、6つの戦略課題実現に向けて、基礎研究とそれによる商品への具現化を進めてまいりました。
引き続き、NextDesign 2030においては、機動的な研究・商品開発テーマの運用や知財の戦略的活用を通じて新たな価値や技術を創造し、グループの持続的発展と各事業部の戦略的拡大に貢献してまいります。
(2)研究開発体制
当社グループの研究開発部門は、当社、雪印種苗㈱および雪印ビーンスターク㈱に設置されています。
そのうち、当社の研究開発体制は、おいしさ向上や健康寿命延伸などに繋がる乳の研究や環境負荷低減に関する研究を行う「ミルクサイエンス研究所」、乳食品や市乳の新商品開発や既存商品の改良を行う「商品開発部」、そして事業戦略に基づき研究開発・知財戦略を策定・推進する「研究開発部」が相互に連携することで、新たな需要の創出、高付加価値化、商品力の強化を実現させています。

(3)研究開発費
当連結会計年度の研究開発費の総額は
各セグメント別の主な研究開発活動は次のとおりです。
乳製品:当連結会計年度の研究開発費の総額は
飲料・デザート類:当連結会計年度の研究開発費の総額は
飼料・種苗:当連結会計年度の研究開発費の総額は
(4)研究開発成果
主な研究開発活動とセグメントおよび6つの戦略課題との関係性は以下の通りとなります。
●中期経営計画2025の6つの戦略課題における研究開発成果
各研究開発成果の補足事項は次のとおりです。
●当社
〈乳製品〉
当社は2024年3月に、新ブランド「Plant Label」を立ち上げ、プラントベースフード市場へ本格的に参入しました。当社のこれまで「乳」で培ってきた幅広い知見や機能を活かし、低脂質でたんぱく質や食物繊維が豊富な「えんどう豆」由来の原料を使用した「Plant Label えんどう豆由来のおつまみ」を新たに発売し、プラントベースフード市場の新たな領域に展開を開始しました。
さらに、加熱するともちもちした食感が楽しめる「米粉由来のもちもち食感シュレッド」を発売しました。この商品は、チーズ開発の知見を活かして風味を調整し、料理に適したチーズの風味に仕上げています。また、子会社であるヨシダコーポレーションと連携することで、シナジー効果を発揮し、新商品開発を進めています。これにより、新しい商品を通じて、日々の食事をより楽しいものにしていきます。
手軽にかけるだけで、チーズの新しい食習慣や食文化の創出を目指す「torochi」シリーズは、2023年に発売されました。このシリーズに新しく、「torochi モスバーガー監修 チーズソース」が加わりました。この商品は、見た目の楽しさに加え、86%の北海道産ゴーダチーズを使用しています。濃厚なチーズ感がありながら、ハンバーグとよく合い、肉の脂っこさを軽減する酸味のバランスにもこだわって仕上げています。
今後も当社は、消費者の健康ニーズおよび環境負荷軽減への対応を進め、新しい価値を提供し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
主な研究成果は以下の通りです。
・バターの物性に関わる組織の微細構造を維持したまま直接観察できる世界初の観察方法について発表いた しました。バターの組織(固体脂ネットワーク)を分析することは、バターの品質を予測する上で重要です。今回、原子間力顕微鏡を用いることで、乳脂肪の微細結晶が凝集した構造を直接観察できることが分かりました。今後、バターの品質の安定化や風味や機能性のさらなる向上、製菓・製パン用途を始め、調理方法や用途に適した商品の開発に役立てることが期待されます。
・産業技術総合研究所、大阪大学との共同研究で、ラマンイメージングと機械学習でマーガリンの品質や乳化状態を化学的な定量性に基づき評価する解析技術を開発し、発表いたしました。今回開発した解析手法は、マーガリンの口どけなどの制御だけでなく、品質管理、商品改良などを行う際の実用的な品質評価技術として利用することが期待されます。また、マーガリンのみならず、一般に液体成分が多く含まれる食品の検査や、製薬やその他の分野でも強力なツールになると考えられます。
これら研究成果は、日本酪農科学会の酪農科学シンポジウム2024で発表、論文としてFood Chemistryに掲載されました。
〈飲料・デザート類〉
ヨーグルトカテゴリーでは、2024年10月に、当社の独自乳酸菌である「ガセリ菌SP株」の機能として、従来の「肥満気味の方の内臓脂肪を低減する機能」に「腸内環境を改善する機能」をプラスし、「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」シリーズをリニューアル発売しました。これまでご愛顧いただいているお客様にさらに満足いただける機能を訴求することで、より選ばれる商品に進化しました。
2025年3月、「ナチュレ 恵 megumi 植物生まれ」は、えんどう豆のクセのある風味を抑え、食感をなめらかにすることでおいしさを向上させ、リニューアル発売をしました。また、「2つの菌を、毎日のおなかに。」をパッケージ上部に配置、「ガセリ菌SP株」「ビフィズス菌SP株」のアイコンも大きく配置して、2つの菌が配合されていることがより視覚的に伝わるようにデザインを変更しました。「Plant Label えんどう豆生まれ オリジナル」は、苦み渋みを低減し、よりコクが感じられる風味に改良しました。商品名とパッケージデザインは、素材や商品特長が伝わるように刷新しました。
また、今回のリニューアルにあわせて、手に取りやすいフレーバー品「Plant Label えんどう豆生まれ コーヒー」を新発売しました。これまで培ってきた「乳」の知見と機能を活かし、植物性商品の展開を進めることで、食の持続性に取り組んでまいります。
牛乳カテゴリーでは、ブランドを刷新した「雪印メグミルクおいしい牛乳」を発売。関東エリアでは少人数世帯の増加に対応した新容器750mlを関東で発売しました。パッケージには、「おいしさカーブ」を掲載し、おいしさの理由が視覚的に伝わるようにしました。
その他の飲料カテゴリーにおいては、「農協 野菜Days 野菜1日分 腸得Life」は、「おなかの調子を整える」、「食事に含まれるカルシウム・鉄・マグネシウムの吸収を促進する」機能が報告されたマルトビオン酸を配合した機能性表示食品として上市しました。野菜飲料に機能を求める人をターゲットに、野菜飲料に新たな価値を提案しました。
飲料・デザート類事業における「おいしさ」、「健康機能」に関する研究では、当社独自のプロバイオティクス乳酸菌や乳素材の機能性の深耕や、乳の持つ可能性を明らかにすることを目的に検討を行い、得られた研究成果(新知見、新技術、新手法など)を「ヨーグルト」、「牛乳、乳飲料」などの商品開発に応用できるよう、研究を続けております。
主な研究成果は以下の通りです。
・弘前大学と当社との共同研究講座「ミルク栄養学研究講座」において、健康ビッグデータである「岩木健康増進プロジェクト健診」を用いた解析研究に着手しました。牛乳・乳製品摂取量と骨代謝マーカーおよび音響的骨評価値に関して研究した結果、日常的な牛乳・乳製品摂取は、骨の健康状態を示す骨代謝マーカーや骨強度値と関連し、骨の健康に必要な栄養補給に寄与することが示唆され、この成果を論文発表しました。また、乳製品摂取と血圧に関して研究した結果、牛乳・乳製品を多く摂取する人は収縮期血圧が低いことが示され、この成果を論文発表しました。
・当社独自のビフィズス菌Bifidobacterium adolescentis SBT2786について、日常生活で睡眠に不満を持つ人、特にストレス状態の高い人の睡眠状態を改善するとともに、ネガティブな気持ちを改善することを臨床試験で明らかにしました。この研究は、2017年に名古屋大学と設立した産学共同講座で進めていたモデル生物を用いた研究で、モデル生物で選抜した菌をヒト試験においても有効性を示した成功例であり、食品の機能性研究の新たな可能性を示す結果になりました。
・牛乳の新たな価値を見出すため、超高温殺菌(UHT)牛乳を口に含んでから飲み込んだ後までの風味特徴(香り、甘みなど)について、時間経過毎に評価する官能評価手法を用いることにより風味を可視化しました。これにより味わいの特徴やその変化をより分かりやすくお客様に伝えることが可能になり、商品のパッケージへ活用しました。また、牛乳の香りが脳機能に与える影響を研究し、牛乳の香りには、脳の働きを安定化させる効果(鎮静効果)があることを見出しました。
これらの研究成果は、論文としてBone ReportやHypertension Research、Nutrientsに掲載され、日本農芸化学会にて発表しました。