第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが合理的と判断する一定の前提に基づいたものであり、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。

 

(1)企業理念の再構築

① 当社グループの原動力/重要課題/コアの価値

当社グループは2025年に北海道での創業から100周年を迎えました。創業100周年を機に、次の100年も社会から必要とされ続ける企業であるために、「我々は事業活動を通じてどのような社会を実現したいのか」という我々の根幹にあたる企業理念を再構築することといたしました。

当社グループは「日本国内における安定的で豊かな食生活の充実」という、創業当時の社会課題解決に向けた創業者たちの想いから始まり、その想いを創業者たちは「健土健民」という言葉に込めました。

企業理念に相当する存在意義・志の検討にあたり、創業の精神である「健土健民」の考えに立ち戻りつつも、これからの時代において我々を動かす原動力、取り組むべき重要課題、そして我々のコアの価値が何かを明らかにしました。

当社グループの原動力は、健土健民の再解釈である「社会課題を解決する精神」であり、重要課題は、現代の社会課題である「食の持続性の実現」である、と整理しました。

そして、当社グループのコアの価値は創業からこれまでの間に培われた「価値をめぐらせる力」です。当社グループは創業以来、生産者からいただいた乳の価値を向上させ、取引先や消費者へ提供し、需要を創造していくことで、地域社会や生産者や投資家にも価値をめぐらせてきました。その「価値をめぐらせる力」こそが当社グループのコアの価値であると考えました。

  <当社グループのコアの価値>


存在意義・志

再構築した企業理念では、我々の原動力である”社会課題を解決する精神”とコアの価値である”価値をめぐらせる力”のどちらも示すものとして、「健土健民」を存在意義・志に掲げました。また、存在意義・志のステートメントを「私たちは社会課題に挑む精神で、人と自然が健やかにめぐる食の未来を育んでいきます。」と定めました。このステートメントには、パイオニア精神を持ちながら、その時代の社会課題解決に挑む「健土健民の再解釈」、ステークホルダーとともに価値を創造し豊かな循環を生み出す「価値提供の考え方」、食の持続性の実現も含め食の可能性を切り拓く「取り組む社会課題」が示されています。

そして、存在意義・志とそのステートメントに込めた思いを端的に表現するコーポレートスローガンを「Love Earth.Love Life.」としました。このコーポレートスローガンには、人と自然が健やかにめぐるように、地球と大地を愛し、生命と人生を愛するという意味が込められています。


 

(2) 未来ビジョン2050・Next Design 2030の策定

当社グループは、2023年4月1日「未来ビジョンプロジェクト」を発足しました。未来ビジョンプロジェクトでは、創業100周年を迎えるにあたり、当社グループが実現したい未来、「雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050」を策定しました。

また、「Next Design 2030」は、当社グループを取り巻く中長期的な環境認識のもと「未来ビジョン2050」から遡り、実現したい未来までの道筋を描いています。


① 未来ビジョン2050

当社グループは、「雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050」を、「EGAO-MEGUMITOWN」という「まち」に表現しました。ビジョンの中には「酪農・農業」「健康」「フードテック」「宇宙」の4つのエリアがあり、それぞれのエリアが目指すべき方針や内容を示しています。

創業者のひとり、黒澤酉蔵は自然の循環を活かし持続可能な農業を実現することを目指した「循環農法」を唱えました。この考え方は、環境に優しく資源を効率的に活用する持続可能な農業を推進するものであり、現在の「サステナビリティ」に通じる理念であると同時に、近年様々な分野で注目を集めている「リジェネラティブ」=「持続的」で「好循環」な社会の形成にも通じるものです。

当社グループは新たな100年に向けて、「EGAO-MEGUMITOWN」をビジョンとして掲げ、「リジェネラティブな社会」の実現を目指します。


 

※雪印メグミルクグループ 未来ビジョン2050  https://www.meg-snow.com/mirai-vision2050/

 

Next Design 2030

ア.経営環境認識と「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」の振り返り

A.当社グループを取り巻く中長期的な環境認識

わが国で深刻化している少子高齢化の問題は、今後世界中に広がると予想されています。また、食料生産システムの限界や、タンパク源不足の問題によって、今後の食料供給不安定化が懸念されます。食に関する社会課題は2050年に向けて世界全体の課題になると考えられます。

一方で、世界的人口増加はタンパク源不足リスクでありながら、当社グループが乳で培った知見を活かせる機会にもなり得ます。


 

B.雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025の振り返り

当社グループは、2023年5月に、「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」(以下、中計2025)を策定しました。中計2025では「強靭性の獲得」をテーマに掲げ、3つの柱である事業戦略と基盤戦略、およびそれらを支える財務戦略で構築しております。

2025年3月までに、一部の施策については着実に進捗し成果を残しています。各種コストの増加に対しては価格改定を行うことで対応し、安定した収益性を維持することができました。販売物量においても、競合他社に対し優位性を発揮し、市場でのプレゼンス向上に取り組みました。DX推進や人的資本への取り組みについても、計画通りに進捗を見せており、組織全体の効率化と人材の活用を今後もさらに加速させていきます。

一方、PBRは若干の改善を見せているものの、依然として1倍割れの状態が続いており、当初中計2025の中で早期に目指すとしていた、1倍超の水準には到達していません。工場の老朽化が進むに伴い、生産体制の変革が不可欠となっていますが、具体的かつ有効な改善の方針や対策を示すことができていない状況です。

以上のことから、当社グループが中計2025の積み残し課題を解決することに加え、従来の延長ではない意欲的な施策に打って出る必要があると考えています。

<中計2025:連結経営指標>


 

イ.「Next Design 2030」の概要

A.「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」から「Next Design 2030」へ

当社グループは2025年5月に新たな経営計画「Next Design 2030」を発表しました。2025年度は中計2025の最終年度となりますが、「Next Design 2030」へと発展的に移行し、飛躍的な成長を目指します。

当社グループは存在意義・志である「健土健民」のもと、社会課題に挑む精神で人と自然が健やかにめぐる食の未来を育んでいきます。そして、事業活動を通じてこれからの社会課題であり、現代を生きる我々が取り組むべき重要課題でもある「食の持続性」に取り組み、長期的に企業価値を向上し、企業としての存在価値を確立していきます。


B.Next Design 2030コンセプト

「Next Design 2030」では、当社グループの新たな100年に向けた、第2の創業ともいうべきアセットの変革を断行します。新たな発想での生産体制の進化と、無形資産投資による競争力の強化により、乳の価値を上げ、乳の価値と需給構造の大転換を図ります。

国内生乳需給上の、乳脂肪分(Fat)・無脂乳固形分(SNF)のアンバランス課題解消に向けて、チーズ市場における事業の拡大を図ります。また、白物飲料の収益性向上に注力し、市場でのプレゼンスを高め、需要を創出し、製品の価値評価を上げることを目指します。さらに、当社グループがこれまで乳で培った知見や技術を応用して、社会への価値提供を拡大し、適正な利潤を追求していきます。既存事業での競争力を維持しつつ、代替食品事業や海外展開といった新たな領域へ進出し、新市場で確固たる地位を築いていきます。

そして、これらの取り組みを力強く推し進めることによって「社会的価値」と「経済的価値」を同期させ、「食の持続性の実現」による企業価値の最大化を実現します。

 


 

C.事業ポートフォリオ変革

当社グループのポートフォリオの考え方は「食の持続性貢献度」による評価を縦軸とし、「市場成長性」と「当社収益性」を掛け合わせた指標を横軸としています。

「食の持続性貢献度」とは「食の持続性」を高めるための売上規模や国内酪農基盤への貢献度などを勘案した、当社グループ独自の指標です。本業を通じて、市場成長性×当社収益性で示す「経済的価値」をしっかりと高め、同時に、国内酪農基盤への貢献を目指すことで「社会的価値」を同期させ「食の持続性」を実現します。

「雪印メグミルクアセットの大変革」により、事業ポートフォリオを変革させ、食の持続性貢献分野の資本効率の改善を進め、高付加価値化を図っていきます。具体的には、重点領域に保有資源を集中し、レバレッジをかけ、強化していきます。また、成長促進領域は、当社グループの成長をドライブするカテゴリーであり、一定のリスクを取りながら、ハイリターンを目指します。一方で、酪農基盤領域は事業資産の圧縮や他社との協業など、アセットライトを志向すると同時に、収益性改善のため、市場の変革にも挑戦していきます。


 

D.戦略の“4つの柱”、重要な“7つの戦略課題”

「Next Design 2030」は、事業戦略を「4つの柱」と「7つの戦略課題」で構成しています。

1つ目の柱、「成長の果実の育成と収穫」では、中計2025で取り組んできた「海外展開強化」、「機能付加商品の育成」、「プラントベースフードへの参入」、といった「新たな成長のタネづくり」を着実に進め、成長性とリターンを可視化します。具体的には、海外展開における輸出力強化や、代替食品拡充による収益源としての定着化などを戦略課題としています。

2つ目の柱、「乳の産業価値を高める構造の変革」では、「チーズの徹底拡大」と「白物飲料でのプレゼンス拡大」を戦略課題としています。2025年5月に発表した「チーズの生産体制整備」では、北海道でナチュラルチーズを生産する「なかしべつ工場」と、茨城県でプロセスチーズを生産する「阿見工場」で合わせて約475億円の設備投資を行い、2028年上期に両工場で新たな生産体制が稼働する予定です。この投資により、新たな需要を創造する商品の生産が可能となり、当社の強みであるチーズカテゴリーでの成長を加速すると同時に、酪農乳業界の課題である無脂乳固形分(SNF)需要の拡大に対して、これまでとは一線を画すアプローチで解決に臨みます。

3つ目の柱、「リジェネラティブな酪農の実現」では、「守る」「維持する」国内酪農基盤の強化・支援から、「再生」に向けて動き出します。酪農乳業界の発展に寄与する研究・ビジネスへの参入により、自給飼料需要拡大に取り組みます。

4つ目の柱、「社会とのつながりの進化」では、当社グループが乳で培った知見や機能を社会へ還元し、他業界への応用ビジネスの展開を目指します。


 

E.戦略課題KPIおよび経営指標

2030年度の営業利益目標は350億円です。2024年度の実績対比では約160億円増加する計画です。このうち、海外事業では全体の利益に対して20%の構成を占めることをKPIとし、金額として70億円を目標としています。機能性素材販売の拡大や、東南アジアを拠点としたチーズの拡大の他、2026年度にはAGRO SNOW PTE.LTD.(アグロスノー)によるプラントベースフード(エンドウ)原料製造工場が稼働し、収益源としてプラントベースフードの早期定着化を図ります。

国内の成長領域では、2030年度に150億円の営業利益を計画しています。対象としている4つの事業領域は、今後の市場の成長が期待できるカテゴリーです。これらの領域で高い成長率を実現するために、今後実施する生産体制進化のための投資では、付加価値生産性の向上と、他社との協業等による効率性の向上を同時に実現するイノベーティブな取り組みを推進していきます。

また、経営上のコミットメントは、2030年までに資産売却を除く調整後ROE9.0%以上、ROIC6.0%以上としています。



 


 

F.キャッシュアロケーションおよび投資方針

当社グループは、これまでの安定的な営業キャッシュフローの創出により、有利子負債の割合は一貫して減少し、直近では過去最低レベルまで減少しています。このことは、当社グループが自己資本を積極的に積み上げるステージから、その自己資本を有効活用し、企業価値の向上を図るステージへ移行していることを示しています。今後は、資産売却や有利子負債の効果的な活用により、ROE9.0%以上の達成に向けて、戦略的なキャッシュアロケーションおよび投資基準を策定します。


投資方針は、投資の目的に応じた「基盤投資」、「フロンティア投資」、「戦略投資」の三つのカテゴリーに区分し、投資配分を設定して、個々の案件を決定していきます。投資総額は2030年までの6年間で約3,200億円を計画しています。それぞれの投資区分詳細は次の通りです。

a.基盤投資

・ミルクバリューチェーンの持続的成長に向けた大型更新投資

・企業価値向上に向けた無形資産投資等

b.フロンティア投資

・事業戦略・機能戦略の土台を作るための投資

・将来に向けたタネまきの投資

c.戦略投資

・調整後ROE9.0%以上の達成に必要となる期待リターンを設定

・機動的な自己株式の取得(2025年度は200億円の取得枠設定)

 

また、企業としての成長を加速し、調整後ROE9.0%の早期達成に向けた有効手段として、当社グループとのシナジーや事業領域拡大が見込まれる分野等に対し、積極的にM&Aを活用します。

 


 

G.株主還元及び資本効率改善について

財務の基本方針として、財務の健全性を維持したうえで、営業キャッシュフロー・BSマネジメント・有利子負債活用によって基盤・成長投資を実施し、安定配当と機動的な自己株式の取得を行い株主還元も強化します。資本政策では、株価や資本構成の状況や成長投資資金需要を考慮しながら、資本効率向上に向けて機動的な自己株式の取得を実施し、取得した株式は全額消却する予定です。また、配当方針として、配当下限を100円に設定し、資産売却益を除く配当性向は40%以上としています。資本構成は、ネットDEレシオ0.5を目安とし、投資の状況に合わせ段階的に最適化していきます。

資産効率向上の施策としては、政策保有株式が2025年度純資産比率10%未満となるよう売却を進める他、工場再編や本社移転等により遊休となった資産の売却も検討します。

 


 

 

(3) 次期の経営環境及び優先的に対処すべき課題

今後のわが国経済の見通しにつきましては、米国の通商政策による世界経済の不確実性の高まりや、金融資本市場の変動等が国内に及ぼす影響に十分注意する必要があります。

食品業界においては、外食需要におけるインバウンド効果や、健康志向の高まりによる高付加価値商品の開発等で堅調な市場拡大が期待される一方で、原材料価格や輸送コスト等の上昇といった厳しい経営環境が継続することが想定されます。

酪農乳業界においては、生乳生産量の減少が見込まれ、夏季の需要期においては飲用牛乳の安定供給に向けた計画的な対応がますます重要となります。脱脂粉乳・バターの需要アンバランスの改善に取り組み、脱脂粉乳の在庫量は減少基調で推移していますが、対策を講じない場合は再び在庫が積み増すことが見込まれています。

当社グループは「Next Design 2030」のスタートの年にあたる2025年度の経営方針を「Brand-NEW」とし、以下の重要な施策に対し積極的な取り組みを進めてまいります。

 


 


 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ共通

食の持続性の実現に向けて、「栄養を届け、環境に配慮し、人材を活かす」取組みは、私たち独自のサステナビリティ経営です。「雪印メグミルクグループ サステナビリティ方針」に基づき、コンプライアンスを基本とし、重要課題(マテリアリティ)と実効性の高い推進体制で取組みを加速します。

 

 

 〈当社グループのサステナビリティ経営〉


※重要課題(マテリアリティ)の詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。

  https://www.meg-snow.com/csr/materiality/

 

 〈サステナビリティ経営の実効性を確保するための推進体制〉


「健土健民」と、その具体的な実現手法である「循環農法」の考え方は、当初は酪農・乳業の発展と安定的で豊かな食生活の実現のために掲げられたものでした。100年を経て、社会課題は食の持続性の実現に変わっています。食の持続性の実現のためには、健全な人間社会だけでなく、動物、植物、地球環境の好循環が必要であり、循環型社会を目指す基本的な思想は100年前も現在も同じです。

当社グループのサステナビリティ経営は、環境に配慮した生産システムの構築と付加価値の高い商品の供給により社会課題を解決する、持続可能な事業活動によって実現するものです。重要課題(マテリアリティ)とKPI(重要管理指標)に沿って、これからもコンプライアンスの徹底を基本として社会的価値と経済的価値が同期化したサステナビリティ経営を推進し、食の持続性の実現を目指します。

 

(ガバナンス)

当社グループ全体のサステナビリティの取組みを経営レベルで推進していくため、当社社長が委員長を務めるグループサステナビリティ委員会を設置し、重要課題(マテリアリティ)のKPI進捗確認や達成に向けた協議を行い、内容を取締役会に報告しています。さらに、グループサステナビリティ委員会の下にサステナビリティ担当役員が部会長を務め、委員として社長が参加するサステナビリティ推進部会を設置しています。この部会では担当役員が分科会長を務める「脱炭素分科会」、「脱プラ分科会」、「人権分科会」、「TNFD分科会」からの報告を受け、具体的な取組みを協議しています。

当社の各部署とグループ会社にはサステナビリティリーダーが配置され、サステナビリティグループ活動を行うなど、従業員へのサステナビリティの理解・浸透や、現場での具体的な取組みを推進しています。

 

サステナビリティ関連の各種方針 https://www.meg-snow.com/csr/various_policies/

 

〈2024年度の開催実績と討議内容〉

 

実施回数

討議内容

第5回

(7月24日)

(1)第10回、第11回サステナビリティ推進部会報告

(2)2023年度 環境関連グループKPI進捗報告

(3)2024年度 重要課題(マテリアリティ)のKPI取組み計画(グループ会社)

(4)2024年度 コンプライアンスの取組み計画(雪印メグミルク)

(5)2024年度 サステナビリティ活動の取組み計画(グループ会社)

第6回

(2月27日)

(1)サステナビリティ推進部会からの報告

 ①第12回、第13回サステナビリティ推進部会報告 

 ②「雪印メグミルクグループ サプライヤーガイドライン」説明

(2)2024年度 環境関連グループKPI上期進捗報告

(3)2024年度 重要課題(マテリアリティ)のKPI取組み進捗報告と課題

 (グループ会社)

(4)2024年度 コンプライアンスの取組み報告(雪印メグミルク)

(5)2024年度 サステナビリティ活動の取組み報告(グループ会社)

 

 

 

 

実施回数

討議内容

第11回

(6月19日)

(1)2023 年度TCFD開示

(2)各分科会からの報告

①脱炭素分科会:川越工場の「埼玉県地球温暖化対策計画制度」の対応、

大樹工場バイオガス活用

②脱プラ分科会:バイオポリエチレン配合検討などロードマップ進捗確認、

サーキュラーパートナーズ参画

③人権分科会:ロードマップ進捗確認、人権影響評価(内部による確認)報告、

「優先的に取り組む人権リスク」ワークショップ、

外国人労働者在籍状況

④TNFD分科会:「初期的開示」内容確認

第12回

(9月18日)

(1)各分科会からの報告

①脱炭素分科会:川越工場のバーチャルPPA契約進捗、大樹工場のバイオメタ

ガス活用進捗、太陽光発電設備設置、ロードマップ更新

②脱プラ分科会:KPI達成マスタープラン更新、ロードマップ進捗確認

③人権分科会:「優先的に取り組む人権リスク」見直し結果、海外現地法人に

おけるSAQ調査、グループ会社における人権デュー・ディリ

ジェンス、パーム核油・パーム系混合油の認証油購入影響

の確認、「雪印メグミルクグループ サプライヤーガイドライン」

制定、外国人労働者在籍状況

④TNFD分科会:「本格開示」に向けた取組み

第13回

(12月18日)

(1)各分科会からの報告

①脱炭素分科会:大樹工場のバイオメタンガス活用進捗、

酪農由来J-クレジット購入、ロードマップ進捗確認 

②脱プラ分科会:ロードマップ進捗確認、プラスチックリサイクル協業取組み

③人権分科会:人権影響評価(外部による評価)報告、パームのミルリスト更新、

物流ドライバーに対する人権影響評価、グループ会社における

人権デュー・ディリジェンス、外国人労働者在籍状況

④TNFD分科会:サステナビリティソリューションおよび酪農・

北海道への貢献戦略、ガバナンス、開示作業

第14回

(3月18日)

(1)2024年度 水リスク評価について

(2)各分科会からの報告

①脱炭素分科会:CO2排出量削減策(ボイラガス化、ヒートポンプ)、

太陽光発電設備進捗、2025年度ICP単価

②脱プラ分科会:ロードマップ進捗確認、プラスチックリサイクル協業取組み、

乳酸菌飲料容器回収・再資源化

③人権分科会:人権影響評価(内部による確認)報告、グループ会社における

権デュー・ディリジェンス、外国人労働者在籍状況

④TNFD分科会:気候・自然統合シナリオに基づくリスクと機会の評価結果、

リスクと機会への対応策、指標と目標、ネイチャーポジティブ

ロードマップ

 

 

 

(2) 気候変動への対応

①2050年カーボンニュートラル宣言

当社では、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル宣言を2023年5月に行い、2030年度までにCO2排出量を2013年度比50%削減する目標をKPIとして、グループ一体で脱炭素の取組みを推進しています。

 

②TCFD提言への取組み

気候変動問題はグローバル社会の最重要課題の一つであり、食の持続性の実現を目指す当社グループの事業に大きな影響を及ぼすため、課題解決に向けて積極的に取り組む必要があります。当社では2021年10月にTCFDへの賛同を表明し、2022年9月より「雪印メグミルクレポート(統合報告書)」にてTCFDに基づく非財務情報の開示を始め、年に一度、内容の見直しを行っています。

 

  (ガバナンス)

「(1)サステナビリティ共通」に記載しております。

 

  (戦略)

移行リスクと物理的リスクから、2つのシナリオ(1.5℃上昇シナリオ、4℃上昇シナリオ)でリスクと機会に分類し、脱炭素ロードマップに基づき取組みを推進しました。将来的には現在取り組んでいるTNFDとの統合を目指します。また、2030年と2050年を時間軸として、事業インパクト評価を実施しました。

 

    気候変動リスク・機会と当社における対応

A.「炭素価格」

 

移行リスク

機会

・気候変動への対応遅れにより、炭素税の負担など、事業全体の競争力が低下

・カーボンニュートラルを実現する努力を怠ることにより、ブランドイメージが毀損(信頼性の低下)

・炭素税の負担を低減するため、ICP活用により積極的な設備投資(省エネ、太陽光発電設備等)を行う

・積極的に次世代エネルギーを活用することにより新しいサプライチェーン構築とブランドイメージの向上

2024年度の主な内容

・ボイラ設備の燃料転換(なかしべつ工場)

・太陽光発電設備導入(京都工場、阿見工場)

・バーチャルPPA導入(川越工場)

・水素エネルギー利活用(幌延工場)

・ICP導入(2024年4月~)

・サステナビリティ・リンク・ローン及びグリーンボンドによる資金調達

B.「消費者意識の変化」

 

移行リスク

機会

・環境、人権に配慮した資材、包材の採用による調達コストの増加

・サーキュラーエコノミーを実現する努力を怠ることにより、ブランドイメージが毀損(信頼性低下)

・環境、消費者トレンド(消費者意識の変化)に配慮した製品開発による新市場の形成

2024年度の主な内容

・認証パーム油100%調達(雪印メグミルク㈱)

・容器包装における石油由来プラスチックの削減

(2025年春よりバイオマスプラスチックを10%配合

した容器を採用)

・機能性付加商品の売上拡大

(2030年度;1,000億円以上)

C.「平均気温の上昇」

 

物理的リスク

機会

・水資源の枯渇による酪農生産の停滞、および生産ができない事による売上減少と企業価値の毀損

・森林保全による水源涵養の拡大(生物多様性も貢献)

・緑肥作物種子による作付面積の拡大

2024年度の主な内容

・圧空冷却塔導入(幌延工場)

・蒸気ドレン排出方法改善(阿見工場)

・ボイラ回収水活用(海老名工場)

・給水設備改造(京都工場池上製造所)

・J-クレジット(森林由来)の購入場所拡大

(京都工場、京都工場池上製造所、阿見工場)

・緑肥作物種子による作付面積を2019年度比で20%拡大する(目標:2030年度)

 

 

D.「異常気象の頻発化と深刻化」

 

物理的リスク

機会

・自然災害による製造物流設備への影響

・フードテックなど代替食品市場の拡大による持続可能な食の提供

2024年度の主な内容

・生産拠点の水リスクを確認し、事業継続のリスク

 評価を行う

・プラントベースフードなど代替食品の売上高拡大(2030年度;200億円以上)

E.「酪農基盤」

 

移行リスク

機会

・酪農生産の環境負荷に対する厳しい視線

・国際的な生乳生産減少、コストアップ

・環境負荷低減に向けた持続可能な酪農への支援

・輸入飼料に依存しない酪農経営の実現

・国内酪農生産基盤の強化(乳や乳製品の競争力・価値向上)

2024年度の主な内容

・TNFD提言に基づく情報開示の準備

・牛の腸管由来温室効果ガスの測定方法の確立

 (ゲップに含まれているメタンガス)

・メタンの発生を抑制する牧草・飼料原料の研究開発(雪印種苗㈱)

・酪農由来のバイオメタンガス活用による持続可能な酪農への支援

・ふん尿由来J-クレジット活用開始による持続可能な酪農への支援

・自給飼料型酪農推進のため、雪印種苗の牧草・飼料作物種子による作付面積を2019年度比で3%拡大する

・酪農総合研究所シンポジウム開催(酪農生産基盤強化)

 

 

 

   事業インパクト評価

 

重要項目

当社への影響

想定パラメータ

2030年

影響度

2050年

影響度

1.5℃

4℃

1.5℃

4℃

 炭素価格

・炭素税の導入による製造・輸送コストおよび売上原価の増加

炭素税

 消費者意識の

 変化

・消費者の自然素材の利用や包装資材リサイクル、CO2排出等への関心

・気候変動対策に積極的な企業の製品購入による、売上高の増加/減少

脱プラ施策等による影響額

 平均気温の

 上昇

・平均気温の上昇による水資源不足

・暑熱対策による原材料調達コストの増加

生乳の生産量

畜舎運営費用の増加

 異常気象の

 頻発化と深刻化

(豪雨、洪水等)

・自然災害(豪雨、洪水等)による製造・物流設備への影響(操業中止、配送停止等)

集中豪雨の年間発生日数

 

■影響度「大、中、小」の定義(金額範囲)  大:50億~30億、中:30億~10億、小:10億未満

 

③脱炭素ロードマップ(2030年度までの移行計画:参考)


・本ロードマップは雪印メグミルク㈱単体のものであり、グループ会社を含むグループ全体のCO2排出量

 の数値とは異なります。

・2025年4月時点の脱炭素ロードマップであり、a~fの施策の進捗状況に応じ、毎年見直しを行います。

 そのため、2025年度以降の数値は参考値となります。

 

 

④2024年度の主な取組み

A.炭素価格

脱炭素ロードマップ(2) 気候変動への対応③脱炭素ロードマップ参照)で掲げた施策に沿ってCO2排出量の低減を進めています。

 ア.ボイラ設備の燃料転換(施策a)

   なかしべつ工場では、2024年10月にボイラのエネルギーを重油からLNGへ切り替えました。これ

  により、年間5,200tのCO2排出量の削減が見込めます。2025年度は京都工場で更新工事を行い、2026  

  年6月稼働を予定しています。

 

工場名

稼働

削減効果

(t-CO2/年)

備考

 大樹工場

 2022年12月~

7,800

2021~22年

なかしべつ工場

 2024年10月~

5,200

2023~24年

京都工場

 2026年6月予定

2,000

2025年度着工予定

 

 

15,000

 

 

 


 

ボイラ設備(なかしべつ工場)

 

<効果>

CO2削減量:3工場で15,000t-CO2/年(見込)

 

 

 イ.再生可能電力活用(太陽光発電設備導入)(施策c)

   再生可能エネルギーの利用拡大に向け、太陽光発電設備の導入を進めており、2024年度は京都工場

  と阿見工場で稼働を開始しました。2025年度は大樹工場、磯分内工場、野田工場、豊橋工場での稼働

  を予定しています。

 

工場名

稼働

削減効果

(t-CO2/年)

 海老名工場

2023年7月~

130

京都工場

2024年5月~

110

阿見工場

2024年8月~

590

大樹工場

2025年7月~(予定)

260

磯分内工場

2025年7月~(予定)

180

野田工場

2025年度(予定)

70

豊橋工場

2025年度(予定)

270

京都工場池上製造所

2027年度(予定)

220

なかしべつ工場

2028年度(予定)

110

 

 

1,940

 

 


太陽光発電設備(京都工場)

 


太陽光発電設備(阿見工場)

 

<効果>

CO2削減量:9工場で1,940t-CO2/年(見込)

 

   ウ.再生可能電力活用(バーチャルPPA)(施策d)

   2024年9月に、東芝エネルギーシステムズ株式会社と再生可能エネルギーを活用したバーチャルP

  PA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)を新たに締結しました。バーチャルPPAは、

  電力需要家が敷地外の発電所で発電された再生可能エネルギーの環境価値(非化石証書)を調達す

  る手段です。今回調達する環境価値(非化石証書)は、川越工場のCO2排出量削減として使用しま

  す。これにより、埼玉県の「目標設定型排出量取引制度」における第4削減計画期間(2025年度か

  ら2029年度)の温室効果ガスの削減目標に対する取組みを推進します。

・購入開始 2025年4月~

・契約期間 10年間

・非化石価値 1,400t-CO2/年(3,800Mwh)

 

 

 

   エ.その他(水素サプライチェーン)(施策f)

幌延工場では、2025年度下期より水素エネルギーの利活用による実証実験に取り組みます。近隣(豊富温泉)から産出された未利用ガスから創出された水素と既存ボイラ燃料であるLNGを混焼させ、ボイラ設備の燃料として使用します。


 

      オ.ICP導入

     インターナル・カーボン・プライシング制度を2024年4月から導入しました。

社内炭素価格:10,000円/t-CO2

適用範囲   :省エネ・新技術導入に対する投資(2024年度はユーティリティ設備を対象)

対象範囲  :スコープ1、スコープ2(自社のCO2排出量)

活用方法  :対象となる設備の投資に対して、社内炭素価格により費用換算し、設備選

              定時の参考とする。

 

 

      カ.サステナビリティ・リンク・ローンの活用

     サステナビリティ・リンク・ローン(以下「SLL」)は、借り手の経営戦略に基づくサステナビリティ目標と連携したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(以下「SPT」)を設定し、借入条件とSPTの達成状況を連動させる借入です。

     雪印メグミルクグループでは、2030年度CO2排出量50%削減をSPTとして、2022年3月に80億円

 の調達を行いました。このSPTを基に借入期間の目標値を定めています。なお、CO2排出量は、

 第三者機関による検証を実施しております。

 

<雪印メグミルクグループ全体のCO2削減率の目標及び実績値>

CO2削減率

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

2025年度

2026年度

2030年度

目標値※1

 

22.3%

 

30.8%

 

35.0%

50.0%

実績値

18.4%

23.5%

26.9%

25.9%※2

 

      ※1 2022年度、2024年度、2026年度の数値はSLLで設定したSPT

      ※2 2024年度数値は見込み

 

  キ.グリーンボンドレポーティングの進捗状況

     グリーンボンドは、環境問題の解決に貢献する事業に要する資金を調達するために発行する債券です。2022年12月に発行した50億円のグリーンボンドの対象事業の概要、調達資金の対象事業への充当状況及び環境効果に関する指標等を、実務上可能な範囲で年次で当社ウェブサイト上に開示しております。

       ※サステナブルファイナンス https://www.meg-snow.com/csr/finance/

 

   グリーンボンドで開示するプロジェクト

適格プロジェクト

対応する当社重要課題(マテリアリティ)

およびKPI

環境改善効果

 ホエイや有用成分回収工程で発生する副産物の

 バイオマスをメタンガス化する設備の導入

 環境負荷の低減:2030年度までに、

 CO2排出量を2013年度比50%削減する。

CO2削減量

(t-CO2)

 排水処理設備増能更新(大樹工場)

 排水処理設備増能更新(磯分内工場)

 汚泥減容化設備導入(野田工場)

 汚泥乾燥設備導入(大樹工場)

 環境負荷の低減:2030年度までに、

 廃棄物排出量を2013年度比30%削減する。

汚泥の削減量(t)

 

 

 

B.消費者意識の変化

 ア.石油由来プラスチックの削減に向けて

   当社グループでは、容器包装における石油由来プラスチックを削減するため、2030年度に石油由来

  のプラスチック使用量を2018年度比で25%削減(売上原単位)することをKPIと定め、脱プラ分科

  会で削減施策を検討しています。2025年3月から「ナチュレ 恵 megumi」「牧場の朝ヨーグルト」

  「恵 megumi ビフィズス菌SP株ヨーグルト」の3ブランドにバイオマスプラスチックを10%配合し

  た容器を導入します。この取組みにより当社の石油由来プラスチック使用量は年間で500t超の削減見

  込みとなり、大きな効果が期待されます。

 

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

石油由来プラスチック使用量

(2018年度比、売上原単位)

2.5%削減

5.3%削減

12.2%削減

 

    ※集計中のため、雪印メグミルクウェブサイト等に掲載予定です。

 


 


 


 

 

 

 また、2023年4月より、東京都、神奈川県、千葉県、福岡県などで学校給食牛乳ストローレス容器の導入とバイオマスプラスチック配合ストローの供給を開始し、石油由来プラスチックのさらなる削減に取り組んでいます。

 

2023年度

2024年度

ストロー関連の石油由来プラスチック使用量(2022年度比)

24t削減

33t削減

 

 


 

 ストローレス容器  

 

C.平均気温の上昇

 ア.生産拠点の節水の取組み

   生産拠点の用水使用量について、2030年度に2013年度比9%削減とするKPIを定め、2023年度に

  は前倒しでKPIを達成しました。2024年度は更に幌延工場圧空冷却塔導入、阿見工場蒸気ドレン排

  出方法改善、海老名工場ボイラ回収水活用、池上製造所給水設備改造など用水使用量の削減に努め、

  約10.9万立方メートル/年を削減しました。


 

   イ.森林保全による水の涵養の取組みについて

   植林などの森林保全や森林由来のJ-クレジット購入を通じ、森林保護や水源の涵養への取組みを強

  化しています。2024年度より、京都工場と京都工場池上製造所(ナカエの森地球がよろこぶ森林プロ

  ジェクト)、阿見工場(栃毛木材の森林プロジェクト)でのJ-クレジット活用を新たに開始しまし

  た。今後も持続可能な森林保全活動を支援していきます。

 

取組み内容

対象場所

開始年度

対象面積※(ha)

北海道 「キキタの森」の間伐促進プロジェクト

酪農と乳の歴史館

2014

4

北海道中標津町 地域の暮らしを守る格子状防風林における間伐促進プロジェクト

なかしべつ工場

2017

2

神奈川県 「森林再生パートナー」ネーミングライツ森林「恵 megumiの森」

海老名工場

2022

3

日本製紙木材㈱ 群馬・須田貝社有林間伐促進プロジェクト

野田工場

2022

8

川越工場

2023

8

日本製紙㈱ 富士・北山社有林間伐促進プロジェクト

本社

2023

3

福岡市 福岡市営林間伐促進型プロジェクト

福岡工場

2023

1

中江産業㈱ ナカエの森地球がよろこぶ森林プロジェクト

京都工場

2024

5

京都工場池上製造所

2024

5

㈱栃毛木材工業 栃毛木材の森林プロジェクト

阿見工場

2024

12

合計

 

 

51

※森林の対象面積は雪印メグミルク㈱調査による概算値

 

 

 

 

 

D.異常気象の頻発化と深刻化(豪雨、洪水等)

 ア.生産拠点の水リスク評価

   生産拠点の水リスクについて、リスクの再評価を行いました。アキダクト(世界資源研究所(WRI)

  が開発した水リスク評価のグローバルツール)による評価では、リスクが高い対象事業所はありません

  でした。また、当社の独自評価として用水、排水、洪水に関するリスク評価を実施し、対応を進めま

  した。

 

リスク高

リスク中

リスク低

アキダクトによる評価

0事業所

12事業所

14事業所

雪印メグミルク独自評価

0事業所

2事業所

24事業所

 

 

   イ.プラントベースフード(代替食品)への参入

2024年3月に、プラントベースフードの新ブランド「Plant Label」(プラントラベル)を立ち上げ、販売を開始しました。プラントベースフードは、世界人口の増加を背景に食料の安定供給が求められる中、たんぱく質の新たな選択肢として注目されています。市場規模は世界的に拡大傾向にあり、その中でも成長が著しい植物性素材は「えんどう豆」です。大豆やアーモンドと比べて生産時の水の使用量やCO2排出量が少ないサステナブルな原料でありながら、脂質が少なく、高たんぱくで食物繊維が豊富という特徴があります。2024年9月には、えんどう豆の味わいが楽しめる「Plant Label えんどう豆由来のおつまみ しお味/スモーク味」を発売しました。当社がこれまでに乳で培ってきた幅広い知見や機能を活かし、プラントベースフード市場という新たな領域に挑戦します。

 


 


 

 

 

E.酪農基盤

   当社グループの主力事業である牛乳・乳製品は豊かな食生活と日本の食料自給率向上に欠かせない

  ものですが、酪農生産における環境負荷低減は社会課題となっており、対応を強化していく必要があ

  ります。

 

ア.TNFD提言に基づく開示

   2024年8月に初期的開示(※1)を公表しました。当社を中心とするバリューチェーン全体における

  自然への依存とインパクトについてENCORE(※2)を活用して評価し、また、当社工場の周辺地域にお

  ける自然の評価としてロケーション分析を実施し、自然関連のリスクと機会を確認しました。これら

  のリスクは、中長期的には当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。なお、TNFD提

  言に準拠した本格的な開示は2025年夏を予定しています。

※ 1 TNFDへの取組み  https://www.meg-snow.com/csr/pdf/tnfd_240822.pdf

※ 2 企業の業務が生物多様性にどのような影響を及ぼすか、またその影響が企業自身にどのような

リスクや機会をもたらすかを評価し、その影響を管理するためのツール 「Exploring Natural

Capital Opportunities, Risks and Exposure」の略

 

 イ.牛の腸管由来温室効果ガスの計測

当社の酪農総合研究所では生産団体(JA北オホーツク)および研究機関(北里大学)と連携し、牛の腸管由来温室効果ガスの計測を実施しました。

 


 


搾乳ロボットに設置した簡易メタンガスモニタリングシステム(赤丸の箇所)と計測データ収集の様子

 

 

   ウ.メタンの発生を抑制する牧草・飼料原料の研究開発

当社グループの雪印種苗㈱は、ソラマメ属植物に牛のルーメン液(第一胃消化液)のメタン発生を抑制する成分があることを発見しました。今後、酪農・畜産業での温室効果ガス削減に活用できるよう、更に研究開発を進めていきます。

 

 

   エ.大樹工場での酪農家由来バイオメタンガス活用

     大樹工場では2023年5月よりホエイから有用成分を回収した残渣をメタン発酵させ、バイオガスとして活用する取組みを進めています。2025年1月より、当工場で生成したメタンガスと、酪農家でふん尿処理時に発生したバイオメタンガスを混合させ、メタンガスボイラの燃料として利用する国内初の取組みを開始しました。

 


 


メタン発酵設備     

<効果>
CO2削減量:100t-CO2/年(見込)

 

 

   オ.酪農由来のJ-クレジット活用

     2025年度より酪農由来のJ-クレジットを活用した持続可能な酪農への支援を開始します。家畜の排せつ物を堆肥化する過程で温室効果ガスが発生しますが、強制発酵設備を導入することで従来4~6か月を要していた堆肥化の処理時間が24時間に短縮され、温室効果ガスを削減できます。この方法論で創出されたJ-クレジットを活用することで、北海道の酪農家の設備導入にかかる費用負担を支援します。

 


 


<J-クレジット概要>

・方法論 :家畜排せつ物管理方法の変更

      (AG-002)

・実施時期:2025年から2032年までの8年間

・購入量(8年間合計):11,500t‐CO2(予定)

 

購入対象の酪農家の牛舎

強制発酵設備

 

 

 

   カ.牧草・飼料作物種子の作付面積拡大

     自給飼料型酪農の推進のため、グループ会社の雪印種苗㈱の牧草・飼料作物種子による作付面積を2030年度までに2019年度比で3%拡大することをKPIに設定し取り組んでいます。

 

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

作付面積(2019年度比)

0.2%増加

3.7%増加

3.7%減少

 

       ※集計中のため、雪印メグミルクウェブサイト等に掲載予定です。

 

   キ.酪農総合研究所シンポジウム開催について

     持続的酪農経営を行うための経営管理・技術的支援として、2025年1月に酪農総合研究所シンポジウムを開催しました。2024年度は「今こそ飼料の国産化を! PartⅢ~次の一手を考える~」をテーマに、330人が参加し、自給飼料の利用拡大に向けた議論を行いました。

 

 (リスク管理)

気候変動リスクはサステナビリティ推進部会で報告・協議され、グループサステナビリティ委員会を通じ、進捗状況をグループ全体で共有しています。また、当社内で定期開催しているリスク連絡会ではグループ全体のリスクとトラブルの管理を行っています。

※推進体制は2サステナビリティに関する考え方及び取組(1) サステナビリティ共通参照

 

 

 (指標と目標)

抽出されたリスクに対し、KPIを設定し、取り組みました。

  2024年度の主なKPIの進捗状況

項目

KPI

2022年度

2023年度

2024年度

 炭素価格

 CO2排出量

(目標)2030年度:50%削減(2013年度比)

23.5%削減

26.9%削減

25.9%削減

(見込)

 消費者意識の

 変化

 石油由来のプラスチックの使用量

(目標)2030年度:25%削減(2018年度比)

5.3%削減

12.2%削減

 使用する紙を環境に配慮した原材料に変更

(目標)2025年度:100%使用

97.7%

99.0%

 認証パーム油

(目標)2026年度:100%調達

14.5%

54.4%

 機能付加商品の売上高

(目標)2030年度:1,000億円以上

 

581億円

 平均気温の上昇

 生産拠点の用水使用量

(目標)2030年度:9%削減(2013年度比)

7.6%削減

10.5%削減

11.3%削減

(見込)

 緑肥作物種子による作付面積拡大

(目標)2030年度:20%拡大(2019年度比)

 

3.9%拡大

 異常気象の

 頻発化と深刻化
(豪雨、洪水等)

 水リスクを確認し事業継続のリスク評価を実施(毎年)

アキダクトに加え、独自評価の実施と

排水・洪水対策を実施

 プラントベースフードなど代替食品の売上高

 (目標)2030年度:200億円以上

 

0.2億円

酪農基盤

 牧草・飼料作物種子による作付面積拡大

 (目標)2030年度:3%拡大(2019年度比)

3.7%増加

3.7%減少

日本酪農青年研究連盟および酪農総合研究所の活動により、持続的酪農経営を行うための経営管理・技術的支援を実施(毎年)

260名超が

参加

320名超が

参加

330名超が

参加

 

集計中のため、雪印メグミルクウェブサイト等に掲載予定です。

 

 

 

(3) 人権尊重の取組み

「ビジネスと人権」に関する企業の対応への要請はますます強まっており、当社グループの事業活動を行う上で直接的・間接的に影響を与える全ての人々の人権を尊重する必要があります。

2021年6月制定の「雪印メグミルクグループ 人権方針」に人権デュー・ディリジェンスの実施を掲げ、以降、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って実践しています。

人権尊重の取組み https://www.meg-snow.com/csr/human-rights/duediligence/

 

   〈人権デュー・ディリジェンスの実施ステップ〉


(ガバナンス)

「(1) サステナビリティ共通」に記載しておりますので、参照願います。

(戦略)

2021年度、当社のサプライチェーンでの人権デュー・ディリジェンスを開始しました。関係部署参画のもと特定した「優先的に取り組む人権リスク」に対して、2030年度までのロードマップに沿って外部の人権専門家による人権影響評価を順次実施しています。2024年9月には社会環境の変化に伴いリスクの見直しを行い、労働時間などの問題が指摘されている「物流ドライバー」を、「優先的に取り組む人権リスク」に追加しました。2025年2月、直販配送㈱のドライバーに対して外部専門家(特定非営利活動法人 経済人コー円卓会議日本委員会)による人権影響評価(インタビュー)を実施し、特筆すべき人権課題は確認されなかったとの報告を受けました。

 外国人労働者に対しては、全ての事業所において細やかに人権影響を確認するため、外部専門家による人権影響評価と併せて人権分科会のメンバーによるインタビュー(内部による確認)を2023年度より行っています。

 2024年12月、取組みを当社グループ全体に拡大するため、外部専門家のアドバイスを受け、人権デュー・ディリジェンスの先行実施会社として2社(ニチラク機械㈱、雪印種苗㈱)を選定しました。2025年3月、当該2社の役員およびサプライチェーンの責任者を対象とした人権教育をそれぞれ実施しました。


 

 


 


ドライバーへのインタビュー 

「優先的に取り組む人権リスク」見直しのワークショップ  

 

 


 

グループ会社における人権教育  

 

 〈ロードマップ〉

●…人権影響評価(外部による評価)○…人権影響評価(内部による確認)     ※2022~2024年度は実績、2025年度以降は計画

 

 

2022~2023

年度

2024年度

2025年度

2026年度

2027年度

2028年度

2029年度

2030

年度

目標

外国人労働者

雪印

メグ

ミルク

阿見工場

 

 

京都工場

 

 

 

大樹工場

 

 

 

直販

配送㈱

久喜

センター

 

 

東浦和

センター

 

 

 

富里

センター

 

 

 

八ヶ岳

乳業㈱

小淵沢工場

 

 

 

茅野工場

 

 

 

酪農生産者

(以降、業界として進める)

 

 

 

 

 

パームの

小規模農家

人権影響評価

農家アンケート・現地農園ダイアログ(インドネシア)

農家視察

(マレーシア)

 

 

 

 

 

ミルリスト公開

ミルリスト

掲載/更新

更新

更新

更新

更新

更新

更新

RSPO

認証油

購入

雪印

メグミルク

2018年度より

購入

全量切替

 

 

 

 

 

グループ

会社

2022年度より

購入

 

 

全量

切替

 

 

 

物流ドライバー

人権影響評価

 

(以降未定)

 

 

 

 

グリーバンスメカニズム

グループ内の

外国人労働者

向けに設置

 

 

 

 

 

 

グループ会社における

人権尊重の取組み

 

先行実施会社の

選定と教育実施

先行実施会社の「優先的に取り組む人権リスク」特定、人権影響評価

 

 

 

 

 

 

 

 

(リスク管理)

人権への負の影響を防止・軽減するための対応(人権デュー・ディリジェンス)が不十分な場合は、調達や生産、取引関係におけるマイナス影響や、当社グループのブランド価値毀損にもつながります。そのため、「優先的に取り組む人権リスク」に対して、人権分科会およびサステナビリティ推進部会で対応結果の確認と今後の方向性の協議を行っています。その内容は全て、グループサステナビリティ委員会を通じてグループ全体に共有しています。また、グループサステナビリティ委員会の内容は取締役会に報告しています。

 当社内で定期的に開催しているリスク連絡会では、グループ全体の人権に関するリスクやトラブルに関する迅速な情報共有を行い、対応を確認しています。

 

(機会)

人権尊重の取組みは、当社グループにおける人材確保にも寄与しています。人権が守られた安全で働きやすい労働環境、コミュニケーションの円滑な職場を築くことにより外国人労働者のモチベーションは高く、良い評判が伝わることで、紹介を通じて新しい人材が集まっています。

 

(指標と目標)

重要課題(マテリアリティ)の重点取組みテーマ「人権の尊重」に定めたKPIに沿って、計画的に人権デュー・ディリジェンスや啓発活動を進めていきます。

※KPI 「雪印メグミルクグループ 人権方針」に基づき人権デュー・ディリジェンスや啓発活動を行い、事業活動における人権リスクの特定・防止・軽減を図る。

 

 

 <2024年度までの進捗状況(抜粋)>

時期

内容

詳細

2022年1月

経済人コー円卓会議日本委員会(CRT)による社内講演「ビジネスと人権の理解」

全役員、全従業員が視聴

2022年3月

CRTの分析により「優先的に取り組む

人権リスク」を特定

・工場の外国人労働者

・酪農生産現場における外国人労働者

・パームの小規模農家

2022年7月

~2023年3月

人権影響評価(外国人労働者)

当社阿見工場および直販配送㈱久喜センターに在籍する外国人労働者へのCRTによるインタビュー

2022年10月

~2023年3月

人権影響評価(パームの小規模農家)

独立小規模農家へ事前アンケート(インドネシア南スマトラの農村)の上、現地を訪問し、農園労働者とのダイアログ実施

2022年12月、

2023年3月

海外有識者とのダイアログ

雪印メグミルクグループの人権尊重の取組みに関する対話

2023年9月

海外現地法人のSAQ調査

当社グループの海外企業のサプライチェーン上のリスクを確認

2023年11月

当社グループの外国人労働者向けグリーバンスメカニズム

グループ内で雇用する外国人労働者向けの母国語による相談窓口を設置

2023年11月

~2024年3月

外国人労働者へのインタビュー

京都工場、大樹工場、直販配送㈱東浦和センター、八ヶ岳乳業㈱小淵沢工場に在籍する外国人労働者への人権分科会メンバーによるインタビュー

2023年12月

人権影響評価(パームの小規模農家)

独立小規模農家へアンケート(インドネシア西カリマンタンの2つの農村)

2024年5月

~2024年9月

「優先的に取り組む人権リスク」の見直し

ワークショップを開催、CRTによる分析を経て新しいリスク「物流ドライバー」を追加

2024年7月

「雪印メグミルクグループ サプライヤーガイドライン」制定

制定にあたりガイドライン説明会を実施、200社/300名を超えるサプライヤーが参加

2024年8月

「CSR調達 セルフ・アセスメント質問表(SAQ)」によるサプライヤー調査

2020年度より隔年で実施(3回目)

SAQは分析の上、各サプライヤーにフィードバック

2024年11月

農園視察(パームの小規模農家)

パーム農園を取引先(商社)とともに視察し、マレーシア農園およびミルの労働者への聞き取りを実施

2024年11月

人権影響評価(外国人労働者)

当社大樹工場および京都工場に在籍する外国人労働者へのCRTによるインタビュー

2025年2月

人権影響評価(物流ドライバー)

直販配送㈱海老名支店に在籍するドライバーへのCRTによるインタビュー

2025年2月

外国人労働者へのインタビュー

直販配送㈱富里センターに在籍する外国人労働者への人権分科会メンバーによるインタビュー

 

 

(4) 人的資本、多様性

ガバナンスおよびリスク管理

当社グループは、「最大の経営資源は『人材』である」と考えています。

世の中の大きな環境変化と先行きが不透明な中で、企業理念を実現し、持続的に成長するためには、その源泉となる付加価値を生み出す「人材」の成長と活躍が不可欠であり、存在意義・志を達成するための行動において、当社グループの役職員一人ひとりが大切に考える共通の姿勢・価値観として、「主体性」・「チャレンジ」・「チームワーク」の3つを「雪印メグミルク バリュー」として定めています。


当社グループは、人的資本、多様性における事業活動のリスクを、少子高齢化に伴う労働人口の減少・雇用の流動化が進む中、多様な人材や求める人材の確保・定着ができないこと、デジタル技術の急速な進化等、既存スキルの陳腐化が起こり得る市場環境下において、「雪印メグミルク バリュー」の対局にある、「指示待ち」・「前例踏襲」・「セクショナリズム」といった組織体質に陥ることと認識しています。

これらのリスクに対応し、「存在意義・志」を達成していくため、新たな経営計画「Next Design 2030」では、「DXの推進」と「人的資本の活用・成長」を基盤戦略に位置づけ、基盤戦略に基づいた人事戦略および施策を以下のとおり定めています。

重要課題

人事戦略

戦略に基づく施策

1.経営戦略と連動した人事戦略の実現(人的資本経営の推進)

 

2.従業員の多様な価値観や自律的な成長を促進する組織風土の醸成

 

3.経営戦略を実現する人材の育成とキャリア自律の促進

①経営戦略に連動した人材の獲得・配置

人材ポートフォリオの再構築

リスキリングによる人材の育成

②エンゲージメントの向上

定期調査によるモニタリングとPDCAの実践

健康経営の推進

③ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&Iという。)の推進

女性活躍推進

育児・介護の両立支援

あたらしい働き方の推進

④グループ人材育成とキャリア開発

次世代リーダー育成

自律的なキャリア形成の促進

 

また、人事戦略の実現に向けて、「グループの持続的成長を支える人材の育成」・「個人の能力開発を通じた社員一人ひとりの自己実現」・「DE&Iの推進」を軸として、「雪印メグミルク バリュー」を実践する多様な人材が、個性や能力を十二分に発揮できる環境づくりと人事施策を推進し、従業員一人ひとりのエンゲージメントを高め、付加価値を創造する人材を育成します。

 

(戦略・指標と目標)

戦略・指標の実績および目標値

 

単位

2022年度

2023年度

2024年度

経営戦略に連動した人材の獲得・配置

 

新入社員数

83

123

182

※女性比率

26.5

35.0

37.4

自己都合退職率(正社員)

1.5

1.8

1.2

新卒者3年後離職率

10.7

12.5

4.7

エンゲージメントの向上

 

エンゲージメントスコア

(目標)70.02030年度

ポイント

63.3

65.2

健康経営優良法人

(目標)認定継続

認定

認定

認定

アブセンティーズム

1.6

1.8

2.0

プレゼンティーズム

91.6

91.5

91.4

総労働時間数

時間

1,938.5

1,924.5

1,944.5

時間外労働時間数

(目標)2023年度実績(16.7H)からの削減

時間

17.6

16.7

17.5

年次有給休暇取得率(全従業員)

(目標)80%以上

80.1

83.3

80.5

DE&Iの推進

 

女性管理職比率

(目標)10%以上(2025年度

7.2

7.8

8.6

育児休業取得率

 

 

 

 

 

 

(目標)男性85%以上2025年度

 

 

 

合計

91.9

105.8

96.6

男性

 

89.8

106.8

94.2

女性

 

100.0

103.0

103.3

育児休業取得日数(男性)

21.4

29.4

44.6

障がい者雇用率

(目標)2.7%(2025年度

2.39

2.59

2.56

キャリア開発とグループ人材育成

 

研修費用(正社員)

千円/人

20

42

52

次世代リーダー研修受講者数

18

14

キャリア研修・ワークショップ受講者数

363

553

601

公募型研修受講者数

347

268

378

 

(注)1.一部研修等において連結グループ共通の取組を実施しているものの、必ずしも全ての会社で取組を行われていないことや、数値の集約が困難であることから、数値は、連結グループ全体における利益の過半を占める、提出会社の実績値を記載しています。

2.自己都合退職率は、定年退職および会社都合(役員への就任や解雇など)以外の事由を自己都合として算出しています。

3.エンゲージメントスコアは、当社の全従業員を対象に行った外部機関による調査(2025年1月調査の回答率97.2%)の結果であり、「職務」・「自己成長」・「支援」・「人間関係」・「承認」・「健康」・「理念戦略」・「組織風土」・「環境」の9つのキードライバーに基づく設問に対して、自己の状況を7段階から選択したものをスコア化した数値です。

 

4.アブセンティーズムは、病気で休業している状態を表す数値として、傷病休職・休暇制度の利用日数および傷病欠勤日数の合計日数の平均値を記載しています。

5.プレゼンティーズムは、何らかの健康問題を抱えたまま仕事をすることで労働機能に与える程度を測定するための指標として、WFunによる測定を行い、組織の労働機能を総合評価した数値を記載しています。

6.総労働時間は一般職一人当たりの年間時間数です。

7.時間外労働時間数は一般職一人当たりの月間所定労働時間に対する時間数です。

8.年次有給休暇取得率は非正規社員を含む全従業員の年間付与日数に対する取得率です。

9.女性管理職比率は、各年度終了日の翌日(2024年度であれば、2025年4月1日)時点の従業員数を基に算出しています。

10.育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第71条の6第1号における正社員の育児休業等の取得割合を算出しています。

11.育児休業取得日数(男性)は、育児休業を取得した正社員の男性の、各年度に復職した者の平均取得日数を記載しています。なお、分割して取得した者は、最後に復帰した年度に数値を含んでおります。

12.障がい者雇用率は、障害者雇用状況報告書(各年度6月1日時点)に基づき算出しています。なお、出向者は出向元の従業員として算出しています。

 

②人事戦略に基づく取組

ア.経営戦略と連動した人材の獲得・配置

 a.雪印メグミルクグループアワードの開催

2021年度より毎年開催している本制度は、2024年度からはグループ会社にも取組を拡大し、「雪印メグミルク バリューの発揮」・「収益性」・「社会課題貢献度」の3点より企業価値の向上につながる活動を審査・表彰しています。2024年度は、京都工場池上製造所における「デジタルツールを用いたSF改革」が最優秀賞を受賞しました。

最優秀賞の内容や主体者の取組姿勢などは、社内の研修やグループ活動を通して、従業員全体に周知することで、好事例の水平展開につなげています。

 

 b.DX人材の育成

当社グループは、「自らの課題を発見し解決・改善につなぐサイクルを高速化することで、経営意思決定の高度化、イノベーションの実現を図る」・「一人ひとりが高いデジタルリテラシーを獲得する」ことをDXビジョンとして掲げています。

2024年度は、当社の正社員全員を対象にDXリテラシー研修を実施し、2025年度以降は、研修をグループに広げつつ継続するとともに、より高度なDX教育を公募・選抜して行うことで、DXの推進に努めます。

また、当社独自のチャットボットである「YuMe*ChatAI」等DXにつながる新しい仕組み・取組は、事例発表会や各工場・部署での勉強会の開催に加え、鮮度の高い情報を従業員間で共有する場として開設したポータルサイトを通じた従業員間での相互コミュニケーション等を通して、一部署の業務変革の取組を複数の部署でDX化の促進に取組んでいます。

 

 

イ.エンゲージメントの向上

 a.エンゲージメント調査と施策への反映

当社は、従業員のエンゲージメント向上が、従業員一人ひとりが働きがいを感じながら成長し、グループの持続的成長につながると考えています。

そのため、エンゲージメントを指標化するための調査を2023年度より開始し、2024年度からは、PDCAサイクルを加速するため、調査回数を年2回に増やしました。

2023年度の調査結果では、「ワークライフ・バランス」、「同僚からの困難時の支援」等がポイントの高い項目として挙げられる一方、「ミッション・ビジョンへの共感」「挑戦する風土」はポイントが低めの項目として挙げられました。

この結果から、経営と従業員、上司と部下をはじめとする各層間での社内の「対話」が不足しているのではないかと推察し、2024年度からは、各場所の長がエンゲージメント向上の取組を自場所のアクションプランに落とし込むことで、活動を具体化し、推進する仕組みづくりを行いました。

この結果2024年度の調査では全体のスコアは65.2ポイントとなり、前年より1.9ポイント向上しました。項目別では「ミッション・ビジョンへの共感」・「挑戦する風土」・「経営陣に対する信頼」で大きく向上しており、「対話」不足の解消を課題とし活動推進した結果と考えています

2025年度も、「対話」不足の解消に向けた活動を継続することに加え、エンゲージメントスコアの目標進捗を役員の報酬決定要素に加えることや、経営職以上を対象とした心理的安全性セミナーを実施するなど、経営層による関与を強めることで、更なる向上に努めます。

 

 

 b.健康経営の取組

当社では、食の楽しさや健康をお届けし、食の未来を創造する企業として、従業員が心身ともに健康であることを尊び、健康の維持・増進に向け、自ら行動することが重要と考えていることから、2021年より「雪印メグミルク健康宣言」を掲げ、以下の取組を推進しています。

 


 

また、経営課題の解決につながる指標を、「雪印メグミルク健康経営戦略マップ」としてまとめ、取組みを進めています。

この結果、2021年3月より5年連続健康経営優良法人の認定を受けています。


 

ウ.DE&Iの推進

 a.女性活躍推進の取組

当社は、2015年12月の「女性活躍推進」宣言以来、「女性活躍」を多様性の中核と位置づけ、企業戦略として推進しています。

具体的な取組みとしては、女性リーダーの育成やキャリアアップに向けた社内外におけるキャリア開発プログラムの展開、育成プランの策定、LGBTQ+を含むアンコンシャスバイアスの理解促進を目的とした社内フォーラムの開催やeラーニングの実施等に取組んでいます。

その結果、女性管理職比率は、2015年度の2.5%から2025年度期首には8.6%まで増加しました。引き続き10%以上の目標達成に向けて取組んでいきます。


 b.育児・介護の両立支援

当社は、男性従業員の育児休業の取得促進を目的に、「産後パートナー休暇」として28日間の有給休暇制度を設けています。また、子の看護等のための休暇制度について、小学校6年までを対象としています。加えて、男女を問わず育児休職開始時10日間を有給とする制度(正社員のみ)を設ける等、育児休暇の取得促進に努めています。その結果、2024年度の育児休業取得率は男性においても94.2%となり、3年連続で85%を達成しました。

更に、育児休務からの復帰者の早期戦力化を目的とした「育児休務者両立支援プログラム」を導入し、休職期間中の上司とのコミュニケーションを可能とする体制づくりに取組んでいるほか、育児に取り組む従業員同士の意見交換を、2020年度から毎年テーマを変えながらワークショップとして開催するなど、スムーズな復職のための仕組みづくりにも工夫を凝らしています。

また、介護については、介護保険や施設、認知症などの情報を提供するセミナーを開催することで、従業員の介護への意識醸成を図っています。

 

 c.DE&Iプロジェクト

働き方改革、各種制度の拡充と環境整備が進む中、次のステージとして、2023年度から人事担当役員、サステナビリティ担当役員を責任者とし、各部門の実務担当者から構成する「DE&Iプロジェクト」を発足しました。

各部門からの課題抽出を行う中で、2024年度は一工場を「特区」と定め意見交換をした結果、体力に不安がある年齢の高い従業員や女性従業員など体力的差異に関わらず、より多くの現場作業を担当できるよう設備導入を行っており、2025年度も多様な従業員が働ける体制づくり・環境づくりを推進します。

 

 

エ.キャリア開発とグループ人材

 a.人材育成体系

当社は、従業員の人材育成として、従業員の成長に合わせて行う「階層別研修」、従業員の自発的な意欲に応じて行う「公募型ビジネススキル研修」、従業員の年齢に合わせて自身のキャリアを意識させる「キャリア開発研修」、各専門部署の専門知識の深耕をはかる「専門研修」と、従業員のキャリアや意欲に応じた様々な研修に取組んでいます。

加えて、各部署・グループ会社に人材育成責任者、担当者を配置することで、当社グループの持続的成長を支える人材の育成、個々の能力開発を通じた社員一人ひとりの自己実現に向け、実行力を高める体制を整えています。

 b.次世代リーダーの育成および活躍機会の提供

2023年度より、選抜型リーダーシップ開発研修と役員研修を繋ぐプログラムとして、次の経営層候補を対象とした、リーダー開発に主眼を置いた所属長研修を導入し、グループ経営の次世代を担うリーダー群の育成をしています。

また、性別や年齢(若手・中堅・シニア)に関係なく、やる気と熱意を持った従業員に対しては、社内公募やキャリアチャレンジ制度、プロジェクトへの参画、グループ会社への派遣等を通じて、能力開発と活躍の機会を提供しています。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。

なお、当社グループは、以下のような経営および事業リスクの発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。

(1)酪農乳業界について

[リスク①]

当社グループの主要原料である加工原料乳の取引は「畜産経営の安定に関する法律」に基づく交付対象数量、補給金単価等の変更が当社グループの原料調達等に影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、これまで同様、国内酪農に軸足を置き、酪農生産への貢献を果たすとともに、乳の国際化を視野に入れ、国産牛乳・乳製品の価値向上による国産生乳の需要維持に取り組む一方、関税水準の引き下げに伴う乳製品輸入で得られるメリットの最大限の活用を検討していきます。

 

[リスク②]

当社グループが生産する乳製品には、国内農業保護を目的とした関税制度が敷かれております。しかし、WTO(世界貿易機関)農業交渉やFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)等の交渉および発効において乳製品の関税水準が引き下げられた場合には、当社グループの乳製品の販売に影響を及ぼす可能性があります。一方で、原材料調達価格が下がるなどのメリットも生じます。

 

(2)需給変動について

[リスク①]

当社グループは、国内で生産される生乳を主要原料としておりますが、国内の生乳需給はこれまでも過剰と逼迫を繰り返しており、過剰の場合には乳製品在庫過多により販売競争の激化、生産者団体の計画的減産等による生産基盤の弱体化に伴う長期的な調達量への影響が生じます。逼迫の場合には商品の原料調達不足による製造量減少により販売機会の喪失や生産効率が低下する可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、牛乳・乳製品の需要拡大を通じて国内酪農生産の基盤強化と持続的発展に貢献していきます。

また、需給変動による収益への影響の軽減に向けて、事業ポートフォリオを再編し、収益基盤の複数化とその確立に取り組むとともに、継続的なプロダクトミックスの改善による収益力の強化、および効率的な生産体制の確立に取り組んでいます。

 

[リスク②]

乳製品や飼料原料の国際市況は、世界経済の変動等による需要の増減や旱魃等の異常気象による飼料作物の不作などを原因とする製品供給の減少等の影響を受け、大きく変動することとなります。国際的に乳製品・飼料用原料の需給が逼迫した場合には乳製品や配合飼料等の原料の調達困難化や価格の高騰があり、需給が緩和した場合には安価な輸入乳製品の流入による国産乳製品の需要減少や国内飼料価格の下落として、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、配合飼料価格上昇時には畜産経営者に配合飼料価格安定制度により価格補てん措置が採られることになっており、メーカー拠出金が増加した場合は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)家畜伝染病について

[リスク①]

当社グループの主要原料である生乳は酪農生産者から工場に受け入れる段階で検査および殺菌等の処理を実施しておりますが、工場で生乳を受け入れた後に生乳を搾った牛が法令に定められた家畜伝染病に感染していたことが判明した場合には、法令等の定めに従い当該生乳または当該生乳を原材料とする製品の廃棄を行ないます。廃棄される原材料または製品の量が多くなる場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針①]

家畜伝染病等が流行した場合は、当社にて定める「家畜伝染病対応要領」に従い、行政・生産者団体と連携し、迅速な情報収集を行ない、法令や「MSQS(MEGMILK SNOWBRAND Quality Assurance System)」等に則り、適切な対応を行ないます。

※「MSQS(MEGMILK SNOWBRAND Quality Assurance System)」とは、品質保証に関して世界標準の品質マネジメントシステムであるISO9001およびHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の考え方を取り入れ、当社が独自に構築した品質保証システムです。

 

[リスク②]

家畜伝染病が発生した場合、風評被害などにより国内の生乳を使用した商品の消費減少の可能性があります。また、当該伝染病の対応により乳牛が淘汰された場合、飼育頭数の減少に伴う生乳生産量の減少や飼料需要の減退による飼料販売の減少等により当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針②]

風評については、一般社団法人Jミルクをはじめとした業界団体を通じ、正確な情報提供に努めていきます。

 

 

 

(4)市場規模の縮小等について

[リスク①]

日本においては少子高齢化の進展により人口減少傾向にあり、当社グループが対象とする市場が縮小してきております。また、急激な経済状況の後退や物価の高騰などが発生した場合、消費意欲の減退などによる市場縮小の可能性があります。こうした市場の縮小は、当社グループの商品販売に影響を及ぼす可能性があります。その他、畜産市場において飼養頭数が減少した場合、飼料や飼料作物種子の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針①]

当社グループは、事業ポートフォリオを適切に見直しており、機能を訴求する商品や高付加価値商品の開発強化、販売拡大により、国内事業の収益基盤の強化・確立を目指しております。また、海外の生産拠点の活用によりチーズを中心に販売物量を拡大し、ボーダレス展開を加速することで、海外事業の強化を図っています。

 

[リスク②]

飲料・デザート類は、天候の影響を受ける可能性があります。特に、天候不順や、夏場の気温が低く推移した場合には、売上高が減少し、当社グループの飲料・デザート類の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針②]

当社グループでは、需給変動による収益への影響の軽減に向けて、事業ポートフォリオを再編し、収益基盤の複数化とその確立に取り組むとともに、継続的なプロダクトミックスの改善による収益力の強化、および効率的な生産体制の確立に取り組んでいます。

 

(5)販売先の寡占化とメーカー同士の競合の激化について

[リスク①]

当社グループの製品は量販店中心に販売されておりますが、量販店を含む流通業界においては再編・淘汰が進み、流通業者の寡占化および大規模化が進展しております。この結果、特定の販売先の仕入れ・販売施策の変更および販売先の業績の動向が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針]

当社は、メーカーとして「ものづくり」の強化と新たな価値の創造に取り組むことで、商品開発力の強化とともに、商品を通じた価値の提供を目指しております。あわせて、当社グループは新たな収益機会の創出に向けて、ニュートリション事業分野における通販チャネルを通じた機能性食品事業の規模の拡大、および利益の創出に取り組んでいます。

 

[リスク②]

乳業・食品業界においては大手メーカー同士の経営統合や中小メーカーの再編・淘汰が進展し、規模拡大と事業領域の拡大が進んでおります。この結果、当社グループの事業領域への他業界からの新規参入や、メーカー間の商品開発・価格競争の一層の激化等が想定され、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)食品の安全性について

[リスク①]

食品業界においては、食品の安全性や品質保証が強く求められております。仮に品質問題が生じた場合には、自主的あるいは食品衛生法等の法令に基づく商品の回収や工場の操業停止、製造物責任(PL)法に基づく責務の負担等により当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。さらにこれらの事態の発生は、当社グループの社会的信用にも悪影響を与える可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、独自の品質保証システム「MSQS(MEGMILK SNOWBRAND Quality Assurance System)」を構築するとともに、GFSI(Global Food Safety Initiative)に認定された国際的な食品安全スキームの認証取得を推進し、徹底した品質管理を行なっております。また、風評については、一般社団法人Jミルクをはじめとした業界団体を通じ、正確な情報提供に努めていきます。

 

[リスク②]

当社グループ固有の品質問題のみならず、国内外において、健康に影響を及ぼす物質の混入、家畜伝染病等の食品に関する品質問題や健康問題などが発生した場合、さらには問題発生の有無にかかわらずこれらに関する風評が拡大した場合には、当社グループの売上に影響を及ぼし、この結果として業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

(7)法規制について

[リスク①]

当社グループの販売する乳製品を始めとした食品や育児用調製粉乳、機能性食品は、「食品衛生法」の他、「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」、「健康増進法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等により成分規格や製造方法、商品表示方法等について法規制を受けております。飼料・種苗は、「飼料安全法」、「種苗法」、「農薬取締法」、「家畜伝染病予防法」等の法規制を受けております。

仮に製造工程等におけるトラブルや表示の不備等による規制の抵触が発生した場合には、製品の廃棄・回収コストの発生や社会的な信用力の低下により当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針①]

当社グループは、「雪印メグミルクグループ 企業行動憲章」のもと、「グループサステナビリティ方針」等のグループ方針に基づき、各社行動基準、関連諸規定を定め、法令を遵守し、製造工程管理や品質管理、適正表示等に努めています。

 

[リスク②]

法令の改正がなされた場合には、これまでの成分規格や製造方法等が認められなくなる可能性があります。新しい成分規格や製造方法等に対応するためのコストが発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針②]

法令改正への対応は、適切に行うとともに、生産性向上などコスト吸収に取り組んでいます。各省庁をはじめとした行政機関等で情報更新などの発表がある場合には、速やかに従業員へ周知し、正確な情報提供に努めていきます。

 

[リスク③]

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」により、自動車を運転する業務に従事する者一人当たりの労働時間が減り、走行距離が短くなります。慢性的な人材不足の目立つ運送・物流業では、長距離輸送の人材確保がさらに困難となり、コスト増や配送能力の低下による売上機会の損失につながる可能性があります。

[対処方針③]

当社グループは、運送効率化に向けた輸配送コースの見直しやパレット輸送化の推進などにより、物流事業者と協力し効率的な輸配送ができる仕組みや、トラックドライバーの労働環境を整え、持続可能な物流体制構築に努めております。

(8)個人情報保護について

[リスク]

予期せぬ事態により個人情報の流出などが発生した場合には、社会的信用の低下などにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、グループ各社が保有する個人情報の保護・管理について、「個人情報保護方針」および関連諸規定を定めるとともに、従業員教育などを通じ、厳正な管理に努めております。

 

(9)知的財産について

[リスク]

当社グループは、研究開発を始めその事業活動において、当社グループが保有している、または使用許諾を受けている種々の知的財産を活用しております。当社グループが第三者の知的財産権を侵害しているとの予期せぬ警告や訴えを受ける恐れ、および第三者に当社保有の知的財産権を無断で使用される恐れがあります。その場合、第三者との交渉・訴訟活動等やその結果が当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、第三者の知的財産権を尊重し、関連諸規定を定め遵守することにより、第三者の知的財産権を侵害することのないよう努めるとともに、確認を行なっております。また、当社グループの保有する知的財産については、適切に管理する体制を整え、第三者による知的財産権の侵害リスクのモニタリングを行なっております。当社グループまたは第三者の知的財産権にかかるリスクが顕在化した場合には、必要に応じて社外の弁護士などと協力し、事業への影響を最小限に留めるように対応します。

 

(10)人権に関するリスクについて

「第2 事業の状況 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人権尊重の取組み」を参照ください。

(11)大規模な地震・火災等の発生および感染症の流行について

[リスク①]

地震・火災・風水害により、生産事業拠点の長期間操業停止等、当社グループのサプライチェーンに深刻な影響を及ぼす事態に陥った場合は、経営や事業活動に深刻な損失を被る可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、災害に備えて事業継続計画(BCP)を整備するとともに継続的な訓練を重ね、災害発生時には計画に基づき事業継続に努めます。

また感染症流行に備えて、社会一般に流行の兆しが現れた段階で、従業員に感染予防に向けた衛生管理の徹底を周知し、事業継続に努めます。

[リスク②]

当社グループの事業所内で感染症が拡大した場合には、事業活動に必要な要員確保に支障が生じ、事業所の閉鎖や事業の縮小等、経営や事業活動に深刻な損失を被る可能性があります。

 

(12)環境に関するリスクについて

「第2 事業の状況 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応」を参照ください。

 

 

(13)資金調達について

[リスク]

当社グループは、金融機関からの借り入れ、社債発行による資金調達を行なっておりますが、金融市場環境に変化があった場合に、資金調達に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、長期と短期のバランスを勘案しながら、低コストかつ安定的に資金を確保するよう努めております。また、現預金残高に加え、金融機関とコミットメントライン契約および当座貸越契約を締結するなど、十分な資金の流動性を確保しています。

 

(14)為替レートの変動について

[リスク]

当社グループは、一部の原材料および商品を海外から調達していることから、為替レートの変動の影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円安は当社グループに悪影響を及ぼし、円高は当社グループに好影響をもたらします。

 

[対処方針]

当社グループは、為替予約や外貨決済により、為替レートの変動の影響を低減するように努めています。

 

(15)情報システムについて

[リスク]

当社グループでは、原材料の発注、製品の製造、商品の受注、経理処理等、事業全般にわたり情報システムを活用しております。停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等予想の範囲を超えた出来事により、情報システムの停止または一時的な混乱、内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合には、事業の一時的な停止や社会的信用の失墜等により当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、情報システムを適切に運営するため、「情報セキュリティ基本方針」および関連諸規定を定めた上で、事業継続計画(BCP)を策定し、適切なセキュリティ対策を実施しております。また、従業員教育を行ない、リスクの軽減に努めています。

 

(16)人材に関するリスクについて

「第2 事業の状況 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)人的資本、多様性」を参照ください。

(17)その他のリスク

[リスク]

上記以外にも事業活動を行なううえで、経済情勢の変化に伴うリスクやコンプライアンスに関するリスクなど、様々なリスクが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

[対処方針]

当社グループは、こうしたリスクを回避、またはその影響を最小限に抑えるため、リスク管理体制の強化に取り組んでいます。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
 なお、2025年3月末では、子会社35社および関連会社15社となっております。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

〈連結経営成績〉

 

2024年3月

2025年3月

増減率(%)

売上高(百万円)

605,424

615,819

1.7

営業利益(百万円)

18,460

19,125

3.6

経常利益(百万円)

19,888

20,262

1.9

税金等調整前当期純利益(百万円)

27,884

18,516

△33.6

親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

19,430

13,904

△28.4

1株当たり当期純利益(円)

287.67

205.93

△28.4

 

 

〈セグメント別概況〉

 

売上高(注)1

営業利益又は営業損失

2024年3月

(百万円)

2025年3月

(百万円)

増減率

(%)

2024年3月

(百万円)

2025年3月

(百万円)

増減率

(%)

乳製品

259,228

263,324

1.6

9,890

10,405

5.2

飲料・デザート類

256,064

264,326

3.2

5,662

5,653

△0.2

飼料・種苗

50,831

48,485

△4.6

296

363

22.9

その他 (注)2

39,300

39,683

1.0

2,654

2,676

0.9

合計

605,424

615,819

1.7

18,503

19,099

3.2

調整額

△42

25

全社連結合計

605,424

615,819

1.7

18,460

19,125

3.6

 

(注) 1.報告セグメントの売上高は、主に「商品または製品の販売に係る収益」によるものです。

   2.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、共同配送センター事業および不動産賃貸事業等が含まれております。売上高は、主に「配送サービスに係る収益」によるものです。

 

当連結会計年度の財政状態は次のとおりです。                     (単位:百万円)

区分

2024年

3月期末

2025年

3月期末

増減金額

主な増減理由

資 産

431,222

431,073

△149

現金及び預金△7,627

受取手形及び売掛金△6,555

棚卸資産+5,614

退職給付に係る資産+3,164

投資有価証券+3,043

ソフトウェア+2,538

負 債

195,921

183,035

△12,886

未払法人税等△6,852

借入金△2,666

支払手形及び買掛金△2,847

純資産

235,300

248,037

12,736

利益剰余金+8,468

退職給付に係る調整累計額+2,892

その他有価証券評価差額金+1,457

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

(単位:百万円)

区分

2024年

3月期

2025年

3月期

増減金額

主な増減理由

営業活動による

キャッシュ・フロー

30,465

21,100

△9,365

(減少要因)

法人税等の支払額の増加9,499

投資活動による

キャッシュ・フロー

△6,308

△18,512

△12,203

(減少要因)

投資有価証券の売却による収入の減少11,586

敷金及び保証金の差入による支出の増加1,304

財務活動による

キャッシュ・フロー

△15,645

△10,375

5,270

(増加要因)

借入金の返済による支出の減少6,770

(減少要因)

配当金の支払額の増加1,342

現金及び現金同等物の

期末残高

28,988

21,319

△7,668

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

乳製品

208,708

106.2

飲料・デザート類

215,318

103.6

飼料・種苗

39,304

96.5

合計

463,331

104.1

 

(注) 1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

イ.受注実績

当社グループ(当社および連結子会社)は一部受注生産を行なっておりますが、金額に重要性がないため、記載を省略しております。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

乳製品

263,324

101.6

飲料・デザート類

264,326

103.2

飼料・種苗

48,485

95.4

    報告セグメント計

576,135

101.8

その他

39,683

101.0

 合計

615,819

101.7

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

   2.前連結会計年度および当連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

  至  2024年3月31日)

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

  至  2025年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

㈱セブン-イレブン・ジャパン

154,548

25.5

152,485

24.8

㈱日本アクセス

117,814

19.5

122,230

19.8

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当期のわが国経済は、雇用・所得環境が改善する状況下で、各種政策の効果もあって、 緩やかに回復しており、今後も続くことが期待されます。先行きについては、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっていることに加え、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要があります。

 食品業界においては、外食需要がインバウンド需要の増加等も受けて、回復傾向にあります。一方で、世界的な原材料価格や物流コストの上昇により、厳しい経営環境が継続しています。また、賃上げ等による所得の伸びがみられるものの、食料品等身近な物価の上昇もあり、消費マインドの改善は足踏みの状況です。

 

このような環境下、当社グループは「新たな成長のタネづくり」、「基盤活用による物量の拡大」、「国内酪農生産基盤の強化・支援」に向けた取組みを事業戦略の3つの柱とする中計2025を2023年度よりスタートいたしました。

その2年目となる2024年度は、「雪印メグミルクグループ経営方針2024」におけるテーマを「MOVE」とし、(1)新たな成長のタネづくり、(2)基盤活用による物量の拡大、(3)国内酪農生産基盤の強化・支援、(4)基盤戦略の推進、(5)サステナビリティ課題への取組みを重要取組み事項と位置付け、積極的な取組みを進めております。

 

当連結会計年度の業績(セグメントを含む)は次のとおりです。なお、売上高につきましては、外部顧客に対する金額を記載しております。

当社グループの連結売上高は615,819百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益19,125百万円(前年同期比3.6%増)、経常利益20,262百万円(前年同期比1.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、13,904百万円(前年同期比28.4%減)となりました。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 

〈乳製品〉


当セグメントには、乳製品(チーズ、バター、粉乳等)、油脂、ニュートリション事業(機能性食品、粉ミルク等)等の製造・販売が含まれております。

売上高は263,324百万円(前年同期比1.6%増)、営業利益は10,405百万円(前年同期比5.2%増)となりました。

 

(売上高の状況)

バターは、プロモーション活動により市場を上回る需要を獲得し好調に推移しました。

油脂は、増量キャンペーンやブランドプロモーションの推進等により、前年を上回りました。

チーズは、主力の「さけるチーズ」や「6Pチーズ」で各種プロモーション活動を展開した他、発売70周年を迎えた「6Pチーズ」の新商品「6Pチーズ酪農大地の恵み」の発売もあり、チーズ全体でも前年を上回りました。

 

機能性食品は、モール型ECサイトでのマーケティング活動等により堅調に推移しました。海外市場の機能性素材の販売が伸長したものの、粉ミルク等が減収となりました。その結果、ニュートリション事業全体では前年を下回りました。

(営業利益の状況)

各種プロモーション活動の推進等による売上高の増加により、前年を上回りました。

 

〈飲料・デザート類〉


当セグメントには、飲料(牛乳類、果汁飲料等)、ヨーグルト、デザートの製造・販売が含まれております。

売上高は264,326百万円(前年同期比3.2%増)、営業利益は5,653百万円(前年同期比0.2%減)となりました。

 

(売上高の状況)

飲料は、機能性表示食品の「MBPドリンク」シリーズ、大容量タイプの「毎日骨太MBP」、「すっきりCa鉄」、中容量タイプの「雪印コーヒー500ml」、小容量タイプの「DoleLL200ml」等が好調に推移しました。その結果、飲料全体では前年を上回りました。

ヨーグルトは、「牧場の朝ヨーグルト」や「ナチュレ恵megumi」等のファミリーユース商品が好調に推移しました。「恵megumiガセリ菌SP株ヨーグルト」シリーズなどの機能付加商品のプロモーション活動の強化等により、ヨーグルト全体では前年を上回りました。

デザートは、主力の「CREAM SWEETS」シリーズや、「アジア茶房」シリーズ等が好調に推移し、前年を上回りました。

(営業利益の状況)

各種プロモーション活動を推進したものの、固定経費の負担増などにより、前年並みで推移しました。

 

〈飼料・種苗〉


当セグメントには、牛用飼料、牧草・飼料作物種子、野菜種子の製造・販売、造園事業が含まれております。

売上高は48,485百万円(前年同期比4.6%減)、営業利益は363百万円(前年同期比22.9%増)となりました。

 

(売上高の状況)

配合飼料の販売単価下落による減収が主な要因となり、当セグメント全体で前年を下回りました。

(営業利益の状況)

売上高は減少したものの、コストダウンの取組み等により前年並みとなりました。

 

〈その他〉

当セグメントには、共同配送センター事業、不動産賃貸事業等が含まれております。

売上高は39,683百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益は2,676百万円(前年同期比0.9%増)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

キャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりです。

 

キャッシュ・フロー関連指標の推移

決算年月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

自己資本比率(%)

51.9

53.8

56.8

時価ベースの自己資本比率(%)

29.0

42.7

40.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

2.6

1.9

2.6

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

77.4

82.6

57.1

 

※自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利息の支払額

 

(注) 1.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3.キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている負債を対象としております。

 

〈資金需要の動向〉

当社グループの主な資金需要は、中計2025に掲げる「強靭性の獲得」に向けた「既存事業への基盤・成長投資」、「未来価値創造投資」であります。

 

〈資金調達の方法〉

当社グループは、運転資金、投資資金についてはまず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分については金融機関からの借入、社債の発行および資産売却等により資金調達を実施していきます。外部からの資金調達につきましては、D/Eレシオ0.5以下を目処として長期と短期のバランスを勘案しながら、低コストかつ安定的に資金を確保するよう努めていきます。

なお、当連結会計年度において、中計2025のキャッシュアロケーションに基づき政策保有株式などの資産売却を行い、「既存事業への基盤・成長投資」、「未来価値創造投資」に充当いたしました。

資金の流動性につきましては、現預金に加え、金融機関とコミットメントライン契約および当座貸越契約を締結し、十分な資金を確保しています。また、グループ各社における資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を含むグループファイナンス制度を導入しています。

 

③ 目標とする経営指標の達成状況等

詳細は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 未来ビジョン2050・Next Design 2030の策定-② Next Design 2030-ア.経営環境認識と「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」の振り返りをご参照ください。

 

 ④ 中計2025の実績報告

当社グループは2023年5月に中計2025を策定いたしました。目標とする経営指標に対し、2年目となる当年度の達成状況は以下のとおりです。

売上高は6,158億円、営業利益は191億円となりました。財務面では、自己資本比率が50%以上を安定的に維持しました。配当性向の水準は、30%以上から40%以上へと引き上げ株主還元の拡充を図りました。資産売却を除く調整後ROEは5.4%でした。

※詳細は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 未来ビジョン2050・Next Design 2030の策定-② Next Design 2030-ア.経営環境認識と「雪印メグミルクグループ 中期経営計画2025」の振り返りをご参照ください。

 

⑤ 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。

連結財務諸表を作成する際には、一部について見積りや仮定を用いることが必要になりますが、これらは期末日における資産・負債の金額および開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。見積りや仮定を行なう場合は、その時点で入手できる事実に基づき、可能な限り客観的に実施することを目指しておりますが、実際の結果とは異なる場合もあります。

重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

 (1)研究の目的

当社グループ(当社および連結子会社)の研究開発部門では、「食の持続性」の実現に向けて、既存の事業戦略上急務となっている課題に対する研究開発や、中長期的成長の基盤となる基礎研究を幅広く実施しております。

また、新規事業創出につながる新たな価値や技術を創造し、グループの持続的発展と事業の戦略的拡大を目指しております。中期経営計画2025においては、6つの戦略課題実現に向けて、基礎研究とそれによる商品への具現化を進めてまいりました。

引き続き、NextDesign 2030においては、機動的な研究・商品開発テーマの運用や知財の戦略的活用を通じて新たな価値や技術を創造し、グループの持続的発展と各事業部の戦略的拡大に貢献してまいります。

 

(2)研究開発体制

当社グループの研究開発部門は、当社、雪印種苗㈱および雪印ビーンスターク㈱に設置されています。

そのうち、当社の研究開発体制は、おいしさ向上や健康寿命延伸などに繋がる乳の研究や環境負荷低減に関する研究を行う「ミルクサイエンス研究所」、乳食品や市乳の新商品開発や既存商品の改良を行う「商品開発部」、そして事業戦略に基づき研究開発・知財戦略を策定・推進する「研究開発部」が相互に連携することで、新たな需要の創出、高付加価値化、商品力の強化を実現させています。


 

(3)研究開発費

 当連結会計年度の研究開発費の総額は4,983百万円です。

 各セグメント別の主な研究開発活動は次のとおりです。

乳製品:当連結会計年度の研究開発費の総額は2,089百万円です。

飲料・デザート類:当連結会計年度の研究開発費の総額は1,946百万円です。

 飼料・種苗:当連結会計年度の研究開発費の総額は947百万円です。

 

(4)研究開発成果

主な研究開発活動とセグメントおよび6つの戦略課題との関係性は以下の通りとなります。

●中期経営計画2025の6つの戦略課題における研究開発成果

 

セグメント

6つの戦略課題

乳食品

・ニュートリション

飲料・デザート

飼料

・種苗

プラントベースフードへの参入

●当社

・これまで当社が「乳」で培ってきた知見を活かし、プラントベースフード市場の新たな領域への新商品として「Plant Label えんどう豆由来のおつまみ」、「米粉由来のもちもち食感シュレッド」を新発売しました。

●当社

・「ナチュレ恵 megumi 植物生まれ」では、おいしさを向上させ、リニューアル発売しました。
・飲料では、より手に取りやすいフレーバー品として「Plant Label えんどう豆生まれ コーヒー」を新発売しました。

●-

●当社

・これまで培ってきた「乳」の知見と機能を活かした商品開発を進めています。

●-

 

 

 

 

セグメント

6つの戦略課題

乳食品

・ニュートリション

飲料・デザート

飼料

・種苗

機能付加商品の育成

●当社

・2023年度、「ガセリ菌SP株」の腸内環境改善効果を確認し、2024年度は従来の肥満気味の方の内臓脂肪を減らす機能に加えて、腸内環境を改善する機能を付加した機能性表示食品として「ガセリ菌SP株ヨーグルト」シリーズ、「ガセリ菌SP株カプセル」を発売しました。

 

● ―

●当社

・2017年度より実施していた名古屋大学との産学共同研究講座の成果であるBifidobacterium adolescentis SBT2786が、ヒトにおいて睡眠改善効果を有することを確認しました。今後の商品化に向けて取り組んでいます。

 

● ―

● ―

●当社

・野菜飲料に新たな価値を訴求するため「おなかの調子を整える」、「食事に含まれるカルシウム・鉄・マグネシウムの吸収を促進する」機能が報告されたマルトビオン酸を使用した商品を新たに発売しました。

 

● ―

●当社

・機能素材・乳酸菌等について、新たな価値訴求を目指した研究開発を実施中です。

 

● ―

海外展開の強化

●当社

・グローバル戦略を加速するため、機能素材や乳酸菌等のヘルスクレームの取得等に継続して取り組んでいます。

 

● ―

● ―

チーズの

徹底拡大

●当社

・2023年から展開している「torochi」シリーズに、原料や風味のバランスにこだわって開発した「torochi モスバーガー監修 チーズソース」を新たに発売しました。

 

● ―

● ―

●当社

・北海道生乳を有効活用したチーズ展開を目指し、製造技術開発や商品開発を推進しています。

 

● ―

● ―

白物拡大を前提とする市乳事業の成長

● ―

●当社

・弘前大学との共同研究講座「ミルク栄養学研究講座」による新たな価値創出を目指し、牛乳・乳製品の摂取と健康状態への影響を調査し、骨代謝や骨強度は日常的な牛乳・乳製品摂取と関連すること、乳製品を多く摂取する人は収縮期血圧が低いことを示しました。
・当社独自の情報発信サイト「骨太な未来プロジェクト」に学術データを掲載し、情報発信や新たな価値提案に繋げています。

 

● ―

● ―

●当社

・牛乳の価値向上のため、UHT牛乳の風味特性の可視化や牛乳の香りによる脳機能の安定化に関する研究、学会発表を行いました。可視化した風味特性は、「雪印メグミルクおいしい牛乳」のパッケージに「おいしさカーブ」として掲載し、お客様に商品の魅力を伝えています。

 

● ―

 

 

 

 

セグメント

6つの戦略課題

乳食品

・ニュートリション

飲料

・デザート

飼料・種苗

自給飼料需要

拡大の取組

● ―

● ―

●雪印種苗

<牧草>

・雪印種苗(株)と農業・食品産業技術総合研究機構とで共同開発した高栄養オーチャードグラス品種「わせじまん」「えさじまん」「きたじまん」に関し、「寒地・寒冷地向きオーチャードグラス高WSC(水溶性炭水化物)含量品種の育成」として日本草地学会賞を受賞しました。

・フェストロリウムは越冬性に優れる草種であるメドウフェスクと飼料品質に優れる草種であるペレニアルライグラスとの属間雑種ですが、雪印種苗(株)が農業・食品産業技術総合研究機構、北海道立総合研究機構と共同開発した品種「ノースフェスト」は双方の優れた特性を併せ持ち、さらに放牧適性も備えており、「北海道農作物優良品種」の認定も受けています。この種子販売を2024年4月に開始しました。

 

<自給可能植物を利用したメタン抑制技術開発>

・持続可能な酪農を確立する上でウシの曖気(げっぷ)中のメタン発生を抑制することが求められています。雪印種苗(株)はソラマメ属のヘアリーベッチとコモンベッチの水溶性成分が牛のゲップからのメタン発生を抑制することを発見し、北海道畜産草地学会で発表しました。ただし、生草そのものには毒性があるため、今後は有効性を高めつつ毒性を低減した飼料添加物に加工する方法を開発していきます。
 

<高消化性トウモロコシ>

・ウシ第一胃中でのトウモロコシサイレージの消化性を調べた結果、雪印種苗(株)の品種「LG31295」が優れていることを明らかにしました。

 

 

 

 

 

セグメント

6つの

戦略課題

乳食品・ニュートリション

飲料・デザート

飼料・種苗

その他

●当社

・オープンイノベーションを活用した研究開発の取り組みを行っております。

 ◇弘前大学との共同研究講座「ミルク栄養学研究講座」を通し、「岩

木健康増進プロジェクト健診」のビッグデータの活用や参画企業と

の共創により、乳製品の新たな価値創造を行っています。

 ◇バッカス・バイオイノベーションに出資し、腸内細菌叢モデル技術

や統合型バイオファウンドリ技術を活用し、バイオテクノロジー分

野における研究開発を加速し、当社が保有する乳酸菌等の価値の向

上とともに新たな価値の創造に取り組んでいます。

 ◇NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業において、食品

企業および団体と京都大学、九州大学と連携したコンソーシアムに

て「食のAIシステム」に関する取り組みを開始しています。

期待する食品の品質(物性・風味など)を得るための配合、加工条

件を予測AI技術により最適化することを目指して取り組んでまいり

ます。

 

●雪印種苗

<ポットカーネーション>

農業・食品産業技術総合研究機構との共同開発品種「ひなあられ」がジャパンフラワーセレクション(ジャパンフラワーセレクション実行協議会)にて芳香がうるわしく、香りのデザインが優れた品種に授与される「フレグランス賞」を受賞しました。

 

<スイートコーン>

近年の地球温暖化に伴う気候変動の中でも耐倒伏性・収量性が高く、加工適性にも優れた品種「SBS104」を発売しました。

●当社

・原子間力顕微鏡を用いてバターの組織構造を維持したまま直接観察できる方法を世界で初めて開発しました。今後、バターの付加価値向上に繋げることを目指します。
・オープンイノベーションを活用した研究開発の取り組みにより、ラマンイメージングと機械学習でマーガリンの品質や乳化状態を化学的な定量性に基づき評価する解析技術を開発しました。

 

●雪印ビーンスターク

<第3回全国母乳調査>
・母乳の主要成分(たんぱく質、脂質、炭水化物、エネルギー)について、統計解析により、母親や児の健康状態や栄養摂取などの背景因子が影響していることを見出し、新生児栄養フォーラムにて、発表しました。

・母乳中の糖鎖と児の感染症とアレルギーとの関連について、日本糖質学会、ビフィズス菌研究会にて発表しました。

<つわり対策サプリ「つわびー」リニューアル>
・通販(ポスト便)でお求めやすいように、容器包装を箱タイプからパウチタイプへ変更しました。10日分から30日分への入数を増量し、包材使用量と1日単価を削減しました。丸型の錠剤からハート型を開発し、情緒的な付加価値を追加しました。
<マムシリーズの試供品フィルム統一>
・マムシリーズ3品で個別に作成していた試供品のフィルムを工場での印字で品名を識別し、統一デザインとし、改版時の廃棄量を削減しました。

 

●当社

・石油由来プラスチック削減容器の開発に向けた研究開発を継続して実施しております。2025年3月から「ナチュレ 恵 megumi」「牧場の朝ヨーグルト」「恵 megumi ビフィズス菌SP株ヨーグルト」の3ブランドに、バイオマスプラスチック配合容器を順次導入しております。

 

 

各研究開発成果の補足事項は次のとおりです。

●当社

〈乳製品〉

当社は2024年3月に、新ブランド「Plant Label」を立ち上げ、プラントベースフード市場へ本格的に参入しました。当社のこれまで「乳」で培ってきた幅広い知見や機能を活かし、低脂質でたんぱく質や食物繊維が豊富な「えんどう豆」由来の原料を使用した「Plant Label えんどう豆由来のおつまみ」を新たに発売し、プラントベースフード市場の新たな領域に展開を開始しました。

さらに、加熱するともちもちした食感が楽しめる「米粉由来のもちもち食感シュレッド」を発売しました。この商品は、チーズ開発の知見を活かして風味を調整し、料理に適したチーズの風味に仕上げています。また、子会社であるヨシダコーポレーションと連携することで、シナジー効果を発揮し、新商品開発を進めています。これにより、新しい商品を通じて、日々の食事をより楽しいものにしていきます。

手軽にかけるだけで、チーズの新しい食習慣や食文化の創出を目指す「torochi」シリーズは、2023年に発売されました。このシリーズに新しく、「torochi モスバーガー監修 チーズソース」が加わりました。この商品は、見た目の楽しさに加え、86%の北海道産ゴーダチーズを使用しています。濃厚なチーズ感がありながら、ハンバーグとよく合い、肉の脂っこさを軽減する酸味のバランスにもこだわって仕上げています。

今後も当社は、消費者の健康ニーズおよび環境負荷軽減への対応を進め、新しい価値を提供し続けることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

主な研究成果は以下の通りです。

・バターの物性に関わる組織の微細構造を維持したまま直接観察できる世界初の観察方法について発表いた しました。バターの組織(固体脂ネットワーク)を分析することは、バターの品質を予測する上で重要です。今回、原子間力顕微鏡を用いることで、乳脂肪の微細結晶が凝集した構造を直接観察できることが分かりました。今後、バターの品質の安定化や風味や機能性のさらなる向上、製菓・製パン用途を始め、調理方法や用途に適した商品の開発に役立てることが期待されます。

・産業技術総合研究所、大阪大学との共同研究で、ラマンイメージングと機械学習でマーガリンの品質や乳化状態を化学的な定量性に基づき評価する解析技術を開発し、発表いたしました。今回開発した解析手法は、マーガリンの口どけなどの制御だけでなく、品質管理、商品改良などを行う際の実用的な品質評価技術として利用することが期待されます。また、マーガリンのみならず、一般に液体成分が多く含まれる食品の検査や、製薬やその他の分野でも強力なツールになると考えられます。

これら研究成果は、日本酪農科学会の酪農科学シンポジウム2024で発表、論文としてFood Chemistryに掲載されました。

 

〈飲料・デザート類〉

ヨーグルトカテゴリーでは、2024年10月に、当社の独自乳酸菌である「ガセリ菌SP株」の機能として、従来の「肥満気味の方の内臓脂肪を低減する機能」に「腸内環境を改善する機能」をプラスし、「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」シリーズをリニューアル発売しました。これまでご愛顧いただいているお客様にさらに満足いただける機能を訴求することで、より選ばれる商品に進化しました。

2025年3月、「ナチュレ 恵 megumi 植物生まれ」は、えんどう豆のクセのある風味を抑え、食感をなめらかにすることでおいしさを向上させ、リニューアル発売をしました。また、「2つの菌を、毎日のおなかに。」をパッケージ上部に配置、「ガセリ菌SP株」「ビフィズス菌SP株」のアイコンも大きく配置して、2つの菌が配合されていることがより視覚的に伝わるようにデザインを変更しました。「Plant Label えんどう豆生まれ オリジナル」は、苦み渋みを低減し、よりコクが感じられる風味に改良しました。商品名とパッケージデザインは、素材や商品特長が伝わるように刷新しました。

また、今回のリニューアルにあわせて、手に取りやすいフレーバー品「Plant Label えんどう豆生まれ コーヒー」を新発売しました。これまで培ってきた「乳」の知見と機能を活かし、植物性商品の展開を進めることで、食の持続性に取り組んでまいります。

牛乳カテゴリーでは、ブランドを刷新した「雪印メグミルクおいしい牛乳」を発売。関東エリアでは少人数世帯の増加に対応した新容器750mlを関東で発売しました。パッケージには、「おいしさカーブ」を掲載し、おいしさの理由が視覚的に伝わるようにしました。

その他の飲料カテゴリーにおいては、「農協 野菜Days 野菜1日分 腸得Life」は、「おなかの調子を整える」、「食事に含まれるカルシウム・鉄・マグネシウムの吸収を促進する」機能が報告されたマルトビオン酸を配合した機能性表示食品として上市しました。野菜飲料に機能を求める人をターゲットに、野菜飲料に新たな価値を提案しました。

飲料・デザート類事業における「おいしさ」、「健康機能」に関する研究では、当社独自のプロバイオティクス乳酸菌や乳素材の機能性の深耕や、乳の持つ可能性を明らかにすることを目的に検討を行い、得られた研究成果(新知見、新技術、新手法など)を「ヨーグルト」、「牛乳、乳飲料」などの商品開発に応用できるよう、研究を続けております。

主な研究成果は以下の通りです。

・弘前大学と当社との共同研究講座「ミルク栄養学研究講座」において、健康ビッグデータである「岩木健康増進プロジェクト健診」を用いた解析研究に着手しました。牛乳・乳製品摂取量と骨代謝マーカーおよび音響的骨評価値に関して研究した結果、日常的な牛乳・乳製品摂取は、骨の健康状態を示す骨代謝マーカーや骨強度値と関連し、骨の健康に必要な栄養補給に寄与することが示唆され、この成果を論文発表しました。また、乳製品摂取と血圧に関して研究した結果、牛乳・乳製品を多く摂取する人は収縮期血圧が低いことが示され、この成果を論文発表しました。

・当社独自のビフィズス菌Bifidobacterium adolescentis SBT2786について、日常生活で睡眠に不満を持つ人、特にストレス状態の高い人の睡眠状態を改善するとともに、ネガティブな気持ちを改善することを臨床試験で明らかにしました。この研究は、2017年に名古屋大学と設立した産学共同講座で進めていたモデル生物を用いた研究で、モデル生物で選抜した菌をヒト試験においても有効性を示した成功例であり、食品の機能性研究の新たな可能性を示す結果になりました。

・牛乳の新たな価値を見出すため、超高温殺菌(UHT)牛乳を口に含んでから飲み込んだ後までの風味特徴(香り、甘みなど)について、時間経過毎に評価する官能評価手法を用いることにより風味を可視化しました。これにより味わいの特徴やその変化をより分かりやすくお客様に伝えることが可能になり、商品のパッケージへ活用しました。また、牛乳の香りが脳機能に与える影響を研究し、牛乳の香りには、脳の働きを安定化させる効果(鎮静効果)があることを見出しました。

これらの研究成果は、論文としてBone ReportやHypertension Research、Nutrientsに掲載され、日本農芸化学会にて発表しました。