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回次 |
第14期 |
第15期 |
第16期 |
第17期 |
第18期 |
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決算年月 |
平成25年6月 |
平成26年6月 |
平成27年6月 |
平成28年6月 |
平成29年6月 |
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事業収益 |
(千円) |
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経常損失(△) |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
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当期純損失(△) |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
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持分法を適用した場合の投資利益 |
(千円) |
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資本金 |
(千円) |
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発行済株式総数 |
(株) |
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純資産額 |
(千円) |
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総資産額 |
(千円) |
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1株当たり純資産額 |
(円) |
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1株当たり配当額 |
(円) |
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(うち1株当たり中間配当額) |
( |
( |
( |
( |
( |
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1株当たり当期純損失金額(△) |
(円) |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
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潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額 |
(円) |
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自己資本比率 |
(%) |
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自己資本利益率 |
(%) |
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株価収益率 |
(倍) |
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配当性向 |
(%) |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
△ |
△ |
△ |
△ |
△ |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
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△ |
△ |
△ |
△ |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
(千円) |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
(千円) |
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従業員数 |
(人) |
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(外、平均臨時雇用者数) |
( |
( |
( |
( |
( |
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(注)1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度にかかる主要な経営指標等の推移については記載しておりません。
2.事業収益には、消費税等は含まれておりません。
3.第14期、第15期、第16期、第17期、および第18期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。
4.第14期、第15期、第16期、第17期、および第18期の自己資本利益率については、当期純損失であるため記載しておりません。
5.第14期、第15期、第16期、第17期、および第18期の株価収益率については、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。
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年月 |
事項 |
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平成12年1月 |
細胞周期に関する研究成果をもとに、新規抗癌剤の研究開発を目的として愛知県豊田市に設立 |
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平成12年9月 |
薬剤スクリーニング法(*)およびオリジナルペプチドTAT-S216について特許出願 |
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平成13年1月 |
静岡県沼津市大岡の静岡県沼津工業技術センター付設インキュベーション施設内に研究所を開設 |
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平成14年3月 |
科学顧問会議(SAB)を組成 |
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平成14年4月 |
本社および研究所を静岡県沼津市通横町に移転 動物実験施設を静岡県沼津工業技術センター内に開設 |
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平成15年1月 |
オリジナルペプチドTAT-S216を最適化した抗癌剤候補化合物CBP501について特許出願 |
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平成15年6月 |
当社の薬剤スクリーニング法によって見出された抗癌剤候補低分子化合物CBS2400シリーズについて特許出願 |
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平成17年2月 |
米国食品医薬品局(FDA)よりCBP501の臨床第1相試験開始のためのIND申請を承認 |
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平成17年4月 |
米国特許庁および欧州特許庁より薬剤スクリーニング法にかかる特許を取得 |
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平成17年5月 |
CBP501の臨床第1相試験を米国で開始 |
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平成18年2月 |
米国特許庁よりCBP501にかかる特許を取得 |
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平成18年4月 |
米国特許庁よりCBS2400シリーズにかかる特許を取得 |
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平成18年10月 |
CBP501とシスプラチン(*)の併用による臨床第1相試験を米国で開始 |
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平成19年3月 |
CBP501とそのバックアップ化合物(*)について、武田薬品工業株式会社と共同事業化契約を締結 |
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平成20年4月 |
当社の薬剤スクリーニング法によって見出された抗癌剤候補低分子化合物CBS9100シリーズについて特許出願 |
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平成20年5月 |
CBP501、シスプラチン、ペメトレキセド(*)の3剤併用による臨床第1相試験を米国で開始 |
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平成20年11月 |
CBP501、シスプラチン、ペメトレキセドの3剤併用による臨床第2相試験(対象:悪性胸膜中皮腫(*))を米国で開始 |
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平成21年6月 |
CBP501、シスプラチン、ペメトレキセドの3剤併用による臨床第2相試験(対象:非小細胞肺癌(*))を米国で開始 |
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平成21年9月 |
東京証券取引所マザーズ市場に株式上場 |
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平成22年6月 |
CBP501とそのバックアップ化合物について締結していた武田薬品工業株式会社との共同事業化契約を解消 |
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平成22年9月 |
本社、研究所および動物実験施設を静岡県沼津市大手町に移転・集約 |
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平成23年12月 |
米国特許庁よりCBS9106にかかる特許を取得 |
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平成24年11月 |
CBP501、シスプラチン、ペメトレキセドの3剤併用臨床第2相試験(対象:悪性胸膜中皮腫)最終報告書受領 |
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平成25年7月 |
CBP501、シスプラチン、ペメトレキセドの3剤併用臨床第2相試験(対象:非小細胞肺癌)最終報告書受領 |
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平成26年12月 |
CBS9106について、Stemline Therapeutics, Inc. とライセンス契約を締結 |
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平成27年10月 |
米国特許庁よりCBP501にかかる用途特許を取得 欧州特許庁よりCBS9106にかかる特許を取得 |
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平成28年5月 |
CBS9106、臨床第1相試験(対象:固形癌(*))を米国で開始 |
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平成29年4月 |
FDAよりCBP501・シスプラチン・免疫チェックポイント阻害抗体の併用による臨床第1b相試験開始のためのIND承認を取得 |
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平成29年6月 |
新規免疫系抗癌剤創出を目指し富士フイルム株式会社と共同研究契約を締結 |
(注)*を付している専門用語については、「第一部 企業情報 第1 企業の概況」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
当社は、細胞周期に関する基礎研究の成果をもとに、正常細胞に影響が少ない抗癌剤の研究および開発を単一事業として行っている、創薬企業であります。なお、当社は、医薬品事業の単一セグメントであります。
(1) 基本戦略
当社は、癌細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なることに着目する独特の創薬アプローチを活かした抗癌剤の基礎研究および臨床開発に取り組む、創薬ベンチャー企業です。
特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ばれます)を基に実施することで技術とプロダクトの両方を自社で創出するのが「創薬企業」であり、創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののち製薬企業へ導出する企業とは大きく異なるビジネスモデルを志向しています。
この付加価値の高いビジネスモデルを完成させ、企業価値の最大化を図るための、当社の基本戦略は次のとおりです。
・当社独自の創薬アプローチを活かした研究開発に特化集中する。
・当社の細胞表現型薬剤スクリーニング法により創出・獲得した複数の医薬品候補化合物によって、開発パイプラインを構築する。
・抗癌剤の開発経験が豊富で当社の開発戦略に合致するCRO等の外部専門機関、科学顧問団を活用する。
・当社の権利を最大限確保するため、開発段階と当社の財務体力等に応じた適切な戦略提携を製薬企業等との間で行うことによって、価値連鎖(*)を補完・完結する。
当社は、上記の戦略を適切に実行することにより、医薬品候補化合物の開発を速やかに進め、いち早く上市して当社の企業価値を高めるとともに、当社の開発リスクを分散低減してまいりたいと考えております。
(2) 創薬事業
① 医薬品の一般的な研究開発プロセス
医薬品の研究開発プロセスは一般に、テーマに沿った化合物を探索し((a)探索研究)、獲得・創出された化合物をより最適なものに改良し((b)最適化)、動物での検証((c)前臨床試験(非臨床試験(*)))を実施した後、各国の医薬品許認可審査機関(日本の場合は厚生労働省、米国の場合はFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)など。以下「許認可当局」といいます。)に臨床試験開始を申請((d)IND申請)し、その監督下でヒトでの検証を行い((e)臨床試験)、許認可当局に対する申請((f)新薬承認申請、NDA申請)を経て医薬品としての承認取得に至り、その後上市・販売するというものであります。
この過程のうち、(a)探索研究から(e)臨床試験の初期段階に至る領域の活動は、「製薬」全般と区別し「創薬」(Drug Discovery)と一般に呼ばれており、当社は、主にこの領域の活動を担う「創薬」企業であります。

(a) 探索研究
新薬のもとになる候補化合物を探し出す研究を探索研究といいます。
一般にこの段階では、大量の化合物の中から目的の作用を持つものを探し出すための薬剤スクリーニング法によって、一定以上の活性を持つ化合物(一般に「ヒット化合物」と呼ばれます)を選別します。
(b) 最適化
探索研究で得られたヒット化合物をもとに、構造の一部を改変して異なる物理的・化学的特性を持つ複数の化合物を新規に合成し、スクリーニングによる選別と病態モデル動物(*)による実験を繰り返して、期待どおりの作用を示すひとつまたは少数の開発候補化合物(一般に「リード化合物」と呼ばれます)を獲得します。
(c) 前臨床試験(非臨床試験)
最適化が終了しその後の開発続行を決定した医薬品候補化合物について、動物実験でデータを収集し、許認可当局に対するIND申請の準備を行う段階です。
非臨床試験のうち、許認可当局へのIND申請に必要なデータを収集するために実施される試験については、特に「前臨床試験」と呼ばれます。臨床試験における医薬品候補化合物の投与量や投与期間を選択するために十分な信頼性のある情報を得る必要があることから、許認可当局の定めた基準に則って実施されます。
(d) IND(Investigational New Drug)申請
米国における臨床試験申請で使われる用語で、医薬品候補化合物についての情報をまとめた臨床試験実施申請資料を「新薬臨床試験開始届」としてFDAに提出し、臨床試験実施の承認を得るものです。
(e) 臨床試験
前臨床試験の結果、有効性および安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、臨床試験が実施されます。
臨床試験においては、個々の医薬品候補化合物について特徴を科学的に検討し、論理的で段階的な手続によって開発が進められます。
一般に臨床試験は、3つの「相」に分かれていると理解されています。第1相では、少人数(一般に10名から50名程度)のヒトに投与して、許容投与量などを確認します。続いて第2相では、中規模(50名から200名程度)の被験者に投与し、安全性とともに、医薬品候補化合物の有効性が評価されます。第3相では、多数(200名から1,000名、場合によってはそれ以上の人数)の被験者に投与し、第1相・第2相で得られた安全性や有効性に関するデータを確認・実証します。
(ⅰ) 第1相
第1相は、医薬品候補化合物を初めてヒトに投与することから開始されます。
通常、この相の試験は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者で実施されます。強い毒性を持つ可能性のある候補薬剤(たとえば抗癌剤)では、対象疾患を持つ被験者を対象として試験が実施されます。
第1相で実施される試験は、通常、次のうちひとつまたはその組合せの観点から行われます。
(ア) 初期の安全性・許容投与量の推測
第2相以降の臨床試験のために必要と想定される用量範囲の許容投与量を決定し、予測される副作用の性質を判断します。
(イ) 薬物動態試験(*)
医薬品候補化合物の吸収、分布、代謝、排泄に関する特徴を検出します。薬物動態試験は開発計画全体を通して行われます。
(ウ) 薬力学的な評価
薬力学試験(*)および血中濃度と反応に関する試験を行うことによって、医薬品候補化合物の有効性について初期的な推測が可能になる場合もあり、また、用法・用量の設定の参考にします。
(エ) 初期の薬効評価
薬効または予想される治療上の利益の予備的検討が、副次的な目的として第1相試験で行われることがあります。
(ⅱ) 第2相
第2相は、通常、対象疾患を持つ被験者における治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。
第1相試験よりも被験者数を増やし、その後に続けられる試験での用法・用量を決定し、設定される可能性のある評価項目や治療方法(他剤との併用を含む)等を検討・評価します。
(ⅲ) 第3相
第3相は、通常、治療上の利益を証明もしくは確認することを主目的とする試験を開始する段階です。
第2相試験よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、意図した適応疾患および対象患者群において医薬品候補化合物が安全かつ有効であるという第2相試験で蓄積された予備的な証拠をさらに検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とします。
(f) 新薬承認申請(New Drug Application)
新薬承認申請書類を作成し、許認可当局に提出します。この申請が承認されれば、対象の国や地域における販売が可能になります。
なお、医薬品の承認後に、承認された適応に関連する追加的な試験が行われることがあり、これを第4相試験と呼ぶことがあります。
② 当社の創薬事業の特色
当社の有する創薬アプローチならびに創薬基盤技術、これらに基づき実施している研究開発業務(「創薬事業」と総称されます)の特色は以下のとおりです。
(a) 当社の創薬アプローチについて
世界中の製薬企業やベンチャー企業、大学等の研究者開発者たちは、
「癌を特異的(*)に殺す方法」
すなわち
「正常細胞や正常組織に影響を与えず癌だけを殺す方法」
の開発実用化を目指し、それぞれの強み・特色を活かした研究開発に日々しのぎを削っています。
この実現のために、さまざまなコンセプトが生まれ、さまざまなアプローチで開発が進められてきました。
たとえば、癌にまつわる特徴的なシグナル伝達経路(*)上の分子をターゲットとするアプローチ(一般には「分子標的薬」と呼ばれます)や、癌細胞が提示する特徴的な抗原に反応する抗体によるアプローチは、「特定の癌細胞でだけ作用する(正常細胞には影響しない)薬剤」を創ろうとするコンセプトです。また他の例では、DDS(薬剤運搬システム)を用いるアプローチは、正常細胞に抗癌剤を触れさせないコンセプトです。
その中でキャンバスは、「大部分の癌細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なること」に着目する独特の創薬アプローチで、この研究開発競争に挑んでいます。
(b) 当社独自の細胞表現型薬剤スクリーニング法について
(ⅰ) 生細胞の挙動に着目したスクリーニング
生きた細胞で起きる現象の多くは、さまざまな分子群が複雑に絡み合ったシグナル伝達経路を介して現れ、また、そのシグナル伝達経路の多くは未解明です。
薬剤のスクリーニングでは多くの場合、最初のステップとして「ハイスループットスクリーニング(*)」(単一もしくは少数の特定標的分子(*)に対する化合物の活性を高速に分析する技術)を実施し、大量の候補化合物の中から「外れ」を早期にふるい落とす作業を実施します。これは一般に、分子標的型のアプローチと呼ばれます。
このアプローチは、標的とした分子の働きへの依存が大きい(バイパス経路の少ない)ケースでは、「癌を特異的に殺す」ための有効な手段です。しかしながら、標的分子が判明していないケースやシグナル伝達経路が複雑で標的分子を特定できないケースでは、分子標的型のアプローチは対応できません。
これに対し、当社のスクリーニング法は、特定の標的分子に対する活性ではなく、生きた細胞の挙動に着目したものです。
細胞内で働いている分子を取り出してスクリーニングする「ハイスループットスクリーニング」は採用せず、細胞の中で起きることはブラックボックスであると考え、生きている細胞の挙動(表現型)に答を訊く「細胞の表現型によるスクリーニング」を行っています。
細胞の挙動という最終アウトプットを基準とした当社独自の薬剤スクリーニング法は、標的分子があらかじめ特定されている必要がなく、シグナル伝達経路が複雑・未知でも対応が可能という特色を有しています。
当社は、未解明の部分の多い癌領域においてはこの薬剤スクリーニング法が効果的であると考えており、現在までに当社が保有している医薬品候補化合物パイプラインはいずれも、この薬剤スクリーニング法によって探索・創出されたものであります。
このスクリーニング法には、生細胞を用いるので自動化が難しく、そのためスループットを向上し難いという欠点があります。しかし、そのことが逆に、一般に高いスループットを追求する傾向にある他の製薬企業や創薬企業による模倣や追従に対する障壁となっています。
(ⅱ) 当社のスクリーニング法で獲得される化合物
当社のスクリーニングにおいては、未知のものも含むさまざまな作用メカニズムの、薬剤候補化合物がまず見出されます。
それらの共通点は、「正常細胞に影響が少なく癌細胞に作用する」化合物であることです。
当社は、この化合物(当社ではこれを「ヒット化合物」と呼んでいます)の最適化と作用メカニズム解析を行います。
(ア) 最適化
ヒット化合物の分子構造を少しずつ変化させ、初期スクリーニングで獲得した化合物をより最適なもの(抗癌活性の強いもの、癌特異的な作用の強いものなど)に改良する作業です。
(イ) 作用メカニズム解析
非臨床試験や臨床試験から得られたデータをもとに、その化合物が作用するしくみ(作用メカニズム)を解析する作業です。
作用メカニズムがわかっていることは必ずしも医薬品として開発するための必要条件ではありません。
しかしながら、作用メカニズムの解析は、
・最適化作業へのフィードバックができる
・前臨床試験や臨床試験の設計へのフィードバックができ、成功確率を上げることができる
・提携獲得活動での説得力が増す
などのメリットがあります。
当社では、自社動物実験施設を含む基礎研究チームが時宜に応じた機動的で柔軟な体制で、ヒット化合物や臨床試験ステージの化合物の作用メカニズム解析に臨んでいます。
また、この解析業務を通じて得られた知見は、その中の特定のメカニズムを強化した改良化合物の創出に繋がる場合があります。
(c) 開発パイプラインについて
当社は現在、CBP501およびCBS9106、ならびに次世代化合物群によって開発パイプラインを構築し、事業化を意識した優先順位づけと管理に基づき研究開発を進めています。
◆開発パイプライン
(ⅰ) CBP501 「カルモジュリン・モジュレーター」
CBP501は、当社独自のスクリーニングから獲得された抗癌剤候補化合物です。
米国FDAの規制下において、CBP501・シスプラチン・ペメトレキセドの3剤併用による悪性胸膜中皮腫を対象とする臨床第2相試験、同じ3剤併用による非小細胞肺癌(扁平上皮癌を除く)を対象とする臨床第2相試験の、2つの臨床第2相試験を終了しました。
このうち、非小細胞肺癌に対する臨床第2相試験の結果は、主要評価項目「無増悪生存期間」(PFS)は達成しなかったものの、被験者のうち投与前の白血球数の少ない群(n=96、投与群・対照群ほぼ同数)を抽出したサブグループ解析の結果、重要な副次的評価項目である「全生存期間」(OS)において、CBP501の顕著な効果が示唆されるものでした。
当初当社は、CBP501の抗癌活性を主に「G2チェックポイント阻害」によるものであると考えてきました。
その後、CBP501はG2チェックポイント阻害活性を示すよりも低い濃度で、併用するシスプラチンなどプラチナ系抗癌剤の細胞流入を癌細胞でのみ高めていることがわかり、それら両方の作用を示す理由を追求する中で、多様な細胞機能に関わる蛋白質カルモジュリンに作用していることがわかっていました。
臨床第2相試験データの獲得後、さらに詳細な解析と追加的研究を進めたその結果、上記のようなサブグループ解析結果が生じる原因を科学的に矛盾なく説明し得る仮説の樹立と、それを支持するデータの獲得に成功しました。すなわち、CBP501は、既に発見されていたカルモジュリンへの作用(カルモジュリンの制御機能を調整)を経由して、癌細胞に直接作用するのみならず、「癌微小環境」「癌免疫」「癌幹細胞」などに関わる広範な作用により抗癌活性を示す、独特の抗癌剤(カルモジュリンモジュレーター)であることが判明しています。
現在当社は、これらの知見を踏まえ、CBP501とシスプラチン・免疫チェックポイント阻害抗体の併用による新たな臨床試験(フェーズ1b試験)の準備を進めています。
(ⅱ) CBS9106 「可逆的XPO1阻害剤」
CBS9106は、当社独自のスクリーニングから得られたXPO1阻害剤です。
臨床試験開始に必要な前臨床試験を終え、平成26年12月、Stemline社と全世界(日本および中国・台湾・韓国を除く)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。
現在Stemline社は、米国FDAの規制下において、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)について固形癌を対象とする臨床第1相試験を実施しています。
この低分子化合物は、核外輸送因子XPO1(CRM1)を可逆的に阻害し、細胞周期停止およびアポトーシスを誘導します。動物実験までの段階では、多発性骨髄腫など幅広い癌細胞株に対して抗癌活性を有することが確認されています。
XPO1は、核外輸送シグナル(NES)を持つ輸送基質(蛋白質、mRNA-蛋白質複合体)を核から細胞質へ輸送する役割を担う蛋白質です。XPO1によって制御される輸送基質には癌関連因子(IκB、p53、FOXOs)が含まれており、XPO1阻害剤はこれらが核外へ輸送されるのを抑制し、抗癌活性を示すと考えられています。
一般的なXPO1阻害剤と比較したCBS9106の強みは、標的であるXPO1という蛋白質を分解に導く点です。
XPO1は大変安定的な蛋白質であり、通常の阻害剤の場合、それが作用したまま分解されず細胞内に存在し続けてしまいます。その場合、XPO1の作用が(本来あるべき作用も)失われたままになり、副作用の原因のひとつになるおそれがあります。
CBS9106は、この蛋白質を分解するので、細胞は新たに(阻害されていない)XPO1を作ることができます。(このことを「可逆的阻害」と呼んでいます)これによって、正常組織が回復できる投与方法の樹立を可能にし、XPO1阻害剤の作用と副作用の間の幅(セラピューティックインデックス)を拡げられる、すなわち、副作用の少ない抗癌剤となる可能性があると考えています。
(ⅲ) 次世代パイプラインの拡充
当社のような創薬企業にとって、新規の候補化合物を継続的に創出・獲得し、開発パイプラインを拡充するしくみ(以下ではこれを「創薬エンジン」と呼びます)の確保は、将来の継続的な成長のために必須のものであります。
当社では、
(ア) 正常細胞と癌細胞の細胞分裂過程の違いに着目した独自のスクリーニング
(イ) CBP501の新知見に基づく「次世代CBPプロジェクト」
の2つの創薬エンジンにより、将来の開発候補品となり得る新規化合物の探索創出を継続的に行っています。
これらを効果的に推進するため当社は、東京大学医学部附属病院、ファルマバレープロジェクト(静岡県産業振興財団、静岡県立大学)と、それぞれ共同研究実施しています。これらの取り組みから当社は現在、CBP-A、CBP-B、IDO/TDO阻害剤など複数の次世代パイプラインを有しています。
さらに当社は平成29年6月、新たな免疫系抗癌剤の創出を目指し、富士フイルム株式会社と共同研究契約を締結しました。
(d) 製薬企業との戦略提携について
医薬品の開発プロセスは、通常、長い期間と莫大な費用を必要とします。当社のような創薬企業が、基礎研究・臨床開発・製造・上市・販売および上市後のフォローアップなどを単独で行うことは困難であることから、製薬企業等との間で適切な提携関係を構築し、固定費の増加を回避しつつ将来の継続的な開発・承認・上市に至る体制の確保を図るのが一般的な戦略です。
創薬企業と製薬企業等とがこのような役割分担を行うようになった背景として、分子生物学を主体とした生命科学の発達により、従来とは異なり、個々の研究テーマに対する専門性の高い研究力が求められるようになったことが挙げられます。実際に米国などでは、有力な新薬の多くが創薬企業によって開発され、または創薬企業からのライセンス供与などの形で創薬企業と戦略提携した製薬企業等によって開発されており、この役割分担の形は世界的な標準となっていると言えます。
また、創薬企業と製薬企業等との戦略提携は、両者のリスク分担や利益配分などの考え方を反映し、特許等の排他的な実施権を供与する対価としてロイヤルティを得る形態(いわゆるライセンスアウト)のみならず、さまざまなバリエーションが存在します。
CBP501に関しては、当社は、平成19年3月に武田薬品工業株式会社との間でCBP501に関する共同事業化契約を締結し共同開発を進めておりましたが、平成22年6月に本契約を解消しております。その後、当社は、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌を対象とする海外での臨床第2相試験を当社単独で進めてきました。現在は、新規提携パートナーの早期獲得を目指しつつ、その確率を高めるための新たな臨床試験(フェーズ1b試験)の準備を進めています。
CBS9106については、平成26年12月、Stemline社と全世界(日本および中国・台湾・韓国を除く)における独占的権利を供与するライセンス契約を締結しました。現在同社は、CBS9106(同社における開発コード:SL-801)の臨床第1相試験を実施しています。
(e) 研究開発における外部機関との連携について
当社は、癌領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬エンジンを基に実施する創薬企業として、基礎研究から臨床開発・上市に至る各ステップにおいて、外部との提携関係(委受託関係を含みます)を活用しています。
基礎研究および最適化の段階においては、最適化の過程で必要となる新規候補化合物の合成業務を、この領域において経験豊富な企業に委託しています。また前述のとおり、東京大学医学部附属病院およびファルマバレープロジェクト(静岡県産業振興財団、静岡県立大学)、富士フイルム株式会社との共同研究を進めております。
臨床開発においては、抗癌剤の臨床開発に専門性を持つ大手CROとの緊密な提携関係を構築しています。
また、当社は、抗癌剤の臨床開発にかかる経験を豊富に持つなど当社の研究開発への貢献が期待できる科学者による科学顧問会議(以下「SAB」といいます)を組成しています。SABのチェアマンであるダニエル・D・ヴァンホフ教授は、全米癌学会会長・米国癌治療学会会長を歴任した著名な癌臨床研究者で、これまで20年以上にわたり多数の抗癌剤の臨床試験に携わっています。同氏を議長とするSABミーティングは、平成14年3月の発足以来、概ね年2回定期的に開催され、当社の研究開発全般に関する情報交換や議論を行っています。
該当事項はありません。
(1)提出会社の状況
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平成29年6月30日現在 |
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従業員数(人) |
平均年齢(才) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(千円) |
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10(1) |
43.5 |
10.4 |
6,410 |
(注)1.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数(人材派遣会社からの派遣社員を含みます)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。
2.平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
3.当社は医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(2)労働組合の状況
労働組合は結成されていませんが、労使関係は円満に推移しております。
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価値連鎖 |
製品が消費者に届くまでの付加価値を生み出す連続した価値創造プロセスのこと。 バリューチェーン。 創薬の価値連鎖、すなわち、創薬から製薬に至る領域の価値創造(事業化)プロセスにおいて、創薬企業は一般に、「化合物の発見と最適化」から「臨床早期開発」段階の事業活動を行い、新薬の製品化による製造販売を目的とする製薬企業へ技術または知的財産権を事業提携等の形で移転して、その対価を受領すると理解されている。 |
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薬剤スクリーニング法 |
スクリーニングとは一般に「ふるい分け」を意味し、多数の対象物の中から一定の条件に合致するものを選び出す作業をいう。 創薬の初期段階では、大量の化合物ライブラリ(対象となり得る化合物を一つずつ作って評価するのでは効率が悪いため、多種類の化合物からなるパッケージを予め準備しておき一斉に評価することが多い。そのためのパッケージを「ライブラリ」と呼ぶ。コンピューター上で構築される仮想分子構造の集合体「バーチャルライブラリ」の場合もある)を用いた候補化合物の初期スクリーニングから、見出された化合物の最適化に至るまで、多段階のスクリーニングが繰り返される。 スクリーニングに利用する技術や選別基準の設定などを総称して「スクリーニング法」という。この効率と精度が創薬活動の競争力の源泉のひとつとなるため、一般に、自社の目的に合致した薬剤スクリーニング法を有することは創薬企業にとって重要なポイントとされる。 |
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病態モデル動物 |
前臨床試験(非臨床試験)で候補化合物の薬効薬理作用を評価するためには、実験動物がヒトの病気と同様の状態になっている必要がある。このような動物を「病態モデル動物」という。抗癌剤の研究開発においては一般に、免疫不全マウスにヒト腫瘍片を移植して作製される。 |
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非臨床試験 |
ヒトを対象として実施される臨床試験にデータを提供する目的で、主に動物を対象として実施される試験の総称。 「前臨床試験」と総称されていたこともあるが、臨床試験開始後にも行われることから、現在は総称の場合には非臨床試験と呼ぶのが一般的である。 非臨床試験のうち、許認可当局へのIND申請に必要なデータを収集するために許認可当局の定めた基準に則って実施される試験について特に「前臨床試験」ということが多い。 |
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薬物動態試験(吸収/分布/代謝/排泄) |
薬物の生体内での挙動(薬物動態)を調べる試験。薬物動態は、薬物が消化管などから「吸収」され、さまざまな臓器・組織に「分布」し、肝臓などで「代謝」され、腎臓などから「排泄」される4つの段階に大別される。ヒトでは、おもに血中濃度の測定によってこれらの挙動を観察する。それぞれの英語表記の頭文字から「ADME」とも呼ばれる。 |
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薬力学試験 |
臓器や組織に分布して作用部位に到達した薬物がどのように機能して薬理作用を発現するかを調べる試験。 |
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DNA |
デオキシリボ核酸。遺伝情報をコード化して保持している生体高分子物質。ヒトでは約30億個の塩基対からなる。 DNAには、正常な状態でも1細胞につき1日あたり数万から数十万回の頻度で損傷が発生することが知られている。 損傷が修復されないと細胞の機能不全や癌化の原因となる。これを防ぐために細胞内には、損傷の検出・修復・修復不能時の細胞死誘導など、さまざまな機構が存在する。 |
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シグナル伝達経路 |
細胞内で酵素や蛋白質などの要素(分子群)が連鎖的に反応することにより情報信号が伝達・変換される経路を指す。パスウェイ、カスケードともいう。 |
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特異的 |
ある特定の対象のみに働き、他の対象に影響を及ぼさないこと。ここでは、化合物が特定の作用のみを有することを指す。
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スループット |
効率。 医薬品開発の領域では、高効率スクリーニングを指す「ハイスループットスクリーニング」の形で多く用いられる。 |
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標的分子 |
生体内の特定の分子の機能を抑えることで効果が期待できる場合、その特定の分子は創薬のターゲットとなり得ることから「標的分子」と呼ばれる。 分子標的薬剤開発(標的分子を予め定めて薬剤を創出しようとするもの)によって得られる薬剤に限らず、多くの薬剤には、作用メカニズムを探ると何らかの標的分子が存在する。 |
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バックアップ化合物 |
候補化合物の開発を中断または中止した場合のリスクを低減するために保有しておく化合物。開発中の候補化合物と類似した化合物を有するのが一般的であるが、求められる内容は候補化合物の状況によって異なる。 |
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固形癌 |
血液に発生する「血液癌」以外の、臓器・組織に発生する癌。 |
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悪性胸膜中皮腫 |
肺を包む「胸膜」の表面を覆っている「中皮」から発生する癌。 アスベスト(石綿)曝露により発生することが知られている。 治療には、外科療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗癌剤治療)および対症療法があり、外科療法で全病変を取りきることが困難な場合には、放射線療法や化学療法が行われる。 |
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非小細胞肺癌 |
小細胞癌以外の肺癌。 肺癌の85%以上を占め、「腺癌」「扁平上皮癌」「大細胞癌」などに分類される。 喫煙、受動喫煙、放射性気体曝露などにより発生するとされる。 |
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ペプチド型/低分子型 |
明確な定義はないが、一般には分子量1,000から10,000近辺を境界として、それ以下の分子量の化合物を低分子、それ以上の分子量の化合物を高分子という。 医薬品の領域では、概ね分子量数百から数千のものを低分子(型)化合物といい、従来の医薬品の多くは低分子化合物である。 なお、核酸医薬、抗体医薬など(いずれも高分子化合物)との区別の意味で、それら以外の化合物が「低分子化合物」と呼ばれることもある。 ペプチドとはアミノ酸が結合した分子で、その大きさは多様。 CBP501の分子量は1929.1であり、分子量のみからは低分子型ともいえるが、アミノ酸が12個結合したペプチドであることから、一般の低分子型化合物と区別するためにペプチド型としている。 |
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臨床早期/後期開発 |
明確な定義はないが、医薬品開発において、候補化合物の潜在能力が明らかになるまでの期間(概ね臨床第1相試験から臨床第2相試験近辺まで)を「臨床早期開発」「開発早期段階」、それ以降の開発を「臨床後期開発」「開発後期段階」と呼ぶことが多い。 |
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シスプラチン/プラチナ製剤 |
シスプラチンは、1978(昭和53)年に米国・カナダ等で承認された抗癌剤。日本では1983(昭和58)年に承認された。比較的多くの癌腫に効果があるとされている。主な副作用は腎毒性など。 同様にプラチナ元素を含む化合物であるカルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチンなどとともに、「プラチナ製剤」と総称される。
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ペメトレキセド |
抗癌剤のひとつで、葉酸の代謝を阻害することで細胞に傷害を与える。商品名はアリムタ(イーライリリー社)。2004(平成16)年に米国で承認された。日本での承認は2007(平成19)年。 現在、米国においては、悪性胸膜中皮腫および非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)に対して、いずれもシスプラチンとの併用が第一選択薬として承認されている。 |
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標準治療 |
科学的根拠に基づき、現時点で利用可能なうち最良と考え得る治療であることが専門家(各分野の学会や許認可当局関連研究所など)によって示され、使用が推奨され、広く受け入れられている治療方法。 化学療法が選択された際に最初に投与する治療薬(ひとつまたは複数の組み合わせ)を「第一選択薬」「ファーストライン」という。 |