第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「100億人・100歳時代」の豊かで持続可能な社会の実現を目標に、事業を通じた社会価値の創出、社会課題解決を目指しています。

 

豊かで持続可能な社会の実現に向けて、社会価値・非財務価値・財務価値、これら3つの価値を循環・拡大させながら、社会課題を解決していきます。社会価値は、事業活動による顧客価値拡大や、様々なパートナーとの共創による社会課題の解決により創出・向上を図ります。この社会課価値の実現を支えているのが、当社グループの競争力の源泉である人的基盤、知的・共創基盤、社会信頼基盤からなる非財務価値です。財務価値は、お客

様への価値提供、社会価値の創出によって得られる対価であり、次なる成長に向けて継続的に投資します。

以上の循環によって当社グループ自身が持続的に成長し、社会と自社のサステナビリティを両立させてまいります。

 

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以上の経営方針に基づき、当社グループでは、事業を通じた豊かで持続可能な社会の構築、当社グループの持続的成長の2つの側面から、計6項目のマテリアリティを設定しています。

 

[事業を通じた豊かで持続可能な社会の構築]

マテリアリティ

当社グループの取り組みテーマ

個人のウェルビーイング

健康・自己実現・つながりの確保

・ヘルスケア

・人材

・地域・コミュニティ

社会の持続可能性

安全安心と地球の持続可能性の確保

・金融・カード ・食農

・情報通信   ・レジリエンス(*)

・エネルギー・循環

技術による社会変革

革新技術の社会実装と企業・社会の変革

・DX      ・先端技術研究

・社会実装事業の注力展開

(*)レジリエンス:「回復力」「弾力性」を意味し、災害時など危機に直面した際の対応能力や、被害からの速やかな回復力(強靭さ)などを指す。

[当社グループの持続的成長]

マテリアリティ

当社グループの取り組みテーマ

人的基盤

人と組織の持続的成長

・人材確保・育成、FLAPサイクル(*)運用

・ワークライフバランス、健康経営

・DE&I    ・組織風土改革

知的・共創基盤

知の統合と共創基盤としての価値発揮

・研究・提言、知財蓄積、AI活用

・顧客・ビジネスパートナーネットワークの形成

・グループ経営

社会信頼基盤

社会的信頼性の維持・向上

・リスク管理・情報セキュリティ

・コーポレートガバナンス

・脱炭素

(*)FLAPサイクル:自らの適性や業務に必要な要件を知り(Find)、スキルアップに必要な知識を学び(Learn)、目指す方向へと行動し(Act)、新たなステージで活躍する(Perform)という一連のサイクルのこと。個々の能力・適性・志向性を踏まえたオーダーメイドのキャリア形成を支援する仕組みを指す。

 

(2)経営戦略

(中期経営計画2026)

当社グループは社会課題解決企業を標ぼうし、差別化を図ることで市場での存在感を確保することを目指しています。そのために、2030年にありたい姿を描いたうえで、実現に向けた「中期経営計画2026」(以下「中計2026」)を2023年10月に策定し、同計画に基づき取り組みを進めてきました。

「中計2026」での成長は、当社グループの経営理念のもと、財務、非財務、社会の3価値の拡大とともに、DX事業の成長による規模拡大と基幹事業の質の改革による収益性向上、次世代事業の育成・拡大による事業ポートフォリオ転換の加速などによって実現する計画とし、そのうえで、基本方針として、①事業戦略、②基盤戦略、③価値創造戦略を定めました。

一方、変化の激しい情報・通信並びにコンサルティング業界において、「中計2026」開始から2会計年度を経て、これら業界の好調な市場環境を当社グループに十分取り込めておらず、戦略・事業の見直しの必要性を認識するに至っております。

そのため、「中計2026」の最終年度である2026年9月期にあたり、「中計2026」の戦略及び目標を一部見直すとともに、事業再構築を含め、2027年9月期に開始予定の次期中期経営計画(以下「次期中計」)の策定に向けた検討を推進いたします。

 

①事業戦略

シンクタンク・コンサルティングサービス(TTC)セグメントでは、調査・コンサルティング事業を再強化し、研究・提言機能から調査、実証等を経て社会実装に至る価値連鎖強化に注力してまいります。なかでも、集中領域を電力・エネルギー、医療・介護、ビジネスアナリティクス(BA)・AI等に定めるとともに、総合シンクタンクとしての幅広い分野への対応も強みとして継続します。

ITサービス(ITS)セグメントでは、大手メガバンクを中心とし、その内外の金融ビジネスパートナーや中核的な強みを持つDXパートナーとしての地位確立を目指します。

 

②基盤戦略

セグメント別に、それぞれ以下の観点から整備・高度化します。

<TTC>

・人的資本経営:

競争力の源泉としての人的資本を拡充し、エンゲージメントを強化しつつ、事業戦略と連動した人材ポートフォリオの実現を目指します。

・グループ連携:

連携を強化すべき領域(公共DX、電力DX、データ分析(DA)・AI等)にリソースを集中し、コンサルティングと社会実装のシナジーを追求します。

・先行投資:

継続的な成長に向けた人的投資(人材確保・育成)、研究開発(研究・提言、新事業開発)、設備投資等を計画的に実施します。

・生産性:

生成AI社内活用の適用範囲をバックオフィスを含む全社に拡大します。また、ミドルオフィス改革による事業部門の支援機能を向上させます。

 

・リスクマネジメント:

当社グループの業容拡大、AI等を活用した事業などの展開に伴い、リスク管理システムのさらなる高度化、システム開発におけるプロジェクト管理体制、法務機能、情報システムセキュリティについても、グループ全体で機能発揮・強化していきます。

 

<ITS>

・技術基盤:

クラウド及び運用の両側面から技術力を強化するとともに、AIを適用して開発生産性の向上を目指します。

・事業基盤:

営業力、外部連携、コンサルティング、ワンストップ商材、地域戦略の5つの観点から基盤を強化します。

・経営基盤:

本社移転及び新社内システム導入を機とした働き方改革・生産性向上の実践、コーポレート業務の生産性向上を図ります。

 

③価値創造戦略

上記事業及び基盤戦略に基づき顧客に提供する価値を高め、ひいては財務、非財務、社会の3価値の好循環・拡大によって、当社グループのサステナビリティ経営を推進いたします。ステークホルダーに対するグループ広報・IR活動を通じ、社会価値及び保有する非財務資本・価値を積極的に説明・訴求し、社会課題解決企業グループとしての認知・信頼を獲得し、当社グループ全体のブランドイメージを確立させます。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

①財務価値

経常利益及びROEを重要な経営指標としております。計画2年目にあたる当連結会計年度の実績を踏まえ、「中計2026」最終年度の目標を以下のとおり修正しました。2026年9月期中に「次期中計」を策定し、今後の中長期的な成長戦略を検討しつつ、企業価値並びに資本効率の向上を図ってまいります。

 

「中計2026」最終年度(2026年9月期)の目標水準

 

(当初)

 

(修正後)

売上高

1,350億円

1,220億円

経常利益

140億円

90億円

ROE

12%

8%

 

②非財務価値

当社グループとして設定したマテリアリティに基づき、「社会課題解決力」を表現する具体的な非財務価値の指標を定め、その達成を目指しています。具体的には、「人的基盤」「知的共創基盤」「社会信頼基盤」の3要素に区分のうえ、女性採用比率や特許出願数・登録数、再生可能エネルギー比率などを指標として設定し、これらの達成状況を社内取締役の変動報酬(株式報酬)の算定要素の一部に採用し、役員報酬に反映させています。

 

③社会価値

当社グループとして設定したマテリアリティに基づき、創出を目指す社会価値や当社グループの強みが生み出す社会価値について、当社グループが遂行する関連事業に結び付けて「人材・ヘルスケア事業規模」「GX(*)関連事業規模」「育成したベンチャー企業数」などの指標を定め、社会価値の明確化を図ります。

 

(*)GX:グリーン・トランスフォーメーション(Green Transformation)の略。再生可能エネルギー中心の産業・社会構造への転換や温室効果ガスの削減を成長戦略に据え、環境保全と経済成長の両立を目指す取り組み。

 

(4)経営環境

当社グループはTTCの官公庁向け事業、ITSの金融・カード向け事業を基盤事業と位置づけ、これらを強みとしています。TTCでは株式会社三菱総合研究所が、ITSでは三菱総研DCS株式会社が各セグメントの中核を担い、2社が連携しながら安定的な事業基盤を維持・拡大し、成長してきました。

社会課題が一層複雑化・高難度化するなかで、課題解決を図るための政策立案や制度設計において、幅広く、かつ、高度な専門性や緊急性、機動力がますます求められるようになりました。TTCでは多彩な専門性と総合力で、特に社会的影響や解決の優先度が高い環境・エネルギー、ヘルスケア、交通・移動、通信等の課題に先駆的に対応してきました。その結果、多くの官公庁事業を安定的に受託しております。加えて、社会課題解決には、調査・研究や制度設計のみならず、実際に機能する具体的な解決策の提示や、その効果の実証的な確認、さらには実社会への適用・事業化など、これまで以上に踏み込んだ関与が求められています。こうした変化は、投入する要員による制約が大きい事業モデルから、人的リソースを過度に制約としない事業モデルへの転換という、新しい事業展開の可能性を示すものでもあります。

金融業界では、ICTの急速な普及・発展とともにフィンテックなどの新たな技術への対応が喫緊の課題となっています。加えて、グローバル化の進展とともに顕在化したマネーロンダリングや各種市場リスク管理等の課題に対処するため、新たな国際的金融規制やこれに応じたシステム対応が求められています。ITSでは、こうした金融業界の変化を捉えつつ、重要な基幹的システムに係る開発需要等を捉え、安定的に拡大してきました。一方で、AIやクラウドコンピューティングによる柔軟で低コストのシステムや、フィンテックを活かしたスマートフォン決済など、従来とは異なるシステム要件も急速に求められるようになりました。顧客ニーズに応えるには、よりコンサルティング的な機能を強化することが期待されています。

こうした環境変化に対応し、さらなる成長を実現するために、ポートフォリオ改革を推進し、重要な事業への重点的かつ効率的なリソース配分を進めます。これまで蓄積した強みを礎として、より市場規模の大きな民間企業分野における変化を予測・見通し、生成AIなど最先端ICTによる解決策を実現する「実装」をさらに推進します。加えて、当社グループの強みの源泉たる人材並びに情報発信力を高め、グループ内外の様々なパートナーとの連携を拡大してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①事業戦略の再構築

「中計2026」の事業及び目標の一部見直しを踏まえ、事業戦略の再構築を急ぎます。まず、2026年9月期中はTTCにおける調査・コンサルティング事業の再強化、ITSにおける金融分野を中心とした事業を推進しつつ、2027年9月期に開始する「次期中計」を策定し、中長期的な成長戦略を練り上げてまいります。

また、将来を担う事業を育成し、事業ポートフォリオの転換を急ぐことも重要な課題と捉えています。具体的には人的リソースを過度に制約としないサービス提供型の事業規模の拡大・収益化を含め、多様なパートナーとの連携(出資等を含む)や、PROSRVやmiraicompassなどの既存有力サービスに続く新サービスの開発、海外事業の展開など様々な手段により事業拡大に取り組んでまいります。

 

②人的資本経営の強化

人材は、当社グループの競争力や成長の源泉となる重要な資産です。成長シナリオを実現するため、当社グループ全体の事業戦略の視点から必要な人材を確保し、最適な人材ポートフォリオの実現を目指します。人材ギャップ解消のための採用・育成戦略を立案するとともに、処遇改善や成長領域に対応した人材の重点的な強化を行います。

人材育成に当たっては、社員個々の志向に応じた育成・成長を支援する当社独自の「FLAPサイクル」を導入しています。

2026年9月期初から、TTCでは、社会課題解決を志向する社員が中長期的なキャリア形成を実現できる制度設計とした人事制度改定を実施しています。その中では、年功的要素を撤廃し、役割やポストをこれまで以上に柔軟に設定可能なものとしました。複線型のキャリアパスを可能とする「連峰制」をさらに進め、異なる専門性で高位ポストに昇任できる仕組みとなっております。また、定年後の再雇用者(シニア・エキスパート)の活躍を期待して処遇の改善を図りました。従業員とのエンゲージメントをさらに深めながら、改定後の制度を円滑に運用し、実効性を高めてまいります。

また、人員規模の増大、人材の多様化に応じた、計画的かつ継続的な育成・キャリア形成支援研修の重要性の高まりから、TTCには「MRIアカデミー」、ITSでは「デジタルアカデミー」を設置し、経営理念を具現化する人材を輩出するための教育施策を実施しています。引き続き、働き方改革を推進して健康経営、社員活躍推進、ダイバーシティ向上、従業員のエンゲージメントを強化・向上させていきます。人材が当社グループ最大かつ最重要の資産との考え方にもとづき、優秀な人材が存分に能力を発揮・活躍できる一層魅力的な環境を備えた企業グループとして持続的成長を目指します。

あわせて、生産性向上や価格転嫁等にも継続して努めるとともに、品質の維持・向上への不断の取り組みによって顧客価値の増大も実現してまいります。

 

③研究・提言活動強化・積極的な生成AI活用

研究・提言活動は、当社グループにおける価値連鎖の起点であり、さらなる強化が必要と認識しています。研究・提言を通じて未来社会像の実現に向けた社会潮流を形成し、当社グループ全体の社会価値を高めます。具体的には、時機を捉えた自律的な取り組みと科学的知見(エビデンス)に基づく提言を実践し、官公庁の主要施策や企業の戦略立案に貢献していきます。

生成AIの登場や飛躍的発展・普及は、多くの産業・職業に影響を及ぼすとされていますが、当社業務も例外ではなく、事業モデルの根本的な転換、想定外の業界からの競合の登場などによる競争優位性の喪失など、様々な将来的リスクが考えられます。こうしたリスクをむしろ事業機会として活かすため、当社グループでは、案件の企画・提案から業務遂行、プロジェクト管理などの様々な場面で積極的に生成AIの活用を進めています。こうした取り組みを通じて、当社グループ全体の生産性向上を図り、さらに高度な顧客価値の提供を目指します。

 

④リスク対応力の強化

業容拡大に伴い、従来にない大型事業や事業形態の案件遂行機会が増加しており、プロジェクトマネジメントの重要性が高まっています。また、新事業の取り組みにおいては、当社グループにとって対応経験・知見の蓄積がないリスクに直面する可能性があり、リスクの早期把握・迅速な対応が求められます。

KRI(Key Risk Indicator)による予兆モニタリングを実施することでリスク増減傾向の把握と予兆管理を高度化するとともに、システム開発におけるプロジェクト管理機能や法務機能、情報セキュリティについてもグループ全体でさらに強化しています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ共通

 ①ガバナンス

 サステナビリティは、当社グループの経営の基盤となる考え方であり、社長が務める「最高サステナビリティ責任者(CSO:チーフ・サステナビリティ・オフィサー)」、経営企画担当役員が務める「サステナビリティ経営責任者」を設置し、推進の責任を明確化しています。サステナビリティ活動計画やマテリアリティの設定・見直し、非財務価値・社会価値に関する目標等の策定・管理などは、経営企画部内のサステナブル経営推進室が担います。審議決定事項については、経営企画部長が起案、サステナビリティ経営責任者、CSO及び経営戦略委員会の承認を得た上で、経営会議で決定します。取締役会はサステナビリティにかかる基本方針、定期的な計画の進捗状況などにつき報告を受け、監督いたします。

 

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 ②戦略

 目指す社会の実現・経営理念の実現に向けて、当社グループが重点を置く社会価値・非財務価値、それらの向上の方向性として、サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)を定めました。

 マテリアリティの特定に当たっては、サステナビリティに関する国際的枠組みやガイドラインに加えて、当社の創業50周年を機に実施した長期社会ビジョンに関する記念研究「これからの50年で目指す未来」(50周年記念研究)を起点に、その後も継続して実施している各種の社内研究や、総合シンクタンクとして定期的に社会課題を俯瞰的に分析・整理している「社会課題リスト」等をベースに課題を抽出します。これらについて、3年ごとの中期経営計画の策定プロセスの中で①社会における重要度(社会潮流としての課題解決への期待・関心の大きさ)、②自社における重要度(当社非財務価値による貢献可能性、果たすべき使命)による評価を踏まえて、経営会議・取締役会の議論を経て、見直し・決定しています。

 

マテリアリティ(重要課題)の位置づけ

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三菱総研グループのマテリアリティ

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 ③リスク管理

 当社グループにおけるサステナビリティに関連するリスクは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループ全般のリスクマネジメント体制、リスクマネジメント方法の中で識別、評価、管理しています。加えて、社長がCSOを務めるサステナビリティ経営推進体制のもと、サステナビリティにかかる方針や施策の管理、取締役会への報告を行っています。

 詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(2)気候変動

 ①ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

 ②戦略

 カーボンニュートラル社会の実現を含む気候変動問題への対応は当社グループの脱炭素化だけでなく、リサーチ・コンサルティングの知見を活かし社会価値向上に貢献できる重要な分野と認識しています。当社グループでは、気候関連リスク・機会の特定や当社グループへの財務的影響についてシナリオ分析を実施しています。具体的には、厳格な対策(炭素税、環境規制等)が導入され、社会全体が積極的に気候変動対策に取り組みシナリオ(1.5℃シナリオ)と、厳格な対策は導入されず、自然災害が激甚化・頻発化するシナリオ(4℃シナリオ)を前提に、2030年時点の財務的影響を分析しています。なお、参考としたシナリオは、1.5℃シナリオについては当社のカーボンニュートラル提言に加え、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)1.5℃特別報告書(SR15)、国際エネルギー機関(IEA)WEO NZE2050、4℃シナリオについては政府間パネル(IPCC)RCP8.5等をそれぞれ参照しています。

 また、シナリオ分析に当たっては当社グループが、その事業領域に再エネ、脱炭素、電池技術などの気候変動に対する緩和プロジェクト並びに、防災・レジリエンス、インフラ強化などの気候変動に適応するための適応プロジェクトといった気候変動関連領域を含むことを勘案し、現状の当社グループの事業を気候変動関連領域/その他戦略領域に分類し、2030年時点のそれぞれの事業規模を想定した上で、新たに創出される新領域の事業拡大、炭素税等の対応コスト等を考慮して財務影響を算出しました。

 

 2つの気候変動シナリオに加え、気候変動関連領域の事業戦略を2とおり(成長/標準)設定することにより、計4とおりのシナリオをもとに財務影響を分析しております。

 

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 シナリオ分析に基づいた2030年の当社グループの気候関連リスク・機会の財務影響は以下のとおりです。

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 いずれのシナリオにおいてもリスクの財務的影響度は限定的と評価しています。

(1)当社グループのGHG(温室効果ガス)排出量、電気使用量が小規模であること(1.5℃シナリオ)。

(2)当社グループ施設の立地、建物の堅牢さ、リモートワーク環境の整備状況などから激甚災害に対する対応に大きな支障はないと想定されること(4℃シナリオ)。

 一方で、カーボンニュートラルに向けた社会全体の意識の高まりと激甚災害に対する対応の必要性から、脱炭素に資する研究・コンサルティング・システム実装やレジリエンスを高める防災やリスクマネジメントへのニーズは拡大しています。以上からリスクに比して機会の取り込みの財務的影響度が相対的に大きいと評価しています。

 

(気候変動にかかるリスクと機会への対応策)

 当社グループにとっての気候関連の主な機会はカーボンニュートラルに向けた事業環境の転換であり、主なリスクは炭素税導入によるコストの増加、激甚災害頻発による経済停滞の影響等であることが明らかとなりました。リスクと機会への主な対応策は以下のとおりです。

 

(機会を伸ばす対応策)

 カーボンニュートラルに向けた事業環境の転換への対応策は、2021年9月に当社がカーボンニュートラル提言において示した3つのキーポイント(①電力部門の早期ゼロエミッション化、②戦略的なイノベーションの誘発、及び③需要側の行動変容)について、関連分野での政策検討支援や民間企業へのコンサルティング業務を拡大していくことであると考えます。

 具体的には、気候変動への対応ニーズが官民に高まる中で、政府の進める省エネルギー戦略、脱炭素戦略、再生エネルギー普及の政策立案など、国内におけるカーボンニュートラル政策の具体的推進にかかる政策立案のサポート、実証実験等のサービスを提供してまいります。
 企業に対しては、再生可能エネルギーの主力電源化を推進するニーズに対して、蓄電池・EVの有効活用、分散型リソース(DER)の最適運用計画の立案のほか、安定的な非化石電源としての原子力の安全利用、イノベーションによる新しい技術開発などを提供してまいります。また、2023年度においては、電力卸売価格予測・配信サービスを電力会社、ガス会社などエネルギーカンパニーに提供する事業を分社化(株式会社MPX(*))し、欧州のクオンツハウスと業務資本提携を結ぶなど、サービスラインナップを充実させました。この他にも、再エネの導入を促進するため、当社自身が全国4つのメガソーラー事業へ出資するとともに、他の再エネ発電事業者も含めてアセットマネジメントサービスを提供しています。
 現在、進行中の中期経営計画においては、こうした取り組みを加速するため、カーボンニュートラルに資するGX(グリーン・トランスフォーメーション)分野の売上拡大をKPIとして当該分野に重点的な人的資源に配分と開発投資を進めています。あわせて、社会全体で厳格な気候変動対策が導入されず、大型台風、集中豪雨、高潮などの激甚災害の発生頻度が高まる4℃シナリオに対しては、災害リスクマネジメント支援や防災・レジリエンスのDX戦略、サービス開発支援などのコンサルティング、システム実装のサービスを充実させてまいります。

 

(*)MPX:連結子会社。電力市場の分析プラットフォーム「MPX」を通じた卸電力市場に関する情報配信、電力事業の市場リスク計算等を行う。

 

(リスクを低減させる対応策)

 主たる気候関連リスクは炭素税導入によるコストの増加、激甚災害頻発による経済停滞の影響です。
 当社グループのスコープ1、2によるGHG排出量は5,917tCO2(2024年9月期)と少なく、かつデータセンターやオフィスでの電力使用に起因するスコープ2が大半を占めます。炭素税等のカーボンプライシングの検討が進む中で、GHG排出量の削減を通じて財務影響を最小化する取り組みは不可欠です。このため、当社グループとして再生可能エネルギーの導入を積極的に推進、特にデータセンターの再生可能エネルギー比率向上等を進めるほか、業務効率化や生産性向上、ワークスタイル改革、省エネルギー型の設備への更新投資、オフィスのLED化等を進め、電力由来のGHG排出量削減を図ります。あわせて、激甚災害の頻発による経済の停滞リスクに対しては、従業員のリモートワーク環境の整備、人手に依存しないサービス提供型ビジネスの拡大に取り組むことで収益低下インパクトの緩和を図ります。

 

 ③リスク管理

 当社グループにおける気候変動に関連するリスクは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループ全般のリスクマネジメント体制、リスクマネジメント方法の中で識別、評価、管理しています。

TCFDの枠組みに沿った開示の検討過程で抽出された気候関連リスクと事業及び財務影響分析の結果は、当社事業に影響を及ぼすリスクとして、経営会議、取締役会に報告しています。

 

 ④指標及び目標

 2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、当社グループの脱炭素化を確実に進めていくため、GHG排出量(スコープ1,2)と再生可能エネルギー比率の2つの指標を設定しています。

 

 

実績

目標

年度

2019

2020

2021

2022

2023

2024

2025

2026

2030

2050

GHG排出量

(スコープ1,2)

(tCO2e)

11,511

11,049

10,611

9,686

7,686

5,917

6,800

6,400

4,800

0

再生可能エネルギー比率・目標

0%

0%

0%

7.3%

30.7%

38.2%

40.0%

45.0%

65.0%

100%

(注)2025年9月期実績は集計中のため記載しておりません。

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<スコープ3の算定に向けた取り組み>

 2024年度よりスコープ3のGHG排出量の算定を開始し、第三者保証を取得しました。2024年度については、以下のとおり対象をカテゴリー1~7としていますが、今後、対象カテゴリーを順次拡大し、当社グループバリューチェーンの事業活動に係るGHG排出量の網羅的な捕捉とその削減を進めてまいります。

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(3)人的資本・多様性

 ①戦略

当社グループにとって、人材はグループの競争力や成長の源泉です。人的資本経営の強化に向けて、経営戦略と人材戦略を一体的に展開し、「社員の成長」と「組織の成長」の好循環を通じて、経営理念実現、社会課題解決、財務・非財務・社会価値増大を図ってまいります。その実現のため、経営・事業戦略の視点から最適な人材ポートフォリオを作成し、現状とあるべき姿の人材ギャップの解消に向けた採用、昇降任・配置、育成等の施策を立案・実施し、人材ポートフォリオの実現を目指します。

その一環として、2025年10月に人事制度改定を行いました。今回の人事制度改定では、社会課題解決を志向する社員が中長期的なキャリア形成を実現できる制度設計を目指しています。具体的には、年功的要素が残る職能資格等級を撤廃し、役割等級に統一、役割やポストをこれまで以上に柔軟に設定できるようにしました。複線型のキャリアパスを可能とする「連峰制」をさらに進め、異なる専門性で高位ポストに昇任できる仕組みとしています。また、定年後の再雇用者(シニア・エキスパート)の活躍を期待して、シニアの処遇改善を図りました。従業員のエンゲージメントをさらに深めながら、改定後の制度を円滑に運用し、実効性を高めてまいります。

人材育成に当たっては、社員個々の志向に応じた育成・成長を支援する当社独自の「FLAPサイクル」を導入しています。また、人員規模の増大、人材の多様化に応じた、計画的かつ継続的な育成・キャリア形成支援研修の重要性の高まりから、当社に「MRIアカデミー」、三菱総研DCS株式会社に「デジタルアカデミー」を設置し、経営理念を具現化する人材を輩出するための教育施策を実施しています。

2024年4月に開校した「MRIアカデミー」では、経営理念を具現化する人材を計画的・継続的に輩出するための人材育成・キャリア形成支援策を実施しています。当社の強みである最先端の科学技術やAI、イノベーション創出に関する知見など、「当社ならでは」の研修体系を構築するとともに、増加傾向にあるキャリア入社者に対するシンクタンク/コンサルティングスキルに係るプログラムを充実させ、人材育成を行うことでお客様への提供価値を向上させていきます。またMRIアカデミーでは、研修だけでなく、FLAPサイクルに基づく、キャリア形成支援策やシニア・エキスパート活躍策にも取り組んでいます。

三菱総研DCS株式会社においても、DX人材の活用、教育、リスキリング並びに社内認定制度を受け持つ「デジタルアカデミー」を設立し、組織的な人材育成に取り組んでいます。特に顧客接点を担う営業やプロジェクト・マネージャー、ITコンサルタントの育成に注力するとともに、技術革新やビジネス環境の変化への対応力をより強化するため、思考力や対人力といったポータブルスキル研修を社員各層に展開しています。加えて、社員の自律的キャリア形成を狙いとしたリカレント支援にも取り組むことで、持続的な人材価値向上を図っています。

 

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 また、経営理念である「豊かで持続可能な未来の共創」を実現するための原動力は、当社においては人材に他なりません。人材一人ひとりが最大限の力を発揮していくためには、女性比率、外国人採用、キャリア採用といった狭義のダイバーシティに留まらず、多様な発想、能力をもった人材が活発な議論を交わす職場環境や企業風土が必要不可欠です。また、活発な議論を行うためには、社員の多様性を高めるだけでなく、互いの違いを尊重し、助け合うことで生き生きと働ける組織を育むことが必要です。

 

 こうした考えをもとに、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、当社では「中計2026」の重要施策の一つに「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進」を掲げています。2022年11月に策定した「DE&I行動指針」に基づき、全社員が議論に参加する職場ディスカッションやDE&Iに関する研修の実施、有識者と社長による対談、社員同士がキャリアを語り合う場を設置し、それぞれのアーカイブ動画やセミナーを社内に向け配信しています。経営層から若手、またキャリア入社者や育児休職取得者など、それぞれの立場からの意見や実体験を集約し、DE&I行動指針の実践ツールを作成し、社内に広める取り組みを進めています。

 

 ②指標及び目標

 当社グループは、中計2026では、最終年度である2026年9月期の目標に以下を掲げ取り組んでまいります。なお、当該指標については、連結グループの主要な事業を営む当社及び一部の子会社において、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、その他子会社については、データ収集体制を構築中であり、連結グループとしての記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む当社、エム・アール・アイリサーチアソシエイツ株式会社及び三菱総研DCS株式会社が対象となります。

2026年9月期目標

・1人当たり研修受講回数  2.7回(2023年9月期2.1回/人比30%増加)

・女性採用比率       34%(2023年9月期32%からの着実な向上)

・エンゲージメントスコア  70以上(2023年9月期実績74並み高水準の維持)

2025年9月期実績

・1人当たり研修受講回数  3.37回

・女性採用比率       29.8%

・エンゲージメントスコア  73.4

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。但し、全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループは、以下(1)(2)に記載のリスクマネジメント体制・方法により、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループ全体のリスクマネジメントのため、リスクマネジメントの最終責任者である社長がリスクマネジメント担当役員を任命するとともに、リスクマネジメント統括部署としてリスク管理部を設置しています。

リスクマネジメント統括部署は、グループ企業のリスク管理部署と連携して、リスク予兆の把握及び緊急時のリスクマネジメントを実施しています。下記のリスクマネジメント方法により、月次でリスク予兆を全社から把握した上で経営会議に報告していることに加え、内部統制・リスク管理委員会(委員長:社長)を年4回開催し、総括と年度方針・計画を年1回以上、経営会議に付議した上で取締役会に報告しています。

 

(2)当社グループのリスクマネジメント方法

① リスク把握とアセスメント

リスクマネジメント統括部署は、当社グループの事業に係るリスクを継続的に調査・把握しています。把握したリスクは発生確率及び影響規模に応じて評価のうえ、当該評価により優先度が高いとされたリスクについては重点的に事前対策を講じています。

 

② リスクモニタリングと対策

リスクマネジメント統括部署は、リスク顕在化の早期把握及び未然防止のために、月次でリスクの状況及び予兆を全社から収集した上で、適切なリスク対応をしています。また、リスクマネジメントの進捗管理のために、リスクモニタリングの結果をとりまとめ、経営会議に月次報告を行っています。

 

③ 顕在化したリスクへの対応

リスクが顕在化した場合、リスクマネジメント統括部署は、影響の最小化のため適切な対応を検討し実施します。規則に定めた危機警戒時又は危機発生時に該当するときは、速やかにリスクマネジメント担当役員又は社長を筆頭とする危機管理の体制に移行し、迅速なリスクへの対応を行います。

 

(3)特に重要なリスク

① 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、個人情報やお客様の機密情報等を多く取扱っており、情報管理やセキュリティ管理は、企業の信頼に直結する重要な事項であります。そのため、コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の外部からの不正アクセス、自然災害の発生、リモートワークの増加、海外拠点の整備に伴う情報管理の不徹底等により、情報漏洩、紛失、破壊等の事態が発生した場合には、お客様等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜等につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、居室への入退室管理、情報・ネットワーク機器のセキュリティ対策、メール送信時の運用ルール整備、社員等を対象とした定期的な教育、情報漏洩を想定した事故対応訓練、海外営業所での現地個別対策等の情報管理の強化・徹底を図っております。また、リモートワークの増加に伴い、これに対応した情報取り扱い方法の規則化を行っています。

 

② プロジェクトに関するリスク

当社グループのシンクタンク・コンサルティングサービスの主な業務、ITサービスにおけるシステム開発は、仕様や業務内容がお客様の要求に基づき定められ、プロジェクト単位で遂行されております。契約ごとの個別性が高く、お客様要望の高度化、案件の複雑化や完成までの事業環境の変化等によって、受注時に採算性が見込まれる案件であっても、作業工数の増加により採算が確保できない可能性があります。特に、新技術を活用した案件や新規のお客様・業務分野の受注においては、受注時の想定以上に作業が発生することがあります。また、管理が不十分で品質が低下した場合あるいは予想外の事態の発生により採算が悪化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、入口管理においてプロジェクトに対する全社共通の基準に基づくリスクチェックを実施しています。遂行管理においては、注視すべきプロジェクトに対するモニタリング、採算性等に係る自動アラートの仕組みやプロジェクトリーダーによる日々の管理に加えて、ラインマネージャーによるチェックを実施しています。

 

③ 官公庁との取引に関するリスク

当連結会計年度の官公庁向け売上高は、連結売上高の28.7%を占めております。

官公庁においては、DX推進を見据えた成長戦略に基づく積極的な財政出動や、より複雑で高度な事業推進が予想されます。

当社グループにとって、実績が豊富で強みが発揮できる領域に政策の重点がシフトすることは追い風になりますが、複雑・高度化する事業内容への対応遅れや、競合他社との受注競争激化が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、各種情報の収集と結果の要因分析による提案段階での改善活動、より一層のお客様価値を提供できるよう遂行段階並びに成果品質の改善活動を継続的に取り組んでいます。

また、官公庁との取引においては、競争阻害行為の禁止や会計手続の透明性がより一層求められるようになっております。この点において不適切な対応等があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、マニュアル等の整備や社員向け研修を継続的に実施するなどコンプライアンス遵守の徹底に取り組んでいます。

 

④ 新事業に関するリスク

当社グループは、VCP(価値創造プロセス)経営を積極的に進め、研究・提言から社会実装までを視野に入れた展開を行っております。こうした展開に伴い、当社グループでは新事業や、業務や資本の提携を必要とする事業も増えてくると見込んでおります。しかしながら、予想以上の事業環境の変化、事業パートナーの状況変化、サービス利用者の不評やクレームの増大、システム障害等によるサービスの停止等が生じた場合には、当該事業の中断や利用者等からの損害賠償請求、当社グループの信用失墜が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、AI等を活用した事業では、AI等の活用で求められる公平性や透明性、安全性及びそれらの説明責任への対応が不十分だった場合、同様に業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、現場作業を行う新事業では、労働安全衛生に十分注意して業務を行っておりますが、管理不十分により事故が発生する可能性があります。

当該リスクに対応するため、このような事業においては、事業予測、投資の収益性、総合的なリスク等を社内審査プロセスに則り確認したうえで、実施の判断を行っております。

また、「新事業創造プロセス基準」及び「AI事業推進の指針」等の関連規則を定め、これに基づく事業開発とサービス運用を行っております。

 

⑤ 人材に関するリスク

当社グループが、社会やお客様の多様なニーズに応え、持続的な成長を遂げるには、高度な専門性、独自性、創造性を持つ人材を確保・育成し、活躍の機会を提供することが極めて重要であります。

しかしながら、採用難や労働市場全体の流動性の高まり、あるいは当社グループの就業環境の悪化等により、高い専門性を持つ人材を十分に確保できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは、採用・育成の充実、ダイバーシティの推進、育児支援制度をはじめとする福利厚生の充実、勤務時間を含む就業環境の整備、ハラスメント防止等の多面的な人材施策により、ゆとりと活力を創造する働きやすくかつ働きがいのある環境の確保に努めております。

また、海外へ滞在して業務を行う場合は、安全対策の強化、情報収集の複線化、渡航者・駐在者への注意喚起等の対策に取り組んでおります。

 

(4)重要なリスク

① グループガバナンスに関するリスク

当社は、三菱総研DCS株式会社(DCS)をはじめ子会社、関連会社を有しております。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備しておりますが、子会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり、グループ内部統制を整備するとともに、中期経営計画における重要課題として、人材育成も含めた連結経営高度化・組織風土改革などのガバナンス向上を位置づけ、人事交流やコンプライアンス意識啓発策の相互連携など、当社グループ間の連携を意識した組織・風土改革を推進してまいります。

 

(子会社DCSと同社非支配株主(株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG))との関係)

当社グループのITサービスセグメントの中核を担うDCSの株主構成は、当連結会計年度末において、当社80.0%、MUFG 20.0%となっております。MUFGの子会社である株式会社三菱UFJ銀行は、DCSにとって主要かつ重要な取引先であります。

当連結会計年度におけるDCSと同行(同行の情報システム子会社である三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社を含む)との取引は、DCS売上高の約4分の1を占めております。DCSは同行の基幹系システムの開発・運用・保守関連業務を長年にわたって受託してきた実績を有し、今後とも良好な業務取引関係が維持されると見込んでおります。

当連結会計年度末において、DCSの取締役及び監査役13名のうち、当社の役職員を兼ねる者は4名、当社出身者は1名、株式会社三菱UFJ銀行の役職員を兼ねる者は1名、同行出身者は2名であります。

当社の役職員を兼ねる者を任命することにより一層のグループガバナンスの向上に努めております。あわせて、今後とも社内外から事業の専門知識や経営経験を有する有能かつ適切な人材を登用すべく取り組んでまいります。

 

② 知的財産権に関するリスク

当社グループは、事業競争力確保の観点から、知的財産を重要な経営資源と捉え、その保護に積極的に取り組むとともに、第三者の知的財産権を尊重し侵害することがないよう努めております。しかしながら、他人の知的財産権その他の権利を侵害する結果となった場合には、損害賠償請求や当社グループの信用失墜等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、著作権に係る社内規則を整備しているほか、毎年、各種教育研修を実施しています。また、納入前の成果品チェック等を実施しています。

 

③ 生成AIの利活用に関するリスク

生成AIは、AI によりWEB 検索結果の要約や文書作成等ができる自然言語処理ツールであり、その特性を見極めつつ、適切に活用することで当社の価値を高めることが期待されます。しかしながら、現段階では間違った結果となることも多く、また秘密情報の入力による情報漏洩、出力結果の著作権侵害等、利用方法を誤ると当社の調査結果の信頼性を毀損する可能性があります。一方で、生成AIが普及することにより、当社グループが受託して行っている調査業務や分析業務をお客様ご自身で行えるようになると、当社の事業機会や競争力が喪失する可能性もあります。

当該リスクに対応するため、「生成AIガイドライン」を定め、これに基づく生成AIの効果的な利用を推進しております。また、最新の生成AIの普及状況や技術の進展を注視し、生成AIを最大限に活用するプロジェクトをお客様にご提案・ご提供することで、競争優位を維持するよう努めております。

 

④ 外注に関するリスク

当社グループは、外部専門家の知識・ノウハウの活用あるいは生産性向上のため、業務の一部を外部委託しております。

ITサービスセグメントのシステム開発でプログラム作成業務を委託しているほか、シンクタンク・コンサルティングサービスセグメントでは、各種調査・データ入力業務等を委託しております。

しかしながら、委託先において予想外の事態が発生した場合には、品質保持のためのコスト増、納期遅れに伴うお客様への損害賠償等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは、委託先に対して品質水準及び管理体制に関して定期的な審査を実施し、必要に応じて改善指導を行う等、優良な委託先の安定的確保に努めております。

 

⑤ 情報サービス産業に関するリスク

a. 情報サービス産業における事業環境

当社グループが属する情報サービス産業は、事業競争力の強化へ向けたIT投資等の拡大が期待される領域への異業種参入や、ITリソースの調達の低コスト化が一段と進んでおり、業界内の価格競争や熾烈な技術開発競争が一層加速しております。このため、価格競争の激化、品質の低下や技術革新への対応の遅れ等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは、コンサルティングからシステム開発・運用、BPOまで一貫したサービスを提供できる体制を整え、企画提案力並びに品質・生産性のさらなる向上にも取り組んでおります。

 

b. 情報処理サービス

当社グループが提供する情報処理サービスは、データセンターに係る運用機器及びシステム等への更新投資及び新規投資が必要であり、投資額は情報処理サービス契約により複数年にわたって回収することになります。このため、予想以上の経済環境の変化、お客様の経営状況の変化等が生じた場合には投資額の回収ができず、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、投資実施に当たってはお客様ニーズ、事業予測、投資の収益性等を総合的に検討したうえで決定しております。

 

⑥ 金融業界との取引に関するリスク

当社グループの当連結会計年度の金融業向け売上高は、連結売上高の44.7%を占めております。

金融業向け業務は、法規制・制度対応に関連した情報化投資、情報セキュリティ投資が活発化していることに加え、内部データの解析による商品開発やリスクマネジメント等に関連するコンサルティング業務を継続的に受注しており、今後とも金融業界との取引は順調に推移するものと見込んでおります。しかしながら、事業環境の急変、お客様の経営状況の変化や情報システム投資方針の変更が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、グループの強みを活かした領域への事業展開を強化し、提供価値の向上とともに、成長性・収益性を高めるべく、中期経営計画に沿った事業の持続的な成長を目指してまいります。

 

⑦ 大規模な災害等に関するリスク

新型コロナウイルスをはじめとする大規模な感染症や地震等の大規模な災害によって、従業員の出社が制限されるなど、企業活動に影響を及ぼす可能性があります。

また、情報処理サービスは、システムの安定稼動が重要な要素であり、天災、事故、人的ミス等何らかの要因によるシステムの不具合・故障等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、前掲のリスクマネジメント体制及び手順によりリスクへの対応を迅速に行うことにより、影響の最小化のため適切な対応を検討し実施します。

 

 

⑧ その他想定されるリスク

a. 退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上設定した前提条件に基づいて算出されており、年金資産の時価の下落、金利環境の変動等により、退職給付費用が増加した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

b. 業績の季節変動

当社グループでは、主要な取引先である官公庁の会計年度の関係により、例年第3四半期に受注し翌第2四半期に納期を迎えるプロジェクトが多いことから、第1、第2四半期の業績が他の四半期と比較して良く、特に第2四半期は完了を前に業務遂行のピークを迎えることもあり、会計年度を通して最も営業利益が大きくなる傾向があります。また、売上高の小さい第3、第4四半期においては、人件費や販売費及び一般管理費等の経費は毎四半期ほぼ均等に発生するため、営業赤字となることがあります。

なお、最近2年間の当社グループの四半期毎の業績の概要は以下のとおりであります。

 

 

2024年9月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

年度計

売上高

(百万円)

27,668

38,865

23,720

25,108

115,362

営業利益又は営業損失(△)

(百万円)

2,037

6,564

△1,542

1

7,060

 

 

2025年9月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

年度計

売上高

(百万円)

27,706

37,731

26,185

29,834

121,458

営業利益又は営業損失(△)

(百万円)

1,480

5,339

△186

1,377

8,010

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績の状況

当連結会計年度(2024年10月1日~2025年9月30日)は「中期経営計画2026」(「中計2026」)の2年目にあたり、中計2026期間全体の折り返し地点となります。「中計2026」では、当社グループの経営理念のもと、財務、非財務、社会の3価値の拡大とともに、DX事業の成長による規模拡大と基幹事業の質の改革による収益性向上、次世代事業の育成・拡大による事業ポートフォリオ転換を目指しております。

具体的には、公共向けとして行政DXの推進、民間向けにDXコンサルティングとクラウド移行を組み合わせた支援やビッグデータ分析を採り入れたデジタルマーケティング、金融向けに事業領域や顧客層拡大などを積極的に展開しています。

当連結会計年度においては、「中計2026」初年度(前連結会計年度)に明らかになった課題を踏まえ、シンクタンク・コンサルティングサービスセグメント(TTC)における人材増強と生産性向上、新事業等の選択と集中を進めていることに加え、ITサービスセグメント(ITS)では、主力事業の強化・利益率の改善を図りつつ、戦略的な人材活用を強化してきました。

当連結会計年度第2四半期(中間期)決算においては、TTCの受注遅れやITSにおける不採算案件に伴う費用増により減益となりましたが、第3四半期以降、TTC及びITSいずれも好調な受注を背景に売上が伸長しました。TTCでは高い稼働を維持するとともに、人員の再配置や経費抑制等の効果が発現し、ITSにおいては、不採算案件の収束や退職給付に係る一過性のプラス影響もあり、利益率が改善しました。

 

このような結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高は121,458百万円(前年度比5.3%増)、営業利益は8,010百万円(同13.5%増)、経常利益は9,734百万円(同19.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,386百万円(同27.6%増)となりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

(シンクタンク・コンサルティングサービス)

当連結会計年度は、前期の複数の大型案件終了の影響があったものの、官公庁のICT関連(サイバーセキュリティ、ヘルスケア分野のDX等)や、エネルギー・運輸・IT関連の民間企業向けのシステム、事業戦略支援関連業務等が貢献し、売上高(外部売上高)は47,090百万円(前年度比3.7%増)、経常利益は、増収影響に加え、持分法による投資利益(営業外収益)が寄与し、5,715百万円(同34.9%増)となりました。

 

(ITサービス)

当連結会計年度は、公共向けシステム案件や金融・カード分野の決済領域案件の伸長等により、売上高(外部売上高)は74,367百万円(前年度比6.3%増)となりました。コスト増加要因として上期に発生した不採算案件影響や三菱総研DCS株式会社の本社移転関連費用の計上がありましたが、増収影響に加え、退職給付債務の算定に用いる割引率の見直し等による数理計算上の差異が増益に寄与した結果、経常利益は4,037百万円(同3.3%増)となりました。

 

(2)財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べて8,380百万円増加し、128,113百万円(前年度末比7.0%増)となりました。内訳としては、流動資産が79,487百万円(同7.0%増)、固定資産が48,625百万円(同7.0%増)となりました。流動資産は、売上増加に伴い契約資産が3,435百万円増加しております。固定資産は、主に三菱総研DCS株式会社の本社移転やデータセンター設備増強等により建物及び構築物が581百万円増加、建設仮勘定が1,131百万円増加し、また時価評価等により投資有価証券が921百万円増加しております。

負債は、前連結会計年度末と比べて3,407百万円増加し、46,766百万円(同7.9%増)となりました。これは、買掛金が1,105百万円増加、賞与引当金が1,488百万円増加したこと等によるものであります。

純資産は、主に利益剰余金が1,934百万円増加したことや自己株式の消却等により自己株式が1,925百万円減少したことで、前連結会計年度末に比べ4,973百万円増加し、81,346百万円(同6.5%増)となりました。自己資本比率は、56.1%となっております。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ617百万円減少し、30,010百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、6,422百万円の収入(前連結会計年度は13,535百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益10,241百万円及び減価償却費3,465百万円のほか、賞与引当金の増加1,488百万円、持分法による投資損益1,332百万円、投資有価証券売却損益1,541百万円、売上債権及び契約資産の増加2,338百万円、未払費用の減少2,908百万円、法人税等の支払2,691百万円によるものであります。

前連結会計年度との比較においては、税金等調整前当期純利益が2,259百万円増加した一方、売上債権及び契約資産の増減額が4,536百万円増加、未払費用の増減額が4,396百万円減少、法人税等の支払額が1,318百万円増加したこと等により、7,112百万円の収入減となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、4,005百万円の支出(前連結会計年度は2,906百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出3,615百万円、無形固定資産の取得による支出2,782百万円、投資有価証券の売却による収入2,427百万円によるものであります。

前連結会計年度との比較においては、敷金及び保証金の差入による支出が954百万円減少した一方、有形固定資産の取得による支出が2,258百万円増加したこと等により、1,099百万円の支出増となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、3,008百万円の支出(前連結会計年度は4,938百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額2,564百万円によるものであります。

前連結会計年度との比較においては、長期借入金の返済による支出が500百万円減少、リース債務の返済による支出が316百万円減少、自己株式の取得による支出が1,034百万円減少したこと等により、1,929百万円の支出減となりました。

 

(4)生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年10月1日

  至 2025年9月30日)

 前年同期比

 (%)

シンクタンク・コンサルティングサービス

(百万円)

47,132

3.9

ITサービス

(百万円)

65,957

4.8

合計

(百万円)

113,089

4.4

(注)金額は販売価格によっております。なお、セグメント間の取引は、相殺消去しております。

 

② 受注状況

当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年10月1日

  至 2025年9月30日)

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

 

シンクタンク・コンサルティングサービス

51,506

19.4

30,217

17.1

 

ITサービス

75,077

3.8

50,315

1.4

 

システム開発

47,553

9.0

24,215

11.8

 

アウトソーシングサービス

27,523

△4.1

26,099

△6.6

合計

126,583

9.6

80,532

6.8

(注)1.セグメント間の取引は、相殺消去しております。

2.継続的に役務提供を行い実績に応じて料金を受領するサービスにつきましては、翌連結会計年度の売上見込みを受注残高に計上しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年10月1日

  至 2025年9月30日)

 前年同期比

 (%)

 

シンクタンク・コンサルティングサービス

(百万円)

47,090

3.7

 

ITサービス

(百万円)

74,367

6.3

 

システム開発

(百万円)

44,989

6.1

 

アウトソーシングサービス

(百万円)

29,377

6.7

合計

(百万円)

121,458

5.3

(注)1.セグメント間の取引は、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2023年10月1日

  至 2024年9月30日)

 当連結会計年度

(自 2024年10月1日

  至 2025年9月30日)

金額

(百万円)

割合(%)

金額

(百万円)

割合(%)

三菱UFJニコス㈱

17,182

14.9

15,391

12.7

 

 

(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績の状況」に記載したとおりです。

 

② 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中計2026では、最終年度である2026年9月期の財務目標水準として、売上高1,350億円、経常利益140億円、ROE12%を掲げておりましたが、中計2年目である当連結会計年度までの業績進捗を踏まえ、売上高1,220億円、経常利益90億円、ROE8%と下方修正しました。特に経常利益は、当連結会計年度の実績が当初目標の69.5%にとどまっており、目標達成は厳しい状況であり見直しが必要と判断いたしました。下方修正の主な要因は、シンクタンク・コンサルティングサービスセグメントでは、主力のコンサルティング事業で人員計画が満たせず、生産性向上も想定水準に達しなかったことに加えて、成長を期待したサービス提供型事業の収益寄与も限定的であったことが重なりました。ITサービスは、売上の未達幅は大きくはありませんが、利益率が想定を下回り、利益減少の主因となっております。大型案件の剥落に対して代替事業の確保が十分でなかったことに加え、事業基盤改革等の施策経費も、対応を強化したことにより想定を上回りました。

中計最終年度である2026年9月期は事業再構築の1年と位置づけ、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、事業戦略の再構築、人的資本経営の強化を進め、企業価値並びに資本効率の向上を図ってまいります。

 

③ 財政状態、キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの分析につきましては、「(2)財政状態の状況、(3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金需要は、運転資金に加え、データセンターの設備・機器装置への投資、ソフトウェア開発費用、成長分野への事業投資や研究開発投資などで構成されます。これらの資金需要に対して、主に自己資金を充当し、必要に応じて金融機関からの借入等により調達する方針としております。

 また、当社グループでは売上債権回収の季節変動が大きく、納期を迎えるプロジェクトが多い第2四半期までは支出が先行し営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになる傾向があります。季節的な資金需要に機動的かつ安定的に対応するため、比較的厚めの手元資金を確保するとともに、当座貸越契約を締結しております。売上高の2~3か月分が安定的な経営に必要な手元資金水準と考えており、それを超える分については、成長のための投資に活用しております。

 当連結会計年度に実施した設備投資6,318百万円の所要資金は、自己資金とリースによっております。当連結会計年度末における有利子負債の残高は1,036百万円となっております。

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は30,010百万円となっており、また堅調な業績により自己資本も充実しました。持続的な成長を実現するために、人材投資や設備投資、M&A等の事業・投資を積極的に推進していく財務基盤を備えていると考えております。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、期末日における資産及び負債、報告期間における収益及び費用等に影響を与えるような仮定や見積りを必要としております。過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる見積りを行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合には、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、当社グループの連結財務諸表の金額に特に重要な影響を与える可能性のある主要な会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。

 

(総原価の見積りに基づくインプット法による収益認識及び受注損失引当金)

 当社グループが受託する調査研究・コンサルティング及びソフトウェア開発等において、履行義務の充足に係る進捗率を見積総原価に対する実際原価の割合(インプット法)で算出し、その進捗率に基づいて一定期間にわたり収益を認識しております。

 見積総原価は、各決算日時点における受注契約ごとの仕様、遂行体制、納期、進捗状況等に基づき、作業内容や工数を主要な仮定として見積っております。

 また、当連結会計年度末において将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能なものについては、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額に対して、受注損失引当金を計上しております。

 当社グループのシンクタンク・コンサルティングサービスの主な業務、ITサービスにおけるシステム開発は、仕様や業務内容がお客様の要求に基づき定められております。契約ごとの個別性が強く、お客様要望の高度化、案件の複雑化や完成までの事業環境の変化等によって、当初見積り時には予見不能な作業工数の増加により総原価の見積りが変動することがあります。総原価の見積りが大幅に変動した場合には、当社グループが認識する収益、受注損失引当金及び売上原価に影響を与える可能性があります。

 

(繰延税金資産)

 当社グループは、過去の課税所得水準及び一時差異等のスケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断し、将来の課税所得の見込みを主要な仮定として繰延税金資産を計上しております。

 繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、経営環境に著しい変化が生じるなどにより将来の課税所得の見積額が変動した場合には、将来の繰延税金資産及び税金費用に影響を与える可能性があります。

 

(退職給付債務及び退職給付費用)

 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上設定した割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の期待運用収益率などを主要な仮定として算定しております。

 年金資産の時価の下落、金利環境の変動等により、数理計算の前提に変化が生じた場合には、退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、「人と組織の持続的成長」を支える中長期的な人材育成、事業拡大に資するため、全社共通の探索や事業開発に資する研究及び開発(新事業開発)を実施しています。

シンクタンク・コンサルティングサービスセグメントでは、自社研究として研究・提言委員会を中心に、時機を捉え社会ニーズに即した研究テーマを選定し、進捗のフォローや成果の全社展開・公表発信を進めています。新事業開発については、ストック型事業の拡大、シンクタンクDX(*)の実現に向けて、部門横断の審査委員会を設置し、テーマの選定、進捗フォロー、成果の事業化を進めています。

また、ITサービスセグメントでは三菱総研DCS株式会社が中心となり、研究開発を実施しています。

 

(*)シンクタンクDX:生成AIを活用しバックオフィスを含む全社の生産性向上を図る取り組みをシンクタンクDXと称しています。

 

当連結会計年度における研究開発費は1,517百万円であり、シンクタンク・コンサルティングサービスに係る研究開発費は1,028百万円、ITサービスに係る研究開発費は489百万円であります。

セグメントごとの主な研究開発活動は、以下のとおりであります。

 

(1)シンクタンク・コンサルティングサービス

 

① 未来社会構想研究

以下2つのテーマに関する研究を進めました。

・AI・ロボティクス研究:2040年のAI・ロボティクス社会像を提示、日本が進むべき道を提言

・ワットビット連携戦略研究:地域の成長に繋がる2040年ワットビット連携の姿・戦略を提言

 

② シンクタンク基盤研究

シンクタンク基盤研究として、マクロ経済研究と先進技術研究を実施しました。

マクロ経済研究では、世界経済及び日本経済の最新動向を分析し、今後の経済見通しや政策提言等を取りまとめて公表・発信しました。

先進技術研究では、社会インパクトが期待されるヒューマン・デジタルツイン(HDT)に着目し、将来の可能性とリスク・技術体系を分析、研究成果を公表・発信しました。

いずれの研究も、得られた知見を他研究(未来社会構想研究、価値創造プロセス連動研究)や各部門事業へ活用することで、研究・提言活動及び当社事業の質向上に貢献しました。

 

③ 価値創造プロセス(VCP)連動研究

経営の基本方針のひとつである「VCP経営」に基づき、重点領域として取り上げた分野(ヘルスケア、人材、エネルギー・循環、情報通信、食農、レジリエンス)にて政策・経済と科学・技術の知見を融合し、社会課題の深掘りと解決策に関する研究、社会実装に向けた提言を行いました。各分野の研究成果は、官公庁への政策提言や企業向けの提言として発信し、マスメディア等にて多数取り上げられるとともに、当社各部門の事業へ活用しました。

 

④ 新事業開発

新事業開発では、ストック型事業の拡大に向けて、当社の強みが発揮出来る領域であるエネルギー分野やビジネスアナリティクス(BA)・AI分野を中心に、新サービスの事業開発や事業化に取り組みました。

具体的には、これまでに開発した生成AIエージェントや情報収集基盤サービスと、当社の持つコンサルティングノウハウを統合した「インテリジェンス基盤」の提供を開始しました。

 

(2)ITサービス
 情報の多様性や複雑性がさらなる進展を見せ、データ管理及び分析技術の高度化が重要視される中で、革新的なソリューションの創出・提供を目指した研究を継続的に実施しています。その成果として、低コストで運用効率の向上を可能にする「スマート運用プラットフォーム」の提供を開始しました。また、一部テーマは大学等との共同研究も実施しており、実用化に向けて進展しています。