第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの「経営方針」「経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等」「報告セグメントごとの経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等」は以下のとおりであります。

 

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。また、文中の当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(以下「KPI」といいます。)の各数値については、本有価証券報告書提出日現在において、予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。また、文中のKPIの各数値については、特に断りが無い限りIFRSにもとづき表示しております。

 

(1) 経営方針

当社グループは、保険だけにとどまらない“安心・安全・健康”に資するサービスを提供し、未来を切り拓いていくという当社グループの想いを込めた「SOMPOのパーパス」を定めております。

 

<SOMPOのパーパス>

“安心・安全・健康”であふれる未来へ

 

(2)経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等

① 経営環境

国内外の金融政策や為替、グローバルなビジネス環境や保険市場の動向の不確実性は増しており、国内ではインフレが企業経営や人々の生活に影響を与え、中期的には少子高齢化の進行による人口動態の変化、それがもたらす国内保険市場の縮小や介護事業の働き手が大きく不足することによる介護労働力の需給ギャップ拡大が見込まれております。また、気候変動による自然災害の激甚化・頻発化や深刻化する地政学リスク、生成AIに代表されるテクノロジーの急速な進歩によって、私たちを取り巻く環境・社会は日々大きく変化し、同時にお客さまをはじめとするステークホルダーのニーズも絶えず変化し続けております。

当社グループは、こうした環境下においても、ステークホルダーの期待に応え続け、中長期的な企業価値向上を果たしていけるよう、持続的な収益力の強化に向けて徹底した業務の見直しを実践してまいります。国内損害保険事業をはじめとする伝統的なマーケットにおいては、旧態依然とした商慣習やビジネスモデルからいち早く脱却し、業務の適正性・健全性と収益性の両方を向上させるための変革へのチャレンジに着手しております。また、介護事業では、ご利用者様やそのご家族様の幸せだけでなく、寄り添う職員の働きがいと処遇を高め続けていけることが同じように大切と位置付け、高いサービス品質と生産性を実現するための経営に取り組んでおります。これらに不可欠なAIの業務実装やデータの利活用には、グループとして積極的に資本投下を行い、今後も実用化のスピードを高めていくことを目指しております。

 

中期経営計画(2024~2026年度)および経営数値目標の進捗状況

当社は、2024年度より3年間の中期経営計画をスタートさせており、「レジリエンスのさらなる向上」と「つなぐ・つながる」の実現を通じて、持続的な企業価値の向上を果たしていくことを目指し、この中期経営計画における経営数値目標として、修正連結ROE(13~15%)と修正EPS成長率(年率+12%超)を掲げております。

2024年度の当社グループは、国内損害保険事業は業務の健全性と収益力を高めるための取組みを着実に進め、海外保険事業は保険引受利益の改善と計画に沿った地理的な拡大を進めました。さらに、グローバルな資産運用の成果や為替影響等も利益成長を後押ししました。ただし、インフレ等を背景に自動車保険は保険金の支払単価が上昇し続けております。また、国内生命保険事業では、より魅力あるInsurhealth®(※1)を提供して法人・個人向けの健康応援サービスの利用促進との相乗効果でお客さま(ひまわりファン(※2))を増やす取組みを、介護事業では、品質を伴う生産性向上(未来の介護)を軸にサービスを充実させながら収益力も高めていく選択と集中を、それぞれ着実に進めました。

当社はグループ全体の持株会社として、事業計画の遂行と企業価値の持続的な向上に必要な経営資源の配賦を行い、事業のトランスフォーメーションとポートフォリオ変革を推進しました。この結果、2024年度の当社グループの修正連結利益は3,234億円となり、修正連結ROEは9.2%となりました。

また、新たに総額300億円規模のファンドを設けて、グループの人材強化に向けた投資を開始しました。生成AIやデジタルを活用したデータ・ドリブンなオペレーションの実装・拡大に向けた取組みも進めております。

2025年度は、国内損害保険事業の事業基盤・収益基盤変革、海外保険事業の規律ある拡大、ウェルビーイング事業の成長加速などにより利益成長を実現するとともに、資本を適切にコントロールすることで、ROEとEPSの向上を目指してまいります。

※1 保険本来の機能(Insurance)と健康応援機能(Healthcare)とを組み合わせた新たな価値

※2 保有契約件数と健康応援サービス利用者数の合計

 

<中期経営計画における主なグループ経営数値目標の進捗>

項目

2024年度

(実績)

2025年度

(予想)

2026年度

(目標)

修正連結ROE

9.2%

10%程度

13~15%

修正EPS成長率

年率+12%超

修正連結利益

3,234億円

3,630億円

 

SOMPO P&C

2,799億円

3,170億円

 

 国内損害保険事業

1,202億円

1,140億円

 

 海外保険事業

1,597億円

2,030億円

 

SOMPOウェルビーイング

662億円

720億円

 

 国内生命保険事業

570億円

610億円

 

 介護事業

83億円

100億円

 

その他

△227億円

△260億円

 

 

(注)2025年度の事業部門別修正利益、修正連結利益、修正連結純資産、修正連結ROEの計算方法は、以下のとおりであります。


 

③ グループガバナンス体制

 中期経営計画の取組みをさらに加速するために、当社は2025年4月にグループの執行体制を見直しました。新たな執行体制では、グループとしてお客さまにより優れた提案とサービスを実現していくために、グループの事業を「SOMPO P&C(損害保険事業)」と「SOMPOウェルビーイング」の2つのビジネス領域に集約して、それぞれの領域を統括するビジネスCEO(SOMPO P&C CEOおよびSOMPOウェルビーイングCEO)を選定しました。ビジネスCEOは、自身が委員長として開催する委員会(マネジメントボード)で各領域の経営方針を議論し、グループCEOとの協議を経て、自らの権限で重要な施策を実行します。これにより、グループに関する戦略的かつ重要な意思決定を迅速に行える体制を整備しました。

 

(SOMPO P&C(損害保険事業))

  SOMPO P&C(損害保険事業)では、国内損害保険事業と海外保険事業の一体運営により、グループの規模と収益性を拡大し、「レジリエンスの向上」の実現を目指しております。コマーシャル分野では、グローバル水準のアンダーライティングの専門性と、お客さまやブローカーとのネットワークを活用して、各種目・各地域で巨大化・複雑化するリスクに対し、安定的に保険カバレッジを提供してまいります。また、コンシューマー分野では、グループ内のテクノロジーやイノベーションの知見を活用することで、商品開発、アンダーライティング、保険金支払いまで効率化・自動化されたオペレーションを実現してまいります。

 

(SOMPOウェルビーイング)

  SOMPOウェルビーイングでは、人生100年時代、少子高齢化の中で顕在化する「健康の不」「老後資金の不」「介護の不」を解消する商品やサービスをグループ一体となって生み出すことを目指しております。国内生命保険事業では健康応援サービスやInsurhealth®の展開を拡大し、介護事業では介護オペレーターとしての日本一の品質と生産性を実現し、当社グループのヘルスケア関連事業の強みも活かしながら、お客さまの行動変容を促すことで「健康寿命の延伸」を実現してまいります。

 

  また、SOMPO P&C(損害保険事業)とSOMPOウェルビーイングを、機動性と柔軟性を兼ね備えた働き方の実践とワークプレイスの構築により着実に推進させ、企業価値を持続的に高めていけるよう、その原動力となるグループの役員・社員の働き方等の指針を2025年6月に「SOMPOの働き方と働く場所」として定めました。

  当社グループは、今後もこれまで培ってきた強みを最大限に活かしつつ、お客さまや社会の視点で最適なソリューションを提供するために、役員・社員が事業、性別、障害の有無、国籍、年齢等に捉われず、世界中の仲間とベストプラクティスをお互いに学び合い、成長することを通じて「センターオブエクセレンス」を実現することで、日本発の真のグローバル企業への進化に挑戦してまいります。

 

  こうした執行体制や業務改善計画の着実な実行を監督する体制につきましても、さらなる実効性の向上に取り組んでまいります。当社は指名委員会等設置会社として、社外取締役を中心に取締役会を構成しておりますが、2024年4月に社外取締役が取締役会議長を務める体制に移行することで、より実質的な議論を促進する議題設定および議事運営がなされております。

  また、当社が持続的な企業価値の向上を目指すにあたって、取締役会が戦略的かつ大局的な観点での監督・助言機能をより実効的に発揮し、また、SOMPOグループのコーポレート・ガバナンスをさらに強化することを目的として、従前より行っていた取締役会の実効性評価を2024年度は外部専門家を活用して実施しました。

  外部専門家によるインタビューを通じて、社外取締役が取締役会議長を務めることの有用性、グループCEOによる充実した業務執行報告や中長期の経営戦略に関する集中討議の機会を設けるなど、取締役会の運営面で継続的な改善が図られていること、業務改善計画のモニタリングが適切に行われていることなどが確認されました。

  また、取締役会の実効性をさらに向上させるために、規模・多様性・スキルマトリクスなどの観点で取締役会の構成の最適化を図り続けること、当社の取締役会・法定委員会・社外取締役および各事業会社の取締役会がそれぞれ果たすべき職責を踏まえ、グループ全体のコーポレート・ガバナンスをより効率的かつ実効的に機能させていく必要性などを確認しました。

  これらの結果を踏まえ、取締役会の実効性をさらに高めるための具体的な取組みを進めてまいります。なお、2024年度の取締役会実効性評価の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

④ 業務改善計画の推進

  当社の連結子会社である損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」といいます。)は、2023年12月26日付けで保険契約の保険料の調整行為に関する業務改善命令を受け、本命令に基づき策定した業務改善計画を2024年2月29日に金融庁に提出しました。また、複数の損害保険契約に関する同行為に関して、2024年10月31日付けで公正取引委員会から独占禁止法に基づく排除措置命令および総額6億4,798万円の課徴金納付命令を受けました。

  また、当社および損保ジャパンは、2024年1月25日付けで自動車保険金不正請求等への対応に係る業務改善命令を受け、本命令に基づき策定した業務改善計画を2024年3月15日に金融庁に提出しました。2つの業務改善計画については、同年6月14日、9月13日、12月13日、2025年3月14日および6月13日に金融庁に対して進捗報告を行いました。

  さらに、損保ジャパンは、2024年7月22日付けで金融庁から保険契約情報等の不適切な管理に関して保険業法および個人情報の保護に関する法律に基づく報告徴求命令を受け、同年8月30日に事実関係、真因とそれを踏まえた再発防止策を金融庁に報告しました。その後、2025年3月24日付けで金融庁から保険業法に基づく業務改善命令を受け、本命令に基づき策定した業務改善計画を2025年5月30日に金融庁に提出しました。なお、本件につきましては、2025年4月30日付けで個人情報保護委員会および認定個人情報保護団体である一般社団法人日本損害保険協会から指導を受け、同年5月30日に個人情報保護委員会に、同年6月10日に一般社団法人日本損害保険協会に、それぞれ業務改善計画を提出しました。

  当社および損保ジャパンとしては、業務改善計画を遂行している中で重ねて業務改善命令を受けたことを厳粛に受け止めており、遂行中の業務改善計画からさらに踏み込んだ再発防止策を追加で策定し、法令等の遵守およびお客さま保護を再徹底して信頼回復に向けて取り組んでまいります。

  当社および損保ジャパンは、上記に記載のとおり、業務改善計画に取り組んでおり、グループ企業理念体系の下、実効性を高めるために「グループ共通コンピテンシー」とそれに基づく採用・評価・マネジメント登用・役員選任基準を見直すなど、コンプライアンス・お客さま保護を重視する健全な企業風土の醸成、浸透に取り組んでおります。

  損保ジャパンでは、経営に関する大切な情報が社内で正しく伝達されるようコミュニケーションの在り方を見直しており、役員が全国の店舗を訪ねて社員と直接対話するタウンホールミーティングや、管理職を対象に各施策の取組み背景や内容の理解浸透を図るための集合研修(リーダー・サミット)を実施しております。また、実際にお客さまから寄せられている声を役員が聞く、現場が経営陣に不芳情報を直接伝える仕組みの導入、世の中から信頼を失った事実や記憶を風化させないための展示室(伝承室)を本社内に設置する、といった、強い意識を持って企業文化の変革を続けていくための取組みも行っております。そして、各種取組みの効果はデータに基づき評価し、役員・社員の行動変容の促進に繋げております。

  また、経営管理態勢の強化の観点では、保険金サービス部門に営業部門が不適切な介入を図ることがないよう、保険金支払業務の独立性を担保するとともに、オペレーションが適切かつ効率的に行われるよう業務プロセスの見直しも進めております。

  さらに、適正な競争環境を確保するとともに、旧来の業界慣習から脱し、お客さまに保険本来の価値提供で選ばれる会社となることを目指し、政策保有株式の売却、代理店に対する過度な本業支援の廃止、顧客本位の業務運営の構築に資さない出向の廃止、独占禁止法遵守に関する社員・代理店向けの教育などの具体的な取組みを着実に実行してまいります。

  当社による損保ジャパンの経営管理態勢の観点では、損保ジャパンの取締役会の監督機能を強化するために監査等委員会設置会社への移行を決定しました。そのうえで、当社役員の損保ジャパン取締役兼任者を増員して社外取締役を含む非業務執行取締役が中心の取締役会構成とし、取締役会議長はグループCEOが務める態勢としております。一部の本社部門においては、当社と損保ジャパンが一体的に業務運営を行い、相互兼務を通じた経営状況の常時把握と施策立案への直接的な関与などを実施しております。

  内部監査機能の強化に向けては、グループの内部監査領域の最高責任者としてグループCAEを選定して、グループ横断で第3線の態勢強化を図る体制としました。損保ジャパンを含めたグループレベルでの一貫性ある効果的な内部監査を実施してまいります。

  また、損保ジャパンが2025年3月24日付けで金融庁から保険契約情報等の不適切な管理に関する業務改善命令を受けた件につきましては、経営陣のコンプライアンスへの認識・取組み不足、過去の慣習を優先したコンプライアンス・お客さま保護の軽視、現場・本社部門におけるリスクオーナーシップの欠如と本社管理部門の機能発揮不足等を真因と認識しており、これらは前事業年度に業務改善命令を受けた各件における真因と共通するものであると分析しております。

  損保ジャパンにおいては、遂行中の業務改善計画からさらに踏み込んだ対策を講じるべく、これらの真因に対して、法令等遵守態勢、適切な顧客情報管理態勢等の確立、コンプライアンスおよびお客さま保護を重視する健全な組織風土醸成等の再発防止策を策定し、着実に実行してまいります。再発防止策の詳細につきましては、インターネット上の当社ウェブサイトに掲載しております。

 

(3) 報告セグメントごとの経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等

① 国内損害保険事業
ア.経営環境および経営戦略

国内損害保険事業を取り巻く環境につきましては、自然災害の頻発化や激甚化、インフレによる保険金支払単価や人件費・物件費の上昇、AIなどの新技術の登場による産業構造やビジネスモデルの変化など、予測が困難な状況となっております。

国内損害保険事業は、このような環境変化の中においても、SOMPOグループの中核会社として、グループが目指す「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」を実現するため、信頼回復とレジリエンスの向上に取り組み、グループの成長に寄与してまいります。

 

イ.中期経営計画(2024~2026年度)およびKPIの進捗状況

主要事業会社である損保ジャパンの「E/Iコンバインド・レシオ」および「政策株式削減額」、国内損害保険事業の「事業別ROE」を主要なKPIとしております。

損保ジャパンの2024年度E/Iコンバインド・レシオは、火災保険の収支改善に加え、自然災害・大口事故等の一過性の増益要因が追い風となり、2024年11月公表の通期業績予想(以下「通期予想」といいます。)から1.9pt改善し98.9%となりました。損保ジャパンの2024年度政策株式削減額は、通期予想を293億円上回る4,293億円となりました。国内損害保険事業の2024年度の事業別ROEについては、損保ジャパンの2024年度E/Iコンバインド・レシオの改善が貢献し、7.9%となりました。

中期経営計画においては、2026年度までに政策株式削減額6,000億円以上を計画していましたが、2024年度の進捗状況を踏まえ、8,000億円以上へ計画を修正いたしました。E/Iコンバインド・レシオ、事業別ROEについては、2024年度に公表した計画値から変更はなく、E/Iコンバインド・レシオ95%未満、事業別ROE10%以上を目指しております。


※1 IFRSベース

※2 日本基準

※3 日本基準ベースの目標値(8%)をIFRSベースに換算

 

ウ.KPI達成に向けた主な取組み

2024年度に策定した「SJ-R」(※)に引き続き取り組み、事業基盤と収益基盤の変革を進めていくことで、持続可能な成長を実現してまいります。収益基盤の変革では、ポートフォリオ・アンダーライティングの変革や営業部門・保険金サービス部門の基幹オペレーションの見直しなどによる収益性向上に取り組んでまいります。事業基盤の変革では、データドリブンの推進や専門人材の育成などによる競争力の強化を図り、KPI達成を目指してまいります。

※「お客さま、社会、そして自分にまっすぐ。」というスローガンのもと、「新しい損保ジャパン」を目指

 す全社プロジェクト。「SJ-R」では、お客さま・社会からの信頼回復を最優先として、業務改善計画

 に着実に取り組むとともに、「新しい損保ジャパン」を実現するために必要となる事業基盤と収益基盤の

 変革に取り組んでおります。

 

② 海外保険事業

ア.経営環境および経営戦略

海外保険事業はSompo International Holdings Ltd.を中心に米国、英国、欧州大陸、中南米、中東、アジア等でプロパティ、カジュアリティ、スペシャリティ保険および再保険を展開し、コマーシャルおよびコンシューマーのお客さま向けに対して、高品質な保険および保険関連サービスをグロ―バルに提供しております。グループの成長の牽引役として事業規模と収益性の両面で着実な拡大を続けてまいります。

 

イ.中期経営計画(2024~2026年度)およびKPIの進捗状況

 中期経営計画では、市況変動への対応をしつつ規律ある保険引受に基づき戦略的かつ継続的な成長に焦点を当てております。今後の事業環境については、保険マーケットおよび経済環境の両方において大きく変化することが想定されますが、顧客基盤を拡大し続けるとともに将来への投資を行い、商品および地理的の両面でグループの拡大に寄与し、株主価値の向上に重点を置いております。

 海外保険事業では、「修正利益の成長率」、「戦略的事業規模の拡大」および「事業別ROE」を主なKPIとしております。

 2024年度は、主に保険引受利益の改善ならびに金利上昇と資産ポートフォリオの拡大による資産運用収益の大幅な増加によって、修正利益は13.8億ドル、事業別ROEは14.2%となり、目標を達成しました。また、戦略的事業規模の拡大についても2026年度の目標達成に向けて順調に推移しております。

 


※1 旧基準(IFRS4号)

※2 負債比率:20%

 

ウ.KPI達成に向けた主な取組み

 人材、テクノロジーおよびインフラの3つのエリアへの投資に重点を置いております。具体的には、トップラインの成長のための各保険分野でのアンダーライターの採用および強固な契約管理環境維持を目的としたサポートスタッフの雇用、テクノロジーやデータを活用した業務効率の向上およびそれによるお客さまと従業員双方を支援する体制整備の確立、ならびにグローバル事業の拡大をサポートするために組織と顧客ベースの成長を進めております。

 

③ 国内生命保険事業

ア.経営環境および経営戦略

生命保険業界の経営環境は、少子高齢化の進展や健康寿命への関心の高まり等による保険ニーズの多様化、デジタル技術進展、経済動向の不確実性など、大きく変化しております。また、政府が掲げる「健康寿命延伸プラン」のもと、国民一人ひとりの健康づくりや疾病等の予防をサポートするため、官民一体となった取組みが進められております。

このような環境下で国内生命保険事業は、SOMPOウェルビーイングの一員として、引き続き、Insurhealth®の提供を通じて、お客さま本位の業務運営方針に基づき「健康応援企業」として更なる進化を目指すことにより、社会課題の解決に貢献してまいります。

 

イ.中期経営計画(2024~2026年度)およびKPIの進捗状況

経営方針として「お客さま本位で、ひまわりファンをさらに増やし、健康にすることで、社会価値と経済価値の双方を創出する」ことを掲げております。経済価値目標として「2026年度IFRS修正利益700億円以上、事業別ROE8%以上」を、未財務・社会価値目標として「2026年度末ひまわりファン700万件、健康行動数(※1)55万件」を、それぞれ経営数値目標として設定し、その達成に向けて取り組んでおります。

2024年度の修正利益は、保有契約が着実に増加した一方で将来投資による事業費の増加等により、570億円となりました。新契約CSM(Contractual Service Margin)(※2)は、Insurhealth®を中心とする新契約の積み上げにより、698億円となりました。事業別ROEは、純資産の増加を主因に7.7%となりました。

※1 健康診断受診や軽負荷歩行運動など、ひまわりファンの健康に向けた行動変容の数

※2 IFRS17に基づき新契約の将来利益の現在価値を表す指標

 


※1 IFRSベース

※2 IFRS修正利益÷IFRS純資産

 

ウ.KPI達成に向けた主な取組み

  デジタル・データ・AIを活用し、新契約の拡大と事業費構造改革に取り組むことで、2026年度の修正利益700億円、新契約CSM930億円、事業別ROE8.0%以上の達成を目指してまいります。

 a.新契約の拡大

  ウェルビーイング事業との連携による顧客紹介体制の確立、保険と健康応援を一体提案する営業(トレードオン営業)の強化、生産性向上による活動量アップに取り組むことで、飛躍的な成長を図ってまいります。

 b.事業費構造改革

  選択と集中に基づく重点領域への投資を行いつつ、組織改変と生産性向上により、一般事業費の削減に努めてまいります。

 

 

 

 

④ 介護事業

ア.経営環境および経営戦略

 急速に進展する高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者は増加し、今後も国内の介護市場は拡大することが見込まれております。その一方で、生産年齢人口の減少に伴い、介護を支える労働力の減少が見込まれており、持続可能な事業モデルを確立するためには、品質を伴う生産性の向上や人材確保・育成が喫緊の経営課題であると認識しております。

 そのような環境下において、当社グループは、介護事業参入以降、入居率向上、人材強化、ガバナンス強化に取り組むことで収益化を達成し、SOMPOグループの1事業として着実に成果を積み上げてまいりました。基盤のオペレーター事業に加え、プラットフォーム事業とグループの中核として取り組むウェルビーイング事業を新たな収益の柱とすることで、自社の利益成長だけでなく、介護業界全体の変革、発展に貢献してまいります。

 

イ.中期経営計画(2024~2026年度)およびKPIの進捗状況

介護事業では、「事業別ROE」をKPIとし、2026年度に12%以上の達成を目指しております。また、介護オペレーターとしてのさらなる成長を実現するため、2026年度末時点での居住系サービスの「入居率」を95.5%に引き上げることを目指しております。

2024年度は、収益力の向上、「未来の介護」(※)モデルの展開、物価高騰などの外部環境への適応、エヌ・デーソフトウェア株式会社とのシナジー創出などに取り組んだ結果、入居率は94.7%(2025年3月末時点)、事業別ROEは13.7%となりました。

※データとテクノロジーの活用のほか、介護施設のオペレーションにおけるムリ・ムダ・ムラを見直すことで 

 時間を創出し、人は人にしかできないことに注力する「品質を伴う生産性向上」を実現する取組み。2024年

 度は月80,000時間の生産性向上を実現(取組み前の所定労働時間数比較)。

 


 ※1 IFRSベース

※2 施設・在宅介護などの介護保険収入を軸とした事業の修正利益を分子として計算。2023年度は旧基準、2024年度以降はIFRS ベース

 

 

ウ.KPI達成に向けた主な取組み

 オペレーター事業では、「未来の介護」モデル展開のさらなる推進による品質を伴う生産性向上や、介護保険外のプライベートサービスの本格展開による収益基盤の強化によって、収益力をさらに高め、持続可能な事業モデルを構築してまいります。また、プラットフォーム事業では、SOMPOケア株式会社が介護オペレーター事業で培ったノウハウとエヌ・デーソフトウェア株式会社の介護ソフトウェアとの融合を図り、介護事業者のシステム化の支援およびそれに伴うサービス品質の向上と職員の負荷軽減を実現してまいります。これらの取組みにより、修正利益、入居率等のKPI達成を目指してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。また、文中の非財務KPIの各数値については、本有価証券報告書提出日現在において、予測できる事情などを基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

当社グループでは、パーパスとして「“安心・安全・健康”であふれる未来へ」を掲げております。このパーパスの実現を通じて、持続可能な社会への貢献および当社グループの持続的な成長を目指してまいります。

 

(1)ガバナンス

グループCSuO(Chief Sustainability Officer)は、サステナビリティ領域の最高責任者として、パーパス浸透とサステナブル経営戦略の策定・実行を担っております。グループCSuOの役割のうち気候変動・生物多様性およびビジネスと人権といったグループのサステナブル経営戦略については、グループCSuOを議長とする「グループサステナブル経営推進協議会」において、関連するリスク・機会を踏まえた対応について協議することで、グループCSuOの意思決定を支援するなど、グループ全体のサステナビリティ推進体制を構築しております。また、グループCSuOの業務執行のサポート機能としてサステナブル経営推進部を設置しております。

パーパス実現の原動力である人的資本については、グループCHRO(Chief Human Resource Officer)が、人事領域の最高責任者として、人的資本の価値を最大化する役割を担っております。

リスク管理については、取締役会が定める「SOMPOグループERM基本方針」に基づいてリスクコントロールシステムを構築しております。グループCRO(Chief Risk Officer)は、各事業の抱えるリスクを網羅的に把握・評価し、そのうち当社グループに重大な影響を及ぼす可能性がある重大リスクについては、グループCEOの諮問機関であるグループ執行会議の下部組織であるグループERM委員会においてコントロールの状況を確認・議論したうえで、定期的に取締役会およびグループ執行会議等に報告しております。

取締役会は、グループ全体の戦略や方針を定めるとともに、パーパス実現に向けた執行状況を監督しております。

 

※個別課題の検討や、グループサステナブル経営推進協議会での議論内容を踏まえた情報共有・施策実行を進めるため、2025年5月よりグループサステナブル経営推進協議会の下部組織として「資産運用」、「保険引受」、「ビジネスと人権」、「環境マネジメント」の4つのワーキンググループを設置しております。

 

(2)戦略

① パーパス実現に向けた重点課題

当社グループが創りたい未来はどのようなものか、その未来の実現に向けてどのような社会課題に向き合い長期的視点でどのような姿を目指していくのか、そのために各事業はどのような戦略を持ちどのような価値を提供していくのかを「パーパスに込めた想い」として策定しております。

 

パーパスに込めた想い

“安心・安全・健康”であふれる未来へ

それは、個人も企業もリスクにおびやかされることなく、

いつどんな時でも、ありたい姿に向かって歩んでいける、豊かで笑顔あふれる未来。

人生100 年時代、そして世界が日々著しく変化する時代に、

挑戦を恐れることなく、しなやかに前向きに、成長をし続けられるように。

SOMPOグループは、事業、国、そして企業間の垣根を越えてつながり合い、

幸せで豊かな社会・人生の実現に向けた一番頼れるパートナーとして、

さまざまなリスクや身体・生活の不安に、共に向き合い、共に歩み、支え続けます。

“安心・安全・健康”であふれる未来へ

それが私たちSOMPOグループです。

 

 

「パーパスに込めた想い」の導出においては、国際的なガイドラインやSDGsなどをもとに網羅的に洗い出した課題に対して、当社グループが受ける影響・社会に与えるインパクトを定量・定性で評価を行い、その結果をお客さま、投資家、NGO、専門家、パートナーなどのステークホルダーとの対話(社外)と、経営議論(社内)の双方を経て、優先順位づけを行いました。

それらを経たうえで以下のマッピングを作成し、非常に重要度の高い16課題と重要度の高い13課題を特定しました。これらの課題や、課題解決に向けた戦略・提供価値について明文化したものが「パ―パスに込めた想い」であり、当社グループにとっての「マテリアリティ(重要課題)」に該当するものと捉えております。

 

課題のマッピング(2025年3月時点)※                                                             


※ 課題やその優先順位づけについては、外部環境や当社グループの事業戦略の変化、ステークホルダーからの
 要請などを踏まえて、定期的に分析を行い見直し要否の確認を行っております。

 

② グループの重点課題における取組み

ア.サステナビリティに関連する重要テーマへの取組み(グループ共通)

a.気候変動・生物多様性

気候変動については、リスク・機会に対する複合的なアプローチを実践する「SOMPO気候アクション」(2021年度策定・公表)を引き続き実践し、気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」の3つのアクションを遂行してまいります。SOMPO気候アクションの取組みの詳細、生物多様性の喪失に対する自然関連の取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動・自然関連情報開示(TCFD・TNFD提言に基づく情報開示)」に記載のとおりであります。

 

※TCFD提言:気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が2017年6月に公表した情報開示のフレームワーク。

※TNFD提言:自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)が2023年9月に公表した情報開示のフレームワーク

 

b.ビジネスと人権

当社グループは、企業の人権尊重責任を果たすために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、1.人権方針の策定・公表、2.人権デュー・ディリジェンスの実施、3.救済の仕組みの構築に向けて取組みを進めております。

1.人権方針の策定・公表については、「グループ人間尊重ポリシー」において、グループおよびバリューチェーンを含めたグローバル市場で、すべてのステークホルダーの基本的人権を尊重すること、国際的な行動規範を尊重しつつ、持続可能な社会の創造に向けて、高い倫理観をもって行動していくことを宣言しております。本方針は、グループ全社員へ適用するとともに、取引先、協業先、委託先などのパートナー企業においても、適用するように働きかけを行っております。

また、特に、2.人権デュー・ディリジェンスの実施については、①人権リスクの洗い出し・特定・評価(リスクアセスメント)、②優先課題の特定および負の影響の防止・軽減措置、③実施状況と結果の追跡調査(モニタリング)、④情報開示の4つのステップからなる仕組みを構築し、これらを定期的に実施することにより事業活動が与える人権への負の影響を認識し、防止、軽減、適切な措置を検討・実施する体制を構築しております。3.救済の仕組みについては、内部通報窓口を設置し社内での周知徹底を行っております。併せて、内部通報窓口の担当者へのビジネスと人権における知見向上に継続的に取り組んでまいります。

2024年度はビジネスと人権の潮流と当社グループの現状、ステークホルダーとの対話を通じて確認した課題を踏まえ、2025年度からグループ全体で知見の向上や体制のさらなる強化に取り組んでいく方針を策定しました。今後もステークホルダーとの対話を継続的に行い、改善を進めてまいります。

 

イ.原動力となる人的資本(グループ共通)
a.SOMPOのパーパス浸透のアプローチ

当社グループでは、SOMPOのパーパス実現に向けた原動力は社員一人ひとりであるという考えのもと、社員一人ひとりが自らの人生の目的である「MYパーパス」に突き動かされ、内発的動機に基づくチャレンジを繰り返すことで、イノベーションを創出できるよう取り組んでまいりました。その取組みにおいては、価値観の多様性を積極的に受け入れ、社員一人ひとりが働くうえでまずは自分自身の「MYパーパス」に向き合うことが重要であるというアプローチを採用しております。2024年度には、グループの企業理念体系を見直し、SOMPOのパーパスをより分かりやすい表現に改めました。今後もさらなる浸透に向け、継続して取り組んでまいります。

 

b.人材戦略方針

SOMPOのパーパス実現に向けて、中期経営計画では「すべての社員にとって誇りと幸せを実感できる」、「自律的なキャリアや成長が実感できる」、「MYパーパスを追求できる」をキーワードに、人事制度を整備するとともに、取組みを拡充しております。その過程においては「コーポレートカルチャー変革」、「グループ人材強化」、「人事制度の進化と人材基盤の拡充」を重点戦略として位置づけました。今後もこれらの重点戦略を基軸に、社員と会社がともに成長できる環境をつくるとともに、さらなる経営基盤の強化を目指してまいります。

 


 

 

「コーポレートカルチャー変革」

再言語化したパーパスをはじめとするグループの企業理念体系を核とし、「社員が声をあげられる、多様な意見が受け入れられる」コーポレートカルチャーへ変革しております。

新たな企業理念体系においては、グループすべての役員・社員が大切にしたいものの根幹を成す「誠実」「自律」「多様性」を、「SOMPOの価値観」として定め、パーパス実現に向けてグループ全体で取り組んでいくうえでの判断・行動の拠り所としました。

 


 

この「SOMPOの価値観」を起点に、日々の期待行動を導きだし、「グループ共通コンピテンシー」をこれと整合的なものに見直しました。このグループ共通コンピテンシーをグループ全体で、役員選任、マネジメント登用、社員の評価や採用の基準に反映し、浸透を図るとともに実効性を高めております。これらの価値観を根底に、グループの持続的成長を後押しするコーポレートカルチャーへの変革を目指してまいります。

その1つの観点が、ジェンダー・障害の有無・国籍・年齢・職歴など、多様なバックグラウンドや価値観が共存したインクルーシブなカルチャー醸成であります。企業経営における健全なジェンダーバランスや多様なバックグランドを持つ人員構成とすることは、ガバナンス強化やイノベーションを通じた持続的成長にも寄与すると考え、各種の取組みを行っております。

当社グループでは、経営上の意思決定層における多様性向上を目指し、女性役員比率、女性部店長比率、女性管理職比率を2030年までに一律30以上とする数値目標を設定しました。また、グループCEOを含む役員など、グループ主要キーポスト(計93ポスト)におけるサクセッション・プランを策定し、そのうち女性候補者比率を50とすることを目標としております。

加えて、これらの数値目標達成に向けた取組みのみならず、グループとしての多様性・一体感のさらなる醸成に向け、グループ横断での多様な事業の人と人をつなぎ、多様な想いをつなぐイベントウィークである「SOMPO Week 2024」を開催しました。さらに、障害者雇用促進やLGBTQ+理解浸透等の取組みを通じ、今後もあらゆる人が活躍できる環境の整備やそれらを支えるコーポレートカルチャーの醸成に努めてまいります。

※「障害の社会モデル」の考えに準拠し、当社では「障害者」と表記しております。

 

「グループ人材強化」

当社グループの経営戦略の遂行に必要な人材ポートフォリオを明確にし、グループの人材強化を進めております。

2024年度には、当社グループおよび各事業の経営戦略の遂行に必要なグループ人材ポートフォリオ構築に向け、300億円規模の「SOMPO人材ファンド」を設立し、育成・採用等のグループ人材投資を拡大しております。また、各事業のCHROや人事部門のほか、グループCEOをはじめとした関連部門の役員等が参加し、各専門領域別のサクセッション・プランにもとづく人材の育成、登用、アサインメント等について協議する「人材ラウンドテーブル」を2024年度から開催し、あるべき人材ポートフォリオの構築やそれに向けた人材への投資につなげております。

各事業においても専門性向上に向けた育成・採用等を強化しております。例えば、国内損害保険事業では、コマーシャル営業の変革・進化に向け、目指す姿を明らかにし、アンダーライティング等の専門性向上に向けた人材強化施策を大幅に拡大しました。

そして、これらの人材強化をグループ横断で下支えする基盤として、社員の自発的な学びを支援するグループ共通の学習管理システム「SOMPO Learning Hub」を導入しました。

こうした人材強化の取組みを通じて、今後もグループの持続的な企業価値向上を実現してまいります。

 

「人事制度の進化と人材基盤の拡充」

コーポレートカルチャー変革やグループ人材強化を支える、グループベースでの人事制度・体制の整備に向け、人材戦略の土台である「MYパーパスの追求」と連動する、自己選択型のキャリア形成を支援する制度をグループで拡充しております。例えば、「グループジョブチャレンジ制度」を通じて全グループ社員がグループ各社の公募ポストに応募可能とすることで、グループ内の事業を跨ぐチャレンジや幅広い経験の機会提供を図り、一人ひとりの「MYパーパス」に基づく自律的なキャリア形成を支援しております。

2025年度からは、当社と損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」といいます。)のジョブ型人事制度に互換性を持たせ、進化させました。加えて現在、グループベースでの人材ポートフォリオの可視化や自己選択型のキャリア形成のさらなる支援を意図した、グループ横断の人材戦略プラットフォーム(タレントマネジメントシステム)の構築を進めております。

また、国内グループ社員を対象に、現物株式を用いた株式報酬制度の2026年の導入に向けて検討・準備を進めております。グループ社員の会社業績や株価上昇に関する意識およびオーナーシップを一層高め、企業価値向上への貢献意欲を高めることを目的とするとともに、これにより、グループ全体の一体感を醸成し、ひいては中長期的なグループの企業価値向上につなげてまいります。また、グループ社員が自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることによって、現在および将来にわたって、経済的な観点から多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態、“ファイナンシャルウェルビーイング”の向上にも寄与するものと考えております。

 

これらの重点戦略を基軸に、2025年度からはビジネス領域(「SOMPO P&C」および「SOMPOウェルビーイング」)ごとの人材戦略の策定・実行に注力してまいります。経営戦略と人材戦略のさらなる連動を進めることで、中期経営計画の達成および持続的な企業価値の向上を追求するとともに、グループ一丸となってSOMPOのパーパス実現を目指してまいります。

 

ウ.グループの各事業における取組み

グループの各事業においても、重点課題に対する財務・非財務のKPIを設定し、取組みを進めております。具体的な取組みは、サステナビリティレポート2024をご参照ください。

 

(3)リスク管理

サステナビリティ関連のリスクについても他のリスクと同様に、当社グループの戦略的リスク経営(ERM)を支えるリスクコントロールシステムを通じて管理を行っております。

当社グループのリスクコントロールシステムはリスクアセスメントを起点とし、当社グループを取り巻くリスクを、網羅的に特定、分析、評価しております。サステナビリティ関連のリスクは、それ自体が当社グループに重大な影響を及ぼすリスク(重大リスク)または他の重大リスクを顕在化させる要因と捉えており、重大リスク管理の枠組みにおいて当社グループに影響を及ぼす具体的なシナリオを想定・評価し、グループベースでのリスク抑制に努めております。重大リスク管理の詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

サステナビリティ関連のリスクのうちグローバルな社会課題である気候変動、生物多様性の喪失、ビジネスと人権については、特に個別のリスク管理フレームワークを設計し、その軽減に取り組んでおります。

気候変動リスクについては、当社グループの事業の様々な面に影響を及ぼし、その影響が長期かつ不確実性を伴うことを踏まえ、「気候変動リスクフレームワーク」を構築しております。

生物多様性の喪失リスクについては、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が提言するLEAPアプローチ(自然関連のリスクと機会の管理のための統合評価プロセス)に基づき、特定および評価を行っております。気候変動および自然関連リスクの詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動・自然関連情報開示(TCFD・TNFD提言に基づく情報開示)」に記載のとおりであります。

ビジネスと人権にかかわるリスクについては、各事業の事業プロセス(バリューチェーン全体)を対象に発生する可能性のある「潜在的な影響とリスク」を特定し、評価を行っております。評価にあたっては、「発生可能性」と「深刻度」を評価軸とした定量的な分析を行い、発生の抑止とリスクの軽減に取り組んでおります。

 

(4)指標と目標

当社グループでは、パーパス実現に向けた中期経営計画において、財務領域と非財務領域(人的資本関連を含みます。)を連動させたKPI体系としております。

短期での財務成果に加え、中長期的な視点で持続的に社会への価値を提供し続ける、すなわち企業価値を向上し続けるために、財務成果につながる非財務領域の取組みに関するKPIを設定し、戦略の実効性を高めてまいります。非財務領域におけるグループ共通の主な指標は下表のとおりであります。

 

サステナビリティに関するリスクと機会を評価するための重要な指標・目標(2024年度~)

項目

区分

KPI

目標値

実績値

ネットゼロ社会の実現・生物多様性保全

サステナビリティ

GHGスコープ1~3(スコープ3カテゴリー15除く)排出量

2030年60%削減

(2017年比)

2050年ネットゼロ

2023年度:

25.6%削減

投融資先GHG・スコープ3カテゴリー15排出量

2025年25%削減

(2019年比)*1

2030年50~60%削減(2019年比・インテンシティ*2ベース)*3

2050年ネットゼロ*1

2023年度:

16.5%削減

2023年度:

35.3%削減

(インテンシティベース)*4

トランジション保険目標

2026年度元受収入保険料250億円

2024年度より取組みを開始

社員エンゲージ

メント向上

人的資本

エンゲージメントスコア(国内・海外)

対前年比改善

(参考)

2023年度:

国内3.52pt、海外4.18pt

2024年度:

国内3.56pt、海外4.16pt

多様な人材の活躍

女性役員・部店長・管理職比率

2027年4月:

役員16% 部店長23%

管理職28%

2030年:

いずれも30%

2025年4月時点:

役員14.3%

部店長20.7%

管理職26.6%

男性育児休業取得率(国内グループ全体)

100

2024年度:

72.9

サクセッション・プラン女性候補者比率(グループ主要キーポスト)

50

2024年10月時点:

40.0

 

*1 対象資産は、上場株式と社債

*2 インテンシティ:投融資額1単位あたりのGHG排出量

*3 対象資産は、上場株式、社債、上場企業向け融資、上場株式・社債ファンド

*4 2023年度実績の対象資産は、上場株式、社債

 

 

●気候変動・自然関連情報開示(TCFD・TNFD提言に基づく情報開示)

(1)ガバナンス

気候変動・自然関連対応に関するガバナンスについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)ガバナンス」に記載のとおりであります。なお、体制図は以下のとおりであります。

 

<気候変動等に対するリスク・機会への対応体制(2025年3月時点)>


 

 

(2)戦略

(2)-1 気候関連の戦略

当社グループでは、気候変動リスク・機会に対し複合的なアプローチを実践するため、2021年度から「SOMPO気候アクション」(気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」)を掲げ、取組みを進めております。

 

① 気候関連のリスクと機会

気候変動による自然災害の激甚化や発生頻度の上昇、干ばつや慢性的な海面水位の上昇などの「物理的リスク」のみならず、脱炭素社会への転換に向けた法規制の強化や新技術の進展が産業構造や市場の変化をもたらし、企業の財務やレピュテーションに様々な影響を与える「移行リスク」が顕在化する可能性があります。また、これらのリスクに付随して、企業の事業活動に起因する気候変動影響や炭素集約度の高い事業への投融資、不適切な開示などによる法的責任を追及する気候変動訴訟が発生しており、当社グループの損害保険事業における賠償責任保険の支払保険金を増大させる可能性があります。一方で、自然災害リスクの認識の強まりや社会構造の変革は、新たなサービス需要の創出や技術革新などのビジネス機会をもたらします。

 

当社グループは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)など外部機関の研究成果を踏まえて、気候変動が事業に与えるリスクと機会を整理し、短期(2~3年以内)、中期(3~10年後)および長期(10~30年後)の時間軸、保険事業のバリューチェーン全体(上流:商品・サービス開発、中流:販売・営業、資産運用、下流:事故対応・保険金支払)を対象範囲として評価・分析・対応を進めております。気候変動による物理的リスク、移行リスクに伴う主な変化と、当社グループにとって重大な影響を及ぼすと想定されるリスクと機会は下表のとおりであり、内外環境の変化を踏まえて継続的に見直しを行っております。

 


 

 

② シナリオ分析

ア.保険引受における物理的リスク

当社グループの損害保険事業は、台風や洪水、高潮などを含む自然災害の激甚化や発生頻度の上昇に伴う想定以上の保険金の支払いによる財務的影響を受ける可能性があります。リスクの定量的な把握に向けては、2018年以降、大学等の研究機関と連携することで科学的知見を踏まえた取組みを進めており、「アンサンブル気候予測データベース:d4PDF※1(database for Policy Decision making for Future climate change)」などの気象・気候ビッグデータを用いた大規模分析によって、台風や洪水、海面水位の変化の影響を受ける高潮の平均的な傾向変化や極端災害の発生傾向について、平均気温が上昇した気候下での長期的な影響を把握するための取組みを行っております。また、5~10年後の中期的な影響を分析・評価し事業戦略に活用しております。

当社グループは、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)のTCFD保険ワーキンググループが2021年1月に公表したガイダンスに基づく簡易な定量分析ツール※2を用いた台風に関する影響度の試算を行っております。試算結果は下表のとおりであります。

 

<試算結果>

台風の発生頻度     約△30%~+30%

1台風あたりの損害額  約+10%~+50%

 

 

今後も、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するNGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)が検討を行っているシナリオ分析の枠組み等も活用して、引き続き分析を進めてまいります。

 

※1 文部科学省の気候変動リスク情報創生プログラムにて開発されたアンサンブル気候予測データベース。多数の実験例(アンサンブル)を活用することで、台風や集中豪雨などの極端現象の将来変化を確率的にかつ高精度に評価し、気候変化による自然災害がもたらす未来社会への影響についても確度の高い結論を導くことを可能とするもの

※2 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書のRCP8.5シナリオに基づき、2050年と現在との間の台風の発生頻度や風速の変化を捉え、頻度や損害額の変化を算出するモデル

 

イ.資産運用における移行リスク・物理的リスク

脱炭素社会への移行が短期・中期・長期それぞれにおいて、当社グループに及ぼすインパクトを把握するため、下表のNGFSシナリオ※3を前提に、脱炭素社会への転換に向けた法規制の強化や世界経済の変化が企業に及ぼす「政策リスク」と気候変動の緩和に向けた取組みによる「技術機会」、慢性的な猛暑、極寒、大雪、大雨、暴風、急性的な台風、洪水、自然火災など、気候変動がもたらす気象災害が企業に及ぼす「物理的リスク」について、MSCI社が提供するClimate Value-at-Risk(CVaR)※4を用いて、当社グループの保有資産に及ぼす影響を分析しております。詳細は、以下「a. Climate Value-at-Risk(CVaR)」をご参照ください。

加えて、移行リスク削減に向け、脱炭素化への取組みが進んでいない企業への働きかけを促進することが重要であることから、同社が提供するImplied Temperature Rise(ITR)※5を用いて、当社グループの投資先企業が2100年度までに1.5℃の温暖化に抑える目標と整合的なGHG排出量削減目標を設定しているのかを定量的に分析しております。詳細は、以下「b. Implied Temperature Rise(ITR)」をご参照ください。

 

※3 NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)シナリオ

・NGFSがフェーズ4として2023年11月に公表している気候変動シナリオであり、Delayed transition、Net Zero 2050、NDCsの3シナリオを分析

カテゴリー

シナリオ

概要

  Disorderly

(無秩序)

Delayed transition

(遅延移行)

2030年まで年間排出量が減少しない。温暖化を2℃に抑えるには強力な政策が必要。CO2除去は限定的

  Orderly

(秩序的)

Net Zero 2050

(2050ネットゼロ)

厳格な排出削減政策とイノベーションにより、地球温暖化を1.5℃に抑制し、2050年頃に世界のCO2排出量を正味ゼロにすることを目指す。米国、EU、日本等の一部の国では、すべてGHGについてネットゼロを達成

  Hot House World

(温暖化進行)

Nationally Determined Contributions(NDCs)

(国別目標)

各国が約束したすべての政策が実施されるシナリオ(まだ実施されていない場合でも、すべての誓約された政策が含まれるが、地球温暖化を食い止めるには不十分なシナリオ)

 

※4 Climate Value-at-Risk (CVaR)

・気候変動に伴う政策の変化や災害による企業価値への影響を測定する手法の一つ

・気候変動関連のリスクと機会から生じるコストと利益の将来価値を現在価値に割り引いたものであり、当社グループの資産運用ポートフォリオにおける各銘柄の保有時価ウェイトを考慮し、2024年3月末時点における影響度を算出

※5 Implied Temperature Rise(ITR)

・2100年までに2℃、1.5℃の温暖化をもたらす可能性の程度を、度数(℃)で評価するフォワードルッキングな評価手法の一つ

・投資先企業のGHG予測排出量(足元の排出量および企業が設定した削減目標をもとに算出)とカーボンバジェットの差分をもとに温度上昇への寄与度を表したものであり、当社グループの資産運用ポートフォリオにおける各銘柄の保有時価ウェイトを考慮し、2024年3月末時点における影響度を算出

 

a.Climate Value-at-Risk(CVaR)
(NGFSシナリオ‐保有資産別比較)

政策リスク、技術機会の影響は、すべての資産において、影響度はNet Zero 2050(1.5℃)シナリオが最大となり、1.5℃目標を達成するには、秩序だった移行であっても、政策リスクが大きいことが分かります。一方、物理的リスクの影響は、外国株式(下記グラフ:左下)を除きNDCs(3℃)シナリオが最大となり、気温上昇がもたらす物理的リスクが大きいことが分かります。

また、保有資産別の比較では、政策リスク、技術機会の影響はいずれも国内株式(下記グラフ:左上)が最大となり、Net Zero 2050(1.5℃)シナリオ下においてそれぞれ△32.6、6.1となります。また、物理的リスクにおいても国内株式が最大となり、NDCs(3℃)シナリオ下において△10.7となります。なお、融資は当社グループのエクスポージャーの3程度であり、影響が限定的であることを確認しております。

 

<当社グループ 資産別・NGFSシナリオ別 政策・物理的リスクと技術機会のCVaR分析結果>

 


   債券は額面以上で償還されることがないため影響が限定的

 

・政策リスク :GHG削減目標を達成するために必要となる費用をスコープ1、2、3と段階ごとに算出した数値

・技術機会  :低炭素経済への移行を背景に、企業が保有する環境関連技術が生み出す事業機会のポテンシャル

                を算出した数値

・物理的リスク:慢性的または急性的な異常気象が企業の資産や売上にもたらす影響を算出した数値

 

 

(NGFSシナリオ‐短期・中期・長期のTime Horizon別比較)

短期・中期・長期のTime Horizon別の比較では、当社グループのポートフォリオにおいて、リスクの大部分は2034年以降に顕在化することが分かります。特に、Delayed transition(2℃)(Disorderly:脱炭素への急激な移行)シナリオでは2030年以降に急激な政策移行が想定されていることから、長期影響が顕著に現れます。また、政策リスクはNet Zero 2050(1.5℃)シナリオが△14.96と最大となり、1.5℃目標を達成するには、秩序だった移行であっても、政策リスクが長期的にも大きいことが分かります。また、物理的リスクは気温上昇を伴うDelayed transition(2℃)シナリオとNDCs(3℃)シナリオで相対的に長期的な影響が大きくなりますが、全体的な影響は限定的であります。

 

  <当社グループ Time Horizon別 政策・物理的リスクと技術機会のCVaR分析結果>


 

 

b.Implied Temperature Rise(ITR)

ITRが2℃未満の企業の割合は、国内株式、外国株式、国内社債、外国社債ポートフォリオの時価ベースでそれぞれ55、100、68、85、ITRが1.5℃未満の企業の割合は、37、100、50、72となっており、国内株式以外はパリ協定で掲げる「1.5℃目標」と整合的な企業が過半数を占めております。一方で、ポートフォリオ全体では、国内株式、外国株式、国内社債、外国社債のITRはそれぞれ2.16℃、1.77℃、2.07℃、2.36℃と、一部資産は改善しているものの、1.5℃を超えております。

 

当社グループではこれらの分析結果を活用し、移行リスクや物理的リスクの高い企業やGHG排出量目標設定がない投資先企業へのエンゲージメント等の働きかけを通じて気候変動に係るリスクの削減を進めてまいります。

 

<当社グループ 資産別 ITR分析結果>


 

出所:MSCI Climate Value-at-Risk、Implied Temperature Riseを用いて当社作成

 

(補足)本レポートには、MSCI Inc.、その関連会社、情報提供者(以下「MSCI関係者」)から提供された情報(以下「情報」)が含まれており、スコアの算出、格付け、内部使用にのみ使用されている場合があり、いかなる形態でも複製/再販したり、金融商品や指数の基礎または構成要素として使用することはできません。MSCI関係者は、本レポートに掲載されているデータまたは情報の正確性および完全性を保証するものではなく、商品性および特定目的への適合性を含め、すべての明示または黙示の保証を明示的に否認します。MSCI関係者は、本レポートのデータまたは本情報に関連する誤りや脱落、あるいは直接的、間接的、仕様的(利益損失を含む)な損害について、たとえその可能性を通知されていたとしても、いかなる責任も負うものではありません。

 

 

③ レジリエンス向上の取組み
ア.リスクへの対応
<物理的リスク>

損害保険契約や再保険契約は短期契約が中心であり、激甚化する気象災害の発生傾向を踏まえた保険引受条件や再保険方針の見直しによって、保険金支払が想定以上となるリスクの抑制が可能であります。また、グローバルな地理的分散や短期・中期の気候予測に基づく定量化、長期的なシナリオ分析による重大リスクの特定・評価などの多角的なアプローチにより、物理的リスクに対するレジリエンスの確保を図っております。

 

<移行リスク>

自社のGHG排出量削減については、スコープ1、2、3(スコープ3カテゴリー15 保険引受・投融資を除く)で2030年60削減(2017年比)※1、2050年実質排出ゼロにする目標を掲げております。その実現に向け、GHG排出において特に占める割合の大きい使用電力について、LED化等の省エネルギーへの取組みに加え、「2030年までに再生可能エネルギー導入率70※2」の目標を掲げ、所有ビルの電力を再生可能エネルギー由来に切り替えるなど、目標達成に向けたロードマップに沿って着実に取組みを進めております。

 

※1 パリ協定の1.5℃目標水準(毎年4.2以上削減)に整合する科学的根拠に基づく目標

※2 再生可能エネルギーの証書による利用を含む

 

投融資については、投融資ポートフォリオのGHG排出量(スコープ3カテゴリー15)実質ゼロに向け、排出量を2025年25削減(2019年比)する中間目標に加え、新たな中間目標として「インテンシティを2030年50~60削減(2019年比)」を2024年度に設定しました。目標達成に向け、株式保有先のうちGHG高排出の上位20社を中心とするエンゲージメントや、グループが保有する運用資産を入れ替える際のGHG低排出セクターへのシフトなどの取組みを進めております。

 

イ.機会への対応

当社グループは、気候リスクコンサルティングサービスの開発・提供、保険商品・サービスを通じた自然災害レジリエンスの向上に取り組むほか、再生可能エネルギーの普及や取引先との協業によるカーボンニュートラルに貢献する保険商品・サービスの開発・提供に取り組んでおります。

保険引受については、ソリューションプロバイダーとして社会のグリーン移行へ貢献することを目的に2024年度に脱炭素に資する保険商品を対象としたトランジション保険目標を新たに掲げました。また、2022年11月にPCAF(金融向け炭素会計パートナーシップ)が開発した企業保険分野のGHG排出量を計測する手法を用いて、保険引受先でGHG排出量(スコープ1、2)を開示している企業のデータを活用し、保険引受におけるGHG排出量の算定を行っております。

また、日本版スチュワードシップ・コードの趣旨に則り、株式を保有する企業の企業価値向上および持続的成長に関する取組方針および状況を確認するために、損保ジャパンでは毎年ESGアンケート(「ESG/サステナビリティへの取組みに関する調査」)を実施しております。2024年度は株式を保有する1,329社にアンケートを送付し、226社から回答が得られ、議決権行使のほか、各企業側のニーズの把握・協業の機会につなげ、脱炭素を含めたサステナビリティへの取組みを支援しております。

さらに、ネットゼロ社会の実現に向けて、世界の様々なイニシアティブや団体等において、規制やガイダンス策定等の議論が活発に行われております。当社グループでは、これらのルールメイキングに対して積極的に関与しリードすることにより、社会のトランスフォーメーションに貢献するとともに、これらの取組みを通じた知見の蓄積、さらにはこれらの取組みを通じたレピュテーションの向上によって協業パートナーを呼び込むなどグループのビジネス機会の創出・拡大を図ってまいります。

 

(2)-2 自然関連の戦略

気候変動に加え、生物多様性の喪失と生態系の崩壊、天然資源不足といった自然に関連する環境問題がグローバルリスクとして認識されるようになってきております。当社グループの保険引受先や投融資先の企業の中には、自然への依存・影響に伴い、将来的に原材料調達や操業の不安定化、法規制などの対応コストの増加、売上減少といったリスクを抱える企業があります。これらのリスクが顕在化した場合、収入保険料の減少や支払保険金の増加など、当社グループの損害保険事業に影響を及ぼす可能性があります。

一方で、昆明・モントリオール生物多様性枠組で提唱されたネイチャーポジティブへの移行にあたっては、日本では2030年時点で約47兆円の事業機会が創出されると見込まれております(環境省推計)。この新たな事業機会が保険引受先や投融資先の企業の業績改善や、当社グループが自然に貢献する商品・サービスの提供といった機会をもたらす可能性があります。

これらの自然関連のリスク・機会は、当社グループの主要事業である国内損害保険事業および海外保険事業を対象として、TNFDが提言するLEAPアプローチに基づき、評価・分析・対応を行っております。

 

※LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare の頭文字)と呼ばれる自然関連のリスクと機会の管理のための統合評価プロセス

 

 

 

LEAPアプローチに基づく分析結果
① 優先地域の特定

損保ジャパン、SOMPOリスクマネジメント株式会社、海外保険事業における子会社の直接操業拠点について、WWF Biodiversity Risk Filterなどのツールを用いて、TNFDの定義する「優先地域」に該当する拠点の確認を行い、事業活動(損害保険事業、コンサルティング事業)における自然への依存・影響が小さく、優先地域に該当する拠点はないと評価しております。

※世界自然保護基金が開発した、企業が自社のビジネスやサプライチェーン等において生物多様性に影響を及ぼすリスクを評価・対応するためのツール

 

② 依存・影響の特定・評価

当社グループの保険引受先や投融資先の各セクターについて、ENCOREを用いて自然への依存・影響を特定・評価しました。

さらに、「③リスク・機会の特定・評価」の参考情報として、当社グループにとって自然の観点でリスクが高い可能性があるセクター(高リスクセクター)を以下の手順で特定しました。

 

<高リスクセクターの特定手順>

1)ENCOREを用いて各セクターの自然への依存・影響の項目、大きさをヒートマップ化

2)1)の各セクターに対する損保ジャパンおよび海外保険事業における子会社の保険引受、投融資の金額をヒートマップに反映

3)2)の結果を踏まえ、保険引受および投融資ごとに、当社グループにおける高リスクセクターを特定

 

その結果、自然への依存・影響の評価が高く、損保ジャパンおよび海外保険事業における子会社との取引金額が大きい4つのセクター(建設、輸送(旅客含む)・倉庫、自動車・自動車部品、化学)を高リスクセクターとして特定しました。

 

※自然資本金融同盟 (Natural Capital Finance Alliance (NCFA)) や国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター (UNEP-WCMC) などが共同開発した自然関連リスク評価ツール

 

高リスクセクターの特定結果

種別

セクター

依存/影響が大きい項目

保険引受

建設

(依存)土壌の安定化、洪水の緩和、暴風・砂嵐の緩和、降雨の調節

(影響)騒音・光害、淡水域の利用、GHG排出、水・土壌への有害物質の排出

輸送(旅客含む)・倉庫

(依存)土壌の安定化、洪水の緩和、暴風・砂嵐の緩和、降雨の調節、レクリエーション価値の提供、自然景観がもたらす視覚的な快適性

(影響)騒音・光害、GHG排出、非GHG大気汚染物質の排出、外来種の持ち込み

投融資

化学

(影響)騒音・光害、水・土壌への有害物質の排出、水・土壌への富栄養化物質の排出

自動車・自動車部品

(影響)騒音・光害

輸送(旅客含む)・倉庫

(依存)降雨の調節、レクリエーション価値の提供、自然景観がもたらす視覚的な快適性

(影響)騒音・光害、非GHG大気汚染物質の排出、外来種の持ち込み

 

 

 

③  リスク・機会の特定・評価

生態系サービスの劣化に伴う物理的リスクと機会、ネイチャーポジティブに向けた政策・法規制の強化、技術の進展、市場選好の変化に伴う移行リスクと機会について、当社グループでは、損害保険事業を中心にバリューチェーン全体(上流:商品・サービス開発、中流:販売・営業・資産運用、下流:事故対応・保険金支払)を対象範囲として、評価・分析・対応を進めております。評価の時間軸としては短期(2~3年以内)、中期(3~10年後)および長期(10~30年後)を設定しております。自然関連の主な環境変化と、当社グループにとって重大な影響を及ぼすと想定されるリスクと機会は下表のとおりであります。

今後、内外環境の変化を踏まえて継続的に見直しを行ってまいります。


 

 

(3)リスク管理

当社は、グループのパーパスおよび経営計画における目指す姿の実現に向けて、その達成確度を高めるためにリスクアペタイトフレームワークを構築し、「取るリスク」、「回避するリスク」を明確にしております。

自然災害リスクについても、リスクアペタイトを明確化するとともに、自然災害が発生した場合に想定される保険金支払を気象学等の科学的知見や当社グループの商品特性を踏まえて定量的に把握したうえで、財務健全性や収益性、利益安定性への影響、再保険マーケットの動向等を踏まえて、再保険方針およびグループ全体のリスク保有戦略を策定し、管理しております。

気候変動リスクは、戦略的リスク経営(ERM)のリスクコントロールシステムの重大リスク管理、自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理の枠組みにおいて、多角的なアプローチでコントロールしております。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)主要なリスク」をご参照ください。

当社グループは、「SOMPO気候アクション」の実践として、気候変動リスクフレームワークを通じた短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会の評価、これらに基づくシナリオ分析(物理的リスク・移行リスク)を実施するとともに、これらのリスク・機会へのレジリエンス向上を高めるための各種の取組みを行っております。

① 気候変動リスクフレームワーク(気候変動リスクの特定、評価および管理)

自然災害リスクを含む気候変動リスクについては、気候変動が保険事業以外を含めた当社グループの事業の様々な面に影響を及ぼすこと、その影響が長期にわたり、不確実性が高いことを踏まえて、既存のリスクコントロールシステムを補完し、長期的な気候変動が様々な波及経路を通じて当社グループに影響を及ぼすシナリオを深く考察してリスクを特定・評価および管理するための気候変動リスクフレームワークを構築しております。

気候変動リスクフレームワークでは、気候変動の複雑な影響を捕捉するために、以下の3ステップで評価を行い、「(2)戦略 ① 気候関連のリスクと機会」で述べたリスクと機会を整理しております。

 


 

リスク評価にあたり、平均気温の変化を示すIPCCのシナリオと政策移行を示すNGFSのシナリオを組み合わせた「低位」「中位」「高位」の3つの環境変化のパターン(下表「環境変化のパターン」)を選定しました。また、当社グループに及ぼす影響の波及経路・内容をシナリオで想定したうえで(下図「リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)」)、パターンごとにリスクを評価しております。

 

<環境変化のパターン>

 

IPCC

NGFS

低位

SSP1-1.9

Orderly / Net Zero 2050

中位

SSP2-4.5

Disorderly/Delayed Transition

高位

SSP5-8.5

Hot House World/ Current Policy、

Nationally Determined Contributions(NDCs)

 

 

<リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)>


アセスメント結果を踏まえて継続的なモニタリングが必要なリスクについては、保険引受および資産運用に与える影響度、可能性、発現時期、傾向などを「気候変動リスクマップ」で可視化し、グループERM委員会において議論したうえで、定期的に取締役会およびグループ執行会議等に報告しております。

 

<気候変動リスクマップ(中位SSP2-4.5/Disorderly)>



 

上記以外にも、保険引受・資産運用以外の当社グループの事業活動には、その他のリスクとして、「訴訟等の法的な影響」が及ぼされる可能性があると考えております。リスク評価における影響度・可能性はそれぞれ中程度相当と想定しており、引き続き情報収集および分析を行い、リスクの把握に努めてまいります。

 

発生の原因

当社グループへの影響

訴訟等の法的な影響

気候変動に対する取組みの遅れや不適切な情報開示

当社やグループ会社自身に対して賠償請求訴訟が起こされる、など

 

表:保険引受・資産運用以外の当社グループ事業へのリスク。なお、保険引受や資産運用への影響についてはアセスメントを実施。

 

② 既存のリスク管理フレームワークとの統合

気候変動リスクフレームワークで捉えたリスクの認識は、重大リスクの「主な想定シナリオ」に反映して管理しております。(下表)

 

気候変動に関連する重大リスク等と主な想定シナリオ

重大リスク

気候変動に関連する主な想定シナリオ

気候変動リスク

風水災の激甚化または頻度増加による火災保険等の保険金支払、再保険コストの増大

サステナビリティリスク

脱炭素に向けた政策・法規制の強化、技術革新の進展による株式・債券の価格変動など

事業中断リスク

想定シナリオを超える大規模自然災害等の発生に伴う重要業務停止の長期化、人命被害など

パンデミック

森林減少や永久凍土の融解による重大な新興感染症パンデミックの発生増加

 

また、気候変動リスクフレームワークを通じて得られた知見を、既存のリスクコントロールシステムの枠組みである自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理に反映させていくことで、リスク管理全体の高度化を図ってまいります。

 

(4)指標と目標

① 気候関連・自然関連リスクと機会を評価するための指標

項目*1

単位

2023年度実績

GHG排出量

(スコープ1、2、3 ※除くカテゴリー15保険引受・投融資)

t-CO2e

306,876

GHG排出量(スコープ3カテゴリー15 投融資)*2*3

株式

t-CO2e

925,692

社債

t-CO2e

804,126

合計

t-CO2e

1,729,817

インテンシティ*4

株式

t-CO2e/億円

60.27

社債

t-CO2e/億円

67.70

合計

t-CO2e/億円

63.51

加重平均炭素強度(WACI)

(スコープ3カテゴリー15 投融資)*5

株式

t-CO2e/百万米ドル

137.51

社債

t-CO2e/百万米ドル

142.77

再生可能エネルギーの導入率

9.0

電力使用量

kWh

315,184,001

紙使用料

t

10,863

生物多様性保全活動・環境教育への参加人数

9,617

 

*1 指標の対象範囲は、国内連結子会社および海外連結会社であります。

*2 算定にあたっては、MSCI ESG Research社が提供するデータ( (カバー率)2023年度:上場株式84、社債79、いずれも時価ベース)を使用しております。対象資産は国内外の上場株式と社債の投融資先におけるスコープ1、2であります。

*3 GHG排出量は、投融資先のEVIC(Enterprise Value Including Cash:現金を含む企業価値)ベースに対する当社グループ持分であります。

*4 インテンシティは、投融資額1単位あたりのGHG排出量であります。なお、海外保険事業における投融資額は、2019年(基準年)の為替レートを用いて円貨計算しております。

*5 WACIは、Weighted Average Carbon Intensityの略称であり、各投融資先企業の売上高あたりのGHG排出量をポートフォリオの保有割合に応じて加重平均した値であります。なお、2021年度の数値からWACIの算出方法が変更となっております。

 

 

② 気候関連リスクと機会を管理するための目標

項目

目標値

自社のGHG削減率

・2030年60%削減(2017年比)

・2050年実質排出ゼロ

 ※スコープ1、2、3(除くスコープ3カテゴリー15保険引受・投融資)が対象

投融資のGHG削減率

・2025年25%削減(2019年比)、2050年実質排出ゼロ

 ※スコープ3カテゴリー15が対象(対象資産は上場株式と社債)

 

・2030年50~60%削減(2019年比・インテンシティ(投融資額1単位あた

  りのGHG排出量)ベース)

※対象資産は、上場株式、社債、上場企業向け融資、上場株式・社債ファンド

再生可能エネルギーの導入率

・2030年導入率 70%

・2050年導入率 100%

 ※再生可能エネルギーの証書による利用を含む

トランジション保険目標

・2026年度 250億円

 ※脱炭素に資する保険商品の元受保険料を目標値とする

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況(以下「経営成績等」といいます。)に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している「主要なリスク」および「当該リスクの管理体制・枠組み」は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社および当社の連結子会社である損害保険ジャパン株式会社(以下「損保ジャパン」といいます。)は、損保ジャパンが2023年12月に不適切な保険料調整行為等の問題により金融庁から受けた業務改善命令、ならびに当社および損保ジャパンが2024年1月に自動車保険金不正請求等への対応に関する問題により金融庁から受けた業務改善命令を踏まえ、問題の真因を分析の上、再発防止に向けた取組みを進めております。

そのような中、損保ジャパンが保険契約情報等の不適切な管理に関する問題により2025年3月24日付けで金融庁から業務改善命令を受けたことを厳粛に受け止めるとともに、今後、このような問題を二度と起こさないために、業務改善計画を着実かつスピード感をもって実行し、全てのステークホルダーの皆さまからの信頼を1日も早く取り戻せるよう、取り組んでまいります。

パーパスの実現やその礎となる企業文化の変革、人材育成、さらにはガバナンスの実効性を高めるための態勢強化等につきましては、グループの不断の取組みを今後も継続してまいります。当社および損保ジャパンに対する行政処分への対応等は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります

 

(1) 主要なリスクの管理体制・枠組み

① リスク管理の全体像

当社グループのリスク管理の枠組みである戦略的リスク経営(ERM)は、経営における高性能な『羅針盤』として、次の「3つの機能」を強化・高度化し、損失を未然に回避するだけでなく、新規事業投資などの機会損失を低減させることで、当社グループを最適な方向に導く役割を果たしております。

ア. グループが置かれた現在地を正確に把握(現状の多面的な分析) 

イ. 将来起こりうるリスクを敏感に察知(重要なリスクの的確な把握と対策)

ウ.グループが取るべき航路を提示(最適な事業ポートフォリオの提示)

 

戦略的リスク経営(ERM)は、資本・リスク・収益のバランスを取りながら企業価値の最大化を図る一連の経営管理プロセスとして「戦略執行に係るリスクテイク」と「経営基盤の安定に資するリスクコントロール」の2つの側面を持っております。リスクテイクの側面では、リスクアペタイトフレームワークを中心に資本・リスク・収益に関する分析を重要な経営判断に活かし(上記ウ)、リスクコントロールの側面では、当社グループを取り巻く多様なリスクを特定、分析、評価する仕組み(リスクコントロールシステム)を活用して(上記ア、イ)、不測の損失の極小化と利益の安定を目指しております。

 


 

② リスク管理に関するガバナンス体制

当社では、取締役会が制定した「SOMPOグループERM基本方針」に基づき、「戦略的リスク経営(ERM)」の実効性を確保するため、グループ戦略・経営計画と合わせて、リスクテイクの指針としてリスクアペタイト原則、中期リスクテイク戦略およびリスクアペタイト指標からなる「SOMPOグループ リスクアペタイトステートメント」を定めております。

グループCEOの諮問機関であるグループ執行会議では、グループのリスクアペタイトステートメント、中期グループERM推進方針、リスク許容度に関する対応方針・対応策などのリスク管理に関する事項について定期的に経営論議しております。

また、グループ執行会議の下部組織として、グループCROを委員長とするグループERM委員会を設置しております。グループERM委員会では、リスクテイク戦略などグループの戦略的リスク経営に関する重要な事項やリスク管理部、各主管部を通じた重大リスクのコントロールの状況等について、グループ横断で確認・議論を行っております。その結果はグループ執行会議を経て取締役会へ報告を行っており、取締役会からの助言等も踏まえながらグループのリスク管理に関するガバナンスの強化への不断の取組みを継続する態勢としております。

グループCROは、「SOMPOグループERM基本方針」や「中期グループERM推進方針」をグループ会社に周知徹底し、また定期的なモニタリング、各社CROとのディスカッション等を通じ、グループ全体の戦略的リスク経営の実効性の向上を図っております。

グループ全体のガバナンス体制においては、グループの方針に沿ったリスク管理体制を整備し、リスク管理を各社にて自律的に行っております。当社および主要子会社においては、施策の策定および運用を行う各部門が自律的にリスク管理を行う第1線、専門的見地から第1線を支援・けん制するリスク管理部・各主管部による第2線、内部監査部門が独立した立場からリスクガバナンス体制の妥当性・有効性を監査する第3線の3線体制によりリスク管理の実効性確保および強化に努めております。

なお、2025年4月1日付けでリスク管理部はリスク統括部に名称変更しております。

 

<リスク管理に関するガバナンス体制(2025年4月以降)>


 

③ リスクコントロールシステム、リスクと資本の状況

リスクコントロールシステムにおいては、「重大リスク管理」の枠組みで当社グループを取り巻く重大リスクを網羅的に特定し、定性的・定量的な評価を行っております。

定量化が可能なリスクについては「自己資本管理」「ストレステスト」「リミット管理」「流動性リスク管理」の枠組みで自己資本、流動性などに与える影響を様々な定量指標により分析・評価し、財務健全性およびその向上に必要なリスクコントロールの施策に関する経営論議を行っております。

 

ア.重大リスク管理

当社グループは、「事業に重大な影響を及ぼす可能性があるリスク」を「重大リスク」と定義し、事業の抱えるリスクをボトムアップのリスクアセスメントと、取締役会等によるトップダウンでの確認・議論を通じて網羅的に把握・評価しております。リスク評価の実施にあたっては、経済的損失や業務継続に加えて、お客さま、社会などのステークホルダーの観点でのレピュテーション影響を重視するように基準の明確化を図っております。

重大リスクは、グループCROがリスクアセスメントや専門家等の見解に基づいて網羅的に把握し、リスクが当社グループに及ぼす影響を具体的なシナリオで想定した上で、発生可能性および影響度でリスクを定性・定量の両面から評価し、管理状況を年2回以上、グループERM委員会にて協議のうえ、グループ執行会議および取締役会に報告しております。

管理態勢の強化が必要なリスクについては、グループ執行会議において議論を行っております。

また、現時点では具体的な影響シナリオの想定に基づく評価は困難であるものの、環境変化などにより新たに発現または変化し、今後、当社グループに大きな影響を及ぼす可能性のあるリスクを「エマージングリスク」と定め、個別の重大リスクと関連付けて適切に管理を実施しております。エマージングリスクの選定については、官民の各種情報を将来大きな影響をもたらす可能性のある変化の兆候などの観点から収集・分析し、リスク候補をリストアップしたうえで、その中から重要性を踏まえてリスクを選定しております。

 

<重大リスクおよびエマージングリスクの管理プロセス>


 

イ.自己資本管理

当社グループが保有する保険引受リスク、資産運用リスク、介護リスクおよびオペレーショナル・リスクを定量化したうえで、自己資本がリスク量と比べて充分な水準を維持できるよう管理を行っており、必要に応じ対応策を実施する態勢を整備しております。

リスクと資本の状況

 2025年3月期においては、事業の拡大などに伴うリスク増加の一方で、政策保有株式の計画を上回る売却やALMの推進による金利リスクのコントロールを実施した結果、同年3月末時点の当社グループのESR(注1)は256%とターゲットレンジ(200~250%、注2)を上回っており、十分な財務健全性を示す水準となっております。

 今後も、財務健全性を維持しつつ資本効率・利益安定性の更なる向上を目指すため、グループ収益の拡大と適切なリスクコントロールに取り組んでまいります。

(注)1 ESR(Economic Solvency Ratio)は、リスクに対して確保している資本の十分性を示す指標であります。

2 ターゲットレンジは、2025年4月1日以降の基準を適用しております。


 

 

ウ.ストレステスト

当社グループの経営に重大な影響を及ぼし得る事象を的確に把握・管理するために、グループベースで「シナリオ・ストレステスト」、「リバース・ストレステスト」および「感応度分析」を実施し、資本およびリスクへの影響度を分析して、必要に応じ対応策を実施する態勢を整備しております。また、2025年3月末時点で、当社の想定するストレス下においても十分な資本を有していることを確認しております。

シナリオ・

ストレステスト

大規模な自然災害や金融市場の混乱など、経営に重大な影響を及ぼすストレスシナリオが顕在化した際の影響を評価し、資本の十分性やリスク軽減策の有効性検証などに活用することを目的として実施しております。なお、環境変化などに適切に対応するため、ストレスシナリオの妥当性を定期的に検証しております。

リバース・

ストレステスト

リスク許容度などに抵触する具体的な事象を探索することで脆弱性を特定し、あらかじめ具体的なストレス事象を想定した対策を検討することを目的として実施しております。

感応度分析

主なリスク要因の変動が資本とリスクに与える影響を把握するとともに、内部モデルが算出した理論値と実績値との比較を行い、内部モデルの妥当性を検証することを目的として実施しております。

 

 

エ.リミット管理  

特定事象の発現により多額の損失が生じることを回避するため、与信リスク、出再リスク、自然災害リスクの各々に対してグループベースで最大限度額を定め、その範囲内でリスクの特性を踏まえたリミットを設定し、リミットを超過した場合には対応策を実施する態勢を整備しております。なお、2025年3月末時点で各リスクを適切にコントロールできていることを確認しております。

 

オ.流動性リスク管理 

日々の資金繰り管理のほか、巨大災害発生時などの最大資金流出額を予想し、それに対応できる流動性資産が十分に確保されるよう管理しており、2025年3月末時点で当社に最大の資金流出をもたらすシナリオに対しても、十分な流動性資産を有していることを確認しております。

 

(2) 主要なリスク

① 重大リスクおよびその発生可能性・影響度の評価

経営者が当社グループの経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している「主要なリスク」は、当社グループが定義する「重大リスク」であります。重大リスクおよびその発生可能性・影響度の評価は、下記のとおりであります。

<重大リスク一覧>


 

       <重大リスクのヒートマップ(発生可能性・影響度)>


 

影響度

発生可能性

 

経済的損失

業務継続性

レピュテーション毀損

極大

5,000億円以上

事業免許の取消し

信頼の極めて大幅な失墜

1年に1回以上

2,000億円以上

主要な業務の停止

信頼の大幅な失墜

(信頼回復に5年以上)

10年に1回以上

100億円以上

一部の業務の停止

信頼の失墜

(信頼回復に2~3年以上)

100年に1回以上

100億円未満

信頼の失墜の可能性は低い

100年に1回未満

 

 

また、エマージングリスクの状況は以下のとおりであります。

<エマージングリスク一覧>

革新的な医療技術

リスクの概要・

当社事業への影響

・革新的な医療技術により、疾病・傷害の治療方法等が変化することで、保険ニーズが変化する可能性

・生命保険事業において第三分野保険の保有が多く、革新的な診断・治療技術が市場に普及することで、疾病の早期発見・生存率向上・治療期間長期化などにより、想定していた給付金の支払いが大きく変動する可能性

対応策の例

革新的な医療技術の状況や影響の調査。また、調査結果を踏まえ、将来の保険事業に与える影響を分析し、商品・サービスの開発に活用するなど今後の対応を検討

生物多様性の喪失

リスクの概要・

当社事業への影響

・生物多様性喪失に関する、規制の厳格化やビジネス影響、政府方針・消費者選好の変化に伴うレピュテーションリスク

・物理的リスクの観点では、台風・ハリケーンの激甚化や頻度増加、生態系を活用した減災機能の低下、被害悪化による火災保険等の保険金支払、再保険コストの増大や生態系サービスの劣化に伴う自然への依存度が高いセクターの業績悪化による保険収益の減少、投資リターンの減少

・移行リスクの観点では、自然関連の訴訟等に伴う賠償責任保険の保険金支払増加、商品・サービスにおける生物多様性・自然資本の取組みや情報開示の優劣によるレピュテーションリスクや企業価値の低下

対応策の例

生物多様性・自然資本の開示基準に関する動向の調査や自社への影響評価を継続するとともに、国内外の保険事業バリューチェーンにおける生物多様性・自然資本への依存と影響を分析。

生成AI等がもたらす新たなリスク

リスクの概要・

当社事業への影響

・AIの急速な普及による社会的な変化などに対応できないこと、またはAI活用の遅れによる機会損失、競争力低下

・AIの業務利用における誤情報のお客さま等への提供、知的財産権の侵害、情報漏えい等、およびこれらに伴う社会的信用の失墜

対応策の例

社内業務利用等のAI活用推進。AIシステム開発時のリスク評価、利用開始後のモニタリングなどのガバナンス態勢の構築。利用者向けのガイドライン提供による社内教育・注意喚起

不確実性の高い要因による重要インフラの停止

リスクの概要・

当社事業への影響

セキュリティが不十分な物理的またはデジタル重要インフラの大規模・長期停止による当社の事業中断、想定外の巨額の保険金支払等

対応策の例

太陽嵐等を含めた不確実性の高い各種要因による災害の発生可能性や重要インフラに及ぼす影響に関する調査・分析を実施

ビジネスと人権に関する規制・ガイドライン強化

リスクの概要・

当社事業への影響

・グローバルな人権に関する法律や規制・ガイドラインの変更が人権に対する社会の感度を高め、それによって増加するステークホルダーからの人権訴訟の増大やレピュテーション毀損

・ステークホルダーから人権訴訟があった場合、訴訟に対応するための費用の発生。その他、人権尊重に関する当社グループの取組みが社会から不適切とみなされ、レピュテーションを毀損しブランド毀損や企業価値・信用の低下

対応策の例

ビジネスと人権に関する規制・ガイドラインで求められる事項に則った方針の公表、人権リスクのアセスメント強化、ステークホルダーとの対話を実施。グループ全体での人権デュー・ディリジェンスの取組みを実施する体制構築

 

 

② 重大リスクの分類ごとのリスクの概要と対応策の状況

経営戦略リスク

 

1. 競争環境の悪化・転換

 

<リスク概要>
デジタル関連等の異業種からの新規参入や生成AIをはじめデジタル技術進展への対応不十分による競争力・収益基盤の劣化・毀損、シェアリング経済の拡大や国内の人口減少・高齢化等を背景としたマーケット規模の縮小や技術革新に伴う事故の減少による保険ニーズの減少等による当社グループの経営成績等への影響

 

<対応策の状況>

 デジタル戦略、M&A等を実行し、「SOMPOのパーパス」実現へのトランスフォーメーションを進めております。例えば、生成AI活用・データドリブンな意思決定を可能にするワークフローの構築等をはじめとした既存事業の生産性向上、デジタル技術の活用や、防災・減災・モビリティ領域等における社会課題起点での新商品・サービスを通じた新たな価値創造、それらの実現を支えるデジタル分野の専門人材の採用・育成によるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めております。

 

 

 

 

 

 

2. マクロ経済環境の大幅な変化

 

<リスク概要>
世界経済の減速による収入の大幅減少、急激なインフレ進行による事業コスト・支払保険金の増加を商品・サービス価格に転嫁できない可能性や金融資産の価値下落

 

<対応策の状況>

 世界経済の減速や急激なインフレ変動など、マクロ経済の状況が事業に与える影響を注視し、保険料収入や支払保険金などの適切な見積もりおよびそれを踏まえた施策を講じております。また、マクロ経済環境の変化は、運用資産の価格変動を通じて当社の資本の状況にも大きな影響を与えるため、発生しうる複数のシナリオを設定したうえで、当社グループへの影響を分析し、対応策を講じております。

 

 

 

 

 

3. 地政学リスク

 

<リスク概要>
地政学的緊張の高まりによる制裁の応酬や重大事象の発生などによる当社グループへの波及的な影響(金融資産の価値下落、支払保険金増大、事業中断など)

 

<対応策の状況>

 外部専門家の知見も活用して、当社グループに大きな影響を及ぼすシナリオ(市場への影響含め)を調査し、財務的な影響の検証を行い、経営上の影響を見極められるよう注視しております。また、危機発生時の役職員の行動等を示したマニュアルや業務継続計画等を整備し、訓練や自主点検を通じて、実効性のある危機対応体制の維持に努めております。

 

 

 

 

4. パンデミック

 

<リスク概要>
人々の生活や産業活動に制約をかけるレベルのパンデミック(世界的な大流行)が発生した場合の当社グループに及ぼす影響(支払保険金増大、世界経済の減速による事業計画の未達、事業中断、金融資産の価値下落など)

 

<対応策の状況>

 新型コロナウイルスのパンデミック時に得た経験を踏まえ、新たな感染症等のパンデミックの発生に備えた業務継続計画を策定し、定期的に訓練を実施するとともに、業務継続計画の有効性の検証を行っております。また、その後の大きな変化から来る機会と脅威に柔軟に対応できるよう、環境変化への注視など続けてまいります。 

 

 

 

 

 

 

 

5. 税制・規制の変更

 

<リスク概要>
保険業に係る法規制、監督態勢、金融行政方針等の大幅な変更に対して適切な対応が実施されないリスク(行政処分、イノベーション機会の喪失、事業コストの増大、訴訟に伴う賠償金の支払い、レピュテーション毀損など)

 

<対応策の状況>

 関連法令の改正状況の把握に努め、必要な対応を実施しております。また、「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」や金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」における議論等、損害保険業の構造改革に関する動向を適時適切に把握しております。

 

 

 

 

 

 

6. ガバナンス不十分(内部統制の機能不全)

 

<リスク概要>
グループガバナンス機能(内部統制システムの整備・運用を含む)の発揮が不十分なことで生じるリスク(当社とグループ会社間におけるコミュニケーション不足・情報共有不足を起因とした当社の監督機能の不全。意思決定プロセスなどに対する内部統制システムの機能不全による戦略目標の実現不能、規制からの逸脱、レピュテーション毀損など。)

 

<対応策の状況>

 グループガバナンスを適切に機能させるために、リスクベースでグループ会社の内部統制の十分性・実効性を適時・適切に把握する管理・モニタリング体制の検証・強化を進めております。具体的には、損保ジャパンについては、当社役員の取締役兼任者を増員し、取締役会議長をグループCEOが務める等、監督態勢を強化しております。また、不芳情報の報告を含む当社とグループ会社間のコミュニケーションの活性化および内部通報制度の利用促進・スピークアップ風土の醸成に取り組んでおります。

 

 

 

 

 

7. 戦略投資・新事業に係るリスクの見誤り

 

<リスク概要>
戦略投資・新事業(デジタル技術関連を含む)に対するリスク認識が不十分なことによる、出資金の毀損、レピュテーション毀損、デジタル技術・システムによる投資対効果不発揮

 

<対応策の状況>

 デジタル戦略・M&Aや大規模システム開発等の大規模投資は取締役会等で妥当性を十分議論して実行しておりますが、環境変化や想定を超える困難などのために期待した成果が得られない可能性があるため、実行後も定期的に所定の基準に基づいて妥当性が失われていないことおよび撤退基準に抵触していないことを確認しております。

 

 

 

 

8. システム戦略リスク

 

<リスク概要>

・外部環境の急速な変化、プロジェクトマネジメントの不備、システム開発の複雑化、人材不足等の各種要因により、各事業に大きな影響を及ぼす大規模なシステム開発プロジェクトにおいて、スケジュール延伸、予算超過、品質低下等が発生するリスク

・ビジネスの機会損失、ROIの低下、企業の信用毀損の発生や他社との競争力の劣後等への影響

 

<対応策の状況>

 適切なITガバナンスを確保するため国際標準に沿った管理プロセスを整備しております。また、大規模システム開発プロジェクトに対しプロジェクトモニタリングを実施する態勢を整え、適切なプロジェクトの遂行に努めております。 

 

 

 

 

 

 

 

9. 気候変動(物理的リスク)

 

<リスク概要>

・気候変動による想定を超える巨大風水災損害(雪・雹災等を含む)の発生、または発生頻度の上昇による保険引受収支への影響

・風水災損害の拡大に伴い再保険マーケットがハード化し、再保険キャパシティが大幅に減少することによるリスクの集積および利益安定性の低下

 

<対応策の状況>

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)などの外部機関の研究成果や、大学等の研究機関と連携して得た科学的知見を踏まえた取組みを進めており、気象・気候ビッグデータを用いた大規模分析によって、台風や洪水、海面水位の変化の影響を受ける高潮の平均的な傾向変化や極端災害の発生傾向について、平均気温が上昇した気候下での長期的な影響を把握するための取組みを行っております。また、巨大風水災損害が当社グループに及ぼす影響をコントロールするために、商品改定・引受条件見直しを行っております。

 

 

 

 

 

 

10. サステナビリティリスク

 

<リスク概要>

・サステナビリティに関する企業への社会的要請が高まる中で、脱炭素社会への移行に向けた商品・サービス展開の遅れ等、対応が不十分なことによるステークホルダーからのレピュテーション毀損。気候変動対応に係る規制強化等による化石燃料資産の価格下落(座礁資産)

・ビジネスと人権の規範に反する不適切な行為・事象の発生、発生時の不十分な対応・未是正によるステークホルダーからのレピュテーション毀損

 

<対応策の状況>

 移行リスクについては、保険引受や資産運用を中心としたグリーントランジションプランを掲げ取組みを進めるとともに、人権リスクに関しては、各事業の事業プロセス(バリューチェーン全体)を対象に発生する可能性のある「潜在的な影響とリスク」を特定し、評価を行っております。これらの取組みについては、グループCSuOを議長とする「グループサステナブル経営推進協議会」において、状況把握、協議を行い、取締役会等に報告する体制を構築しております。

 

 

 

 

 

11. 人的資本リスク

 

<リスク概要>
・多様な意見が受け入れられるコーポレートカルチャーへの変革が進まないことによる従業員エンゲージメント低下

・グループ人材を強化できず、また、DEI等に対する対応不十分により人材確保ができず、戦略的な人材配置計画が実現しない状態の発生

 

<対応策の状況>

 人的資本のリスクについて、人事制度面では、人材競争力の向上を図るため、自律的なキャリア形成を促進するジョブ型人事制度や多様な働き方を実現する制度など、自分自身の人生の意義や目的あるいは働く意義である「MYパーパス」に基づくキャリアを描ける人事制度を構築しているほか、自律的な学びを促進するためのプラットフォームを整備して、その機会を従業員に提供しております。また、性別、障害の有無、国籍、年齢等に捉われない人材を登用したうえで、人材への投資を拡大することにより従業員の専門性向上を図り、さらには遵守しなければならない行動原則等の策定を含めた、グループ企業理念体系の見直しを実施し、グループ役職員の認識・思考・価値観および行動の変革および浸透を図っております。

 

 

 

 

 

 

 

財務・運用リスク

 

12. 市場の大幅悪化

 

<リスク概要>

・国内外の有価証券等に幅広く投資しており、株式・為替・金利相場の変動により、資産の価値が下落した場合の投資実現損や時価評価損の発生、公正価値の下落等による当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性

・予定利率(契約時にお客さまにお約束する運用利回り)を設定した契約期間が長期の保険商品を販売しており、金利の低下局面で、実際の運用利回りが予定利率を下回る可能性

・反対に、金利の上昇局面では、主に貯蓄性商品において、お客さまが予定利率の高い商品に乗り換えることに伴う保険契約の解約が増加する可能性

・国内生命保険事業については、保険商品の長期性から保険負債の金利感応度が大きく、資産の金利感応度とミスマッチが生じることにより、金利変動時に実質自己資本が減少するリスクが大きくなる可能性

 

<対応策の状況と評価>

 当社グループは、保有することで保険取引において公正な競争を阻害する要因となりうる株式については、2030年度末を目処に保有残高ゼロとする計画を策定しております。特に2024年度以降は削減ペースを加速させ、着実に残高が減少しており、株式相場下落の影響が低減するよう努めております。また、為替変動の影響については、グループベースで為替リスク量をモニターし、円高により自己資本が大幅に減少するリスクを管理しております。

 積立保険の満期返戻金や国内生命保険事業などの長期の保険負債の金利感応度に対しては、経済価値ベースの観点と保険業法に基づく会計の観点とのバランスを踏まえつつ長期の投融資を実行することで、資産負債全体の金利感応度を低減させ、実質自己資本に対する金利変動の影響を抑制するとともに、国内生命保険事業では、保障性商品をはじめとする金利の影響を受けにくい商品の保有割合を高めることにも努めております。なお、市場の大幅悪化など、経営に重大な影響を及ぼすストレスシナリオが顕在化した際の影響を定期的に評価しております。

 

 

 

 

 

 

13. 投融資先、出再先の破綻

 

<リスク概要>
投融資先・保証保険の保証先の破綻や信用力低下等による金融資産の価値下落・保険金支払、また出再先再保険会社の破綻等に伴う再保険金回収不能による当社グループの経営成績等への影響

 

<対応策の状況>

 投融資先については特定の与信先への集中、また再保険の出再先については特定の再保険会社への集中を回避するため、社内格付に応じたリミットを設定し、当該リミットを超えることがないように定期的にモニタリングを実施して適切に管理しております。

 

 

 

 

 

14. 大規模災害時の資金繰り

 

<リスク概要>
大規模災害時等の資金繰りのために多額の借入れや金融資産の売却等が必要となることによる当社グループの経営成績等への影響

 

<対応策の状況>

 資金繰りについては保険子会社ごとに管理しており、巨大災害時の資金ニーズや金利上昇に伴う解約増加等に対応できる流動性資産が十分確保されるようにして管理しております。

 

 

 

 

 

 

 

オペレーショナルリスクおよびコンプライアンスリスク

 

15. 委託先・提携先に関するリスク

 

<リスク概要>
代理店等を含む重要な外部委託先の業務遂行能力不足、経営破綻、法令等違反、不適切行為、サービス撤退等による委託業務の継続が困難となる状態の発生および賠償金支払やレピュテーション毀損

 

<対応策の状況>

 当社グループは、当社および損保ジャパンに対する行政処分の指摘を受けて、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり再発防止策を進めております。その中でも、コンプライアンスやお客さま保護を重視する健全な企業風土を醸成し、グループ役職員の認識・思考・価値観および行動を変革するために、遵守しなければならない行動原則等の策定を含めた、グループ企業理念体系の見直しを行いました。今後さらなる浸透を図るべく周知、教育等を行っていく予定であります。

 また、法規制や社会規範および企業倫理に則った適正な企業活動を行うための態勢を整備するだけではなく、グループ各社で発生している不適切事案の具体事例を分析し、共通する課題への対策を実施することなどにより、グループ全体の内部統制システムの実効性向上に努めてまいります。

 

 

 

 

 

 

16. システム障害

 

<リスク概要>

・機器の故障、人為的ミス、情報システムの不備といった内部要因や災害等の外部要因により、情報システムの停止、誤作動等のシステム障害が発生するリスク

・復旧コストの発生やサービス停止による機会損失、信用失墜による取引等への影響

 

<対応策の状況>

 適切なITガバナンスを確保するため国際標準に沿った管理プロセスを整備しております。各種手順や基準を定めることでシステム障害の未然防止を図るとともに、システム障害等の定期的な分析、事業継続計画(BCP)の整備、平時からの訓練といった各種対策を実施することで、継続的にシステムリスクの低減等に努めております。

 

 

 

 

 

17. サイバーセキュリティ

 

<リスク概要>

・サイバー攻撃により当社グループまたは代理店・委託先へのセキュリティ侵害が発生し、情報システムの停止、誤作動、不正使用、データ破壊・改ざん、重大な情報漏えい、サプライチェーンの寸断等が発生するリスク

・調査・復旧コストの発生やサービス停止による機会損失、信用失墜による取引等への影響の他、個人情報保護法やEU一般データ保護規則(GDPR)等の各国法令違反等の発生

 

<対応策の状況>

 日々高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対しては、対応能力を継続的に向上させることが何よりも重要と認識しております。サイバー攻撃に対する管理態勢を整えるとともに、グループ一丸となってサイバーセキュリティ対策(詳細は後述「サイバーセキュリティへの取組み」を参照)に取り組み、対応能力の継続的な向上を図っております。

 なお、2025年4月21日、損保ジャパンのウェブシステムに対する第三者による不正アクセスが発覚し、お客さまの情報の一部が外部に流出した可能性があることを認識しました。本件による影響を確認のうえ適切に対応を行うとともに、事案発生を踏まえた管理態勢の見直しを進めてまいります。

 

 

 

 

 

 

 

18. 労務リスク

 

<リスク概要>

・国内外の労働関連法令違反や過重労働に係る訴訟や離職者増加などによる、事業停止やレピュテーション毀損、健康経営取組みの不十分

・パワハラなどの各種ハラスメントを主因とした従業員の心身の不調、生産性低下などによるコスト負担や退職者の増加およびそれに伴う人材採用や要員確保が困難となる状態の発生

 

<対応策の状況>

 長時間労働等による労務リスクについては、適正な勤怠管理を徹底し、またハラスメントの撲滅、メンタルヘルス対策、健康経営推進およびキャリア採用者の拡充等を通じたインクルーシブな文化の醸成に取り組んでおります。

 

 

 

 

 

 

19. 機密情報・顧客情報漏えい(サイバー攻撃を除く)

 

<リスク概要>

グループ各社において、役職員による重大な情報漏えいの発生を起因とした賠償金支払およびレピュテーション毀損

 

<対応策の状況>

 「SOMPOグループ顧客情報管理基本方針」等を定め、各種の安全管理措置などの管理態勢を整備し、重大な情報漏えい発生の未然防止を図っております。

 

 

 

 

 

20. コンプライアンスリスク

 

<リスク概要>

・当社グループの各事業に適用される法規制や海外事業を展開する各国・地域で適用される法規制への違反とこれに伴う課徴金等の支払い、役職員等による不正行為、外部からの犯罪行為、訴訟に伴う賠償金の支払い等

・法令違反や不祥事等の発生による当社グループの社会的信頼・信用の失墜

 

<対応策の状況>

 法規制や社会規範および企業倫理に則った適正な企業活動を行うための態勢を整備するだけではなく、グループ各社で発生している不祥事等の具体事例を分析し、グループで共通する課題への対策を実施することなどにより、グループ全体の内部統制システムの実効性向上に努めております。役職員へは、「SOMPOグループコンプライアンス行動規範」や役職員を業務の中で正しい判断・行動へ導くための判断基準である「SOMPOのYes」などの研修を実施、コンプライアンス意識の浸透・定着を推進しております。また、不祥事等の早期発見を図るため、内部通報制度の利用に関するグループ共通の相談受付窓口を設置し、その実効性を検証しながら運用しております。

 

 

 

 

21. コンダクトリスク

 

<リスク概要>

・当社グループが提供する商品・サービスや業務慣行と社会やお客さまをはじめとしたステークホルダーの期待との間にギャップが生じることによる企業価値の毀損

・当社グループの商品・サービスや個人情報収集、AI活用などに関するガバナンスがステークホルダーの期待を下回る、および市場の健全性に悪影響を及ぼす可能性

 

<対応策の状況>

 コンプライアンスやお客さま保護を重視する健全な企業風土を醸成するため、グループ全役職員に適用される「SOMPOグループコンプライアンス行動規範 実践の手引き」をリニューアル、また「SOMPOのYes」を策定し、浸透を図るべく継続的に周知・教育等を行ってまいります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事業固有リスク

 

22. 国内巨大地震、23.国内巨大風水災、24. 海外巨大自然災害

 

<リスク概要>
・大規模な自然災害が発生し、多額の保険金等の支払いが発生することによる、保険引受収支への影響

・再保険の手配が困難となる等の影響により、リスクアペタイトに沿ったリスク管理が難しくなる状態

 

<対応策の状況>

 自然災害リスクについて、集積が過大とならないよう、グループの資本水準を踏まえたリミットを地域別・自然災害種類別に設定し、当該リミットを超えることがないように定期的にモニタリングを実施して適切に管理しております。また、ストレステストを定期的に行い資本の十分性を確認しつつ、再保険の活用や資本の充実を通じて事業の安定化を図るとともに、自然災害による保険金支払のリスクについて定量的に評価することで、適切な料率設定・商品設計を行っております。

 

 

 

 

 

 

25. テクノロジー巨大災害(サイバー)

 

<リスク概要>
大規模なサイバー攻撃等が発生し、多額の保険金の支払いが発生することによる、保険引受収支への影響

 

<対応策の状況>

 主要な保険子会社において、リスクモデルによる定量評価に基づくサイバー保険の予想最大損害額を算出し、あらかじめ設定したリミットまたはガイドラインに対する状況を定期的にモニタリングしております。

 

 

 

 

 

26. 従来型爆弾テロ

 

<リスク概要>

大規模なテロ攻撃から生じる、人的・物的・経済的混乱による甚大な損害

 

<対応策の状況>

 従来型爆弾テロなどの予想最大損害額を算出し、予め設定したリミットに対する状況を定期的にモニタリングしております。

 

 

 

 

27. 介護事業環境の見誤り

 

<リスク概要>

・在宅介護から施設介護までフルラインナップの介護サービスを提供していることから生じる、介護事業環境を見誤るリスク

・介護保険法の改正ならびに介護報酬の改定、介護市場における競争激化、介護人材の需給ギャップ拡大などに起因する従業員確保が困難となる状態の発生

 

<対応策の状況>

 SOMPOケア株式会社では、将来に向かって拡大していく介護人材の需給ギャップを見据え、データとテクノロジーの活用によって、介護施設のオペレーションの効率化を図ることで時間を創出し、人は人にしかできないことに注力し品質を伴う生産性向上を実現する「未来の介護」を追求しながら、介護事業の持続的成長を目指します。さらに、この流れを介護業界全体へ波及させることで、介護の未来を変えていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

28. 介護事業における重大不祥事件

 

<リスク概要>
・重大不祥事件が発生してブランド価値を毀損するリスク

・食中毒、集団感染症の発生、高齢者事業特有の事故等の発生およびそれらによる社会的信頼・信用の毀損、レピュテーション毀損

 

<対応策の状況>

 SOMPOケア株式会社では、ご利用者さまとの信頼を築くため、コーポレート・ガバナンス体制、事業所管理体制の構築に取り組んでおります。ガバナンス・リスク・クオリティ・コンプライアンス委員会を経営会議の諮問機関として設置し、リスク管理・品質にかかわる重大事象への対応や、内部監査結果などの内部統制に関する事項の審議を実施するとともに、本社リスク管理部門では事故情報を集約し、再発防止策の周知・徹底を図っております。

 

 

 

 

 

その他リスク

 

29. 事業中断

 

<リスク概要>
大規模地震等の自然災害、大規模テロ攻撃、新型感染症等のパンデミック、サイバー攻撃等による大規模システム障害等が発生し、本社機能、保険金支払、介護サービスの提供などにおける円滑な業務運営が阻害される状態

 

<対応策の状況>

 当社グループでは、従来から大規模な地震などの自然災害、新型感染症等のパンデミックの発生、サイバー攻撃等による大規模システム障害発生の有事に備えた業務継続計画を策定し、定期的に訓練を実施するとともに、業務継続計画の有効性の検証・改善等に努めております。  
 また、直近では、「首都直下地震」や「南海トラフ地震」の被害想定に基づくグループ各社の業務継続計画の整備状況の点検や最新の通信手段・電力ファシリティの配備、サイバー対応の有事体制やグループ内連携フローの明確化などを通じて、更なる危機対応力向上へ向け、グループ各社の重要業務の継続のための改善を行っております。

 

 

 

 

 

 

30. レピュテーションリスク

 

<リスク概要>
ネガティブ情報がマスメディアの報道・インターネット上の記事等に流布されることによるブランド価値の毀損

 

<対応策の状況>

 レピュテーションリスクについては、当社が定める規程において、ネガティブ情報による信用毀損リスクをコントロールする方法を明確化し、迅速かつ適切に対応することで、影響の抑制を図っております。また、危機発生時に情報開示要否を判断するための基準を作成し、適時適切な情報開示を徹底しております。さらに、不芳情報の報告ルールに基づき、グループ内のレピュテーション事案を会社として早期に把握する体制を構築しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

<サイバーセキュリティへの取組み>

① 基本方針の策定

 当社グループでは、サイバーセキュリティへの取組みにより安心・安全な社会を構築することが企業の社会的責任であるとの認識のもと、「SOMPOグループサイバーセキュリティ基本方針」を定め、グループ全体でサイバーリスク管理態勢の整備に努めております。

 

② 管理体制

 当社内にサイバーCoE(Center of Excellence)態勢を構築し、情報処理安全確保支援士やCISSP(Certified Information Systems Security Professional)などのサイバーセキュリティ人材が中心となり、グローバルレベルで実効的な態勢の強化を推進しております。その方針や方向性については、グループCIOをはじめとする関連役員による協議を踏まえ決定しており、特に部門横断での対応が求められるレジリエンスの強化に向けては、関係各部が相互に連携しながら対応にあたっております。

 


 

③ リスクの把握と対応計画策定

 当社グループでは、グループ各社のサイバーセキュリティ対策状況を定量的にモニタリングし可視化を行う「サイバーメトリックス」を構築しております。サイバーメトリックスは、グループ内の各社から、サイバーセキュリティの管理強度や網羅性に関するデータを集め、それらを統一的に評点化したうえで、ダッシュボード上に視覚的に表示したものです。これにより、各社のサイバーセキュリティ対策状況につき、経営層を含め、共通目線での理解を可能としております。各社の対策状況は、KPIを策定し管理しており、把握した課題に対しては、サイバーCoEや外部コンサルティング会社の知見を活用してPDCAサイクルを通じた改善を継続的に実施しております。

 

 

 

 

 

<サイバーメトリックスによるサイバーセキュリティ対策の可視化イメージ>


 

④ 緊急対応体制・復旧体制

 当社内にHD-CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を組成し、事案発生時の情報連携や意思決定、フォレンジック調査といった有事の際に必要となる各種対応を適時迅速に行えるよう組織的な整備を行っております。

 また、マルウェア感染等のインシデントを想定した実践的なサイバーインシデント演習を定期的に実施し、レジリエンスの強化に努めております。

 

⑤ 保護対策の実施

 当社グループでは、多層防御を前提とした総合的な技術的対策を実施しております。「ゼロトラストセキュリティ」の考えの下、SASE基盤(Secure Access Service Edge)の導入やSOC(Security Operation Center)での監視等を通し安全性の確保に努めているほか、クラウドの設定ミスを防ぐセキュリティガードレールの適用、インターネット資産の監視と保護を行うサイバーパトロール活動、IT資産を対象とした脆弱性診断、侵入テストの実施といった各種の対策を実施しております。

 人的対策としては、当社グループの全従業員を対象にサイバーセキュリティ教育やフィッシングメール訓練を実施し、従業員の倫理観とセキュリティ意識の向上を図っております。また、当社内にサイバーセキュリティの研究開発の拠点である「サイバーラボ」を設置し、サイバーセキュリティの知識共有を目的としたイベントや体験型の研修をグローバルレベルで定期的に開催することで、人材の育成と知識、専門性の向上に努めております。

 また、サイバーセキュリティ対策は当社グループのみではなく、取引先である代理店や委託先等における対策も不可欠であることから、契約時のセキュリティチェックや定期的なモニタリング等、取引先のセキュリティ対策を意識した取組みを実施しております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループは、当連結会計年度よりIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組替えて比較分析を行っております。当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態および経営成績の状況

■ 当社グループの経営成績の状況は、次のとおりであります。

当連結会計年度の世界経済は、欧米を中心に引き締め的な金融環境ではあったものの、個人消費が堅調に推移した米国経済が牽引し、総じてみれば緩やかに成長しました。わが国経済は、物価上昇が続いたにもかかわらず、企業収益や雇用・所得環境が改善する下で、緩やかに回復しました。ただし、米国の通商政策の影響、物価上昇の継続、金融資本市場の変動等下振れリスクには依然として注意が必要な状況にあります。

このような経営環境のもと、当連結会計年度における当社グループの業績は次のとおりとなりました。

保険サービス損益は、保険収益が5兆655億円、保険サービス費用が4兆4,011億円、再保険損益が△3,602億円となった結果、前連結会計年度に比べて474億円減少して3,041億円となりました。また、金融損益は投資損益が3,271億円、保険金融損益が△2,074億円となった結果、前連結会計年度に比べて2,016億円減少して1,197億円となりました。

以上の結果、保険サービス損益、金融損益にその他の損益を加減した当連結会計年度の税引前利益は、前連結会計年度に比べて2,842億円減少して3,302億円となりました。税引前利益に法人所得税費用などを加減した親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて2,865億円減少して2,431億円となりました。

 

■ 当社グループの財政状態の状況は、次のとおりであります。

資産合計は、前連結会計年度末に比べて5,699億円減少し、15兆8,900億円となりました。負債合計は、前連結会計年度末に比べて6,688億円減少し、11兆6,638億円となりました。資本合計は、前連結会計年度末に比べて989億円増加し、4兆2,261億円となりました。

 

■ 報告セグメントごとの経営成績の状況は、次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

保険収益は、前連結会計年度に比べて488億円増加して2兆6,344億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて1,341億円減少して583億円となりました。

 

区分

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

 至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

 至  2025年3月31日

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

保険収益

2,585,678

2,634,478

1.9

親会社の所有者に

帰属する当期利益

192,477

58,338

△69.7

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 IFRSへの移行日を2023年4月1日とし、2025年3月期よりIFRSを適用しているため、前連結会計年度の対前年増減(△)率は記載しておりません。

 

 

[海外保険事業]

保険収益は、前連結会計年度に比べて1,755億円増加して2兆2,277億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて826億円減少して1,777億円となりました。

 

区分

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

 至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

 至  2025年3月31日

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

保険収益

2,052,186

2,227,704

8.6

親会社の所有者に

帰属する当期利益

260,392

177,771

△31.7

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 IFRSへの移行日を2023年4月1日とし、2025年3月期よりIFRSを適用しているため、前連結会計年度の対前年増減(△)率は記載しておりません。

 

[国内生命保険事業]

保険収益は、前連結会計年度に比べて62億円増加して2,547億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて458億円減少して298億円となりました。

 

区分

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

 至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

 至  2025年3月31日

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

保険収益

248,493

254,716

2.5

親会社の所有者に

帰属する当期利益

75,714

29,876

△60.5

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 IFRSへの移行日を2023年4月1日とし、2025年3月期よりIFRSを適用しているため、前連結会計年度の対前年増減(△)率は記載しておりません。

 

[介護事業]

その他の営業収益は、前連結会計年度に比べて54億円増加して1,813億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて11億円減少して53億円となりました。

 

■ 報告セグメントごとの財政状態の状況は、次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べて5,134億円減少し、6兆3,119億円となりました。

 

[海外保険事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べて3,715億円増加し、5兆2,431億円となりました。

 

[国内生命保険事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べて4,665億円減少し、3兆3,924億円となりました。

 

[介護事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、有形固定資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べて16億円減少し、4,291億円となりました。

 

(参考)全事業の状況

 

保険引受業務

 

区分

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

 至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

 至  2025年3月31日

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

金額
(百万円)

対前年増減

(△)率(%)

保険収益

4,836,830

5,065,520

4.7

保険サービス費用

4,287,494

4,401,125

2.7

再保険損益

△197,750

△360,232

保険サービス損益

351,585

304,162

△13.5

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

2 IFRSへの移行日を2023年4月1日とし、2025年3月期よりIFRSを適用しているため、前連結会計年度の対前年増減(△)率は記載しておりません。

 

■ 当社グループのソルベンシー・マージン比率の状況は、次のとおりであります。

[連結ソルベンシー・マージン比率]

当社は、保険業法施行規則第210条の11の3および第210条の11の4ならびに平成23年金融庁告示第23号第1条第2項等の規定に基づき、IFRSにより作成した連結財務諸表を基に、連結ソルベンシー・マージン比率を算出しております。

保険会社グループは、保険事故発生の際の保険金支払や積立型保険の満期返戻金支払等に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生や、資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。こうした「通常の予測を超える危険」(表の「(B)連結リスクの合計額」)に対して「保険会社グループが保有している資本金・準備金等の支払余力」(表の「(A)連結ソルベンシー・マージン総額」)の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「(C)連結ソルベンシー・マージン比率」であります。

連結ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。

当連結会計年度末の当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べ94.7ポイント低下して602.9%となりました。

 

(単位:百万円)

区分

前連結会計年度
2024年3月31日

当連結会計年度
2025年3月31日

(A)

連結ソルベンシー・マージン総額

4,354,188

 

3,970,551

 

(B)

連結リスクの合計額

1,248,317

 

1,316,976

 

(C)

連結ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

697.6

602.9

 

(注)前連結会計年度の数値は日本基準により作成した連結財務諸表に基づき算出しております。

 

[単体ソルベンシー・マージン比率]

国内保険会社は、保険業法施行規則第86条および第87条ならびに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づき、単体ソルベンシー・マージン比率を算出しております。

保険会社は、保険事故発生や契約満期などの際における保険金・給付金や満期返戻金などの支払に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生、大幅な環境変化による死亡率の変動または保険会社が保有する資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。こうした「通常の予測を超える危険」(表の「(B)単体リスクの合計額」)に対して「保険会社が保有している資本金・準備金等の支払余力」(表の「(A)単体ソルベンシー・マージン総額」)の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「(C)単体ソルベンシー・マージン比率」であります。

単体ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、保険会社の経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。

当事業年度末の国内保険子会社の単体ソルベンシー・マージン比率の状況は以下のとおりです。

 

a)損害保険ジャパン株式会社

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
2024年3月31日

当事業年度
2025年3月31日

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

3,568,741

 

3,174,732

 

(B)

単体リスクの合計額

1,049,207

 

931,496

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

680.2

681.6

 

 

b)SOMPOダイレクト損害保険株式会社

 

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
2024年3月31日

当事業年度
2025年3月31日

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

19,009

 

21,180

 

(B)

単体リスクの合計額

11,011

 

12,373

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

345.2

342.3

 

 

c)SOMPOひまわり生命保険株式会社

 

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
2024年3月31日

当事業年度
2025年3月31日

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

422,873

 

360,047

 

(B)

単体リスクの合計額

74,928

 

74,280

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

1,128.7

969.4

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税等の支払額の増加などにより、前連結会計年度に比べて612億円減少し、5,730億円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却・償還による収入が減少した一方で、投資有価証券の取得による支出の減少などにより、前連結会計年度に比べて3,678億円増加し、△2,722億円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出の増加やレポ取引及び他の類似の担保付借入の純増減額の減少などにより、前連結会計年度に比べて3,690億円減少し、△4,816億円となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べて1,891億円減少し、1兆276億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

「生産、受注及び販売の実績」は、保険持株会社における業務の特殊性のため、該当する情報がありませんので記載しておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

■ 当社グループの経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

当期の当社グループは、国内損害保険事業において修理費単価の上昇や自然災害の激甚化・頻発化などの影響により自動車保険の収支が悪化しましたが、収益基盤と事業基盤の変革を着実に進め、海外保険事業では保険引受利益の改善と計画に沿った地理的な拡大を進めました。また、国内生命保険事業では、より魅力あるInsurhealth®を提供して法人・個人向けの健康応援サービスの利用促進との相乗効果でお客さま(ひまわりファン)を増やす取組みを、介護事業では、「未来の介護」モデルの展開による品質を伴う生産性向上や収益基盤の強化を、それぞれ着実に進めました。

当社はグループ全体の持株会社として、事業計画の遂行と企業価値の持続的な向上に必要な経営資源の配賦を行い、事業のトランスフォーメーションとポートフォリオ変革を推進しました。

これらの取組みの結果、連結主要指標は以下のとおりとなりました。

連結主要指標

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日

増減

増減率

保険収益

4,836,830

5,065,520

228,690

4.7

保険サービス費用

4,287,494

4,401,125

113,630

2.7

再保険損益

△197,750

△360,232

△162,482

保険サービス損益

351,585

304,162

△47,422

△13.5

金融損益

321,404

119,734

△201,670

△62.7

その他の営業収益

214,074

220,689

6,614

3.1

親会社の所有者に

帰属する当期利益

529,655

243,132

△286,522

△54.1

 

保険収益は、海外保険事業における現地通貨建てでの増収のほか為替影響などにより、前連結会計年度に比べて2,286億円増加し、5兆655億円となりました。

保険サービス費用は、海外保険事業における自然災害の増加や為替影響などにより、前連結会計年度に比べて1,136億円増加し、4兆4,011億円となりました。

再保険損益は、海外保険事業における再保険金回収の減少などにより、前連結会計年度に比べて1,624億円減少して、△3,602億円となりました。

金融損益は、国内損害保険事業における市況変動影響などにより、前連結会計年度に比べて2,016億円減少して、1,197億円となりました。

保険サービス損益、金融損益にその他の損益を加減した当連結会計年度の税引前利益は、前連結会計年度に比べて2,842億円減少して3,302億円となりました。税引前利益に法人所得税費用などを加減した親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて2,865億円減少して2,431億円となりました。

 

なお、目標とする経営指標であるKPIの進捗状況については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

■ 当社グループの財政状態の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[資産]

当連結会計年度末の資産合計は、国内株式などの投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べて5,699億円減少し、15兆8,900億円となりました。

 

[負債]

当連結会計年度末の負債合計は、レポ取引及び他の類似の担保付借入の減少などにより、前連結会計年度末に比べて6,688億円減少し、11兆6,638億円となりました。

 

[資本]

当連結会計年度末の資本合計は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上に伴う利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末に比べて989億円増加し、4兆2,261億円となりました。

 

■ 報告セグメントごとの経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

国内損害保険事業は、全社規模の変革プロジェクトであるSJ-Rを中心に、ポートフォリオ・アンダーライティング変革、営業変革などの収益基盤の変革、カルチャー変革や品質管理の強化、データドリブン推進などの事業基盤の変革に取り組んでまいりました。

これらの取組みの一方、インフレの進行による保険金支払単価・物件費の上昇や為替・株価などの影響により、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日

増減

増減率

保険収益

2,585,678

2,634,478

48,800

1.9

親会社の所有者に

帰属する当期利益

192,477

58,338

△134,139

△69.7

 

保険収益は、火災保険の商品改定効果や新種保険の拡販などにより、前連結会計年度に比べて488億円増収し、2兆6,344億円となりました。   

親会社の所有者に帰属する当期利益は、資産運用損益が減益となったことなどにより、前連結会計年度に比べ1,341億円減少し、583億円となりました。資産運用損益の減益は、市場変動による前年度の増益の反動が主な要因であると認識しております。

 

[海外保険事業]

海外保険事業は、戦略的事業規模の拡大を継続し、規律ある保険引受に基づいた分散されたポートフォリオを構築したことにより、収益性が向上しました。さらに、地理的拡大への投資も奏功し、運用資産の増加および昨今の金利動向に沿った再投資利回りの上昇により、運用収益が増加しました。

これらの取組みの結果、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日

増減

増減率

保険収益

2,052,186

2,227,704

175,517

8.6

親会社の所有者に

帰属する当期利益

260,392

177,771

△82,621

△31.7

 

保険収益は、Sompo International Holdings Ltd.における増収を主因に、前連結会計年度に比べて1,755億円増加し2兆2,277億円となりました。これは、作物価格の下落と地理的集積リスクの抑制を目的としたポートフォリオの見直しによる農業保険の減収があったものの、コマーシャル分野の北米、英国、EMEA地域および再保険の各事業セグメントの成長に加え、コンシューマー分野における増収が主な要因であると認識しております。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、Sompo International Holdings Ltd.における減益などにより前連結会計年度に比べて826億円減少し、1,777億円となりました。金利上昇と運用資産の増加による運用収益の増収および割引率の上昇による保険負債の減少があったものの、Sompo International Holdings Ltd.における大規模自然災害による損害の増加および農業保険の再保険回収の減少が主な要因であると認識しております。

 

 

[国内生命保険事業]

国内生命保険事業の主な取組みとして、「健康応援企業」の確立を目指し、保険本来の機能である「万が一」への備え(Insurance)に加えて「毎日」に寄り添い健康を応援する機能(Healthcare)を組み合わせた新たな価値「Insurhealth®(インシュアヘルス)」を提供しております。

2024年度は、限定告知型医療保険(M2)(入院治療給付型)を投入することで、シニア層を中心にインシュアヘルスを届けてお客さまの拡大を図り、お客さまの健康行動を後押しする取組みを行ってまいりました。

これらの取組みの結果、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日

増減

増減率

保険収益

248,493

254,716

6,222

2.5

親会社の所有者に

帰属する当期利益

75,714

29,876

△45,838

△60.5

 

保険収益は、前連結会計年度に比べて62億円増加し、2,547億円となりました。これらは、保障性商品を中心とした保有契約の増加が主な要因であると認識しております。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて458億円減少し、298億円となりました。これらは、為替影響が主な要因であると認識しております。

 

[介護事業]

介護事業では、基盤のオペレーター事業に加え、プラットフォーム事業とグループの中核として取り組むウェルビーイング事業を新たな収益の柱とすることで、自社の利益成長だけでなく、介護業界全体の変革、発展を目指してまいりました。

介護事業の主な取組みとして、オペレーター事業では、収益力の向上、「未来の介護」モデルの展開、物価高騰などの外部環境への適応に取り組み、介護施設の入居率は事業参入以来最高の94.7%(2025年3月末時点)を達成しました。また、プラットフォーム事業では、エヌ・デーソフトウェア株式会社の介護ソフトウェア、オペレーター事業で培ったフード、コンサルティングサービスの外販などに取り組みました。そしてウェルビーイング事業では、介護・健康・老後資金の不安にワンストップで応える介護を軸としたサービスの展開に取り組んでおります。

これらの取組みの結果、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日

増減

増減率

その他の営業収益

175,870

181,368

5,498

3.1

親会社の所有者に

帰属する当期利益

6,414

5,303

△1,110

△17.3

 

その他の営業収益は、前連結会計年度に比べて54億円増加し、1,813億円となりました。これらはSOMPOケアにおいて積極的な営業活動の実施に伴い入居率が向上したことなどが主な要因であると認識しております。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べて11億円減少し、53億円となりました。これらは2024年度の税制改正影響(外形標準課税)の効果がなくなったことによる影響などが主な要因であると認識しております。

 

なお、目標とする経営指標であるKPIの報告セグメントごとの進捗状況については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 報告セグメントごとの経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

■ 報告セグメントごとの財政状態の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、国内株式などの投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べて5,134億円減少し、6兆3,119億円となりました。

 

[海外保険事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、外国債券などの投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べて3,715億円増加し、5兆2,431億円となりました。

 

[国内生命保険事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、国債などの投資有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べて4,665億円減少し、3兆3,924億円となりました。

 

[介護事業]

当連結会計年度末のセグメント資産は、有形固定資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べて16億円減少し、4,291億円となりました。

 

■ 当社グループのソルベンシー・マージン比率の分析の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[連結ソルベンシー・マージン比率]

 

(単位:百万円)

区分

前連結会計年度
2024年3月31日

当連結会計年度
2025年3月31日

増減

(A)

連結ソルベンシー・マージン総額

4,354,188

 

3,970,551

 

△383,636

 

(B)

連結リスクの合計額

1,248,317

 

1,316,976

 

68,659

 

(C)

連結ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

697.6

602.9

△94.7

pt

 

(注)前連結会計年度の数値は日本基準により作成した連結財務諸表に基づき算出しております。

 

連結ソルベンシー・マージン総額は、会計基準の変更等により、3,836億円減少し、3兆9,705億円となりました。

連結リスクの合計額は、会計基準の変更等により、686億円増加し、1兆3,169億円となりました。

結果、連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べて94.7ポイント低下して602.9%となりましたが、「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされる200%を上回る水準となっております。

 

[単体ソルベンシー・マージン比率]

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
2024年3月31日

当事業年度
2025年3月31日

増減

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

3,568,741

 

3,174,732

 

△394,009

 

(B)

単体リスクの合計額

1,049,207

 

931,496

 

△117,710

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

680.2

681.6

1.4

pt

 

損害保険ジャパン株式会社については、単体ソルベンシー・マージン総額は、国内株式相場の下落等により、3,940億円減少し、3兆1,747億円となりました。

単体リスクの合計額は、国内株式相場の下落による資産運用リスクの減少等により、1,177億円減少し、9,314億円となりました。

結果、単体ソルベンシー・マージン比率は、前事業年度末に比べて1.4ポイント上昇して681.6%となり、「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされる200%を上回る水準となっております。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報

■ 当連結会計年度における区分ごとのキャッシュ・フローの状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

634,292

573,009

△61,282

投資活動によるキャッシュ・フロー

△640,089

△272,236

367,853

財務活動によるキャッシュ・フロー

△112,617

△481,660

△369,042

現金及び現金同等物の期末残高

1,216,739

1,027,628

△189,111

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、損害保険ジャパン株式会社などの法人所得税等の支払額の増加などにより、前連結会計年度に比べて612億円減少し、5,730億円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、Sompo International Holdings Ltd.などの投資有価証券の売却・償還による収入が減少した一方で、Sompo International Holdings Ltd.などの投資有価証券の取得による支出の減少などにより前連結会計年度に比べて3,678億円増加し、△2,722億円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出の増加や損害保険ジャパン株式会社のレポ取引及び他の類似の担保付借入の純増減額の減少などにより前連結会計年度に比べて3,690億円減少し、
△4,816億円となりました。

 

■ 当社グループの資本の財源および資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。

 (経営資源の配分に関する考え方)

 当社の事業計画は、グループCEOの諮問機関であるグループ執行会議での協議を経て、策定しております。事業計画を踏まえ、SOMPO P&C(損害保険事業)とSOMPOウェルビーイングの2つのビジネス領域およびビジネス領域内の事業毎に成長性や収益性を考慮して資本配賦を実施し、各ビジネス領域および事業では配賦された資本を元に事業運営を行い、事業計画における修正連結ROEおよび修正EPS成長率の目標達成を目指しております。また、経営環境の変化や計画の進捗状況等を定期的に確認し、必要に応じて事業計画や資本配賦について見直しを行っております。

  (資金需要の動向および資本の財源) 

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、成長事業分野への投資資金および株主還元であります。このうち、運転資金および株主還元については、主として営業活動および投資活動によるキャッシュ・フローを財源としております。また、成長事業分野への投資資金については、自己資金の活用に加え、必要に応じて社債や借入金等の外部から調達した資金を財源としております。

資金調達にあたっては、財務健全性の維持およびコストの低減に十分留意しながら、最適な手段を選択することとしております。リスクに対して適切な資本を確保しているかを示す指標であるEconomic Solvency Ratio(以下「ESR」といいます。)のターゲットレンジは、中期経営計画(2024年度~2026年度)においては200~250%としておりますが、当連結会計年度末のESRは256%であり、十分な財務健全性を維持しております。

株主還元については、中期経営計画の株主還元方針として、基礎還元を修正連結利益の50%(※)とし、利益成長により還元総額(配当総額+自己株式取得額)を拡大させていくこととしております。また、原則として政策株式売却損益等(税後)の50%を追加還元するとともに、リスクと資本の状況、業績動向や金融市場環境などをふまえて資本水準調整も検討します。また、中期的な利益成長にあわせた増配を原則とし、基礎還元に占める配当の割合を高めていくこととしております。

当社の配当政策については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。

 

※2025年度以降は、修正連結利益の直近3年平均の50%を基礎還元とします。

 

    (資金の流動性) 

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は1,027,628百万円でありますが、日々の資金繰り管理のほか、巨大災害発生時などの最大資金流出量を想定しそれに対応できる水準の流動性資産が確保されるよう管理しております。

 

③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」といいます。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しており、当社グループの連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積りは、次のとおりであります。

・金融商品の公正価値評価

・のれんの減損

・保険契約および再保険契約に係る履行キャッシュ・フローの見積り

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。

 

 

(3) 並行開示情報

連結財務諸表規則(第3編から第6編までを除く。以下「日本基準」といいます。)により作成した要約連結財務諸表は、次のとおりであります。

なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

 

① 要約連結貸借対照表(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

資産の部

 

 

現金及び預貯金

1,231,345

998,947

コールローン

30,000

買現先勘定

14,999

209,861

買入金銭債権

21,686

20,563

金銭の信託

4,843

4,721

有価証券

11,424,810

11,572,638

貸付金

451,662

433,134

有形固定資産

371,583

384,814

無形固定資産

518,922

485,125

その他資産

710,294

782,964

退職給付に係る資産

433

687

繰延税金資産

85,110

109,478

貸倒引当金

△2,913

△2,921

資産の部合計

14,832,778

15,030,015

負債の部

 

 

保険契約準備金

9,810,421

10,449,179

社債

682,349

691,395

その他負債

1,111,287

792,083

退職給付に係る負債

21,654

28,357

役員退職慰労引当金

16

21

賞与引当金

57,500

63,511

役員賞与引当金

443

595

株式給付引当金

2,535

1,995

特別法上の準備金

116,413

121,975

繰延税金負債

161,895

15,767

負債の部合計

11,964,519

12,164,882

純資産の部

 

 

株主資本

1,419,799

1,560,051

その他の包括利益累計額

1,432,100

1,286,991

新株予約権

235

3

非支配株主持分

16,123

18,086

純資産の部合計

2,868,258

2,865,132

負債及び純資産の部合計

14,832,778

15,030,015

 

 

 

② 要約連結損益計算書および要約連結包括利益計算書(日本基準)
要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

経常収益

4,933,646

5,453,769

保険引受収益

4,099,489

4,432,472

資産運用収益

592,545

793,063

その他経常収益

241,611

228,234

経常費用

4,445,611

4,900,845

保険引受費用

3,495,132

3,833,977

資産運用費用

108,014

124,290

営業費及び一般管理費

658,750

725,039

その他経常費用

183,714

217,538

経常利益

488,034

552,924

特別利益

1,129

674

特別損失

9,583

9,308

税金等調整前当期純利益

479,581

544,290

法人税等合計

61,514

119,222

当期純利益

418,066

425,067

非支配株主に帰属する当期純利益

2,012

2,139

親会社株主に帰属する当期純利益

416,054

422,927

 

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

当期純利益

418,066

425,067

その他の包括利益

643,779

△143,970

包括利益

1,061,846

281,096

(内訳)

 

 

親会社株主に係る包括利益

1,059,555

277,817

非支配株主に係る包括利益

2,291

3,279

 

 

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

1,114,447

788,599

269

15,824

1,919,140

超インフレによる
影響額

4,059

 

 

 

4,059

当期首残高(調整後)

1,118,506

788,599

269

15,824

1,923,200

当期変動額

301,292

643,500

△33

298

945,058

当期末残高

1,419,799

1,432,100

235

16,123

2,868,258

 

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

1,419,799

1,432,100

235

16,123

2,868,258

超インフレによる
影響額

5,944

 

 

 

5,944

当期首残高(調整後)

1,425,743

1,432,100

235

16,123

2,874,203

当期変動額

134,307

△145,109

△232

1,963

△9,070

当期末残高

1,560,051

1,286,991

3

18,086

2,865,132

 

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

473,137

430,676

投資活動によるキャッシュ・フロー

△496,986

△53,251

財務活動によるキャッシュ・フロー

△87,612

△457,402

現金及び現金同等物に係る換算差額

38,988

30,749

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△72,473

△49,228

現金及び現金同等物の期首残高

1,271,040

1,198,566

現金及び現金同等物の期末残高

1,198,566

1,149,338

 

 

 

⑤ 要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)

 

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(会計方針の変更)

(IFRS第17号「保険契約」)

IFRSを適用している海外連結子会社は、当連結会計年度の期首から、IFRS第17号「保険契約」を適用しております。これにより、貨幣の時間価値、保険契約から生じるキャッシュ・フローの金融リスクおよび保険契約から生じるキャッシュ・フローの不確実性の影響を反映するよう保険契約準備金が測定されております。

当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表になっております。この結果、遡及適用前と比較して、前連結会計年度の経常費用が81,743百万円減少し、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ81,743百万円増加しております。また、前連結会計年度のその他資産が1,109,401百万円、その他負債が515,938百万円、保険契約準備金が643,254百万円減少しております。前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより利益剰余金の前期首残高は16,769百万円減少しております。

 

(IFRS第9号「金融商品」)

IFRSを適用している海外連結子会社は、当連結会計年度の期首から、IFRS第9号「金融商品」を適用しております。これにより、金融商品の分類および測定方法等を変更しております。

当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表になっております。この結果、遡及適用前と比較して、前連結会計年度の経常収益が81,265百万円減少、経常費用が73,503百万円増加し、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ154,768百万円減少しております。また、前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより利益剰余金の前期首残高は7,578百万円増加し、その他有価証券評価差額金の前期首残高が7,578百万円減少しております。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

該当事項はありません。

 

(4) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、次のとおりであります。

 

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 39.IFRSへの移行に関する開示」に記載しております。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(投資有価証券(資本性金融商品))

日本基準においてその他有価証券に分類した株式は、売却損益および減損損失を純損益として認識しておりましたが、IFRSにおいては、その他の包括利益を通じて公正価値で測定される資本性金融資産に指定し、公正価値の変動額をその他の包括利益として認識し、当該金融資産の認識を中止した場合には、その他の包括利益累積額を利益剰余金に振り替えております。また、日本基準においては、非上場株式は原則として取得原価で測定しておりましたが、IFRSにおいては公正価値で測定しております。この影響により、IFRSの投資損益は、日本基準のこれに相当する項目に比べて、357,753百万円減少しております。また、IFRSでは日本基準に比べて、その他の包括利益(税効果調整後)が271,572百万円増加しております。

 

 

(保険契約および再保険契約)

日本基準およびIFRSにおける測定方法および表示方法には、次のとおり大きく異なる部分があることから、日本基準における計上額の全額を取り消し、IFRSにおける計上額の全額を改めて計上しております。

 

分類および測定

日本基準においては保険業法における保険契約準備金を負債として計上しておりましたが、IFRSにおいては「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に基づいて測定された保険契約および再保険契約を資産または負債として計上しております。

日本基準およびIFRSにおける測定方法は、保険料配分アプローチ(Premium Allocation Approach)を適用して測定する契約に係る残存カバーに係る資産および負債については概ね類似しておりますが、同契約に係る発生保険金に係る資産および負債ならびに保険料配分アプローチを適用せずに測定する契約に係る資産および負債については、主に次の差異があります。

・日本基準においては、原則として割引計算を行っておりませんでしたが、IFRSにおいては、見積将来キャッシュ・フローに貨幣の時間価値を反映させて測定しております。

・日本基準においては、明示的にはリスク調整を考慮しておりませんでしたが、IFRSにおいては、見積将来キャッシュ・フローに非金融リスクに係るリスク調整を反映させて測定しております。

・日本基準においては、原則として契約締結時点における見積りの前提に基づいておりましたが、IFRSにおいては、見積将来キャッシュ・フローは期末日現在における見積りに基づいて測定しております。

・日本基準においては、原則として保険契約に係る費用は発生時に認識しておりましたが、IFRSにおいては、新契約費および直接維持費については見積将来キャッシュ・フローの測定に含めております。

この影響により、IFRSの保険契約資産、保険契約負債、再保険契約資産および再保険契約負債の純額(負債)は、日本基準のこれらに相当する項目の純額(負債)に比べて、2,329,915百万円減少しております。

 

保険収益の表示

日本基準においては保険契約者から収受した時点で認識する収入保険料と保険契約準備金の一部である責任準備金等の増減(費用として表示される「責任準備金等繰入額」または収益として表示される「責任準備金等戻入額」)とに区分して表示しておりましたが、IFRSにおいては「保険収益」として表示しております。

 

保険サービス費用の表示

日本基準においては保険契約者に支払った時点で認識する支払保険金、保険契約準備金の一部である支払備金の増減(費用として表示される「支払備金繰入額」または収益として表示される「支払備金戻入額」)などに区分して表示しておりましたが、IFRSにおいては「保険サービス費用」として表示しております。また、IFRSにおいては、不利な契約に係る損益についても「保険サービス費用」に含めております。

 

(のれん)

日本基準においてはのれんについて一定期間で均等償却しておりましたが、IFRSにおいては移行日以降の償却を停止し、減損テストを実施しております。この影響により、IFRSの一般管理費は、日本基準のこれに相当する項目に比べて、38,319百万円減少しております。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。