文中の将来に関する事項は、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、事業活動の基礎となる「ENEOSグループ理念」を次のとおり定めています。
当社グループは、この「ENEOSグループ理念」の実現のために、基幹事業の強化・イノベーションの推進・グローバルな事業展開を図ります。あわせて、これらを推進していくうえで欠かせない高い倫理観とチャレンジ精神を持った人材を育成し、国際的な競争力を有するアジアを代表するエネルギー・素材企業グループを目指します。
(2)長期ビジョンの策定
当社グループは、世界的な脱炭素社会形成に向けた動きの加速、IoT・AI等の普及によるイノベーションの急速な進展、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ企業に求められる社会的責任の高まりなど、過去に例を見ない社会環境・事業環境の変化に直面しています。加えて、国内の燃料油需要は、年々減少し、2040年には現在の約半分となることが想定されます。このように事業環境の先行きに対する不安が増しつつある一方、当社グループには、その事業特性上、長期的展望に基づく戦略的な投資が不可欠であることから、未来を見据えたビジョンの構築が必要です。
そのため、当社は、「長期グローバルトレンド」を分析して「2040年の社会シナリオ」を想定した上で、同年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」を描き、これらを「2040年当社グループ長期ビジョン」として取りまとめ、2019年5月に公表しています。(一部改訂、2020年5月20日)
・「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」
「長期グローバルトレンド」としては、脱炭素・循環型社会の形成に向けた取り組みが進み、デジタル革命の進展と相まって、人々のライフスタイルは大きく変化することが予想されます。こうした潮流の下、世界の一次エネルギー需要は、非化石エネルギーの割合が増加し、世界の石油化学製品需要・銅地金需要は、アジアの新興国の経済成長を背景に拡大すると見込まれます。
このような「長期グローバルトレンド」を踏まえると、「2040年の社会シナリオ」としては、安価な再生可能エネルギーの大量導入、EVやカーシェアリングの普及、各施設・住宅への分散型太陽光発電及び蓄電池の設置等が進むと想定されます。また、プラスチック・金属をはじめとする資源のリサイクルインフラが拡充されていくものと考えられます。さらに、これらの変化に伴い、人々の生活を快適にするべく、多様なサービス提供者が現れると思われます。
・2040年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」
以上の「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」を前提に、当社グループが将来にわたって社会に必要とされる企業集団であるための要素を検討し、2040年における当社グループの「ありたい姿」を定めました。当社グループは、この「ありたい姿」を実現するため、安全・環境・健康を最優先に考えるとともに、多様性に富んだグローバル人材の育成・登用やICT(情報通信技術)活用による業務品質の劇的向上等により、企業風土の変革を図っていきます。
当社グループは、長期ビジョンに掲げる「ありたい姿」の実現のための「事業の将来像」を礎とした、第2次中期経営計画を実行することにより、成長戦略の追求とキャッシュ・フロー重視経営との両立による持続的な企業価値の向上を図り、すべてのステークホルダーの期待に応えていきます。
(3)目標とする経営指標
当社は、2020年5月に2020年度からの3ヵ年の第2次中期経営計画(2020-2022年度中期経営計画)を次のとおり策定しています。
当社は、本中計を「2040年当社グループ長期ビジョン」の実現に向けた変革の推進と位置づけ、各事業ポートフォリオにおける「構造改革の加速」及び「成長事業の育成・強化」をテーマに策定しています。
<基本方針>
<財務計画>
<事業戦略>
<第2次中期経営計画の見通し>
2020年5月に策定した第2次中期経営計画においては、新型コロナウイルス感染症の影響を2020年度上期まで織り込んでいましたが、現時点でもその収束を見通すことが困難な状況が続いています。第2次中期経営計画の最終年度である2022年度まで、新型コロナウイルス感染症を主因とした販売数量の減少や製品市況の悪化等の影響が一定程度継続することを前提とすると、営業損益等に大きく影響を与える見込みです。このような状況を踏まえ、追加的なコスト削減や資産売却等の対策を織り込み業績等を見通した結果、現時点の主な経営指標の見通しは以下のとおりです。
今後、当初の目標が達成できるよう経営努力を進めていくとともに、成長事業の育成や事業ポートフォリオの改革をさらに加速していきます。
(4)ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み
・ESG経営の推進
当社グループは、「2040年当社グループ長期ビジョン」に示す「ありたい姿」の実現を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の目指す持続可能な社会の実現に貢献し、経済価値のみならず社会価値を創出すべく、ESG経営を推進しています。世界的に関心が高まっている社会課題を踏まえた将来のリスク・事業機会については、「ESG経営に関する基本方針」に基づき、当社の経営会議において包括的に審議・特定しています。
・第三者からの評価(2021年3月31日現在)
・ESG説明会の開催
2020年12月、当社は、アナリストや機関投資家を対象にESG説明会をオンラインで開催しました。同説明会においては、当社がESGを経営の根幹に位置付けていること、将来の社会課題を踏まえた事業戦略を立案・遂行していることなどについて説明し、参加者と活発な議論を行いました。引き続き、当社グループにおけるESG経営について、積極的な情報発信に努めます。
・具体的な取り組み
[脱炭素・循環型社会への貢献]
脱炭素社会の実現に貢献すべく、当社グループは、CO2排出削減に取り組んでいます。製造面では、製油所・製錬所等での高効率・省エネ設備の導入推進と装置運転の最適化を図り、販売面では、再生可能エネルギーを含む環境配慮型商品の拡販を行っています。また、水素事業の推進やCO2-EOR技術の導入などにも取り組んでいます。
循環型社会形成に向け、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進し、事業全般で廃棄物の再生利用化や分別を徹底するなど、ゼロエミッション(廃棄物最終処分率1%未満)を維持しています。また、廃プラスチックのリサイクル、レアメタルの再資源化等の環境リサイクル事業を推進しています。
[カーボンニュートラルに向けて]
環境負荷の低い事業を強化・拡大するとともに、環境対応型事業の強化を通じて、2040年に自社排出分のカーボンニュートラルを目指します。
[社会課題解決へ不断の取り組み]
当社グループは、人権の尊重を最優先課題の1つに定めています。2019年度に実施した人権デュー・ディリジェンスの結果を踏まえ、サプライヤーの選定に当たり、国内外における人権原則の尊重、環境への配慮等を判断要素とすることとし、「ENEOSグループ調達方針」を制定しました。また、人権意識の向上と人権問題発生の未然防止に向けて、全役員・従業員を対象とした人権研修の開催や相談窓口の強化に取り組んでいます。
全ての従業員が能力を最大限に発揮できるよう、一貫性のある人材育成体制を確立し、従業員それぞれの活躍の場を広げる人材活用を進めているほか、テレワークのさらなる活用など働きやすい環境の整備に取り組んでいます。
[ガバナンス体制の強化]
2020年6月、当社は、スピード経営を実現する執行体制の構築と取締役会によるモニタリングの強化を目的に、当社とENEOS株式会社の経営を実質的に統合して運営する体制に移行しました。業務執行における意思決定を迅速に行うべく権限委譲を進めた一方で、ROIC-WACCを用いた事業評価などの報告事項を充実させることで、取締役会の監督機能の強化を図りました。
中長期的な経営戦略と報酬制度の連動性を一層高め、また、持続可能な社会に向けた取組みを推進すべく、監査等委員でない取締役及び執行役員(社外取締役及び国外居住者を除きます。)を対象とする株式報酬制度を業績連動型に改定しました。
(5)対処すべき課題
カーボンニュートラル(CO2排出量の実質ゼロ)を目指す動きは、世界的に拡大しています。また、国連サミットで採択されたSDGsへの貢献をはじめ、企業に求められる社会的責任がますます高まっています。
このような脱炭素・循環型社会の形成に向けた世界的潮流を踏まえ、当社グループは、「2040年当社グループ長期ビジョン」(長期ビジョン)において、国内の燃料油需要が2040年に2018年度比で約半分になると想定していますが、昨今の働き方や移動に対する考え方の変化から、需要減少スピードはさらに速まる可能性があります。
他方、AI、IoT、5G等の普及によるデジタル革命の進展や新型コロナウイルスの感染防止策を日常生活に取り入れた「新しい生活様式」の浸透に伴い、様々なニーズの創出が見込まれます。
このように不透明かつ移り変わりの激しい事業環境下、当社グループは、新型コロナウイルスの感染防止策を徹底してエネルギー・素材の安定供給の使命を果たし続けるとともに、基盤事業の競争力強化を図ります。また、カーボンニュートラルの実現に向けた世界的な動きに対応し、変化する社会のニーズに応えるべく、成長事業の育成・強化に取り組みます。
このため、当社グループは、長期ビジョンに掲げる「2040年ENEOSグループのありたい姿」の実現に向けて、各事業において、第2次中期経営計画に沿って、以下に挙げる施策を実行していきます。
<基盤事業>
●石油精製販売事業
さらなる競争力強化を目指し、AI、デジタルツイン(現実の世界をコンピューター上に再現する技術)等を含む新技術の積極導入による製油所の安定・効率操業体制の確立に取り組むとともに、サプライチェーン改革を断行します。
●石油・天然ガス開発事業
新型コロナウイルスの感染防止策を継続し、安全・安定操業の継続に努めます。また、低油価耐性を強化するため、デジタル技術を活用してコスト削減及び効率化を進め、既存プロジェクトからのキャッシュフローを最大化します。
●銅資源・製錬事業
カセロネス銅鉱山は、操業重点課題のアクションプランの策定と確実な実行により、一層の収益力強化を目指します。また、原料構成の最適化や物流拠点の新設・能力増強によるリサイクル原料の増集荷・増処理など、佐賀関製錬所の競争力強化に向けた取組みを推進し、事業収益の最大化を図ります。
<成長事業>
●石油化学事業
鹿島コンビナートにおいては、原料や製造プロセスの効率化、ガソリン基材の石化利用及び誘導品を含む石油化学製品の生産最適化に関する検討を推進します。また、川崎、水島及び大分の各コンビナートにおいても、ケミカル比率向上に向けた施策を具体化します。
ENB(自動車部材向け合成ゴム添加剤用途)については、引き続きサウジアラビアでの製造装置の新設にかかる検討に取り組みます。また、水添石油樹脂(紙おむつ向け接着剤用途)や電線絶縁材(高圧・超高圧特殊電線用途)など、その他の技術優位性のある製品についても、製造装置の新設を推進します。
●素材(電子材料等)事業
■機能材・潤滑油事業
さらなる普及が見込まれる電気自動車(EV)やハイブリッド車に対応する潤滑油技術を開発し、有用な商品・サービスを提供します。また、2021年5月に契約を締結したJSR株式会社のエラストマー事業の買収を完了させ、素材事業のコアとなる技術立脚型事業の獲得・拡大を推進します。
■機能材料・薄膜材料事業
データ社会の到来やモビリティの電動化・自動化に伴う需要拡大に備え、各種電子材料の生産・開発体制の先行整備を行い、市場の動向に応じてさらなる生産能力の増強に努めます。特に、半導体用スパッタリングターゲットについては、世界的な半導体不足の中、増大する需要に対応する供給体制を構築すべく、設備増強を着実に実行します。
■タンタル・ニオブ事業
主にコンデンサ・半導体用途向けの高機能タンタル粉末等を生産するTANIOBIS GmbH(ドイツ法人)の販売力・開発力の強化、一層の効率運営、新規事業の拡充等のシナジーを早期に実現します。
●次世代型エネルギー供給・地域サービス事業
エネルギーサービス、モビリティサービス及びライフサポートの各分野において、あらゆるデータを連携・データベース化し、お客様が望む利便性の高いサービスを提供する「ENEOSプラットフォーム」の構築を推し進めます。
エネルギーサービスについては、「おうちENEOS」というサービス総称のもと、「ENEOSでんき」・「ENEOS都市ガス」の顧客基盤の拡大を図ります。また、太陽光、バイオマス、陸上風力、洋上風力などの再生可能エネルギー電源の新規開発・獲得に一層注力し、これらの電源を含むエネルギーリソースを制御するVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)の実証にも取り組みます。
このほか、脱炭素・循環型社会への貢献に向けて、海外での製造から国内供給に至るまでの国際的なCO2フリー水素サプライチェーンの構築を目指し、製油所をCO2フリー水素受入基地として最大限活用した水素供給事業にかかるインフラ整備を推進します。加えて、トヨタ自動車株式会社が建設を進める実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」プロジェクトにおいて、水電解装置(再生可能エネルギー由来の電力から水素を製造する装置)を設置した水素ステーションを整備する予定であり、モビリティ向けの水素エネルギー供給とWoven City内のエネルギーマネジメントとの連携に取り組みます。また、2030年以降の商用化を目標に、水素とCO2との化学反応で製造される再エネ合成燃料の技術開発に取り組みます。
これらの取組みと環境対応型事業を推進し、2040年の自社排出分のカーボンニュートラルを実現するとともに、さ
らなるCO2排出削減を目指します。
モビリティサービス及びライフサポートについては、「ENEOSカーリース」と「ENEOS Laundry」の全国展開を推進し、また、「ENEOSカーシェア」の実証実験を継続します。また、洗濯代行や買物代行等の実証実験を通じて、変化する社会のニーズを捉えた新規事業の創出に取り組みます。加えて、EV充電ネットワークの構築など、EV化社会の到来を見据えた事業も推進します。
次世代型エネルギー供給・地域サービス事業については、地域コミュニティとの連携を進めます。具体的には、基本合意書を締結した静岡県において、清水製油所跡地(清水油槽所内遊休地)を活用し、太陽光発電を中心とした地産地消による自立型エネルギーの供給体制を整備するとともに、モビリティサービスを含めた新たな付加価値サービスの提供と将来の水素社会に向けた幅広い水素の利活用を検討します。
●環境対応型事業
廃プラスチックを石油精製・石油化学の原料として再生利用するケミカルリサイクルについては、引き続き技術検討に取り組みます。車載用リチウムイオン電池のリサイクルについては、JX金属株式会社の技術開発センター等において実証を重ね、適正コストでの量産プロセスの確立を目指します。また、EVバス向け蓄電池の「リース・リユース・リサイクル」循環モデルの構築についても、実証実験を継続し、事業化を推進します。
石油・天然ガス開発の分野では、CCS・CCUS技術を事業化した「Petra Nova CCUSプロジェクト」においてフィールドデータの蓄積を継続し、技術力の向上を図るとともに、外部機関との共同研究によりCCS・CCUS技術に関する知見を獲得します。また、インドネシア及びマレーシアにおけるパートナーとの共同スタディを着実に推進し、将来の事業化を目指します。
これらの各施策に加え、データ分析プラットフォームの構築やICTの活用によるサプライチェーンの最適化など、グループをあげてデジタルトランスフォーメーションを推進し、基盤事業の効率化と画期的な新製品・新サービスの創出を目指します。また、スタートアップ企業や大学等と連携するオープンイノベーションにも積極的に取り組み、異業種異分野の技術・アイデアを活用することで、革新的事業を創出します。
当社グループは、「2040年ENEOSグループのありたい姿」の実現に向け、第2次中期経営計画に沿って構造改革を加速することにより、基盤事業の競争力強化と成長事業の育成・強化を推進し、もって、企業価値のさらなる向上を図ります。
<新型コロナウイルス感染症の影響について>
新型コロナウイルス感染症の影響は、経済、企業活動、社会生活の広範囲に影響を与えている事象であり、当社グループが展開する様々な事業における各種製品の需要や価格に影響を与えています。この影響は一定期間継続し、その後徐々に正常化に向かうという仮定を置く等、各事業や製品ごとの状況を踏まえ、次期の業績予想や第2次中期経営計画等への影響を算定しています。
今後も、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、世界経済の動向や国内における需要の回復状況に応じて、その時点の業績予想や第2次中期経営計画への影響について情報開示していきます。
また、当社グループは、お客様、お取引先及び従業員の安全確保、そして、安定的な操業継続に向けて、新型コロナウイルスの感染防止策を徹底して取り組んでいます。具体的には、政府や各自治体の対処方針等を総合的に勘案の上、テレワークや時差出勤の推進、オンライン会議の活用等を通じて安全対策を講じています。
<次期の連結業績予想について(2021年5月公表)>
2021年度は原油価格の回復による良化を見込む一方で、新型コロナウイルス感染症の影響が続いており、前期に続き厳しい経営環境が継続する見通しです。前提条件に基づく次期の業績予想は下記のとおりです。
●前提条件(2021年4月以降)
為替:105円/ドル、原油(ドバイスポット):60ドル/バーレル
銅価:340セント/ポンド(2021年4-6月 400セント/ポンド、2021年7月以降 320セント/ポンド)
売上高:9兆5,000億円 営業利益:2,600億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:1,700億円
なお、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、2,300億円を見込んでいます。
当社グループでは、グループ経営に関するリスク事象に的確な対応を図るため「全社的リスクマネジメント(Enterprise Risk Management: ERM)体制」を整備・運用しています。具体的には、毎年度グループ経営に甚大な影響を与えうるリスク事象を抽出した上で「重点対応リスク事象」を選定し、対応策の実行を進め、その取り組み状況を経営会議及び取締役会に報告するプロセスを導入しています。なお、2021年度の「重点対応リスク事象」には、「気候変動に関するリスク(国際的な脱炭素化の潮流)」と「情報システムに関するリスク(ITセキュリティ事故)」を選定し、今後、所管部署を中心に、当該事象に対する対応方針の決定と取組状況の確認等を実施していきます。
当社グループの事業において、重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。
また、以下の事項とは別に、今般の新型コロナウイルス感染症の影響は、経済、企業活動、社会生活の広範囲に影響を与えている事象であり、当社グループが展開する様々な事業における各種製品の需要や価格に影響を及ぼしています。そのため、当社の次期の連結業績予想や第2次中期経営計画の見通し等においては、当該影響が翌報告期間も一部継続し、その後徐々に正常化に向かうという仮定を置く等、各事業や製品ごとの報告期間の末日時点の状況を踏まえ、その時点での影響を織り込んでいます。ただし、今後、その影響が想定より変化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)市場リスク
・商品価格変動リスク
当社グループは、石油製品・石油化学製品・電力・金属製品等の販売及びそれらの原料となる原油・銅鉱石等の鉱物の購入を行っていますが、これらの販売価格及び購入価格は商品市場価格の変動によって影響を受けることから、商品価格変動リスクに晒されています。
(エネルギーセグメント)
国内の石油製品のマージンは、主に原油価格と国内の石油製品市場価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。原油価格に影響を及ぼす要因としては、円の対米ドル為替相場、産油地域の政治情勢、OPECによる生産調整、シェールオイルの生産動向、全世界的な原油需要等があります。また、石油製品価格に影響を及ぼす要因としては、石油製品の国内需要、海外石油製品市況、国内の石油精製能力及び稼働率、国内のサービスステーション総数等があります。当社グループは、石油製品販売価格を石油製品の需給状況や市況動向を適切に反映して決定していますが、原油価格や石油製品市況の動向次第では、マージンが大きく変動します。また、石油化学製品のマージンも、原油価格やナフサ等の原料油価格と石油化学製品価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。石油化学製品価格については、生産設備の新増設による供給能力拡大と衣料・自動車・家電等の需要動向に影響されます。需給が緩和した場合は、原油・原料油価格の上昇を製品価格に転嫁することが困難になります。電力については、当社グループが販売する電力量が当社グループによる発電量を上回る場合、不足分を市場から調達しますが、調達価格が急騰した場合、収益が悪化する可能性があります。
従って、原油価格、石油製品価格、石油化学製品価格の変動や電力市場の取引価格の高騰等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(石油・天然ガス開発セグメント)
石油・天然ガス開発事業においては、原油及び天然ガス価格の上昇時には売上高が増加し、原油及び天然ガス価格の下落時には、売上高が減少します。従って、原油及び天然ガス価格の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(金属セグメント)
銅事業は、主として海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業、銅製錬事業、機能材料・薄膜材料事業から成り、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の影響を受けます。銅製錬事業は、海外鉱山から銅精鉱を購入し、電気銅を生産販売する買鉱製錬業(カスタムスメルター)であり、そのマージンは、主に製錬マージンと販売プレミアムからなります。海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業については、開発鉱山及び投資先鉱山が販売する銅精鉱等の価格が電気銅の国際価格に基づき決定されるため、国際価格が下落した場合には、売上高が減少します。製錬マージンは銅精鉱鉱山との交渉により決定されますが、銅鉱石品位の低下、資源メジャーによる寡占化の動きなどにより製錬マージンが低下する可能性があります。また、販売プレミアムは電気銅の国際価格に付加されるものであり、輸送経費、製品品質等の様々な要因を考慮して顧客との交渉により決定されるため、減少する可能性があります。機能材料・薄膜材料事業の原材料は、金属市況等の変動により調達価格が変動します。これら原材料の調達価格が上昇し、製品価格に転嫁できない場合や、市況が期首棚卸資産の帳簿価額を大きく下回る場合、損益が悪化します。従って、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
・為替リスク
当社グループは、外貨建ての営業取引による収入及び支出が発生しており、また多額の外貨建て資産及び負債を有しています。そのため、外国為替相場の変動は、資産、負債、収入及び支出の円貨換算額に影響を及ぼす可能性があります。また、外国為替相場の変動は、海外の子会社、持分法適用会社、共同支配事業及び共同支配企業の財務諸表を円貨換算する場合にも影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループでは、デリバティブ金融商品を利用したヘッジを行い、市場リスクを低減する対策を講じています。その具体的な取組みについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記21.金融商品 (2)財務リスク管理 ③市場リスク」をご参照ください。
また、上記の市場リスクのうち、当社グループの経営成績に影響を及ぼす主要なリスクである外国為替相場、原油価格及び銅価格の市況変動による営業利益への影響額については、感応度を算定しています。次期の連結業績予想(2021年5月公表)へ与える市況変動の感応度は、下表のとおりです。なお、本感応度は一定の前提をおいて算定したもので、諸条件の変化によって影響額も変動します。
(2)環境規制に関するリスク
当社グループの事業は、広範な環境規制の適用を受けており、これらの規制により、環境浄化のための費用を賦課され、環境汚染が生じた場合には、罰金・賠償金の支払いを求められ、又は操業の継続が困難となる可能性があります。また、今後、規制が強化される可能性があります。これらの環境規制及び基準に関する義務や負担は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)気候変動に関するリスク
気候変動への対応に対して世界的に関心が高まるなか、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが進められており、パリ協定に見られる脱炭素社会への動きが加速し、今後各国における気候変動政策の強化、環境関連法規等の変更・新規導入が実施された場合、想定を上回るスピードで石油製品需要が減少する可能性があります。その場合、石油精製販売、石油・天然ガス開発を主要な事業として営む当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)操業に関するリスク
当社グループの事業は、火災、爆発、事故、輸出入制限、自然災害、鉱山の崩落や天候等の自然現象、労働争議、原料や製品の輸送制限等の様々な操業上のリスクを伴っており、これらの事故・災害等が発生した場合には、多大な損失を蒙る可能性があります。当社グループは、可能かつ妥当な範囲において、事故、災害等に関する保険を付していますが、それによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。
(5)需要変動に関するリスク
当社グループの製品・サービスの需要は、それらを提供している国又は地域の経済状況、社会情勢の影響を強く受けています。国内石油製品需要については、「脱炭素社会」の実現に向けた動きが加速することを受けて、低燃費車の普及、ガス・電気等へのエネルギー転換が進展し、今後も減少することが予想されます。石油化学製品の販売はアジア諸国での需要に大きく依存しており、これらの地域における需要の変動が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。電子材料部品・チタンなどの製品については、需要家が限定されており、特定の需要家の経営環境が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。建設事業についても、公共事業又は民間設備投資(居住用不動産の建設を含む)の動向が、当社グループの建設事業需要に影響を及ぼします。これら当社グループの需要の変動については、正確な予測に努め必要な対策を行っていますが、予測を超えた急激な変動がある時は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)競合に関するリスク
当社グループは、様々な市場で激しい競争にさらされています。特に国内石油精製販売事業においては、企業間で激しい競争が行われていますが、国内需要の減少傾向が、この状況をさらに加速する可能性があります。また、機能材料・薄膜材料事業は、技術革新及び顧客ニーズの急速な変化を伴う事業環境下にあり、競合他社との競争に絶えず晒されています。このような競争環境の激化が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)原料供給源に関するカントリーリスク
当社グループは、原料の多くを海外から調達しており、特に、原油は中東の、銅精鉱は南アメリカ、東南アジア及びオーストラリアの、それぞれに限られた供給源に大きく依存しています。こうした国・地域における政治不安、社会混乱、労働争議、経済情勢の悪化、法令・政策の変更等のカントリーリスクが発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)資源開発に関するリスク
当社グループが行っている油田・天然ガス田、銅鉱床における探鉱及び開発活動は、現在、商業化に向けて、様々な段階にあります。探鉱及び開発の成功は、探鉱・開発地域の選定、設備の建設コスト、政府による許認可や税制、資金調達等、種々の要因に左右されます。個々のプロジェクトが商業化に至らず、投資費用が回収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、探鉱・開発事業においては、高度な専門技術と幅広い経験を有する人材を確保する必要がありますが、当社グループが優秀な人材を十分に確保できない場合は、収益機会の逸失及び競争力低下につながる可能性があります。
(9)石油・天然ガスの埋蔵量確保に関するリスク
国際的な資源獲得競争により、当社グループが石油・天然ガスの埋蔵量を確保するための競争条件は一段と厳しくなっています。当社グループの将来における石油・天然ガスの生産量は、探鉱、開発、権益取得等により、商業ベースの生産が可能な埋蔵量をどのように確保できるかにより左右されます。当社グループが石油・天然ガス埋蔵量を補填できない場合には、将来的に生産量が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、石油・天然ガス埋蔵量の見積りは、地質学的、技術的、経済的情報に基づいた主観的判断や決定を伴うため、正確に測定することが困難であり、進歩する回収技術の適用や生産活動を通じた新たな情報に基づいて大幅な修正が必要となる可能性があります。実際の埋蔵量が見積りを下回った場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)石油・天然ガス開発機材に関するリスク
石油・天然ガスの探鉱及び生産をするため、当社グループは、第三者から掘削機等の機材及びサービスの提供を受けています。原油価格が高騰している時期等は、これらの機材及びサービスが不足し、機材及びサービス提供の価格も上昇することになります。当社グループが、適切なタイミングかつ経済的に妥当な条件で、必要な機材やサービスの提供を受けることができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(11)第三者との提携、事業投資に関するリスク
当社グループは、様々な事業分野において、合弁事業その他の第三者との提携及び他企業等への戦略的な投資を行っています。これらの提携や投資は、当社グループの事業において重要な役割を果たしており、種々の要因により、重要な合弁事業が経営不振に陥り、又は提携関係や投資における成果を上げることができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)事業の再構築に関するリスク
当社グループは、コスト削減、事業の集中と効率性の強化を図ることとしており、事業の再構築に伴う相当程度の損失が発生する可能性があります。当社グループがその事業の再構築を適切に行うことができず、又は、再構築によっても、想定した事業運営上の改善を実現することができなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)設備投資及び投融資と減損に関するリスク
当社グループにおいては、事業の維持・成長又は新たな事業機会の獲得のために、継続的な設備投資及び投融資を必要としていますが、キャッシュ・フローの不足等の要因によりこれらの計画を実行することが困難となる可能性があります。また、外部環境の変化等により、実際の投資額が予定額を大幅に上回り、あるいは計画どおりの収益が得られない可能性もあります。それにより、当社グループが所有している有形固定資産、のれん及び無形資産について投資額の回収が見込めなくなった場合には、これを反映させるように帳簿価額を減額し、その減少額を減損損失として計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(14)繰延税金資産に関するリスク
当社グループの繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の繰越税額控除及び繰越欠損金を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で金額を計上しています。課税所得発生の時期及び金額は、合理的な見積りに基づき決定していますが、課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済状況の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(15)棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げと棚卸資産評価に関するリスク
当社グループは、多額の棚卸資産を所有しており、原油、石油製品、レアメタルの価格下落等により、棚卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額よりも低下したときには、収益性が低下しているとみて、期末帳簿価額を正味売却価額まで切り下げて売上原価等に計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、原油、石油製品等棚卸資産の評価を総平均法で行っており、原油価格の上昇局面では、期初の相対的に安価な棚卸資産の影響により売上原価が押し下げられて増益要因となりますが、原油価格の下落局面では、期初の相対的に高価な棚卸資産の影響により売上原価が押し上げられて減益要因となるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)有利子負債に関するリスク
当社グループは、多額の有利子負債により事業活動等に制約を受ける可能性があり、また、負債の元利金支払いのために、追加借入又は資産の売却等による資金調達を必要とする可能性がありますが、こうした資金調達を行うことができるか否かは、金融市場の状況、当社の株価、資産の売却先の有無等、様々な要因に依存しています。さらに、国内外の金利が上昇した場合には、金利負担が増加することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)確定給付制度に関するリスク
当社グループは確定給付制度を含む退職給付制度を有しています。これらの各制度に係る確定給付制度債務の現在価値及び関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定されます。数理計算上の仮定には、割引率等、様々な変数についての見積り及び判断が求められます。これらの変数を含む数理計算上の仮定の適切性について、将来の不確実な経済状況の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、制度資産に関しては、主に資本性金融商品の価格や社債利率の変動リスクに晒されており、これらの資産の利回り低下も当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記19.従業員給付 (2)確定給付制度」をご参照ください。
(18)信用に関するリスク
当社グループは、保有する売掛金などの金融債権が、債務者(取引先)の信用悪化や経営破綻などにより債務不履行になることにより、金融資産が回収不能になるリスク、すなわち信用リスクに晒されています。当該リスクに対応するために、与信管理規程等に基づき取引先ごとに与信限度額を設けた上で、取引先の財務状況等について定期的にモニタリングし、債権の期日及び残高を取引先ごとに適切に管理することにより、回収懸念の早期把握を図っています。さらに、必要に応じて担保設定・ファクタリング等を利用することによって保全措置を図っていますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。取引先の信用状態の悪化を受けて、保有する金融資産が回収不能になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(19)知的財産に関するリスク
当社グループは、事業遂行のため、特許権等の知的財産権を保有していますが、状況によってはその確保が困難となり、又は有効性が否認される可能性があります。また、当社グループの企業秘密が第三者により開示又は悪用される可能性もあります。さらに、急速な技術の発展により、当社グループの事業に必要な技術について知的財産権による保護が不十分となる可能性があります。また、当社グループの技術に関して第三者から知的財産権の侵害クレームを受けた場合は、多額のロイヤリティー支払い又は当該技術の使用差止めの可能性もあります。以上のように、当社グループがその事業を行うために必要な知的財産権を確保し、又はそれを十分に活用することができない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(20)内部統制システムに関するリスク
当社グループは、かねてからコンプライアンス、リスク管理等の充実に努めており、財務報告に係る内部統制を含め、内部統制システムの充実強化を図っていますが、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス違反、巨額な損失リスクの顕在化、ディスクロージャーの信頼性の毀損等の事態が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を一挙に失うことにもなりかねず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(21)情報システムに関するリスク
当社グループは、生産・販売・会計などのプロセスに関する電子データを、さまざまな情報システムやネットワークを通じて利用しています。これらの情報システムには安全対策が施されているものの、地震等の自然災害やサイバー攻撃を含む事象等により、情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止する可能性があります。その場合、当社グループの生産・販売活動に支障を来たすとともに、取引先の事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
(22)個人情報の管理に関するリスク
当社グループは、石油販売等の事業に関連して顧客の個人情報を保有しており、それらに保護対策等を実施して適切に管理していますが、こうした対策に今後多額の費用を必要とする可能性があります。また、今後、仮に顧客の個人情報が流出し又は悪用された場合、上記事業に影響が及ぶ可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
<当社グループを取り巻く環境>
当連結会計年度における世界経済は、期初には新型コロナウイルス感染症の影響を受け、急速に悪化しましたが、期中において、各国の経済下支え策や経済活動の段階的な再開を受け、持ち直しの動きが見られました。しかし、下期には再び、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大し、本格的な回復には至りませんでした。
ドバイ原油の価格は、新型コロナウイルス感染症に起因する需要低迷を反映し、期初には1バーレル当たり21ドルでしたが、OPECプラスの協調減産、経済活動の再開による需要回復への期待等を背景に、期末には1バーレル当たり63ドルまで回復しました。しかしながら、当連結会計年度平均では、前年同期比15ドル安の45ドルに留まりました。
LME(ロンドン金属取引所)銅価格は、新型コロナウイルス感染症の影響による需要後退の懸念から一時下落しましたが、その後、中国で銅地金需要が回復した一方、南米の銅鉱山からの供給量が減少したため、期初の1ポンド当たり216セントから、期末には1ポンド当たり401セントまで上昇しました。
<連結業績の概要>
このような事業環境下、当社グループは、新型コロナウイルス感染防止策を徹底して事業を継続し、第2次中期経営計画(2020年度から2022年度まで)に沿って、諸施策を実行しました。当期における在庫影響を除いた営業利益相当額は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う石油製品の販売減や銅生産量の減少があったものの、堅調な石油製品マージンと機能材料・薄膜材料の増販等の影響により、2,155億円(前年同期は967億円)となりました。
また、当連結会計年度の連結業績は、売上高は前年同期比23.5%減の7兆6,580億円、営業利益は2,542億円(前年同期は1,131億円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,140億円(前年同期は1,879億円の損失)となりました。
(注)上図内の原油価格、銅価、為替レートは期平均値です。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
エネルギー事業
新型コロナウイルス感染症の影響により、石油製品及び石油化学製品の需要が大きく減少し、ジェット燃料、軽油及びガソリンを中心に、販売数量が前年同期比減となりました。一方、国内の石油製品マージンは、堅調に推移しました。
<基盤事業>
石油精製販売事業については、人々の生活に欠かせないエネルギーの安定供給の使命を果たすため、製造・輸送・販売の各現場において新型コロナウイルス感染防止策を徹底しながら操業・運営を継続するとともに、さらなる競争力強化を図るべく、次の諸施策に取り組みました。
●SSネットワークの強化
国内最大のSSネットワークを一層強固な事業基盤とすべく、お客様の利便性や満足度を高めるための様々なサービスの展開に努めました。
具体的には、セルフSSブランド「EneJet」の拡大、キーホルダー型のスピード決済ツール「EneKey」の発行強化に加え、Webカーメンテナンス予約システム「エネアポ予約」をDr.Drive店舗を中心にスタートしました。
●サプライチェーン改革の断行
サプライチェーン全体の競争力強化を図るべく、中国石油国際事業日本株式会社との合弁会社(大阪国際石油精製株式会社)が運営していた大阪製油所の精製機能を停止し、運営する製油所を千葉製油所に変更しました。さらに、2021年10月を目途に知多製造所の製造機能を停止し、また、2022年10月を目途に根岸製油所の原油処理装置の一部及び潤滑油ベースオイル製造装置を廃止することを決定しました。
●デジタル技術の積極導入
安定・効率操業の確立に向け、川崎製油所において、株式会社Preferred NetworksとともにAIを活用したプラントの自動運転技術の開発に取り組み、また、株式会社センシンロボティクスと共同でドローンを用いた設備点検の実証実験を行いました。
<成長事業>
脱炭素・循環型社会の到来、デジタル革命の進展及びライフスタイルの変化を見据え、長期ビジョンに掲げる成長事業を育成・強化するため、次のとおり長期的展望に立った施策に取り組みました。
(石油化学事業)
第2次中期経営計画において、付加価値の高い誘導品事業への進出を掲げています。その一環として、サウジアラビアでのENB(自動車部材向け合成ゴム添加剤用途)製造装置の新設について、フィージビリティスタディを実施しました。
(素材事業)
全国のSSで販売するガソリンエンジンオイルを最新の国際規格に適合するラインアップに切り替え、ENEOSオイルの商品ブランドを「ENEOS X」に一新しました。
また、2021年5月には、素材事業のコアとなる技術立脚型事業の獲得・拡大を目的に、JSR株式会社から、主に合成ゴムの製造・販売を行うエラストマー事業を買収することについて、同社と契約を締結しました。当該買収によって、素材分野における新たな技術及び研究開発機能を獲得し、自動車向け素材事業を育成します。
(次世代型エネルギー供給・地域サービス事業)
●エネルギーサービス
国内最大規模の室蘭バイオマス発電所の商業運転を開始しました。加えて、イーレックス株式会社と大型バイオマス発電所の共同事業化について検討することに合意しました。
メガソーラー発電所については、新たに全国3か所(山形県酒田市、山口県下関市及び富山県高岡市)において運転を開始し、合計21か所になりました。このほか、日本各地で太陽光、陸上風力及び洋上風力の発電事業に参画しました。
水素事業については、国内において、ENEOS水素ステーション4か所を新たに開設し、合計45か所になりました。このほか、CO2フリー水素の国際的なサプライチェーンの構築に向けて、豪州における有機ハイドライド(MCH)の活用、マレーシアにおける水力発電の余剰電力を活用した水素・MCHの製造、サウジアラビアにおける化石燃料由来の水素のCO2フリー化・輸出について、検討を進めました。
「ENEOSでんき」は、2020年6月に全国展開(沖縄電力エリア及び離島エリアを除きます。)を果たし、当期末時点での契約件数が約85万件となり、「ENEOS都市ガス」の当期末時点での契約件数は、約9万8千件となりました。「ENEOS都市ガス」については、株式会社JERA及び大阪ガス株式会社との合弁会社(扇島都市ガス供給株式会社)において、都市ガスの製造・供給設備の商業運転を開始しました。
次世代型エネルギー供給プラットフォームの構築については、地域パートナーとの連携を進めており、静岡県と次世代型エネルギーの推進及び地域づくりにかかる基本合意書を締結しました。
●モビリティサービス・ライフサポート
「ENEOSカーシェア」の実証を継続するとともに、SSネットワークを販売拠点としたカーリース事業「ENEOSカーリース」の実証を開始しました。(2021年4月に全国展開を開始)
また、ENEOSブランドのコインランドリー「ENEOS Laundry」を展開したほか、新たなライフサポート事業として、洗濯代行・買物代行の実証を開始しました。
(環境対応型事業)
EVバス向け蓄電池の「リース・リユース・リサイクル」循環モデルの構築に向けて、バス運行会社と共同でEVバス運行の実証実験を開始しました。
(エネルギー事業の業績)
エネルギー事業の売上高は前年同期比28.8%減の5兆9,985億円、営業利益は1,211億円(前年同期は1,628億円の損失)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、販売数量の減少、製油所・製造所の生産効率化に伴う一過性損失、電力卸価格の高騰等の影響を受けたものの、石油製品マージンの良化と経費削減等により、824億円(前年同期は437億円)となりました。
石油・天然ガス開発事業
新型コロナウイルス感染防止策を徹底し、石油・天然ガスの安定生産を維持するとともに、EOR技術の向上やデジタル化の推進等によって、既存事業の価値最大化と成長事業と位置付ける環境対応型事業の推進に取り組みました。
<基盤事業>
●原油・天然ガスの生産量
新型コロナウイルス感染症の流行下においても安定生産を維持し、マレーシア及びパプアニューギニアのプロジェクトでは、それぞれの事業年度において過去最大の年間生産量を達成しました。また、前連結会計年度に生産を開始した英国北海のカリーンガス田、マリナー油田の操業が順調に推移したことにより、原油・天然ガスの生産量は、前連結会計年度を大幅に上回り、原油換算で日量12万5千バーレルとなりました。
●生産拡大に向けた取り組み
既存事業の価値を最大化すべく、複数のプロジェクトにおいて生産拡大に向けた取組みを進めました。
マレーシアにおいては、従来天然ガスの生産を行っていたSK10鉱区において、新設した浮体式生産貯油出荷設備(FPSO)を使用し、ラヤン油ガス田から原油の出荷を開始しました。同鉱区内のヘランガス田においても、2020年10月からFPSOを使用し、原油の生産を開始しました。また、両油ガス田の周辺地域で探鉱活動を継続しています。
インドネシアにおいては、ベラウ鉱区において液化天然ガス(LNG)を生産するタングーLNGプロジェクトを推進しています。当連結会計年度においては、LNGの生産能力を大幅に拡大するため、第3系列目となる天然ガスの液化設備建設作業に引き続き取り組みました。
●既存事業におけるデジタル技術の活用
英国のマリナー油田においては、装置の自動運転技術や遠隔操業技術を導入し、インドネシアのタングーLNGプロジェクトにおいては、液化・冷却プロセスを自動制御化することにより、生産量の増加を実現しました。また、デジタル技術の活用について他社と共同研究を実施し、埋蔵量評価や開発計画の最適化にかかる技術評価の高精度化・高速化を実現したほか、データマネジメントや調達・物流の最適化に向けた検討を行っています。
<成長事業>
●Petra Nova CCUSプロジェクト
火力発電所から排出される燃焼排ガスからCO2を回収し、老朽化油田に圧入することで、温室効果ガスの排出削減に大きく貢献する「Petra Nova CCUS* プロジェクト」(米国)は、他社に先駆けて事業化に成功したプロジェクトです。当連結会計年度においても当該プロジェクトに継続して取り組み、操業開始時(2016年12月)からのCO2回収・圧入量が累計で約377万トンとなりました。
当該プロジェクトに活用されているEOR*技術については、既存油田に応用し、可採埋蔵量を低コストかつ高確率で増加させるべく、技術力の向上に努めました。EOR技術にデジタル技術を活用するため、東京大学と協力して、デジタルオイル技術*に関する研究を開始しました。
* CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):二酸化炭素回収・有効利用・貯留
* EOR(Enhanced Oil Recovery):石油増進回収
* デジタルオイル技術:デジタル空間で原油分子を再現し、化学反応を計算によってシミュレーションする技術
●環境対応型事業の推進
CCS*・CCUS技術に関する知見獲得を目的として、二酸化炭素地中貯留技術研究組合に加入しました。また、2021年4月、環境対応型事業を迅速かつ集中的に推進する組織として、JX石油開発株式会社に「サステナブル事業推進部」を新たに設置しました。これらの取組みを通じて、今後の新たな事業展開を図るとともに、CCS・CCUS技術を用いた環境対応型事業を推進します。
* CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):二酸化炭素回収・貯留
(石油・天然ガス開発事業の業績)
こうした状況のもと、石油・天然ガス開発事業の売上高は、前年同期比15.7%減の1,124億円となりました。営業利益は、原油及び天然ガスの価格下落(年度平均・前年同期比)による悪化影響を受けたものの、減損損失の反転により、28億円(前年同期は388億円の損失)となりました。
金属事業
カセロネス銅鉱山において新型コロナウイルス感染防止策を実施し操業を継続しましたが、採掘に遅れが生じたため、生産量が前年に比べて減少しました。
一方、機能材料事業及び薄膜材料事業の各製品の販売量は、テレワークの浸透等によるスマートフォン、サーバー、通信インフラをはじめとする高機能IT分野での需要増加を主因に、概ね前年同期を上回りました。
<ベース事業>
●資源事業
金属のサプライチェーンの中核である銅製錬事業にとって、カセロネス銅鉱山の高品位かつ不純物の少ない銅精鉱の確保は極めて重要であるとの判断のもと、同鉱山の共同出資者である三井金属鉱業株式会社及び三井物産株式会社から、両社保有の全権益を譲り受けることで基本合意し、2021年2月に譲り受けが完了しました。
また、CO2総排出量の大幅な削減に寄与するため、2021年1月、カセロネス銅鉱山において使用する電力全量を再生可能エネルギー由来のものに切り替えました。
●金属・リサイクル事業
製錬事業とリサイクル事業の一体運営による両事業の強化の一環として、佐賀関製錬所向けのリサイクル原料の増集荷・増処理を目的に、大分県大分市の大分港大在西地区においてリサイクル原料等の物流拠点を建設することを決定しました。
<フォーカス事業>
●機能材料事業
IoT・AI化の進展に伴う需要拡大に対応するため、圧延銅箔・高機能銅合金条の生産能力を2017年度比で約30%増強(面積ベース)しました。
また、データ社会の発展に伴う高性能な材料の需要の高まりに応えるべく、超高強度なチタン銅、強度と導電率を高い次元で両立させたコルソン合金及び高い耐熱性を持つ圧延銅箔(リチウムイオン電池向け)を開発し、サンプル出荷を開始しました。
●薄膜材料事業
半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を2017年度比で約30%増強(枚数ベース)し、さらに、テレワーク等を背景とした通信インフラやモバイル端末の需要増大による半導体市場の成長加速を踏まえ、生産能力を現行から約30%引き上げることを決定しました。
●タンタル・ニオブ事業
2018年7月に買収した、主にコンデンサ・半導体用途向けの高機能タンタル粉末等を生産するH. C. Starck Tantalum and Niobium社(ドイツ法人)について、マーケットにおける自社ブランドの確立及び将来期待されるブランド力の発揮を企図し、2020年7月1日付で社名を「TANIOBIS GmbH」に変更しました。
●研究開発
「2040年JX金属グループ長期ビジョン」において掲げた「共創型の開発体制の推進」方針に基づき、酸化ガリウム結晶の実用化に向け、株式会社ノベルクリスタルテクノロジーに資本参画しました。また、放熱部材向け多孔質金属材料であるロータス金属の実用化を目指し、株式会社ロータス・サーマル・ソリューションと協業を開始しました。
●チタン事業(東邦チタニウム株式会社)
若松工場においては、チタン製造技術を応用した電子部品材料である超微粉ニッケルの新工場を建設し、2021年4月の生産開始に向けた立上げ作業を進め、同月に竣工しました。また、茅ヶ崎工場では、ポリプロピレン製造に用いるTHC触媒の新工場の建設に取り組みました。
(金属事業の業績)
こうした状況のもと、金属事業の売上高は、前年同期比8.7%増の1兆921億円、営業利益は、カセロネス銅鉱山における生産減の影響があったものの、銅価格の上昇と機能材料・薄膜材料の増販等により、781億円(前年同期は446億円(在庫影響を除いた営業利益相当額479億円))となりました。
その他の事業
その他の事業の売上高は前年同期比0.6%減の5,042億円、営業利益は491億円(前年同期は411億円)となりました。
●株式会社NIPPO
株式会社NIPPOは、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資が堅調に推移したものの、民間設備投資は弱含み、また、新型コロナウイルスの影響や労働需給・原材料価格等の動向に引き続き注意を要する等、厳しい経営環境が続きました。
このような事業環境下、各工事現場・工場において新型コロナウイルス感染防止策を講じ、事業を継続しました。また、技術の優位性を活かした受注活動やアスファルト合材等の製品販売を強化するとともに、コスト削減・業務効率化に取り組み、収益の確保に努めました。同社は、分散発電・分散蓄電システムの実用化を目指し、MIRAI-LABO株式会社と共同で、太陽光発電舗装「e-Smart ROAD」の性能試験を推進しました。
上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高491億円(前年同期は528億円)が含まれています。
(2)生産、受注及び販売の実績
ア.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
エネルギー |
3,167,671 |
56.7 |
|
石油・天然ガス開発 |
114,127 |
84.5 |
|
金属 |
821,636 |
93.8 |
|
その他 |
120,102 |
103.9 |
|
合計 |
4,223,536 |
62.9 |
(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
イ.受注実績
当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。
ウ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
エネルギー |
5,994,677 |
71.2 |
|
石油・天然ガス開発 |
112,380 |
84.3 |
|
金属 |
1,089,664 |
108.7 |
|
その他 |
461,290 |
99.8 |
|
合計 |
7,658,011 |
76.5 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況
①流動性と資金の源泉
当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取り組みとして重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。
当社は安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資なども活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持し、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。
また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,500億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。
連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。
当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2021年6月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています。
なお、2021年6月に、財務基盤の健全性を維持しつつ長期的な戦略投資の実現を両立し得る資金調達として、公募形式によるハイブリッド社債を総額3,000億円発行しました。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記38.後発事象」をご参照ください。
②連結財政状態計算書
ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、有形固定資産の減損等があったものの、資源価格上昇による営業債権及び棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末比475億円増加の8兆588億円となりました。
イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、資源価格上昇等により営業債務が増加したものの、休日影響で揮発油税の支払の一部が翌期になったこと等により有利子負債が減少したことから、前連結会計年度末比29億円増加の5兆3,063億円となりました。また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比2,809億円減少の1兆6,179億円となりました。
ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、子会社株式取得に伴う資本剰余金の減少や配当金の支払等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比447億円増加の2兆7,526億円となりました。
なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比0.1ポイント増加し28.9%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比5.90円増加の724.18円、ネットD/Eレシオは前連結会計年度末比0.11ポイント改善し、0.59倍(資本合計ベース)となりました。
③連結キャッシュ・フロー
当社は、第2次中期経営計画においても基本方針の柱の一つに「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」を掲げて、基盤事業からのキャッシュ・フローを最大化し、財務基盤の健全性維持とキャッシュ・フローの適正な配分を行っていきます。
なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況と主な要因は以下のとおりです。
ア.営業活動によるキャッシュ・フロー
資源価格上昇による運転資金の増加があったものの、税引前利益や休日影響による未払揮発油税の増加及び非資金損失である減損損失の戻しにより、6,791億円のプラスとなりました。
なお、カセロネス銅鉱山の権益追加取得に伴い、買取した貸付債権等の連結消去にあたり生じる、借入債務等の帳簿価額と貸付債権等の取得価額の差額の債務消滅益635億円は、非資金収益として営業活動によるキャッシュ・フローからは除いています。
イ.投資活動によるキャッシュ・フロー
主として再生可能エネルギーへの投資や、製油所における石油精製設備の維持・更新のための投資、石油・天然ガス開発事業への投資により、3,068億円のマイナスになりました。
ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー
営業活動による資金の増加が、投資活動による資金の減少を上回ったことから、資金需要が減少し、当連結会計年度末のコマーシャル・ペーパー等の有利子負債の残高が減少したこと等により、3,551億円のマイナスとなりました。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は4,123億円となり、期首に比べ190億円増加しました。
(4)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。
重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。
(1)「基本協定書」(契約当事者:日石三菱株式会社及びコスモ石油株式会社、締結日:1999年10月12日)
企業の枠組みを超えて抜本的なコスト削減策を講じるため、仕入、精製、物流及び潤滑油(生産・配送)の各部門において業務提携を行うことについて約したものです。
(2)「合弁契約書」(契約当事者:JX金属株式会社、三井金属鉱業株式会社及びパンパシフィック・カッパー株式会社、締結日:2020年2月12日)
JX金属株式会社と三井金属鉱業株式会社との合弁会社であるパンパシフィック・カッパー株式会社(JX金属株式会社の出資比率67.8%)を中心とした銅製錬事業(原料調達、委託製錬、製品販売等)に関する業務提携を約したものです。
(3)「Amendment and Restated Shareholders Agreement(修正及び改定株主間協定)」及び「Amendment to the Shareholders Agreement(改定株主間協定)」(契約当事者:ENEOS株式会社及び中国石油国際事業日本株式会社、締結日:2020年9月23日)
アジア市場向け石油製品販売を行う合弁会社(大阪国際石油精製株式会社。ENEOS株式会社の出資比率51.0%)の設立・運営に関する2010年8月27日付「Shareholders Agreement(株主間協定)」について、合弁会社が運営する製油所を大阪製油所から千葉製油所に変更する旨の改定を行い、合弁事業を継続することについて約したものです。
(4)「カセロネス・プロジェクトの資産及び負債の清算に関する基本合意書」(契約当事者:JX金属株式会社及び三井金属鉱業株式会社、締結日:2020年11月9日)
JX金属株式会社が、三井金属鉱業株式会社から、同社が保有するカセロネス銅鉱山権益(25.87%)の全てを譲り受けることについて約したものです。
(5)「カセロネス・プロジェクトに関する資産の購入及び債務の引受に関する契約」(契約当事者:JX金属株式会社、三井物産株式会社及び三井物産カッパーインベストメント株式会社、締結日:2020年11月9日)
JX金属株式会社が、三井物産株式会社及び三井物産カッパーインベストメント株式会社から、両社が保有するカセロネス銅鉱山権益(22.63%)の全てを譲り受けることについて約したものです。
(6)「株式譲渡契約書」(契約当事者:ENEOS株式会社及びJSR株式会社、締結日:2021年5月11日)
ENEOS株式会社が、JSR株式会社から、同社のエラストマー事業を買収することについて約したものです。
当社グループは、グループ理念に定めた『エネルギー・資源・素材における創造と革新』を目指し、エネルギー関連と金属関連を中心に研究開発活動を進めています。当連結会計年度における研究開発活動の概要は以下のとおりです。
(1)エネルギー (研究開発費
エネルギー・素材関連の研究開発活動は、中央技術研究所と各事業カンパニーの研究開発部が連携をしながら進めています。現在の事業領域については操業安定性向上と競争力強化を主体とした研究開発を進めるとともに、新規事業の創出、拡大に向けて重点領域を設定して、研究開発を推進しています。また社外との連携にも力をいれており、大学との産学連携の推進のみならず、ベンチャーキャピタルへの出資やアクセラレータープログラムの実施等を通してベンチャー企業とも連携を図り、オープンイノベーションを促進しています。
①燃料油・化学品製造技術分野
製油所、製造所の安全・安定操業、競争力強化を目指した研究を行っています。国際海事機関(IMO)による2020年からの舶用燃料油の規制強化に対応し品質確保のための処方検討などを通じて、引き続き安定供給の体制構築を支援しました。あわせて自社原料のさらなる有効活用(ケミカルシフト)に向けたプロセスや要素技術の開発、並びに、当該分野におけるデジタル化技術の開発・活用推進を進めています。
②機能材分野
機能材分野では、自動車、生活・産業インフラ、ニュートリションを研究重点領域と設定し、自動車の電動化・軽量化・知能化に寄与する素材や部材、IoT時代の高速通信を支える素材や部材、健康食品、飼料向け等の人の健康に役立つ素材の開発を推進しています。具体的には、自動車・インフラ分野では、脂環式構造を有し、高耐熱・透明・高耐光性などの特長を有するモノマー製品群や、低誘電・高耐熱といった特徴を持つポリマー製品群の開発、ニュートリション分野では、優れた抗酸化性能を持つ天然由来レアカロテノイド商品群の開発を進めています。また社外との連携としてLG Japan Lab及び東京工業大学と共同研究講座を設置して、高機能材・デバイス機器の開発に取り組んでいます。
③潤滑油分野
潤滑油分野では、地球環境に配慮した高性能潤滑油、グリースの製品開発に取り組んでいます。一例として、最新国際規格であるAPI SP/ILSAC GF-6の適合性能に加え、乗り心地性にこだわったエンジン油「ENEOS X PRIME」を開発し、2020年7月に発売しました。このほかにも省燃費型駆動系油、安全・環境配慮型工業用潤滑油、自動車・産業用高性能グリース、新冷媒対応・省エネルギー型冷凍機油といった製品の開発を新規材料、新規解析評価技術を取り入れながら推進するとともに、高品質の製品を安定かつ効率的に製造するための製造技術の開発も行っています。さらに、脱炭素化の世界的潮流を背景に加速するモビリティの電動化シフトに対応するため、潤滑性能はもとより冷却性能や電気絶縁性能等を高次元で両立し得る電動車用潤滑油の技術開発にも注力しています。
④水素分野
水素分野では、水素エネルギー社会を見据えた水素の製造・貯蔵・輸送・供給に関する一連の技術開発を推進しています。あわせて、水素ステーションの整備推進を目指し、建設及び運営コストダウンに寄与する技術開発に取り組んでいます。
⑤低炭素エネルギー分野
将来に向けた再生可能エネルギーの主力電源化に資する技術として、余剰電力を大規模、長期の貯蔵に適する物質に変換し、長距離の輸送を可能とする技術の開発を進めています。
CO2フリー水素分野では、再生可能エネルギーから得られた電力で直接トルエンを電解水素化することで、貯蔵・輸送が簡単な有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)を低コストで得る技術(Direct MCH®)の商業化に向けて開発しており、2022年度には当社の水素ステーションで実際に販売できる量の製造技術の実証を目指しています。さらにCO2フリー水素と工場等から回収したCO2を原料に液体燃料を合成する「再エネ合成燃料」の開発にも取り組んでいます。一方バイオ燃料分野では、藻類バイオマスを活用した社会の構築に向け、ちとせグループとの協業を開始しています。また、バイオジェット燃料の商業化を目指した技術開発や事業化検討に取り組んでいます。
持続可能な未来社会実現に向けたイノベーション推進のため、早稲田大学との包括連携活動に関する協定書を締結し、CO2からの燃料・化学品製造技術の開発といった「CO2削減に向けた革新技術の研究」に取り組んでいます。
再生可能エネルギーの有効な利活用に向け、VPP(仮想発電所)の実証試験に取り組んでいます。実証試験では、太陽電池・蓄電池を設置したサービスステーションや中央技術研究所などの当社拠点において、蓄電池制御の最適化や需給バランスの調整などの検証を通して、技術・経験の蓄積を進めています。
さらに、循環型社会の実現に向け、プラスチック資源に関する高度循環技術として「プラスチックの化学原料化再生プロセスの開発」に取り組んでいます。
⑥デジタル技術分野
デジタル技術を活用して自社の業務を効率化することを目指した研究を行っています。具体的には、プラントデータを活用した運転効率化、画像解析による安全・安定操業支援などの研究を推進しています。一例として、AI技術の産業応用に向けた先進的な検討を推進している世界的なトップランナーである株式会社Preferred Networksと戦略的な協業体制を構築し、主にプラント自動運転や素材探索においてAI技術を活用した革新的事業創出に取り組んでいます。Preferred Networks社との協業により、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)技術として超高速AI分子シミュレータを開発し、第一原理計算による従来法と比較して、最大約2,000万倍の高速化に成功しました。またデジタル技術を活用した新たなビジネス創出につなげることも想定し、国内外のスタートアップ企業などとの情報収集・交換を活発化させています。
(2)石油・天然ガス開発
該当事項はありません。
(3)金属 (研究開発費
金属事業では、長年培ってきたコア技術の進化・活用に加え、グループ企業内での技術コラボレーション、大学など研究機関との共同研究、外部企業とのパートナーシップ構築など、様々な形の共創を推進し、研究開発を行っています。データ社会の進展に寄与する次世代の先端素材の開発や、脱炭素や資源循環といった地球規模のESG課題解決に向けた製品・技術開発、車載用リチウムイオン電池(LiB)のリサイクル技術開発などに積極的に取り組んでいます。
①新規事業開発
CVD用塩化物、3Dプリンター用金属粉、銅微粉、全固体電池の開発などについて、事業部、関係会社等を跨ぎ全社横断で早期事業化に向けた取り組みを強化しています。
また、3Dプリンター用の金属粉の開発推進に向け、2020年1月に出資した金属3Dプリンター向けの合金設計等の事業を行う英国スタートアップ企業Alloyed社(旧OxMet社)と協業を進めている他、次々世代のパワーデバイスの材料として期待される酸化ガリウム基板及びデバイスの開発を手掛けるノベルクリスタルテクノロジー社に2020年6月に出資し共同開発を開始するなど、各スタートアップとの共創を通したスピーディな新規事業創出の取り組みを進めています。
②事業別(資源分野)
資源分野では、選鉱工程に適用する自動化技術や鉱石からの不純物除去技術の開発を進めています。また、低品位銅鉱を対象とした独自の浸出技術であるJXヨウ素法については、世界知的所有権機関(WIPO)の枠組みであるWIPO GREENに特許を登録しました。
③事業別(金属・リサイクル分野)
2020年4月1日付組織変更で、金属・リサイクル事業部が発足、リサイクル原料処理拡大に向け、リサイクル原料から回収する貴金属及びレアメタル等の金属種拡大のための技術開発や、銅製錬工程からの有価金属回収工程の効率化を推進しています。2040年にリサイクル原料処理量を50%とするハイブリッド製錬を実現することを目指し、技術開発を進めています。LiBリサイクルについては、車載用LiBリサイクルの事業化推進を目的とするLiBリサイクル事業推進室を2020年4月に新設し、機動的な運営体制を整えました。現在、技術開発センター(日立)のベンチスケール設備で開発した高純度金属塩回収プロセスの実証試験のために敦賀工場のプロセスを改造中で、2021年半ばに硫酸ニッケル、2022年半ばに硫酸コバルトの回収工程を完成させるべく、工事を進めています。
④事業別(薄膜材料分野)
薄膜材料分野では、高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めています。半導体用ターゲット、フラットパネルディスプレー用ターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリング用ターゲットや、その他電子材料における新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでいます。
⑤事業別(機能材料分野)
機能材料分野では、コネクタ等の用途に、精密な組成制御、独自の圧延加工プロセス及びユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能銅合金の開発を進めています。次世代材料として、コルソン系及びチタン系新規銅合金の開発等、更なる高機能製品化に取り組んでいます。また、プリント配線板材及びシールド材用途では、屈曲性、エッチング性、密着性等の高い機能を付加した銅箔等の開発・バージョンアップを進めています。
⑥基盤技術開発
分析及びシミュレーションについて最先端技術の導入・開発を進め、それらを駆使することにより技術開発の促進・効率化を図っています。
これらに、その他の事業における研究開発費