第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、事業活動の基礎となる「ENEOSグループ理念」を次のとおり定めています。

 

0102010_001.png

当社グループは、この「ENEOSグループ理念」の実現のために、基幹事業の強化・イノベーションの推進・グローバルな事業展開を図ります。あわせて、これらを推進していくうえで欠かせない高い倫理観とチャレンジ精神を持った人材を育成し、国際的な競争力を有するアジアを代表するエネルギー・素材企業グループを目指します。

 

(2)長期ビジョンの策定

当社グループは、世界的な脱炭素社会形成に向けた動きの加速、IoT・AI等の普及によるイノベーションの急速な進展、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめ企業に求められる社会的責任の高まりなど、過去に例を見ない社会環境・事業環境の変化に直面しています。加えて、国内の燃料油需要は、年々減少し、2040年には現在の約半分となることが想定されます。このように事業環境の先行きに対する不安が増しつつある一方、当社グループには、その事業特性上、長期的展望に基づく戦略的な投資が不可欠であることから、未来を見据えたビジョンの構築が必要です。

そのため、当社は、「長期グローバルトレンド」を分析して「2040年の社会シナリオ」を想定した上で、同年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」を描き、これらを「2040年当社グループ長期ビジョン」として取りまとめ、2019年5月に公表しています。(一部改訂、2020年5月20日)

 

・「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」

「長期グローバルトレンド」としては、脱炭素・循環型社会の形成に向けた取り組みが進み、デジタル革命の進展と相まって、人々のライフスタイルは大きく変化することが予想されます。こうした潮流の下、世界の一次エネルギー需要は、非化石エネルギーの割合が増加し、世界の石油化学製品需要・銅地金需要は、アジアの新興国の経済成長を背景に拡大すると見込まれます。

このような「長期グローバルトレンド」を踏まえると、「2040年の社会シナリオ」としては、安価な再生可能エネルギーの大量導入、EVやカーシェアリングの普及、各施設・住宅への分散型太陽光発電及び蓄電池の設置等が進むと想定されます。また、プラスチック・金属をはじめとする資源のリサイクルインフラが拡充されていくものと考えられます。さらに、これらの変化に伴い、人々の生活を快適にするべく、多様なサービス提供者が現れると思われます。

 

・2040年における当社グループの「ありたい姿」とその実現のための「事業の将来像」

以上の「長期グローバルトレンド」と「2040年の社会シナリオ」を前提に、当社グループが将来にわたって社会に必要とされる企業集団であるための要素を検討し、2040年における当社グループの「ありたい姿」を定めました。当社グループは、この「ありたい姿」を実現するため、安全・環境・健康を最優先に考えるとともに、多様性に富んだグローバル人材の育成・登用やICT(情報通信技術)活用による業務品質の劇的向上等により、企業風土の変革を図っていきます。

0102010_002.png

 

 

当社グループは、長期ビジョンに掲げる「ありたい姿」の実現のための「事業の将来像」を礎とした、第2次中期経営計画を実行することにより、成長戦略の追求とキャッシュ・フロー重視経営との両立による持続的な企業価値の向上を図り、すべてのステークホルダーの期待に応えていきます。

(3)目標とする経営指標

当社は、2020年5月に2020年度からの3ヵ年の第2次中期経営計画(2020-2022年度中期経営計画)を次のとおり策定しています。

当社は、本中計を「2040年当社グループ長期ビジョン」の実現に向けた変革の推進と位置づけ、各事業ポートフォリオにおける「構造改革の加速」及び「成長事業の育成・強化」をテーマに策定しています。

 

<基本方針>

0102010_003.png

 

<財務計画>

0102010_004.png

 

<第2次中期経営計画の進捗>

①業績面

ア.財務計画

0102010_005.png

0102010_006.png

 

業績面の財務計画については、新型コロナウイルス感染症による影響や生産・供給体制の再構築に伴う一過性損失などがあったものの、コスト削減を進めたことや資源価格高騰に伴うタイムラグを含む石油精製マージン良化、石油・天然ガス開発事業及び金属事業の増益、データ通信向けの旺盛な需要を受け好調な先端素材の増収増益等により、在庫影響(総平均法及び簿価切り下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益9,700億円の目標に対し、2022年5月時点の見込みは9,711億円となっており、目標達成を見込める状況となっています。

 

 

 

イ.還元方針

 

0102010_007.png

 

また、この第2次中計の業績見込みを踏まえ、追加の株主還元策として、取得価額総額上限1,000億円(取得し得る株式の総数(上限)3億株)の自社株買いを2022年5月に決定しました。これは、第2次中計の株主還元方針(総還元性向)に沿ったものです。

 

ウ.キャッシュ・フロー

 

0102010_008.png

 

キャッシュ・フローの状況については、営業キャッシュ・フローは、在庫除きの営業利益は計画通りの見通しである一方、原油等の資源価格の高騰による運転資金増加により、第2次中計比では、キャッシュインは、約3,000億円の減少見込みとなりました。

投資キャッシュ・フローは、これまでに大型のM&Aを含む戦略投資を実行しました。買収したジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(以下、JRE)の投資計画も織り込んだ結果、3カ年の設備投資額は1兆6,000億円と、第2次中計を1,000億円上回る見込みですが、ノンコア資産の売却を加速させ、売却収入を2,100億円上乗せしたことで、ネットのキャッシュアウトは約1,100億円減少する見通しです。

その結果、フリーキャッシュ・フローはマイナス400億円の見込みとなりました。第2次中計比では1,900億円の悪化となりますが、これは主に運転資金の増加によるものです。

 

エ.戦略投資

 

0102010_009.png

 

戦略投資については、買収したJREの投資計画を織り込んだ結果、戦略投資の総額は3カ年で9,600億円と、第2次中計比1,300億円の増加となる見込みです。

第2次中計で決定・実行した主な案件として、再生可能エネルギーについてはJREを買収し、第2次中計で掲げた再生可能エネルギーの発電容量目標である100万kWを達成しました。今後、JREの高い事業開発能力を活かし、更なる発電容量の積み上げを目指していきます。

先端素材は、今後、データ通信などの高機能IT向け用途で期待される、需要の拡大を取り込むべく、半導体用ターゲットや圧延銅箔の生産能力をさらに引き上げる投資を順次実行しています。

また、石化・素材では、JSR株式会社(以下、JSR)のエラストマー事業を買収しました。今後、当社が有するエラストマー関連技術との融合により、環境対応型を軸に、より高付加価値な製品開発・販売を強化していきます。

 

②事業戦略面

 

0102010_010.png

0102010_011.png

 

当社は、「構造改革の加速」を第2次中計の解決すべき課題として位置付け、この方針に沿って基盤事業の競争力強化や成長事業の育成、M&A・資産売却などのポートフォリオ戦略を実行しています。

脱炭素社会への転換や人権を含む社会課題への対応などを踏まえ、石炭事業や一部の上流事業など、ノンコアと位置付けられた事業の撤退・売却を決定しました。また、上場子会社であった株式会社NIPPOの非公開化も実施しています。

基盤事業については、安定供給を前提としつつ、競争力強化の為、生産・供給体制再構築を前倒しで決定した他、長年の経験に基づく運転ノウハウが求められる石油化学プラントでのAIによる自動運転等、デジタル技術の活用なども進めました。また、一層厳しくなる事業環境にも耐えうる強靭なコスト体質実現の為、業務プロセスの無駄を徹底的に削ぎ落す、抜本的な見直しにも着手しました。

素材事業では、JSRからのエラストマー事業の買収や、半導体用ターゲット・圧延銅箔などの先端素材の生産能力増強などを決定しました。

また、次世代エネルギー・環境対応では、JRE買収の他、 水素サプライチェーン構築や持続可能な航空燃料SAFの早期事業化に向けた実証、CCSやリサイクルに関する共同検討などを順次進めています。

今後もリスクとリターン、短期と中長期の収益獲得時期など、バランスを考慮した投資を着実に進めることで、事業構造改革・トランジションを成功させ、長期ビジョン実現を目指します。

 

 

 

(4)ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み

・ESG経営の推進

当社グループは、「2040年ENEOSグループ長期ビジョン」に示す「ありたい姿」の実現を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の目指す持続可能な社会の形成に貢献し、経済価値のみならず社会価値を創造すべく、ESG経営を推進しています。世界的に関心が高まっている社会課題を踏まえた将来のリスク・事業機会については、「ESG経営に関する基本方針」に基づき、経営会議において包括的に審議し、特定したリスク・重点課題への対応状況を確認しています。また、取締役会は、その内容の報告を受けることで、監視・監督しています。

0102010_012.png

・第三者からの評価(2022年3月31日現在)

0102010_013.png

 

・ESG説明会の開催

2022年3月、当社は、アナリストや機関投資家を対象にESG説明会をオンラインで開催しました。同説明会においては、当社がESGを経営の根幹に位置付けていること、将来の社会課題を踏まえた事業戦略を立案・遂行していることなどについて説明し、参加者と活発な議論を行いました。引き続き、当社グループにおけるESG経営について、積極的な情報発信に努めます。

 

・具体的な取り組み

[脱炭素・循環型社会への貢献]

地球規模での気候変動は、エネルギー・素材を扱う当社グループにとって、経営上の重要なリスクであると同時に、新たなビジネスの機会と捉えています。そのため、気候変動にかかる情報開示の重要性を認識しており、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」に賛同・署名しています。当期においては、TCFD提言に沿った情報開示の強化・充実に取り組み、気候変動に伴うリスク・機会を特定のうえ、2021年9月発行の「統合レポート2021」の中で、以下の通り財務影響※を開示しました。

※財務影響試算は、多くの潜在的なリスク・不確実な要素・仮定を含んでおり、実際には、重要な要素の変動により、各シナリオとは大きく異なる可能性があります。

 

 

<気候変動に伴うリスク・機会とその対応>

当社グループは、2017年度からCOSO※ERMフレームワークに基づく全社的なリスクマネジメント(ERM)を導入しています。このプロセスを踏まえ、気候変動に関するリスク・機会を下表のとおり特定しています。

※COSO(Committee of Sponsoring of the Treadway Commission :トレッドウェイ委員会支援組織委員会)が発表した内部統制のフレームワークで、世界各国で採用されています。

 

特定したリスク・機会の時間軸

区分

具体例

時間軸

移行リスク

政策と法

カーボンニュートラル達成のために要するコストの増加

中~長期

テクノロジー

EV技術の進展による石油需要の減少

中~長期

(需要減はすでに顕在化)

市場と評判

環境意識の高まりによる石油需要の減少

短期

(需要減はすでに顕在化)

市場

石油上流資産の座礁化

中~長期

物理リスク

急性リスク

異常気象による極端な風水害の発生、過酷度の増加

短期

(異常気象はすでに増加)

慢性リスク

温暖化に伴う海面上昇

中~長期

機会

資源効率に関する機会

リサイクル資源に対する需要の増加

中~長期

エネルギー源に関する機会

再生可能エネルギー、水素に対する需要の増加

分散型エネルギーに対する需要の増加

中~長期

製品・サービスに関する機会

モビリティ産業における環境負荷低減への取り組み拡大

環境負荷の小さい電化社会に必要となる電子材料の需要増加

中~長期

市場に関する機会

デジタル革命、ライフスタイルの変化による分散型エネルギー市場に対するアクセスの増加

中~長期

レジリエンスに関する機会

レジリエンス確保に向けたエネルギーの多様性

中~長期

 

 

<「移行リスク」による財務影響 >

●カーボンニュートラル達成のために要するコストの増加

当社グループは2040年までに自社排出分のカーボンニュートラル達成を目指しています。2040年時点で想定される自社排出分の1,600万㌧について、この全量を炭素クレジット購入により対応した場合、850億円※1のコスト増加となりますが、環境負荷の一層の低減や、政府支援も含めたパートナー企業とのCCSへの取り組み、森林事業などのオフセット策への取り組みにより当該リスク対策に努めます。

※1 炭素クレジット価格(52ドル/tCO2(IEA World Energy Outlook2020(以下、IEA WEO2020))×数量(1,600万トン)×為替

 

●EV技術の進展による石油需要減少/環境意識の高まりによる石油需要減少

IEA WEO2020のSTEPシナリオ※2では、2040年に国内石油需要が2019年対比で4割減少することとされています。この需要減少による影響は、第2次中期経営計画におけるエネルギーセグメントの石油製品等の営業利益見込みから、概算で約400億円※3と想定しています。

※2 各国のNDCベースの政策に加え、新型コロナウイルス感染拡大による影響を織り込んだシナリオ

※3 2020-2022年度営業利益見込み÷3カ年×40%

 

●石油上流資産の座礁化

当社グループが有する石油上流資産の埋蔵量326百万バーレル(2021年度末時点、石油換算)は、現状の生産量(33百万バーレル/年)の約10年分に相当します。したがって、長期的なリスクは小さいと認識しています。なお、第2次中期経営計画(2020-2022年度)における石油・天然ガス開発事業の営業利益見込みの単年度平均は約600億円です。

 

<「物理リスク」による財務影響 >

当社グループは、設備投資の計画段階で、異常気象による極端な風水害や海面上昇に伴うリスク等を考慮するとともに、必要に応じて事業継続計画(BCP)に織り込む等の対策を講じています。

例えば、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)は日本国内に物理的に分散の取れた10カ所の製油所を有しており、一部地域の製油所が操業上の制限を受けた場合にも、他の製油所で一定程度カバーし得る供給体制を整えています。

 

●異常気象(大型台風)による極端な風水害の発生、過酷度の増加

2018年度、2019年度に発生した大型台風による補修費用の実績から、仮に同規模の台風被害を受けた場合、大型台風の直撃1回につき20億円程度の対応コストの発生が見込まれています。

 

●温暖化に伴う海面上昇

2018年度、2019年度に行った海面上昇対策(高潮対策設備の嵩上げ、排水ポンプの増強等)に要した費用の実額は、10億円程度でした。同様の対応コストの発生が見込まれています。

<「機会」による財務影響 >

●リサイクル資源に対する需要の増加

脱炭素・循環型社会やデジタル革命の進展に伴い、ベースメタルである銅や各種レアメタルの需要が増加すると見込んでいます。こうした需要増加に対応するためには、リサイクル資源の活用をさらに進めて行く必要があります。

当社グループの銅製錬事業では、すでに、必要な原材料の約12%にリサイクル資源を活用していますが、この比率を50%程度まで高める取り組みを進めています。2021年度には銅製錬、リサイクル事業で約400億円の営業利益を上げており、今後、さらなる利益規模の拡大を目指していきます。

 

●再生可能エネルギー・水素に対する需要の増加

脱炭素・循環型社会の進展に伴い、水素、再生可能エネルギーやEVに対する需要が増加すると想定しています。

これらの2040年時点の市場規模を想定し、当社のシェアや営業利益率について一定の仮定を置いて試算した結果、1,000億円規模の営業利益を見込んでいます。当社は経済性も考慮しながら、これらを成長事業に積極的に取り組んでいくことで、企業価値の向上を図ります。

 

●モビリティ産業における環境負荷低減への取り組み拡大/環境負荷の小さい電化社会に必要となる電子材料の需要増加

脱炭素・循環型社会の進展に伴い、EVをはじめとする次世代自動車の普及が見込まれます。動力の如何にかかわらずタイヤは必要であることから、その原料である合成ゴム事業は国内外とも年率2~3%で成長することを見込んでいます。当社グループは、JSRから、合成ゴムの主原料であるエラストマー事業を買収し、低燃費・高性能タイヤの主原料を主力製品とした高性能素材を提供することで、環境負荷低減に貢献していきます。このエラストマ―事業は、2023年度には営業利益で約100億円の貢献を見込んでおり、以後、将来にわたり堅調に推移することを期待しています。

また、デジタル革命の進展に伴い、IoT・AI・ロボット等に必要な高機能材料・先端材料に対する需要は拡大し続けると想定しています。当社グループは、すでに、半導体ターゲット、磁性材ターゲット等の電材市場において約60%の世界シェアを有しています。2021年度は機能材料事業や薄膜材料事業等において約500億円の営業利益を上げており、今後、さらなる利益規模の拡大を目指していきます。当社グループの金属事業は、銅鉱山、銅製錬、リサイクル事業等も含めた事業全体において、2021年度に約1,600億円の営業利益を上げており、拡大が見込まれる銅需要を踏まえ今後も堅調に推移すると見込んでいます。

 

 

<ENEOSグループ カーボンニュートラル計画>

2022年4月、カーボンニュートラル実現に向けた戦略策定及び具体策を早期かつ着実に推進すべく、「カーボンニュートラル戦略部」を設置しました。また、同年5月には、自社排出分(スコープ1*、スコープ2*)にかかる従来の計画について国際基準等を参考に見直したことに加え、自社排出分以外(スコープ3*)についても2050年度のカーボンニュートラル実現を目指し、政府・他企業と歩調を合わせてさらなるCO2排出量削減に取り組むことを決定しました。引き続き、再生可能エネルギーの拡大や水素・「持続可能な航空燃料」(SAF)・合成燃料等の早期実用化を通じ、エネルギートランジションを推進します。

 

0102010_014.png

 *スコープ1 :事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

 *スコープ2 :他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出

         *スコープ3 :スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

[社会課題解決への不断の取り組み]

当社グループは「ENEOSグループ人権ポリシー」を定めており、事業活動にあたり人権尊重の取り組みを推進しています。

当連結会計年度においては、2019年に続き、第2回人権デュー・ディリジェンスを実施しました。具体的には、当社グループの人権リスクを自己評価したうえで、外部専門家(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)を起用し、労働組合との対話を踏まえ、人権課題を評価・検証しました。今後も、役員・従業員への研修等を通じて、人権侵害の未然防止と人権課題への対処に取り組みます。

また、従業員一人ひとりの意欲や創造性を高め、かつ能力を最大限に発揮できるよう、ワークライフ・マネジメントを推進し、また、ダイバーシティ&インクルージョンにも積極的に取り組んでいます。具体的には、年次有給休暇の取得促進、テレワーク勤務の推進、育児・介護・病気と仕事の両立支援制度の拡充など、あらゆる従業員が持続的にキャリアを形成するための人事プログラムを企画・運用するとともに、人材の多様性確保に向けて、属性別に新卒採用・管理職登用の目標を設定しています。また、2022年4月、社員が希望するポストに応募して職務を得る等の自律的なキャリア形成を支援する「ENEOSジョブグレード制度」をENEOSの管理職に導入しました。加えて、これらの取り組みにはマネジメント層の意識改革・浸透が重要との考えから、継続的に各種研修を実施しています。

 

[ガバナンス体制の強化]

当社は、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、コーポレートガバナンスの適切な構築・運営に取り組んでいます。

2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」(株式会社東京証券取引所が定める企業統治指針)については、取締役会において対応方針を議論し、プライム市場向けの内容を含め、同コードが定める各原則の全てを引き続き実施することとしました。

また、当社の取締役会は取締役会の実効性評価を2016年度から毎年度行っており、当期においても2021年12月から2022年1月にかけて全取締役を対象にアンケートを実施しました。その結果、全ての設問で肯定的回答が多数を占めており、取締役会の実効性は概ね確保されていることを確認しました。前期に課題とされた「監督機能のさらなる強化」と「取締役会での議論・説明の質の向上」に関しては、大型投資案件の進捗状況報告や資本コストを考慮した事業評価を実施するとともに、環境経営の審議機会を拡充させ、また、取締役会以外にも新規事業の取り組みにかかる社外取締役との議論の場を設定することにより、議論の充実を図りました。このような取り組みに対し一定の評価を得たものの、引き続き改善が必要な課題であると認識していることから、今後も取締役会の実効性のさらなる向上に向けて取り組んでいきます。

(5)対処すべき課題

脱炭素・循環型社会の形成の流れが世界的に加速しており、これに伴い国内の燃料油需要が減少することは確実である一方、デジタル革命の進展やモビリティの電動化・自動化により各種電子材料の需要は増加する見通しです。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により「新しい生活様式」の浸透や価値観の多様化が進んでおり、エネルギー・素材分野においても、様々なニーズ・ビジネスチャンスの創出が見込まれます。

当社は、環境変化と長期的な見通しを踏まえて「2040年ENEOSグループ長期ビジョン」を策定しており、下図のように事業構造の変革を成し遂げ、企業価値を向上し続ける考えです。

0102010_015.png

事業構造の変革に向けた成長事業の育成・強化については、事業ごとに収益貢献に至るまでに時間差があるため、短期と中長期のバランスを考えながら、各施策に取り組んでいます。

当面は、電子材料・機能材をはじめとする素材事業で成果をあげ、2025年以降は、再生可能エネルギー事業やCCS/CCUS事業、2030年以降は、CO2フリー水素、合成燃料等の次世代型エネルギーの各事業が実を結ぶべく、それぞれ育成していく計画です。

まず、早期に収益貢献が見込まれる素材事業に関し、機能材分野では、JSRから買収したエラストマー事業を核とした高機能素材メーカーとして、グローバルな事業規模とプレゼンス確立を目指します。また、電子材料(機能材料・薄膜材料)分野では、世界的に旺盛な半導体需要を着実に取り込むべく、半導体用スパッタリングターゲットの増産に向けた設備増強を進めるとともに、データ社会の進展やモビリティの電動化・自動化等に伴う電子材料の高機能化・需要拡大を見据えて国内外で新工場の建設を進め、先端材料の開発・生産に取り組みます。このほか、航空業界における脱炭素化の進展を見据え、「持続可能な航空燃料」(SAF)の量産供給体制の確立を目指します。具体的には、フランスのTotalEnergies社と、根岸製油所におけるSAF製造に関するフィージビリティスタディを共同で実施します。また、SAFの主な原料である廃食油については、株式会社野村事務所と連携し、日本各地から安定的に調達する仕組みの構築を目指します。他方、三菱商事株式会社と連携し、SAFを含む次世代燃料の社会実装に向けた共同検討も実施します。

次に、中長期的に育成する各事業に関し、次世代型エネルギー供給・地域サービス事業については、これまで培ってきたエネルギー事業者としての知見とJREの事業開発能力とを結集し、太陽光・風力発電の開発を進め、日本を代表する再生可能エネルギー事業者となることを目指します。また、当社グループの既存インフラを活用できる合成燃料「ENEOS e-fuel」(再生可能エネルギー由来の水素とCO2を原料とする合成燃料)の商用化や、水素キャリア製造に関する独自技術「Direct MCH®」を活用した国際的なCO2フリー水素サプライチェーンの構築にも尽力します。

他方、世界的に加速するEVシフトに伴い創出される各種サービスの需要を取り込むべく、全国12,000か所超のSSネットワークを活かした経路充電(移動途中における充電)、「ENEOSでんき」と連携した基礎充電(自宅等での充電)、EVのリース・シェア・メンテナンス等のモビリティ関連サービスを展開します。

さらに、環境対応型事業については、SSや「ENEOSでんき」で培ったノウハウや顧客基盤を活用し、他社との協業を進めることで、バッテリーのユース・リユース・リサイクルが循環する仕組み「BaaSプラットフォーム」の構築に取り組みます。また、Petra Nova CCUSプロジェクトに続くCCS/CCUS技術を活用した事業機会について、電源開発株式会社をはじめとする幅広いパートナーとともに政府による支援策を活用しつつ追求するほか、天然ガス開発にCCS/CCUS技術を導入して生産されるクリーンなガスを用いた発電事業や、CO2を分離した後の残渣ガスを利用したブルー水素・アンモニア製造事業に取り組みます。このほか、使用済車載用リチウムイオン電池(LiB)に含まれるレアメタルを再び車載用LiBの原料として使用する「クローズドループ・リサイクル」の実現に取り組むとともに、次世代電池として期待される全固体電池向け材料の技術開発を進め、事業化を目指します。

以上のとおり、事業構造の変革によりビジネスチャンスを確実に捉え、収益拡大と同時にカーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。このような企業価値向上戦略は、エネルギー・素材分野の各事業を有する当社グループであるがゆえに成し得るものといえます。

 

<新型コロナウイルス感染症の影響について>

新型コロナウイルス感染症の影響は、経済、企業活動、社会生活の広範囲に影響を与えている事象であり、当社グループが展開する様々な事業における各種製品の需要や価格に影響を与えています。この影響は今後も一定程度継続することを前提として、各事業や製品ごとの状況を踏まえ、次期の業績予想や第2次中期経営計画等への影響を算定しています。

今後も、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、世界経済の動向や国内における需要の回復状況に応じて、その時点の業績予想や第2次中計への影響について情報開示していきます。

コロナ禍とともにスタートした第2次中期経営計画は、2022年度を計画の最終事業年度としており、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況が続いているものの、当社グループは引き続き同計画の達成に向けて一丸となって取り組んでいきます。

 

<次期の連結業績予想について(2022年5月公表)>

前期の資源価格高騰に伴う石油製品等のマージンのプラスのタイムラグが解消するほか、前期に売却した英国の上流事業の利益が剥落することなどにより減益の見通しです。一方で、製油所の稼働回復や銅の生産数量回復を見込んでいる他、今年度からJSRより買収したエラストマー事業の投資貢献などがあり、実質的な収益性は改善すると見込んでいます。前提条件に基づく次期の業績予想は下記のとおりです。

●前提条件(2022年4月以降)

為替:120円/ドル、原油(ドバイスポット):90ドル/バーレル

銅価:420セント/ポンド(2022年4‐6月 450セント/ポンド、2022年7月以降 410セント/ポンド)

売上高:12兆8,000億円 営業利益:3,400億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:1,700億円

なお、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、営業利益と同額の3,400億円と見込んでいます。

 

2【事業等のリスク】

当社グループでは、グループ経営に関するリスク事象に的確な対応を図るため「全社的リスクマネジメント(Enterprise Risk Management: ERM)体制」を整備・運用しています。具体的には、毎年度グループ経営に甚大な影響を与えうるリスク事象を抽出した上で「重点対応リスク事象」を選定し、対応策の実行を進め、その取り組み状況を経営会議及び取締役会に報告するプロセスを導入しています。なお、2022年度の「重点リスク事象」には、「脱炭素化社会への対応要請が強化されるリスク」を選定し、今後、所管部署を中心に、当該事象に対する対応方針の決定と取組状況の確認等を実施していきます。

0102010_016.png

0102010_017.png

 

当社グループの事業において、重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

 

また、以下の事項とは別に、新型コロナウイルス感染症の影響は、依然として、経済、企業活動、社会生活の広範囲に影響を与えており、当社グループが展開する様々な事業における各種製品の需要や価格への影響は、各事業や製品ごとに大きく異なります。そのため、これまでの販売実績などの状況を踏まえ、新型コロナウイルスの影響が今後も一定程度継続することを前提として、各事業や製品ごとの報告期間の末日時点の状況を踏まえ、その時点での影響を織り込んでいます。ただし、今後、その影響が想定より変化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、今般のウクライナをめぐる国際情勢による商品価格への影響や経済活動の制約等についても、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があり、今後の推移を引き続き注視していきます。

 

(1)市場リスク

・商品価格変動リスク

当社グループは、石油製品・石油化学製品・電力・金属製品等の販売及びそれらの原料となる原油・銅鉱石等の鉱物の購入を行っていますが、これらの販売価格及び購入価格は商品市場価格の変動によって影響を受けることから、商品価格変動リスクに晒されています。

 

(エネルギーセグメント)

国内の石油製品のマージンは、主に原油価格と国内の石油製品市場価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。原油価格に影響を及ぼす要因としては、円の対米ドル為替相場、産油地域の政治情勢、OPECによる生産調整、シェールオイルの生産動向、全世界的な原油需要等があります。また、石油製品価格に影響を及ぼす要因としては、石油製品の国内需要、海外石油製品市況、国内の石油精製能力及び稼働率、国内のサービスステーション総数等があります。当社グループは、石油製品販売価格を石油製品の需給状況や市況動向を適切に反映して決定していますが、原油価格や石油製品市況の動向次第では、マージンが大きく変動します。また、石油化学製品のマージンも、原油価格やナフサ等の原料油価格と石油化学製品価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。石油化学製品価格については、生産設備の新増設による供給能力拡大と衣料・自動車・家電等の需要動向に影響されます。需給が緩和した場合は、原油・原料油価格の上昇を製品価格に転嫁することが困難になります。電力については、当社グループが販売する電力量が当社グループによる発電量を上回る場合、不足分を市場から調達しますが、調達価格が急騰した場合、収益が悪化する可能性があります。

従って、原油価格、石油製品価格、石油化学製品価格の変動や電力市場の取引価格の高騰等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(石油・天然ガス開発セグメント)

石油・天然ガス開発事業においては、原油及び天然ガス価格の上昇時には売上高が増加し、原油及び天然ガス価格の下落時には、売上高が減少します。従って、原油及び天然ガス価格の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(金属セグメント)

銅事業は、主として海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業、銅製錬事業、機能材料・薄膜材料事業から成り、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の影響を受けます。銅製錬事業は、海外鉱山から銅精鉱を購入し、電気銅を生産販売する買鉱製錬業(カスタムスメルター)であり、そのマージンは、主に製錬マージンと販売プレミアムからなります。海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業については、開発鉱山及び投資先鉱山が販売する銅精鉱等の価格が電気銅の国際価格に基づき決定されるため、国際価格が下落した場合には、売上高が減少します。製錬マージンは銅精鉱鉱山との交渉により決定されますが、銅鉱石品位の低下、資源メジャーによる寡占化の動きなどにより製錬マージンが低下する可能性があります。また、販売プレミアムは電気銅の国際価格に付加されるものであり、輸送経費、製品品質等の様々な要因を考慮して顧客との交渉により決定されるため、減少する可能性があります。機能材料・薄膜材料事業の原材料は、金属市況等の変動により調達価格が変動します。これら原材料の調達価格が上昇し、製品価格に転嫁できない場合や、市況が期首棚卸資産の帳簿価額を大きく下回る場合、損益が悪化します。従って、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・為替リスク

当社グループは、外貨建ての営業取引による収入及び支出が発生しており、また多額の外貨建て資産及び負債を有しています。そのため、外国為替相場の変動は、資産、負債、収入及び支出の円貨換算額に影響を及ぼす可能性があります。また、外国為替相場の変動は、海外の子会社、持分法適用会社、共同支配事業及び共同支配企業の財務諸表を円貨換算する場合にも影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、当社グループでは、デリバティブ金融商品を利用したヘッジを行い、市場リスクを低減する対策を講じています。その具体的な取り組みについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記21.金融商品 (2)財務リスク管理 ③市場リスク」をご参照ください。

 

また、上記の市場リスクのうち、当社グループの経営成績に影響を及ぼす主要なリスクである外国為替相場、原油価格及び銅価格の市況変動による営業利益への影響額については、感応度を算定しています。次期の連結業績予想(2022年5月公表)へ与える市況変動の感応度は、下表のとおりです。なお、本感応度は一定の前提をおいて算定したもので、諸条件の変化によって影響額も変動します。

0102010_018.png

0102010_019.png

 

(2)環境規制に関するリスク

当社グループの事業は、広範な環境規制の適用を受けており、これらの規制により、環境浄化のための費用を賦課され、環境汚染が生じた場合には、罰金・賠償金の支払いを求められ、又は操業の継続が困難となる可能性があります。また、今後、規制が強化される可能性があります。これらの環境規制及び基準に関する義務や負担は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)気候変動に関するリスク

当項目は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組み」の中で記載しています。

 

(4)操業に関するリスク

当社グループの事業は、火災、爆発、事故、輸出入制限、自然災害、鉱山の崩落や天候等の自然現象、労働争議、原料や製品の輸送制限等の様々な操業上のリスクを伴っており、これらの事故・災害等が発生した場合には、多大な損失を蒙る可能性があります。当社グループは、可能かつ妥当な範囲において、事故、災害等に関する保険を付していますが、それによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。

 

(5)需要変動に関するリスク

当社グループの製品・サービスの需要は、それらを提供している国又は地域の経済状況、社会情勢の影響を強く受けています。国内石油製品需要については、「脱炭素社会」の実現に向けた動きが加速することを受けて、低燃費車の普及、ガス・電気等へのエネルギー転換が進展し、今後も減少することが予想されます。石油化学製品の販売はアジア諸国での需要に大きく依存しており、これらの地域における需要の変動が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。電子材料部品・チタンなどの製品については、需要家が限定されており、特定の需要家の経営環境が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。建設事業についても、公共事業又は民間設備投資(居住用不動産の建設を含む)の動向が、当社グループの建設事業需要に影響を及ぼします。これら当社グループの需要の変動については、正確な予測に努め必要な対策を行っていますが、予測を超えた急激な変動がある時は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)競合に関するリスク

当社グループは、様々な市場で激しい競争に晒されています。特に国内石油精製販売事業においては、企業間で激しい競争が行われていますが、国内需要の減少傾向が、この状況をさらに加速する可能性があります。また、機能材料・薄膜材料事業は、技術革新及び顧客ニーズの急速な変化を伴う事業環境下にあり、競合他社との競争に絶えず晒されています。このような競争環境の激化が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)原料供給源に関するカントリーリスク

当社グループは、原料の多くを海外から調達しており、特に、原油は中東の、銅精鉱は南アメリカ、東南アジア及びオーストラリアの、それぞれに限られた供給源に大きく依存しています。こうした国・地域における政治不安、社会混乱、労働争議、経済情勢の悪化、法令・政策の変更等のカントリーリスクが発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)資源開発に関するリスク

当社グループが行っている油田・天然ガス田、銅鉱床における探鉱及び開発活動は、現在、商業化に向けて、様々な段階にあります。探鉱及び開発の成功は、探鉱・開発地域の選定、設備の建設コスト、政府による許認可や税制、資金調達等、種々の要因に左右されます。個々のプロジェクトが商業化に至らず、投資費用が回収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、探鉱・開発事業においては、高度な専門技術と幅広い経験を有する人材を確保する必要がありますが、当社グループが優秀な人材を十分に確保できない場合は、収益機会の逸失及び競争力低下につながる可能性があります。

 

(9)石油・天然ガスの埋蔵量確保に関するリスク

国際的な資源獲得競争により、当社グループが石油・天然ガスの埋蔵量を確保するための競争条件は一段と厳しくなっています。当社グループの将来における石油・天然ガスの生産量は、探鉱、開発、権益取得等により、商業ベースの生産が可能な埋蔵量をどのように確保できるかにより左右されます。当社グループが石油・天然ガス埋蔵量を補填できない場合には、将来的に生産量が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、石油・天然ガス埋蔵量の見積りは、地質学的、技術的、経済的情報に基づいた主観的判断や決定を伴うため、正確に測定することが困難であり、進歩する回収技術の適用や生産活動を通じた新たな情報に基づいて大幅な修正が必要となる可能性があります。実際の埋蔵量が見積りを下回った場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)石油・天然ガス開発機材に関するリスク

石油・天然ガスの探鉱及び生産をするため、当社グループは、第三者から掘削機等の機材及びサービスの提供を受けています。原油価格が高騰している時期等は、これらの機材及びサービスが不足し、機材及びサービス提供の価格も上昇することになります。当社グループが、適切なタイミングかつ経済的に妥当な条件で、必要な機材やサービスの提供を受けることができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(11)第三者との提携、事業投資に関するリスク

当社グループは、様々な事業分野において、合弁事業その他の第三者との提携及び他企業等への戦略的な投資を行っています。これらの提携や投資は、当社グループの事業において重要な役割を果たしており、種々の要因により、重要な合弁事業が経営不振に陥り、又は提携関係や投資における成果を上げることができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)事業の再構築に関するリスク

当社グループは、コスト削減、事業の集中と効率性の強化を図ることとしており、事業の再構築に伴う相当程度の損失が発生する可能性があります。当社グループがその事業の再構築を適切に行うことができず、又は、再構築によっても、想定した事業運営上の改善を実現することができなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)設備投資及び投融資と減損に関するリスク

当社グループにおいては、事業の維持・成長又は新たな事業機会の獲得のために、継続的な設備投資及び投融資を必要としていますが、キャッシュ・フローの不足等の要因によりこれらの計画を実行することが困難となる可能性があります。また、外部環境の変化等により、実際の投資額が予定額を大幅に上回り、あるいは計画どおりの収益が得られない可能性もあります。それにより、当社グループが所有している有形固定資産、のれん及び無形資産について投資額の回収が見込めなくなった場合には、これを反映させるように帳簿価額を減額し、その減少額を減損損失として計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(14)繰延税金資産に関するリスク

当社グループの繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の繰越税額控除及び繰越欠損金を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で金額を計上しています。課税所得発生の時期及び金額は、合理的な見積りに基づき決定していますが、課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済状況の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(15)棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げと棚卸資産評価に関するリスク

当社グループは、多額の棚卸資産を所有しており、原油、石油製品、レアメタルの価格下落等により、棚卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額よりも低下したときには、収益性が低下しているとみて、期末帳簿価額を正味売却価額まで切り下げて売上原価等に計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、原油、石油製品等棚卸資産の評価を総平均法で行っており、原油価格の上昇局面では、期初の相対的に安価な棚卸資産の影響により売上原価が押し下げられて増益要因となりますが、原油価格の下落局面では、期初の相対的に高価な棚卸資産の影響により売上原価が押し上げられて減益要因となるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)有利子負債に関するリスク

当社グループは、多額の有利子負債により事業活動等に制約を受ける可能性があり、また、負債の元利金支払いのために、追加借入又は資産の売却等による資金調達を必要とする可能性がありますが、こうした資金調達を行うことができるか否かは、金融市場の状況、当社の株価、資産の売却先の有無等、様々な要因に依存しています。さらに、国内外の金利が上昇した場合には、金利負担が増加することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)確定給付制度に関するリスク

当社グループは確定給付制度を含む退職給付制度を有しています。これらの各制度に係る確定給付制度債務の現在価値及び関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定されます。数理計算上の仮定には、割引率等、様々な変数についての見積り及び判断が求められます。これらの変数を含む数理計算上の仮定の適切性について、将来の不確実な経済状況の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、制度資産に関しては、主に資本性金融商品の価格や社債利率の変動リスクに晒されており、これらの資産の利回り低下も当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記19.従業員給付 (2)確定給付制度」をご参照ください。

 

(18)信用に関するリスク

当社グループは、保有する売掛金などの金融債権が、債務者(取引先)の信用悪化や経営破綻などにより債務不履行になることにより、金融資産が回収不能になるリスク、すなわち信用リスクに晒されています。当該リスクに対応するために、与信管理規程等に基づき取引先ごとに与信限度額を設けた上で、取引先の財務状況等について定期的にモニタリングし、債権の期日及び残高を取引先ごとに適切に管理することにより、回収懸念の早期把握を図っています。さらに、必要に応じて担保設定・ファクタリング等を利用することによって保全措置を図っていますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。取引先の信用状態の悪化を受けて、保有する金融資産が回収不能になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)知的財産に関するリスク

当社グループは、事業遂行のため、特許権等の知的財産権を保有していますが、状況によってはその確保が困難となり、又は有効性が否認される可能性があります。また、当社グループの企業秘密が第三者により開示又は悪用される可能性もあります。さらに、急速な技術の発展により、当社グループの事業に必要な技術について知的財産権による保護が不十分となる可能性があります。また、当社グループの技術に関して第三者から知的財産権の侵害クレームを受けた場合は、多額のロイヤリティー支払い又は当該技術の使用差止めの可能性もあります。以上のように、当社グループがその事業を行うために必要な知的財産権を確保し、又はそれを十分に活用することができない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)内部統制システムに関するリスク

当社グループは、かねてからコンプライアンス、リスク管理等の充実に努めており、財務報告に係る内部統制を含め、内部統制システムの充実強化を図っていますが、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス違反、巨額な損失リスクの顕在化、ディスクロージャーの信頼性の毀損等の事態が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を一挙に失うことにもなりかねず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)情報システムに関するリスク

当社グループは、生産・販売・会計などのプロセスに関する電子データを、さまざまな情報システムやネットワークを通じて利用しています。これらの情報システムには安全対策が施されているものの、地震等の自然災害やサイバー攻撃を含む事象等により、情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止する可能性があります。その場合、当社グループの生産・販売活動に支障を来たすとともに、取引先の事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)個人情報の管理に関するリスク

当社グループは、石油販売等の事業に関連して顧客の個人情報を保有しており、それらに保護対策等を実施して適切に管理していますが、こうした対策に今後多額の費用を必要とする可能性があります。また、今後、仮に顧客の個人情報が流出し又は悪用された場合、上記事業に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

<当社グループを取り巻く環境>

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症を背景とする景気悪化からの持直しの動きがみられましたが、感染再拡大や原油価格高騰によるインフレ等の影響により本格的な回復には至りませんでした。

ドバイ原油の価格は、期初は1バーレル当たり62ドルでしたが、期中は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種進展による景気回復への期待やOPECプラスの協調減産等によるエネルギー需給ひっ迫を受けて上昇しました。さらに、期末にかけて、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐる国際情勢緊迫化により急騰し、一時は1バーレル当たり128ドルとなりました。

LME(ロンドン金属取引所)銅価格は、期初は1ポンド当たり398セントでしたが、新型コロナウイルス感染症対策としての世界的な金融緩和や最大の消費国である中国の経済回復、将来的な電気自動車(EV)普及に伴う需要増への期待感等から堅調に推移し、一時は過去最高額である1ポンド当たり487セントまで上昇しました。

 

<連結業績の概要>

このような事業環境下、当社グループは、基盤事業の競争力強化による継続的なキャッシュ創出に努めるとともに、長期ビジョンの実現に向け、第2次中期経営計画(2020年度から2022年度まで)に沿って成長事業の育成・強化と事業ポートフォリオの最適化を進めるなど、諸施策を実行しました。

当期における在庫影響を除いた営業利益相当額は、資源価格上昇に伴う上流事業での増益及びタイムラグによる白油・輸出マージンの良化、電子材料の増販等により、4,156億円(前年同期は2,155億円)となりました。

また、当連結会計年度の連結業績は、売上高は前年同期比42.6%増の10兆9,218億円、営業利益は7,859億円(前年同期は2,542億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,371億円(前年同期は1,140億円)となりました。

 

0102010_020.png

(注)上図内の原油価格、銅価、為替レートは期平均値です。

 

セグメント別の概況は、次のとおりです。

 

[エネルギーセグメント]

石油製品及び石油化学製品の需要は、新型コロナウイルス感染症の影響緩和により回復の動きが見られたものの、依然として同感染症のまん延前を下回る水準で推移しています。

 

<基盤事業>

石油精製販売事業については、国内需要の減少が続く中にあっても、国民生活に不可欠な石油製品の安定供給の使命を果たし、サプライチェーンの最適化・効率化・強靭化によりキャッシュ・フローを創出すべく、次の諸施策に取り組みました。

●SSネットワークの強化

国内最大のSSネットワークを一層強固な事業基盤とすべく、お客様の利便性や満足度を高めるための様々なサービスを展開しました。

具体的には、前連結会計年度に引き続き、セルフSSブランド「EneJet」の強化、キーホルダー型のスピード決済ツール「EneKey」の発行推進に加え、お客様がWEBサイトを通じてカーメンテナンス商品を予約できる「エネアポ予約」の利用可能店舗や取扱い商品の拡大も進めました。また、バックオフィス業務にRPAを中心とした技術を適用する子会社の設立や、特約店・SSとのコミュニケーションの円滑化を目的とした情報共有サイトの開設など、デジタル技術を駆使した業務効率化を推進しました。

●サプライチェーン改革の断行

安全操業及び安定供給を大前提として、サプライチェーン全体のさらなる競争力強化に取り組みました。これまで実行してきた室蘭製造所・大阪製油所の製造・精製機能の停止、川崎地区の製油所・製造所の組織一体化、根岸製油所の一部装置の廃止決定に続き、当期においては、知多製造所の製造機能を停止するとともに、和歌山製油所の精製・製造・物流機能の停止(2023年10月目途)を決定しました。

●デジタル技術の積極導入

株式会社Preferred Networksとともに、熟練運転員のノウハウが求められる石油精製・石油化学プラントのオペレーションを自動化するAIシステムを開発し、国内初となるAI技術による石油化学プラントの連続自動運転に成功しました。また、同社と合弁会社を設立し、新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を開始しました。

 

<成長事業>

「脱炭素・循環型社会の進展」、「デジタル革命の進展」及び「ライフスタイルの変化」が速まることを見据え、スピード感をもって成長事業の育成・強化に向けた諸施策に取り組みました。

(石油化学事業)

石油化学事業については、付加価値の高い誘導品事業を拡大することにより、競争力・収益力の強化を図りました。その一環として、約120億円を投じ、超高圧・高圧電線の絶縁用ポリエチレンの生産能力を約3万トン増強することを決定しました。また、バイオ原料を使用したエチレン誘導品の製造・販売を目指し、株式会社日本触媒及び三菱商事株式会社と共同調査を行うことに合意しました。

(素材事業)

技術立脚型事業の獲得・拡大を目的に、2022年4月、JSR株式会社から、主に合成ゴムの製造・販売を行うエラストマー事業を買収し、新会社「株式会社ENEOSマテリアル」として営業を開始しました。同社が有する業界最高水準性能のタイヤ素材を、成長が期待されるモビリティ産業に提供することにより、収益力を強化します。

また、潤滑油事業においては、電動車のさらなる普及を見据え、EV・ハイブリッド車の駆動システムの特性に合わせたEV専用油の開発及び国内外での顧客獲得に取り組みました。

(次世代型エネルギー供給・地域サービス事業)

●エネルギーサービス

(再生可能エネルギー事業)

2022年度末までに再生可能エネルギーによる総発電容量を100万kW超に拡大することを目指し、国内外で新規電源の開発・獲得に注力しました。

具体的には、国内有数の再生可能エネルギー事業者であるジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社の株式を約1,800億円を投じて取得し、同社を子会社化しました。また、日本各地でメガソーラー発電所の建設を進めるとともに、長崎県五島市沖の洋上風力発電事業も推進し、海外では、米国、豪州及びベトナムにおいて太陽光発電事業に参画しました。

 

これらの取組みの結果、当期末時点における国内外の再生可能エネルギーによる総発電容量(建設中を含みます。)は、約122万kWとなりました。

このほか、日本板硝子株式会社及び米国のUbiquitous Energy社と共同で、透明な太陽光発電パネルを建物の窓として使用する国内初の実証実験を開始しました。

(水素事業)

安価で安定的なCO2フリー水素の国際的サプライチェーンの構築に向けて、国内外の広範囲なアライアンスを活用するとともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する「グリーンイノベーション基金事業」(GI基金事業)の支援も受け、実証実験や独自技術の開発等に取り組みました。

具体的には、豪州・マレーシアの計4社と新たに協業検討を開始するとともに、横浜市・川崎市と連携協定を締結しました。また、トヨタ自動車株式会社が建設を進める「Woven City」においてCO2フリー水素の製造・利用を推進するため、同社と共同開発契約を締結しました。

さらに、水素キャリアとして期待されるメチルシクロヘキサン(MCH)を安価に製造する独自技術「Direct MCH®」の実証について、従前の実験室レベルから実際に使用できるレベルまで規模を拡大しました。具体的には、豪州で製造した再生可能エネルギー由来のMCHから水素を日本で取り出し、当該水素を用いて燃料電池自動車を走行させることに成功しました。また、製油所の既存装置を活用し、MCHから水素を取り出す実証を開始しました。

このほか、国内においてENEOS水素ステーション2か所を新たに建設し、合計47か所になりました。また、横浜旭水素ステーションにおいては、ステーション内でのCO2フリー水素の製造及び商用販売を開始しました。

(ガス事業・電気事業)

海外の森林保全プロジェクト由来のCO2クレジットを活用し、CO2を実質的に排出しないカーボンニュートラルLNGの販売を開始しました。また、海外発電事業として出資した米国オハイオ州のサウスフィールドエナジー天然ガス火力発電所の商業運転・米国北東部への電力供給を開始しました。

(地域コミュニティとの連携)

静岡市清水区袖師地区を中心とした次世代型エネルギーの推進及び地域づくりを実現すべく、前期に締結した静岡県に続き、静岡市と基本合意書を締結しました。また、東京都東村山市と2020年に締結した連携協定に基づき、EVを活用したエネルギーマネジメントサービス実証の実施を決定しました。

(東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会)

ENEOS株式会社は、「東京2020ゴールドパートナー(石油・ガス・水素・電気供給)」として、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の関連施設に再生可能エネルギー由来の電気等を供給するとともに、東京2020オフィシャル水素である「ENEOS水素」を供給しました。

●モビリティサービス・ライフサポート

モビリティサービス事業については、SSネットワークを販売拠点としたカーリース事業「ENEOSカーリース」の全国展開を開始しました。同事業は、自動車ユーザーのストレスを緩和するサービスが評価され、2021年度グッドデザイン賞を受賞しました。また、EV及びプラグインハイブリッド車の普及を見据え、日本電気株式会社と充電ネットワーク拡充に取り組むとともに、北米のスタートアップ企業であるAmple社とEVの蓄電池交換サービス提供に向けて協業を開始しました。

ライフサポート事業については、医療専門家とのオンライン健康相談や検査機器によるバイタルデータの計測を行う専用無人ブース「スマートライフボックス」を株式会社ネクイノと共同開発し、これを活用した実証実験を開始しました。

(環境対応型事業)

バッテリーのユース・リユース・リサイクルが循環する仕組み「BaaS(Battery as a Service)プラットフォーム」の構築を目指し、MIRAI-LABO株式会社と協業を開始したほか、2022年4月、電動モビリティの普及を目的に、国内大手二輪メーカー4社と共同で、電動二輪車用共通仕様バッテリーのシェアリングサービスを提供する「株式会社Gachaco」を設立しました。BaaSプラットフォームの構築にあたっては、エネルギー・資源・素材を幅広く手掛けるENEOSグループの総合力を最大限に活用します。

また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、使用済タイヤからタイヤ素原料を製造するケミカルリサイクル技術を確立すべく、GI基金事業を活用し、株式会社ブリヂストンと共同プロジェクトを開始しました。加えて、古紙を原料とするバイオエタノール事業の立上げについて、凸版印刷株式会社と協業検討を実施しました。

このほか、三菱ケミカル株式会社と共同で、鹿島製油所に隣接する同社茨城事業所に商業ベースで国内最大規模の処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設し、プラスチック油化事業を開始することを決定しました。

 

(エネルギーセグメントの業績)

エネルギーセグメントの売上高は、石油製品の販売数量が前連結会計年度並であった一方、原油高を背景に製品価格が上昇したことから、前年同期比49.0%増の8兆9,350億円、営業利益は4,775億円(前年同期は1,211億円)となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、石油化学製品マージンの良化、国内石油製品・輸出等の油価上昇局面におけるタイムラグ等があったものの、製油所トラブルによる稼働率低下や経費増から、1,072億円(前年同期は824億円)となりました。

 

0102010_021.png

 

[石油・天然ガス開発セグメント]

既存事業の価値最大化に向け石油・天然ガスの安定生産を維持するとともに、他社とのアライアンスを活用しながら、CCS*/CCUS*技術を梃子に、成長事業と位置付ける環境対応型事業を推進しました。加えて、成長事業の育成・強化に向けた最適な資産ポートフォリオを構築すべく、英国事業を売却しました。

*CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):二酸化炭素回収・貯留

*CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):二酸化炭素回収・有効利用・貯留

 

<基盤事業>

●既存事業の価値最大化

新型コロナウイルス感染症の流行下においても安定生産を維持し、既存事業の価値を最大化すべく、複数のプロジェクトにおいて生産拡大に向けた取組みを進めました。

ベトナムにおいては、オペレーターとしてランドン油田の生産操業を続ける洋上15-2鉱区について経済的な開発及び生産活動を維持するため、当該鉱区のパートナーであるPetroVietnam Exploration Production Corporation 社と現行ライセンス期限以降の共同操業の継続に向けた相互協力にかかる覚書を締結しました。

パプアニューギニアにおいては、既存のLNG事業における長期安定的な収益・生産量を確保するため、将来的な天然ガス供給源として期待されるプニャンガス田について、パプアニューギニア政府等との間で、今後の開発に関する枠組みを定める契約を締結しました。

●英国事業の売却

選択と集中による事業ポートフォリオの見直しの一環として、英国事業会社であるJX Nippon Exploration and Production (U.K.) Limited 社の全株式を売却しました。

 

<成長事業>

●CCS/CCUS技術の活用

脱炭素・循環型社会の実現及び石油・天然ガス開発事業における環境負荷の低減に向け、CCS/CCUS技術の活用機会の拡大を図りました。

CCS/CCUS技術のさらなる知見獲得・向上を目的として、deepC Store社と共同スタディ契約を締結し、豪州における洋上CO2回収貯留ハブ・プロジェクト「CStore1」に参画しました。また、CCS技術を活用した水素・アンモニア製造等を含むエネルギー分野全般を対象とする共同スタディ・事業検討に関して、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で、インドネシアの国営石油会社であるPertamina社と覚書を締結しました。さらに、米国におけるPetra Nova CCUSプロジェクト、ベトナムにおけるCO2-EOR*パイロットテストに続き、インドネシアのタングーLNGプロジェクトにおいて、CCUS技術を用いたCO2排出量の削減及び天然ガスの生産効率向上・増産を図る開発計画について、現地当局の承認を得ました。これにより、同プロジェクト全体のCO2排出量を約半分に削減します。このほか、2022年4月、国内における排出源で分離・回収されたCO2を国内適地において貯留するプロジェクトの検討を進めるべく、「国内CCS準備室」を設置しました。

*EOR(Enhanced Oil Recovery):石油増進回収

●環境対応型事業の推進

環境対応型事業を迅速かつ集中的に推進する組織として「サステナブル事業推進部」を立ち上げるとともに、2022年4月、地域社会のカーボンニュートラルへの貢献を目指すため、中条油業所内に「中条共創の森 オープンイノベーションラボ」を開設しました。また、環境対応型事業に資する知見・技術の獲得・向上に向けて、持続可能な脱炭素社会の実現に注力する先進的な米国企業である8 Rivers Capital社と包括提携協定を締結しました。

 

(石油・天然ガス開発セグメントの業績)

こうした状況のもと、石油・天然ガス開発セグメントの売上高は、前年同期比116.3%増の2,431億円となりました。営業利益は、原油及び天然ガスの価格上昇や英国事業の売却を主因として前期から大幅に増加し、970億円(前年同期は28億円)となりました。

 

0102010_022.png

[金属セグメント]

銅は再生可能エネルギーやEVの普及に欠かせない素材であり、脱炭素・循環型社会の実現に向けて需要が拡大しています。金属事業においては、これに対応すべく諸施策に取り組みました。

資源事業については、カセロネス銅鉱山におけるストライキの影響により生産量が減少したものの、銅価格の上昇を主因に増益となりました。金属・リサイクル事業については、原料である銅鉱石の買鉱条件が悪化した一方、貴金属価格が高値圏で推移し、また、硫酸国際市況が良化したことなどにより、増益となりました。

機能材料事業及び薄膜材料事業の各製品の販売量は、高機能IT分野での需要が堅調に推移したことから、概ね前期を上回りました。

 

<ベース事業>

●資源事業

カセロネス銅鉱山のさらなる安定・効率操業に向けて、推進組織の横断的な活動を通じ、自動制御システムの導入をはじめとする操業改善を図るとともに、設備メンテナンス・資材調達の効率化を推進しました。

●金属・リサイクル事業

製錬事業とリサイクル事業の一体運営体制のもと、2040年度までにリサイクル原料の割合を50%まで高めた製錬形態「ハイブリッド製錬」を実現すべく、リサイクル原料の増集荷・増処理に取り組みました。具体的には、台湾の彰濱(ザンピン)リサイクルセンターにおいて集荷・処理能力を増強し、また、大分リサイクル物流センターの稼働を開始するとともに、佐賀関製錬所のリサイクル原料前処理設備を増設しました。

 

<フォーカス事業>

●機能材料事業

機能材料事業においては、モバイル端末やデータセンターなどの通信インフラ分野に使用される圧延銅箔・高機能銅合金条等を製造・販売しています。圧延銅箔については、通信技術の進歩やモバイル端末の小型化・高機能化に伴う需要拡大に対応するため、前期の生産能力増強に続き、当期においては、生産能力を前期比で約25%増強すべく、日立事業所における新工場建設を決定しました。

●薄膜材料事業

薄膜材料事業においては、先端半導体の材料となるスパッタリングターゲットの製造・販売を通じて、モバイル端末やPC等の演算能力向上・消費電力低減に貢献しています。当期においては、世界的な脱炭素化の前進によるEVの普及やデジタルトランスフォーメーションの進展による半導体の需要拡大を見据え、半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を前期比で約80%増強すべく、既存拠点の生産能力強化に加え、茨城県日立市における新工場建設を決定しました。

●タンタル・ニオブ事業

タンタル・ニオブ事業を担うTANIOBIS社では、同社製品の世界シェア拡大を目指し、顧客密着型のビジネスモデルである「Customer First Project」を営業・研究開発・製造が一体となって推進しました。また、同社のタイ生産拠点においては、機能性タンタル粉末製造設備の生産能力増強を決定しました。

●チタン事業(東邦チタニウム株式会社)

東邦チタニウム株式会社では、脱炭素社会の実現に向けて、チタン新製錬技術の開発に取り組んでいます。当該技術は、金属チタン製錬工程において、コークスを使用しないことによりCO2を排出せず、また、電解精製を用いることで電力消費量の低減を実現できるものです。当期においては、2025年度の実用化に向けて、当該技術のパイロットプラントでの実証試験開始に向けた取組みを進めました。

●研究開発

研究開発については、技術立脚型新規事業を創出すべく、外部リソースを積極的に活用した共創型開発に取り組むとともに、技術開発体制を強化しました。

具体的には、出資先であり、金属3Dプリンター用金属粉の開発等で協業している英国のAlloyed社が、金属3Dプリンターを用いたチタン合金製足首用インプラントを設計・造形し、これを用いた初めての手術が実施されました。

他方、使用済車載用リチウムイオン電池の大量発生時代の到来に備え、「電池材料・リサイクル事業推進室」を設置するとともに、国内の技術開発拠点としてJX金属サーキュラーソリューションズ株式会社を、欧州の事業開発拠点としてドイツにJX Metals Circular Solutions Europe社をそれぞれ設立しました。

さらに、「6G」時代におけるデータ通信の大容量化や高度なセンシング技術の実用化に不可欠な受発光素子、脱炭素社会の実現に欠かせないパワー半導体等に用いられる新たな結晶材料に関しての成長戦略策定と事業推進を担う「結晶材料事業推進室」を設置しました。

 

<国内外における大規模新工場の建設について>

金属事業では、圧延銅箔・高機能銅合金条や半導体用スパッタリングターゲット等、多数の世界トップシェア製品を有しています。これらの製品は、データ通信の高度化に不可欠であり、今後、さらなる需要増が見込まれることから、国内外に大規模新工場を建設することを決定しました。

国内においては、茨城県ひたちなか市に約24万㎡の用地を取得し、2025年度の操業開始に向けて取組みを進めています。当該新工場は、圧延銅箔・高機能銅合金条や半導体用スパッタリングターゲットといった既存の成長分野の製品群に加え、「6G」時代に飛躍的な成長が見込まれる結晶材料等の新規分野における製品群の製造を担う新たな中核拠点となる予定です。

海外においては、米国における半導体産業の集積地であるアリゾナ州で同州内の既存拠点の約6倍となる約26万㎡の用地を取得し、2024年度以降の操業開始に向けて取組みを進めています。当該新工場は、半導体用スパッタリングターゲットの製造に限らず、北米における先端素材に関する新規事業展開の活動拠点としても活用します。

 

(金属セグメントの業績)

こうした状況のもと、金属セグメントの売上高は、前年同期比18.4%増の1兆2,930億円、営業利益は、金属価格の上昇及び電子材料の増販等により、1,582億円(前年同期は781億円)となりました。

 

0102010_023.png

 

[その他]

その他の事業の売上高は前年同期比1.1%減の4,984億円、営業利益は494億円(前年同期は491億円)となりました。

●株式会社NIPPO

株式会社NIPPO(以下、NIPPO)は、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資が概ね高水準で推移した一方、民間設備投資については本格的な回復には至りませんでした。また、労働需給のひっ迫や原油高を背景とした原材料価格の上昇を受け、前連結会計年度と同様に厳しい経営環境が続きました。

このような事業環境下、アスファルト舗装の技術優位性をさらに高めるべく、高耐久特殊アスファルトを用いたひび割れ対策型の舗装「エラスペーブ」を開発しました。さらに、海外において新たな収益の柱を育成・強化すべく、タイ等に続き、インドネシアにアスファルト合材の製造・販売を行う合弁会社を設立しました。また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、NIPPOの全事業所・工場でCO2排出量ゼロの電力に切り替えることを決定しました。

このほか、当社グループの事業ポートフォリオの再構築及びガバナンス体制強化の一環として、NIPPO株式を非公開化し、親子上場を解消しました。今後、当該非公開化を共同で進めたゴールドマン・サックス・グループが有するグローバルネットワーク等を活用して、NIPPOのさらなる企業価値向上を実現したうえで再上場を目指します。

 

上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高が合計477億円(前年同期は491億円)含まれています。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

5,019,679

158.5

石油・天然ガス開発

244,325

214.1

金属

965,922

117.6

その他

89,670

74.7

合計

6,319,596

149.6

(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。

 

イ.受注実績

当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

8,930,602

149.0

石油・天然ガス開発

242,959

216.2

金属

1,290,573

118.4

その他

457,625

99.2

合計

10,921,759

142.6

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。

 

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況

①流動性と資金の源泉

当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取組みとして重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。

当社は安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資なども活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持しています。また、財務基盤の健全性を維持しつつ長期的な戦略投資の実現を両立し得るハイブリッド社債の発行、グリーンボンドやトランジション・リンク・ボンドといったサステナブル・ファイナンスによる資金調達を実施する等、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。

また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,550億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。

連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。

当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2022年6月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています

 

②連結財政状態計算書

ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、資源価格上昇による棚卸資産及び営業債権の増加や事業再編等により、前連結会計年度末比1兆5,894億円増加の9兆6,482億円となりました。

イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、棚卸資産の増加に伴う運転資金の増加やNIPPO株式の公開買付けに伴う借入金の増加等により、前連結会計年度末比1兆1,079億円増加の6兆4,141億円となりました。

有利子負債残高は、前連結会計年度末比6,986億円増加の2兆7,355億円となり、また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比5,671億円増加の2兆1,850億円となりました。

ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、配当金の支払やNIPPO株式の公開買付けに伴う非支配持分の減少等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比4,815億円増加の3兆2,341億円となりました。

なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比0.8ポイント増加し29.7%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比166.70円増加の890.88円、ネットD/Eレシオは前連結会計年度末比0.09ポイント悪化し、0.68倍(資本合計ベース)となりました。

 

③連結キャッシュ・フロー

当社は、第2次中期経営計画においても基本方針の柱の一つに「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」を掲げて、基盤事業からのキャッシュ・フローを最大化し、財務基盤の健全性維持とキャッシュ・フローの適正な配分を行っていきます。

なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況と主な要因は以下のとおりです。

ア.営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果、資金は2,095億円増加しました(前期は6,791億円の増加)。これは、資源価格上昇による運転資金の増加や法人税の支払等の資金減少要因があったものの、税引前利益や減価償却費等の資金増加要因が上回ったことによるものです。

イ.投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果、資金は3,499億円減少しました(前期は3,068億円の減少)。これは、英国の石油・天然ガス開発事業の売却等による増加があったものの、ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社の株式取得をはじめとした再生可能エネルギー事業への投資や、LNG火力発電所の建設及び、製油所における石油精製設備の維持・更新のための投資により減少したものです。
ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果、資金は2,260億円増加しました(前期は3,551億円の減少)。これは、NIPPO株式の公開買付けに伴う支出や配当金の支払い等の資金減少要因を、当該公開買付けに伴う長期借入れやハイブリッド社債の発行による増加要因が上回ったことによるものです。
 

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は5,240億円となり、期首に比べ1,117億円増加しました。

 

0102010_024.png

 

(4)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。

重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)「基本協定書」(契約当事者:日石三菱株式会社及びコスモ石油株式会社、締結日:1999年10月12日)

企業の枠組みを超えて抜本的なコスト削減策を講じるため、仕入、精製、物流及び潤滑油(生産・配送)の各部門において業務提携を行うことについて約したものです。

 

(2)「合弁契約書」(契約当事者:JX金属株式会社、三井金属鉱業株式会社及びパンパシフィック・カッパー株式会社、締結日:2020年2月12日)

JX金属株式会社と三井金属鉱業株式会社との合弁会社であるパンパシフィック・カッパー株式会社(JX金属株式会社の出資比率67.8%)を中心とした銅製錬事業(原料調達、委託製錬、製品販売等)に関する業務提携を約したものです。

 

(3)「株式譲渡契約書」(契約当事者:ENEOS株式会社及びJSR株式会社、締結日:2021年5月11日)

ENEOS株式会社が、JSR株式会社から、同社のエラストマー事業を買収することについて約したものです。

 

(4)「基本契約書」(契約当事者:ENEOSホールディングス株式会社、合同会社乃木坂ホールディングス及びエーテルホールディングス合同会社、締結日:2021年9月7日)

株式会社NIPPOの普通株式に対する公開買付け及びこれに付随又は関連する取引を通じた同社の非公開化について約したものです。

 

(5)「株主間契約書」(契約当事者:ENEOSホールディングス株式会社、合同会社乃木坂ホールディングス及びエーテルホールディングス合同会社、締結日:2021年9月7日)

非公開化後の株式会社NIPPOの組織、運営、株式の取扱い等について株主間で約したものです。

 

(6)「Share Sale and Purchase Agreement(株式売買契約書)」(契約当事者:ENEOS株式会社、ジーエス・リニューアブル・ホールディングス合同会社、締結日:2021年10月11日)

ENEOS株式会社が、ジーエス・リニューアブル・ホールディングス合同会社から、同社が保有するジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社の株式の全てを譲り受けることについて約したものです。

 

(7)「Share Purchase Agreement(株式譲渡契約書)」(契約当事者:JX石油開発株式会社、NEO Energy Upstream UK Limited及びNEO Energy Holding Limited、締結日:2021年11月26日)

JX石油開発株式会社が、同社が保有するJX Nippon Exploration and Production (U.K.) Limitedの全株式を、NEO Energy Upstream UK Limitedに売却することについて約したものです。

 

5【研究開発活動】

当社グループは、グループ理念に定めた『エネルギー・資源・素材における創造と革新』を目指し、エネルギー関連と金属関連を中心に研究開発活動を進めています。当連結会計年度における研究開発活動の概要は以下のとおりです。

 

(1)エネルギー (研究開発費 12,219百万円)

エネルギー・素材関連の研究開発活動は、中央技術研究所と各事業カンパニーの研究開発部が連携をしながら進めています。現在の事業領域については操業安定性向上と競争力強化を主体とした研究開発を進めるとともに、脱炭素・循環型社会の実現に貢献すべく、新規事業の創出、拡大に向けて重点領域を設定して、研究開発を推進しています。また、社外との連携にも力を入れており、大学との産学連携の推進のみならず、ベンチャーキャピタルへの出資やアクセラレータープログラムの実施等を通してベンチャー企業とも連携を図り、オープンイノベーションを促進しています。

①低炭素エネルギー分野

将来に向けた再生可能エネルギーの主力電源化に資する技術として、余剰電力を大規模、長期の貯蔵に適する物質に変換し、長距離の輸送を可能とする技術の開発を進めています。

CO2フリー水素分野では、再生可能エネルギーから得られた電力で直接トルエンを電解水素化することで、貯蔵・輸送が簡単なメチルシクロヘキサン(MCH)を低コストで製造する技術(Direct MCH®)の商業化に向けた開発を進めています。2021年11月に豪州の再生可能エネルギーから本技術を用いてMCHを製造、日本で約6kgのCO2フリー水素を取り出し、燃料電池車に充填、走行する一連の実証に成功しました。2022~23年度には当社の水素ステーションで実際に販売できる量のCO2フリー水素が製造可能な中型電解槽プラント(150kW級)の実証、さらに2025年度をめどに大型電解槽プラント(5,000kW級)の技術開発及び実証を行う予定です。これらは、「直接MCH電解合成(Direct MCH®)技術開発」として、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の進めるグリーンイノベーション基金事業に採択されました。また、CO2フリー水素と工場等や大気から回収したCO2を原料に液体燃料を製造する「合成燃料」の開発についても、グリーンイノベーション基金事業に採択され、プロセス全体の早期技術確立に向けて技術開発を進めています。

バイオ燃料分野では、凸版印刷株式会社と古紙を原料としたバイオエタノール事業の立上げについて協業検討を開始しました。その他、バイオジェット燃料の商業化を目指した技術開発や事業化検討にも取り組んでいます。

再生可能エネルギーの有効活用の実現に向け、再エネ発電量や電力価格、水素需要に応じて水電解装置による水素製造を制御する水素EMS(エネルギーマネジメントシステム)の開発やVPP(仮想発電所)の実証試験に取り組んでいます。水素製造や蓄電池制御の最適化による電力需給バランスの調整などの検証を通して、技術・ノウハウの蓄積を進めるとともに、地産地消エネルギー活用推進の一環として、東京都東村山市において、電気自動車を活用したエネルギーマネジメントシステム実証を2022年9月より開始(予定)するため、最適制御手法を検討しています。

さらに循環型社会の実現に向け、株式会社ブリヂストンと使用済タイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを開始しました。本プロジェクトは「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」としてグリーンイノベーション基金事業に採択されました。

社外連携については、早稲田大学キャンパス内に「ENEOSラボ」を設置し共同研究拠点として活用しています。包括的かつ分野横断的なオープンイノベーションを通して、水素、電池材料、ロボット関連の「CO2削減に向けた革新技術の研究」に取り組んでいます。

②燃料油・化学品製造技術分野

製油所、製造所の安全・安定操業、競争力強化、及び液体燃料におけるCO2削減を目指した研究を行っており、中でもデジタル化技術の開発・活用においては、2021年度に国内で初めてAI技術による石油化学プラント自動運転に成功しました。また、エンジンの熱効率向上が期待される革新燃焼技術(超希薄燃焼:スーパーリーンバーン)に適した燃料組成の検討を行い、製油所から得られる留分を利用することによるCO2削減の可能性を示すとともに、自社原料のさらなる有効活用(ケミカルシフト)に向け、触媒・反応技術を活用した石油化学誘導品を開発し、光学材料原料などでユーザーより高い評価を得ています。

③機能材分野

機能材分野では、自動車、生活・産業インフラ、ニュートリションを研究重点領域と設定し、自動車の電動化・軽量化・知能化に寄与する素材や部材、IoT時代の高速通信を支える素材や部材、飼料向け等の人の健康に役立つ素材の開発を推進しています。 具体的には、自動車・インフラ分野では、脂環式構造を有し、高耐熱・透明・高耐光性などの特長を有するモノマー製品群や、低誘電・高耐熱といった特徴を持つポリマー製品群の開発、ニュートリション分野では、優れた抗酸化性能を持つ天然由来レアカロテノイド商品群の開発を進めています。また産学連携として東京工業大学や横浜国立大学と共同研究講座を設置して、素材開発を加速・深化させるオープンイノベーションの拠点としています。

 

④潤滑油分野

潤滑油分野では、地球環境に配慮した高性能潤滑油、グリースの製品開発に取り組んでいます。一例として、最新国際規格であるAPI SP/ILSAC GF-6の適合性能に加え、省燃費性能、加速性能、乗り心地性に優れるエンジン油「ENEOS X PRIME」を開発しました。このほかにも省燃費型駆動系油、安全・環境配慮型工業用潤滑油、自動車・産業用高性能グリース、新冷媒対応・省エネルギー型冷凍機油といった製品の開発を新規材料、新規解析評価技術を取り入れながら推進するとともに、高品質の製品を安定かつ効率的に製造するための製造技術の開発も行っています。さらに、脱炭素化の世界的潮流を背景に加速するモビリティの電動化シフトに対応するため、潤滑性能はもとより冷却性能や電気絶縁性能等を高次元で両立し得る電動車用潤滑油やグリースの技術開発にも注力しています。

⑤デジタル技術分野

デジタル技術を活用して自社業務の効率化や新たな価値を生み出すことを目指した研究を行っています。具体的には、プラントデータを活用した運転効率化、画像解析による安全・安定操業支援に加え、革新的な素材・触媒探索技術の研究を推進しています。一例として、AI技術の産業応用に向けた先進的な検討を推進している世界的なトップランナーである株式会社Preferred Networks(PFN社)と戦略的な協業体制を構築し、主にプラント自動運転や素材探索においてAI技術を活用した革新的事業創出に取り組んでいます。MI(マテリアルズ・インフォマティクス)分野ではPFN社との協業により、高速かつ高精度な汎用原子レベルシミュレータMatlantisTMの開発に成功しました。第一原理計算による従来法と比較して、最大約2,000万倍高速に分子の状態を予測することができます。さらにPFN社とJV「株式会社Preferred Computational Chemistry」を設立し、2021年7月よりクラウドサービスとしての提供を開始しました。デジタル技術を活用した新たなビジネス創出につなげることも目指し、国内外のスタートアップ企業などとの連携も活発化させています。

 

(2)石油・天然ガス開発

該当事項はありません。

 

(3)金属 (研究開発費 11,077百万円)

金属事業では、長年培ってきたコア技術の進化・活用に加え、グループ企業内での技術コラボレーション、大学等研究機関との共同研究、外部企業とのパートナーシップ構築等、様々な形の共創を推進し、研究開発を行っています。データ社会の進展に寄与する次世代の先端素材の開発や、脱炭素や資源循環といった地球規模のESG課題解決に向けた製品・技術開発、車載用リチウムイオン電池(LiB)のリサイクル技術開発等に積極的に取り組んでいます。

①新規事業開発

CVD用塩化物、3Dプリンター用金属粉、銅微粉、LiBリサイクル及び電池材料の開発等について、事業部、関係会社等を跨ぎ全社横断で早期事業化に向けた取り組みを強化しています。

電池関連では、今後のEVの進展と資源循環社会への貢献に向けてLiBリサイクルと電池材料開発を一元的に進めるため、2021年8月に「電池材料・リサイクル事業推進室」及び「技術開発センター電池材料グループ」を設置した他、同日に欧州でJX Metals Circular Solutions Europe GmbHを設立し、当法人を拠点に欧州自動車メーカー等と連携し、実証試験を進めていきます。またJX金属サーキュラーソリューションズ(福井県敦賀市)が2021年10月より操業を開始し、中規模実証試験を実施しています。

また、3Dプリンター用の金属粉の開発推進に向け、2020年1月に出資した金属3Dプリンター向けの合金設計等の事業を行う英国スタートアップ企業Alloyed社と協業を進めている他、次々世代のパワーデバイスの材料として期待される酸化ガリウム基板及びデバイスの開発を手掛けるノベルクリスタルテクノロジー社に2020年6月の出資に続き2022年2月に追加出資をして協業を加速する等、各スタートアップとの共創を通したスピーディな新規事業創出の取り組みを進めています。

②事業別(資源分野)

資源分野では、選鉱工程に適用する自動化技術や鉱石からのレアメタル回収技術の開発を進めています。また、環境負荷低減に向けて、鉱山で使用する重機等のCO2排出量削減に資する技術等の調査を進めています。

③事業別(金属・リサイクル分野)

銅製錬におけるリサイクル原料処理拡大に向け、リサイクル原料から回収する貴金属及びレアメタル等の金属種拡大のための技術開発や、銅製錬工程からの有価金属回収工程の効率化を推進しています。2040年にリサイクル原料処理量を50%とするハイブリッド製錬を実現することを目指し、技術開発を進めています。

④事業別(薄膜材料分野)

薄膜材料分野では、高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めています。半導体用ターゲット、フラットパネルディスプレー用ターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリング用ターゲットや、その他電子材料における新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでいます。

 

⑤事業別(機能材料分野)

機能材料分野では、コネクタ等の用途に、精密な組成制御、独自の圧延加工プロセス及びユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能銅合金の開発を進めています。次世代材料として、コルソン系及びチタン系新規銅合金の開発等、更なる高機能製品化に取り組んでいます。また、プリント配線板材及び シールド材用途等では、屈曲性、エッチング性、密着性等の高い機能を付加した銅箔等の開発・バージョンアップを進めています。

⑥基盤技術開発

分析及びシミュレーションについて最先端技術の導入・開発を進め、それらを駆使することにより技術開発の促進・効率化を図っています。

 

これらに、その他の事業における研究開発費855百万円を加えた当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、24,151百万円です。