第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、事業活動の基礎となる「ENEOSグループ理念」を次のとおり定めています。

 

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また、当社グループを取り巻く事業環境はかつてない転換期を迎えています。このような環境の下、「ENEOSグループ理念」の実現に向けて「『今日のあたり前』を支え、『明日のあたり前』をリードする。」を新たな決意として掲げました。ENEOSグループは、困難な課題に挑戦し、「明日のあたり前」を創りつづけるリーディングカンパニーとして、ステークホルダーの皆様からの一層の信頼に応えていきます。

 

(2)ENEOSグループ長期ビジョン

足下の事業環境は、エネルギーセキュリティの揺らぎ、カーボンニュートラルに向けた社会的コンセンサスの形成、デジタル・トランスフォーメーションの更なる進展など、第2次中期経営計画策定時から変化しています。大きな方向性に変わりはないものの、変化のスピードは加速しており、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、エネルギートランジションに挑戦することが強く求められています。このような課題認識のもと、当社グループは、次のとおり「ENEOSグループ長期ビジョン」を掲げています。

 

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今後の事業環境を展望すると社会がカーボンニュートラルへ進むことが確実と考えられる一方カーボンニュートラルエネルギーの主役や必要な技術ブレイクスルーの時期は依然として不透明でありまたこのような状況であってもS+3E(注1)を満たしつつ、カーボンニュートラル社会へスムースに転換する必要がありますこうした状況の中で当社グループは日本のエネルギートランジションをリードしカーボンニュートラル社会においても国内の一次エネルギーの2割を供給(SAF(注2)・水素・合成燃料で最大シェア)するメインプレイヤーでありたいと考えています

(注)1.安全性(Safety)安定供給(Energy security)経済性(Economic efficiency)環境(Environment)

2.Sustainable Aviation Fuel :持続可能な航空燃料

 

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現段階では、カーボンニュートラル社会の主役となるエネルギーは明確ではありませんが、当社グループは、カーボンニュートラル社会の主力となる次世代エネルギーへの強みを発現すべく、第2次中期経営計画期間中に着々と布石を打ってきました。またデジタル社会の中心素材となる製品群や高度なリサイクル技術に加えシェアリングエコノミーの進展を支えるインフラ/ビジネスネットワークも保有しています当社グループが有する様なシナリオに対応する高いレジリエンス2030年以降の大きな収益ポテンシャル(成長機会)を活かし、すべてのステークホルダーの期待に応えていきます。

2040年度に向けて当社グループは化石燃料中心のポートフォリオを脱炭素分野へシフトしながらエネルギートランジションを進化させていきますROIC/事業領域別収益規模は次のとおりです

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(3)第2次中期経営計画(2020年度から2022年度まで)の振り返り

当社グループは、第2次中期経営計画を「ENEOSグループ長期ビジョン」の実現に向けた変革の推進と位置づけ、各事業ポートフォリオにおける「構造改革の加速」及び「成長事業の育成・強化」に取り組みました。

 

<基本方針>

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業績面の財務目標については、新型コロナウイルス感染症による影響を主因とした石油製品及び石油化学製品の減販や製油所トラブルの影響等により、ネットD/Eレシオのみの達成に留まりました。

 

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一方、株主還元については、配当金の支払と自社株買いにより、3ヵ年累計の在庫影響除き当期利益の50%以上を実施しました。

 

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事業面については、大型のM&Aや資産売却による事業ポートフォリオの入れ替えやカーボンニュートラル計画の策定等、ESGに関する各種施策を展開し、経営基盤の強化には、一定の成果を挙げました。

第2次中期経営計画における事業面や経営基盤の成果と課題の詳細は、以下のとおりです。

 

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大型のM&Aによる新たな事業の獲得を機に、第3次中期経営計画では、各事業の特性に応じた「自律型経営」を目指したグループ運営体制に移行します。

 

(4)対処すべき課題

当社グループは、長期ビジョンと今後の事業環境の認識を踏まえ、第3次中期経営計画(以下、第3次中計)を策定しました。

エネルギートランジション成否のカギは、第3次中計及び第4次中期経営計画の期間における周到な準備と展開であり、これらによって戦略的優位性を確立することが必要です。

長期ビジョンと中計の位置付けは、以下のとおりです。

 

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<基本方針>

長期ビジョンの実現に向け、重要な期間となる第3次中計では、「3つの柱」を方針として掲げました。「確かな収益の礎の確立」と「エネルギートランジションの実現に向けた取り組みの加速」及び「経営基盤の強化」の3つです。

 

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この柱に基づき、様々な施策に取り組むことで、『確かな収益の礎の確立』を行い、そこで得られたキャッシュを原資として、『エネルギートランジションの実現に向けた取り組み』を加速させます。

また、全ての下支えとなる『経営基盤の強化』については、重要施策として「ROICを指標としたポートフォリオ経営」「グループ運営体制の変更」を一体として行います。

「グループ運営体制の変更」では、各事業の競争力強化と事業特性に応じた「自律型経営」実現のため、グループの組織・体制に関して、2つの大きな施策を実行します。

 

1点目は、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)からの機能材事業、電気事業及び再生可能エネルギー事業の分社化・再編です。

ENEOSの機能材事業と再生可能エネルギー事業については、第2次中期経営計画期間での大型M&Aで獲得した株式会社ENEOSマテリアルとジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社を核として、当社傘下の事業会社として分社化します。電気事業は、同じくENEOSから事業分離して、新会社を設立し、当社傘下の事業会社とします。(2024年4月予定)

 

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2点目が、当社とJX金属株式会社(以下、JX金属)の更なる企業価値向上を目的として実施するJX金属の上場に向けた準備です。この施策を通じて、当社は、JX金属の高い成長性を株式市場に対して適正に訴求し、ポートフォリオ転換のための投資や株主への機敏かつ確実な還元を実行します。

JX金属は、事業特性に応じた迅速な意思決定と成長分野における各種戦略の実行を実現します。また、独立経営体制を確立すべく将来的には、持分法適用関連会社への移行を目指します。

 

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グループ運営体制の変更後、各社には自律型経営を求めますが、その一方、当社は、ROICを指標としたポートフォリオ管理を行うことにより、低効率事業は、抜本的な経営改善に取り組みます。

このように、自律の促進および適切なグリップを両立させた経営管理を実現します。

 

<財務目標・非財務目標>

第3次中計期間中の財務目標及び非財務目標は、次のとおりです。

 

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第3次中計から、ROICを財務目標に加えます。このROICは、事業リスクを考慮したうえで株主資本コストを設定し、そこから当社の戦略・強み等を考慮した付加価値を想定して、事業別に設定しています。

第3次中計最終年度となる2025年度において、インキュベーション(現時点では実証段階にあるなどの事業として評価が相応しくない水素・合成燃料などの事業)を除き、事業全体で7%以上とすることを目標としました。

非財務目標のうち、「温室効果ガス排出量の削減」では、国際社会でも指標として使われているCI(カーボン・インテンシティ)を指標とすることにしました。なお、詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)気候変動対応(TCFD)」をご参照ください。

 

<設備投資計画>

第3次中計期間での3ヵ年の設備投資計画は、次のとおりです。

 

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第3次中計は、『今日の当たり前』を支えながら、将来の戦略的優位性を確立する期間に位置付けられます。この基本的な考え方のもと、成長戦略とキャッシュ・フローを重視した計画とし、また短期リターン投資と中長期でリターンを得る投資のバランスを考慮し、策定しています。

 

<株主還元>

株主の利益還元は、引き続き経営上の重要課題であると認識しており、中期的な連結業績推移及び見通しを反映した利益還元の実施を基本に、安定的な配当の継続に努める方針です。第3次中計期間中は、3ヵ年平均で、在庫影響除き当期利益の50%以上を「配当と自社株買い」で還元するとともに、安定的な配当継続に配慮し、22円/株の配当を下限とする考えです。

 

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<次期の連結業績予想について(2023年5月公表)>

石油・天然ガス資源価格の下落や経費の増加による石油・天然ガス開発事業の減益や前期に高騰していた石油製品等の輸出市況の下落を織り込む一方で、製油所の稼働回復に伴う輸出数量の増加や白油・輸出マージンのマイナスのタイムラグが解消するほか、前期に計上したカセロネス銅鉱山事業の評価損失の反転などにより増益の見通しです。前提条件に基づく次期の業績予想は下記のとおりです。

●前提条件(2023年4月以降)

為替:130円/ドル、原油(ドバイスポット):80ドル/バーレル

銅価:360セント/ポンド

売上高:13兆4,000億円 営業利益:3,400億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:1,800億円

なお、在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、営業利益と同額の3,400億円と見込んでいます。

 

<ENEOSにおける高圧ガス保安法上の不備について>

ENEOSにおける高圧ガス保安法上の不備により、2023年6月9日付で経済産業省から、川崎製油所浮島北地区・浮島南地区への同法に基づく「認定完成検査実施者」(浮島北地区は、コンビナート等保安規則に基づく「特定認定完成検査実施事業者」を含む)の認定取消し処分を受けました。

高圧ガス保安法に定める認定事業者として、厳しい自主保安管理が求められる中にあって、このような事態を招きましたことを深くお詫び申し上げます。

ENEOSでは、同様の事態を二度と繰り返さないよう、高い保安意識の徹底や保安管理体制の強化などの再発防止策の実施に全社を挙げて取り組んでいきます。

また、グループ全体で、コンプライアンス遵守への取組みを再徹底・強化し、皆様の信頼を早期に回復できるよう努めていきます。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)ガバナンス

・ESG経営推進体制

企業が持続的に成長するためには、事業活動を通じて社会ニーズに応え続けるとともに、社会課題の解決に貢献することで社会から信頼され、価値を認められる存在でなければなりません。

この認識のもと、当社グループは「ESG経営に関する基本方針」を定め、当社経営会議において将来の経営に大きな影響を及ぼし得るリスクや事業機会を分析し、特定したリスク・重点課題への対応状況を適切に管理する体制を取っています。

 

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[リスク・重点課題及び対応状況確認プロセス]

ア.包括的な協議(原則年1回、第4四半期)(次頁、図①)

経営会議では、議論の実効性及び意思決定の迅速性を高めるため、下記の事項を包括的に協議しています。

(ア)全社的なリスクマネジメントに基づいて特定する重点対応リスク事象

(イ)ESGに関するリスク分析に基づいて特定するESG重点課題

(ウ)内部統制システムに基づいて特定する内部統制上のリスク事象

 

イ.対応方針決定及び状況確認(原則年1回、第1四半期)(次頁、図②)

当社所管部署主導のもと、関係部署及び主要な事業会社(注)が組織横断的に連携し、特定したリスク・重点課題への対応方針を策定・実行しています。

経営会議では、前年度の状況確認とともに、当該年度の対応方針確定・決定を行っています。

(注)主要な事業会社とは、ENEOS株式会社、JX石油開発株式会社及びJX金属株式会社の総称です。

 

ウ.事業機会の議論(適宜)(次頁、図③)

経営会議では、中期経営計画や年度ごとの事業計画及びそれらに基づく予算の審議を行っています。

その都度、事業機会について議論しています。

 

エ.取締役会への報告(適宜)(次頁、図④)

取締役会は、経営及び中期経営計画・予算等の事業戦略を決議するとともに、経営会議で決定したリスク・重点課題とそれらへの対応状況の報告(原則年2回)を受けることで、監視・監督しています。

2022年度に取締役会に報告されたESG関連事項は、下記のとおりです。

(ア)2021年度ESG活動状況実績及び2023年度ESG重点課題の特定

(イ)個別課題への対応

カーボンニュートラル基本計画の策定方針について

 

オ.グループ会社との共有(適宜)(次頁、図⑤)

特定したリスク・重点課題をグループ各社と適宜共有し、グループ各社が自律的に自社の事業戦略に反映することで対応しています。

 

 

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(2)リスク管理

・ESG重点課題の検証と特定

当社グループは、各種ガイドライン、ESG評価機関の評価項目や評価ウエイト等を踏まえ、毎年ESG重点課題を特定しています。

特定手順に沿って、2023年度は9個のESG重点課題を特定しました。また、ESG重点課題ごとに責任部署・KPIを設定しており、ESG重点課題におけるKPIの進捗状況、取り組み結果を経営会議及び取締役会に報告することとしています。

 

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(注)上から評価点の高い順に記載しています。

 

 

(3)気候変動対応(TCFD)

ア.シナリオ分析

当社グループは、世界エネルギー需要の長期的見通しについてはIEAのWEO(World Energy Outlook 2022)を参照し、物理的なリスク評価(気候や海面変化への対応など)についてはIPCCのRCPを参照してシナリオ分析を実施しています。

長期ビジョンの見直しにあたり、低炭素社会は IEA WEOのSTEPS(注1)、カーボンニュートラル社会はAPS(注2)及びNZE(注3)を参考に検討し、その中間シナリオを当社グループのベースケースとしました。その結果、長期ビジョンで描く社会シナリオの方向性は変わらないものの、その変化のスピードは公表時の想定より加速すると考えています。

当社グループのシナリオでは、2040年社会における国内燃料油需要はおよそ半減する(2019年比)一方、脱炭素・循環型資源由来のエネルギー市場が大きく成長していく中で環境価値取引も一般化することを想定しています。また、EV・シェアリングなどのモビリティ関連、生活を快適にするライフサポート関連の高付加価値サービスや、リサイクル資源、デジタル機器等に必要な高機能材料、先端材料等の需要が拡大していくと見込んでいます。

当社グループは、1.5℃を含む複数のシナリオを検証しており、化石燃料中心のポートフォリオから脱炭素分野へシフトしていく過程において、燃料油の需要動向等にも注視しながら、エネルギー安定供給とカーボンニュートラル社会の実現を両立していく方針です。様々なシナリオに対応する高いレジリエンスを有しており、社会全体がよりカーボンニュートラル実現に向けて進展し、日本全体で1.5℃シナリオに向かっていく環境により近づけば、当社の取り組みもさらに加速させることで日本のエネルギートランジションをリードし、脱炭素社会の形成に大きく貢献します。

(注)1.Stated Policies シナリオ(現在公表されている各国の政策を反映したシナリオ)

2.Announced Pledges シナリオ(各国の意欲的な目標が達成されると仮定したシナリオ)

3.Net Zero Emissions by 2050 シナリオ(2050年に世界でネットゼロを達成するシナリオ)

 

イ.リスクと機会

当社グループは、2017年度からCOSO(注4)ERMフレームワークに基づく全社リスクマネジメント(ERM)を導入しています。このプロセスから気候変動対応は経営上の重要なリスクと捉え、かつ機会とも認識しており、次頁の項目を特定しています。

財務影響については、移行リスクは当社ベースシナリオ、物理リスクはストレスケースとしてIPCC  RCP8.5シナリオ(注5)に基づき試算していますが、多くの潜在的リスク・不確実な要素・仮定を含んでおり、実際には、重要な要素の変動により大きく異なる可能性があります。

なお、リスク・機会を含むTCFD推奨の開示項目については、毎年発行される「統合レポート」に詳細を記述しています。2023年度も9月に発行する予定ですので、そちらをご参照ください。

 

(注)4.COSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission:トレッドウェイ委員会支援組織委員会)が発表した内部統制のフレームワークで、世界各国で採用されています。

5.IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価シナリオで、世界の平均気温が2100年までに

1986年~2005年と比べ約4℃相当上昇するシナリオ

 

 

●リスク・機会と時間軸ごとの財務影響

 

項目名

財務影響

短期

(2025年)

中期

(2030年)

長期

(2040年)

評価方法

移行リスク

・カーボンニュートラル 達成のために要するコストの増加

なし

300億円/年

1,200億円/年

2030年の目標削減量400万トン、2040年の目標削減量1,900万トン全量を炭素クレジット購入した場合の営業利益減少額

炭素クレジット価格(50ドル/tCO2※ )×数量×為替

※内部炭素価格

・技術革新によるEVの普及加速による石油需要減

・環境意識の高まりによる石油需要減

影響は限定的

約500億円/年減少

約1,000億円/年減少

2019年比2030年に国内石油需要が約2割減、2040年に約半減した場合の営業利益減少額

(第3次中期経営計画の2025年度の利益目標をベースに算出)

・石油上流資産の座礁化

リスクは限定的

保有する石油上流資産の埋蔵量を、現行生産量で割り戻した可採年数から推定

物理リスク

・異常気象(大型台風等)と海面水位の上昇による極端な風水害の発生、過酷度の増加

1~2億円/年

IPCC RCP8.5シナリオを参照し、国内に保有する製油所・製錬所など31箇所の設備・資産を対象に、WRI Aqueduct(注6)などを用い被害総額(営業利益減少額)を試算

・温暖化に伴う海面上昇

リスクは限定的

Aqueductが予測する2040年時点の日本近海における海面上昇量(約0.2メートル)から推定

 

 

 

・再生可能エネルギー、水素、CN燃料に対する需要増加

周到な準備と展開フェーズ

〜500億円/年

〜2,000億円/年

脱炭素・循環型社会の進展に伴い、再生可能エネルギー、水素、CN燃料に対する需要の増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益

・EV充填や環境に配慮したモビリティサービスの拡大

周到な準備と展開フェーズ

〜500億円/年

〜1,000億円/年

脱炭素社会に向けて普及が見込まれるEV充電の需要増加や、環境に配慮したモビリティサービスなどのビジネス機会拡大が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益

・環境負荷の削減効果を持った製品の需要増加

・循環型資源由来(リサイクルを含む)の素材・電材の需要増加

1,000億円

〜1,500億円/年

〜2,000億円/年

GHG排出削減貢献につながる製品の需要拡大や、サーキュラーエコノミーに対応した循環型資源由来の素材・電材の需要増加が見込まれ、推定される市場規模と当社シェア、営業利益率について一定の仮定をおき試算した当期利益

(注)6.世界資源研究所(World Resources Institute)が開発した水リスク評価ツール

 

ウ.指標と目標 ~カーボンニュートラル基本計画~

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、当社グループはカーボンニュートラル基本計画(2023年5月公表)を策定しています。本計画では、当社の温室効果ガス排出削減を製造・事業の効率化やCCS、森林吸収等によって進めるとともに、社会の温室効果ガス排出削減に貢献するため、水素・カーボンニュートラル燃料・再生可能エネルギー等による「エネルギートランジション」の推進とリサイクルやシェアリング等による「サーキュラーエコノミー」の推進を掲げ、具体的な目標やロードマップを定めています。

 

当社グループのカーボンニュートラル基本計画の詳細は、以下のとおりです。

 

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エ.2022年度の主な取り組み

(ア)CO2の見える化

製油所での削減推進のために排出量の適時把握が重要となる事から、2023年度中にCO2見える化システムを導入し、全社の排出量一元管理と製品ごとのカーボンフットプリント(CFP)算定ができる体制を構築することを公表しました。法定報告の効率化、月次予実管理による計画の実行管理を行うとともに、一部製品のCFPデータを顧客に提供し、炭素製品の環境価値訴求によるビジネス機会創出を目指します。さらに、GHG排出削減に資する事業を推進すべく、インターナルカーボンプライス50$/tを導入し、感応度分析を行っています。

(イ)CCS

エネルギーセグメントに属する子会社であるENEOS株式会社、石油・天然ガス開発セグメントに属する子会社であるJX石油開発株式会社及び電源開発株式会社とともに、国内大規模CCSの事業化調査に共同で取り組むことを2022年5月に発表しました。2030年国内初の本格的なCCSを実装化し、エネルギーの安定供給を果たしつつ、日本のGHG排出削減目標達成への貢献を目指します。本取り組みは順調に進捗しており、3社で合弁会社(西日本カーボン貯留調査株式会社)を2023年2月に設立しました。

(ウ)自然吸収

国内森林プロジェクトでは、久万高原町や新潟農林公社と連携し、クレジット創出事業への取り組みを加速しています。創出したクレジットを当社が買い取り、還元された利益を森林の維持・管理に利用する事で日本の林業が抱える社会課題解決と脱炭素社会における新たな森林の価値創造を追求していきます。

 

なお、2022年度のGHG排出量(Scope1,2)の実績は、2023年11月公表予定の「ESGデータブック」をご参照ください。

 

 

 

(4)人的資本と多様性

当社グループは、「グループ人材育成基本方針」に則り、中長期的な企業価値向上の実現を担う人材と、創造と革新の精神を持ちグローバルに挑戦し続ける人材を育成することで、確かな収益の礎の確立とエネルギートランジションを実現します。

 

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ア.人材育成

ENEOS株式会社(以下、ENEOS)では、ベンチャー企業派遣型研修、M&A研修等による能力開発、リスキリングなどを通じて、事業ポートフォリオの転換を実現する人材を育成していくほか、2022年度より導入したオンライン学習支援制度(ENEOS Learning Platform)の利用者数の向上を図ることにより、全社的に社員の自律的なキャリア形成を支援していきます。

JX石油開発株式会社(以下、JX石油開発)においては、プロジェクトマネジメント研修、JX金属株式会社(以下、JX金属)においては、グローバル研修やデジタル研修などを通じて、事業計画の実現に資する人材を育成していきます。

 

イ.社内環境整備

(ア)人事制度

当社グループでは、2021年度から2022年度にかけて、各社で人事制度を改定しました。

具体的には、ENEOS(管理職)とJX石油開発では、役割等級制度を導入し、経営戦略に基づいて設定されたポストに年齢問わず最適な人材を抜擢するなど、ダイナミックな人材シフトと登用が可能になりました。

また、ENEOS(一般職)とJX金属では、コース別人事制度を導入し、コース毎に求められる役割やキャリアを明示することで、各人材像に適した評価や育成を丁寧かつスピーディーに実行できるようになりました。

 

(イ)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)と働き方改革の推進

当社グループでは、多様な人材一人ひとりが最大限に力を発揮できるよう、DE&Iの推進を重要な経営戦略の一つと位置付けており、各社で様々な施策を展開しています。その施策の一つとして、女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法に基づいた行動計画を策定しており、ENEOSにおいては「学卒採用者の女性比率」や「女性役職者数」等の目標を掲げています。

また、自律的な働き方の選択と、それに伴う生産性の更なる向上を狙いとして、テレワークを始めとした柔軟な働き方を支援する制度を整備するなど、働き方改革も継続して推進しています。

 

 

第3次中期経営計画における「経営基盤強化」のためのグループ人材戦略は、以下のとおりです。

 

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ウ.指標及び目標

当社グループ各社は、上記の戦略の実現に向け、各事業会社の特性に応じ定量目標を設定しており、ENEOSでは、以下の目標を掲げています。

 

2022年度実績

2025年度目標

学卒採用者の女性比率

事務系 52%

事務系 50%以上

 

技術系 16%

技術系 20%以上

女性役職者数

51名

100名以上

経験者採用役職者数

56名

80名以上

男性育児休業取得率(注)

83.9%

90%以上

ENEOS Learning Platform

延べ利用人数

589名

1,500名以上

(注)当社基準の計算方法により、算出した数値です。

 

3【事業等のリスク】

当社グループでは、グループ経営に関するリスク事象に的確な対応を図るため「全社的リスクマネジメント(Enterprise Risk Management: ERM)体制」を整備・運用しています。具体的には、毎年度グループ経営に甚大な影響を与えうるリスク事象を抽出した上で「重点対応リスク事象」を選定し、対応策の実行を進め、その取り組み状況を経営会議及び取締役会に報告するプロセスを導入しています。なお、2023年度の「重点対応リスク事象」には、「製油所トラブルの増加、稼働率低迷」を選定し、今後、所管部署を中心に、当該事象に対する対応方針の決定と取組状況の確認等を実施していきます。なお、リスクに対するガバナンス体制は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)ガバナンス」をご参照ください。

当社グループの事業において、重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が本報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)市場リスク

・商品価格変動リスク

当社グループは、石油製品・石油化学製品・電力・金属製品等の販売及びそれらの原料となる原油・銅鉱石等の鉱物の購入を行っていますが、これらの販売価格及び購入価格は商品市場価格の変動によって影響を受けることから、商品価格変動リスクに晒されています。

 

(エネルギーセグメント)

国内の石油製品のマージンは、主に原油価格と国内の石油製品市場価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。原油価格に影響を及ぼす要因としては、円の対米ドル為替相場、産油地域の政治情勢、OPECによる生産調整、シェールオイルの生産動向、全世界的な原油需要等があります。また、石油製品価格に影響を及ぼす要因としては、石油製品の国内需要、海外石油製品市況、国内の石油精製能力及び稼働率、国内のサービスステーション総数等があります。当社グループは、石油製品販売価格を石油製品の需給状況や市況動向を適切に反映して決定していますが、原油価格や石油製品市況の動向次第では、マージンが大きく変動します。また、石油化学製品のマージンも、原油価格やナフサ等の原料油価格と石油化学製品価格との関係に左右され、当社グループがコントロールし得ない要因によって決定されます。石油化学製品価格については、生産設備の新増設による供給能力拡大と衣料・自動車・家電等の需要動向に影響されます。需給が緩和した場合は、原油・原料油価格の上昇を製品価格に転嫁することが困難になります。電力については、当社グループが販売する電力量が当社グループによる発電量を上回る場合、不足分を市場から調達しますが、調達価格が急騰した場合、収益が悪化する可能性があります。

従って、原油価格、石油製品価格、石油化学製品価格の変動や電力市場の取引価格の高騰等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(石油・天然ガス開発セグメント)

石油・天然ガス開発事業においては、原油及び天然ガス価格の上昇時には売上高が増加し、原油及び天然ガス価格の下落時には、売上高が減少します。従って、原油及び天然ガス価格の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(金属セグメント)

銅事業は、主として海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業、銅製錬事業、機能材料・薄膜材料事業から成り、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の影響を受けます。銅製錬事業は、海外鉱山から銅精鉱を購入し、電気銅を生産販売する買鉱製錬業(カスタムスメルター)であり、そのマージンは、主に製錬マージンと販売プレミアムからなります。海外銅鉱山開発事業及び海外銅鉱山への投資事業については、開発鉱山及び投資先鉱山が販売する銅精鉱等の価格が電気銅の国際価格に基づき決定されるため、国際価格が下落した場合には、売上高が減少します。製錬マージンは銅精鉱鉱山との交渉により決定されますが、銅鉱石品位の低下、資源メジャーによる寡占化の動きなどにより製錬マージンが低下する可能性があります。また、販売プレミアムは電気銅の国際価格に付加されるものであり、輸送経費、製品品質等の様々な要因を考慮して顧客との交渉により決定されるため、減少する可能性があります。機能材料・薄膜材料事業の原材料は、金属市況等の変動により調達価格が変動します。これら原材料の調達価格が上昇し、製品価格に転嫁できない場合や、市況が期首棚卸資産の帳簿価額を大きく下回る場合、損益が悪化します。従って、銅精鉱価格、製錬マージン、販売プレミアム及びその他金属市況等の変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・為替リスク

当社グループは、外貨建ての営業取引による収入及び支出が発生しており、また多額の外貨建て資産及び負債を有しています。そのため、外国為替相場の変動は、資産、負債、収入及び支出の円貨換算額に影響を及ぼす可能性があります。また、外国為替相場の変動は、海外の子会社、持分法適用会社、共同支配事業及び共同支配企業の財務諸表を円貨換算する場合にも影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、当社グループでは、デリバティブ金融商品を利用したヘッジを行い、市場リスクを低減する対策を講じています。その具体的な取り組みについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記20.金融商品 (2)財務リスク管理 ③市場リスク」をご参照ください。

 

また、上記の市場リスクのうち、当社グループの経営成績に影響を及ぼす主要なリスクである外国為替相場、原油価格及び銅価格の市況変動による営業利益への影響額については、感応度を算定しています。次期の連結業績予想(2023年5月公表)へ与える市況変動の感応度は、下表のとおりです。なお、本感応度は一定の前提をおいて算定したもので、諸条件の変化によって影響額も変動します。

 

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(2)環境規制に関するリスク

当社グループの事業は、広範な環境規制の適用を受けており、これらの規制により、環境浄化のための費用を賦課され、環境汚染が生じた場合には、罰金・賠償金の支払いを求められ、又は操業の継続が困難となる可能性があります。また、今後、規制が強化される可能性があります。これらの環境規制及び基準に関する義務や負担は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)気候変動に関するリスク

当項目は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)気候変動対応(TCFD)」の中で記載しています。

 

(4)操業に関するリスク

当社グループの事業は、火災、爆発、事故、輸出入制限、自然災害、鉱山の崩落や天候等の自然現象、労働争議、原料や製品の輸送制限等の様々な操業上のリスクを伴っており、これらの事故・災害等が発生した場合には、多大な損失を蒙る可能性があります。当社グループは、可能かつ妥当な範囲において、事故、災害等に関する保険を付していますが、それによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。

 

(5)需要変動に関するリスク

当社グループの製品・サービスの需要は、それらを提供している国又は地域の経済状況、社会情勢の影響を強く受けています。国内石油製品需要については、「脱炭素社会」の実現に向けた動きが加速することを受けて、低燃費車の普及、ガス・電気等へのエネルギー転換が進展し、今後も減少することが予想されます。石油化学製品の販売はアジア諸国での需要に大きく依存しており、これらの地域における需要の変動が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。電子材料部品・チタンなどの製品については、需要家が限定されており、特定の需要家の経営環境が当社グループの製品需要に大きな影響を与えます。建設事業についても、公共事業又は民間設備投資(居住用不動産の建設を含む)の動向が、当社グループの建設事業需要に影響を及ぼします。これら当社グループの需要の変動については、正確な予測に努め必要な対策を行っていますが、予測を超えた急激な変動がある時は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)競合に関するリスク

当社グループは、様々な市場で激しい競争に晒されています。特に国内石油精製販売事業においては、企業間で激しい競争が行われていますが、国内需要の減少傾向が、この状況をさらに加速する可能性があります。また、機能材料・薄膜材料事業は、技術革新及び顧客ニーズの急速な変化を伴う事業環境下にあり、競合他社との競争に絶えず晒されています。このような競争環境の激化が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)原料供給源に関するカントリーリスク

当社グループは、原料の多くを海外から調達しており、特に、原油は中東の、銅精鉱は南アメリカ、東南アジア及びオーストラリアの、それぞれに限られた供給源に大きく依存しています。こうした国・地域における政治不安、社会混乱、労働争議、経済情勢の悪化、法令・政策の変更等のカントリーリスクが発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)資源開発に関するリスク

当社グループが行っている油田・天然ガス田における探鉱及び開発活動は、現在、商業化に向けて、様々な段階にあります。探鉱及び開発の成功は、探鉱・開発地域の選定、設備の建設コスト、政府による許認可や税制、資金調達等、種々の要因に左右されます。個々のプロジェクトが商業化に至らず、投資費用が回収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、探鉱・開発事業においては、高度な専門技術と幅広い経験を有する人材を確保する必要がありますが、当社グループが優秀な人材を十分に確保できない場合は、収益機会の逸失及び競争力低下につながる可能性があります。

 

(9)石油・天然ガスの埋蔵量確保に関するリスク

国際的な資源獲得競争により、当社グループが石油・天然ガスの埋蔵量を確保するための競争条件は一段と厳しくなっています。当社グループの将来における石油・天然ガスの生産量は、探鉱、開発、権益取得等により、商業ベースの生産が可能な埋蔵量をどのように確保できるかにより左右されます。当社グループが石油・天然ガス埋蔵量を補填できない場合には、将来的に生産量が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、石油・天然ガス埋蔵量の見積りは、地質学的、技術的、経済的情報に基づいた主観的判断や決定を伴うため、正確に測定することが困難であり、進歩する回収技術の適用や生産活動を通じた新たな情報に基づいて大幅な修正が必要となる可能性があります。実際の埋蔵量が見積りを下回った場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)石油・天然ガス開発機材に関するリスク

石油・天然ガスの探鉱及び生産をするため、当社グループは、第三者から掘削機等の機材及びサービスの提供を受けています。原油価格が高騰している時期等は、これらの機材及びサービスが不足し、機材及びサービス提供の価格も上昇することになります。当社グループが、適切なタイミングかつ経済的に妥当な条件で、必要な機材やサービスの提供を受けることができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(11)第三者との提携、事業投資に関するリスク

当社グループは、様々な事業分野において、合弁事業その他の第三者との提携及び他企業等への戦略的な投資を行っています。これらの提携や投資は、当社グループの事業において重要な役割を果たしており、種々の要因により、重要な合弁事業が経営不振に陥り、又は提携関係や投資における成果を上げることができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(12)事業の再構築に関するリスク

当社グループは、コスト削減、事業の集中と効率性の強化を図ることとしており、事業の再構築に伴う相当程度の損失が発生する可能性があります。当社グループがその事業の再構築を適切に行うことができず、又は、再構築によっても、想定した事業運営上の改善を実現することができなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)設備投資及び投融資と減損に関するリスク

当社グループにおいては、事業の維持・成長又は新たな事業機会の獲得のために、継続的な設備投資及び投融資を必要としていますが、キャッシュ・フローの不足等の要因によりこれらの計画を実行することが困難となる可能性があります。また、外部環境の変化等により、実際の投資額が予定額を大幅に上回り、あるいは計画どおりの収益が得られない可能性もあります。それにより、当社グループが所有している有形固定資産、のれん及び無形資産について投資額の回収が見込めなくなった場合には、これを反映させるように帳簿価額を減額し、その減少額を減損損失として計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(14)繰延税金資産に関するリスク

当社グループの繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の繰越税額控除及び繰越欠損金を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で金額を計上しています。課税所得発生の時期及び金額は、合理的な見積りに基づき決定していますが、課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済状況の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(15)棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げと棚卸資産評価に関するリスク

当社グループは、多額の棚卸資産を所有しており、原油、石油製品、レアメタルの価格下落等により、棚卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額よりも低下したときには、収益性が低下しているとみて、期末帳簿価額を正味売却価額まで切り下げて売上原価等に計上することとなるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、原油、石油製品等棚卸資産の評価を総平均法で行っており、原油価格の上昇局面では、期初の相対的に安価な棚卸資産の影響により売上原価が押し下げられて増益要因となりますが、原油価格の下落局面では、期初の相対的に高価な棚卸資産の影響により売上原価が押し上げられて減益要因となるため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)有利子負債に関するリスク

当社グループは、多額の有利子負債により事業活動等に制約を受ける可能性があり、また、負債の元利金支払いのために、追加借入又は資産の売却等による資金調達を必要とする可能性がありますが、こうした資金調達を行うことができるか否かは、金融市場の状況、当社の株価、資産の売却先の有無等、様々な要因に依存しています。さらに、国内外の金利が上昇した場合には、金利負担が増加することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)確定給付制度に関するリスク

当社グループは確定給付制度を含む退職給付制度を有しています。これらの各制度に係る確定給付制度債務の現在価値及び関連する勤務費用等は、数理計算上の仮定に基づいて算定されます。数理計算上の仮定には、割引率等、様々な変数についての見積り及び判断が求められます。これらの変数を含む数理計算上の仮定の適切性について、将来の不確実な経済状況の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、制度資産に関しては、主に資本性金融商品の価格や社債利率の変動リスクに晒されており、これらの資産の利回り低下も当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記18.従業員給付 (2)確定給付制度」をご参照ください。

 

(18)信用に関するリスク

当社グループは、保有する売掛金などの金融債権が、債務者(取引先)の信用悪化や経営破綻などにより債務不履行になることにより、金融資産が回収不能になるリスク、すなわち信用リスクに晒されています。当該リスクに対応するために、与信管理規程等に基づき取引先ごとに与信限度額を設けた上で、取引先の財務状況等について定期的にモニタリングし、債権の期日及び残高を取引先ごとに適切に管理することにより、回収懸念の早期把握を図っています。さらに、必要に応じて担保設定・ファクタリング等を利用することによって保全措置を図っていますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。取引先の信用状態の悪化を受けて、保有する金融資産が回収不能になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)知的財産に関するリスク

当社グループは、事業遂行のため、特許権等の知的財産権を保有していますが、状況によってはその確保が困難となり、又は有効性が否認される可能性があります。また、当社グループの企業秘密が第三者により開示又は悪用される可能性もあります。さらに、急速な技術の発展により、当社グループの事業に必要な技術について知的財産権による保護が不十分となる可能性があります。また、当社グループの技術に関して第三者から知的財産権の侵害クレームを受けた場合は、多額のロイヤリティー支払い又は当該技術の使用差止めの可能性もあります。以上のように、当社グループがその事業を行うために必要な知的財産権を確保し、又はそれを十分に活用することができない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)内部統制システムに関するリスク

当社グループは、かねてからコンプライアンス、リスク管理等の充実に努めており、財務報告に係る内部統制を含め、内部統制システムの充実強化を図っていますが、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス違反、巨額な損失リスクの顕在化、ディスクロージャーの信頼性の毀損等の事態が生じた場合には、ステークホルダーの信頼を一挙に失うことにもなりかねず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)情報システムに関するリスク

当社グループは、生産・販売・会計などのプロセスに関する電子データを、さまざまな情報システムやネットワークを通じて利用しています。これらの情報システムには安全対策が施されているものの、地震等の自然災害やサイバー攻撃を含む事象等により、情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止する可能性があります。その場合、当社グループの生産・販売活動に支障を来たすとともに、取引先の事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)個人情報の管理に関するリスク

当社グループは、石油販売等の事業に関連して顧客の個人情報を保有しており、それらに保護対策等を実施して適切に管理していますが、こうした対策に今後多額の費用を必要とする可能性があります。また、今後、仮に顧客の個人情報が流出し又は悪用された場合、上記事業に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

<当社グループを取り巻く環境>

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和したものの、世界的な物価上昇を背景とした米欧の金融引き締め等を受け、総じて世界経済の回復の動きには弱さが見られました。また、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学的リスクも、引き続き世界経済に影響を及ぼしました。

わが国経済については、物価上昇による家計や企業への影響や世界経済の下振れリスク等の下押し懸念はありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響緩和から経済社会活動の正常化が進み、緩やかな回復が続きました。

ドバイ原油の価格は、期初は1バーレル当たり102ドルから始まり、期末には78ドル、期平均では前期比15ドル高の93ドルとなりました。EUのロシア産原油禁輸措置の導入による供給不足感等を受け6月には119ドルまで上昇しましたが、各国の金融引き締めによる世界的な景気後退懸念や中国の新型コロナウイルス感染拡大等の影響を受けて、12月には70ドル台前半まで下落し、その後は80ドル前後で推移しました。

銅の国際価格(LME〔ロンドン金属取引所〕価格)は、期初は1ポンド当たり465セントから始まり、期末には405セント、期平均では前期比52セント安の388セントとなりました。中国の経済減速や世界的な景気後退懸念の高まりを受け7月にかけて310セント台まで大きく下落しましたが、中国のゼロコロナ政策撤廃や米国利上げペース緩和期待等により上昇に転じ、1月以降は概ね400セントを超える水準で推移しました。

円の対米ドル相場は、期初は1ドル122円から始まり、期末には134円、期平均では前期比23円円安の135円となりました。米国の金融引き締めによる日米の金利差拡大を背景に10月には150円台まで円安が進行しましたが、12月に日銀の政策修正により130円台前半まで急速に円高が進行、2月には、日銀総裁の後任人事が決定し、政策変更の憶測から一時120円台後半まで円高が進行しました。

 

<連結業績の概要>

こうした状況のもと、当連結会計年度における売上高は、原油価格の上昇に伴う石油製品販売価格の上昇や円安の進行等により、前年同期比37.5%増の15兆166億円となりました。また、営業利益は、前年同期比5,046億円減益の2,813億円となりました。在庫影響(総平均法及び簿価切下げによる棚卸資産の評価が売上原価に与える影響)を除いた営業利益相当額は、前年同期比1,691億円減益の2,465億円となりました。

金融収益と金融費用の純額239億円を差し引いた結果、税引前利益は、前年同期比5,144億円減益の2,574億円となり、法人所得税費用544億円を差し引いた当期利益は、前年同期比3,761億円減益の2,030億円となりました。

なお、当期利益の内訳は、親会社の所有者に帰属する当期利益が1,438億円、非支配持分に帰属する当期利益が592億円となりました。

 

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(注)上図内の原油価格、銅価、為替レートは期平均値です。

 

セグメント別の概況は、次のとおりです。

 

[エネルギーセグメント]

国内の石油製品需要は、新型コロナウイルス感染症の影響緩和により回復の動きが見られるものの、構造的な需要減少により同感染症のまん延前を下回る水準で推移しています。他方、アジアの石油化学製品需要は、中国を中心に堅調に伸長した結果、前連結会計年度を上回る水準で推移しました。

 

<基盤事業>

国内需要の減少が続く中にあっても、国民生活に不可欠な石油製品の安定供給の使命を果たし、サプライチェーンの最適化・効率化・強靭化によりキャッシュ・フローを創出すべく、次の諸施策に取り組みました。

 

●SSネットワークの強化

国内最大のSSネットワークを一層強固な事業基盤とすべく、お客様の利便性や満足度を高めるために様々なサービスを展開しました。

具体的には、QRコードを使った決済やクーポン利用、給油履歴の確認等ができる新ツール「ENEOS SSアプリ」の展開に加え、SSにおいて「Tポイント」・「楽天ポイント」・「dポイント」の3つのポイントが利用可能となるマルチポイントサービスを開始しました。

※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

 

●製油所の信頼性向上に向けた取り組み

製油所の信頼性向上のため、検査プログラムの強化・前倒し、保全計画の改善、工事品質の向上、運転トラブルの削減の4本柱を軸として活動しています。

検査プログラムの強化・前倒しについては、検査範囲を拡大し、潜在リスクの網羅的な洗い出しを行って、操業影響の大きい箇所から順次検査を実施しています。

保全計画の改善については、これまでのトラブルから得られた知見及び操業に与える影響を踏まえて優先順位を改めて評価し、点検・補修の強化を行っています。

工事品質の向上については、施工事業者との意見交換やお互いの知見を共有し、具体的な施工内容に応じて社外のスペシャリストの知見も取り入れ、施工品質に起因するトラブルの撲滅に取り組んでいます。

運転トラブルの削減については、ベテランの勘所の手順化、若手運転員の体感型教育等を通じ、非定常操作の確実性向上に取り組んでいます。

 

●デジタル技術の積極導入

株式会社Preferred Networksとともに、熟練運転員のノウハウが求められる石油精製・石油化学プラントのオペレーションを自動化するAIシステムを開発し、国内初となるAI技術による石油化学プラントの連続自動運転を実施しています。また、同社と合弁会社として株式会社Preferred Computational Chemistryを設立し、共同開発した新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を開始しています。同サービスは2022年9月1日時点で、41の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料等、幅広い開発に用いられています。

また株式会社イクシスと、ロボティクスを活用したプラント・次世代型エネルギー設備への保守点検サービス事業について協業検討を開始しました。

 

<成長事業>

「脱炭素・循環型社会」「デジタル革命」及び「ライフスタイルの変化」は、これまで以上のスピード感で進展することを見据え、成長事業の育成・強化に向けた諸施策に取り組みました。

 

(石油化学事業)

将来的な競争力・収益力の強化を図るべく、付加価値の高い誘導品事業の拡大に取り組みました。その一環として、約120億円を投じ、超高圧・高圧電線の絶縁用ポリエチレンの生産能力を約3万トン増強することを決定し、建設を進めています。また、バイオ原料を使用したエチレン誘導品の製造・販売を目指し、株式会社日本触媒及び三菱商事株式会社(以下、三菱商事)と共同で、バイオ原料に関わる市場調査、バイオ誘導品の製造・販売の実現性を評価し、バイオ誘導品のサプライチェーン構築検討を行っています。

 

(素材事業)

2022年4月にJSR株式会社のエラストマー事業を買収し、株式会社ENEOSマテリアル(以下、ENS)として事業を開始しました。ENSが有する販売ネットワークを活用した石油樹脂の拡販や、ブタジエン・DCPD(ジシクロペンタジエン)等の原料の相互融通、ENSの研究開発技術との組み合わせ等により、統合シナジーの最大化を進めています。

潤滑油事業においては、電気自動車(EV)の更なる普及を見据え、EVの駆動システムの特性に合わせたEV専用油の開発及び国内外での顧客獲得に取り組みました。

 

(バイオ燃料・SAF)

航空業界における脱炭素化の進展を見据え、持続可能な航空燃料(SAF)の量産体制の確立に向け、TotalEnergies社(以下、トタルエナジーズ)と、和歌山製油所におけるSAF製造に関する事業化調査を開始しました。本検討においては、主に廃食油・獣脂といった廃棄物を原料とし、2026年までにSAF製造を開始することを想定しています。(年間SAF製造能力:約30万トン(40万kl))。主な原料である廃食油については、株式会社野村事務所と連携し、日本各地から安定的に調達する仕組みの構築を目指します。さらに、三菱商事と、SAFを含む次世代燃料の社会実装に向けた共同検討を実施することに合意しました。ENEOSが有する製造技術及び販売網と三菱商事が有する国内外の原料調達及びマーケティングに関する知見を活用し、次世代燃料のサプライチェーン構築の早期実現に貢献します。

また、AMPOL Australia Petroleum社と、同社のリットン製油所(豪クイーンズランド州)におけるバイオ燃料製造を検討するための覚書を締結しました。加えて、両社と豪クイーンズランド州政府は、同州政府が公式に本検討への支援を検討する覚書を締結しました。

 

(次世代型エネルギー供給・地域サービス事業)

●エネルギーサービス

・再生可能エネルギー事業

次世代型エネルギー事業の柱とすべく、日本を代表する事業者への飛躍を目指しています。2022年度においては、国内外で電源の新規開発・獲得に引き続き注力し、具体的には、長崎県五島市沖で浮体式洋上風力発電所の風車組立作業を推進するとともに、兵庫県赤穂郡では播州メガソーラー発電所(総発電容量約77MW)が、米国テキサス州ではCutlassソーラー(総発電容量約140MW)が運転を開始しました。さらに、日本を含むアジア各国においては、トタルエナジーズと法人向け太陽光発電自家消費支援事業会社を設立し、今後5年間での2GWの発電容量開発を目指して営業を開始しました。

このような事業活動の結果、総発電容量は約125万kW(建設中含む)を獲得し、「2022年度末までに再生可能エネルギーによる国内外の総発電容量100万kW」目標を達成しました。

また、2023年4月にENEOSが国内に有する太陽光・陸上風力・洋上風力の各発電事業及び関連する事業をジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社(以下、JRE)に移管し、両社の事業を統合しました。これにより、ENEOSが保有する事業・資産と、JREが有する専門性・豊富なノウハウ・スピード・開発力・運営力・人材を結集し、更なる効率的な開発・運営体制を強化しました。今後も同社の開発力及び運営力を活用することで新規電源開発を強力に推進していきます。

 

・水素事業

安価で安定的なCO2フリー水素の国際的サプライチェーンの構築に向けて、国内外の広範囲なアライアンスを活用するとともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する「グリーンイノベーション基金事業」(GI基金事業)等の支援も受け、実証実験や独自技術の開発等に取り組みました。

具体的には、アラブ首長国連邦と日本間のクリーン水素サプライチェーン構築に向けた協業検討を開始するとともに、水素キャリアとして期待されるメチルシクロヘキサン(MCH)を安価に製造する独自技術「Direct MCH®」の実証について、電極面積を工業化サイズまで拡大した中型電解槽(150kW級、水素30Nm3/h相当)を開発し、豪クイーンズランド州において実証プラントを建設し、運転を開始しました。また、国内最大規模の国産水素サプライチェーン構築に向けて「北海道大規模グリーン水素サプライチェーン構築調査事業」を開始しました。

さらに、鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素の利用拡大について共同検討を行うため、東日本旅客鉄道株式会社と連携協定を締結するとともに、東京国際空港及びその周辺地域における2050年までのカーボンニュートラル達成に向けて、官民6者において連携による「CO2フリー水素利活用モデル調査」を開始しました。

このほか、水素ステーション3か所を新たに建設し、国内のENEOS水素ステーションは合計45か所(2023年3月末時点)になりました。

 

・合成燃料

再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素とCO2を原料とする合成燃料の技術開発がGI基金事業に採択されました。早期の技術確立を目指し、合成燃料の製造に係る小規模プラント検証を開始しています。

 

・VPP事業

2022年10月から実証で設置した産業用蓄電池を制御対象として、VPPシステムの運用を開始しました。また、2023年度には根岸製油所及び室蘭事業所に大型蓄電池を設置、制御を開始する予定に加え、家庭用蓄電池等を制御する実証も開始する予定です。

 

・地域コミュニティとの連携

次世代型エネルギーの推進と地域づくりを実現すべく、静岡県及び静岡市と締結した基本合意書に基づき、清水製油所跡地(清水油槽所内遊休地)を中心とした次世代型エネルギー供給プラットフォームを構築することを決定しました。エネルギーマネジメントシステムを活用し、地産の再生可能エネルギーの有効活用を図るとともに、災害時(停電時)には自立的にエネルギー供給を行うことにより、地域防災・減災にも貢献していきます。

 

●モビリティサービス・ライフサポート

・モビリティサービス事業

個人向けカーリース「ENEOS新車のサブスク」に加え、新たに「ENEOSカーリース法人プラン」を開始しました。本プランは、「ENEOS法人カーリース」、「ENEOS運行管理サービス」、「ENEOS車両管理サービス」の3つのサービスを提供しており、社有車管理に係る工数、経費の削減に寄与します。

また、EVの普及を見据え、日本電気株式会社との「充電ネットワーク拡充」の協業の一環として、普通充電器約6,100基の運営権を承継しました。また、経路充電ネットワークの拡充に向け、新たに「ENEOS Charge Plus」のEV充電サービスを開始しました。

さらに、北米のスタートアップ企業であるAmple社とEVの蓄電池交換サービス提供に向けて、2023年度上半期中に実証試験の開始を予定しています。併せて、東京都世田谷区に出資先のスタートアップ企業であるOpenStreet株式会社と株式会社Luupの電動モビリティ、また株式会社Gachaco(以下、Gachaco)の電動二輪車用共通仕様バッテリーのシェアリングサービスを一堂に集めて提供する「ENEOSマルチモビリティステーション」を開設し、モビリティ事業の推進を図っています。

 

・ライフサポート事業

SSを物流拠点として活用する「配送効率化事業」の推進に向けて、三菱商事と合弁会社を設立することに合意しました。全国各地のSSを荷物の一時保管かつ最終配送拠点とすることで、配送先までの走行距離を短縮し、ドライバーの負荷軽減及び配送の効率化を目指します。

 

(環境対応型事業)

バッテリーのユース・リユース・リサイクルが循環する仕組み「BaaS(Battery as a Service)プラットフォーム」の構築を目指し、2022年4月、電動モビリティの普及を目的に国内大手二輪メーカー4社と共同で設立したGachacoが補助金交付事業として東京都内、及び大阪市内を中心にバッテリー交換機の設置を促進するとともにサービス展開を開始しました。

また、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、使用済タイヤからタイヤ素原料を製造するケミカルリサイクル技術を確立すべく、GI基金事業の支援のもと、株式会社ブリヂストンと共同プロジェクトを進めています。加えて、古紙を原料とするバイオエタノール事業の立上げについて、凸版印刷株式会社と協業検討を進めています。

このほか、三菱ケミカル株式会社と共同でプラスティック油化事業を開始することを決定し、鹿島製油所に隣接する同社茨城事業所に商業ベースで国内最大規模の処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設中です。

 

(エネルギーセグメントの業績)

エネルギーセグメントの売上高は、原油価格の上昇等により、前年同期比42.3%増の12兆7,110億円となりました。営業利益は前年同期比4,265億円減益の510億円となりました。在庫影響を除いた営業利益相当額は、前連結会計年度のプラスタイムラグの反転を主因とする「石油製品他」の減益に加え、市況低迷による「石油化学製品」、減損による「電力」の悪化等により 、前年同期比910億円減益の162億円となりました。

 

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[石油・天然ガス開発セグメント]

石油・天然ガス開発セグメントにおいては、環境に優しい事業ポートフォリオへの転換を目指し、環境への負荷が相対的に低い天然ガス資産の拡大に向けた取組みを行う一方で、CCS/CCUS(*1、2)事業の推進、特に2030年の国内CCS事業化に向けて、必要な諸施策を実施しました。

* 1 CCS(Carbon dioxide Capture and Storage):CO2回収・貯留

* 2 CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage):CO2回収・有効利用・貯留

 

<基盤事業>

新型コロナウイルス感染症の流行下においても安全・安定操業を継続した結果、販売数量は日量8.6万バーレルとなりました。

 

●ベトナム

ランドン油田・フンドン油田の生産を継続し、2022年10月には洋上15-2鉱区取得から30周年を迎えることができました。

 

●ミャンマー

JXミャンマー石油開発株式会社が保有するミャンマーM12/M13/M14鉱区からの撤退を他の共同操業者に対し2022年4月に正式通知し、2023年4月に撤退手続を完了しました。

 

●マレーシア

引き続きヘランガス田、ベリルガス田及びラヤン油ガス田においてガス及び原油生産を継続しました。

 

●インドネシア

タングーLNGプロジェクトでは、第3トレインの増設作業を引き続き着実に進めています。また、2022年12月には同プロジェクトの開発鉱区であるベラウ、ムツリ及びウィリアガール鉱区の生産分与契約を20年間延長することについて、同国政府の承認を取得しました。

 

<環境対応型事業>

●推進体制

JX石油開発株式会社(以下、JX石油開発)は、国内でのCCS事業化に向けて、サステナブル事業推進部所管の国内CCS準備室を2022年7月に国内CCS事業推進部に格上げし、具体的な事業化を促進するとともに、海外でのCCS事業を見据え、2023年4月に海外CCS事業推進室をサステナブル事業推進部に設置しました。

 

●CCS/CCUS事業の推進とバリューチェーンの強化

脱炭素・循環型社会の実現及びカーボンニュートラル計画の達成に向けた取組みとして、当連結会計年度もCCS/CCUS事業を中心とした環境対応型事業を国内外で推進しました。

海外では、米国NRG Energy社がその子会社を通じて保有するPetra Nova Parish Holdings社(以下、PNPH)の持分50%を2022年9月に取得し、JX石油開発がその子会社を通じて既に保有する同社の50%持分と合わせ、PNPHを連結子会社として、米国におけるCCUS事業の更なる促進を図りました。

また、2022年11月には米国の8 Rivers Capital社とメキシコ湾岸における共同事業開発に関する覚書を締結しています。

さらに、マレーシアにおいては、2022年12月にPetroliam Nasional Berhad社(以下、ペトロナス)の100%子会社との間で、マレー半島沖合の高濃度CO2を含む既発見未開発5ガス田(Bujang、Inas、Guiling、Sepat 及び Tujoh)について、CCSを含む開発技術提案をペトロナスに行うこと及び本ガス田群の権益取得の検討を進める覚書を締結しました。

国内では、2030年度のCCS実装に向けて、JX石油開発は、電源開発株式会社及びENEOSと共同で、合弁会社西日本カーボン貯留調査株式会社を2023年2月に設立しました。

また、2023年3月には、国内で唯一、海洋掘削事業を営む日本海洋掘削株式会社の株式譲受けを決定し、4月に譲受けの手続きが完了しました。同社の高度な専門知識を有する人材、技術力を取り入れることで、CCS/CCUSのバリューチェーンを一層強化していきます。

 

(石油・天然ガス開発セグメントの業績)

石油・天然ガス開発セグメントの売上高は、前年同期比17.3%減の2,010億円となりました。営業利益は、英国事業の売却(2022年3月完了)に伴う販売数量の減少等による減益要因はあったものの、原油及び天然ガスの販売価格の上昇や円安の進行等による増益要因もあり、前年同期比170億円増益の1,140億円となりました。

 

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[金属セグメント]

機能材料事業及び薄膜材料事業を主力とするフォーカス事業については、半導体市場における各種民生用電子デバイスの需要減退や、中国のゼロコロナ政策等による景気減速と、それらに伴う各サプライチェーンにおける在庫調整を主因に、各製品の販売量は概ね前連結会計年度を下回り、減益となりました。

ベース事業については、資源事業におけるチリのカセロネス銅鉱山での生産量の増加や、金属・リサイクル事業における硫酸国際市況の当連結会計年度前半の改善及び為替が円安に推移したことが収益に寄与したものの、銅価の下落や下記のSCM Minera Lumina Copper Chile社(以下、MLCC)株式譲渡決定による損失計上のため、減益となりました。

 

<フォーカス事業>

●機能材料事業

将来のIoT・AI社会の進展により、それを支える圧延銅箔・高機能銅合金条の一層の需要拡大が今後見込まれます。その要求に対応すべく、開発体制強化のため主要事業拠点である倉見工場に新たにR&D棟を建設しました。既存製品の特性改善や新合金・合金箔の開発の更なる加速に加え、保有技術と親和性の高い新用途探索や材料開発の更なる強化等にも取り組んでいます。

 

●薄膜材料事業

5Gの本格化、車両の電装化、脱炭素化の加速等を見据え、台湾における半導体用スパッタリングターゲットの生産能力を現行から約80%増強することの決定や、米国で新工場建設に向けた工事を開始する等、供給体制の強化に資する施策を実行しました。また、ESGへの取り組みを強化するなか、磯原工場では、RBA(Responsible Business Alliance)行動規範の遵守状況を評価するVAP(Validated Assessment Program)監査において200点満点を獲得し、RBA認証プログラムにおける最上位のプラチナ・ステータスを取得しました。

 

●タンタル・ニオブ事業

Mibra鉱山(ブラジル)のタンタル精鉱生産事業に参画したこと、また、タンタルを含む高融点金属の溶解・精製において優れた技術と生産能力を有する東京電解株式会社を完全子会社化したことにより、半導体用スパッタリングターゲットに至る垂直統合的なサプライチェーンをより強化し、製品の安定供給体制を一層強固なものにするとともに、今後レアメタル領域全般にわたるシナジーの創出を加速していきます。

 

●チタン事業(東邦チタニウム株式会社)

東邦チタニウム株式会社では、茅ヶ崎工場内における触媒事業の新工場が2022年11月に竣工し、生産を開始しました。

 

●ひたちなか新工場の建設工事開始

急速に進展する社会のデジタル化に不可欠な先端素材の安定供給のニーズに応えるべく、茨城県内の複数箇所や北米において新工場の建設や設備能力の増強に取り組んでいます。

当連結会計年度においては、茨城県ひたちなか市で取得した約24万㎡の大規模用地において、新工場建設に向けた造成工事を2023年1月に開始しました。当該新工場は、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔・高機能銅合金条等の世界トップシェア製品をはじめとする先端素材の製造・開発を担う中核拠点となる予定です。

 

●タツタ電線株式会社へのTOB実施を決定

経営資源の効率的活用、重要技術における更なる連携、タツタ電線株式会社(以下、タツタ電線)の電子材料分野における事業競争力の更なる強化、タツタ電線の電線・ケーブル事業及びJX金属株式会社(以下、JX金属)の金属・リサイクル事業の事業基盤の強化等を目的として、タツタ電線を完全子会社とすべく、同社の普通株式を金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得することを決議しました。

 

<ベース事業>

●資源事業

チリのカセロネス銅鉱山の運営会社であるMLCCの株式51%をカナダのLundin Mining社に譲渡することを決定しました。これにより高い鉱山運営能力を持つパートナーが得られ、生産性向上やコスト競争力強化のみならず、Lundinグループが近隣に持つ探鉱プロジェクトとの一体開発により山命延長等の長期的事業運営が可能となります。

本施策によって先端素材事業を中心とした注力分野へ経営資源を更に集中していくとともに、資源事業におけるボラティリティの抑制と長期的な収益基盤の強化を図ります。

 

●金属・リサイクル事業

リサイクル事業への取組み強化のため、カナダ国内に複数の拠点を持ち、強固な集荷ネットワークを有するE-waste(廃家電・廃電子機器)の回収・処理事業者である、eCycle Solutions社(以下、eCycle)へ、JX金属が66%、双日株式会社が34%出資し、共同で経営権を取得しました。また、今後使用済み電子機器は廃棄量が増加するのみならず、それらの適正処理への要求も更に見込まれる中で、eCycleは、ますます成長が期待されるITAD事業(使用済み電子機器や廃電子基板等のIT資産のデータ消去後の有効活用、特に再利用・再資源化に関する事業)も手掛けており、幅広く資源の有効活用を進めています。

 

<研究開発>

欧州での使用済車載用リチウムイオン電池のリサイクル事業化を推進しており、ドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)が支援するコンソーシアム"HVBatCycle"にTANIOBIS GmbHを通じて参画しています。本コンソーシアムはVolkswagen AG(フォルクスワーゲングループ)の主導で、使用済車載用リチウムイオン電池のクローズドループ・リサイクルを実証するもので、その活動の一環として、これまで培ってきた湿式プロセスの技術を基に高純度金属塩を回収するベンチスケールプラントが2023年3月から稼働を開始しています。

また、技術立脚型の新規事業を創出するために、国内外問わず、様々な先端素材系スタートアップ企業との協業を推進しています。具体的には、ドイツのダルムシュタット工科大学発スタートアップで優れた接合技術を有するNanoWired GmbHへの出資や、先端素材の分野において20年以上の投資実績がある世界的に有力なベンチャーキャピタルファンドが運営するPangaea Ventures Impact Fund, LPにも出資を行いました。

 

 

(金属セグメントの業績)

金属セグメントの売上高は、前年同期比26.7%増の16,378億円となりました。営業利益は、MLCC株式譲渡決定に伴う資産の公正価値評価の実施により、753億円の損失を計上した結果、前年同期比895億円減益の687億円となりました。

 

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[その他]

その他の事業における売上高は前年同期比2.9%増の5,128億円、営業利益は前年同期比29億円減益の465億円となりました。

 

●株式会社NIPPO

株式会社NIPPO(以下、NIPPO)は、舗装、土木及び建築の各工事並びにアスファルト合材の製造・販売を主要な事業内容としています。当連結会計年度は、公共投資は底堅く、民間設備投資についてもコロナ禍前の水準に戻りつつあるものの、急激な原材料価格の上昇、金融引き締めによる為替変動、労働需給のひっ迫等依然として不透明な状況が継続しました。

このような事業環境下、NIPPOが有する技術の優位性を活かした受注活動、原材料価格の上昇に対応したアスファルト合材の適正価格での販売、生産性の向上及びコスト削減の推進により、競争力の強化に努めました。また、カーボンニュートラル社会の実現に向け、CO2フリー電力の導入を図り、CO2排出削減に効果がある中温化合材製造装置の設置等CO2の削減に向けた取り組みを推進します。

このほか、当社グループの事業ポートフォリオの再構築及びガバナンス体制強化の一環として、2022年にNIPPO株式を非公開化し、親子上場を解消しました。今後、当該非公開化を共同で進めたゴールドマン・サックス・グループが有するグローバルネットワーク等を活用して、NIPPOの更なる企業価値向上を実現したうえで再上場を目指します。

 

上記各セグメント別の売上高には、セグメント間の内部売上高が合計460億円(前年同期は477億円)含まれています。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

ア.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

8,128,866

161.9

石油・天然ガス開発

201,890

82.6

金属

1,270,190

131.5

その他

95,203

106.2

合計

9,696,149

153.4

(注)1.上記の金額は、各セグメントに属する製造会社の製品生産金額の総計(セグメント間の内部振替前)を記載しています。

 

イ.受注実績

当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。

 

ウ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エネルギー

12,706,468

142.3

石油・天然ガス開発

200,716

82.6

金属

1,635,428

126.7

その他

473,942

103.6

合計

15,016,554

137.5

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。

 

 

(3)財政状態及びキャッシュ・フローの概況

①流動性と資金の源泉

当社は、効率的で安定的な資金の確保と、事業活動のための流動性の維持を、財務活動の取り組みとして重視しています。効率的な調達に向けて、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と、金融機関からの借入等の間接金融を、機動的に選択しています。

当社は、安定的な資金の確保に向けて、直接金融市場への継続的なアクセスを図るとともに、間接金融についても原油備蓄資金のための制度融資等も活用しており、政府系金融機関及び市中金融機関と幅広く関係を維持しています。また、トランジション・リンク・ボンドやグリーンボンド、グリーンローンといったサステナブル・ファイナンスによる資金調達を実施する等、調達ソースの多様化を図って十分な流動性を確保しています。

また、金融市場の環境変化にも対応できる流動性を維持するために、現金及び現金同等物を確保する他、取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しています。当該契約の極度額は当連結会計年度末では4,550億円であり、また同契約に係る借入残高はありません。

連結における資金管理では、当社を中心に集中して資金調達を行い、国内外の金融子会社を通じてグループ各社に資金を配分するというグループファイナンス制度を設けています。その運営においてキャッシュマネジメントシステムを活用しており、流動性資金の一元管理及び効率化を実現しています。

当社は、資金調達とグローバルなビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ・ジャパン(ムーディーズ)の3社から格付けを取得しています。3社の2023年6月時点の当社に対する格付け(長期/短期)は、R&IがA+(見通し安定的)/a-1、JCRがAA-(見通し安定的)/J-1+、ムーディーズがBaa2(見通し安定的)/(短期は取得無し)となっています。

 

②連結財政状態計算書

ア.資産 当連結会計年度末における資産合計は、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末比3,063億円増加の9兆9,545億円となりました。

イ.負債 当連結会計年度末における負債合計は、棚卸資産の増加に伴う運転資金の増加等により、前連結会計年度末比2,528億円増加の6兆6,669億円となりました。

有利子負債残高は、前連結会計年度末比3,739億円増加の3兆1,094億円となり、また、手元資金を控除したネット有利子負債は、前連結会計年度末比5,751億円増加の2兆7,601億円となりました。なお、有利子負債にはリース負債を含めていません。

ウ.資本 当連結会計年度末における資本合計は、配当金の支払や自己株式の取得といった株主還元に係る減少等があったものの、当期利益の計上等により、前連結会計年度末比535億円増加の3兆2,876億円となりました。

なお、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末比1.0ポイント減少し28.7%、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末比57.79円増加の948.67円、ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)は前連結会計年度末比0.16ポイント悪化し、0.84倍(ハイブリッド債資本性調整前)となりました。

 

③連結キャッシュ・フロー

当社は、第2次中期経営計画において、「長期ビジョン実現に向けた事業戦略とキャッシュ・フローを重視した経営の両立」を基本方針の一つとして取り組みました。3ヵ年累計のフリー・キャッシュ・フローは、追加の資産売却や設備投融資の圧縮等のキャッシュ・フロー改善策を実行したものの、資源価格の高騰や円安、一時的な税金の支払いを主要因に、目標未達(目標:1,500億円、実績:マイナス2,317億円)となりました。

第3次中期経営計画では、「確かな収益の礎の確立」を基本方針の柱の一つとして掲げ、基盤事業から安定的なキャッシュ・フローを創出していきます。また、そのキャッシュを、現在の財務体質を堅持しながら、再生可能エネルギー事業の育成やSAF・水素等への取り組みに再配分することで、もう一つの柱である「エネルギートランジションの実現に向けた取り組み」を加速させていきます。

なお、当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況と主な要因は以下のとおりです。

ア.営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果、資金は1,102億円減少しました(前期は2,095億円の増加)。これは、税引前利益や減価償却費等の資金増加要因があったものの、運転資金の増加や法人所得税・消費税の支払等の資金減少要因が上回ったことによるものです。

イ.投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果、資金は1,159億円減少しました(前期は3,499億円の減少)。これは、資産売却収入等の資金増加要因があったものの、再生可能エネルギー事業への投資やJSR株式会社からのエラストマー事業の買収等の資金減少要因が上回ったことによるものです。

ウ.財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果、資金は133億円減少しました(前期は2,260億円の増加)。これは、借入金の増加や社債(トランジション・リンク・ボンド)の発行等の資金増加要因があったものの、配当金の支払や自己株式の取得といった株主還元施策等の資金減少要因が上回ったことによるものです。

 

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は3,115億円となり、期首に比べ2,125億円減少しました。

 

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(4)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しています。当社は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同規則第93条の規定を適用しています。

重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表 注記3、4」をご参照ください。

5【経営上の重要な契約等】

(1)「基本協定書」(契約当事者:日石三菱株式会社及びコスモ石油株式会社、締結日:1999年10月12日)

企業の枠組みを超えて抜本的なコスト削減策を講じるため、仕入、精製、物流及び潤滑油(生産・配送)の各部門において業務提携を行うことについて約したものです。

 

(2)「合弁契約書」(契約当事者:JX金属株式会社、三井金属鉱業株式会社及びパンパシフィック・カッパー株式会社、締結日:2020年2月12日)

JX金属株式会社と三井金属鉱業株式会社との合弁会社であるパンパシフィック・カッパー株式会社(JX金属株式会社の出資比率67.8%)を中心とした銅製錬事業(原料調達、委託製錬、製品販売等)に関する業務提携を約したものです。

 

(3)「Membership Interest Purchase Agreement(持分買取契約)」(契約当事者:JX Nippon Oil Exploration (CCS) Limited及びPetra Nova Holdings LLC、締結日:2022年9月14日)

JX Nippon Oil Exploration (CCS) Limitedが、Petra Nova Holdings LLCから同社が保有するPetra Nova Parish Holdings LLCの持分(50%)の全てを買い取ることについて約したものです。

 

(4)「Purchase Agreement(株式譲渡契約)」(契約当事者:JX金属株式会社及びLundin Mining Corporation、締結日:2023年3月28日)

JX金属株式会社が、同社の完全子会社であるSCM Minera Lumina Copper Chileの株式の51%を、Lundin Mining Corporationへ譲渡することについて約したものです。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、グループ理念に定めた『エネルギー・資源・素材における創造と革新』を目指し、エネルギー関連と金属関連を中心に研究開発活動を進めています。当連結会計年度における研究開発活動の概要は以下のとおりです。

 

(1)エネルギー (研究開発費 14,930百万円)

エネルギー・素材関連の研究開発活動は、ENEOS株式会社(以下、ENEOS)の中央技術研究所と各事業カンパニーの研究開発部が連携をしながら進めています。現在の事業領域については操業安定性向上と競争力強化を主体とした研究開発を進めるとともに、脱炭素・循環型社会の実現に貢献すべく、新規事業の創出、拡大に向けて重点領域を設定して、研究開発を推進しています。また、社外との連携にも力を入れており、大学との産学連携の推進のみならず、ベンチャーキャピタルへの出資やアクセラレータープログラムの実施等を通してベンチャー企業とも連携を図り、オープンイノベーションを促進しています。

①脱炭素エネルギー分野

カーボンニュートラル社会に向け、海外の安価で潤沢な再生可能エネルギーを大量貯蔵・輸送に適した物質に変換し、エネルギー供給の安定性を高め、国内に使いやすい形で提供するための技術開発を進めています。

CO2フリー水素分野では、再生可能エネルギーから得られた電力で直接トルエンを電解水素化することで、貯蔵・輸送が簡単なメチルシクロヘキサン(MCH)を低コストで製造する技術(Direct MCH®)の商業化に向けた開発を進めています。2023年1月には電極面積を工業化サイズまで拡大した中型電解槽プラント(150kW級)を豪州クイーンズランド州に開所し、実証試験を行っています。さらに2025年度をめどに大型電解槽プラント(5,000kW級)の技術開発及び実証を行う予定です。これらは、「直接MCH電解合成(Direct MCH®)技術開発」として、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の進めるGI基金事業に採択されています。また、CO2フリー水素と工場等や大気から回収したCO2を原料に液体燃料を製造する「合成燃料」の開発についても、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な取り組みと位置付け、技術開発を進めています。こちらもGI基金事業「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」に採択されており、2022年度から小規模プラント検証、2024年度以降はスケールアップした大規模パイロットプラント検証に向けた技術検討に取り組み、早期の社会実装を目指します。

バイオ燃料分野では、凸版印刷株式会社と古紙を原料としたバイオエタノール事業の立上げについて協業検討を進めています。その他、バイオジェット燃料の商業化を目指した技術開発や事業化検討にも取り組んでいます。

再生可能エネルギーの有効活用の実現に向け、再エネ発電量や電力価格、水素需要に応じて水電解装置による水素製造を制御する水素EMS(エネルギーマネジメントシステム)の開発やVPP(仮想発電所)事業における蓄電池運用計画の最適化に取り組んでいます。水素製造や蓄電池制御の最適化による電力需給バランスの調整等の検証を通して、技術・ノウハウの蓄積を進めるとともに、地産地消エネルギー活用推進の一環として、東京都東村山市において、電気自動車を活用したエネルギーマネジメントシステム実証を2022年度より開始し、最適制御手法を検討しています。

さらに循環型社会の実現に向け、株式会社ブリヂストンと使用済タイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを進めています。本プロジェクトは「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」としてGI基金事業に採択されており、検討を継続しています。

社外連携については、早稲田大学との包括的かつ分野横断的なオープンイノベーションを通して、カーボンニュートラル社会の実現に資する技術を探索しています。早稲田キャンパス研究開発センターエリアに設置した「ENEOSラボ」を共同研究の拠点として、水素、電池材料、ロボット関連の「CO2削減に向けた革新技術の研究」に取り組んでいます。

②燃料油・化学品製造技術分野

製油所、製造所の安全・安定操業、競争力強化、及び液体燃料におけるCO2削減を目指した研究を行っており、中でもデジタル化技術の開発・活用においては、AI技術による石油化学プラントの連続自動運転が実用段階に入っており、対象装置を広げ、検討を継続しています。また、エンジンの熱効率向上が期待される革新燃焼技術(超希薄燃焼:スーパーリーンバーン)に適した燃料組成の検討を行い、製油所から得られる留分を利用することによるCO2削減の可能性を示すとともに、自社原料の更なる有効活用(ケミカルシフト)に向け、触媒・反応技術を活用した石油化学誘導品を開発し、光学材料原料等でユーザーより高い評価を得ています。

 

 

③機能材分野

機能材分野では、重点領域である「エラストマー」「高機能原料」「高機能樹脂」において、自社の強みである分子設計技術、配合技術、性能評価・分析技術を最大限に磨き、社会ニーズに応える素材開発を行っています。2022年4月より、JSR株式会社のエラストマー事業を承継した株式会社ENEOSマテリアル(以下、ENS)が事業を開始しました。承継したエラストマー分野では、環境に優しく、かつ確実に安全に止まる性能を有する低燃費タイヤの原料SSBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)や、リチウムイオン電池の負極用バインダー(接着剤)等の開発を行っています。高機能原料分野では、高耐熱・高透明性等の特長を有し、光学レンズや次世代ディスプレイ向け各種光学樹脂への適用が期待される脂環式モノマー等の開発、高機能樹脂分野では、次世代高速通信で使われる高周波帯に対応する低誘電LCP(液晶ポリマー)や、半導体封止材等への適用が期待されるENEOSの独自エポキシ樹脂を使用した高耐熱熱硬化レジン等の開発を行っています。現在はENSが保有するエラストマー技術とENEOSが保有する技術との融合による新たな素材開発を進めています。また、産学連携として東京工業大学や横浜国立大学と共同研究講座を設置して、素材開発を加速・深化させるオープンイノベーションの拠点としています。

④潤滑油分野

潤滑油分野では、地球環境に配慮した高性能潤滑油、グリースの製品開発に取り組んでいます。一例として、最新国際規格であるAPI SP/ILSAC GF-6の適合性能に加え、省燃費性能、加速性能、乗り心地性に優れるエンジン油「ENEOS X PRIME」を開発しました。このほかにも省燃費型駆動系油、安全・環境配慮型工業用潤滑油、自動車・産業用高性能グリース、新冷媒対応・省エネルギー型冷凍機油といった製品の開発を新規材料、新規解析評価技術を取り入れながら推進するとともに、高品質の製品を安定かつ効率的に製造するための製造技術の開発も行っています。さらに、世界的な潮流である脱炭素化への貢献のため、植物由来の基材を使用した潤滑油及びグリースや、電動モビリティ向けに冷却性能や電気絶縁性能を潤滑性と高次元で両立させた製品の技術開発にも注力しています。

⑤デジタル技術分野

デジタル技術を活用して自社業務の効率化や新たな価値を生み出すことを目指した研究を行っています。具体的には、プラントデータを活用した運転効率化、画像解析による安全・安定操業支援に加え、革新的な素材・触媒探索技術の研究を推進しています。一例として、株式会社Preferred Networks(以下、PFN社)と戦略的な協業体制を構築し、AI技術を活用した革新的事業創出に取り組んでいます。MI(マテリアルズ・インフォマティクス)分野ではPFN社との合弁会社として株式会社Preferred Computational Chemistryを設立し、共同開発した新物質開発・材料探索を高速化する汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis™」をクラウドサービスとして提供する事業を展開しています。同サービスは2022年9月1日時点で41の企業・研究団体に導入され、触媒、電池材料、半導体、合金、潤滑油、セラミック材料、化学材料等、幅広い開発に用いられています。さらに、本技術に関する論文は著名な学術誌Nature Communicationsに掲載され、同誌編集部が特に注目する論文として選出されており、世界的にも高く評価されています。

また、ロボティクスを活用したプラント・次世代型エネルギー設備への保守点検サービス事業について、株式会社イクシスに出資し、協業検討を開始しました。デジタル技術を活用した新たなビジネス創出につなげることも目指し、国内外のスタートアップ企業等との連携も活発化させています。

 

(2)石油・天然ガス開発

該当事項はありません。

 

 

(3)金属 (研究開発費 13,573百万円)

金属事業(JX金属株式会社)では、長年培ってきたコア技術の進化・活用に加え、グループ企業内での技術コラボレーション、大学等研究機関との共同研究、外部企業とのパートナーシップ構築等、様々な形の共創を推進し、研究開発を行っています。データ社会の進展に寄与する次世代の先端素材の開発や、脱炭素や資源循環といった地球規模のESG課題解決に向けた製品・技術開発、車載用リチウムイオン電池(LiB)のリサイクル技術開発等に積極的に取り組んでいます。

①新規事業開発

CVD用塩化物、3Dプリンター用金属粉、銅微粉、LiBリサイクル及び電池材料の開発等について、事業部、関係会社等を跨ぎ全社横断で早期事業化に向けた取り組みを強化しています。

LiBリサイクル関連では、2022年4月に採択された新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のGI基金を活用し、リサイクルの環境負荷の定量評価、無害化、回収技術高度化をアカデミアと連携して進めています。さらに欧州では2022年1月にドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)が主導する共同研究開発コンソーシアム"HVBatCycle"へTANIOBIS GmbHを通じて参画し、TANIOBIS GmbH(ゴスラー)に、Volkswagen AG(フォルクスワーゲングループ)から提供される電池粉を用いるベンチスケールプラントを新設する等、国内・欧州でLiBリサイクル推進の取り組みを進めています。

また、2022年7月に行った、ドイツのダルムシュタット工科大学発スタートアップで優れた接合技術を有するNanoWired GmbHへの出資、及び2022年9月に行った、先端素材の分野において20年以上の投資実績のあるベンチャーキャピタルファンドPangaea Ventures Impact Fund, LPへの出資等、各スタートアップとの共創を通したスピーディな新規事業創出の取り組みを進めています。

②事業別(資源分野)

資源分野では、選鉱工程に適用する自動化技術や鉱石からのレアメタル回収技術の開発を進めています。また、環境負荷低減に向けて、鉱山で使用する重機等のCO2排出量削減に資する技術等の調査を進めています。

③事業別(金属・リサイクル分野)

銅製錬におけるリサイクル原料処理拡大に向け、リサイクル原料から回収する貴金属及びレアメタル等の金属種拡大のための技術開発や、銅製錬工程からの有価金属回収工程の効率化を推進しています。他製錬所との差別化として、2040年にリサイクル原料処理量を50%とするハイブリッド製錬を実現することを目指し、技術開発を進めています。

④事業別(薄膜材料分野)

薄膜材料分野では、高純度化技術及び材料組成・結晶組織の制御技術をベースに、半導体・電子部品用途向け製品に関する開発を進めています。半導体用ターゲット、フラットパネルディスプレイ用ターゲット、磁気記録膜用ターゲット等の各種スパッタリング用ターゲットや、その他電子材料における新規製品開発及び関連プロセスの技術開発に継続的に取り組んでいます。

⑤事業別(機能材料分野)

機能材料分野では、コネクタ等の用途に、精密な組成制御、独自の圧延加工プロセス及びユーザーニーズに適合した評価技術を用いて、強度・導電性・加工性・耐久性に優れた高機能銅合金の開発を進めています。次世代材料として、コルソン系及びチタン系新規銅合金の開発等、更なる高機能製品化に取り組んでいます。また、プリント配線板材及び シールド材用途等では、屈曲性、エッチング性、密着性等の高い機能を付加した銅箔等の開発・バージョンアップを進めています。

⑥基盤技術開発

分析及びシミュレーションについて最先端技術の導入・開発を進め、それらを駆使することにより技術開発の促進・効率化を図っています。

 

これらに、その他の事業における研究開発費861百万円を加えた当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は、29,364百万円です。