第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、顧客及びステークホルダーから選ばれ続ける企業を目指し、社是、経営理念、行動指針のもと、法令を遵守し、地球環境への配慮も行いながら、高品質な医薬品の安定供給に努め、人々の健やかな生活に貢献することを願って事業活動を展開しております。今後においては、更なる品質の向上を図るとともに、医薬品の新たな分野、新たな技術への挑戦を行い、世界を舞台として優れた医薬品を提供する企業に成長することを目指しております。

(社是)

 創造 闘志 誠実

 一、アイデアをもち考える人間

 一、実行力と根性のある人間

 一、自分は企業を守る人間

(経営理念)

 社員が「楽しい会社、楽しい仕事」を実感できる働きやすい職場を作り、健康な社会作りに貢献し、選ばれ続ける企業を目指します。

 ・「楽しい会社」とは

 社員自らの成長と会社の成長が連動し、いきいきと楽しく仕事ができる会社

 ・「楽しい仕事」とは

 病を治したい患者さんや健康を求めるお客様に役立つように、社会に対して製品を供給する喜びを味わえる仕事

(行動指針)

 経営理念のもと、選ばれ続ける企業を目指します。

 ・誠実な姿勢     法令を遵守し、公正、公平に活動します

 ・みなさまからの信頼 更なる品質の向上とお客さまへの確実な供給を行います

 ・社会への貢献    日々の活動を通し、みなさまを支えます

 ・環境との調和    環境に配慮し、地球とともに歩みます

 ・更なる挑戦     新たな分野、新たな技術へ挑戦します

 ・世界への飛躍    世界を舞台として優れた医薬品を提供します

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

 医薬品業界・ジェネリック医薬品業界を取り巻く環境は、毎年行われる薬価改定やOTC類似薬の保険給付の見直しなどの薬剤費抑制策に加え、円安を主因とした原材料費の増加やエネルギー価格の高騰、人財確保の競争激化に伴う人件費の増加など、厳しい環境が続くものと想定されます。

 こうした状況下、当社グループでは中期経営計画DTP2027(Daito Transformation Plan 2027)のもと、断固たる決意と覚悟を持って、業績の改善と企業価値の向上のため、引き続き「既存ビジネスの効率化」、「中国ビジネスの強化」、「新規ビジネスへの参入」、「PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化」、「人的資本への投資」の5つの柱を積極果敢に推進して参ります。

 2026年5月期の連結業績につきましては、売上高52,500百万円(前期比3.7%増)、営業利益3,000百万円(前期比14.5%増)、経常利益3,000百万円(前期比10.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては2,300百万円(前期比20.5%増)を予想しております。

 

  (*2026年5月期の為替レートは150円/1㌦を想定)

 

 

(3)目標とする経営指標

 当社グループは、持続的な成長を支えるための本源的な収益力の強化と安定的且つ積極的な株主還元を図る観点から、重要な経営指標として、売上高、EBITDA、一気通貫比率※1、CCC※2、ROIC※3、ROE、DOE※4を採用しております。

※1 : [ 開発中の自社製造または自社製販ジェネリック品目のうちグループ内原薬を使っている成分数 ] /

   [ 開発中の自社製造または自社製販ジェネリック品目 成分数 ]

※2 : 債権流動化影響を除いた資金化日数

※3 : (税引後営業利益+持分法投資損益) / (期首期末平均有利子負債+期首期末平均株主資本)

※4 : 配当金総額 / 期末株主資本

 

 

(4)経営環境

 医薬品業界におきましては、2024年9月の社会保障審議会医療保険部会において、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」が策定され、「主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」(旧ロードマップから継続)、「副次目標:後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」が掲げられました。また、2024年10月からは、ジェネリック医薬品のある長期収載品を患者様が希望された場合は、患者様に追加で金銭的負担を求める「選定療養」が導入され、ジェネリック医薬品の数量シェアは更に高まっております。

 一方で、後発医薬品を中心とする供給不安は長期化しており、過当競争状態の是正、過度な低価格競争からの脱却、規模の経済が生かせる企業規模へ再編していくための環境整備など、多くの課題を抱えております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 2025年5月期から2027年5月期を対象年度とする中期経営計画DTP2027(Daito Transformation Plan 2027(注1)) の1期目の終了に際し、当社は、当社グループを取り巻く最新の事業環境及び課題を下記の通りと認識しております。

 

<政策及び規制面>

・毎年薬価改定に加え、長期収載品の選定療養の導入やOTC類似薬の保険給付の見直しなどの医療費及び薬剤費抑制策の更なる進展

・薬機法等の一部改正に伴う品質及び安全性の確保と安定供給体制の強化(後発医薬品製造基盤整備基金の設置)

・薬価削除プロセスの簡素化と品目統合に係る薬事手続きの1.5ヵ月への短縮

 

<業界動向>

・長期収載品の選定療養によるジェネリック医薬品シェアの上昇と長期収載品の承継等の加速

・外資系企業のジェネリック医薬品ビジネス縮小(撤退)と政府の財政支援による業界再編機運の高まり

・先発薬メーカーが持つ特許の保護範囲を広く認める司法判断の出現と特許戦略の難易度の上昇

・ジェネリックビジネスのピークアウトと、新領域(オーファンドラッグ開発、海外、医療デバイス等)への参入の増加

 

<金融資本市場>

・東証による資本市場改革に伴うエクイティ・ガバナンスへのシフトの加速

・トランプ関税による米ドル安や中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格の乱高下

・コストプッシュインフレへの対応のための日銀の利上げと資金調達コストの上昇

 

 また、当社グループは、当社グループの相対的優位性は、大きく下記の要素にあると認識しております。

 

・原薬から製剤までの「一貫製造」

・一貫製造体制を日本・中国の両国に有することによる「日中連携」

・FDA(米国食品医薬品局)査察を継続的にクリアする業界トップクラスの「品質管理体制」

・上記品質管理体制に裏付けられた高い「安定供給力」

 

 当社としては、既述のように刻々と変わりゆく経営環境の中でも、当社グループの相対的優位性に更なる磨きをかけながら、引き続き中期経営計画DTP2027で掲げた事業戦略の5つの柱(①既存ビジネスの効率化、②中国ビジネスの強化、③新規ビジネスへの参入、④PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化、⑤人的資本への投資)を着実、且つ強力に推進していくことが、持続的な成長と企業価値の向上のためには不可欠であるとの判断の下、夫々の事業戦略において、今後も下記の取り組みを継続して参ります。

 

① 既存ビジネスの効率化

 これまで当社グループは「全方位ビジネス」を掲げ、ジェネリック医薬品を中心に多種多様の医薬品・原薬を生産することにより、規模拡大を目指してまいりました。この「全方位ビジネス」は売上高の増加や、経営リスク分散の観点からは有効な施策ではありましたが、その反面、多くの製品とビジネスモデルによって利益構造の把握が複雑化し、また、各部署において応急的に増員が続く状況を招いているという課題があります。

 本課題解決のために、2024年9月に社長直轄の「ポートフォリオマネジメント部」(以下「PM部」)を新設いたしました。このPM部が中心となって、既存製品に対する「選択と集中」を推進し、空いた生産キャパシティ、人的リソースにて高付加価値製品を生産することにより利益率の向上を目指します。また、「適切な需給バランスの維持」、「生産効率の最適化と廃棄の最小化」、「チーム間のコラボレーション」などを目的としたS&OP(Sales & Operations Planning)プロセスを導入いたしました。更には、2025年6月、Meiji Seika ファルマ株式会社との間で「新・コンソーシアム構想」に基づき、品目統合をはじめとした企業間連携に向けた協議を開始しました。本構想に参画する複数の後発医薬品企業による品目毎の生産拠点の集約等を推し進め、生産性と安定供給力を向上させると共に、相互に品質管理体制を点検・確認することで、後発医薬品業界全体における品質管理体制の底上げも図って参ります。

 

② 中国ビジネスの強化

 当社グループは、下表のとおり、およそ15年に亘って中国企業への出資を通じて、中国における原薬・製剤の生産ビジネスを推進して参りました。そして、当社グループはこの日中連携の優位性を活かし、中国において「日本品質・中国コスト」の原薬・製剤を生産し、これを日本市場にて販売しております。

 

出資年

出資先企業名

業態

2010年

千輝薬業(安徽)有限責任公司

原薬メーカー

2012年

安徽微納生命科学技術開発有限公司
(現「大桐製薬(中国)有限公司」)

製剤メーカー

2019年

安徽鼎旺医薬有限公司

原薬メーカー

 

 従来、中国のジェネリック医薬品市場は、その薬事承認ルールの独自性及び曖昧さと、低価格メーカーの乱立ゆえに、日本企業の進出は困難とされておりました。しかし、近年になって承認ルールが明確化され、また、中国政府が導入した国営病院での集中購買制度において、品質基準、安定供給体制、環境規制対応が強く求められるようになった結果、当社グループが15年かけて培ってきた「日本品質・中国コスト」「潤沢な現地生産リソースに由来する安定供給体制」「環境規制対応」という強みがダイレクトに中国市場で活かせる状況に変化してきております。

 この状況を踏まえ、当社の関連会社である千輝薬業及び鼎旺医薬との更なる連携を通じて、中国市場での原薬・製剤の販売を強化して参ります。

 現在、子会社の大桐製薬(中国)有限責任公司では、2025年5月に初めて、自社ジェネリック製剤である疼痛治療剤「プレガバリンカプセル」を同国の市場向けに出荷し、順調に追加の注文を頂いております。更に1品目の自社ジェネリック製剤と複数品目の受託品を中国当局へ承認申請しております。2027年5月期までに約11成分の中国国内向けジェネリック医薬品の受託製造を検討中であり、グループ内での収益の柱の一つとなることが期待されております。

 

③ 新規ビジネスへの参入 (オーファン新薬アライアンス)

 これまでの当社グループの成長を支えてきた国内ジェネリックビジネスは、政府目標である数量置換率80%に達し、将来の成長が鈍化することが予測される中、毎年薬価改定に伴う単価の下落による売上、利益率の低下や、生物学的同等性試験の難易度及び費用の上昇などにより、安定して利益を上げ続けることが困難になりつつあります。

 そこで、当社グループでは「新規ビジネスの参入」の一形態として、オーファンドラッグの開発・受託の分野を開拓して参ります。

 オーファンドラッグは国内外で大きな市場の伸びが期待され、ジェネリックに比較して薬価の下落が発生しづらいという特長があります。

 当社グループの米国FDA対応のノウハウを生かし、パートナー企業より、日米欧の市場を視野に入れた製品の開発・受託を請け負います。パートナー企業の1社であるノーベルファーマ株式会社とは既に「パートナー関係構築に向けた協定」を締結しておりますが、2025年5月には第1号案件として、多系統萎縮症(MSA)を適応症とする、ユビキノール含有製剤「NPC-29」の開発基本契約を締結いたしました。本製剤を一刻も早く患者様にお届けできるよう尽力して参るとともに、第2号案件の協議も鋭意進めており、積極的に開発・推進して参ります。

 

④ PBR1倍割れ対策と資本配分の高度化

 当社グループの株価はPBR1倍割れの状態が継続しており、資本市場からの信頼と評価は高いものとは言えない状況です。その原因の1つに、社内の資本コストに関する意識が高いとは言えない状況にあったことが挙げられます。

 この状況を重く受け止め、当社グループでは、各種投資案件の属性やリスクに応じて資本コストも含めたハードルレート(収益性基準)を定め、投資評価委員会においてCEOやCFO、経営企画部長等も交えて経営会議への上程の是非を判断するなど、投資に関わるガバナンスの高度化を図って参ります。

 また、DTP2027においては、価値の創造に繋がる数値目標である KGI (Key Goal Indicator)を設定、対外的に公表するとともに、社内各事業本部に、これらのKGIの達成のために必要な KPI (Key Performance Indicator)を設定し、社内目標として活動しております。

 なお、KGIのうち、資本生産性指標としてはROICとROEを採用しております。

 2025年5月期における株主還元の強化策としては、当社普通株式300,000株(株式分割前)を市場から取得し、2025年6月30日付で消却しております。また2026年5月期に向けて、既に1株当たり配当金の引き上げに加えて、株主優待制度の導入を発表しております。引続き安定的かつ積極的な株主の皆様への還元を通じ、企業価値の向上とPBR1倍割れ対策に努めて参ります。

 

⑤ 人的資本への投資

 当社グループでは、DTP2027 の①~④の課題解決を支える基礎として、人的資本への投資を、最後の事業戦略の柱として設定しております。

 当社グループの最大拠点である富山県では人口が減少し、採用競争が激化する傾向にあり「選ばれない企業」は将来的に事業の継続が困難になることが懸念されます。

 こうした状況下、当社では2025年度において、富山県内主要企業でトップクラスの賃上げを実施しました。また、エンゲージメントサーベイおよび全部門でのオフサイトミーティングを開始し、新たなe-ラーニング「Daito Learning」を導入するなど、従業員の満足度および意識向上に努めて参りました。引き続き、職場環境の改善、従業員の定着率の向上に努めて参ります。

 

(注1)詳細は当社Webサイトに掲載の「2024年7月17日付 2024年5月期 決算説明会資料」をご覧ください。

https://www.daitonet.co.jp/ir/library.html

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

サステナビリティ基本方針

 ダイトグループは、経営理念「社員が『楽しい会社、楽しい仕事』を実感できる働きやすい職場を作り、健康な社会作りに貢献し、選ばれ続ける企業を目指します。」の実現を通じて、企業価値の最大化を目指すとともに持続可能な社会の構築に貢献します。ダイトグループのCSR活動におけるCSR方針は、企業価値の最大化と持続可能な社会の実現に向けた道のりの羅針盤であり、国内外のグループの一人ひとりが理解し、日々の活動の判断の拠り所とするものです。

 ダイトグループは様々なステークホルダーの皆さまに医薬品をお届けする総合医薬品メーカーとして、人々の生命・健康に深く関わる社会的使命を強く自覚し、人と社会と地球環境の持続的発展に貢献する事業活動を推進します。

 当社グループはこの基本方針を実現するために、以下の取組みを推進します。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

ダイトグループは、激変する社会、経済情勢の中で持続的に成長し、社会に価値を提供し続けていくためには、事業戦略の遂行に重大な影響を与える社会課題の解決に貢献していくこと、更には社会課題の解決に貢献する事業を新たに生み出していくことが重要であると考えています。

 当社では、リスクと機会の特定と対応策、並びに経営戦略への統合方針や財務計画の素案の策定を、2021年度に立ち上げたワーキンググループが行い、この結果を経営会議で審議・決定し、取締役会で承認する体制を取っています。当該ワーキンググループには、関連主要部署の執行役員及び責任者がメンバーとして加わっており、全社的なリスクマネジメントの一環として取組みを進めています。

 

(2)重要なサステナビリティ項目

 上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下の通りです。

・気候変動

・人的資本

 

①気候変動

(ア)ガバナンス

 当社では、気候変動に関するリスクと機会の特定と対応策、並びに経営戦略への統合方針や財務計画の素案の策定を、TCFD提言への対応のためのワーキンググループが行い、この結果を経営会議で審議・決定し、取締役会で承認する体制を取っています。当該ワーキンググループには、関連主要部署の執行役員及び責任者がメンバーとして加わっており、全社的なリスクマネジメントの一環として取組みを進めています。

 

(イ)戦略

 異常気象による災害の増加・激甚化など、気候変動は事業に大きな影響を与える事象となっています。このため、機関投資家を中心とするステークホルダーは、企業に対して、気候変動に関するリスクと機会を特定し、それらが事業に与える影響を評価した上で、重要なリスクの顕在化を防ぎ、重要な機会を享受するための対応を求めています。当社グループにおいても、長期的な観点から気候変動によるリスク・機会と事業への影響を把握して、負の影響を低減するなどの対応に取り組むことの重要性を強く認識しております。

気候変動に関するリスク・機会については、2021年12月にワーキンググループを立ち上げ、TCFD提言の枠組みに沿ったシナリオ分析を開始しました。以降、2022年5月期に気候変動に関するリスク・機会の定性的な評価を行い、キードライバー(当社の事業に大きな影響を与える可能性のある要因)を特定し、2023年5月期にはそれに続くステップとして、「シナリオ群の決定」と「定量的な財務影響の評価」を行いました。詳細は以下のとおりです。

   ■シナリオ群の決定について

    ・主要な国際機関(IEA, IPCC等)、環境省、気象庁などの公的機関や、研究所、NGO等が公表している情報に基

     づいた以下の2つのシナリオを前提に、シナリオ分析を行いました。

    ◇1.5℃シナリオ…脱炭素社会への移行が進み、平均気温の上昇が1.5℃に抑えられる世界観。脱炭素に向けた政府による規制や政策が強化されるとともに、顧客の製品・サービスに対する志向も変化し、企業の気候変動対応が強く求められることから、移行リスクが高まると想定されます。一方で、気候変動による自然災害の激甚化や増加は一定程度抑制され、物理的リスクは相対的に低いと推測されます。

    ◇4℃シナリオ …脱炭素社会への移行が進まず、平均気温が4℃以上上昇する世界観。気候変動による自然災害の激甚化、海面上昇、異常気象の増加など、物理的リスクが高まると想定されます。一方で、政府による規制強化が積極的に導入されないなど、移行リスクは低いと推測されます。

    ・更に、1.5℃と4℃シナリオに整合する、当社が定性的に重要であると判断した気候関連リスク・機会が顕在

     化した際の影響を変化させるキードライバー(パラメータ情報など)を公表されている情報から特定しており

     ます。

   ■定量的な財務影響の評価:

    ・上記の2つのシナリオに基づき、当社が定性的に重要と評価した気候関連リスク・機会が当社の事業や財務状

     況に与える潜在的な財務影響額を定量的に推算しました。その結果は以下の表のとおりです。

    ・なお、以下の気候関連リスク・機会は、定量的な財務影響の評価の結果、事業や財務状況に与える影響が相対的に小さいと判断し、重要な気候関連リスク・機会から除外しています。

     * 急性的な物理的リスクのうち、「大雪の激甚化」によるリスク

     * 慢性的な物理的リスクとしての「地下水使用量の規制下における冷却水の利用増加」

     * 「顧客企業における脱炭素推進に伴う、外注部分の内製化による生産場所の適正化、技術供与による高付加

     価値化の需要増加」による機会

 

 重要な気候変動に関連するリスク・機会は以下の通りです。

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(ウ)リスク管理、指標と目標

 上記により、事業に与える影響が重要であると特定された気候関連リスクについては、優先順位を考慮の上、その影響を顕在化させないための対応策を検討・立案し、当社グループの経営戦略に反映していく方針です。

 当社グループでは、GHG排出量の削減目標の設定に際し、Scope1、Scope2及びScope3をモニタリング指標として採用しています。2025年5月期のGHG Scope1排出量、Scope2排出量及びScope3排出量の実績は、以下のとおりです。

 Scope1排出量(連結): 9,169 t-CO2

 Scope2排出量(連結):19,741 t-CO2

 Scope3排出量(ダイト単体):99,978 t-CO2

 

〔Scope3排出量のカテゴリ別の内訳〕

 

カテゴリ

GHG排出量(t-CO2)

割合(%)

1 購入した製品・サービス

79,792

79.8

2 資本財

13,230

13.2

3 Scope1, 2に含まれない燃料及びエネルギー活動

4,043

4.0

5 事業から出る廃棄物

2,682

2.7

6 出張

134

0.1

7 雇用者の通勤

97

0.1

合計:

99,978

100.0

 

 なお、長期的なGHG排出量の削減目標については、SBT指標などを参照し、2023年度を基準年として以下のとおり設定しました。

Scope

2030年度

2050年度

Scope1+2

基準年(2023年度)に比べ25%削減

実質排出量ゼロを目指す

Scope3

未定

実質排出量ゼロを目指す

 当面は、再生可能エネルギーの購入により、Scope2を中心とした削減を図り、単年度ごとに進捗状況の評価を行っていく方針です。なお、Scope3については、算出精度の向上を図りながら、2027年までには削減目標を設定する方針です。

 

②人的資本

(ア)ガバナンス

 当社は、中期経営計画における事業戦略の1つとして、「人的資本への投資」を掲げております。2024年9月に「総務人事部」を「人事総務部」と改称し、「人的資本への投資」という経営方針を改めて全社的に周知いたしました。同時に、人事総務部を社長直轄とし、ガバナンスも強化しております。人事総務部は各部門と連携して、人事戦略に関する情報収集、分析等を実施した上で、必要に応じて経営会議等で審議しております。

 

(イ)戦略

  当社グループが健康な社会づくりに貢献し、中期経営計画の達成及び創業100年に向けた事業の継続・発展を図っていく上で、従業員が働きがいや働きやすさを実感できるように就労環境を向上させることは極めて重要となります。

 当社グループは現在、今後の事業拡大に向けて原薬・製剤の生産拡大や、FDA査察対応の強化、米国・中国向けの規制対応の強化などに取り組んでいますが、その際に、国内の若年層の人口減少、人材獲得競争の激化及び社内での人材育成の遅れなどにより、必要なスキルを有した人員が十分に確保できない可能性が考えられます。そうした場合には、労働力不足により、各部門における時間外労働が大幅に増加し、就業環境の悪化や生産効率の低下に繋がるリスクがあると認識しています。更には、海外展開の強化や新領域への進出といった今後の成長戦略の遂行にも支障が出る可能性があると考えられます。こうしたことから、人材育成の強化と就業環境の向上に併せて取り組むことが重要であると認識しています。

 人材育成に関しては、各職種に応じた研修・教育等を適切に行うことで、一人ひとりの持てる能力を最大限に発揮させ、事業の発展と働きがいの向上にも繋げられると考えています。

 また、就業環境に関しては、ワーク・ライフ・バランスの向上、ダイバーシティ(多様性)の推進などを含めた「働き方改革」への対応を強化することで、より良い職場環境が構築され、従業員の働きがいや働きやすさが高まるものと考えています。更に、人権の尊重に関する取組みを強化することで、人権侵害リスクを低減し、多様性を尊重する適正な職場環境づくりに繋がると考えています。

なお、具体的な取り組みは以下のとおりであります。

 

1)人材育成

  中期経営計画の各施策を遂行していく中で、人材育成や従業員の能力開発を適切に行い、一人ひとりの持てる能力を最大限に発揮させ、事業の発展と働きがいの向上に繋げていくことが大切であると考えています。

 そのための1つの活動として各種研修を開催し、能力開発の機会を積極的に提供することが重要であると考えています。

a.新たな人事制度の構築と運用開始

 2020年6月より、人事制度の再構築を進めてきました。従来の制度からの主な改訂点は、「人事フレームの変更(等級などの見直し)」、「評価項目の新設(コンピテンシー評価の導入)」、「昇格基準の明確化」などです。

 社内各部門へのヒアリングを行いながら検討・調整を進めてきた結果、内容が確定し、2023年6月より、新たな人事制度の本格運用が開始しており、職能要件を踏まえた研修・教育を実施し、人材育成の強化を図っていく方針です。

b.ローテーションプログラム・キャリアパスプログラムの導入

 2024年7月より、ローテーションプログラムとして「社内公募制度」、「セコンドメント制度」を導入し、従業員の職務経験への意欲を高めながら、キャリア形成を支援しております。また、2025年4月より、キャリアパスプログラムとして「エルダー制度」、「若手グローシッププラン」を導入し、選出されたエルダーを中心に入社1年目社員のキャリア形成、能力向上を支援しております。

 今後は、入社2年目、3年目社員を対象にした「グローシッププラン」の作成を予定しております。

c.階層別研修の実施

 現状の研修体系において、「階層別研修」は全社レベルで管理しており、下記に示す図のとおり、階層ごとに、テーマ・目的を設けて実施しています。(ダイバーシティ研修及び中途入社研修は、階層横断型のものとなります。)今後、管理職を対象にした研修を中心に強化を図っていく方針です。

d.全社的な研修ツールの導入

 職種別研修の充実を図るため、今期から全社的な研修ツールとしてeラーニング(呼称:Daito Learning)を導入し、以下を中心とした、教育を実施しています。

 ・テーマ別研修(メンタルヘルスの「セルフケア」、「インサイダー取引規制」など)

 ・動画研修:各部署で制作した動画(製造の各種作業手順など)を掲載。

 いずれも全社員が閲覧可能で、自分のペースで学習を進めることができます。今後、既存のOJT教育と併せて、このeラーニングの有効活用を図っていきます。

 

階層別研修 テーマ・目的

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※ダイバーシティ研修は、主として中堅社員層(主任~課長代理)を対象に、ダイバーシティ推進のための環境づくりを目的として実施しています。

※中途入社研修は、直近1年間で入社した中途の正社員(契約社員から正社員登用になった人も含む)を対象に、ダイトの正社員として、社是、経営理念、人事制度、コンピテンシーや求められる役割を理解する目的で実施しています。

 

2)働き方改革

a.ワーク・ライフ・バランスの向上

 当社では長時間労働の削減や、仕事と育児・介護の両立支援などを行い、従業員のワーク・ライフ・バランスを向上させることにより、働きやすい職場環境づくりに努めています。主な取組み内容は以下のとおりです。

ⅰ)仕事と「育児・介護」の両立支援

休業制度

・育児休暇、介護休暇、子の看護休暇 を設けています。

・介護休暇と子の看護休暇は、1日単位・半日単位・1時間単位のいずれかから選択して取得可能です。

・子の看護休暇については、ダイトでは法令より長い適用期間を設けています。

(法令):小学校3年生修了まで、子が1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日

(ダイト):中学校就業の始期に達するまで、子が1人の場合は年間6日、2人以上の場合は年間12日

・2025年4月より、育児・介護休業法の改正が段階的に施行されており、2025年10月からは育児期の柔軟な働き方を実現するための措置も開始されます。当社でも育児休業を取得しやすい雇用・職場環境の整備を推進し、女性従業員の出産・育児による離職の防止や、男性従業員の育児休業の取得促進を図っています。

時短勤務制度

・育児、介護それぞれにおいて、時短勤務制度を設けています。

・育児の時短勤務制度については、ダイトでは法令より長い適用期間を設けています。

(法令):3歳まで ⇒(ダイト):小学校3年の始期に達するまで

ⅱ)有給休暇制度の改善

 働きやすさの向上および従業員の利便性を考慮し、「時間単位年休制度」ならびに「入社時特別休暇付与制度」を導入しました。

①時間単位年休制度

 年次有給休暇の日数のうち、1年について5日までを1時間単位で取得可能となりました。

②入社時特別休暇付与制度

 初回有給付与日(入社半年後10日付与)までの間に、体調不良等のやむを得ない事情で休暇を取得する際に活用できるよう、入社日に特別休暇を3日付与することとしました。

 

b.ダイバーシティ(多様性)の推進

 市場のニーズや人々のライフスタイルが多様化する環境の中で、引き続き事業を拡大し企業価値の向上を図るには、

組織内でのダイバーシティの推進が不可欠であると考えています。当社グループでは下記の取組みにより、異なる背景を

持つ社員一人ひとりが働きやすく、その能力を発揮できる職場づくりを推進しています。主な取組み内容は以下のとおりです。

ⅰ)女性活躍の推進

 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の施行を受け、当社では下記の目標を掲げ、「女性管理職の登用推進」と「女性社員の活躍支援」を図っています。2025年5月末の女性管理職の比率は10.0%でした。

 

ⅱ)障がい者雇用の促進

 障害者雇用促進に向けて支援学校とも交流を図り、2025年5月期は、2校からの就業体験の受入れ対応を進めています。また、試験課で雇用している障害者のスキルアップを目的に、ジョブコーチを招いて支援を頂きながら、新しい業務にチャレンジしてもらうよう取り組んでいます。2025年5月末の障がい者雇用率は1.9%でした。引き続き、障害者の特性を考慮し、法定雇用率2.5%の達成を目指して努力して参ります。

 

ⅲ)高齢者就業の促進

 改正高年齢者雇用安定法の施行も踏まえ、2021年5月期より、60歳から65歳への定年延長を行っています。また、継続雇用を希望する社員を対象に、70歳までの再雇用を行っています。(2023年4月より、再雇用期間の限度年齢を68歳から70歳へ延長しました。) 2025年5月期は1名の希望者が継続雇用となりました。

 

c.健康経営の推進

 健康経営とは、企業が従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。当社では、従業員が心身ともに健康に働けるよう環境を整備することにより、生産性の向上、離職率の低下、企業イメージの向上といった

効果も得られるとの考えに立ち、数年前より健康経営に取り組んでいます。主な取組み内容は以下のとおりです。

ⅰ)体のケア

・健康診断の受診義務化:全社員の健康状態を定期的に確認し健康を維持した労働を確保するため、年1回の健康診断の受診を義務化しています。2025年5月期の受診率は97.9%でした。(休職者を除いた場合は、受診率は99.8%です。)

・健康診断の結果、再検査が必要になった人には、人事総務部から受診を促しています。

・残業時間が月80時間を超えた社員には、一定期間内に産業医との面談を実施することを義務付けています。

・毎朝の始業時に、全社でラジオ体操を行っています。

ⅱ)心のケア

・メンタルヘルス窓口の設置:人事総務部が窓口となり対応しています。

・カウンセラーの設置:2020年12月より専門の産業カウンセラーを設置し、月2回当社内の保健室、応接室にてカウンセリングを受け付けています。事前申し込みにより、社員の誰もが利用可能です。

・ストレスチェック診断の実施:メンタルヘルス不調の予防、早期発見を目的に年1回、全社員を対象としたストレスチェック診断を実施しています。2025年5月期の受検率は92.0%でした。未受検の社員への受検勧奨も継続的に実施します。

・復職支援センターの活用:メンタルヘルス不調による休職者の職場復帰を支援するため、富山障害者職業センターによる「復職支援プログラム」を活用しています。

・eラーニング学習システムの活用:2025年4月に、eラーニング学習システムを利用して自分自身の心身の健康の維持、管理の仕方について学習するセルフケア研修を全社で実施しました。

ⅲ)健康企業宣言の取り組み

 2020年4月に、協会けんぽが主催する「健康企業宣言」における「Step1 認定証」を取得し、2023年4月に更新

しました。

 

(ウ)リスク管理、指標と目標

 サステナビリティ課題を含む重要なリスクや課題は、月1回開催される取締役会や執行役員会、月2回開催される経営会議で議論、検討されるほか、3ヶ月に1回開催される内部監査室から監査等委員会への連絡会を通じて、法令遵守体制、リスク管理体制、内部統制システムの整備・運用状況のモニタリング結果を報告しています。

  上記に記載以外のサスティナビリティ情報としての人権の尊重、腐敗(贈収賄)防止等について及び人的資本に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績については、2025年11月に当社ホームページに掲載予定の統合報告書をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性についての主な事項を記載しております。また、当社グループとしては必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資判断上、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。当社グループは、これらのリスク発生可能性を認識した上で、発生回避および発生した場合の対応に努める方針でありますが本株式に関する投資判断は、本項および本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があります。なお、文中における将来に係る事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 また、以下の記載は、当社株式への投資に関連するリスクをすべて網羅するものではありませんので、ご留意ください。

 

(1)当社グループの事業内容について

 当社グループは、①原薬の製造販売及び仕入販売、②他社開発の製剤の製造受託並びに③自社開発または共同開発による製剤の製造販売を主幹事業としております。

 

① 原薬の製造販売及び仕入販売

 原薬の各品目は、基本的にはそれぞれ顧客が製造する特定の製剤の品目と紐付いて継続的に販売されますが、その販売量は当該製剤の市場での販売動向及び顧客の生産量調整による影響を受けます。また、当社グループの顧客であるジェネリックメーカー等の医薬品開発戦略の変更や原薬製造の内製化等の製造委託に係る方針転換等があった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、後述のとおり、当社グループは新薬メーカー等からの製造受託を行っているため、当該受託品目に関連するジェネリック医薬品向け原薬に係る受注が制約される場合があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは常に市場の動向を把握し、顧客との連絡を密に取り顧客の生産調整、開発戦略及び製造委託に係る方針転換について情報収集に努め、販売減少のリスクを低減すると共に、市場及び顧客のニーズに対応する製品の提案を行い、販売の拡大に努めております。

 

② 他社開発の製剤の製造受託

 他社開発の製剤の製造受託に係る当社グループの収益は、当該製剤の市場での販売動向及び当該製剤に係る顧客の販売方針による影響を受けます。また、当社グループの顧客である製薬会社の医薬品開発戦略の変更や医薬品製造の内製化等の製造委託に係る方針転換等があった場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは常に製剤市場の動向の把握及び顧客の販売方針の情報収集を行い、市場及び顧客のニーズに対応する製造、品質管理体制の整備に努め、製造受託を獲得するための活動を行っております。

 

③ 自社開発または共同開発による製剤の製造販売

 当社グループは大手医薬品販売業者や医療機関向けの営業を行っていないことから、製剤の自社開発を行う場合、その販売を担う、競合品を取り扱っていない他の医薬品メーカー等を確保する必要があります。したがって、そうした医薬品メーカー等を確保できない場合等においては、自社開発の医薬品製造販売を行うことができない可能性があります。また、自社開発または共同開発による製剤の製造販売に係る当社グループの収益は、当該製剤の市場での販売動向及び当該製剤の販売を担う医薬品メーカー等の販売方針に影響を受けます。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは販売を委託する医薬品メーカーとの関係維持及び新規開拓に努め、自社開発の医薬品を販売するための医薬品メーカー等への積極的な営業活動を行っております。

 

(2)ジェネリック医薬品市場の動向について

 高齢化社会の進展に伴い、日本の国民医療費は長期にわたり増加傾向にあり、こうした医療費の増加傾向を抑制するため政府はジェネリック医薬品の使用促進を進めております。2024年9月の社会保障審議会医療保険部会において、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」が策定され、「主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」(旧ロードマップから継続)、「副次目標:後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」が掲げられており、2024年4月~2025年3月期には数量シェアが86.5%(日本ジェネリック製薬協会調べ)となっております。

 当社グループは、ジェネリックメーカー向けの医薬品原薬の販売及び自社開発または共同開発による製剤の製造販売の強化を図っておりますが、政策転換その他の理由によってジェネリック医薬品市場の成長が停滞した場合、当社グループの経営成績等に影響を受ける可能性があります。なお、2025年5月期において、当社グループのジェネリック医薬品に関連する売上高(連結)は、当社グループの売上高(連結)総額の8割程度を占めております。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは常にジェネリック医薬品市場の動向及び政府のジェネリック医薬品に対する方針の動向を注視し、事業展開の検討を行っております。またジェネリック市場の中でも今後成長が見込める高薬理活性製剤領域に注力するなどの対応を行っております。

 

(3)薬価改定、政府による医療保険制度の見直し等について

 医療用医薬品は政府の定める薬価基準により保険償還価格が決められております。薬価基準は、市場における売買価格の実勢価格調査の結果に基づき、これまで原則として2年に一度改定されていましたが、2021年度から毎年改定されております。

 薬価改定後には、販売価格低下等の影響を受ける可能性があります。また、医療保険財政の悪化に伴い、政府は医療保険制度を抜本的に見直す方針であるため、その内容によっては当社グループの経営成績等は影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは医療保険制度の方針の見直しに関する情報収集を行い、事業展開を検討すると共に、製品の価値に見合った適正価格での販売に努め、また生産効率化による原価低減活動を行っております。

 

(4)法改正及び法規制等に関するリスク

 当社グループは医薬品の製造、販売に関して薬機法、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則及びそれらに関するGMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)関連法令の規制を受けております。当社グループは、各種承認・許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現時点において当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、法令違反等によりこれらの許認可等が取り消された場合には、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、今後これらの規制の強化、または新たな規制の導入により、事業活動が制約され、各業務の遅滞が発生した場合等には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは関連法規等の情報収集を行い、法令に従った対応を実施し、リスク低減に努めております。

 

(5)販売中止、製品回収、製造物責任等に関するリスク

 医薬品の発売後には、発売前に予期していなかった副作用が確認されたり、製造過程での製品への異物混入等が発見されたりすることがあります。また、薬機法に基づく再審査や再評価において、品質、有効性もしくは安全性に関して不適当と評価される場合があります。当社グループが原薬の供給もしくは製造の受託を行う医薬品、または当社グループの自社開発製品に関してこれらの事態による販売中止、製品回収もしくは損害賠償等が発生した場合、当社グループの経営成績等は影響を受ける可能性があります。

 また、当社グループは、健康食品の販売も行っており、品質不良等によって消費者に健康被害を与えるような事態が発生した場合、当該製品の販売減少、損害賠償の発生または当社グループのブランドイメージの毀損等によって当社グループの経営成績等は影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは品質管理及び品質保証体制を整えリスク低減に努めるとともに、生産物賠償責任保険を付保するなどの対応を行っております。

 

(6)知的財産権について

 当社グループが製造販売するジェネリック医薬品に関しては、結晶形、製法、製剤等に関する特許権あるいは剤形に関する意匠権等、他社の権利が残存している場合が多いため、当社グループは、物質・用途特許をはじめ、各種特許を中心とした知的財産権に関し徹底した調査を実施しております。しかしながら、特許抵触の疑義があることを理由に訴訟提起される場合があり、このような事態が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは事業に関連する各種法令を遵守するのはもちろんのこと、弁護士その他の専門家の協力も得ながら、適切な契約の締結による権利義務の明確化、他者の権利の調査等、紛争の未然防止に努めております。

 

(7)設備投資に関するリスク

 当社グループは多種多様な製造品目及び製造工程を取扱うことから、少数の製造品目や製造工程のみを取扱う同業者と比較すると、収益に対応した設備投資負担が相対的に大きくなっていると考えられます。また、当社グループが継続的に事業を拡大していくためには、新たな製造品目や製造工程の取扱いに対応した設備投資が必要となります。

 こうした設備投資が遅延した場合には、受注機会の喪失等により、当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。一方、大規模な設備投資を行った場合、原薬及び製剤を製造する際の特徴上、本格的な生産に至るまでに一定の期間を要するため、減価償却費が先行的に発生することによって売上原価率が大きく上昇する可能性があります。また、大規模な設備投資を行った際に想定していた受注を期待通りに獲得できなかった場合には、当社グループの経営成績等は重大な影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは経営戦略及び収益性等の観点から十分に検討した上で設備投資の判断を行い、リスク低減に努めております。

 

(8)自然災害、感染症、事故等について

 当社グループの生産拠点が集中している富山県における大規模な自然災害や、新型コロナウイルス感染症を含む感染症の流行、当社グループの製造施設における事故等が発生した場合、製造設備等への損害、生産活動の停止、取引先や製造施設近隣住民への補償等により、当社グループの経営成績等は影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは危機の事前回避および危機発生時に迅速な対応を行うため危機管理委員会を組織し、また大規模な災害が発生した場合も事業を継続できるよう事業継続活動計画を策定し、災害発生時の対応能力の継続的向上に取り組んでおります。加えて、火災保険、水害保険、賠償責任保険といった各種の保険を付保するなどの対応を行っています。

 

(9)原材料または商品の仕入等が困難になるリスク

 当社グループは、一部の原材料及び商品の仕入や外注加工に関して、海外企業を含む特定の取引先に依存しているものがあり、災害等の要因によってそうした原材料や商品の仕入または外注加工が困難になり、重要な製品の製造停止や重要な仕入販売取引の停止等を余儀なくされた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは複数購買による購買ルートの検討、確保等を進めることにより、安定した原材料及び商品の調達に努めております。

 

(10)原材料または商品の仕入価格の変動に関するリスク

 当社グループは海外からの仕入が多く、原薬及び製剤の製造販売に係る原材料や仕入販売に係る原薬等の価格が為替相場等の事情によって急激に変動した場合コストアップ要因となり、当社グループの経営成績及び財政状態は影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは外貨建て取引に係る為替変動リスクに対し、必要に応じて先物為替予約取引等によって一定程度のリスクヘッジを行っております。

 

(11)有利子負債について

 当社グループでは、事業拡大に必要な資金の一部を金融機関からの借入によって調達しております。当社グループは、中期経営計画「Daito Transformation Plan 2027」において、DEレシオについては最大0.4倍程度まで想定しており、市場金利が上昇した場合には、当社グループの借入金利も上昇することが予想され、その場合には当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、金融機関からの借入の一部には、純資産や経常損益の金額等を基準とした財務制限条項が付されているものがあり、将来においてこうした財務制限条項に抵触し、期限の利益を喪失した場合等には、当社グループの資金繰り等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは自己資本比率などを指標に一定の財務健全性を維持するよう努めるとともに、金融機関などとの健全かつ良好な関係の維持に努めております。

 

(12)取引先の企業再編によるリスク

 当社グループの取引先において企業統合や合併が発生した場合、あるいは外資企業の進出に伴い取引先がその傘下に入ること等が発生した場合には、取引高が減少する可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは取引先との良好な関係維持及び企業再編に係る情報収集に努め、企業再編が発生した場合には迅速に対応を行い取引高の減少等の影響を最小限とするよう努めております。

 

(13)環境保全に関するリスク

 医薬品の研究、製造の過程等で使われる化学物質の中には、人の健康や生態系に悪影響を与える物質も含まれております。万一当社グループの事業活動に起因する環境問題が発生した場合、損害賠償の発生やブランドイメージの毀損等により、経営成績等が影響を受ける可能性があります。また、環境保全に係る法規制の改定に伴って多額の対策費用が発生する場合等においても、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは土壌汚染、水質汚染及び悪臭等の発生を防ぐため、環境保全に係る法規制を遵守し、化学物質の保管や取扱方法を厳格に定め、モニタリングによる適正管理を実施するなどの対応を行っております。

 

(14)競合に関するリスク

 現状、日本国内の品質基準への対応の面で当社グループは優位にあるものと考えておりますが、今後、大手外資系原薬バルクメーカーが国内企業の買収等によって日本市場への参入を図る可能性があり、そうした海外企業が増加した場合、当社グループの経営成績等は影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは変化し続ける医薬品業界や顧客のニーズに対応した製品及び競争力のある製品の開発、製造、販売を行うなどの対応を行っております。

 

(15)製商品の品質の維持に関するリスク

 当社グループは、製造販売、仕入販売もしくは受託製造する原薬及び製剤の品質に関して、生産管理の徹底、継続的な研究開発に基づく創意工夫及び適格な人材の確保等によってその維持・向上に取り組んでおり、製品の品質に関しては日本国内のGMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)だけでなく、FDA(米国食品医薬品局)やEMA(欧州医薬品庁)の基準にも適合する生産体制を備えております。しかしながら、何らかの事情によってこうした生産体制の維持が困難となり、製商品の品質低下が生じた場合、新規取引獲得に係る競争力の低下や既存の継続的取引の喪失等により、当社グループの経営成績及び財政状態は重大な影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは生産物賠償責任保険をはじめとした賠償責任保険を付保するほか、必要に応じ、顧客との契約によって責任範囲を明確化するなどの対応を行っております。

 

(16)海外での事業展開に関するリスク

 当社グループは、中国及び米国等海外での事業展開を進めております。海外では法規制や行政指導のあり方等を含めて事業環境が異なることから、予期せぬ費用の発生等により、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは可能な限り効果的かつ速やかな対応をするべく、現地に派遣している従業員、合弁相手、関係当局その他からの情報収集を行い、リスクの低減に努めております。

 

(17)機密情報の管理について

 当社グループは、原薬の製造販売や製剤の業務受託等において、取引先の生産計画や新製品の開発に関する機密性の高い情報を取得する場合があります。何らかの要因で情報漏洩等が発生した場合には、当社グループの信用の失墜等により、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは情報管理に関する規定等を整備し、従業員へ情報管理の重要性を周知徹底し、情報漏洩の防止を図っております。

 

(18)研究開発について

 当社グループは、原薬及び製剤の製造販売や業務受託等に関して研究開発活動を行っております。こうした研究開発活動は、製造販売や業務受託の開始に数年間先行して開始する場合がほとんどですが、これらの活動に関する投資については、必ずしも期待通りに収益獲得に結び付かない可能性があり、その場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループではこれらのリスクを考慮し十分に検討した上で開発品目の選定を行い、また綿密な開発計画の策定と進捗管理を行っております。

 

(19)固定資産に関するリスク

 当社グループは、多額の固定資産(建物、機械装置、土地、投資有価証券等)を所有しているため、経営環境の変化等に伴ってそれらの価値が著しく変動し、減損損失、除却・売却による損失、評価差額の変動等が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは経営戦略及び収益性等の観点から十分に検討した上で固定資産取得の判断を行い、また取得後もモニタリングを行い、事業を執行、管理する体制を整備しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、各国の通商政策等の影響を受け、海外経済は一部減速しているものの、企業収益が改善傾向にある中で設備投資は緩やかに増加しました。また、個人消費は物価上昇の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善を背景に若干の増加傾向が続き、経済全体として緩やかな回復が続きました。

 医薬品業界におきましては、2024年9月の社会保障審議会医療保険部会において、「安定供給の確保を基本として、後発医薬品を適切に使用していくためのロードマップ」が策定され、「主目標:医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」(旧ロードマップから継続)、「副次目標:後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」が掲げられました。また、2024年10月からは、ジェネリック医薬品のある長期収載品を患者様が希望された場合は、患者様に追加で金銭的負担を求める「選定療養」が導入され、ジェネリック医薬品の数量シェアは更に高まっております。

 一方で、後発医薬品を中心とする供給不安は長期化しており、過当競争状態の是正、過度な低価格競争からの脱却、規模の経済が生かせる企業規模へ再編していくための環境整備など、多くの課題を抱えております。

 このような状況において、当社グループでは、中期経営計画「Daito Transformation Plan 2027」のもと、患者様及び医療関係者様の皆様への高品質な医薬品の安定供給に努めて参りました。

 売上高の販売品目ごとの業績は次の通りであります。

 原薬では、2024年12月に薬価収載された製剤用の原薬製品の販売を開始し、また商品の販売も堅調に推移したことから、売上高は22,872百万円(前期比5.7%増)となりました。

 製剤では、長期収載品を中心に製造受託の減少があったものの、ジェネリック医薬品及び一般用医薬品の販売が堅調に推移し、売上高は27,592百万円(前期比10.1%増)となりました。

 健康食品他につきましては、市場における競争激化等により、厳しい状況で推移し、売上高は178百万円(前期比10.1%減)となりました。

 これらの結果、当連結会計年度の売上高は50,643百万円(前期比8.0%増)となりました。売上高の増加に伴う利益の増加があったものの、主に減価償却費の増加、製品構成の変化、長期滞留在庫の評価減の増加等により営業利益は2,619百万円(前期比32.7%減)、経常利益2,705百万円(前期比31.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,908百万円(前期比42.1%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ519百万円の減少となり、2,207百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は5,897百万円(前期比714百万円の増加)となりました。これは主に、売上債権の増加額4,891百万円、法人税等の支払額842百万円等があった一方で、税金等調整前当期純利益2,958百万円、減価償却費4,332百万円、棚卸資産の減少額2,419百万円等があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は7,365百万円(前期比1,434百万円の増加)となりました。これは主に、生産設備の拡充に伴う有形固定資産の取得による支出6,789百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は1,002百万円(前年同期は183百万円の使用)となりました。これは主に長期借入れによる収入6,000百万円等があった一方で、長期借入金の返済による支出3,099百万円、自己株式の取得による支出623百万円、配当金の支払額998百万円等があったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

前年同期比(%)

原   薬(百万円)

20,871

104.9

製   剤(百万円)

23,931

103.7

健康食品他(百万円)

合計(百万円)

44,802

104.3

(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの生産実績を記載しております。

2.金額は販売価格によっております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度における商品仕入実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

前年同期比(%)

原   薬(百万円)

1,905

149.0

製   剤(百万円)

2,657

102.0

健康食品他(百万円)

110

85.1

合計(百万円)

4,672

116.5

(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの商品仕入実績を記載しております。

2.金額は実際仕入額によっております。

 

c.受注実績

 当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

製   剤

24,355

104.6

5,840

107.8

(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの受注実績を記載しております。

また、当社は製剤の一部について受注生産を行っているため、その分の金額を記載しております。

2.金額は販売価格によっております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

前年同期比(%)

原   薬(百万円)

22,872

105.7

製   剤(百万円)

27,592

110.1

健康食品他(百万円)

178

89.9

合計(百万円)

50,643

108.0

(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの販売実績を記載しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、前連結会計年度において特定の顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の10%に満たないため、相手先別の情報の記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

 金額(百万円)

 割合(%)

 金額(百万円)

 割合(%)

株式会社フェルゼンファーマ

5,225

10.3

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、並びに資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 医薬品業界におきましては、2021年6月閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」において「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、新目標についての検証、保険者の適正化の取組みにも資する医療機関等の別の使用割合を含む実施状況の見える化を早期に実施し、バイオシミラーの医療費適正化効果を踏まえた目標設定の検討、新目標との関係を踏まえた後発医薬品調剤体制加算等の見直しの検討、フォーミュラリの活用等、更なる使用促進を図る。」と示され、後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、並びに使用促進を行う方針が示されております。

 国のジェネリック医薬品使用促進策が進められ、ジェネリック医薬品の普及が拡大する一方、2021年度から2年に1度の薬価改定に加え、中間年においても改定を行う毎年薬価改定が実施されております。今後、医薬品業界の事業環境は厳しいものとなることが予想され、当社としても一層の経営効率化への努力が求められております。

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は次のとおりであります。

a.経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度は、原薬では原薬製品及び商品の販売が増加し、製剤ではジェネリック医薬品および一般用医療薬品の販売が堅調に推移し、売上高は50,643百万円となりました。

 

(売上原価)

 当連結会計年度の売上原価は、製品構成の変化、減価償却費の増加、棚卸資産の評価減、円安による原材料費高騰等の影響により、42,005百万円となりました。

 この結果、差引売上総利益は8,637百万円となり、前連結会計年度に比べ1,201百万円減少しました。

 

(販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は6,017百万円となり、前連結会計年度に比べ、72百万円増加しました。これは主に研究開発費の増加によるものであります。

 この結果、当連結会計年度の営業利益は2,619百万円となり、前連結会計年度に比べ1,274百万円減少しました。

 

(営業外損益)

 当連結会計年度の営業外収益は、持分法適用会社の投資利益75百万円などにより245百万円となり、前連結会計年度に比べ119百万円増加しました。営業外費用は支払利息の増加などにより160百万円となり、前連結会計年度に比べ62百万円増加しました。

 この結果、当連結会計年度の経常利益は2,705百万円となり、前連結会計年度に比べ1,217百万円減少しました。

 

(特別損益)

 当連結会計年度の特別利益は638百万円となり、前連結会計年度に比べ177百万円増加しました。これは主に、投資有価証券売却益や補助金収入があったことなどによるものであります。特別損失は385百万円となり、前連結会計年度に比べ219百万円増加しました。これは固定資産圧縮損や除却損の増加があったことによるものであります。

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,908百万円となり、前連結会計年度に比べ1,386百万円の減少となりました。

 

 

b.財政状態の分析

<資産、負債及び純資産の状況>

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ296百万円増加し、78,004百万円となりました。これは主に、電子記録債権の増加2,958百万円及び売掛金の増加2,029百万円があった一方で、原材料及び貯蔵品の減少1,824百万円、商品及び製品の減少1,033百万円等があったことによるものであります。

 負債は、前連結会計年度末より493百万円増加し、25,936百万円となりました。これは主に、長期借入金の増加1,900百万円及び1年内返済予定の長期借入金999百万円の増加があった一方で、未払金1,557百万円の減少及び支払手形及び買掛金の減少580百万円等があったことによるものであります。

 純資産は、前連結会計年度末より197百万円減少し、52,067百万円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金の減少564百万円等があったことによるものであります。

 これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度より0.3ポイント低下し、66.7%となったほか、自己資本当期純利益率(ROE)は前連結会計年度より2.7ポイント減少し、3.7%となっております。

 

c.経営成績に重要な影響を与える要因について

 医薬品業界におきましては、2021年6月閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」において「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、新目標についての検証、保険者の適正化の取組みにも資する医療機関等の別の使用割合を含む実施状況の見える化を早期に実施し、バイオシミラーの医療費適正化効果を踏まえた目標設定の検討、新目標との関係を踏まえた後発医薬品調剤体制加算等の見直しの検討、フォーミュラリの活用等、更なる使用促進を図る。」と示され、後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、並びに使用促進を行う方針が示されております。

 国のジェネリック医薬品使用促進策が進められ、ジェネリック医薬品の普及が拡大する一方、2021年度から2年に1度の薬価改定に加え、中間年においても改定を行う毎年薬価改定が実施されており、今後、医薬品業界の事業環境は厳しいものとなることが予想されます。

 当社グループにおいて、医薬品の製造設備に関する設備投資を実施した際には、原薬及び製剤の本格的な製造に至るまでに試作期間等を含めたバリデーションのための期間が必要となります。バリデーションとは、医薬品の製造、設備及び工程において、品質特性に適合する製品が生産されることを保証し、文章化することを言います。当社グループの場合は本格的な製造を開始するまでには設備の竣工後、半年から1年程度のバリデーション期間を要することが一般的になっております。

 なお、減価償却費の計上はバリデーションの開始時期から行うため、売上高の計上よりも減価償却費の計上が先行することとなります。そのため、バリデーションは連結損益計算書において損益の悪化要因として影響することが見込まれます。

 

d.資本の財源及び資金の流動性についての情報

 当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための原材料購入費用及び製造費用、商品仕入費用、研究開発費、生産能力強化のための設備投資費用等であります。

 これら資金需要への対応は、主に自己資金及び金融機関からの借入による資金調達を基本としております。

 当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、11,887百万円であります。また、複数の金融機関との間で合計17,500百万円の当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高:-百万円、借入未実行残高:17,500百万円)

 なお、2024年7月に発表した中期経営計画「DTP2027」では、高品質な医薬品の安定供給体制の維持と持続的な成長に必要な投資を確保しつつ、安定的且つ積極的は株主還元を実施することを資本配分方針としており、その内訳は経常投資:約55億円、成長への投資:約195億円+α、株主還元:50億円以上としております。

 

5【重要な契約等】

 当社は、2025年1月10日開催の取締役会において、当社の完全子会社である大和薬品工業株式会社を吸収合併することを決議し、本合併に係る合併契約を締結しました。本契約に基づき、2025年6月1日付で大和薬品工業株式会社を吸収合併しております。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。

 

6【研究開発活動】

 当社の研究開発は、高品質で安価なジェネリック医薬品(原薬及び製剤)及び有用性が高く安心して服用できる一般用医薬品をタイムリーに提供し、医療関係者、患者、一般消費者等から信頼、期待される活動を続けております。

研究開発本部の体制は、開発推進室、原薬研究室、製剤研究室及び物性研究室の計4つの研究室に機能を分化し、密接な連携の下、迅速で効率的な研究開発活動を推進しております。なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は2,520百万円となっております。各研究室の研究開発活動の状況は次のとおりです。

 

① 開発推進室

 開発推進室では、研究開発マスタープランに基づき開発品ごとの研究開発計画を立案し、それらの進捗管理、生産部門への技術移転を含む社内調整役を担い、確実な原薬等登録原簿及び承認申請書の作成と当局対応を行っております。主な業務内容としては、新規開発の計画立案、研究開発を推進するための戦略策定、開発業務の進捗管理、研究開発レポートの照査、承認申請等の薬事業務(原薬等登録原簿・承認申請書の作成・申請並びに当局対応)、開発費のとりまとめ、知的財産権の調査状況の確認、共同開発企業や開発委託企業との連携・調整・進捗管理、生産部門への技術移転業務等を行っております。

 また、米国、中国をはじめとする海外への製剤導出を推進しております。Daito Pharmaceuticals America, Inc.、大桐製薬(中国)有限責任公司及び現地の薬事コンサルタント等と協力し、現地の薬事規制、当局対応の方法などを学びながら海外進出を進めております。

 

② 原薬研究室

 原薬研究室では、ジェネリック原薬の市場性、開発年度を精査して、開発原薬の選定を行い、その開発スケジュールを立案しております。開発が決定した原薬については、開発形態(合成ルート及び原料調査、実生産スケール、製造所および製造ライン等)を決定し、高品質で低コストの原薬生産体制を確立することを目的として、千輝薬業(安徽)有限責任公司の開発部門と協力して研究開発に取り組んでおります。各々の開発原薬に対する顧客獲得に向けて、できる限り早い段階で、ラボスケールから実生産規模の高品質の原薬を提供することを目指しております。これに加え、製造における安全性データの取得、申請において要求されるサポートデータや情報の取得、製剤化検討に求められる粉体特性を有する原薬、顧客の求める原薬情報の充実化を念頭に研究開発を進めております。

 

③ 製剤研究室

 製剤研究室では、医薬品の安全性を十分に担保できる製剤設計を重視し、ジェネリック医薬品及び一般用医薬品の自社開発及び共同開発を行っております。ジェネリック医薬品については、先発製剤との治療学的に同等となるよう製剤設計を行い、その証明としてヒトを用いた生物学的同等性試験を行っております。これらの試験結果をもとに実生産プロセスの確立を行い、さらに製剤申請に必要となる製剤設計に関する資料及び生物学的同等性試験資料の作成を行っております。また、一般用医薬品については有効成分の効能を最大限に発揮できるような処方及び製造方法を設定することにより患者様に安心して服用していただけるような開発を進めております。

 また、当研究室では、製剤設計のほか、開発した製品の工業化検討において生産規模及び製造法に応じて最適な生産系列で順調に生産されるよう、生産部門への技術移管を行っております。

 

④ 物性研究室

 物性研究室では、原薬及び製剤の新規開発に伴い、原料、中間体、原薬並びに製剤に関する規格及び試験方法の設定や品質評価など、分析関係の開発業務を行っております。理化学試験(含量、不純物、溶出性及び安定性試験など)に関するデータを取得し、これらを基に原薬等登録原簿(MF)や承認申請に必要となる実測資料を作成しております。加えて、製品の上市に向けて、生産部門や品質管理部門へ試験方法の技術移管をタイムリーに行っており、品質保証の支援部門としての役割を担っております。