第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、防護服・環境資機材事業、ヘルスケア製品事業、ライフマテリアル事業の3本の柱をもって事業展開しております。個人防護と環境保全のトータルソリューションサプライヤーとしての取組みを通じて、「地球の環境と安全に貢献できる、存在感のある企業グループ」を目指します。

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、資産効率の向上及び株主資本の有効利用が全てのステークホルダーの利益に合致するものと考え、「総資産経常利益率(ROA)」及び「株主資本利益率(ROE)」を重要な指標として位置付けております。

(3) 会社の経営戦略

当社グループは、2023年5月より、中期経営計画「Next Stage 実行計画2023」(2023年5月~2026年4月)をスタートしております。

① 経営方針
イ  「人と環境を守る」事業を強化し、安全な社会実現へ貢献する

当社が優位性を発揮している化学防護服市場における専門的知見を、他のカテゴリーの防護服市場にも活用することで、当社の事業領域を拡大していきます。防護服市場の様々なカテゴリーにおいて、最も頼りにされる企業となれる取り組みを推進していきます。

業務提携により市場・顧客開拓を進める安全環境設備分野では、個人用保護具と環境設備機器を組み合わせたソリューションビジネスを一層強化していきます。

また、防護服試験機能の集約と共同研究開発への注力を進め、産学連携による知的資源を製品開発に活用していきます。

さらに、連結子会社である阿茲阿斯(大連)紡織服飾有限公司と一層の連携を進めることで、注力している安全事業分野において、防護服やヘルスケア製品等の生産と販売の機能両面に関して海外事業の強化に取り組んでまいります。

ロ  商社からメーカーへ、企業構造改革を進める

製品開発、技術力、品質保証、以上の機能を通じて、メーカー機能の強化を一層推進していきます。製品開発に関しては、防護服・環境資機材事業における永年の営業活動を通じて培ってきた情報や知識、知恵を活用して、ユーザーのニーズに応える製品づくりにつなげていきます。技術力に関しては、生産中核拠点であるアゼアスデザインセンター秋田の防護服縫製業務で蓄積してきた不織布加工技術を活かし、高機能防護服の生産を目指します。また、責任を持った製品づくりのため、品質保証の強化を徹底してまいります。

以上の活動を通じて、社会、市場から信頼される「アゼアス」ブランドの確立、浸透を図り、メーカー機能強化を通じた稼げるビジネスモデルへの転換を進め、持続的成長と中長期的な企業価値向上を実現していきます。

ハ  魅力のある企業集団を作り、ステークホルダーから選ばれる企業となる

収益性だけではなく、売上拡大にも重点を置いた施策を実行することで当社の成長シナリオを示し、資本コストや株価を意識した経営を実践していきます。

また、アゼアスデザインセンター秋田などこれまでの設備投資や信州大学との共同研究の成果を十分な営業活動や新たな商流の開拓につなげる優秀な人材を獲得できるよう、人材投資、人材育成、社内環境整備に取り組みます。

(4) 会社の対処すべき課題

当社グループでは以下の事項を対処すべき課題として取組みを進めております。

① 中期経営計画の実行

当社グループは、2023年5月から2026年4月までの中期経営計画「Next Stage 実行計画2023」に取り組んでおり、2024年5月より計画の2期目に入りました。計画の1期目は、第83期年次経営計画との乖離が大きい実績となり、目標未達となったため、特に、成長のシナリオを業績で示す取り組みは急務と認識しています。

現在の社会は、国際紛争の懸念、サプライチェーンの寸断リスク、水害、大地震、火山噴火など大規模災害発生に対する不安、新型感染症の懸念、家畜感染症のまん延、また、化学物質による労働災害の増加等、私たちの身近には従来以上に危険が多く、常に脅威に晒される環境となっています。安全な社会の実現に向けた関心が一層強まるなか、当社は、こうした課題を一つでも多く解決できるよう、安全・環境分野における存在意義を高め、社会や顧客の期待に応える取り組みを進めてまいります。

中期経営計画における経営方針は以下のとおりです。

・「人と環境を守る」事業を強化し、安全な社会実現へ貢献する(防護服市場における事業領域拡大と安全環境設備分野の強化を中心とした次の時代の中核事業の育成)

・商社からメーカーへ、企業構造改革を進める(開発力、技術力、品質保証を裏付けとしたメーカー機能の強化)

・魅力のある企業集団を作り、ステークホルダーから選ばれる企業となる

② 「安全・衛生」分野の新事業開発と育成

今後企業として尚一層の発展を遂げていくには、防護服・環境資機材事業の事業領域を拡大するとともに、それに次ぐ新たな成長事業を育成していくことが不可欠と考えます。

防護服分野においては、従来の主力商品であるデュポン™タイベック®ソフトウェア等の化学防護服に加え、火や熱の現場を安全にする難燃防護服と、視認性の高い素材を使用し、高速道路等の作業現場の安全性を高める高視認性防護服等を強化し、防護服市場やユーザーから一層の信頼を得られるよう取り組んでおります。研究開発と製品評価、試験機能等を充実させるため、2022年4月には、信州大学繊維学部FII内に「アゼアス防護服Labo」を開設いたしました。また、生産加工技術と自動化等による生産性の向上のために「アゼアスデザインセンター秋田」の新工場棟を2022年5月に開設し、機能性の高い製品の開発と生産に取り組んでおります。

また、安全環境設備分野では、有害物質や感染症ウイルス等が存在する空間をクリーンな環境に改善し、作業者のリスクを低減していく環境改善設備を開発しています。防護服等の個人防護具と設備を組み合わせたソリューションを提案することで、安全な環境づくりに貢献してまいります。

さらに、2024年4月には改正労働安全衛生規則等が施行されて事業所における化学物質管理体制の強化が義務付けられたことから、顧客が法令に対応できるよう、個人用保護具の需要に適宜対応するとともに、適切なサポートを実施してまいります。

2022年度から独立したヘルスケア製品営業部では、不織布マスクや医療用ガウン等の個人防護具を通じて、医療機関、一般産業、一般消費者を含めた安全な社会の実現に貢献していきます。同年稼働を開始した「アゼアスデザインセンター秋田」のマスク生産ラインでは、機能性の高い、JIS規格適合の「医療用マスク」「一般用マスク」を生産しています。新型コロナウイルス蔓延下で露呈したマスクに関するサプライチェーンのリスクに対応できるよう、海外製輸入マスクと合わせて、安定した供給体制を構築してまいります。

当社では、上記に記載した新たな取り組みを含め、積み上げてきた専門的な知見や知識、投資した設備等により、ビジネスチャンスの拡大につなげ、「社会の安全・安心を実現する」事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。

(注) デュポン™、タイベック®は米国デュポン社の関連会社の商標または登録商標です。

③ 人材の育成と確保

当社グループが今後も継続的発展を遂げていくためには、人材の確保と育成は重要課題として位置付けております。第80期(2021年4月期)より新人事制度を導入し優秀な人材の確保と次世代経営層の中核となる人材の育成、若手社員の早期戦力化を図っております。また、働き方については、柔軟な働き方の枠組み整備、女性活躍支援、中堅社員の活性化、高齢者雇用等に取り組み、男性社員の育児関連休暇の取得促進など、健康経営を意識し、人材活性化を進めてまいります。

④ サステナビリティへの対応

中期経営計画の実行のとおり、持続的成長を実現する強固な経営基盤を構築することで、サステナビリティ経営を推進します。当社のサステナビリティ基本方針は以下のとおりです。

<アゼアス株式会社サステナビリティ基本方針>

当社グループは、コーポレートスローガン「地球のこと総て、その環境と安全に挑戦する。The Challenge for the Earth:“Environment & Safety”」に基づき、社会的課題の解決につながる商品の展開と、企業として果たすべき社会的責任の取り組みにより、SDGsを意識した経営を推進していきます。

1.安全・防護システムで人と環境を守ります。

2.健康・快適な生活の実現に貢献します。

3.アゼアス株式会社の特性を活かした社会貢献に取り組みます。

4.社員一人ひとりの人権を尊重するとともに、社員の健康維持向上に努めます。

5.コーポレート・ガバナンス体制を強化して透明性、健全性を確保するとともに、効率化と環境変化に対応できる経営管理組織を構築します。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) ガバナンス

サステナビリティに関する重要な戦略や、新たな施策の推進については、執行役員会において審議のうえ、取締役会に報告しております。

また、代表取締役社長、管理部門管掌役員、各部長等で構成されるリスク管理委員会では、サステナビリティに関する課題を、経営に重大な影響を及ぼす恐れのあるリスクの一つとして管理し、課題に対する具体的な施策とその進捗状況につき、執行役員会・取締役会に報告しております。

さらに、取締役会は、サステナビリティの強化に向け、リスク管理における執行部門の取り組みの進捗を管理監督しています。

(2) リスク管理

サステナビリティに関する課題も含め、経営に重大な影響を及ぼす恐れのあるリスクは、リスク管理委員会の事務局である総務部が課題に対する具体的な施策とその進捗状況をモニタリングのうえ、執行役員会・取締役会に報告しております。

また、取締役会は、サステナビリティの強化に向け、リスク管理における執行部門の取り組みの進捗を管理監督しています。

現在、温室効果ガスの削減、人権デュー・ディリジェンス、働き方改革等の対応の遅れにより、投資家、取引先、従業員が離反し、事業継続が困難となるリスク、移行への対応によりコストが増加するリスク、対応遅延によりビジネス機会を逸失するリスクを、サステナビリティに関するリスクとして管理しています。

(3) 人的資本・多様性に関する戦略

① メーカー機能強化と人材投資

当社グループは、メーカー機能の強化を通じて、企業体質変革と収益構造改革に取り組みますが、その実現にあたっては、各人の業務スキル向上、優秀な人材の確保など人材への投資の強化が不可欠です。当社グループでは、社員がチャレンジする気持ちを絶えず持ち、働きがいを実感できる人事制度のもと、従業員全員が十分な感性、専門性、技術力を備えるとともに、事業環境の変化を捉え、経営変革の担い手となる人材の育成に取り組みます。

② アゼアス健康経営宣言

「アゼアス健康経営宣言」に基づき、職場内コミュニケーションの促進を通じて、風通しの良い組織運営を実現し、社員一人ひとりがワークライフ・バランスを取りながら、生き生きと充実した生活を送ることができるよう、経営トップが率先して健康増進を推進し、従業員の健康維持向上に努めます。

③ 仕事と子育ての両立と女性参画の推進

仕事と子育ての両立と女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進し、従業員全員が働きやすい環境をつくることによって、性別を超えて従業員一人ひとりが個性や能力を発揮できる職場を提供します。

(4) 人的資本・多様性に関する指標及び目標

① メーカー機能強化と人材投資(中核会社である提出会社の指標・目標)

・指名研修における対象者受講率(研修参加者/指名研修対象者数):100.0%

・通信教育・eラーニング受講率(期中受講者/期末従業員数):50.0%

(ご参考)前年度実績

・指名研修における対象者受講率:100.0%(育児休業者等を除く)

・通信教育・eラーニング受講率:16.0%

② アゼアス健康経営宣言(中核会社である提出会社の指標・目標)

・一般定期健康診断受診率:100.0%

・ストレスチェック受検率:100.0%

・再検査受診率:50.0%

・社員1人あたり平均有給休暇取得率:72.0%

(ご参考)前年度実績

・一般定期健康診断受診率:100.0%

・ストレスチェック受検率:97.3%

・再検査受診率:57.4%

・社員1人あたり平均有給休暇取得率:67.3%

③ 仕事と子育ての両立と女性参画の推進(中核会社である提出会社の指標・目標)

・男性の育児休業取得率:30.0%

・労働者に占める女性労働者の割合:継続して40.0%以上の確保

・女性正社員平均継続勤務年数:男性正社員同年数の70.0%以上

(ご参考)前年度実績

・男性の育児休業取得率:100.0%(対象者1名)

・労働者に占める女性労働者の割合:正社員 43.6%、契約社員 35.3%、パート 96.2%

・女性正社員平均継続勤務年数:男性の76.8%(男性 15.5年、女性 11.9年)

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 防護服・環境資機材事業について

当社の主力製品及び商品であるデュポン™タイベック®製化学防護服は現状国内において当社がほぼ独占的に取扱いしていますが、納入数量、価格等に関する長期納入契約は締結されておりません。主要仕入先である旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社(米国デュポン社の日本法人であるデュポン・スペシャルティ・プロダクツ株式会社及び旭化成株式会社の合弁会社)との取引関係は極めて良好でありますが、何らかの事情により商品及び製品の継続供給に支障をきたした場合や同社より取引条件の変更を求められた場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、政治経済情勢の悪化、政変、治安の悪化、テロ・戦争の発生、感染症のまん延等により、海外のサプライチェーン網が寸断されるなど、商品や原材料が十分に調達できない事態に備えるため、国内外の調達網を再構築し、不測の事態が発生した場合でも十分に製品等を供給できる体制の構築に努めてまいります。

(2) 特需による業績変動リスク

防護服・環境資機材事業につきましては、環境や安全に係る問題の発生や関心の高まりが、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。新型コロナウイルス感染症、豚熱(CSF)や鳥インフルエンザのような衛生問題、アスベスト問題等、環境や安全に関する問題などが発生した場合は、特定の事業年度だけ売上及び利益が増加し翌年度は反動が生じる可能性があります。当社は、個人防護具やその関連資材の提供とノウハウの提案をセットアップした独自のソリューションビジネスを深化させ、企業として尚一層の発展を遂げられるよう努めてまいります。

(3) 製品及び商品に対する賠償責任について

当社製品及び商品の欠陥により製造物責任訴訟を提訴された場合を想定して製造物責任保険に加入していますが、この保険は無制限に当社の賠償負担を担保するものではありません。製造物責任に係る多額の負担金の支払等により、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。

(4) 品質管理について

当社はISO9001に準拠した厳格な品質マネジメントシステムに基づく品質管理体制を構築しております。ただし、取扱い製品及び商品について予期せぬ要因により日本産業規格、厚生労働省国家検定規格に不適合となった場合、法規制の改正により当社製品及び商品が規制に適合しなくなった場合、並びに当社製品及び商品の欠陥及び故障が発生した場合は、回収費用、クレーム対応費用、補修費用等の追加コストを負担すること等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。またこれに係る業績悪化によるレピュテーションリスクの可能性もあります。

(5) ライフマテリアル事業の需要動向について

機能性建材事業については、洋風化による消費者の畳離れの影響等により、たたみ資材の需要が縮小傾向にあります。当社は、新製品“ReFace®”他、健康、安全を実現する機能製品を軸にエンドユーザーを中心とした新規顧客の開拓に取り組んでおりますが、当該取り組みが不十分だった場合、当事業の業績が減収により悪化する可能性があります。

アパレル業界においては、新型コロナウイルス感染症の影響や取引先の生産拠点の海外移転等で国内マーケットは縮小傾向にあります。当社は、安全衣料分野の市場開拓を進め、エンドユーザー向けに最終製品を販売する事業への転換を目指しておりますが、この取り組みが不十分だった場合、当事業の業績が減収により悪化する可能性があります。

(6) 資源価格や為替など市場環境の変動について

商材の一部は、石油などの天然資源が使用されているほか、生産を海外に依存していることから、ロシア・ウクライナ情勢や、各国の金利・物価の変動等を要因とした資源価格の高騰や円安の進行など市場環境の変動は、仕入価格や物流費用の上昇につながり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 中国のカントリーリスクについて

各事業とも中国に仕入先を擁しており、防護服・環境資機材事業においては防護服の外注加工委託先を擁し、機能性建材事業においても中国産畳表の仕入先は重要な位置付けにあります。中国国内の情勢に変化があった場合、各事業の仕入価格や仕入体制に影響を及ぼす可能性があります。またライフマテリアル事業においては、中国の子会社と連携して営業活動を行っており、政情不安、反日感情の高まり、経済環境の悪化、当局の都市開発政策による立退き命令、人件費の高騰及びロックダウン等の不測の事態の発生により子会社の運営に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 固定資産の評価について

当社は、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。当該会計基準では、それぞれの固定資産について回収可能性を測定し、回収可能額が帳簿価額を下回る場合はその差額を減損損失として認識することとされております。現時点で遊休資産以外の資産において具体的に減損損失を認識する事実はありませんが、今後特定の事業の業績が悪化し回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、減損会計の適用により、当社の財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(9) 災害、感染症等について

当社の製造、販売拠点が、地震、火災、テロ攻撃等の災害により物的、人的被害を受けた場合や、当社の従業員に感染症等の感染が拡大した場合は、生産の一時停止、営業活動自粛、商品及び製品の一時出荷停止などにより当社財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社はこれらのリスクに備え、事業継続計画(BCP)を策定し、緊急時の被災状況等の情報収集体制の確立、従業員の安全確保と事業継続に向け体制を整備し、リスクの低減に努めております。

(注) デュポン™、タイベック®は米国デュポン社の関連会社の商標または登録商標です。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症まん延後のペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられ、一部に弱めの動きは見られるものの、緩やかな回復を続け、企業収益は改善しており、業況感は良好な水準を維持しています。わが国経済の先行きを展望しても、賃金上昇率の高まりを背景とした雇用者所得改善による個人消費の下支え、デジタル化や人的資本経営の進展による生産性の上昇、設備投資の増加により、緩やかな成長が続くことが期待されています。一方で、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向、資源・穀物価格を中心とした輸入物価の動向、人手不足を要因とした供給の制約は大きなリスク要因となっており、世界的なインフレ率の高止まりや、経済への下押し圧力への大きな影響も懸念されています。

このような環境下、主力事業であります防護服・環境資機材事業は、業況感の改善に伴い、一般産業分野においては、需要が堅調である一方、家畜感染症を含めた感染症分野では、当連結会計年度になって需要が比較的落ち着いていることもあり、売上高は8,242,294千円(前年同期比9.2%減)、営業利益は291,830千円(前年同期比45.1%減)、経常利益は308,479千円(前年同期比45.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は187,650千円(前年同期比53.8%減)となり、減収減益となりました。

セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。

防護服・環境資機材事業におきましては、業況感の改善に伴い、一般産業分野においては、需要が堅調である一方、家畜感染症を含めた感染症分野では、当連結会計年度になって需要が比較的落ち着いているほか、足元では、安全環境設備分野や、新たな事業領域として取り組む高視認防護服や難燃防護服など、新事業における業容拡大が計画対比ではやや遅れて進捗、さらに、例年ピークを迎える年度末の需要が想定ほど伸長しなかったこともあり、売上高は4,511,314千円(前年同期比12.4%減)、セグメント利益(営業利益)は533,247千円(前年同期比33.7%減)となり、減収減益となりました。今後は、ソリューションビジネスを切り口とした営業活動の一層の推進、メーカー機能強化を展望した高機能防護服の開発への注力のほか、2024年4月には改正労働安全衛生規則等が施行されて事業所における化学物質管理体制の強化が義務付けられたことから、顧客が法令改正に対応できるよう、個人用保護具の需要にも適宜対応するとともに、的確なサポートを実施することで、中長期的な収益力の向上を目指してまいります。

ヘルスケア製品事業におきましては、主力製品であるアゼアスデザインセンター秋田で生産する日本製マスクについて、大口受注を獲得した一方で、個人消費者向けの販路では、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行と猛暑の影響を受けて、小売店が在庫の調整を進めたことから、当社においても一時的に生産量を調整したほか、資材調達の点においては、円安の進行等に伴う資材価格の高騰が主な要因となって、生産効率の向上により前期と比べて改善傾向にはあるものの、当連結会計年度も黒字化するまでには至らず、売上高は120,478千円(前年同期比34.6%減)、セグメント損失(営業損失)は45,372千円(前年同期はセグメント損失74,782千円)となり、減収で、セグメント損失の計上となりました。引続き、製造原価の低減に努めるとともに、安定した収益が期待できる一般産業、医療機関向けに日本製マスク、医療用ガウンなどメディカル製品の販売を推進することで、早期黒字化に向けた取り組みを推進していきます。

ライフマテリアル事業のうち、機能性建材事業におきましては、利益率の高い新製品「ReFace®」を中心とした営業活動へとビジネスモデルの転換が進んでおりますが、畳表など従来からの商品の販売が市況の悪化により低迷しました。一方で、アパレル資材事業は、収益の安定した作業服・ワーキング分野、学生服・スクールウェア分野の販売が概ね堅調に推移いたしました。その結果、売上高は3,173,395千円(前年同期比3.1%減)、セグメント利益(営業利益)は188,520千円(前年同期比8.7%減)となり、減収減益となりました。機能性建材、アパレル資材とも、安全、快適を実現する新たな分野の製品販売と新たな市場の開拓に注力し、引続きビジネスモデルの変革を推進してまいります。なお、機能性建材事業では、一部の商材の取扱いを停止いたしました。

報告セグメントではありませんが、中国子会社について「その他」の区分で管理しております。売上高は437,106千円(前年同期比7.9%減)、セグメント損失(営業損失)は48,002千円(前年同期はセグメント損失17,185千円)となりました。中国市場では、全国的な景況感の悪さに加え、米中関係の悪化の影響もあって、アパレル資材の市況の低迷が続いており、業績の回復は途上です。なお、当連結会計年度は再販不能の製品の売上返品31,003千円を受けたことから損失処理をしております。

なお、報告セグメントに配分していない一般管理費等の全社費用は336,473千円であります。

生産、仕入、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

 

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年5月1日

2024年4月30日

前年同期比(%)

防護服・環境資機材

559,017

99.3

ヘルスケア製品

188,745

79.6

ライフマテリアル

149,543

101.9

合計

897,307

94.8

 

(注)  金額は、製造原価によっております。

② 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年5月1日

2024年4月30日

前年同期比(%)

防護服・環境資機材

3,211,714

89.3

ヘルスケア製品

90,204

66.9

ライフマテリアル

2,573,760

93.3

その他

394,138

96.9

合計

6,269,818

90.9

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  金額は、仕入価格によっております。

③ 受注実績

受注から売上計上までの期間が短いため、記載は省略しております。

④ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年5月1日

2024年4月30日

前年同期比(%)

防護服・環境資機材

4,511,314

87.6

ヘルスケア製品

120,478

65.4

ライフマテリアル

3,173,395

96.9

その他

437,106

92.1

合計

8,242,294

90.8

 

(注)  セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(2) 財政状態の概要及び分析

① 財政状態
(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて7.5%減少し6,463,489千円となりました。これは、主として現金及び預金が263,142千円減少、売上債権が320,446千円減少し、棚卸資産が65,799千円増加したためであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて0.4%減少し2,049,257千円となりました。これは、主として減価償却や倉庫として使用していた岡山県倉敷市の土地建物売却等で有形固定資産が88,450千円減少し、構築中の新基幹システムにかかるソフトウエア仮勘定の計上等で無形固定資産が47,977千円増加、保有株式の株価上昇で投資有価証券が29,370千円増加したためであります。

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて535,924千円減少し8,512,747千円となりました。

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて26.2%減少し1,546,209千円となりました。これは、主として仕入債務が394,545千円減少、未払法人税等が60,015千円減少、未払消費税が78,049千円減少したためであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて30.6%減少し242,460千円となりました。これは、主として長期借入金が返済により111,984千円減少したためであります。

この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて655,565千円減少し1,788,669千円となりました。

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて1.8%増加し6,724,077千円となりました。これは、主として利益剰余金の増加額59,560千円と役員株式給付による自己株式の減少額17,566千円により株主資本が77,126千円増加、その他の包括利益累計額が42,514千円増加したためであります。

② セグメントごとの財政状態の分析
(防護服・環境資機材事業)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて107,049千円減少し2,802,849千円となりました。これは主に売上債権が140,967千円減少し、棚卸資産が39,556千円増加したためであります。

(ヘルスケア製品事業)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて21,365千円増加し428,484千円となりました。これは主に棚卸資産が65,773千円増加し、有形固定資産が減価償却等で25,375千円減少、売上債権が20,246千円減少したためであります。

(ライフマテリアル事業)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて241,593千円減少し1,652,981千円となりました。これは主に売上債権が106,894千円減少、現金及び預金が68,128千円減少、棚卸資産が29,040千円減少したためであります。

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて213,142千円減少し、当連結会計年度末には2,590,066千円となりました。

① 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果支出した資金は7,023千円(前連結会計年度は896,769千円の獲得)となりました。支出の主な内訳は、仕入債務の減少400,230千円、法人税等の支払い162,289千円、未払消費税等の減少83,474千円であります。収入の主な内訳は、売上債権の減少334,161千円、税金等調整前当期純利益308,833千円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は22,097千円(前連結会計年度は295,418千円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、定期預金の払戻し105,000千円、有形固定資産の売却34,652千円であり、支出の主な内訳は、定期預金の預入れ55,000千円、無形固定資産の取得35,906千円、有形固定資産の取得26,698千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は240,001千円(前連結会計年度は264,946千円の支出)となりました。支出の内訳は、配当金の支払い128,017千円、長期借入金の返済111,984千円であります。

 

② 資本の財源及び資金の流動性の分析

資金需要及び財政政策について、当社グループは、運転資金及び投資等の資金需要に対して、自己資金を充当することを基本方針とし、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、一部資金を銀行借入等により調達しております。銀行借入等については、新規投資案件が発生した時点で、調達を検討する方針であります。

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

売買取引契約

契約会社名

相手方の名称

契約品目

契約内容

契約期間

アゼアス㈱

旭・デュポン
フラッシュスパン
プロダクツ㈱

(化学防護服)
デュポン™タイベック®
ソフトウェア

売買取引基本契約

2008年1月1日
2008年12月31日
(以降自動更新)

 

(注) デュポン™、タイベック®は米国デュポン社の関連会社の商標または登録商標です。

 

6 【研究開発活動】

当社は、防護服・環境資機材事業の研究開発活動として、「危険な環境下で作業する人々を防護服で守る」ことを使命に、日々変化する作業現場のニーズに応える製品の研究に取り組んでおります。研究開発体制は、本社と信州大学繊維学部ファイバーイノベーション・インキュベーター施設内に開設した「アゼアス防護服Labo」を拠点とし、各部署から横断的に組織したプロジェクトチームで活動する体制を取っております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は5,053千円であります。

今後更なる事業の展開には、各分野のニーズに合わせた技術、素材、製品の基礎から応用までの研究開発を進めていくことが重要な課題と認識しており、信州大学と共同研究開発契約を締結し、防護服の新たな評価手法と設計アプローチについて共同研究を開始しております。