文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「そこにない未来を創る」をパーパスとして掲げ、社会課題の解決に結びつく事業活動を推進しております。
国内外に山積する社会課題の中でも、当社がとくに目を向けているのが、「日本の少子高齢化による生産年齢人口の減少」です。この生産年齢人口の減少による労働力人口不足は、ダイレクトに国力低下へとつながります。当社は、日本を拠点に事業活動を行う一企業として、この問題を今すぐに取り組むべき最重要課題として位置づけ、課題解決に貢献する活動に尽力しております。
日本人の労働人口減少が進む一方で、世界では急激に人口が増加し続けており、日本で働く海外人材も年々増え続けています。それはつまり、これからの日本企業にとって、海外人材の採用や育成、受入れ環境の整備や定着のための取り組みが大変重要な施策となることを示しています。
当社は、1975年の創業より培ってきた豊かなリソースやノウハウを活かし、マーケティング事業と海外人材事業を軸とした様々なソリューションを提供することで、持続可能な社会の創出の実現に貢献してまいります。
当社は、既存事業のさらなる成長を目指しつつ、成長市場領域である人材領域、特に海外IT・海外介護人材事業での事業開発に取り組み、新たな収益事業を創造することで、企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。そのため、現時点で当社の重視する経営指標は、「売上高」「営業利益」の2指標であります。
マーケティング事業が属するインターネット広告の市場規模について2023年におきましては、社会のデジタル化を背景に堅調に伸長し、3兆3,330億円(前年比107.8%)と過去最高を更新し、日本の総広告費全体の45.5%を占めました。また、日本の総広告費も7兆3,167億円(前年比103.0%)となり、1947年の推定開始以降、前年に続き過去最高を更新しました(出所:株式会社CARTA COMMUNICATIONS/株式会社電通/株式会社電通デジタル/株式会社セプテーニ「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」)。
WEBマーケティング事業において、この市場環境の下、主に「運用メディア当たり単価の向上」「契約顧客数の拡大」「運用メディア継続期間の長期化」の3つに注力し、事業を展開してまいります。
・運用メディア当たり単価の向上
BtoB(電機・機械等)の業種など幅広い顧客に対して、高い集客効果のあるメディアを制作することにより、運用メディア当たり単価の向上を図るとともに、運用メディアの中に成果報酬型の広告枠を設けて販売することで、1メディア当たりの価値を最大化させ、その結果として単価の向上を目指します。
・契約顧客数の拡大
集客効果のあるメディアの制作だけではなく、運用メディアを活用した成果報酬型の広告枠の販売や、WEBを利用したマーケティング戦略のコンサルティング等により、より多くの顧客に価値あるサービスを提供することを目指します。
・運用メディア継続期間の長期化
当社は、2024年6月期において245件のメディアを公開するとともに、970件のメディアを運用(平均継続期間43.4ヶ月)しております。今後、メディアが高い集客効果を維持することで運用メディア継続期間の更なる長期化を目指します。
(人材事業)
a. 海外IT人材事業
当社は、日本の生産年齢人口の減少による労働力不足を解消するために、海外の人材市場に着目しまして海外IT人材事業の展開を進めております。国内のIT人材は、2030年には最大で79万人、中位シナリオで約45万人(出所:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)も人手が不足すると見込まれるほど人手不足が慢性化しております。そこで、海外人材に対する教育を強みとして社会課題の解決を図ることを目指しております。
海外IT人材事業では、新卒採用と中途採用で異なる戦略を実施しています。新卒採用の領域に関しては、インドのIT都市ベンガルールの上位大学と提携し(Indian Institute of Technology Hyderabad、R. V. College of Engineering、B.M.S. College of Engineering等 2024年6月末時点で49校と提携)、ジャパンキャリアセンターを大学内に開設しています。インドでICT教育を受けて日本企業への就労を希望する新卒の学生と、IT人材不足に悩む日本の企業とのマッチングの機会を設けております(2024年6月末時点で人材登録者数2.1万人)。
中途採用の領域においては、2022年10月に海外IT人材のマッチングのプラットフォーム「Yaaay」をリリースし、日本も含め世界中で勤務経験のあるIT人材で日本企業への就労を希望する者を集めた豊富な登録人材データベースを活かして、即戦力となる海外IT人材と日本企業とのマッチング機会の拡大にも取り組みました。2024年6月末時点で4.3万人の人材登録数を確保しましたが、中途採用においては英語話者が多く、日本語を重視する企業側の採用目線とミスマッチが生じ、内定数は伸び悩みました。当該課題解決には時間を要することから、今後は、プラットフォームは継続するものの、事業活動は縮小した上で、好調な新卒採用の領域を拡大させるために当該事業の人材リソースを振り向けて事業発展を加速させてまいります。
b. 海外介護人材事業
生産年齢人口の減少等に伴い、2025年には介護人材が37.7万人不足することが見込まれます(出所:厚生労働省「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」)。日本の介護人材不足に対応するため、インドの政府系機関やインドネシアの人材送出機関等と提携し、特定技能人材の紹介と育成を含めた定着サポートを推進しております。語学教育を強みとして、海外介護人材の介護福祉士の国家資格取得を目指した5年間に亘る独自の語学教育プログラム「ZENKEN NIHONGO 介護」を提供していることに加えて、自社で介護施設を運営して海外介護人材活用ノウハウを蓄積し、営業活動に活用するなど独自の戦略を取っており、事業拡大を目指しています。
c. その他
その他、美容業界に特化した求人を紹介する「美プロ」などのメディアの運営や、新規事業として海外介護人材事業に取り組んでおります。
(教育事業)
2023年度の語学ビジネス市場規模は事業者売上高ベースで7,841億円と推計されました。2023年度はコロナ禍の行動制限がさらに緩和されたことで、多くの市場が回復し始めております(出所:株式会社矢野経済研究所「語学ビジネス市場に関する調査を実施(2024)」)。
主力である、法人向け語学研修事業においては、これまでに1,700社以上の企業や公的機関などに向けてクラス型、eラーニング、オンラインなどさまざまな形態でサービスを提供してきた実績があり、利用者も増加しております。2023年6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」において、「リ・スキリングによる能力向上支援」が重点施策の一つとして盛り込まれました。グローバル化が進展する中で、今後は、個人のキャリア形成における語学の習得・学びなおしの重要性が更に高まることが見込まれるとともに、企業側のグローバル人材育成に向けた投資も加速されることが見込まれます。
留学斡旋事業においては、世界の留学生数は2020年に約560万人と、2000年に比べて約3.5倍増加しておりますが、欧米先進諸国が占める割合が拡大する一方、日本は2000年の約4%から変わっていない状況です。この状況を踏まえ、政府は第6回教育未来創造会議にて、第2次提言「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ」(略称「J-MIRAI」)を取りまとめ、公表しました。提言では、2033年までに日本人の海外留学生を50万人(コロナ前22.2万人)に増やすなどの施策が盛り込まれており、今後日本人の海外留学が活発化することが見込まれます。
日本語教育事業においては、運営する日本語学校において、SNS活用した宣伝を強化しており、2023年4月以降、学生が増加傾向にあります。
当社グループの不動産セグメントにおきましては、西新宿エリアに所在する自社ビル「全研プラザ」「Zenken Plaza Ⅱ」の賃貸を中心に行っており、安定的な収益獲得に貢献しております。
当社グループにおける経営戦略を実現するための対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
当社グループが、事業を拡大、経営の強化を実現していく上で、必要な人材の継続的な確保と育成は最重要課題の一つです。多様なバックグラウンドを活かして、様々な挑戦を続け、自ら主体性をもって決断し、あらゆる課題解決の立役者になれる人材を採用・育成するとともに、多様な人材がそれぞれの特性や能力を最大限に活かせるような社内環境の整備にも取り組んでまいります。人材戦略については、「第2 事業の状況、2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
少子高齢化の進行により、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれております(出所:内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」)。生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小など様々な社会的・経済的課題の深刻化が懸念されており、当社グループは、日本の生産年齢人口の減少による労働力不足を解消することを目指し、介護の分野で新規事業としての海外人材事業を展開しております。
海外介護人材事業では、主にインド・インドネシアの介護分野における特定技能人材を現地の政府系機関や人材送出機関と提携し、紹介を進めています。人材紹介のみならず、日本語教育力を強みとして、介護福祉士の資格取得を目指した5年間に亘る独自の語学教育プログラムも提供し、長く日本で働くことが出来る人材の育成にも努めています。子会社の全研ケア株式会社にて、実際に海外介護人材を受入れ、人材の受入れと定着のロールモデルとすることで、他の介護施設の受入不安を解消し、取引拡大に繋げております。
2024年7月には、株式会社第一興商との間で、インドを中心とした外国人の介護レクリエーション人材の育成に向けた業務提携を締結するなど、今後の事業発展に向けて新たな進展もありました。
今後も上記事業のみならず、継続して新規事業の開拓が必要と考えております。そのためには社内リソースの活用だけではなく、外部リソースを活用することも重要と考えており、事業提携やM&A等のあらゆる可能性を検討してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<サステナビリティに関する考え方>
Zenkenは、「そこにない未来を創る」をパーパスとして掲げ、外部環境の変化の激しさが増す中で、持続的価値創造による成長及び中長期的な企業価値の向上を目指して様々な事業に取り組んでおります。
社会の持続的な発展に貢献できるよう、事業を通じて社会課題の解決に貢献することが当社グループのサステナビリティと捉え、以下の取組みを進めております。
<サステナビリティに関する主な取り組み>
・事業活動を通じた社会課題の解決
少子高齢化による生産年齢人口の減少という社会課題を解決するために、当社グループはこれまで培ってきた「マーケティング」と「海外人材」の強みを活かして、グローバル・インバウンド(日本国内における国際化)に向けた事業を展開しております。
・人材の多様性の尊重と働きがいの向上
社会課題の解決を目指す上で、その原動力となるものは「人」であるとの考えのもと、多様な人材を受入れ、尊重し合い、一人ひとりの成長を促すことが可能となる人材戦略の実行や社内環境の整備に取り組んでおります。
・健全かつ透明性の高い経営の実現
社会課題の解決と企業価値の向上を両立させるために、経営の健全性及び透明性の確保に取り組んでおります。
当社グループは、取締役会において、上記のサステナビリティの観点を含めた戦略決定、重要な業務執行の決定等を行うとともに、取締役の業務執行を監督しております。また、取締役会に加えて、株主総会、監査役会及び会計監査人を設置しております。これら各機関の相互連携によって、経営の健全性・透明性の確保に努めております。コーポレート・ガバナンスの状況については、「
<人材の採用・育成及び社内環境整備に関する方針>
社会課題の解決を目指す上で、原動力となるのは「人」であるとの考えのもと、「クライアントファーストであれ」を掲げて、人材の採用・育成を含めた人材戦略の実行と社内環境の整備に取り組んでおります。当社グループの提供するサービスは画一的なものではなく、時代の潮流を読み解き、クライアントや社会に向き合うことで課題やニーズを的確に捉え、当社グループの培ってきた知見を活用しながら新たな価値を提供することが求められます。そのため、多様なバックグラウンドを活かして、様々な挑戦を続け、自ら主体性をもって決断し、あらゆる課題解決の立役者になれる人材を採用・育成するとともに、多様な人材がそれぞれの特性や能力を最大限に活かせるような社内環境の整備にも取り組んでまいります。
当社グループでは、国籍、人種、性別、年齢等の属性面に加え、キャリア、考え方、価値観、ライフスタイル等も含んだ多様な従業員が共存しております。従って、従業員一人ひとりの持つ個性を多様性として活かし、全ての従業員が受け入れられ、尊重し合いながら、それぞれの特性や能力を最大限に活かすことが、新たな発想や価値の創造に繋がると考えており、継続してダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを推進しております。
2024年6月期は、子育てをする従業員の就業環境改善として、希望者への「こども家庭庁ベビーシッター券」配布などの新制度導入や、フルリモート制度の導入決定や短時間勤務制度の対象を「小学生の子を養育する社員」へ拡大するなど既存制度の拡充、「パパママ(プレママ)座談会」開催といったコミュニケーション機会創出に取組み、安心して働ける職場づくりの強化につなげております。
当社グループが掲げる「そこにない未来を創る」というパーパスには、「“新しい価値”を創ることができるのは“人”であり、人と人との出会いによって生み出されるクリエイティブに他ならない」という想いが込められております。
この想いを実現すべく、新しい価値やクリエイティビティを生み出すことを大きな課題と捉え、取組みを進めております。
次世代経営幹部候補者に対する将来を見据えた戦略思考の深化と行動変革に繋げるための「Junior Board(疑似役員)制度」は2期目が終了いたしました。各事業部から選抜された従業員が、経営幹部との対話やリーダーシップ等をテーマにした集中討議等を通じて全社的な経営課題に向き合い、あるべき姿に向けて具体的な戦略を立てて実践しております。象徴的な取組みは「トスアップ」と称して各事業部のクライアントの課題状況に応じ、他事業部の提供サービスを紹介する企画です。主力事業部の模擬商談研修に全従業員が参加するなど、多くの従業員が改めて他事業部のサービスの理解を深めた上で担当するクライアントに紹介や提案を行い、新しい商談の場を創出できた事例を多く作ることができました。このような取り組みは事業部間シナジーの大きな強化につながっております。
また、事業部ごとに行われているOJT中心の従業員教育をより効果的・効率的なものにするために、全従業員を対象とした研修体系の構築を開始してまいります。階層ごとに備えておくべき知識や思考法、リーダーシップを獲得することを主眼に研修設計を行い、異なる所属事業部の受講者による協働学習スタイルを取り入れることで様々な立場から意見を出し合い刺激し合う場を作り、新しい発想による可能性を創出できる環境構築を目指してまいります。2024年7月より取組みを開始し、2027年6月期までには全階層に対する定期研修を運営する予定です。
同時に、従業員が当社グループで働くことを通じて得る成長実感を促進させるだけでなく、自律的にキャリアを構築できるような人事制度改善に取り組んでまいります。
加えて、このような人材開発施策を効果的・効率的に推進するため、人事業務DX化を図ります。タレントマネジメントシステムを導入し、従業員一人ひとりのスキル・経験・キャリア志向などを可視化することで、個々に合わせた能力開発プログラムの作成や適材適所の配置を実現してまいります。2024年より従業員人事部面談による全従業員の定性情報収集から開始し、定期面談内容・人事評価・スキル習得情報の蓄積を経て、2027年6月期には従業員情報の詳細分析と戦略的配置に活用することを目指します。
従業員一人ひとりとその家族が心身共に健康であり、従業員が働きやすさと働きがいを持てる健全な社内環境づくりは、当社グループの重要な責務であると考えています。
当社では働き方改革の一環として、2024年7月より「時差出勤制度」を導入し、事前の勤務予定承認をもって最大3時間の時差出勤を可能とします。従業員のワークライフバランスを尊重しながら多様な働き方を取り入れてまいります。
従業員の健康については保険組合・産業医と連携して従業員の健康管理を継続しております。昨年に引き続き経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。2024年6月期もアンケートによる禁煙啓蒙やピンクリボン運動(乳がん予防啓蒙)、昼食時のちょい足し運動(青汁配布)など、毎月1回のアンケートやイベントを通して健康に関する啓蒙活動を行ってまいりました。
当社グループでは、サステナビリティ課題を含む事業等のリスク管理及びコンプライアンス体制の強化・推進のため、半年に1回、定期のリスク・コンプライアンス委員会を開催しリスクの調査、網羅的認識、対応策の検討等を行っております。特定したリスクについては、取締役会に報告し、対応策等について協議しております。当社グループの事業は働く社員に依拠する部分が大きいことから、「優秀な人材の採用と育成に係るリスク」を特に重要なリスクとして認識しており、上記の戦略を実行していくことで当該リスクを逓減することを目指します。リスク管理及び主なリスクについては、「
上記の人材戦略の浸透度を定量的に効果測定できるよう、以下のKPIを設定しました。外部環境や人材戦略の浸透状況に応じて柔軟な見直しができるよう動的KPIとし、状況に応じて具体的施策の見直しを行いながら達成状況をモニタリングしてまいります。
(注)上記はいずれも単体実績・目標です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している特に重要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、当社グループはリスク管理を実施することで、以下のリスクに対してその発生可能性を一定程度低い水準まで抑えられていると考えております。また、これらのリスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える定量的な影響の程度につきましては、合理的に予見することが困難であるため具体的には記載しておりません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
(特に重要なリスク)
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の位置づけが「5類感染症」に移行されて以後、経済活動の正常化が進んでおりますが、原材料の価格高騰や円安傾向も続いております。そのようななか、景気は、このところ足踏みもみられますが、緩やかに回復しております。先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されておりますが、令和6年能登半島地震の経済に与える影響に十分留意する必要があります。また、欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。その他、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響にも十分注意する必要があり、世界経済や国内景気、企業収益への影響は、依然として先行きの見通しが不透明な状況が続いております。
当社グループでは、グローバル・インバウンド(日本国内における国際化)に向けて、「IT(コンテンツマーケティング事業、メディア事業)」「語学(法人向け語学研修事業、留学斡旋事業、日本語教育事業)」を中心に事業展開を推進して参りました。
これらの事業を推進するなかで、我が国においては、よりいっそう生産年齢人口の減少が進み、労働力の減少が深刻な社会課題となってまいりました。このような、事業環境の変化を踏まえて、当社グループの事業展開、経営資源配分等の意思決定プロセスを見直し、当連結会計年度より注力分野を「マーケティング」と「海外人材」と定めて事業を推進していくことといたしました。
「マーケティング」では、WEBマーケティング事業として、主にWEBを用いて営業面の労働力の減少を補うべく、従来のコンテンツマーケティング事業とメディア事業の連携を強化して事業を推進してまいります。また、「海外人材」では、海外人材事業として、主に海外のIT人材、介護人材を国内企業へ紹介し定着を支援(語学教育等)することにより労働力の減少を補うべく事業を推進してまいります。具体的には、従来の海外IT人材事業と海外介護人材事業、語学(法人向け語学研修事業、留学斡旋事業、日本語教育事業)の連携を強化して事業を推進してまいります。
この結果、当連結会計年度の売上高は5,627,103千円と前期と比べ1,431,208千円(20.3%)の減収、営業利益は349,699千円と前期と比べ506,978千円(59.2%)の減益、経常利益は390,835千円と前期と比べ493,850千円(55.8%)の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は243,537千円と前期と比べ183,453千円(43.0%)の減益となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、セグメントを従来の「IT」「語学」「不動産」の3セグメントから、「マーケティング」「海外人材」「不動産」の3セグメントに変更しております。このため、前連結会計年度との比較・分析については、セグメント変更後の数値に組み替えて比較を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
当セグメントでは、主に「WEBマーケティング事業」として、WEB検索市場におけるマーケティング戦略を通じ、クライアントに対する集客支援を中心に行っております。
当連結会計年度においては、主に専門メディアの少ないニッチな市場(例えば、電機・機械等のBtoBの業種)のメディアを中心に245件の公開を行いましたが前期と比べ35件の減少となりました。また、運用メディア数につきましては、メディアの公開数が伸び悩んだことや、一定程度、解約も生じていることもあり、970件と前期と比べ181件の減少となりました(平均継続期間43.4カ月)。BtoB(電機・機械等)の業種については、既存のメディアと比較して規模が大きくなるケースが多く、まだ専門メディアのない業種も多いため、引き続き市場開拓を進めておりましたが、公開メディア件数が、前期を下回る水準となっております。また、運用メディアの件数に関しては新規公開を上回る既存の運用メディアの解約の影響により、前期を下回る水準となっております。一方で、前期と比べ、人員の増強に伴う人件費が62,769千円等と増加しつつも外注費の削減等、費用の見直しを進めております。
その結果、売上高は3,815,777千円と前期と比べ334,143千円(8.1%)の減収、セグメント利益は906,843千円と前期と比べ223,039千円(19.7%)の減益となりました。
当セグメントでは、主にIT・介護の海外人材の紹介や美容業界に特化した求人を紹介する「美プロ」などのメディアの運営等を行う人材事業や、法人向け語学研修や、留学斡旋、日本語教育等を行う教育事業を行っております。
(人材事業)
人材事業における当連結会計年度の売上高は、545,844千円と前期と比べ36,155千円(7.1%)の増収となりました。
ITの海外人材事業に関しては、主に新卒のIT人材の紹介と中途採用の人材紹介を行っています。前者の新卒のIT人材紹介では、インドのIT都市ベンガルールの上位大学と提携し(Indian Institute of Technology Hyderabad、R. V. College of Engineering、B.M.S. College of Engineering等)、日本企業への就労を希望する学生と、IT人材不足に悩む日本の企業とのマッチングを進めております。当連結会計年度においては、77名(前期比32名増)の日本企業への入社が実現しております。また、後者の中途採用の人材紹介では、2022年10月に試して採用できる新しい採用プラットフォーム「Yaaay」をリリースし、世界中に存在する日本企業への就労を希望する海外IT人材を集めた豊富な登録人材データベースを活かして、即戦力となる海外IT人材と日本企業とのマッチング機会の拡大にも取り組んでおります。当連結会計年度においては、データベースへの登録者数は4万人を超え、日本企業の求人掲載も進み始めております。その結果、売上高は前期と比べ48,113千円増収となりました。介護の海外人材事業に関しては、2023年3月にインド国家技能開発公社(National Skill Development Corporation、以下NSDC)の100%子会社であるNSDC International Limited(以下NSDCI)と覚書を締結したこと等もあり、34名の人材の内定承諾を得ております。
(教育事業)
教育事業における当連結会計年度の売上高は、798,657千円と前期と比べ64,423千円(7.5%)の減収となりました。
法人向け語学研修事業等においては、第1四半期より引き続き、受注の伸び悩み等もあり売上高が前期と比べ77,677千円減収となりました。
その結果、売上高は1,344,501千円と前期と比べ28,268千円(2.1%)の減収、セグメント損失は111,725千円(前期のセグメント損失は122,578千円)となりました。
当社グループの不動産セグメントにおきましては、「全研プラザ」「Zenken Plaza Ⅱ」の賃貸を中心に行っております。
その結果、不動産セグメントの売上高は465,624千円と前期と比べ8,189千円(1.7%)の減収、セグメント利益は319,512千円と前期と比べ13,580千円(4.1%)の減益となりました。
また、財政状態については次のとおりであります。
(資産)
流動資産の残高は4,806,400千円(前連結会計年度末比31,489千円の増加)となりました。これは主に、営業活動の結果や短期貸付金等により現金及び預金が336,362千円減少したものの、流動資産のその他に含まれる短期貸付金等により315,840千円増加したこと等によるものです。
固定資産の残高は9,481,582千円(前連結会計年度末比114,217千円の減少)となりました。これは主に、本社移転に向けて敷金が25,378千円増加したものの、投資その他の資産のその他に含まれる長期貸付金が減少したこと等によるものです。
以上の結果、当連結会計年度末の資産合計は、14,287,982千円(前連結会計年度末比82,727千円の減少)となりました。
(負債)
流動負債の残高は1,282,267千円(前連結会計年度末比183,118千円の増加)となりました。これは主に、未払法人税等が112,367千円増加したこと等によるものであります。
固定負債の残高は772,461千円(前連結会計年度末比144,343千円の減少)となりました。これは主に、約定弁済により長期借入金が148,488千円減少したことによるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末の負債合計は、2,054,728千円(前連結会計年度末比38,774千円の増加)となりました。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は、12,233,254千円(前連結会計年度末比121,502千円の減少)となりました。これは主として、剰余金の配当244,544千円、自己株式の取得95,980千円による減少や、親会社株主に帰属する当期純利益243,537千円を計上したことによるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、3,605,115千円と前期と比べ336,362千円(8.5%)の減少となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、682,965千円の資金の獲得(前期は539,115千円の支出)となりました。これは主な要因として、税金等調整前当期純利益が357,609千円と前期と比べ334,074千円(48.3%)減少したものの、法人税等の還付額117,148千円(前期は法人税等の支払額1,169,944千円)等によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、522,366千円の資金の支出(前期は1,099,569千円の支出)となりました。これは主な要因として、前期は株式会社スタイル・エッジ(当時の社名:株式会社スタイル・エッジ・グループ)との資本業務提携に伴う投資有価証券の取得による支出960,000千円等がありましたが、当連結会計年度は、本社移転を2024年12月1日に予定しており、それに伴う敷金の差入に伴う支出184,665千円や貸付による支出500,000千円、貸付金の回収による収入227,888千円等によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、496,961千円の資金の支出(前期は491,370千円の支出)となりました。これは主な要因として、配当金の支払額が244,576千円と前期と比べ7,567千円(3.2%)増加したこと等によるものであります。
a. 生産実績
提供するサービスの性質上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
提供するサービスの性質上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
3.当連結会計年度において、その他セグメントにおいて販売高に著しい変動がありました。これは主に、前連結会計年度に売却したAI事業の862,259千円及び採用事業の198,347千円の販売高が減少したことによります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積を必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
(売上高・売上原価・売上総利益)
当連結会計年度の売上高は5,627,103千円(前期比20.3%減)となり、前連結会計年度に比べて1,431,208千円減少しました。主な減少要因は、前連結会計年度に連結子会社であった株式会社サイシードを売却した影響により売上高が1,062,006千円減少したことや、マーケティングセグメントで売上高が334,143千円減少したこと等によるものです。セグメント別の売上高については、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。
売上原価は、2,678,914千円(前期比21.4%減)となりました。
以上の結果、売上総利益は2,948,189千円(前期比19.2%減)となりました。
(販売費及び一般管理費・営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、2,598,489千円(前期比6.9%減)となり、前連結会計年度に比べて193,849千円減少しました。主な減少要因は、連結子会社であった株式会社サイシードを売却した影響によるものですが、一方で、人件費が78,653千円増加等しております。
以上の結果、営業利益は349,699千円(前期比59.2%減)となりました。セグメント別の利益については、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。
(営業外収益・営業外費用・経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は、54,015千円(前期比67.4%増)となり、前連結会計年度に比べて21,739千円増加しました。主な増加要因は、受取利息及び配当金等の増加によるものです。
営業外費用は、12,879千円(前期比201.8%増)となり、前連結会計年度に比べて8,612千円増加しました。主な増加要因は、為替差損の増加等によるものです。
以上の結果、経常利益は390,835千円(前期比55.8%減)となりました。
(特別利益・特別損失・親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益は、49,006千円(前連結会計年度は2,343千円)となりました。これは、投資有価証券を売却したことによるものです。
特別損失は、82,232千円(前期比57.9%減)となり、前連結会計年度に比べて113,113千円減少しました。主な減少要因は、前連結会計年度は株式会社サイシードの全株式をハヤテインベストメント株式会社に譲渡したことにより、関係会社株式売却損193,659千円等が生じておりましたが、当連結会計年度は、投資有価証券評価損81,876千円が生じたことによるものです。
また、法人税等として114,071千円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は243,537千円(前期比43.0%減)となりました。
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。また、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
当社グループの運転資金需要の主なものは、人件費、業務委託費等であります。資金の流動性を安定的に確保することを目的とし、資金需要の額や使途に合わせて自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達することを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段の方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。
該当事項はありません。
当社グループの当連結会計年度における研究開発活動ではマーケティングセグメントと海外人材セグメントにおいて研究開発に取り組みました。
当連結会計年度の研究開発費の総額は