第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、㈱テレビ東京による地上波放送事業を中核として、BS放送(㈱BSテレビ東京)、CS放送(㈱エー・ティー・エックス)、そしてインターネットによる配信事業を総合的に運用してコンテンツの制作とメディアビジネス展開の戦略機能を担う認定放送持株会社です。

2024年4月のテレビ東京開局60周年を契機に、グループは新しい企業理念「心を温かく、時に熱く。一人ひとりに深く届け、 ちょっといい明日へ。」(パーパス=存在理由)、「『あたりまえ』に挑み、 まだ見ぬ『おもしろい』を共に創る。」(ミッション=果たすべき使命)などを制定しました。

そして2025年度に、これらのパーパス・ミッションに基づき2035年にテレビ東京グループが目指すべき姿として、「テレ東VISION2035」を策定しました。

 

「テレ東VISION2035」

まだ見ぬ「おもしろい」を世界に発信し

一人ひとりの「ちょっといい明日」に寄り添う

2035年、グローバルIPメディア「テレ東」として第4の創業ヘ

 

 1.「まだ見ぬおもしろい」コンテンツやサービスを創り、挑戦し続ける

 「まだ見ぬおもしろい」とは…

 ・他がやらないことをやる、見る人ひとりひとりの心に深く刺さる

 ・AIをはじめ最先端のテクノロジーで時代の先を行く

 

 2.乳幼児からシニアまで、ユーザー本位で貢献する 

  「ちょっといい明日」のために…

 ・正確で客観的な報道・情報で、信頼されるメディアであり続ける

 ・社会課題解決につながる新規事業を創出する

 ・つながるすべての人の人権を尊重する

 

 3.グローバルIPメディア「テレ東」として第4の創業を果たす

  「グローバルIPメディア」とは…

 ・既存のマス・メディアの枠を超え、コンテンツIPを起点として放送、配信などに広角展開する

 ・専門人材を採用、育成し、多様なコンテンツを国内だけでなく世界に届ける

 

これらを体現するため、報道、アニメ、バラエティ、ドラマ、音楽、スポーツ、イベントなど各分野で競争力のあるコンテンツやIPを制作・発信するとともに、社会課題解決にも貢献し、テレビ東京グループの存在感を一段と高めていきます。

グループの成長戦略としては、アニメ・経済報道・独自IP(知的財産)事業を一段と強化し、IPを国際的に展開する「グローバルIPメディア」を目指します。同時に、新規事業の開発などでフロンティアを開拓し、収益源をさらに多様化させてまいります。

 

(2) 経営環境

2024年の日本の広告費(電通調べ)は前年比4.9%増の7兆6,730億円と過去最高となりました。テレビ広告(地上波・衛星メディア関連の合計)は、1兆7,605億円と前年より1.5%増加しました。一方、ネット広告は前年比9.6%増の3兆6,517億円となりました。

 

(3) 目標とする経営指標

当社は各ステークホルダー(視聴者、社会全般、株主、取引先、社員)への責任をバランスよく果たし、企業価値の向上を通じて満足の総和を高めていくことを基本方針としております。2020年代後半にROE(自己資本利益率)8%の達成を目指すとともに、配当性向は連結ベースで30%を目途としておりますが、中長期的には安定して35%を実現することを目指します。当社は資本コストを含む様々な経営指標を適切に認識しつつ、コーポレートガバナンス・コードを着実に実行してまいります。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

地上波放送事業を中核として、BS放送、CS放送、配信事業を一体的に運用し、放送・配信に加え、アニメ・経済報道・独自IP開発を一段と強化してさらなる成長を目指します。様々なルートでコンテンツを提供し、下記の経営戦略を着実に実施することで、放送と配信との相乗効果によりコンテンツの価値を高めていきます。

 

① コンテンツ力を強化、あらゆるルートで発信

グループの収益の源泉はコンテンツです。「まだ見ぬおもしろい」コンテンツを追求すると同時に、放送・配信・商品化・イベント・海外販売など、コンテンツをマルチユースし収益源を多様化します。また、クリエイティブ体制を強化し、ゴールデン・プライム帯で新たなテレ東の顔となるヒットコンテンツを創出するほか、レギュラーコンテンツ以外にも「世界卓球」で放送・配信・セールス・プロモーションを横断的に展開するなど、スポーツコンテンツの発信力も高めます。イベントでは「行方不明展」に代表されるような新たな人気の催しを開拓するほか、市場が成長するeスポーツへの取り組みも強化します。コンテンツのラインナップ編成にあたっては視聴データを駆使し、収益の最大化を目指します。

 

② アニメを中心としたコンテンツのグローバル展開を加速

人口減少による国内市場の縮小を見据え、コンテンツのグローバル展開を加速します。テレビ東京の強みであるアニメを主軸に、実写コンテンツ(ドラマ、バラエティ)や、2024年度から配信を開始したグローバル向け広告付きストリーミングサービスのFAST事業も合わせて、海外売上比率を高めます。

アニメは北米・欧州・中国の収益を拡大すると同時に、インドや南米市場を開拓します。新たな有力作品を積極的に発掘して海外窓口を獲得するほか、商品化やゲーム化を推し進めます。アニメ以外にも、海外展開できるコンテンツの開発を進めます。バラエティは海外の放送局や配信事業者等にフォーマット販売が可能な作品を増やします。ドラマは有力な海外プラットフォームとの取引拡大や、外国人俳優を起用した作品を制作することで、海外で稼ぐ力を高めます。

 

③ AVOD(広告付き動画配信)・SVOD(定額制動画配信)を底上げ、収益多角化を推進

「孤独のグルメ」や「夫の家庭を壊すまで」に代表される独自性の強いドラマはテレビ東京の得意分野となりました。今後も個性的なドラマを作り続けるとともに、バラエティコンテンツを強化して再生数を底上げし、AVODの売り上げを増加させます。また、市場が拡大しているショートドラマの配信では、新しいヒットジャンルの開拓と有力な制作事業者との提携を推し進め、国内外で「テレ東のショートドラマ」ブランド確立を目指します。SVODは海外有力プラットフォームとの提携を強化し、海外販売を拡大します。グローバル広告付き無料動画配信サービスのFASTは世界に通用するコンテンツやIPを制作し、広告、Eコマース、サブスクリプションなどグローバルメディアビジネスの起点となるチャンネルを開発していきます。

 

④ 信頼される経済報道を貫き、次なる成長の核に

SNSの情報が影響力を拡大するなか、「信頼できる報道メディア」として強みである経済報道にさらに磨きをかけてまいります。経済動画配信サービス「テレ東BIZ」をニュース発信のハブとし、放送と配信の双方で情報を届けます。マーケット情報や企業取材を強化するとともに、「学べる」「見つかる」「つながる」コンテンツを拡充し、経済に関心が高いビジネスパーソンの視聴を取り込みます。テレビ東京「Newsモーニングサテライト」「WBS」やBSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」などのニュース番組は、日本経済新聞社との連携や独自取材を強化し、より新しくより深い情報を届けます。

 

⑤ 新規事業開拓をスピードアップ、最先端テクノロジー利用促進

新規事業の創出に向けて、200億円の成長投資枠を活用します。新規事業開発と投資・M&A、事業提携や協業など案件に応じて多角的なアプローチを取り、新たな収益の柱を構築します。社内公募で選定された事業企画は実証実験のフェーズに入り、事業化を模索しています。

2022年度から着手しているテレビ東京グループの基幹システムの全面刷新については、2024年度に経理などの業務系が稼働を始めました。2025年度には編成、営業等を支援する仕組みも本格稼働し、コンテンツ展開や業務の効率化が加速することで成長への寄与が見込まれます。仮想デジタル映像とリアル映像を組み合わせて多彩な映像表現を可能にするVP(バーチャルプロダクション)は、グループ会社や資本業務提携する㈱D・A・Gの技術を駆使し、利用を促進します。VPを利用した自社制作番組の割合は2025年3月時点で約55%となっていますが、さらに高め、スタジオ運用を合理化します。並行して映像や音声表現、コンテンツ制作の効率化などにAIを積極活用してまいります。

 

(5) 会社が対処すべき課題

① コーポレート・ガバナンス強化

コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化は社会の要請であり、テレビ東京グループにとっても重要な課題です。

当社は取締役の3分の1を独立社外取締役にしており、取締役会の諮問機関として独立社外取締役と代表取締役社長により構成する「人事諮問委員会」「報酬諮問委員会」を設置しております。両委員会とも独立社外取締役が委員の過半数を占め、独立社外取締役を委員長に選任しています。委員会は㈱テレビ東京ホールディングスの取締役の人事案や報酬の方針などについて議論し、取締役会に答申しています。

また、代表取締役社長の助言機関として、社外取締役と代表取締役などが出席する「経営懇談会」を設けております。「人事諮問委員会」「報酬諮問委員会」「経営懇談会」があわせて機能することでコーポレート・ガバナンスを強化し、経営の透明度を高めてまいります。

 

② 気候変動リスクへの対応

当社グループは、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置して、地球環境問題をはじめ、人権の尊重、従業員の健康、労働環境への配慮や公正・適切な処遇を実現するための啓蒙活動などサステナビリティを巡るあらゆる課題に対してグループ全体で取り組んでいます。気候変動への対応については、消費電力の削減や再生可能エネルギーの導入、自社のCO排出を相殺できる「J-クレジット」等の活用を組み合わせて2023年度からグループ全体のCO排出量の実質ゼロを継続しています(対象はScope1とScope2)。

また、当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」へ賛同し、TCFDが提言するフレームワークを活用して定期的に情報開示をしています。複数の将来シナリオを用いて気候変動が事業に与えるリスクと機会を評価し、気温上昇に伴う事業活動への恒常的な悪化と、緊急的かつ頻発の恐れのある自然災害の影響を分析してBCP(事業継続計画)体制をグループ全体で構築しています。

世界的な課題となっている気候変動リスクへの対応はメディアグループとしても、企業としても重要な課題の1つと認識しています。当社グループではSDGs(持続可能な開発目標)に本格的に取り組むため、国連が報道機関に協力を呼び掛ける「SDGメディア・コンパクト」に署名・加盟しております。報道機関だからこそ出来る取り組みとして、放送や配信、イベントなどを通じてSDGsを伝えてサステナビリティの浸透に取り組んでいます。

 

③ 人材の多様性に向けた取り組み

 テレビ東京グループは、「挑戦・成長を続ける社員が安心して長く活躍できる会社」の実現を人事戦略に掲げ、人材の多様性と専門性を両立する組織づくりを進めております。

 中核会社である㈱テレビ東京において、2023年度からいち早くパートナーシップ制度を導入しています。外国籍社員は13名在籍しており、グローバル展開やIPビジネスの拡大において中核的な役割を担っています。2024年度の採用実績は新卒25名、キャリア採用21名でキャリア採用比率は45.7%。2025年度はAI・グローバル・IPビジネス領域の即戦力人材を強化配置するため、キャリア採用数は過去最多の40名を目指します。

 働き方の面では、在宅勤務(サテライトオフィスの利用含む)、フレックスタイム、育児介護時短制度等の活用を拡充し、誰もが能力を発揮しやすい制度環境を整備しています。また、2024年度から28社の企業が参加する実験的な取り組み「相互副業プロジェクト」に参画し、他社からの受け入れ9名、自社から11名の社員が他社の募集業務に参加しました。これらの就業経験を通じて視野を拡げ、本業に活かせるスキルアップに繋げています。

 加えて、2025年度からシニア再雇用制度を改定し、報酬水準の見直しや成果評価の導入を行うことで、今後増加するシニアが意欲的に活躍できる環境を整備。若手からベテランまで、多様な層が活躍する企業風土を醸成しています。

 

④ 人権尊重の取り組み

テレビ東京グループは人権尊重の重要性を改めて認識するとともに、社会から信頼される企業集団として認められるよう、「国際人権章典」や「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」といった国際規範に加え、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」「OECD多国籍企業行動指針」および政府による「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に基づき、2023年11月に「テレビ東京グループ人権方針」を定めました。テレビ東京グループはメディア企業としての責任を果たすための「テレビ東京グループ行動規範」における「行動基準」や「報道倫理ガイドライン」で、既に人権尊重の考え方を盛り込んでおりましたが、新たに人権方針を設けることで人権に対する考え方をより明確にしました。同時に人権方針の推進のため「人権委員会」を設置し、取引先を含めた人権侵害の予防や改善に取り組む「人権デューデリジェンス」を実行しております。

 

⑤ コンプライアンスを重視したコンテンツ制作

 テレビ東京グループは放送の公共的使命を自覚するとともに、法令を遵守し社会規範に基づいてコンテンツを制作することが求められています。しかしながら、テレビ東京が2023年3月28日に放送した「激録・警察密着24時!!」において不適切な内容があったとして、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会が「放送倫理違反があった」との意見を、また放送人権委員会が「放送倫理上問題がある」との見解を公表しました。当社は本件を深く反省し、放送やホームページでのお詫び、社長以下担当した役員・社員の処分、社内外制作スタッフへの研修などを実施してまいりました。また、2024年8月にはテレビ東京内に「コンテンツ審査室」を設置し、制作するコンテンツの事前チェック・審査体制を強化しました。また、放送番組の適正を図り、外部有識者の声を聞く場として「放送番組審議会」をおよそ1ヵ月に1回開催しております。こうした取り組みを通じ、テレビ東京グループはコンプライアンスを重視し、信頼されるコンテンツ制作に努めてまいります。

 

⑥ 激動する国際情勢への対応

国際通貨基金(IMF)によると世界景気の成長は続く見通しですが、一方で、米国の関税政策で不透明感が漂っています。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化は、世界経済に暗い影を落としています。米中間の緊張が高まり、中国や台湾のビジネス環境の変化を注視する必要もあります。テレビ東京グループは基本的人権を尊重しつつ、公平・公正な報道姿勢を貫くことにより、自由で豊かな社会の実現に貢献することを目指します。

 

⑦ 景気の下振れリスク

米国の関税政策、インフレ長期化、金利上昇、中国経済の減速、サプライチェーン(供給網)混乱などにより、世界経済の下押し懸念があります。国内では、物価高による消費マインドの低迷、急激な為替の変動、資源高による企業業績への圧迫などにより、景気の下振れリスクが指摘されています。経済の不透明感が増すなかでも、テレビ東京グループは着実な利益の計上に努めます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

私たちは、放送の公共的使命を自覚し、責任あるメディアとして文化の創造に貢献することを目指します。企業価値の最大化に向けて、すべてのステークホルダーと良好な関係を築いた上で、気候変動への対応にも努めながら長期安定的に発展していくことをめざします。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

<サステナビリティにおける当社の重要課題>

① 責任あるメディアとして文化の創造・地域の発展に貢献する

② 中立・公正なコンテンツを作り、豊かな生活と民主主義を守り育てる

③ 多様性に富んだ持続可能な社会を創造する

 

(1) サステナビリティに関するガバナンス、リスク管理

① ガバナンス

当社は、地球環境問題をはじめ、人権の尊重、従業員の健康、労働環境への配慮や公正・適切な処遇を実現するための啓蒙活動などサステナビリティを巡るあらゆる課題に対してグループ全体で取り組むために、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。「サステナビリティ委員会」はグループ全体のサステナビリティ全般の方針や目標・計画などを立案、実行します。取締役会は「サステナビリティ委員会」から活動状況や重要事項について報告を受け、気候関連課題への対応方針および実行計画等についても審議・監督を行います。

 

② リスク管理

当社グループのリスク管理体制は、「リスク管理・コンプライアンス委員会」が中心となり、「リスク管理規程」に基づき、気候変動リスクを含めたグループ内のリスク情報を一元的に集約し、対応が必要と認められたリスクについては適切な予防対策を講じています。特定したリスク・機会はサステナビリティ委員会を中心に議論し、重要度の高いものについては「リスク管理・コンプライアンス委員会」へ報告されるほか、リスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては、取締役会へ報告されます。

 

(2) サステナビリティに関する戦略、指標及び目標

① 気候変動対策及び生物多様性保全の取り組み

当社グループは、気候変動に関するリスクを全社的な重要リスクの一つと位置付けており、気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、複数のシナリオに基づく分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。

シナリオ分析においては、2015年締結の「パリ協定」で設定された「2℃以下」シナリオを含む複数の温度帯のシナリオを選択、設定していく必要があるため、低炭素社会への移行によって影響が顕在化する1.5℃シナリオと、気候変動に伴う物理面での影響が出る4℃シナリオの2つのシナリオを選択しました。

当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」へ賛同しており、シナリオ分析の結果については、TCFDが提言するフレームワーク(①ガバナンス ②リスク管理 ③戦略 ④指標と目標)を活用した情報開示を行っています。

当社グループは2021年度からCOを排出しない再生可能エネルギーの導入を推進しています。消費電力の削減や再生可能エネルギーの導入、自社のCO排出を相殺できる「J-クレジット」等の活用を組み合わせて、2023年度からグループ全体のCO排出量の実質ゼロを継続しています(対象はScope1とScope2)。

当社は気候変動問題への対処と同時に、生物多様性を含む自然資本に配慮し、その維持・保全に努めることが重要な課題であると認識しています。その一環として海中の藻場を再生することで大気中のCOを吸収するブルーカーボン事業への貢献を目的に、山口県岩国市沖で創出された「Jブルークレジット」を2025年6月に購入しました。自治体や企業と協力・連携しながら生物多様性の保全とCO排出量の削減に一層貢献していきます。

 

② 人権デューデリジェンス

テレビ東京グループは人権尊重の重要性を強く認識しております。「テレビ東京グループ人権方針」の考えを実現するため「人権委員会」が中心となって、取引先を含めた人権侵害の予防や改善に取り組む「人権デューデリジェンス」を実行しています。

 

・人権と行動規範等に関するアンケート調査

社内における人権デューデリジェンスの取り組みとして、2024年から外部専門家の協力を得ながら、職場で「人権方針」等に抵触する状況が生じていないかアンケート調査を実施しています。2回目となる2025年は、1月にテレビ東京ホールディングス、テレビ東京、BSテレビ東京、グループの制作会社の役員と社員1,114人を対象に、会食などにおけるハラスメント行為について期間を設けず尋ねましたが、該当する回答はありませんでした。社内外のハラスメントなど不正行為については、社内と社外に通報窓口も設けていて、社員以外からの通報にも対応しています。今後も毎年定期的にアンケート調査を実施し、人権に関するリスクや社内課題の把握に努めてまいります。

 

・会食ルールの明確化

業務上の会食時においてハラスメント等の事態が起こることがないよう、社内で参加の仕方、事前承認などのルールを定めています。透明性を確保し、未然防止を徹底していきます。

 

・人権セミナーの開催

グループで働く全ての人が人権意識を高め、活き活きと働ける職場環境を作ることを目的に、2024年1月から外部講師を招いた人権セミナーを開催しています。グループの役員・社員・スタッフが必修で、これまでに「ビジネスと人権」「ハラスメント防止」「ダイバーシティ知識テスト受験」「ダイバーシティ研修」「リスペクトトレーニング」をテーマに年5回実施しました。今後も継続的に開催していく計画です。 

 

・取引先に対するサステナビリティに関するアンケート調査

当社グループと取引先とのビジネス全体で人権等に対する負の影響を防止し、より良いサプライチェーンを構築するため、サステナビリティ全般に関するアンケート調査を2024年7月から取扱高上位70%の取引先を対象に実施しました。回答内容については調査会社による評価を行ったうえで回答社へフィードバックを行ったほか、当社グループの窓口部署と共有し、一部の取引先とサステナビリティへの取り組みについて対話を行いました。

 

・サステナビリティ推進サプライチェーンガイドラインの策定

人権デューデリジェンスの一環として、当社グループおよびすべての取引先を含むサプライチェーン全体で取り組むべきサステナビリティの重要事項を定めた「サステナビリティ推進サプライチェーンガイドライン」を2025年3月に制定しました。「テレビ東京グループ人権方針」等を踏まえ、取引先に対し人権尊重やコンプライアンス面などの遵守すべき事項を提示しています。「サステナビリティ調査」に加えて、本ガイドラインを制定することで、人権デューデリジェンスの取り組みをさらに推進します。

 

・取引先との各種契約に人権尊重条項を追加

出演者の業界団体とも協議の上、出演者の事務所や制作会社など200社以上の取引先と、各種の契約において当社グループの人権方針の遵守を中心とした人権尊重に関する条項を追加しました。これらの契約書は新規の取引先だけでなく、既に実績のある取引先との契約にも順次適用しています。

 

・「番組制作ガイドライン」の改訂

番組制作に関するルールや留意点を定めた「番組制作ガイドライン」に「グループ人権方針」の遵守を明記し、放送だけでなく、配信、イベントなどコンテンツ全般に対象を拡大しました。コンテンツ制作の現場において、取材対象者への誠意ある対応、出演者の精神的な健康状態への配慮などを徹底していきます。

 

(3)人的資本・多様性に関する戦略、指標および目標

① 人材の多様性確保、人材育成の方針

 テレビ東京グループは、2035年の長期ビジョンに向けて2025~2027年度を「人的資本強化の集中投資期間」と位置づけ、本格的に人事改革を進めていきます。キーワードは「挑戦と成長が持続できるキャリア環境の構築」。従来の制度運用にとどまらず、組織全体で戦略的に人材を育成する体制を強化し、将来的に人的資本が企業価値に結びつく仕組みを目指します。人材の価値向上への投資は㈱テレビ東京で累計35億円規模を見込み、「採用の強化」「リスキリング」「処遇制度の見直し」「健康支援」に注力。特に2025年度のキャリア採用は、㈱テレビ東京で過去最多の40名を目標としてグローバル・AI・データ・IP領域を重点強化すると共に、多様性のある専門人材が活躍できる体制を整えます。

 ㈱テレビ東京では、2024年4月に人事部の「研修チーム」を「人財開発チーム」に改称し、更なる研修制度の充実を図っています。2024年度の研修は34回実施しており、従来の各層別研修に加えてマネージメント力を養う研修、各事業分野に必要なスキルを身に付ける研修などメニューの充実を図り、社員のキャリア形成を支援しています。人権の尊重やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンなどの多様性や生成AIなどをテーマとした研修を開催し、社員の意識向上を促しています。将来的にはグループ全社でのリスキリングをより推進すべく企業内教育機関「テレ東カレッジ(仮称)」の創設を計画、IPビジネスやデータサイエンス、AIや国際的に通用するクリエイター養成など実務直結型プログラムを整備し、“攻めの学び”を本格化していきます。

 また人材の多様性を確保することも成長の重要なカギと考えています。役員、管理職などにおける女性比率を高め、海外展開をより進めるため積極的に外国籍社員を採用し、これまでにない斬新な発想を生み出し各種事業の成長・発展につなげてまいります。㈱テレビ東京では2025年度新卒採用から高等専門学校からの応募を可能とし、テック系の新卒学生の門戸を拡げました。

 なお、2025年6月19日開催の第15回定時株主総会後の当社の女性役員比率※は11.8%、㈱テレビ東京の女性役員比率は20.0%となる予定です。

※女性役員比率は社内における指導的な役割を担う者として、取締役、監査役、執行役員、フェローを対象として算出しております。

 

② 人的資本への投資

当社は、人材を「企業の価値創出の源泉」と捉え、報酬・育成・働き方のすべてを連動させた戦略的な人的資本投資を推進しています。2025年度はグループ全10社でベースアップの実施を予定しております。㈱テレビ東京では単なる賃上げに留まらず、5年ぶりに給与制度を改定します。賞与の一部を月例給与に移行し、年収に占める賞与の比率を下げ、業績に左右されにくい、より安定した賃金体制を構築します。また賞与から月例給与への移行に加え、さらに人件費を上乗せすることで、一般社員の基本給は平均8.6%アップします。20~30代の若年層の年収が上がり、初任給は11.7%アップの32万4,500円になります。賃金制度を見直すことで社員のモチベーションを高め、人材獲得、会社の成長戦略に繋げていきたいと考えています。

育成面では、AI・データ・IPなど重点領域に対応した横断型のリスキリング研修を拡充。管理職を対象としたマネジメントプログラムや、グローバルビジネス・ビジネスリテラシー教育も含め、全社的なスキル再開発を進めています。2024年からは学習費用の全額補助制度も開始し、自律的な学びと成長を後押ししています。

さらに、グループ全社の業務基幹システムの再設計も進行中で2021~2025年度には約38億円を投資してDXシステムを刷新。これにより、紙資料30万枚削減、経費精算業務3,000時間短縮など定量成果が出ており、そこで創出された時間と人材は戦略部門へ再配分される予定です。

「制度」ではなく「環境」。社員が挑戦できる舞台を整えることで、テレビ東京グループ全体の生産性と競争力を高めてまいります。

 

③ 社内環境整備の方針

㈱テレビ東京を中心に2024年4月から開始した「事業・業務棚卸しプロジェクト」では、全社的に業務の洗い出しとシステム最適化を並行して進め、組織横断で成長領域への人材再配置を可能とする業務改革を推進しています。特にグループ全社で従業員がAIを利活用することを推進しており、利便性の高い“Gemini”を導入、AIアンバサダーを配置し、月1回の研修を開催することで使用率50%(MAU)へ引き上げ、生産性の高い働き方を目指します。

さらに、会社や職務に対する社員の意識を把握するため「エンゲージメント調査」を継続的に実施しています。調査結果をもとに職場環境の改善を進めると共に、グループで働くすべての人を対象に、人権尊重とコンプライアンスの徹底をより推進しています。直近では、ハラスメント問題が起きやすいと指摘された業務上の会食に関して、ルールを整備しハラスメントの未然防止と社員が安心して活躍できる職場づくりを推進しています。

社員がやりがいを実感し持続的に活躍できるよう働く場所・時間に柔軟性を持たせた就業環境も整備しています。在宅勤務やサテライトオフィスは一時的な措置にとどまらず、フレックスタイム制などにより多様なライフスタイルに沿った働き方が可能になっています。

育児と仕事の両立支援としては、2歳半まで取得できる育児休業制度、小学校3年生まで利用できる時短制度を導入しているほか、看護休暇、不妊治療休暇なども整えています。

2023年度には「パートナーシップ制度」を導入しました。「同性パートナー」について法律上婚姻関係にある配偶者と同等に社内制度や福利厚生制度が利用できるようになりました。

 

④ 指標及び目標

テレビ東京グループの中核企業である㈱テレビ東京の女性社員比率は、2025年4月時点で31.4%、最近の新卒採用における男女比はおおむね同数となっています。女性管理職比率も年々上昇しており、2025年4月時点では21.5%、2025年度末には20%台半ばに引き上げることを目指し役職者候補の育成を支援しています。外国籍社員は13名となり、特にアニメ・国際事業・配信部門で採用を強化。2024年度の新卒・キャリア採用合計46名のうちキャリア比率は45.7%となりました。

採用については、2025-2027年度の3年間でグループ全体100名の純増を掲げ、特にグローバル、IPビジネス、AIを重点領域とする目標を設け採用を加速していきます。

また社員がいきいきと活躍するために心身の健康管理にも注力しています。㈱テレビ東京では年2回、健康診断を実施しています。労働安全衛生法では、企業に対して常時雇用する全従業員に年1回の健康診断を義務化していますが、受診率は2024年度まで3年連続で100%でした。加えて人間ドック、脳ドックの一部費用について会社の補助制度を設けています。ストレスチェックの受検率は、2024年度は79.5%で心の健康を保つために、心療医など専門家によるカウンセリングを受けられる体制も整えており、心身両面の健康維持に資する“予防型支援”を重視しています。また2023年にがん対策推進企業アクションに参加、2024年度からマンモグラフィー検査を定期健康診断に導入し社員のがん予防を支援しています。社員の健康維持は、企業の持続的成長を支える基盤と位置付けています。

今後も健康診断受診率100%を維持し、社員の心と体の健康を保つことで、社員のエンゲージメント、モチベーションアップにつなげていく方針です。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。なお、以下の事項のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅したものではありませんのでご留意ください。

 

(1) テレビ放送事業に関するリスクについて

① テレビ広告収入について

当社グループの地上波放送事業およびBS放送事業における広告収入は、総売上高の約6割を占めています。

しかし、国内における少子高齢化に伴う低成長という要因に加えて、メディアの多様化やインターネット広告の拡大、海外経済の下振れなど外部環境の変化により、テレビ広告収入は漸減傾向となっています。

当社グループは、こうした広告市場の動向を注視しながら、マーケティング機能の強化に加えて広告主ニーズへの対応や新たな営業手法の開発等により、テレビ放送による広告収入の向上を目指してまいりますが、今後の日本経済のマクロ動向や広告市況の動向によりテレビ広告収入が大幅に縮小した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② 視聴環境の変化について

通信環境の進化、スマートフォンやタブレットそしてコネクテッドテレビの普及により、定額制及び無料広告付き動画配信サービスが身近なものとなり、視聴スタイルの多様化が進むとともに、放送番組のインターネット視聴やタイムシフト視聴も加速しています。ユーザーの可処分時間の奪い合いが激化する中で、放送事業においては、リアルタイム視聴率の獲得は引き続き重要な課題です。

当社グループは、テレビ放送を軸とし、視聴者に受け入れられ、当社グループのブランドイメージ向上につながるコンテンツの創出に努めてまいりますが、今後の視聴動向に想定外の変化が生じた場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) テレビ放送事業以外に関するリスクについて

① アニメビジネスにおける海外展開について

当社グループはアニメビジネスを重要な収益の柱と位置付けており、海外への配信・商品化等でのライセンス展開も積極的に行っています。進出先の法制度やコンテンツ産業政策の変更等によるリスクがあり、計画通りにコンテンツの制作や販売等ができない場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

海外展開に当たっては、現地取引先との連絡を密にし、コンテンツ産業政策に関する現地の最新情報を収集して、可能な限り万全な契約締結等によるリスクの最小化をすすめるとともに、ビジネス展開をはかる地域が偏らないように努めてまいります。

 

② インターネット動画配信事業について

スマートフォン、タブレットといった携帯型高機能端末の普及に伴い、通信を利用した映像コンテンツへの接触頻度はますます拡大しています。

当社グループは広告付き動画配信として、2015年から「ネットもテレ東」を開始し、同年10月には民放公式のテレビポータルサービス「TVer」によるサービスにも着手しております。他の放送事業者等との共同事業として、2018年4月にサービスを開始した「Paravi(パラビ)」については、動画配信大手「U-NEXT(ユーネクスト)」との統合により、国内勢首位の有料動画配信サービスに発展しました。また、2021年4月に経済動画配信サービス「テレ東BIZ」をスタートさせました。

当社グループは今後も、映像メディアの多様化に対応したコンテンツの開発やビジネスモデルの構築に取り組んでまいりますが、これら事業は成長分野であると同時に競争環境も厳しく、事業が想定通りに進捗しない場合や動画配信事業の市場環境が大きく変動する場合には投下資本の回収が困難になり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

③ イベント事業について

当社グループは、展覧会、スポーツ・演劇・音楽のライブのほか、オンラインとリアルを組み合わせたイベント事業などに積極的に取り組んでいます。これらイベント事業については、過去の実績や他社事例を踏まえた慎重な収支計画のもと出資判断を行っていますが、不測の事態によりイベント自体が開催できなくなる場合や大幅な計画変更を余儀なくされる場合、イベントのチケット収入や関連グッズの販売収入等が、当初計画した収益を確保できないような場合には、当社グループの経営成績および財政状況に影響を与える可能性があります。

また、イベントの実施にあたっては、準備段階から事故等のないよう細心の注意を払うとともにイベント保険を付保するなどの危機管理を行っていますが、万が一、事故等が発生した場合には損害賠償責任を負う場合があり、また、社会的な信用の低下を招く可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

④ 通信販売事業について

当社グループは、放送およびインターネットを通じ様々な通信販売事業に積極的に取り組んでおります。販売する商品の選定および品質管理については細心の注意を払っており、商品に関する表示についても適正な表示に努めております。

しかしながら、当社グループが販売した商品に何らかの不具合や欠陥があった場合、返品や商品の交換、損害賠償等の責任を負う可能性があります。また、販売において不適切な表示があった場合には法令上の処分を受ける可能性があります。このような場合には、当社グループの社会的信用が低下するとともに、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 著作権等の知的財産権について

当社グループが制作するテレビ番組等の映像コンテンツは、原作者、脚本家、音楽の作詞家・作曲家、実演家、レコード製作者など(以下「著作権者等」といいます)多くの人々の知的創造の結果としてそれらの人々に生じた著作権や著作隣接権などが組み合わされた創造物になります。

当社グループは、こうした映像コンテンツを、地上波やBS、CSでの放送だけでなく、インターネットによる配信、DVDやBlu-ray Discでのパッケージ化、コンテンツから派生するキャラクターの商品化、出版化、またはイベント事業の実施などにより、国内および海外において多岐に展開しています。

しかしながら、これにはテレビ番組の制作とは別途に多くの著作権者等の許諾を得ることが必要な場合があり、その権利処理のために多くの時間と費用が必要となる可能性があります。また、結果として権利者等の理解を得られず、円滑に映像コンテンツの利用ができない場合や、意図せず著作権者等に対して不適切な対応をとった場合、収益の減少や訴訟等に伴う費用の増加などが想定され、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

このほか生成AIの普及に伴い、当社グループは「AI委員会」を設置し、AIの利活用を進めるための ガイドラインの整備や研修を実施しています。しかしながら、AIによる生成物が著作権など第三者の権利を侵害するおそれがあり、その場合は当社グループの社会的信用が低下するとともに、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3) 設備・保有財産に関するリスクについて

① 設備について

当社グループは、放送事業の基幹システムの更新、コンテンツ制作力向上のための放送設備の更新に加え、動画配信事業に伴う新たなシステム開発を行うなど、メディアの多様化に対応するための設備投資や投融資を計画的に実施してまいります。

これらのシステムの導入にあたっては初期費用、運用費用、改修費用等を慎重に精査し、事業における優先順位を勘案して「グループ設備投資委員会」による審議を踏まえて最終的に取締役会の決議により設備投資判断を行います。しかしながら、システム開発の遅延のほか、技術革新などにより投資したシステムが陳腐化することにより追加的な投資が必要となる場合や、投資計画に見合うだけの十分な利益が確保できない場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

また、近年サイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化しており、各種システムのセキュリティリスクは高まっています。当社グループではサイバーセキュリティ推進会議を設置して様々な対策を講じておりますが、これを超える新たな脅威が発覚し、対策のための費用が高額になった場合、あるいは個人情報、機密情報の漏洩リスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を与える可能性があります。

 

② 投資有価証券の時価評価について

当社グループは、取引先との関係促進を主な目的として、投資有価証券を保有しております。

新規の投資案件はリスクとリターンを勘案し投資判断を行うとともに、既に保有している投資有価証券についても、投資先との取引や協業の状況および企業業績を精査し、継続保有の是非を定期的に判断することとし、「出資委員会」においてこれらを審議のうえ、最終的に取締役会で決議しています。

しかしながら、これらの投資先の業績や市場評価を正確に予測することは困難であり、投資有価証券の時価評価額の増減に大きな変動があった場合には減損処理等の措置が必要となる可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

③ 資本提携・M&Aについて

当社グループは、将来の成長力強化に資するような企業との資本・業務提携やM&Aを積極的に進めてまいります。新規の資本出資やM&Aに関しては、当社グループの事業との親和性、シナジー効果等を十分に考慮し、投資リスクと効果を慎重に見極めたうえで「出資委員会」による審議を踏まえて最終的に取締役会により投資判断を行います。

M&Aを行うに当たっては、対象企業の財務状況や事業の成長性についてデューデリジェンスを行い、十分なリスク対策を行うよう努めていますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査では把握できない問題が生じる可能性もあります。また、事業環境の変化その他の理由により、対象者の事業展開が計画通りに進捗しない場合には、減損リスクが発生するなど、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(4) 災害に関するリスクについて

当社グループは、災害発生時において報道メディアに求められる役割を踏まえ、携わる社員・スタッフの安全を確保しつつ放送の継続が重要であると考えています。また、放送事業者は放送法により、災害が発生した場合またはそのおそれがある場合に、その予防または被害軽減のための放送を義務付けられており、大規模な災害が発生した場合は、予定されていた番組の放送を取り止め、緊急に報道特別番組を放送することがあります。

このような場合、CM放送やテレビ通販番組の休止に伴い、放送事業や通信販売事業の収入が減少する場合があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5) 法的規制等に関するリスクについて

① コンプライアンスについて

コンプライアンスの観点から当社グループが対処すべき分野は、当社グループの役職員および派遣社員・スタッフによる放送事故や不祥事、不適切な内容の放送、コンテンツの制作過程における他者の権利侵害を含むトラブルや事故、また、個人情報に関する事故や下請代金支払遅延等防止法への抵触、さらにインサイダー取引の禁止など、多岐に及んでいます。

当社グループでは、「テレビ東京グループ行動規範」をはじめとし「個人情報保護基本規程」「下請法対応マニュアル」「インサイダー取引防止に関する基本規程」等のルールを定め、定期的な研修等でその周知・徹底を行っています。また、当社の「リスク管理・コンプライアンス委員会」において当社グループ内のさまざまなコンプライアンスリスク低減のための検討をしています。さらに、コンテンツ制作時の事前チェック・審査を強化するため、2024年8月、テレビ東京に「コンテンツ審査室」を設置しました。

さらに人権侵害のリスクに対処するため、2023年11月には「テレビ東京グループ人権方針」を定め、人権に対するグループとしての考え方をより明確にしました。同時に人権方針の推進のため、テレビ東京ホールディングスに「人権委員会」を設置し、取引先を含めた人権侵害の予防や改善に取り組む「人権デューデリジェンス」を実行しております。

当社グループは、このように不祥事やトラブル、法令違反等への対策を講じていますが、万が一、コンプライアンスに抵触する事態が生じた場合には、当社グループの社会的信用が低下し、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② テレビ放送事業に関する法的規制について

当社グループの主たる事業であるテレビ放送事業は、放送法、電波法等の法令に規制されています。

このうち放送法は、放送の健全な発展を図ることを目的とし、番組編集の自由や放送番組審議機関の設置などを定めています。また電波法は、無線局に対する免許制度をはじめ、電波を利用するための基本が定められています。

当連結会計年度末において、免許の取消し等の処分を受けることを予測すべき事実はありません。しかしながら、仮に法令で定める免許要件に適合しなくなった場合には、再免許が取り消される可能性があります。このような場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

③ 認定放送持株会社に対する法的規制について

認定放送持株会社は、放送法による認定を受けることにより、複数の地上放送局とBS・CS放送局を子会社として保有することが認められており、当社は、㈱テレビ東京、㈱BSテレビ東京を子会社とする認定放送持株会社として認定を受けています。

これにより、当社は、グループとしての経営の効率化や財務基盤の強化を進めてまいりますが、今後、当社が放送法で定める認定放送持株会社の基準を満たさなくなった場合には、認定を取り消される可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

④ 外国人が取得した株式の取扱いについて

放送法により、外国人等が直接間接に占める議決権の合計が、当社の議決権の5分の1以上を占めることとなる場合は、認定放送持株会社としての認定が取り消されることになります。このため放送法では、このような状態に至る場合、当社は、外国人等が取得した当社株式について、株主名簿に記載・記録することを拒むことができ、その議決権は制限されます。ただし、株主名簿に記載・記録されない株式に対しても配当を支払います。

なお、外国人等の有する議決権の割合が100分の15に達した場合は、放送法に基づきその割合を公告しますが、当連結会計年度末において、当社は公告をすべき状況にはありません。

 

⑤ 個人情報の取り扱いについて

当社グループは、番組出演者、番組観覧者、視聴者の他、インターネット事業の会員や通信販売事業の顧客、イベント参加者などに関する個人情報を保有しています。これらの個人情報の取扱いについては、関係法令を遵守するとともに社内ルールに基づいた安全管理を徹底し、十分な注意を払っています。

しかしながら、昨今のサイバー攻撃の手口は高度化・巧妙化しており、不正アクセスや不正利用などにより情報の外部流出が発生した場合には、社会的信用が低下し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

 

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(自2024年4月1日

2025年3月31日)

売上高

148,587

155,837

7,249

4.9

営業利益

8,836

7,789

△1,047

△11.9

経常利益

9,599

8,255

△1,344

△14.0

親会社株主に帰属する当期純利益

6,736

6,034

△701

△10.4

売上高営業利益率

5.9%

5.0%

△0.9%

 

 

当連結会計年度(2024年4月〜2025年3月)の日本経済は、物価上昇の影響を受けつつも個人消費や企業業績が底堅く推移しました。一方で、海外経済の減速懸念や地政学リスクの高まりもあり、先行きは見通しにくくなっています。

こうした状況のなかで、当期においては、売上高は前年同期比4.9%増の155,837百万円、営業費用は5.9%増の148,047百万円となりました。営業利益は11.9%減の7,789百万円、経常利益は14.0%減の8,255百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は10.4%減の6,034百万円となりました。

 

財政状態の状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

 

2024年3月31日

2025年3月31日

資産合計

147,094

147,843

748

負債合計

47,825

45,943

△1,882

純資産

99,268

101,900

2,631

 

 

(資産)

流動資産は90,436百万円、前連結会計年度末に比べて1,677百万円増加しております。現金及び預金、受取手形及び売掛金がそれぞれ1,564百万円、2,000百万円増加した一方、未収還付法人税等が2,117百万円減少したことが主な要因です。

固定資産は57,407百万円、前連結会計年度末に比べて928百万円減少しております。有形固定資産が1,345百万円減少した一方で、無形固定資産のソフトウエアが825百万円増加したことによるものです。

 

(負債)

流動負債は42,362百万円、前連結会計年度末に比べて1,243百万円減少しております。支払手形及び買掛金、未払法人税等がそれぞれ519百万円、639百万円減少した一方、未払費用が791百万円増加したことによるものです。

固定負債は3,580百万円、前連結会計年度末に比べて638百万円減少しております。長期未払金が511百万円減少したことが主な要因です。

 

(純資産)

純資産は101,900百万円、前連結会計年度末に比べて2,631百万円増加しております。利益剰余金が3,872百万円増加した一方、自己株式の取得等により1,405百万円減少したことが主な要因です。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,527百万円の増加となりました。その結果、当連結会計年度末の資金残高は37,680百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

 

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(自2024年4月1日

2025年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

6,471

7,569

投資活動によるキャッシュ・フロー

△4,706

△2,015

財務活動によるキャッシュ・フロー

△3,414

△4,055

現金及び現金同等物の増減額

△1,634

1,527

現金及び現金同等物の期末残高

36,153

37,680

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は7,569百万円、前年同期比17.0%増加となりました。
 これは主に、法人税等の支払額が1,225百万円の支出増加となったものの、未払費用の増減額が1,595百万円の支出減少、売上債権の増減額が1,527百万円の収入増加となったこと等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は2,015百万円、前年同期比57.2%減少となりました。
 これは主に、投資有価証券の取得による支出、有形固定資産の取得による支出、無形固定資産の取得による支出がそれぞれ1,172百万円、926百万円、691百万円の減少となったこと等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は4,055百万円、前年同期比18.8%増加となりました。
 これは主に、自己株式の取得による支出が663百万円の増加となったこと等によるものです。

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

前連結会計年度

当連結会計年度

 

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(自2024年4月1日

2025年3月31日)

自己資本比率(%)

67.4

68.8

時価ベースの自己資本比率(%)

55.0

64.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

102.1

86.9

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

261.9

191.4

 

(注1)自己資本比率 : 自己資本 ÷ 総資産
時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額 ÷ 総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 : 有利子負債 ÷ キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業キャッシュ・フロー ÷ 利払い

(注2)各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

(注3)株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

(注4)キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

(a) 生産実績及び受注実績

当社グループの取引形態は一般的な製造業等における「生産」や「受注」といった概念が存在しないため記載しておりません。

(b) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

 地上波・BS放送事業

98,696

4.1

 地上波放送事業

78,973

3.8

 タイム(T)

44,924

4.0

 スポット(S)

28,158

7.1

  (T+S)

73,083

5.1

  番組販売

4,279

△1.6

  その他

1,611

△28.1

 BS放送事業

15,901

1.0

 その他

3,821

30.3

 アニメ・配信事業

46,923

5.4

  アニメ

23,103

10.2

  配信ビジネス

11,759

2.1

  イベント

1,536

△12.3

  その他

10,524

2.3

 ショッピング・その他事業

17,183

8.0

 売上高合計

162,804

4.9

 調整額

△6,967

 合計

155,837

4.9

 

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱電通

38,544

25.9

40,493

26.0

㈱博報堂DYメディアパートナーズ

16,613

11.2

17,367

11.1

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 

①当連結会計年度の経営成績等

当社グループは、収益力向上に向け、強みである「アニメ」「経済報道」の強化、また「独自IP(知的財産)」の開発に努めております。当連結会計年度においては、アニメやドラマ・バラエティなどのコンテンツの海外販売を積極的に行い、コンテンツの二次利用から得られるライツ事業の収益を確保できました。また、放送事業においても前年を上回りました。

この結果、売上高は前年同期比4.9%増の155,837百万円、営業費用は、パリオリンピックの開催やライツ事業の拡大に伴い制作費が増加し、5.9%増の148,047百万円、営業利益は11.9%減の7,789百万円となりました。経常利益は、受取配当金の減少も影響し14.0%減の8,255百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却益の減少により10.4%減の6,034百万円となりました。

 

当連結会計年度におけるセグメント別の業績は以下の通りです。

 

 

(地上波・BS放送事業)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

 

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(自2024年4月1日

2025年3月31日)

連結売上高

94,773

98,696

3,923

4.1

連結営業利益

3,675

4,069

394

10.7

 

 

地上波・BS放送事業はテレビ東京グループ各社が行う放送事業となっております。

①地上波放送事業(㈱テレビ東京)

放送事業収入(売上高)の合計は3.8%増の78,973百万円となりました。

このうち番組提供のスポンサーから得られるタイム収入は、系列局を通じた全国放送(ネット部門)において前年を上回りました。ミニ番組を活用した新規企画などを行うことで、PTセールスと呼ばれる単発型広告が大きく伸長した結果です。一方、首都圏放送(ローカル部門)は、時報CM企画や通販番組の売上は増加したものの、パリオリンピックによるレギュラー番組の休止が影響し前年を下回りました。特別番組(特番)部門においては、開局60周年を記念した特番や、年末年始のセールスが好調に推移し、前年を上回りました。以上の結果、タイム収入全体では4.0%増の44,924百万円となりました。

スポット収入は、『自動車・関連品』『飲料』『家電・AV機器・精密機器』などの出稿が好調となりました。東京地区の広告市場は前年同期比0.6%増となり、㈱テレビ東京もシェアの高い大型案件の出稿を獲得し売上を伸ばした結果、スポット収入は前年同期比7.1%増の28,158百万円となりました。

地方放送局などへの番組販売では、他系列の地方放送局において深夜枠が縮小したことや、パリオリンピックや大型スポーツ中継が土日に多く編成されたことで、全体としては番組購入需要が減少する傾向となりました。番組別では、「ありえへん∞世界」「家、ついて行ってイイですか?」など、販売が好調に推移した番組はあるものの、番組販売収入は1.6%減の4,279百万円となりました。

コストの面では、放送収入の増加に伴う代理店手数料の増加や、パリオリンピック開催による番組制作費の増加などにより、放送事業の費用は4.1%増の62,102百万円となりました。

以上の結果、㈱テレビ東京単体の放送事業利益は2.6%増の16,871百万円となりました。

 

②BS放送事業(㈱BSテレビ東京)

BS放送事業収入(売上高)の合計は1.0%増の15,901百万円となりました。

このうちタイム収入は、レギュラー部門において、オープンセールスや通販番組のセールスが好調に推移し、前年を上回りました。特番部門においては単発通販枠の縮小が影響し、前年を下回りましたが、レギュラー部門のプラス幅が大きく、タイム収入全体としては前年を上回る結果となりました。また、スポット収入についても、通販スポンサーを中心に効率よくセールスしたほか、単価の高い一般スポンサーの出稿を獲得したことで前年を大きく上回り、放送収入全体として前年を超えました。

営業費用は、ソフト費や制作技術費等の減少により、前年同期比0.9%減の13,366百万円となりました。

以上の結果、BS放送事業(㈱BSテレビ東京)の営業利益は12.7%増の2,535百万円となりました。

 

これらに加えて㈱テレビ東京メディアネットなど放送関連会社の売上を合計し、同一セグメント内取引を調整したセグメント売上高は4.1%増の98,696百万円、営業利益は10.7%増の4,069百万円となりました。

 

 

(アニメ・配信事業)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

 

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(自2024年4月1日

2025年3月31日)

連結売上高

44,534

46,923

2,388

5.4

連結営業利益

5,962

4,250

△1,711

△28.7

 

 

アニメ・配信事業は、㈱テレビ東京が持つコンテンツを活用し放送による広告以外に収入を上げている「ライツ事業」や、㈱テレビ東京コミュニケーションズ・㈱エー・ティー・エックスなどのグループ会社によるアニメのCS放送、音楽関連ビジネス事業を指します。海外向けの番組販売、ゲーム化による権利、インターネットを通じた課金型配信プラットフォーム、広告付き動画配信プラットフォーム向けのコンテンツ供給、イベントなどから得られる収入なども含まれます。

①ライツ事業(㈱テレビ東京)

 当連結会計年度におけるライツ事業の収入(売上高)は、6.3%増の36,398百万円となりました。

この主軸であるアニメ部門は、「BORUTO」の中国におけるSNSゲームや、「ブラッククローバー」のゲーム化権など商品化が売上を伸ばしました。また、2023年12月に公開した「劇場版SPY×FAMILY CODE:White」の国内での配給収入や、海外での番組販売が順調に推移したことに加え、「ポケットモンスター」も好調となり、アニメ部門全体の収入は10.2%増の23,103百万円と過去最高額となりました。

ドラマやドキュメンタリーなどの放送番組や放送以外の独自コンテンツを課金プラットフォームなどに販売する配信ビジネス部門は、広告付き無料動画配信(AVOD)の広告収入や「夫の家庭を壊すまで」「法廷のドラゴン」「95」などの新作ドラマの国内配信権販売、テレ東BIZを中心に売上を伸ばしました。また海外は、中国において「孤独のグルメ」シリーズや「ゲキカラドウ2」の販売が好調となりました。映画は好調だった前年の水準には届かなかったものの、配信ビジネス部門全体の収入としては2.1%増の11,759百万円となりました。

イベント部門は、前年に引き続き「STAGE:0」や「田村淳のTaMaRiBa」など放送や配信と連動したイベントを積極的に実施しました。また全国ツアーとして5都市で開催した「ぷしゅソングフェス」や、初めて開催したホラー型展示会「行方不明展」が好調となったものの、大型イベントを実施した前年には届かず、イベント収入は12.3%減の1,536百万円となりました。

ライツ事業の全体の費用は、アニメの新規作品が増えたことや制作コストの増加により、17.1%増の22,070百万円となりました。

費用が売上高以上に増加したため、ライツ事業の利益は6.9%減の14,328百万円となりました。

②その他アニメ・配信事業

音楽出版関連の㈱テレビ東京ミュージックは、北米・南米・欧州地域において「NARUTO」「BORUTO」等アニメ関連のBGMや一般楽曲等の海外印税収入が好調に推移しました。しかしながら、「SPY ×FAMILY」のテーマ曲などの国内印税収入が好調だった前年同期の水準までは届かず、㈱テレビ東京ミュージックの売上高は前年同期比2.8%減の4,256百万円となりました。

CS放送アニメ専門チャンネル「AT-X」を手掛ける㈱エー・ティー・エックスは、放送売上に関しては、 加入促進キャンペーンを通して、加入者数の大幅な落ち込みを食い止め、 増収となりました。ライツ売上に関しては、「陰の実力者になりたくて!」「東京リベンジャーズ」などが好調に推移しましたが前年には届かず減収でした。これにより、㈱エー・ティー・エックスの売上高は前年同期比0.4%増の3,334百万円となりました。

 

これらに加えて㈱テレビ東京コミュニケーションズの売上高を合計し、同一セグメント内取引を調整したセグメント売上高は5.4%増の46,923百万円、営業利益は28.7%減の4,250百万円となりました。

 

 

(ショッピング・その他事業)

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

 

(自2023年4月1日

2024年3月31日)

(自2024年4月1日

2025年3月31日)

連結売上高

15,905

17,183

1,278

8.0

連結営業利益

299

685

385

128.5

 

 

ショッピング・その他事業は㈱テレビ東京ダイレクトほか3社が手掛けるテレビ通販やEコマース、グループ全体のサポート事業を指しております。

 

㈱テレビ東京ダイレクトは、「テレビ東京ショッピング」が夏場の売れ筋商品に続き遠赤速暖ヒーターかるポカなど冬物商品が堅調に推移して増収となりました。「テレ東本舗。」は年度末、「ベイビーわるきゅーれ」や「孤独のグルメ」関連商品の売上が伸び大幅増収となりました。「虎ノ門市場」は年末商材のおせちが前年を上回りましたが定期頒布会の不振が続き減収となりました。これにより㈱テレビ東京ダイレクトの売上高は前年同期比3.4%増の11,758百万円となりました。

 

これらに加えて㈱テレビ東京システム、㈱テレビ東京ビジネスサービス、㈱リアルマックスの売上高を合計して、同一セグメント内取引を調整したセグメント売上高は8.0%増の17,183百万円、営業利益は128.5%増の685百万円となりました。

 

 

 


 


 

 

 

②資本の財源及び資金の流動性

資本の財源

当社グループの自己資本比率は68.8%であり、安定した財務体質となっております。借入金など有利子負債は総資産に対し4.4%と低い比率になっております。今後も企業価値向上のための成長投資を継続的に行うために財務体質の健全化に努めてまいります。

 

資金の源泉と配分

当社グループの短期的な資金調達の源泉は、主に営業活動によるキャッシュ・フローです。設備投資など事業への資源配分や株主還元は、営業活動によるキャッシュ・フローや営業利益との適正なバランスを考慮しつつ判断しております。多額の設備投資・出資については、効果の及ぶ期間を見積もり、当該期間の利益計画などとの検討の上、設備投資委員会・出資委員会で決定しております。

設備投資に関しては、引き続きDX関連設備への投資や本社スタジオのバーチャルプロダクション設備等先端技術への積極的な投資を実施しました。また、事業を維持するためのインフラ投資も継続的に実施し、放送クオリティの維持に努めてまいりました。

戦略的な出資についても、過去3年で国内外の配信事業者やアニメ関連企業、通販事業者等、当社の最大の経営資源であるコンテンツの有効活用を図るべく着実に行ってまいりました。今後も採算性を吟味し、財務規律を守ったうえで、成長のための投資を積極的に推進してまいります。

 

資金需要の主な内容と資金の流動性

当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、放送・配信等のためのコンテンツ制作費、コンテンツ購入費用、放送・配信のための業務委託費用、広告代理店手数料、賃借料、人件費などがあります。売上債権と棚卸資産から営業前受金と仕入債務を引いた運転資金は、今年度末で159億円です。

また、投資活動に係る資金支出は、コンテンツ制作のための設備、放送・配信のための設備、放送やマーケティングのためのIT投資などがあります。

当社グループの現金及び現金同等物の残高は、前年度末に比べ15億2千万円増の376億円となりました。売上高の2.9か月分の手元流動性となっており、短期的な資金の安全性は十分であると認識しております。

 

③重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。

当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える会計上の見積りを合理的に行わなければなりません。経営陣は見積りに影響を与える要因を把握し、把握した要因に関して適切な仮定設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

重要な会計方針及び見積りに関しましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

当社は、2010年10月1日付で、㈱テレビ東京、㈱BSジャパン(現㈱BSテレビ東京)及びテレビ東京ブロードバンド㈱(現㈱テレビ東京コミュニケーションズ)との間において、それぞれの経営状況を管理・指導するための経営管理契約を締結しております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、多様化する放送サービスへの対応と、配信による新たなサービスの提供、さらには新規事業の開拓に向けて、様々な分野での最新技術の調査と研究開発に取り組んでおります。特にコンテンツの価値向上と収益力の強化には、デジタル技術の導入と活用が不可欠です。番組コンテンツ制作や基幹システムのDX(デジタル・トランスフォーメーション)において、クラウドやIP(インターネット・プロトコル)技術の導入、さらにはAI(人工知能)やVP(バーチャルプロダクション)などの新技術の活用を積極的に推進しています。

グループの先端技術の窓口であるテック開発局テックラボを中心に、関連部署やグループ会社と密に連携し、放送・動画配信サービス、インターネットメディアに関わる最新技術の研究とその推進に努め、視聴者に良質で魅力的なコンテンツを提供する体制を強化しています。

これにより、基幹放送事業者として、地上・BSデジタル放送の安全性と信頼性の確保、価値向上をはじめ、視聴者のニーズに柔軟かつ速やかに対応するために、研究開発の成果を放送・配信事業等に積極的に反映していきます。

当連結会計年度の研究開発費の総額は183百万円であり、セグメントごとの活動は次のとおりであります。

 

(地上波・BS放送事業)

①デジタル放送関連

・放送設備(マスター設備等)へのIP技術やクラウド技術の導入及び効率的な運用手法の検討

・大規模災害に対応した放送の安定送出を目指した設備と運用の検討

②番組制作関連

・AIを活用した新たなコンテンツ制作の検証

・VPなど3次元CGバーチャル技術を活用したコンテンツ制作の実証

・モバイル通信、IOWN APN(次世代ネットワーク構想)とクラウド技術を活用した番組制作の効率化、海外

 からの映像伝送の実証

・IP回線を利用した遠隔地からのリモート操作による番組中継システムの実証

・モーションキャプチャ技術を利用したコンテンツ制作の実証

基幹システム、データマーケティング関連

・様々なデータを利活用し収益力強化を目的とした基幹システム及び業務フローの最適化に関するDXの調査研究

・プライバシーの保護に配慮した視聴データの利活用手法やシステム基盤の調査研究

・デジタルメディアの機能強化に向けた研究

・コンテンツ評価指標の研究

・AIを活用した業務効率化の調査研究・実証

 

(アニメ・配信事業)

・VRデバイスを活用した配信コンテンツ制作の調査研究

・AIを活用したアニメ制作業務の効率化の検証

 

(ショッピング・その他事業)

・テレビ東京グループが展開するインターネットメディアに関する最適化の検討