第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当事業年度における当社事業の進捗状況は以下のとおりです。

 

①  国内

[抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤) / SyB C-0501(経口剤)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]

 トレアキシン®については、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫(平成22年10月に製造販売承認を取得)に加え、平成28年12月に製造販売承認を受けた未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫並びに平成28年8月に製造販売承認を受けた慢性リンパ性白血病を適応症として、業務提携先のエーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じ、国内販売を行っています。これらの適応症拡大を受けて薬価ベースの売上は対前年比プラス60.9%と大きく伸長し、それに伴って当社からエーザイへの製品売上についても前年比62.7%増と大幅に伸びました。

本剤については、既に承認を取得した上記の3つの適応症に加え、引き続き新しい治療方法を必要としている患者さんのために、さらに製品価値の最大化を図るべく4つ目の適応症である再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の承認取得に取り組んでいます。本適応症については、既に第Ⅱ相臨床試験を終了し、医療ニーズが高いことを受け、医薬品医療機器総合機構との協議を経て、平成29年8月に適応症追加に向けた第Ⅲ相臨床試験を開始し、平成30年1月に最初の患者登録を完了しています。

以上の追加適応症の拡大に関する従来の取組みに加え、トレアキシン®の製品ライフサイクル・マネジメントをより一層強力に推進すべく、平成29年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤(注1))の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。これにより患者さんと医療従事者に大きな付加価値を提供し、特許保護を通じてトレアキシン®の製品ライフサイクルを2031年まで延長することが可能となっております。(詳細は、平成29年9月21日付開示の「ベンダムスチン液剤(RTD製剤及びRI製剤)に関するライセンス契約締結のお知らせ」に記載しております。)

さらに、経営基盤の強化のためにトレアキシン®を当社事業のより強固な土台とすべく、現在開発・販売中の注射剤に加えて経口剤の開発を推進することにより固形がんや自己免疫疾患に取り組み、さらなる事業拡大を図ってまいります。そのような取り組みの中で、平成30年1月に進行性固形がんを対象としてトレアキシン®経口剤の推奨投与量・スケジュール及び忍容性・安全性の検討を行い、がん腫を絞り込むことを目的として、第Ⅰ相臨床試験を開始しました。

 

(注1) RTD製剤及びRI製剤は、従来の凍結乾燥注射剤(FD)とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、さらに急速静注であるRI製剤(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の60分間から10分間に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、さらには医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。

 

[抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]

リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が実施している国際共同第Ⅲ相臨床試験の日本における臨床開発を当社が担当しており、国内では平成27年12月に試験が開始され、既に30症例が登録されております。本試験は、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない(HMA不応)または治療後に再発した高リスク骨髄異形成症候群(MDS)を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加して実施中です。当社は、国内で平成28年7月に最初の患者登録を完了し、現在、症例集積が順調に進行しておりますが、平成30年1月に行われた中間解析結果を踏まえ、事前に計画した統計学的な基準に基づき症例数を増加の上で本試験を継続することを決定しております。

リゴセルチブ経口剤については、平成27年12月に開始した高リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験(アザシチジン(注2)との併用試験)において、オンコノバ社からの治験薬の供給遅延により症例登録が進行しておりませんでしたが、今般治験薬の供給が再開されたことにより、同社が米国で実施している初回治療及び再発・難治性の高リスクMDSを対象とした第Ⅱ相臨床試験において追加設定された高用量の安全性を確認するために平成29年6月に国内第Ⅰ相臨床試験を新たに開始し、平成29年10月に最初の患者登録を完了しました。当社は、同試験で安全性を確認した後、速やかにアザシチジンとの併用試験を開始し、オンコノバ社が計画している初回治療の高リスクMDSを対象としたアザシチジンとの併用による国際共同第Ⅲ相臨床試験に参加することを計画しております。

 

(注2) アザシチジン(ビダーザ®:販売元 日本新薬株式会社):平成23年にMDSに対する第Ⅲ相臨床試験において、初めて生存期間の延長が認められたことから承認された低メチル化剤(注射用)で、現在、造血幹細胞移植が難しいMDS患者に対する第一選択薬として使用されています。MDSは一種の前白血病であり、その病態にはDNAの過剰なメチル化による癌抑制遺伝子の発現の低下が大きく関係していると考えられています。アザシチジンなどの低メチル化剤はDNAのメチル化を阻害する作用により癌抑制遺伝子の発現を回復させ白血病への進行を抑えると考えられています。

 

[自己疼痛管理用医薬品 SyB P-1501]

当社が、平成27年10月にザ・メディシンズ・カンパニー社(本社:米国ニュージャージー州、契約の相手先は同社完全子会社であるインクライン・セラピューティクス社)から導入したSyB P-1501については、入院期間中の短期術後急性疼痛管理を適応対象とした国内第Ⅲ相臨床試験を平成28年6月に開始し、平成28年11月に最初の患者登録を完了し、その後症例集積が進行しておりました。しかしながら、同社の本製品の事業の継続性について当社が懸念を抱く事実が生じたため、患者さんの利益を最優先する観点から、平成29年4月21日より新規症例登録を一時的に中断し、平成29年11月30日付にて同社とのライセンス契約を解除しました。

当社はザ・メディシンズ・カンパニー社によるライセンス契約の不履行に起因して生じた損害の賠償として、82百万米ドル(日本円換算で約90億円)の支払を求める仲裁を国際商業会議所の規定に基づき2017年10月11日付で申し立てております。(詳細は、平成29年11月13日付開示の「自己疼痛管理用医薬品「SyB P-1501」のライセンサーであるザ・メディシンズ・カンパニーに対する仲裁申し立てについて」及び平成29年11月30日付開示「ザ・メディシンズ・カンパニーとのライセンス契約の解約について」に記載しております。)

ライセンス契約の解約に伴い、本製品の開発は平成30年2月9日に中止しております。

 

[新規開発候補品]

当社は常に中長期的な視点に立ち、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業へと成長を図るため、新薬開発候補品のグローバルのライセンス権利取得に向け探索評価を継続して実施しており、常時、複数のライセンス案件を検討しております。

また、当社は平成28年5月に、海外事業展開の戦略的拠点として100%出資の米国子会社 SymBio Pharma USA, Inc(本社:米国カリフォルニア州メンローパーク、以下「シンバイオファーマUSA」という)を設立しました。シンバイオファーマUSAをグローバル事業の拠点として新薬候補品の全世界における権利を積極的に取得することにより、米国、日本、欧州をはじめとする主要市場において開発・商業化を目指して、グローバル・スペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。

 

②  海外

SyB L-0501については、韓国、台湾、シンガポールにおいても販売されており、当社の製品売上は、計画を上回るペースで順調に推移しました。

 

③  経営成績

以上の結果、当事業年度の売上高は、トレアキシン®の国内向けの製品販売等により、3,444,206千円となりました。製品売上が前年同期比61.1%増加したことから、売上高全体で前年同期比45.4%増加となりました。

一方、販売費及び一般管理費は、トレアキシン®、リゴセルチブの注射剤及び経口剤、SyB P-1501の臨床試験の費用が発生したことに加え、トレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の導入費用が発生したことにから、研究開発費として3,017,812千円(前年同期比81.0%増)を、その他の販売費及び一般管理費として1,960,514千円(前年同期比43.7%増)を計上したことから、合計で4,978,327千円(前年同期比64.2%増)となりました。

これらの結果、当事業年度の営業損失は3,947,061千円(前年同期は営業損失2,127,049千円)となりました。また、受取利息3,092千円、保険配当金を1,339千円を主とする営業外収益4,506千円を計上した一方、株式交付費14,477千円、為替差損10,421千円、支払手数料9,090千円を主とする営業外費用34,229千円を計上したことにより、経常損失は3,976,784千円(前年同期は経常損失2,316,806千円)、当期純損失は3,977,862千円(前年同期は当期純損失2,313,233千円)となりました。

なお、当社の事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

(2) キャッシュ・フロー

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株の発行により資金が増加したものの、税引前当期純損失の計上等により、前事業年度末に比べ2,772,266千円減少の2,947,059千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

買掛金282,522千円の増加、株式報酬費用121,205千円の計上、立替金47,705千円の減少、減価償却費29,569千円の計上、為替差損42,195千円等による営業活動資金の増加要因はあったものの、税引前当期純損失3,974,062千円の計上、未払金208,540千円の減少、たな卸資産89,789千円の増加、未収消費税63,674千円の増加等より、全体では3,816,793千円の減少(前年同期は1,960,089千円の減少)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出10,657千円、無形固定資産の取得による支出46,364千円、敷金及び保証金の差入による支出23,550千円等により、全体では77,507千円の減少(前年同期は43,836千円の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

新株予約権の行使による株式の発行による収入1,146,042千円、新株予約権の発行による収入32,560千円等により、合計で1,164,230千円の増加(前年同期は3,658,177千円の増加)となりました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当社は生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(2) 商品仕入実績

当事業年度の商品仕入実績は次のとおりであります。

 

 

当事業年度

(自  平成29年1月1日

至  平成29年12月31日)

商品仕入高(千円)

前年同期比(%)

商品仕入

2,588,681

161.1

合計

2,588,681

161.1

 

(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

2.金額は仕入価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。

 

(3) 受注実績

当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(4) 販売実績

当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

 

 

当事業年度

(自  平成29年1月1日

至  平成29年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

商品販売

3,444,206

161.1

マイルストーン収入

合計

3,444,206

145.4

 

(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

2.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自  平成28年1月1日

至  平成28年12月31日)

当事業年度

(自  平成29年1月1日

至  平成29年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エーザイ株式会社

2,264,541

95.6

3,382,484

98.2

 

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社は、以下の点を主要な経営課題と捉え、取り組んでまいります。

① パイプラインの更なる充実について

製薬ベンチャー企業として企業価値を高めるためには、開発候補品を継続的に導入し、パイプラインを充実させていく必要があります。

当社では、抗がん剤 SyB L-0501、SyB C-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702において開発を実施または計画しています。また、現在、新薬候補品の導入に関して、複数の案件を相手先企業と協議しており、パイプラインの更なる拡充に向けて、今後も新規の開発候補品の導入を積極的に進めてまいります。

 

② 既存パイプラインのライフサイクル・マネジメントの追求

企業価値を高めるためには、開発候補品の導入だけではなく、導入した新薬候補品の適応症を追加することにより、開発品目あたりの収益の最大化を図る、ライフサイクル・マネジメントを追求することが重要となります。

トレアキシン®は、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認を取得しています。再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)については、第Ⅱ相臨床試験を終了し、現在第Ⅲ相臨床試験を行っています。また、製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、イーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)より導入したトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の開発を進めてまいります。さらにこれらの注射剤の適応症に加えて経口剤の開発を推進することにより固形がんや自己免疫疾患に取り組み、さらなる事業拡大の可能性を検討すべく、進行性固形がんを対象としてトレアキシン®経口剤の推奨投与量・スケジュール及び忍容性・安全性の検討を行い、がん腫を絞り込むことを目的として第Ⅰ相臨床試験を開始しています。

リゴセルチブについては、現在、骨髄異形成症候群(MDS)を対象として注射剤と経口剤で開発を進めています。MDSは優れた治療薬が少ないため医療ニーズが極めて高い治療領域のひとつです。当社は、注射剤について、再発・難治性の高リスクMDSを目標効能としてオンコノバ社が実施している国際共同第Ⅲ相試験の日本における臨床試験を実施しています。また、経口剤については、低リスクMDSを目標効能として国内第Ⅰ相臨床試験(単剤試験)を既に終了しており、引き続き初回治療の高リスクMDSを目標効能としたアザシチジンとの併用による第Ⅰ相臨床試験を実施すべく、現在単剤により高用量の安全性を確認するための国内第Ⅰ相臨床試験を実施しています。第Ⅰ相臨床試験終了後は、国際共同臨床試験への参加を検討しています。なお、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発については、オンコノバ社の開発状況を見据えながら検討してまいります。

今後、更なる適応症追加を通じてライフサイクル・マネジメントを追求することにより、トレアキシン®及びリゴセルチブの事業価値の最大化を図ってまいります。

 

③ 更なる成長を求めてグローバル展開へ

当社はこれまで日本のみならず、中国・韓国・台湾・シンガポールの4ヶ国を戦略地域として位置付け、アジア地域への展開を進めてまいりました。

しかしながら、日本においては高齢化とともに医療費が膨張し、それに伴う国家戦略として後発医薬品80%時代が始まり新薬メーカーにとって厳しい環境が続くことが予想されます。また、アジア各国においても同様の政策が始まることも考えられます。

こうした中、当社は更なる発展のためにグローバル展開を進めてまいります。これまでのアジア展開で培った経験を活かし、新規開発候補品についてグローバルの権利を取得するべく、候補品の探索・評価及び交渉を進めてまいります。 

 

④ 人材の確保について

当社の経営資源の第一は人であると考えています。優秀な人材なくして、新薬の探索及び開発において優れた成果をあげることはできません。当社は継続的に優秀な人材の採用を行っており、上場後、特に経営組織をより強固にすべく優れた人材を採用してまいりました。また、OJTや研修等による人材育成を通じて、人材の更なる強化を図ってまいります。

 

⑤ 財務上の課題について

当社は、パイプラインの開発進展、開発候補品の増加等に伴い、研究開発費を中心とする事業活動に合わせて資金を調達する必要があります。

従って、引き続き資金調達手法の多様化を進めるとともに、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図ることで、財務基盤の更なる強化に努めてまいります。

 

4 【事業等のリスク】

当社の事業活動においてリスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しています。また、当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報提供の観点から開示しています。当社は、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行なわれる必要があると考えます。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。

 

① 医薬品の開発事業全般に関するリスク

当社は、製薬企業、バイオベンチャー企業等が創出した新薬候補品を導入し、これらを医薬品として開発する事業を主たる業務としています。医薬品の研究開発の分野は、巨大製薬企業をはじめとする多数の強力な競合が存在し、更に当社を含むいわゆる創薬ベンチャー企業が質とスピードを競い合う業界です。また、開発から製造及び販売に至る過程には多くの規制が存在し、長期間にわたり多額の資金を投入して事業活動を推進する必要があります。その将来性は不確実性を伴うものであり、当社の現在及び将来における事業についてもこのようなリスクが付随しています。

 

ア. 医薬品開発の不確実性について

一般的に、製品上市に至る医薬品開発の過程は長期かつ多額の費用を要し、開発が成功する確率は決して高くなく、開発のいずれの段階においても中止や遅延の判断をすることは稀ではありません。医薬品開発においては、様々な開発過程を段階的に進めていく必要があり、それぞれの段階において、開発続行の可否が判断されます。従って、その開発途上で中止の決定を行うことは稀なことではなく、開発が順調に進み製品化される確率は低いものとされています。また、開発に成功し、上市された後も、定期的または臨時で当該時点における医学・薬学等の学問水準に照らして、有効性及び安全性を確認するために再評価が行われ、有用性が認められないとされた場合、あるいは重篤な副作用等により健康被害が拡大する恐れがある場合(詳細は「カ.副作用に関するリスクについて」を参照)には、有用性または副作用を原因として承認が取り消されるリスクがあります。このようなリスクを低減・分散するため、当社ではパイプラインを複数保有するとともに、極力ヒトでPOC(注1)が確認された開発候補品を優先して導入するよう努めていますが、当社のような小規模な製薬ベンチャー企業にとって、ひとつの開発候補品がパイプラインから脱落することの影響は大きく、その場合当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(注1) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。

 

イ. 収益の不確実性について

当社が開発を進めている製品から収益を得るためには、当社単独あるいは第三者と共同で、これら新薬候補品の開発、規制当局からの承認、製造及び販売のすべての段階において成功を収める必要があります。しかしながら、当社は、これらの活動において、必ずしも成功しない可能性もあり、また、成功したとしても当社の事業を継続するために必要な採算性を確保できない可能性もあります。当社が現在開発を進めているパイプラインのうちSyB L-0501については平成22年10月27日に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として国内製造販売承認を取得し、抗悪性腫瘍剤トレアキシン®として同年12月に販売を開始しています。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした国内製造販売承認申請を平成27年12月に行い、慢性リンパ性白血病については平成28年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に製造販売承認を取得しております。更に、現在、再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施するとともに、トレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)については、具体的な開発計画を検討しております。リゴセルチブについては、SyB L-1101(注射剤)で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能とした国内における国際共同第Ⅲ相試験を、SyB C-1101(経口剤)で初回治療の高リスクMDSを目標効能とすることを視野に単剤による国内第Ⅰ相臨床試験をそれぞれ実施しています。当社はこれらの開発を推進し、製品上市に至ることにより収益を獲得するべく事業活動を行っています。また、開発品によっては開発・販売に関して他の製薬企業と提携契約を締結し、早期に収益化を図ることも想定しています。しかしながら、これらのパイプラインが製品として上市するまでには相当の時間を要することが予想され、また、製品として上市される、あるいは他の製薬企業と提携契約を締結できる保証はありません。なお、当社は、現時点で想定している適応疾患の選定や提携手法・マーケティング手法等について、既承認の医薬品の市場規模やマーケティング実績等をもとに十分に将来の採算性を見込めるものと判断していますが、万一この判断が誤っていた場合、あるいはこの判断の基礎となる状況に変化が発生し当社がその変化に迅速に対応できなかった場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

ウ. 遵守すべき法的規制等及び医療保険制度等の不確実性について

当社が参画する医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事に関する法律及び薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けており、当社は医薬品医療機器等法をはじめとする現行の法的規制及び医療保険制度、それらに基づく医薬品の価格設定動向等を前提として事業計画を策定しています。しかしながら、当社が開発を進めている製品が現実に製品として上市されるまでの間、これらの規制や制度・価格設定動向等が変更される可能性もあります。もしこれらに大きな変更が発生した場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

エ. 海外における開発・販売に関するリスクについて

当社は日本のみならず、経済成長とともに医療ニーズの拡大が予想されるアジアをはじめとしたグローバル地域についても戦略事業地域として位置付け、医薬品事業を展開しています。海外市場においても、医薬品の開発・販売事業の展開に際し、一般的に多額の資金と事業リスクを伴うため、当社では開発品によっては海外の開発権、販売権を他の製薬企業等に導出し、投資資金及び事業リスクの低減を図っています。当社が保有する権利の導出にあたっては、慎重にデューディリジェンスを実施した上で企業選定を行い、かつ導出後も適宜モニタリングを実施していますが、導出先の経営状況や各国の規制、競争環境等の変動により、当初期待していた通りには開発、販売が進捗せず、計画通りのマイルストーン収入、ロイヤリティ収入等が得られないことにより、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

オ. 医薬品業界の競合関係について

医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの製薬企業や研究機関等により、激しい競争が繰り広げられており、その技術革新は急速に進歩している状態にあります。これらの競合相手の中には、技術力、マーケティング力、財政状態等が当社と比較して優位にある企業が多数あり、当社開発品と競合する医薬品について、有効性の高い製品を効率よく生産・販売する可能性があります。従って、これら競合相手との開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動における競争の結果次第で、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

カ. 副作用に関するリスクについて

医薬品は、臨床試験段階から市販後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。これらのうち重篤または予期せぬ副作用が発現した場合、賠償問題の発生や、状況次第では臨床試験の遅れ、開発中止に至るリスクを伴います。更に、健康被害が拡大する恐れがある場合、承認取消・販売中止に至るリスクを伴います。賠償問題に関しては、当社は必要な損害保険に加入することにより、このような事態が発生した場合の財政的負担を最小限に留めるべく対応していますが、賠償額が当該保険により補償される範囲を超える可能性は否定できません。このような場合は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

キ. 製造物責任について

医薬品の開発及び製造には、製造物責任賠償のリスクが伴います。当社は将来、開発したいずれかの医薬品が健康被害を引き起こし、または臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事項が発見された場合には、製造物責任を負い、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるイメージ低下により、当社及び当社の医薬品に対する信頼が損なわれ、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 当社の事業遂行上のリスク

ア. 当社のビジネスモデルについて

当社は自社で研究設備・製造設備は保有せず、がん、血液、ペインマネジメント領域における希少疾病分野(注2)を中心に、主にヒトでPOCが確立された開発候補品を製薬企業、バイオベンチャー企業等より導入し、これらを日本並びにアジア諸国(中国、韓国、台湾及びシンガポール等)、更にはグローバルで医薬品として開発・販売することにより収益化を図るビジネスモデルを採用しています。また、パイプラインの開発・販売においては、製薬企業と提携することも計画しています。しかしながら、これらの条件を満たす開発候補品を継続的に導入し、また、これらの提携先企業を確保できる保証はありません。また、導入候補品(注3)については主に希少疾病分野を対象としていることから、当社が期待する売上高が確保できない可能性もあります。更に、導入元の企業における開発が遅延または失敗した場合、日本における開発に影響が出る可能性があります。このような場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。上記に加えて、医薬品業界の競争環境や、当社の財政状態等の変化に伴い、今後、当社のビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社の事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 (注2) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品
     (Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定 
     し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと 
     をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査
     期間が10年になる等の優遇措置があります。

 (注3) 導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物または
     製品を指します。

 

イ. 特定の取引先への依存度について

当社は生産設備を持たない製薬ベンチャー企業であるため、開発品の臨床試験並びに上市後の販売においては他社より製品の供給を受けることとなります。この場合、製品供給元の財政状態、生産状況などによっては、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、パイプラインの開発・販売については、将来的には自社で販売する計画はあるものの、現時点では製薬企業との提携に重点を置いた事業計画を有しています。しかしながら、相手先企業の経営環境の極端な悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、当初の計画通り事業が進捗しない可能性があります。また、契約書に定められた契約解除事項に抵触した場合等には、期間満了前に終了する可能性もあります。その場合には当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、一般に当社のような製薬ベンチャー企業の提携においては、製品上市前の収益として、「契約一時金」「開発協力金」「マイルストーン」を見込むものとなりますが、このうちマイルストーンは所定の成果達成に基づく収益であることから極めて不安定で予測の困難な収益であり、開発の進捗に遅延等が発生した場合には当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

ウ.知的財産権に関するリスクについて

当社は医薬品の開発活動において様々な知的所有権を使用していますが、これらは基本的に製薬企業、バイオベンチャー企業等より使用許諾を受けた権利です。しかしながら、当社が導入する開発候補品について、導入元企業における出願中の特許が登録に至らない可能性があります。また、当社が使用許諾を受けた知的所有権に優位する知的財産権が第三者によって生み出される可能性を完全に回避することは困難であり、こうした結果、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、当社の開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。当社は、今後も知的財産権に関する問題を未然に防止するため、開発候補品の導入にあたっては、弁護士との相談や特許事務所を通じた特許調査を適宜実施していきますが、第三者の知的所有権の侵害に基づく将来の係争を完全に回避することは困難であり、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、当社が導入する開発候補品は、必ずしも特許で保護されているとは限りません。もっとも、当社の開発候補品が特許を有していない場合であっても、当該開発候補品が規制当局より製造販売承認の際に再審査の指定を受けた場合には、再審査期間は後発医薬品の参入が実質的に制限されるため、一定期間市場独占的な保護を受けることとなります。

 

エ.情報管理について

当社パイプラインの開発並びにその他事業遂行等に関する重要な機密情報が流出するリスクを低減するために当社は、役職員、科学的諮問委員会(SAB)メンバー、外注委託先、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めています。しかしながら、役職員、SABメンバー、外注委託先、取引先等によりこれが遵守されなかった場合等には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には当社の事業や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

オ.重要な契約に関する事項

当社の事業展開上重要と考えられる契約につき、将来、期間満了、解除、その他何らかの理由により契約の終了が生じた場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 組織に関するリスク

ア.社歴が浅いことについて

当社は、平成17年3月に設立された、社歴の浅い企業です。また当社は、創業時より開発候補品の導入活動を開始し、ゼロベースから医薬品開発事業を立ち上げ、平成22年8月に、創業以来初となる製品売上による収益を計上しました。今後、未だ経験していない事業上のトラブルが発生する可能性はありますが、当社の業績に影響を及ぼすような外部環境の変化を厳密に予想することは現状においては困難です。従って、今後当社が成長を続けられるか等を予測する客観的な判断材料として過年度の経営成績だけでは、不十分な面があると考えられます。

 

イ.小規模組織であることについて

当社の研究開発活動については、業務受託企業(CRO(注4)等)を活用することにより、比較的少人数による開発体制を敷いていますが、今後の既存パイプラインの開発推進及び新規開発候補品のパイプライン化に伴い、更なる研究開発人員の増加が想定されます。しかしながら、何らかの理由により業務受託企業との関係が解消された場合や、計画通りの人員の確保ができない場合、あるいは既存人員の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(注4) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進める
    ために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおり
    に遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などが
    あります。

 

ウ.特定人物への依存度について

当社の代表取締役社長の吉田文紀は、当社創業者として、創業当時より経営全般にわたる事業の推進者として中心的な役割を担ってまいりました。従って、何らかの理由により、同氏の業務の遂行が困難となった場合には、当社の事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

エ. 科学的諮問委員会(SAB)について

当社は、新規開発候補品の導入評価に関する社長の諮問機関として、科学的諮問委員会(SAB)を組成し、優れた実績と経験を有すると判断される臨床医や基礎科学者を招聘しています。SABは毎年2~3回開催され、世界中から集まる膨大な導入候補品について、医療ニーズの高さや収益性などの観点も踏まえ、リスクバランスのとれたポートフォリオを構築するために、それぞれの専門の立場から活発に意見交換や議論を行っています。当社は、今後も優秀なSABメンバーの確保に努めてまいりますが、現在のメンバーとの間の契約が解除、期間満了、更新拒絶、その他の理由で終了するなど、何らかの理由によりメンバーの確保が困難となった場合や、メンバーの流出が生じた場合には、当社の開発候補品導入の推進に影響を及ぼす可能性があります。

 

④  経営成績の推移について

ア.過年度における業績推移について

当社の主要な経営指標等の推移は以下のとおりです。

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

平成25年12月

平成26年12月

平成27年12月

平成28年12月

平成29年12月

事業収益(千円)

1,532,054

1,955,027

1,933,241

2,368,112

3,444,206

営業損失(△)
(千円)

△1,680,528

△1,303,279

△2,551,662

△2,127,049

△3,947,061

経常損失(△)
(千円)

△1,601,424

△1,110,316

△2,630,386

△2,316,806

△3,976,784

 

当社は、現在まで、第4期を除き、研究開発費やその他一般管理費の合計が収益を上回り、営業損失、経常損失、当期純損失を計上しています。このため、過年度の財務経営指標は期間業績比較を行うための材料としては不十分であると考えられ、今後の当社業績を予測する材料としては不十分な面があります。

 

イ.研究開発費の増加予測について

当社の過去5期間の研究開発費の推移は以下のとおりです。

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

平成25年12月

平成26年12月

平成27年12月

平成28年12月

平成29年12月

研究開発費
(千円)

1,052,790

774,103

2,034,714

1,667,098

3,017,812

 

当社は、今後更に研究開発活動を推進する計画であり、当面の間、累積損失は増加するものと想定されます。今後、トレアキシン®の適応拡大による製品販売収入の拡大、リゴセルチブの注射剤及び経口剤の早期の承認取得に伴う製品販売収入の確保、並びに製薬企業等との提携に基づき発生する収入等により、経営成績の早期改善を図ってまいりますが、当社の想定どおりに早期改善が実現する保証はありません。

 

ウ.マイナスの繰越利益剰余金を計上していることについて

当社は、製薬ベンチャー企業であり、臨床段階にある開発品が上市し、製品販売収入並びにロイヤリティ収入等の安定した収益を継続して計上できる体制となるまでは、多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため、創業以来第4期を除き当期純損失を計上しており、第13期事業年度末には△18,790,705千円の繰越利益剰余金を計上しています。当社は、パイプラインの開発を計画通り、迅速、効率的かつ着実に推進することにより、早期の利益確保を目指していますが、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、当社の事業が計画通りに進展せず、当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性があります。

 

エ.資金繰りについて

当社は製薬ベンチャー企業として多額の研究開発資金を必要とします。事業計画が計画通りに進展しない等の理由から資金不足が生じた場合には、戦略提携内容の変更、新規提携契約の獲得、新株発行等の方法による資金確保に努めますが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合には、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。

 

オ.税務上の繰越欠損金について

当社には現在、税務上の繰越欠損金が存在しています。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられておらず、今後も数年間はこの状態が続くものと想定しています。しかしながら、現在の繰越欠損金の控除制度が改正されるなどの理由により、想定よりも早期に繰越欠損金が解消され、これによる課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられることとなり、現在想定している当期純利益若しくは当期純損失及びキャッシュ・フローの計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤  その他のリスク

ア.株主還元政策について

当社は創業以来配当を実施していません。当社の現時点における事業ステージは、医薬品開発の先行投資の段階にあるため、今後も当面は資金を財務体質の強化及び研究開発活動の継続的な実施に優先的に充当し、配当は行わない方針です。しかしながら、当社では株主への利益還元を経営の重要な課題と認識しており、今後の経営成績及び財政状態を勘案し、利益配当についても検討してまいります。

 

イ.資金調達について

急速な事業規模の拡大に伴い、開発資金の需要増加が予想されることから、株式発行等による資金調達を実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。

 

ウ.潜在株式の行使による当社株式価値の希薄化について

当社は、当社取締役、従業員等の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を導入しており、旧商法第280条ノ19、旧商法第280条ノ20及び旧商法第280条ノ21、並びに、会社法第236条、第238条、第239条及び第240条の規定に基づき、新株予約権を取締役、従業員に対して付与しています。

また、当社は、平成24年12月27日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債(発行価額の総額10億円)並びに第29回新株予約権(発行価額の総額5,100千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額5億円)の発行決議を行い、平成26年11月14日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第2回無担保転換社債型新株予約権付社債(発行価額の総額5億円)並びに第34回新株予約権(発行価額の総額10,363千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額10億円)の発行決議をそれぞれ行いました。更に、平成28年4月6日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第3回無担保転換社債型新株予約権付社債(発行価額の総額30億円)並びに第39回新株予約権(発行価額の総額9,776千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額943,592千円)の発行決議をそれぞれ行い、平成29年8月9日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第42回新株予約権(発行価額の総額32,560千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額1,892,000千円)の発行決議を行いました。これらのうち、平成29年12月末現在において、第39回新株予約権の目的となる株式数4,171,000株及び第42回新株予約権の目的となる株式数3,765,200株がそれぞれ残っています。

平成29年12月末現在における上記新株予約権の目的となる株式数(以下「潜在株式数」という)は合計11,686,800株となり、発行済株式数及び潜在株式数の合計の約17.8%を占めています。今後、これらの潜在株式の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。また、当社は今後も優秀な人材確保のために、同様のインセンティブプランを継続して実施する可能性があります。従って、今後付与する新株予約権の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。

 

エ.ベンチャーキャピタルによる株式保有について

一般的に、ベンチャーキャピタル及び投資事業組合による株式の所有目的は、株式上場後に株式を売却してキャピタルゲインを得ることにあるため、当社株主であるこれらのベンチャーキャピタル及び投資事業組合が、所有する株式の全部または一部を売却した場合には、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

 

オ.外国為替損失の発生に関するリスクについて

当社は、パイプライン拡充のために日々新規開発候補品のリサーチを行っていますが、導入の際に支払われる一時金を米ドル建てと想定し、予め相当の金額を外貨預金あるいは外国為替先物予約にて手当をしています。これらの外貨建て資産は時価評価にて毎期財務諸表に表示していますが、将来の為替変動によってその評価損失が発生するリスクがあり、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

カ.自然災害等に関するリスクについて

当社が事業展開している地域や拠点において、災害(地震、台風、火災等)・疫病等が発生し、人的・物的被害の発生、業務停止及び遅延が生じた場合、社会的信用の失墜や、補償などによって、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社の経営上の重要な契約は以下のとおりであります。

(1) 技術導入等
①  SyB L-0501(凍結乾燥注射剤)/ SyB C-0501(経口剤)

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

アステラス ファーマ GmbH社(独国)

契約締結日

平成17年12月2日

契約期間

日本における最初の製品の販売から10年または、市場独占期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、日本におけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT Ⅱ

契約書相手方名

アステラス・ドイッチラント GmbH社(独国)

契約締結日

平成19年3月29日

契約期間

最初の製品の販売から10年または、市場独占期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、中国(香港を含む)、台湾、韓国及びシンガポールにおけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

②  SyB L-1101 / C-1101

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

オンコノバ・セラピューティクス社(米国)

契約締結日

平成23年7月7日

契約期間

各国、最初の製品の販売から10年(韓国は7年)または、市場独占期間または、特許権の有効期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、日本及び韓国におけるSyB L-1101/C-1101の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

③  SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤)

 

契約書名

PRODUCT COLLABORATION AND LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

イーグル・ファーマシューティカルズ社(米国)

契約締結日

平成29年9月19日

契約期間

製品の特許期間または市場独占期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、日本におけるSyB L-1701/L-1702の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

 (2) 技術導出等

SyB L-0501

 

契約書名

SUBLICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

イノファーマックス社(台湾)

契約締結日

平成20年3月23日

契約期間

台湾における最初の製品の販売から10年

主な契約内容

①  当社は、イノファーマックス社に、台湾におけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権を許諾する。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金及びマイルストーンを受け取る。

 

 

契約書名

ベンダムスチン事業提携契約書

契約書相手方名

エーザイ株式会社(日本)

契約締結日

平成20年8月18日

契約期間

日本における最初の製品の販売から10年

主な契約内容

①  当社は、エーザイに対し、日本におけるSyB L-0501の共同開発権及び独占的販売権を許諾する。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金及びマイルストーンを受け取る。

 

 

契約書名

SUB-LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

セファロン社(米国)

契約締結日

平成21年3月12日

契約期間

中国における最初の製品の販売から10年

主な契約内容

①  当社は、セファロン社に対し、中国(香港を含む)におけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権を許諾する。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを受け取る。

 

 

契約書名

韓国及びシンガポールにおけるベンダムスチン事業提携契約書

契約書相手方名

エーザイ株式会社(日本)

契約締結日

平成21年5月15日

契約期間

最初の製品の販売から10年

主な契約内容

①  当社は、エーザイに対し、韓国、シンガポールにおけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権を許諾する。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金及びマイルストーンを受け取る。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社は、医療上のニーズは極めて高いものの、開発の難度が高く、また大手製薬企業が事業効率面、採算面から手を出しにくいために開発が遅れている、空白の治療領域に焦点を当て、中でも高い専門性が求められ難易度が高いために参入障壁の高いがん・血液・ペインマネジメント領域の3治療領域に特化し、医薬品の研究開発活動を行っています。

当社は、新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発を行い、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、空白の治療領域を埋めるために新薬の開発・提供を行うという企業使命を果たしてまいります。

当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであり、当事業年度における研究開発費の総額は3,017,812千円であります。

 

(1) 研究開発体制

当社は研究設備を保有せず、開発候補品を他の製薬企業、バイオベンチャー企業等から導入することにより、新薬開発を行っています。開発候補化合物については、主にヒトでPOCが確立され、前臨床試験データ、臨床試験データがある化合物を対象とすることにより、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発開始から承認取得までの期間を短縮することが可能となります。

これらの開発候補化合物の探索は、当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用し、社内の経験を有した専門スタッフによる絞り込みを最初に行い、その後、SABにおいて、第一線でこの分野における治療の研究に携わる経験豊富な社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社はSABを年2~3回開催し、研究開発全般に関する議論・情報交換を活発に行っています。

開発候補品の導入後は、社内の経験を有した開発スタッフが、短期間で製造販売承認を取得するための開発戦略策定とその実行等の付加価値の高い業務に専念し、その他の定型的な開発業務はCRO等のアウトソーシング先に委託しています。

なお、当社の研究開発人員数は43名となっております。今後、パイプラインの開発の進捗に伴い、必要に応じて開発人員の拡充を図ってまいります。

 

(2) 開発品の状況

開発品の状況の詳細は、「第2[事業の状況]  1[業績等の概要]  (1) 業績」に記載のとおりであります。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。また、現在の当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす提携による収益及び研究開発費について記載しております。

なお、文中における将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態の分析

当事業年度末における総資産は、商品及び製品が89,789千円、ソフトウエアが23,598千円、敷金及び保証金が20,585千円それぞれ増加した一方、現金及び預金が2,772,266千円、立替金が47,705千円、工具、器具及び備品(純額)24,806千円それぞれ減少したこと等により、前事業年度末に比べ2,626,100千円減少し、4,252,284千円となりました。負債の部については、社債が450,000千円、未払金が221,642千円それぞれ減少した一方、買掛金が282,522千円、未払法人税等が18,226千円それぞれ増加したこと等により、前事業年度末に比べ380,632千円減少の1,012,882千円となりました。

純資産の部については、資本金が813,378千円、資本準備金が813,378千円、新株予約権が105,637千円増加した一方、当期純損失の計上により利益剰余金が3,977,862千円減少したこと等により、前事業年度末に比べ2,245,468千円減少の3,239,402千円となりました。この結果、自己資本比率は63.6%と前事業年度末に比べ9.9ポイント減少しました。

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株の発行により資金が増加したものの、税引前当期純損失の計上等により、前事業年度末に比べ2,772,266千円減少の2,947,059千円となりました。

 

(2) 経営成績の分析

当事業年度の売上高は、トレアキシン®の国内向けの製品販売等により、3,444,206千円となりました。製品売上が前年同期比61.1%増加したことから、売上高全体で前年同期比45.4%増加となりました。

一方、販売費及び一般管理費は、トレアキシン®、リゴセルチブの注射剤及び経口剤、SyB P-1501の臨床試験の費用が発生したことに加え、トレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の導入費用が発生したことにから、研究開発費として3,017,812千円(前年同期比81.0%増)を、その他の販売費及び一般管理費として1,960,514千円(前年同期比43.7%増)を計上したことから、合計で4,978,327千円(前年同期比64.2%増)となりました。

これらの結果、当事業年度の営業損失は3,947,061千円(前年同期は営業損失2,127,049千円)となりました。また、受取利息3,092千円、保険配当金を1,339千円を主とする営業外収益4,506千円を計上した一方、株式交付費14,477千円、為替差損10,421千円、支払手数料9,090千円を主とする営業外費用34,229千円を計上したことにより、経常損失は3,976,784千円(前年同期は経常損失2,316,806千円)、当期純損失は3,977,862千円(前年同期は当期純損失2,313,233千円)となりました。

 

①  国内

[抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤) / SyB C-0501(経口剤)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]

 トレアキシン®については、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫(平成22年10月に製造販売承認を取得)に加え、平成28年12月に製造販売承認を受けた未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫並びに平成28年8月に製造販売承認を受けた慢性リンパ性白血病を適応症として、業務提携先のエーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じ、国内販売を行っています。これらの適応症拡大を受けて薬価ベースの売上は対前年比プラス60.9%と大きく伸長し、それに伴って当社からエーザイへの製品売上についても前年比62.7%増と大幅に伸びました。

本剤については、既に承認を取得した上記の3つの適応症に加え、引き続き新しい治療方法を必要としている患者さんのために、さらに製品価値の最大化を図るべく4つ目の適応症である再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の承認取得に取り組んでいます。本適応症については、既に第Ⅱ相臨床試験を終了し、医療ニーズが高いことを受け、医薬品医療機器総合機構との協議を経て、平成29年8月に適応症追加に向けた第Ⅲ相臨床試験を開始し、平成30年1月に最初の患者登録を完了しています。

以上の追加適応症の拡大に関する従来の取組みに加え、トレアキシン®の製品ライフサイクル・マネジメントをより一層強力に推進すべく、平成29年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤(注1))の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。これにより患者さんと医療従事者に大きな付加価値を提供し、特許保護を通じてトレアキシン®の製品ライフサイクルを2031年まで延長することが可能となっております。(詳細は、平成29年9月21日付開示の「ベンダムスチン液剤(RTD製剤及びRI製剤)に関するライセンス契約締結のお知らせ」に記載しております。)

さらに、経営基盤の強化のためにトレアキシン®を当社事業のより強固な土台とすべく、現在開発・販売中の注射剤に加えて経口剤の開発を推進することにより固形がんや自己免疫疾患に取り組み、さらなる事業拡大を図ってまいります。そのような取り組みの中で、平成30年1月に進行性固形がんを対象としてトレアキシン®経口剤の推奨投与量・スケジュール及び忍容性・安全性の検討を行い、がん腫を絞り込むことを目的として、第Ⅰ相臨床試験を開始しました。

 

(注1) RTD製剤及びRI製剤は、従来の凍結乾燥注射剤(FD)とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、さらに急速静注であるRI製剤(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の60分間から10分間に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、さらには医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。

 

[抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]

リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が実施している国際共同第Ⅲ相臨床試験の日本における臨床開発を当社が担当しており、国内では平成27年12月に試験が開始され、既に30症例が登録されております。本試験は、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない(HMA不応)または治療後に再発した高リスク骨髄異形成症候群(MDS)を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加して実施中です。当社は、国内で平成28年7月に最初の患者登録を完了し、現在、症例集積が順調に進行しておりますが、平成30年1月に行われた中間解析結果を踏まえ、事前に計画した統計学的な基準に基づき症例数を増加の上で本試験を継続することを決定しております。

リゴセルチブ経口剤については、平成27年12月に開始した高リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験(アザシチジン(注2)との併用試験)において、オンコノバ社からの治験薬の供給遅延により症例登録が進行しておりませんでしたが、今般治験薬の供給が再開されたことにより、同社が米国で実施している初回治療及び再発・難治性の高リスクMDSを対象とした第Ⅱ相臨床試験において追加設定された高用量の安全性を確認するために平成29年6月に国内第Ⅰ相臨床試験を新たに開始し、平成29年10月に最初の患者登録を完了しました。当社は、同試験で安全性を確認した後、速やかにアザシチジンとの併用試験を開始し、オンコノバ社が計画している初回治療の高リスクMDSを対象としたアザシチジンとの併用による国際共同第Ⅲ相臨床試験に参加することを計画しております。

 

(注2) アザシチジン(ビダーザ®:販売元 日本新薬株式会社):平成23年にMDSに対する第Ⅲ相臨床試験において、初めて生存期間の延長が認められたことから承認された低メチル化剤(注射用)で、現在、造血幹細胞移植が難しいMDS患者に対する第一選択薬として使用されています。MDSは一種の前白血病であり、その病態にはDNAの過剰なメチル化による癌抑制遺伝子の発現の低下が大きく関係していると考えられています。アザシチジンなどの低メチル化剤はDNAのメチル化を阻害する作用により癌抑制遺伝子の発現を回復させ白血病への進行を抑えると考えられています。

 

[自己疼痛管理用医薬品 SyB P-1501]

当社が、平成27年10月にザ・メディシンズ・カンパニー社(本社:米国ニュージャージー州、契約の相手先は同社完全子会社であるインクライン・セラピューティクス社)から導入したSyB P-1501については、入院期間中の短期術後急性疼痛管理を適応対象とした国内第Ⅲ相臨床試験を平成28年6月に開始し、平成28年11月に最初の患者登録を完了し、その後症例集積が進行しておりました。しかしながら、同社の本製品の事業の継続性について当社が懸念を抱く事実が生じたため、患者さんの利益を最優先する観点から、平成29年4月21日より新規症例登録を一時的に中断し、平成29年11月30日付にて同社とのライセンス契約を解除しました。

当社はザ・メディシンズ・カンパニー社によるライセンス契約の不履行に起因して生じた損害の賠償として、82百万米ドル(日本円換算で約90億円)の支払を求める仲裁を国際商業会議所の規定に基づき2017年10月11日付で申し立てております。(詳細は、平成29年11月13日付開示の「自己疼痛管理用医薬品「SyB P-1501」のライセンサーであるザ・メディシンズ・カンパニーに対する仲裁申し立てについて」及び平成29年11月30日付開示「ザ・メディシンズ・カンパニーとのライセンス契約の解約について」に記載しております。)

ライセンス契約の解約に伴い、本製品の開発は平成30年2月9日に中止しております。

 

[新規開発候補品]

当社は常に中長期的な視点に立ち、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業へと成長を図るため、新薬開発候補品のグローバルのライセンス権利取得に向け探索評価を継続して実施しており、常時、複数のライセンス案件を検討しております。

また、当社は平成28年5月に、海外事業展開の戦略的拠点として100%出資の米国子会社 SymBio Pharma USA, Inc(本社:米国カリフォルニア州メンローパーク、以下「シンバイオファーマUSA」という)を設立しました。シンバイオファーマUSAをグローバル事業の拠点として新薬候補品の全世界における権利を積極的に取得することにより、米国、日本、欧州をはじめとする主要市場において開発・商業化を目指して、グローバル・スペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。

 

②  海外

SyB L-0501については、韓国、台湾、シンガポールにおいても販売されており、当社の製品売上は、計画を上回るペースで順調に推移しました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株の発行により資金が増加したものの、税引前当期純損失の計上等により、前事業年度末に比べ2,772,266千円減少の2,947,059千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

買掛金282,522千円の増加、株式報酬費用121,205千円の計上、立替金47,705千円の減少、減価償却費29,569千円の計上、為替差損42,195千円等による営業活動資金の増加要因はあったものの、税引前当期純損失3,974,062千円の計上、未払金208,540千円の減少、たな卸資産89,789千円の増加、未収消費税63,674千円の増加等より、全体では3,816,793千円の減少(前年同期は1,960,089千円の減少)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出10,657千円、無形固定資産の取得による支出46,364千円、敷金及び保証金の差入による支出23,550千円等により、全体では77,507千円の減少(前年同期は43,836千円の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

新株予約権の行使による株式の発行による収入1,146,042千円、新株予約権の発行による収入32,560千円等により、合計で1,164,230千円の増加(前年同期は3,658,177千円の増加)となりました。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社は、以下における事項が、特に重要な影響を及ぼすと考えています。

①  提携による収益について

当社は業務提携先との契約締結にあたり、契約一時金、研究・開発の進捗に応じたマイルストーン及び医薬品上市後の売上等に応じたロイヤリティといった対価を受け入れる契約形態を採用しています。これは、当社単独での医薬品開発には多大な研究開発費が必要であり、かつリスクも高いことから、研究開発費及びリスクを提携先と共同で負担することにより当社の負担を軽減することを目的とするものです。

 

②  研究開発費について

「第1  企業の概況  3  事業の内容」に記載の通り、当社の主たる事業目的は、がん・血液・ペインマネジメントを中心に、空白の治療領域を埋めるために新薬の開発・提供を行うことであり、当社では、開発本部を中心に承認取得に向けた新薬開発業務を行っています。

また、第13期事業年度における研究開発費の総額は3,017,812千円と、販売費及び一般管理費の60.6%を占めており、今後も高水準の研究開発費が発生するものと予測しています。

 

(5) 資金の財源及び資金の流動性について

当社は、新規開発品の導入と、その開発に対して積極的に資金を投下しておりますが、当社は創業間もないベンチャー企業であり、また開発第1号品であるSyB L-0501の販売収益がこれらの資金需要を賄うには未だ十分ではないことから、これらの資金は主に公募増資や第三者割当による新株の発行により調達しています。