第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

提出会社の経営指標等

 

回次

第11期

第12期

第13期

第14期

第15期

決算年月

2015年12月

2016年12月

2017年12月

2018年12月

2019年12月

売上高

(千円)

1,933,241

2,368,112

3,444,206

3,835,530

2,837,753

経常損失(△)

(千円)

2,630,386

2,316,806

3,976,784

2,748,730

4,376,655

当期純損失(△)

(千円)

2,632,095

2,313,233

3,977,862

2,752,533

4,376,258

持分法を適用した場合の
投資損益

(千円)

資本金

(千円)

8,330,775

9,948,298

10,761,676

12,972,579

14,870,639

発行済株式総数

(株)

32,390,923

46,530,824

54,049,224

82,398,924

26,437,681

純資産額

(千円)

4,431,811

5,484,870

3,239,402

4,901,799

4,400,116

総資産額

(千円)

4,984,289

6,878,384

4,252,284

6,239,423

5,273,955

1株当たり純資産額

(円)

127.56

108.61

50.00

212.23

143.07

1株当たり配当額
(1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

81.26

58.82

79.78

165.54

189.03

潜在株式調整後1株
当たり当期純損失

(円)

自己資本比率

(%)

82.9

73.5

63.6

70.1

71.7

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

2,271,686

1,960,089

3,816,793

2,324,547

4,350,738

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,489,141

43,836

77,507

26,180

216,462

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

2,632

3,658,177

1,164,230

4,272,056

3,740,045

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

4,261,438

5,719,325

2,947,059

4,821,355

3,910,830

従業員数
(ほか、平均臨時雇用人員)

(人)

74

77

78

90

107

(6)

(12)

(12)

(16)

(18)

株主総利回り

(%)

65.0

68.3

61.3

53.2

42.5

(比較指標:JASDAQ INDEX グロース)

(%)

(79.8)

(83.0)

(99.6)

(67.9)

(80.4)

最高株価

(円)

383

509

335

289

275

(874)

最低株価

(円)

177

170

196

115

150

(537)

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

4.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

5.株価収益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

6.第13期から第15期にかけての従業員数の増加は、主として自社販売体制への移行に向けて期中採用が増加したことによるものであります。

7.2019年7月1日付けで普通株式4株につき普通株式1株の割合で株式併合を行っております。第14期の期首に当該株式併合が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失を算定しております。

8.最高・最低株価は、東京証券取引所JASDAQ(グロース)におけるものであります。なお、2019年12月期の株価については株式併合後の最高株価及び最低株価を記載しており、株式併合前の最高株価及び最低株価を()内に記載しております。

 

2 【沿革】

年月

概要

2005年3月

東京都港区において当社設立。

2005年12月

アステラス・ファーマ GmbH社(現  アステラス・ドイッチラント  GmbH社)と抗がん剤 SyB L-0501の日本における独占的開発権及び独占的販売権の供与を受けるライセンス契約を締結。

2006年8月

SyB L-0501の第Ⅰ相臨床試験(再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者を対象)を開始。

2007年3月

アステラス・ドイッチラント GmbH社とSyB L-0501の中国、韓国、台湾及びシンガポールにおける独占的開発権及び独占的販売権の供与を受けるライセンス契約を締結。

2007年9月

SyB L-0501の第Ⅰ相臨床試験(再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者を対象)を終了。

2007年12月

SyB L-0501の第Ⅱ相臨床試験(再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者を対象)を開始。

2008年3月

イノファーマックス社とSyB L-0501の台湾における独占的開発権及び独占的販売権を供与するライセンス契約を締結。

2008年8月

エーザイ株式会社とSyB L-0501の日本における共同開発権及び独占的販売権を供与するライセンス契約を締結。

2008年10月

SyB L-0501の第Ⅰ相臨床試験(再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫の患者を対象)を開始。

2009年3月

セファロン社とSyB L-0501の中国における独占的開発権及び独占的販売権を供与するライセンス契約を締結。

2009年3月

SyB L-0501の第Ⅱ相臨床試験(再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者を対象)を終了。

2009年5月

エーザイ株式会社とSyB L-0501の韓国及びシンガポールにおける独占的開発権及び独占的販売権を供与するライセンス契約を締結。

2009年10月

SyB L-0501を、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を予定適応症として、優先審査対象品目として国内製造販売承認を申請。

2010年3月

SyB L-0501の第Ⅱ相臨床試験(再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫の患者を対象)を開始。

2010年10月

再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として、抗悪性腫瘍剤「トレアキシン®(開発コード:SyB L-0501 、一般名:ベンダムスチン塩酸塩)」の国内製造販売承認を取得。

2010年12月

抗悪性腫瘍剤「トレアキシン®(開発コード:SyB L-0501 、一般名:ベンダムスチン塩酸塩)」を、再発・難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として提携先のエーザイ株式会社を通じて国内販売を開始。

2011年7月

オンコノバ・セラピューティクス社と抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / C-1101(経口剤)の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権の供与を受けるライセンス契約を締結。

2011年10月

大阪証券取引所JASDAQ(グロース)(現 東京証券取引所JASDAQ(グロース))に株式を上場。

2011年11月

SyB L-0501の第Ⅱ相臨床試験(未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者を対象)を開始。

2011年12月

SyB L-0501の第Ⅱ相臨床試験(再発・難治性の多発性骨髄腫の患者を対象)を開始。

2012年6月

SyB L-1101の第Ⅰ相臨床試験(再発・難治性の骨髄異形成症候群(MDS)の患者を対象)を開始。

2013年3月

SyB C-1101の第Ⅰ相臨床試験(初回治療の骨髄異形成症候群(MDS)の患者を対象)を開始。

2013年5月

SyB L-0501の第Ⅱ相臨床試験(慢性リンパ性白血病の患者を対象)を開始。

2013年11月

SyB L-0501の第Ⅱ相臨床試験(再発・難治性の多発性骨髄腫の患者を対象)を中止。

 

 

年月

事項

2015年1月

スポンサー付きADR(米国預託証券)プログラムを設立。

2015年10月

ザ・メディシンズ・カンパニー社と手術後の自己疼痛管理用医薬品 SyB P-1501の日本における独占的開発権及び独占的販売権の供与を受けるライセンス契約を締結。

2015年10月

SyB L-1101の国際共同第Ⅲ相臨床試験(再発・難治性の骨髄異形成症候群(MDS)の患者を対象)に参加。

2016年5月

米国カリフォルニア州メンローパークに子会社、シンバイオファーマUSA(現非連結子会社)を設立。

2016年6月

SyB P-1501の第Ⅲ相臨床試験(入院期間中の短期術後急性疼痛管理を対象)を開始。

2016年8月

SyB L-0501の慢性リンパ性白血病に対する効能追加の承認を取得。

2016年12月

SyB L-0501の未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫に対する効能追加の承認を取得。

2017年8月

SyB L-0501の第Ⅲ相臨床試験(再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者を対象)を開始。

2017年9月

イーグル・ファーマシューティカルズ社との間でトレアキシン®液剤 SyB L-1701(RTD製剤) / L-1702(RI製剤)の日本における独占的開発権及び独占的販売権の供与を受けるライセンス契約を締結。

2017年11月

ザ・メディシンズ・カンパニー社とのSyB P-1501のライセンス契約を解除。

2018年1月

SyB C-0501の第Ⅰ相臨床試験(進行性固形がんの患者を対象)を開始。

2018年2月

SyB P-1501の開発を中止。

2018年5月

SyB C-0501の前臨床試験(全身性エリテマトーデス(SLE)を対象)を開始。

2018年10月

トレアキシン®の国内販売について自社による販売体制構築の準備を開始。

2018年11月

SyB L-1702(RI液剤)の臨床試験を開始。

2019年9月

キメリックス社との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)の世界全域における開発・販売・製造を含めた独占的権利の供与を受けるライセンス契約を締結。

 

 

3 【事業の内容】

1.当社の事業概要について

(1) 当社の概要

当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。

経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。

なお、当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

(注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(Applied
Molecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月1日にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、2008年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。

(注2)アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。

 

(2) 当社の事業の特徴

がん及び血液領域における希少疾病分野(注3)の研究開発の多くは、欧米を中心に、大手製薬企業よりもむしろ、多くの大学・研究所、バイオベンチャー企業により創薬研究・新薬開発が活発に行われ、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマ(注4)です。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。

当社は、このような空白の治療領域を埋めるための新薬の開発・提供を行うことを企業使命として設立されました。新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発をし、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、医療への貢献、そして医薬品業界の健全な発展に寄与することにより、持続的成長と安定への道を進んでまいります。

 

(注3) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いこと等をその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が最長10年になる等の優遇措置があります。

(注4) スペシャリティ・ファーマとは、得意分野において国際的にも一定の評価を得る研究開発力を有する新薬開発企業をいいます(2007年「新医薬品産業ビジョン」(厚生労働省)の定義による)。

 

(3) 当社の事業モデルについて

創薬系事業の特徴として、新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性(注5)が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。
 当社では、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOC(Proof Of Concept)(注6)が確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)(注7)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。

社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん及び血液領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の日本並びにアジア諸国、さらには欧米を含むグローバルの開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。そのような、開発の成功確率が高く、事業性のある、魅力的な開発候補品を導入するためには、この“目利き”の力に加え、がん及び血液という開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。そのためには、①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。これらの総和が開発力となり、開発を着実に、かつ迅速に実行することが可能となります。がん及び血液分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材を中心に構築された当社の開発チームが導入から承認申請までを僅か4年間という短期間でなし得た、抗がん剤 SyB L-0501での実績は、ライセンサー、パートナー企業、導入候補先企業から高い評価を得ています。

なお、開発につきましては、基本的な開発戦略の中枢となる臨床試験のデザイン、海外の試験との連携、医学専門家との調整等は当社が主体となって手掛け、定型的な開発業務は、外部資源であるCRO(Contract Research Organization 受託臨床試験実施機関)(注8)へ業務委託し、製造についてはライセンス供給元あるいは信頼できる国内外の製薬企業へ業務委託を行います。

販売につきましては、2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じて国内販売を行っておりますが、2020年12月の契約満了以降は自社販売体制へ移行することを決定しております。2021年からの自社販売体制への移行に向けて、がん及び血液領域に精通した自社MR(Medical Representative)(注9)を中核とした全国営業体制の構築と流通及び物流機能の整備を推進すると同時に営業戦略・企画の策定及び市場調査を行うマーケティング体制の強化に努めるとともに関係治療領域におけるKOL(Key Opinion Leader)(注10)との良好な関係構築、的確な医療ニーズの把握と市場調査を行い、各種データ、ノウハウの蓄積を図ってまいります。

 

これらの事業モデルを図示すると以下のようになります。

 


 

 

(注5) 生理活性とは、化学物質が生体の特定の生理的調節機能に対して作用する性質のことです。この生理活性の作用を持つ化学物質を疾病治療に応用したものが医薬品となります。

(注6) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。

(注7) 科学的諮問委員会(SAB:Scientific Advisory Board)とは、世界中から集まる膨大な新薬候補を元に、医療ニーズの高さや収益性などリスクバランスのとれたポートフォリオを、それぞれの専門の立場から意見や提言を交え徹底的に議論した上で、パイプライン戦略を構築する、当社の重要な評価機関です。当社では、SABを年2~3回開催し、世界中から優れた実績と経験をもつ臨床医・基礎科学者の方々に、当社の創薬研究及び新薬開発のアドバイザーとして参画いただいています。

(注8) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。

(注9) MR(Medical Representative)とは、自社医薬品に関する情報の専門家として医療機関を訪問し、医療関係者と面談することにより、医薬品の品質・有効性・安全性等に関する情報の提供・収集・伝達を主な業務とする医療情報担当者をいいます。

(注10)KOL (Key Opinion Leader)とは、担当領域の治療において他の医師に影響力を持つ医師のことをいいます。

 

(4) 当社の事業戦略

当社は、上記の事業を成功させるために、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。

(a) ポストPOC戦略による開発リスクの軽減

当社の導入候補品(注11)は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含めアジアにおける開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。

 

(注11)導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物を指します。

 


 

(注12)ブリッジングスタディとは、外国での臨床データを活用するために国内で行われる試験のことをいいます。この国内試験の結果を外国のデータと比較し、同様の傾向があることを確認します。

 

(b) 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築

当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品は更に、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。

 

 

<当社の開発品導入プロセス>

 


(注13)CDAとは、Confidential Disclosure Agreementの略で、秘密保持契約書のことを意味します。

 

(c) ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制

当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。

 

(d) ブルーオーシャン戦略(注14)による高い事業効率の実現

海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。

 

(注14)ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。

 

(e) アジアからグローバル展開へ

当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月30日にはキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス感染症治療薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しました。

 

 

2.当社のパイプラインについて

当社は現在開発中のパイプラインとして、SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、SyB V-1901を有しています。今後も開発候補品を継続的に導入することにより、パイプラインのより一層の拡充及びリスク・リターンのバランスのとれたパイプライン・ポートフォリオを構築してまいります。

 

<当社パイプラインの進捗状況>


(1) [抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤))(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]

SyB L-0501の主成分であるベンダムスチン塩酸塩(一般名)は、ドイツにおいて非ホジキンリンパ腫(注15)、多発性骨髄腫及び慢性リンパ性白血病の治療薬(商品名「リボムスチン®」)として長年使用されている抗がん剤です。この製品の導入の背景としては、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者さんには、この分野には優れた薬剤がなく、まさしく当社の企業使命である、空白の治療領域を対象とした薬剤であること、また当社の強みである分野(血液がん)であることが導入の決め手となりました。この製品の世界のライセンスの供給元はアステラス製薬株式会社のドイツ子会社であるアステラス ドイッチランド GmbH社であり、北米においてはテバ社(イスラエル)の米国子会社であるセファロン社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「セファロン社」)が同社よりライセンス供与を受け、2008年3月に慢性リンパ性白血病の治療薬として、同年10月には再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より承認を受けています。更に欧州においてはムンディファーマ社(英国)が、その他の地域においてはヤンセン・シラグ社(英国)が、それぞれライセンス供与を受け、独占的開発及び独占的販売権を保有しています。

一方、当社はアステラス ドイッチランド GmbH社より日本、中国、韓国、シンガポール及び台湾における独占的開発及び独占的販売権の供与を受けています。日本においては、2010年10月27日に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認され、同年12月10日に発売されました(製品名はトレアキシン®)。また、その追加適応として、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病を目標効能とした国内製造販売承認申請を2015年12月に行い、慢性リンパ性白血病については2016年8月に、未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については同年12月に製造販売承認を取得しております。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)については第Ⅲ相臨床試験において主要評価項目を達成し、現在承認申請に向けた準備を行っています。今後、更に製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、2017年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。RTD製剤は2019年9月に承認申請を行い、RI製剤については安全性の確認を主目的とした治験を進めております。

 

なお、日本市場においては、トレアキシン®についてエーザイと共同開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しており、エーザイが本薬剤を販売しています。

次に、当社が権利を有するアジア諸国においては、2009年12月に香港において、低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。香港においては、独占的開発権・独占的販売権を供与しているセファロン社が販売しています。また、シンガポールにおいては、2010年1月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認されました。韓国においては、2011年5月に慢性リンパ性白血病及び多発性骨髄腫の適応症、2014年6月に再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫の適応症、そして2017年8月に未治療(初回治療)のCD20陽性の濾胞性リンパ腫の適応症で、それぞれ承認されました。

韓国とシンガポールにおいては、エーザイと独占的開発権・独占的販売権を供与する契約を締結しています。シンガポールにおいては2010年9月より、韓国においては2011年10月より、それぞれエーザイ子会社が本薬剤を販売しています。

その他、中国においては、提携先であるセファロン社が2018年12月にリツキシマブ治療後の再発性B細胞性非ホジキンリンパ腫を適応症の適応症で承認を取得しました。台湾では、提携先であるイノファーマックス社(台湾)が2011年10月に低悪性度非ホジキンリンパ腫及び慢性リンパ性白血病の適応症で承認を取得して2012年2月より販売を開始し、2017年11月に初回治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の承認を取得しています。

 

(注15)非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。

 

(2) [抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]

リゴセルチブは、ユニークなマルチキナーゼ阻害作用(注16)を有する抗がん剤で、現在、オンコノバ社により米国及び欧州等において骨髄異形成症候群(MDS)を目標効能として開発が進められています。MDSは、近年患者数が増加している血液細胞の悪性腫瘍化の前病態であり、高齢者に多く発病し、白血病に移行する可能性が高い難治性疾患です。

 特に再発・難治性のMDSに有効な薬剤はないため、未充足の治療領域となっています。当社は、オンコノバ社との間で、本剤の日本及び韓国における独占的開発権及び独占的販売権を取得するライセンス契約を2011年7月に締結し、現在、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能として、更に、経口剤で初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能として、それぞれ開発を進めています。

リゴセルチブ注射剤については現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加する国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。当社は、本国際共同第Ⅲ相臨床試験に日本から参加し、臨床試験を実施しています。

また、リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とする第Ⅱ相臨床試験、及び初回治療の高リスクMDS(アザシチジン併用)を目標効能とした臨床試験を進めています。

当社は、リゴセルチブ経口剤単剤による低リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験を既に終了しており、引き続き初回治療の高リスクMDSを目標効能として、単剤により高用量の安全性を確認するための国内第Ⅰ相臨床試験を実施しています。第Ⅰ相臨床試験終了後は国際共同臨床試験への参加を検討しています。なお、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発についてはオンコノバ社の開発状況を見据えながら検討してまいります。

今後当社はMDS以外の適応についても、オンコノバ社における開発の進捗を見据えながら開発を検討してまいります。本剤の注射剤、経口剤の開発を適応に応じて使い分けることにより、患者さんにより使いやすい、そしてコンプライアンスを考えた治療方法の開発を進めてまいります。

 

(注16)マルチキナーゼ阻害作用とは、がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用をいいます。

 

(3) [抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:Brincidofovir<ブリンシドフォビル>)]

当社は2019年9月30日にキメリックス社との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV)に関しての独占的グローバルライセンス契約を締結しました。当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得したことにより、高品質の医薬品供給のための一貫体制を備えたグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。

開発については、「空白の治療領域」となっている医療ニーズの高い造血幹細胞移植後のウイルス性出血性膀胱炎(vHC)を最初の疾患ターゲットとし、本剤を必要とする患者さんに一日も早く提供できるよう、世界に先駆けてまず国内で臨床開発を進め承認を得ると同時に、欧米を含めた国際共同臨床試験を実施しグローバル展開を図ってまいります。また、腎臓移植後のウイルス感染症に対する臨床開発も計画しており、臓器移植の市場規模が大きい欧米市場及び中国市場を含めたアジア地域での事業展開を睨み、対象疾患の地域特性を生かしたパートナーシップも視野に入れて検討中です。2016年5月に設立した100%出資の米国子会社 SymBio Pharma USA, Inc.の戦略的活用も含めて事業価値最大化の可能性を追求してまいります。

 

(参考) 医薬品研究開発の一般的な進行について

医薬品研究開発のプロセスは以下のとおりであり、通常、(a)から(f)までに10年から17年程度かかるといわれています。

 

(医薬品研究開発のプロセス)

(a) 基礎研究

(b) 前臨床試験(非臨床試験)

(c) 臨床試験(治験)

(d) 申請及び承認

(e) 薬価申請・収載

(f) 上市販売

(g) 製造販売後調査

 

(a) 基礎研究

新薬のもとになる候補物質を探し出すプロセスです。化学物質、微生物、遺伝子などの研究から、将来薬となる可能性がある新しい物質(成分)を発見したり、化学的に作り出したりするための研究であり、一般的には研究所などで実施されます。

 

(b) 前臨床試験(非臨床試験)

(a)で特定された薬剤候補化合物を対象に、生物学的試験として、動物や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べる、いわゆる動物に対して実施する試験です。また、化学的試験として、製造方法、原薬及び製剤の規格・安定性を調べるなどの試験があります。

 

(c) 臨床試験(治験)

前臨床試験の結果、有効性及び安全性の観点から有用な医薬品になり得る可能性が認められた場合、十分な検討の上で、実際にヒトを対象とした有効性及び安全性の検証を行う、臨床試験(治験)が行われます。治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で行われますが、その内容は以下のとおりです。

①  第Ⅰ相臨床試験

第Ⅰ相は、治療効果を見ることを目的とせず、比較的少数の健康な志願者を対象に主に副作用と安全性を確認する試験です。

②  第Ⅱ相臨床試験

第Ⅱ相は、通常、患者さんにおける治療効果の探索を主な目的とする試験を開始する段階です。少数の患者さんを対象に、有効性と安全な投薬量や投薬方法を確認する試験です。

③  第Ⅲ相臨床試験

第Ⅲ相は、第Ⅱ相よりも投与患者数をさらに増やし、治療効果の既存薬剤との比較データ、副作用のデータ等を収集することによって、有効性と安全性について検証し、新薬として承認されるための適切な根拠となるデータを得ることを目的とした試験です。

 

(d) 申請及び承認

治験で有効性や安全性などが証明された治験薬について、新薬承認申請書類を作成し、厚生労働省に製造販売承認の申請を行います。数段階の審査を受け、承認されて初めて「薬」として市場に出ることになります。ちなみに基礎研究段階で新薬候補とされた物質(成分)の内、製造販売承認を得ることができるものはわずか2万分の1から2万5千分の1といわれております。

 

(e) 薬価申請・収載

新薬の価格(以下「薬価」といいます)を厚生労働省へ申請し、開発コスト、類似薬や諸外国の価格を参考に価格の承認を受けます。これを薬価収載といいます。

 

(f) 上市販売

薬価収載が完了し、実際に薬を販売できる状況になることを上市といい、この段階から販売が可能になります。

 

(g) 製造販売後調査

販売を開始した後に、病院などの医療機関でさらに多くの患者さんに投与された結果を元に、臨床開発段階では発見できなかった副作用や適正使用情報などの収集が行われ、厚生労働省に報告を行います。

 

4 【関係会社の状況】

 当社は非連結子会社1社を有しておりますが、重要性が乏しいため記載を省略しております。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

2019年12月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

107

(18)

49.3

3.6

10,957

 

(注) 1.従業員数は就業員数(契約社員を含む)であり、臨時雇用者数(人材会社からの派遣社員)は、( )内に外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.従業員数の増加は、主として自社販売体制への移行に向けて期中採用が増加したことによるものであります。

4. 当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は組成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。