当社は、以下の点を主要な経営課題と捉え、取り組んでまいります。
製薬ベンチャー企業として企業価値を高めるためには、開発候補品を継続的に導入し、パイプラインを充実させていく必要があります。
当社では、抗がん剤 SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701、SyB L-1702及び抗ウイルス薬 SyB V-1901において開発を実施または計画しています。また、現在、新薬候補品の導入に関して複数の案件を相手先企業と協議しており、パイプラインの更なる拡充に向けて今後も新規の開発候補品の導入を積極的に進めてまいります。
企業価値を高めるためには、開発候補品の導入だけではなく、導入した新薬候補品の適応症を追加することにより、開発品目あたりの収益の最大化を図る、ライフサイクル・マネジメントを追求することが重要となります。
トレアキシン®は、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認を取得しています。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)については、第Ⅲ相臨床試験において主要評価項目を達成し、現在承認申請に向けた準備を行っています。また、製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、イーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)より導入したトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の開発を進めております。
リゴセルチブについては、現在、骨髄異形成症候群(MDS)を対象として注射剤と経口剤で開発を進めています。MDSは優れた治療薬が少ないため医療ニーズが極めて高い治療領域のひとつです。当社は、注射剤について、再発・難治性の高リスクMDSを目標効能としてオンコノバ社が実施している国際共同第Ⅲ相試験の日本における臨床試験を実施しています。また、経口剤については、低リスクMDSを目標効能として国内第Ⅰ相臨床試験(単剤試験)を既に終了しており、引き続き初回治療の高リスクMDSを目標効能として、単剤により高用量の安全性を確認するための国内第Ⅰ相臨床試験を実施しています。第Ⅰ相臨床試験終了後は、国際共同臨床試験への参加を検討しています。なお、輸血依存性の低リスクMDSを目標効能とした開発については、オンコノバ社の開発状況を見据えながら検討してまいります。
今後、更なる適応症追加を通じてライフサイクル・マネジメントを追求することにより、トレアキシン®及びリゴセルチブの事業価値の最大化を図ってまいります。抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについてもライフサイクル・マネジメントの追求を通じて収益の最大化を図るとともにグローバル市場を対象に事業展開をするスペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。
現在当社は2008年8月に締結した事業提携契約に基づき、エーザイを販売元としてトレアキシン®の国内販売を行っています。当事業提携契約は2020年12月に満了することになっており、2021年度に向けて自社による国内販売への切り替えを計画しています。
自社で専門的な情報提供を行うことによって市場のニーズをより的確に把握しかつ迅速に応えることが可能となり、患者さんの利益に資すると共にトレアキシン®が持つ事業価値の最大化を図ります。さらに血液疾患領域に特化した専門性の高い一貫した営業体制を構築することにより、トレアキシン®に加えて現在開発中の骨髄異形成症候群(MDS)を対象としたリゴセルチブ(注射剤及び経口剤)が販売品目に加わった際にはより高い事業効率を達成し、収益の持続的拡大及び株主利益の最大化を実現することを目指してまいります。
抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについては国内販売のみならず欧米を含む世界全域におけるグローバル事業展開の検討を進めてまいります。
当社はこれまで日本のみならず、中国・韓国・台湾・シンガポールの4ヶ国を戦略地域として位置付け、アジア地域への展開を進めてまいりました。
しかしながら、日本においては高齢化とともに医療費が膨張し、それに伴う国家戦略として後発医薬品80%時代が始まり新薬メーカーにとって厳しい環境が続くことが予想されます。また、アジア各国においても同様の政策が始まることも考えられます。
こうした中、当社は更なる発展のためにグローバル展開を進めてまいります。これまでのアジア展開で培った経験を活かし、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに続く新規開発候補品について、グローバルの権利を取得するべく、候補品の探索・評価及び交渉を進めてまいります。
当社の経営資源の第一は人であると考えています。優秀な人材なくして、新薬の探索、開発及び情報提供活動、そして今後のグローバル展開において優れた成果をあげることはできません。当社は継続的に優秀な人材の採用を行っており、上場後、特に経営組織をより強固にすべく優れた人材を採用してまいりました。また、OJTや研修等による人材育成を通じて、人材の更なる強化を図ってまいります。
当社は、パイプラインの開発進展、グローバル事業展開、開発候補品の増加等に伴い、研究開発費を中心とする事業活動に合わせて資金を調達する必要があります。
従って、引き続き資金調達手法の多様化を進めるとともに、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図ることで、財務基盤の更なる強化に努めてまいります。
当社の事業活動においてリスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しています。また、当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報提供の観点から開示しています。当社は、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行なわれる必要があると考えます。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、本書発表日現在において当社が判断したものです。
当社は、製薬企業、バイオベンチャー企業等が創出した新薬候補品を導入し、これらを医薬品として開発する事業を主たる業務としています。医薬品の研究開発の分野は、巨大製薬企業をはじめとする多数の強力な競合が存在し、更に当社を含むいわゆる創薬ベンチャー企業が質とスピードを競い合う業界です。また、開発から製造及び販売に至る過程には多くの規制が存在し、長期間にわたり多額の資金を投入して事業活動を推進する必要があります。その将来性は不確実性を伴うものであり、当社の現在及び将来における事業についてもこのようなリスクが付随しています。
一般的に、製品上市に至る医薬品開発の過程は長期かつ多額の費用を要し、開発が成功する確率は決して高くなく、開発のいずれの段階においても中止や遅延の判断をすることは稀ではありません。医薬品開発においては、様々な開発過程を段階的に進めていく必要があり、それぞれの段階において開発続行の可否が判断されます。従って、その開発途上で中止の決定を行うことは稀なことではなく、開発が順調に進み製品化される確率は低いものとされています。また、開発に成功し、上市された後も、定期的または臨時で当該時点における医学・薬学等の学問水準に照らして、有効性及び安全性を確認するために再評価が行われ、有用性が認められないとされた場合、あるいは重篤な副作用等により健康被害が拡大する恐れがある場合(詳細は「カ.副作用に関するリスクについて」を参照)には、有用性または副作用を原因として承認が取り消されるリスクがあります。このようなリスクを低減・分散するため、当社ではパイプラインを複数保有するとともに極力ヒトでPOC(注1)が確認された開発候補品を優先して導入するよう努めていますが、当社のような小規模な製薬ベンチャー企業にとって、ひとつの開発候補品がパイプラインから脱落することの影響は大きく、その場合当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(注1) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。
当社が開発を進めている製品から収益を得るためには、当社単独あるいは第三者と共同で、これら新薬候補品の開発、規制当局からの承認、製造及び販売のすべての段階において成功を収める必要があります。しかしながら当社は、これらの活動において必ずしも成功しない可能性もあり、また、成功したとしても当社の事業を継続するために必要な採算性を確保できない可能性もあります。当社が現在開発を進めているパイプラインのうちトレアキシン®凍結乾燥注射剤は現在、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施しています。トレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)については、承認申請済みのRTD製剤は2021年第1四半期を発売予定時期と想定して準備中、RI製剤については安全性の確認を主目的とした治験を進めております。リゴセルチブについては、日本における臨床開発を当社が担当しており、注射剤で再発・難治性の高リスクMDSを目標効能とした国際共同第Ⅲ相試験を実施しています。経口剤においても同様に、日本における臨床開発を当社が担当し、初回治療の高リスクMDSを対象としたアザシチジンとの併用による国際共同試験に参加することを視野に準備を進めております。さらに、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについては、天然痘を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売・製造に関する独占的権利を取得しており、日本及びグローバル展開において事業価値の最大化を図るべく、計画を進めてまいります。当社はこれらの開発を推進し、製品上市に至ることにより収益を獲得するべく事業活動を行っています。また、開発品によっては開発・販売に関して他の製薬企業と提携契約を締結し、早期に収益化を図ることも想定しています。しかしながら、これらのパイプラインが製品として上市するまでには相当の時間を要することが予想され、また、製品として上市される、あるいは他の製薬企業と提携契約を締結できる保証はありません。なお、当社は、現時点で想定している適応疾患の選定や提携手法・マーケティング手法等について、既承認の医薬品の市場規模やマーケティング実績等をもとに十分に将来の採算性を見込めるものと判断していますが、万一この判断が誤っていた場合、あるいはこの判断の基礎となる状況に変化が発生し当社がその変化に迅速に対応できなかった場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社が参画する医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事に関する法律及び薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けており、当社は医薬品医療機器等法をはじめとする現行の法的規制及び医療保険制度、それらに基づく医薬品の価格設定動向等を前提として事業計画を策定しています。しかしながら、当社が開発を進めている製品が現実に製品として上市されるまでの間、これらの規制や制度・価格設定動向等が変更される可能性もあります。もしこれらに大きな変更が発生した場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は日本のみならず、経済成長とともに医療ニーズの拡大が予想されるアジアをはじめとしたグローバル地域についても戦略事業地域として位置付け、医薬品事業を展開しています。現在、トレアキシン®凍結乾燥注射剤は韓国、台湾、シンガポールにおいても販売されており、今後さらに抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについてアジアのみならず欧米を含む世界全域における開発・販売・製造に関するグローバル事業展開を計画しております。海外市場においても、医薬品の開発・販売事業の展開に際し、一般的に多額の資金と事業リスクを伴うため、当社では開発品によっては海外の開発権、販売権を他の製薬企業等に導出し、投資資金及び事業リスクの低減を図っています。当社が保有する権利の導出にあたっては、慎重にデューディリジェンスを実施した上で企業選定を行い、かつ導出後も適宜モニタリングを実施していますが、導出先の経営状況や各国の規制、競争環境等の変動により、当初期待していた通りには開発、販売が進捗せず、計画通りのマイルストーン収入、ロイヤリティ収入等が得られないことにより、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。同様に、他の製薬企業等との共同開発または共同販売、或いは委受託契約等のパートナーシップの戦略的な活用も検討していますが、パートナーの経営状況や各国の規制、競争環境等の変動により、当初期待していた通りには開発、販売が進捗せず、計画通りの収益が得られないことにより、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの製薬企業や研究機関等により、激しい競争が繰り広げられており、その技術革新は急速に進歩している状態にあります。これらの競合相手の中には、技術力、マーケティング力、財政状態等が当社と比較して優位にある企業が多数あり、当社開発品と競合する医薬品について、有効性の高い製品を効率よく生産・販売する可能性があります。従って、これら競合相手との開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動における競争の結果次第で、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
医薬品は、臨床試験段階から市販後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。これらのうち重篤または予期せぬ副作用が発現した場合、賠償問題の発生や、状況次第では臨床試験の遅れ、開発中止に至るリスクを伴います。更に、健康被害が拡大する恐れがある場合、承認取消・販売中止に至るリスクを伴います。賠償問題に関しては、当社は必要な損害保険に加入することにより、このような事態が発生した場合の財政的負担を最小限に留めるべく対応していますが、賠償額が当該保険により補償される範囲を超える可能性は否定できません。このような場合は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
医薬品の開発及び製造には、製造物責任賠償のリスクが伴います。当社は将来、開発したいずれかの医薬品が健康被害を引き起こした場合、または臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事項が発見された場合には、製造物責任を負い、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるイメージ低下により、当社及び当社の医薬品に対する信頼が損なわれ、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、開発品の上市後、製品を安定供給することが必要となりますが、製造委託先の技術上もしくは法規制上の問題、又は火災その他の災害による操業停止等により、製品の供給が休止もしくは著しく停滞した場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は自社で研究設備・製造設備は保有せず、がん及び血液領域を中心とした希少疾病分野(注2)を中心に、主にヒトでPOCが確立された開発候補品を製薬企業、バイオベンチャー企業等より導入し、これらを日本並びにアジア諸国(中国、韓国、台湾及びシンガポール等)、更にはグローバルで医薬品として開発・販売することにより収益化を図るビジネスモデルを採用してきました。それに加えて今後は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV)に関しての独占的グローバルライセンス契約をキメリックス社と締結し、天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得したことにより、高品質の医薬品供給のための一貫体制を備えたグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。
パイプラインの開発・販売においては、製薬企業と提携することも計画していますが、これらの条件を満たす開発候補品を継続的に導入し、また、これらの提携先企業を確保できる保証はありません。また、導入候補品(注3)については主に希少疾病分野を対象としていることから、当社が期待する売上高が確保できない可能性もあります。更に、導入元の企業における開発が遅延または失敗した場合、日本における開発に影響が出る可能性があります。グローバル展開に関しては開発・販売・製造の自社及びパートナー企業による計画の推進において、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、当初の計画通り事業が進捗しない可能性があります。これらのような場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。上記に加えて、医薬品業界の競争環境や、当社の財政状態等の変化に伴い、今後、当社のビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社の事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(注2) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いことをその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が10年になる等の優遇措置があります。
(注3) 導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物または製品を指します。
当社は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについて天然痘疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における製造の独占的権利を所有しているものの、現時点では生産設備を持たない製薬ベンチャー企業であるため、開発品の臨床試験並びに上市後の販売においては他社より製品の供給を受けることとなります。この場合、製品供給元の財政状態、生産状況などによっては、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、パイプラインの開発・販売については、2021年度より自社で販売を開始する計画はあるものの、現時点では製薬企業との提携に重点を置いた事業計画を有しています。しかしながら、相手先企業の経営環境の極端な悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、当初の計画通り事業が進捗しない可能性があります。また、契約書に定められた契約解除事項に抵触した場合等には、期間満了前に終了する可能性もあります。その場合には当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、一般に当社のような製薬ベンチャー企業の提携においては、製品上市前の収益として、「契約一時金」「開発協力金」「マイルストーン」を見込むものとなりますが、このうちマイルストーンは所定の成果達成に基づく収益であることから極めて不安定で予測の困難な収益であり、開発の進捗に遅延等が発生した場合には当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は医薬品の開発活動において様々な知的所有権を使用していますが、これらは基本的に製薬企業、バイオベンチャー企業等より使用許諾を受けた権利です。しかしながら、当社が導入する開発候補品について、導入元企業における出願中の特許が登録に至らない可能性があります。また、当社が使用許諾を受けた知的所有権に優位する知的財産権が第三者によって生み出される可能性を完全に回避することは困難であり、こうした結果、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、当社の開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。当社は、今後も知的財産権に関する問題を未然に防止するため、開発候補品の導入にあたっては、弁護士との相談や特許事務所を通じた特許調査を適宜実施していきますが、第三者の知的所有権の侵害に基づく将来の係争を完全に回避することは困難であり、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、当社が導入する開発候補品は、必ずしも特許で保護されているとは限りません。もっとも、当社の開発候補品が特許を有していない場合であっても、当該開発候補品が規制当局より製造販売承認の際に再審査の指定を受けた場合には、再審査期間は後発医薬品の参入が実質的に制限されるため、一定期間市場独占的な保護を受けることとなります。
当社パイプラインの開発並びにその他事業遂行等に関する重要な機密情報が流出するリスクを低減するために当社は、役職員、科学的諮問委員会(SAB)メンバー、外注委託先、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めています。しかしながら、役職員、SABメンバー、外注委託先、取引先等によりこれが遵守されなかった場合等には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には当社の事業や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社の事業展開上重要と考えられる契約につき、将来、期間満了、解除、その他何らかの理由により契約の終了が生じた場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、2005年3月に設立された、社歴の浅い企業です。また当社は、創業時より開発候補品の導入活動を開始し、ゼロベースから医薬品開発事業を立ち上げ、2010年8月に、創業以来初となる製品売上による収益を計上しました。今後、未だ経験していない事業上のトラブルが発生する可能性はありますが、当社の業績に影響を及ぼすような外部環境の変化を厳密に予想することは現状においては困難が伴います。従って、今後当社が成長を続けられるか等を予測する客観的な判断材料として過年度の経営成績だけでは、不十分な面があると考えられます。
当社の研究開発活動については、業務受託企業(CRO(注4)等)を活用することにより、比較的少人数による開発体制を敷いていますが、今後のグローバル展開を含む既存パイプラインの開発推進及び新規開発候補品のパイプライン化に伴い、更なる研究開発人員の増加を必要とする可能性があります。しかしながら、何らかの理由により業務受託企業との関係が解消された場合や、計画通りの人員の確保ができない場合、あるいは既存人員の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(注4) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。
当社の代表取締役社長の吉田文紀は、当社創業者として創業当時より経営全般にわたる事業の推進者として中心的な役割を担ってまいりました。従って、何らかの理由により同氏の業務の遂行が困難となった場合には、当社の事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、新規開発候補品の導入評価に関する社長の諮問機関として、科学的諮問委員会(SAB)を組成し、優れた実績と経験を有すると判断される臨床医や基礎科学者を招聘しています。SABは毎年2~3回開催され、世界中から集まる膨大な導入候補品について、医療ニーズの高さや収益性などの観点も踏まえ、リスクバランスのとれたポートフォリオを構築するために、それぞれの専門の立場から活発に意見交換や議論を行っています。当社は、今後も優秀なSABメンバーの確保に努めてまいりますが、現在のメンバーとの間の契約が解除、期間満了、更新拒絶、その他の理由で終了するなど、何らかの理由によりメンバーの確保が困難となった場合や、メンバーの流出が生じた場合には、当社の開発候補品導入の推進に影響を及ぼす可能性があります。
当社の主要な経営指標等の推移は以下のとおりです。
当社は、現在まで、第4期を除き、研究開発費やその他一般管理費の合計が収益を上回り、営業損失、経常損失、当期純損失を計上しています。このため、過年度の財務経営指標は期間業績比較を行うための材料としては不十分であると考えられ、今後の当社業績を予測する材料としては不十分な面があります。
当社の過去5期間の研究開発費の推移は以下のとおりです。
当社は、今後更に研究開発活動を推進する計画であり、累積損失は増加傾向にあります。2021年度には自社販売体制の下、トレアキシン®の適応拡大による製品販売収入の拡大等により黒字化(収益化)を達成することを経営目標に掲げておりますが、各種変動要因により目標の達成が妨げられる可能性があります。2021年度以降についても、リゴセルチブの注射剤及び経口剤または抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの早期の承認取得に伴う製品販売収入の確保、並びに製薬企業等との提携に基づき発生する収入等により、研究開発投資の早期回収及び経営成績の継続的な改善を図ってまいりますが、当社の想定どおりに早期回収及び継続的な改善が実現する保証はありません。
当社は、製薬ベンチャー企業であり、臨床段階にある開発品が上市し、製品販売収入並びにロイヤリティ収入等の安定した収益を継続して計上できる体制となるまでは、多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため、創業以来第4期を除き当期純損失を計上しており、第15期事業年度末には△25,919,496千円の繰越利益剰余金を計上しています。当社は、パイプラインの開発を計画通り、迅速、効率的かつ着実に推進することと自社販売体制への移行により、早期の利益確保を目指していますが、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、当社の事業が計画通りに進展せず、当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。
当社はグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティファーマへの転換を目指す製薬ベンチャー企業として研究開発費用をはじめとする多額の事業展開資金を必要とします。事業計画が計画通りに進展しない等の理由から資金不足が生じた場合には、戦略提携内容の変更、新規提携契約の獲得、新株発行等の方法による資金確保に努めますが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合には、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
当社には現在、税務上の繰越欠損金が存在しています。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられておらず、今後も数年間はこの状態が続くものと想定しています。しかしながら、現在の繰越欠損金の控除制度が改正されるなどの理由により、想定よりも早期に繰越欠損金が解消され、これによる課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられることとなり、現在想定している当期純利益若しくは当期純損失及びキャッシュ・フローの計画に影響を及ぼす可能性があります。
当社は創業以来配当を実施していません。当社の現時点における事業ステージは、医薬品開発とグローバル展開を含む商業化及び自社販売体制の下での持続的成長に向けた先行投資の段階にあるため、今後も当面は資金を財務体質の強化及び研究開発活動の継続的な実施と新規開発候補品の導入に優先的に充当し、配当は行わない方針です。しかしながら、当社では株主への利益還元を経営の重要な課題と認識しており、今後の経営成績及び財政状態を勘案し、利益配当についても検討してまいります。
新規開発候補品の導入等による事業規模の拡大や予期せぬ外部環境の変化に伴う必要経費の増加または想定収益の変動により、次期見通し及び中長期事業計画の想定を大幅に超えた資金需要の増加が生じた場合、株式発行等による追加の資金調達を実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
当社は、当社取締役、従業員等の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を導入しており、旧商法第280条ノ19、旧商法第280条ノ20及び旧商法第280条ノ21、並びに、会社法第236条、第238条、第239条及び第240条の規定に基づき、新株予約権を取締役、従業員に対して付与しています。
また、当社は、2016年4月6日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第3回無担保転換社債型新株予約権付社債(発行価額の総額30億円)並びに第39回新株予約権(発行価額の総額9,776千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額943,592千円)の発行決議をそれぞれ行い、2017年8月9日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第42回新株予約権(発行価額の総額32,560千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額1,892,000千円)の発行決議を行いました。そして、2018年4月9日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第45回乃至第47回新株予約権(発行価額の総額23,100千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額10,440,000千円)の発行決議を行いました。これらのうち、2019年12月末現在において、第47回新株予約権の目的となる株式数1,675,000株が残っています。
2019年12月末現在における上記新株予約権の目的となる株式(以下「潜在株式」という)数は合計1,675,000株となり、発行済株式総数の6.3%を占めております。今後、これらの潜在株式の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。また、当社は今後も優秀な人材確保のために、同様のインセンティブプランを継続して実施する可能性があります。従って、今後付与する新株予約権の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
一般的に、ベンチャーキャピタル及び投資事業組合による株式の所有目的は、株式上場後に株式を売却してキャピタルゲインを得ることにあるため、当社株主であるこれらのベンチャーキャピタル及び投資事業組合が、所有する株式の全部または一部を売却した場合には、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
当社は現時点では生産設備を持たずに他社より製品の供給を受けており、またパイプライン拡充のために新規開発候補品を導入する際に支払われる一時金を想定し、予め相当の金額を外貨預金あるいは外国為替先物予約にて手当をしています。これらの外貨建て資産は時価評価にて毎期財務諸表に表示していますが、将来の為替変動によってその評価損失が発生するリスクがあり、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社が事業展開している地域や拠点において、災害(地震、台風、火災等)・疫病等が発生し、人的・物的被害の発生、業務停止及び遅延が生じた場合、社会的信用の失墜や、補償などによって、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1)事業の進捗の状況
[製品の不良品問題について]
当社は、2019年8月7日に公表した業績予想修正の理由に記載しましたように、トレアキシン®の国内販売においてアステラス製薬株式会社の連結子会社であるアステラス ドイッチランド社(以下「アステラスドイツ」という)から輸入した凍結乾燥注射剤において異物の混入及び外観不良などが両者間で締結した供給契約で定めた品質基準を著しく超えた割合で認められたことを受けて、当社から販売委託先のエーザイ株式会社へのトレアキシン®100mg製剤の出荷時期が当初の予定よりも遅延しました。この影響により当事業年度の売上高は、2,837,753千円となり、当初計画比36.4%の減少、営業損失は4,301,615千円(当初計画は営業損失3,587百万円)となりました。
今後同様の品質問題を繰り返さないようアステラスドイツに対して厳重に抗議するとともに代替バッチの製造と迅速な出荷を強く要求した結果、現在代替バッチの供給を受けておりますが、一部代替バッチの不安定な納期と継続する高い不良品率により、依然、トレアキシン®の在庫レベルは低い状況が続いており、当社はアステラスドイツに対して供給元としての責務を果たすよう引き続き強く要請しております。当社は、製薬企業の使命である高品質の医薬品の安定的供給の責任を果たすべく、アステラスドイツへ改善を求めることを含めて協議を継続してまいります。これに対してアステラスドイツはCAPA(改善措置・予防措置)プログラムを設置しておりますが、その有効性については現時点では確認ができておりません。
[自社販売体制の構築について]
当社は、販売委託先であるエーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)との事業提携契約が2020年12月に満了となることから、2018年10月よりトレアキシン®の国内販売について自社による販売体制構築の準備を開始しました。2021年度の収益化とその後の収益の持続的拡大は当社にとっては最重要課題であり、自社販売体制への移行により今後の事業展開を盤石なものとすることを計画しています。
当事業年度においては、自社販売体制における営業組織の中核と位置づけているトレアキシンマネージャーの増員と研修を計画通りに実施した上で、2019年7月より各トレアキシンマネージャーが担当地域に根ざした情報提供活動を開始しており、2020年度上半期の全国営業組織の構築完了に向けて着実に進展しました。当第4四半期においては、全国営業組織完成に必要となるリージョナルセールスマネージャーとトレアキシンマネージャーを追加採用したことに加えて、流通及び物流機能を整備すべく医薬品卸売業者との業務提携及び物流センターの東日本地域と西日本地域の2拠点化の確立についても大きな進捗を達成しております。さらには社内のインフラ整備としてERPを含めた情報システムについても鋭意準備を進めており、これらの活動により、当社が目指すより高度の専門性と豊富な経験に基づき高い生産性に裏付けられたハイパフォーマンスの営業組織の構築は順調に進捗しました。
[抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]
トレアキシン®については現在、業務提携先のエーザイを通じ、国内販売をしています。未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫(低悪性度NHL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)(2016年12月に製造販売承認を取得)、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫(注1)(低悪性度NHL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)(2010年10月に製造販売承認を取得)、慢性リンパ性白血病(CLL)(2016年8月に製造販売承認を取得)を適応症として悪性リンパ腫領域においては幅広く使われております。2018年7月に日本血液学会が発行した造血器腫瘍診療ガイドラインにトレアキシン®とリツキシマブの併用療法(BR療法)が新たに収載され、既承認のすべての適応症において、標準的治療の選択肢として推奨されることになりました。これにより名実ともに悪性リンパ腫における標準療法としてトレアキシン®が位置づけられました。高い専門性を具備した自社販売体制に切り替えることにより欧米並みの高い市場占有率を達成することを計画しております。
本剤については、既に承認を取得した適応症に加え、4つ目の適応症である再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)の第Ⅲ相臨床試験を実施し、2019年11月に試験成績の主要評価項目である奏効率において期待奏効率を上回る良好な結果が得られたことを発表しました。現在、2020年第2四半期に向けて承認申請を行うべく申請の準備に入っております。本適応症の追加については、優れた標準療法がないことから医療現場の切実なニーズがあり患者団体並びに関係学会からも審査当局に対してBR療法を使えるようにして欲しいという強い要望書が出ておりました。
2017年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤(注2))に関して日本における独占的ライセンス契約を締結しております。RTD製剤については医薬品医療機器総合機構との相談を経て、既に2019年9月に承認申請を完了し、2021年第1四半期を発売時期と想定しております。RI製剤につきましては2018年11月に安全性の確認を主目的とした治験を開始し、2019年4月の最初の患者登録以来、症例集積は順調に進捗しており2020年1月末時点で31症例の登録が完了しております。当治験終了後に早期に承認申請を行った上で2022年上半期の発売を目指しています。本製剤は、投与時間が、従来の凍結乾燥注射剤及びRTD製剤の60分に対して投与時間が10分間と大幅に短縮されるため患者さんと医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となることから大きな付加価値を提供することができます。更には、液剤の製剤ライセンスによる複数の特許保護を通じてトレアキシン®の製品寿命を2031年まで延長することが可能となり開発戦略を含めて事業価値の最大化を図ってまいります。
また、2018年7月には製造販売承認事項に係わる一部変更の承認を取得したことにより、低悪性度NHLの代表的な組織型であるCD20陽性の濾胞性リンパ腫(FL)に対して、リツキシマブのみならず新規の抗CD20抗体製剤との併用が可能となり、新たな治療選択肢として2018年8月に販売開始されたオビヌツズマブ(注3)との併用療法が患者さんに提供されております。また、2019年3月に腫瘍特異性T細胞輸注療法(注4)の前処置に関する一部変更の承認を取得したことにより、2019年5月に薬価収載された国内初のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法(注5)「キムリア®点滴静注」(注6)の前処置としてトレアキシン®の使用が可能となりました。再生医療等製品の前処置としての使用方法の広がりによって悪性リンパ腫における標準療法としてのトレアキシン®の位置づけがより強固なものとなりつつあります。
なお、トレアキシン®の更なる可能性を探求するため実施していた進行性固形がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験および全身性エリテマトーデス(SLE)に対する治療効果の確認を目的とした前臨床試験については完了し当初の試験目的は達したものの開発は中止を決定しました。限られた経営資源を最大限に活用することを鑑み、事業戦略的な判断により新規にライセンスを取得した後述の抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの国内及び海外における開発を優先させることにしました。
(注1) 非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。
(注2) RTD製剤及びRI製剤は、従来の凍結乾燥注射剤(FD)とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、さらに急速静注であるRI製剤(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の60分間から10分間に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、さらには医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。
(注3) オビヌツズマブ(ガザイバ®:販売元 中外製薬株式会社):非ホジキンリンパ腫の治療薬として国内外の治療ガイドラインで推奨されているリツキシマブと同様、幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20に結合する、糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を直接、および体内の免疫系とともに攻撃し、破壊するようデザインされています。
(注4) 腫瘍特異性T細胞輸注療法とは、がん患者さん自身の腫瘍特異的T細胞(がん細胞を特異的に認識するT細胞)に、体外で人工的にがん特異性を付与し、細胞を増幅した後に患者さんに投与する療法です。
(注5) キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、腫瘍特異性T細胞輸注療法の中でも、腫瘍細胞上の膜抗原を認識する抗体の抗原結合部位とT細胞受容体の細胞内ドメインを組み合わせたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor; CAR)をコードする遺伝子をT細胞に導入して増幅・輸注する療法です。CARの標的としてB細胞上に発現するCD19を用いた臨床試験では、B細胞性腫瘍患者にCD19指向性CAR導入T細胞が投与され、著明な臨床効果が得られています。
(注6) キムリア®点滴静注(一般名 チサゲンレクルユーセル:販売元 ノバルティスファーマ株式会社):国内で初めて承認されたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法で、再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を適応症として2019年3月に製造販売承認を取得し、2019年5月に薬価収載されました。
[抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium<リゴセルチブナトリウム>)]
リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が実施している国際共同第Ⅲ相臨床試験の日本における臨床開発を当社が担当しており、国内では2015年12月に試験が開始され、2019年12月末時点で48症例が登録されています。本試験は、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加して実施中です。オンコノバ社の2019年12月の発表によれば、2019年11月時点で全世界における目標の360症例に対して症例集積が90%を超えており、トップライン(主要評価項目)の結果を2020年度上半期に報告するとしております。この試験の成績を基に、欧米と同時期に日本での承認申請を行うことを計画しています。
リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が米国において初回治療の高リスクMDSを目標効能とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(アザシチジン(注7)併用)を完了し、リゴセルチブ経口剤とアザシチジンを併用した際の有効性および安全性が示唆されています。当社はリゴセルチブ経口剤の日本人での忍容性及び安全性を確認するために2017年6月に国内第Ⅰ相臨床試験を開始し、2017年10月の最初の患者登録以来着実に症例集積を推し進め、2019年6月に症例登録を完了しました。同試験終了後、アザシチジンとの併用の第Ⅰ相試験を速やかに実施し、リゴセルチブ経口剤についても欧米に遅れることなく日本での承認申請を行うべく、現在オンコノバ社が検討している初回治療の高リスクMDSを対象としたアザシチジンとの併用による国際共同試験に参加する予定です。本国際共同試験については2019年12月の第61回米国血液学会議(ASH: The American Society of Hematology)で発表されたデータを基に未治療高リスクMDSを対象とした第Ⅱ/Ⅲ相アダプティブ臨床試験(Phase 2/3 adaptive trial)のデザインを検討中であることをオンコノバ社は2019年12月に発表しております。
(注7) アザシチジン(ビダーザ®:販売元 日本新薬株式会社):2011年にMDSに対する第Ⅲ相臨床試験において、初めて生存期間の延長が認められたことから承認された低メチル化剤(注射用)で、現在、造血幹細胞移植が難しいMDS患者に対する第一選択薬として使用されています。MDSは一種の前白血病であり、その病態にはDNAの過剰なメチル化による癌抑制遺伝子の発現の低下が大きく関係していると考えられています。アザシチジンなどの低メチル化剤はDNAのメチル化を阻害する作用により癌抑制遺伝子の発現を回復させ白血病への進行を抑えると考えられています。
[抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:Brincidofovir<ブリンシドフォビル>)]
当社は2019年9月30日にキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」という)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「BCV IV」及び「BCV Oral」という)(注8)に関しての独占的グローバルライセンス契約を締結しました。当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得したことにより、高品質の医薬品供給のための一貫体制を備えたグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。
開発については、国内においてはBCV IVにより「空白の治療領域」となっている医療ニーズの高い造血幹細胞移植後のウイルス性出血性膀胱炎(vHC)(注9)を最初の疾患ターゲットとし、本剤を必要とする患者さんに一日も早く提供できるよう、世界に先駆けてまず国内で臨床開発を進め承認を取得する計画でおります。また同時に、BCV IVによる欧米を含めた国際共同臨床試験を実施しグローバル展開を図ってまいります。BCV IVは造血幹細胞移植のみならず臓器移植含め移植領域全般にわたり広く使われることが考えられ、腎臓移植後のウイルス感染症に対する臨床開発も計画しております。日本市場に比べ臓器移植の市場規模が大きい欧米市場及び中国市場を含めたアジア地域での事業展開を睨み、対象疾患の地域特性を生かしたパートナーシップも視野に入れて現在検討中です。2016年5月に設立した100%出資の米国子会社 SymBio Pharma USA, Inc.(本社:米国カリフォルニア州メンローパーク)の戦略的活用も含めて事業価値最大化の可能性を追求してまいります。BCV Oralにつきましては、今後、製剤改良を含めて開発計画を検討してまいります。BCV IV及びBCV Oralの2製剤の今後のグローバル開発については、現在、海外の各専門領域の有力な研究者の方々と検討中です。本剤については既にキメリックス社による欧米における臨床試験においてBCV Oralが高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、これらの知見を基にグローバルの臨床試験のデザインを検討してまいります。
(注8) ブリンシドフォビル(BCV)は、シドフォビル(CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦は未承認)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプロピル:HDP)が結合した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく細胞内へ移行した後、細胞内ホスフォリパーゼによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、生成された活性化体(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗ウイルス活性が飛躍的に向上した化合物です。また、HDP結合により、OAT-1トランスポーターによる腎尿細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離するレベルは低いため、CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できます。
(注9) ウイルス性出血性膀胱炎(vHC):造血幹細胞移植後に頻発するウイルス感染症の中でも、BKウイルスおよびアデノウイルスによる出血性膀胱炎は、頻尿、腹痛、排尿痛などが患者を苛み、国内での比率が高い非血縁者ドナーおよび臍帯血移植において発症しやすく、免疫システムの再構築に要する時間的問題もあいまって治療に難渋するケースが少なくありません。重症化すると播種性の感染症を来して致死性となる例や腎不全をもたらして致死となる例も報告されています。シドフォビル(CDV)など現在治療に用いられている薬剤は未承認あるいは適応外です。
[自己疼痛管理用医薬品 SyB P-1501]
当社が2015年10月にザ・メディシンズ・カンパニー社(本社:米国ニュージャージー州、契約の相手先は同社完全子会社であるインクライン・セラピューティクス社)から導入したSyB P-1501については、同社の本製品の事業の継続性について当社が懸念を抱く事象が生じたため、患者さんの利益を最優先する観点から2017年4月21日より新規症例登録を一時的に中断しておりました。
その後、当社は2017年10月11日に、ザ・メディシンズ・カンパニー社によるライセンス契約の不履行に起因して生じた損害の賠償として82百万米ドル(約90億円)の支払いを求める仲裁を国際商業会議所の規定に基づき申し立て、同社が欧米市場で本製品の事業活動の中止・撤退を決定したことに伴い、ライセンス契約に基づく義務の履行について十分な保証を当社に対して提供できなかったことはライセンス契約の重大な違反である旨仲裁で主張しています。また、2017年11月30日に同社によるライセンス契約の違反が約定期間内に治癒されなかったことを受けて、ライセンス契約を解除し、本製品の開発は2018年2月9日に中止しました。
ザ・メディシンズ・カンパニー社との仲裁手続は現在も継続中です。なお、2020年1月6日にノバルティスAG社(本社:スイス)がザ・メディシンズ・カンパニー社の買収を完了したことを発表しております。
SyB L-0501については、韓国、台湾、シンガポールにおいても販売されており、当社の製品売上は計画を上回る水準で順調に推移しました。
当社は常時複数のライセンス案件を検討しており、新薬開発候補品のライセンス権利取得に向けた探索評価の継続的な実施を通じてパイプラインの拡充を行うことにより、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として長期的な事業価値の創造を目指しております。
また、100%出資の米国子会社 SymBio Pharma USA, Inc.をグローバル事業の拠点として新薬候補品の全世界におけるライセンス権利を積極的に取得することにより、米国、日本、欧州をはじめとする主要市場において開発・商業化を目指して、グローバル・スペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。
以上の結果、当事業年度の売上高は、トレアキシン®の製品販売等により、2,837,753千円となり、売上高全体で前年同期比26.0%減少となりました。
一方、販売費及び一般管理費は、新規開発品である抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの導入にかかる契約一時金、トレアキシン®の注射剤、経口剤及びリゴセルチブの注射剤、経口剤の臨床試験費用が発生したこと等により、研究開発費として2,441,552千円(前年同期比33.2%増)を、その他の販売費及び一般管理費として2,724,814千円(前年同期比36.5%増)を計上したことから、合計で5,166,366千円(前年同期比34.9%増)となりました。
これらの結果、当事業年度の営業損失は4,301,615千円(前年同期は営業損失2,656,072千円)となりました。また、受取保険金2,736千円を主とする営業外収益4,331千円を計上した一方、為替差損54,755千円、株式交付費13,932千円、支払手数料10,457千円を主とする営業外費用79,372千円を計上したこと等により、経常損失は4,376,655千円(前年同期は経常損失2,748,730千円)、当期純損失は4,376,258千円(前年同期は当期純損失2,752,533千円)となりました。
なお、当社の事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
当事業年度末における総資産は、未収消費税等が150,469千円、売掛金が137,554千円、ソフトウエア仮勘定が125,120千円、ソフトウエアが44,028千円、建設仮勘定が21,513千円、立替金が10,644千円、前払費用が10,629千円それぞれ増加した一方、現金及び預金が910,525千円、商品及び製品が533,824千円それぞれ減少したこと等により、前事業年度末に比べ965,467千円減少し、5,273,955千円となりました。負債の部については、買掛金が605,187千円、為替予約が16,427千円それぞれ減少した一方、未払金が135,845千円、未払法人税等が16,506千円それぞれ増加したこと等により、前事業年度末に比べ463,784千円減少の873,838千円となりました。
純資産の部については、資本金が1,898,059千円、資本準備金が1,898,059千円、新株予約権が91,016千円それぞれ増加した一方、当期純損失の計上により利益剰余金が4,376,258千円減少し、自己株式が15,059千円増加したこと等により、前事業年度末に比べ501,683千円減少の4,400,116千円となりました。この結果、自己資本比率は71.7%と前事業年度末に比べ1.6ポイント増加しました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株の発行等により増加したものの、税引前当期純損失の計上により、前事業年度末に比べ910,525千円減少の3,910,830千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
たな卸資産533,824千円の減少、株式報酬費用127,144千円の計上、未払金124,233千円の増加、為替差損83,370千円の計上、減価償却費38,085千円の計上、株式交付費13,932千円の計上、支払手数料10,457千円の計上等による営業活動資金の増加要因はあったものの、税引前当期純損失4,372,458千円の計上、買掛金605,187千円の減少、未収消費税等150,469千円の増加、売上債権137,554千円の増加、前払費用18,649千円の増加、立替金10,644千円の増加等より、全体では4,350,738千円の減少(前年同期は2,324,547千円の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
無形固定資産の取得による支出192,013千円、有形固定資産の取得による支出24,498千円等により、全体では216,462千円の減少(前年同期は26,180千円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
自己株式の取得による支出20,871千円、株式の発行による支出11,582千円による財務活動資金の減少要因はあったものの、新株予約権の行使による株式の発行による収入3,771,476千円等により、全体では3,740,045千円の増加(前年同期は4,272,056千円の増加)となりました。
(生産実績)
当社は生産を行っていないため、該当事項はありません。
当事業年度の商品仕入実績は次のとおりであります。
(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである
ため、セグメント別の記載を省略しております。
2.金額は仕入価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。
当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである
ため、セグメント別の記載を省略しております。
2.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は
次のとおりであります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社は、新規開発品の導入と、その開発に対して積極的に資金を投下しておりますが、当社は創業間もないベンチャー企業であり、また開発第1号品であるSyB L-0501の販売収益がこれらの資金需要を賄うには未だ十分ではないことから、これらの資金は主に公募増資や第三者割当による新株の発行により調達しています。
当社の経営上の重要な契約は以下のとおりであります。
(2) 技術導出等
当社は、医療上のニーズは極めて高いものの、開発の難度が高く、また大手製薬企業が事業効率面、採算面から手を出しにくいために開発が遅れている、空白の治療領域に焦点を当て、中でも高い専門性が求められ難易度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域に特化し、医薬品の研究開発活動を行っています。
当社は、新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発を行い、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、空白の治療領域を埋めるために新薬の開発・提供を行うという企業使命を果たしてまいります。
当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであり、当事業年度における研究開発費の総額は
当社は研究設備を保有せず、開発候補品を他の製薬企業、バイオベンチャー企業等から導入することにより、新薬開発を行っています。開発候補化合物については、主にヒトでPOCが確立され、前臨床試験データ、臨床試験データがある化合物を対象とすることにより、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発開始から承認取得までの期間を短縮することが可能となります。
これらの開発候補化合物の探索は、当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用し、社内の経験を有した専門スタッフによる絞り込みを最初に行い、その後、SABにおいて、第一線でこの分野における治療の研究に携わる経験豊富な社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社はSABを年2~3回開催し、研究開発全般に関する議論・情報交換を活発に行っています。
開発候補品の導入後は、社内の経験を有した開発スタッフが、短期間で製造販売承認を取得するための開発戦略策定とその実行等の付加価値の高い業務に専念し、その他の定型的な開発業務はCRO等のアウトソーシング先に委託しています。
なお、当社の研究開発人員数は44名となっております。今後、パイプラインの開発の進捗に伴い、必要に応じて開発人員の拡充を図ってまいります。