第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、元米国アムジェン社(注1)本社副社長で、同社の日本法人であるアムジェン株式会社(現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の創業期から約12年間社長を務めた吉田文紀が、2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)(注2)に応えていくことにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。

当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマです。当社は、大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。

 

(注1) バイオ医薬品業界最大手。1980年、米国カリフォルニア州サウザンド・オークスにおいて、AMGen(AppliedMolecular Genetics)として設立。日本においては、1993年5月1日にアムジェン株式会社として業務を開始しました。なお、2008年2月に武田薬品工業株式会社がアムジェン株式会社の株式を100%取得後、現在は武田薬品工業株式会社が全事業を譲受しています。

(注2) アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs)とは、未だ満たされない医療上の必要性を意味し、患者さんや医師から強く望まれているにもかかわらず有効な既存薬や治療がない状態を指します。

 

 (2)目標とする経営指標

当社は製薬企業として、自社販売体制の下で新薬を継続的に上市していくことが企業価値の更なる向上を図る上での重要な要素と考えており、営業組織及び流通・物流を含めた営業の一貫体制を構築しました。同時に、継続的に開発候補品を導入し積極的に研究開発活動等に経営資源を投下する方針です。

当社は、SyB L-0501が2010年に国内で製造販売承認されて以来継続して製品販売による売上を主として収益を伸ばしています。事業提携契約が有効な2020年12月まではエーザイとの協業によるトレアキシン®の更なる拡販を推し進め、2021年以降は自社による販売体制への切り替えによる更なる収益の拡大を目指してまいります。また、引き続きリゴセルチブの注射剤及び経口剤の承認取得及び上市、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの国内及び海外における開発開始と商業化、新たなパイプラインの導入・開発推進・承認取得等を通じて、安定的に高収益を確保できる体制の早期実現に取り組んでおります。2021年度に自社販売体制に移行したことによって単年度利益を計上できるまでは、ROEやROAなどの経営指標に関する目標は設定しておりません。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、中期経営計画を実現すべく、主に以下の5つの事業戦略を展開しています。

 

① ポストPOC戦略による開発リスクの軽減

当社の導入候補品は、主として既にヒトでPOCが確認されていることを原則としています。従って、臨床開発ステージが比較的後期段階にある候補品か、既に海外で上市されている製品が対象となります。これらの導入候補品は既に海外で先行して開発が行われており、新薬としてヒトでの有効性・安全性が確認されていることから、開発リスクを軽減でき、また、先行している海外の治験データを活用することにより日本を含めアジアにおける開発期間を短縮するとともに開発コストを低減し、成功確率を高めることが可能となります。

 

② 高度な探索及び評価能力による、優れたパイプラインの構築

当社の新薬サーチエンジンは、製薬企業及びバイオベンチャー企業等との多様なネットワークによって構築され、膨大な化合物の中から、社内の専門家による厳正な評価を経て、有望な導入候補品が抽出されます。これらの導入候補品は更に、第一線で研究に携わる経験豊かな専門家により構成されるSABに諮られ、そのアドバイスと評価を受けた上で導入候補品を決定しています。この開発品導入決定までの高度なスクリーニングプロセスは、既に海外において有効性・安全性が確認された開発品を導入するポストPOC戦略と相まって開発リスクの軽減と開発期間の短縮につながることになり、また、候補品が医療の現場において求められるものかどうかの医療ニーズの充足度に対する理解、及び上市後の収益予測の精度向上に貢献しています。

 

③ ラボレス・ファブレス戦略による固定費抑制

当社は、一切の研究設備や生産設備を保有していません。研究設備・生産設備はともに固定費発生源の代表格ですが、当社はこれらを一切保有せずに、開発候補品の探索及び導入後は、開発品の開発戦略策定と実行等の付加価値の高い業務に専念し、そのほかに必要とされる定型的な開発業務は外注しています。これにより低コストの医薬品開発を実現するとともに、財務戦略の機動性を確保しています。

 

④ ブルーオーシャン戦略(注3)による高い事業効率の実現

海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない、あるいは海外で新薬として承認された製品が5年近くも遅れて日本で承認される、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しており、がん患者の難民という言葉も生まれています。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患領域で特に目立っています。特に抗がん剤の市場自体は大きく、また高齢化に伴い現在も拡大傾向にあるものの、抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、極めて高い専門性が求められ、開発の難度が高い半面、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由のひとつといわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。

 

(注3) ブルーオーシャン戦略とは、競合との熾烈な競争により限られたパイを奪い合う市場(レッドオーシャン)を避け、市場を再定義し、競合のいない未開拓な市場(ブルーオーシャン)を創造することで、顧客に高付加価値を与えつつ利潤の最大化を目指す戦略です。

 

 ⑤ アジアからグローバル展開へ

当社はこれまで日本を中心としたアジア各国を対象に事業を展開してまいりました。しかしながら、日本の医療を取り巻く環境が大きく変わっていくなか、アジアに留まっていては大きな発展は望めません。今後はグローバルな展開を視野に入れた開発候補品の探索及び評価を実施してまいります。2019年9月30日にはキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、当社は天然痘疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得しました。

当社は、従来の日本への候補品の導入に限定せず、グローバルな市場への展開を目指して、開発に着手しております。抗ウイルス感染症治療薬ブリンシドフォビルにつき、播種性アデノウイルス(AdV)感染症及び免疫不全状態でのアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、2021年3月10日、米国及び英国を中心とした国際共同第Ⅱ相臨床試験(フェーズ2a)を開始するため、米国についてFDAにINDの申請を行いました。

 

(4)主要な経営課題

当社は、以下の点を主要な経営課題と捉え、取り組んでまいります。

 

① パイプラインの更なる充実について

製薬ベンチャー企業として企業価値を高めるためには、開発候補品を継続的に導入し、パイプラインを充実させていく必要があります。

当社では、抗がん剤 SyB L-0501、SyB L-1101、SyB C-1101、SyB L-1701及びSyB L-1702、抗ウイルス薬 SyB V-1901において開発を実施または計画しています。また、現在、新薬候補品の導入に関して複数の案件を相手先企業と協議しており、パイプラインの更なる拡充に向けて今後も新規の開発候補品の導入を積極的に進めてまいります。

 

② 既存パイプラインのライフサイクル・マネジメントの追求

企業価値を高めるためには、開発候補品の導入だけではなく、導入した新薬候補品の適応症を追加することにより、開発品目あたりの収益の最大化を図る、ライフサイクル・マネジメントを追求することが重要となります。

トレアキシン®は、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応症として製造販売承認を取得しています。再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)については、第Ⅲ相臨床試験において主要評価項目を達成し、2020年5月に製造販売承認事項一部変更承認申請し、2021年3月に承認を取得しました。また、製品ライフサイクル・マネジメントを推進することにより、トレアキシン®の事業価値の最大化を図るべく、イーグル社より導入したトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)につきましては、RTD製剤は2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。RI製剤については安全性の確認を主目的とした治験を進めております。

リゴセルチブについては、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が、骨髄異形成症候群(MDS)を対象として、注射剤による国際共同第Ⅲ相臨床試験(INSPIRE試験)を実施しておりますが、2020年8月に医師選択療法との比較において主要評価項目を達成しなかったことを発表しました。当社は日本における臨床開発を担当しており、INSPIRE試験の追加解析から得られた知見を今後のリゴセルチブの開発に活用するための検討を進めてまいります。

トレアキシン及びリゴセルチブに関して、東京大学医科学研究所との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行い、事業価値の最大化に努めます。

抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについてもアンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象に、日本/アメリカ/ヨーロッパを中心としたグローバル開発を優先的に進めることを決定し、ライフサイクル・マネジメントの追求を通じて収益の最大化を図るとともにグローバル市場を対象に事業展開をするスペシャリティ・ファーマへの転換を進めてまいります。

 

③ 自社による販売体制の構築

当社は、販売委託先であるエーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)との事業提携契約が2020年12月に満了し、自社販売を開始致しました。

当期においては、地域のニーズをくみ上げることで地域のニーズに合致したきめ細かい提案を企画し、より高い生産性をもつ営業組織体制を確立するため、リージョナルマネージャー6名、医薬情報担当者47名を全国に配置するとともに、「ヘマトロジー・エキスパート」9名を各地域に配置しました。

また、全国流通体制を確立するため、2020年9月には株式会社スズケン及び東邦薬品株式会社との間で医薬品売買に関する取引基本契約等の締結を完了し、エーザイとの事業提携契約の満了後は両社を総代理店として取引を開始しました。全国物流体制の構築につきましては、株式会社エス・ディ・コラボとの取引を開始し、東日本と西日本の2拠点に物流センターを設置しました。

これによって自社による販売体制の構築は完了し、エーザイとの事業提携契約の満了にともない、2020年12月には自社によるトレアキシン®販売体制へ移行しました。

当社にとって、2021年度の収益化とその後の収益の持続的拡大は最重要課題であり、自社販売体制への移行により今後の事業展開は盤石なものとなりました。抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについては国内販売のみならず欧米を含む世界全域におけるグローバル事業展開の検討を進めてまいります。

 

④ 更なる成長を求めてグローバル展開へ

当社はこれまで日本のみならず、中国・韓国・台湾・シンガポールの4ヶ国を戦略地域として位置付け、アジア地域への展開を進めてまいりました。

しかしながら、日本においては高齢化とともに医療費が膨張し、それに伴う国家戦略として後発医薬品80%時代が始まり新薬メーカーにとって厳しい環境が続くことが予想されます。また、アジア各国においても同様の政策が始まることも考えられます。

こうした中、当社は更なる発展のためにグローバル展開を進めてまいります。これまでのアジア展開で培った経験を活かし、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに続く新規開発候補品について、グローバルの権利を取得するべく、候補品の探索・評価及び交渉を進めてまいります。

 

⑤ 人材の確保について

当社の経営資源の第一は人であると考えています。優秀な人材なくして、新薬の探索、開発及び情報提供活動、そして今後のグローバル展開において優れた成果をあげることはできません。当社は継続的に優秀な人材の採用を行っており、上場後、特に経営組織をより強固にすべく優れた人材を採用してまいりました。また、OJTや研修等による人材育成を通じて、人材の更なる強化を図ってまいります。

 

⑥ 財務上の課題について

当社は、パイプラインの開発進展、グローバル事業展開、開発候補品の増加等に伴い、研究開発費を中心とする事業活動に合わせて資金を調達する必要があります。

従って、引き続き資金調達手法の多様化を進めるとともに、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図ることで、財務基盤の更なる強化に努めてまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社の事業活動においてリスクとなる可能性があると考えられる主な事項について記載しています。また、当社として必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報提供の観点から開示しています。当社は、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行なわれる必要があると考えます。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、本書発表日現在において当社が判断したものです。

 

(1)リスクマネジメントの推進体制

①リスクマネジメントの推進にあたって、組織横断的リスク状況の監視及び全社的対応は、代表取締役社長の指揮・監督下において内部統制委員会(委員長CFO)が統括し、事業計画策定・実行の年次サイクルに合わせたリスクマネジメント体制の運営を行っています。内部統制委員会リスクマネジメント担当委員の指示のもと、各部門においては部門の責任者が組織の目的・目標の達成に向け、個別リスクにかかわる分析・評価、対応計画の策定・遂行、組織内でのリスクマネジメントにかかわる情報提供など自律的にリスクマネジメントを推進しています。

②影響度と発生可能性の評価に基づき、リスクマネジメント担当委員が常に状況を把握し、内部統制委員会経由で代表取締役社長に報告するとともに、企業経営に重大な影響が想定されるリスクについては、経営執行会議及び取締役会において、リスクの内容、担当責任者、リスク対応策を立案し、関係組織と連携の上、リスク対応策を推進・実行しています。リスク対応策の進捗状況については、原則年2回の取締役会で総括しています。重大リスク顕在化の予兆が確認された場合は、速やかに内部統制委員会に情報が集約され、適切な対応を図る体制としています。

 

(2)重大リスクとして認識している事項

① 医薬品の開発事業全般に関するリスク

新薬の開発は長期間にわたり膨大な先行投資を強いられるものの、その研究開発の成功確率は極めて低いことが知られています。一般に、研究所において何らかの生物・生理活性が認められた化合物が新薬として承認にいたる確率は、2万分の1~2万5千分の1と言われています。また、承認を取得した新薬のうち、上市・販売後において採算が取れるのはそのうちの15~20%以下と言われています。当社は、このような創薬系事業の難しさを踏まえた事業モデルを構築しています。

 

ア. 医薬品開発の不確実性について

・リスク:一般的に、製品上市に至る医薬品開発の過程は長期かつ多額の費用を要し、開発が成功する確率は決して高くなく、開発のいずれの段階においても中止や遅延の判断をすることは稀ではありません。医薬品開発においては、様々な開発過程を段階的に進めていく必要があり、それぞれの段階において開発続行の可否が判断されます。従って、その開発途上で中止の決定を行うことは稀なことではなく、開発が順調に進み製品化される確率は低いものとされています。また、開発に成功し、上市された後も、定期的または臨時で当該時点における医学・薬学等の学問水準に照らして、有効性及び安全性を確認するために再評価が行われ、有用性が認められないとされた場合、あるいは重篤な副作用等により健康被害が拡大する恐れがある場合(詳細は「カ.副作用に関するリスクについて」を参照)には、有用性または副作用を原因として承認が取り消されるリスクがあります。

このようなリスクを低減・分散するため、当社ではパイプラインを複数保有するとともに極力ヒトでPOC(Proof Of Concept)(注1)が確認された開発候補品を優先して導入するよう努めていますが、当社のような小規模な製薬ベンチャー企業にとって、ひとつの開発候補品がパイプラインから脱落することの影響は大きく、その場合当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発候補品の臨床試験を迅速・確実に進め、開始から承認取得までの期間を短縮するために、主として既にヒトでPOCが確立され、前臨床試験データと臨床試験データがある化合物を対象としております。これらの化合物の探索は当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用して、社内の経験を有した専門スタッフによる第1次スクリーニングにより絞り込みを最初に行います。その後、科学的諮問委員会(Scientific Advisory Board:以下「SAB」といいます)において、第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。

 

(注1) POC(Proof of Concept)とは、新薬候補物質の有効性や安全性を臨床で確認し、そのコンセプトの妥当性を検証することを意味します。

 

イ. 収益の不確実性について

・リスク:開発を進めている製品から収益を得るためには、当社単独あるいは第三者と共同で、これら新薬候補品の開発、規制当局からの承認、製造及び販売のすべての段階において成功を収める必要があります。しかしながら当社は、これらの活動において必ずしも成功しない可能性もあり、また、成功したとしても当社の事業を継続するために必要な採算性を確保できない可能性もあります。開発を推進し、製品上市に至ることにより収益を獲得するまでの過程で、開発品によっては開発・販売に関して他の製薬企業と提携契約を締結し、早期に収益化を図ることも想定しています。しかしながら、これらのパイプラインが製品として上市するまでには相当の時間を要することが予想され、また、製品として上市される、あるいは他の製薬企業と提携契約を締結できる保証はありません。

・対応:開発を進めているパイプラインのうちトレアキシン®凍結乾燥注射剤は現在、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)を対象に2020年5月に製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、2021年3月に承認を取得しました。トレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)については、RTD製剤は2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。RI製剤については安全性の確認を主目的とした治験を進めております。リゴセルチブについては、当社は日本における臨床開発を担当しており、INSPIRE試験の追加解析から得られた知見を今後のリゴセルチブの開発に活用するための検討を進めてまいります。さらに、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについては、天然痘を除くすべての疾患を対象とした世界全域における開発・販売・製造に関する独占的権利を取得しており、「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、日本/アメリカ/ヨーロッパを中心としたBCV IVのグローバル開発を優先的に進めることを決定しております。

なお、当社は、現時点で想定している適応疾患の選定や提携手法・マーケティング手法等について、既承認の医薬品の市場規模やマーケティング実績等をもとに十分に将来の採算性を見込めるものと判断しています。新規開発候補品については、常時、複数品目の評価を継続しております。当社の企業価値向上に資する候補品を見出し、しかるべきタイミングで導入交渉をしてまいります。新規開発候補品の探索・評価及び交渉に当たっては今後、日本市場のみならずグローバルのライセンス権利を取得することも含めて検討を行います。

 

ウ. 遵守すべき法的規制等及び医療保険制度等の不確実性について

・リスク:医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事に関する法律及び薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けており、当社は医薬品医療機器等法をはじめとする現行の法的規制及び医療保険制度、それらに基づく医薬品の価格設定動向等を前提として事業計画を策定しています。しかしながら、当社が開発を進めている製品が現実に製品として上市されるまでの間、これらの規制や制度・価格設定動向等が変更される可能性もあります。もしこれらに大きな変更が発生した場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:薬価制度改革並びに流通改善ガイドラインを踏まえた仕切価格・割戻改定を実施しております。また、新薬創出加算品、重点品を中心に売上を拡大する方針です。薬価の毎年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政動向を継続的に注視し、即時に対応策を検討します。

 

エ. 海外における開発・販売に関するリスクについて

・リスク:当社は日本のみならず、経済成長とともに医療ニーズの拡大が予想されるアジアをはじめとしたグローバル地域についても戦略事業地域として位置付け、医薬品事業を展開しています。今後さらに抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについてアジアのみならず欧米を含む世界全域における開発・販売・製造に関するグローバル事業展開を計画しております。海外市場においても、医薬品の開発・販売事業の展開に際し、一般的に多額の資金と事業リスクを伴いますため、当社では開発品によっては海外の開発権、販売権を他の製薬企業等に導出し、投資資金及び事業リスクの低減を図っています。導出先の経営状況や各国の規制、競争環境等の変動により、当初期待していた通りには開発、販売が進捗せず、計画通りのマイルストーン収入、ロイヤリティ収入等が得られないことにより、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。同様に、他の製薬企業等との共同開発または共同販売、或いは委受託契約等のパートナーシップの戦略的な活用も検討していますが、パートナーの経営状況や各国の規制、競争環境等の変動により、当初期待していた通りには開発、販売が進捗せず、計画通りの収益が得られないことにより、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社が保有する権利の導出にあたっては、慎重にデューディリジェンスを実施した上で企業選定を行い、かつ導出後も適宜モニタリングを実施しています。海外導出先の経営状況に関するリスクを管理する担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。各地で問題が発生した場合には、担当者をハブとする海外導出先との連携により、迅速な課題解決を行っております。

 

オ. 医薬品業界の競合関係について

・リスク:医薬品業界は、国際的な巨大企業を含む国内外の数多くの製薬企業や研究機関等により、激しい競争が繰り広げられており、その技術革新は急速に進歩している状態にあります。これらの競合相手の中には、技術力、マーケティング力、財政状態等が当社と比較して優位にある企業が多数あり、当社開発品と競合する医薬品について、有効性の高い製品を効率よく生産・販売する可能性があります。従って、これら競合相手との開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動における競争の結果次第で、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社は、極めて医療上のニーズは高いものの、新薬の開発が遅れている空白の治療領域をビジネスチャンスと捉え、特に、高い専門性が求められ難度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域を中心とした日本初のスペシャリティ・ファーマです。大型新薬(いわゆる売上高が1,000億円を超える「ブロックバスター」)の追求ではなく、マーケットは相対的に小規模でも医療ニーズの高い希少疾病分野を中心とした新薬開発に取り組み、これらの医薬品及び新薬候補品を数多く保有することにより、強固なパイプライン・ポートフォリオを構築し、高付加価値で高収益を達成し、持続性のある事業展開を行います。

 

カ. 副作用に関するリスクについて

・リスク:医薬品は、臨床試験段階から市販後に至るまで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。これらのうち重篤または予期せぬ副作用が発現した場合、賠償問題の発生や、状況次第では臨床試験の遅れ、開発中止に至るリスクを伴います。更に、健康被害が拡大する恐れがある場合、承認取消・販売中止に至るリスクを伴います。賠償問題に関しては、当社は必要な損害保険に加入することにより、このような事態が発生した場合の財政的負担を最小限に留めるべく対応していますが、賠償額が当該保険により補償される範囲を超える可能性は否定できません。このような場合は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集し、客観的に評価・検討・分析した結果を医療現場へ情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。従業員を対象とした安全管理情報についての研修等を実施、安全管理を徹底することで、患者さんの安全性リスクの最小化に努力しております。

 

キ. 製造物責任について

・リスク:医薬品の開発及び製造には、製造物責任賠償のリスクが伴います。当社は将来、開発したいずれかの医薬品が健康被害を引き起こした場合、または臨床試験、製造、営業若しくは販売において不適当な事項が発見された場合には、製造物責任を負い、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるイメージ低下により、当社及び当社の医薬品に対する信頼が損なわれ、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:ライセンス先からの製品輸入に際しては厳格な規格基準に基づく受入検査を実施し、販売時に製造物責任回避に努めております。事業活動のモニタリングを適切に実施し、法令・諸基準違反など不適切な活動を早期に発見し、対応を実施する体制を取っております。必要に応じて教育・研修等の再発防止の対応を講じる体制としております。

 

ク. 製造並びに安定供給に関するリスクについて

・リスク:当社は、開発品の上市後、製品を安定供給することが必要となりますが、製造委託先の技術上もしくは法規制上の問題、又は火災その他の災害による操業停止等により、製品の供給が休止もしくは著しく停滞した場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社の事業継続計画(BCP)は、事業継続へ影響を及ぼす脅威(自然災害、設備事故、感染症、システム障害等)を対象とし、有事の際の速やかな業務復旧、並びに医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。医薬品の安定供給においては、生産・物流拠点の分散や主要原材料の複数購買の実施といったバックアップ体制を構築することに努めるとともに、主要システムの二重化等IT基盤の強化を行っております。

 

② 当社の事業遂行上のリスク

ア. 当社のビジネスモデルについて

・リスク:当社は自社で研究設備・製造設備は保有せず、がん及び血液領域を中心とした希少疾病分野(注2)を中心に、主にヒトでPOCが確立された開発候補品を製薬企業、バイオベンチャー企業等より導入し、これらを日本並びにアジア諸国(中国、韓国、台湾及びシンガポール等)、更にはグローバルで医薬品として開発・販売することにより収益化を図るビジネスモデルを採用してきました。それに加えて今後は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV)に関しての独占的グローバルライセンス契約をキメリックス社と締結し、天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利を取得したことにより、高品質の医薬品供給のための一貫体制を備えたグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティ・ファーマへの転換を進めてまいります。

パイプラインの開発・販売においては、製薬企業と提携することも計画していますが、これらの条件を満たす開発候補品を継続的に導入し、また、これらの提携先企業を確保できる保証はありません。また、導入候補品(注3)については主に希少疾病分野を対象としていることから、当社が期待する売上高が確保できない可能性もあります。これらのような場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。上記に加えて、医薬品業界の競争環境や、当社の財政状態等の変化に伴い、今後、当社のビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社の事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:がん及び血液領域における希少疾病分野の研究開発の多くは、海外では既に数々の有用な新薬が医療の現場に提供されています。しかし、これらの分野は開発に高度の専門性が求められることから、開発の難度も高く、また大手の製薬企業が事業効率の面、採算面で着手しにくいため日本を初めとするアジア諸国においては手掛けられていない空白の治療領域となっています。海外で標準治療薬として使用されている製品が日本では使用できない使用が遅れる、いわゆるドラッグ・ラグの問題が深刻化しております。このドラッグ・ラグは、当社の戦略的開発領域である難治性のがん及び血液疾患領域で特に目立っています。抗がん剤の対象疾患は多岐にわたり、がん腫により細分化されているため、各々のがん腫でみると対象患者数がそう多くはない治療領域が数多く存在します。これらの領域での新薬の開発には、大手の製薬企業では採算性などの問題から開発に着手しにくいことがその理由といわれています。しかし、ひとたび、そうした領域において新薬の承認を取得し上市できれば、競合が少ないため、これらの領域で適応拡大・新製品上市を着実に積み上げていくことで、高成長・高収益を実現できるものと考えています。

 

(注2) 希少疾病分野とは、患者数が少ない疾病分野のことで、この分野に対する医薬品は希少疾病用医薬品(Orphan Drug:オーファンドラッグ)と呼ばれます。厚生労働省はオーファンドラッグ制度を設定し、我が国において患者数が5万人未満の重篤な疾病であること、医療上特にその必要性が高いことをその指定の基準としています。当該指定を受けると、申請から承認までの期間が短縮され、再審査期間が10年になる等の優遇措置があります。

 

(注3) 導入候補品とは、当社の開発候補品として他社より開発権等の権利取得を検討している化合物または製品を指します。

 

イ. 特定の取引先への依存度について

・リスク:当社は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルについて天然痘疾患を除くすべての疾患を対象とした世界全域における製造の独占的権利を所有しているものの、現時点では生産設備を持たない製薬ベンチャー企業であるため、開発品の臨床試験並びに上市後の販売においては他社より製品の供給を受けることとなります。この場合、製品供給元の財政状態、生産状況などによっては、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:技術的には、既に製品供給元より当社への製造技術の移転を実施中であり、将来的に製品需要がクリティカル・マスを超えた場合には、自社生産を開始することも選択肢の一つです。

 

ウ. 開発・販売の進捗に伴う一時的収入の業績影響

・リスク:一般に当社のような製薬ベンチャー企業の提携においては、製品上市前の収益として、「契約一時金」「開発協力金」「マイルストーン」を見込むものとなりますが、このうちマイルストーンは所定の成果達成に基づく収益であることから極めて不安定で予測の困難な収益であり、開発の進捗に遅延等が発生した場合には当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社の中期経営計画(3年)、長期経営計画(10年程度)では、契約条項に基づいて一時的収入を業績に織り込んでおり、アライアンス・マネジメントの一環として緊密にフォローしております。

 

エ. 知的財産権に関するリスクについて

・リスク:当社は医薬品の開発活動において様々な知的所有権を使用していますが、これらは基本的に製薬企業、バイオベンチャー企業等より使用許諾を受けた権利です。しかしながら、当社が導入する開発候補品について、導入元企業における出願中の特許が登録に至らない可能性があります。また、当社が使用許諾を受けた知的所有権に優位する知的財産権が第三者によって生み出される可能性を完全に回避することは困難であり、こうした結果、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社は、今後も知的財産権に関する問題を未然に防止するため、開発候補品の導入にあたっては、弁護士との相談や特許事務所を通じた特許調査を適宜実施していきますが、第三者の知的所有権の侵害に基づく将来の係争を完全に回避することは困難であり、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、当社が導入する開発候補品は、必ずしも特許で保護されているとは限りません。もっとも、当社の開発候補品が特許を有していない場合であっても、当該開発候補品が規制当局より製造販売承認の際に再審査の指定を受けた場合には、再審査期間は後発医薬品の参入が実質的に制限されるため、一定期間市場独占的な保護を受けることとなります。

・対応:当社は医薬品の開発活動において様々な知的所有権を使用していますが、これらは基本的に製薬企業、バイオベンチャー企業等より使用許諾を受けた権利です。当社が権利の使用許諾を受けるにあたっては、慎重にデューディリジェンスを実施した上で企業選定を行い、かつ導入後も適宜モニタリングを実施しています。海導入先の経営状況に関するリスクを管理する担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。各地で問題が発生した場合には、アライアンス・マネジャーをハブとする海外導入先との連携により、迅速な課題解決を行っております。当社では、また、知的財産係争が発生したときには、社内外の関係者と協力し、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。

 

オ. 情報管理について

・リスク:当社パイプラインの開発並びにその他事業遂行等に関する重要な機密情報が流出するリスクを低減するために当社は、役職員、科学的諮問委員会(SAB)メンバー、外注委託先、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めています。しかしながら、役職員、SABメンバー、外注委託先、取引先等によりこれが遵守されなかった場合等には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には当社の事業や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:当社は、新たなデジタル技術、法規制やガイドラインを取り込んだ情報管理に関するポリシー・ルールの整備を進めております。情報管理に関する規程等を整備して従業員に情報管理の重要性を周知徹底するとともに、セキュリティシステムの導入等の対応策を実施していることに加え、クラウド系サービス利用への対応や情報セキュリティ基盤の強化、運用の改善を図っております。

 

カ. 重要な契約に関する事項

・リスク:当社の事業展開上重要と考えられる契約につき、将来、期間満了、解除、その他何らかの理由により契約の終了が生じた場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:事業提携先との重要な契約に関しては、その締結検討段階から、ビジョンと戦略の策定、提携事業の損益管理、開発面及び営業面での投資判断、業績と主要マイルストーン管理、グローバルな上市準備等に十分な協議を行った上契約を締結します。契約締結後は、契約当事者でステアリング・コミティを組織し、更にその傘下で専門領域を担当する複数のサブ・コミティと連携して、事業提携を推進します。また、当局との継続的なコミュニケーションを通じた薬事リスクの管理・低減にも努力しております。

 

③ 組織に関するリスク

ア.社歴が浅いことについて

・リスク:当社は、2005年3月に設立された、社歴の浅い企業です。また当社は、創業時より開発候補品の導入活動を開始し、ゼロベースから医薬品開発事業を立ち上げ、2010年8月に、創業以来初となる製品売上による収益を計上しました。今後、未だ経験していない事業上のトラブルが発生する可能性はありますが、当社の業績に影響を及ぼすような外部環境の変化を厳密に予想することは現状においては困難が伴います。従って、今後当社が成長を続けられるか等を予測する客観的な判断材料として過年度の経営成績だけでは、不十分な面があると考えられます。

・対応:当社は、2020年度において最近4会計年度における営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローの額が負であること(業績基準)及び上場申請会計年度の営業利益の額が負であり、かつ当上場後9連結会計年度の営業利益の額が負であること(利益計上基準)となったため、上場廃止に係る猶予期間に入りました。

当社は、開発先行型の創薬ベンチャーであるため、多額の負の利益剰余金を計上していますが、当社の事業価値を評価する場合は過去の業績ではなく、現有のパイプラインが将来創出するキャッシュ・フローに着目すべきです。会社は、そのため毎年3ゕ年中期経営計画を公表しております。

 

イ. 小規模組織であることについて

・リスク:当社の研究開発活動については、業務受託企業(CRO(注4)等)を活用することにより、比較的少人数による開発体制を敷いていますが、今後のグローバル展開を含む既存パイプラインの開発推進及び新規開発候補品のパイプライン化に伴い、更なる研究開発人員の増加を必要とする可能性があります。しかしながら、何らかの理由により業務受託企業との関係が解消された場合や、計画通りの人員の確保ができない場合、あるいは既存人員の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:製薬業・非製薬業、日系・外資系を問わず、有能な人材が多数入社し、人員は大幅に増加しています。2021年度の業容拡大と黒字化目標達成のための人材確保には、目途が付いたと言えます。 なお、グローバル展開を支えるために、必要に応じて、複数の海外の専門家の助言を得ながら開発及び薬事戦略の構築および個別の開発活動の検討・推進を行っております。

 

(注4) CRO(Contract Research Organization)とは、製薬企業が、自社で実施する開発業務を遅滞なく進めるために、一部の業務について委託を行う機関です。委託業務の内容としては、治験が実施計画書どおりに遂行されているかをモニタリングするモニター業務や、臨床データを管理するデータ管理業務などがあります。

 

ウ. 特定人物への依存度について

・リスク:当社の代表取締役社長の吉田文紀は、当社創業者として創業当時より経営全般にわたる事業の推進者として中心的な役割を担ってまいりました。従って、何らかの理由により同氏の業務の遂行が困難となった場合には、当社の事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:会社が持続的な成長を遂げていくには、次世代の最高経営責任者の育成が重要であると認識し、今後育成プログラムを作成していくなどについて検討しています。

最高経営責任者の後継者の候補者は、現経営者の考えを踏襲していくことに拘らず、会社の本質的な存在意義を踏まえ信念をぶらすことなく、環境の変化に応じたビジョンを立てることができる人材が必要です。企業理念や経営ビジョンなどをコミットできることを大前提とします。

 

エ. 科学的諮問委員会(SAB)について

・リスク:当社は、新規開発候補品の導入評価に関する社長の諮問機関として、科学的諮問委員会(SAB)を組成し、優れた実績と経験を有すると判断される臨床医や基礎科学者を招聘しています。SABは毎年2~3回開催され、世界中から集まる膨大な導入候補品について、医療ニーズの高さや収益性などの観点も踏まえ、リスクバランスのとれたポートフォリオを構築するために、それぞれの専門の立場から活発に意見交換や議論を行っています。当社は、今後も優秀なSABメンバーの確保に努めてまいりますが、現在のメンバーとの間の契約が解除、期間満了、更新拒絶、その他の理由で終了するなど、何らかの理由によりメンバーの確保が困難となった場合や、メンバーの流出が生じた場合には、当社の開発候補品導入の推進に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:科学的諮問委員会(SAB)は第一線で関連分野における治療の研究に携わる経験豊かな社外専門家によって構成されています。社内外の専門家による、こうした“目利き”のプロセスを経て、当社はがん及び血液領域を中心として、製薬企業、バイオベンチャー企業等から主にヒトでPOCが確立された開発品の開発・製造・販売権を継続的に確保することにより、持続性のある事業を展開しています。この“目利き”の力に加え、がん及び血液という開発の難度が高い治療領域における当社の開発力について、開発候補品の提供者であるライセンサーから高い評価を得ることも導入の成否を決める重要なポイントとなります。①適切な治験計画の策定、②治療対象となる適切な治験患者の選定、③その領域における医学専門家と公正な関係を維持・構築できる、専門性の高い優秀な開発スタッフが必要となります。当社に取って人材が最も重要であり、がん及び血液分野で実績のある大手製薬企業の開発部門で経験を積んだ人材の確保を最重要課題として対応しています。

 

④  経営成績の推移について

ア.過年度における業績推移について

当社の主要な経営指標等の推移は以下のとおりです。

回次

第12期

第13期

第14期

第15期

第16期

決算年月

2016年12月

2017年12月

2018年12月

2019年12月

2020年12月

売上高(千円)

2,368,112

3,444,206

3,835,530

2,837,753

2,987,051

営業損失(△)
(千円)

△2,127,049

△3,947,061

△2,656,072

△4,301,615

△4,506,220

経常損失(△)
(千円)

△2,316,806

△3,976,784

△2,748,730

△4,376,655

△4,615,903

 

・リスク:当社は、現在まで、第4期を除き、研究開発費やその他一般管理費の合計が収益を上回り、営業損失、経常損失、当期純損失を計上しています。このため、過年度の財務経営指標は期間業績比較を行うための材料としては不十分であると考えられ、今後の当社業績を予測する材料としては不十分な面があります。

・対応:当社は、2020年度において最近4会計年度における営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローの額が負であること(業績基準)及び上場申請会計年度の営業利益の額が負であり、かつ当上場後9連結会計年度の営業利益の額が負であること(利益計上基準)となったため、上場廃止に係る猶予期間に入りました。当社は、開発先行型の創薬ベンチャーであるため、多額の負の利益剰余金を計上していますが、当社の事業価値を評価する場合は過去の業績ではなく、現有のパイプラインが将来創出する利益及びキャッシュ・フローに着目すべきです。会社は、そのため毎年3ゕ年中期経営計画を公表しております。

 

イ.研究開発費の増加予測について

当社の過去5期間の研究開発費の推移は以下のとおりです。

回次

第12期

第13期

第14期

第15期

第16期

決算年月

2016年12月

2017年12月

2018年12月

2019年12月

2020年12月

研究開発費
(千円)

1,667,098

3,017,812

1,832,746

2,441,552

2,266,556

 

・リスク:当社は、今後更に研究開発活動を推進する計画であり、累積損失は増加傾向にあります。2021年度には自社販売体制の下、トレアキシン®の適応拡大による製品販売収入の拡大等により黒字化(収益化)を達成することを経営目標に掲げておりますが、各種変動要因により目標の達成が妨げられる可能性があります。2021年度以降についても、リゴセルチブの注射剤及び経口剤または抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの早期の承認取得に伴う製品販売収入の確保、並びに製薬企業等との提携に基づき発生する収入等により、研究開発投資の早期回収及び経営成績の継続的な改善を図ってまいりますが、当社の想定どおりに早期回収及び継続的な改善が実現する保証はありません。

・対応:会社は毎年3ゕ年中期経営計画を公表しておりますが、Probability of Success (POS)を考慮し、十分な検討を行った開発収支を算入しており、実現の蓋然性を高めることに努めております。

 

ウ.マイナスの繰越利益剰余金を計上していることについて

・リスク:当社は、製薬ベンチャー企業であり、臨床段階にある開発品が上市し、製品販売収入並びにロイヤリティ収入等の安定した収益を継続して計上できる体制となるまでは、多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため、創業以来第4期を除き当期純損失を計上しており、第16期事業年度末には△30,009,713千円の繰越利益剰余金を計上しています。当社は、パイプラインの開発を計画通り、迅速、効率的かつ着実に推進することと自社販売体制への移行により、早期の利益確保を目指していますが、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性もあります。また、当社の事業が計画通りに進展せず、当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。

・対応:まずは現中期経営計画を実現し、負の繰越利益剰余金を減少させることが第一ステップ、2021年上期に開発方向性を決定するリゴセルチ及び2021年上期に治験を開始するブリンシドフォビルを収益化することが第二ステップ、上記と並行して、新規開発候補品については、常時、複数品目の評価を継続しております。当社の企業価値向上に資する候補品を見出し、しかるべきタイミングで導入交渉をしてまいります。新規開発候補品の探索・評価及び交渉に当たっては今後、日本市場のみならずグローバルのライセンス権利を取得することも含めて検討を行います。これらの施策を通して、負の繰越利益剰余金の早期解消に努めます。

 

エ. 資金繰りについて

・リスク:当社はグローバル市場を対象として事業展開をするスペシャリティ・ファーマへの転換を目指す製薬ベンチャー企業として研究開発費用をはじめとする多額の事業展開資金を必要とします。事業計画が計画通りに進展しない等の理由から資金不足が生じた場合には、戦略提携内容の変更、新規提携契約の獲得、新株発行等の方法による資金確保に努めますが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合には、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。

・対応:2021年度の利益及びキャッシュ・フローの黒字化達成及び31.5億円の銀行融資枠の設定で、事業の継続性に問題はないと判断しています。

 

オ. 税務上の繰越欠損金について

・リスク:当社には現在、税務上の繰越欠損金が存在しています。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられておらず、今後も数年間はこの状態が続くものと想定しています。しかしながら、現在の繰越欠損金の控除制度が改正されるなどの理由により、想定よりも早期に繰越欠損金が解消され、これによる課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられることとなり、現在想定している当期純利益若しくは当期純損失及びキャッシュ・フローの計画に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:現在多額の税務上の繰越欠損金が存在しています。一方、2021年度の利益及びキャッシュ・フローの黒字化達成により、仮に税制改正により、現在の想定より税負担が増加した場合でも、事業の継続性に問題はないと判断しています。

 

⑤  その他のリスク

ア.株主還元政策について

・リスク:当社は創業以来配当を実施していません。当社の現時点における事業ステージは、医薬品開発とグローバル展開を含む商業化及び自社販売体制の下での持続的成長に向けた先行投資の段階にあるため、今後も当面は資金を財務体質の強化及び研究開発活動の継続的な実施と新規開発候補品の導入に優先的に充当し、配当は行わない方針です。

・対応:しかしながら、当社では株主への利益還元を経営の重要な課題と認識しており、今後の経営成績及び財政状態を勘案し、将来的には利益配当についても検討してまいります。

 

イ. 潜在株式の行使による当社株式価値の希薄化について

・リスク:新規開発候補品の導入等による事業規模の拡大や予期せぬ外部環境の変化に伴う必要経費の増加または想定収益の変動により、次期見通し及び中長期事業計画の想定を大幅に超えた資金需要の増加が生じた場合、株式発行等による追加の資金調達を実施していく可能性があります。

当社は、当社取締役、従業員等の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を導入しており、旧商法第280条ノ19、旧商法第280条ノ20及び旧商法第280条ノ21、並びに、会社法第236条、第238条、第239条及び第240条の規定に基づき、新株予約権を取締役、従業員に対して付与しています。

また、当社は、2016年4月6日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第3回無担保転換社債型新株予約権付社債(発行価額の総額30億円)並びに第39回新株予約権(発行価額の総額9,776千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額943,592千円)の発行決議をそれぞれ行い、2017年8月9日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第42回新株予約権(発行価額の総額32,560千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額1,892,000千円)の発行決議を行いました。そして、2018年4月9日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第45回乃至第47回新株予約権(発行価額の総額23,100千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額10,440,000千円)の発行決議を行いました。更に、2020年2月27日に開催した取締役会において、第三者割当の方法による第50回及び第51回新株予約権(発行価額の総額10,540千円、新株予約権の行使により株式を発行する場合の株式の発行価額の総額5,450,540千円)の発行決議を行い、当事業年度末時点で払込みが完了しております。

また、当社は今後も優秀な人材確保のために、同様のインセンティブプランを継続して実施する可能性があります。従って、今後付与する新株予約権の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。

・対応:現時点で第三者割当方法による新株予約権行使による資金調達の計画はありません。

当社取締役、従業員へのストック・オプションの付与は業績向上のためのインセンティブプランの一つであり、発行予定数も限られており、株式価値の希薄化効果は限定的である上に、ストック・オプションの付与が業績に貢献した場合、事業価値の向上による株価への好影響が期待できます。

 

ウ. ベンチャーキャピタルによる株式保有について

・リスク:一般的に、ベンチャーキャピタル及び投資事業組合による株式の所有目的は、株式上場後に株式を売却してキャピタルゲインを得ることにあるため、当社株主であるこれらのベンチャーキャピタル及び投資事業組合が、所有する株式の全部または一部を売却した場合には、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:ベンチャーキャピタル及び投資事業組合による株式保有を抑制することが出来ない以上、機関投資家を含む安定株主を増加させる対応が必要と考えています。

 

エ.外国為替損失の発生に関するリスクについて

・リスク:当社は現時点では生産設備を持たずに他社より製品の供給を受けており、またパイプライン拡充のために新規開発候補品を導入する際に支払われる一時金を想定し、予め相当の金額を外貨預金あるいは外国為替先物予約にて手当をしています。これらの外貨建て資産は時価評価にて毎期財務諸表に表示していますが、将来の為替変動によってその評価損失が発生するリスクがあり、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:外貨建取引では、輸入品価格決定に為替レート連動条項が付されており、デリバティブによる為替リスクヘッジの必要性は高くはありません。

 

オ. 自然災害等に関するリスクについて

・リスク:当社が事業展開している地域や拠点において、災害(地震、台風、火災等)・疫病等が発生し、人的・物的被害の発生、業務停止及び遅延が生じた場合、社会的信用の失墜や、補償などによって、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・対応:緊急時のリスクマネジメントは、緊急事態の態様に依り、リスク管理基本方針に基づき内部統制委員会が定める指針、もしくは事業継続計画(Business Continuity Planning - BCP)に従い適切に対応します。

 

⑥ 上場廃止に関するリスクについて

・リスク:当社は、2020年度において最近4会計年度(注5)における営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローの額が負であること(業績基準)及び上場申請会計年度の営業利益の額が負であり、かつ当上場後9連結会計年度の営業利益の額が負であること(利益計上基準)となったため、上場廃止に係る猶予期間に入ります。

2021年12月期及び2022年12月期の営業利益の額が負でなくならない場合において、当社が東京証券取引所に対し当社株式の新規上場審査基準に準じた基準による審査申請を行わない場合又は審査申請を行ったものの東京証券取引所が当該基準に適合しないと認めた場合には、当社株式は、JASDAQ市場の上場廃止基準(注6)に抵触し、上場廃止となります。

上場廃止となった場合、引き続き事業継続は可能なものの、資金調達手段の限定等により成長戦略の遂行並びに事業拡大の継続が困難となり、将来的に当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

・対応:会社は毎年3ゕ年中期経営計画を公表しておりますが、Possibility of Success (POS)を考慮し、十分な検討を行った開発収支を算入しており、実現の蓋然性を高めることに努めております。従って、2021年12月期においては営業利益の額が正である蓋然性は高く、これを達成すべく全力を注いで努めてまいります。

 

(注5) 新規上場の申請を行った日の属する事業年度の翌事業年度から5事業年度(2012年12月期~2016年12月期)は対象には含まれません。

(注6) ただし、JASDAQの上場廃止基準として設けられている業績基準や利益計上基準について、上場会社ナビゲーションシステムのFAQには、新市場区分には同様の基準は設けない想定であり、当該基準により猶予期間入りしていたJASDAQ上場銘柄については、猶予期間からの解除を行う予定であると記載されています。詳細は、日本取引所グループ上場会社ナビゲーションシステムのFAQhttps://faq.jpx.co.jp/disclo/tse/web/knowledge7992.html>をご参照ください。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析の検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(業績等の概要)

(1)事業の進捗の状況

①  国内事業

[自社販売体制の構築について]

当社は、販売委託先であるエーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)との事業提携契約が2020年12月に満了し自社販売を開始致しました。

当期においては、地域のニーズをくみ上げることで地域のニーズに合致したきめ細かい提案を企画し、より高い生産性をもつ営業組織体制を確立するため、リージョナルマネージャー6名、医薬情報担当者47名を全国に配置するとともに、「ヘマトロジー・エキスパート」9名を各地域に配置しました。

また、全国流通体制を確立するため、2020年9月には株式会社スズケン及び東邦薬品株式会社との間で医薬品売買に関する取引基本契約等の締結を完了し、エーザイとの事業提携契約の満了後は両社を総代理店として取引を開始しました。全国物流体制の構築につきましては、株式会社エス・ディ・コラボとの取引を開始し、東日本と西日本の2拠点に物流センターを設置しました。

これによって自社による販売体制の構築は完了し、エーザイとの事業提携契約の満了にともない、2020年12月には自社によるトレアキシン®販売体制へ移行しました。

当社にとって、2021年度の収益化とその後の収益の持続的拡大は最重要課題であり、自社販売体制への移行により今後の事業展開が盤石なものとなりました。

 

[製品の安定供給について]

当社は、トレアキシン®の凍結乾燥注射剤をアステラス製薬株式会社の連結子会社であるアステラスドイッチランド社(以下「アステラスドイツ」という)から輸入しております。当上半期においては、アステラスドイツから輸入した一部のバッチに異物の混入及び外観不良の問題が起こり、前年同期と比べてトレアキシン®のエーザイの在庫レベルは低い状態で推移していましたが、当下半期においては、輸入した複数のバッチの二次包装と品質検査を計画通りに実行し、その結果、現在の当社在庫は適正レベルに回復しました。

当第4四半期には、イーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州、以下「イーグル社」という)よりライセンスを受け、2020年9月に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始するトレアキシン®液剤(RTD製剤)の輸入及び総代理店への出荷を開始しました。

 

[抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩またはベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)]

 未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫(低悪性度NHL)(注1)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)(2016年12月に製造販売承認を取得)、再発・難治性の低悪性度NHL及びMCL(2010年10月に製造販売承認を取得)、慢性リンパ性白血病(CLL)(2016年8月に製造販売承認を取得)を適応症として悪性リンパ腫領域においては幅広く使われております。2018年7月に日本血液学会が発行した造血器腫瘍診療ガイドラインにトレアキシン®とリツキシマブの併用療法(BR療法)が新たに収載され、既承認のすべての適応症において、標準的治療の選択肢として推奨されることになりました。これにより名実ともにトレアキシン®が悪性リンパ腫における標準療法として位置づけられています。

また、低悪性度NHLの代表的な組織型であるCD20陽性の濾胞性リンパ腫(FL)に対して、リツキシマブのみならず新規の抗CD20抗体製剤との併用に係わる一部変更の承認取得(2018年7月)により、オビヌツズマブ(注2)との併用療法が治療選択肢として提供されていることに加え、腫瘍特異性T細胞輸注療法(注3)の前処置に関する一部変更の承認取得(2019年3月)により、国内初のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法(注4)「キムリア®点滴静注」(注5)の前処置としてトレアキシン®の使用が可能となっており、再生医療等製品の前処置としての使用方法の広がりによって悪性リンパ腫における標準療法としてのトレアキシン®の位置づけはより強固なものとなっています。

既に承認を取得した適応症に続き、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(r/r DLBCL)を対象とするBR療法による第Ⅲ相臨床試験については、試験成績の主要評価項目である奏効率において期待奏効率を上回る良好な結果が得られたことを基に、2020年5月に製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、2021年3月に承認を取得しました。さらに、トレアキシンとリツキシマブを併用投与した時の生存時間データ(全生存期間、無増悪生存期間など)を評価することは、本剤のDLBCL治療における位置付けに重要なデータとなるため、全生存期間を主要評価項目とする追跡調査試験を実施中です。また、中外製薬株式会社(以下「中外製薬」という)が、r/r DLBCLを対象としたポラツズマブ ベドチン(注6)とBR療法との併用について2020年6月に製造販売承認申請を行ったことを受けて、2020年7月に当社はトレアキシン®とポラツズマブ ベドチン、リツキシマブとの併用療法に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、2021年3月に承認を取得しました。当社及び中外製薬の申請について双方とも承認取得後、ポラツヅマブ ベドチンが薬価収載され次第、ポラツズマブ ベドチンとBR療法との併用においてトレアキシン®の使用が可能となります。本追加適応症については、現在有効な治療方法がないため、救援化学療法として複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用療法が使われておりますが、高い有効性と安全性が期待できる新たな治療薬の開発が切望されております。またBR療法につきましては、既に欧米においてr/r DLBCLの患者さんの治療に使われており、日本においても早期に使えるよう患者団体及び関係学会から厚生労働省に対して要望書が出ておりました。速やかに多くの患者さんの治療選択肢として浸透することを期待しております。

2017年9月にイーグル社との間で日本における独占的ライセンス契約を締結したトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤(注7))については、RTD製剤は2020年9月18日に製造販売承認を取得し、2021年1月より販売を開始しました。RI製剤につきましては現在、安全性に関する臨床試験を実施中で、今年度中に承認申請の予定です。RTD製剤は、従来の凍結乾燥注射剤に比べて、手動による煩雑な溶解作業が不要で、そのために要する時間を短縮することができ、医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となります。また、RI製剤は、投与時間が、従来の凍結乾燥注射剤及びRTD製剤の60分に対して10分間と大幅に短縮されるため患者さんと医療従事者の負担を大幅に低減することが可能となることから大きな付加価値を提供することができます。更には、液剤の製剤ライセンスによる複数の特許保護を通じてトレアキシン®の製品寿命を2031年まで延長し、当社事業の成長基盤をより強固なものとすることが可能となります。

 

(注1) 非ホジキンリンパ腫とは、白血球の中のリンパ球ががん化した悪性腫瘍である悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫以外の総称です。日本人の悪性リンパ腫では、大半を非ホジキンリンパ腫が占めています。

 

(注2) オビヌツズマブ(ガザイバ®:販売元 中外製薬):非ホジキンリンパ腫の治療薬として国内外の治療ガイドラインで推奨されているリツキシマブと同様、幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20に結合する、糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体で、標的となるB細胞を直接、および体内の免疫系とともに攻撃し、破壊するようデザインされています。

 

(注3) 腫瘍特異性T細胞輸注療法とは、がん患者さん自身の腫瘍特異的T細胞(がん細胞を特異的に認識するT細胞)に、体外で人工的にがん特異性を付与し、細胞を増幅した後に患者さんに投与する療法です。

 

(注4) キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、腫瘍特異性T細胞輸注療法の中でも、腫瘍細胞上の膜抗原を認識する抗体の抗原結合部位とT細胞受容体の細胞内ドメインを組み合わせたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor; CAR)をコードする遺伝子をT細胞に導入して増幅・輸注する療法です。CARの標的としてB細胞上に発現するCD19を用いた臨床試験では、B細胞性腫瘍患者にCD19指向性CAR導入T細胞が投与され、著明な臨床効果が得られています。

 

(注5) キムリア®点滴静注(一般名 チサゲンレクルユーセル:販売元 ノバルティスファーマ株式会社):国内で初めて承認されたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法で、再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発又は難治性のCD19陽性のDLBCLを適応症として2019年3月に製造販売承認を取得し、2019年5月に薬価収載されました。

 

(注6) ポラツズマブ ベドチン:シアトルジェネティクス社のADC技術を使用してロシュ社が開発した、ヒト化抗CD79bモノクローナル抗体とチューブリン重合阻害剤をリンカーで結合させた、ファーストインクラスの抗CD79b抗体薬物複合体(ADC: antibody-drug conjugate)です。CD79bタンパクは、多くのB細胞で特異的に発現しており、新たな治療法を開発する上で有望なターゲットになり得ます。ポラツズマブ ベドチンは正常細胞への影響を抑えつつCD79bに結合し、送達された化学療法剤によりB細胞を破壊すると考えられます。

 

(注7) RTD製剤及びRI製剤は、従来の凍結乾燥注射剤(FD)とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、さらに急速静注であるRI製剤(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の60分間から10分間に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、さらには医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。

 

[抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)]

リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない、治療後に再発した、または低メチル化剤に不耐容性を示した高リスク骨髄異形成症候群(高リスクMDS)における全生存期間を主要評価項目として、全世界から20ヶ国以上が参加している国際共同第Ⅲ相臨床試験(INSPIRE試験)を実施しておりますが、2020年8月に医師選択療法との比較において主要評価項目を達成しなかったことを発表しました。当社は日本における臨床開発を担当しており、INSPIRE試験の追加解析から得られた知見を今後のリゴセルチブの開発に活用するための検討を進めてまいります。

リゴセルチブ経口剤については、オンコノバ社が米国にて実施の、初回治療の高リスクMDSを目標効能とする第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験(アザシチジン(注8)併用)において、リゴセルチブ経口剤とアザシチジンを併用した際の有効性および安全性が示唆されています。当社は、単剤により高用量の安全性及び日本人での忍容性を確認するために2017年6月に国内第Ⅰ相臨床試験を開始し、2019年6月に症例登録を完了しております。

トレアキシン及びリゴセルチブに関して、東京大学医科学研究所との共同研究等を通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行い、事業価値の最大化に努めます。

 

(注8) アザシチジン(ビダーザ®:販売元 日本新薬株式会社):2011年にMDSに対する第Ⅲ相臨床試験において、初めて生存期間の延長が認められたことから承認された低メチル化剤(注射用)で、現在、造血幹細胞移植が難しいMDS患者に対する第一選択薬として使用されています。MDSは一種の前白血病であり、その病態にはDNAの過剰なメチル化による癌抑制遺伝子の発現の低下が大きく関係していると考えられています。アザシチジンなどの低メチル化剤はDNAのメチル化を阻害する作用により癌抑制遺伝子の発現を回復させ白血病への進行を抑えると考えられています。

 

[抗ウイルス薬 SyB V-1901(一般名:Brincidofovir)]

当社は2019年9月30日にキメリックス・インク社(本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」という)との間で抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの注射剤及び経口剤(SyB V-1901、以下各々「BCV IV」及び「BCV Oral」という)(注9)に関しての独占的グローバルライセンス契約を締結し、天然痘疾患を除くすべての疾患を対象としたBCVの世界全域における開発・販売に加えて製造を含む独占的権利をキメリックス社から取得しております。

当社は、2020年2月に開催したグローバルアドバイザリーボードでの検討の結果、「空白の治療領域」でアンメット・メディカル・ニーズの高い造血幹細胞移植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、日本/アメリカ/ヨーロッパを中心としたBCV IVのグローバル開発を優先的に進めることを決定しております。そして、当該試験により得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後の各種dsDNAウイルス(注10)感染症に対する効果を検討し、抗マルチウイルス感染症へ対象領域を拡大し、更には腎臓移植を含む臓器移植分野等の対象領域拡大の可能性を追求することで、市場の拡大とBCVの事業価値の最大化を目指してまいります。来期に開始予定しているBCV液剤の小児のアデノウイルス感染症を対象とした試験開始に向けて、鋭意準備を進めております。

本剤は既にキメリックス社による欧米における臨床試験においてBCV Oralが高活性の抗ウイルス効果を示し、また広域のスペクトラムを有することが確認されており、各種dsDNAウイルスに対する幅広い抗ウイルス活性は、BCV IVに関しても造血幹細胞移植後の各種ウイルス感染症の予防及び治療に対する有効性と安全性が期待されます。

キメリックス社は、2020年12月、米国食品医薬品局(FDA)が天然痘の医学的防衛策としてBCVの新薬申請(NDA)の提出を受理したことを発表しました。FDAは優先審査を認め、処方薬ユーザー・フィー法(PDUFA)に基づき、審査終了目標日(PDUFA Date)を2021年7月7日に設定しました。

 

(注9) ブリンシドフォビル(BCV)は、シドフォビル(CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦は未承認)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプロピル:HDP)が結合した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく細胞内へ移行した後、細胞内ホスフォリパーゼによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、生成された活性化体(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗ウイルス活性が飛躍的に向上した化合物です。また、HDP結合により、OAT-1トランスポーターによる腎尿細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離するレベルは低いため、CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できます。

 

(注10) dsDNAウイルス:CMV、AdV、HHV-6、BKウイルス、HSV1/2、VZV、HPV、JCV、天然痘ウイルスなど、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科、ポックスウイルス科を含む。

 

[自己疼痛管理用医薬品 SyB P-1501]

当社が2015年10月にザ・メディシンズ・カンパニー社(本社:米国ニュージャージー州、以下「MDCO」という)から導入したSyB P-1501(米国での商品名IONSYS)については、2017年10月11日に、MDCOが本製品に関する事業を欧米市場から撤退することを決定したこと及びライセンス契約に基づくMDCOの履行について十分な保証を提供しなかったことに起因する82百万米ドルの損害賠償を求めて当社は国際商業会議所(以下「ICC」という)の規則に基づく仲裁を申し立てておりました。当社は2020年9月1日に、仲裁廷は、MDCO がライセンス契約に基づく履行について十分な保証を提供しなかったという当社の主張を認めず、当社の損害賠償請求を否定した一方で、当社が仲裁で回収しようとした弁護士費用及び諸費用の50%に相当する495万米ドルをMDCOが当社に支払うよう、判断した旨の最終結果が確定したことを公表しました。

 

②  海外事業

SyB L-0501については、韓国、台湾、シンガポールにおいても販売されており、当社の製品売上は計画通りに推移しました。

 

③  新規開発候補品の導入

当社は2019年9月に導入した抗ウイルス薬ブリンシドフォビルのグローバル開発計画の推進に当面は注力するものの、従来からの取り組みである常時複数のライセンス案件の検討と新薬開発候補品のライセンス権利取得に向けた探索評価の継続的な実施を通じて、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として長期的な事業価値の創造を目指してまいります。

 

④  経営成績の状況

以上の結果、当事業年度の売上高は、トレアキシン®の製品販売等により、2,987,051千円となり、売上高全体で前年同期比5.3%増加となりました。

一方、販売費及び一般管理費は、トレアキシン®の注射剤及びリゴセルチブの注射剤の臨床試験費用が発生したこと等により、研究開発費として2,266,556千円(前年同期比7.2%減)を、自社販売体制の構築のための事前投資を含め、その他の販売費及び一般管理費として3,106,517千円(前年同期比14.0%増)を計上したことから、合計で5,373,073千円(前年同期比4.0%増)となりました。

これらの結果、当事業年度の営業損失は4,506,220千円(前年同期は営業損失4,301,615千円)となりました。また、保険配当金2,324千円を主とする営業外収益2,585千円を計上した一方、支払手数料43,958千円、為替差損41,287千円、株式交付費27,021千円を主とする営業外費用112,268千円を計上したこと等により、経常損失は4,615,903千円(前年同期は経常損失4,376,655千円)となり、受取和解金525,145千円を計上したものの当期純損失は4,090,216千円(前年同期は当期純損失4,376,258千円)となりました。

なお、当社の事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

⑤  財政状態の状況

当事業年度末における総資産は、売掛金が142,286千円、ソフトウエア仮勘定139,715千円、現金及び預金が62,203千円、立替金が41,791千円、建設仮勘定が21,513千円、前払費用が13,357千円それぞれ減少した一方、商品及び製品が944,442千円、ソフトウエアが201,031千円、前渡金が41,316千円、未収消費税等が39,436千円、工具、器具及び備品が14,724千円、敷金及び保証金が10,425千円それぞれ増加したこと等により、前事業年度末に比べ1,000,752千円増加し、6,274,707千円となりました。負債の部については、仕入債務が544,546千円、前受収益が192,705千円増加したこと等により、前事業年度末に比べ743,550千円増加1,617,389千円となりました。

純資産の部については、当期純損失の計上により利益剰余金が4,090,216千円減少した一方、資本金が2,174,304千円、資本準備金が2,174,304千円それぞれ増加したこと等により、前事業年度末に比べ257,201千円増加4,657,318千円となりました。この結果、自己資本比率は64.3%と前事業年度末に比べ7.3ポイント減少しました。

 

⑥  キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株の発行等により増加したものの、税引前当期純損失の計上等により、前事業年度末に比べ62,203千円減少3,848,626千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

仕入債務544,546千円の増加、和解金525,145千円の受取、売上債権142,286千円の減少、株式報酬費用102,378千円の計上、減価償却費63,835千円の計上、支払手数料43,958千円の計上、立替金41,791千円の減少、未払金29,132千円の増加、株式交付費27,021千円の計上、前払費用10,398千円の減少等による営業活動資金の増加要因はあったものの、税引前当期純損失4,086,416千円の計上、たな卸資産944,442千円の増加、受取和解金525,145千円の計上、コミットメントフィーの支払額41,000千円、未収消費税等39,436千円の増加等より、全体では4,122,483千円の減少(前年同期は4,350,738千円の減少)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

無形固定資産の取得による支出133,264千円、有形固定資産の取得による支出15,667千円、敷金及び保証金の差入による支出11,377千円等により、全体では160,309千円の減少(前年同期は216,462千円の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

株式の発行による支出27,290千円による財務活動資金の減少要因はあったものの、新株予約権の行使による株式の発行による収入4,244,690千円、新株予約権の発行による収入10,540千円等により、全体では4,222,090千円の増加(前年同期は3,740,045千円の増加)となりました。

 

⑦ 生産、受注及び販売の状況

(生産実績)

当社は生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(商品仕入実績)

当事業年度の商品仕入実績は次のとおりであります。

 

 

当事業年度

(自  2020年1月1日

至  2020年12月31日)

商品仕入高(千円)

前年同期比(%)

商品仕入

3,163,251

187.8

合計

3,163,251

187.8

 

(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである
 ため、セグメント別の記載を省略しております。

     2.金額は仕入価格で表示しており、消費税等は含まれておりません。

 

(受注実績)

当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(販売実績)

当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

 

 

当事業年度

(自  2020年1月1日

至  2020年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

商品販売

2,977,051

105.9

マイルストーン収入

10,000

37.8

合計

2,987,051

105.3

 

(注) 1.当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである
 ため、セグメント別の記載を省略しております。

   2.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は
  次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自  2019年1月1日

至  2019年12月31日)

当事業年度

(自  2020年1月1日

至  2020年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エーザイ株式会社

2,831,272

99.8

2,545,650

85.2

株式会社スズケン

125,526

4.2

東邦薬品株式会社

119,510

4.0

 

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

⑧ 資本の財源及び資金の流動性について

当社は、新規開発品の導入と、その開発に対して積極的に資金を投下しておりますが、当社はようやく創業期を脱し、収益確保への途上にあるベンチャー企業であり、これまでは開発第1号品であるSyB L-0501の販売収益資金は十分ではなく、主に第三者割当による新株ないし新株予約権の発行により調達してきました。

自販化に伴い、新たな運転資金需要に対応するために銀行から融資枠の設定を受けており、当面の資金需要は、事業から生じるキャッシュフローの範囲内で賄ってゆく計画です。

 

⑨ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」および「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社の経営上の重要な契約は以下のとおりであります。

(1) 技術導入等
①  SyB L-0501(凍結乾燥注射剤)

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

アステラス ファーマ GmbH社(独国)

契約締結日

2005年12月2日

契約期間

日本における最初の製品の販売から10年または、市場独占期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、日本におけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT Ⅱ

契約書相手方名

アステラス・ドイッチラント GmbH社(独国)

契約締結日

2007年3月29日

契約期間

最初の製品の販売から10年または、市場独占期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、中国(香港を含む)、台湾、韓国及びシンガポールにおけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

②  SyB L-1101 / C-1101

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

オンコノバ・セラピューティクス社(米国)

契約締結日

2011年7月7日

契約期間

各国、最初の製品の販売から10年(韓国は7年)または、市場独占期間または、特許権の有効期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、日本及び韓国におけるSyB L-1101/C-1101の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

③  SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤)

 

契約書名

PRODUCT COLLABORATION AND LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

イーグル・ファーマシューティカルズ社(米国)

契約締結日

2017年9月19日

契約期間

製品の特許期間または市場独占期間のいずれか長い方

主な契約内容

①  当社は、日本におけるSyB L-1701/L-1702の独占的開発権及び独占的販売権の許諾を受ける。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金、マイルストーン及び一定料率のロイヤリティを支払う。

 

 

④  SyB V-1901

 

契約書名

LICENSE AGREEMENT

契約書相手方名

キメリックス社(米国)

契約締結日

2019年9月30日

契約期間

製品の適応症例ごとに、また、国ごとに、販売開始から10年間、特許期間または市場独占期間のいずれか長い方が、各ロイヤリティ期間であり、その最終のものが期限到来する時点が契約期限。

主な契約内容

① 当社は、抗ウイルス薬ブリンシドフォビルに関して、開発・販売・製造を含めた独占的権利について世界全域を対象として許諾を受ける。(但し、天然痘疾患に関する適応は除く)

② 上記①に対し、当社は契約一時金及びロイヤリティのほか、承認取得時のマイルストーン及び販売額達成に応じたマイルストーンを支払う。

 

 

(2) 技術導出等

SyB L-0501

 

契約書名

韓国及びシンガポールにおけるベンダムスチン事業提携契約書

契約書相手方名

エーザイ株式会社(日本)

契約締結日

2009年5月15日

契約期間

最初の製品の販売から10年

主な契約内容

①  当社は、エーザイ社に対し、韓国、シンガポールにおけるSyB L-0501の独占的開発権及び独占的販売権を許諾する。

②  上記①の対価として、当社は契約一時金及びマイルストーンを受け取る。

 

 

(3) 国際治験

SyB V-1901

 

契約書名

MASTER CLINICAL SERVICE AGREEMENT

契約書相手方名

サイネオス・ヘルス社(米国)

契約締結日

2020年12月21日

契約期間

契約締結から5年または治験終了のいずれか長い方

主な契約内容

① 当社は、日本/アメリカ/ヨーロッパを中心としたBCV IVのグローバル開発における治験を委託する。

② 上記①の対価として、当社は業務委託料を支払う。

 

 

 

(4) その他

 

契約書名

取引基本契約書

契約書相手方名

株式会社スズケン(日本)

契約締結日

2019年11月1日

契約期間

契約締結から1年または契約の変更・解約のいずれか長い方

主な契約内容

医療用医薬品の売買

 

 

契約書名

取引基本契約書

契約書相手方名

東邦薬品株式会社(日本)

契約締結日

2019年11月1日

契約期間

契約締結から1年または契約の変更・解約のいずれか長い方

主な契約内容

医療用医薬品の売買

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社は、医療上のニーズは極めて高いものの、開発の難度が高く、また大手製薬企業が事業効率面、採算面から手を出しにくいために開発が遅れている、空白の治療領域に焦点を当て、中でも高い専門性が求められ難易度が高いために参入障壁の高いがん及び血液領域に特化し、医薬品の研究開発活動を行っています。

当社は、新薬が開発されないことで治療上の問題を抱えている患者さんに対して、短期間で開発を行い、迅速に治療薬をお届けすることを最優先に考え、空白の治療領域を埋めるために新薬の開発・提供を行うという企業使命を果たしてまいります。

当社の事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであり、当事業年度における研究開発費の総額は2,266,556千円であります。

 

(研究開発体制)

当社は研究設備を保有せず、開発候補品を他の製薬企業、バイオベンチャー企業等から導入することにより、新薬開発を行っています。開発候補化合物については、主にヒトでPOCが確立され、前臨床試験データ、臨床試験データがある化合物を対象とすることにより、開発にかかる様々なリスクと費用を軽減するとともに、開発開始から承認取得までの期間を短縮することが可能となります。

これらの開発候補化合物の探索は、当社独自の探索ネットワークと評価ノウハウを活用し、社内の経験を有した専門スタッフによる絞り込みを最初に行い、その後、SABにおいて、第一線でこの分野における治療の研究に携わる経験豊富な社外専門家の厳密な評価を受けた上で、当社において最終的な導入候補品を決定いたします。当社はSABを年2~3回開催し、研究開発全般に関する議論・情報交換を活発に行っています。

開発候補品の導入後は、社内の経験を有した開発スタッフが、短期間で製造販売承認を取得するための開発戦略策定とその実行等の付加価値の高い業務に専念し、その他の定型的な開発業務はCRO等のアウトソーシング先に委託しています。

なお、当社の研究開発人員数は54名となっております。今後、パイプラインの開発の進捗に伴い、必要に応じて開発人員の拡充を図ってまいります。