第2 【事業の状況】

1 【事業等のリスク】

文中の将来に関する事項は、本半期報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

当中間連結会計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」からの重要な変更があった事項は以下のとおりであります。

 

継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、グローバル市場で事業展開をするスペシャリティ・ファーマへの転換を目指す製薬ベンチャー企業として、当社の事業価値を向上させるべく、2019年9月にグローバルライセンスを取得した抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(BCV)による造血幹細胞移植後のアデノウイルス及びサイトメガロウイルス感染症の臨床試験を実施しております。BCVは多くのウイルスに活性を示すとともに、優れた抗腫瘍活性を持つことが判明しており、がん領域における悪性リンパ腫患者を対象とした臨床試験を開始する等、研究開発に多額の投資を行っております。当社製品トレアキシン®の販売は、後発品の浸食により売上高が著しく減少し、一方で先行投資としての研究開発費の増加により、前連結会計年度まで2期連続して、営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、また、前連結会計年度の損失額に重要性が認められることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しているものと認識しておりました。当中間連結会計期間においても、引き続き営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する中間純損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。このような事象又は状況を解消するために、当社グループでは以下の対応を図ってまいります。

1.事業価値の向上

当中間連結会計期間において、造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象としたBCVのグローバル第Ⅲ相臨床試験(AdV試験)を開始するため、2025年6月に欧州医薬品庁に対して治験申請を行いました。当該臨床試験は2028年下半期の新薬承認申請を目標に4地域(欧州、米国、英国、日本)において80施設で180症例の患者登録を予定しており、着実に実行することにより事業価値を高めてまいります。

2.資金の確保

2025年7月22日付の取締役会において、EVO FUNDを割当予定先とする第65回乃至第67回新株予約権(行使価額修正条項付)の発行並びに第1回無担保普通社債の買取契約を締結することを決議しました。潜在株式数50百万株の新株予約権3回号(2025年8月から2028年1月の30か月間に行使される)を発行し、その行使により合計84億円(当初基準株価168円による計算)の調達を想定しております。

なお、今後予定しているAdV試験の承認申請に向けた試験の進展、並びに現在進めている他の複数の臨床試験、及び共同研究による開発プログラムの進捗がキャタリストとなり事業価値を高めてゆくことにより、2028年下半期に予定する新薬承認申請に向けて、上記の行使価額修正条項付新株予約権のプログラムが効力を発揮することを想定しております。

また、当社はメインバンクとの間で貸付限度額10億円のリボルビング・クレジット・ファシリティ契約を締結しており、当中間連結会計期間末における借入未実行残高は10億円であります。

3.他社との協業によるエクイティ・ファイナンス

2025年度末を目標に、他社との協業による資金調達を進めており、先方の意向を確認中です。

4.事業収支の改善

現在推進中の自社研究あるいは国内外研究機関との共同研究成果を知的財産権化し、ライセンスアウトすることによる導出一時金あるいはロイヤリティ収入の確保に向け、積極的にパートナリングの交渉を継続しております。また、その他の制度金融等についても活用をしてまいります。併せて、経費の削減に努め事業収支の改善を図ってまいります。

以上の施策を実施しておりますが、今後の事業進捗や追加的な資金調達の状況等によっては、当社の資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があるため、現時点においては、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。

なお、中間連結財務諸表は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を中間連結財務諸表に反映しておりません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当中間連結会計期間における当社事業の進捗状況は以下のとおりです。

 

① 当期の経営成績

トレアキシン®点滴静注液100mg/4mL[RTD (Ready-To-Dilute)製剤]については、当中間連結会計期間は、特に第1四半期において、特約店の在庫棚卸、薬価改定に伴う各施設の在庫調整の影響に、特約店在庫の消化が先行したことが重なり、特約店への販売は低調でした。更に、医療機関において後発医薬品への切り替えが進行しており、また、新規治療薬により治療の選択肢が広がったため処方機会が減少する傾向にあり、売上高の減少に影響しています。これらのことから、売上高は646,638千円(前中間連結会計期間比49.7%減)となりました。

販売費及び一般管理費については、研究開発費として1,581,890千円(前中間連結会計期間比3.3%増)と増加しましたが、開発費以外の経費削減に努めたことにより、その他の販売費及び一般管理費との合計では2,647,622千円(前中間連結会計期間比2.5%減)となりました。

これらの結果、営業損失は2,154,055千円(前中間連結会計期間は営業損失1,719,487千円)、経常損失は2,340,948千円(前中間連結会計期間は経常損失1,481,369千円)、親会社株主に帰属する中間純損失は、2,369,190千円(前中間連結会計期間は親会社株主に帰属する中間純損失1,541,341千円)となりました。

なお、2022年2月に当社製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品の製造販売承認を4社が取得し、内2社が同年に後発医薬品の販売を開始しました。なお、2025年6月時点において3社が後発医薬品を販売しております。

当社グループの事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

② 研究開発活動

当中間連結会計期間では、各開発パイプラインにおいて、以下のとおり研究開発を推進しました。

(ⅰ) 抗ウイルス薬SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)

BCVは、2019年にキメリックス社(Chimerix Inc.、本社:米国ノースカロライナ州)から導入し、現在、注射剤BCV(SyB V-1901、IV BCV)の事業価値最大化を目指し、グローバル展開を進めています。造血幹細胞移植後ウイルス感染症、血液がん・固形がん、脳神経変性疾患の3治療領域を重点領域として、二本鎖DNAウイルス(dsDNAウイルス)に対する広範な活性に着目し、臨床開発を進めています。現在進行中の臨床試験に加え、国内外の有力な専門領域研究施設との共同研究も推進しており、これらの研究成果を基にグローバル臨床試験の検討・実施を進めていきます。

移植後ウイルス感染症領域

アデノウイルス感染症:米国で実施した免疫不全患者のアデノウイルス感染症を対象とした第Ⅱ相臨床試験において、2023年にIV BCVの抗ウイルス活性に関するPOCを確立しました。この結果に基づき、造血幹細胞移植後アデノウイルス感染症を対象としたIV BCVの第Ⅲ相臨床試験を開始するため、2025年6月27日に欧州医薬品庁に治験申請を行いました。この第Ⅲ相臨床試験は、欧州、米国、英国、日本の4地域、80施設で180例の患者登録を予定しており、2028年下半期に欧州での新薬承認申請を目指しています。なお、本開発プログラムは、2021年4月にFDAからファストトラック指定を受けています。

サイトメガロウイルス感染症:免疫不全患者のサイトメガロウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を2024年5月に米国で開始し、同年6月に最初の患者登録を行いました。2025年6月末現在、累計19例の患者が登録されています。

BKウイルス感染症:腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症に対する開発については、現在プロトコルの修正の検討を行っております。

 

 

血液がん・固形がん領域

BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も確認されています。各国の研究機関との共同研究等を通じて、血液がん・固形がん領域における新規適応症の探索も行っています。

悪性リンパ腫:悪性リンパ腫患者を対象とした国際共同第Ⅰb相臨床試験を2024年8月に日本で開始し、2025年6月に最初の患者登録を達成しました。現在はシンガポール、香港でも試験が進行中です。本試験はBCVのがん領域におけるヒトPOCを確立することを目的としています。また、EBウイルス陽性リンパ腫に対するBCVの抗腫瘍効果とそのメカニズムの探索について、シンガポール国立がんセンターとの共同研究を実施しています。NK/T細胞リンパ腫・B細胞リンパ腫・末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)等に対するBCVの抗腫瘍効果や、BCVの抗腫瘍効果を予測するバイオマーカーに関する共同研究成果は、欧米の国際学会で発表されました。

脳腫瘍:2021年からカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳腫瘍センターと、BCVの脳腫瘍に対する抗腫瘍効果に関する共同研究を実施しています。2025年4月、米国シカゴで開催された米国がん学会年次総会で、悪性脳腫瘍におけるBCVの有効性と、その効果を予測するバイオマーカーとなる遺伝子に関する研究成果を発表しました。

EBウイルス関連リンパ増殖性疾患:米国国立衛生研究所に所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID:National Institute of Allergy and Infectious Diseases)との間で、EBウイルス関連リンパ増殖性疾患に対するBCVの有効性を評価する共同研究開発契約(CRADA)を2023年4月に締結しました。

 

脳神経変性疾患領域

多発性硬化症:難病である多発性硬化症は、近年、EBウイルスの関連が証明されました。BCVは他の抗ウイルス剤に比べ、EBウイルスに対して高い抗ウイルス活性を有することから、2023年3月に米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立神経疾患・脳卒中研究所と共同研究開発契約(CRADA)を締結し、EBウイルスを標的とした新規治療法の開発に向けた共同研究を開始しました。同年10月、この共同研究チームは、 欧州多発性硬化症学会(ECTRIMS-2023,イタリア)において、多発性硬化症患者由来の細胞を用いた実験で、BCVがEBウイルス活性を選択的に阻害するという結果を発表しました。この結果は、BCVが多発性硬化症の治療薬となる可能性を強く示唆するものです。現在、臨床試験を視野にマーモセット(非ヒト霊長類)を用いた動物実験を現在進めています。

アルツハイマー型認知症:二本鎖DNAウイルス(dsDNAウイルス)の中には単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)をはじめ水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)など、脳神経組織への指向性を有すウイルスが存在します。これらのウイルスが潜伏感染からの再活性化を通じて、アルツハイマー型認知症を含む様々な脳神経疾患の発症に関与している可能性が近年示唆され、研究が進展しています。2022年12月、米国タフツ大学により確立されたヒト神経幹細胞を用いて脳組織を3次元に模倣したHSV感染・再活性化モデルにおいて、単純ヘルペスウイルス感染による認知症関連指標に対するBCVの効果を検証するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結し、共同研究を実施しています。

ポリオーマウイルス感染症:ポリオーマウイルス、特にJCウイルス(JCV)は、dsDNAウイルスの中でも、感染により脳に重篤な疾患を引き起こすことが知られています。既存の抗ウイルス薬では効果がほとんど見られないため、有効な治療薬の開発が待望されています。2022年11月、米国ペンシルベニア州立大学医学部と試料提供契約(MTA:Material Transfer Agreement)を締結し、ポリオーマウイルス感染マウスモデルにおけるBCVの抗ウイルス活性を検証する非臨床試験を実施し、2024年7月にはその研究成果として新たな知見がmBio誌に掲載されました。

 

2022年9月、キメリックス社はエマージェント・バイオソリューションズ社(本社:米国メリーランド州)へのBCVに関する権利の譲渡手続きの完了を発表しましたが、当社の取得したBCVに関する、天然痘・エムポックスを含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象とした、全世界での独占的開発・製造・販売権に対する影響はありません。

2024年3月には、当社の子会社であるシンバイオ ファーマ アイルランド(SymBio Pharma Ireland Limited、アイルランド ダブリン)の設立に伴い、エマージェント・バイオソリューションズ社から、EU(欧州連合)における免疫不全患者におけるアデノウイルス感染症とサイトメガロウイルス感染症予防に対するオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定が移管されました。

 

 

(ⅱ) 抗がん剤 SyB L-1701(RTD製剤)/ SyB L-1702(RI投与)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®

東京大学や京都大学との共同研究等に積極的に取り組んできましたが、研究リソースの一部はBCVの研究に比重を移しております。

 

(ⅲ) 抗がん剤SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)

米国ペンシルベニア州に本社を置くオンコノバ・セラピューティクス社(現トラウスファーマ社、以下「オンコノバ社」)から導入したリゴセルチブについては、2025年4月でライセンス契約を終了しました。

 

③ 海外事業

引き続き、シンバイオファーマUSAをIV BCVのグローバル事業の戦略的拠点とし、欧米日英においての開発を加速し、商業化を実現するために活動を発展させてまいります。2025年1月1日付で、シンバイオファーマUSAの取締役CEO兼社長として、当社執行役員兼社長補佐であった田口賢(2025年4月1日付で当社副社長執行役員兼COOに就任)を選任しました。さらに、グローバルでの臨床開発および薬事戦略の推進のため、2030年に向けた当社のBCV事業の牽引を目指します。

 

④ 新規開発候補品の導入

当社グループは2019年に導入したBCVのグローバル開発を推進するとともに、従来からの取り組みである複数のライセンス案件の検討を進め、新規開発候補品の探索評価の実施を通じて、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として中長期的な事業価値の創造を目指してまいります。

 

⑤ 財政状態

当中間連結会計期間末における総資産は4,139,079千円となりました。流動資産は4,096,035千円となり、主な内訳は、現金及び預金が3,053,848千円、売掛金が205,021千円、商品及び製品が163,508千円であります。固定資産は43,043千円となり、主な内訳は、敷金及び保証金が37,349千円であります。

負債の部については、総額1,775,075千円となりました。流動負債は470,228千円となり、主な内訳は、未払金が338,700千円であります。固定負債は1,304,847千円となり、主な内訳は、転換社債型新株予約権付社債が1,300,000千円であります。

純資産の部については、総額2,364,003千円となりました。主な内訳は、資本金が18,598,304千円、資本剰余金が18,573,176千円、新株予約権が342,434千円であります。

この結果、自己資本比率は48.8%となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は3,053,848千円となりました。

当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前中間純損失2,357,416千円の計上、未払金297,152千円の減少、その他の流動資産193,981千円の増加等により営業活動資金が減少した一方、売上債権218,131千円の減少等により、全体では2,510,623千円の支出(前中間連結会計期間は1,134,626千円の支出)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

敷金及び保証金の回収による収入6,571千円により、6,555千円の収入(前中間連結会計期間は24,778千円の収入)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

新株予約権付社債の発行による収入1,707,390千円等により、全体では1,703,651千円の収入(前中間連結会計期間は723,367千円の収入)となりました。

 

(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題

第2 事業の状況 1 事業等のリスク (継続企業の前提に関する重要事象等)に記載のとおり当中間連結会計期間末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。このような状況を解消または改善するために、「第4 経理の状況 1 中間連結財務諸表 注記事項(継続企業の前提に関する事項)」に記載した施策を実施してまいります。

 

(4) 研究開発活動

当中間連結会計期間における研究開発費の総額は、1,581,890千円であります。

なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3 【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。