第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

 当社グループは、企業理念として「創ろう ゆたかで安心な未来を テクノロジーで」をパーパスとし、次のミッションを掲げております。

安心・安全

消火・防災のプロフェッショナルとして、ステークホルダーの皆様とともに社会に安心と安全を提供し続けていきます

テクノロジー

社会の変化に適応した新しい発想とテクノロジーで消火・防災を科学し、防災の未来を
エンジニアリング力で創っていきます

人財育成

ゆたかで安心な未来の実現に向けて、次世代の消火・防災へつなぐ自律型人財の育成に情熱を持って取り組んでいきます

 当社グループは、お客様、株主・投資家、お取引先・事業パートナー、地域社会、従業員などすべてのステークホルダーに対する社会的責任を果たし、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化および高付加価値・成長領域への事業拡大を 中期経営方針としており、事業利益の拡大、EBITDAマージンの向上およびROEの高水準維持を中長期的な目標として定めております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、1955年4月の会社設立以来、粉末消火設備をはじめとして各種防災設備の設計・施工・メンテナンス、消火器を主力商品とする防災機器の製造・販売を主たる目的として事業を行ってまいりました。その後、消防自動車の製造及び販売、各種自動火災報知設備の設計・施工、火災報知関連機器の製造・販売等の事業を加えて、防災事業の領域を広げてまいりました。

 現代社会において、各種のインテリジェントビル、商業ビル、高層マンション等さまざまな都市構造物、発電所、工場等のプラント施設、各種の公共施設、福祉施設、更には一般家庭等における防災や安全に対するニーズはますます高まっており、その内容は高度化、多機能化、多様化が求められております。それら市場の要請の変化、動向に対して、当社グループとしてソフト、ハード両面から適時、適切に対応していくために、設計・施工の総合力を強化し、エンジニアリング力を高めていくとともに、環境への対応を最優先に、環境にやさしい新製品、新防災システムの開発にも取り組んでいく方針でおります。

 このような状況のもと、当社グループは中長期的な会社の経営戦略として「NDCビジョン2035」を掲げ、その中でも2026年3月期から2030年3月期までの5年間を、当社グループの変革を実現するステージと位置付け、中期経営計画『変革と成長2030』(以下、「本計画」といいます。)を策定いたしました。

 本計画では、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化および高付加価値・成長領域への事業拡大を中期経営方針とし、各施策に取り組んでまいります。

 

<経営基盤の強化>

・人財・組織

 職種と専門性から目指すべき人財ポートフォリオを明確にし、その実現に向けて人的資本投資を進めてまいります。

・IT/DXの推進

 案件/物件統合管理システムの導入による、情報一元化および生産性の向上、業務効率の改善を図り、更なる成長を目指します。

・研究開発の推進

 環境対応等の社会的要請および法令に対応した製品・システムの開発を引き続き実施し、消火防災のコア技術であるセンシングと消火を融合し、新たなソリューションを開発してまいります。

・製造・開発拠点の整備拡充

 開発研究拠点である技術開発第1研究所(千葉)、技術開発第2研究所(福島)の整備拡充により研究開発環境の充実を図り、先進的かつオリジナリティのある製品やシステムの開発スピードを向上してまいります。

 

 福島工場および千葉工場では場内レイアウトを見直すことで生産高および生産性の向上を図り、新たに開発する製品の生産設備導入を計画してまいります。

 

<高付加価値・成長領域への事業拡大>

・防災設備事業

 建築防災のコア市場におけるトップポジションの確立を目指し、データセンター、半導体関連案件に加え、都市部を中心とした大規模再開発案件等の受注推進およびエンジニアリング力の更なる強化に注力します。

 プラント事業領域の拡大により収益基盤の増強を目指し、新規発電所/水素・アンモニアプラント等の新設プラント物件に加えて、既設プラント物件の改良工事や環境配慮型泡消火薬剤関連案件等の受注推進に注力します。

・メンテナンス事業

 高付加価値であるメンテナンス事業の拡大を目指し、事業基盤の再編成とグループ内における事業部間連携の強化を図り、当社グループ施工物件の点検および既存物件の設備機能維持・向上のための改修工事受注推進と当社に優位性がある特殊物件のメンテナンス契約獲得に注力します。

・商品事業

 消火器、火災報知関連機器の販売に加え、火災予防の普及促進を目指し、顧客ニーズに沿った自社開発製品を拡販してまいります。また、協力会社のネットワークを拡充し、代理店ネットワークを活かした小型工事案件の受注拡大にも注力します。

 

 本計画の取り組みを通じて、2030年3月期の計画値を次のように設定し、資本コストを意識した経営及び持続的な企業価値の向上を実現してまいります。

 ・事業利益 75億円

 ・EBITDAマージン 12%以上

 ・ROE 12%以上の維持

 

(4)対処すべき課題

 当社グループは、持続的な成長を実現するための経営基盤の強化および高付加価値・成長領域への事業拡大が最重要と考えており、独自の防災製品・防災システムを開発するための研究開発体制および人材育成の強化、コア・ビジネスであるエンジニアリング力の強化を図ってまいります。とりわけ、火災を未然に防ぐ「火災予防」の分野に注力し、自動消火を目指した製品開発へのイノベーション、イマジネーション力の向上に努め、将来の社会ニーズに合う製品およびサービスを提供してまいります。

 それらを実現するために、千葉工場内の技術開発第1研究所では新たな消火設備・システムの開発に加えて、新素材の基礎研究を始め、低環境負荷の消火薬剤や次世代エネルギー向け消火システム等の研究開発に取組んでおります。福島工場内の技術開発第2研究所では、新たな自動火災報知設備・機器の開発に加えて、火災判定アルゴリズムの基礎研究を始め、次世代の火災予兆検知に関するセンシング技術を中心とした研究開発を推進しております。

 当社グループは引き続き、総合防災企業としての立ち位置を更に強化しつつ、製品ラインナップの拡充を図り、コア・ビジネスであるエンジニアリング力を活かした各種防災設備・システムの設計・施工、メンテナンスの積極的な営業活動を推進してまいります。更に、社会の変化に適応する新しい発想とテクノロジーで、次世代の防災を創造し、世の中に安心・安全を提供するとともに、環境に配慮した、より良質な社会インフラを構築するという社会的使命を果たすべく、グループ一丸となって取組んでまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループの、サステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、「創ろう ゆたかで安心な未来を テクノロジーで」をパーパスとして、世の中に安心・安全を提供するという社会的使命を果たすために、次世代の防災を創造し、より良質な社会インフラを構築することにより、持続可能な環境・社会の実現に貢献するとともに、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。

 

(1)ガバナンス

 国際情勢や社会環境が大きく変化し、これまでにも増して環境に対する社会の意識が高まり、当社グループを取り巻く環境も大きく変化しております。

 このような状況の下、当社グループは、サステナビリティを巡る課題への取組み及び人的資本や研究開発活動への投資及び気候変動、資源循環への対応等の経営課題について重要であると認識しており、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を中心にサステナビリティへの取り組みを推進しております。詳細は、「第4 提出会社の状況、4コーポレート・ガバナンスの状況等、(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)戦略

 当社グループは、サステナビリティを巡る課題について審議等を行い、取組みを推進するための組織として、2025年4月にサステナビリティ委員会を発足いたしました。また、当社グループの将来の企業活動に関連性の高い環境・社会課題をリストアップし、それらの課題を評価したうえで、重要性の観点により、以下のマテリアリティを特定しております。

「テクノロジーを活かした環境配慮型の製品開発」

「防災を通じた安心・安全な未来の実現」

「人財育成と社員の挑戦を促す組織づくり」

「持続的成長を実現する経営基盤の構築」

 環境対応型社会の要請に応えるため、引き続き、環境にやさしい、リサイクルが容易なアルミニウム製消火器の開発、消火ガスおよび薬剤のリサイクル等の取組みを継続してまいります。また、環境に配慮した消火薬剤の開発、そしてそれらを用いた製品・システムの開発等、社会的責任を果たすことにグループ一丸となって取り組んでまいります。

 さらに、従来型の消防防災にとどまることなく、火災を発生させない、火災をごく早い段階で感知する「火災予防」に注力してまいります。

 人材育成及び社内環境整備に関する方針につきましては、人材育成は当社グループの最重要課題であると認識しており、階層別および職種別教育等の能力開発の機会を多く提供することに努めて、従業員の業務遂行管理能力・技術力を高め、顧客の信頼を得られる人材育成の強化を図っております。

また、当社グループは「健康経営」を標榜し、従業員の健康を経営上の重要な資産と捉え、健康的な生活の確保のため、定期健康診断の受診やストレスチェック制度等の実施を通じて、「健全な労働環境の確保」および「心身の健康実現」等に取り組み、健康経営優良法人認定制度により「健康経営優良法人 2025」に認定されました。さらに、フレックスタイム制度や在宅勤務制度等を整備し、従業員が働きやすい環境づくりに努めております。

 なお、女性従業員の活躍が当社グループの持続的な成長を確保する上での強みとなることを認識しており、今後、女性従業員の活躍を推進できる社内環境づくりを拡大してまいります。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、サステナビリティを巡る課題への対応は、重要なリスク管理の一部であると認識しており、的確に対処するとともに、リスクの減少や収益機会につながるサステナビリティに関する課題及び気候変動等の地球環境問題についても、重要な経営課題として積極的に取り組んでまいります。

 また、リスク管理委員会を設置し、リスク案件に関する協議・検討、新たなリスク要因への対応協議を行っております。詳細は、「第4 提出会社の状況、4コーポレート・ガバナンスの状況等、(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、中核となる人材の確保に向け、能力・成果主義に徹した人事制度を運用しており、性別・国籍による管理職への登用等の制限はせずに、女性管理職の登用及び外国籍の人材採用を進めるとともに、数値目標の設定を検討してまいります。

 今後、多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境の整備方針の策定・開示も合わせて前向きに取り組んでまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境について

① 景気変動リスクについて

当社グループは、各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消防自動車の製造及び販売、防災用品の仕入・販売等の防災事業を行っており、消防法をはじめとした法規制及び製品耐用年数による安定的な買い替えにより、一定の需要が見込まれるため、メンテナンス事業及び商品事業は比較的景気動向の影響を受け難い特徴があると考えておりますが、想定を上回る経済情勢の変化、建設需要・設備投資の縮小、建設資材価格及び労務費等の急激な上昇等が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 防災設備事業への依存について

当社グループの売上高のうち、防災設備事業における売上高は全体に占める割合が高く、2025年3月期では60.0%を占めております。防災設備事業においては、設備投資動向、大規模再開発計画、新規供給物件動向、商業施設等の着工数等に左右されるため、建築投資案件の減少、設備投資計画の延期等の変化があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは工事ごとに厳正な納期、工期及び原価の管理を行っていると考えておりますが、工程の大幅な変更、施工途中における設計変更や工事の手直し等、売上高の一部が翌連結会計年度にずれ込む場合、又は想定外の追加の費用が発生した場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 四半期業績の偏重について

当社グループは、請負工事に関して、履行義務は一定の期間にわたり充足されると判断し、期間がごく短い工事を除き、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。また、その他の工事物件について、履行義務は一時点で充足されると判断し、完全に履行義務を充足した時点(工事が完了した時点)で収益を認識しております。このため、工事の進捗状況又は工事完了等のタイミングにより業績が変動することから、特定の時期に業績が偏重する可能性があり、場合によっては四半期業績が営業損失となる可能性があります。

なお、2025年3月期の各四半期の業績は以下のとおりです。              (単位:千円)

 

第73期連結会計年度

(自 2024年4月1日

    至 2025年3月31日)

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上高

10,802,441

12,871,575

13,841,972

18,211,089

55,727,078

売上総利益

2,771,336

3,275,195

3,695,051

5,073,037

14,814,620

営業利益

885,402

1,315,059

1,705,433

2,222,356

6,128,252

経常利益

1,071,715

1,128,850

1,592,119

2,024,484

5,817,169

親会社株主に帰属する

四半期(当期)純利益

733,713

791,794

1,086,871

1,345,904

3,958,283

 

④ 主要な事業活動の前提となる事項について

当社グループの主要な事業活動である防災設備事業及びメンテナンス事業は、建設業許可が必要であり、次のとおり建設業許可を取得しております。

・ 特定建設業許可(消防施設工事業)

・ 特定建設業許可(管工事業)

・ 一般建設業許可(機械器具設置工事業)

・ 一般建設業許可(電気通信工事業)

これらの建設業許可は5年ごとの更新が義務付けられており、本書提出日現在の許可の有効期限は2030年2月であります。

これらの建設業許可は、建設業法第8条及び同法第17条に欠格要件が規定されており、当該要件に抵触した場合、許可等の取消し、又は期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命じられる可能性があります。

当社グループは、現時点において、許可等の取消し等の事由となる事実はございませんが、当該許可等の取消し等を命じられた場合には、社会的信頼の毀損や契約破棄等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 競合について

当社グループの営む各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消防自動車の製造及び販売、防災用品の仕入・販売等の防災事業は、日本国内において同様の事業を営む企業と競合する関係にあります。このため、当社グループは新製品の開発及び販売チャネルの充実等に加え、当社グループに対する顧客からの信頼度が重要であると考えており、これらの向上に努めております。しかしながら、競合他社に対し優位性を維持出来なくなる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 法的規制について

当社グループが提供する、各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消防自動車の製造及び販売、防災用品の仕入・販売等の防災事業では、消防法及びその他関連法令により、防災設備等の設置および保守点検等が義務付けられております。今後、社会情勢等の変化により、法令の改正及び新たな法規制が設けられる可能性があります。この場合において、新たな需要を喚起し業績の向上に寄与する可能性がありますが、その一方で、当社グループの投資計画及び事業計画の大きな変更を余儀なくされ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 製造物責任について

当社グループの消火設備、消火器及び消防自動車等に関する生産品の大部分は、日本消防検定協会による検定品及び日本消防設備安全センター等による認定品を提供しており、また、設置工事等については、消防検査の義務があるものは検査に合格して納入しております。当社グループ内においても徹底した品質管理に努めておりますが、リコールや製造物責任賠償につながる製品の欠陥が発生した場合には、賠償責任保険に加入しているため損害の一部はカバーされるものの、少なくとも社会的信用の失墜は避けられず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 特定の生産拠点について

当社グループの各種防災設備、消火器及び消防自動車等の生産機能は、千葉工場及び福島工場の二拠点に集中しております。当社グループでは、安全及び安定操業の徹底を図り、製造設備の停止及び設備に起因する事故等による潜在的なマイナス要因を最小化するため、安全パトロールを強化し、設備工具の定期的な点検を実施しております。しかしながら、万が一製造設備で発生する事故及び自然災害等により人的及び物的被害が生じた場合には、コストの増加や生産活動の中断等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 外注先との関係について

当社グループは、消火設備工事等の施工・メンテナンスにおいて施工管理(品質管理・工程管理・コスト管理・安全管理)業務以外については基本的に外注しております。当社グループでは、自社の選定基準に合致する多数の外注業者と良好な関係を構築しているため十分な外注体制を構築していると考えておりますが、景気変動等にともなう工事案件の急激な増加により外注先を十分に確保できない状況等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 原材料・部品の調達について

当社グループは、原材料・部品の調達について複数の仕入先を確保するようにしておりますが、いくつかの主要な原材料について特定の供給元に偏重しております。このため、特定の原材料供給元の操業が停止すること等により、必要な原材料の調達が出来ない状況が発生した場合は、当該原材料に依存している製品の生産活動に著しい影響を与え、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、国内外の市場経済の動向等により、資材価格が上昇し、原材料調達状況に影響が及んだ場合、その状況を販売価格へ転嫁することが困難な場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 人材の確保について

当社グループの更なる成長のためには、新製品の開発及び既存製品の製造、工事施工管理、並びに製品等を販売するための有能な人材を確保する必要があります。そのため、当社グループでは社員研修制度等を整備し人材の育成に努めておりますが、人材の確保が出来ない状況又は当社グループがこれまで培ってきた重要な技能・技術の伝承が中断してしまう状況等が顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) その他、経営成績に影響を及ぼす可能性のある事項について

① 固定資産の減損について

当社グループは、有形固定資産及び合併により生じたのれん等の固定資産を保有しております。当該固定資産のうち、減損の兆候が認められる資産等がある場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとなります。このため、当該資産等が属する事業の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 繰延税金資産について

当社グループでは、将来減算一時差異等に対して、2025年3月期末において427百万円の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討し計上しておりますが、実際の課税所得が予測を大幅に下回った場合等には回収可能性の見直しを行い、回収可能額まで繰延税金資産を取崩すことにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、上記の繰延税金資産は、将来の課税所得を含め様々な予測・仮定に基づいており、実際の結果はこれらの予測・仮定と異なる可能性があります。なお、実効税率等の税制関連の法令改正がなされた場合、繰延税金資産を取り崩すこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 退職給付債務について

当社グループの退職給付費用及び退職給付債務は、数理計算上の割引率及び年金資産の期待運用収益率等の前提条件に基づいて算出しております。しかしながら、運用環境の悪化等により、実際の結果がこれらの前提条件と異なった場合、あるいは前提条件の変更が必要となった場合には、退職給付費用及び退職給付債務が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1)経営成績等の状況

当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善するなかで、緩やかな景気回復の動きが見られましたが、中東地域をめぐる国際情勢不安を背景とするエネルギー価格の高騰や原材料価格の高止まりに加え、物価上昇の継続や米国の通商政策における動向がわが国の景気を下押しする大きな懸念材料となり、先行きは依然として不透明な状況で推移しました。

当社グループの属する防災業界におきましても、原材料および資源価格の高騰等による業績への影響が懸念される状況にはありますが、防災・減災を目的とした公共事業や都市部の大規模再開発等による需要拡大への期待感は尚、継続しているように見受けられます。

このような経済状況のもと、当社グループは、自動火災報知設備から消火設備、消火器そして消防自動車までを広くカバーする総合防災企業としての立ち位置を更に強化しつつ、製品ラインナップの拡充を図り積極的な営業活動を推進してまいりました。コア・ビジネスのエンジニアリング力を活かした各種防災設備・システムの設計・施工、メンテナンスを通じて、世の中に高度な安心・安全を提供し、より良質な社会インフラを構築するという社会的使命を果たすべく、グループ一丸となって注力しております。

このような状況のもと、当社グループの当連結会計年度の売上高は55,727百万円(前年同期比151百万円減少)となりました。利益につきましては、営業利益6,128百万円(同1,353百万円増加)、経常利益5,817百万円(同636百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益3,958百万円(同670百万円増加)となりました。

当社グループは、各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消火設備、消防自動車、自動火災報知設備の製造・販売、防災関連用品の仕入・販売等、幅広く防災にかかわる事業を行っており、単一セグメントであるため、業績については営業種目別に記載しております。

営業種目別の業績は、次のとおりであります。

 

① 防災設備事業

当連結会計年度は、大型案件の受注は引き続き旺盛であるものの、年度末までに完工を迎える大型案件が工事進捗した前年同期に比して、当連結会計年度は着工初期の案件が多かったこと等により、売上高は33,426百万円(前年同期比1,569百万円減少)となりました。売上総利益につきましては、採算性の良い工事案件への受注活動に継続して努めてきた結果、8,790百万円(同1,297百万円増加)となりました。

② メンテナンス事業

当連結会計年度は、改修・補修工事案件の進捗等により、売上高は10,160百万円(同955百万円増加)となりました。売上総利益につきましては、3,849百万円(同365百万円増加)となりました。

③ 商品事業

当連結会計年度は、機器類の販売および小型工事案件の引き合いが増加したこと等により、売上高12,139百万円(同462百万円増加)となりました。売上総利益につきましては、2,174百万円(同168百万円増加)となりました。

 

 a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績を営業種目別に示すと、次のとおりであります。

営業種目

当連結会計年度

(自2024年4月1日

  至2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

防災設備事業

24,636,282

89.6%

メンテナンス事業

6,310,842

110.3%

商品事業

9,965,332

103.0%

合 計

40,912,457

95.4%

(注) 金額は、売上原価により算出しております。

 

 b.受注実績

 当連結会計年度の受注状況を営業種目別に示すと、次のとおりであります。

営業種目

当連結会計年度

(自2024年4月1日

  至2025年3月31日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

防災設備事業

31,338,122

133.1%

25,834,760

135.9%

(注)1.金額は、販売価格によって表示されております。

2.メンテナンス事業は受注と販売がほぼ同時期に成立するため、また、商品事業は見込み生産を行っているため、受注状況を記載しておりません。

 

 c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を営業種目別に示すと、次のとおりであります。

営業種目

当連結会計年度

(自2024年4月1日

  至2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

防災設備事業

33,426,621

95.5%

メンテナンス事業

10,160,754

110.4%

商品事業

12,139,701

104.0%

合 計

55,727,078

99.7%

(注) 金額は、販売価格によって表示されております。

 

 

(2)財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、50,939百万円(前連結会計年度末比3,089百万円減少)となりました。

 流動資産は、34,771百万円(同6,654百万円減少)となりました。現金及び預金9,535百万円(同4,509百万円増加)、受取手形、売掛金及び契約資産13,423百万円(同7,722百万円減少)、電子記録債権3,096百万円(同512百万円増加)、商品及び製品3,609百万円(同33百万円増加)、原材料及び貯蔵品2,133百万円(同9百万円増加)、短期貸付金96百万円(同3,296百万円減少)等であります。

 固定資産は、16,167百万円(同3,564百万円増加)となりました。内容は、有形固定資産9,557百万円(同326百万円増加)、無形固定資産585百万円(同150百万円減少)、投資その他の資産6,025百万円(同3,388百万円増加)であります。

 負債合計は、20,421百万円(同6,559百万円減少)となりました。

 流動負債は、17,105百万円(同5,308百万円減少)となりました。主な内容は、支払手形、買掛金及び工事未払金5,408百万円(同3,085百万円減少)、電子記録債務2,334百万円(同779百万円減少)、短期借入金1,309百万円(同2,711百万円減少)、1年内償還予定の社債1,814百万円(同1,814百万円増加)等であります。

 固定負債は、3,315百万円(同1,250百万円減少)となりました。主な内容は、社債-百万円(同1,794百万円減少)、長期借入金1,751百万円(同587百万円増加)等であります。

 純資産合計は、30,517百万円(同3,469百万円増加)となりました。主な内容は、配当金の支払335百万円及び親会社株主に帰属する当期純利益3,958百万円を計上したことによる利益剰余金が21,846百万円(同3,623百万円増加)、非支配株主持分4,883百万円(同85百万円増加)等であります。

 これらの結果、当連結会計年度末における自己資本比率は50.3%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、9,502百万円となり、前連結会計年度末から4,509百万円増加しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

営業活動におけるキャッシュ・フローは、8,942百万円の収入(前連結会計年度は1,145百万円の収入)となりました。主な収入は、税金等調整前当期純利益5,745百万円、減価償却費734百万円、のれん償却額152百万円、売上債権の減少7,157百万円等であり、主な支出は、仕入債務の減少3,841百万円、法人税等の支払額1,950百万円等であります。

投資活動におけるキャッシュ・フローは、1,019百万円の支出(同330百万円の支出)となりました。主な収入は、有価証券の減少181百万円等であり、主な支出は、有形固定資産の取得による支出1,274百万円、無形固定資産の取得による支出30百万円等であります。

財務活動におけるキャッシュ・フローは、3,361百万円の支出(同76百万円の収入)となりました。収入は、長期借入れによる収入556百万円であり、主な支出は、短期借入金の減少2,707百万円、長期借入金の返済による支出834百万円、配当金の支払額335百万円等であります。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの主な資金需要につきまして、営業活動、生産活動及び研究開発活動のために必要な運転資金は、営業活動によるキャッシュ・フローによって獲得した内部資金及び金融機関からの短期借入金でまかなっております。持続的成長の実現に向けた大型の設備投資資金やアライアンスのための必要資金は、主に金融機関からの長期借入金にて調達しております。

また、資金の流動性につきましては、運転資金及び一定の戦略的投資に備えられる現金及び現金同等物等の流動性資産を確保しております。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況、1連結財務諸表等、(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消防自動車の製造・販売、防災用品の仕入・販売等の防災事業を行っており、単一セグメントであるため、研究開発活動について営業種目別に記載しております。

当社グループでは、消防法等関連法規の改正、社会構造の変化、市場の要請、技術環境の変化等に適応できる新技術を研究開発し、また基盤保有技術を深耕することを目的として研究開発活動を行っております。消火設備・自動火災報知設備・消火器等の機器は、消防法等関連法規により主要な仕様・規格あるいは性能・機能が定められておりますが、当社グループでは、それらの要請を効率的に実現するとともに、当社グループ独自の技術・ノウハウを盛り込むことにより、差別化を図っております。

また、近年の地球環境保護への考えの広がり、資源のリサイクル活用、建築・構造物の大規模化、複合化や新しい使用形態の施設の普及、バイオ燃料や燃料電池、水素・アンモニアをはじめとする代替エネルギーや新素材の開発等による化学物質の多様化、少子高齢化に伴う省力化等の社会環境変化により、防災製品・防災システムの機能・性能並びに物性や使用材料に対する進化が要求されております。

このような社会環境変化による市場潮流を先取りした商品の拡充・技術開発が不可欠であることから、当社グループでは、法規制にとどまらない防災製品・防災システムの開発等にも積極的に取り組み、これらのビジネスチャンスを捉えるべく、積極的な研究開発活動を推進しております。

さらに、既存技術・製品においても生産技術の改善や品質及び生産性の向上に努め、競争力強化を図ることが重要で、営業部門と開発部門との緊密な連携にも注力しております。

 

当連結会計年度における主な研究開発活動を営業種目別に示すと、以下のとおりであります。

 

(1)防災設備事業

次世代の防災製品・防災システムの開発を進めており、ガス系消火設備について、施工効率向上等を目的とした制御盤をリニューアルし、日本消防設備安全センターが行う認定型式を取得しました。

水質汚濁防止法の一般排水基準をクリアした低環境負荷のA火災用添加剤について、日本消防検定協会が行う特定機器評価の型式を取得しました。当該添加剤を水に添加すると、水の消火能力が向上することが証明されており、消火用水の確保が困難な林野火災等において、その威力を発揮するものと期待されております。

PFOS、PFOA、PFHxS、PFHxAなどの直鎖系有機ふっ素化合物を含まない、危険物施設向けの泡消火薬剤については 商品名「グリーンアルコエース」として販売開始しておりますが、その発展形として泡原液を二分の一に濃縮した製品を開発し、国家検定型式を取得しました。

新たな自動火災報知設備・機器の開発に加えて、火災判定アルゴリズムの基礎研究を始め、次世代の火災予兆検知に関するセンシング技術を中心とした研究開発に取り組んでおります。

 

(2)商品事業

地球環境にやさしい消火薬剤等の開発を進めており、有機ふっ素化合物を一切含んでいない中性強化液消火薬剤を開発し、当該薬剤を充填した消火器の国家検定型式取得に向けて開発を継続しています。

産業用機械向けの自動消火装置については、既に販売開始しておりますが、オプションとして装置本体の格納箱や一部機能を追加する等、ユーザーの様々なニーズに応えるため、ラインナップの拡充を進めております。

 

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、536百万円であります。