第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループはOur Value(企業理念、グループビジョン、およびコーポレートメッセージ)を基盤として、2030年に向けた2030ビジョンを定めています。1949年の創立以来、私たちは、自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしへの貢献を実践してきました。変わらぬOur Valueのもと、中長期の社会課題に対応し、事業機会を捉えて、次なる成長に向けた変革に踏みだしていくことが重要です。

当社グループは、2030年に向けた成長戦略 Change2025(2023年度~2025年度)を推進しています。2023~2025年度を「構造改革期」、2026~2030年度を「再成長期」と位置づけ、海外や新たな食領域等の成長領域に集中して投資を振り向けることで、収益性と成長性が両立する事業ポートフォリオへの転換を図ります。さらに、100年を超えても成長し続ける企業となるべく、ステークホルダーとともに「サステナビリティ経営」を進化させていきます。継続的な事業の成長と持続可能な社会の実現を両輪として、カルビーグループの企業価値向上を目指します。

 

Our Value


2030ビジョン

 

 


 

2030目指す姿

 

 

海外市場と新たな食領域を、成長の軸として確立する

 

 

(2)当社グループを取り巻く事業環境

当社グループを取り巻く足元での事業環境変化としては、地政学的リスクおよび為替影響を背景としたエネルギー・原材料コストの高騰、中国の景気低迷、インフレによる消費マインドの縮小等が挙げられます。2025年3月期は、原材料コスト高騰の継続に加え、「2024年問題」による物流費上昇等の新たなコストアップ要因や金融緩和政策転換の動き等、引き続き厳しい経営環境が見込まれますが、国内では企業の設備投資意欲の高まりや30年ぶりとなる大幅な賃上げもあり、緩やかながら経済回復が続くことが想定されます。

中長期的には、温暖化等の地球環境の変化による資源獲得競争の激化が進む中、サプライチェーンにおける環境負荷や人権への配慮がより強く求められています。また、国内市場では少子高齢化や単身世代の拡大、生活スタイルの変化によって食に対する価値観の多様化が進む一方、グローバルマーケットでは新興国での中間所得層の拡大等によって食料需要の増大が想定されています。当社グループは、このような事業環境の変化は持続可能な成長の機会でもあると捉えています。

 

(3)成長戦略 Change2025

<3か年変革プラン>

3ヵ年変革プラン「Change2025」の重点課題は以下のとおりです

次なる成長に向けた事業構造改革

①収益力強化

 国内コア(スナック菓子・シリアル食品)事業においては、量的拡大から脱却し、ブランド強化による付加価値向上を目指すとともに、限られた資産・資源を活用して、利益を最大化するための販売・稼働・供給の最適化を図ります。また、次世代型工場の基盤構築し、環境負荷の低減や自動化・省力化による生産性の向上、働く人の作業環境改善を実現します。

②事業ポートフォリオ変革

 中長期的に成長機会の大きい領域を見極め、積極的に資源を投下します。特に、海外、アグリビジネス(ばれいしょ、甘しょ、豆等)、食と健康領域に注力しています

③事業基盤強化

 事業環境変化に対応し、スピーディな経営を実行する組織へと変革し、同時に、戦略人財(経営人財、グローバル人財、DX人財)の育成・強化を促進します。また、人権や生物多様性等の重要性の高い課題を特定し、サステナビリティ経営の実践・進化を進めます

 

<成長ガイダンス(2023年度~2025年度)>       

オーガニック売上成長率

+4~6%

連結営業利益成長率

+6~8%

ROE

10%以上

 

 

<財務戦略>

財務体質の健全性を確保しながらも、将来の成長に向けた投資を行い、資本コストを意識した経営管理を推進することで、経営管理の質を向上させ、企業価値の向上を目指してまいります。

 

2023年度から2025年度の3ヵ年で創出する営業キャッシュ・フローの総額は900億円程度を想定しています。これに加え、手元資金等300億円程度、借入金を活用し、成長投資、効率化投資、株主還元へ配分します。

  ・成長投資 :国内外の設備投資、M&Aなど新規領域の成長投資 800億円程度

  ・効率化投資:ESG対応、自動化・省力化等生産性向上のための設備投資 600億円程度

  ・株主還元 :DOE4%、総還元性向50%以上を目途に安定的な増配実施 250億円程度

 

 当社グループは、ROEを資本収益性の指標としており、成長戦略「Change2025」におけるROEの目標を10%以上としております。資本コストを意識した経営の実現に向けた対応については、以下3つの方針で進めてまいります。

①収益の質的向上

・事業ポートフォリオの成長に向けた最適な投資を実現

・資本コストを意識した投資判断とリターンの追求

・資本収益性改善を目指す経営管理の導入

②財務体質健全性確保

・財務リスクの管理と財務安全性の確保

・最適資本構成による資本コスト水準の適正化

・全社戦略実行のための資金調達手段の確保

③株主還元の適切な実施

・持続的かつ安定的な株主還元の実施

・中長期的な視点で、株主還元の引き上げ

・機動的な資本政策の遂行(配当政策、自社株取得)

 

(4)サステナビリティ経営の進化

サステナビリティ経営は、カルビーグループの成長において重要な事業の基盤です。カルビーグループは、自然素材を活かして人々の健康に役立つ商品をつくるという想いのもと、顧客や取引先をはじめとするステークホルダーとの共創を行ってきました。環境問題やサプライチェーン上の人権問題など企業を取り巻くあらゆる社会課題のうち、カルビーグループが将来にわたって事業活動を継続するために重要な課題をマテリアリティとして定め、重点テーマを設定しています。今後も環境・社会・経済を取り巻く課題に対して、ステークホルダーとともに新たな価値を創造するサステナビリティ経営を進化させていきます。

<5つのマテリアリティ>

(1)  人々の健やかなくらしと多様なライフスタイルへの貢献

(2)  農業の持続可能性向上

(3)  持続可能なサプライチェーンの共創

(4)  地球環境への配慮

(5)  多様性を尊重した全員活躍の推進

なお、詳細につきましては、「第2事業の概況 2サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ経営

私たちを取り巻く事業環境は不確実性を増し、環境問題やサプライチェーン上の人権問題など持続可能な社会の実現への対応が強く求められる中、カルビーグループはサステナビリティを経営の根幹に据えています。

私たちの提供価値は、農作物や海産物などの自然の恵みを活かして、おいしさと楽しさと健やかさに資する商品をお届けし、人々の健やかなくらしに貢献することであり、自然と生活者の間に立ってライフラインをつなぐことが私たちの存在意義だと考えています。

自然資本の重要性の高まり、気候変動対策、人権問題の顕在化などサステナビリティに関わる外部環境の変化に伴い、2022年にマテリアリティの見直しを行い、新たに5つのマテリアリティと13の重点テーマを再特定しました。また、取り組みを推進するために「カルビーグループ環境ポリシー」の改定および「カルビーグループ人権方針」の制定、国連グローバル・コンパクトへの署名も行い、活動をグローバルに拡大しています。「カルビーグループ人権方針」に基づき、「人権尊重推進プロジェクト」を立ち上げ、人権デュー・デリジェンスをはじめとした取り組みを進めます。

カルビーグループは、企業活動を通して持続的成長と持続可能な社会を実現し、ステークホルダーとともに新たな価値を創造する「サステナビリティ経営」を実践していきます。

 

①ガバナンス

取締役会がサステナビリティ経営に関する監督の責任を持ち、その推進については、2019年に設置したサステナビリティ委員会が担っています。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長兼CEOが管掌し、原則年2回開催しています。マテリアリティの特定および重点テーマの設定を行い、各分科会で推進する重点テーマのロードマップの審議や進捗状況のレビューを実施し、その内容を取締役会に定期的に報告しています。

 


 

②戦略

サステナビリティ経営の中心戦略として、マテリアリティにおいて決定した重点テーマに取り組んでいます。取り組むべき社会課題を明確にするべく、「ステークホルダーにとっての重要度」と「自社における重要度」の二つの側面から課題をマテリアリティとして特定し、重点テーマを決定しました。重点テーマ別分科会を設置し、役付役員をオーナーとして、マテリアリティごとに設定した各重点テーマにおける戦略の立案・実行を推進しています。

これらの重点テーマに優先的に社内資源を配分することで、経営へのリスクを回避し、イノベーション創出の機会ととらえて、中長期的な成長を実現することを目指します。

 

③リスク管理

サステナビリティ関連のリスクおよび機会の管理は、各重点テーマの目標達成状況およびロードマップの進捗レビューで行っています。その内容はサステナビリティ委員会で検討を行い、継続的にモニタリングし、取締役会に報告しています。

 

④指標及び目標

特定した重点テーマ別にKPI(重点評価指標)を設定し、進捗管理を行っています。

 

マテリアリティ

重点テーマと主な施策

目標(KPI)

進捗

①人々の健やかなくらしと多様なライフスタイルへの貢献

食の安全・安心の確保

・安全・品質に関する予防と監視

・安心への取り組み

健やかなくらしへの貢献

・食塩無添加/低塩/減塩商品を拡大

・たんぱく質を多く含む商品を拡大

2031年3月期

・食塩無添加/低塩/減塩商品(※1)の販売金額200%(2023年3月期比)

・たんぱく質の多い商品(※2)の販売金額200%(2023年3月期比)

2024年3月期

・食塩無添加/低塩/減塩商品の販売金額110.1%

・たんぱく質の多い商品の販売金額111.8%

消費者意識の多様化に応じた新たな価値提供

・フードコミュニケーションの活性化

・スナックスクール(食育)の拡張

・工場見学の活性化、進化

2024年3月期

フードコミュニケーション(※3)

累計参加者数(2019年4月~5カ年)40万人(5年間で全国小学校3~6年生の人口の4%に相当)

2024年3月期

累計参加者数416,384人

②農業の持続可能性向上

持続可能な原料生産

 国産ばれいしょの収量増加に向けた、科学的

 栽培の推進・品種の変革・農業の省力化・産地

  の分散化

自然資本の保全
 土壌分析に基づく適正な施肥

2028年3月期

リン酸減肥普及率80%

2024年3月期

リン酸減肥普及率23.7%

③持続可能なサプライチェーンの共創

環境と人権を尊重した責任ある調達
 サプライチェーンアセスメントを通じてエンゲー

 ジメントを結び、環境・人権に配慮した

 調達を推進

 

 

環境と人にやさしい物流

・物流効率化による労働環境の改善

・温室効果ガス排出量の削減(Scope3カテゴリー4、9)

 

 

④地球環境への配慮

カーボンニュートラルの達成

・Scope1、2における削減

 電力購入先の転換、省エネ活動、工場発電など

・Scope3における削減

 段ボールサイズの変更、配送頻度減、積載率向上

2031年3月期

温室効果ガス総排出量30%削減

(2019年3月期比)

2023年3月期(※4)

温室効果ガス総排出量

2.8%増加

 Scope1:6.6%削減

 Scope2:61.1%削減

 Scope3:14.7%増加

循環型社会の推進

・製品フードロス削減

・水使用量削減

・3Rの促進

2024年3月期

製品フードロス20%削減
(2019年3月期比)
 

2031年3月期

・水の総使用量 10%削減
 (2019年3月期比)

・廃棄物排出量 10%削減
 (2019年3月期比)

2023年3月期(※4)

製品フードロス75.0%増加

水の総使用量3.9%増加

廃棄物排出量1.9%増加

プラスチックによる環境負荷の低減

・石油由来プラスチック包材の削減

・代替原料への転換やリサイクルの促進

2031年3月期

石油由来プラスチック包装の代替・削減 50%

(2019年3月期比)

2051年3月期

環境配慮型素材100%使用 

2024年3月期

石油由来プラスチック包装の代替・削減 1.8%

 

 

 

 

自然資本の保全

TNFDのフレームワークに沿ったリスク評価の実施(マイルストーンの提示)

 

 

地域コミュニティへの貢献
・社会貢献活動全員参加

・環境領域の拡大

  森林ボランティア活動

  海浜・河川保全活動の支援・参加

 

 

マテリアリティ

重点テーマと主な施策

目標(KPI)

進捗

⑤多様性を尊重した全員活躍の推進

働き方の多様性への対応(少子高齢化・感染症による変化)
・全員活躍

・多様性理解の教育体系整備

・1on1ミーティングの推進・定着化

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・人財育成の強化

・働き方改革

2024年3月期

・女性管理職比率30%超

・男性育児休業取得率100%

・障がい者雇用率2.5%

2024年3月期

・女性管理職比率22.6%

・男性育児休業取得率

100%(※5)

・障がい者雇用率2.62%

 

(注)製品フードロス削減はカルビーかいつかスイートポテト(株)を除くカルビー国内グループを対象、その他指標 はカルビー(株)を対象

※1 栄養強調表示の基準値(食品表示基準第7条第1項 別表第12、第13)

※2 栄養強調表示の基準値(食品表示基準第7条第1項 別表第12、第13)をベースに自社基準で選定した商品が対象

※3 カルビー・スナックスクール、工場見学、お菓子コンテストなどの食育活動

※4 2023年3月期の実績を記載。2024年3月期の実績は2024年秋公開の予定   (https://www.calbee.co.jp/sustainability/materiality.php)

※5 2023年3月期より、(育児休暇取得者数+企業独自に育児を目的とした休暇制度の利用者数)/(配偶者が出産した人数)で算出

 

〈具体的な取組事例〉
 認証パーム油の使用(持続可能なサプライチェーンの共創:環境と人権を尊重した責任ある調達)

 カルビーグループ(国内)では、主に生産のフライ工程などに調理油としてパーム油を年間約4万トン調達しています。環境や人権に配慮した認証パーム油を2030年までに100%使用とする目標を掲げ、2021年7月から順次国内工場にてマスバランス方式(※1)の認証パーム油への切り替えを開始し、2022年4月には国内全工場に同方式を導入済みです。また、2022年9月より、「RSPO(※2)認証ラベル」を主力商品4種類6品目のパッケージに表示を開始し、対象を順次拡大しております。(2024年3月末時点、カルビー21品目、ジャパンフリトレー9品目に表示)

 継続して取り組んでいる課題として、搾油工場リスト(ミルリスト)の共有、原産地のトレーサビリティ及び不法な森林伐採が行われていないかなどのモニタリング等、パーム油サプライヤーと定期的に情報交換を実施しています。2023年9月には原産国の搾油工場を訪問し、課題についてパーム油サプライヤーと共に確認を行いました。今後もサプライヤーとのエンゲージメントを強化し、さまざまな社会課題に取り組んでいきます。

 


 

(注)

※1 マスバランス方式:製造・流通過程で認証油と非認証油が混合される認証モデル。物理的には非認証油も含んでいるが、購入した認証油の数量は保証

※2 RSPO:持続可能なパーム油のための円卓会議。(Roundtable on Sustainable Palm Oil)の略称。WWF(世界自然保護基金)とパーム油産業に関わるステークホルダー(メーカー、小売り、環境団体など)によって設立された非営利の会員組織

 

2022年に外部環境の変化を踏まえ、2020年に特定したマテリアリティの見直しを行いました。新たに特定した、5つのマテリアリティと13の重点テーマについては、次のとおりです。


 各施策およびKPI等の詳細につきましては、ホームページで公開しています。

https://www.calbee.co.jp/sustainability/materiality.php

 

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取組)

特に気候変動はカルビーグループの事業の持続的成長に影響を及ぼす重要課題であると認識しています。2020年2月に賛同した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を踏まえ、気候変動シナリオ分析に着手し、以下の枠組みで取り組みを進めています。

 

①ガバナンス

代表取締役社長兼CEOがプロジェクトオーナーとなり、経営企画本部、サステナビリティ推進室を含めたバリューチェーンに関わるメンバーで、気候変動シナリオの検討を実施しました。検討したシナリオに基づき最重要リスクと機会の特定、ならびにその対応策を策定し、経営委員会の審議を経て、取締役会に報告しています。策定したリスクと機会の対応策については、中長期の経営戦略に反映しています。

 

②戦略

気候変動による中長期の事業リスクと機会の特定にあたり、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などが発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」4℃シナリオ、「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑える」2℃シナリオの2つのシナリオで、温室効果ガス排出規制による影響と、主要原料(ばれいしょ)の調達と生産を中心に分析し、整理しました。

その結果、2℃シナリオでは災害の激甚化による工場と原料生産地の直接的な被害と、環境意識の高まりによる消費者行動の変化が大きなインパクトになり、4℃シナリオでは災害の激甚化による工場と原料生産地の被害に加え、日照時間不足によるばれいしょ収量の減少の影響が大きいことが分かりました。

これに対して、自社の温室効果ガスの削減を進めるとともに、ばれいしょの品種転換や品種開発、栽培技術の確立、産地の分散化を進めます。また、エシカル消費への対応や、持続可能な原料の探索と商品開発などが機会の創出になると考えています。今後は、継続的にリスク・機会の見直しや対応策の具体化を進め、中長期の経営戦略に反映させることで、持続可能な社会を実現する企業活動に取り組んでいきます。

 

 

・移行リスク

リスク項目

事業への影響

影響度

(※1)

時期

(※2)

リスク対応策

進捗

炭素価格の上昇

炭素税導入により工場の操業や原材料などのコストが増加する

中期

再生エネルギーの使用

製造拠点のカーボンオフセット電力への切り替え(国内13工場中9工場)

メタネーション(水素と二酸化炭素からメタンガスを生成し、燃料化)の使用

メタネーションに使われる水素産出技術などの開発に合わせて進める予定

 

消費者の環境意識の高まりによる行動変化

気候変動によって環境に配慮した商品へ消費行動が拡大する

中期

環境配慮型商品や認証商品への取組

・国内カルビーグループ工場にて、環境や人権に配慮した「RSPO認証パーム油(マスバランス方式)」の使用、2022年9月より「RSPO認証ラベル」を主力商品に表示開始し、2024年3月末時点でカルビー21品目、ジャパンフリトレー9品目で展開

・FSC認証包材の使用

石油由来プラスチックの使用規制

石油由来原料の規制によって包材価格が上昇する。消費者意識が高まり、バイオプラスチック使用商品の選択が高まる

中期

リサイクルの推進

・株式会社アールプラスジャパン(※3)へ参画し、リサイクル原料調達の実証実験を行い、使用済みプラスチックの再資源化を推進

脱石油由来プラスチックへの転換

・一部商品におけるパッケージフィルムの薄膜化、サイズの縮小

・パッケージフィルムに使用するインキをバイオマスインキに切り替え

・スタンドパックなどパッケージフィルムの一部にバイオマスPETを使用

 

(注)

※1 営業利益 大:50億円以上、中:20~50億円、小:20億円以下

※2 短期:2024年、中期:2030年頃

※3 プラスチック起因の課題解決に向け、アネロテック社(Anellotech Inc.)と低環境負荷で効率的なプラスチック再資源化の技術開発を進め、回収プラスチックの選別処理企業、モノマー・ポリマー・包装容器製造企業、商社や飲料・食品メーカー等連携して、技術の実用化に取り組んでいる共同出資会社。

 

・物理的リスク

リスク項目

事業への影響

影響度

(※1)

時期

(※2)

リスク対応策

進捗

平均気温の上昇による原材料育成影響

気温上昇によってばれいしょの比重の低下が発生する

中期

ばれいしょの品種の転換・開発

気候変動に対応する耐暑性、晩成型品種および病害抵抗性に対応するための新品種の開発

栽培技術の確立

・土壌水分状態に合わせたイリゲーション(かん水)の実施

・土壌状態に応じた適正施肥の推進

・デコンパクターを使用した、耕盤層破壊 による根域拡大

降水・気温パターンの変化

降水・気象パターンが変化することで、日照時間が減少し、ばれいしょの生育不良や収量の低下が発生する

中期

産地の分散化

道央・東北・九州北部の産地を拡大

海外産ばれいしょの輸入ルートの確保

北米地域の拡大

異常気象の続発化(豪雨、台風、洪水など)

暴風雨などにより収穫時期のばれいしょ圃場の被害が拡大、工場の被災や物流寸断が長期化することで、調達・生産・供給量が減少する

短期

異常気象を想定したオールハザード型BCPの策定

国内生産拠点のBCP推進

主要商品の生産拠点の分散化

物流効率等も考慮し、商品群の特性に応じた生産拠点の検討

ハザードマップに基づく工場建設

生産拠点の水没リスクの確認を実施

海外グループ工場からの供給

・2018年~「Honey Butter Chip」輸入(韓国)

・2022年「熱浪」輸入(香港)

 

(注)

※1 営業利益 大:50億円以上、中:20~50億円、小:20億円以下

※2 短期:2024年、中期:2030年頃

 

 

・機会

機会項目

進捗

エシカル消費に対応した商品開発

・RSPO認証パーム油やFSC認証紙を使用した商品の発売

・ポテトチップスのパッケージサイズ変更や「miino」のケースサイズ

 縮小により、輸送効率を向上させ、CO2の排出量を削減

・フードロスに対応した「Jagabeeのかけら」を発売

環境配慮型素材を使用した包装容器への転換

・プラスチック使用量の削減としてバイオマスPETの使用、バイオマス

 インキ使用

・段ボールやカートンにおけるFSC認証紙の使用

気候変動に対応したばれいしょの品種開発と転換

気候変動に対応する耐暑性、晩成型品種および病害抵抗性に対応するための新品種の開発

農業の省人化による原料調達確保・拡大

・コントラクター事業の推進

・多畦ハーベスターの導入運用を促進し、作業時間を削減

・ばれいしょ輸送および受入れ体制を増強

持続可能な原料の探索と商品開発

・ホクレン農業協同組合連合会様と北海道農産物の振興に向けた連携協定

・北海道産ばれいしょの安定生産調達体制の構築

・北海道産ばれいしょを中心とした新商品開発ならびに販売促進

・さつまいも、豆などの農産物を用いた新たな「食領域」の共同開発など

長期保存が可能な食品の開発

・ポテトチップス、じゃがりこ、フルグラ等の賞味期限延長

 

 

③リスク管理

事業への影響度、発生頻度によるリスクレベルを総合的に評価し、評価した重要リスクは、コンプライアンス・リスク諮問委員会のメンバーである社内取締役や外部有識者らが妥当性を検証し確認した上で、代表取締役社長兼CEOが議長であるコンプライアンス・リスク対策会議が決定した重要なリスクの内容と対策を、取締役会に報告します。


 

④指標と目標

温室効果ガスの排出抑制に向けて、2030年までに温室効果ガス排出量を30%削減(2019年3月期比)することを目指します。さらに、2050年にはScope1,2で温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指します。

2023年3月期は、Scope1、2、3の実績合計は2.8%増加(2019年3月期比)し、Scope1は6.6%削減、Scope2は61.1%削減、Scope3は14.7%増加となりました。

(単位:千t-CO2)

項目

対象

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

Scope1&2実績

カルビー国内製造拠点

171.0

168.3

156.7

133.7

124.0

Scope1実績

105.6

102.5

102.6

102.0

98.6

Scope2実績

65.4

65.8

54.1

31.7

25.4

Scope3実績

435.4

449.7

461.2

449.6

499.4

 

※Scope3カテゴリー1の排出係数をIDEA(ver3.2)に変更

 

 

(3)人的資本に関する考え方および取り組み

 人財はカルビーグループの競争優位性、企業価値向上、持続的な成長の源泉です。人財への積極的な投資、働く環境の整備、企業風土の醸成を、人的資本充実のための最も重要な課題であると認識し、様々な取り組みを継続して行います。

 

①人財ビジョン

 

2030ビジョンの実現に向けて、「全員活躍」を目指します

 


 

 

私たちは創業時から受け継がれた「企業理念」に共感した社員が集う組織です。

そして、カルビーが大切にしたい価値観を「Calbee 5Value (自発・利他・対話・好奇心・挑戦)」として行動レベルで表現し、社員一人ひとりに実践を求めています。
 会社と社員の関係においては「お互いに魅力を感じてつながる」状態を目指しています。

そのために会社は、「社員に仕事の意義・期待を共有し、挑戦機会を提供して、成長を支援する」ことにコミットし、社員には「自らの枠を拡げ、貢献し続けること、仕事の意義・意味を自ら見出すこと」を求めています。
 「全員活躍」によって新たな価値を生み出す、これがカルビーの目指す人財ビジョンです。

 

イ.人財育成方針(3つの方針)

(a) 経営・グローバル・DX人財育成を強化する

未来のカルビーをリードする人財育成に経営がコミットし、計画的・意図的なOJT/OFF-JTを通して、持続可能な人財基盤を構築します。

(b) 社員1人ひとりの成長とキャリア自律を支援する

挑戦機会を提供し、成長を支援すると共に、主体的・能動的にキャリアを切り拓いていくことを支援します。また日常業務では得られない気づきや視野拡大の機会を強化します。

(c) お互いに成長しあえる組織風土を醸成する

育成責任をもつ役職者の人財・組織開発力の向上を支援します。価値創造のために、立場に関係なく意見を出し合い、お互いの強みを発揮できるような心理的安全な土壌のある職場風土を創ります。

 

 ロ. 社内環境整備に関する方針

 社員一人ひとりが、自ら効率的に生産性高く働くことを目指し、性別のみならず、属性、個々の価値観などの垣根を越えた多様なすべての社員が、健康で安心して仕事に取り組むため社内環境の整備に取り組みます。

 

(a) 安全・安心な職場づくり

社員が安全かつ快適に業務を遂行できる環境および要員体制を整備するとともに、チーム内・組織間のコミュニケーションの活性化と良質化を図ります。

(b) 多様で柔軟な働き方の推進

社員を取り巻く個々の事情やライフスタイルの多様化に合わせて、柔軟に働き方を選択でき、また休暇が取得しやすい環境を整備、推進します。

(c) 健やかな心と体づくりの推進

社員が自身の健康に関心を持ち、健康維持・増進に向けて主体的に取り組むことをめざし、健康リテラシーを高める施策を実施するとともに、医療職が積極的にかかわり、専門的支援を行います。

 

②人的資本における現在地と課題

2030ビジョンの実現およびサステナビリティ経営の実現に向けて、組織・人事における課題と打ち手の検討および人財戦略の構築を進めています。

 

イ.メンバーシップサーベイの結果から見える課題

2019年3月期より「カルビーグループメンバーシップサーベイ」を実施し、各組織のエンゲージメントの状態を把握しています。役職者同士の対話を通して組織ごとの課題を捉え、改善に向けた具体的な施策を実施しています。
注視している「全員活躍状態にある社員の割合」(注)は45%(前年比+5%)でした。

(注)「会社の成長への貢献意欲」と「仕事での能力発揮」の設問に対し、いずれも「高い」と回答した割合

 

<コア6項目の状況>
 メンバーシップサーベイにおいて、以下の項目をコア6項目として課題分析をしています。

・他の項目と比べて低位にあるものの、「役割以上の貢献の動機づけ」のスコアは改善傾向にあります。2020年3月期から役職者とメンバーの1on1を推進してきたことが寄与していると評価しています。

・「カルビーで働くことの誇り」は、コア6項目の中で最も低位であり、前期よりも低下しています。社長・経営陣と社員の対話を通して、企業理念・存在意義および未来に向けたビジョンを浸透させ、引き上げを図っていきます。

 


 

  ※「1:ほとんどあてはまらない」~「5:非常にあてはまる」の5点満点の回答スコアの平均値

 

 

ロ.経営との対話で見えてきた課題

役付役員全員が参加する月1回の「人財育成会議」において、人財戦略および次世代リーダーのサクセションプランをテーマとして対話を重ねています。対話の中で「将来の企業価値向上を妨げる可能性のある課題」というテーマから①安定・安住からの脱却/変革への挑戦、②自らの枠を超え、自ら踏み出す社員の増加、③企業価値を高めるコア人財の充足、の3点を重点課題と特定しました。

 


(a)安定・安住からの脱却/変革への挑戦
 過去の成功体験に捉われ、失敗を恐れ、リスクテイクを避ける傾向があり、新しい発想や価値が生まれにくいという課題があります。人財の流動性が乏しいことに加え、年功的な評価・報酬制度により、現状を変えなくても一定の昇給が保証されることも、現状に甘んじやすい体質の一因です。
(b)自らの枠を超え、自ら踏み出す社員の増加
 過去の経験や自らの枠組に囚われずに発想することは、組織を超えた連携や個人の創造性向上に繋がります。コンフォートゾーンを抜け出す社員を増やすために、キャリア自律や成長を促すマネジメント力、反対意見や新しい発想が受け入れられる心理的安全な職場風土、社内外を含めて組織の外に目を向ける機会の提供が不可欠です。
(c)企業価値を高めるコア人財の充足
 未来に向けて必要なポジションおよびそれをリードする人財の質と量を明らかにし、意図的・計画的に人財の獲得・育成を進めることは将来の価値創造に向けて、重要な課題と捉えています。

 

 ③人的資本を通じた価値創造ストーリー

 


 

3つの重点課題を解決するための、具体的な施策方針は以下の4つです。これらの施策を通して「共創による新しい価値創造」「貢献意欲・成長実感の向上」、そして「継続的に成長する強い企業・経営」を実現していきます。


(a)失敗を恐れず、誰もが挑戦できる組織風土

多様な経験・考え方を持つ社員を増やし、活かす上で心理的安全性の高い職場づくり、その中でも特に「新奇歓迎」の風土の醸成が社員の挑戦を後押しする重要なポイントです。
(b)多様な貢献と挑戦を促す評価・報酬

従来の評価制度では結果のみにフォーカスがあたり、成功が保証されていないことへの挑戦を促しにくい仕組みでした。評価制度を改定することで、貢献と挑戦への意識を高めます。
(c)個の可能性を広げるキャリア自律

社員一人ひとりに対し、主体的にキャリアを掴み、自己成長する意欲と行動を促します。キャリア自律が進むことで挑戦が生まれる土壌が醸成され、働きがいも大きく高まると考えています。
(d)未来を創るコア人財の育成

将来の経営を担う経営人財、デジタル技術を活用して価値創造ができるDX人財、カルビーのDNAと知見を活かして海外で活躍できるグローバル人財、これら3つの戦略人財の育成が重要です。

 

④健やかな心と体づくりの推進

「人々の健やかなくらしに貢献する」という企業理念を掲げる企業として、社員の健やかな心と体づくりをこれまでも、これからも大切にし、働きやすく安全・安心な職場づくりを推進していきます。

 

⑤施策方針における指標/目標および取り組み内容について

施策方針

指標/目標(2024年3月期実績)

取り組み内容(2024年3月期実績)

失敗を恐れず、誰もが挑戦できる組織風土

メンバーシップサーベイ:心理的安全性
3.503.48
女性管理職比率 30超(22.6%)

・社員と経営層と直接対話する「車座ミーティング」の実施(62回実施、参加人数1,645人)
Innovation & Beyond Awardの実施(社員提案制度)
・心理的安全性の定着推進

・女性リーダーシッププログラムの実施

多様な貢献と挑戦を促す評価・報酬

メンバーシップサーベイ:全員活躍状態
60%45%)

・人事ポリシーの策定
・人事制度・評価制度の改定検討開始
・制度運用を含めた役職者支援

個の可能性を広げるキャリア自律

メンバーシップサーベイ:キャリア自律
3.503.19
選択型育成プログラムの受講者数 1,000781人)

・「キャリア探究ノート」による上司との対話の奨励
・キャリアエール(社内公募)の拡大(対象ポジション48件、エントリー数34人)
・副業の解禁(62人)
・社外留職の拡大
・ビジネスリテラシー獲得のための育成プログラム拡大

未来を創るコア人財の育成

重要戦略ポジション候補者の充足度
500%800%)
グローバルでの貢献意欲のある社員率
30%24%)
DXアカデミーのべ受講者数1,8001,719人)

・人財育成会議におけるサクセションプランの策定・推進
・次世代リーダーの育成体系の構築およびプログラムの開発・実施
・グローバルタレントマネジメントの構築
・グローバル人財交流の促進
・DXアカデミーの設立

健やかな心と体づくりの推進

平均有給休暇取得率 80 (84.9%)

所定外労働時間 15時間/月17.2時間/月(※))

総合検診受診率100100%)

・有給休暇取得状況の月次確認と取得計画の策定

・健康診断、人間ドックの受診勧奨

・体調不良者、休復職者の早期発見・対応と継続的な医療職による面談を実施

 

(注)選択型育成プログラム受講者数はカルビー国内グループを対象、その他指標は提出会社を対象

 ※対象は年俸者を除く社員

 

 

3 【事業等のリスク】

 当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、経営者が投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主な事項を以下に記載しています。また、以下に記載したリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではなく、これ以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、以下の記載内容および将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループでは、「内部統制システムの整備に関する基本方針」を踏まえ、コンプライアンス・リスク管理体制を構築しており、コンプライアンス・リスク対策会議が対応策を検討・決定し、その進捗について管理します。さらにリスク発生の可能性が高まった場合、あるいはリスクが具現化した場合には、必要に応じて緊急対策本部を設置し、リスクの低減を図っていきます。しかしながら、リスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(1)製品の安全性に関するリスク

 安全で安心な製品を提供することは、当社グループにとって最も重要な社会的責任であり、お客様との信頼関係を築くためにも不断の努力を続けてまいります。万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じた場合は、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応いたします。

 当社グループでは、製品のリスクを回避するための規格設計の審査と、原材料調達プロセス及び製品の生産プロセスの監査を行い、規格どおりの製品が実現できているかどうか、製品の品質検査を行う形で品質保証体制を築いています。また、原材料の調達・生産・物流・製品流通・店頭・お客様までのサプライチェーン全体でトレーサビリティを実現しています。お客様からのご指摘低減に向けて、お客様の声に耳を傾け、内容を分析し、サプライチェーン全体での改善を図っています。

 しかしながら、品質に問題が万一生じて、製品の安全性に疑義が持たれた場合には、製品の回収や販売の中止を余儀なくされ、お客様からの信頼を失う可能性や、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)製品開発に関するリスク

 当社グループでは、2030ビジョン「Next Calbee & Beyond」を掲げ、当社グループの成長をリードするものづくりとして、自然素材のもつ栄養やおいしさを最大限活かし、ユニークで価値ある製品を国内外へ提供するための研究開発活動を行っております。一方で、お客様の嗜好の多様性・健康志向の高まり・環境問題等、当社グループを取り巻く状況は大きく変化しております。このような市場の変化に迅速に対応し、おいしさの追求、そして付加価値の高い製品や健康を意識した製品を開発することが、今後の事業拡大にとって重要な課題となっています。このため当社グループでは、新商品の開発・既存ブランドのリニューアル・品質改善・コストリダクション・基礎研究の分野で研究開発活動を毎期計画的に実施しております。

 しかしながら、お客様や取引先のニーズに適切に対応できず、適時に製品開発ができなかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)原材料や資材の調達リスク

  ①ばれいしょの調達リスク(天候不順とばれいしょ生産農家の減少)

当社グループの主な製品はばれいしょを主たる原料としたポテトチップス、「じゃがりこ」等ポテト系スナックとなります。国産ばれいしょの品質・数量・価格における安定した調達を実現するために、契約栽培による調達体制の構築と、産地の分散化を図っています。また、国内のばれいしょ生産者の減少を見据え、栽培・収穫のサポートや省人化支援等も行っています。日本においては植物防疫法によりばれいしょは原則輸入が認められておりませんが、国産ばれいしょが不足する事態に備え、輸入ばれいしょを取り扱うことができる工場設備を整備しています。

 しかしながら、作況等によっては、ばれいしょの量の確保ができず、販売機会を失う恐れや、緊急調達によるコスト増加等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ②ばれいしょの調達リスク(ジャガイモシストセンチュウの拡大)

ジャガイモシストセンチュウは、土中に生息するセンチュウの一種で、植物防疫法の重要病害虫に指定されており、その発生圃場では種ばれいしょの生産が行うことができません。そのため、ジャガイモシストセンチュウの拡大防止対策として、ばれいしょの抵抗性品種への転換を進める必要があります。当社グループでは、ばれいしょ品種構成改革プロジェクトを設立し、お客様の満足する製品品質を実現しながら、ばれいしょ品種構成を改革し、センチュウ抵抗性品種の比率を2025年に50%、2030年には100%にすることを目指しています。

しかしながら、収穫期・アクリルアミド・カラー等の品質条件を満たす新品種の開発が進まないリスク、あるいは新品種の産地全体への普及が進まないリスク、またジャガイモシストセンチュウが想定以上の速度で拡大するリスクがあります。これらのリスクが顕在化し、センチュウ抵抗性品種への転換が遅れた場合には、種ばれいしょが調達できず、ばれいしょの収量の減少や、ばれいしょ加工製品の品質の低下により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③その他の原材料や資材の調達リスク

当社グループ製品に使用される海外からの輸入原料や資材については、災害や地政学的リスク等、あらゆる調達リスクを考慮し、調達先の複数化・分散化や適正在庫の強化等により、調達の安定化に努めております。

しかしながら、想定を超える原材料・資材価格のさらなる高騰や、輸入先・輸入ルートの変更等による調達価格の上昇が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)国内の製品供給が滞るリスク

 運送・物流業界の「2024年問題」に代表されますように、国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少や、ECの拡大による宅配便増加の影響、物流業界特有の長時間労働もあり、輸配送車両の不足が懸念されます。当社グループは、輸配送車両の安定的確保のため、自動化とAI活用のサプライチェーン・マネジメント改革による待機時間の減少・配送頻度の減少・納品先の集約・パレット輸送の促進等、「ホワイト物流活動」を推進し、ドライバーに選ばれる物流を目指しております。また気候変動による原材料収量の過不足や販売の急な増減等の変化・変動に対し、全社最適かつスピーディーな意思決定を図ることができるよう、バリューチェーン最適化システム構築に取り組んでおります。

 しかしながら、将来において適切な費用で輸配送車両を確保できない場合や想定以上に輸配送費等が上昇する場合、またバリューチェーン最適化に向けた打ち手に遅れが生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)情報セキュリティに関するリスク

 コンピュータシステムやネットワークに悪意を持った攻撃者が不正に侵入し、情報セキュリティインシデントが発生した場合に、当社グループは、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を中心としたインシデント対応体制を整備しております。また機密情報の紛失・誤用・改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しています。

 しかしながら、サイバーテロ・コンピューターウイルスの感染・不正アクセスによる情報の消失・データの改ざん・個人情報や会社の機密情報の漏洩・停電・災害・ソフトウェアや機器の欠陥等が生じた場合、情報システムの停止または一時的な混乱等により、当社グループの経営成績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)グローバル人財確保に関するリスク

 当社グループでは、事業を支える基盤として、中長期的な視点で人財への投資を強化し、持続的に利益成長できる企業への変革を図っております。とくに成長戦略「Change 2025」の重点方針の一つである海外事業の拡大を下支えする人財を確保すべく、採用・配置・育成・評価を仕組み化した「グローバルタレントマネジメント」を推進しております。

 しかしながら、雇用情勢の変化によりグローバル人財を十分に採用できない場合、またグローバル人財育成に遅れが生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)コンプライアンスに関するリスク

 当社グループは、国内では食品衛生法・景品表示法・計量法・不正競争防止法・植物防疫及び消費者安全法等、さまざまな法的規制の適用を受けています。また事業を展開する各国においては、当該国の法的規制の適用を受けております。当社グループは企業理念を踏まえ、社会の価値観・倫理・法令・社会に対する責任に基づく行動原理として「カルビーグループ行動規範」を定め、国内または事業を展開する各国において、階層別研修等の啓発活動を通じて、倫理・社会規範、法令及び社内諸規則等を遵守するようコンプライアンスを推進し、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。
 しかしながら、法令等が改正される、または予期し得ない法律・規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動により、法令による処罰や許認可の取り消し、訴訟の提起や、お客様をはじめとしたステークホルダーからの信頼を失うことで、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権に関するリスク

 当社グループでは専門部署を設置し、各種知的財産権の保護・管理を徹底すると同時に、第三者の保有する権利を侵害しないように努めております。

 しかしながら、当社グループの知的財産権を第三者によって不正に利用される場合、また当社が第三者により知的財産権侵害の追及を受ける場合等には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9)海外進出先国の地政学的リスク

 当社グループは海外のさまざまな国・地域で事業を展開しています。進出した国・地域において、想定される紛争・デカップリング・パンデミック等、地政学的リスクへの対応策を事前に検討・実施することで、リスク回避を行っております。

 しかしながら、これらリスクが想定以上に長期化・拡大し、供給難が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)気候変動によるリスク

 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択され、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガス削減の取り組みが世界的に進められています。当社グループは温室効果ガス排出量を2030年までに総排出量30%削減(2019年3月期比)、さらに2050年には排出量実質ゼロ(Scope1、2対象)を目指し、更なる省エネルギー化と再生エネルギーの活用等に取り組みます。

 当社は2020年2月から気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、気候変動シナリオ分析を実施しました。分析の結果、災害の激甚化による工場と原料産地の直接的な被害、環境意識の高まりによる消費者の行動変容、ならびに日照時間不足によるばれいしょ収量の減少の影響が大きいことが分かりました。これに対して、温室効果ガスの削減に努めるとともに、ばれいしょの品種転換や品種開発、産地の分散化を進めます。また、エシカル消費への対応や、持続可能な原料の製品開発などが、機会の創出につながると考えています。

 しかしながら、温室効果ガス削減の取り組み進捗次第では、炭素税が導入された場合、事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、消費者の購買行動が変化する可能性、ばれいしょの品質が悪化する可能性、台風や豪雨などによる生産設備の被害の甚大化・操業停止、サプライチェーンの寸断等が発生する等の可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

※Scope1は、自社(工場・オフィス・車など)での燃料の使用によるCO2の直接排出、Scope2は、自社が購入した電気・熱・蒸気の使用によるCO2の間接排出を指します。

 

(11)自然災害やパンデミックのリスク

 当社グループでは、大規模地震・風水害等の自然災害リスクの軽減を図るため、生産拠点や原材料等調達業者の分散化や複数購買を進めております。また自然災害だけでなく、感染症の拡大等が複合的に発生した事態を想定した「オールハザード型BCP(事業継続計画)」を推進し、重要製品の早期供給再開等、レジリエンスの高い事業体制の確保に努めております。

 しかしながら、災害によってサプライチェーン寸断が長期化し、取引先に対して製品を供給できない場合、機械設備・施設の復旧長期化や多額の費用が発生した場合、原材料価格のさらなる高騰や原材料確保の困難が想定以上に生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)大株主との関係

 当連結会計年度末時点において、PepsiCo, Inc.(以下、「PepsiCo」という)はその100%子会社FRITO-LAY GLOBAL INVESTMENTS B.V.(以下、「FLGI」という)を通じて当社株式の21.41%を保有しており、当社はPepsiCoの持分法適用関連会社であります。当社株式を直接保有するFLGIはPepsiCoの100%子会社であるため、当社普通株式の議決権等に関する実質的な判断については、PepsiCo が行っております。なお、PepsiCoは、世界最大規模の食品飲料メーカーのひとつであり、米国NASDAQに株式を上場しております。

 また当社と同業であるスナック菓子事業については、同社の子会社であるFrito-Lay North America, Inc.を中心としたグループ各社でグローバル展開をしております。

 当社とPepsiCoは、両社の経営能力を組み合わせ、シナジー効果を発揮することが、両社の継続的な成長に必要との判断から、2009年6月24日に戦略的提携契約(以下「本契約」という)を締結しました。PepsiCoとのパートナーシップを強固なものとするため、PepsiCoの100%子会社であるFLGIに対して第三者割当増資を実施し、あわせてPepsiCoの子会社ジャパンフリトレー㈱の株式を2009年7月に100%を取得いたしました。

 なお、本契約において、PepsiCoは日本国内においてスナック菓子事業を営まない旨の合意がなされていることから当社と競合関係にはなりえず、また海外での事業展開については何ら制約を受けていないことから、当社の経営判断や事業展開の制約にならないものと認識しております。

 当社は、PepsiCoとの戦略的提携関係を維持し、企業価値の向上に努める所存でありますが、将来においてPepsiCoの経営方針や事業戦略の変更が生じた場合、当社は提携によるシナジー効果を発揮できない可能性があります。また、何らかの要因により本契約が解消された場合には、日本国内においてPepsiCoグループと競合関係が生じる可能性があります。また、将来において、PepsiCoもしくは当社の経営方針や事業戦略の変更が生じた場合あるいは経営環境の変化等により、PepsiCoの当社に対する持ち株比率が変更される可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の分析

当連結会計年度における世界経済は、長期化するロシア・ウクライナ情勢、中東問題等の地政学的リスクおよび中国の景気低迷などから先行きの不透明な状況が続く一方、米国経済成長率の堅調な推移といった下支えの動きも見られました。日本経済においては、円安の進行によるコスト高止まりの影響はあったものの、新型コロナウイルス感染症の5類移行により経済再開が本格的に進み、年明けには日本銀行のマイナス金利政策からの転換や昨年以上の賃上げの動き等、経済循環の正常化も顕著でした。このような経済環境のもと、国内においては原材料等のコスト高騰に対応すべく価格・規格改定を前期に続き実施するとともに、昨年2月に公表した「2030ビジョン・成長戦略」に基づき次なる成長に向けた事業構造改革に向けた取り組みを進め、成長ガイダンス以上の業績となりました。海外においては、欧米を中心とした世界的なインフレーション進行や中国の景況感悪化による影響に対応しつつ、各地での事業拡大に努めました。

 

国内事業においては、価格・規格改定実施後の早期の販売回復に努め、継続的なマーケティングや旅行需要の獲得で販売数量を伸ばすことにより収益増に取り組みました。また、主力製品の生産ライン増設による生産能力増や2025年3月期に稼働開始を予定する「せとうち広島工場」建設も着実に進めました。

海外事業では、北米、中華圏の事業環境の変化に対応しつつ、その他地域の事業拡大に取り組みました。北米では製造受託事業の収益性改善を進める一方、主力ブランドの「Harvest Snaps」や日本発ブランドは営業体制を強化し、現地主要小売業者への販売を拡大しました。中華圏では、消費者の節約志向の高まりや処理水問題に起因する当社主要スナック製品の通関規制の強化による販売減に対し、周辺地域拠点からの輸入代替や製造委託による現地生産に取り組み始めています。また、その他地域では、英国やインドネシアを中心に新製品上市や生産能力増も行い、事業拡大に取り組みました。

サステナビリティ経営の推進においては、地球温暖化適応策として、海外グループ各社のGHG排出量算定をプロジェクト体制にて推進し、同時に水・パーム油・紙・プラスチックに関する現状把握を行いました。国内では昨年度の環境省支援事業「サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」にて策定したロードマップに沿って、自社だけの削減に留まらないスコープ3カテゴリー1の原材料「ばれいしょ」の排出量見える化に取り組み(農林水産省支援事業)、契約農家へのヒアリング等を実施しました。その他原材料についてはサプライヤーアセスメントでの現状把握に伴い協働を強化しました。生物多様性や人権課題の重要性を高め再特定したマテリアリティに基づき、2025年秋のTNFD情報開示を目指し準備を進めています。また、「カルビーグループ環境ポリシー」および「カルビーグループ人権方針」を整備し、国連グローバル・コンパクトへの署名も行い、コミットメントをグローバルに拡大しています。

 

当連結会計年度の売上高は、303,027百万円(前連結会計年度比8.5%増)となりました。国内事業は、価格・規格改定効果に加え、前年上期に行ったばれいしょ不足による販売抑制の解消や人流回復による土産用製品の需要増、ブランド強化のためのマーケティング、営業活動と生産能力増による需要の着実な獲得から増収となりました。海外事業は北米、中華圏の不調を英国、インドネシア等のその他地域で補い、増収となりました。

営業利益は、27,304百万円(前連結会計年度比22.8%増)となり、売上高営業利益率は9.0%(前連結会計年度比1.1ポイント上昇)となりました。国内事業において、年度を通じ原材料価格の上昇は継続しましたが、これを価格・規格改定により相殺し、販売数量の伸長により増益となりました。また、海外事業は過去最高益となりました。経常利益は、円安の進行に伴う為替差益の営業外収益への計上により、31,155百万円(前連結会計年度比32.8%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は19,886百万円(前連結会計年度比34.6%増)となりました。

 

 

事業別売上高は以下のとおりです。

 

2023年3月

2024年3月

金額
(百万円)

金額
(百万円)

伸び率
(%)

国内食品製造販売事業

207,116

229,887

+11.0

 

国内スナック菓子

194,031

214,642

+10.6

国内シリアル食品

24,210

26,194

+8.2

国内その他

13,729

15,565

+13.4

リベート等控除

△24,854

△26,515

海外食品製造販売事業

72,198

73,140

+1.3

食品製造販売事業 計

279,315

303,027

+8.5

 

*「国内スナック菓子」「国内シリアル食品」「国内その他」の売上高はリベート等控除前の金額を記載しています。

 

(食品製造販売事業)

 食品製造販売事業は、国内事業、海外事業ともに前連結会計年度比で増収となりました。

 

(国内食品製造販売事業)

・国内スナック菓子

国内スナック菓子は、前連結会計年度比で増収となりました。

国内スナック菓子の製品別売上高は以下のとおりです。

 

2023年3月

2024年3月

金額
(百万円)

金額
(百万円)

伸び率
(%)

ポテトチップス

90,932

98,274

+8.1

じゃがりこ

39,990

45,353

+13.4

その他スナック

63,108

71,014

+12.5

国内スナック菓子 計

194,031

214,642

+10.6

 

*1 製品別の売上高はリベート等控除前の金額を記載しています。

*2 前期の「新価値製品・その他スナック」を当期より「その他スナック」に名称変更しています。

 

・ポテトチップスは、「うすしお味」等の定番品や「堅あげポテト」を中心とした販売増により、前連結会計年度に比べ増収となりました。高水準のばれいしょ収穫量による安定した原材料供給、継続的なマーケティングの実施とそれに連動した営業活動が奏功しました。

・じゃがりこは、人流回復もあり定番品を中心に強い需要が継続し、生産能力増の寄与もあり、前連結会計年度に比べ増収となりました。また、新製品「じゃがりこ細いやつ サラダ」の貢献もありました。

・その他スナックは、国内外観光客の増加等により「じゃがポックル」等の土産用製品が大きく伸長しました。また、小麦系、コーン系、豆系スナックも全体的に好調であり、2024年に発売60周年を迎えた「かっぱえびせん」の販売伸長も寄与し、前連結会計年度に比べ増収となりました。

 

・国内シリアル食品

国内シリアル食品の売上高は、他社とのコラボレーション企画品「フルグラ ブラックサンダー味」やマーケティング活動に連携した営業強化が奏功し、既存の大容量製品も販売増となり下期には需要拡大を牽引したことから、26,194百万円(前連結会計年度比8.2%増)となりました。

 

・国内その他

国内その他の売上高は、甘しょ事業が伸長し、15,565百万円(前連結会計年度比13.4%増)となりました。

 

(海外食品製造販売事業)

 海外食品製造販売事業は、前連結会計年度比で増収となりました。

 海外食品製造販売事業の地域別売上高は以下のとおりです。

 

2023年3月

2024年3月

金額
(百万円)

金額
(百万円)

伸び率(%)

現地通貨

ベースの

伸び率

(%)

北米

22,228

23,473

+5.6

△1.3

中華圏

23,405

18,568

△20.7

△23.3

その他地域

36,227

40,411

+11.6

+4.3

リベート等控除

△9,662

△9,313

海外食品製造販売事業 計

72,198

73,140

+1.3

△4.7

 

*1 中華圏:中国、香港

*2 その他地域:英国、インドネシア、韓国、タイ、シンガポール、オーストラリア

*3 地域別の売上高はリベート等控除前の金額を記載しています。

 

・北米は、配荷拡大により豆系スナック「Harvest Snaps」や「じゃがりこ」「かっぱえびせん」が牽引する日本発ブランドは販売を伸ばした一方、スナック菓子の受託製造販売減少が続いたことから、現地通貨ベースで前連結会計年度に比べ減収となりました。

・中華圏は、景況感の悪化や通関規制強化の影響により小売店舗向けおよびECチャネルとも販売が低調になったことから、前連結会計年度に比べ減収となりました。

・その他地域は、年度を通して英国、インドネシア等における事業拡大が貢献し、前連結会計年度に比べ増収となりました。英国ではSeabrookブランド製品の配荷拡大や新製品の発売により増収となり、インドネシアでは、生地スナックの生産能力増もあり販売が伸長したこと等から増収となりました。

 

当社グループの経営方針・経営戦略等の進捗状況の評価を行うために有用な指標の状況は下記のとおりであります。

 

2024年3月期実績

2024年3月期目標(期初)

連結売上高

3,030億円

2,930億円

連結営業利益

273億円

240億円

国内営業利益率

10.4%

9.8%

海外売上高

731億円

800億円

 

 

(2) 財政状態の分析

当連結会計年度末における資産は、前連結会計年度末に比べ53,063百万円増加し、292,158百万円となりました。この主な要因は、有形固定資産の増加に加え売掛金の増加によるものです。有形固定資産の増加の主なものは、せとうち広島工場の建設およびじゃがりこ製造設備の新設です。売掛金の増加は3月末日が銀行休業日だったことにより回収が翌月にずれ込んだことによるものです。

負債は、前連結会計年度末に比べ34,663百万円増加し、91,072百万円となりました。この主な要因は、長期借入金の増加によるものです。

純資産は、前連結会計年度末に比べ18,399百万円増加し、201,086百万円となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上によって利益剰余金が増加したことによるものです。

以上の結果、自己資本比率は65.6%となり、前連結会計年度末に比べ7.2ポイント低下しました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ7,426百万円増加し、37,718百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、24,350百万円の純収入となり、前連結会計年度と比べ5,039百万円収入が増加しました。主に税金等調整前当期純利益が増加したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、35,307百万円の純支出となり、前連結会計年度と比べ14,977百万円支出が増加しました。主に有価証券の償還による収入が減少したことおよび有形固定資産の取得による支出が増加したことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、16,850百万円の純収入となり、前連結会計年度と比べ36,855百万円収入が増加しました。主に長期借入れによる収入が増加したことおよび自己株式の取得による支出が減少したことによるものです。

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

・資金需要の動向

当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では製品製造のための原材料費、労務費、経費および販売活動のための販売費、人件費、物流費等の支払いがあります。投資活動に係る資金支出では主に設備投資や成長投資にかかる資金需要、財務活動に係る資金支出は主に親会社の配当金にかかる資金需要があります。これらの資金需要に対しては、営業活動によるキャッシュ・フローに加えて、手元資金等や借入金を活用する計画です。

資金需要の具体的な内容

  成長投資…国内外の事業成長のための設備投資および新規領域投資、海外基盤化のためのM&A等

  効率化投資…ESG対応、自動化・省力化等の生産性向上のための設備投資

  株主還元…連結ベースの総還元性向50%以上、DOE4%目途

 

 当連結会計年度末時点での資金支出の状況は以下のとおりです。

 

2024年3月期

(百万円)

3ヵ年計画

(2024年3月期~2026年3月期)

(百万円)

進捗率

 (%)

成長投資

10,779

80,000

      13.5

効率化投資

22,118

60,000

36.9

株主還元

6,504

25,000

26.0

合計

39,402

165,000

23.9

 

・資金調達の方法

 当社グループの資金調達の方法としては、営業活動により得られたキャッシュ・フローに加えて金融機関からの借入金等を活用します。当社及び国内連結子会社においてはキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、グループ内資金を一元管理することにより、余剰資金を集中管理し資金の流動性確保、資金効率の向上を図っております。また、更なる資金の流動性を補完することを目的に複数の金融機関との間に当座貸越契約を締結しており、事業運営上の必要な資金の流動性は十分に確保していると認識しております

 

(4) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
 また、この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等  注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

 

①固定資産の減損

 当社グループは、営業活動から生ずる損益の継続的な赤字や市場価格の著しい下落等から減損の兆候が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。将来の市況悪化等により事業計画が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。

 なお、当社グループの無形固定資産のうち主なものはカルビーかいつかスイートポテト株式会社を取得したことにより発生したのれんであります。これに対する会計上の見積りにつきましては「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等  注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

②棚卸資産の評価

 当社グループは、棚卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。需要の変化によって過剰または滞留となった棚卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減を行う可能性があります。

 

(5) 生産、受注及び販売の実績

 ①生産実績

   当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

食品製造販売事業

333,890

7.0

合計

333,890

7.0

 

(注)1  金額は、販売価格によっております。

 

 ② 受注実績

当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

 ③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

食品製造販売事業

301,249

8.5

その他

1,777

8.2

合計

303,027

8.5

 

(注)1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合が前連結会計年度および当連結会計年度で10%以上の相手先はございません。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしに貢献します」という企業理念のもと、自然素材のもつ栄養やおいしさを最大限に活かし、ユニークで価値ある製品を提供するための研究開発活動を行っております。

当社の研究開発本部では、基礎研究、製品開発及び技術開発から研究施設併設のパイロットプラントでの製品化までを一貫して行っております。

 基礎研究の分野では、ばれいしょの安定的な調達と品質向上に関する研究として、帯広畜産大学と共同で開設した「バレイショ遺伝資源開発学講座」において中間育種開発を行っております。近年の異常気象による農作物の収量・品質の低下を防ぐために、干ばつストレス時に発生するばれいしょの加工特性の変化について研究を進め、2024年3月日本農芸化学学会にて学会発表を行いました。また、ばれいしょやシリアル原料の有効成分の研究を行っており、ばれいしょの研究では、未利用資源であるばれいしょの皮から抽出した「ポテトセラミド」の摂取による肌への有効性を確認し、論文として掲載されました。2024年4月よりポテトセラミドをサプリメントにした「PoteCera(ポテセラ)」を開発しました。シリアルの研究では、子供の朝食に「フルグラ」をプラスすることによる栄養改善、「フルグラ」摂取による腸内細菌の変化、オーツ麦に含まれる脂溶性成分の抗炎症効果を確認し論文として掲載され、「Body Granola(ボディグラノーラ)」を支えるエビデンス構築に寄与する研究を進めています

 製品開発の分野では、国内、海外の消費者の変化や多様な嗜好への対応、またサステナビリティを重視した新たな製品開発等を行っております。フードロス削減の取組みとして、「Jagabee」の製造工程で発生する規格外品を使用した「PotatoKempi」や、通常であれば廃棄対象になる規格外サイズのさつまいもを使った「蔵出しさつま」といった製品を開発、発売しました。また、豆系スナック「miino」の原料(大豆)に新潟県粟島の在来種を使用した、持続可能な未来を目指す「粟島一人娘プロジェクト」は、内閣府地方創生SDGs官民連携優良事例に選出されました。「フルグラ」(一部商品を除く)は賞味期限を7か月の年月日表示から8か月の年月表示に切り替え、賞味期限延長を実現しました。また、海外における新商品開発も継続して行っており、ホットシリアル「フルグラ ケール&フルーツ」等を開発し、中国本土で発売しました。

 技術開発の分野では、新たな素材・製法による付加価値の提供と加工技術の探索を行っております。素材の彩りとおいしさがそのまま残るネオオーブン製法(ノンフライ)を用いた「フルーツスナックフルッツ」では、フルーツのおいしさを手軽に楽しめる食シーンの提案をしています。同製法による商品として、お子様を対象にした「べじふるりんぐ」を発売しました。

 包装容器に使用する素材を、2030年までに環境配慮型素材50%使用、2050年までに100%使用とすることを目標として、包材や包装技術の開発を進めております。プラスチック使用量を従来比で約半分に抑えた紙表記フィルムの製品「じゃがいもチップス」は、日本包装技術協会主催の日本パッケージングコンテスト2024において適正包装賞を受賞しました。さらに、世界各国で審査評価を受けた優秀作品が集う国際的なパッケージに関するコンテストであるワールドスター2024の食品部門でワールドスター賞を受賞するなどパッケージ技術を高く評価されました。

 また、消費者の課題解決を主眼に、食と健康の分野での研究開発活動も行っております。株式会社メタジェン、株式会社サイキンソーとの共同開発により、お客様の腸内環境に合った素材のグラノーラを提供するパーソナライズフードプログラム「Body Granola」を2023年4月より開始いたしました。

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、3,910百万円であります。