第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当企業グループは、温度センサを中心として多種多様なセンサの開発・販売・製造を行っており、創業当時より「誰よりも先に新しいものを生み出す」、「いつも先の時代を見つめる」、「柔軟で斬新な考えを持ち続ける」を基本理念としております。

その考えを守り、従来のセンサにとらわれず、センサに求められるニーズを常に深堀し、新しい製品の開発・製品化に努めております。

 

(当社パーパス)

 ・社会に必要とされ続ける存在価値の追求

 ・人の記憶に残る独特で面白い企業

 ・新しいもの世にないものに執着

 ・見えないものを追い求める

 

(2)経営戦略等

 当企業グループは、センサ及びその関連製品においての研究開発に注力し、常に先の時代を見つめ、常に新し

い技術を市場に提供してまいりました。また、市場の規模を考慮したうえで極力消費地に近い場所で生産する

「消費地生産」やコスト競争力を追求しながら安価な労働力等を求めた「適地生産」による生産のグローバル化

及びグローバルな販売網の構築により売上及び利益の拡大を図ってまいりました。また、生まれてくるニーズは世界共通のものではなく各地域特有のものであるものと考えております。

 

 中長期的なビジョンとして、世界各国の独特なニーズを汲み取り、新しいセンサを創造する企業(「真のグローバル企業」)を目指してまいります。

 

(重点施策)

・経営/管理の現地化推進

・コト売りビジネスへの挑戦

・既存市場への拡販

・未知の独特なセンサの創出

・生産拠点の強化

・DX推進/情報セキュリティ強化

・サステナビリティ/ESG経営の推進

・重要指標(2027年3月期目標 営業利益50億円)

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当企業グループは、営業利益金額を主要な経営指標としております。

 

(4)経営環境

 当企業グループを取り巻く経営環境においては、為替変動、米国の関税措置等に伴う不確実性が高まっておりますが、センサ需要は拡大する見通しであります。

 この状況下、当企業グループは、近年の当企業グループの成長ドライバーとなっている自動車・医療市場を重点市場と定め、新しい製品の開発などにより継続的に拡販に取り組む方針です。また、中期経営計画の営業利益目標50億円の達成と持続的な成長のために、2024年度から2026年度にかけて積極的な投資を行っていく方針であります。持続的な成長を目指すにあたっては、当企業グループの成長だけを志向するのではなく、持続可能な社会の実現へ貢献するためにESG経営を推進し、社会課題解決へ向けた取り組みも併せて行ってまいります。

 

  (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当企業グループは、売上高・利益の継続的な成長を実現するためには、既存市場の維持・拡大に加え新たな市場への参入

が不可欠であると考えております。そのためには、自動車・医療関連の拡販及びインド市場への販売力強化、次世代製品への積極的な研究開発投資、生産拠点の再編や工程改善・生産設備の自動化等による生産コスト改善を行ってまいります。

 また、総合センサメーカーへの成長を図る中で、経営基盤を強化する目的として、戦略投資(千葉工場刷新、M&A、DX推進)も進めてまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

   当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

①ガバナンス

 当社グループは、経営の健全性・効率性・透明性の向上に取り組み、様々なステークホルダーと良好な関係を築き、また社会に必要とされ続ける存在価値を追求し、長期的な観点からグループ企業価値の向上を目指しております。2023年10月26日付けでESG経営推進委員会設置しており、代表取締役社長を委員長として、執行役員及びESGに関わる役職者で構成しております。このESG経営推進委員会は、ESG経営に関する基本方針及び事業戦略の策定、目標設定、活動状況のモニタリングや改善施策等の検討を行い、定期的に取締役会へ報告を行う役割です。なお、取締役会がサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、ESG経営推進委員会で協議・決議された内容等の報告を受け、その報告内容について審議・監督を行います。

 

 ②リスク管理

 当社グループは、全般的なリスク管理は、執行役員会及び取締役会において行っております。サステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの選定については、ESG経営推進委員会で協議してまいります。なお、優先的に対応すべきリスクについては、当社グループに与える財務的な影響及び環境・社会に与える影響、発生可能性を鑑みて検討し、重要と認識された事項については、執行役員会の審議を経て戦略及び計画に反映し、取締役会へ報告、諮問を行います。

 

  (2)人的資本(人材の多様性を含む)に関する戦略並びに指標及び目標

   当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以

  下のとおりであります。

 

   ・人材育成方針

   当社グループが継続していく上で、人材の確保、その育成は必須であります。従業員には、必要なスキルを習得さ

  せ能力を最大限に発揮させるため、求められる能力・専門知識の習得を目的とした研修だけではなく、自律的なキャ

  リアアップを支援する多彩な教育研修制度を設け促進しております。この取組みにより、様々な状況変化に対応でき

  る人材育成を目指し、努力・成果に応じ、キャリアプランや報酬等の処遇に反映することで従業員のモチベーション

  を向上させる人事制度を構築しております。

 

   ・社内環境整備方針

   中長期的な企業価値向上のために、真のグローバル企業(世界各国の独特なニーズを汲み取り、新しいセンサを創

  造する企業)化を推進しております。従前は日本人中心の運営がベースでありましたが、ダイバーシティーの動向、

  未知なるニーズの発掘には各地域状況を理解・把握した人材が必須であると考え、現地国籍の責任者採用及び登用を

  促進しております。さらに、労働者不足、生産性向上の観点から、性別・年齢等に関係なく様々な人材が活躍できる

  仕組み作りを行い、「働きやすさ・働きがい」の環境を目指し取り組んでおります。

 

 当社グループでは、上記において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、下記の指標を用いております。なお、当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職全体(連結)に占める女性の管理職割合

23.0%

36.3%

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営

成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のと

おりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業グループが判断したものであります。

 

 ① 事業展開について

 当企業グループの販売拠点は、極力消費地に近い場所への拠点展開を基本方針とし、生産拠点についてはより消

費地に近い場所での生産(消費地生産)とコスト競争力を追求し、安価な労働力等を求めた生産(適地生産)との

2つの方針をもとにした拠点展開を行なっております。このため適当な候補地が見つからない場合、もしくは拠点

の設立にあたって想定以上の費用を要した場合等は、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能

性があります。

 

 ② 経済状況について

 当企業グループは、メーカーの生産動向の影響を受けます。従って、世界の経済情勢等何らかの要因によりメーカーの生産量が変動する場合は、センサ等に対する需要の変動を通じて、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ③ 競合状況について

 当企業グループが製造・販売するセンサ等の製品は、販売先からの厳しい値下げ要請や同業者との価格競争に晒されております。近年、台湾や中国などの電子部品メーカーがより低価格の製品を販売していることもあり、価格競争はさらに激化しております。

 当企業グループでは、コストダウンによる価格競争力の維持に努めるほか、競争優位性のある製品を供給することで競合他社との差別化を図っておりますが、何らかの要因により価格競争力を維持できなくなる場合、競合製品の品質向上等により当社製品の優位性が維持できない場合には、当企業グループ製品に対する需要の低下及び製品価格の低下を通じて、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ④ 販売依存度について

 当企業グループでは、EV・HEV車のバッテリー・モーターなど、自動車向けの製品売上割合が高くなっております。このため、当企業グループの経営成績及び財政状態は自動車メーカー各社の業績動向の影響を受けます。また、自動車メーカーの技術革新等により当社製品が使用されなくなった場合には、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑤ 生産及び在庫状況について

 当企業グループの生産については、顧客からの受注見込みに基づいて、部材・原材料を調達し、製品を製造して

おります。従って、顧客の様々な環境変化等により、製品、それに伴う仕掛品及び特定部材・原材料が、販売・

転用できず、棚卸資産評価損又は廃棄損を計上することがあります。これにより、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑥ 為替変動の影響について

 当企業グループは、中国及び東南アジアの子会社においてグループ全体の7割以上を生産しております。また、海外売上高の割合も8割以上であります。

 海外子会社における売上、費用、資産、負債を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表を作成する際、円換算

されるため、換算時の為替レートの変動によって円換算額も変動いたします。海外における生産・販売の比重は

年々高まっており、販売価格の見直しにより悪影響を最小限に止めるようにしておりますが、為替レートが大幅に

変動した場合には、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑦ 海外事業に潜在するリスクについて

 当企業グループの生産及び販売活動の大部分は国内、中国及び東南アジアで行っておりますが、海外市場での事業活動には以下のようないくつかの潜在リスクがあります。

(イ) 不利な政治又は経済要因

(ロ) 予期しない規制強化、又は法律・税制の変更

(ハ) 人材確保の難しさ

(ニ) テロ、戦争、天災地変その他の要因による社会的混乱

(ホ) 急激な人件費の高騰等による生産コストの上昇

 当企業グループは原価低減を図るため、中国及び東南アジアで生産拡大を続けてまいりました。しかし、各国の経済状況、法的規制、税制の変化や税法解釈の多様性等に係る租税リスク(移転価格に関するリスク等を含む)、法律の変更等、予期しない事態により事業の遂行に問題が起こる可能性があります。また、電力不足が更に深刻化した場合は工場操業が困難になるなどの問題が発生する可能性があります。当企業グループと致しましては現地動向を随時把握し、適時適切に対応していく方針でありますが、これら不測の事態が発生した場合には当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑧ 知的財産権保護について

 当企業グループは他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してまいりましたが、当企業グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の国・地域では法律や運用が未整備であるため、知的財産権による完全な保護が不可能、もしくは限定的にしか保護されておらず、第三者が当企業グループの知的財産権を使って類似した製品を製造するのを効果的に防止できない可能性があります。また、当企業グループ製品の模倣品に偽の当企業グループの商標を添付し、販売され、当企業グループの品質イメージが損なわれる可能性もあります。このような場合訴訟等が生じることにより多額の費用が発生し、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑨ 製品の欠陥が生じた場合の影響について

 当企業グループは独自の品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。過去においても製品の欠陥による重大な事故は発生しておりませんが、すべての製品について欠陥がなく、品質問題が発生しないという保証はありません。製造物責任法の法的規制を受け製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を充分にカバーできるという保証はありません。製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が生じた場合には多額のコストを発生させ、また当企業グループの評価や売上に重大な影響を与え、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑩ 原材料の市況変動等の影響について

 当企業グループが製造・販売するセンサの原材料は樹脂、コバルト・マンガン・銀・ニッケル等の希少金属があります。これら樹脂、希少金属は市場の動向により価格が高騰する可能性があります。また、需給状況・市況環境により、生産に必要な原材料調達不足の発生及び製品コストの上昇要因となる可能性があります。これらの要因により、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑪ 災害・事故等による製造ラインへの影響について

 当連結会計年度において連結売上高の約2割を占める薄膜センサの素子生産については、全て国内千葉工場で製造しております。地震等の自然災害や火災等により千葉工場の生産に支障をきたした場合には、素子の支給が不足し、各生産工場の生産にも支障をきたす可能性があり、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑫ 人材の確保に伴うリスクについて

 アジア競合メーカーの台頭、市場からの開発ニーズの多様化及びニーズの変化のスピードアップなどの外部環境を考えた場合、当企業グループにおいて新製品開発活動は競争力を維持・向上するための重要な課題であります。そのためには技術に関する優秀な人材を採用・確保及び育成することが必要であると考えております。しかし、有能な人材確保における競争は高まっており、当企業グループがそのような人材を充分に確保し育成できない場合には、新製品開発活動に支障をきたし、当企業グループの財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑬ 情報セキュリティのリスクについて

 サイバー攻撃等による機密情報流出、重要データの破壊・改ざん、システム停止等が発生した場合には、その対応に要する多額の費用負担や社会的信用の低下等により、当企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑭ 疫病蔓延に伴うリスク(a)について

 2019年12月頃から世界的に蔓延した「COVID-19」のような疫病により、各国でのロックダウン(都市封鎖)や国

内における緊急事態宣言等により、当企業グループ及び顧客における経済活動が抑制され、財政状態及び経営成績

に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 ⑮ 疫病蔓延に伴うリスク(b)について

 上記⑭の影響により、顧客・生産協力会社等の経営不振・破綻により、特定の製品アイテムが供給できない又

は、遅延が生じる可能性があります。また、疫病の感染終息が不透明・不安感に伴い、製造工員者等の人員確保が

困難になる可能性があります。

 

 ⑯ 固定資産の減損リスクについて

 当企業グループは消費地生産・適地生産の方針により、生産拠点を複数展開しており、各拠点で生産設備等の固定資産を保有しております。これらの固定資産について、所在地域の経営環境の悪化等により、収益性の低下等で投資額の回収が見込めなくなった場合、減損損失が発生し、当企業グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー

(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

(流動資産について)

 当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末と比べ1,841百万円増加し、23,416百万円となりま

した。これは、主に現金及び預金の増加によるものであります。

 

(固定資産について)

 当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末と比べ1,102百万円増加し、7,778百万円となりまし

た。これは、主に有形固定資産の増加によるものであります。

 

(流動負債について)

 当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末と比べ1,170百万円増加し、4,897百万円となりました。これは、主に支払手形及び買掛金、その他(未払費用及び未払金)の増加によるものであります。

 

(固定負債について)

 当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末と比べ55百万円減少し、3,073百万円となりました。これは、主に長期借入金の減少とリース債務の増加によるものであります。

 

(純資産について)

 当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末と比べ1,828百万円増加し、23,224百万円となりました。これは、主に利益剰余金及び自己株式の増加と為替換算調整勘定の減少によるものであります。

なお、自己資本比率は74.4%となり、1株当たり純資産額は、2,182円40銭となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における世界経済は、インフレが鈍化し、一部地域において停滞がみられるものの、持ち直しております。しかしながら、米国の通商政策、地政学リスク、中国の景気停滞等により先行き不透明な状況であります。

 このような状況のもと、当企業グループの売上高は、自動車関連において、電気自動車(EⅤ)向けが減少した一方、ハイブリッド車(HEV)向けが増加いたしました。OA機器及び家電関連に関しては、顧客の在庫調整が一部解消されたことで増加し、産業機器関連についても中国の商社向けが増加いたしました。また、医療関連に関しても、血糖値測定器向けの販売が概ね計画通り推移し、増加いたしました。営業利益は、人件費等の経費が増加いたしましたが、売上高の増加と為替レートが円安で推移したことにより、前連結会計年度を上回りました。経常利益は、営業外収益において前期末と期末日レートの差が縮小し、為替差益が減少いたしました。最終利益は、特別利益に補助金収入(経済産業省のサプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金)を計上し、前連結会計年度を上回りました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は25,334百万円(前年同期比11.7%増)、営業利益は3,915百万円(前年同期比9.6%増)、経常利益は4,059百万円(前年同期比4.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,113百万円(前年同期比44.9%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、以下のとおりであります。

 

 (日本)

 自動車関連の売上高は、国内自動車メーカー向けの回復により、前連結会計年度に比べ増加いたしました。また、OA機器関連の売上高についても、顧客の在庫調整が一部解消され、前連結会計年度に比べ増加いたしました。セグメント利益は、販売管理費において人件費、研究開発費及び諸経費が増加したことにより前連結会計年度を下回りました。これらの結果、売上高5,422百万円(前年同期比8.0%増)、セグメント損失444百万円(前年同期はセグメント損失292百万円)となりました。

 

 (中華圏)

 OA機器関連の売上高は、顧客の在庫調整が一部解消したことで、前連結会計年度に比べ増加いたしました。また、産業機器関連の売上高も需要が回復したことで、前連結会計年度に比べ増加となりました。セグメント利益は、生産工場における内部販売の価格見直しや生産移管等により収益率が低下し、前連結会計年度を下回りました。これらの結果、売上高9,122百万円(前年同期比11.2%増)、セグメント利益1,396百万円(前年同期比7.2%減)となりました。

 

 (その他アジア)

 家電関連の売上高は、顧客の在庫調整が解消したことにより回復し、また自動車関連の売上高もハイブリッド車(HEV)向けが堅調に推移したことにより、前連結会計年度に比べ増加いたしました。セグメント利益は、収益性の高い自動車関連の売上高の増加及び生産性の向上により、前連結会計年度を上回りました。これらの結果、売上高6,835百万円(前年同期比19.7%増)、セグメント利益1,870百万円(前年同期比25.1%増)となりました。

 

 (北米)

 自動車関連の売上高は、電気自動車(EV)の減速需要を受け、前連結会計年度に比べ減少いたしましたが、医療関連の売上高は、血糖値測定器向けが堅調に推移し、前連結会計年度に比べ増加いたしました。セグメント利益は、一部の医療関連において販売価格の値下げにより収益性が低下し、前連結会計年度をやや下回りました。これらの結果、売上高3,953百万円(前年同期比5.5%増)、セグメント利益943百万円(前年同期比0.5%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益が4,303百

万円(前年同期3,277百万円)、固定資産の取得による支出1,640百万円、長期借入金の返済による支出539百万円及び自己株式の取得による支出499百万円等を計上した結果、前連結会計年度末に比べ1,738百万円増加し、当連結会計年度末には12,038百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、5,190百万円となりました(前年同期3,732百万円の収入)。これは主に税金

等調整前当期純利益4,303百万円の計上と仕入債務の増減額525百万円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、1,508百万円となりました(前年同期626百万円の支出)。これは主に固定資

産の取得による支出1,640百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、1,820百万円となりました(前年同期1,666百万円の支出)。これは主に長期

借入金の返済による支出539百万円、自己株式の取得による支出499百万円、リース債務の返済による支出298百

万円及び配当金の支払額283百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

    至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

日本(千円)

4,314,058

119.98

中華圏(千円)

6,741,165

111.51

その他アジア(千円)

4,277,709

105.73

北米(千円)

-

-

合計(千円)

15,332,932

112.03

(注)金額は、製造原価によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

日本

5,328,695

106.15

1,048,750

91.75

中華圏

9,439,352

117.43

1,805,895

119.08

その他アジア

6,958,481

120.10

827,591

108.35

北米

4,059,619

109.93

966,397

110.39

合計

25,786,148

114.38

4,648,634

108.14

(注)金額は、販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

     至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

日本(千円)

5,422,996

108.02

中華圏(千円)

9,122,300

111.24

その他アジア(千円)

6,835,385

119.75

北米(千円)

3,953,640

105.51

合計(千円)

25,334,323

111.72

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態                                      (単位:百万円)

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(流動資産)

 現預金:主に売上債権の回収及び補助金収入に伴う増加であります。

 

(固定資産)

 有形固定資産:主に子会社の工場賃借リースに伴う使用権資産の増加であります。

 

(流動負債)

 買入債務:原材料等仕入に伴う増加であります。

 短期有利子負債:主に短期借入金の返済による減少であります。

 その他:主に未払金及び未払費用の増加であります。

 

(固定負債)

 長期有利子負債:主に長期借入金の減少とリース債務の増加であります。

 

(純資産)

 主に利益剰余金及び自己株式の増加と為替換算調整勘定の減少により、自己資本は23,224百万円(前連結会計年度は、21,396百万円)となり、自己資本当期純利益率(ROE)は、13.9%(前連結会計年度は、10.6%)となりました。

 

 なお、現預金と有利子負債のバランスは、現預金が有利子負債を大きく上回っている状況から、財政状態におい

て問題はないと判断しております。

0102010_002.png

 

 

   ●セグメントごとの財政状態は、以下のとおりであります。

日本:主に現金及び預金、固定資産の増加によるもの。

中華圏:主に現金及び預金の減少と売掛債権の増加によるもの。

その他アジア:主に売上債権とその他資産の増加によるもの。

北米:主に現金及び預金、固定資産(使用権資産)の増加と売掛債権の減少によるもの。

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2)経営成績

●用途別売上高の各要因は、以下のとおりであります。

OA機器:顧客の在庫調整の解消により、日系向けプリンタ用が増加。

家電・住設:日系・インド系向け家庭用エアコン用、日系・韓国系向け冷蔵庫用が増加。

自動車:日系・韓国系向けHEV車バッテリー用、韓国系向けHEV車モーター用が増加。

産業機器及びその他:中国系向けの需要が増加。

医療関連:米国系向けの血糖値測定器用が増加。

情報機器:台湾系向けの需要が増加。

0102010_004.png

●地域別売上高の各要因は、以下のとおりであります。

中国:日系・中国系向けプリンタ用増加、日系向けその他の電子タバコ用増加。

日本:日系向け自動車のバッテリー用増加及びOA機器の複写機用増加。

韓国:韓国系向け自動車バッテリー用増加、家電の冷蔵庫用、調理機器用増加。

米国:米国系向け医療の血糖値測定器用増加及びその他の中間ユニット用増加。

東南アジア他:日系向けエアコン用増加、ベトナム向けプリンタ用増加。

欧州:欧州系向けの産業機器関連用減少。

台湾:台湾系向けの産業機器関連用増加。

0102010_005.png

 

   ●各段階利益の要因は、以下のとおりであります。

0102010_006.png

 

売上総利益:売上高が増加し、為替が円安に推移した影響等により、前連結会計年度を上回りました。

 

営業利益:販売費及び一般管理費における人件費及び研究開発費を増加したものの、前連結会計年度を上回りま

     した。

 

経常利益:前連結会計年度に比べ、為替差益の計上が減少しましたが、前連結会計年度を上回りました。

 

親会社株主に帰属する当期純利益:特別利益において、補助金収入(約273百万円)の計上により、前連結会計年

                度を上回りました。

 

 セグメントごとの経営成績は、以下のとおりであります。

(日本)

 売上高:自動車及びOA機器関連の増加

 セグメント利益:人件費、研究開発費及び諸経費の増加に伴う減少

 

(中華圏)

 売上高:OA機器及び産業機器関連の増加

 セグメント利益:内部販売価格の見直し、生産移管等により収益性が低下し減少

 

(その他アジア)

 売上高:家電及び自動車関連の増加

 セグメント利益:収益性の高い自動車関連の売上高増加及び生産性の向上により利益増加

 

(北米)

 売上高:医療関連の増加

 セグメント利益:医療関連の販売価格値下げにより収益性が低下し減少

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 総じて、当連結会計年度は、日系向けの自動車及びOA機器関連が好調でありました。利益面でも、人的投資費用が増加しましたが、為替相場も円安に推移したことから、売上高、営業利益共に過去最高を更新することができました。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、売上高の8割以上が国外であり、生産において

も、7割以上が国外で生産を行っていることから為替相場の影響を大きく受ける状況下であります。なお、為替感応度として、1円変動により売上高約100百万円(年額)、営業利益約20百万円(年額)程度であると試算しております。また、外貨建ての資産・負債の邦貨換算により、為替差損益(営業外損益)の計上によって、経常利益に影響を与えます。なお、その他としては、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

1)キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 前連結会計年度に比べ、主に税金等調整前当期純利益の増加と仕入債務の増加によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 主に固定資産の取得による支出(新規の製造設備購入分と老朽化に伴う製造設備の更新)によるものであり

ます。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 主に長期借入金の返済と自己株式の取得による支出のものであります。

 

以上の結果、現金及び現金同等物期末残高は、前連結会計年度に比べ増加の結果となりました。

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●各投資状況については、下記のとおりであります。

・設備投資 :主に、新規の薄膜サーミスタ用生産設備と太陽光パネルの取得によるものであります。

・減価償却費:上記薄膜サーミスタ用生産設備の取得が期末時点であったことを勘案し、定量的な発生額と判断し

       ております。

・研究開発費:主に開発人員の増加に伴うものであります。

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※設備投資・減価償却費には、使用権資産(リース資産等)のものを含んでおります。

 

2)資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保

することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、部材・原材料のほか、製造費、人件費、研

究開発費を含む販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等に

よるものであります。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運

転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当連結会計年度末における

借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,785百万円(前連結会計年度末の残高は3,054百万円)となって

おります。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は12,038百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当企業グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項

(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

 

(繰延税金資産)

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、会計上の見積りの判断が翌連結会計年度以降の繰延税金資産及び税金費用の計上額に影響を与える可能性があります。

 

(固定資産の減損)

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、会計上の見積りの判断が翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(棚卸資産の評価)

 当社グループは、棚卸資産の収益性の低下を適切に連結財務諸表に反映するため、一定期間払い出されていない棚卸資産について、棚卸資産の払出状況や廃棄実績等から算出した一定率に基づき、簿価切下額を計上するとともに、個別に販売見込みがない棚卸資産についても簿価切下額を計上しております。また、製品の期末における正味売却価額が取得原価を下回っている棚卸資産については、当該差額を簿価切下額として計上しております。

 当社は、顧客からの受注見込みに基づいて部材及び原材料を調達し、製品を製造しておりますが、顧客の環境変化等により実際の受注数量に変動があった場合、余剰在庫を保有するリスクが生じる可能性があります。また、原材料の市場価格の高騰等により、製品の期末における正味売却価額が取得原価を下回るリスクも存在します。このようなリスクを軽減するため、毎月の取締役会において各拠点の棚卸資産残高の水準を監視し、在庫の処分方針を検討するとともに、必要に応じて顧客に対して買取数量や買取価格の交渉を行うなどの施策を講じております。しかし、これらのリスクが顕在化した場合には、棚卸資産の収益性の低下により、簿価の切り下げが必要となる可能性があります。

 市場環境の変化により、見積り額の前提条件や仮定に変更が生じた場合、会計上の見積り判断が翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、営業利益金額としております。なお、当社グループは、2027年3月期において営業利益50億円を目標として設定しております。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  当企業グループの研究開発は、当社のワールドテクノロジーセンターが統括的に行っているため、各セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果等の記載をしておりません。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は996百万円であります。

 上記、研究開発費の総額は、当期より日本のワールドテクノロジーセンターを中心とする技術部門に加え、海外の技術センターを含めた集計を行っております。

 

(1) 研究開発活動の方針

 当企業グループは、市場のニーズの変化や顧客からの新たな課題を、世界に配置する販売拠点からいち早く捉え将来の新しく形成される有望市場に向けて、日々、新技術の開発に取り組んでおります。

 最先端の技術情報や次世代製品の情報収集に基づき、蓄積された設計手法やノウハウにより新製品・新技術をお客様へ提案しており、具体的には、次のものに取り組んでおります。

・安全、無公害、高信頼性製品の開発

・付加価値のある製品の開発

・顧客をリードする製品の開発

・顧客のニーズに合致した製品の開発

・低コスト製品の開発

 新製品の開発は、既存品のバルクセンサ、薄膜センサ、赤外線センサだけでなく、顧客のセンシングニーズに対応した新たなセンサの開発も行っております。

 

(2) 研究開発体制
 当企業グループは、当社に研究開発部門であるワールドテクノロジーセンターを設置し、コアとなるセンサ技術の深掘りや中長期的な視点での新しい事業領域の研究開発などに取り組み、当企業グループ全体の研究開発を推進しております。なお、海外の技術開発拠点は主に既存製品の改良設計を行っております。

 本部内での開発をセンサのコアとなるセンサ用素子の基礎開発と、本センサ用素子を使ったセンサの応用開発に分担ですることで、効率性を高めております。また、産官学連携により技術・知識を向上させ、未知なセンサを社会実装させる取組みに努めております。

 

(3) 研究開発の内容

  ①バルクセンサの開発では、今まで蓄積した新規特性開発のノウハウに、高精度の温度測定技術と新しく開発した

  抵抗調整技術を融合し、高精度で互換性の高いセンサの開発を進めております。

②薄膜センサの開発では、医療用途の小型のセンサ開発や、薄膜センサの抵抗値高精度ペアリング技術を生かした新しい性能・機能を持つ物理量センサの研究を行っております。

③その他の開発では、顧客要求に対応したセンサの開発を進めております。

④既存の工法にとらわれず、常に新しい工法開発に努めております。

⑤海外の技術センターへモデファイ設計の移管を進めております。

 

 上記の他、センサに他の機能を融合させた多機能センサの開発や、異業種や大学等との協業・共同開発などにより自社のコア技術と新技術を融合した、バルクセンサ、薄膜センサ、赤外線センサ以外のセンサの研究開発も行ってまいります。

 

 当連結会計年度における主な研究成果には、下記のものがあります。

 

外部接触型微細配管流速センサ

対象の流体に触れずに、極めて小さな流量を計測出来るセンサを開発しました。

当該センサは、流体の流れる配管外部に設置することにより、計測対象に直接触れることが無いため、流路への影響がなく、センサを侵食するような有害な溶媒も測ることができます。さらに、1μL/minからの流量計測が可能であるため、繊細な技術が求められる医療や製薬、化学工業、食品産業等様々な分野での活用が期待されます。