第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものです。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、以下のパーパス・ビジョンを実現するために、判断・行動の基準となるバリューを定め、これに基づき事業活動を行ってまいります。

 

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(2)資本政策の基本的な方針

当社の資本政策は、以下の4点により構成しております。

①中長期的なROE向上

当社は、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を持続的な企業価値増大に関わる中核的な指標と捉えています。売上収益利益率、財務レバレッジ、および総資産回転率を常に改善してまいります。

②安定性の上に業績連動を加味した株主還元

株主還元については、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)の目標値を設定し、継続性・安定性を保持した上で、当期利益に対する比率(連結配当性向(DPR))目標を設定し、業績が好調な場合の連動性を高めた配当を実施します。配当に加え、自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。

③長期的な成長と総資産回転率向上のための投資採択基準

長期的な成長と総資産回転率向上のための投資の規律として、リスクと戦略性のランク別に、投下資本利益率と投資回収期間を設定し、投資を厳選します。

④財務レバレッジの向上と安定性のバランス

成長投資の加速と株主還元の増大により、財務レバレッジを長期的に改善するとともに、継続的・安定的に企業理念を実現するため、健全なバランスシートを維持し、結果としてROEの持続的な改善を実現します。

 

当社では、こうした資本政策によって、成長投資と安定した株主還元を両立し、持続的な株主価値向上に努めてまいります。

 

 

(3)中長期的な会社の経営戦略および目標とする経営指標

当社グループは、上記の「(1)会社の経営の基本方針」および「(2)資本政策の基本的な方針」に基づいて、以下の重点戦略を推進してまいります。

重点戦略1: Food&Wellnessの事業拡大

重点戦略2: Sugarの基盤強化

重点戦略3: 人的資本経営の推進

重点戦略4: サステナビリティ経営の推進

 

重点戦略の詳細については、「(4)経営環境および優先的に対処すべき課題」に記載しております。

また、目標とする経営指標につきましては、上記のとおり、ROEを中核的な指標と捉えております。

 

(4)経営環境および優先的に対処すべき課題

当社グループを取り巻く経営環境につきましては、消費の持ち直しが持続し、緩やかな景気回復が続く一方で、トランプ米政権の関税政策等、不安定な国際情勢や物価上昇による消費購買意欲の低下が懸念されるなど、2025年度においても先行き不透明な厳しい状況が続いております。

このような状況のもと、当社は、2025年2月7日より東洋精糖株式会社の普通株式に対し金融商品取引法に基づく公開買付けを実施し、本公開買付けの結果、2025年3月31日付で同社は当社の連結子会社となりました。また、2025年10月1日付で当社を存続会社とし、連結子会社である第一糖業株式会社を吸収合併する予定です。業界再編を通じ、事業基盤拡充策を推進し競争力強化と最適なサプライチェーンの構築を実現することで、わが国の砂糖業界におけるリーディングカンパニーとしての責任を果たしてまいります。

 

(中期経営計画の進捗状況)

当社グループは、2024年度を初年度とする中期経営計画「WELLNEO Vision 2027」(2024年4月~2028年3月)に取り組んでおります。この中期経営計画では、「(3)中長期的な会社の経営戦略および目標とする経営指標」に記載した4つの重点戦略を推進し、最終年度となる2028年3月期の経営目標を、営業利益(+持分法による投資損益)10,100百万円、当期利益7,000百万円、ROE9%としております。1年目となる当連結会計年度におきましては、営業利益(+持分法による投資損益)8,276百万円、当期利益5,565百万円、ROE7.7%となっております。

引き続き経営目標の達成に向けて4つの重点戦略を推進し、当社を取り巻く様々なステークホルダーの“Well-being”の実現を目指してまいります。

 

①Food&Wellnessの事業拡大

Food&Wellnessセグメントにおきましては、健康増進による人々の生活の質の向上に貢献するべく、フードサイエンス事業とフィットネス事業により、幅広い場面で活用される多種多様な機能性素材・サービスを提供してまいります。

フードサイエンス事業では、腸内・口腔フローラデザイン機能を持つ素材や、高付加価値製品の収益拡大に向け、各種施策を実行することで、Sugarセグメントに次ぐ収益の柱への成長を目指します。「沖縄・奄美のきびオリゴ」(フラクトオリゴ糖)は顧客ニーズに基づきパッケージデザインを変更し、テレビCMやデジタル広告・PR施策等の実行による拡販を継続しております。「カップオリゴ」(ガラクトオリゴ糖)については製造能力増強と機能性の訴求により更なる拡販を図るべく、美浜バイオプラントに設備投資を行い、2025年4月より稼働を開始しました。また、プラーク形成抑制効果を持ち、世界で当社だけが製造・販売する「CI(サイクロデキストラン)」の認知向上に向けた販売促進施策の実行、自社製造・増産に向けた設備投資を実施し、2025年度中に本生産を開始する予定です。さらに、プレバイオティクス素材を活用した産学連携による技術開発・共同研究の継続や、アドバイザリー契約を締結した株式会社メタジェン独自の腸内環境評価手法やデータベース、最先端の知見に基づいた助言により、機能性素材全体の新たな価値創出に取り組んでおります。加えて、ツキオカフィルム製薬株式会社、ツルヤ化成工業株式会社との更なる連携強化を図りながら、顧客課題の解決に向けたソリューションの継続開発、当社が強みとする糖由来機能性素材と東洋精糖株式会社の糖転移技術等の掛け合わせによる更なる可能性の深掘りなど、グループ会社の技術や知見も最大限活用してまいります。素材のラインナップの拡充に加え、更なるM&Aの有効活用により、事業領域拡大への挑戦を行ってまいります。

 

フィットネス事業では、会員数は徐々に回復傾向にあるものの、競合サービスの台頭など多様化が進み、経営環境は依然として厳しい状況にあります。顧客ニーズにあわせた健康・からだづくりの場の提供を行い、集客促進のための広告宣伝も実施し、総合型店舗における子ども向けスクール事業の強化と採算を重視した経営に努め、早期の業績回復を目指してまいります。

 

②Sugarの基盤強化

国内砂糖消費量は、家庭内調理機会の減少の影響を受けたものの、インバウンド需要の拡大により土産菓子、外食関係向けの出荷が改善しております。海外原糖市況については、外糖相場は主要生産国の天候不安は引き続きあるものの、足元での減産懸念の後退に軟調地合いとなっております。一方で、外部環境の地政学リスクや金融市場などの不透明感は継続しており、予断を許さない状況が続いております。

当社グループとしては、消費者の皆様に対して、生活必需品である安全な砂糖を安定的に供給することで社会的責任を果たしていくことを最優先に取り組みながら、有利な条件での原料調達やコスト上昇に対する売価への反映を進め、採算性を重視したオペレーションに努めてまいります。基幹システムの統合によるデータ利活用基盤強化・生産性の向上や、きび砂糖をはじめとする高付加価値品販売の推進を軸とする商品力・販売力の強化を図ることに加えて、今般の東洋精糖株式会社の連結子会社化や第一糖業株式会社の吸収合併による更なるシナジー発揮に向け、最適化・効率化に向けた各種施策を深耕してまいります。今後も予想される業界再編の動きにも適切に対応できるよう、引き続き、経営効率と経営品質の向上に取り組んでまいります。

 

③人的資本経営の推進

当社グループでは、従業員の思いを叶えながら、当社らしい価値創出のストーリーを示す人的資本経営を推進しております。会社と個の共創が成果を生み、優秀人材から選ばれる企業になるという考えのもと、個の能力を最大限に引き出し、企業価値を向上させることで、働きがいのある職場の実現(エンゲージメントの向上)により、従業員の“Well-being”の実現を目指してまいります。挑戦する文化の醸成、個の成長・自律の促進、HR-Techを活用した人的資本経営の基盤整備を推進することにより、経営戦略と人材戦略を連動させ、当社グループの持続的成長につなげていきます。

人的資本経営の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (人的資本関係)」に記載しています。

 

④サステナビリティ経営の推進

サステナビリティ経営の推進につきましては、2024年10月の完全統合を契機に、新生ウェルネオシュガーグループとしての決意を新たに、マテリアリティに基づく具体的な行動目標として「サステナブル・ビジョン2030」を策定しました。サステナビリティ経営に対するグループのメンバーの理解と共感を育み、グループ一丸となってサステナビリティ活動を推進することで、社会課題を解決しながら、社会的価値と経済的価値を両立する事業を展開し、企業価値の向上を目指してまいります。

「サステナブル・ビジョン2030」については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (サステナビリティ関連)(3)指標及び目標」に記載しています。

今後も社会環境、事業環境の変化を適切に捉えながら、ガバナンス体制の強化、既存事業の成長と事業領域の拡大を着実に進め、強固な経営基盤を構築することにより、プライム市場の上場企業として、更なる企業価値向上に努めてまいります。

 

 

※2025年5月28日に「2025年3月期決算・中期経営計画説明会」の詳細資料を公表いたしました。

上記資料は当社ウェブサイトに掲載しております。

以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.wellneo-sugar.co.jp/ir/event/explain.html

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティ経営の推進に関する考え方及び取組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(サステナビリティ関連)

(1)ガバナンス

 当社では、代表取締役を委員長、執行役員を主要メンバーとする委員で構成する「サステナビリティ推進委員会」を設置し、気候変動を含めた環境全体の取り組み等の解決すべき社会課題(ESG関連事項等)の解決に向けて、全社的に取り組む体制を構築しています。なお、当委員会は経営会議の諮問機関として位置づけられており、サステナビリティ推進にかかる取組状況を適宜、経営会議に報告するほか、重要事項について経営会議に答申します。当該重要事項は、経営会議において審議・決定されますが、取締役会に上程すべき経営上の重要な事項については、経営会議で審議・検討の上、取締役会に付議され、取締役会において審議・決定されます。

 サステナビリティ推進委員会では、気候変動を含む当社のサステナビリティに関するリスクおよび収益機会が事業活動や収益等に与える影響について考察を行い、そのために必要なデータの収集と分析を全社横断的に行います。

 

 サステナビリティ推進委員会に求められる役割は、当社の事業活動を通じて、持続可能な社会の実現および企業価値の向上を図ることであり、当委員会は、サステナビリティ推進に関する全社方針、中長期目標、重要施策等の審議・検討、および各分科会の活動状況、各種施策の進捗についてモニタリングを行います。また、当社は、当委員会と「コンプライアンス委員会」、「リスク管理委員会」を有機的に連動させることでガバナンス体制を強化し、社会からの信頼に応えられるよう努めます。

 社内体制図については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②コーポレート・ガバナンスの体制の概要および当該体制を採用する理由 a.コーポレート・ガバナンスの体制の概要 コーポレート・ガバナンスの体制の概要図」に記載しています。

 

(2)戦略

 当社グループは、様々なステークホルダーの各種課題を“Well-being”に注目して整理し、社会環境、事業環境の変化を捉えたうえで、パーパス・事業戦略等を踏まえ、5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。

 マテリアリティの特定にあたっては、当社グループと社会にとっての課題を抽出し、重要度分析・妥当性確認を行いました。その結果、ステークホルダーおよび当社の視点から以下マッピングを行い、サステナビリティ推進委員会および経営会議による審議の上、取締役会により承認されました。

 

<検討プロセス ステークホルダーおよび自社の視点からの優先度検討>

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 特定したマテリアリティとそれぞれに設定したKGI(重要目標達成指標)、および対応するSDGsは以下のとおりです。

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(3)指標及び目標

 マテリアリティと紐付ける形で5つの分科会を設置し、各分科会において、中長期目標および具体的な行動計画を設定し、サステナビリティ推進活動に取り組んでいます。マテリアリティに基づく具体的な行動目標として「サステナブル・ビジョン2030」を策定しました。

 

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(4)リスク管理

 当社グループでは、企業経営を取り巻く様々なリスクに対応するため、リスク管理の基本方針および管理体制を「リスク管理規程」において定めています。

 また、全社横断的なリスク管理のため、代表取締役をリスク管理の最高責任者とし、リスク管理担当執行役員を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、個々のリスクについての管理担当部を定め、同規程に則ったリスク管理体制を確立しています。

 

 同管理体制においては、顕在化あるいは潜在しているリスクを各事業所から抽出・分類し、経営に与える影響度・発生可能性を基準に評価のうえ、優先して対策を打つべきリスクを選定し、リスク対策を実行しています。当社グループに影響を及ぼす可能性があるリスクについて、リスクレベルに応じた対応を行い、リスクの発生を未然に防止し、万一発生した場合でも、経営への被害を最小限に食い止めるよう措置を講じています。

 サステナビリティ関連のリスクを含む当社事業等のリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しています。

 

(気候変動関連)

 気候変動問題に対してはマテリアリティの一つである「未来へつながる自然との共生」の中で取り組み、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」という。)の提言に沿った適切な情報開示を行っています。

 今後も継続的にシナリオ分析を行い、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクおよび機会を考察し、その結果を用いて、グループ全体で地球環境への負荷を低減した事業活動を行います。

 

(1)ガバナンス

 (サステナビリティ関連)の(1)ガバナンスに記載しています。

 

(2)戦略

シナリオ分析

 シナリオ分析については、精製糖事業を中心に4℃シナリオ、1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)の2つのシナリオで、サステナビリティ全体像でも指標としている2030年時点を想定し、考察しました。

当社グループ事業に想定されるリスク

分類

種類

項目

想定されるリスク

影響度

時期

4℃

1.5℃

移行リスク

政策・法規制

カーボンプライシングの導入

・炭素税をはじめとする気候変動問題対策による操業コストの増加

中期

温室効果ガス(GHG)排出規制の強化

・施設や設備等のGHG排出削減対応コストの増加

再エネ/省エネ政策の強化

・再生可能エネルギー価格の上昇や省エネ設備什器への更新コストの発生

技術

低炭素技術の進展

・原材料(サトウキビ)がバイオエタノールに多く使用されることによる、原材料調達コストの変化

市場

エシカル消費への変化

・サステナビリティ認証等、環境に配慮した商品を展開しない場合、環境負荷未対応商品の売上減や、他社製品への顧客流出が発生

評判

顧客および投資家からの評価

・自社の気候変動への取り組みが不十分である場合、レピュテーションリスクが発生

物理リスク

急性

異常気象の激甚化
(台風、洪水、高潮、土砂等)

・サプライチェーンの寸断による一時的な操業停止

短期

・川沿い・海沿いに立地する工場が被災した場合、該当拠点の操業停止および復旧コストが発生

慢性

干ばつの発生や降雨量の変化

・主要原材料(サトウキビ・てん菜)の生育不良や収量の低下

中期

時間軸

評価

短期:0~3年 中期:4~10年(2030年)

長期:11年~

事業活動に与える影響を「大」「中」「小」で評価。

 

4℃シナリオ

 現状を上回る気候変動対策はとられず、産業革命時期比で2100年時点3.2~5.4℃上昇するとされているシナリオ。カーボンプライシングの導入はなく、再生可能エネルギーへの転換などは現状から特段大きく進展しないため、平均気温が上昇し、異常気象の激甚化などが顕著になる。

参考シナリオ:IEA Stated Policies Scenario

 

1.5℃シナリオ

 現状、各国が発表している以上の気候変動に対する厳しい対策がとられ、カーボンニュートラル実現を目指した積極的な取組が進むとされているシナリオ。気候変動対策としての法規制は現行より非常に強まり、再生可能エネルギーへの転換が進むとされる。

参考シナリオ:IEA Net Zero Emissions by 2050(一部、Sustainable Development Scenarioも併用)

 

リスク軽減および事業機会とするための取組

リスク項目

対応の方向性

リスク軽減および事業機会とするための取組

カーボンプライシングの導入

脱炭素化の推進

・千葉工場における太陽光設備設置および運用

・関西工場にて運河と「はしけ」を使った原料輸送

・中部工場構内にて使用の作業車両のEV化、一部設備の冷媒ノンフロン化を実施

・社用車のエコカー「ハイブリッド車」100%導入

・物流部門でリードタイムの見直しや共同配送によるトラック台数の削減を行い、物流を効率化

・照明のLED化を実施

・グループ会社の新光糖業㈱にて、バガス(サトウキビの搾りかす)を活用した電力で工場設備を稼働

GHG排出規制の強化

再エネ/省エネ政策の強化

エシカル消費への変化

エシカル嗜好に対応する商品の使用と開発

・包材の薄肉化による廃棄物の削減

・一部製品の包材の印刷インキに水性・植物油・バイオマス系インキを使用し、石油原料使用量を削減

・一部製品の紙ロールにFSC認証紙を使用

・一部製品の完全紙化大袋に切り替え(実施検討中)

顧客および投資家からの評価

環境情報の適切な開示

・TCFDのフレームワークに沿った情報開示

・気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)への参加

異常気象の激甚化

防災・減災対策の強化

・当社グループ各拠点にて、地震・台風・水害といったあらゆる自然災害を想定し対策を実施

原材料調達の安定化

およびコスト変化

分散型調達の強化

・オーストラリアやタイ、国内産など様々な産地の原料糖を使用して砂糖を製造。原料や資材の調達が滞ることがないよう調達先の複数化・分散化

 

 

(3)指標及び目標

 CO2排出量

 当社では、気候変動が経営に及ぼすリスクと機会等の影響を測定・管理するための指標として、自社の事業活動で排出するCO2(Scope1,2)について、「2050年度におけるカーボンニュートラルの達成」を目標に掲げ、「2030年度に2013年度比46%削減」を目指します。また、サプライチェーンで発生するCO2排出量(Scope3)につきましても、2023年度より算定を開始いたしました。今後は、各カテゴリにおける課題の明確化および対策の立案実行をしていきます。

 

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※上記数値は、経営統合前の2社(旧商号:日新製糖㈱、伊藤忠製糖㈱)と2025年10月に合併を予定している第一糖業㈱の算定数値を合わせたものです。

 

(4)リスク管理

 体制については(サステナビリティ関連)の(3)リスク管理に記載しています。

 当社グループ事業活動で想定されるリスクの中でも特に気候変動関連リスクについて、当社グループでは事業を展開するうえで、サトウキビなどの自然資本を活用して、精製糖の製造・販売を行っているため、気候変動による原料調達の変化等、気候変動関連リスクは重要な問題であると認識しています。また、砂糖製造のサプライチェーンの中で「製造」と「物流」は環境負荷が高くなっているため、当社グループの事業活動が地球環境に与える影響があることを把握し、その影響を軽減することはサステナビリティの推進・向上に繋がると考えています。

 

(人的資本関係)

(1)戦略

①基本方針

 当社グループでは、人的資本経営について、従業員一人ひとりが経営理念や事業戦略について理解を深め共感したうえで、自律的に考えて行動できることが、新たな価値創出に繋がるとの考えから、経営戦略と人材戦略の連動によって、従業員が発揮する力を最大化させ、組織力を向上させることに主眼を置いています。その中でも、人材の「多様性の確保」と「エンゲージメントの向上」については、主要テーマとして優先的に取り組んでいます。

 

 当社グループの持続的な成長のためには、Sugarセグメントにおける生産性向上がもたらす安定した事業基盤、ならびにFood&Wellnessセグメントにおける新素材の開発および新規事業の創出が必要であり、Sugar・Food&Wellnessの両セグメントにおいて、マーケットイン型の製品・サービスの提供を展開していくうえで、変化のスピードが増し多様化する社会ニーズへ柔軟な対応が求められます。そのため、従来の知見に囚われない多様な価値観や考えを持つ人材が、オープンな職場環境下で、年齢・性別等を問わず自由闊達に様々なアイディア、意見を交わし、すべての従業員が持てる力を余すことなく発揮できることが重要となります。すなわち、組織を構成する人材の「多様性の確保」と風通しの良い組織風土の醸成が、組織力や競争力の強化の源泉であり、多様な人材に「選ばれる企業」であり続けることが、当社グループの持続的成長にとって極めて重要と認識しています。

 

 また、当社グループは近年、長い歴史や異なる文化をもつ企業間での経営統合や合併を重ねてきたことから、役員・従業員が一丸となって事業を推進するうえで、全社で共有できる目標を掲げ、そこに至るための判断基準・行動基準をより明確にする必要が生じました。そこで、パーパスを起点に当社の目指す姿をビジョンとして策定するとともに、既存のバリューについては、求められる行動をわかりやすく補足する形で更新しました。そして、パーパス・ビジョン・バリューを新しい理念体系として再構成し、これらの浸透と日々の業務との結びつきを深める取組みを行っています。とくに、バリューの一つである「挑戦」については、これを積極的に評価し、変化や変革への取組みを促します。必要な「挑戦」の結果であれば、もし失敗した場合でも次のチャンスを提供し、「挑戦」をしっかりと支援すると同時に、「挑戦」を支えるサポートメンバーの貢献も積極的に評価する組織風土の醸成を目指しています。各職場においては、バリューに紐付く行動プランを立て、個々がバリューを意識しながら日々の業務に向き合い、メンバーによるバリュー体現に対しては、周囲が“いいね”と称賛する文化を育んでいきます。

 

 また、当社では、タレントマネジメントシステム等のHR-Techを活用して、従業員個々のスキルや意欲等を「見える化」することで、人材の採用や育成、適所への配置といった人材戦略と経営戦略との連動を図ります。従業員自身も自らHR-Tech を活用し、自身の保有スキルや強み・弱みの分析を通じて、強化すべきスキル・経験の特定が行える環境を用意し、従業員自身による自律的なキャリア形成を支援します。さらに、キャリアヒアリング制度の中で毎年、自身の職務やキャリアについての考えや職場環境等を自己申告の形式でヒアリングしている他、会社が必要とするポジション要件を社内に公開し、他部署の社員がそのポジションへ応募できる社内公募制度を導入し、自らの意思で挑戦できる機会を提供する取組みを開始しました。このように、これまでの職務経験や自己啓発を通じて形成してきたキャリアを、より積極的かつ主体的に拡大させる仕組みによって、会社の求める人材と従業員のキャリア志向の一致を図りつつ、パーパス・ビジョン・バリューに共感しながら前向きに働ける職場環境で、自己実現や自己の成長を実感することにより、働きがいを得られる会社であり続けることを目指します。

 

 こうした取組みを通じて、従業員の心理的安全性の確保やエンゲージメントの向上に繋げることで、従業員一人ひとりの成長と生産性向上が会社の持続的成長をもたらす好循環を生み出すことにより、多様な人材に「選ばれる会社」になることを目指します。

 そして、当社では、多様性や組織風土を評価する指標として、管理職に占める女性労働者の比率、男性の育児休業取得率、男女間の賃金差異に加えて、新規学卒採用者やキャリア採用者の定着率(離職率)およびエンゲージメントスコアをモニタリングしながら、人事制度の改革や運用見直しに努めていきます。

 

②人事制度および人材育成等

 当社の人事制度は、年功要素を排除し、従業員一人ひとりが年齢・性別等の属性を問わずプロフェッショナルとして、自立して活躍できる仕組みを採り入れています。当社は、この制度を適切に運用する中で、スピード感をもってリーダーの育成や中核人材の拡充を行います。なお、当社の考えるプロフェッショナル人材とは、単に特定分野に精通しているだけではなく、専門的な知見と併せて、豊富な実務経験に裏打ちされた実践能力や、ジョブローテーション等によって培われた幅広い知見を発揮することで、チームにおける重要な役割を担い、周囲を巻き込みながら大きな成果を生み出せる者と定義しています。従って、当社では、すべての従業員が、自身のもつ特性やキャリアを活かしながら、自立したプロフェッショナルとして成長できるよう支援し、こうしたプロフェッショナル人材の中から、マネジメントに適性のある者を組織長として配置・登用していく方針です。

 

 人材育成において、能力開発に必要な教育研修制度や自己啓発支援制度を順次整備しながら運用しています。主なものとして、新入社員に対する集合型研修やOJT、職群・グレードに応じた階層別研修、公的資格の取得を支援する資格取得報奨金制度、社員が自己研鑽のために業務と直接関連のない教材等を購入した際にも利用できる自己啓発補助制度(毎年、一定限度額内で実費を補助する仕組み)、外部機関と連携した英語自己学習プログラム等が挙げられます。今後も、こうした人材育成プログラムをさらに拡充させる一方、キャリアヒアリング制度や1on1ミーティング、ジョブローテーション等を有効に活用しながら、従業員に対して「挑戦」の場となる実践の機会を公平に提供し、成果に対して公正な評価を行うことで、従業員のモチベーションを維持・向上させていきます。

 

 さらに、当社は、ワークライフバランスの実現に向けた各種制度の導入・運用によって、個々の従業員に合った持続可能な働き方を提供し、従業員の心身の健康に配慮した「健康経営」に関する取組みを推進することで、多様な人材にとって働きやすく働きがいのある会社を目指し、従業員の“Well-being”の実現に取り組んでいきます。

 

(2)指標及び目標

 人的資本に関する指標について、目標および実績は次のとおりです。なお、当社グループの主要な事業を行う会社として当社単体における指標を記載しています。

 

指標

目標

実績

管理職に占める女性労働者の割合※1

2030年度まで25

7.0

育児休業取得率※1

100

男性:84.6% 女性:100.0%

労働者の男女の賃金の差異※1

79.1

新卒採用者定着率※2

100.0

※1 当事業年度の実績を記載しています。

※2 入社3年後の定着率で、前事業年度の実績を記載しています。

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、(2)主要なリスクに記載したとおりです。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、または重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、文中における将来に関する事項の記載は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)当社グループのリスク管理体制

当社グループは、リスク管理の基本方針および管理体制を「リスク管理規程」において定め、その基本方針および管理体制に基づき、全社横断的なリスク管理のため、代表取締役をリスク管理の最高責任者とし、リスク管理担当執行役員を委員長とするリスク管理委員会で管理を行っております。また、リスクが顕在化した場合でも、経営への影響を最小限に食い止めるべく対応してまいります。

 

(2)主要なリスク

当社グループは、顕在化あるいは潜在しているリスクを各事業所から抽出・分類し、経営に与える影響度・発生可能性を基準に評価のうえ、優先して対策を打つべきリスクを選定し、リスク対策を実行しております。当社グループに影響を及ぼす可能性が有るリスクについて、リスクレベルに応じた対応を行い、リスクの発生を未然に防止し、万一発生した場合でも、経営への被害を最小限に食い止めるよう措置を講じています。優先して対策を打つべきリスクに加え、当社グループに重要な影響を与え得るリスクとして、ステークホルダーに開示すべきと判断したリスクを記載しております。

 

①精製糖への依存と精製糖消費量減少・農業政策等に関するもの

当社グループは、売上収益の約8~9割をSugarセグメントが占めており、その主力製品は精製糖です。そのため業績は、精製糖業界を取り巻く環境の変化を受けやすい構造にあります。精製糖業界は、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」等の適用を受けており、政府の農業政策および国際経済協定の影響を受けます。また、国内の精製糖消費量は、減少傾向にあります。当社は政府の農業政策に関する情報に対し随時慎重に対応を進め、原価低減に努めるとともに、精製糖事業以外の事業領域へ進出し、精製糖事業への依存度を低下させてまいりますが、政府の農業政策の変更および精製糖消費量減少の進行は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②新規事業領域への進出に関するもの

当社グループは、既存事業において堅実にキャッシュ・フローを創出しつつ、成長への投資を行うことを通じ、変化する事業環境に対応し、ステークホルダーへの信頼に永続的に応えるよう努めております。しかし、投資には不確実性があることから、当社においては投資審査委員会、経営会議および取締役会において、慎重に審査を実施しておりますものの、事業環境の変化その他の理由により、所期の利益をあげられない可能性があり、その場合には固定資産、のれんまたは投資の減損損失の計上を行い、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③食品の安全に関するもの

当社グループは、「食」と「健康」の両面で豊かな生活の実現に貢献するため、「糖のチカラと可能性を切り拓き“Well-being”を実現する」ことをPurpose(存在意義)として掲げており、食品の安全性向上のため品質保証体制を確立し、品質不良を発生させない仕組みを構築しております。しかし、特に近年の食品業界においては、食の安全に関わる問題が数多く発生しており、当社グループの取組みの想定を超える、予測できない原因により品質問題が発生するリスクは完全に排除できないため、製品不良による製品回収、損害賠償の発生、社会的評価の毀損等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④医薬品の安全に関するもの

当社グループのツキオカフィルム製薬株式会社は、医薬品に関わる素材を取り扱っており、製品の安全性には万全を期しておりますものの、何らかの原因で製品の安全性、品質および副作用に懸念が発生した場合、製品回収、損害賠償の発生、社会的評価の毀損等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤原材料の高騰に関するもの

精製糖の原料である輸入粗糖やその製造過程で使用されるエネルギー・資材は、海外商品市況と為替相場の影響を受けて価格が変動します。製品の販売価格は、これらの市況に従って変動する傾向にありますが、昨今の地政学リスクの急激な高まりを背景とした価格競争、世界的な需給バランスの変動、投機的な相場変動による価格高騰等により、原材料価格の上昇の一部または全部を製品価格に転嫁できない状態が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥災害・感染症等に関するもの

当社グループは、災害や事故に備えたリスク管理を実施しております。従業員の安全・健康を経営の基盤ととらえ、法令を遵守し、安全で働きやすい環境を整えるべく活動を行うとともに、重要な事業拠点については、合同で地震・台風等の災害に備えたBCP訓練を定期的に実施しております。しかし、電力・ガス・水等のライフラインに問題が生じた場合には、生産や物流機能に支障が生じ、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模な感染症の蔓延による消費低迷やサプライチェーンの混乱、フィットネス事業における店舗の一時閉鎖や利用客減少による影響、ならびに従業員や取引先への感染等による事業活動全般への影響が、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦火災事故・設備トラブルに関するもの

当社グループは、安全管理を徹底しており、火災や爆発といった重大な事故を起こさないよう定期的な設備点検ならびに保守管理の教育、災害対策訓練を実施しております。しかし、設備・機械の老朽化や放火等を起因とした、復旧に時間を要す予期せぬ事故が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧情報システムに関するもの

当社グループは、生産、販売、管理等の業務において情報システムを活用し、業務の効率化およびデータの管理を行っています。サイバーセキュリティならびにデータセキュリティの確保については、経済産業省が公表する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」や関連法令に準拠し、多層的な対策を講じてシステムの構築・運用を行っています。しかし、当社グループの取組みの想定を超える事態が発生した場合には、情報システムの障害や情報漏洩などが生じ、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨環境に関するもの

当社グループは、気候変動が当社グループの事業に与えるリスクおよび機会を考察し、その結果を用いて、グループ全体で地球環境への負荷を低減した事業活動を行います。しかし、環境対策の対応不足が生じた場合には、環境に配慮しない製品の排除などにより、当社グループの企業価値に影響を及ぼす可能性があります。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(気候変動関連)(2)戦略」に記載しています。

 

⑩人材確保に関するもの

当社グループは、多様な人材に「選ばれる企業」であり続けることが、当社グループの持続的成長にとって極めて重要と認識し、採用状況の改善と従業員のケア、離職防止対策などの労働環境の最適化に努め、優秀な人材の確保に注力しております。しかし、人材獲得競争が想定以上に激化した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(人的資本関係)(1)戦略」に記載しています。

 

⑪コンプライアンスに関するもの

当社グループは、法令や社会規範等を遵守するために、コンプライアンス委員会による継続したコンプライアンス教育・研修等の取り組みを通じて、役職員のコンプライアンス意識の向上に努めております。しかし、コンプライアンス意識の欠如による法令や社会規範等に反した行為が発生した場合には、法令による処罰や許認可の取消、訴訟の提起やお客様をはじめとしたステークホルダーからの信頼を失うことに繋がり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)重要性がある会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、国際財務報告基準(IFRS)に準拠して作成しています。

連結財務諸表の作成に当たって採用している重要性がある会計方針および見積りについての詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」および同「4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。

 

(2)経営成績の状況・分析

①事業全体の状況・分析

当連結会計年度より、当社グループにおける事業管理区分の見直しに伴い、報告セグメントを従来の「砂糖その他食品事業」、「健康産業事業」、「倉庫事業」から「Sugarセグメント」、「Food&Wellnessセグメント」に変更しています。このため、前期数値につきましては、変更後のセグメント区分に組み替えて比較分析を行っています。

 

当連結会計年度におけるわが国の経済につきましては、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要に支えられ、景気は緩やかな回復基調を維持しました。一方で、不安定な国際情勢や為替変動影響などから、依然として先行きは不透明な状況にあります。

 

 

2025年3月期

(百万円)

2024年3月期

(百万円)

増減率(%)

売上収益

97,069

92,192

5.3

売上原価

販売費及び一般管理費

77,595

10,964

75,950

10,530

2.2

4.1

営業利益

8,024

5,802

38.3

金融収益

金融費用

持分法による投資利益

185

84

252

1,584

81

322

△88.3

3.0

△21.8

税引前利益

8,377

7,627

9.8

親会社の所有者に帰属する当期利益

5,565

5,524

0.7

 

事業全体の経営成績の分析は以下のとおりです。報告セグメントごとの分析については②セグメントごとの状況・分析をご覧ください。

 

(売上収益)

売上収益は、主力の精製糖事業においてコスト上昇に対する売価への反映を進めたこと等により、前期比5.3%増の97,069百万円となりました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

売上原価は、有利な条件での原料調達によってコストを抑えられているものの、販売数量が増加したことで前期比2.2%増の77,595百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、「沖縄・奄美のきびオリゴ」のテレビCM費用や、東洋精糖株式取得関連費用により前期比4.1%増の10,964百万円となりました。

 

(営業利益)

営業利益は、売上収益の増加および有利な条件での原料調達を実行できたこと等により、前期比38.3%増の8,024百万円となりました。

 

(金融収益、金融費用、持分法による投資利益)

金融収益は、前期に一過性の受取配当金を計上していた反動で前期比88.3%減の185百万円となりました。

金融費用は、前期比3.0%増の84百万円となりました。

持分法による投資利益は、前期比21.8%減の252百万円となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比0.7%増の5,565百万円となりました。

 

②セグメントごとの状況・分析

(百万円、%)

 

事業全体

調整

内訳(報告セグメント)

Sugar

Food&Wellness

売上収益

対前期増減率

(構成比)

97,069

5.3

(100)

(-)

83,800

6.0

(86.3)

13,269

1.3

(13.7)

セグメント利益又は

損失(△)

対前期増減率

(構成比)

8,024

38.3

(100)

△1,282

(△16.0)

9,323

51.4

(116.2)

△16

(△0.2)

(注)1.セグメント利益又は損失(△)は、連結財務諸表の営業利益と一致しています。

2.各セグメント利益は全社費用1,282百万円を含んでいません。

 

[Sugarセグメント]

海外原糖市況につきましては、1ポンド当たり22セント台半ばで始まり、主要生産国の増産見通しなどから、8月下旬には当期最安値となる17セント台半ばまで下落しました。その後、ブラジルの干ばつによる減産懸念から、9月後半には当期最高値となる23セント台後半まで急騰しました。10月以降は対ドルでレアル安が進行したことから軟調な推移が続き17セント台後半まで下落し、主要生産国の在庫逼迫懸念などから反発したものの、18セント台後半で当期を終了しました。

 

海外原糖市況(ニューヨーク市場粗糖先物相場(当限))

 

日付

セント/ポンド

円/kg

為替(円/ドル)

始値

2024年4月1日

22.65

76.11

152.43

高値

2024年9月26日

23.71

76.11

145.61

安値

2024年8月20日

17.52

56.79

147.03

終値

2025年3月31日

18.86

62.58

150.52

(注)1ポンドは約0.4536㎏として換算し、為替は当日の三菱UFJ銀行直物為替公表TTSによっています。

 

国内精糖市況(日本経済新聞掲載、東京)につきましては、前期末から変わらず上白糖1kg当たり249円~251円で当期を終了しました。

このような状況のもと、業務用製品の販売量は、人流の増加により製菓、製パン向けで回復がみられたこと等により前期を上回りました。家庭用製品の販売量は、当社独自製品の「きび砂糖」の出荷は好調に推移しましたが、食品価格上昇に伴う消費低迷や家庭内調理機会の減少により前期を下回りました。利益面においては、コスト上昇に対する売価への反映を進めたこと、および有利な条件での原料調達を実行できたことにより、大幅な増益となりました。

以上の結果、Sugarセグメント合計の売上収益は83,800百万円(前期比6.0%増)、セグメント利益は9,323百万円(同51.4%増)となりました。

 

 

[Food&Wellnessセグメント]

Food&Wellnessセグメントは、主にフードサイエンス事業とフィットネス事業により、幅広い場面で活用される多種多様な機能性素材・サービスを提供しています。

フードサイエンス事業につきましては、当社独自製品の「沖縄・奄美のきびオリゴ」は、腸内環境改善効果への関心の高まりに加え、10月のリニューアル新発売、テレビCM等の販促施策、採用店舗拡大に向けた営業活動等により好調な出荷を継続しました。また、千葉工場内に新たに竣工した「美浜バイオプラント」に「カップオリゴ」の生産設備を導入し増産体制の整備を進めました。ツキオカフィルム製薬株式会社では、箔押事業、純金事業における受注増があったものの、フィルム事業における好採算商品の減少等により増収減益となりました。

フィットネス事業につきましては、子ども向けスクール事業、注力店舗に経営資源を振り向け、積極的な広告宣伝活動を実施しました。引き続き事業の効率化を進めているものの、不採算店舗の退店、のれん・固定資産の減損や前期にリース負債の見直しによる再測定益を計上していたことから減収減益となりました。

倉庫事業につきましては、港湾運送において輸入合板の取扱量が減少したこと等から減収減益となりました。

以上の結果、Food&Wellnessセグメント合計の売上収益は13,269百万円(前期比1.3%増)、セグメント損失は16百万円(前期はセグメント利益630百万円)となりました。

 

なお、各セグメントに関する他の情報は、「(3)財政状態 ②セグメントごとの状況」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載のとおりです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

前期比(%)

Sugar(百万円)

61,989

102.6

Food&Wellness(百万円)

1,608

111.3

合計(百万円)

63,598

102.8

(注)1.金額は製造原価によっており、内部取引額を除いています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

b.受注実績

生産は原則として見込み生産であり、少量の受託加工を除き受注生産は行っていません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

前期比(%)

Sugar(百万円)

83,800

106.0

Food&Wellness(百万円)

13,269

101.3

合計(百万円)

97,069

105.3

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

 

 

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

伊藤忠食糧㈱

36,501

39.6

38,262

39.4

住商フーズ㈱

11,663

12.7

12,491

12.9

 

④中期経営計画の達成状況

当社は、中期経営計画「WELLNEO Vision 2027」(2024年4月~2028年3月)に取り組んでおります。計画1年目となる当連結会計年度におきましては、定量目標(連結)である営業利益+持分法による投資損益、当期利益、ROEそれぞれ2025年3月期の計画を上回っており、2028年3月期の計画の達成に向けて、順調に進捗中です。

(百万円)

定量目標(連結)

2025年3月期

2026年3月期

2028年3月期

(計画)

(実績)

(計画)

(計画)

営業利益+持分法による投資損益

7,100

8,276

8,500

10,100

 

Sugar

8,000

9,562

8,800

9,000

 

Food&Wellness

500

△ 3

700

2,400

 

全社費用

△ 1,400

△ 1,282

△ 1,000

△ 1,300

当期利益

5,000

5,565

5,900

7,000

 

 

 

 

 

ROE

7 %

7.7 %

8 %

9 %

※2025年3月期のFood&Wellnessセグメント実績には、フィットネス事業における減損損失を含む

 

(3)財政状態

①事業全体の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は47,051百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,124百万円増加しました。これは主に棚卸資産が4,733百万円、現金及び現金同等物が2,935百万円それぞれ増加したことによるものです。非流動資産は63,301百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,310百万円増加しました。これは主に使用権資産が422百万円、のれんが416百万円減少した一方で、その他の金融資産が2,711百万円、持分法で会計処理されている投資が1,620百万円、有形固定資産が1,573百万円それぞれ増加したことによるものです。

この結果、資産合計は110,352百万円となり、前連結会計年度末に比べ14,434百万円増加しました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は32,009百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,161百万円増加しました。これは主にその他の流動負債が280百万円、引当金が213百万円減少した一方で、借入金が7,810百万円、営業債務及びその他の債務が4,041百万円それぞれ増加したことによるものです。非流動負債は3,979百万円となり、前連結会計年度末に比べ17百万円増加しました。これは主にリース負債が468百万円減少した一方で、退職給付に係る負債が220百万円、繰延税金負債が235百万円それぞれ増加したことによるものです。

この結果、負債合計は35,989百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,179百万円増加しました。

 

(資本)

当連結会計年度末における資本合計は74,363百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,255百万円増加しました。これは主に親会社の所有者に帰属する当期利益5,565百万円、剰余金の配当による減少3,342百万円、株式需給緩衝信託®における自己株式の増加による減少662百万円、東洋精糖株式会社の連結子会社化による非支配持分の増加1,470百万円によるものです。

また、当社は、2024年12月17日開催の取締役会決議に基づき、2024年12月26日付で自己株式の消却を行いました。当該消却の影響として、自己株式が3,473百万円減少し、資本剰余金についても3,473百万円減少しています。

この結果、親会社所有者帰属持分比率は66.1%(前連結会計年度末比8.0ポイント減)となりました。

 

②セグメントごとの状況

[Sugarセグメント]

当連結会計年度末のセグメント資産は、主に棚卸資産およびその他の金融資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ10,800百万円増加し、79,352百万円となりました。

 

[Food&Wellnessセグメント]

当連結会計年度末のセグメント資産は、主に棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ612百万円増加し、14,660百万円となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より2,935百万円増加し、15,445百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、8,927百万円の収入(前期は6,662百万円の収入)となりました。

主なものは、税引前利益8,377百万円、減価償却費及び償却費2,349百万円、持分法による投資利益△252百万円、棚卸資産の増加△1,971百万円、法人所得税の支払額△3,077百万円、ならびに営業債権及びその他の債権の減少、営業債務及びその他の債務の増加による3,523百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、8,977百万円の支出(前期は822百万円の支出)となりました。

主なものは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出△2,820百万円および連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出△6,259百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、2,986百万円の収入(前期は4,593百万円の支出)となりました。

これは、短期借入金の純増額7,810百万円、自己株式の取得による支出△889百万円、自己株式の処分による収入235百万円、リース負債の返済による支出△832百万円、ならびに配当金の支払額△3,337百万円です。

 

 

(5)資金需要および資金の調達・使途

①資金需要

当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要です。

運転資金需要として、製品を製造するための原材料の仕入・製造費・商品の仕入・販売費及び一般管理費等、設備資金需要として、砂糖生産設備等の経常的更新等および業務関連システム等のIT投資にかかるものが含まれます。

 

②資金の調達・使途

当社グループは運転資金につきましては、短期借入金と自己資金により充当しており、設備資金につきましては、自己資金により充当しています。

 

5【重要な契約等】

(1)新東日本製糖㈱における精製糖等の共同生産に関する合弁契約

当社は、2000年10月、大日本明治製糖㈱(現:DM三井製糖㈱)および新東日本製糖㈱との間で新東日本製糖㈱における精製糖等の共同生産に関する合弁契約を締結しています。

 

(2)日新製糖㈱および伊藤忠製糖㈱の吸収合併

当社は、2024年5月24日開催の取締役会において、2024年10月1日を効力発生日として、当社を存続会社、当社の連結子会社である日新製糖㈱および伊藤忠製糖㈱を消滅会社とする吸収合併契約を締結しました。また、当該吸収合併に関する議案を2024年6月26日開催の第13回定時株主総会に付議し、その承認を得て、2024年10月1日付で吸収合併を実施しました。

 

(3)東洋精糖㈱に対する公開買付けおよび同社の吸収合併

当社は、2025年2月6日開催の取締役会において、東洋精糖㈱の普通株式を金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得することを決議しました。なお、本公開買付けの結果、当社は2025年3月31日付で同社の発行済株式総数の86.9%の株式を取得し、同社を連結子会社としました。また、当社は、2025年6月17日開催の取締役会において、2026年10月1日を目標に、当社を存続会社、同社を消滅会社とする吸収合併を行うことを基本方針として決議しました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.後発事象」に記載のとおりです。

 

(4)太平洋製糖㈱における精製糖の共同生産に関する契約

当社の連結子会社である東洋精糖㈱は、2001年9月21日、塩水港精糖㈱、フジ日本精糖㈱(現:フジ日本㈱)および太平洋製糖㈱との間で太平洋製糖㈱における精製糖の共同生産に関する受委託加工契約を締結し、これに伴い、太平洋製糖㈱は、2001年10月1日より東洋精糖㈱、塩水港精糖㈱、フジ日本精糖㈱(現:フジ日本㈱)の三社での共同生産の操業を開始しています。

 

(5)第一糖業㈱の吸収合併

当社は、2025年5月23日開催の取締役会の決議に基づき、2025年10月1日(予定)を効力発生日として、当社を存続会社、当社の連結子会社である第一糖業㈱を消滅会社とする吸収合併契約を締結しました。また、本合併契約承認に関する議案を2025年6月26日開催の第14回定時株主総会に付議します。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 40.後発事象」に記載のとおりです。

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、当社およびツキオカフィルム製薬㈱において研究開発部門を設置し、研究開発活動を行っています。

当社においては、砂糖その他の甘味料の新製品開発やヒトミルクに含まれる「ガラクトオリゴ糖」の新規機能性の研究を推進する一方、沖縄ラボにてオーラルケア機能や難溶性物質の可溶化が期待できる機能性素材「サイクロデキストラン(CI)」の研究開発を行っており、2021年5月より製造販売を開始しました。これらの研究開発の推進にあたっては、専門性・効率性を高めるため、共同研究という形で積極的に大学等の研究機関と連携を深めています。CIの研究開発においては、2024年9月に日本応用糖質学会の技術開発賞を山梨大学と共同受賞、2024年5月に当社が発表した研究報告が精糖技術研究会賞を受賞するなど内外で評価される結果が出て来ています。藤田医科大学内に2022年8月に開設した「医科プレ・プロバイオティクス共同研究講座」では、自社保有のプレバイオティクス素材「ケストース」を中心に、ヒトの健康維持や病気の補完治療を目指した研究を行っています。2024年10月には腸内環境研究で最先端を走る㈱メタジェンとアドバイザリー契約を締結し新たな価値創出に向けた取り組みをスタートさせました。

ツキオカフィルム製薬㈱においては、フィルムの持つ多様な特性を利用し、可食フィルム・フィルム化粧品・フィルム製剤の3領域において研究開発を推進しています。また、当社は持分法適用会社であるツルヤ化成工業㈱とも研究開発分野においての連携を進めています。

当社はグループ内の研究開発に係わる知見やリソースを集結させ、多種多様な機能性素材を提供し、“Well-being”を実現する体制の整備に取り組んでいます。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は190百万円です。

なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。