文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
経営環境及び課題への取組み
1.経営方針
(1)グループ理念
当社グループは1911年に造船業を祖業として創業しましたが、創業以来、技術力に立脚したものづくりの会社として歴史を歩んできました。当社グループでは祖業である造船事業を「コアビジネス」、非造船事業を「第二のコアビジネス」として位置付け、事業の多角化に取り組んできました。2021年2月28日付で祖業である造船事業を㈱新来島どっくに譲渡しましたが、事業譲渡後も「確かな技術にまごころこめて ~人と技術を磨き、新たな顧客価値を創出する~」というグループ理念については、グループの従業員が最も大切にする基本的な考え方として不変のものとしています。このグループ理念を従業員一人ひとりが実践することで、事業を通じて社会課題を解決し「サステナブルな社会の実現」に貢献するとともに持続的な企業価値向上を目指します。
(2)グループビジョン
当社グループは2024年3月29日に「中期経営計画<'24-'26>」を対外公表しましたが、当該計画を策定するにあたり造船事業譲渡後の新生サノヤス10周年に当たる2030年度に当社グループが目指す姿を明確化し、グループビジョンとして策定しました。
(3)行動原則
グループビジョンを実現するために組織で大切にするべき価値観や行動を5つの行動原則として定め、グループの従業員全員で共有し、日々の事業活動の指針としています。

2.サノヤスグループの思い
当社グループは持株会社であるサノヤスホールディングス㈱の傘下に、事業活動を行う10社の事業会社と技術集団であるサノヤステクノサポート㈱で構成されており、多様な事業を営んでいます。当社グループが目指すところは、事業を通して社会課題を解決し、人々のくらしを支え、全ての人々の”喜び”と”満足”を実現する企業でありたいということです。サノヤスホールディングス㈱とサノヤステクノサポート㈱はグループ共通のプラットフォームとして事業会社をサポートし、各事業会社はそれぞれの事業に専念できる体制を構築しています。当社グループの柱である各事業会社では次の5つを基本方針としてソリューションの強化とイノベーションに挑戦し、お取引先やパートナー企業と協働し、社会に役立つ商品とサービスを生み出していきます。
① 本業のものづくりとサービスに専念し、お客様に信頼される会社を目指す
② ユニークな製品を適正価格で提供し、収益力の強化に努める
③ DXにより仕事を効率化し、常に生産性を向上させる
④ R&Dを通じて、新製品・新規事業を次々と創出する
⑤ 人財教育と互いの切磋琢磨により、強い人財を育成する

3.新生サノヤス10周年(2030年度)に向けて
(1)基本方針
サノヤスグループは多様な事業を展開しており、それぞれの事業によって解決できる又は解決したい社会課題も多種多様なものがあり、以下に図示するような社会課題を中心に解決を図っていきたいと考えています。社会インフラの老朽化に対してはサノヤス・エンテック㈱で空調や給排水等の配管の老朽化への対応としてリニューアル部隊を新設し、取り組みを進めてまいります。水資源の確保に対しては、みづほ工業㈱が手掛ける水処理事業を強化し、用水から排水までを一気通貫でエンジニアリングを行い、貴重な水資源の有効活用に貢献します。少子高齢化による労働力不足に対してはみづほ工業㈱やサノヤス・エンジニアリング㈱で生産工程の自動化や省人化を実現する新製品の開発を行い、製造現場に提供してまいります。また、データ流通基盤の強化に対しては、昨今急増し、重要な社会インフラとなっているデータセンター向けに松栄電機㈱の配電盤や分電盤を供給してまいります。
このように当社グループの各事業会社はBtoB企業としてお客様にソリューションを提供することで、お客様と共に社会やくらしに役立ち、支えとなることで全ての人々の“喜び”と“満足”を実現したいと考えています。
それを実現するための重点施策は、①ソリューションの強化、②イノベーションへの挑戦、③ESG経営の進化・深化の3つです。加えてこれらの重点施策を滞りなく実行できるよう事業基盤の強化を進めてまいります。

(2)重点施策
①ソリューションの強化
・当社グループ内に既に事業基盤があり、かつ将来にわたってマーケットが拡大していくことが予想される分野として産業インフラ関連分野と環境分野を注力分野に選定し、積極投資を行い基幹事業へ育成します。
・国内では新しい市場領域への進出や東南アジアを中心とする海外マーケットの拡大を図ります。
・既存事業とシナジーが見込まれる企業のみならず、当社グループの経営リソースでマネジメント可能な新しい事業領域のM&Aについても検討してまいります。
②イノベーションへの挑戦
・技術集団であるサノヤステクノサポート㈱をハブとして産学連携や他の企業とのコラボレーションを積極的に行い、新たなビジネス創出を図ります。
・顧客ニーズや社会的要請を起点とし、事業会社とサノヤステクノサポート㈱が協働し、問題解決に資する新製品や新サービスを創出します。
・ITや先進技術を積極的に活用することにより、生産性の向上や新しいビジネスモデルの構築を図ります。
③ESG経営の進化・深化
・引き続き、地球温暖化対策への取り組みと人的資本経営の充実を柱としています。
④事業基盤の強化
・収益力の向上を図るため、当社グループで最も大切なものづくり力強化に向けて、設計能力のレベルアップや原価低減推進等を進めます。
・R&D機能を強化するため、各事業会社がそれぞれ行っている新製品や新サービスの開発に加え、サノヤステクノサポート㈱が一体となって開発の方向性を定め、要素技術の開発、コラボレーション先の探索などを行います。また、2024年4月1日付けで全社横断的な活動として、イノベーション推進委員会を設置し、イノベーション推進活動の加速を図っていきます。
・企業体質の強化では、DX活用による能動的営業活動の実行やマネジメント研修の充実によるマネジメントスキルの向上等、企業体力の底上げを地道に行っていきます。

4.中期経営計画<'24-'26>
(1)位置づけ・骨子
2024年3月29日に公表した「中期経営計画<'24-'26>」は、新生サノヤス10周年(2030年度)に向けての前半の3年間と位置づけ、さらなる技術進化とポートフォリオ経営深化でグループ各社の基盤強化と連携強化の期間としています。前半の3年間で構築した高収益基盤をもとに後半の4年間で成長トレンドを実現する計画としています。

また、新生サノヤス10周年に向けた3つの重点施策に対して、5つの取り組みと合わせ事業基盤の強化を進めることとしています。5つの取り組みでは、(1)注力分野と位置付けた産業インフラ関連・環境分野への資金投入、M&A投資、人的投資を積極化、(2)既存事業では新商品開発や差別化戦略の推進、メンテ・サービス事業の強化、(3)新マーケットの開発や海外展開等、新規事業分野への進出、(4)カーボンニュートラル実現に向けた取組みの推進、(5)人財確保に向けた体制強化や働き甲斐の向上に向けた人事制度改革等、人的資本経営の推進を行ってまいります。

(2)進捗状況
(2)-1.注力分野の成長ドライブ
産業インフラ分野では、国内で活況を呈しているデータセンターの新築案件に対応するべく、松栄電機グループの人員増強を図り生産能力を増強するとともに、新たにISO9001の認証を取得、これらの体制強化の下、大型案件の受注を獲得することが出来ました。加えて、ハピネスデンキ㈱とのグループ内コラボレーションを進めることで、当社グループ全体で対応能力を賄うとともに、さらなる生産能力の拡大に向けたリソースの投入を進めてまいります。
環境関連ソリューション分野においては、みづほ工業㈱において人員増強を図るとともに営業活動を強化することで、計画を上回る売上高を達成しました。中国に拠点を設ける美之賀機械(無錫)有限公司では、2025年1月25日に本社工場を移転し、業容拡大に向けた取組みを進めてまいります。
(2)-2.既存事業の強化
みづほ工業㈱では真空乳化撹拌装置事業の拡大に向けて開発リソースの投下を図り、試験用新モデル2機種「PVQ-N(ネクスト)」、「LR-P2」を開発し、販売を開始しました。これらの装置では従来の装置に比べ省スペースを実現するとともに、操作性を改善することでユーザーニーズに応えた機能を実現しています。
また、サノヤス・ライド㈱では、開発人員の増強を図るとともに、パートナー企業との連携を深め、工程管理にもリソースを投下することで、よみうりランド様の新観覧車「Sky-Go-LAND」を予定通り完工し、2024年10月24日にオープニングセレモニーが実施され、運用を開始することが出来ました。加えて、城島高原パーク様にシューティングシアター XDダークライド、グリーンランド様にウェーブスインガーを施工し、それぞれ2025年3月1日にオープンを迎えることが出来ました。引き続き遊戯機械の開発・製造・施工及び海外遊戯機械の導入を図ってまいります。
メンテ・サービス領域については、サノヤス・エンジニアリング㈱の機械式駐車場事業において、工程管理の強化、補修部品のメンテナンスサイクルの見直し等を進めることで、計画を上回る売上高を達成しました。加えて差別化を図るための新製品開発に取り組んでいます。

※(左)よみうりランド様新観覧車「Sky-Go-LAND」
※(右)みづほ工業新製品 クイックホモミキサー「LR-P2」
(2)-3.新規事業分野への進出
2024年4月1日付で社内にイノベーション推進委員会を設置し、当社グループ傘下の各事業会社からメンバーを選定の上、新規事業創出の検討を開始しました。出てきたアイデアについては具現化に向けた取組み・試作品の開発のフェーズに進んでおり、引き続き検討を進めてまいります。加えて、当社グループにて技術開発・技術人財育成を担っているサノヤステクノサポート㈱では、全社の技術・開発力を強化し、新製品開発の加速を図るために従来設置されていた「ものづくりラボ」を移転し、面積を約1.7倍に拡張いたしました。これにより各事業会社と連携した実験・検証に加えて、新規製品開発に必要な要素技術開発にも着手してまいります。
新たなマーケットの開拓に向けては、サノヤス・エンジニアリング㈱のショットブラスト事業において海外市場の開拓に着手しています。既に取引のある機械商社や新たな商社との連携により海外市場への展開を図ってまいります。具体的に商社連携による海外顧客からの受注も獲得いたしました。サノヤス精密工業㈱においては、積極的な営業活動を推進し、新たな顧客の開拓を進めています。難切削材の切削加工や顧客の新製品用の部品製作に柔軟に対応することにより顧客の間口拡大と事業成長につなげてまいります。サノヤス・エンテック㈱においては、営業人員の増強を図り、リニューアル案件の積極的な獲得を進めています。今後も活動を継続し、リニューアル部隊の設置に向けて活動量を増加させてまいります。
また、新たな事業領域の獲得ということでは、2025年4月30日に公表のとおり、2025年6月2日付で㈱小寺電子製作所をM&Aにより子会社化いたしました。㈱小寺電子製作所は1973年(昭和48年)の創業以来、全自動電線切断皮剝装置・全自動圧着機等のワイヤーハーネス加工機のメーカーとして、国内で高いシェアを誇っております。主力商品である全自動電線切断皮剥装置の「キャスティング」は国内でトップシェアを誇っており、ものづくり企業として技術に立脚した事業を行っており、当社グループの理念とも合致する企業であると評価しています。サノヤステクノサポート㈱との新製品の共同開発や海外展開強化に向けてグループ間での販路の共有化等、当社グループとのシナジー効果も見込まれることから今後の当社グループの事業成長につなげてまいります。
(2)-4.カーボンニュートラル実現に向けた取組み推進
詳細は、2 「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(2)-5.人的資本経営の充実
詳細は、2 「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(2)-6.収益力アップに向けた事業基盤の強化
営業力の強化については、みづほ工業㈱において自社技術セミナーを実施いたしました。従来展示会等での技術説明は行っていましたが、当社拠点へ顧客を招待し技術内容・製品説明・意見交換を行う場を設定し、拡販につなげる活動を進めています。また、全社でDXの推進を進めました。顧客情報の管理、企業情報データベースの活用など営業向けのITツールの導入を図り、営業活動の効率化が進みました。さらに、各事業会社の事業形態に応じたシステム導入の検討を進めており、事業活動の効率化を図っていきます。
収益力アップに結び付く活動としては、サノヤステクノサポート㈱が中心となり、事業会社各社と原価低減活動を進めました。部品の共通化、設計の標準化、製造現場における改善活動等、事業会社各社の業態にあった取組みを進めており、着実に収益力の向上が進んでいます。
5.経営指標の進捗
「中期経営計画<’24-‘26>」では、新生サノヤス10周年の2030年度の目標を、売上高500億円、営業利益25億円、営業利益率5.0%、ROE10%以上とし、中期経営計画の最終年度に当たる2026年度計画は売上高300億円、営業利益10億円、営業利益率3.3%、ROE6%以上としております。

これに対し、中期経営計画1年目の2024年度は、建設需要が引き続き堅調に推移していることや、コロナ禍における部品納期の長納期化の影響が緩和したこと等に加え、前述した各種取り組みが奏功した結果、概ね全ての事業会社において売上高、営業利益が計画を上回り、売上高250億円、営業利益10.6億円、営業利益率4.3%、ROE11.7%(当連結会計年度末の自己資本を基に算出)と大幅な過達での着地となりました。計画策定当初は将来への人的資本投資の一環として従業員の賃上げ5%を盛り込み、前年対比で減益計画としておりましたが、労務費のアップ分を通常の事業収益にて吸収するだけでなく、前年対比も上回る営業利益を達成することが出来ました。経営指標の詳細については、4 「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
6.企業価値向上への取り組みの進捗
当社グループは資本コストや株価を意識した経営の実現にも積極的に取り組んでおります。中期経営計画の期間中にPBRを1倍以上にすることを目標とし、資本収益性向上に取組んでおりますが、中期経営計画1年目の結果は、2025年3月31日時点の当社株価180.0円、PBRは0.60倍、2025年3月期の決算を公表した2025年5月12日の翌日時点では当社株価262.0円、PBRは0.86倍となっており、着実に進展をしております。
また、2025年4月1日に公表いたしました通り、当社及び当社の子会社の管理職層従業員が当社株式を所有することにより経営参画意識を高めるとともに、株主の皆様と一層の価値共有を進めることを目的に、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度の導入を決定いたしました。引き続き中期経営計画の諸施策を着実に実行し、ステークホルダーの皆さまに成長性をお示ししていくことでPBR1倍以上を実現したいと考えています。
当社グループでは、持続可能な社会の実現は経営の重要課題であると認識し、当社グループが手掛ける「製造業向け」「建設業向け」「レジャー」の3つの事業分野での社会課題の解決の取り組みを中心に、サステナビリティの実現に向けた取り組みを進めています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社は、サステナビリティに関連する重要なリスク・機会を特定し、適切に監視・管理するために、取締役会の下部組織として、2021年10月から代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しています。同委員会では、サステナビリティ関連リスク・機会に対して、グループ横断的な取組計画を策定し関連部署への展開を図るとともに、各事業会社及び各部門の年度計画の妥当性・有効性を検証、監督し、進捗状況のモニタリング、達成内容の評価を行っています。また、同委員会での議論の内容は都度取締役会に報告され、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行う体制を構築しています。

当社は、当社グループの持続的な成長のためには、サステナビリティ経営と成長戦略の一体化は不可欠であると考えており、「中期経営計画<'24-'26>」においても、サステナビリティを重視した経営を推進することを宣言しています。サステナビリティ課題は多様かつ広範であり、また、当社の事業領域は多岐に亘るため、当社の活動に少しでも関係するサステナビリティ課題をすべて網羅しようとすると膨大になります。よって、限りある経営資源を有効に活用して事業活動の持続可能性を高め、企業価値向上を目指すという観点から、2022年1月に次の7つの重要課題(マテリアリティ)を取締役会で決議、特定しました。
当社の企業価値の源泉である人財と技術を磨き、グループ全体の強みを活かしながら、社会動向や技術革新など外部状況の変化に合わせて柔軟に対応し、ソリューション提供を通じて社会全体のCO2削減に貢献するとともに、太陽光発電と省エネ活動の両輪で2050年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みを進めます。
①マテリアリティの特定プロセス
7つのマテリアリティの特定にあたっては、サステナビリティ推進委員会において、「環境や社会の重要な課題」と「当社の成長戦略上の重要な課題」の2つの複合的な視点から19の候補を選出し、社内外の意見を聴取したうえで優先順位付けを行い、取締役会にて決議しました。今後もステークホルダーからの意見に幅広く耳を傾け、継続的なレビューを行います。
②管理プロセス
グループ横断的なサステナビリティ関連リスク・機会については、マテリアリティに基づき、サステナビリティ推進委員会において議論のうえ、取組計画を策定しています。また、各事業分野におけるサステナビリティ関連リスク・機会については、各事業会社及び各部門がこれを評価し、年度計画を策定しています。サステナビリティ推進委員会は、グループ横断的な取組計画並びに各事業会社及び各部門の年度計画に基づく取組内容や進捗状況を確認し、その議事内容を取締役会へ報告しています。
③全社リスク管理への仕組みの統合状況
サステナビリティ関連リスク・機会については、リスクの低減や回避だけではなく、企業目的の達成、価値創造への貢献をより意識した管理が必要であると考え、サステナビリティ委員会及びグループ経営会議での審議・議論を経て、取締役会へ付議・報告を行い、経営戦略や業績評価に反映させる体制としています。
①CO2の排出削減
当社は、購入電力の使用によるCO2の排出量について、2030年に25%削減(下表に示す2021年実績対比)、2050年に実質ゼロとすることを定量目標と定め、事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減に向けた取り組みを進めています。

(注) 1 2021年度は同年の1月から12月まで、2022年度以降はその年の4月から翌年3月までを集計しています。
(注) 2 2021年度の数値には、サノヤス・エンジニアリング㈱の大阪テクノセンター、松栄電気システムコントロール㈱の新庄工場及び南陽工場の数値は算入されていません。
(注)3 CO₂フリー電力の消費は、使用電力量から控除しています。
(5) 人的資本
当社グループは、1.経営方針に記載した経営理念、グループビジョン、行動原則に則り、事業戦略を共有しグループ一体となった経営を実施しています。人財育成をはじめとする人的資本についての活動においても、グループ全体での取り組みに加えて、各社がそれぞれの特性に応じた取り組みを策定、実施しています。
①人財育成
(1)従業員教育
当社グループでは従業員教育・研修に注力しており、従業員の計画的人財育成を進めています。当社グループの採用は「定期入社」「キャリア採用」「シニアキャリア採用」の3方式となっており、定期採用者については「入社時基礎研修、半年後のフォローアップ研修、3年目研修、7年目研修」と年次教育を行い、初年度および2年目には、先輩従業員が公私両面から相談にマンツーマンで対応する「サノヤスファミリー制度(初年度:ブラザー制度、2年目:ファーザー制度)」で採用者の定着に努めています。
キャリア採用者については入社時に「新メンバー導入研修」を実施しています。サノヤスグループに加入したことに対する感謝を伝えるとともに、110年を超えるグループの歴史や概要、カルチャーや理念・大事にしている考え方などを共通認識とするなどの機会を提供し、更なるキャリア育成に向けてのバックアップを行っています。
50歳代後半以降の年齢での採用となるシニア採用も積極的に行っており、これまでの経験・実績を社内に活かしてもらうよう、働きやすい環境整備を行っています。
また、当社グループ全体では下表に示す通り、「各種階層別研修」「ものづくり塾」「会長塾」「社長ミーティング」等の各種研修・塾活動・ミーティングを継続的に実施しており、若手からベテランまで幅広い層に対して人財力強化を行っています。

(2)技術人財育成
技術人財育成のため、サノヤステクノサポート㈱内に「サノヤス技術人財開発センター」を設立し、技術系従業員の人財育成を通じて、グループ全体のものづくり力の底上げを図っています。同時に、各事業会社から参加者を募り、ものづくりに必要な基礎的知識や思考法を学ぶ「ものづくり塾」「技術人財階層別研修」を開催しています。
製造系・技術系従業員の育成・強化を積極的に行うことで、当社グループの製造力強化を図ります。

(3)イノベーション推進
新規事業創出に向けて社内に設置したイノベーション推進委員会では、アイデアの創出・具現化の検討推進に加えて、グループ傘下の各事業会社から選定されたメンバーが議論や検証を進める中でイノベーションマインドを醸成できるように努めています。事業会社を超えたメンバーが交流することで当社グループ全体に対する理解が深まるとともに、一体感を高めるよう活動を進めています。
(4)資格取得奨励
当社グループでは、業務に必要または有益な公的資格を積極的に取得することを奨励し、従業員の業務遂行能力の向上と自己啓発を促進するとともに、会社の技術および技能の水準向上を図るため、「資格取得奨励制度」を導入しています。資格の種類は150種類におよび、従業員のスキルアップとモラルアップに寄与しています。
②人財活用
(1)当社グループ全社へ65歳定年制度の導入
2025年4月の高年齢者雇用安定法の改正により、65歳までの雇用機会の確保が義務化されました。当社を含め当社グループ内7社では2019年4月に「65歳定年制度」を導入していましたが、2025年4月より海外子会社を除く当社グループ全社について、定年年齢を65歳としました。
現在の日本は超高齢社会(65歳以上の高齢者が全人口の21%を超えた社会)となっており、2025年度中に30%を超える見込みです。これにより労働力人口が減少し、人手不足や人財不足が予想されています。70歳現役社会という社会のニーズを踏まえ、企業の向かうべき方向性と「まず人財ありき」という当社の考え方を明らかにし、「65歳定年、70歳まで雇用延長」という制度としています。
当社グループの定年延長の特徴は、①昇給カーブを抑えることはせず、65歳到達まで昇給が続く、②65歳まで役職定年は行わない、③退職金カーブも65歳到達まで上昇する、となります。従業員のモチベーション維持・向上を第一に考え、ベテラン勢の実務面での能力発揮および後継者育成に対する更なる活躍を期待し、より一層活躍できる環境を構築しています。
(2)70歳を超えた再雇用制度の検討
現在、最長70歳までとなっている再雇用制度を変更し、更なる雇用延長を目指します。これまで会社に貢献してきたベテラン人財に対し、本人の体調や必要業務量に応じて労働時間・労働日数の短縮等フレキシブルな対応を行いながら、雇用延長を行います。当社グループ全体で、ベテラン層の活性化と次世代の人財育成を同時に推進していきます。
(3)人財採用
当社グループを取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、イノベーションの創出や多様なニーズへのフレキシブルな対応など、活力と多様性に富む優秀な人財の採用が必須です。そのため、当社グループでは新卒採用のみならず、高い専門性や知見を有するプロフェッショナル人財、元職での技術・知見を当社にて活用頂けるシニア人財のキャリア採用を積極的に行っています。2021年度から2024年度において、新卒採用者84名、キャリア採用者185名が新たにグループに加わりました。
(4)従業員紹介制度(リファラル採用)の実施
当社グループが推し進める「人財重視」の考え方から「新卒、キャリア採用」における新たな採用チャンネルとして、従業員からの紹介を採用に繋げていく取組みである「従業員紹介制度(リファラル採用)」を開始しました。従業員ひとり一人がリクルーターとなることで、当社グループの企業文化を正確に伝えることができ、求める人財像が求職者に正確に伝わることで、これまで以上に当社グループにマッチした人財に出会えることを期待するものです。
(5)サノヤス・ファミリープログラムの展開
当社ではこれまで定期採用者に対して「サノヤス・ファミリープログラム」というメンター制度を実施してきました。これは入社1年目および2年目の従業員に、年齢の近い先輩従業員がマンツーマンで指導にあたり、公私ともに相談を受け、かつ指導にあたるものです。この制度をキャリア採用者にも新たに展開し、先輩従業員が相談・指導にあたることとしました。キャリア採用者の職場理解の助けになることを期待しています。
③女性活躍推進
(1)女性従業員比率の向上
我が国では職業生活を営む女性が増加し、その個性と能力を十分に発揮して活躍することが、これまで以上に重要になっています。当社グループでは、女性従業員の積極的な採用、雇用する女性従業員の会社生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に積極的に取り組んでいます。今後も、更なる女性従業員比率の向上を図っていきます。
(2)多様な働き方に資する取り組み
当社グループでは、育児介護を行う従業員向けの在宅勤務制度、小学校3年生修了までの育児短時間勤務、年次有給休暇の時間取得など、家庭と会社業務との両立を行う従業員の多様な働き方に資する取り組みを行っています。
(3)女性役員、管理職の登用
当社グループの松栄電機㈱および松栄電気システムコントロール㈱において、製造部門を担当する女性管理職を昇進の上、取締役に任命しました。社外取締役を含め、当社グループの女性取締役は3名となり、全取締役の6%となります。女性管理職についても年々増加しており、今後も役員・管理職への積極的な女性登用に取り組んでいきます。
(4)新卒採用における女性比率増加
当社グループの2025年度入社の定期採用者の内、女性採用者の割合は32%となり、昨年度に引き続き定期採用者に占める女性採用者比率が30%以上となりました。多様な人財活用の観点から、キャリア採用者を含めて今後も女性人財の積極的な採用活動を展開していきます。
④ワークライフバランスの向上
(1)有給休暇の取得推進
当社グループは、労働人口が減少する中でライフサイクルや生活環境を問わず、当社グループ全体として多様な働き方や勤務体系が可能な仕組みを構築するとともに、従業員が活き活きと活躍できる組織作りを目指しています。所定休日のみならず有給休暇をしっかり取得し、メリハリの利いた勤務を行うことで更なる生産性の向上に寄与することができると考え、当社グループとして有給休暇の取得促進に努めています。年によって多少の増減はありますが、付与日数の70%以上の取得実績を毎年継続しています。
(2)男性育児休暇取得
当社グループにおいては、配偶者の出産に伴う育児休暇取得を積極的に促進しています。配偶者に出産が生じる従業員の数が少ないことから、年度によって取得率は変動してしまいますが、従業員の育児に対する参画意識は旺盛であり、出産への立ち合いや入退院時の付き添いに関する有給休暇取得も、毎年多数の実績があります。 育児に対する男性従業員の理解および関心の高さが伺え、会社としても更なる意識の醸成に努めていきます。
⑤安全・健康への取り組み
(1)労働災害の撲滅
当社グループは「安全と健康は従業員の幸せの原点であり、企業経営の基盤」という考えから、労働災害の撲滅に取り組んでいます。従業員が安心して働くことのできる職場づくりのため、当社の安全衛生統括室と各事業会社の安全部門が一体となり、巡回・研修等を行いながら、当社グループ全体の安全レベル向上に努めています。
「労働災害被災者数を100万延べ実労働時間あたりで表した労働災害の頻度を表す指標:休業度数率」についても例年低い数値となっていますが、昨年度においては複数の休業災害が発生したことにより、数値が悪化してしまいました。
今年度は昨年度の反省を踏まえて、更なる安全対策の徹底を行い、労働災害の削減・撲滅に努めていきます。
(2)健康経営優良法人
当社グループは健康がすべての基本であることを認識し、健康増進推進体制を整え、従業員の心と体の維持増進を推奨しています。このような取り組みを積極的に推進した結果、経済産業省より優良な健康経営を実践する企業として「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)」の認定を、国内のグループ全社が取得しました。
従業員一人ひとりが心身ともに健康でその魅力を最大限に発揮するため、今後も健康経営を推進し、快適に働ける環境や仕組みの整備等、従業員の健康に配慮した取り組みを進めていきます。
(3)従業員の健康増進
当社グループでは、毎年の健康診断の結果、生活習慣病発症のリスクが高い従業員を対象に「特定保健指導」を実施していますが、国の定める目標値55%に対し86.3%の指導利用と高い数値となりました。この数値は全国的にトップクラスの数値となっております。
また、健康増進施策として「健康増進セミナー」「ウォーキングイベント」を実施し、従業員の体力増進と疾病予防に努めています。

(4)従業員エンゲージメントの向上
従業員が能力を十分に発揮するためには、やりがいや働きがいを感じ、主体的に業務に取り組むことができる環境の整備が重要です。当社グループでは、組織力の維持・向上を目指し第三者調査会社にて組織状態を可視化できるエンゲージメント調査を実施しており、従業員のエンゲージメントレベルを定期的に把握しています。
エンゲージメント調査におけるスコアは「50」が全参加企業・組織の平均値といいますが、当社グループでは年々改善をしております。エンゲージメントレベルが高まるような施策を進め、会社と従業員が一緒になって「働きがい」を感じ、成長できる組織風土づくりを目指し、スコアの改善も図っていきます。
⑥福利厚生の充実
(1)サノヤスフェスティバル
当社グループではこれまで福利厚生活動の一環として、従業員を集めてのコミュニケーション活動(バスツアー、パーティー、バーベキュー、観劇、等)を実施してきました。この中で、各事業会社の個別の活動と別に、グループ全体の活動として所属全従業員を対象とした「サノヤスフェスティバル」を開催しています。「みんなが集まってワイワイとコミュニケーションを深めることの出来るイベントに!」という思いから、フェスティバルと命名しています。事業会社の拠点が集中している東京、大阪では、事業会社の枠を超えて従業員が一堂に会する、大パーティーを実施しています。

※(左)関西地区でのチャーター船クルーズパーティーの様子
※(右)関東地区でのパーティーの様子
(2)労働時間の削減
当社グループでは働き方改革の一環として、2023年から3年間をかけて労働時間を40時間削減し、一人当たり年間労働時間を1,920時間としました(一部会社を除く)。これは、IT・DX等による業務効率化及び働き方を見直すことによる生産性向上により、業務量を落とすことなく一層の業績向上を企図してのものです。今後、人事制度の見直しや人事システムの更新等により、更なる生産性向上を図っていきます。
(3)株式報酬制度(従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度)の導入
従来、当社グループでは従業員の福利厚生施策の一環として、当社株式を購入することで無理なく資産形成が行える「自社株投資会」への加入を従業員に推奨してきました。本制度では拠出金に対するインセンティブとして10%の奨励金が付与されており、従業員が自社株を保有しやすい制度としております。
これに加えて、 1.5.6の「企業価値向上への取り組みの進捗」で記載のとおり、当社グループでは、管理職を対象とした従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度の導入を決定いたしました。これは株式の取得機会を管理職にも提供することで財産形成の一助とすることに加え、自社株式を所有することにより経営参画意識を高めることを目的としています。この制度導入により、管理職が経営陣と一体となって更なる業績向上を目指していきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経済状況、事業環境について
当社グループの事業は、主として国内景気の動向に大きく左右されます。最近では新型コロナウイルスの感染拡大による国内外の経済への影響を受け、業績の後退を余儀なくされました。足許ではその影響はほぼなくなったことから業績も回復しましたが、同様のパンデミックが生じた場合には、大きな影響を受ける可能性があります。
具体的には、建設工事用エレベーターや電気制御設備、空調・給排水設備工事は高層ビル・マンションや工事設備の建設需要に、各種産業機械部品の製造、乳化・攪拌装置の製造、大型食品タンク等各種タンクの製造、農機及び特殊自動車用部品の製造、ショットブラストマシンの製造は国内製造業の需要動向に影響を受けます。遊園地遊戯機械設備の製造や遊園地施設の運営管理の受託事業は、国内及び海外のレジャー施設建設需要と、国内及び海外の消費者のレジャー需要(天候要因を含む)に影響を受けます。
また、乳化・攪拌装置を中心に海外への輸出に注力しており、現地での需要動向や法規制等の変更による影響を受ける可能性があります。
(2) 外国為替相場の変動について
レジャー事業を中心に輸出入があり、外国為替相場の変動により当該事業の業績が影響を受ける可能性があります。
(3) 金利の変動について
日本銀行のマイナス金利解除以降、金利は上昇局面に入っており、今後も中長期的には金利が上昇していくことが見込まれますが、当社グループの有利子負債の支払利息が増加し金融収支が悪化する可能性があります。
(4) 投資有価証券について
当社グループの保有する投資有価証券については、大半が上場株式であるため、今後、株式相場が大幅に変動した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、今後の同社株式の保有方針については、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況 」をご参照ください。
(5) 原材料、資材、エネルギー価格について
ロシアとウクライナの紛争や中東情勢等、地政学リスクが高まっています。その影響による鉄や銅をはじめとする非鉄金属、石油石炭等の原材料の値上がりによって当社グループの調達資材や電力等エネルギー価格が上昇し、受注生産を中心とする当社グループの事業特性からコストアップ要因として働き業績に影響を与える可能性があります。
(6) 製品の保証について
当社グループでは、品質管理基準に従って製品の製造並びに据付工事及びメンテナンス等を行っていますが、当社グループ負担の保証工事や製造物賠償責任等に伴うコストの発生から、保険等でカバーすることができず、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 不採算工事の発生に関するリスク
当社グループが施工する工事において、当該工事の施工段階で当初の想定外の追加工事による原価増等により不採算工事が発生した場合、工事損失引当金を計上することとなり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(8) 減損会計の適用によるリスク
当社グループでは、製造設備をはじめとした事業の用に供する各種資産を保有しています。それらの時価が著しく下落した場合、又は事業資産の収益性が悪化し回復の可能性が見込めない場合には、減損会計の適用によりそれらの固定資産の減損損失を計上することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、買収に伴ってのれんを計上しており、当該事業の収益性が悪化し回復の可能性が見込めない場合には、減損会計の適用によりのれんの減損損失を計上することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 法的規制、会計基準について
当社グループは、国内外での各種法令、許認可や規制の順守のもとに事業を遂行し、会計基準に則り会計処理を行っていますが、法令の改廃や法的規制が設けられた場合や、税効果会計や減損会計を適用しているため、将来の予想数値の変更があった場合、並びに会計基準が変更される場合等には当社グループの貸借対照表、損益計算書に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 環境保全について
社会の要請である環境保全については、グループ全体で真摯に取り組んでいますが、不測の事態等によりコストが発生し業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 災害及び事故について
当社グループは火災、地震、台風等の各種災害に対し、損害の発生及び拡大を最小限に止めるべくシステム機器の外部センター等への分散配置等の処置を講じていますが、それらの災害により当社グループの活動が影響を受ける可能性があります。また、工場及び工事現場、遊園地等における安全管理には万全を期していますが、万一事故が起きた場合には損害額、賠償額が保険等で十分カバーされず当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 訴訟等について
当社グループの事業に関連して、当社グループが当事者となることのある訴訟その他法的手続きに係る決定等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社組織の総務部に法務担当者を配置し顧問弁護士と相談しながら訴訟の発生リスクを極小化しています。
(13) 情報セキュリティについて
当社グループが保有する情報資産の保護については、管理体制の整備や教育、情報セキュリティシステムの構築等によって、グループ全体で取り組んでいます。しかし、コンピュータウイルスへの感染や不正アクセス、その他不測の事態によって、これらの情報資産が消失、もしくは漏洩した場合、当社グループの業績や信用・評判等に影響を及ぼす可能性があります。セキュリティ確保の観点から、システム企画部を中心にITシステムを含む情報管理の体制を整備・更新し、従業員への教育等を行い、情報漏えい防止に努めています。
(14) 人財の確保・育成について
当社グループは、造船事業が不況の時期に定期採用を絞ったことにより年齢構成に偏りがあります。また、成長戦略を推進するにあたり即戦力の人財確保が課題です。ここ10年は、好不況にかかわらず一定数の新卒採用を行っており、即戦力の中途採用にも注力しています。また、2019年4月より60歳定年を65歳に延長する「65歳定年制度」を順次導入、2025年4月1日にサノヤス精密工業㈱で導入が完了し、グループ会社全社で導入となりました。ベテラン人財の活用とベテランから中堅・若手への技能伝承に努めていますが、労働市場の動向によっては、当社グループが計画する人財の確保ができず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 各種ハラスメントについて
当社グループは人的資本経営を重要な経営課題と捉え、働きやすく、従業員一人ひとりが成長を実感できる活力のある職場づくりを目指しています。セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどの各種ハラスメントは当社が目指す人的資本経営の大きな阻害要因となりえます。当社グループでは、2017年4月1日に「ハラスメント防止規程」を制定し、ハラスメントに関する相談に対応するため、グループの統括窓口を設け、ハラスメントに対する早期対応を行うことで、快適な職場環境の維持に努めています。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(単位:百万円)
売上高は、建設業向けセグメントにおいて機械式駐車装置の製造及びメンテナンスが好調に推移した他、空調・給排水・衛生設備の設計及び施工、大規模施設向け動力制御盤・分電盤・配電盤等の製造が好調、またレジャーセグメントにおいて大型の遊園地遊戯機械設備が完工したことから増収となりました。
売上高の増収に加え、原価低減活動や原材料価格上昇分の価格転嫁が進んだことから、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに、大幅な増益を達成しました。
なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、2025年3月期及び今後の業績動向を勘案し、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討した結果、回収可能性のある部分について繰延税金資産が増加し、法人税等調整額として△177百万円(△は利益)を計上しています。
(単位:百万円)
受注高・受注残高は、製造業向けセグメントにおいて乳化・攪拌装置の製造が大幅に伸長した一方、レジャーセグメントにおいて前期に大口案件を受注した反動により前期比では減少した他、建設業向けセグメントでも動力制御盤・分電盤・配電盤等の製造を中心に減少しましたが、全体では高水準の受注残高を維持しています。
セグメント区分
(製造業向けセグメント)
(単位:百万円)
売上高は、ショットブラストマシンの製造及びメンテナンスや各種産業機械部品の製造が好調に推移しましたが、乳化・攪拌装置の製造が前期好調であった反動で前期比で大幅な減収となり、売上高の減少に伴い営業利益も減益となりました。
受注高は、乳化・攪拌装置の製造が回復した他、純水設備・排水処理設備及び膜分離装置の設計及び施工で大口案件を受注したことで伸長し、受注残高も積み上がっています。
(建設業向けセグメント)
(単位:百万円)
売上高は、機械式駐車装置の製造でリニューアル工事の進捗が想定を上回ったことに加えメンテナンス・修繕が堅調に推移、空調・給排水・衛生設備の設計及び施工は人員を強化した効果により増収、大規模施設向け動力制御盤・分電盤・配電盤等の製造・販売も好調であったことから、全体としても大幅な増収となりました。
売上高の増加に伴う増益に加え、原価低減活動と原材料価格上昇分の価格転嫁により、収益率が改善し、営業利益も大幅な増益となりました。
受注高は、大規模施設向け動力制御盤・分電盤・配電盤等の製造や空調・給排水・衛生設備の設計及び施工が低調であった結果、受注残高も減少しました。
(レジャーセグメント)
(単位:百万円)
売上高は、大型の遊園地遊戯機械設備が完工したことから遊園地遊戯機械設備の製造及びメンテナンスは増収になったものの、営業利益は収益性の高い遊園地施設の運営管理において休日の天候不順等により来場者数が減少した結果、微減益となりました。
受注高・受注残高は、前期に大口の遊園地遊戯機械設備を受注した反動で前期比では減少しています。
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べて360百万円増加し、12,806百万円となりました。これは主に、電子記録債権が636百万円、仕掛品が213百万円、原材料及び貯蔵品が139百万円、受取手形が121百万円それぞれ減少したものの、契約資産が677百万円、その他流動資産が403百万円、現金及び預金が389百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末に比べて65百万円増加し、14,869百万円となりました。これは主に、有形固定資産が83百万円、無形固定資産が48百万円それぞれ減少したものの、繰延税金資産が209百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べて1,604百万円減少し、10,420百万円となりました。これは主に、契約負債が319百万円、1年内返済予定の長期借入金が132百万円それぞれ増加したものの、短期借入金が1,200百万円、電子記録債務が712百万円、未払法人税等が114百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末に比べて997百万円増加し、7,083百万円となりました。これは主に、リース債務が177百万円減少したものの、長期借入金が1,280百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて1,033百万円増加し、10,171百万円となりました。これは主に、利益剰余金が1,018百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ389百万円増加し、1,956百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度末に比べ110百万円収入が減少し、1,500百万円の資金の増加となりました。主な収入は、税金等調整前当期純利益1,064百万円、減価償却費794百万円、契約負債の増加372百万円、売上債権の減少91百万円であり、一方、主な支出は、仕入債務の減少749百万円、法人税等の支払額311百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度末に比べ13百万円支出が増加し、817百万円の資金の減少となりました。主な支出は、有形固定資産の取得による支出569百万円で無形固定資産の取得による支出206百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度末に比べ246百万円支出が減少し、337百万円の資金の減少となりました。主な収入は長期借入れによる収入3,200百万円であり、一方、主な支出は、長期借入金の返済による支出1,786百万円、短期借入金の純増減額1,200百万円、リース債務の返済による支出231百万円、配当金の支払額168百万円、自己株式の取得による支出149百万円であります。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去していません。
2 金額は期間中に発生した製造原価で示しています。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) レジャー事業の遊園地運営は受注高及び受注残高に含めていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は前期比1,653百万円(7.1%)増加の25,006百万円となり、営業利益は前期比555百万円(109.0%)増加の1,065百万円、経常利益は前期比437百万円(68.8%)増加の1,073百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比723百万円(157.5%)増加の1,182百万円となりました。
国内景気が堅調に推移していることに加え、新型コロナウイルス感染症の影響による部品・部材供給の長期化はほぼ収束、原材料価格の上昇も緩和傾向にあり、当社業績に与えるネガティブな要因は減少いたしました。部品・部材の供給が徐々に正常化していることから、生産性も向上し、好調な受注環境も背景に前期比大幅な増収増益の好調な決算となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度末に比べ110百万円減少し、1,500百万円の収入となりました。主な収入は、税金等調整前当期純利益1,064百万円、減価償却費794百万円でした。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度末に比べ13百万円増加し、817百万円の支出となりました。有形固定資産の取得による支出569百万円で無形固定資産の取得による支出206百万円であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度末に比べ246百万円減少し、337百万円の支出となりました。長期借入金の返済による支出1,786百万円が主要因です。
この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、1,956百万円と前連結会計年度末に比べ389百万円増加しました。一方、当連結会計年度末の有利子負債残高は8,095百万円となり、前連結会計年度末に比べ4百万円減少しました。キャッシュ・マネジメント・サービスの導入によりグループの資金効率を改善し、借入金の返済やリース債務の支払いを進めた結果です。
当社グループは、2024年3月29日、2024年度から2026年度の3年間を計画期間とする「中期経営計画<'24-'26>」を公表いたしました。その初年度にあたる当連結会計年度は売上高25,006百万円、営業利益1,065百万円と中期経営計画初年度の業績計画を大きく上回る結果となりました。
2025年度については、特にトランプ関税による世界経済への影響が不透明な中ではありますが、当社といたしましては中期経営計画の着実な実行を通して、企業価値の向上に努めてまいります。
また、中期経営計画では資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応として、資本収益性の向上に取り組んでおり、株主資本コストを上回るROEを達成するとともに、中期経営計画で掲げた戦略を確実に実行することにより、PBR1倍以上を実現したいと考えております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
(製造業向け)
製造業向けセグメントは、各種産業機械部品の製造及び組立で主力製品の需要が回復したことから前期比で増収となる一方、乳化・攪拌装置の製造が前期好調に推移した反動もあり、国内外ともに前期比減収となったことから全体では減収・減益となりました。
(建設業向け)
建設業向けセグメントにおいては、建設需要が引き続き好調に推移していることを背景に機械式駐車場装置の製造及びメンテナンス、及び空調・給排水・衛生設備の設計及び施工、大規模施設向け動力制御盤・分電盤・配電盤等の製造が前期比で増収となった結果、全体でも大幅な増収・増益となりました。
(レジャー)
遊園地遊戯機械設備の製造及びメンテナンスでは大型案件2件が完工したことから前期比では増収となった一方で、遊園地施設の運営管理の受託は休日の天候不順や猛暑による来場者数の減少により減収となり、全体では増収・減益となりました。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(固定資産の減損処理)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、新中期経営計画の中でグループビジョンとして「社会課題の解決を通して全ての人々の“喜び”と“満足”の実現に貢献します」を挙げています。
これを踏まえて、多様な市場・顧客ニーズに応えるべく、経済性・安全性に優れ、環境にも配慮した新商品・新技術の開発・研究に取り組んでいます。各事業分野における商品力の強化、事業分野の拡大、及びブランドイメージ向上を目指して各種研究開発を積極的に推進します。当連結会計年度におけるグループ全体での研究開発費は