第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  リチウムイオン二次電池の用途は、従来の民生機器に加え電気自動車に広がりつつあり、リチウムイオン二次電池市場はまさに変革期を迎えようとしています。当社はこの変化をチャンスと捉え、特に先進国向けの電気自動車用途に参入して業績の飛躍的な向上を目論み、数年前から本格的に製品開発及び設備投資に取り組んでいます。そして、この取り組みは、当社の市場価値を最大化し、投資家の皆様のご期待に沿えることにつながるものと考えており、今後は当社価値の指標をROIC(投下資本利益率)で示し、当社の付加価値について投資家とのエンゲージメントに活用していくこととします。

  この目標を達成するために当社グループで、顧客に対しての製品の安定供給化、販売量の確保、さらに市場からの高性能・高品質化の要求を受けて、新製品の開発を行っていく必要性があり、引き続き、当社グループでは以下の点を重要課題として取り組んでまいります。
 ① 人材確保及び社員教育
 当社グループは、リチウムイオン二次電池用セパレータ製造技術における幅広い専門知識と経験を有する優秀な技術者を育成することが中長期的な視点に立った当社グループ戦略のために必要不可欠と考えております。そのため、中途採用による即戦力の確保だけでなく、海外を含めた新卒者の採用にも積極的に取り組んでおります。今後は研修制度の確立及びOJTによる教育制度の強化並びにストック・オプション制度等をはじめとするインセンティブ制度の充実による社員のモチベーションの維持・向上に取り組んでまいります。

② 新規顧客の拡大
 当社グループはリチウムイオン二次電池用セパレータを製造し、日本をはじめとしてアジア及び米国を拠点としている顧客を対象として販売活動を行っております。今後は、リチウムイオン二次電池を製造している大手顧客との取引拡大に努め、営業活動を強化してまいります。

③ 資金調達
 当社グループは、今後の製品需要の継続的な拡大を見込んでおり、製造設備投資、研究開発投資及び運転資金の増大に対応した資金調達は重要な課題であると認識しており、今後も一層の財務基盤の充実強化を図ってまいります。
 なお、資金調達の方針としましては、原則として製造設備投資、研究開発投資資金及び運転資金は株式市場及び金融機関からの借入を中心に調達してまいります。

④ 生産体制の強化
 当社グループがリチウムイオン二次電池用セパレータを供給するリチウムイオン二次電池業界は、民生用途の継続的な成長に加え輸送機器用途の本格展開によりリチウムイオン二次電池の需要が増加しており、成長が持続するものと予測されます。
 そのような需要の拡大に対して、従来に比べより自立性の高い経営を実現するため、多様な手段により調達した資金によって、市場の拡大に合わせてタイムリーな設備投資を行い、生産能力の強化を図っていく必要があります。
 具体的には、今後も生産拠点である韓国において、顧客の需要拡大にタイムリーに対応しながら生産能力の拡大を図ってまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① リチウムイオン二次電池用セパレータへの収益の依存について
 当社グループは、リチウムイオン二次電池用セパレータの製造・販売に特化しており、当連結会計年度において、その売上高は当社グループの売上高の全額を占めています。今後につきましてもリチウムイオン二次電池用セパレータの売上が引き続き第一の収益源になると予測しています。
 当社グループが開発、製造、販売しているリチウムイオン二次電池用セパレータは国内外のESS(エナジー・ストレージ・システム)、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車(EV)、ハイブリッドカー(HEV)など多様な分野で使用されているリチウムイオン二次電池に利用されております。そのため、経済状況の悪化等を原因とした民生用ポータブル機器や輸送用機器などの需要が縮小した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合他社について
 当社グループは、リチウムイオン二次電池用セパレータの製造・販売を事業としている企業と競合関係にあります。 この業界は、大手企業が市場シェアの大半を占めているため、当社グループは後発企業として、それらの大手企業と競合することになると認識しております。既存競合各社は、概して当社グループより大きな顧客基盤を持ち、当社グループより豊富な財源、技術的資源及び人的資源を有しています。これらの当社グループに対する優位性により、競合他社が技術革新を進め、高性能な新製品を開発・販売した場合、または当社グループの製品よりも安価な製品を提供し、さらに自社製品をより効率的に販売促進した場合などにおいて、当社グループが十分な競争力を発揮できない事態となれば、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新とライフサイクルの短期化について   
 当社グループは、先端の生産技術を駆使した製品を販売しておりますが、近年、リチウムイオン二次電池産業全体の技術革新が加速化しており、リチウムイオン二次電池部材全体の性能改善が強く求められる傾向があります。当社グループは、今後もリチウムイオン二次電池用セパレータの超薄膜化や耐熱性向上の為の研究開発を強化する方針であります。
 しかしながら、当社グループの予測よりも早く技術革新が起こった場合、新製品の販売開始時期が遅れ、また、既存製品が陳腐化することが想定され、その結果、市場での競争力を失い当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 製品の品質にかかるリスク
 当社グループでは、高品質の製品を安定して供給する努力を継続しておりますが、設備等の不良や顧客要求の厳格化等により計画通りの品質や稼働率を達成できず、結果として販売単価や生産数量が下落する可能性があります。また、当社グループではIATF16949に基づいて厳格な品質管理を実施し、出荷製品につきましては細心の注意を払っております。しかし出荷製品の不具合により、製品回収や損害賠償、取引の停止等が発生する可能性があります。このような事態が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 知的財産権について
 当社グループは、リチウムイオン二次電池用セパレータ製造技術に関する特許を保有しており、今後も更なる研究開発を進め、必要に応じて特許を出願する方針であります。しかしながら、当社グループが現在出願している特許及び将来出願する特許の全てが登録されるとは限らず、当社グループの技術やノウハウを必ずしも適切に保護できるとは限りません。
 また、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないように常に留意し、定期的に外部の弁護士・弁理士等を通じて調査をしておりますが、万一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者より製造の差し止めや損害賠償などを請求される可能性があります。その場合、当社グループの経営陣が多大な時間と労力の投入を強いられ、弁護士費用等の費用が増加し、当社グループの評判が低下することにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。             

 

⑥ 原材料及び燃料の価格変動に関するリスク
 当社グループのリチウムイオン二次電池用セパレータの主材料であるポリオレフィンの価格は安定しておりますが、当社グループの生産活動においては、多くの原材料を使用するため、これらについて供給の逼迫や遅延、価格の高騰等が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 特定仕入先への依存に関するリスク
 当社グループがリチウムイオン二次電池用セパレータの製造において購入する資材等には、仕入先や供給品の代替が困難なものや、少数特定の仕入先からしか調達できないものがあります。当社グループで使用する資材、部品、その他の機械・装置等が、現在十分確保されていると認識しておりますが、今後、特定の仕入先における経営悪化や天災等の事情により、供給の遅延・中断や供給不足が生じる可能性があります。当社では、代替調達先を用意する努力を継続しておりますが、その場合にも安定供給が可能であるという保証はありません。また、資材価格の値上りが生じた場合、資材の調達に多額の費用が必要となる可能性があります。こうした事態が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 顧客の集中に関するリスク
 当社グループの売上高は、一部特定の企業によって占められており、当連結会計年度における売上高の79.02%を上位3社が占めております。今後も売上の多くを限られた数の顧客に依存することになると予測しております。かかる顧客が当社グループからの製品の購入を大幅に減らさないという保証はなく、また当社グループからの製品の購入を中止しないという保証もありません。そのため、かかる顧客による当社グループの製品の購入が減少した場合や、中止された場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ カントリーリスクについて
 当社グループ製品の100%は韓国の子会社によって生産されております。また当社グループの海外売上高は、前連結会計年度において7,331百万円(海外売上高の割合84.0%)、当連結会計年度において11,798百万円(海外売上高の割合89.6%)であります。連結子会社W-SCOPE KOREA CO.,LTD.は、販売先の現地におけるサービスを行うために、現在香港・中国深圳に子会社を設立しております。当社グループは今後も国内、韓国、中国、米国のみならず、その他海外向けの販売を強化する計画であるため、地域展開と共に海外の子会社が増える可能性があります。したがって、顧客及び当社グループ子会社が存在する国または地域の政治的、経済的情勢及び政府当局が課す法的な規制の影響またはテロ、戦争、感染症、自然災害その他の要因による社会的混乱により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社の連結子会社であるW-SCOPE KOREA CO., LTD.は、2007年8月に韓国財政経済部(現、企画財政部)より、リチウムイオン電池用隔離膜製造事業が韓国における租税特例制限法上の高度技術随伴事業に該当し、同法施行令第116条の2の規定による租税減免の基準を満たしたという判断を受けて租税減免決定を受けております。また、2015年以降は韓国政府が指定した、外国人投資地域に入居した場合に申請が可能な団地型の租税減免決定を受けております。これらによりW-SCOPE KOREA CO., LTD.は、生産ライン毎に利益を初めて計上した年から3年間に渡り法人税の100%の減免を受け、その後2年間に渡り法人税の50%の減免を受ける優遇税制の適用を受けています。但し、租税特例制限法の規定によりますと大韓民国国民等が外国法人または外国企業の議決権のある株式または出資持分を直接または間接に10%以上を所有し、その外国法人または外国企業が租税減免を受けられる外国人投資を行う場合、大韓民国国民等のその外国法人または外国企業に対する株式所有比率に対しては、租税減免対象になりません。
 当連結会計年度末現在の韓国の法人税率は、2億ウォン以下分については10%、2億ウォン超過・200億ウォン以下分については20%、200億ウォン超過分については22%が適用されており、当連結会計年度末現在においてはW-SCOPE KOREA CO., LTD.は減免率による減免を享受することになっています。しかし、租税特例制限法上の減免税額の追徴事由が発生した場合、かかる優遇税制の適用期間の満了により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

最近2連結会計年度の販売地域別の売上高の内訳

 

日本

韓国

中国

ハンガリー

欧米

その他

2018年12月期(百万円)

1,400

4,872

2,323

135

8,731

(構成比)(%)

(16.0%)

(55.8%)

(26.6%)

(1.5%)

(100.0%)

2019年12月期(百万円)

650

3,267

3,755

3,611

793

1,088

13,167

(構成比)(%)

(4.9%)

(24.8%)

(28.5%)

(27.4%)

(6.0%)

(8.3%)

(100.0%)

 

 

⑩ 販売先が海外に集中しており、与信管理や取引先管理が十分に行われないリスク
 当社グループはアジア及び欧米等の諸外国において主に事業展開しております。海外の国・地域においては商習慣の違いにより取引先との関係構築においても予想し得ないリスク等、予測不可能な事態が生じる可能性があります。当社グループでは、与信管理規程等各種規程を厳格に運用し、与信審査を十分に行い、特に中国市場におきましては、一部は販売協力会社を通じて販売し、また一部は前受金決済でのビジネスにより、売上債権等の未回収リスクの低減を図っております。しかし、予期しない事態により、取引先が不測の債務不履行等に陥り、当社グループが有する債権の回収が困難となる場合には、当社グループの業績等が悪影響を受ける可能性があります。

 

⑪ 為替変動の影響について
 当社グループ製品は、連結子会社W-SCOPE KOREA CO.,LTD.及びW-SCOPE CHUNGJU PANT CO.,LTD.で生産され、世界各国で主に米ドル建で販売活動を行っており、為替レートの変動による影響を受けております。また子会社の外貨建ての利益、費用、資産及び負債の評価は為替レートの変動による影響を受けております。
 事業活動において為替変動リスクを完全に排除することは困難でありますので、今後著しい為替変動があった場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 設備投資にかかるリスク
 当社グループは、当連結会計年度において、第10号~15号ライン及び第5号~14号コーティング生産設備への投資を行いました。第16号、17号ラインの投資決定に関しましては、市場動向や投資回収について検討の上、迅速に対応する方針です。しかしながら、市場環境の急速な変化や、設備の立ち上げの遅延等により、投資決定時に比べ投資回収期間が長期化することで当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。同様に、当社グループが予定通りの増産計画が達成できなかった場合には、顧客の供給量に関する要求にこたえることができないなどの理由により、当社グループ製品の購入を減少させる又は中止させることで、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑬ 人材の確保と定着に関するリスク
 当社グループは製品を開発、製造し、製品についての顧客サポート及びマーケティングを行うため、これらの分野における経験を有する専門性の高い研究者及び装置の開発に熟知している技術者を中心に採用しなければなりません。また、韓国においては、専門性を有する人材はソウルへ一極集中傾向があり、経験者の採用に課題があります。
 当社グループにおいても、主要な人材を採用及び確保できない場合、当社グループの事業運営が混乱し、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

 

⑭ 新規事業に関する投資リスク
  当社グループではリチウムイオン電池用のセパレータの開発製造によって培ったメンブレンフィルムの生産技術を他の用途に転用すべく、新規事業として取り組んでいます。現在はメンブレンフィルムを淡水化フィルターなど工業用用途に使用する為のフィルムの開発を行っておりますが、これらが成果をもたらすという保証はなく、研究開発費用の支出の回収が困難となる可能性があります。

 

⑮特定の人物への依存について
 当社グループの取締役はそれぞれ、経営、技術開発、マーケティング、営業戦略、製造戦略等当社グループの業務に関して専門的な知識・技術を有し重要な役割を果たしています。これらの者が当社を退職した場合や、病気等の事情で業務遂行が困難となった場合、後任者の選任に関し深刻な問題に直面する可能性があり、当社グループの事業展開及び経営成績に重要な影響が生じる可能性があります。

 

⑯ 法的規制等に関するリスク
 当社グループが事業を行っている国及び地域では、投資に関する許認可や輸出入規制のほか、商取引、独占禁止、製造物責任、環境、労務、特許、租税、為替等の各種関係法令の適用を受けています。当社グループは、こうした法令及び規制を遵守し公正な企業活動に努めておりますが、万一当社グループに適用される規制に反することにより、当社グループに制裁金が課されたり、一定の事業活動が強制的に停止させられたりする場合や法令・規制違反を理由とする訴訟や法的手続きにおいて、当社グループにとって不利な結果が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑰ 特徴的な組織構成について
 当社グループはグローバルに事業を展開しており、日本本社のほか、韓国、中国に連結子会社を保有しております。その中でも、当社グループの製造拠点を韓国に所在する連結子会社であるW-SCOPE KOREA CO.,LTD. 及びW-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.に集約させるなど、特徴ある組織構成を構築しており、役職員は、日本本社が18名、韓国子会社が1,034名、中国子会社が4名となっております。また当社は製造業として製造現場を最重要視し、日本本社の取締役5名のうち2名を韓国に駐在させております。
 当社グループでは、今後の事業拡大に伴い人員の増強、内部管理体制の一層の充実に努め、複数の国で事業展開を行うにあたってのグループ全体のコミュニケーションの充実を図っていく方針でありますが、必要な人員が確保できない場合や内部管理体制の充実に適切かつ充分な対応ができない場合、国家間の通信手段の途絶等によりグループ全体のコミュニケーション等が迅速に行えないような場合には、当社グループにおけるガバナンスが発揮できなくなるおそれがあり、業務遂行及び事業拡大に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑱ 自然災害、操業上の事故に関するリスク
 当社グループが事業を行っている国及び地域では、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害が発生した場合、当社グループの拠点の設備等に大きな被害を受け、その一部または全部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
 当社グループは、生産設備において生じうる一定の損失を補償するために、当社グループの財産に対する損害及び製 造の中断をカバーするための保険に加入していますが、かかる保険は生じうる全ての損失や費用をカバーできない可能性があります。そのため自然災害、操業上の事故等により当社グループの制御できない事象により大きな損失を被った場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑲ ストック・オプションについて
 当社は、新株予約権方式によるストック・オプション制度を採用しており、当連結会計年度末現在における潜在株式数は1,323,000株で、発行済株式総数36,369,600株に対する割合は、3.6%となります。当社は、当該制度が役員や従業員等の業績向上に対する意欲を持たせることを目的とした有効な制度であると認識しており、今後もストック・オプションの発行を実施する可能性があります。従いまして、当該新株予約権が行使された場合及び新たに発行・行使された場合には当社の株式価値は希薄化することになります。

 

⑳ 継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは当連結会計年度において、ハイエンド車載用電池向けの量産を開始し、同案件の売上が急速に拡大しています。一方で、2017年より計画的に推進してきた同案件の製品開発と量産体制の構築は当連結会計年度において一巡しましたが、それに伴うサンプル制作及び製造ライン承認のためのライン稼働に係るコストが損益を圧迫し、2期連続で営業損失を計上しています。

 また、継続して経常損失を計上したこと等により当社の長期借入金及び連結子会社の転換社債型新株予約権付社債の財務制限条項等に抵触しており、同財務制限条項等が適用された場合、長期借入金等に係る期限の利益を喪失することとなるため、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。

 当社グループはこのような状況を解消すべく、先に締結した顧客との長期供給量の合意に基づくハイエンド車載用電池向け等の出荷拡大や製造ラインの稼働率上昇等によるコスト低減による来期の黒字化に向けて取り組んでおります。また、資金面では、来期以降の事業計画等をもとに各金融機関等に対し説明を行い、その結果、韓国子会社2社(W-SCOPE KOREA CO.,LTD.、W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.)による当社借入金に対する保証差入及び当社借入金の返済条件の見直しと担保設定の条件を満たすことを条件にすべての金融機関等から期限の利益喪失請求権の行使についてウェイブする旨の合意を得ております。金融機関から提示されたウェイブの条件を含め、今後1年に必要となる資金の調達の一部については既に金融機関の合意を得ておりますが、本年3月以降の外部環境の変化に伴い当社の株価が急激に下落し、当初見込んでいた調達額に不足が生じる見込みとなったため、複数の金融機関等との間で追加的な資金調達について具体的な協議を進めています。

 なお、W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.による当社借入金に対する保証差入については同社の社債権者の同意が必要とされており、社債権者の同意を得るべく手続きを進めています。

 これらの状況に鑑み、現時点において、継続企業の前提に関する重要な疑義を解消すべく取り組んでいる当社の対応策は実施途上にあり、今後の事業進捗や追加的な資金調達の状況等によっては、当社の資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。なお、連結財務諸表は継続企業を前提として作成しており、このような継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表に反映しておりません。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度においては、米中貿易摩擦等の影響を受けた世界的な経済の減速局面に終わりが見え始め、2019年後半には製造活動全般が上向きになり始めました。これは政治的な要因で解決の糸口が見え始めたことのみに拠らず、各国市場における在庫調整が進んだことにも影響を受けている模様です。

当社グループの主力事業であるリチウムイオン二次電池セパレータ事業においては、需要セグメントの大きな転換期となりました。従来の主力市場であった民生機器向け需要は低調に推移し市場の拡大が停滞する中、景気の低迷及び価格の値崩れから、多くの電池メーカーにおいて中国製品への転換が進みました。一方で、欧州自動車OEMのEV戦略に裏打ちされたハイエンド車載用電池向けの需要は急増を続けております。

このような市場環境の中、当社では2017年より計画的に推進してきましたハイエンド車載用電池向けの製品開発と量産体制の構築を概ね2019年中頃までに完了し、当第4四半期からはこの分野での製品販売を大きく伸ばすに至りました。その結果として自動車セグメントの売上構成比は2018年通年で約16%であったものが当期通年では約41%にまで拡大し、特に12月には大きく売上が伸びた為、単月黒字に回復しました。これらの要因により当期連結売上高は13,167百万円と、前期比4,436百万円(前期比51%増)の増収となりました。

地域別には車載用電池向け需要が大幅に伸びた韓国顧客向け売上高において、民生需要の減少を車載案件の成長が大きく上回った為9,264百万円(前期比90%増)となりました。一方で中国顧客向け販売は引き続き債権回収を優先しながらの販売になった為、売上を下げ1,739百万円(前期比25%減)となり、日本顧客においてはほぼ前年と同様の1,369百万円(前期比2%減)となりました。

営業利益においては、原価開発費(製造原価に計上)約26億円の負担(ほぼ前年並み)が大きくなっておりますが、売上高の増加に伴い25億円の増益、製造ライン投資を続けていることから減価償却費約15億円の増加、更には生産規模拡大の為に従業員数も1年間で約1.6倍になり人件費が前年同期比約18億円の増加となりました。これらの結果営業損失は前年同期比で若干改善し3,286百万円となりました。

製造の状況に関しましてはW-SCOPE KOREACO.,LTD.(以下WSK)の製造ラインにおいて一部の製造ラインでの新規車載用電池向けの案件の量産を上期に開始し、生産性の改善に注力してまいりましたが期末には一定のレベルまでの改善に達しました。その他の製造ラインの一部では民生案件の受注が低調となった為、若干の生産調整を実施しました。W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.(以下WCP)においては一部の製造ラインにおいてWSKと同様民生案件の受注低調による生産調整はあったものの、下期に据え付けが完了した累計12-13号ラインは短期間の内に車載用セパレータの量産供給を開始するための準備を整え、第4四半期から順次量産を開始し当期の売上高増に大きく貢献しました。また、コーティングラインの増設も順調に進み、車載用コーティング製品の供給能力を大幅に増強しております。

当期の平均為替レートにつきましては、米ドルが108.96円、1,000韓国ウォンが106.98円となりました。

なお、当社グループはリチウムイオン二次電池用セパレータ事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を省略しております。

また、当連結会計年度末における財政状態の概況は次のとおりであります。

(資産)

流動資産につきましては20,535百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,700百万円の増加となりました。これは主として、現金及び預金の増加7,311百万円、受取手形及び売掛金の増加1,576百万円、商品及び製品の増加1,394百万円によるものであります。固定資産につきましては49,591百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,929百万円の増加となりました。これは主として、機械装置及び運搬具の増加18,198百万円、建物及び構築物の増加3,128百万円、建設仮勘定の減少10,300百万円によるものであります。

(負債)

負債につきましては54,882百万円となり、前連結会計年度末に比べ25,230百万円の増加となりました。流動負債につきましては14,997百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,924万円の増加となりました。これは主として、買掛金及び支払手形の増加1,011百万円、1年内返済予定の長期借入金の増加685百万円、短期借入金の増加542百万円によるものであります。固定負債につきましては39,884百万円となり、前連結会計年度末に比べ22,306百万円の増加となりました。これは主として、転換社債型新株予約権付社債の増加13,327百万円、長期借入金の増加5,715百万円、オプション負債の増加2,741百万円によるものであります。

(純資産)

純資産につきましては15,245百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,599百万円の減少となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純損失の計上3,517百万円、為替換算調整勘定の減少1,808百万円、資本金の増加1,402百万円、資本剰余金の増加1,402百万円によるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ7,311百万円(+37.7%)増加し、12,619百万円となりました。主な要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは2,087百万円の支出(前期943百万円の支出)となりました。これは主として、減価償却費の計上3,953百万円、仕入債務の増加1,014百万円があった一方で、税金等調整前当期純損失の計上3,950百万円、たな卸資産の増加1,810百万円、売上債権の増加1,593百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは16,225百万円の支出(前期9,825百万円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出16,190百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは25,833百万円の収入(前期5,644百万円の収入)となりました。これは主として、新株予約権付社債の発行による収入15,988百万円、長期借入れによる収入10,155百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入2,777百万円、短期借入金の純増加額828百万円があった一方で、長期借入金の返済による支出3,817万円によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

事業部門の名称

当連結会計年度

(自  2019年1月1日

至  2019年12月31日)

生産高(百万円)

前年同期比(%)

リチウムイオン二次電池用セパレータ

16,477

164.8

合計

16,477

164.8

 

(注) 1  当社及び連結子会社は、リチウムイオン二次電池用セパレータ事業の単一セグメントであるため、生産実績は、セグメント情報に関連付けた記載を省略しております。

2  金額は、製造原価によっております。

3  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b. 受注実績

当社グループの製品は、販売先からの受注による受注生産ですが、生産から納入までの期間が極めて短いため、現実的には販売先からの月次あるいは四半期の購入計画情報を基に、過去の実績、生産能力を勘案した見込生産的な生産形態を採っており、受注高及び受注残高を算出することが困難でありますので、その記載を省略しております。

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

事業部門の名称

当連結会計年度

(自  2019年1月1日

至  2019年12月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

リチウムイオン二次電池用セパレータ

13,167

150.8

合計

13,167

150.8

 

(注) 1  当社及び連結子会社は、リチウムイオン二次電池用セパレータ事業の単一セグメントであるため、販売実績は、セグメント情報に関連付けた記載を省略しております。

2  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度
(自  2018年1月1日
  至  2018年12月31日)

当連結会計年度
(自  2019年1月1日
  至  2019年12月31日)

販売高(百万円)

  割合(%)

販売高(百万円)

  割合(%)

 Samsung SDIグループ

6,372

48.4

  LG CHEM.グループ

3,973

45.5

2,709

20.6

 東北村田製作所グループ

1,318

15.1

1,323

10.1

  東莞市旭冉電子有限公司

 (Xuran Electronics Co., Ltd.)

976

11.2

 

3  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

4 前連結会計年度のSamsung SDIグループについては、当該割合が100分の10未満であるため記載を省略してお

  ります。

5  当連結会計年度のXuran Electronics Co., Ltd.については、当該割合が100分の10未満であるため記載を

  省略しております。

6  東北村田製作所グループには、Murata Energy Device Wuxi Co., Ltd.及びMurata Energy Device

  Singapore Pte. Ltd.を含んでおります。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度のROICは、親会社株主に帰属する当期純損失が3,517百万円であったために△4.06%となりました。これは昨年に引き続き、先進国向け電気自動車用途への参入に向けた先行投資を行ったためにコストが増加したものであり、2020年連結会計年度はROICをプラスに転換し、2021年連結会計年度では投資家の皆様の期待収益率を上回るROIC(5%以上を想定)を目標として取り組んでまいります。経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり、当社グループが採用している重要な会計処理基準は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているとおりであります。また、連結財務諸表の作成にあたっては、固定資産の評価、繰延税金資産の計上、退職給付債務及び年金資産の認識等の重要な会計方針に関する見積り及び判断を行っております。これらの見積りは、過去の実績等を慎重に検討した上で行い、見積りに対しては継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性によって異なる場合があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績の分析

  (売上高)

当社グループの主力事業であるリチウムイオン二次電池セパレータ事業においては、需要セグメントの大きな転換期となりました。従来の主力市場であった民生機器向け需要は低調に推移し市場の拡大が停滞する中、景気の低迷及び価格の値崩れから、多くの電池メーカーにおいて中国製品への転換が進みました。一方で、欧州自動車OEMのEV戦略に裏打ちされたハイエンド車載用電池向けの需要は急増を続けております。

このような市場環境の中、当社では2017年より計画的に推進してきましたハイエンド車載用電池向けの製品開発と量産体制の構築を概ね2019年中頃までに完了し、当第4四半期からはこの分野での製品販売を大きく伸ばすに至りました。その結果として自動車セグメントの売上構成比は2018年通年で約16%であったものが当期通年では約41%にまで拡大し、特に12月には大きく売上が伸びた為、単月黒字に回復しました。これらの要因により当期連結売上高は13,167百万円と、前期比4,436百万円(前期比51%増)の増収となりました。

地域別には車載用電池向け需要が大幅に伸びた韓国顧客向け売上高において、民生需要の減少を車載案件の成長が大きく上回った為9,264百万円(前期比90%増)となりました。一方で中国顧客向け販売は引き続き債権回収を優先しながらの販売になった為、売上を下げ1,739百万円(前期比25%減)となり、日本顧客においてはほぼ前年と同様の1,369百万円(前期比2%減)となりました。

 

 (売上総利益)

当社グループの当連結会計年度の売上総損失は、1,752百万円(前期は1,051百万円の売上総損失)となりました。
 主な要因は、労務費や減価償却費及び研究開発費等の固定費増加によるものであります。

 

 (販売費及び一般管理費並びに営業損益)

当社グループの当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,534百万円となりました。販売費及び一般管理費のうち主要なものは役員報酬160百万円、給与手当216百万円、見本費160百万円、支払手数料364百万円であります。
 この結果、当連結会計年度の営業損失は3,286百万円(前期は3,348百万円の営業損失)となりました。

 

 (営業外損益及び経常損益)

当社グループの当連結会計年度の営業外収益は、主に助成金収入32百万円、オプション評価益43百万円により122百万円となり、営業外費用は、主に支払利息538百万円、為替差損230百万円により785百万円となりました。
 この結果、当連結会計年度の経常損失は3,950百万円(前期は経常損失3,305百万円)となりました。

 

 (特別損益及び親会社株主に帰属する当期純損益) 

当社グループの当連結会計年度の特別利益及び特別損失の発生はありませんでした。この結果、税金等調整前当期純損失は3,950百万円(前期は税金等調整前当期純損失3,294百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は3,517百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失2,861百万円)となりました。 

 

b. 資本の財源及び資金の流動性の分析

当社の資金需要のうち主なものは、設備投資資金のほか、材料等の仕入や研究開発費用等であります。設備投資資金につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入金を基本としており、運転資金につきましては、金融機関からの短期借入金を基本としております。なお、当連結会計年度における借入金残高は34,243百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び預金の残高は12,619百万円となっております。

 

c. 継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは当連結会計年度において、ハイエンド車載用電池向けの量産を開始し、同案件の売上が急速に拡大しています。一方で、2017年より計画的に推進してきた同案件の製品開発と量産体制の構築は当連結会計年度において一巡しましたが、それに伴うサンプル制作及び製造ライン承認のためのライン稼働に係るコストが損益を圧迫し、2期連続で営業損失を計上しています。
 また、継続して経常損失を計上したこと等により当社の長期借入金及び連結子会社の転換社債型新株予約権付社債の財務制限条項等に抵触しており、同財務制限条項等が適用された場合、長期借入金等に係る期限の利益を喪失することとなるため、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる状況が存在しています。

当社グループはこのような状況を解消すべく、先に締結した顧客との長期供給量の合意に基づくハイエンド車載用電池向け等の出荷拡大や製造ラインの稼働率上昇等によるコスト低減による来期の黒字化に向けて取り組んでおります。また、資金面では、来期以降の事業計画等をもとに各金融機関等に対し説明を行い、その結果、韓国子会社2社(W-SCOPE KOREA CO.,LTD.、W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.)による当社借入金に対する保証差入及び当社借入金の返済条件の見直しと担保設定の条件を満たすことを条件にすべての金融機関等から期限の利益喪失請求権の行使についてウェイブする旨の合意を得ております。金融機関から提示されたウェイブの条件を含め、今後1年に必要となる資金の調達の一部については既に金融機関の合意を得ておりますが、本年3月以降の外部環境の変化に伴い当社の株価が急激に下落し、当初見込んでいた調達額に不足が生じる見込みとなったため、複数の金融機関等との間で追加的な資金調達について具体的な協議を進めています。

なお、W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.による当社借入金に対する保証差入については同社の社債権者の同意が必要とされており、社債権者の同意を得るべく手続きを進めています。

これらの状況に鑑み、現時点において、継続企業の前提に関する重要な疑義を解消すべく取り組んでいる当社の対応策は実施途上にあり、今後の事業進捗や追加的な資金調達の状況等によっては、当社の資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。なお、連結財務諸表は継続企業を前提として作成しており、このような継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表に反映しておりません。

 

d. 経営戦略の現状と見通し

当社グループの主力事業であるリチウムイオン二次電池向けセパレータ事業におきましては2019年までの先行投資期間が概ね完了し、昨年量産販売を開始したハイエンド車載用電池向け案件に関し、顧客からの強い供給量増の要望による急激な販売量の拡大が見込まれる状況となり、今後の当社事業の大きな柱となります。

更に、ハイエンド車載用電池向けの新規案件及び昨年製品発表した高耐熱性セパレータの量産販売を開始する見通しも出来ております。これらを主要案件に向けた安定供給実現の為に昨年まで、設備投資を推進してきた結果として、13本の成膜ラインと14本のコーティングラインの量産体制の整備が完了しており、更に今期においても2本の成膜ラインと4本のコーティングラインの増設を計画しております。費用面では昨年まで負担が大きかった新規車載用案件に係わる製品開発及び、量産立ち上げにかかわる費用(原価開発費)が、すでに量産を開始したことから大幅に低減できる見通しであり、人件費に於いても今期の増員は前年の60%にとどまる計画となっていることから、売上高の増加に見合った安定した費用の増加となる計画です。

これらの要因により2020年12月期の売上高は第1四半期には主要顧客民生用電池工場が多数ある中国の旧正月休みによる稼働日減少と、コロナウイルス感染拡大の市場への影響が不透明なことから、やや売上が弱含みに推移する見通しであるものの通期では自動車需要の販売量の拡大が見込まれるため、売上高20,000百万円(対前期増減率51.9%)、営業利益2,000百万円(前期は営業損失3,286百万円)経常利益800百万円(前期は経常損失3,950百万円)親会社株主に帰属する当期純利益800百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失3,517百万円)となる見通しです。

業績見通しの前提となる通期平均為替レートにつきましては1米ドル108.0円、1米ドル1,120韓国ウォンを想定しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 土地の賃貸借に関する契約

契約社名

W-ABLE CO.,LTD.(現 W-SCOPE KOREA CO.,LTD.)

契約書名

梧倉外国人投資地域入居契約書(賃貸)

契約先

韓国産業団地公団

契約締結日

2005年11月7日

契約期間

2005年11月7日から50年(10年単位再契約)

主な契約内容

①W-ABLE CO.,LTD.(現 W-SCOPE KOREA CO.,LTD.)は、忠清北道清原郡梧倉邑角里
  653-4にある用地面積76,000㎡を賃借する。

②賃借料は2006年12月31日まで㎡当たり112ウォン/月とし、それ以降は産業資
  源部長官が告示する賃貸価格にする。

③外国人投資促進法第13条及び梧倉外国人投資地域管理基本計画による賃借料減
  免事項(注)に該当する場合は、W-ABLE CO.,LTD.(現 W-SCOPE KOREA CO.,LTD.)
  の申請により韓国産業団地公団は賃借料を減免できる。

④賃借料減免の決定以降、W-ABLE CO.,LTD.(現 W-SCOPE KOREA CO.,LTD.)が減免資格を喪失する場合または、減免条件を履行しない場合、韓国産業団地公団は減免を解約するか、既に減免した賃借料を徴収できる。

 

(注)  賃借料減免事項は、契約日2005年11月より3年以内に外国人投資資金が30,000,000ドルを超えた場合、
土地の賃借料が減免されるというものであります。

入居契約申請の際に提出した工場設立事業契約書による外国人投資計画を履行しない場合または入居契約
後に外国人投資家の持分が30%未満に変動する場合等には同契約は解除されることもあります。また、解
除事由によって契約が解除される場合、これに対する損害賠償を請求することができず、復旧費用等に対
して賠償責任があります。

上記の外国人投資契約に従って契約日以降の現在における累積投資額は30,000,000ドルを超過しており、
外国人投資計画書上の条件は満たしている状態であります。

 

 

(2) 土地(第2工場用地)の賃貸借に関する契約

契約社名

W-SCOPE KOREA CO., LTD.

契約書名

梧倉外国人投資地域入居契約書(賃貸)

契約先

韓国産業団地公団

契約締結日

2015年7月1日

契約期間

2015年7月1日から2055年11月6日(第1工場最大賃貸期間)まで
(10年単位再契約)

主な契約内容

① W-SCOPE KOREA CO., LTD.は、忠清北道清原郡梧倉邑角里653-11にある用地
   面積35,172.90㎡を賃借する。

② 年間賃貸料は㎡当り、該当年度の個別公示価(取得価額が個別公示価より高い
   場合には“取得価額”とし個別公示地価が確認されない場合は標準時公示地
   価とする。以下同条項を引用する場合には同一に適用。) の1%を基準とし、
   産業通商支援部から公告する外国人投資地域運営指針(以下“外投指針”)規
   定により産業通商支援部長官が企画財政部長官及び市・都知事と協議し別途
   決定した該当年度の賃貸金額がある場合にはこれに従う。

③“入居企業”が外国人投資地域の運営指針第15条による入居限度以上の外国人
   投資を完了した場合、外国人投資促進法、租税特例制限法、外国人投資地域
  管理基本計画及び地方自治団体別減免条例等の規定による賃貸料を減免でき
   る。

④“韓国産業団地公団”が賃貸料減免決定以降に“入居企業”が虚偽に減免決定
   を受けた場合、又、減免決定後の減免基準に未達の場合、外投指針第17条第
   3項の賃貸料適用対象になった場合等は減免決定日または事由は発生日から遡
   及し減免された賃貸料を回収する。

 

 

(注)賃借料減免事項は、2020年6月30日以内に外国人投資資金が8,498,361ドルを超えた場合、土地の賃借料が
       減免されるというものであります。
       入居契約申請の際に提出した工場設立事業契約書による外国人投資計画を履行しない場合または入居契約後
       に外国人投資家の持分が30%未満に変動する場合等には同契約は解除されることもあります。また、解除事由
       によって契約が解除される場合、これに対する損害賠償を請求することができず、復旧費用等に対して賠償
       責任があります。

上記の外国人投資契約に従って契約日以降の現在における累積投資額は8,498,361ドルを超過しており、外国人
       投資計画書上の条件は満たしている状態であります。

 

 

(3) 土地(第3工場用地)の賃貸借に関する契約

契約社名

W-SCOPE KOREA CO., LTD.

契約書名

梧倉外国人投資地域入居契約書(賃貸)

契約先

韓国産業団地公団

契約締結日

2016年10月21日

契約期間

2016年10月21日から2055年11月6日(第1工場最大賃貸期間)まで
(10年単位再契約)

主な契約内容

① W-SCOPE KOREA CO., LTD.は、忠清北道清原郡梧倉邑角里653-10にある用地
   面積32,205,50㎡を賃借する。

② 年間賃貸料は㎡当り、該当年度の個別公示価(取得価額が個別公示価より高い
   場合には“取得価額”とし個別公示地価が確認されない場合は標準時公示地
   価とする。以下同条項を引用する場合には同一に適用。) の1%を基準とし、
   産業通商支援部から公告する外国人投資地域運営指針(以下“外投指針”)規
   定により産業通商支援部長官が企画財政部長官及び市・都知事と協議し別途
   決定した該当年度の賃貸金額がある場合にはこれに従う。

③“入居企業”が外国人投資地域の運営指針第15条による入居限度以上の外国人
   投資を完了した場合、外国人投資促進法、租税特例制限法、外国人投資地域
  管理基本計画及び地方自治団体別減免条例等の規定による賃貸料を減免でき
   る。

④“韓国産業団地公団”が賃貸料減免決定以降に“入居企業”が虚偽に減免決定
   を受けた場合、又、減免決定後の減免基準に未達の場合、外投指針第17条第
   3項の賃貸料適用対象になった場合等は減免決定日または事由は発生日から遡
   及し減免された賃貸料を回収する。

 

 

(注)賃借料減免事項は、2021年10月20日以内に外国人投資資金が7,896,651ドルを超えた場合、土地の賃借料が
       減免されるというものであります。
       入居契約申請の際に提出した工場設立事業契約書による外国人投資計画を履行しない場合または入居契約後
       に外国人投資家の持分が30%未満に変動する場合等には同契約は解除されることもあります。また、解除事由
       によって契約が解除される場合、これに対する損害賠償を請求することができず、復旧費用等に対して賠償
       責任があります。

上記の外国人投資契約に従って契約日以降の現在における累積投資額は7,896,651ドルを超過しており、外国人
       投資計画書上の条件は満たしている状態であります。

 

 

(4)土地の賃貸借に関する契約

契約社名

W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.

契約書名

忠州外国人投資地域入居契約書(賃貸)

契約先

韓国産業団地公団

契約締結日

2016年12月15日

契約期間

2016年12月15日から50年(10年単位再契約)

主な契約内容

① W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.は、忠清北道忠州市大召院面にある用地
   面積203,887㎡を賃借する。

② 年間賃貸料は㎡当り、該当年度の個別公示価(取得価額が個別公示価より高い
   場合には“取得価額”とし個別公示地価が確認されない場合は標準時公示地
   価とする。以下同条項を引用する場合には同一に適用。) の1%を基準とし、
   産業通商支援部から公告する外国人投資地域運営指針(以下“外投指針”)規
   定により産業通商支援部長官が企画財政部長官及び市・都知事と協議し別途
   決定した該当年度の賃貸金額がある場合にはこれに従う。

③“入居企業”が外国人投資地域の運営指針第15条による入居限度以上の外国人
   投資を完了した場合、外国人投資促進法、租税特例制限法、外国人投資地域
  管理基本計画及び地方自治団体別減免条例等の規定による賃貸料を減免でき
   る。

④“韓国産業団地公団”が賃貸料減免決定以降に“入居企業”が虚偽に減免決定
   を受けた場合、又、減免決定後の減免基準に未達の場合、外投指針第17条第
   3項の賃貸料適用対象になった場合等は減免決定日または事由は発生日から遡
   及し減免された賃貸料を回収する。

 

 

(注)賃借料減免事項は、2021年12月14日以内に外国人投資資金が33,435,513ドルを超えた場合、土地の賃借料が
       減免されるというものであります。
       入居契約申請の際に提出した工場設立事業契約書による外国人投資計画を履行しない場合または入居契約後
       に外国人投資家の持分が30%未満に変動する場合等には同契約は解除されることもあります。また、解除事由
       によって契約が解除される場合、これに対する損害賠償を請求することができず、復旧費用等に対して賠償
       責任があります。

上記の外国人投資契約に従って契約日以降の現在における累積投資額は33,435,513ドルを超過しており、外国人
       投資計画書上の条件は満たしている状態であります。

 

 

(5) 転換社債型新株予約権付社債に関する契約

契約者名

W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.

名称

W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD. 第1回私募転換社債

発行総額

115,000,000,000ウォン

各社債の発行価格

各社債額面金額の100%

発行日

2019年11月29日

償還期日

2024年11月29日

償還方法

額面金額に対して年率6%(複利)に相当する金額を付して償還する。

利率

年2%

担保・保証の有無

担保無し、当社及びW-SCOPE KOREA CO., LTD.による保証

新株予約権に関する事項

①新株予約権の目的となる株式の種類

W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.普通株式

②新株予約権発行による潜在株式数

33,293株

③転換価格

1株当たり3,454,134ウォン

ただし、株式の分割・併合等が行われた場合、転換価格は適宜調整されるほか、一定条件下で転換価格が調整されます。

④行使期間

社債の発行日の翌日から社債の満期日の前日まで

割当先

Noh & Partners株式会社

その他特約事項

(資金使途)

社債によりW-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.が調達した資金の使途はセパレータ製造工場の建設・運営に充当することとされています。ただし、社債権者の同意を得る場合はその限りではありません。

(社債権者の早期償還請求権)

社債権者は、社債の発行日から3年になる日以後、自己が保有する社債の全部又は一部の償還を請求することができます。

 

 

 

契約者名

W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.

名称

W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD. 第2回私募転換社債

発行総額

56,000,000,000ウォン

各社債の発行価格

各社債額面金額の100%

発行日

2019年12月19日

償還期日

2024年11月29日

償還方法

額面金額に対して年率6%(複利)に相当する金額を付して償還する。

利率

年2%

担保・保証の有無

担保無し、当社及びW-SCOPE KOREA CO., LTD.による保証

新株予約権に関する事項

①新株予約権の目的となる株式の種類

W-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.普通株式

②新株予約権発行による潜在株式数

16,212株

③転換価格

1株当たり3,454,134ウォン

ただし、株式の分割・併合等が行われた場合、転換価格は適宜調整されるほか、一定条件下で転換価格が調整されます。

④行使期間

社債の発行日の翌日から社債の満期日の前日まで

割当先

KDB中小中堅メザニン私募投資合資会社

IBK・BNW技術金融2018私募投資合資会社

新韓金融投資株式会社

新韓キャピタル株式会社

Noh & Partners株式会社

その他特約事項

(資金使途)

社債によりW-SCOPE CHUNGJU PLANT CO., LTD.が調達した資金の使途はセパレータ製造工場の建設・運営に充当することとされています。ただし、社債権者の同意を得る場合はその限りではありません。

(社債権者の早期償還請求権)

社債権者は、社債の発行日から3年になる日以後、自己が保有する社債の全部又は一部の償還を請求することができます。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、リチウムイオン二次電池用セパレータ事業の単一セグメントであるため、研究開発活動は、セグメント情報に関連付けた記載を省略しております。

当連結会計年度における研究開発活動は、市場の新たなニーズに応えることのできるリチウムイオン二次電池用セパレータの開発、安定的な高品質製品の供給に資する生産システムの開発を目的として、日々活動しております。

また今後も引き続き、高品質なリチウムイオン二次電池用セパレータの開発及び生産効率向上に向けて鋭意努力してまいります。

当社グループの研究開発活動は、連結子会社W-SCOPE KOREA CO.,LTD.に設置した研究所(構成メンバー23名)及び当社開発部(構成メンバー1名)により遂行しております。

当社グループでは、リチウムイオン二次電池用セパレータの耐熱性改善、高容量化及びリチウムイオン二次電池以外の電池用セパレータの開発を中心として、以下のような研究を行っております。  

テーマ

テーマ

品質改善(ポリマー、プロセス等)

燃料電池用膜の基礎研究

コーティングセパレータ(セラミック、ポリマー)

水処理用膜

レドックスフロー電池用セパレータ

新規用途探索

 

これらの研究開発活動により、当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は2,654百万円であります。