文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は創業以来、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムの研究開発や技術導出に向けた取り組みを行ってまいりました。
現在、当社では様々な抗体作製技術(当社独自技術のADLib®システム、ハイブリドーマ法、マウスやニワトリを用いたB cell cloning、Trisoma®、TC社のヒト抗体産生マウス/ラットを利用した作製法など)を保有し、これまでの製薬企業等との協業を通じて培ってきた抗体創薬に関わる周辺の技術も蓄積しております。これらの技術を活かし、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体創薬および開発に注力する経営を進めております。
複数の抗体作製技術を用いることでリード抗体取得の可能性を高め、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心に「医療のアンメットニーズに創薬の光を」あてる研究開発を強く推進し、人類の健康に貢献をしてまいります。
(2)目標とする経営指標
創薬事業においては、CBA-1205およびCBA-1535の臨床開発を始め、創薬プロジェクトにおけるリード抗体作製および、これらに関わる技術導入や共同研究提携等のアライアンスを推進することで、創薬力を高めてまいります。また、パイプライン数の拡充・導入に向けては、複数の抗体作製技術を用いて、アンメットニーズに対する創薬開発に有用な抗体作製実績を積み重ねるとともにシーズ(*)の導入にも努めてまいります。パイプラインの収益性や導出可能性の向上に向けては、価値の最大化を念頭に前臨床試験(*)段階のみならず初期臨床開発までの実施を検討します。
創薬支援事業においては、複数の安定顧客に質の高い抗体作製およびタンパク質・抗体の発現精製等の委受託業務を継続的に提供し、収益基盤の安定化を目指します。その上で、当社の抗体開発研究における経験と実績を活かしてクライアントの期待に応える成果を提供して包括契約の締結を目指します。
(3)経営環境
「第1 企業の概況 3 事業の内容 1.事業環境」に記載しております。
(4)中長期的な会社の経営戦略
当社の中長期的な事業シナリオは次のとおりです。
① 治療用抗体の臨床開発
ファースト・イン・クラス抗体であるCBA-1205および、多重特異性抗体であるCBA-1535の臨床開発を進め、Phase 1終了後の導出を目指します。
② 治療用リード抗体の継続的な創出
アカデミアやバイオベンチャー等との共同研究を軸に、当社の抗体作製技術を用いてアンメットニーズに対するリード抗体を継続的に創出し、製薬企業等へ早期に導出することを目指します。
③ 開発候補品の継続的な保持
当社が手掛けるような医薬品の研究開発事業は通常、開発期間が長く相当程度の開発中止リスクが伴うため、安定的な成長にはステージの異なる複数のパイプラインの確保が必要となります。当社では自社の創薬開発に加えて、外部からのパイプラインの導入も行うことにより、開発ポートフォリオを充足させ開発候補品を断続的に保持することを目指します。
④ 創薬開発と事業開発の連動
新規の創薬開発においては、将来の提携や早期の導出が実現できるよう、業界での開発動向や既存薬剤による医療ニーズの充足度等を調査、検討の上、最適な創薬ターゲットの選定と出口戦略の策定が重要です。そのため、当社では自社での評価の他に、製薬企業等との情報交換による需要の発掘やアカデミアとの連携などを通じて、ターゲットの選定が適切に行われるよう努めてまいります。その上で提供可能なパイプラインがクライアントのニーズに即していた場合には、早期にライセンス契約へと繋げていくことを目指します。
⑤ 収益最大化を目指した初期臨床開発の実施
医療用医薬品の導出において、一般的には開発後期になるほど医薬品開発の成功確率があがり、それにより導出時の経済条件は有利になります。当社は、一部のパイプラインにおいては前臨床段階での導出のみならず初期臨床開発を実施した上で導出することで、当社の収益性が最大化するような取り組みを進めてまいります。
(5)対処すべき課題
当社が認識する対処すべき課題については以下のように考えております。
① 抗体作製力の維持向上とパイプライン拡充
当社は、抗体医薬の開発候補品を継続的に創出して、革新的な医薬品を待ち望む患者さんに貢献することを目指しておりますが、保有するパイプラインが様々な理由で開発の遅延や中断、中止等になるリスクがあります。それらの開発上のリスクに対応するためには、開発パイプラインを拡充することにより、開発中止リスク等の影響を分散する必要があると考えております。そのためには抗体作製技術の継続的な改良を行い自社での抗体作製力の向上を図りパイプラインを創出するとともに、様々な開発ステージでバランス良く構成された複数のパイプラインを保有するために大学や企業等からの導入活動も積極的に進めてまいります。
② 初期臨床開発の着実なる遂行
当社は、医薬品の開発段階の中でも比較的早期の導出を目指しておりますが、導出時の収益性の向上が重要であると考え、自社での初期臨床開発の取り組みも進めております。現在、当社が保有するパイプラインのうちがん治療用抗体のCBA-1205とCBA-1535については、価値最大化を目指して臨床試験(*)実施に向け、社外専門家との提携しながらCMC(*)開発や試験計画の策定を進めてまいります。また、臨床開発を推進するための社内体制も整備してまいります。
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスク事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項および本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
1.事業環境に関する項目
(1) 抗体医薬品市場の成長性に関するリスク
2018年までに世界では70以上の抗体医薬品が上市(*)されており、今後も抗体医薬品市場は安定的に成長するものと見込んでおります。しかしながら、各種疾患のメカニズムや病態の解明により、疾患特異的に作用する分子標的薬の開発、低分子特有の副作用を軽減するために疾患部位に薬を送り届けるデリバリーシステムの開発等との競合や、再生医療による治療の普及等により想定どおりに市場が拡大しない場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 医薬品開発における医薬品医療機器等法その他の規制に関するリスク
当社が参画する医薬品業界は、研究、開発、製造および販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法、薬事行政指導およびその他関連法規等により、様々な規制を受けております。当社は医薬品医療機器等法をはじめとする現行の法的規制および医療保険制度、それらに基づく医薬品の価格設定動向等を前提として、当社の開発候補品が導出先の製薬企業において上市された場合を想定し事業計画を策定しています。当社の抗体が医薬品として上市されるまでの間、これらの規制や制度・価格設定動向等が変更される可能性があり、これらに大きな変更が発生した場合には、当社の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 医薬品開発に関するリスク
一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物や抗体であっても、前臨床試験や臨床開発の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定どおりに進行せず、開発の延長や中止を行うことがあります。このように、各開発品の研究開発には多くの不確実性が伴い、当社の現在および将来における開発品についても同様に不確実性のリスクが内在しております。当社は、研究開発段階から収益が得られるビジネスモデルを構築することにより、各開発品の研究開発リスクの分散を図っておりますが、期待どおりの収益が得られる契約が締結できる保証はありません。このような場合には、当社の事業計画や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 臨床開発に関するリスク
当社は、基礎・探索研究、前臨床試験の事業領域として、開発候補抗体の前臨床データパッケージまでを作成したパイプラインの早期での導出を基本戦略としておりますが、一部のパイプラインについては、収益性や導出可能性を検討した上で、初期臨床開発を実施いたします。臨床開発は長期、高額、かつ不確実なプロセスであり、遅延または更なる必要事項が生じうるものであり、試験の全ての段階において失敗が生じえます。また、臨床試験の中間結果は、その最終結果を予想させるものではなく、開発の初期段階においては有望であるように見える製品候補であっても、失敗する可能性があります。さらに、臨床試験を完了するために十分な被験者を適時に確保できないために、遅延または申請拒否が生じる可能性もあります。このように、パイプラインの試験を完了するためには数年を要し、試験において遅延が生じた場合、当社パイプラインの開発費用は増加します。大幅な臨床試験の遅延は、当社がパイプラインを導出する能力を害する可能性があります。当社がパイプラインに関し、開発、規制上の承認の取得を成功裡に行うことができず、または導出による収益を認識できない場合、当社の事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 他社との競合について
競合他社が同じターゲットで優れた機能を持つリード化合物を創出した場合は、導出候補先である製薬企業等への導出活動が容易でなくなる可能性があります。また、複数の同業他社の参入に伴いアライアンス活動の競争が激化し当社事業の優位性に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 為替レートの変動に関するリスク
当社は、社外との提携関係の構築をグローバルに展開していることから、海外の取引先との間で外貨建取引を行っております。これまでは、当社の外貨建取引の多くが支払サイトも短いことから、多額の為替差損益を計上することはありませんでしたが、今後の研究開発活動の拡大に伴い、外貨建取引の規模が大きくなった場合や支払サイトの長い外貨建取引を行う場合には、為替レートの変動により当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業内容に関する項目
(1) 収益計上に関するリスク
創薬事業において、医薬品の基礎研究開始から上市に至るまでには長い年月を要することから、研究開発の成果が事業収益として計上されるまでには長期間を要します。また、医薬品開発の成功確率は近年ますます低くなっており、上市に至らないケースも多いため、最終的に事業収益が計上されない可能性もあります。当社の事業モデルは、前臨床試験段階もしくは臨床試験の初期段階での導出により収益を獲得する事業モデルであるため、導出候補先の製薬企業がその後の開発を実施することになります。このため、臨床試験は導出候補先の製薬企業に依存し、当該導出候補先において順調に臨床試験が進まない場合や経営環境の変化や経営方針の変更など、当社が制御しえない要因が発生した場合には、当該医薬品の開発が遅延あるいは中止となる可能性があります。一方、研究開発が順調に進捗して上市に至った場合であっても、当該医薬品が市場において評価されず、当初契約していた販売マイルストーンなどの収益を計上できない可能性があります。当社は、ステージの異なる複数のパイプラインを確保することで抗体医薬の開発候補品を継続的に創出し、医薬企業への導出を目指しておりますが、契約の締結時期、医薬品開発の進捗状況、医薬品販売開始時期等の遅れによる収益上の期ずれ、また何らかの事由により医薬品開発、販売が中止となる場合には、当社の事業計画および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の取引先に依存するリスク
当社は、中外製薬グループと抗体医薬品開発にかかる委託研究取引基本契約を締結しており、当事業年度における当社の売上高に占める同社グループの割合は高い水準となっております。当社では、委託研究における付加価値を向上させることで、その他製薬企業等から収益を獲得しながら、各クライアントとの良好な取引関係を維持・継続していく方針であります。しかしながら、中外製薬グループの経営方針の変更による委託業務量の減少や契約条件の変更、本契約の解除等が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 知的財産権について
当社は、研究開発活動等において当社が所有しまたは使用許諾を受けた様々な知的財産権を使用しています。当社が創製した技術等について、当社の知的財産権を侵害されるリスクまたは当社が他社の知的財産権を侵害してしまうリスクがあります。こうしたリスクに対応するために、積極的かつ速やかに特許出願等を行うことで排他性の確保を図るとともに、特許情報データベース等を活用して情報収集を行い、当社特許権の侵害および他社関連特許権の早期発見・対応に努めております。すでに基盤技術特許は国内外で成立し、現時点において当社は知的財産侵害に関する訴訟や第三者による請求について認識していませんが、第三者の特許の存在により特許侵害訴訟を提起された場合には多額の訴訟費用を発生させることとなり、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 新規パイプラインに関するリスク
当社が保有するパイプラインの開発上のリスクに対し、当社は、アカデミアやバイオテックとの提携や当社の優秀な人材が持つネットワークを通じてターゲットを獲得し、アンメットニーズに対する医薬品開発に有用な抗体を作製することにより、新規パイプラインの探索および創出を図っており、シーズの導入にも努めております。しかしながら、これらの活動により、新規パイプラインの探索および創出が確実にできる保証はありません。このため、何らかの理由により新規パイプラインの探索および創出活動に支障が生じた場合には、当社の事業戦略および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 技術に関するリスク
当社は、医療におけるアンメットニーズを解決しうるターゲットについて、抗体を用いて医薬品を創出することを目指した研究開発を行っており、基礎・探索研究から前臨床試験までの抗体創薬開発を行い、創製した医薬候補品を製薬企業等に導出するために必要な技術やノウハウを有しております。当社の強みは、ADLib®システムをはじめとした複数の抗体作製技術を用いて作製された抗体を動物試験で評価し臨床開発に向けたデータパッケージを作ることにあり、このうちADLib®システムについては当社が特許を所有しています。しかしながら、当社の強みである抗体創薬研究に関わる技術やノウハウが、他の革新的な技術や安価な技術等で代替で
きる場合や特許期間が満了した場合等により、その競合優位性が保持できない場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 複数の製薬企業との関係に関するリスク
当社が製薬企業と共同研究契約を締結する場合、当該契約が定めるターゲットに重複が生じないよう配慮しておりますが、研究内容によっては、部分的に重なりが発生する可能性も考えられます。その結果、当社がどちらか一方の企業との共同研究の機会を喪失することで当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 提携先に影響されるリスク
共同研究先の技術および研究開発の進捗に大きな差が生じた場合、また経営不振や経営方針の変更があった場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
3.業績に関するリスク
(1) マイナスの繰越利益剰余金の計上について
当社は、創業時よりADLib®システムを利用した医薬品開発のための研究開発活動を重点的に推進してきたことにより、多額の研究開発費用が先行して計上され、創業以来当期純損失を計上したことから、当事業年度末における繰越利益剰余金額はマイナスであります。当社は安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、事業が計画どおりに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画どおりに解消できない可能性があります。
(2) 資金調達について
当社では、研究開発費が収益に先行して計上され、継続的な営業損失が生じております。今後も事業運転資金や研究開発投資および設備投資等の資金需要が予想されます。製薬企業等とのアライアンスによる収益や新株予約権の権利行使等によるキャッシュインおよび人件費や研究開発活動にかかる投資活動等のキャッシュアウトを見込んだ資金計画を策定しておりますが、十分な事業活動資金を確保できない場合には、当社の事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 減損会計について
当社は事業用の固定資産を保有しておりますが、経営環境や事業の著しい変化などにより事業計画が想定どおり進まない場合や価値の低下があった場合、減損会計の適用により当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
4.その他のリスク
(1) 小規模組織であること
当社は小規模な組織であるため、研究開発体制および社内管理体制もこの規模に応じたものとなっております。このような限られた人材の中で、業務遂行上、取締役および幹部社員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分が大きいため、当社の業容の拡大に応じた人員の増強や社内管理体制の充実等を図っております。しかしながら、一部の取締役および幹部社員の退職により事業活動に不備が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の人物への依存について
当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者や構成員に強く依存しています。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、このような人材確保または育成が計画通りにいかない場合は、当社の財政状態および経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
(3) 新株式の発行による株式価値の希薄化について
当社は資金調達を目的とした増資や新株予約権行使による新株式の発行を機動的に実施していく可能性があります。新株式の発行は当社の事業計画を達成する上で合理的な資金調達手段であると判断しておりますが、発行済株式総数が増加することにより、当社株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(4) 営業機密の漏洩について
当社における事業では、当社は顧客である製薬企業等からの情報を預かる立場にあります。従いまして、当社は役職員との間において顧客情報を含む機密情報に係る契約を締結しており、さらに退職時にも個別に同様の契約を締結し顧客情報を含む機密情報の漏洩の未然防止に努めております。また、抗原名をプロジェクトコード化した社内共通言語を用いた顧客情報管理を実施するとともに、顧客情報へのアクセス制限も行っております。しかしながら、万一顧客の情報が外部に漏洩した場合は、当社の信用低下等により当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 自然災害等の発生について
当社は、東京都渋谷区および川崎市宮前区に研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関わる設備および人員が各研究所に集中しております。そのため、各研究所の周辺地域において、地震等の自然災害、大規模な事故、火災、テロ等が発生し、当社が保有する抗体ライブラリの滅失、データの消失、研究所設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、近年の全世界医療用医薬品の市場においては売上高上位10位のうちの半数を占めるまでになっております。京都大学高等研究院の本庶佑特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞したことで話題になったオプジーボ(一般名ニボルマブ)等に代表される免疫チェックポイント阻害剤は製品化された後、その適応症が順次拡大されるとともに、他の抗体医薬品との併用療法によるがん治療の向上を目指した開発研究が多数実施されており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。
このような外部環境の中、当事業年度における当社の事業活動の状況は、創薬事業において、当社が創製した抗セマフォリン3A抗体について、カナダのSemaThera社(以下「ST社」)と共同開発ライセンスおよび独占的オプション契約を締結し、臨床開発に向けた評価を開始いたしました。CBA-1205については、自社での臨床試験開始を目指して準備を進めております。上記2抗体はいずれもファースト・イン・クラスの治療薬を目指しております。また、新規の臨床開発パイプラインとして、2018年12月に英国のBiotecnol社(以下「BT社」)とがん治療用抗体「Tb535H」と抗体改変技術の資産譲渡契約を締結いたしました。当社において初期臨床試験に向けたプロジェクトを発足し、当該抗体の臨床開発コードを「CBA-1535」に変更いたしました。
創薬支援事業においては、中外製薬株式会社(以下「中外製薬」)および同社の海外子会社であるChugai Pharmabody Research Pte. Ltd.(以下「中外製薬グループ」)との取引に加え、小野薬品工業株式会社(以下「小野薬品」)と2018年5月に締結した委受託基本契約に基づく業務遂行において、当社の研究機能を高く評価いただき、2018年10月に追加の委受託契約を締結いたしました。また、協和発酵キリン株式会社(以下「協和キリン」)やその他企業と新たに契約を締結し、継続的にタンパク質精製サービスを提供しております。2018年12月には中外製薬との委託研究取引基本契約を延長し、契約期間をこれまでの2年間から3年間(2021年12月まで)に延長いたしました。以上のように新規顧客の開拓と既存顧客との連携強化によって創薬支援事業の基盤の強化を図り、今後の売上の拡大を目指して営業活動を継続しております。
この結果、当事業年度における売上高は212,851千円(前期比47,044千円減少)、営業損失は1,539,121千円(前事業年度は887,868千円の営業損失)、経常損失は1,533,952千円(前事業年度は883,627千円の経常損失)、当期純損失は1,533,502千円(前事業年度は882,570千円の当期純損失)となりました。
研究開発費について、当社は、従前の経営方針においては全ての保有資産が一体となってキャッシュ・フローを生成していたことから、前事業年度において研究開発費を各報告セグメントへ配分しておりませんでした。しかしながら、当事業年度より、新たな経営方針に基づき、各報告セグメントの業績をより適切に把握するため、従来、各報告セグメントに対応させていなかった全社費用の一部を、合理的な測定方法に基づき各報告セグメントに対応させております。
各セグメントの経営成績は次のとおりです。
a. 創薬事業
ADCT-701(LIV-1205ADC)については、導出先であるスイスのADC Therapeutics社にて2019年後半の治験計画届(*)の提出とその後の臨床試験開始に向けた準備が順調に進捗しております。
BMAA(ヒト化抗セマフォリン3A抗体)については、2018年3月にST社と糖尿病黄斑浮腫および非眼科領域を含む糖尿病合併症等に対する治療薬及び診断薬の開発に関する共同開発ライセンス及び独占的オプション契約を締結し、オプション期間に対応するオプション料を受領しております。現在、本抗体はST社での評価が行われております。
自社で開発中のCBA-1205については、ADCC活性を高めた抗体産生細胞株(マスターセルバンク)の構築および原薬製造のためのプロセス開発が完了し、委託先にて臨床試験用の原薬および治験薬の製造準備を進めております。また、社内に臨床開発の実施を担う臨床開発部を発足させ、臨床開発計画の検討およびCRO(*)の選定を実施いたしました。
新規パイプラインの拡充としては、英国のBT社が独自の多重特異性抗体Tribody技術を用いて創製した新規のがん治療用抗体CBA-1535をBT社から買い取ったことで、当社の開発パイプラインが強化されました。CBA-1535については今後の初期臨床開発にむけた準備を進めてまいります。
将来のパイプライン拡充に向けては、新規の創薬シーズに関わる探索研究に積極的に取り組み、当社のネットワークを駆使して外部機関へのコンタクトおよび情報収集を継続しております。また、前事業年度に引き続き当事業年度も、難治性がん、希少疾患ならびに指定難病における治療標的の確立に有用な研究テーマの公募・助成を行っており、その結果、国内の研究機関との創薬研究や当社の抗体作製技術や関連技術を用いた共同研究の新規契約につながっております。また、創薬プロジェクトの取り組みにつきましては、アンメットニーズの高さ、シーズの新規性・独創性、抗体作製の進捗等を勘案して優先的に資源配分の比率を高めるため、5プロジェクト(がん領域・感染症領域・中枢神経領域)を選定するなど、早期の成果創出に向けた取り組みを積極的に行っております。
以上の結果、当該事業における当事業年度の業績は、売上高2,280千円(前期比57,281千円減少)、研究開発費1,230,337千円(前期比637,952千円増加)、セグメント損失1,234,364千円(前事業年度は535,378千円のセグメント損失)となりました。
b. 創薬支援事業
創薬支援事業においては、中外製薬グループとの委託研究に関する契約に基づく取引が事業の中心となりました。また、新規顧客の小野薬品および協和キリン等との取引にかかる売上を計上いたしました。さらに、小野薬品とは、この業務を通じて当社の研究機能を評価いただいた結果、小野薬品のニーズに応える研究リソースを当社内に確保することで同社の創薬支援を行うことを目的とした追加の委受託契約を締結し、当該業務遂行にかかる売上を計上いたしました。本事業については今後も継続的な取引とその規模拡大にむけて取り組みを進めております。
また、国内外の大学、研究機関および企業に向けて、自社抗体作製技術であるADLib®システムやB cell cloning法等の各種抗体作製手法を用いた抗体作製サービスも提供いたしました。
以上の結果、当該事業における当事業年度の業績は、売上高210,571千円(前期比10,236千円増加)、セグメント利益115,304千円(前期比2,103千円減少)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)の残高は2,328,513千円となり、前事業年度末と比較して1,698,953千円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動により使用した資金は1,688,713千円となりました。主な内訳は、税引前当期純損失の計上です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動による資金の増減はありません。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動により使用した資金は10,239千円となりました。この内訳は、自己新株予約権の取得による支出と長期借入金の返済による支出です。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
b.受注実績
当社は研究開発を主体としており、受注実績を定義することが困難であるため、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2018年1月1日 至 2018年12月31日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
創薬事業 |
2,280 |
3.8 |
|
創薬支援事業 |
210,571 |
105.1 |
|
合計 |
212,851 |
81.9 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前事業年度 (自 2017年1月1日 至 2017年12月31日) |
当事業年度 (自 2018年1月1日 至 2018年12月31日) |
||
|
販売高 (千円) |
割合(%) |
販売高 (千円) |
割合(%) |
|
|
中外製薬グループ |
175,194 |
67.4 |
137,480 |
64.5 |
|
ADC Therapeutics社 |
59,468 |
22.9 |
- |
- |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のためこれらの見積りと異なる場合があります。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a.財政状態の分析
(流動資産)
当事業年度末における流動資産の残高は2,609,952千円となり、前事業年度末と比較して1,586,729千円減少いたしました。これは主に、販売費及び一般管理費や原薬製造費の支払による現金及び預金の減少によるものです。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産の残高は221,241千円となり、前事業年度末と比較して1,542千円減少いたしました。これは主に、減価償却費の計上による有形固定資産の減少と長期前払費用の増加によるものです。
(負債)
当事業年度末における負債の残高は154,474千円となり、前事業年度末と比較して47,416千円減少いたしました。これは主に、未払金の減少によるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は2,676,719千円となり、前事業年度末と比較して1,540,855千円減少いたしました。これは主に、当期純損失計上による利益剰余金の減少によるものです。
b.経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
当社の事業は創薬事業と創薬支援事業により構成されており、当事業年度の当社業績は、47,044千円の減収となりました。これは主に前事業年度の2017年12月期に創薬事業でCBA-1205の導出一時金を計上していた影響によるものです。その一方、創薬支援事業については、210,571千円と前期比105.1%となりました。新規に製薬企業との取引の増加しており、今後も拡大基調となることを見込んでおります。
コスト面においては、販管費及び一般管理費は1,650,398千円と前期比588,116千円の増加となり、特にCBA-1205のCMC開発やBT社からの資産譲渡による研究開発費の増加が主な要因となっております。
創薬事業は当社の成長をけん引する事業であり、アンメットニーズに光を当てるための医薬品の研究開発を推進しております。通常、医薬品の研究開発においては、研究資金の先行投資と成功時には大きなリターン、サイエンスの不確実性による開発遅延・中止リスク等と向き合うことになるため、継続的な成長のためには複数の開発パイプラインを確保するなどの手立てを打つことが重要であります。当事業年度においては、CBA-1205のCMC開発の進捗、がん治療用抗体CBA-1535獲得、探索段階にある創薬プロジェクトの絞り込みとステージアップ、新規の創薬プロジェクト発足にむけた共同研究の開始など、開発パイプラインの拡充にむけた取り組みが着実に進展しております。CBA-1205・CBA-1535については初期臨床開発実施後の導出を目指すことで、前臨床段階の導出と比較し、より大きな経済条件の獲得できることを目指しております。以上の結果、当事業年度における創薬事業売上高は2,280千円、営業損失は1,234,364千円となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の抗体の技術プラットフォームを活かして日本の製薬企業やアカデミアの研究支援を実施しております。タンパク質調製業務や抗体作製など個々の業務を担う競合他社が多数ありますが、高い品質でのサービス提供を目指すことで中外製薬に加えて、新たに小野薬品や協和キリンといった抗体の研究開発を実施する製薬企業様からの評価を頂き、今後の取引量の増加が見込まれております。以上の結果、当事業年度における創薬支援事業の売上高は210,571千円、営業利益は115,304千円となりました。
両事業において、当社の強みである抗体作製にかかるコア技術をフル活用することにより、新たなビジネスの成果が芽生えつつある状況になってまいりました。短期的には初期臨床開発にかかる研究開発コストが増大することになりますが、創薬支援事業の拡大によりその影響が小さくできるような対応を実施してまいります。
なお、経営成績に重要な影響を与える要因について「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりとなっております。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は研究開発型ベンチャー企業であり、医療のアンメットニーズに対する創薬活動を推進しております。収益については、これまで主として提携先製薬企業等から委受託業務による収益を獲得しており、加えて、保有する創薬パイプラインの導出により契約一時金、マイルストーン収入等を計上しております。将来において、当社が保有する創薬パイプラインが新たに導出に至った場合には、契約一時金、マイルストーン収入の増加が見込まれ、また、医薬品が上市された場合には販売ロイヤルティを受領することとなります。導出に至るまでの先行投資期間においては研究開発費の支出等から営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスを計上する計画であり、当事業年度においては、CBA-1205のCMC開発の進展、BT社から資産譲受が主たる要因となり前事業年度よりも研究開発費が増加637,952千円増加、営業活動によるキャッシュ・フローは1,688,713千円の支出となりました。
なお、上記先行投資期間における営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスについて、現在既に収益を得ている創薬支援事業における1社ごとの取引量や新たに取引先を拡大することで営業キャッシュ・フローの改善に努めおります。また、財務活動によるキャッシュ・フローについては、助成金の獲得や必要に応じた資金調達等により補填を行っております。
資金の流動性につきましては、当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローが1,688,713千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが10,239千円の支出となり、現金及び現金同等物の期末残高は2,328,513千円となりました。
<用語解説>(50音、アルファベット順)
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用語 |
意味・内容 |
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アンメットニーズ |
現状の医療では満たされていない(未充足)ニーズのことです。具体的には、有効な治療法や薬剤がない場合、薬剤があっても使い勝手が悪い、または副作用が強い、一時的に症状を抑えても再発する、時間とともに悪化するような場合、あるいは治療費が非常に高額になるような場合等にアンメットニーズが存在するといいます。 |
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インターナリゼーション |
細胞表面にあるタンパク質(抗原)の中には、抗原に特異的な抗体が結合すると、抗体とともに抗原が細胞内に輸送される内在化(インターナリゼーション)と呼ばれる現象が起こるものがあります。この性質を利用して、毒性の高い薬剤を抗体に結合させた抗体薬物複合体(ADC)をがん細胞内に運ぶことが可能になります。 |
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幹細胞 |
幹細胞は未分化な細胞で、色々な細胞に分化できる能力と、いつまでも同じ状態で増殖を維持できる能力を持つ特殊な細胞です。 |
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抗セマフォリン3A抗体 |
セマフォリン3Aは神経の先端の伸長を制御する因子として発見されました。これまでの研究により、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また炎症・免疫反応やがん、骨の形成、アルツハイマー病、糖尿病合併症等とも関連していることが報告されております。抗セマフォリン3A抗体は、この因子の働きを抑えることによりアンメットニーズの高い各種疾患の治療薬開発に結びつくことが期待される抗体です。本抗体は、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムで取得されました。 |
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シーズ |
事業化・製品化の可能性はあるものの、まだ“種または芽(シーズ)”の状態であり、現時点では大きな売上や価値を生み出さないものの、将来の可能性を秘めたモノ、技術やノウハウのことを指します。企業やアカデミアが見出したものの活用していないような技術や特許等も含まれ、当社の場合、研究初期段階のターゲット抗原やその候補、抗体等が有力な候補となります。 |
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上市 |
承認された新薬の市場販売が開始されることをいいます。 |
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前駆細胞 |
幹細胞から特定の体細胞や生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞のことで、幹細胞よりも分化できる能力が限られています。 |
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前臨床試験 |
医薬品の研究開発において、ヒトを対象とする臨床試験の前に行う試験のことです。動物を用いて、医薬品候補化合物等の有効性や安全性を評価します。非臨床試験ともいいます。 |
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相同組換え |
相同組換え(相同的組換え)は、遺伝子配列がよく似た部位(相同部位)の間で起こる遺伝子の組換えメカニズムのことをいいます。ニワトリDT40細胞における抗体遺伝子における相同組換えは、抗体遺伝子の多様性を作り出すための仕組みとして機能しています。 |
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探索研究 |
創薬研究の最初の段階として、医薬品の元となる生理活性を持つ物質を探索する研究段階があります。この研究を一般的に探索研究と呼びます。抗体医薬品の研究開発では、ターゲットである抗原について調べたり、様々な方法で抗体を作製したり、リード抗体を選別するための方法を確立したり、抗体の効果を試験管内の実験や予備的な動物実験により確かめたりする初期段階を探索研究と呼んでいます。 |
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治験計画届 |
臨床開発で使われる用語で、国内で臨床試験を実施する際に当該試験の計画を記した当局へ提出する書類のことです。 |
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導出(ライセンスアウト) |
特許権やノウハウ等を他者に売却したり実施許諾することをいいます。 |
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導入(ライセンスイン) |
他者が持つ特許権やノウハウ等を買い取ったり実施許諾を受けたりすることをいいます。 |
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動物免疫 |
動物に抗体を作らせる方法のことです。抗原タンパク質や抗原タンパク質を発現する細胞などを注射すると、その動物の免疫反応により体内に抗原に対する抗体が作り出されます。 |
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用語 |
意味・内容 |
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特異的抗体 |
ある特定の抗原に結合する抗体です。 |
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トリコスタチンA(TSA) |
ニワトリDT40細胞にクロマチン弛緩を誘導するために利用する薬剤で、ヒストン脱アセチル化酵素という種類の酵素の働きを阻害する働きがあります。ADLib®システムにおいて、ニワトリDT40細胞の抗体遺伝子組換えを活性化することによって、抗体タンパク質の多様性を増大させる役割を担う薬剤です。 |
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バイスペシフィック抗体 |
通常、抗体は抗原を認識する部位を2つ持っており、それらは同じ抗原を認識します。それに対し、2つの抗原認識部位がそれぞれ別のターゲット(抗原)を認識するものをバイスペシフィック抗体といいます。 |
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パイプライン |
新薬として開発している医薬品候補化合物等のことを「パイプライン」といいます。創薬研究から臨床開発を経て関係当局の承認を受けるまでの活動を「創薬」と呼び、「創薬パイプライン」とは創薬のいずれかの段階にあるパイプラインのことをいいます。また、創薬パイプラインのうち開発段階に入ったパイプラインのことを、特に「開発パイプライン」ということがあります。 |
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ハイブリドーマ法 |
抗原を免疫した動物から抗体を作り出すB細胞を取り出し、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させて、抗体を作り続ける細胞(ハイブリドーマ)を作製する方法です。 |
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ヒト化抗体 |
遺伝子工学の技術により、マウス等の抗体分子の抗原結合部位をヒトの抗体分子に移植した抗体。マウス等由来のアミノ酸配列は全体の5%ほどで、残り95%はヒト由来のアミノ酸配列となるため、ヒトに投与した場合に異物として認識される可能性が軽減されます。 |
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ファースト・イン・クラス |
一般的には、その作用機序の医薬品の中で市場に最初に登場した医薬品を指します。類似薬がないことから高い薬価と高い売上が期待できます。抗体の場合は、あるタンパク質(抗原)をターゲットとする初めての抗体医薬をファースト・イン・クラス抗体と呼びます。ファースト・イン・クラス抗体のターゲット抗原の候補は、潜在的なものも含めてアカデミアを中心とした様々な疾患研究の中に多く存在していると考えられます。当社ではそうした抗原をターゲットとすることで、これまでにない医薬品候補抗体の開発を目指し、治療充足度が十分でない疾患の治療に貢献します。 |
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マイルストーン |
導出後の臨床試験等の進捗に伴い、その節目(マイルストーン)ごとに受領する収入のことをいいます。 |
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免疫寛容 |
特定の抗原(例えば、自身の体の構成成分やそれに似ているもの)に対して免疫反応が起こらない状態をいいます。 |
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免疫チェックポイント阻害剤 |
いわゆる免疫療法の一種です。最近話題になっているこの治療薬は、これまでの免疫療法では免疫細胞の攻撃力を高める、アクセルを踏む働きが中心であったのに対し、例えばがん細胞によって免疫細胞にかけられたブレーキを外す働きをもっています。従来の治療法では効果が十分見られなかった患者様にも治療効果をあげることに成功しています。 |
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免疫反応 |
生体に侵入してきた異物を排除する生体反応のことをいいます。 |
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モノクローナル抗体 |
単一の抗体産生細胞から得られた抗体のことをいいます。モノクローナル抗体は1つの抗原にのみ結合し、また結合する場所が決まっているため、均一で再現性の高い抗体になります。そのため、抗体医薬品の多くは、モノクローナル抗体が使われています。当社では、ADLib®システム、ハイブリドーマ法、B cell cloning法によりモノクローナル抗体を取得することができます。 |
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用語 |
意味・内容 |
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ライブラリ |
ADLib®システムでは、多種多様な抗体を産生する細胞集団のことをライブラリと呼びます。ライブラリに含まれる細胞が産生する抗体の種類が多いほど、目的に合った抗体を取得できる確率が高くなります。当社では、トリライブラリ、マウスキメラライブラリ、ヒトライブラリを所有しており、顧客ニーズに合わせてライブラリを選択し、抗体作製を行っています。 |
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リード抗体 |
医薬品の候補となる抗体のことです。 |
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臨床試験 |
臨床試験には、次の3段階があります。 第1相試験(フェーズ1):少数の治験参加者(*)を対象に、治験薬の安全性と治験薬が体内に入ってどのような動きをするのかを確認する試験 第2相試験(フェーズ2):第1相試験で安全性が確認された用量の範囲で、比較的少数の患者さんを対象に、治験薬の有効性(効果)、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)・用量(最も効果的な投与量)を確認する試験 第3相試験(フェーズ3):第2相試験で確認された用法・用量で、多数の患者さんに治験薬を対象に、有効性と安全性を検証する試験 初期臨床試験は主に第1相試験および初期の第2相試験のことを指し、治験薬の安全性を主に、有効性の兆しを観察します。 (*)おおまかにはがん治療薬の第1相試験の場合には治験参加者は患者さんであり、がん以外の領域の治療薬の第1相試験の場合には治験参加者は健康なボランティアの方です。 |
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ロイヤルティ |
製品が販売(上市)された後に、その販売額の一定比率を受領する収入のことをいいます。 |
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ADC |
抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate)のことを指します。例えば、悪性腫瘍の細胞表面だけに存在するタンパク質(抗原)に特異的に結合する抗体に毒性の高い薬剤を結合させると、そのADCは悪性腫瘍だけを死滅させることができます。このため、比較的副作用が少なく効き目の強い薬剤となる可能性があります。 |
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ADCC活性 |
抗体依存性細胞傷害活性(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity)のことです。抗体薬には、がん細胞の表面に発現する標的抗原(標的分子)に結合し抗腫瘍効果を示す直接的な作用のほかに、患者さん自身の免疫細胞(マクロファージやNK細胞等)を介して抗腫瘍効果を発揮する作用があります。そのため、標的抗原の発現量だけでなく、患者さん自身の免疫状態、特に抗体薬が生体内の免疫細胞をがん周囲に呼び寄せ、集まった免疫細胞を活性化することで大きな治療効果を期待できることがあります。このような作用をADCC活性といいます。 |
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ADLib®(アドリブ)システム |
ライブラリから特定の抗原を固定した磁気ビーズを用いて目的の抗原に結合する抗体産生細胞を取り出す仕組みです。ADLib®システムで用いるライブラリは、ニワトリのBリンパ細胞由来のDT40細胞の持つ抗体遺伝子の相同組換えを活性化することによって、抗体タンパク質の多様性が増大しております。国立研究開発法人理化学研究所で開発された技術で、当社はその独占的な実施権を保有しております。既存の方法に比べ、迅速性に優れていることおよび従来困難であった抗体取得が可能になる場合があること等の点に特徴があると考えております。 |
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B細胞 |
リンパ球の1種で骨髄由来の細胞です。抗原の侵入に応答して増殖し、抗体(免疫グロブリン)を生産する細胞へと分化して抗体を産生します。 |
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用語 |
意味・内容 |
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B cell cloning法 |
目的の抗原への結合性抗体を産生する単一のBリンパ細胞を選択し、抗体遺伝子をクローニングする手法のことです。抗原をトリやマウスなどの実験動物に免疫した後、その動物からBリンパ細胞を含む脾臓やリンパ節を取り出して行います。ハイブリドーマ法と異なり、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させる工程を省くことができます。 |
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CMC |
Chemistry, Manufacturing and Controlの略で、医薬品の原薬・製剤の化学・製造およびその品質管理を指します。 |
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CRO |
製薬企業が行う臨床試験を支援する組織(Contract Research Organization)のことです。質の高い臨床試験が実施できるように試験計画などのコンサルティングなどを行い、臨床試験のスピード化、質の向上、人件費の最小化などの役割を担っています。 |
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DT40細胞 |
ニワトリのファブリキウス嚢(鳥類に特有な一次免疫器官)から取り出され、がん遺伝子の導入により不死化されたB細胞の1つです。このDT40細胞株では抗体遺伝子の相同組換えが高頻度で起きることが知られており、当社ではさらに薬剤により抗体遺伝子組換えを人為的に誘導して、多様な抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。これがADLib®システムの技術の基になっています。 |
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Naked抗体 |
ADC抗体とは異なり、特別な修飾など加工をしていない(飾りつけていない)抗体をいいます。 |
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Tribody |
英国のBiotecnol社が開発した多重特異性抗体を作製する技術であるTrisoma®で作製された抗体の総称です。バイスペシフィック抗体と同様に複数の標的(抗原)に結合することができますが、Tribodyは抗原結合部位が3ヶ所あるので最大3種類の抗原に結合することができます。さらに、通常のバイスペシフィック抗体よりも分子量が大きいので腎代謝を受けにくい特徴があります。 |
当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。
(1) 基盤技術に関する特許ライセンス契約
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相手方の名称 |
相手先 の 所在地 |
契約締結年月 |
契約期間 |
契約内容 |
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理研 |
日本 |
2011年1月 |
2011年1月1日から 2023年7月28日まで |
ADLib®システムの基盤特許に関する実施権及び再実施権の取得、及びその対価である一定比率のロイヤルティの支払い |
(2) 業務委受託契約
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相手方の名称 |
相手先 の 所在地 |
契約締結年月 |
契約期間 |
契約内容 |
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中外製薬 |
日本 |
2011年6月 |
2011年7月1日から 2021年12月31日まで (注1) |
抗体作製に関する委託研究を実施 |
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CPR社 |
シンガポール |
2012年8月 |
2012年8月1日から 2021年12月31日まで |
効率的な抗体医薬品の開発に必要な研究材料の調製等の業務 |
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小野薬品工業 |
日本 |
2018年10月 |
2018年10月1日から 2020年3月31日まで (以後半年毎の自動更新) (注2) |
新規抗体作製および抗原・タンパク質調製等の業務 |
(注)1.2018年12月17日付覚書により2021年12月31日まで契約延長
2.2019年3月28日付覚書により2020年3月31日まで契約延長
(3) ライセンス契約
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相手方の名称 |
相手先の 所在地 |
契約締結年月 |
契約期間 |
契約内容 |
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富士レビオ |
日本 |
2010年9月 |
特許期間満了まで (ただし、共同研究開発は2010年9月30日から2016年9月30日まで) |
ADLib®システムの非独占的実施許諾及び共同研究開発契約 |
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富士レビオ |
日本 |
2013年6月 |
特許期間満了まで |
ADLib®システムの使用により取得したビタミンD類の測定を目的とした抗体を含む体外診断用医薬品の製造及び販売に係る実施許諾 |
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ADC Therapeutics社 |
スイス |
2017年9月 |
2017年9月から国ごとに特許満了日または販売開始から10年のいずれか遅い日まで |
CBA-1205のADC用途での全世界におけるサブライセンス権付の独占的な開発・製造・販売権を供与 |
当社は研究開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を研究開発活動に集中しております。研究開発費は当社が保有するパイプラインの開発費、次期開発候補品の基礎・探索から創薬研究、並びに創薬基盤技術の研究にかかる費用で構成されております。研究開発活動の具体的な内容は、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.創薬事業」に記載のとおりです。