第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第1四半期累計期間において、当四半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項の発生はありません。また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 本書において使用される専門用語につきましては、(*)印を付けて「第2 事業の状況  2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の末尾に用語解説を設け説明しております。

 また、文中の将来に関する事項は、当第1四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。

(1)経営成績の状況

 当第1四半期累計期間における国内外の経済環境は、世界的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況は続いており、先行き不透明な状況は未だ継続しております。こうした外部環境の中、当第1四半期累計期間における売上高は主として創薬事業におけるLIV-2008及びLIV-2008bのライセンス契約締結による契約一時金の獲得、創薬支援事業における研究受託取引の拡大により、246,081千円(前年同四半期比155,325千円増加)となりました。研究開発費につきましては、前年同四半期はCBA-1205に係るGLP-tox(*)等の前臨床試験(*)費用が計上されており研究開発費が増加しておりましたが、当第1四半期累計期間においては216,327千円(前年同四半期比126,252千円減少)となりました。営業損失は155,257千円(前年同四半期は426,377千円の営業損失)となり、経常損失は149,640千円(前年同四半期は424,826千円の経常損失)、四半期純損失は160,704千円(前年同四半期は425,431千円の四半期純損失)となりました。当第1四半期累計期間における当社の事業活動の概況は次のとおりです。

 

当社は、医療のアンメットニーズ(*)の高い領域において抗体医薬品を創出する創薬事業と、製薬企業等に抗体創薬にかかわる技術サービスを提供する創薬支援事業の二つの事業を展開しております。

 

 創薬事業においては、自社開発中のファースト・イン・クラス抗体(*)CBA-1205は2020年7月より患者さんへの治験薬の投与が開始され、現在、第Ⅰ相試験で固形がんの患者さんを対象に段階的に薬剤の投与量を増加させながら安全性の確認を進める前半パートを実施しておりますが、これまでのところ重篤な有害事象等は発生しておりません。多重特異性抗体であるCBA-1535は治験薬製造に向けたCMC(*)開発を進めております。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各国において研究資材などが優先的に新型コロナウイルスの診断や治療薬の開発等に充当される状況が発生しているためCBA-1535のCMC開発スケジュールにも影響が生じておりますが、現時点では2021年末以降の治験申請を目標とするスケジュールを変更するまでには至っておりません。探索段階にある創薬プロジェクトでは、リード抗体(*)の創出、及び知財化に向けた研究開発に継続して取り組んでおります。また、新たな創薬プロジェクト発足にむけた創薬企業やアカデミアとの共同研究に加え、Tribody(*)技術を生かしたテーマを始動させるなど、今後の開発パイプライン(*)の質・量の拡充に向けた取り組みを進めております。

 ・創薬パイプライン(導出品)

 スイスのADC Therapeutics社にADC用途に限定して導出(*)したADCT-701については、現在、ADCT社で臨床試験(*)に向けた準備を進めております。

 LIV-2008については、2021年1月14日付のお知らせのとおり、当社はShanghai Henlius Biotech,Inc.(以下、Henlius社)との間で、LIV-2008及びLIV-2008bのライセンス契約を締結いたしました。これにより、当社はHenlius社に中華人民共和国、台湾、香港及びマカオにおけるLIV-2008及びLIV-2008bの開発、製造及び販売権をサブライセンス権付で許諾し、また、上記以外の全世界における権利においてはオプション権を付与しております。なお、本契約締結により受領した契約一時金(1百万ドル)については、当第1四半期累計期間において売上として計上しております。また、引き続き複数の海外製薬企業において導入(*)評価が実施されており、Henlius社のオプション権行使の可能性のみならず、本パイプラインの事業価値向上に資する契約締結の可能性を模索しております。

 ・創薬パイプライン(自社研究開発・導出候補品)

 CBA-1205については、2020年7月に第Ⅰ相試験における患者さんへの投与を開始し、順調に進捗しております。なお本試験の前半では固形がん患者さんを対象に安全性、忍容性及び体内動態を確認することに加え、後半パートでは肝細胞がんの患者さんを対象に探索的な有効性も調べることを目的としております。

 CBA-1535については、治験薬製造を委託しているCMO(*)においてCMC開発を進めており、2021年末以降の治験申請を目標として取り組んでおります。しかしながら、新型コロナウイルスに関連する研究開発が各国で優先されることから、CBA-1535のCMC開発で必要となる研究資材の確保に時間を要する状況となっており、当初のCMC開発スケジュールから遅延が発生しております。当社では代替案の立案を含めた対応を行っているため現時点でのCBA-1535の治験届提出スケジュールに変更はありません。

BMAAについては、2018年3月にカナダのSemaThera社と共同開発ライセンス及び独占的オプション契約を締結し継続しておりましたが、SemaThera社のオプション権行使に至っておりません。SemaThera社での評価にはまだ時間を要することが示されたこと、一方で当社での独自の研究開発活動及び事業機会を確保することも目的として両社合意の上で本契約を終了することといたしました(2021年5月14日付『抗セマフォリン3A抗体の共同開発ライセンス及び独占的オプション契約終了のお知らせ』)。今後は、当社独自でセマフォリン3Aが関与する疾患に狙いを定めた研究開発と事業開発を検討して参ります。

PCDC(*)については、ADC(*)用途を中心として、外部企業への導出又は協業の機会を求めた活動を実施しながら、導出活動を進める上で重要となる追加の薬効試験を実施しております。

 その他、探索段階にある5つの創薬プロジェクトが進行しており、さらなるパイプライン拡充に向けた研究開発に取り組んでおります。

 以上の結果、創薬事業における当第1四半期累計期間の業績は、売上高103,013千円(前年同四半期比102,188千円増加)、研究開発費216,327千円(前年同四半期比126,252千円減少)、セグメント損失は113,415千円(前年同四半期は341,907千円のセグメント損失)となりました。

 

 創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の独自の抗体作製手法であるADLib®システム(*)やB cell cloning法(*)等の抗体技術プラットフォームを活かした抗体作製業務のほか、タンパク質調製業務、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を受託し、製薬企業等の研究支援を展開しております。

 また、2021年5月14日には英国のMologic Ltd.(以下、Mologic社)とADLib®システムを用いた感染症の診断薬用抗体を作製する共同研究契約を締結しました(2021年5月14日付『Mologic Ltd.との共同研究契約締結のお知らせ』)。本契約は最長1年間の契約で、当社はADLib®システムを用いて複数の感染症等の抗原に対する抗体を作製し、Mologic社と共同で診断薬候補として評価を行います。当社は本契約に伴いMologic社から研究費を受領し、診断薬によって収益が得られた場合には、その一部をロイヤルティとして受領することとなります。

 当第1四半期累計期間においては、国内製薬企業を中心に既存顧客との安定的な取引が継続したことにより、売上高は143,067千円(前年同四半期比53,137千円増加)となり、セグメント利益は79,289千円(前年同四半期比50,360千円増加)、セグメント利益率は55.4%(目標50%)となりました。

 

 

(2)財政状態の分析

(資産)

 当第1四半期会計期間末における総資産は、前渡金の増加などにより、前事業年度末に比べ42,851千円増加3,537,405千円となりました。

(負債)

 当第1四半期会計期間末における負債の残高は419,687千円となり、前事業年度末と比較して35,101千円増加いたしました。これは主に、前受金の増加などによるものです。

(純資産)

 当第1四半期会計期間末における純資産の残高は3,117,717千円となり、前事業年度末と比較して7,749千円増加いたしました。これは主に、四半期純損失の計上による利益剰余金の減少があったものの、新株予約権の行使により資本金及び資本準備金が増加したことによるものであります。

 

(3)経営方針・経営戦略等

 当第1四半期累計期間において、当社の経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当第1四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

<用語解説>(50音、アルファベット順)

用語

意味・内容

アンメットニーズ

現状の医療では満たされていない(未充足)ニーズのことです。具体的には、有効な治療法や薬剤がない場合、薬剤があっても使い勝手が悪い、又は副作用が強い、一時的に症状を抑えても再発する、時間とともに悪化するような場合、あるいは治療費が非常に高額になるような場合等にアンメットニーズが存在するといいます。

前臨床試験

医薬品の研究開発において、ヒトを対象とする臨床試験の前に行う試験のことです。動物を用いて、医薬品候補化合物等の有効性や安全性を評価します。非臨床試験ともいいます。

導出(ライセンスアウト)

特許権やノウハウ等を他者に売却したり、実施許諾することをいいます。

導入(ライセンスイン)

他者が持つ特許権やノウハウ等を買い取ったり実施許諾を受けたりすることをいいます。

バイスペシフィック抗体

通常、抗体は抗原を認識する部位を2つ持っており、それらは同じ抗原を認識します。それに対し、2つの抗原認識部位がそれぞれ別のターゲット(抗原)を認識するものをバイスペシフィック抗体といいます。

パイプライン

新薬として開発している医薬品候補化合物等のことを「パイプライン」といいます。創薬研究から臨床開発を経て関係当局の承認を受けるまでの活動を「創薬」と呼び、「創薬パイプライン」とは創薬のいずれかの段階にあるパイプラインのことをいいます。また、創薬パイプラインのうち開発段階に入ったパイプラインのことを、特に「開発パイプライン」ということがあります。

ハイブリドーマ法

抗原を免疫した動物から抗体を作り出すB細胞を取り出し、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させて、抗体を作り続ける細胞(ハイブリドーマ)を作製する方法です。

ファースト・イン・クラス

一般的には、その作用機序の医薬品の中で市場に最初に登場した医薬品を指します。類似薬がないことから高い薬価と高い売上が期待できます。抗体の場合は、あるタンパク質(抗原)をターゲットとする初めての抗体医薬をファースト・イン・クラス抗体と呼びます。当社ではそうした抗原をターゲットとすることで、これまでにない医薬品候補抗体の開発を目指し、治療充足度が十分でない疾患の治療に貢献します。

免疫反応

生体に侵入してきた異物を排除する生体反応のことをいいます。

ライブラリ

ADLib®システムでは、多種多様な抗体を産生する細胞集団のことをライブラリと呼びます。ライブラリに含まれる細胞が産生する抗体の種類が多いほど、目的に合った抗体を取得できる確率が高くなります。当社では、トリライブラリ、マウスキメラライブラリ、ヒトライブラリを所有しており、顧客ニーズに合わせてライブラリを選択し、抗体作製を行っています。

リード抗体

ADLib®システム、ハイブリドーマ法(*)、B cell cloning法などの様々な手法で作成した抗体の中から、親和性、特異性、生物活性、安定性などのスクリーニングによって見出された医薬品になる可能性を有する抗体群をリード候補抗体と呼び、これらのリード候補抗体群のうち、医薬品としてその後の最適化などのステップに進めるための抗体をリード抗体と呼びます。

 

 

用語

意味・内容

臨床試験

臨床試験には、次の3段階があります。

第Ⅰ相試験(フェーズⅠ):少数の治験参加者を対象に、治験薬の安全性と治験薬が体内に入ってどのような動きをするのかを確認する試験

第Ⅱ相試験(フェーズⅡ):第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で、比較的少数の患者さんを対象に、治験薬の有効性(効果)、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)・用量(最も効果的な投与量)を確認する試験

第Ⅲ相試験(フェーズⅢ):第Ⅱ相試験で確認された用法・用量で、多数の患者さんに治験薬を対象に、有効性と安全性を検証する試験

初期臨床試験は主に第Ⅰ相試験及び初期の第Ⅱ相試験のことを指し、治験薬の安全性を主に、有効性の兆しを観察します。

ADC

抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate)のことを指します。例えば、悪性腫瘍の細胞表面だけに存在するタンパク質(抗原)に特異的に結合する抗体に毒性の高い薬剤を結合させると、そのADCは悪性腫瘍だけを死滅させることができます。このため、比較的副作用が少なく効き目の強い薬剤となる可能性があります。

ADLib®(アドリブ)システム

ライブラリ(*)から特定の抗原を固定した磁気ビーズを用いて目的の抗原に結合する抗体産生細胞を取り出す仕組みです。ADLib®システムで用いるライブラリは、ニワトリのBリンパ細胞由来のDT40細胞(*)の持つ抗体遺伝子の自律的な相同組換えを活性化することによって、抗体タンパク質の多様性が増大しております。既存の方法に比べ、迅速性に優れていること及び従来困難であった抗体取得が可能になる場合があること等の点に特徴があると考えております。

B cell cloning法

目的の抗原への結合性抗体を産生する単一のBリンパ細胞を選択し、抗体遺伝子をクローニングする手法のことです。ハイブリドーマ法と異なり、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させる工程を省くことができます。

BMAA(抗セマフォリン3A抗体)

セマフォリン3Aは神経の先端の伸長を制御する因子として発見されました。これまでの研究により、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また炎症・免疫反応(*)やがん、骨の形成、アルツハイマー病、糖尿病合併症等とも関連していることが報告されております。抗セマフォリン3A抗体は、この因子の働きを抑えることによりアンメットニーズの高い各種疾患の治療薬開発に結びつくことが期待される抗体です。本抗体は、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムで取得されました。

CMC

Chemistry, Manufacturing and Controlの略で、医薬品の原薬・製剤の化学・製造及びその品質管理を指します。

GLP-tox

Good Laboratory Practice toxicitiesの略称で、医薬品の安全性に関する前臨床試験の実施の基準を指します。安全性評価試験の信頼性を確保するため、試験施設が備えるべき設備、機器、組織、試験の手順等について基準を定めたものです。これに沿って実施される毒性試験や安全性薬理試験をGLP-toxと呼びます。

CMO

Contract Manufacturing Organizationの略称で、製薬会社から医薬品(治験薬・市販薬を含 む)の製造を受託する企業を指します。医薬品を製造するためには、GMP(医薬品等の製造管理 及び品質管理に関する基準)をクリアする必要があり、CMOはGMPに対応できる技術力と、開発ライン・製造ラインの設備を備えています。

DT40細胞

ニワトリのファブリキウス嚢(鳥類に特有な一次免疫器官)から取り出され、がん遺伝子の導入により不死化されたB細胞の1つです。このDT40細胞株では抗体遺伝子の相同組換えが高頻度で起きることが知られており、当社ではさらに薬剤により抗体遺伝子組換えを人為的に誘導して、多様な抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。これがADLib®システムの技術の基になっています。

 

 

用語

意味・内容

PCDC(社内コード)

標準治療耐性のがん種を含む幅広い固形がんで発現(肺、結腸直腸、膵臓、乳、卵巣がんなど)するファースト・イン・クラスとなる標的分子に対するヒト化抗体です。細胞内に入り込むインターナリゼーション能が高いことから、薬物との複合体であるADCとしての効果が期待されます。

Tribody

英国のBiotecnol社が開発した多重特異性抗体を作製する技術であるTrisoma®で作製された抗体の商標です。バイスペシフィック抗体(*)と同様に複数の標的(抗原)に結合することができますが、Tribodyは抗原結合部位が3ヶ所あるので最大3種類の抗原に結合することができます。さらに、通常のバイスペシフィック抗体よりも分子量が大きいので腎代謝を受けにくい特徴があります。

 

3【経営上の重要な契約等】

 当第1四半期会計期間において、新たに締結した重要な契約は次のとおりであります。

(ライセンス契約)

相手方の名称

相手先の

所在地

契約締結年月

契約期間

契約内容

Henlius社

中国

2021年1月

2021年1月から国ごとに特許満了日又は販売開始から一定年数経過日のいずれか遅い日まで

LIV-2008及びLIV-2008bの中国、台湾、香港及びマカオにおけるサブライセンス権付の独占的な開発・製造・販売権を供与(上記以外の全世界における権利についてはオプション権を付与)