文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は創業以来、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムの研究開発や技術導出に向けた取り組みを行ってまいりました。
現在、当社ではADLib®システムをはじめ複数の抗体作製技術を保有し、これまでの製薬企業等との協業を通じて培ってきた抗体創薬に関わる周辺の技術も蓄積しております。これらの技術を活かし、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体創薬の新規創製を進めるとともに、自社の臨床開発機能を活かし画期的な新薬の初期臨床開発に注力する経営を進めております。
複数の抗体作製技術を用いることでリード抗体取得の可能性を高め、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心に「医療のアンメットニーズに創薬の光を」あてる研究開発を強く推進し、人類の健康に貢献をしてまいります。
(2)経営環境
「第1 企業の概況 3 事業の内容 1.事業環境」に記載しております。
(3)目標とする経営指標
創薬事業においては、医療用医薬品の開発候補品となるリード抗体を創出し、臨床開発を目的として製薬企業に導出することで収益を得るビジネスに取り組んでおります。当社が保有する開発候補品の収益性向上や導出確度の向上を鑑み、前臨床試験(*)段階、または、初期臨床試験を実施した後の導出を目指しております。一般的には臨床開発を行い、医療用医薬品として承認に至る可能性が高まることによって、導出時に得られる収益性が高くなります。しかしながら、臨床開発に入った抗体医薬品候補が承認に至るまでの成功確率は一般的に10~20%程度と言われているため、1つの開発品目だけに当社の事業や将来の収益の可能性を依存することは経営上の様々なリスクが大きくなります。従いまして、当社は研究開発の各段階において、複数の開発品目を保有することで事業全体の成功確度を高めることを目標に掲げております。なお、当社では臨床段階のプログラムにつきましては、研究開発費と導出によって得られる収益の状況を鑑みて、同時期に扱う品目数を2~3つと想定しており、現在、当社ではCBA-1205とCBA-1535の2つの開発品目を有しております。これらの開発品目の初期臨床開発を進め、抗体の安全性及び初期の有効性の評価を行ったのちに、製薬会社等へ導出することにより契約一時金や開発マイルストーン等の獲得を目標としております。また、導出契約締結時には契約一時金の獲得により単年度の黒字化を達成することも重要な目標としております。
また、探索研究段階にある創薬プロジェクトではリード抗体獲得及び知財化に向けて、抗体作製や動物試験等の研究開発を推進しております。リード抗体獲得の成功確率を向上させるために、社内での技術改良に加え、社外の技術導入や共同研究等のアライアンスも積極的に推進することで、創薬力を高める取り組みを行っております。リード抗体獲得に資する共同研究は常時10テーマ程度を実施することを目安にしており、現在国内のアカデミアや企業を中心に12件の共同研究が進んでおります。なお、当社の開発・導出候補品で構成される開発パイプラインの拡充に向けては、有望なシーズ(*)の導入も視野に入れております。
創薬支援事業においては、複数の安定顧客に質の高い抗体作製およびタンパク質・抗体の発現精製等の委受託業務を継続的に提供することで、収益基盤の安定化と本事業で獲得した収益を創薬事業での研究開発投資に充当しております。本事業では収益性を高めるために、当社の抗体研究領域における高い業務品質と柔軟な業務遂行を通した高付加価値型のビジネスの遂行により、セグメントの利益率50%確保を目指しております。また、付加価値の高い業務品質や柔軟な業務遂行力を維持することが本事業における目標達成にとって重要な要素であり、収益性を高めるために現在は国内の大手抗体医薬企業との取引に注力をしております。
(4)中長期的な会社の経営戦略
当社の中長期的な事業シナリオは次のとおりです。
① 治療用抗体の臨床開発及び導出戦略
ファースト・イン・クラス抗体であるCBA-1205および、多重特異性抗体であるCBA-1535の臨床開発を進め、第Ⅰ相臨床試験終了後の導出を目指します。CBA-1205については、第Ⅰ相臨床試験の前半パートの症例登録が2021年に完了し、安全性の高さが示されたため、2022年から始まる後半パートでは肝細胞がんの有効性を探索する計画としております。本抗体の導出時期については、前半パートの結果によって導出契約を獲得するケース、後半パートにおいて肝細胞がんに効果を示唆する有用なデータを取得できることによって導出するケースの2つの導出シナリオを想定しておりますが、いずれの場合も導出により2023年末以降において単年度の黒字化を目指しております。また、2022年2月16日にPMDAへ治験計画届を提出したCBA-1535は2022年央の患者さんへの治験薬の投与を目指して、臨床試験の準備を進めております。
② 治療用リード抗体の継続的な創出
アカデミアやバイオベンチャー等との共同研究を軸に、当社の抗体作製技術を用いてアンメットニーズに対するリード抗体を継続的に創出し、製薬企業等へ早期に導出することを目指します。2021年1月にはLIV-2008/2008bの新規導出契約の締結をいたしましたが、当社ではこれに続く新規パイプラインとしてがん治療用抗体のPCDC(ヒト化抗CDCP-1抗体)のPCT出願を完了し同抗体の導出活動を開始しております。さらにPCDCに続く新規パイプラインの創製に向けた基礎研究及び新規の特許出願も推進しております。このようには継続的に新規リード抗体を創出し製薬企業へ導出を推進することで、当社の抗体基盤技術を生かしたリード抗体創製に注力するとともに、単一のプロダクトや契約に依存しない経営を進めております。
③ 開発候補品の継続的な保持
当社が手掛けるような医薬品の研究開発事業は通常、開発期間が長く相当程度の開発中止リスクが伴うため、安定的な成長にはステージの異なる複数のパイプラインの確保が必要となります。当社では自社の創薬研究によってリード抗体を継続的に創出し、新たなパイプラインに加えるだけでなく、外部からのパイプラインの導入も行うことにより、開発ポートフォリオを充足させ開発候補品を断続的に保持することを目指します。また、CBA-1205やCBA-1535に続く自社で手掛ける臨床開発については、2022年以降に新たな臨床開発候補品のCMC開発に着手すべく、当社の創薬プロジェクトの研究活動を積極的に推進するなど、臨床開発候補品の確保にむけた取り組みを進めてまいります。
④ 創薬開発と事業開発の連動
新規の創薬開発においては、将来の提携や早期の導出が実現できるよう、業界での開発動向や既存薬剤による医療ニーズの充足度等を調査、検討の上、最適な創薬ターゲットの選定と出口戦略の策定が重要です。そのため、当社では自社での評価の他に、製薬企業等との情報交換による需要の発掘やアカデミアとの連携などを通じて、ターゲットの選定が適切に行われるよう努めてまいります。その上で提供可能なパイプラインがクライアントのニーズに即していた場合には、早期にライセンス契約へと繋げていくことを目指します。
⑤ 収益最大化を目指した初期臨床開発の実施
医療用医薬品の導出において、一般的には開発後期になるほど医薬品開発の成功確率があがり、それにより導出時の経済条件は有利になります。当社は、一部のパイプラインにおいては前臨床段階での導出のみならず初期臨床開発を実施した上で導出することで、当社の収益性が最大化するような取り組みを進めてまいります。
(5)対処すべき課題
当社が認識する対処すべき課題については以下のように考えております。
① 抗体作製力の維持向上とパイプライン拡充
当社は、抗体医薬の開発候補品を継続的に創出して、革新的な医薬品を待ち望む患者さんに貢献することを目指しておりますが、保有するパイプラインが様々な理由で開発の遅延や中断、中止等になるリスクがあります。また、承認申請にむけた臨床開発は導出後の製薬企業で行われますが、導出先企業の開発戦略変更等によりライセンス契約終了などの影響が生じるリスクがあります。それらの開発や事業上のリスクに対応するためには、開発パイプラインを拡充することにより、開発中止等によって生じる経営上の様々なリスクを分散する必要があると考えております。そのためには抗体作製技術の継続的な改良を行い自社での抗体作製力の向上を図りパイプラインを創出することにより、様々な開発ステージでバランス良く構成された複数のパイプラインを保有してまいります。また、大学や企業等の外部の有望な抗体医薬の候補品の導入も含め、開発パイプラインの拡充を進めてまいります。
② 初期臨床開発の着実なる遂行
当社は、医薬品の研究開発段階の中でも比較的早期の導出を目指しておりますが、初期臨床開発によって得られたデータにより医療用医薬品として承認される可能性を高め、導出時の収益性を向上させることも重要であると考え、自社での初期臨床開発の取り組みも進めております。現在、当社が保有するパイプラインのうち、がん治療用抗体のCBA-1205とCBA-1535については、価値最大化を目指して社外専門家と提携しながら治験計画の策定を行い、また、CRO(*)を活用し、臨床試験を進めております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
1.事業環境に関する項目
(1) 抗体医薬品市場の成長性に関するリスク
現在、世界では100以上の抗体医薬品が上市(*)されており、今後も抗体医薬品市場は安定的に成長するものと見込んでおります。しかしながら、各種疾患のメカニズムや病態の解明により、疾患特異的に作用する分子標的薬の開発、低分子特有の副作用を軽減するために疾患部位に薬を送り届けるデリバリーシステムの開発等との競合や、再生医療による治療の普及等により想定どおりに市場が拡大しない場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 医薬品開発における医薬品医療機器等法その他の規制に関するリスク
当社が参画する医薬品業界は、研究、開発、製造および販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事法、薬事行政指導およびその他関連法規等により、様々な規制を受けております。当社は医薬品医療機器等法をはじめとする現行の法的規制および医療保険制度、それらに基づく医薬品の価格設定動向等を前提として、当社の開発候補品が導出先の製薬企業において上市された場合を想定し事業計画を策定しています。当社の抗体が医薬品として上市されるまでの間、これらの規制や制度・価格設定動向等が変更される可能性があり、これらに大きな変更が発生した場合には、当社の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 医薬品開発に関するリスク
一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と長い時間を要するだけでなく、その成功確率も他産業に比して著しく低い状況にあります。研究開発の初期段階において有望だと思われる化合物や抗体であっても、前臨床試験や臨床開発の過程で有用な効果を発見できないこと等により研究開発が予定どおりに進行せず、開発の期間延長や中止を行うことがあります。このように、各開発品の研究開発には多くの不確実性が伴い、当社の現在および将来における開発品についても同様に不確実性のリスクが内在しております。当社は、研究開発段階から収益が得られるビジネスモデルを構築することにより、各開発品の研究開発リスクの分散を図っておりますが、期待どおりの収益が得られる契約が締結できる保証はありません。このような場合には、当社の事業計画や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 臨床開発に関するリスク
当社は、基礎・探索研究、前臨床試験の事業領域として、開発候補抗体の前臨床データパッケージまでを作成したパイプラインの早期での導出を基本戦略としておりますが、一部のパイプラインについては、収益性や導出可能性を検討した上で、初期臨床開発を実施いたします。臨床開発は長期、高額、かつ不確実なプロセスであり、遅延または更なる必要事項が生じうるものであり、試験の全ての段階において失敗が生じえます。また、臨床試験の中間結果は、その最終結果を予想させるものではなく、開発の初期段階においては有望であるように見える製品候補であっても、失敗する可能性があります。さらに、臨床試験を完了するために十分な被験者を適時に確保できないために、遅延等が生じる可能性もあります。このように、パイプラインの試験を完了するためには数年を要し、試験において遅延が生じた場合、当社パイプラインの開発費用は増加します。大幅な臨床試験の遅延は、当社がパイプラインを導出する能力を害する可能性があります。当社がパイプラインに関し、開発、規制上の承認の取得を成功裡に行うことができず、または導出による収益を認識できない場合、当社の事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 他社との競合について
競合他社が同じターゲットで優れた機能を持つリード化合物を創出した場合は、導出候補先である製薬企業等への導出活動が容易でなくなる可能性があります。また、複数の同業他社の参入に伴いアライアンス活動の競争が激化し当社事業の優位性に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 為替レートの変動に関するリスク
当社は、社外との提携関係の構築をグローバルに展開していることから、海外の取引先との間で外貨建取引を行っております。これまでは、当社の外貨建取引の多くが支払サイトも短いことから、多額の為替差損益を計上することはありませんでしたが、今後の研究開発活動の拡大に伴い、外貨建取引の規模が大きくなった場合や支払サイトの長い外貨建取引を行う場合には、為替レートの変動により当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
2.事業内容に関する項目
(1) 収益計上に関するリスク
創薬事業において、医薬品の基礎研究開始から上市に至るまでには長い年月を要することから、研究開発の成果が事業収益として計上されるまでには長期間を要します。また、医薬品開発の成功確率は近年ますます低くなっており、上市に至らないケースも多いため、最終的に事業収益が計上されない可能性もあります。当社の事業モデルは、前臨床試験段階もしくは臨床試験の初期段階での導出により収益を獲得する事業モデルであるため、導出候補先の製薬企業がその後の開発を実施することになります。このため、臨床試験は導出候補先の製薬企業に依存し、当該導出候補先において順調に臨床試験が進まない場合や経営環境の変化や経営方針の変更など、当社が制御しえない要因が発生した場合には、当該医薬品の開発が遅延あるいは中止となる可能性があります。一方、研究開発が順調に進捗して上市に至った場合であっても、当該医薬品が市場において評価されず、当初契約していた販売マイルストーンなどの収益を計上できない可能性があります。当社は、ステージの異なる複数のパイプラインを確保することで抗体医薬の開発候補品を継続的に創出し、医薬企業への導出を目指しておりますが、契約の締結時期、医薬品開発の進捗状況、医薬品販売開始時期等の遅れによる収益上の期ずれ、また何らかの事由により医薬品開発、販売が中止となる場合には、当社の事業計画および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の取引先に依存するリスク
当社は、中外製薬株式会社及びChugai Pharmabody Research Pte. Ltd.(以下、「中外製薬グループ」)や小野薬品工業株式会社(以下、「小野薬品」)との間で抗体医薬品研究にかかる委託研究取引基本契約を締結しており、当事業年度における当社の売上高に占める両社の割合は高い水準となっております。当社では、委託研究における付加価値を向上させることで、その他製薬企業等から収益を獲得しながら、各クライアントとの良好な取引関係を維持・継続していく方針であります。しかしながら、中外製薬グループや小野薬品の経営方針の変更による委託業務量の減少や契約条件の変更、本契約の解除等が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 知的財産権について
当社は、研究開発活動等において当社が所有しまたは使用許諾を受けた様々な知的財産権を使用しています。当社が創製した技術等について、当社の知的財産権を侵害されるリスクまたは当社が他社の知的財産権を侵害してしまうリスクがあります。こうしたリスクに対応するために、積極的かつ速やかに特許出願等を行うことで排他性の確保を図るとともに、特許情報データベース等を活用して情報収集を行い、当社特許権の侵害および他社関連特許権の早期発見・対応に努めております。すでに基盤技術特許は国内外で成立し、現時点において当社は知的財産侵害に関する訴訟や第三者による請求について認識していませんが、第三者の特許の存在により特許侵害訴訟を提起された場合には多額の訴訟費用を発生させることとなり、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 新規パイプラインに関するリスク
当社が保有するパイプラインの開発上のリスクに対し、当社は、アカデミアやバイオテックとの提携や当社の優秀な人材が持つネットワークを通じてターゲットを獲得し、アンメットニーズに対する医薬品開発に有用な抗体を作製することにより、新規パイプラインの探索および創出を図っており、シーズの導入にも努めております。しかしながら、これらの活動により、新規パイプラインの探索および創出が確実にできる保証はありません。このため、何らかの理由により新規パイプラインの探索および創出活動に支障が生じた場合には、当社の事業戦略および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 技術に関するリスク
当社は、医療におけるアンメットニーズを解決しうるターゲットについて、抗体を用いて医薬品を創出することを目指した研究開発を行っており、基礎・探索研究から前臨床試験までの抗体創薬開発を行い、創製した医薬候補品を製薬企業等に導出するために必要な技術やノウハウを有しております。当社の強みは、ADLib®システムをはじめとした複数の抗体作製技術を用いて作製された抗体を動物試験で評価し臨床開発に向けたデータパッケージを作ることにあり、このうちADLib®システムについては当社が特許を所有しています。しかしながら、当社の強みである抗体創薬研究に関わる技術やノウハウが、他の革新的な技術や安価な技術等で代替できる場合や特許期間が満了した場合等により、その競合優位性が保持できない場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 複数の製薬企業との関係に関するリスク
当社が製薬企業と共同研究契約を締結する場合、当該契約が定めるターゲットに重複が生じないよう配慮しておりますが、研究内容によっては、部分的に重なりが発生する可能性も考えられます。その結果、当社がどちらか一方の企業との共同研究の機会を喪失することで当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 提携先に影響されるリスク
共同研究先の技術および研究開発の進捗に大きな差が生じた場合、また経営不振や経営方針の変更があった場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
3.業績に関するリスク
(1) マイナスの繰越利益剰余金の計上について
当社は安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、事業が計画どおりに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画どおりに解消できない可能性があります。
(2) 資金調達について
当社では、研究開発費が収益に先行して計上され、継続的な営業損失が生じております。今後も事業運転資金や研究開発投資および設備投資等の資金需要が予想されます。製薬企業等とのアライアンスによる収益や新株予約権の権利行使等によるキャッシュインおよび人件費や研究開発活動にかかる投資活動等のキャッシュアウトを見込んだ資金計画を策定しておりますが、十分な事業活動資金を確保できない場合には、当社の事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 減損会計について
当社は事業用の固定資産を保有しておりますが、経営環境や事業の著しい変化などにより事業計画が想定どおり進まない場合や価値の低下があった場合、減損会計の適用により当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
4.その他のリスク
(1) 小規模組織であること
当社は小規模な組織であるため、研究開発体制および社内管理体制もこの規模に応じたものとなっております。このような限られた人材の中で、業務遂行上、取締役および幹部社員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分が大きいため、当社の業容の拡大に応じた人員の増強や社内管理体制の充実等を図っております。しかしながら、一部の取締役および幹部社員の退職により事業活動に不備が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の人物への依存について
当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者や構成員に強く依存しています。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、このような人材確保または育成が計画通りにいかない場合は、当社の財政状態および経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
(3) 新株式の発行による株式価値の希薄化について
当社は資金調達を目的とした増資や新株予約権行使による新株式の発行を機動的に実施していく可能性があります。新株式の発行は当社の事業計画を達成する上で合理的な資金調達手段であると判断しておりますが、発行済株式総数が増加することにより、当社株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(4) 営業機密の漏洩について
当社における事業では、当社は顧客である製薬企業等からの情報を預かる立場にあります。従いまして、当社は役職員との間において顧客情報を含む機密情報に係る契約を締結しており、さらに退職時にも個別に同様の契約を締結し顧客情報を含む機密情報の漏洩の未然防止に努めております。また、抗原名をプロジェクトコード化した社内共通言語を用いた顧客情報管理を実施するとともに、顧客情報へのアクセス制限も行っております。しかしながら、万一顧客の情報が外部に漏洩した場合は、当社の信用低下等により当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 自然災害等の発生について
当社は、地震等の自然災害、大規模事故、火災、テロや戦争、感染症等のパンデミック等が発生した際には、リスク管理規定に基づきリスクを低減する措置を講じます。しかしながら、事業拠点の周辺地域で、または世界的に影響を及ぼす様な大規模な事態が発生した場合には、当社が保有する抗体ライブラリの滅失、データの消失、設備の損壊、各種インフラ及び研究資材等の供給制限、社内や取引先での集団感染等によって、当社の研究開発の進捗及び事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における当社の売上高は創薬事業におけるLIV-2008及びLIV-2008bのライセンス契約締結による契約一時金の受領及び創薬支援事業における研究受託取引の拡大により、712,932千円(前期比232,078千円増加)となりました。研究開発費につきましては、主にCBA-1535に係る治験用の製剤製造費用等のCMC開発費用を計上したことにより1,312,188千円(前期比155,605千円増加)となりました。営業損失は1,334,319千円(前事業年度は1,283,622千円の営業損失)となり、経常損失は1,329,312千円(前事業年度は1,291,606千円の経常損失)、当期純損失は1,479,895千円(前事業年度は1,293,798千円の当期純損失)となりました。当事業年度における当社の事業活動の概況は次のとおりです。
創薬事業においては、自社開発中のファースト・イン・クラス抗体CBA-1205は、第Ⅰ相試験で固形がんの患者さんを対象に、段階的に薬剤の投与量を増加させながら安全性の確認を進める前半パートの患者さんの登録が終了いたしました。これまでのところ重篤な副作用の発生はなく、本パートにおける安全性評価の結果、肝細胞がん患者さんを対象とした安全性及び初期の有効性の評価を行う第Ⅰ相試験後半パートへの移行が決定いたしました。2つ目の臨床開発品目である多重特異性抗体CBA-1535は、2022年の日本での治験開始にむけた準備を進めております。探索段階にある創薬プロジェクトでは、リード抗体の創出、及び知財化に向けた研究開発に継続して取り組んでおります。また、新たな創薬プロジェクト発足にむけた創薬企業やアカデミアとの共同研究に加え、自社のTribody技術を生かした新規テーマを推進するなど、今後の開発パイプラインの質・量の拡充に向けた取り組みを進めております。
・創薬パイプライン(導出品)
スイスのADCT社にADC用途に限定して導出したLIV-1205は現在、ADCT-701として臨床試験に向けた準備が進められており、2022年のIND申請が見込まれています。また、本剤の開発に関しては米国国立がん研究所(NCI)と神経内分泌がんを対象に共同開発を行うことが公表されております。
LIV-2008については、2021年1月に中国のHenlius社との間でLIV-2008及びLIV-2008bのライセンス契約を締結いたしました。これにより、当社はHenlius社に中華人民共和国、台湾、香港及びマカオにおけるLIV-2008及びLIV-2008bの開発、製造及び販売権をサブライセンス権付で許諾し、また、上記以外の全世界における権利についてはオプション権を付与しております。なお、本契約締結により受領した契約一時金(1百万ドル)については、当事業年度において売上として計上しております。また、引き続き製薬企業において導入評価が実施されており、Henlius社のオプション権行使の可能性のみならず、本パイプラインの事業価値向上に資する契約締結の可能性を追求しております。
・創薬パイプライン(自社研究開発・導出候補品)
CBA-1205については、日本国内において臨床第Ⅰ相試験を実施しております。前半パートでは、患者さんへ投与する治験薬の用量を少量から段階的に増やしながら、許容できない副作用を引き起こすことなく安全に投与できる最大用量の確認を進めてまいりました。途中経過から本抗体の安全性が高いことが分かってきたため、当初の計画を変更してより高用量での安全性データの取得も実施いたしました。当事業年度において前半パートの全ての患者さんの登録が完了し、重篤な副作用の発生はありませんでした。その結果、本抗体は安全性、忍容性が高く当初の計画よりも高い用量で後半パートを実施できると判断され、2021年12月に後半パートへの移行を決定いたしました。
CBA-1535については、治験薬製造を委託しているCMOにおいてCMC開発を進め、原薬及び治験製剤の製造が終了いたしました。今般の新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況のなか、当初計画の英国での治験ではなく、相対的に開発への影響が少ない日本国内での治験申請を検討いたしました。当局との相談を行った結果、既に取得したデータで日本国内での治験申請が可能との判断に至り、2022年2月16日に治験計画届を提出しております。本試験は、がん細胞と免疫細胞(T細胞)の双方に結合し、T細胞を活性化してがんを叩くというTribodyの作用機作を検証するための世界初の臨床試験であり、CBA-1535でこのコンセプトが確認されれば他の多くのがん抗原に対するTribodyの適用の可能性が広がることになります。
BMAAについては、既にお知らせしておりますように、2021年5月にSemaThera社との共同開発ライセンス及び独占的オプション契約を終了いたしました。新たに、セマフォリン3Aが関与する疾患に狙いを定めた研究開発、事業開発活動を始めております。
PCDCは、がん細胞の増殖や転移に関わるCDCP1をターゲットとするファースト・イン・クラスのがん治療用抗体です。現在、ADC用途を中心として、外部企業への導出または協業の機会を求めた活動を実施しながら、研究開発活動を進める上で重要となる追加の動物試験等を実施しております。なお、2021年7月1日に世界知的所有権機関(WIPO)にて出願した特許情報が公開されています(WO/2021/132427)。
その他、探索段階にある5つの創薬プロジェクトを保有しておりましたが、当事業年度において研究の進捗状況やデータの精査を行いながら創薬プロジェクトの改廃を実施いたしました。創薬プロジェクトの中でも当社が注力する2つの重点プロジェクトについては、導出計画や開発計画を検討しながら、引き続き事業化に資する研究活動を推進してまいります。また、特許出願までの研究活動は自社で行い、その後はライセンス活動にシフトするプロジェクトの選定なども行っております。また、これまで公表していた5つの創薬プロジェクト以外にも当社では共同研究を通じた創薬研究を実施しておりますが、有望なテーマについては新たな創薬プロジェクトとして発足させております。以上のように、各プロジェクトの進捗に応じて重点プロジェクトの選定、計画の変更や中止、新規テーマの立ち上げ等を行い、創薬プロジェクトを含めて常時10テーマ程度の創薬研究を行うことで、今後の新たな創薬パイプラインの創出にむけた取り組みも継続してまいります。その他、国内のアカデミアと協働で、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に係る感染症領域や技術改良に関する研究も実施しております。
以上の結果、創薬事業における当事業年度の業績は、売上高103,013千円(前期比99,805千円増加)、研究開発費1,312,188千円(前期比155,605千円増加)、セグメント損失は1,209,270千円(前事業年度は1,154,004千円のセグメント損失)となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の独自の抗体作製手法であるADLib®システムを中心とした抗体技術プラットフォームを活かした抗体作製業務や抗体の親和性向上業務のほか、タンパク質調製業務を受託し、製薬企業等の研究支援を展開しております。また、既存顧客との基本契約締結を進めるなど取引基盤の安定化を図る一方で、収益基盤の強化のため新規顧客の開拓も推進しております。
2021年5月には、英国のMologic Ltd.(以下、Mologic社)とADLib®システムを用いた感染症の診断薬用抗体を作製する共同研究契約を締結しました。本契約は最長1年間の契約で、当社はADLib®システムを用いて複数の感染症等の抗原に対する抗体を作製し、Mologic社と共同で診断薬候補として評価を行います。なお、当事業年度に対応する対価を売上高に計上しております。また、ヒトADLib®システムの論文及びNature関連雑誌への記事広告により、製薬企業等からの個別の抗体作製契約などの獲得に至っており、今後の取引拡大に向けた取り組みを行ってまいります。
創薬支援事業における当事業年度の業績は、国内製薬企業を中心として取引が拡大した結果、売上高609,919千円(前期比132,273千円増加)となり、セグメント利益は319,540千円(前期比76,847千円増加)、セグメント利益率は52.4%(目標50%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)の残高は1,790,988千円となり、前事業年度末と比べ895,330千円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,131,291千円となりました。主な内訳は、税引前当期純損失の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は35,384千円となりました。これは敷金及び保証金の増加による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果取得した資金は271,345千円となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
b.受注実績
当社は研究開発を主体としており、受注実績を定義することが困難であるため、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
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販売高(千円) |
前年同期比(%) |
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創薬事業 |
103,013 |
3,211.4 |
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創薬支援事業 |
609,919 |
127.7 |
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合計 |
712,932 |
148.3 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
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相手先 |
前事業年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
当事業年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
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販売高 (千円) |
割合(%) |
販売高 (千円) |
割合(%) |
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小野薬品 |
214,214 |
44.55 |
352,772 |
49.48 |
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中外製薬グループ |
156,030 |
32.45 |
158,004 |
22.16 |
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Henlius社 |
- |
- |
102,500 |
14.38 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
a.経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
当社の事業は創薬事業と創薬支援事業により構成されており、当事業年度の当社業績は、712,932千円と前事業年度と比較し232,078千円の増収となりました。これは主に、創薬支援事業の取引拡大によるもので、同事業の売上高は609,919千円と前期比127.7%となりました。当社の強みである高い業務品質と柔軟な対応力を発揮するため、国内の大手抗体医薬企業との取引を重点的に深化させた結果であり、今後も拡大基調となることを見込んでおります。
コスト面においては、販売費及び一般管理費は1,756,778千円と前期比227,885千円の増加となり、特にCBA-1535のCMC開発等の研究開発費の増加が主な要因となっております。
創薬事業は当社の成長をけん引する事業であり、アンメットニーズに光を当てるための医薬品の研究開発を推進しております。通常、医薬品の研究開発においては、研究資金の先行投資と成功時には大きなリターン、サイエンスの不確実性による開発遅延・中止リスク等と向き合うことになるため、継続的な成長のためには複数の開発パイプラインを確保するなどの手立てを打つことが重要であります。当事業年度においては、CBA-1205の第Ⅰ相臨床試験の後半パートへの移行が決定し、CBA-1535では治験薬製造が完了し2022年2月には治験計画届の提出が完了しており、2つの開発候補品の取り組みが進んでおります。現時点で、当社が同事業において同時期に扱える臨床開発品目数は2から3つと想定しており、予定通り臨床開発に向けた取り組みに至っております。これらの初期臨床開発実施後の導出を目指すことで、前臨床段階の導出と比較し、より大きな経済条件の獲得できることを目指しております。
探索段階にある創薬プロジェクトにおいては、2021年1月にHenlius社とLIV-2008/2008bの導出契約の締結により当社の創薬パイプラインの事業化に至り、今後の当社の収益化の選択肢が拡大いたしました。さらに、がん治療用抗体であるPCDCのPCT出願が完了し、新たに導出活動を始めております。本抗体はLIV-2008/2008bに続く新規の導出契約の締結を目指して今後の導出活動を進めてまいります。また、PCDCに続く新規の創薬パイプライン創出に向けて、現在、創薬研究にも注力しております。以上の結果、当事業年度における創薬事業の売上高は103,013千円、セグメント損失は1,209,270千円となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の抗体の技術プラットフォームを活かして日本の製薬企業やアカデミアの研究支援を実施しております。タンパク質調製業務や抗体作製など個々の業務を担う競合他社が多数ありますが、製薬企業を中心とした当社顧客に対して、高い品質や柔軟な対応を行うサテライトラボとして高付加価値型サービスを提供することを目指し、他の競合企業との差別化を図っております。なお、高付加価値型ビジネスを遂行する上での目標として、セグメント利益率を50%以上維持することとしております。当事業年度においては、日本国内の抗体医薬大手企業との取引の深耕化に重点を置いた結果、創薬支援事業の売上高は当初の業績予想額530,000千円に対し609,919千円と、達成率115.1%となりました。また、セグメント利益率は52.4%、セグメント利益は319,540千円(前年比76,847千円増)を確保しております。
両事業において、当社の強みである抗体作製にかかるコア技術をフル活用することにより、新たなビジネスの成果が芽生え、成果も創出できる状況になってまいりました。短期的には初期臨床開発にかかる研究開発コストが増大することになりますが、創薬支援事業の拡大により当社が捻出できる研究開発資金を増大させるような取り組みを継続してまいります。
なお、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりとなっております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は研究開発型ベンチャー企業であり、研究開発のための先行投資が必要となっております。資本の財源となる収益については、これまで主として提携先製薬企業等から委受託業務による収益を獲得しており、加えて、保有する創薬パイプラインの導出により契約一時金、マイルストーン収入等を計上しております。将来において、当社が保有する創薬パイプラインが新たに導出に至った場合には、契約一時金、マイルストーン収入の増加が見込まれ、また、医薬品が上市された場合には販売ロイヤルティを受領することとなります。導出に至るまでの先行投資期間においては研究開発費の支出等から営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスを計上する計画であり、当事業年度においては、CBA-1205の臨床開発やCBA-1535のCMC開発の進展などによる支払が発生したことにより、営業活動によるキャッシュ・フローは1,131,291千円の支出となりました。
なお、上記先行投資期間における営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスについて、現在既に収益を得ている創薬支援事業における1社ごとの取引量や新たに取引先を拡大することで営業キャッシュ・フローの改善に努めております。また、財務活動によるキャッシュ・フローについては、助成金の獲得や必要に応じた資金調達等により補填を行っております。資金調達においては、新株予約権の発行によるエクイティファイナンスに加え、有利子負債の調達も含めて実施しており、調達上の安定性の確保の観点や財務レバレッジにも留意しております。
資金の流動性につきましては、当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローが1,131,291千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが271,345千円の収入となり、現金及び現金同等物の期末残高は1,790,988千円となりました。
c.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。また、財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載の通り、自然災害等のリスクとして新型コロナウイルス感染症等のパンデミックによるリスクは存在しておりますが 、マスク着用や手指衛生等の基本的な予防策を徹底するほか、Web会議や在宅ワークを推進し接触頻度の低減を図るなど、感染予防策を状況に応じて柔軟に実施しております。こうしたなか、当社の事業は重大な影響なく安定した運営を継続しており、新型コロナウイルス感染症による当社業績への影響は限定的であると考えられることから、会計上の見積り等に重要な影響はありません。
<用語解説>(50音、アルファベット順)
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用語 |
意味・内容 |
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アンメットニーズ |
現状の医療では満たされていない(未充足)ニーズのことです。具体的には、有効な治療法や薬剤がない場合、薬剤があっても使い勝手が悪い、または副作用が強い、一時的に症状を抑えても再発する、時間とともに悪化するような場合、あるいは治療費が非常に高額になるような場合等にアンメットニーズが存在するといいます。 |
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幹細胞 |
幹細胞は未分化な細胞で、色々な細胞に分化できる能力と、いつまでも同じ状態で増殖を維持できる能力を持つ特殊な細胞です。 |
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シーズ |
事業化・製品化の可能性はあるものの、まだ“種または芽(シーズ)”の状態であり、現時点では大きな売上や価値を生み出さないものの、将来の可能性を秘めたモノ、技術やノウハウのことを指します。企業やアカデミアが見出したものの活用していないような技術や特許等も含まれ、当社の場合、研究初期段階のターゲット抗原やその候補、抗体等が有力な候補となります。 |
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上市 |
承認された新薬の市場販売が開始されることをいいます。 |
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前駆細胞 |
幹細胞から特定の体細胞や生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞のことで、幹細胞よりも分化できる能力が限られています。 |
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前臨床試験 |
医薬品の研究開発において、ヒトを対象とする臨床試験の前に行う試験のことです。動物を用いて、医薬品候補化合物等の有効性や安全性を評価します。非臨床試験ともいいます。 |
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相同組換え |
相同組換え(相同的組換え)は、遺伝子配列がよく似た部位(相同部位)の間で起こる遺伝子の組換えメカニズムのことをいいます。ニワトリDT40細胞における抗体遺伝子における相同組換えは、抗体遺伝子の多様性を作り出すための仕組みとして機能しています。 |
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探索研究 |
創薬研究の最初の段階として、医薬品の元となる生理活性を持つ物質を探索する研究段階があります。この研究を一般的に探索研究と呼びます。抗体医薬品の研究開発では、ターゲットである抗原について調べたり、様々な方法で抗体を作製したり、リード抗体を選別するための方法を確立したり、抗体の効果を試験管内の実験や予備的な動物実験により確かめたりする初期段階を探索研究と呼んでいます。 |
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導出(ライセンスアウト) |
特許権やノウハウ等を他者に売却したり、実施許諾することをいいます。 |
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導入(ライセンスイン) |
他者が持つ特許権やノウハウ等を買い取ったり実施許諾を受けたりすることをいいます。 |
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動物免疫 |
動物に抗体を作らせる方法のことです。抗原タンパク質や抗原タンパク質を発現する細胞などを注射すると、その動物の免疫反応により体内に抗原に対する抗体が作り出されます。 |
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特異的抗体 |
ある特定の抗原に結合する抗体です。 |
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トリコスタチンA(TSA) |
ニワトリDT40細胞にクロマチン弛緩を誘導するために利用する薬剤で、ヒストン脱アセチル化酵素という種類の酵素の働きを阻害する作用があります。ADLib®システムにおいて、ニワトリDT40細胞の抗体遺伝子組換えを活性化することによって、抗体タンパク質の多様性を増大させる役割を担う薬剤です。 |
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バイスペシフィック抗体 |
通常、抗体は抗原を認識する部位を2つ持っており、それらは同じ抗原を認識します。それに対し、2つの抗原認識部位がそれぞれ別のターゲット(抗原)を認識するものをバイスペシフィック抗体といいます。 |
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パイプライン |
新薬として開発している医薬品候補化合物等のことを「パイプライン」といいます。創薬研究から臨床開発を経て関係当局の承認を受けるまでの活動を「創薬」と呼び、「創薬パイプライン」とは創薬のいずれかの段階にあるパイプラインのことをいいます。また、創薬パイプラインのうち開発段階に入ったパイプラインのことを、特に「開発パイプライン」ということがあります。 |
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ハイブリドーマ法 |
抗原を免疫した動物から抗体を作り出すB細胞を取り出し、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させて、抗体を作り続ける細胞(ハイブリドーマ)を作製する方法です。 |
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ヒト化抗体 |
遺伝子工学の技術により、マウス等の抗体分子の抗原結合部位をヒトの抗体分子に移植した抗体。マウス等由来のアミノ酸配列は全体の5%ほどで、残り95%はヒト由来のアミノ酸配列となるため、ヒトに投与した場合に異物として認識される可能性が軽減されます。 |
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ファースト・イン・クラス |
一般的には、その作用機序の医薬品の中で市場に最初に登場した医薬品を指します。類似薬がないことから高い薬価と高い売上が期待できます。抗体の場合は、あるタンパク質(抗原)をターゲットとする初めての抗体医薬をファースト・イン・クラス抗体と呼びます。当社ではそうした抗原をターゲットとすることで、これまでにない医薬品候補抗体の開発を目指し、治療充足度が十分でない疾患の治療に貢献します。 |
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マイルストーン |
導出後の臨床試験等の進捗に伴い、その節目(マイルストーン)ごとに受領する収入のことをいいます。 |
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免疫寛容 |
特定の抗原(例えば、自身の体の構成成分やそれに似ているもの)に対して免疫反応が起こらない状態をいいます。 |
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免疫反応 |
生体に侵入してきた異物を排除する生体反応のことをいいます。 |
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モノクローナル抗体 |
単一の抗体産生細胞から得られた抗体のことをいいます。モノクローナル抗体は1つの抗原にのみ結合し、また結合する場所が決まっているため、均一で再現性の高い抗体になります。そのため、抗体医薬品の多くは、モノクローナル抗体が使われています。当社では、ADLib®システム、ハイブリドーマ法、B cell cloning法によりモノクローナル抗体を取得することができます。 |
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ライブラリ |
ADLib®システムでは、多種多様な抗体を産生する細胞集団のことをライブラリと呼びます。ライブラリに含まれる細胞が産生する抗体の種類が多いほど、目的に合った抗体を取得できる確率が高くなります。当社では、トリライブラリ、マウスキメラライブラリ、ヒトライブラリを所有しており、顧客ニーズに合わせてライブラリを選択し、抗体作製を行っています。 |
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リード抗体 |
ADLib®システム、ハイブリドーマ法、B cell cloning法などの様々な手法で作成した抗体の中から、親和性、特異性、生物活性、安定性などのスクリーニングによって見出された医薬品になる可能性を有する抗体群をリード候補抗体と呼び、これらのリード候補抗体群のうち、医薬品としてその後の最適化などのステップに進めるための抗体をリード抗体と呼びます。 |
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臨床試験 |
臨床試験には、次の3段階があります。 第Ⅰ相試験(フェーズⅠ):少数の治験参加者を対象に、治験薬の安全性と治験薬が体内に入ってどのような動きをするのかを確認する試験 第Ⅱ相試験(フェーズⅡ):第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で、比較的少数の患者さんを対象に、治験薬の有効性(効果)、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)・用量(最も効果的な投与量)を確認する試験 第Ⅲ相試験(フェーズⅢ):第Ⅱ相試験で確認された用法・用量で、多数の患者さんに治験薬を対象に、有効性と安全性を検証する試験 初期臨床試験は主に第Ⅰ相試験および初期の第Ⅱ相試験のことを指し、治験薬の安全性を主に、有効性の兆しを観察します。 |
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ロイヤルティ |
製品が販売(上市)された後に、その販売額の一定比率を受領する収入のことをいいます。 |
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ADC |
抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate)のことを指します。例えば、悪性腫瘍の細胞表面だけに存在するタンパク質(抗原)に特異的に結合する抗体に毒性の高い薬剤を結合させると、そのADCは悪性腫瘍だけを死滅させることができます。このため、比較的副作用が少なく効き目の強い薬剤となる可能性があります。 |
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ADCC活性 |
抗体依存性細胞傷害活性(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity)のことです。抗体薬には、がん細胞の表面に発現する標的抗原(標的分子)に結合し抗腫瘍効果を示す直接的な作用のほかに、患者さん自身の免疫細胞(マクロファージやNK細胞等)を介して抗腫瘍効果を発揮する作用があります。そのため、標的抗原の発現量だけでなく、患者さん自身の免疫状態、特に抗体薬が生体内の免疫細胞をがん周囲に呼び寄せ、集まった免疫細胞を活性化することで大きな治療効果を期待できることがあります。このような作用をADCC活性といいます。 |
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ADLib®(アドリブ)システム |
ライブラリから特定の抗原を固定した磁気ビーズを用いて目的の抗原に結合する抗体産生細胞を取り出す仕組みです。ADLib®システムで用いるライブラリは、ニワトリのBリンパ細胞由来のDT40細胞の持つ抗体遺伝子の自律的な相同組換えを活性化することによって、抗体タンパク質の多様性が増大しております。既存の方法に比べ、迅速性に優れていることおよび従来困難であった抗体取得が可能になる場合があること等の点に特徴があると考えております。 |
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B細胞 |
リンパ球の1種で骨髄由来の細胞です。抗原の侵入に応答して増殖し、抗体(免疫グロブリン)を生産する細胞へと分化して抗体を産生します。 |
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B cell cloning法 |
目的の抗原への結合性抗体を産生する単一のBリンパ細胞を選択し、抗体遺伝子をクローニングする手法のことです。ハイブリドーマ法と異なり、増殖し続ける能力を持った特殊な細胞(ミエローマ細胞)と融合させる工程を省くことができます。 |
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BMAA(抗セマフォリン3A抗体) |
セマフォリン3Aは神経の先端の伸長を制御する因子として発見されました。これまでの研究により、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また炎症・免疫反応やがん、骨の形成、アルツハイマー病、糖尿病合併症等とも関連していることが報告されております。抗セマフォリン3A抗体は、この因子の働きを抑えることによりアンメットニーズの高い各種疾患の治療薬開発に結びつくことが期待される抗体です。本抗体は、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムで取得されました。 |
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CMC |
Chemistry, Manufacturing and Controlの略で、医薬品の原薬・製剤の化学・製造およびその品質管理を指します。 |
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CMO |
Contract Manufacturing Organizationの略称で、製薬会社から医薬品(治験薬・市販薬を含 む)の製造を受託する企業を指します。医薬品を製造するためには、GMP(医薬品等の製造管理 および品質管理に関する基準)をクリアする必要があり、CMOはGMPに対応できる技術力と、開発ライン・製造ラインの設備を備えています。 |
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CRO |
製薬企業が行う臨床試験を支援する組織(Contract Research Organization)のことです。質の高い臨床試験が実施できるように試験計画などのコンサルティングなどを行い、臨床試験のスピード化、質の向上、人件費の最小化などの役割を担っています。 |
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DT40細胞 |
ニワトリのファブリキウス嚢(鳥類に特有な一次免疫器官)から取り出され、がん遺伝子の導入により不死化されたB細胞の1つです。このDT40細胞株では抗体遺伝子の相同組換えが高頻度で起きることが知られており、当社ではさらに薬剤により抗体遺伝子組換えを人為的に誘導して、多様な抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。これがADLib®システムの技術の基になっています。 |
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PCDC(抗CDCP1抗体の社内コード) |
標準治療耐性のがん種を含む幅広い固形がんで発現(肺、結腸直腸、膵臓、乳、卵巣がんなど)するファースト・イン・クラスとなる標的分子CDCP1に対するヒト化抗体です。細胞内に入り込むインターナリゼーション能が高いことから、薬物との複合体であるADCとしての効果が期待されます。 |
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T細胞 |
リンパ球の一種で、免疫反応の司令塔として重要な役割を果たす細胞。T細胞はその機能によって、免疫応答を促進するヘルパーT細胞、逆に免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞、病原体に感染した細胞や癌細胞を直接殺すキラーT細胞などに分類されます。 |
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Tribody |
多重特異性抗体を作製する自社の技術であるTrisoma®で作製された抗体の商標です。バイスペシフィック抗体は2種類の標的(抗原)に結合することができますが、Tribodyは抗原結合部位が3ヶ所あるので最大3種類の抗原に結合することができ、より特異性の高い抗体を作成することができます。 |
当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。
(1) 基盤技術に関する特許ライセンス契約
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相手方の名称 |
相手先 の 所在地 |
契約締結年月 |
契約期間 |
契約内容 |
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理研 |
日本 |
2011年1月 |
2011年1月1日から 2023年7月28日まで |
ADLib®システムの基盤特許に関する実施権及び再実施権の取得、及びその対価である一定比率のロイヤルティの支払い |
(2) 業務委受託契約
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相手方の名称 |
相手先 の 所在地 |
契約締結年月 |
契約期間 |
契約内容 |
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中外製薬 |
日本 |
2011年6月 |
2011年7月1日から 2024年12月31日まで (注1) |
効率的な抗体医薬品の開発に必要な研究材料の調製等の業務 |
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CPR社 |
シンガポール |
2012年8月 |
2012年8月1日から 2026年12月31日まで (注2) |
効率的な抗体医薬品の開発に必要な研究材料の調製等の業務 |
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小野薬品 |
日本 |
2018年10月 |
2018年10月1日から 2022年3月31日まで (以後半年毎の自動更新) (注3) |
新規抗体作製および抗原・タンパク質調製等の業務 |
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協和キリン |
日本 |
2019年7月 |
2019年7月29日から 2022年7月28日まで (1年毎の自動更新) |
新規抗体作製および抗原・タンパク質調製等の業務 |
(注)1.2021年10月18日付覚書により2024年12月31日まで契約延長
2.2021年10月20日付覚書により2026年12月31日まで契約延長
3.2020年3月3日付覚書により2022年3月31日まで契約延長
(3) ライセンス契約
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相手方の名称 |
相手先 の 所在地 |
契約締結年月 |
契約期間 |
契約内容 |
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富士レビオ |
日本 |
2010年9月 |
特許期間満了まで (ただし、共同研究開発は2010年9月30日から2016年9月30日まで) |
ADLib®システムの非独占的実施許諾及び共同研究開発契約 |
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富士レビオ |
日本 |
2013年6月 2019年6月 2022年2月 |
特許期間満了まで |
ADLib®システムの使用により取得した体外診断用医薬品の製造及び販売に係る実施許諾 |
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ADCT社 |
スイス |
2017年9月 |
2017年9月から国ごとに特許満了日または販売開始から10年のいずれか遅い日まで |
DLK-1抗体のADC用途(PBDによる開発用途に限定)での全世界におけるサブライセンス権付の独占的な開発・製造・販売権を供与(注4) |
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Henlius社 |
中国 |
2021年1月 |
2021年1月から国ごとに特許満了日または販売開始から一定年数経過日のいずれか遅い日まで |
LIV-2008およびLIV-2008bの中国、台湾、香港およびマカオにおけるサブライセンス権付の独占的な開発・製造・販売権を供与(上記以外の全世界における権利についてはオプション権を付与) |
(注)4.2020年11月に変更契約を締結し契約内容の一部を変更。ADC開発用途を低分子薬剤ピロロベンゾジアゼピン(PBD)に限定。
当社は研究開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を研究開発活動に集中しております。研究開発費は当社が保有するパイプラインの開発費、次期開発候補品の基礎・探索から創薬研究、並びに創薬基盤技術の研究にかかる費用で構成されております。研究開発活動の具体的な内容は、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。