第2 【事業の状況】

1 【事業等のリスク】

当中間会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営成績の分析

当社は、グローバルで拡大を続けるクリエイターエコノミー市場において、サービス・プラットフォームを開発・提供する事業を展開し、さらなる成長の実現を目指して、収益基盤と経営体制の強化に取り組んでおります。

2023年のUI/UX事業の譲渡による構造改革、2024年の東証プライム市場への上場、そして2025年1月に行った子会社・株式会社&DC3の吸収合併を経て、次の成長に向けた経営体制の構築が完了し、新たに「中期経営計画 2025-2027」を策定いたしました。本中期経営計画においては、「クリエイションで夢中を広げよう」をビジョンに掲げ、クリエイターエコノミー市場において、作品をつくるクリエイターと、それらを楽しむオーディエンスの活動の道程「CREATOR JOURNEY」をサポートするサービス提供を通じて「一人ひとりの夢中がつなぐ、もっとカラフルな世界」の創造を目指してまいります。なお、中期経営計画では、期間中のROE30%以上を重要なKPIとして設定しております。

(「中期経営計画 2025-2027」https://www.celsys.com/files/user/pdf/ir/info/2025/info_2025-0214a.pdf)

中期経営計画の策定に伴い、従来の事業セグメントを見直し、これまでイラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の開発・販売を中心とする「コンテンツ制作ソリューション事業」及び「DC3ソリューション」や、「電子書籍ソリューション」から構成されていた「コンテンツ流通ソリューション事業」の2セグメントを、単一セグメントに統合いたしました。これにより、当事業年度からは前者を「クリエイターサポート分野」、後者を「クリエイタープラットフォーム分野」と再定義しております。

引き続き「CLIP STUDIO PAINT」の収益力をさらに強化しながら、事業領域をクリエイターエコノミー市場全体へと拡大し、制作ソリューションで築いたクリエイターからの信頼や強みと、流通ソリューションで蓄積した資産を活用することで、新たにクリエイタープラットフォーム分野でもサービスを開発・提供し、新たな事業の柱とすることを目指してまいります。

当事業年度におきましても、ソフトウエアIPを核とした経営に重点を置き、戦略的な開発投資を継続して行い、企業価値の向上に注力しております。

その結果、当中間会計期間の売上高は4,738,790千円、営業利益は1,533,845千円となりました。

経常利益は、営業外収支として受取配当金21,283千円及び受取利息2,598千円を計上した一方で、自己株式取得手数料8,505千円及び為替差損18,750千円を計上したこと等により1,531,173千円となりました。中間純利益は、株式会社&DC3の簡易吸収合併に伴う抱合せ株式消滅差益153,875千円を特別利益として計上した一方で、当社の保有する投資有価証券の一部が時価の下落等により取得価額を著しく下回ったことから投資有価証券評価損480,307千円を特別損失として計上し、法人税等371,488千円を計上したことにより、870,713千円となりました。2025年2月14日に開示した通期業績予想に対する進捗率は、売上高が52.2%、営業利益が60.0%となっております。

なお、当社は、前中間会計期間は中間連結財務諸表を作成しておりましたが、当中間会計期間より中間財務諸表を作成していることから、前中間会計期間との比較分析は行っておりません。

 

また当社は、株主還元を重視しており、自己株式の取得については、2022年12月期に10億円、2023年12月期に20億円、2024年12月期に15億円、当中間会計期間に5億円と、累計で50億円分を実施しております。また2025年8月8日発表の「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」のとおり、2025年8月から新たに5億円の自己株取得を予定しております。あわせて、2025年12月期の1株当たり配当につきましては、プライム市場上場記念配当10円を含めた中間配当22円、期末配当14円を予定しており、年間配当金は合計36円(前年より12円の増配)を見込んでおります。

 

 

分野別の売上高は、次のとおりです。

 

当事業年度

中間会計期間

金額(千円)

クリエイターサポート

4,044,163

クリエイタープラットフォーム

694,627

合 計

4,738,790

 

 

<クリエイターサポート分野>

クリエイターサポート分野は、グラフィック分野で活動するクリエイターの創作活動をサポートする、イラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」の提供を通じて、コンテンツの制作に関わるサービスをグローバルに展開しております。

主力サービスである「CLIP STUDIO PAINT」は、累計出荷本数が2025年6月に5,259万本(前年同月比27.3%増)に達しました。また、同アプリのサブスクリプションモデルによるSaaS提供のARR(年間経常収益)は、2025年6月に48.3億円(前年同月比30.2%増)となり、過去最高となっております。

当社が注力している、「CLIP STUDIO PAINT」におけるサブスクリプションモデルでのライセンス提供は、利用開始時の価格が抑えられており、ユーザーの導入ハードルを下げる一方で、買い切りモデルに比べて短期的な収益性は限定的です。しかしながら、継続利用による中長期的な安定収益が見込めることから、今後も契約数の拡大に取り組んでまいります。

なお、「CLIP STUDIO PAINT」の月次のチャーンレートは2025年6月末が5.0%となっております。

「CLIP STUDIO PAINT」は世界11言語に対応しており、出荷の約80%が日本語以外の海外市場向けです。引き続き、売上高及び利用者数の増加を目的に、英語、スペイン語、ドイツ語、韓国語等はもちろんのこと、今後の成長期待が大きい、中国語(簡体字)、タイ語、インドネシア語、ブラジルポルトガル語に対するマーケティングや決済手段のローカライズ強化も進めてまいります。

当中間会計期間では、2025年3月に「CLIP STUDIO PAINT」の売上及びユーザー数の底上げを目的に、「CLIP STUDIO PAINT」のメジャーバージョンアップを実施し、Ver.4.0の提供を開始しました。グローバルで提供開始したVer.4.0は、多くの反響をいただき、当初計画を上回る売上実績となりました。

Ver.4.0以降の最新機能を利用するためには、買い切りモデルのユーザーもサブスクリプション契約、または、新バージョンの優待購入が必要となる提供モデルとしております。これにより、サブスクリプション契約の増加や、既存の買い切りモデルユーザーからの新バージョン購入により収益が伸長しました。

また、同メジャーバージョンアップにあわせて、収益性の向上と継続的なサービス提供を実現することを目的に、買い切り版の価格を改定し、最大8%の値上げも行っております。今後も、定期的なメジャーバージョンアップとサービスの価値向上に応じた価格改定を行ってまいります。

今年の7月においては、新たに「CLIP STUDIO PAINT」のPC環境での中国語(簡体字)に対応したライセンス提供を開始し、全世界で簡体字を利用する多くのクリエイターの創作活動をサポートする等グローバル展開の強化に努めております。あわせて先行して提供していた「CLIP STUDIO PAINT」のiPad環境における中国語(簡体字)版の価格改定も行っており更なるグローバル展開の強化に努めております。

あわせて、2025年8月6日発表の「子会社設立に関するお知らせ」のとおり「CLIP STUDIO PAINT」におけるグローバルでの決済手段拡充を目的として海外に子会社を設立することといたしました。これにより、より多くのユーザーがスムーズに決済ができる環境を整備し、「CLIP STUDIO PAINT」のグローバル展開を一層強化してまいります。

2025年1月には、サブスクリプションモデルにおける利便性向上及び収益の拡大を目的に、有償の追加サブスクリプションとして、クラウドストレージ容量拡大サービスの提供を開始いたしました。

2025年2月には、「CLIP STUDIO PAINT」がワコムの新製品「Wacom Intuos Pro」にグローバルでバンドルされる形で提供が開始されました。バンドルされた「CLIP STUDIO PAINT」は一定の利用期間後にサブスクリプション契約へ移行するモデルであり、新規契約の増加及び海外ユーザーの獲得が期待されます。

2025年3月に企業・教育機関向け「CLIP STUDIO PAINT ボリュームライセンス」が、新設の学校法人日本財団ドワンゴ学園のオンライン大学「ZEN大学」のカリキュラムに導入され、若年層に向けた認知度やユーザー層の拡大を実現します。なお、ZEN大学の系属校である、学校法人角川ドワンゴ学園が運営する「N高等学校・S高等学校」及び「N中等部」においても、すでに「CLIP STUDIO PAINT」が導入されています。

2025年4月には、「CLIP STUDIO PAINT」がSamsungの新製品「Galaxy Tab S10 FE」及び「Galaxy Tab S10 FE+」にグローバルでプリインストールされる形で提供が開始されました。プリインストールされた「CLIP STUDIO PAINT」は一定の利用期間後にサブスクリプション契約へ移行できるモデルであり、シンプルなユーザーインターフェースを実現することで初心者でもすぐに創作活動を始めることができることから、グローバルで若年層やライトユーザーへの拡大が期待されます。

2025年6月には、「CLIP STUDIO PAINT」がワコムの新製品「Wacom Cintiq」にグローバルでバンドルされる形で提供が開始されました。また「WEBTOON®」が主催するフランス語圏のクリエイター向けのWebcomicコンテスト「WEBTOON CONCOURS 2025」への協賛や、ドイツ最大級の日本のポップカルチャーイベント「DoKomi 2025」への協賛等、グローバル展開を加速させており海外ユーザーを中心とした新規ユーザーの増加やサブスクリプション契約の増加が期待されます。

 

<クリエイタープラットフォーム分野>

クリエイタープラットフォーム分野では、クリエイターサポート分野のコンテンツ制作ソリューションで培ったクリエイターからの信頼や強みと、流通ソリューションにおける資産を活用して、新規サービスを開発・提供・運用し、クリエイターの創作活動の活性化を図ると共に、事業の拡大を目指してまいります。

当中間会計期間では、クリエイターエコノミー市場におけるエコシステム、グローバルでの業界動向やサービスに関する調査を進めながら、新規プラットフォームサービスの企画・検討を推進してまいりました。2026年の正式サービス開始を目指して、2025年7月より開発を開始いたしました。あわせて、社内の配置転換を通じた人材の最適化で新規サービス開発に向けた組織体制の強化にも取り組んでおります。

また、従来より提供している、「CLIP STUDIO PAINT」の利用をサポートするコミュニティサービスの運営を行いながら、継続的な機能改善を実施して「CLIP STUDIO PAINT」のサブスクリプション契約者の継続利用率向上に努めております。さらに、漫画家志望者と新たな才能を探すマンガ編集者のマッチングを支援するサービス「モチコミonline」等の運営や、機能改善アップデートを実施し、プラットフォームサービスの利用者数の増加に努めました。

なお、流通ソリューションにおいては、DC3ソリューションや電子書籍ソリューションの動作最適化・UI/UX改善を実施しながら、新規プラットフォームサービスにおける活用の検討を行っております。

2025年3月には、当社が提供するクリエイタープラットフォームサービスの全世界での利用者数は、1,000万人超え(前年同月比17.6%増)となりました。

2025年5月には、デジタルコンテンツ流通基盤ソリューション「DC3」が、出版社である株式会社トゥーヴァージンズのデジタル書籍ストア「TWO VIRGINS DIGITAL(トゥーヴァージンズデジタル)」に採用され、人気イラストレーターによる作品集シリーズ「THE VISUAL」が「DC3」のコンテンツとして販売が開始されました。

2025年6月には、出版取次大手である株式会社トーハンの電子コミックレーベル「Freedia comics(フリーディアコミックス)」において当社が提供する電子書籍データの校閲ツールが採用されました。

また、当社はソニー株式会社と協力し、ソニー株式会社のモーション制作統合アプリケーション「XYN Motion Studio」のモーション素材を当社が運営する素材サービス「CLIP STUDIO ASSETS」にて提供し、クリエイターへより良い創作環境を提供いたしました。これにより「CLIP STUDIO PAINT」の新規ユーザー獲得・既存ユーザーの満足度向上に加えて、「CLIP STUDIO ASSETS」の活性化を実現しております。

 

(2)財政状態の分析

(資産の部)

当中間会計期間末の総資産は、前事業年度末と比べて236,740千円増加し8,393,398千円となりました。この主な要因は、投資有価証券が217,469千円、ソフトウエアが88,736千円、関係会社株式が44,915千円減少したものの、営業収入の増加等により現金及び預金が312,712千円、売掛金が163,105千円、ソフトウエア仮勘定が188,365千円増加したこと等によるものであります。

(負債の部)

当中間会計期間末の負債は、前事業年度末と比べて52,424千円減少し2,839,314千円となりました。この主な要因は、買掛金が69,996千円、前受金が144,429千円、賞与引当金が137,757千円増加したものの、未払金が49,468千円、未払法人税等が355,523千円減少したこと等によるものであります。

(純資産の部)

当中間会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べて289,165千円増加し5,554,084千円となりました。この主な要因は、自己株式取得により自己株式が483,007千円増加したものの、利益剰余金が500,083千円増加、その他有価証券評価差額金が265,792千円増加したこと等によるものであります。なお、自己資本比率は、65.3%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの分析

当中間会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、5,456,843千円となりました。なお、当中間会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、1,352,611千円となりました。これは主として、賞与引当金の増減額137,757千円、投資有価証券評価損益480,307千円、税引前中間純利益1,242,201千円等の資金の増加要因に対し、抱合せ株式消滅差損益153,875千円、法人税等の支払額727,542千円等の資金の減少要因があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、374,032千円となりました。これは主として、ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出395,570千円や投資有価証券の売却による収入40,440千円等があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、869,795千円となりました。これは配当金の支払額369,784千円や自己株式の取得による支出500,011千円があったことによるものであります。
 この結果、現金及び現金同等物の当中間会計期間末残高は、5,456,843千円となりました。

なお、当社は、前中間会計期間は中間連結財務諸表を作成しておりましたが、当中間会計期間より中間財務諸表を作成していることから、前中間会計期間との比較分析は行っておりません。

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

当中間会計期間において、当社が対処すべき課題について、重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

当中間会計期間における研究開発費の計上はありません。

なお、当中間会計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3 【経営上の重要な契約等】

当中間会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。