文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
私たちは、取り組むべき事業について、“社会に貢献し、社会の発展に寄与してこそ本当の事業である”と考えています。
産業発展の歴史は生産性向上の歴史とも言えますが、当社は1950年設立以来、顧客の生産性向上に寄与することで社会の発展に寄与することを基本方針に掲げ、日本の中核産業であるものづくり産業の、その根幹に関わる切削工具と耐摩工具の販売に特化することで、ものづくり産業の発展に貢献してきたと自負しております。
今後も、当社グループは『ものづくりに携わるすべての人々に寄り添い、世界に「できる」を生み出す。』を存在意義として、対話を繰り返すことで相互の理解を深めながら、提案営業(顧客に潜在する問題点を見つけ出し、自社で提供する商品と使い方の提案にて解決策を提示する営業スタイル)の質を高め、ものづくり産業の生産性向上と付加価値の向上を通じて、社会に貢献してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは継続的な事業の拡大を通じて企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。新中長期経営計画ローリングプラン(FY76-FY80)(※2024年5月28日付で当初計画「新中長期経営計画(FY74-FY78)」の数値計画等をローリング)におきましては、引き続き「売上高」「営業利益」「ROE」を重要な経営指標と位置づけ、真の生産性向上に貢献する、「ものづくりの専門商社」を目指し、諸施策を実行してまいります。
なお、当連結会計年度の新中長期経営計画(FY74-FY78)の2年目の各達成状況は次のとおりであります。
売上高 (FY75計画) 32,000百万円 (FY75実績) 28,644百万円 計画差 △3,356百万円
営業利益 (FY75計画) 1,280百万円 (FY75実績) 752百万円 計画差 △528百万円
ROE (FY75計画) 11.0% (FY75実績) 7.1% 計画差 △3.9pt
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社を取り巻く経営環境は、自動車のEV化や海外移転の加速など製造業の外部環境は目まぐるしく変化しており、業界内の競争は年々厳しさを増しております。加えて、経済社会活動の正常化が進み、インバウンド需要の復調等が見られるものの、為替動向の懸念や世界的な物価高、また不安定な国際情勢等により、依然として不透明な状況が続くものと思われます。こうした環境の変化を機会と捉え、当社の強みである切削工具や耐摩工具に関する専門性を発揮し、国内市場では、有力代理店の囲い込み、人材育成、全国各地への新規出店、有力な海外メーカーの発掘、テクニカルセンターにおける新商品の加工テストやデータ分析やグリーン市場への進出・開拓等により新規顧客獲得に努めてまいります。また、新中長期経営計画ローリングプラン(FY76-FY80)におきましては、サステナビリティ経営の実現に向けた「持続的成長」と「改革」の5つの戦略骨子として以下のとおり定め、企業価値の向上に努めてまいります。

(4) 会社の対処すべき課題
当社グループは、切削工具を主たる販売商品として対面販売による営業活動を行い、国内外の製造業者の生産性の向上に寄与することで事業を拡大してまいりました。今後の我が国経済の見通しにつきましては、雇用・所得環境が改善する中、国内経済の景気回復は緩やかに継続する見込みである一方、世界的な金融引締めに伴う影響や物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動、為替動向の影響など懸念材料も多く、先行きは未だ不透明なまま推移することが予想されます。
このような環境の中、改めて経営の基本方針である「社会に貢献し、社会の発展に寄与してこそ本当の事業である」という考えのもと『ものづくりに携わるすべての人々に寄り添い、世界に「できる」を生み出す。』という当社の存在意義に立ち返り、以下の事項を当社グループの対処すべき課題として取組みを進めてまいります。
①商品力の強化
当社グループは、発注から納品までリードタイムを要する切削工具事業において、顧客への即時納品体制を重視し、商品の先行手配による早期在庫化や、国内市場で同業他社との競合がない、あるいは少ない商品を選定し代理店として販売するなど、販売商品の「幅」と「奥行き」の充実を基本的な方針としております。従って、同業他社との差別化を推し進めるために、今後もプロダクト・ミックスを重視した商品力の強化に取り組んでまいります。
加えて、カーボンニュートラルの実現に向けたトレンドが強まるなか、求められる事業の抜本的な変革に対し、いち早く対応するため環境に配慮した商品の選定とラインナップの拡充に取り組んでまいります。
②営業活動の効率化
対面販売を基本とする営業活動を少しでも効率化するため、インターネットを利用したWEB販売システム「Cominix On-Line」を構築しております。このシステムの登録ユーザーは、システムにログインすることで24時間いつでも取扱い商品の在庫状況と購入価格の確認ができ、発注することができます。
今後も、このシステムの利用率を高めることで、営業活動の効率性を高めてまいります。また、連結子会社においてeコマースサイト「さくさくEC」を展開し、効率的に新たなマーケットへの販路拡大を進めてまいります。
③社員教育
商社の競争力は社員の能力であるため、社員教育・人材への投資には力を入れており、豊富な商品知識をもとに「ものづくりに携わるすべての人々に寄り添える人材」であることが、他社との差別化・競争力の源泉と考えており、優秀な人材を育成することが当社の持続的な成長に繋がると考えております。当社では年間を通じて計画的に海外メーカーや専門研修機関による研修の実施や、外部研修機関を利用した階層別研修プログラムを導入するなど、成長を実現する人材育成の仕組みづくりに取り組み、社内テクニカルセンターを活用し、独自で蓄積してきたノウハウや知識の伝達に取り組み、今後も社員のスキル向上に努めてまいります。
④海外市場への展開
国内製造業においては、日本経済の停滞や海外新興国の成長を受け、生産拠点の海外移転が進んでおります。当社グループとしては、海外展開を進める日系製造業の需要に対応するため、中国、東南アジア諸国、北米等への海外展開を積極的に進めております。国内販売で培った販売ノウハウや仕入先メーカーへの交渉力を使い、海外に現地法人を設立し、事業を進めてまいります。
⑤耐摩工具事業、光製品事業の育成
国内の切削工具の需要は、自動車市場が大きなウエイトを占めておりますが、我が国では2030年の次世代自動車普及目標を掲げ、EV車の普及促進に力を入れており、全世界的にもエンジン車からEV車への切り替えが進んでおります。EV化が進むと切削加工が減少し、切削工具の需要も減少する可能性があります。当社グループとしては、主力事業の切削工具販売以外の耐摩工具事業、光製品事業の育成も進めております。
⑥国内製缶業界以外の耐摩工具の販売先開拓
当社グループの耐摩工具事業においては、国内製缶業界向け製缶工具の販売割合が高い状況となっております。今後は、国内製缶工具の販売で培った技術力やノウハウを活かし、海外の製缶業界への販売及び、EV業界への販売など国内の製缶業界以外への販売を開拓し進めてまいります。
⑦切削工具卸売業界の再編に備えた財務体質強化
製造業の海外移転の加速により、国内市場の大きな成長が期待できなくなっており、当社グループの所属する業界は再編の動きが出る可能性があります。当社グループもシェア拡大を目指し、時にはM&Aにも備えて積極的に再編に動けるよう、総資産のうち十分な手元流動性を確保すると共に、資産効率性の改善を図りながら自己資本利益率を向上させ財務体質の強化を進めてまいります。
(1) サステナビリティ全般
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、設立以来ものづくり産業に寄り添い続けることで社会の発展に寄与してまいりました。今後も、当社グループがステークホルダーの皆様とともに、持続的に存続的な成長と繁栄を実現していくためにはサステナビリティへの取り組みを加速させ、ものづくり産業の生産性向上、付加価値の向上に貢献していく必要があると考えております。
①ガバナンス
当社では、2021年12月に社長執行役員を委員長とするサステナビリティ推進会議を設置しており、環境保全をはじめとしたサステナビリティに関する活動方針・活動計画・施策の審議および決定を行っております。これらの取り組みは取締役会に報告し、推進の進捗状況に関する監督を行っております。

②戦略
当社グループでは、国際的な社会規範などで定められた社会課題やメガトレンドなども参考にしながら、自社目線、社会からの重要度による評価を行い、長期的経営を実践するうえで、当社グループにとって重要な課題である6つのマテリアリティを特定しました。今後、マテリアリティへの取り組みを持続的な活動として推進していくため、それぞれのテーマで取り組み目標(KPI)を定め、中長期経営計画とも連動させながら推進してまいります。なお、各テーマの具体的な取り組み事項の到達指標及び目標・KPIについては、今後検討を行い順次開示してまいります。
特定したマテリアリティとそれぞれの戦略と指標及び目標は以下のとおりです。
③リスク管理
当社では、リスクを識別・評価、リスクへの対応決定、リスク発生可能性を監視するプロセスを定めた「リスク管理方針」を定め、リスクが顕在化した場合でも速やかな対応が取れるように体制・手順を整備しておりますが、サステナビリティに係るリスクの識別、とりわけマテリアリティ項目として考慮されたリスクについては優先的に対応すべきリスクだと認識しており、事務局である管理本部 経営企画室が中心となり、サステナビリティ推進会議の中でより詳細な検討を行い、共有することで総合的に管理を行っております。また、定期的にリスク評価を実施し、リスクの監視状況や社会情勢の変化を経営戦略に取り込んでまいります。
④指標及び目標
サステナビリティ全般に関する指標及び目標の内容については「
(2) 人的資本・多様性
当社グループにおける、人材に関する取組と社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。
①ガバナンス
人材資本・多様性に関するガバナンスの内容については「
②戦略
当社グループは『ものづくりに携わるすべての人々に寄り添い、世界に「できる」を生み出す。』を存在意義として掲げており、人とのつながりを大切にし、誠実さをもって悩みや問題に真摯に向き合うことが出来る「人材」こそが、他社との差別化、競争力の源泉であると考えております。ものづくり産業の生産性向上と付加価値の向上を実現するためには、社員一人ひとりが向上心を持って創意工夫し、自発的に行動し、成長し続けることが原動力となります。当社グループでは、個々人の価値観は異なることを前提にしながらも、ものづくりに携わる人々に寄り添う姿勢に共感し、それを拠り所として多くの社員が日々挑戦しながら働く社内環境づくりを進めています。
また、社員一人ひとりが成長し続けるためには、人材育成として成長機会を提供するだけでなく、当社グループの人材が心身ともに健康な状態で、かつ働きやすく働きがいのある職場だと感じていることが重要だと考え、企業文化の醸成も含めてウェルビーイングの向上に努めてまいります。
さらに、当社グループでは社員一人ひとりの多様性を活かすことで、個人が最も生産性高く働くことを目指し、働く場所・働く時間・勤務形態・キャリアといった多様な働き方・多様な価値観を、それが必要とされる背景や目的の理解を踏まえたうえで受容し、柔軟な働き方を実現する各種制度の整備に取り組んでまいります。
主な取組みについては、「
人的資本・多様性に関するリスクの内容については「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」をご参照ください。
当社グループでは、上記「② 戦略」において記載した、人材に関する取組と社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(注)1 (有給休暇取得日数÷有給休暇付与日数×100)の計算式で算出
2 当指標は組織状態を表す指標で、期待/実感がともに高く、ギャップが小さい場合、スコアが最大化する(株式会社HRBrain EXサーベイを利用)同業他社平均69.3pt
(3) 気候変動
当社グループの主要販売商品である超硬工具に使用されるタングステンは地球上に限りある資源となっており、気候変動をはじめとする地球環境との関わりが深いことから、当社グループが今後も継続して経営活動を行うことにおいて、地球環境の保全は最重要課題であると考えております。当社はエコアクション21の認証・取得を行ない環境保全への行動に取り組んでまいります。
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスの内容については「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」をご参照ください。
②戦略
気候変動に関する戦略の内容については「(1)サステナビリティ全般 ②戦略」をご参照ください。
③リスク管理
気候変動に関するリスクの内容については「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」をご参照ください。
④指標及び目標
当社では、エコアクション21認証の取り組みを通じて、「RE100」対応再生エネルギーへの切り替えや、自動車燃料の削減を通じた二酸化炭素排出の削減に取り組んでおります。
具体的な取り組み事項の到達指標及び目標・KPIについては、今後検討を行い順次開示してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。また、サステナビリティに関するリスクにつきましては、「2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」をご参照ください。
(1) 業績変動リスク
当社グループの主要販売商品である切削工具は、自動車業界が主要なユーザーであり、当社グループの業績は同業界の設備投資動向及び生産動向に強く影響を受けております。
従って、今後の同業界の業況変化による商品需要の大幅な変動が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループでは、国内では、耐摩・光製品のセグメントへ展開を進めることで特定の業界(自動車業界)への依存度を低減させてまいります。海外では特定の地域(主に日本と中国)への依存度を低減するため、進出国・拠点を増やすことでリスクを分散してまいります。なお、ウクライナをめぐる国際情勢の不安が拡大した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
(2) 金利変動リスク
当社グループの有利子負債には、変動金利条件となっているものがあります。当社グループでは、金利変動リスクを回避する目的で、当社が必要と判断した場合、有利子負債の短期から長期への転換や金利スワップ取引の利用をいたします。今後想定以上に金利が上昇した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(3) 取引先与信のリスク
当社グループは、与信管理の徹底を図り、不良債権発生の未然防止に努めておりますが、今後の景気動向等によっては想定を超える取引先の信用状態の悪化等が生じる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループでは、取引先ごとに与信額を設定するほか、1年ごとに信用調査会社のデータをもとに与信の一括見直しを行っております。また回収遅延資料を毎月作成し、不良債権を適宜モニタリングしております。
(4) 商品在庫に関するリスク
当社グループは、特に切削工具については多品種の在庫を有しており、お客様への即時納品体制を確立しています。今後、市況の変化によっては過剰在庫となり商品評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループでは、継続発注は販売実績データに基づく適正発注量決定システムでの運用等を行い、新規発注は販売計画に基づく発注量を決定しリスクを低減しております。
(5) 災害・事故によるリスク
地震等の自然災害や人災・事故などにより、当社グループ及び取引先の営業拠点や従業員が被害を受ける可能性があります。これに伴う売上高の減少、物流機能の麻痺、営業拠点の修復又は代替のための費用発生等が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループではあらゆる災害・事故によるリスクに備え、大阪、名古屋、北関東の3つの物流拠点を確立し、流通への影響を低減しております。また、「Cominix On-Line」による非対面販売の実施に加え、2020年10月から連結子会社さくさく株式会社においてeコマース事業の本格的に参入いたしました。またグループ内の取り組みといたしましては、グローバルな相互補完体制を構築する事業継続計画(BCP)の策定、在宅勤務の推進に支障が生じる業務プロセスの見直について継続的に整備を取り組んでおります。
(6) 仕入先に係る代理店契約の解消・終了に関するリスク
当社は住友電気工業株式会社と特約販売契約を締結しております。当社は同社と1954年8月に特約販売契約を締結し、同社が製造する切削工具等を中心に事業を展開してまいりました。当該契約書には対象となる製品、販売地域、支払方法及び解除事由等が記載されております。
現在、当社と同社とは良好な関係にあるものと認識しておりますが、当社と同社との関係に変化が生じた場合、あるいは同社の特約販売戦略や特約販売店各社に対する諸条件もしくは当社に対する戦略が変更された場合等には、上記特約販売契約の内容等に変更の可能性があり、その場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、現時点では解除事由を含めて当該契約の継続に支障を来す要因は発生しておりませんが、当該契約の継続に支障を来す要因が発生した場合には、事業活動に影響を与える可能性があります。
(7) 海外事業に関するリスク
当社グループは積極的に海外での事業展開を図っておりますが、進出しております各国における市場動向、競合会社の存在、政治、経済、法律、為替などのリスクによって、今後の事業戦略や当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、海外取引の拡大に伴い、税率、関税などの監督当局による新たな規制などにより損失や費用負担が増大する恐れがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、当社グループでは、海外展開を図る場合には、事前の徹底した情報収集をもとに事業計画を立案し意思決定するとともに、経営環境等の変化により事業計画の見直しの必要性が発生した場合には、撤退も含めて早急に対応を検討する体制を構築しリスクを低減しております。
(8) 為替変動によるリスク
当社は外貨建てによる輸出入取引を行っておりますので、大幅な為替変動が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社グループは海外に現地法人を有しており、外貨建ての財務諸表を作成しておりますので、連結財務諸表の作成にあたっては、これらを日本円に換算する際の為替レート変動に伴う換算リスクがあります。
これらに対応するため、当社グループでは、外貨建の仕入に対する為替リスクについては、通常の為替変動であれば粗利益を調整し、異常な為替変動があれば、販売価格の改定を行うことでリスクを移転しております。
(9) 退職給付債務に関するリスク
当社では確定給付型の退職金制度を採用し、一部を確定給付企業年金制度で運用しておりますので、退職給付債務を計算する前提条件の変更などが、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、当社は確定拠出型企業年金制度を導入し、前述のリスクの低減を図っております。
(10) システム障害の発生によるリスク
当社では販売チャネルとしてオンライン発注システム「Cominix On-Line」の構築と、eコマース事業として切削工具専門通販サイト「さくさくEC」を立ち上げており、システムの安定稼動の維持に努め不測の事態に備えた対策も講じておりますが、自然災害や事故、サイバー攻撃等によるコンピューターシステムの停止や通信ネットワークの切断、不備による誤動作、不正使用、不正アクセス、コンピューターウイルス等に起因して当社グループの業務に支障が生じた場合には、大きな信用失墜と機会損失に繋がり、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
これらに対応するため、当社グループでは、サーバーのセカンダリ確保を行い、システムのデータバックアップの徹底を図っております。また外部からの攻撃に対しては、ファイアウォール装置の導入するなどリスクを低減しております。
(11) レアメタル原材料(タングステン)不足や価格上昇によるリスク
当社グループの主要商品である超硬切削工具に使用されている原材料(タングステン)は、切削工具製造メーカーがその調達のほとんどを中国からの輸入に依存しているため、中国の政治・経済情勢等の変化、法律の改正、紛争、自然災害、伝染病の流行等の不測の事態により原材料(タングステン)が調達できなくなった場合や、その原材料の著しい価格上昇が発生した場合には、当社の販売活動に影響が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(12) 特定の業界に依存していることに起因するリスク
当社グループの耐摩工具事業は、国内製缶業界向け製缶工具の割合が高い状況となっております。
今後とも製缶工具の販売で培った技術力やノウハウを活かし、同業界向け製缶工具の安定的な取引の確保に努めてまいりますが、同業界における技術革新や市場動向等によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
これらに対応するため、当社グループでは、国内製缶工具の販売で培った技術力やノウハウを活かし、海外の製缶業界への販売及び国内の製缶業界以外への販売を進めてまいります。
なお、上記に記載の事業等のリスクにおけるセグメントごとの影響度については次のとおりであります。
(注) 影響度につきましては次の通りの区分で示しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下の通りであります。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて217百万円減少し、14,962百万円となりました。これは主に、現金及び預金が662百万円増加した一方で、売掛金が320百万円、棚卸資産が269百万円、受取手形が170百万円減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて120百万円増加し、3,493百万円となりました。これは主に、投資有価証券が211百万円増加した一方で、のれんの償却等によりのれんが72百万円減少したことなどによります。
この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて97百万円減少し、18,456百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて193百万円減少し、8,319百万円となりました。これは主に、短期借入金が143百万円増加した一方で、支払手形及び買掛金が308百万円、1年内返済予定の長期借入金が166百万円減少したことなどによります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて450百万円減少し、2,294百万円となりました。これは主に、長期借入金が450百万円減少したことなどによります。
この結果、負債は、前連結会計年度末に比べて643百万円減少し、10,614百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べて546百万円増加し、7,842百万円となりました。これは、利益剰余金が299百万円(親会社株主に帰属する当期純利益による増加539百万円、剰余金の配当による減少240百万円)、その他有価証券評価差額金が161百万円、為替換算調整勘定が84百万円それぞれ増加したことによります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、経済社会活動の正常化が進み、インバウンド需要の復調等が見られるものの、為替動向の懸念や世界的な物価高、また不安定な国際情勢等により、先行きは不透明な状況となっております。世界経済は、中国経済の長期低迷に加え、ウクライナ情勢の長期化による資源価格及び原材料価格の上昇、世界的なインフレの進行や金融引締め、円安の進行や物価高など、景気の先行きについては不透明な状態が続いております。
当社はこのような不透明な環境の中で、「真の生産性向上に貢献する高度専門商社への変革」を中長期基本方針に掲げ、新中長期計画の2年目として、引き続き「持続的な成長」と「改革」を実現するための各種施策を推進しました。
具体的には、EV業界の開拓やインドなど成長性の高い市場のさらなる開拓、機械販売部における工作機械の拡販活動など切削工具の専門商社から「ものづくりの専門商社」への変革を掲げ、お客様の生産性向上に資する活動を積極的に推進しましたが、年度を通じて、主要進出国である中国における急速な経済の失速等を背景として海外事業だけでなく、切削工具事業、光製品事業においても売上高、及び利益が伸び悩みました。
この結果、当連結会計年度の売上高は28,644百万円(前連結会計年度比0.7%減)、営業利益は752百万円(前連結会計年度比20.6%減)、経常利益は840百万円(前連結会計年度比20.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は539百万円(前連結会計年度比27.4%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
■ 切削工具事業
売上高は16,419百万円(前連結会計年度比0.5%減)、セグメント利益は141百万円(前連結会計年度比55.4%減)と減収減益となりました。
主な要因は、当連結会計年度より設立された機械販売部において、切削工具を強みとしながら工作機械等の機械設備を一気通貫で受注する活動を積極的に推進し、1年目の受注目標を達成するなど一定の成果を得ることができたものの、主要販売先である自動車業界における中国向け輸出を主体とする顧客への販売が低迷したことによります。
■ 耐摩工具事業
売上高は2,673百万円(前連結会計年度比4.0%増)、セグメント利益は219百万円(前連結会計年度比103.8%増)と増収増益となりました。
主な要因は、アルミ缶等の生産需要が堅調に推移する中、主要販売先である製缶業界への取り組みをはじめとして、成長分野であるEV関連、特に車載電池・バッテリーを中心とした受注獲得への注力や新規の外注加工先との取組みを積極的に展開し、主要製缶メーカーへの販売が好調に推移したことによります。
■ 海外事業
売上高は7,380百万円(前連結会計年度比0.5%増)、セグメント利益は284百万円(前連結会計年度比35.8%減)と増収減益となりました。
主な要因は、為替相場の円安に加え、成長市場であるインドや北米エリアのマーケット開拓が順調に進み、タングステン等の鉱物資源の販売も好調に推移したものの、年度を通じて当社の主要進出国である中国経済の長期下振れの影響を吸収するには至らなかったことによります。
■ 光製品事業
売上高は 1,348百万円(前連結会計年度比22.0%減)、セグメント利益は52百万円(前連結会計年度比63.9%減)と減収減益となりました。
主な要因は、展示会の出展など営業活動を推進しましたが、主要顧客の中国向け需要減の影響を受け、年度を通じて主力のマシンビジョン関連ビジネスの低迷により売上が低迷したことによります。
■ eコマース事業
売上高は 50百万円(前連結会計年度比93.5%増)、セグメント損失は71百万円(前連結会計年度は86百万円のセグメント損失)となりました。
主な要因は、取り扱い商品の拡充や、効果的なWEB広告の実施、顧客ニーズに合わせたサイト改修、販売店と連携した拡販施策等、業績拡大に向けての基盤づくりを積極的に展開しましたが、新規顧客等のKPIが当初想定より低調に推移したことによります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、3,283百万円(前年同期比31.8%増)となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は、1,567百万円(前年同期は68百万円の獲得)となりました。
資金の増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益809百万円、売上債権の減少額666百万円、棚卸資産の減少額345百万円、減価償却費174百万円などであり、資金の減少の主な内訳は、仕入債務の減少額394百万円、法人税等の支払額197百万円などであります。
投資活動の結果使用した資金は、3百万円(前年同期は235百万円の使用)となりました。
資金の増加の主な内訳は、定期預金の払戻しによる収入140百万円、投資有価証券売却による収入70百万円、保険積立金の解約による収入63百万円などであり、資金の減少の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出188百万円、保証金の差入れによる支出64百万円、無形固定資産の取得による支出55百万円などであります。
財務活動の結果使用した資金は、849百万円(前年同期は103百万円の使用)となりました。
資金の減少の主な内訳は、長期借入金の返済による支出1,037百万円、配当金の支払額240百万円などであり、資金の増加の主な内訳は、長期借入金による収入420百万円、短期借入金の増加額70百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の状況
機械工具の販売を主たる事業としておりますので、生産実績はありません。
受注実績については、販売実績と大差がないため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 その他事業につきましては報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、製造事業であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりであります。
当社グループは、超硬工具に特化した高度専門商社としてグローバルに事業を展開しております。当社グループでは、業界NO.1に向けた成長戦略を海外市場及び国内市場にて推進しております。
海外市場は、ユーザーの海外移転が進む国内市場と比較して、より成長余地が大きい市場と捉えております。当社グループの海外進出可能な直販体制と商品力・提案力を武器に海外市場へ積極的に経営資源を投入しております。一方、国内市場においては、後継者問題や顧客の海外展開への対応などの課題を抱える販売会社に対する友好的なM&A・テクニカルセンターを活用した技術営業体制の強化・新商材の拡充など業界独自の販売方法を通してシェア拡大を図っております。
こういった方針のもと、当連結会計年度は、テクニカルセンターにおける各種ツール導入による技術営業体制の強化、eコマース事業として切削工具専門通販サイト「さくさくEC」を展開しております。
この結果、売上高は28,644百万円(前連結会計年度比0.7%減)、売上高総利益率は22.2%(前連結会計年度から0.4ポイント増)自己資本比率は42.4%(前連結会計年度から3.2ポイント増)となりました。
今後、M&Aを実施した連結子会社とのグループ間シナジーを高めてまいります。また海外市場で獲得したユーザーの国内拠点を開拓するなど海外市場と国内市場のシナジーを実現し、物流環境の効率化・情報の高度化等により利益の伴った成長を実現しつつ、新たな海外拠点の開設など成長市場への投資を行い、当社グループ全体の成長を図ってまいります。
また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本政策につきましては、財務の健全性や資本効率など当社にとって最適な資本構成を追求しながら、会社の将来の成長のための内部留保の充実と、株主への利益還元との最適なバランスを考え実施していくことを基本としております。
将来の成長のための内部留保については、長期的な展望に立った事業所開設資金ならびに新規取扱い商品の購入資金に投入し、さらなる企業競争力の強化に取り組んでまいります。
当連結会計年度におけるM&Aの実施はありませんでした。設備投資については、本社フロア移転に伴う内装工事及び設備の更新、連結子会社である株式会社川野辺製作所での設備等の購入、法律改正に伴うシステムの新設及び基幹システムの改修などの投資を行いました。この結果、当連結会計年度における固定資産の取得による支出は244百万円となりました。尚、これらの投資のための所要資金は、自己資金、借入金にて賄っております。
この結果、当連結会計年度末における借入金等の有利子負債残高は4,691百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,283百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。
当社グループは、税効果会計、貸倒引当金、商品の評価、投資その他の資産の評価、のれんの評価及び偶発事象等に関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
翌連結会計年度における世界経済は、中国経済の長期低迷、ウクライナ情勢の長期化による資源・エネルギーコストの高騰などを背景としたインフレ圧力の上昇、円安の進行、物価高騰、金利上昇等により先行きは依然として不透明な状況が続くものの、各国の財政、金融政策により回復力が増してくるものと期待されています。
財務諸表の作成に当たっては、「翌連結会計年度においては、中国経済の長期低迷、ウクライナ情勢の長期化による資源・エネルギーコストの高騰などを背景としたインフレ圧力の上昇、円安の進行、物価高騰、金利上昇など不確実要素もあるものの通常需要の見通しである」との仮定に基づき見積り及び予測を行っております。しかしながら、現時点で業績等、全ての影響について予測を行うことは困難な状況であるため、実際の業績とは異なる可能性があります。
該当事項はありません。