第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

①会社の経営の基本方針

 当社グループのサービスは日本人の視点に立った、細やかな「ジャパンスタンダード」のアシスタンスです。グローバル化が進む今日、日本人のお客様のみならず世界のお客様へ一人一人の気持ちになって真に求められているサービスを提供していく必要があると考えております。

 ウィズコロナにおける社会経済活動が活性化する中で、お客様が世界のあらゆる場所で活躍される機会が増えるとともに、慣れない場所での自然災害や、テロなど予期しない出来事に遭われる可能性が高まります。また、今般の新型コロナウイルス感染症のような新たなパンデミックが起こる可能性も十分に考えられます。このような事態に迅速に対応するために、世界の隅々までサービスを提供できるオペレーション能力の向上とサービス体制を構築しつつ、アウトバウンドやインバウンドの医療アシスタンス体制や運用コストの見直しを行い、組織再編を進めるとともに、少数精鋭化の業務運営を目指します。

 また、厚生労働省の受託事業から得た経験やノウハウを生かし、新規事業の立ち上げと拡大に注力してまいります。

 遠隔診療やヘルスケア市場の拡大は続き、多くの企業が新規に参入してくるものと思われる中、当社におきましてもヘルスケア市場への取り組みをより一層強化し、収益の計上を目指します。データやデジタル技術を活用したDX化への取り組みについても、早急に進め、ビジネスモデルの変革を目指します。

 

②中長期的な会社の経営戦略

 成長シナリオを進めていくために、環境の変化に影響を受けることなく安定した利益の確保ができる企業体質の確立が経営の重要課題であると認識しており、以下の施策を実践してまいります。

 

(医療アシスタンス事業)

 ウィズコロナにおける社会経済活動が活性化する中で、当社グループの主力事業である海外旅行保険及びクレジットカードに付帯する医療保険に係るアシスタンス事業の一層の拡充を目指します。顧客への世界最高品質のサービス提供を追求することで顧客満足度の一層の向上を図り、高い信頼を得ることが目標です。加えて、国内外の医療機関とのより一層の関係強化を図り、顧客に対して信頼性が高く、よりきめ細かい医療アシスタンスサービスを提供してまいります。

 また、医療アシスタンスサービスだけでなく、昨今のテロやデモ・暴動など、世界各国において多様化、高度化、複雑化するセキュリティ・リスクへの対応が求められております。このニーズに対応し、当社グループは医療アシスタンスとセキュリティアシスタンスをセットとしたサービスによる「トータルリスク管理」を支援していきたいと考えております。

 ウィズコロナにおける社会経済活動が活性化する中で、日本医療の国際展開を支援・促進する事業において、外国人患者の受入支援事業を中心に着実な売上増加を見込んでおります。当社は多くの医療機関が利用する「医療渡航支援企業」にも指定されていることで認知及び信頼を獲得しており、訪日医療患者の数も一層増加していくことが予想されます。

 また、救急救命アシスタンス事業は、民間企業等が海外の僻地で取り組む大規模建設工事現場にサイトクリニックを設置し、医師・看護師・救急救命士が常駐して現地医療体制を構築し、病人や怪我人の対応を行うサービス(EAJプロジェクトアシスト)を展開しております。世界的な新型コロナウイルス感染症の影響を受け、現場サイトでの感染予防・感染対策を行う日本人医療者派遣の需要が拡大し、2018年より受注しているバングラデシュ事業を順調に運営してまいりました。これらの事業でのノウハウを蓄積し、今後のプロジェクトアシスト事業の拡大、成長を目指します。

 

(ライフアシスタンス事業)

 ライフアシスタンス事業については、これまでに培ったノウハウや既存顧客から獲得している高い信用を生かし、高品質のサービス提供を武器に事業拡大を進めます。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて、企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。経営指標としては利益の確保に加え、現金の動きを把握するキャッシュ・フロー経営を重視するとともに、資本効率の観点から、ROE(自己資本利益率)向上による企業価値の増大に努めてまいります。

 

(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①経営環境

 2024年度の社会環境を展望すると、ウィズコロナにおいて社会経済活動が世界的に再活性化することが見込まれます。一方で国際紛争及び円安の長期硬直化による食料・資源・エネルギー価格の高騰、人件費の上昇によるコスト・プッシュ型のインフレ圧力などが懸念されます。またコロナ禍を経て、社会の健康志向、危機管理志向はより一層高まっていくと思われます。

 

②優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの事業環境については、これらの社会経済活動の活性化や健康志向・危機管理志向の高まりを受けてアシスタンス事業全般にコロナ禍以前以上に需要が高まり、当社グループにとって大きなチャンスの到来が想定されます。これらの需要をしっかりと捉えるとともに、高収益を確保できる事業構造への転換が急務であり、運用プロセス等の見直しの継続と抜本的な組織の統廃合等による効率的な組織運営が必要不可欠であると考えております。

また、当社グループの強みを活かした「医療アシスタンス」、「ライフアシスタンス」に続く新しい事業の柱の構築が急務であると考えております。

 経営方針・経営戦略の基本方針に基づき、成長シナリオを進めるための経営戦略上の施策に関連して上述の喫緊の課題への対応の具体的な施策として、2024年度は主として以下の経営方針、事業セグメント別の事業方針を掲げ、優先的な事業推進に取り組んでまいります。

 

<経営方針>

A.既存顧客満足度の向上

 ・業務品質の向上を伴う現場力の強化により、顧客満足度を高め、契約の維持及び囲い込みを図る

B.既存事業の少数精鋭化

 ・抜本的な組織再編・統廃合を断行し、業務運営体制を再構築する

C.DX化による仕事のやり方の抜本的改定

 ・オペレーション部門AI導入プロジェクトを積極推進する

D.新しいビジネス分野の構築

 ・医療アシスタンス、ライフアシスタンスに続く新しい事業の柱を構築する

E.採算性を考慮したビジネススタイルの徹底

 ・独立採算制を最重要視し、将来性・成長性の見込める事業への投資による企業規模の拡大を図る

 

<事業方針(セグメント別)>

A.医療アシスタンス事業

(a)アウトバウンド

 ・小規模で分散したオペレーション機能を集約し規模のメリットを獲得

 ・近代的コールセンター運営のためのAI導入による情報インテグレーションの再構築

(b)インバウンド

 ・海外NW機能を活用した新規クライアント開拓営業を強化

 ・対応品質の向上及び収益性改善のためのフィー体系の見直し

(c)渡航医療・ヘルスケア(医療ツーリズム)

 ・市場ニーズに即した集客活動強化と日本での医療機関とのコーディネート機能強化

 ・海外エージェント網の拡充

(d)企業/学校法人営業

 ・コーポレート商品の付加価値向上及び顧客数拡大に向けた販売強化

 ・学校法人向け商品(OSSMA)のシステム再開発および収益拡大

B.ライフ・ノンメディカルアシスタンス分野

(a)ライフアシスタンス

 ・コンシェルジュ事業の採算性検証により適正価格・適正条件での継続受注

 ・業務品質の向上による顧客満足度の維持および囲い込み

(b)ノンメディカル

 ・既存契約及び新規契約の内容の見直し

 ・既存コンシェルジュのオペレーション基盤を有効活用できる新規ビジネスの獲得

C.新規事業分野

(a)新規ビジネス

 ・国内外をターゲットとしたハイエンドなヘルスケア・ウェルビーイング事業の展開

 ・専門性の高いセキュリティ・リスク管理事業や災害対応等で新機軸を創設

 

 また、外部環境の変化に迅速、柔軟に対応するために健全性を重視した財務基盤の強化を図ってまいります。

 なお、財務基盤の強化に係る基本的な考え方及び施策等の状況につきましては、「4 経営者による財政状態、 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載のとおりであります。

 なお、今後の当社グループの経営・事業環境及び業績動向をしっかりと見極めつつ、適宜計画の見直しと必要な施策を実施してまいります。

 末筆ながら、この度の令和6年能登半島地震により被災された皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧、復興が叶いますようお祈り申し上げます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティを巡る取組みについての基本的な方針の策定は行っておりませんが、役員・従業員の行動の指針である「EAJ行動規範」において、「法令の遵守」、「環境保全への寄与」、「お取引先との信頼関係の確立」、「従業員の自己実現への環境づくり」等を定め、コンプライアンス体制を構築し、地球環境問題への配慮、取引先との公正・適正な取引および従業員の健康・労働環境への配慮等を目指しております。基本的な方針の策定については、今後、必要に応じて検討してまいります。

 また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行ってまいります。

 

(2)戦略

  当社グループでは現時点でサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組みのうち、重要なものについては、該当事項がありませんので記載を省略しております。

 当社グループは、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、人材戦略において、社内における女性の活躍推進を含む、多様性の確保を推進しております。

 当社グループは、女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定しており、また、育児を支援する環境整備として、従業員の育児休業、子の看護休暇、育児のための時間外労働の制限、育児短時間勤務制度等を実施するなど、社内環境整備を図っております。

 

(3)リスク管理

 リスクに関して、全社的な立場で的確に管理するとともに、リスクが具体化したときにおいては、迅速な意思決定を行い的確な対応を行うために、社長直属の組織として、リスク管理を統括するリスク管理委員会を設けております。リスク管理委員会は、社長を委員長とし、全常勤取締役及び組織長を委員として構成し、リスクに対する日常的な体制及び緊急時における対応策を講じる体制にしております。

 当社グループにおけるサステナビリティ関連のリスクの内容は以下のとおりです。

①法令・規制の変更について

 現在、当社グループが関連する業界においては特定の許認可制度などはないものの、今後、新たな自主規制が設けられたり、公的、準公的資格の取得が義務付けられたりする可能性があります。当社グループの想定を超えた法的規制及び自主規制等が設けられた場合、当社グループのビジネスモデル等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、業界動向等については十分に注意を払ってまいります。

②人材の確保及び育成について

 医療アシスタンス事業における、二カ国語以上を話し、医療や保険などに関する深い知識を持ったアシスタンスコーディネーター及びライフアシスタンス事業における、二カ国語以上を話し、コンシェルジュサービスに関する豊富な知識と経験を持つ従業員は、当社グループの重要な資産であります。しかし、サービス提供に必要な人材が早期に確保・育成できなかった場合には事業展開の速度に影響を及ぼす可能性があります。そのため、年齢、性別にこだわらず間口を大きく広げた採用活動や内部での研修強化により人材の確保と育成に努めております。

 

(4)指標及び目標

  当社グループでは、現時点でサステナビリティに係る基本方針を策定していないことから、サステナビリティ関連の指標及び目標の記載を省略しております。

 当連結会計年度末において、女性社員比率が69.2%、女性管理職比率が54.2%と、女性比率が高くなっております。外国人については、海外拠点において管理職への登用の実績があります。今後も、現在の水準を維持することを目標といたします。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2024年12月31日までに60%まで引き上げる

54.2%

 (注) 上記指標及び目標については、当社における指標及び目標であります。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、継続的な事業活動に影響を及ぼすおそれのあるあらゆるリスクを未然に防止、軽減し経営基盤の安定化を図るとともに、万一これらのリスクが顕在化した場合に迅速かつ的確に対応するため、リスク管理基本規程を定め、全体的なリスク管理を推進する組織としてリスク管理委員会を設置し、リスク管理に関する社内教育・啓蒙策の企画及び実施、経営上重要なリスクの抽出・評価・見直しの実施、対応策の策定、管理状況の確認を定期的に行っております。

 また、法務及びコンプライアンスに係るリスク管理につきましては、コンプライアンス規程に基づき、コンプライアンス委員会を設置し、リスクマネジメントの体制強化を推進しております。

 なお、以下の各リスクが顕在化する可能性の程度や時期、リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 

(1)特に重要なリスク

①在外駐在者、海外渡航者数の急激な減少について

 当社グループの中核的な事業は、主に海外駐在者、海外渡航者に対するアシスタンスサービスの提供であります。そのため、国内外の不況、急激な円安、海外の政情不安や治安悪化、地域紛争、戦争、航空運賃の高騰、今般の新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックや伝染病の流行などにより、海外駐在者、海外渡航者数が急激に減少した場合、アシスタンスサービス提供数が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 日本と諸外国の往来が正常化しつつあり、海外渡航者数も増加傾向にあるものの、新型コロナウイルス感染症拡大前の水準まで完全に回復するには至っておりません。この状況が更に長期化する可能性も否定できず、その場合、当社グループの経営成績に対する悪影響が継続するリスクがあります。

 

②官公庁からの受託業務に係るリスクについて

 官公庁からの受注事業であるワンストップ相談窓口事業等につきましては、官公庁からの発注は一般競争入札にもとづいており、当社グループが落札できない場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、計画どおりに予算が執行されず受託業務が縮小した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③個人情報の漏洩について

 当社グループは、業務の性質上多数の個人情報を保有しており、いわゆる個人情報保護法に定める「個人情報取扱事業者」に該当し、個人情報の取扱いに関して一定の義務を負っており、「プライバシーマーク」を取得するとともに、個人情報保護関連の諸規程を整備し運用するなど、社内の管理体制には万全を期しております。また、特に要配慮個人情報を扱う部署への入室資格者の制限とビデオカメラ撮影による記録の保存、自社サーバー内のデータへのアクセス権限の厳格な管理、従業員への定期的な個人情報保護関連研修などを実施しております。しかしながら、想定外の理由により万一個人情報が外部へ漏洩するような事態が発生した場合には、当社グループの信頼低下による大口顧客の契約解除、業務範囲の縮小による売上の減少や損害賠償による費用の発生などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④システムトラブルについて

 当社グループの基幹業務システムのトラブルを防止及び回避するために、データベースサーバ及びWEBサーバーの外部データセンターへの外出し、冗長化や定期的なバックアップ等を実施しております。しかしながら、万が一予期せぬ大規模災害や人為的な事故等によるシステムトラブルが発生した場合には、システム改修費用や損害賠償等の費用発生により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤立替金について

 当社グループでは、医師・医療機関への事前の支払のため保険会社等に対する立替金が発生し、事業拡大にともないその金額も大きくなる傾向があります。保険会社に対する立替は、信頼ある保険会社との間の契約に従い実施しているものであり、回収にかかるリスクは限定的と考えております。また、保険会社以外につきましては、原則、顧客より予想される立替金額を上回る前受金を収受するか、もしくは信用ある法人に対しては当社グループの与信管理基準に従いつつ、顧客から支払い確約書を入手した上で行う等の対応を行っております。しかしながら、万が一多額の立替金の回収遅れや回収不能な事態が生じた場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)重要なリスク

①法令・規制の変更について

 現在、当社グループが関連する業界においては特定の許認可制度などはないものの、今後、新たな自主規制が設けられたり、公的、準公的資格の取得が義務付けられたりする可能性があります。当社グループの想定を超えた法的規制及び自主規制等が設けられた場合、当社グループのビジネスモデル等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、業界動向等については十分に注意を払ってまいります。

 

②人材の確保及び育成について

 医療アシスタンス事業における、二カ国語以上を話し、医療や保険などに関する深い知識を持ったアシスタンスコーディネーター及びライフアシスタンス事業における、二カ国語以上を話し、コンシェルジュサービスに関する豊富な知識と経験を持つ従業員は、当社グループの重要な資産であります。しかし、サービス提供に必要な人材が早期に確保・育成できなかった場合には事業展開の速度に影響を及ぼす可能性があります。そのため、年齢、性別にこだわらず間口を大きく広げた採用活動や内部での研修強化により人材の確保と育成に努めております。

 

③カントリーリスクについて

 当社グループでは、現在、米国、中国、タイ国、シンガポール、カナダに子会社、英国に支店を置き、世界各国をサービス提供エリアとした事業展開を行っております。そのため、これらの国々で軍事クーデター、内乱・大規模な騒乱、国家経済の破綻、法的制度の大幅な変化などが生じた場合、当社グループの業務執行に影響が生じる場合があります。また日本人の海外滞在者の多い地域や全世界を範囲とするような上記の事象が生じた場合にも、海外渡航者数の減少により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④自然災害について

 重大な自然災害が発生し当社グループの事業所が被災した場合には、円滑な業務遂行に影響が出ることは避けられず、その結果、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。そのため、このような場合に備えて日本と海外の6カ国に設置しているアシスタンスセンター間を結ぶ高機能電話システムを導入し、特定のセンターが被災して受電できなくなっても、他センターで受電し顧客への通常サービスを提供できる体制としています。また、日本に設置して海外センターと共同で使用するコンピューターサーバーは万全の安全対策を施したサーバーセンターに外出しし、高機能電話システムと合わせて被災時にも顧客への通常サービスを提供できる体制を整えております。

 

⑤訴訟・クレームに関するリスクについて

 これまで当社グループが国内外で行っている事業に関連した重要な訴訟は発生しておりませんが、万一当社グループの提供するサービス等をめぐる重要な訴訟やクレーム等が発生した場合には当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があるため、適切な保険の付帯等によりリスクヘッジ策を講ずるとともに、有力弁護士をかかえる法律事務所と顧問契約を締結し、適切なアドバイスを得て、こうしたリスクの顕在化防止に注力しております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

  当連結会計年度における我が国経済は、ウィズコロナにおける穏やかな景気回復基調にあるものの、長引くウクラ

 イナ情勢の緊迫化、中東地域をめぐる情勢、世界的に金融引締めが進む中での金融資本市場の変動、円安傾向の恒常

 化や資源エネルギー価格の高騰など、引き続き厳しい状況が続いております。

  当社グループの主要事業の業績に影響を与える海外出国日本人数につきましては、2023年通年では前年比247.2%

 増の9,624千人と増加傾向にあるものの、新型コロナウイルス感染症拡大前の水準には戻っておりません(日本政府

 観光局(JNTO)調べ)。

  海外からの訪日外客数については、4月の水際措置撤廃以降、右肩上がりで急回復を遂げ、2023年通年では前年比

 554.1%増の25,066千人と大幅な増加となり、2019年比で78.6%と8割程度まで回復が進みました(日本政府観光局(JNTO)調べ)。

 

 医療アシスタンス事業の売上高は、訪日外客数が新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に迫る戻りをみせ、出国日本人数は同水準には届いていないものの、足元では着実に回復の兆しが見られる中、厚生労働省から受託しておりました新型コロナウイルス感染症関連事業が、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2類(危険性の高い感染症)から5類(既知の感染症)に移行されたことから、その役割を終え、5月末をもって終了したため、前期比で減少しました。

 

  これらの結果、当連結会計年度の売上高は3,598百万円(前期比42.3%減)と減収になりました。また、当連結会

 計年度の売上原価も、2,695百万円(前期比45.8%減)と減少し、販売費及び一般管理費は730百万円(前期比33.2%

 増)、営業利益は173百万円(前期比75.8%減)、経常利益は181百万円(前期比75.2%減)、親会社株主に帰属する

 当期純利益は119百万円(前期比76.0%減)となりました。

 

 セグメントの状況は次のとおりであります。

 

(医療アシスタンス事業)

a.海外旅行保険の付帯サービス

 海外旅行保険の付帯サービスにつきましては、ウィズコロナにともない出国日本人数が徐々に増加傾向にあり、売上高は前期比で増加となりました。

 

b.法人向け医療アシスタンスサービス、留学生危機管理サービス、セキュリティ・アシスタンスサービス

 当社グループは医療アシスタンスサービスとセキュリティ・アシスタンスサービスの両サービスを企業・大学に提供しております。

 法人向け医療アシスタンスサービスは、売上高が前期比で若干減少しましたが、セキュリティ・アシスタンスサービスは、前期比で増加しました。また、大学向けの留学生危機管理サービスは、ウィズコロナにともない留学が再開し始め、売上高が前期比で増加しました。

 

c.救急救命アシスタンス事業

 救急救命アシスタンス事業は、民間企業が海外の僻地で取り組む大規模建設工事現場にサイトクリニックを設置し、医師・看護師・救急救命士が病人や怪我人の対応を行う事業(EAJプロジェクトアシスト)です。

 現場サイトでの新型コロナウイルス感染症への感染予防・感染対策を行う日本人医療者派遣の要請が継続しており、前期比で売上高は若干増加しました。

 

d.国際医療事業(医療ツーリズム)

 国際医療事業(医療ツーリズム)につきましては、まだ新型コロナウイルス感染症拡大前の水準には戻っておりませんが、徐々に回復傾向にあり、売上高は前期比で増加しております。今後の更なる需要拡大を見据え、国内医療機関とのネットワーク構築等の体制強化を図っております。

 

e.訪日外国人向け緊急対応型医療アシスタンス事業

 日本国内で外国人が病気や怪我など不測の事態が起こった場合の医療アシスタンスサービスの提供機会はウィズコロナにともなう訪日外客数の増加で、売上高は前期比で増加しております。

f.ワンストップ相談窓口

 厚生労働省や大阪府その他の自治体より、外国人診療に関する相談窓口事業を順調に運営し、医療機関向けの相談対応業務を実施しております。厚生労働省からの受託額の増加により、売上高は前期比で倍増しました。今後、地方自治体や医療機関との外国人患者受入に関する連携の一層の強化を目指します。

 

g.入国者等健康フォローアップセンター業務

 厚生労働省から受託した「入国者等健康フォローアップセンター業務」につきましては、新型コロナウイルス感染症法上の分類が2類(危険性の高い感染症)から5類(既知の感染症)に移行されたことから、その役割を終え、5月末で終了したため、売上高は前期比で大きく減少しました。

 

h.検疫手続確認センター業務

 東京検疫所から受託した「検疫手続確認センター業務」につきましても、「入国者等健康フォローアップセンター業務」と同様の理由により、5月末で終了したため、売上高は前期比で減少しました。

 

 これらの結果、医療アシスタンス事業の売上高は3,184百万円(前期比45.3%減)、セグメント利益は564百万円(前期比40.3%減)となりました。

 

(ライフアシスタンス事業)

 ライフアシスタンス事業につきましては、既存取引先との契約見直しに伴い、前期比で売上高が僅かに減少しました。

 

 この結果、ライフアシスタンス事業の売上高は414百万円(前期比1.3%減)、セグメント利益は78百万円(前期比50.9%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ113百万円減少し、2,188百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・アウトフローは、5百万円(前連結会計年度は920百万円のキャッシュ・インフロー)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益181百万円の計上、減価償却費48百万円の計上、売上債権及び契約資産484百万円の減少、仕掛品39百万円の減少、契約負債133百万円の増加、預り金67百万円の増加の一方、立替金273百万円の増加、未払金245百万円の減少、未払又は未収消費税等120百万円の減少、法人税等の支払額320百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・アウトフローは、43百万円(前連結会計年度は63百万円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。この主な要因は、定期預金の預入による支出20百万円、有形固定資産の取得による支出12百万円、無形固定資産の取得による支出13百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・アウトフローは、99百万円(前連結会計年度は309百万円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。この主な要因は、短期借入金30百万円の減少、長期借入金の返済による支出12百万円、配当金57百万円の支払であります。

 

③生産、受注及び販売の実績

(生産実績)

 当社グループはアシスタンス業務の提供を主たる事業として行っており、生産に該当する事項はありません。

 

(受注実績)

 当社グループの主たる事業であるアシスタンス業務の提供は、提供するサービスの性格上、受注の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(販売実績)

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年増減比(%)

医療アシスタンス事業 (千円)

3,184,587

△45.3

ライフアシスタンス事業(千円)

414,337

△1.3

合計      (千円)

3,598,924

△42.3

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

厚生労働省

4,249,883

68.1

1,224,051

34.0

損害保険ジャパン株式会社(注)2

844,045

13.5

1,061,508

29.5

2.損害保険ジャパン株式会社の企業集団に属するEndurance Services Limitedへの販売高を集約して記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりであります。

 

(売上高)

 医療アシスタンス事業の売上高は、訪日外客数が新型コロナウイルス感染症拡大前の水準に迫る戻りをみせ、出国日本人数は同水準には戻っていないものの、足元では着実に回復の兆しが見られる中、厚生労働省から受託しておりました新型コロナウイルス感染症関連事業が、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2類(危険性の高い感染症)から5類(既知の感染症)に移行されたことから、その役割を終え、5月末をもって終了したため、前期比で減少しました。

 またライフアシスタンス事業につきましては、既存取引先との契約見直しにともない、前期比で売上高が減少しました。

 この結果、売上高は前年比42.3%減の3,598百万円となりました。

 

(営業利益)

 売上原価は2,695百万円(前期比45.8%減)、販売費及び一般管理費は730百万円(前期比33.2%増)となりました。この結果、営業利益は173百万円(前期比75.8%減)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 営業外収益において為替差益10百万円(前期比24.6%減)を計上しました。また、特筆すべき特別利益及び特別損失の計上はありません。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は119百万円(前期比76.0%減)となりました。

 

(財政状態)

  当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ247百万円減少し、3,685百万円となりまし

 た。主な増減要因としては、立替金273百万円の増加、現金及び預金89百万円の減少、売掛金及び契約資産478百万円

 の減少、仕掛品39百万円の減少がありました。

  負債につきましては、前連結会計年度末に比べ355百万円減少し、1,971百万円となりました。主な増減要因として

 は、契約負債133百万円の増加、短期借入金30百万円の減少、未払金238百万円の減少、未払法人税等206百万円の減

 少がありました。

  純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ108百万円増加し1,713百万円となりました。これは主に、親会社

 株主に帰属する当期純利益が119百万円発生し、利益剰余金1,034百万円(前期比62百万円増)を計上したことによる

 ものと、為替換算調整勘定123百万円(前期比35百万円増)によるものです。

 

 以上の結果、当連結会計年度末における自己資本比率は45.3%(前期比5.3ポイント増)となりました。

 当社の事業におきましては、医療機関に対する立替払いの実施など、ビジネスを拡大するにつれて借入が増えるビジネスモデルとなっておりますが、当連結会計年度末の自己資本比率は、一般的な水準である30%以上を維持しております。

 また、重要な経営指標である自己資本利益率を高めるために、より高収益体質へと転換を図ってまいります。

 

 なお、今後の見通しにつきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(医療アシスタンス事業)

 医療アシスタンス事業においては、当社グループの主要業務である海外における日本人顧客向けの医療アシスタンスサービスについて、海外出国日本人数の増加傾向に伴い、サービス提供数に応じた変動的な売上体系である海外旅行保険の付帯サービス及び留学生危機管理サービスともに着実に回復の兆しが見られたこと、また、訪日外客数についても増加傾向となっており、医療ツーリズム及び訪日・在日外国人向け緊急医療アシスタンスサービスにつきましても、前期比で増加しており、今後の業績回復が期待されます。

 また、厚生労働省から受託しておりました新型コロナウイルス感染症関連事業が、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2類(危険性の高い感染症)から5類(既知の感染症)に移行されたことから、その役割を終え、5月末をもって終了いたしました。

 これらの結果、当連結会計年度の医療アシスタンス事業の売上高は、前期比45.3%減の3,184百万円、セグメント利益は、前期比40.3%減の564百万円の結果となりました。

 

(ライフアシスタンス事業)

 ライフアシスタンス事業においては、既存取引先との契約見直しにともない、前年比で売上高が僅かに減少しました。

 当連結会計年度のライフアシスタンス事業の売上高は、前期比1.3%減の414百万円、セグメント利益は、前期比50.9%減の78百万円の結果となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析)

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、前連結会計年度末に比べ113百万円減少したものの、当連結会計年度末時点で2,188百万円の十分な水準の手元流動性を確保しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループの当連結会計年度の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 

a.基本的な財務戦略及び経営資源の配分に関する考え方

 当社グループは、財務基盤の強化に努め、自己資本比率を一般的な水準である30%以上を維持するとともに、成長のための投資資金の確保を実現するため、投資計画と立替資金及びリスク対応の留保分を考慮したうえで保有すべき現預金水準を概ね8~10億円程度以上と設定し、適正なレンジでの手元流動性を維持しております。

 

 

 

 

b.資金需要の内容

 当社グループは、主力事業である医療アシスタンスサービスにおいて、医療機関に対して立替払いを実施するため、また、事業規模の拡大と収益源の多様化を求めるために必要に応じて資金調達を実施いたします。

 

c.資金調達の方法

 当社グループは、投資のための資金調達は基本的には銀行からの固定金利での長期借入金によっております。

 また、機動的な資金確保のため取引銀行10行と当座貸越契約を締結し、適正な水準の手元流動性を確保しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、売掛金等に対する貸倒引当金及び資産・負債の報告数値並びに財務諸表の開示内容に影響を与えるその他の事項について、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる判断や見積りを行っております。従って、実績がこれらの見積り額と異なることで結果として連結財務諸表に影響を与える可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

日本エマージェンシーアシスタンス株式会社(当社)

損害保険ジャパン

株式会社

相手方の海外旅行保険を購入した顧客(被保険者)へのアシスタンスサービスの提供

2020年2月1日より2021年1月31日まで(以降1年ごとの自動更新)

日本エマージェンシーアシスタンス株式会社(当社)

海外のプロバイダー

相手方は当社コーディネーターの指示に従い顧客へのサービスを提供する。

原則として1年ごとの自動更新

日本エマージェンシーアシスタンス株式会社(当社)

国内外の協力病院

相手方がキャッシュレスサービスを提供する。(注)

原則として1年ごとの自動更新

日本エマージェンシーアシスタンス株式会社

(当社)

厚生労働省

入国者等健康フォローアップセンター業務

2022年4月1日から2023年5月31日まで

日本エマージェンシーアシスタンス株式会社

(当社)

東京検疫所

検疫手続確認センター業務

2022年4月1日から2023年5月31日まで

(注)相手方が提供するサービスは以下のとおりです。

キャッシュレスサービスの提供(当社が契約した個人又は当社と契約した法人とアシスタンスサービスの契約を締結した個人が医療機関で支払いをすることなく受診できるサービス。当社は医療機関に対し医療費の立替払いを行いますが、キャッシュレスサービスに対する医療機関への役務提供料等の支払いはありません)。

(注)厚生労働省から受託した「入国者等健康フォローアップセンター業務」及び東京検疫所から受託した「検疫手続確認センター業務」は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が2類(危険性の高い感染症)から5類(既知の感染症)に移行されたことから、その役割を終え、5月末をもって終了いたしました。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、研究開発活動は実施しておりませんので該当事項はありません。