文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、当社グループの強みであるアルミニウムに関する広範な知見の蓄積と多様な事業群を最大限に活用して、企業価値の向上を目指すとともに、事業活動を通じて様々な社会課題の解決を図ることにより、持続可能な社会の実現に貢献していくことを目指しております。当社の経営理念や目的を定義した「日軽金グループ経営方針」は次のとおりです。
日軽金グループ経営方針
◆ 経営理念
アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、
人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく
◆ 基本方針
・健康で安全な職場をつくり、「ゼロ災害」を達成する
・グループ内外との連携を深化させ、お客様へ多様な価値を継続的に提供する
・持続可能な社会を実現するため、カーボンニュートラルに積極的に取り組む
・人権を尊重し、倫理を重んじて、誠実で公正な事業を行う
・多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する
(改定: 2022年5月16日)
(2)日本軽金属グループの経営環境
①事業領域
当社グループはアルミニウム素材から中間製品、加工製品まで、アルミニウム総合メーカーならではのトータルソリューションの提供により、幅広く事業を展開し、高品質で付加価値の高い製品を生み出しております。
②事業基盤
当社グループの総合力は、異なる事業ユニットをマーケットインの発想で横断的につなぐ《横串》体制を基盤とした「チーム日軽金」としての一体感によって発揮されます。全従業員が「お客様のニーズを探索し、解決に導く」というマインドを持ち、「探って、創って、作って、売る」という一連の流れを担うことで、お客様とともに、市場競争力のある付加価値の高い商品・サービスの創出を行っております。
(3)重要課題(マテリアリティ)
当社グループは、SDGsが目指す持続可能な社会の実現のために、アルミニウムに関する総合的かつ広範な事業領域を通じて貢献していきます。その中で当社グループが特に取り組むべき課題は何かを認識し、当社グループの持続的な成長および企業価値創造のための重要な経営課題としていくため、当社取締役会において『当社グループの重要課題(マテリアリティ)』を特定しています。
特定した重要課題
|
5つの重要課題テーマ |
重要課題 |
|
地球環境保護 |
自社での温室効果ガス削減(スコープ1、2) |
|
サプライチェーンでの温室効果ガス削減(スコープ3) |
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|
気候変動への対応(TCFD) |
|
|
水ストレスへの対応 |
|
|
環境汚染の防止 |
|
|
持続可能な価値提供 |
再生可能エネルギーの利用拡大への取組み |
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低炭素商品・サービスの開発、提供 |
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|
循環型経済・社会の推進 |
|
|
強靭なインフラ整備、提供 |
|
|
食糧の安定供給への貢献 |
|
|
イノベーションによる未来づくり |
|
|
従業員の幸せ |
労働の安全衛生 |
|
働きがいのある職場づくり |
|
|
ダイバーシティ&インクルージョン |
|
|
人財の確保、育成 |
|
|
責任ある調達・生産・供給 |
安全、安心な商品・サービスの提供 |
|
人権の保護、尊重 |
|
|
安定したサプライチェーンの構築 |
|
|
変化に柔軟で強靭なバリューチェーン |
|
|
企業倫理・企業統治 |
ガバナンスの強化 |
|
コンプライアンス体制の強化 |
(4)対処すべき課題
今後の世界経済は、各国の政策の不確実性や貿易の分断による世界経済に対する不安の高まりが懸念され、わが国においても物価上昇や金融資本市場の変動等の影響により、経営環境の変化に対してますます注視が必要な状況が続くと思われます。
当社グループは、めまぐるしく変化する経営環境の中にあっても、最終年度を迎える中期経営計画(2023年度~2025年度)のもと、持続的成長を支える経営体制・収益基盤の確立に向けた取組みを推進し、次の時代の成長へと繋げるべく、経営改革を断行してまいります。
事業グループ制への移行の効果を最大限に発揮し、各事業グループにおける新商品開発やグループ内連携の強化はもとより、事業提携・M&A等を含めた周辺領域への事業拡大や高収益事業への転換等を積極的に進め、成長事業・商品を見極めたメリハリのある成長シナリオを描くことで、企業価値向上を目指してまいります。
加えて、カーボンニュートラルを当社グループの持続的発展のために取り組むべき重要課題の一つと認識しており、昨年11月に策定・公表したロードマップの目標達成に向けて、各種取組みを進めてまいります。具体的な取組みの一つとして、本年1月には、鉄道会社等と、アルミニウム車体の水平リサイクルの取組み検討に着手いたしました。本取組みは、アルミニウムの循環利用によるCO₂サプライチェーン排出量の削減等、鉄道業界における脱炭素・循環型社会の実現に寄与するものです。このような取組みをはじめ、当社グループが有するアルミニウムの循環利用推進のためのリサイクル技術の確立等を通じ、サプライチェーンを持続可能なものとして再構築することで「脱炭素」の価値をお客様・社会へ提供してまいります。
また、デジタル技術を活用した原料アルミニウム地金が商品となるまでの流れ(メタルフロー)の可視化をはじめ、DXによる課題解決、業務効率化・生産性向上を目的とする業務改革をグループ一丸となって推進してまいります。同時に、安全・品質・コンプライアンスという企業活動の基盤となる要素を盤石なものとし、ステークホルダーの皆さまから信頼され、かつその期待に応える日本軽金属グループであるよう邁進してまいります。
(5)中期経営計画の進捗
当社グループにおいては、不確実性を増す事業環境に柔軟に対応するべく、2023年5月、「新生チーム日軽金への取組み」および「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」を基本方針とする中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定し、サプライチェーン・ライフサイクル全体を通してお客様のニーズを満たし、社会課題の解決にも寄与する多様な商品・ビジネスの提供を加速させております。
◆基本方針1「新生チーム日軽金への取組み」
|
▶ グループの企業価値向上のための構造改革 ▶ カーボンニュートラルへの対応 ▶ 経営改革の推進および内部統制機能の強化 |
◆基本方針2「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスの提供」
|
▶ お客様ニーズを満足する商品・ビジネスの提供 ▶ サプライチェーン・ライフサイクル全体を通じた多様な商品・ビジネスの提供 ▶ 社会的課題を解決するためのグループ連携体制の強化 |
なお、当社は、上記の基本方針1「新生チーム日軽金への取組み」における「グループの企業価値向上のための構造改革」と「経営改革の推進および内部統制機能の強化」について経営改革の骨子を策定しており、2024年5月15日開催の取締役会において決議、2024年6月25日より実施しております。経営改革の骨子および期待される効果は以下の通りであります。
①経営改革の骨子
(a)取締役会の監督機能強化
取締役会は企業価値最大化のためのグループ戦略策定を中心とした監督機能を担うものとして、戦略的意思決定の強化とスピードアップを図ります。具体的には、取締役数の見直し(総数は14名を9名に削減、ただし、社外取締役5名は変更なし)等を行い、取締役会の監督機能を強化します。
(b)事業・機能組織のグルーピング
従前の分権型統治から、よりチーム日軽金としての連携が可能になる組織構造の変革を目指し、市場分野・プロセス等の観点から近接する事業を「事業グループ」として運営し、新たな価値の創出と業務効率改革を加速します。「事業グループ」として括ることで、資源配分や機能の見直し等を推進します。
また十分な人的資源のない小規模事業部門への機能・ガバナンス強化やサービスを担う組織の在り方を「機能組織」として再定義します。
現状組織(既存の会社等の組織単位はそのままに)を市場分野・プロセスの観点より大きく括り(「事業グループ」)、最適組織構造の立案を実施します。事業責任者は執行役員が務めます。
執行役員は担当する「事業グループ」および「機能組織」においてその執行責任を果たし、当社グループとしての企業価値最大化を目指します。具体的には執行権限の強化を図ります。
②経営改革により期待される効果
本経営改革の着実な実行により、当社グループの企業価値のさらなる向上を目指してまいります。各事業グループの収益率向上を目的とし、新商品・新ビジネスの創出やM&Aも視野に入れた事業領域の拡大、価格競争力・コスト競争力の強化、より価値の高い事業や商品へのシフト、業務プロセスや機能プロセスの見直しによる内部効率向上を実行してまいります。また、企業風土の改革や人財の活用、カーボンニュートラル社会に向けた対応など持続的な取り組みも積極的に実行してまいります。着実な経営改革活動により、恒常的に連結経常利益300億円を超える新生チーム日軽金として飛躍を進めてまいります。
(経営改革実施後の当社経営体制)
「事業グループ」
「機能組織」
(6)経営指標
①財務指標
当社グループが持続的に成長していくことを可能とするため、300億円台の経常利益を恒常的に達成できる体制を目指します。中期経営計画のもと、事業部門個々の成長戦略による価値創出とともに、グループ課題への対応を図り、外部環境の変化への耐性が高い収益基盤の構築をしてまいります。
(金額単位: 億円)
|
|
2024年 3月期 (実績) |
2025年 3月期 (実績) |
2026年 3月期 (予想) |
2026年 3月期 (23中計目標) |
|
売上高 |
5,237 |
5,502 |
5,900 |
5,300 |
|
営業利益 |
182 |
217 |
230 |
300 |
|
経常利益 |
190 |
198 |
210 |
300 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
99 |
124 |
150 |
200 |
|
R O C E(%) |
6.0 |
6.2 (参考) |
6.5 (参考) |
10.3 |
|
R O Ⅰ C(%)* |
4.9 (参考) |
5.1 |
5.5 |
- |
*資本効率の指標について、これまでのROCE(使用資本利益率)に替えて、ROIC(投下資本利益率)にて記載しております。
②利益配分の基本方針
「財務体質と経営基盤の強化を図りつつ、中長期的な視点から連結業績等を総合的に勘案し、株主の皆さまへの配当を実施する」ことを基本方針としております。利益還元の指標といたしましては、自己株式の取得を含む総還元性向30%以上を基準とし、配当額等を決定させていただきます。
|
|
2025年3月期 |
2026年3月期 (予想) |
23中計最終年度 2026年3月期 |
||
|
中間 |
期末(予定) |
中間 |
期末 |
年間目標 |
|
|
配当 |
20円 |
50円 |
25円 |
55円 |
100円 |
自動車や半導体関連をはじめとする成長分野における事業拡大と、基盤ビジネス分野における需要創造・収益力拡大に向けた投資に加え、経営基盤の強化、研究開発や人財育成、およびカーボンニュートラルなど将来に向けての投資を行い、企業価値の向上に努めてまいります。
中期経営計画の諸施策の実施により収益力を高めたうえで、事業構造の見直しや資本効率の改善を図り、PBR向上を意識した経営に努めてまいります。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組み
① 戦略
当社グループは「アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく」ことを経営理念としており、サステナビリティを巡る課題への対応について、社会の持続可能な発展を実現すべく、サプライチェーン全体での環境負荷低減や責任ある調達・生産・供給、従業員の幸せの追求などに取り組んでおります。具体的な事業を通じた取組みとしては、アルミ二次合金(リサイクル)事業はもとより、環境対応車関連事業、半導体(5G)関連事業、インフラ関連事業、コールドチェーン関連事業などを推進してきたとともに、それらの基盤となるものとして、最優先事項である労働の安全衛生の確保や、働きがいのある職場づくりなどに取り組んできました。
当社グループがサステナビリティを巡る課題への対応に関しどのような外部環境の変化を予測し、それをどのようなリスク・機会と捉えているか、また、財務・非財務の各資本を事業活動へ投入し、ステークホルダーへの価値提供、社会的価値の創出による各資本の循環を通じて人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していくプロセス、今後取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を、統合報告書の価値創造プロセスで開示しております。また、各事業におけるサステナビリティの取組み、価値創造の基礎となる活動についても、統合報告書で開示しております。
特定したマテリアリティを基に長期的視野で描いた目指すべき姿に照らして現在の事業や各種取組みを評価し、評価結果に基づくサステナビリティ課題への中期・短期の取組み方針を中期経営計画・同推進計画に盛り込み、評価、改善、計画、実行のプロセスを回して、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を推し進めていきます。また、これと併せて、サステナビリティ経営の視点を踏まえた長期的な取組み方針を、経営方針に織り込んでいきます。
2022年度には、サステナビリティ経営の視点を踏まえたマテリアリティを盛り込んだ経営方針(日軽金グループ経営方針)の改定を行い、その後、2023年度を初年度とする中期経営計画・同推進計画を策定しました。この計画では、上記経営方針に基づくサステナビリティ経営の実現に向けた中期・短期の取組みとともに、ステークホルダーから信頼される企業グループとなるべく経営改革を推進していくことが盛り込まれております。
このほか、脱炭素を始めとする環境負荷低減を求めるお客様・社会のニーズを当社グループの企業価値拡大の機会として捉え、自動車軽量化構造部材、EVバッテリー関連部材(デバイス冷却ユニット)、電機関連部材に代表されるカーボンニュートラル関連商品等を当社グループにおける重要商品・サービスと位置づけ、新商品・技術の開発に注力してまいりました。
② ガバナンス
当社グループの持続的な成長及び企業価値創造のためには様々な経営課題があります。その中で特に重要な21の課題を重要課題(マテリアリティ)として特定し、それらを「地球環境保護」「持続可能な価値提供」「従業員の幸せ」「責任ある調達・生産・供給」「企業倫理・企業統治」の5つの重要課題テーマに再分類し、グループCSR委員会、グループ経営会議の審議を経て、取締役会で承認しております。重要課題(マテリアリティ)についてはそれぞれのKPI(評価指標)及び目標値を設定し、その達成に向けて、取締役会やグループ経営会議での議論だけでなく、グループ経営会議の下部組織である各種委員会等において、具体的なアクションプランの立案・審議を行っております。
例えば、「地球環境保護」や「持続可能な価値提供」というテーマに対しては、社長を委員長とする「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」を設置しており、当社取締役(社外取締役を除く)、執行役員及び当社グループ内より広く選出されたメンバーなどで構成されたこれらの委員会のもとで、気候変動への対応を含むサステナビリティ推進計画を策定しております。
また、「従業員の幸せ」というテーマに対しては、「グループ安全衛生委員会」や主要グループ各社の人事担当部長が参集する定例会議などを設置し、労働の安全衛生、働きがいのある職場づくり、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、人財の確保・育成といった重要課題についての対応方針を協議し、その達成に向けての取組みを進めております。
なお、コーポレート・ガバナンス体制については、
③ リスク管理
当社グループでは重要課題(マテリアリティ)を管理するために、各重要課題におけるリスクと機会の分析を進め、分析の内容については上記の各種委員会等に報告し、リスク管理計画の策定を進めると同時に、取締役会への定期的な報告も行うことでリスクへの対応を強化していきます。
④ 指標及び目標
当社グループの重要課題(マテリアリティ)に設定したKPI(評価指標)、目標値及び2023年度の実績は次の通りであります。なお、2024年度の実績については、統合報告書2025及び当社ホームページにて開示いたします。
|
5つの 重要課題 テーマ |
重要課題 |
主なKPI(評価指標)及び 2023年度実績 |
当社評価 |
目標(*1) |
|
地球環境 保護 |
●自社での温室効果ガス削減 (スコープ1・2) ●サプライチェーンでの温室効果ガス削減(スコープ3) ●気候変動への対応(TCFD) ●水ストレスへの対応 ●環境汚染の防止 |
● 売上高原単位(国内)
2023年度: |
〇 |
●2013年度比△30%
● |
|
● 売上高原単位(国内)
2023年度: |
〇 |
●2013年度比△30%
● |
||
|
●
2023年度:環境事故 |
× |
● |
||
|
持続可能な 価値提供 |
●再生可能エネルギーの 利用拡大への取組み ●低炭素商品・サービスの 開発、提供 ●循環型経済・社会の推進 ●強靭なインフラ整備、提供 ●食料の安定供給への貢献 ●イノベーションによる 未来づくり |
●
2023年度: |
△ |
● |
|
●
2023年度: |
〇 |
● |
||
|
従業員の 幸せ |
●労働の安全衛生 ●働きがいのある職場づくり ●ダイバーシティ&インクルージョン ●人財の確保、育成 |
●
2023年度: |
× |
● |
|
●
2023年度: |
△ |
● |
||
|
●
2023年度: |
△ |
● ●2030年度:10%以上 |
||
|
●
2023年度: |
〇 |
● ●2030年度:100% |
||
|
●
2023年度: |
△ |
● |
||
|
●
2023年度: |
〇 |
● |
||
|
●
2023年度: |
〇 |
● |
|
5つの 重要課題 テーマ |
重要課題 |
主なKPI(評価指標)及び 2023年度実績 |
当社評価 |
目標(*1) |
|
責任ある 調達・生産・供給 |
●安全、安心な商品・サービスの提供 ●人権の保護、尊重 ●安定したサプライチェーンの構築 ●変化に柔軟で強靭なバリューチェーン |
●
2023年度: |
× |
● |
|
●
2023年度: |
〇 |
● |
||
|
●
2023年度: |
△ |
● |
||
|
●
2023年度: |
△ |
● |
||
|
企業倫理・ 企業統治 |
●ガバナンスの強化 ●コンプライアンス体制の強化 |
●
2023年度: |
〇 |
● |
|
●
2023年度: |
〇 |
● |
||
|
●
2023年度: |
〇 |
● |
||
|
●
2023年度: |
△ |
●年間 |
(注)*1.特に言及のないものは2030年度目標
*2.日本軽金属㈱単体
*3.グループ総購買金額カバー率80%を満たすサプライヤー
(2)気候変動への対応(TCFDに基づく開示)
① 戦略
当社グループはTCFDの提言に基づいた開示を行うにあたり、シナリオによる影響の違いが分かりやすいように、成り行きで想定される4.0℃と最も強い規制が整備された場合である1.5℃の、2つのシナリオに基づいた分析を進めています。対象年度については、分析結果に一定程度以上の確からしさを担保することが可能な中期的な未来である2030年度と、気候変動の影響がより顕著に表れると見込まれる、長期的な未来としての2050年度としています。
また、当社グループはさまざまな事業領域を抱えるため、全ての部門を分析の対象にするまでには至っていませんが、リスク・機会の影響度評価については、2023年度に発足した日軽金ALMO㈱なども新たに対象範囲に加え、算定を行いました。
そして、各項目における金額的影響を測り、三段階での評価を行うとともに、各項目について想定されるシナリオごとの重要度を、発生可能性と実際に発生した場合の影響度の2つの観点からマッピングし、評価しました。この分析結果を踏まえ、今後はカーボンニュートラルの推進をはじめとする具体的な対応策についての検討を進めていきます。
|
区分 |
リスク・機会のシナリオ内容 |
財務影響 * |
重要度(発生可能性×影響) |
|||||
|
2030年度 |
2050年度 |
|||||||
|
4.0℃ |
1.5℃ |
4.0℃ |
1.5℃ |
|||||
|
リ ス ク |
移行 |
政策・法規制 リスク |
炭素価格の導入による原材料や生産コストの増加(調達) |
高 |
中 |
大 |
大 |
大 |
|
炭素価格の導入による原材料や生産コストの増加(生産) |
中~高 |
小 |
中 |
中 |
大 |
|||
|
技術リスク |
リサイクル規制への対応、技術開発の遅れによる競争力の低下 |
低~中 |
小 |
中 |
中 |
大 |
||
|
リサイクル新技術の開発等、投資コストの増加 |
低 |
中 |
中 |
中 |
大 |
|||
|
市場リスク |
スクラップ価格の上昇による原料コストの上昇 |
低~中 |
小 |
大 |
大 |
大 |
||
|
株主・金融機関の脱炭素方針による資金調達コストの上昇 |
低 |
小 |
小 |
小 |
中 |
|||
|
アルミの代替素材の台頭によるアルミ市場の縮小 |
低~中 |
小 |
小 |
中 |
大 |
|||
|
EVの普及によるガソリン車用部材の売上の減少 |
中 |
中 |
大 |
大 |
大 |
|||
|
物理 |
急性 |
洪水・高潮被害による営業停止の発生 |
中 |
小 |
小 |
中 |
小 |
|
|
慢性 |
気温上昇による労働効率の悪化、労務費上昇 |
低~中 |
小 |
小 |
中 |
小 |
||
|
機 会 |
移行 |
商品・ サービス |
電動化製品(特にEV普及)に対する当社商品の増販 |
中~高 |
中 |
大 |
大 |
大 |
|
その他の脱炭素・省エネ関連商品の需要増 |
低~中 |
小 |
小 |
小 |
中 |
|||
|
資源の効率性 |
高リサイクル性の観点からのアルミ需要の上昇 |
低~中 |
小 |
小 |
中 |
大 |
||
(注)高:100億円以上 中:10億円以上 低:10億円未満
② ガバナンス
気候変動への対応に関する体制として、社長を委員長とする「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」を設置しており、これらの委員会のもとで、気候変動への対応を含むサステナビリティ推進活動計画を策定しています。また、世界的な脱炭素の潮流の中で、当社グループとして最適な脱炭素戦略の立案と実行により、当社グループの成長戦略をより確固とするため、統合的な権限と責任を持つ「カーボンニュートラル推進室」を設置しています。現在、2050年カーボンニュートラルに向けた目標を設定し、取組みを進めております。これまでの省エネ活動やリサイクル活動に加え、お客様からの要望が高まっているグリーンアルミの確保や、使用したアルミニウムを素材として再利用する循環型のサプライチェーン構築等、当社グループとしてのカーボンニュートラル実現に向けた取組みを統合的に推進しています。
③ リスク管理
当社グループは、気候変動による影響を経営上の重要なリスクの一つとして捉え、管理をするために、将来におけるリスクと機会のシナリオ分析を行っています。シナリオ分析は当社グループの主要部門を対象に行っていますが、連結全体での影響度分析を行うべく、毎年徐々にその範囲を広げています。今後は、重要性が高いと判断した項目についての定量分析の精度を高めた上で開示内容を拡充すると同時に、目標達成に向けた取組みを推進していきます。分析内容については「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」に報告し、「カーボンニュートラル推進室」との連携を図りながらリスク管理計画の策定を進めると同時に、取締役会への定期的な報告も行うことで、気候変動リスクへの対応を強化していきます。
④ 指標及び目標
当社グループは、スコープ1・2にスコープ3を加えて、2050年のカーボンニュートラルを目指し、2030年の温室効果ガス排出量(売上高原単位)を2013年度(スコープ1+2:1.41㌧-CO2/百万円、スコープ3:7.58㌧-CO2/百万円)比で30%削減する目標に向けて取組みを推進しています。
2023年度の実績は、スコープ1+2およびスコープ3とも、前年度比でCO2排出量売上高原単位が減少しました。なお、2024年度の実績については、統合報告書2025及び当社ホームページにて開示いたします。
(算定基準)
※ スコープ2排出量の算定方法を、ロケーション基準からマーケット基準に変更しています。当該変更により、適用する排出係数の見直しを行った結果、過年度の数値を修正しています。
※ 集計範囲 : 国内連結子会社(製造)32社/海外連結子会社(製造)12社
※ 温室効果ガス排出量(スコープ1・2)は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」および「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づいて計算しており、次のCO2排出係数を使用しています。/国内電力:環境省・経済産業省公表の電気事業者別の調整後排出係数/海外電力:各国政府公表のCO2排出係数(2023年度より)/燃料:都市ガスについては環境省・経済産業省公表のガス事業者別の基礎排出係数、それ以外については環境省令の各燃料の単位当たりCO2排出係数
※ 実績値はエネルギー起源CO2排出量のみです。
(3)人的資本
(ア)人財戦略
当社グループは事業活動のすべての基盤は「人財」であるとし、 重要課題テーマ「従業員の幸せ」と「日軽金グループ行動理念」 の両立から、チーム日軽金による社会的価値の創出ならびに企業価値向上を目指します。 当社グループは持続的な成長および企業価値創造のための重要課題テーマの一つとして、「従業員の幸せ」を掲げています。 会社にとって「人財」は重要な資産であり、従業員とその家族の幸せを守り、追求することが会社経営の基本であると考えるからです。一方で、「日軽金グループ行動理念」はお客様への価値提供の実現を目指し、従業員の視点で大切にしたい価値観、行動基準を成文化しました。会社が重要課題テーマ「従業員の幸せ」に取り組み、従業員一人ひとりが主体的に「日軽金グループ行動理念」を実践することで、個人と組織が互いに高めあい、双方の成長が企業グループのさらなる発展につながると考えます。
従業員一人ひとりが日々の仕事に「やりがい」を感じ、チーム日軽金の一員として能力を最大限に発揮するためには「従業員の幸せ」の実現と「日軽金グループ行動理念」の実践が不可欠です。重要課題テーマ「従業員の幸せ」を構成する4つの重要課題「労働の安全衛生」「働きがいのある職場づくり」「ダイバーシティ&インクルージョン」「人財の確保、育成」は、従業員の心身の健康を前提とし、多様性に富む個人が成長・活躍する組織づくりを目指しています。そして、そこで働く従業員の目指す人財像として「日軽金グループ行動理念」があります。当社グループは多様な事業体を有していることから、グループ力の向上にはグループで働くすべての従業員が同じベクトルを持つ必要があります。「日軽金グループ行動理念」はすべての従業員が理解し、共感できるよう、グループ従業員36人からなるプロジェクトメンバーが策定しました。当社グループは「日軽金グループ行動理念」が従業員エンゲージメント向上の基軸になると考えており、自律的取組みの推進とエンゲージメントサーベイによる浸透の定量化を進めていきます。
(イ)人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針
当社グループでは「多様な価値観を尊重し、長期的かつグローバルな視点で人財を育成する」を経営の基本方針として掲げています。総合職定期採用においては求める人財として「多様な価値観を理解して自分のことばにできる人」「幅広いフィールドに関心をもってチャレンジできる人」「人と人、知識と知識をつないで新しいものを生み出せる人」の3点を掲げ、採用活動を行っています。そして育成面では、当社グループは人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針(人財育成方針)を定めています。また、日軽金グループ行動理念の一つに「進化する自分を描く」を掲げ、従業員の自律的成長や学びの促進を図っています。
〇人財育成方針
◆人財が全ての基盤との認識の下、以下の三要件を兼ね備えたグループ中核人財を計画的に育成します。
・グループ内外との連携を通じて新たな価値を創出する人財
・強い達成志向と高い倫理観を同時に持ち合わせた人財
・周囲の人財に健全な関心を持ちその成長を支援する人財
◆計画的な人財育成に向けて多様な教育プログラムを整備、提供します。
◆従業員の自主性を尊重し本人意向を踏まえたキャリアパスにより個の力の強化を図ります。
◆永続的な人財輩出のために後進育成への注力を成果創出と同等に評価します
〇体制
当社グループは日本軽金属㈱、日軽金アクト㈱、日軽エムシーアルミ㈱の3社合同で総合職定期採用を実施しています。技術系リクルーターの体制構築と豊富なインターンシッププログラムの提供により、多様な人財の確保に努めています。総合職定期採用の新入社員は、日軽情報システム㈱を加えた4社で配属前集合研修を実施しています。近年は、グループ各社による教育・研修のほか、グループ全体で実施する教育・研修に注力してきました。日本軽金属㈱の研修体系にグループ各社が任意で参加する形式で、延べ約30社のグループ会社が参加しています。今後は受講対象が拡大することを踏まえ、グループ連携のさらなる強化を目指し、国内グループ総合職社員を対象とした受講必須の統一研修への体制移行を計画しています。
(ウ)社内環境整備に関する方針
当社グループは「働きやすさ」と「働きがい」の向上を目指し、社内環境整備に関する方針(社内環境整備方針)を定めています。この方針のもと、環境面の整備のほか従業員の働き方や仕事の充足感に資する施策を積極的に取り組んでいます。また、日軽金グループ行動理念に「ご安全に!」「やってみよう、やってみなよ」という標語(キャッチコピー)を掲げることで、従業員が日々の仕事の中で「安全」や「チャレンジできる職場づくり」を意識、実践する機会の促進を図っています。
〇社内環境整備方針
◆全ての人財が健康で安全に働ける職場をつくります。
◆コミュニケーション豊かな安心と働きがいにあふれた職場をつくります。
◆多様な価値観を尊重し全員が生き生きと働ける職場をつくります。
〇体制
職場環境改善や健康経営については、定期的に開催する主要グループ各社の人事担当部長会議で検討を行い、さらに年1回開催するグループ人事担当者会議で計画や成果を共有する体制を採っています。また、日軽金プライドや社会貢献プロジェクト活動は、グループ各社に対する積極的な呼びかけと社内報やイントラを活用した活動報告を継続することで、自発的な参加の促進を図っています。本活動にはグループ従業員と経営層が参画しており、会社や役職の垣根を越えたフランクな交流を通じ、グループで共に働く人たちの絆を広げる、深める体制を構築しています。
(エ)指標及び目標
当社グループは5つの重要課題(マテリアリティ)のテーマの一つである「従業員の幸せ」に関して、指標及び目標を設定し、具体的なアクションプランに基づいてその達成に取り組んでおります。KPI(評価指標)、目標値及び2023年度の実績は
当社グループは、事業戦略に対して直接または間接の損失発生、事業の中断や停止、信用・ブランドイメージを損なう等のリスクについて管理を行っております。
なお、紛争や政治的な不安による地政学的リスク、原材料価格の高騰のような経済的リスク等をはじめとするサプライチェーンリスクに対しても、事業別に総合的分析を行い、事前に軽減策を検討しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経済情勢及び景気動向等
当社グループは、コモディティビジネスから脱却して経済情勢及び景気動向に左右されにくい強固で安定した経営基盤の構築を目指して事業運営をしておりますが、当社グループの製品需要は販売している国・地域の経済情勢及び景気動向の影響を免れるものではなく、特に日本国内の景気後退による需要の縮小、あるいは顧客ニーズの大幅な変化は、販売減少等により当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替相場の変動
当社グループの外貨建ての売上、費用、資産、負債等の項目は、連結財務諸表作成のために邦貨換算しており、換算時の為替相場により現地通貨ベースの価値に変動がなくても邦貨換算後の価値に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、為替変動が財政状態及び経営成績等に及ぼす影響を軽減するために、外貨建ての資産・負債の一部について先物為替予約等によりヘッジを実施しておりますが、為替変動が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金利動向
当社グループの金融機関等からの借り入れには変動金利によるものが含まれており、これに係る支払利息は金利変動により影響を受けます。当社グループは、金利変動が財政状態及び経営成績等に及ぼす影響を軽減するために、変動金利の借り入れの一部について金利スワップ契約によりヘッジを実施しておりますが、金利変動が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 商品市況変動等
当社グループは、主要原材料であるアルミニウム地金等を海外(国内外商社経由を含む)から調達しております。アルミニウム地金等の価格変動に対しては長期契約や先渡取引によるヘッジの実施に加え、基本的に価格変動部分は製品価格に転嫁しております。また、重油等の燃料価格や補助原材料の価格、原材料等を輸入する際の船賃等の仕入に係る価格変動についても、価格上昇を当社グループの製品価格に転嫁することを基本としております。しかしながら、価格上昇の製品コストへの影響を完全に排除できるわけではなく、特に最終ユーザーに近い加工製品等については、アルミニウム地金等の価格上昇分等を直接製品価格に転嫁することが困難となる場合があります。当社グループは商品市況変動等が財政状態及び経営成績等に及ぼす影響を軽減するため、コスト削減及びより高付加価値の製品への転換等により対処を図っておりますが、商品市況変動等が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 事故・自然災害
火災、地震、水災、停電等の災害を想定して、近隣まで含めた災害発生時の対処、復旧計画、各種損害保険加入による対策、データのバックアップ体制等について、製造設備関連のみならず情報システム関連についても訓練・点検等を実施し、定期的に内容の見直しを行っておりますが、災害発生により損害を被る可能性があります。
かねてより大地震発生の可能性が言及されてきた、東海、東南海、南海トラフの連動巨大地震に対して、当社グループとしても、製造現場での防災対策等、重点的に対処しておりますが、大地震発生により当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 公的規制
当社グループは、日本国内のみならず事業展開する各国において、事業の許認可、国家安全保障、独占禁止、通商、為替、租税、特許、環境等、様々な公的規制を受けております。当社グループは、これらの公的規制の遵守に努めておりますが、将来、コストの増加につながるような公的規制や、当社グループの営む各事業の継続に影響を及ぼすような公的規制が課せられる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 係争事件等
当社グループは、日本国内のみならず各国において法令遵守に努めておりますが、広範な事業活動の中で、今後係争事件等の対象となる可能性があり、裁判等で不利益な判決や決定がなされる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 債務保証等
当社グループは、投資先の借入金等に対しての債務保証契約等を金融機関等との間で締結しております。当社グループでは、債務保証等の履行を要求される可能性は僅少であると判断しておりますが、将来、債務保証等の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 製品・サービスの品質
当社グループでは、社会やお客様からの要求事項や関連法令を把握し遵守することを徹底し、安全で安定した製品やサービスを提供し続けていくために、品質保証・管理活動を推進しておりますが、製品・サービスに関する品質問題が生じた場合は、顧客等から代品納入や補償等を求められるほか、製品・サービスへの信頼性低下から売上が減少する等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
なお、現時点では予想できない上記以外の事象により、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当期の世界経済は、米国における個人消費を中心とした景気の拡大等、全体としては持ち直しの動きがみられ
ましたが、中国経済の減速、金融資本市場の変動に加え、期の後半は、米国の通商政策の動向等に注視が必要な
状況となりました。わが国においては、雇用・所得環境や企業収益の緩やかな改善がみられたものの、米国の政
策動向や、物価上昇による企業活動・個人消費への影響等、予断を許さない状況が続きました。
アルミニウム業界においては、自動車関連の需要が回復基調ながらも低調であったこと等から、アルミニウム
の国内総需要は前期を下回りました。また、原料となるアルミニウム地金などの価格上昇が続きました。
当期の業績は、以下のとおりです。
自動車関連において国内自動車生産が回復基調ながらも低調であったことや、中国での販売低迷に加え、パネ
ルシステム部門における建設費高騰や人手不足による工期遅れの影響等があったものの、トラック架装関連が堅
調に推移したこと、半導体関連でも緩やかな基調ながらも販売量が前期を上回ったこと等から、売上高は前期を
上回りました。採算面においても、原材料価格の高止まりによる影響があったものの、アルミニウム地金市況が
上昇局面にあったことや販売価格改定の効果により、板、押出製品が大きく改善したことから、営業利益、経常
利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期を上回りました。
連結経営成績
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(単位:百万円) |
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当連結会計年度 2025年3月期 |
前連結会計年度 2024年3月期 |
比較増減 |
(△印減少) |
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売上高 |
550,180 |
523,715 |
26,465 |
(5.1%) |
|
営業利益 |
21,744 |
18,189 |
3,555 |
(19.5%) |
|
経常利益 |
19,785 |
19,033 |
752 |
(4.0%) |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
12,375 |
9,939 |
2,436 |
(24.5%) |
(注)「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号 2022年10月28日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度は遡及適用した後の数値となっております。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
なお、当社は、当期から、当社グループとしての企業価値最大化を目的とする「事業グループ」、「機能組
織」による事業運営体制に移行しました。これにより、報告セグメントに属する部門・商品を以下のとおり「事
業グループ」に基づく記載に変更するとともに、一部の部門・商品を組み替えております。
また、前期の売上高および営業利益に関するセグメント別情報、ならびに前期比較については、上記の組み替
えを踏まえた数値での記載および比較としております。
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報告セグメント |
主な事業グループ |
主な部門・商品 |
|
アルミナ・化成品、地金 |
化成品 |
化成品、炭素製品 |
|
メタル |
二次合金 |
|
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板、押出製品 |
軽圧 |
板、押出、電子材料 |
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加工製品、関連事業 |
輸送機器 |
トラック架装 |
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自動車部品 |
自動車部品 |
|
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エンジニアリング |
パネルシステム、景観エンジニアリング |
|
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インフラ |
日軽金・蒲原製造所、苫小牧製造所、物流 |
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箔、粉末製品 |
箔 |
箔、パウダー・ペースト、日用品 |
(アルミナ・化成品、地金)
化成品事業グループにおきましては、化成品部門は、主力の水酸化アルミニウムおよびアルミナのセラミック向けの販売が前期を上回り、化学品では無機塩化物の販売が堅調に推移したことに加え、販売価格改定の効果により、売上高、営業利益ともに前期を上回りました。
炭素製品部門は、主力の鉄鋼業界向けカーボンブロックの販売が減少したことにより、売上高は前期を下回り、採算面では営業損益が前期から大幅に悪化しました。
メタル事業グループにおきましては、主力の自動車向け二次合金部門において、国内は自動車生産が回復基調にあるものの低調が続いており、海外は堅調な米国を除く中国・タイでの販売減により販売量が減少しました。この結果、アルミニウム地金市況を反映した販売価格上昇により、売上高は前期を上回りましたが、採算面では営業利益が前期を大幅に下回りました。
以上の結果、アルミナ・化成品、地金セグメントの売上高は前期比6.2%増の1,654億99百万円となりましたが、営業利益は前期比2.4%減の115億42百万円となりました。
(板、押出製品)
軽圧事業グループにおきましては、板部門は、半導体製造装置向けは緩やかな回復基調が継続したことで販売量が増加し、リチウムイオン電池ケース向け板材も好調だったことに加え、アルミニウム地金市況を反映した販売価格上昇と加工賃の改定効果により、売上高、営業利益ともに前期を大きく上回りました。
押出部門は、トラック架装向けが前期を上回る販売となり、半導体製造装置向けは緩やかながらも回復傾向であることに加え、アルミニウム地金市況を反映した販売価格上昇と加工賃の改定効果により、売上高、営業利益ともに前期を上回りました。
電子材料部門は、電子部品業界全体の需要は停滞したものの、車載向けアルミ電解コンデンサ用電極箔の販売増および販売価格上昇により、売上高、営業利益ともに前期を上回りました。
以上の結果、板、押出製品セグメントの売上高は前期比9.3%増の1,035億55百万円、営業利益は前期比141.4%増の55億55百万円となりました。
(加工製品、関連事業)
輸送機器事業グループのトラック架装は、販売面で概ね堅調な需要環境が続いていることに加え、販売価格改定により、売上高は前期を上回りました。採算面では材料価格高止まりの影響があるものの、販売価格改定効果により営業損益は前期と比べ大きく改善しました。
自動車部品事業グループにおきましては、国内は自動車生産が回復傾向にあるものの低調であること、海外は中国市場での日系自動車メーカーの低迷継続などにより、売上高は前期を下回りました。採算面では販売価格改定効果や固定費などの削減による改善効果があるものの、販売減の影響が大きく、営業損益は前期より悪化しました。
エンジニアリング事業グループのパネルシステム部門は、冷凍・冷蔵分野は、食品工場および低温流通倉庫の物流拠点増設や老朽化による建て替え需要は継続しているものの、建設費高騰や人手不足による工期遅れの影響が生じました。また、クリーンルーム分野は、半導体関連および製造装置メーカー向けクリーンルームの需要は継続しているものの、原材料価格高騰の影響を受け、部門全体で前期を下回る売上高、営業利益となりました。
景観エンジニアリング部門は、道路・橋梁向けにおいて点検用足場製品の販売が堅調に推移したことから、売上高は前期を上回りました。一方、採算面では建設資材価格上昇の影響により、減益となりました。
以上の結果、加工製品、関連事業セグメントの売上高は前期比2.7%増の1,722億49百万円、営業利益は前期比20.6%増の31億73百万円となりました。
(箔、粉末製品)
箔事業グループの箔部門は、リチウムイオン電池外装用箔は車載用での調整局面が続いており、医薬包材向け加工箔の販売は前期をやや下回ったことにより、売上高はアルミニウム地金市況を反映した販売価格上昇により前期並みとなりましたが、営業利益は前期を下回りました。
パウダー・ペースト部門は、パウダー製品は放熱用途の電子材アルミパウダーや窒化アルミが需要回復により前期を上回る販売が継続しており、ペースト製品は主力の自動車塗料向けの販売が国内は前期を下回ったものの海外は好調であったことから、部門全体で、売上高、営業利益ともに前期を上回りました。
日用品部門は、コンシューマー向けはアルミホイルなどの食品向けやハウスケア商品での販売価格改定による値上げ効果が減販影響を上回り、パッケージ用品向けは冷凍食品向けと紙容器の販売が好調に推移した結果、部門全体の売上高は前期を上回りました。一方、採算面では、原材料価格高騰の影響を吸収しきれず、営業利益は前期並みとなりました。
以上の結果、箔、粉末製品セグメントの売上高は前期比3.4%増の1,088億77百万円となりましたが、営業利益は前期比3.1%減の54億60百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当期末における連結ベースの現金及び現金同等物については、前期末に比べ3億97百万円(1.1%)減少の346億90百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは120億59百万円の収入となりました。これは税金等調整前当期純利益や減価償却費などの非資金損益項目が、運転資金の増加などによる支出を上回ったことによるものです。なお、営業活動によるキャッシュ・フロー収入は前連結会計年度と比べ259億82百万円減少しておりますが、これは主に運転資金の増加などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは191億7百万円の支出となりました。これは、主として有形固定資産の取得による支出によるものです。なお、投資活動によるキャッシュ・フロー支出は前連結会計年度と比べ48億24百万円減少しておりますが、これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは62億43百万円の収入となりました。これは主として長期借入れによる収入によるものです。なお、財務活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度の110億49百万円の支出に対し、当連結会計年度は62億43百万円の収入となっておりますが、これは主に長期借入れによる収入が増加したことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績及び受注実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また、受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産実績及び受注実績については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。
(b)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
|
|
アルミナ・化成品 |
46,486 |
6.0 |
|
|
地金 |
119,013 |
6.3 |
|
|
アルミナ・化成品、地金 |
165,499 |
6.2 |
|
|
板製品 |
70,611 |
13.1 |
|
|
押出製品 |
32,944 |
1.8 |
|
|
板、押出製品 |
103,555 |
9.3 |
|
|
輸送関連製品 |
72,078 |
6.8 |
|
|
自動車部品事業 |
32,092 |
△3.8 |
|
|
エンジニアリング |
45,105 |
0.4 |
|
|
その他 |
22,974 |
4.3 |
|
|
加工製品、関連事業 |
172,249 |
2.7 |
|
|
箔、粉末製品 |
108,877 |
3.4 |
|
合計 |
550,180 |
5.1 |
|
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、主要な販売先として記載すべきものはありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 2023中期経営計画レビュー
当社グループにおいては、「新生チーム日軽金への取組み」および「社会的な価値の創出に寄与する商品・ビ
ジネスの提供」を基本方針とする中期経営計画(2023年度~2025年度)のもと、経営改革を推進してまいりま
した。めまぐるしく変化する事業環境にあって、従来のグループ経営では持続的成長は困難であるとの危機感の
もと、新たなグループ経営の実現が急務ととらえ、改革を断行しております。
昨年6月以降、経営改革の一環として、市場分野が近接する事業のグルーピングを行い(事業グループ制への
移行)、グループ内連携の強化による新たな商品・ビジネスの創出を加速するとともに、資本効率の向上に向け
た各種KPI策定に着手いたしました。同時に、取締役会の監督機能強化、経営における意思決定のスピードアッ
プ・ガバナンス向上も図ってまいりました。既存事業における新商品開発と将来の事業創出については、新設し
た「マーケティング&インキュベーション統括室」を中心に活動しており、具体的な取組み例として、大型電力
貯蔵用蓄電池や電動自動車に使用されるリチウムイオン電池について、低コスト・低CFP(Carbon Footprint of
Products)を実現する量産技術開発に他社と共同で着手しました。
このほか、脱炭素を始めとする環境負荷低減を求めるお客様・社会のニーズを当社グループの企業価値拡大の
機会として捉え、自動車軽量化構造部材、EVバッテリー関連部材(デバイス冷却ユニット)、電池関連部材に代
表されるカーボンニュートラル関連商品等を当社グループにおける重要商品・サービスと位置づけ、新商品・技
術の開発に注力してまいりました。
なお、2021年に当社グループ会社で判明した品質等に関する不適切行為について2023年に策定・公表した経
営改革の推進と内部統制機能の強化を柱とする再発防止への取組みにつきましては、すべての役職員が忌憚なく
声をあげられる企業風土づくりをはじめ、引き続きグループ一丸となって取り組んでおります。
② 当連結会計年度の財政状態の分析
当社グループは、より健全で強固な経営体質にすることを狙いとした中期経営計画の諸施策と並行し、財務体質改善のための有利子負債削減や自己資本の充実に注力しております。
当連結会計年度末の総資産は、アルミニウム地金価格の上昇等による棚卸資産の増加などにより、前連結会計年度末と比べて2億12百万円増の5,443億7百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末が休日だった影響等による支払手形及び買掛金の減少などにより、前連結会計年度末に比べて112億72百万円減の2,938億26百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加などにより、前連結会計年度末と比べて114億84百万円増の2,504億81百万円となりました。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末の40.8%から42.8%となりました。
③ 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)概要
当連結会計年度の売上高は5,501億80百万円(前連結会計年度比 5.1%増、264億65百万円増)、営業利益は217億44百万円(同 19.5%増、35億55百万円増)、経常利益は197億85百万円(同 4.0%増、7億52百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は123億75百万円(同 24.5%増、24億36百万円増)となりました。
(b)営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ、35億55百万円増の217億44百万円となりました。営業利益のセグメント毎の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。
(c)営業外収益・費用
営業外収益は、為替差益が減少したことなどにより、前連結会計年度と比べ、13億91百万円減少し、39億41百万円となりました。
営業外費用は、営業外費用に計上している支払利息が増加したことなどにより、前連結会計年度と比べ、14億12百万円増加し、59億円となりました。
(d)特別利益・損失
特別利益は、投資有価証券売却益として12億79百万円を計上いたしました。投資有価証券売却益の内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載のとおりであります。
特別損失は、減損損失を9億53百万円計上いたしました。減損損失の内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結損益計算書関係)」に記載のとおりであります。
(e)税金費用等
当連結会計年度の税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、課税所得が増加したこと等により、前連結会計年度と比べ、9億54百万円増加し、63億84百万円となりました。
非支配株主に帰属する当期純利益は、主として子会社である日軽エムシーアルミ㈱の非支配株主に帰属する利益であり、当連結会計年度は13億52百万円となりました。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性に関する分析
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ3億97百万円(1.1%)減少の346億90百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ、259億82百万円減少し、120億59百万円の収入となりました。これは主に運転資金の増加などによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の239億31百万円の支出に対し、当連結会計年度は191億7百万円の支出となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度の110億49百万円の支出に対し、62億43百万円の収入となりました。これは主に長期借入れによる収入が増加したことによるものです。
(b)資金需要・調達及び流動性について
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、充分な流動性の維持に留意しております。当社グループの資金需要としては、製品製造のための原料及び操業材料の購入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業活動に係る運転資金需要、製造設備の購入及び事業買収等の投資活動に係る長期資金需要があります。
当社グループは、資金調達に当たって資金の安定性強化と資金コストの低減に傾注しつつ、社債の発行や、主力銀行をはじめとする幅広い金融機関からの借り入れによる調達を行なっております。
また、流動性に関して、当社グループは金融情勢の変化等を勘案しながら、現金同等物の残高が適正になるように努めております。
当社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度380億41百万円、当連結会計年度120億59百万円の収入であり、前連結会計年度に比べると約260億円減少しました。これは主に運転資金の増加などによるものです。2025年度以降も、営業キャッシュ・フローを安定的に創出できると考えておりますが、将来の当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び長期資金を調達するためには、必ずしも充分ではない可能性があることも認識しております。将来の成長を維持・加速するために必要な資金は、基本的に新商品・新規事業の創出による売上、収益の拡大を通じて営業キャッシュ・フローの増大により確保していく方針であります。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。当社グループでは、以下に記載した会計方針及び会計上の見積りが、連結財務諸表作成に重要な影響を及ぼしていると考えております。また、会計上の見積りのうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあると識別したものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(a)貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能見込額を見積り、貸倒引当金として計上しております。将来、顧客等の財務状況悪化、経営破綻等により、顧客等の支払能力が低下したとの疑義が生じたと判断される場合には、貸倒引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
(b)資産の評価
当社グループは、棚卸資産については主として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しておりますが、製品別・品目別に管理している受払状況から、滞留率・在庫比率等を勘案して、陳腐化等により明らかに市場価値が滅失していると判断された場合には、帳簿価額と正味売却価額との差額を評価損として計上しております。実際の市場価格が、当社グループの見積りよりも悪化した場合には、評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
当社グループは、長期的な取引関係の維持・構築のため、一部の顧客及び金融機関等の株式を所有しており、金融商品に係る会計基準に基づいて評価しております。将来において市場価格のある株式の時価が著しく下落したとき、回復する見込みがあると認められない場合には、評価損を計上する可能性があります。一方、市場価格のない株式については、将来において投資先の業績不振等により、帳簿価額に反映されていない損失あるいは帳簿価額の回収不能が発生したと判断された場合には、評価損を計上する可能性があります。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、将来において、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
(c)繰延税金資産
当社グループは、合理的で実現可能なタックスプランニングに基づき将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を充分に検討し繰延税金資産を計上しております。
将来、実際の課税所得が減少した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が減少した場合には、当該会計期間において、繰延税金資産を取り崩すことにより税金費用が発生する可能性があります。一方、実際の課税所得が増加した場合、あるいは将来の課税所得の見積り額が増加した場合には、繰延税金資産を認識することにより、当該会計期間の当期純利益を増加させる可能性があります。
(d)退職給付費用及び債務
当社グループは、従業員の退職給付費用及び債務を算出するに当たり、数理計算上で設定した基礎率(割引率、昇給率、退職率、死亡率、期待運用収益率等)は、統計数値等により合理的な見積りに基づいて採用しております。これらの見積りを含む基礎率が実際の結果と異なる場合、その影響額は数理計算上の差異として累積され、将来期間にわたって償却されるため、将来において計上される退職給付費用及び債務に影響を及ぼします。当社グループは採用している基礎率は適切であると考えておりますが、実際の結果との差異が将来の当社グループの退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。
連結子会社の株式の譲渡に係る統合基本契約(解約)
当社は、2022年8月31日付「連結子会社の株式の譲渡に係る統合基本契約の締結に関するお知らせ」並びに同日付「東洋アルミニウム株式会社と株式会社UACJ製箔の経営統合に向けた統合基本契約締結に関するお知らせ」で公表いたしましたとおり、連結子会社(100%子会社)である東洋アルミニウム株式会社(以下「東洋アルミニウム」という。)について、当社が保有する東洋アルミニウムの株式をJICキャピタル株式会社(以下「JICC」という。)が運用するファンド(JICPEファンド1号投資事業有限責任組合)に46%並びに東洋アルミニウム(自己株式取得)に54%譲渡し、東洋アルミニウムと株式会社UACJの連結子会社である株式会社UACJ製箔(以下「UACJ製箔」という。)(以下、東洋アルミニウムとUACJ製箔の2社を「両事業会社」という。)が2023年4月1日(予定)を効力発生日として経営統合し、JICCが統合後の会社の議決権の80%を取得し、株式会社UACJが議決権の20%を保有すること(以下「本経営統合」という。)について合意し、統合基本契約書を締結しました。その後、2023年2月27日付「連結子会社の株式の譲渡に係る統合基本契約の実行日延期に関するお知らせ」で公表いたしましたとおり、JICC、株式会社UACJ、当社及び両事業会社は、本経営統合の日程を延期することを合意し、本経営統合の実現に向けた準備を行ってまいりましたが、統合基本契約の当事者全社で協議を進めた結果、本経営統合が目指した日本製アルミ箔製品の安定供給による日本の産業の下支え、日本のアルミ箔業界の更なるプレゼンス強化・企業価値の向上などの課題認識は引き続き持ちながらも、本経営統合を実施するための条件が整わず、現時点においては、それぞれのグループが単独での成長戦略を描くことといたしました。それに基づき、JICC、株式会社UACJ、当社及び両事業会社は、本経営統合を中止し統合基本契約の解約を行うことに合意し、当社は、2024年10月31日開催の取締役会において、統合基本契約の解約に関する合意書を締結することを決議し、統合基本契約を同日付で解約しました。
当社グループは、アルミニウムに関する経営資源をベースに、付加価値の高い機能材料と加工品を事業展開し、収益基盤を拡大することを事業戦略の力点に置いております。アルミニウム素材関連の要素技術に磨きをかけ、この技術を活かした新商品・新技術の創造を推し進めるとともに、グループ全体の有機的な連携を強め、高い付加価値商品・サービス群で構成された成長を持続する企業集団としての姿を追求しております。
現在、当社グループは、技術・開発統括室及びマーケティング&インキュベーション統括室を中心に、事業グループごとに蓄えられた知的資源・情報・技術を融合し、市場競争力のある付加価値の高い商品および将来の事業の創出における強化とスピードアップを図っております。
また、日本軽金属㈱グループ技術センターは、マトリクス組織を導入し、永年培ってきた材料・表面処理・解析設計・接合加工・分析の技術を活かしながら、さらに、生産・販売に直結した技術・製品開発体制を整備し、また、高度化・多様化する市場・顧客ニーズに即応可能な技術サービス力の充実を図ることにより、利益拡大に貢献する新商品・新技術の開発を進めております。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
(アルミナ・化成品、地金)
当社グループのアルミナ・化成品の製造部門を中心に、アルミナ、水酸化アルミニウム、各種化学品の高品質・高付加価値化に関する開発及び新用途開発等を行っており、多角的な視野から研究開発を進めております。
地金に関しては、日本軽金属㈱グループ技術センターを中心に、自動車、通信機器、産業機械分野における多様な材料ニーズに対応するため、必要な特性を向上させた各種合金を開発しております。
当連結会計年度には、日本軽金属㈱メタル事業部において、高強度アルミニウム素材およびアルミニウムボルト並びにその製造方法の開発が完了し、これに係る特許を取得いたしました。ボルトメーカーである株式会社ヤマシナ様との間で、従来の素材での耐SCC性と耐熱性を維持しつつ、より高強度なAl-Mg-Si 系合金を用いたアルミボルトの開発に成功し、共同出願していた特許が本邦において特許査定となりました。
当セグメントに係る研究開発費は
(板、押出製品)
日本軽金属㈱グループ技術センターを中心に、自動車や鉄道等の軽量化・高機能化・リサイクルに適合するアルミニウム板、押出材の開発及びその量産技術、需要拡大につながる新規応用商品の開発等を行っております。
当連結会計年度には、日軽形材㈱において、株式会社ARKと共同で、陸上養殖及び蓄養向け業務用水槽プラットフォーム「ARK ZERO」を開発いたしました。「ARK ZERO」を活用することにより、日本国内のみならず、グローバル水産市場におけるサプライチェーンの課題解決と、高付加価値なシーフードの流通を安定的に行う一助となることを目的としています。
当セグメントに係る研究開発費は
(加工製品、関連事業)
日本軽金属㈱グループ技術センターを中心に、景観関連製品、輸送関連製品、アルミニウム建築構造部材等のアルミニウム加工製品関連の研究開発を行っております。
当連結会計年度には、日本フルハーフ㈱において、新商品プレミアムフルハーフコートを上市いたしました。同商品は鉄イオン触媒の強力な酸化力で、臭いの原因物質や細菌を破壊・分解し、ファンデルワールス力による素材への強固な定着で、優れた耐久性を発揮します。
当セグメントに係る研究開発費は
(箔、粉末製品)
東洋アルミニウム㈱を中心に、アルミ箔、アルミペースト、粉末製品等に関する基礎研究、応用研究を行い、新素材や高機能材料等の開発を行っております。
当連結会計年度には、アルミ箔を用いた微細基板(基盤の線間線幅L/S:5/5マイクロメートル)を実現いたしました。米LQDX社(旧Averatek社)が開発したメタルインキ「LMI™」を活用した転写工法A-SAP™と当社の特殊微細凹凸アルミ箔Ranafoil™との組み合わせにより、アルミ箔由来の低粗度凹凸と均一極薄のパラジウム層をラミネートする樹脂に転写することで銅メッキとの密着性を確保しつつ微細配線を形成することが可能となりました。
また、アルミ箔とアルミ粉末による「粉末積層箔」の量産技術を確立いたしました。粉末積層箔はアルミ箔にアルミ粉末を焼結することで表面積を拡大し高い静電容量が得られる多孔質型電極材です。エッチングしたアルミ箔と比較して高容量を実現できるとして、アルミ電解コンデンサーの電極箔などへの活用が見込まれております。
当セグメントに係る研究開発費は