第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「お客さまと共に新たな価値を創造します」、「ものづくりを究めます」、「限りない変革への挑戦を続けます」を企業理念とし、お客さまの信頼と、技術への情熱を大切に、新たな可能性に挑み続ける企業づくりを目指しております。電力ネットワークをトータルにサポートする企業として、これまでの電力流通システムのモノ売りから、エネルギー利用の高度化・多様化に対応した事業で、「サステナブル社会」に貢献してまいります。

 

(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、当連結会計年度において、前連結会計年度に続いて過去最高の営業利益を達成することができました。

しかしながら、2023年5月の変成器類の不適切事案の公表後(2023年5月16日に公表)※1に進めている当社グループ大の全製品を対象とした品質に係る総点検(以下、「品質総点検」という。)の中で、特別高圧変圧器類の不適切事案(2024年1月22日に公表)※2及び変成器類の一部製品における不適切事案(2024年5月14日に公表)※3が判明いたしました。

お客さまや関係者の皆様へ多大なるご迷惑とご心配をお掛けしていることを改めて深くお詫び申し上げます。

当社は現在、品質総点検の最終的な取り纏め作業を進めており、並行して、当社とは利害関係のない独立した調査・検証委員会による事案の調査や原因分析等が行われています。なお、調査・検証委員会から、2024年5月14日に特別高圧変圧器類の不適切事案に関する調査検証委員会の中間報告書を受領し、同日付けで公表※4しております。当社は、この中間報告書の内容を真摯に受け止め、現行の再発防止策(①品質マネジメントシステム(QMS)の再構築②人財育成の強化③コミュニケーションの充実④意識・風土改革)について、必要に応じて適宜見直し・強化を図ってまいります。

また、現在当社内で進めている品質総点検の結果や、同点検等のプロセスに対する評価・検証及び内部統制システム全般に関する調査・評価を目的とした調査・検証委員会による追加の報告書(以下、「追加報告書」という。)での評価・提言内容も踏まえて、当社が「安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生するための改革施策」を策定・実行してまいります。なお、品質総点検の調査結果や上記の改革施策につきましては、取り纏め次第、速やかに公表してまいります。

当社は、一連の不適切事案の真因究明と再発防止策の徹底を図ると共に、当社グループ大でのコンプライアンスの一層の強化に取り組み、当社グループの信頼回復に全力で取り組んでまいります。

※1 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2283237/00.pdf)にて公開しております。

※2 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2382637/00.pdf)にて公開しております。

※3 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2440387/00.pdf)にて公開しております。

※4 当社HP(https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/tdnet/2440388/00.pdf)にて公開しております。

 

このような状況下、当社は2024年4月25日に公表しました通り、次期中期経営計画の編成を1年間延期することといたしました。これは、安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生することが当社の最重要課題と認識し、この課題への対応に集中し方向性を定めたうえで、改めて持続的成長を目指す次期中期経営計画を編成し、ステークホルダーの皆様へお示しすべきとの判断によるものです。

 

次に、当社グループを取り巻く状況ですが、最大取引先である電力業界においては、世界的な燃料価格の高騰や小売り事業における更なる競争の激化に加え、カーボンニュートラルの実現、電力需給の安定性の確保、地域社会の防災・レジリエンス強化への要請、新しい託送料金制度であるレベニューキャップ制度など、事業環境が大きく変化すると共に一層厳しくなっており、生産性向上と徹底的なコスト削減が各社で進められております。一方、脱炭素社会の実現に向けては、日本政府が2050年カーボンニュートラル宣言をしたことにより、国内では再生可能エネルギーを含めた分散型エネルギー関連設備の更なる普及や、電気自動車向け急速充電器需要が立ち上がりつつあります。

 

このような状況下、当社グループは次の取り組みを実施しております。

<1>安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生するための改革への取り組み

当社は、2021年に公表したガス絶縁開閉装置及び自動開閉器用遠方制御器の不適切事案を受け、以下の再発防止策(①品質マネジメントシステム(QMS)の再構築②人財育成の強化③コミュニケーションの充実④意識・風土改革)を進めておりますが、調査・検証委員会より受領した中間報告書の内容を真摯に受け止め、当該再発防止策について、必要に応じ適宜見直し・強化を図ってまいります。

また、品質総点検の結果と、調査・検証委員会による最終報告書での評価・提言内容も踏まえて、当社が「安全・品質・コンプライアンスを最優先とする企業へと再生するための改革施策」を策定・実行してまいります。

 

1)品質マネジメントシステム(QMS)の再構築につきましては、(1)社内マニュアル類の総点検と体系的整理・見える化、(2)規格改正情報のタイムリーな収集とマニュアル反映の強化(3)規格遵守状況のモニタリング強化を進め、一連の品質に係る不適切事案の再発防止の基礎となる公的規格・社内規程を遵守するための基盤を構築しております。

 

2)人財育成の強化につきましては、(1)マネジメント層の強化(2)品質保証部門への研修、全社員向け教育の充実を進め、品質管理のプロセス、及び製品やサービスの品質を監視する仕組み・ルールを遵守するための人財教育を強化しております。

 

3)コミュニケーションの充実につきましては、(1)経営層と第一線職場の物理的・精神的な距離を近づける(2)職場コミュニケーションの充実・風通しのよい職場づくりを進め、ミスやトラブルの報告をためらうことのない活性化したコミュニケーションを充実させ、円滑かつ正しい業務遂行に向けた情報共有を密に行っております。

 

4)意識・風土改革につきましては、(1)品質第一主義の徹底(2)職場ミッションの再定義・共有(3)SQCD向上へのカイゼン&DXの推進(4)内向き・閉鎖的風土の打破を進め、誤った考え方や暗黙の規範の撲滅、ルール不備の見直し、社員の行動変容に向けた制度の整備に取り組んでおります。

 

<2>2030VISIONに向けて

当社グループは、2021年4月に「2030VISION」を策定し、「コア事業の深化・変革」、「事業基盤の構造転換」、「2030将来像開拓への挑戦」の3つの基本方針のもと、既存事業の変革と新規事業の開拓を同時に行う両利きの経営に取り組んできております。

このような状況下、以下の取り組みを実施しております。各取り組みの詳細は次頁から記載の通りです。

 

Ⅰ 「東光高岳グループ企業行動憲章」の改定及び「東光高岳グループ人権方針」の制定

Ⅱ マテリアリティとありたい姿の特定

Ⅲ 2023年3月末に東京証券取引所より通達発信された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を受けた現状認識と改善に向けた方針・目標と対応策の立案

 

① 「東光高岳グループ企業行動憲章」の改定及び「東光高岳グループ人権方針」の制定

サステナビリティを巡る課題の1つである「人権の尊重」に関する取り組みをより具体化・加速化させることを目的に、2023年8月29日に「東光高岳グループ企業行動憲章」を改定し、また以下の通り「東光高岳グループ人権方針(以下、「本方針」という。)」を制定しました。

 

 

「東光高岳グループ人権方針」

1)人権尊重へのコミットメント

「国際人権章典」、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、「ビジネスと人権に関する指導原則」など、人権に関する国際規範を尊重します。

事業活動を行う国・地域で適用される法令を遵守します。なお、人権に関する国際規範が各国・地域の法令と相反する場合は、人権に関する国際規範を尊重するための方法を追求します。

 

2)人権方針の適用範囲

本方針は、東光高岳グループのすべての役員・従業員に適用します。また、事業活動のすべてのプロセスにおいて関わるステークホルダーに対しても、本方針を理解・支持いただくことを求めます。

 

3)人権尊重の取り組み

事業活動のすべてのプロセスにおいて関わるステークホルダーの人権を尊重し、人種、民族、国籍、性別、性的指向、性自認、年齢、出身、社会的身分、信条、宗教、疾病・障がいの有無、身体的特徴などを理由にしたあらゆる差別や人権侵害を行いません。真に人権が尊重される社会の実現のために、多様化する人権問題をすべての役員・従業員一人ひとりが自らの問題ととらえ、豊かな人権感覚を持って行動に結びつける企業風土の醸成を推進します。

 

4)人権デュー・デリジェンスの実施

ビジネスと人権に関する指導原則に従って、事業活動において起こりうる顕在的または潜在的な人権への負の影響を定期的に評価し、未然防止・軽減する仕組みを構築し継続的に実施します。

 

5)救済・是正

人権への負の影響を引き起こしたり助長したりすることが明らかになった場合には、適切な手段を通じてその是正に取り組みます。

また、実効性のある救済措置として、社内外のステークホルダーが利用可能な通報窓口を設置し、運営します。窓口への通報者に対して、匿名性・秘匿性を担保し、不利益な取り扱いを受けることがないように保護します。

 

6)教育

本方針が事業活動の中で効果的に実施されるために、すべての役員・従業員に対して適切な教育に取り組みます。

 

7)情報開示

本方針に基づく人権尊重の取り組みについては、当社ホームページや統合報告書を通じて開示します。

 

8)ステークホルダーとの対話・協議

本方針に基づく人権の尊重の取り組みについて、ステークホルダーとの対話や協議を行います。

 

マテリアリティとありたい姿の特定

当社は、2021年12月27日にお知らせしたとおり「サステナビリティ基本方針」を策定しております。それは、「変わらぬ使命」と「新たな使命」という二つの使命を果たしつつ、社会とともに持続的な成長を遂げることを目的として策定した「東光高岳グループ企業行動憲章」の実践を基本方針としております。

また、この基本方針に従い、様々なサステナビリティ課題に取り組んでおります。

2023年12月22日には、経営戦略とサステナビリティ基本方針の取り組みの連動を更に深めるとともに、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上のために当社が優先的に取り組むべき重要課題「マテリアリティ」を特定しました。あわせて、マテリアリティを解決できた長期的な当社のありたい姿も特定しました。

 

マテリアリティは、棚卸しした当社の価値創造プロセスや経営方針、当社の事業に影響を及ぼす産業のメガトレンドや外部環境などをもとにサステナビリティ課題を抽出、課題の重要性評価をおこない、経営層を中心に議論を重ね、特定しました。

また、マテリアリティを解決できた状態を当社のありたい姿として定義して、経営層を中心に議論を重ね、言語化しました。

今後、マテリアリティとありたい姿に紐づいた具体的なKGI、KPIを次期中期経営計画にて設定してまいります。

マテリアリティ

ありたい姿

電力の安定供給と

高度利用への貢献

 

電力ネットワークのS+3E(安全+安定供給、経済性、環境性)を支える製品やサービスの高度化とイノベーションを追求し続け、世界中が皆が豊かで安心できる暮らしや社会経済活動の発展に貢献し、広く認知されている状態

 

カーボンニュートラル

への貢献

 

再生可能エネルギーの普及拡大や電化の促進、電力・エネルギーの効率利用に貢献する製品・ソリューションの提供、環境負荷の低い製品・サービスの開発・供給を通じて、お客さま、そして世界がカーボンニュートラルに近づくことを手助けしている状態

当社の生産活動を含むサプライチェーン全体で、カーボンネガティブとなるロードマップが描けている状態

 

多様な人材が共創し、

挑戦し続ける、

活力ある人と組織の実現

 

従業員一人ひとりが自律したプロの企業人として、自らの専門性を高め変革に挑戦し、また多様な能力・経験・価値観を持った人材が集い、共創することで組織力を最大化する、活力ある人と組織が実現できた状態

その結果、お客さまの満足度向上、企業価値の向上、従業員の成長と幸福度向上のWin-Win-Winが実現出来た状態

 

ステークホルダー・

エンゲージメント

 

ステークホルダー(株主、顧客、ビジネスパートナー、社会、従業員)の方々に対し、双方向にコミュニケーションを取って経営に活かすことで、当社の取り組みや存在価値の理解が得られているとともに健全で透明性のある会社になっている状態

また、公平で適正な取引が出来ていることも併せ、Win-Winの関係性が築かれ、信頼され応援して頂いている状態

 

安全・品質・コンプライアンスの確保と

ガバナンスの強化

 

一人ひとりが安全・品質・コンプライアンスの意識を高め、「お客さまのために、社会のために、私たちが目指す明日のために」を合言葉に、日々の仕事や生活の中で「Do the right things right」を実践している状態

上記を含め、企業としてのありたい姿を実現するために迅速かつ適切な経営判断を下すガバナンス体制が築かれ、企業の持続的成長に向けてカイゼン・強化を続けている状態

 

 

 

③ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について

(2021~2023年度の現状認識)

・当社のPBRは0.5~0.7倍程度であり、近年上昇しているものの1倍を割れている状況です。

・1倍割れの主要因は、ROEが低いことにあり、ROE要素の中では売上高当期純利益率が低い状況です。

 コア事業の強化とこれの両輪となる新たな成長事業の育成が課題と考えております。

・また、資本収益性については、エクイティスプレッド「ROE-株主資本コスト」の確保が十分ではありません。

・PERにおいては、持続的成長に向けた事業戦略の具体性が十分でなく、ステークホルダーの理解を得られていないことや会社・事業内容の認知度が低いこと、IR活動が途上であること等に課題があります。

・その他、近年の業績上昇に伴い配当性向が低下傾向にあります。

 

<2021~2023年度の当社PBR・ROE・PERのレンジ>

PBR

0.5~0.7倍

ROE

5.5~8.3%

×

PER

7.3~13.0倍

 

 

2021~2023年度 指標推移

 

株価

配当

利回り

配当性向

PBR

PER

ROE

ROE分解

売上高

当期純利益率

総資産

回転率

財務

レバレッジ

2021年度

1,479円

3.4%

24.6%

0.46倍

7.3倍

6.5%

3.6%

0.9回

2.0倍

2022年度

2,351円

2.3%

30.4%

0.71倍

13.0倍

5.5%

3.0%

0.9回

2.0倍

2023年度

2,572円

2.3%

20.7%

0.71倍

8.9倍

8.3%

4.3%

1.0回

2.0倍

 

 

 

(改善に向けた方針・目標と対応策等)

・資本コストを意識した経営を志し、資本コストを上回るリターンを創出し企業価値の向上を目指していきます。

・そのために、まずはROE8%以上の水準を達成し、PBR1倍の早期達成を目指していきます。

・長期的には、2030年度に資本コストを上回るROE10%以上とし、PBR1倍超の達成を目指します。

・なお、次期中期経営計画公表に合わせ、PBR1倍の目標時期や中長期戦略等について開示していきます。

 


 

(3) 目標とする経営指標

2024年度の目標とする経営指標については以下の通りであります。

次期中期経営計画につきましては、2025年4月を目途に公表する予定です。

 

 

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

(実績)

(実績)

(実績)

(予想)

売上高

919億円

977億円

1,073億円

1,050億円

営業利益
(営業利益率)

46億円

(5.0%)

48億円

(5.0%)

82億円

(7.7%)

40億円

(3.8%)

親会社株主に帰属する当期純利益

32億円

29億円

46億円

25億円

ROE

<自己資本利益率>

6.5%

5.5%

8.3%

4.2%

ROA

<純利益ベース>

3.3%

2.8%

4.2%

2.1%

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 

≪サステナビリティ基本方針≫

東光高岳グループは、企業理念の実践を通して二つの使命を果たし、エネルギーの未来を切り拓いていきます。

 


変わらぬ使命:

電力の安定供給や効率的な利用を支える機器・システムの提供を通して、豊かで快適な暮らしや社会経済活動の発展に貢献する。

 

 


新たな使命:

カーボンニュートラル、地域の防災・レジリエンス強化等の新たな社会的課題に対するソリューションを創造し、持続可能な社会の実現に貢献する。

 

 

 

 

当社は、この使命を果たしつつ、社会とともに持続的な成長を遂げることを目的として策定した「東光高岳グループ企業行動憲章」の実践をサステナビリティの基本方針とします。

※東光高岳グループ企業行動憲章は、以下の通りです。

 https://www.tktk.co.jp/company/charter/

 


(黒はリスク低減サイド、青は収益機会サイドとなります。)

  ※具体的な取り組みにつきましては、東光高岳統合報告書に記載しております。

    https://www.tktk.co.jp/csr/report/

 

≪ガバナンス≫

当社は、取締役会における機動的な意思決定、議論の活性化及び社外取締役の十分な機能発揮等を図るとともに、取締役会への監督機能を強化することで当社の企業価値を向上させることを目的に、コーポレート・ガバナンスの体制として監査等委員会設置会社を選択しています。

取締役会は取締役10名で構成され、原則月1回、また必要に応じて適時開催され、経営全般に関する重要事項等を審議決定するとともに、取締役から定期的に、また必要に応じて報告を受けること等により、取締役の職務執行を監督しています。

取締役会については、次の事項を考慮・実施したうえで社外取締役も含めて慎重に審議を行うことで実効性の確保に努めています。

● 取締役会付議事項について、業務執行取締役及び常勤監査等委員が経営会議にて事前に協議を行うこと

● 審議にあたって十分な審議時間がとれること

● 取締役会での決議・審議事項を経営における最重要事項に限定すること

● 年間スケジュールについては、毎月最終週の開催を基本として、株主総会、決算発表等の日程を勘案し

  て、予想される付議事項を含めて計画を作成すること

● 開催日については、全取締役が出席可能となるように配慮し、年間のスケジュールを決定すること

● 重要事項については社外取締役に事前に説明を行うこと

 

なお、当社グループがサステナブルな企業であるために、中長期的なありたい姿に全社グループ大で向かって発展するための施策について討議する場として、2023年10月1日付けでサステナビリティ委員会を組成しました。本委員会は、代表取締役社長を委員長とし、委員は委員長が指名する者により構成されます。

サステナビリティ課題の解決には長期間を有する場合が少なくなく、それらを戦略的に継続的に進め、当社の中長期的な企業価値の向上に結び付けていくためには、取り組みがガバナンスによって支えられている事が重要と考えております。サステナビリティ委員会を設置することによって、事業分野を横断するテーマを含め、必要に応じて多様なステークホルダーの視点も取り入れながら、集中的に議論・検討を行うことを目指し、より実効性の高い取り組みにつなげてまいります。

 

≪リスク管理≫

当社は、「リスク管理規程」を制定し、業務運営上のリスクを回避、軽減あるいは予防・防止するための対策を検討し、リスクが顕在化した場合の報告経路・対応体制を定めています。また、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくため、社長を委員長とし、役員・部門長などで構成される「リスク管理委員会」を設置しています。委員会では全社リスク及び経営上重要なリスクを定め、グループ大での対策の進捗点検及び有効性評価を実施、結果を各種施策に反映しています。

 

≪重要なサステナビリティ項目≫

ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。

● 環境(E)

・EV普及を後押しする充電インフラ・サービス(急速充電器のラインナップの拡充、LPガス一般停電用予備発電機と接続可能な電気自動車用急速充電システム)

・環境負荷の小さい機器開発・販売(植物油変圧器等)

・再生可能エネルギーを活用した事業運営を支える製品・サービス(風力発電向け雷電流装置)

・省エネとマネジメントをデジタル化でサポートする製品・サービス(T-ZoneSaver、エネルギー地産地消モデル「リソルの森」の新エネ大賞受賞、DX-EGAを活用したSustana(SMBC協業)、「令和4年度蓄電池等分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業」への参画等)

● 社会(S)

・社員を含むステークホルダーとの関係強化(次世代育成や女性活躍推進に資する各認定の取得、ダイバーシティ講演・研修の開催、リモートワーク環境整備などの働き方改革の推進など)

・価値向上に社員の力を発揮させるためのリスキリング教育(人財育成センターの組成:2023年6月)

・地域社会の安全・安心・生活基盤において、豊かな暮らしへの貢献(奉仕活動、防災協定など)

・海外における電力が十分に行き届かない地域への貢献(海外EPC事業の推進)

● ガバナンス(G)

事業を取り巻く状況の変化に対応した迅速な経営判断(GXソリューション事業本部の組成:2022年6月)

・自社目線だけに陥らない社外目線の監督機能を取り入れた経営

・デジタル技術を活用した経営情報の迅速な組成と意思決定支援(DX認定事業者への選定)

・資本効率の視点に立った事業成長を促進させるROICを活用した経営戦略の検討

 

(2)人的資本

 

≪戦略≫

 

① ダイバーシティの推進

当社は、企業価値・従業員エンゲージメントを向上させ、社外ステークホルダーが『魅力に感じる』会社、社員が『働いて幸せに感じる』会社になることを目的として、ダイバーシティ推進に積極的に取り組んでいます。CHROを委員長とする「ダイバーシティ推進委員会」を設置し、経営陣の強いコミットメントのもと、多様な人財が活躍できる企業風土づくりや環境整備を行っています。

 

〇女性活躍推進

 当社は、今後の労働人口の減少を見据えて、女性を含めたあらゆる社員が総活躍できる組織をつくるために、また、多様な価値観を取り込み新たな価値・サービスを生み出していくために、女性社員の活躍を推進しています。

 将来の女性管理職を育成するため、女性のリーダー候補者とその上長に対し研修を実施しているほか、個々のリーダー候補者に応じた育成を計画立てて実行しています。

 こうした取り組みが評価され、当社は「えるぼし(3つ星)」認定を取得しております。

 

LGBTQ+

 当社は、性自認・性的指向・性表現などの多様性を尊重し、LGBTQ+当事者を含む全ての社員が自分らしく、安心して就業できる会社になることを目指しています。

 LGBTQ+に関する基礎知識の全社員教育を実施しているほか、同性パートナーシップ制度の創設、性的指向・性自認に関するアウティング防止条項を就業規則へ追加するなど、社内のLGBTQ+に対する理解向上とLGBTQ+当事者が働きやすい環境づくりを行っています。

 

育児支援

 当社は、性別を問わず、育児をしながら働く社員が活躍できる職場環境づくりを進めています。

 近年は男性の育休取得を推進するために、男性育休取得者へのインタビューを行い社内へ展開するなど、育休を取得しやすい風土づくりを行っています。また、育児のための休暇制度を拡大するなど、社員の育児と仕事の両立を支える環境整備を行っています。

 こうした取り組みが評価され、当社は「くるみん」認定を取得しております。

 

外国人雇用

 当社は、外国人財の採用を積極的に行っており、国籍等によらず、外国人社員が安心してイキイキと働ける職場環境づくりを進めています。

 就業において宗教上の配慮を要する場合には配属前に職場へ教育を行うなど、外国人社員が職場環境に馴染みやすいよう配慮を行っています。今後、外国人社員の就業をサポートする施策をさらに実施してまいります。

 

障がい者雇用

 当社は、障がいを持つ社員が自分らしく働き、活躍できる職場環境を整備し、仕事を通じて働く喜びを感じられる会社を目指しています。

 障がい者定着支援のための体制(相談窓口設置、相談員の教育等)を整えているほか、車いすでも移動しやすいよう扉を自動ドアやスライドドアに変更したり、カードキーを使いやすい位置に設置するなどオフィス環境の整備を行い、障がい者も働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

 

② 人財育成方針

当社は、人財育成方針として、ヒトの持つ知識やスキルを経営資源(=人材)ではなく経営資本(=人財)ととらえ、「ひとづくり」の育成投資により、その人財価値を高めて最大限に引き出すことが、企業の成長の原動力と考えております。

そこで、「仕事こそ人を育てる」という基本的な考え方に基づき、OJTを中心に、研修などのOff-JT、自己啓発の3本の柱により、相互に緊密につながりあい、機能しあうことで効果的な人財育成を行っております。

人財育成のための社内環境整備としては、人的資本を有効活用し、企業価値を向上させるため、「社員の成長意欲を向上させる」、「業界トップの人財を育てる」ことをミッションとする「人財育成センター」を2023年6月末に設立し、以下の取組みを実施しています。

 

〇個のスキル向上

OJT実践の仕組みづくり

 人財育成ローテーションの仕組みの構築やDXの活用などの育成手法を確立させ、年度計画に基づき、人財の成長を促す。

 また、目標管理制度を活用し、年度計画と個人業績目標を紐づけ、業績達成の意識を促す。

・キャリアパスやジョブディスクリプションを構築し、個人別育成カルテを管理・運用する。

・スキルマップを策定、全社員へ水平展開し、技術継承のプラットフォームを構築する。

 

Off-JTの充実

職場での実践に向けた動機付けを目的に研修を実施しています。

・選抜研修

 オーセンティックリーダーシップの習得により、将来を担う経営リーダー候補人財のマインドを高める。

・階層別研修

 入社3年間で一人前の社員として育成するとともに、各階層へ昇格した際に求められる役割を理解させてマインド面を中心に教育する。

・個別専門研修

 各部門で共通して必要となる専門的なビジネスリテラシーと技術的な知識やスキルの習得のために教育する。

 

  2023年度の主な新規取組

活動

内容

経営リーダー育成研修

・将来の経営者育成を目的としたオーセンティックリーダーシップ習得とピアコーチング

役員・管理職向け講演会

・リーダーが学びの場をデザインし、組織を育てるための動機付け

 

 

自己啓発支援

 社員が率先して学べる環境をつくるために、資格試験合格祝い金の支給や、経営リーダー候補人財を対象とするeラーニングなどの自律学習を支援する。

 

〇人財の見える化の活用

 タレントマネジメントシステムを導入し個人の特性を見える化することで、優秀人財の発掘や人財育成ローテーション計画などに有効活用する。また目標管理制度と連携させることでOJTへ展開する仕組みづくりも可能となる。

 

〇体制整備

 各部門に人財育成統括責任者を設置することで、人財育成センターと連携し、全社で人を育てる推進体制を確立する。

 専門的な知識やスキルを持つ主管部門とサブワーキングを定期的に実施し、共通技術や要素技術の知識を習得するために個別専門研修に取り入れる。

 

 

≪指標及び目標≫

 

当社グループでは、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

 

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2031年3月まで5

1.9

男性労働者の育児休業取得率

2026年3月まで50

14.3

労働者の男女の賃金の差異

目標設定なし

73.3

 

 

(3)気候変動への取り組みとTCFDへの対応

 

TCFD提言に基づく気候関連の財務情報開示

 気候変動はグローバル社会が直面している重要な社会課題の1つであり、東光高岳グループでは重要な経営課題の1つと認識しております。東光高岳グループは脱炭素社会の実現に向け、「東光高岳グループ環境方針」における「脱炭素社会の構築」「循環型社会の構築」「環境保全の推進」という3つの柱に基づき、「東光高岳環境目標」の達成に向けて取り組んでおります。

 こうした中、東光高岳グループでは2022年6月にTCFD※提言への賛同を表明し、今回、要求項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿って、気候変動に関する情報開示を行いました。

 気候変動による影響は、電力の安定供給を支える製品・サービスをコア事業とする東光高岳グループにとって大きなリスクになると共に、エネルギー市場の大きな変化は、「総合エネルギー事業プロバイダー」を目指す東光高岳グループにとって、新たなビジネスの機会にもなりえます。今後の気候変動に関連する事象を、経営リスクとして捉えて対応すると同時に、新たな機会も見いだし、企業戦略へ生かしてまいります。

 


※ TCFD:G20の要請を受け、金融安定理事会により設立された

 「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on

  Climate-related Financial Disclosures)」

 

 


 重要な気候関連リスク・機会を特定し、適切にマネジメントするため、東光高岳グループでは「リスク管理委員会」「カーボンニュートラル推進委員会」を設置しています。各委員会は、半期に1回開催し、年度計画の策定、重点課題に関するグループ全体の取り組みを推進・サポートし、進捗をモニタリングすると共に、対応方針の立案や関連部署への展開を行います。また、これらの結果を毎年1回、取締役会に報告し、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行います。

 


 東光高岳グループは、事業が気候変動によって受ける影響を把握・評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しており、特定したリスク・機会は、戦略策定・個別事業運営の両面で管理しております。


 

 事業におけるリスク・機会は、東光高岳グループの課題やステークホルダーからの要求・期待、事業における環境側面の影響評価などにより特定し、経営に及ぼす影響を総合的に判断し、優先度合いをつけて課題の対応に取り組んでおります。また、企業戦略に影響する気候変動を含めた世の中の動向や法制度・規則変更などの外部要因や、東光高岳グループの施策進捗状況、今後のリスク・機会などの内部要因の両側面から課題を抽出し、グループ全体で課題解決に向けて取り組んでおります。

 


 気候変動による影響は、電力の安定供給を支える製品・サービスをコア事業とする東光高岳グループにとって大きなリスクになると共に、エネルギー市場の大きな変化にもつながるため、「総合エネルギー事業プロバイダー」を目指す東光高岳グループにとっては、新たなビジネスの機会にもなりえます。

 2022年度は下記内容を前提条件として設定の上、当社が掲げる「2030Vision」実現に向けたリスクおよび機会を特定、財務インパクトを算出し対応策を整理しました。(2023年度からは、対象セグメントを計量事業・GXソリューション事業(全体)、光応用検査機器事業に拡充した活動を実施中。)

 

前提条件


 

気候関連の主なリスク/機会と対策


 

 


 当社は、2050年カーボンニュートラルに向け、温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を下記の通り定めております。「東光高岳グループ環境方針」も考慮しつつ、サプライチェーン全体のGHG排出削減を目指し取り組んでおります。

 


 


 

主な取り組み

 気候変動への対策として、再生可能エネルギーの有効活用や省エネルギーによるエネルギー由来のCO2削減に取り組んでおります。また、温室効果ガスであるSF6(六フッ化硫黄)ガスの排出抑制に取り組んでおります。

 


 

今後の対応

・Scope3の検討および開示につきましては継続して取り組んでまいります。

・グループ大での展開の取り組みを進めてまいります。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループでは、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくため、社長を委員長とし、役員・部門長などで構成される「リスク管理委員会」を設置しております。委員会では全社リスク及び経営上重要なリスクを定め、グループ大での対策の進捗点検及び有効性評価を実施、結果を各種施策に反映しております。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 特定事業への依存について

電力機器の生産販売をコア事業とする当社グループは、東京電力パワーグリッド(株)向けの製品販売比率が42.5%となっているなど、電力会社向けの製品販売が売上高の過半を占めており、電力会社の設備投資・修繕費の増減と内容が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当リスクについては電力会社向け以外への売上を拡大するべく、コスト競争力の強化および新市場への展開を進めております。

 

(2) 資材調達

当社グループでは主力製品の製造に鉄・銅・油・碍子などを使用しておりますが、これら重要資材の価格の上昇リスクについては市況に応じた在庫の確保や、価格上昇によるコストアップを吸収すべく継続的な原価低減活動、購入先の多様化、売価への反映によってリスクの低減を行っております。

また、半導体を始めとした調達部品の長納期化については上記施策に加え代替品の使用、設計変更などの施策によりリスクの低減を行っております。

 

(3) 技術開発

当社グループは、様々な先端技術の開発及び製品化を進めておりますが、計画どおりに開発が進まず、適切な時期に製品の市場投入ができなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当リスクについてはリスク顕在化の未然防止、ならびに極小化に向け、経営による定期的な進捗管理を行っております。
 

(4)  製品品質

当社グループでは、生産販売する製品について徹底した品質管理の下で製品の製造に努めております。しかしながら、品質問題が発生した場合、不良品の回収や交換、賠償等の損失コストにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(不適切事案の影響)

当社グループでは、一連の不適切事案を踏まえて、グループ全体の再発防止策の策定と実行を進めております。現行の再発防止策は、4つの改革(①品質マネジメントシステム(QMS)の再構築②人財育成の強化③コミュニケーションの充実④意識・風土改革)を基本としており、今後、当社グループの品質総点検の進捗と調査・検証委員会の評価・提言内容を反映し、現行の再発防止策の見直し強化を進めてまいります。

これまでの社内調査及び検証において、一連の不適切事案に起因した、製品の品質・性能に影響する具体的な問題は現時点では確認されておりませんが、今後のお客さまとの協議や調査等の進捗次第では、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 保有資産価値の変動

当社グループでは事業用の資産や投資の際に生じるのれんなど、様々な有形・無形資産を保有しております。今後の経営環境変化に伴い、これらの資産の収益性が低下し、投資額の回収が見込めなくなった場合には減損損失を計上し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当リスクについては定期的に将来キャッシュ・フロー及びその基礎となる事業計画の合理性をモニタリングし、兆候の把握とリスク低減に向けた対応を行っております。

 

(6) 大規模災害

当社グループは、各拠点において防災対策を実施しておりますが、拠点のいずれかが大規模災害により被災し、生産設備の損壊、原材料や部品の調達停止、物流販売機能の麻痺などによる操業停止などが生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。本リスクについては各拠点にて耐震対策を計画的に実施、また、調達面では調達先の多様化を行っております。

 

(7) 情報セキュリティ

標的型攻撃やランサムウエアなど、増加・深刻化するサイバー攻撃により重要情報の漏洩や業務の停止が発生することで、当社グループにおける調達体制、生産体制、物流体制、営業体制等、事業活動の継続に影響が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当リスクについては各種セキュリティ対策の実施、従業員への教育・訓練の実施等、リスク極小化に向けた諸施策を実施し、事業活動への影響の低減を図っております。

 

(8) 気候変動リスク

当社グループは、環境配慮製品の開発や省エネルギーへの取り組み、再生可能エネルギーの有効活用等、事業活動を通じた製品ライフサイクル全体で気候変動の原因となる温室効果ガス排出量の削減に積極的に取り組んでおります。そうした中、カーボンニュートラル実現に向けた制度や法規制の強化が今後急激に進み、当社グループの対応が遅れた場合、事業活動の制約やコスト上昇によって当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当リスクについては、事業の状況「2サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)気候変動への取り組みとTCFDへの対応」の「TCFD提言に基づく気候関連の財務情報開示」に記載の通り対応を進めております。

 

(9) コンプライアンス

当社グループでは事業を行ううえで、国内外の法令その他社会規範を遵守して事業を行っておりますが、国内外の法令や規制等に違反した場合や、役員・従業員がハラスメント等のコンプライアンス上の問題を発生させた場合には、社会的信用の失墜や事業活動が制限される等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当リスクについては代表取締役を委員長とする「企業倫理委員会」において法令遵守の徹底を図るとともに、「東光高岳グループ企業行動憲章」「東光高岳グループ行動指針」を制定し、規範意識の徹底を図っております。さらに企業倫理相談窓口の設置や研修の実施など、違法行為や不適切行為の防止および早期解決を図る枠組みを整備しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の売上高につきましては、一般向けのプラント物件や三次元検査装置が減少したものの、計量事業全般や配電機器の増加により、107,378百万円(前年同期比9.8%増)と大幅な増加となりました。

利益面では、売上高と同様、一般向けのプラント物件や三次元検査装置の減少を計量事業全般や配電機器の増加がカバーし、営業利益8,247百万円(前年同期比70.1%増)、経常利益8,017百万円(前年同期比70.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,668百万円(前年同期比59.9%増)といずれも増益になり、過去最高を更新しました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

電力機器事業は、小型変圧器等の一部配電機器の増加により、セグメント全体の売上高は62,120百万円(前年同期比9.1%増)と増加し、セグメント利益につきましても6,978百万円(前年同期比33.8%増)と増益になりました。

計量事業は、計器失効替工事、スマートメーター、各種変成器類の増加により、セグメント全体の売上高は30,601百万円(前年同期比9.5%増)と増加し、セグメント利益につきましても4,659百万円(前年同期比99.4%増)と増益となりました。

GXソリューション事業は、部品調達の長納期化の改善により急速充電器の販売台数が増加したことに加え、新規事業であるデータビジネス関連事業の増加があり、セグメント全体の売上高は10,334百万円(前年同期比34.0%増)と増加し、セグメント利益につきましても、313百万円(前年同期はセグメント損失207百万円)と黒字転換しました。

光応用検査機器事業は、半導体業界の投資抑制により三次元検査装置の売上が減少し、セグメント全体の売上高は3,346百万円(前年同期比19.4%減)と減少し、セグメント利益につきましても775百万円(前年同期比48.2%減)と減益となりました。

その他事業は、不動産賃貸収入の減少により、セグメント全体の売上高は975百万円(前年同期比1.7%減)と減少し、セグメント利益につきましても648百万円(前年同期比2.9%減)と減益となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、15,475百万円(前年同期は10,659百万円)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

売上債権の増加1,663百万円、棚卸資産の増加2,424百万円等がありましたものの、税金等調整前当期純利益の計上7,592百万円、減価償却費の計上2,431百万円等により、5,938百万円の収入(前年同期は2,245百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形及び無形固定資産の取得による支出2,367百万円等により、2,308百万円の支出(前年同期は1,923百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

借入金の借入3,150百万円、借入金の返済900百万円、配当金の支払810百万円等により、1,181百万円の収入(前年同期は2,202百万円の支出)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

電力機器事業

61,960

2.3

計量事業

32,088

3.0

GXソリューション事業

8,154

21.5

光応用検査機器事業

3,505

△19.0

報告セグメント計

105,708

2.9

その他の事業

合計

105,708

2.9

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

   2.金額は販売価格で表示しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

電力機器事業

70,468

2.9

65,046

14.7

計量事業

30,907

8.9

3,505

9.6

GXソリューション事業

11,248

35.1

3,510

35.2

光応用検査機器事業

817

△74.1

2,026

△55.5

報告セグメント計

113,441

4.7

74,089

10.5

その他の事業

975

△1.7

合計

114,417

4.6

74,089

10.5

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

   2.金額は販売価格で表示しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

電力機器事業

62,120

9.1

計量事業

30,601

9.5

GXソリューション事業

10,334

34.0

光応用検査機器事業

3,346

△19.4

報告セグメント計

106,403

10.0

その他の事業

975

△1.7

合計

107,378

9.8

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

   2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

東京電力パワーグリッド㈱

38,820

39.7

45,660

42.5

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a) 財政状態の分析

(資産の部)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ10,304百万円増加し、116,627百万円となりました。これは主に「現金及び預金」「売上債権」「棚卸資産」が増加したことによるものです。

(負債の部)

負債は、前連結会計年度末に比べ4,926百万円増加し、52,788百万円となりました。これは主に「支払手形及び買掛金」「退職給付に係る負債」が減少したものの、「短期借入金」「未払法人税等」「長期借入金」が増加したことによるものです。

(純資産の部)

純資産は、前連結会計年度末に比べ5,378百万円増加し、63,839百万円となりました。これは主に配当金の支払いや自己株式の取得による減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加や非支配株主持分の増加によるものです。

 

(b) 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は107,378百万円(前年同期比9.8%増)となり、前連結会計年度に比べて9,626百万円増加いたしました。セグメント別の売上高については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

(売上総利益)

当連結会計年度における売上総利益は26,416百万円(前年同期比22.6%増)となりました。売上総利益率は前連結会計年度比2.6%増加し、24.6%となりました。これは主に全社的カイゼン活動、デジタル化及び調達改革の進展によるものです。

(営業利益)

当連結会計年度における営業利益は、販売費及び一般管理費が増加したものの、売上総利益の増加により、8,247百万円(前年同期比70.1%増)となりました。

なお、営業利益率は前連結会計年度比2.7%増加し、7.7%となりました。

(経常利益)

当連結会計年度における経常利益は、持分法による投資損失を計上したものの、営業利益の増加により、8,017百万円(前年同期比70.4%増)となりました。

なお、経常利益率は前連結会計年度比2.7%増加し、7.5%となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益は、子会社整理損や減損損失等の特別損失を計上したものの、経常利益の増加により、4,668百万円(前年同期比59.9%増)と増益になりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(a) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 

(b) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度の資金調達につきましては、経常的な運転資金及び投資に関する資金を金融機関からの借入金にて調達しておりますが、特筆すべき重要な事項はありません。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループは連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(a) 固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、事業別あるいは会社を1つの単位として資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

回収可能価額の評価においては、合理的な事業計画に基づいて将来キャッシュ・フローを慎重に見積っておりますが、経営環境や市場環境の変化により収益性が著しく低下した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

(b) 投資の減損

当社グループが保有する投資有価証券には、非上場会社の株式が含まれております。非上場会社の株式の評価においては、実質価額と取得価額を比較し、実質価額が著しく低下した場合又はのれん相当額と超過収益力を比較し、超過収益力が著しく低下した場合に減損処理の要否を検討しております。経営環境や市場環境の変化により、将来において投資先の業績動向が著しく低下した場合、投資有価証券の減損処理が必要となる可能性があります。なお、重要な会計上の見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

(c) 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得見込額や実行可能なタックス・プランニングを慎重に検討し計上しております。

繰延税金資産の回収可能性の判断においては、合理的な事業計画に基づいて課税所得の発生時期及び金額を見積っておりますが、経営環境や市場環境の変化により、回収可能性を著しく低下させる変化が見込まれた場合、繰延税金資産を取り崩す可能性があります。

 

(d)製品保証引当金

当社グループは、製品保証引当金について、販売した製品のアフターサービス及び無償補修費用に充てるため、個別見積に基づいて補修費用等の見込額を計上しております。

当該見積りは、過去の実績やアフターサービスの範囲を基に金額を算定しておりますが、新たな事象の発生によってアフターサービスの範囲が大きく拡大し、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。なお、重要な会計上の見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

(1)技術提携契約

契約会社名

相手先の名称

相手先の所在地

契約品目

契約締結日

契約期間

契約内容

株式会社

東光高岳

HANAKA

220-500kV POWER TRANSFORMER MANUFACTURING JOINT STOCK COMPANY

ベトナム

大型変圧器

2023年5月30日

2023年

5月30日

2038年

5月29日

大型変圧器製造技術の提供

 

(注)対価として一定料率のロイヤリティを受け取っております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、持続可能な社会の実現と企業価値向上のために当社が優先的に取り組むべきマテリアリティに基づいて、これまで蓄積してきた計測・伝送・制御の技術をベースとし、電力の安定供給、高度利用とカーボンニュートラルに貢献する研究開発を販売部門・研究開発部門の密接な連携のもとに行っており、当連結会計年度の研究開発費の総額3,238百万円であります。

当連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。

なお、研究開発費の総額には、各セグメントに配分できない研究開発費として、各セグメントに共通的な基盤技術である構造や系統、熱・流体等の数値解析技術、高電圧大電流試験・評価技術、各材料の分析・評価技術、および、モールド樹脂リサイクル、親環境ガス機器の基礎技術、バイオマス樹脂適用などの環境配慮技術の研究開発費用464百万円が含まれております。

 

(1) 電力機器事業

配電機器関連では、再エネ導入拡大やBCP、レジリエンス強化に対応するため、分散電源対応型機器や島嶼地域の配電自動化に対応した無線制御方式による制御器の製品開発を行いました。また、環境配慮に向けた取組みとして電力機器の親環境ガス対応、植物油ラインアップ拡大などに取組んでいます。

保護制御装置関連では、電力インフラ機器のデジタル化に向けて国際標準であるIEC61850に準拠した製品開発を進めるとともに、各種センサを用いて運転状態をモニタリングし、機器の劣化状態を診断する技術の開発を進めています。また、風力発電設備用計測装置では、洋上風力など大口径に対応した雷電流計測装置の開発を行っています。

当事業に係る研究開発費は1,243百万円であります。

 

(2) 計量事業

電力会社・産業向けスマートメーターでは、継続的に競争力強化に対応できる製品開発を行っています。

変成器関連では、コストダウンに加え、親環境対応やデジタル化に向けた最新の機器開発などにより競争力強化を図っています。

当事業に係る研究開発費は800百万円であります。

 

(3) GXソリューション事業

電気自動車(EV)用充電インフラ関連では、さまざまな充電シーンとサービスに対応するため、標準プロトコルであるOCPPを用いたシステム構築と機能開発を行いました。

自動検針システム関連では、点在している計量ポイントの一括検針を行うクラウド検針システムでお客さまの運用コスト低減と利便性向上に繋がる機能強化を行いました。

次世代配電事業関連では、脱炭素社会への貢献、自律型地域エネルギー社会の普及・拡大に向けたエネルギーマネジメントシステム(EMS)や機器開発を行っています。

当事業に係る研究開発費は599百万円であります。

 

(4) 光応用検査機器事業

チップレット技術の普及に伴い、今後急速に進むと考えられるバンプピッチの狭小化に対応可能な次世代3Dセンサの開発を進めています。

当事業に係る研究開発費は130百万円であります。