文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
企業の社会的ニーズ、社会の変化するスピード、そして企業を取り巻く諸環境に対する、当社グループの取り組み姿勢をより明確にするため、ミッションとして「私達の未来を考える ~すべては持続可能な社会のために~」、ビジョンとして「変化をとらえ、進化につなげる」、バリューとして「SPIRIT of Challenge」の3構成からなる当社グループの基本理念を2020年3月期に再構築しました。
使命・存在意義であるミッションは「私達=社会の一員」であるという認識の下、持続可能な社会の実現を目指すために、絶えず未来を考え続けることが私達の使命であり、存在意義であるとの考えを持ち続けることが重要であると考え、「私達の未来を考える ~すべては持続可能な社会のために~」としました。
近未来の姿であるビジョンについては、今、必要なことは変化の波を的確にとらえ、その大きさ、方向性そして速さを認識することであるとの考えをもとに、独自性を発揮しつつ、自らも変化していかなければならないこと、そして私達の未来は変化に富み、予想しえない事象が起こりうることを認識することが重要であり、これまで以上に、「変化をとらえ、進化につなげる」企業にならなければならないとの思いを込めて定めました。
そして、私達は、変化をとらえるために必要とするバリュー(価値観)を明確にし、それらのバリューを発揮することによって変化に対応していくことができると考えました。常にチャレンジ精神を持ちバリューを発揮していくことを役職員全員がしっかりと認識することを目的に「SPIRIT of Challenge」を当社グループのバリューとして掲げました。以下8項目がバリューの構成要素です。「Speed:迅速性」「Professionalism:専門性」「Integrity:高潔な倫理観」「Responsibility:当事者意識」「Imagination:想像力」「Toughness:タフネス」「Challenge:挑戦」「Leadership:リーダーシップ」
これら「ミッション・ビジョン・バリュー」の下、当社は創業以来、培ってきたノウハウを活用し、総合エネルギー事業の積極的な展開に取り組むと共に、安定的に収益を確保できる事業基盤の拡充を目指し、持続的な企業価値の向上とステークホルダーに対する一層の付加価値の提供を進めてまいりたいと考えております。また、事業活動を通じ幅広い人財を育成すると共に、経済合理性と強い倫理観を併せ持った企業活動及び社会活動を行ってまいります。
当社グループは、資本政策の重要性を十分認識し、株主資本を効率的に活用することによって、強固な財務基盤を構築し、併せて期間収益の安定的確保を目指してまいりたいと考えています。
持続的成長性を測る手段として「フリーキャッシュ創造力(ROIC等)」を第一に考え、キャッシュフロー創造により増加した株主資本を分配するか次の成長のために再投資するかは都度判断し、「投資効率」も重視してまいります。
また、資本コストと資本収益性の状況を分析し、資本コストを上回る収益性を確保できる収益構造の構築を目指してまいります。具体的には、中期ビジョン2028の最終年度2028年3月期において、ROE9%超、ROIC8%超を目指しております。
当社グループは、SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献を事業活動の基本に位置付けております。それは、個々の企業の存続だけでなく、社会全体の持続的な発展が求められている中で、当社グループのビジネスモデルが、その実現のための価値提供を果たすことができると考えているからです。
当社グループは、祖業の金融事業中心の事業展開から、収益源の多様化を図るべく2012年の太陽光発電事業への参入を機に再生可能エネルギー関連事業を徐々に拡充させ、2016年には電力取引関連事業、そして2020年には小売事業へ参画し、中期ビジョン2025の下、「総合エネルギー事業会社への変革」を目指してまいりました。その結果、定量目標は未達となりましたが、定性目標として事業基盤の変革と強化は実現しました。次期中期ビジョンである「中期ビジョン2028(Shift Up)」においても基本方針は変わることなく、「総合エネルギー事業会社」への歩みを進めてまいります。当社グループは、強みである再生可能エネルギー開発・運用、BPOサービス、電力トレード及びリスク管理ノウハウをフルに活かし、発電事業者、小売電気事業者、電力需要家等のあらゆるニーズに応える「エネルギートータルソリューションプロバイダー」としてさらに成長してまいります。
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画においては、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していくことが打ち出されており、電力システム改革においても電力供給のさらなる安定化・自由化を目指すことがうたわれております。こうした施策は当社グループにとって追い風であることは間違いなく、市場価格をベースとした多様な電力価格の提供に強みを持つ当社グループは有利な位置にあると考えております。
当社は事業・財務・非財務戦略の三位一体推進により、可能な限り早期にPBR1倍超を目指してまいります。また、従来より継続しております「事業の選択と集中」のさらなる推進と獲得キャッシュの成長投資と株主還元のバランスを考慮した分配を行ない、ガバナンスへの取り組みを一層強化しつつ電力を中心とした総合エネルギー事業をより発展させてまいります。
事業戦略:
・「事業の選択と集中」のさらなる推進:成長が見込まれるセグメントに各種資本(財務、人的等)を集中
アセット・マネジメント事業廃止
ディーリング事業を段階的に縮小し、2年を目途に廃止
トレーディングノウハウを電力取引関連事業へ集約し、電力取引の差別化を実現
・安定収益基盤の強化に向けた小売事業の拡充
財務戦略:
・成長を支えるキャッシュアロケーション
・株主還元方針:
配当性向30%以上、中期ビジョン2028の期間中においては1株当たり7.00円の配当を下限とすることを基本
非財務戦略:
・ガバナンス・コンプライアンス・リスク管理の強化
・人財育成及び社内環境整備、人事施策上の定量目標設定
なお、2028年3月期の数値目標としては、以下を目標としております。
連結営業収益:350億円、税金等調整前当期純利益(実質):8億円、ROE:9%以上
当社グループは今後更なる事業及び収益の持続的拡大を図るために、以下の課題に取り組んでまいります。
当社の取締役会は、高度な専門性を有する複数の社外取締役、業務執行取締役及び社外監査役にて構成しております。加えて、業務執行と業務執行状況の管理の分離、業務執行責任者の権限の拡大と結果責任の明確化、並びに経営判断に携わる人員育成・拡充等を目的として「委任型執行役員制度」を導入しております。
今後の更なる事業拡大と企業価値の持続的な向上を実現していくためには、高い専門性と豊富な経験を備え、優れた人格を有するマネジメント人材を選抜・育成し、新しい経営体制を確立していくことが急務であると認識しております。本年度からスタートする中期ビジョン2028の初年度中に新たな経営を担うマネジメント人材を起用し、引継ぎを行いつつ次世代マネジメントへの移行を明確に進めてまいります。
当社グループは、祖業の金融事業に加え、そのノウハウを活かし、2012年度以降、再生可能エネルギー関連事業、電力取引関連事業を展開し、2021年3月期には既存ビジネスをさらに拡充するために小売事業(電力・ガス)を立ち上げました。2021年11月には、2022年3月期から2025年3月期までを対象期間とする「中期ビジョン2025 事業の深化と進化」を策定し、総合エネルギー事業会社への変革を加速化させ、会社の飛躍的な成長に向けてグループ一丸となって取り組んでまいりました。しかしながら、2023年3月期、2024年3月期と一定の成果を積み上げてきたものの、最終年度の2025年3月期は誠に遺憾ながら、中期ビジョン2025の定量目標を達成することができませんでした。その一方、当初は赤字事業であった小売事業(電力・ガス)は2年連続の黒字となり、営業収益・セグメント利益ともに前年比増加することができました。再生可能エネルギー関連事業でも発電事業と発電所の維持管理に加え、系統用蓄電所やコーポレートPPAの開発によりこの2年間はセグメント黒字を達成できております。
当社グループは、今一度「総合エネルギー事業会社」に向けて、当社の強みの洗い出しと何をすべきかを検討した結果、さらに非中核事業からの撤退(事業の選択と集中)を進め、その上で具体的には「電力需要家、発電事業者のあらゆるニーズに応えるエネルギートータルソリューションプロバイダー」を目指していくことを決意しました。電力事業に関わる一事業者として、国の第7次エネルギー基本計画や電力システム改革の課題を解決すべく、良質な環境価値を生み出すベースロード電源である地熱発電の開発や大規模系統用蓄電所におけるAIを活用した市場予測等に基づく各種市場での取引業務、環境価値(再エネ価値)の取り扱いの拡大等を進め、顧客目線での付加価値に繋がる「なくてはならないビジネスパートナー」を目指します。
②を達成するために、当社グループは自社の持てる能力を顧客に届ける営業力に課題があると認識しております。そのため、現在の縦割りの営業体制を見直し、セグメントを横断した横連携の営業機能の強化に取り組み、「需要家、発電事業者まであらゆる場面でソリューションの提供を可能とするエネルギートータルソリューションプロバイダー」に向けて、顧客ニーズを取りこぼしすることのないよう、コミュニケーションの強化、データ分析、サービスの改善等に取り組んでまいります。
2023年3月に東京証券取引所より、プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請がなされました。資本コストや株価を意識した経営を実践する観点から、自社の資本コストや資本収益性を的確に把握し、その内容や市場評価に関して、取締役会で現状を分析・評価した上で、改善に向けた計画を策定・開示し、その後も投資者との対話の中で取り組みをアップデートする、といった一連の対応を継続的に実施することを求められております。
当社においては、資本収益性等の分析を進めており、次期中期ビジョンにおいてROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)を上回ることは当然のこと、各セグメントの分析も進め、収益性を高め、BSから見る経営を進めてまいります。
当社グループは、小規模ながら発電から小売までをグループ内でカバーしております。小売事業における電力販売量の増加は、小売事業と電力取引関連事業の収益増加へと繋がり、顧客数の増加は新たな顧客向けサービスのビジネスチャンスとなる等、当社グループの他の事業にも好影響を及ぼします。引き続き新規顧客の獲得と既存顧客の維持管理を並行して行い、事業規模の拡大を図ってまいります。
総合エネルギー事業を展開する当社グループにとって、事業規模の拡大には、株主資本を充実し企業体力を強化することと、持続的な収益力を確保していくことが最も重要な課題であります。事業展開の優先度に応じた経営資源配分の最適化を図り、事業目標の進捗管理の強化と資本効率の向上が必要であると考えています。人財育成等を含め、人的資源の一層の活用を通じて収益力の向上に取り組んでまいります。また、継続的に経費構造を見直し、経費率の改善を同時に進めることも重要であると考えており、引き続きコスト削減を徹底してまいります。
上記の課題の達成のためには、適材適所の人材配置と業務効率の向上を実現させる組織運営が必要であると考えております。主に業務代行に関連して進められていたDXの推進は、他の分野でも活用してまいります。
さらに、市場取引に係るリスク、信用リスク、流動性リスクに加え、セキュリティリスク、自然災害発生及び感染症拡大等に伴う事業継続に係るリスク等、当社グループの事業を取り巻くリスクは、今後、従来想定していない新たなカテゴリーのものも発生し得ると考えられます。こうした事業を取り巻くリスクを迅速かつ的確に管理することの重要性を明確に認識し、不測の事態に備えたリスク管理体制の一層の強化に努めてまいります。
当社グループは、環境・社会・経済という3つの観点において、持続可能な状態の実現に貢献するため、長期的に良好な企業活動を維持し続けることを、サステナビリティ経営として捉えております。
当社は、この経営方針を推進するため、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、気候変動や人的資本をはじめとした重要課題や基本方針を特定・策定の上、そのリスク管理状況等について、同委員会より取締役会に報告を行う体制を構築しており、今後も継続的に機能を強化してまいります。
再生可能エネルギー関連事業においては、「持続可能な開発目標(SDGs)」や国のエネルギー基本計画に鑑み、2030年までに最大年間66,000トン(太陽光発電100MW相当)のCO2削減を目指しております。
本事業を取り巻く環境としては、再エネ特措法の改正、競合他社の参入、優良案件の減少等により、依然として案件確保が容易ではない状況が続くと想定されます。
こうした環境下、当社は、太陽光発電による売電収入、発電所の維持管理業務(O&M事業)に加え、長年に亘り培ってきた再生可能エネルギーに係るノウハウとネットワークの力を活用し、非FIT太陽光発電設備を用いたPPAの展開や系統用蓄電池所の開発、地熱発電の開発等に取り組んでおります。
発電事業では、出力抑制が課されるエリアの増加や経済的出力抑制が営業収益に与える影響が大きくなっており、また各種保険料の増加もみられるため、引き続き業務効率化や経費の見直し等を行ってまいります。
地熱発電事業については長期に亘る事業ではありますが、既に宮崎県において掘削した生産井2本・還元井1本・貯留層のモニタリング用井戸1本から、発電事業に必要な能力を有するとした調査結果を得ております。追加容量を含めた全4.4MWの連系契約は時間をかなり要したものの当連結会計年度に完了し、事業化に向けて着実に前進していると考えております。
地熱発電事業は太陽光発電に比べリスクが高いことは認識してはおりますが、再生可能エネルギー関連事業の新たな中核の一つとなるよう、潜在的なリスク検証も含め、パートナー企業とともに取り組みを加速・拡大させてまいります。なお、昨今の物価上昇等による建設コストの増加を踏まえ、当社グループにとって最適なプロジェクト推進体制の見直しの検討も進めております。
電力取引関連事業は小売電気事業者向けの業務代行に加え、多様な電力調達ニーズに対応する電力の仕入・販売に注力してきた結果、収益基盤の強化が進んできております。事業を取り巻く環境は、取引参加者の増加に伴うマージンの低下傾向が見られ、厳しくなりつつありますが、サービスの質の向上やコストの見直し等の対策を講じ、収益の改善に努めてまいります。
また、業務代行については、今後もAIを用いた電力の需要予測等、引き続き質の高いサービスにより顧客増を目指し、事業基盤の強化に貢献してまいります。
さらに、系統用蓄電所の運転開始に伴い、当事業では、AIを活用した需給調整や市場予測等の機能を活用した電力取引の業務を請け負います。当社にとって初めての取り組みとなるため、取引開始に向けて入念な準備をしてまいります。
当社グループは小売電気事業者を有するアストマックス・エネルギー株式会社を2020年4月に買収し、2022年3月期から小売電気事業を積極的に展開しております。2022年4月から販売を開始した低圧顧客向けの電力プラン「フリープラン」は、変動料金と固定料金を組み合わせることで、カスタムメイドな電気プランを実現できるプランであり、2022年夏からは特別高圧・高圧の法人顧客に対しても販売を開始しました。この時期は、大手電力会社が引き受けを停止し、電力プランが実質的に市場連動に切り替わることがアナウンスされたタイミングであり、当社の「フリープラン」に対する比較優位性があらためて認識され、2022年夏以降顧客数が大きく増加し、2024年3月期に初めて年間を通じてセグメント黒字となりました。
2025年3月期も、引き続き顧客訪問をメインに、2024年4月から開始された容量拠出金制度や、固定価格と市場価格を組み合わせたハイブリッド・フリープラン、キャップ付きフリープランなどの商品の説明を行い、顧客の理解を深めていただく機会を設けました。低圧小売については新たなパートナー企業とともに送客のしくみを構築することで、顧客の増加を見込んでおります。2025年3月期の顧客数や電力の供給拠点数は年間を通じて横ばい傾向にあるものの、電力供給量は前年比増加し、営業費用の見直しもあってセグメント利益も増加しております。今後も様々な取り組みを通じて、サービスへの理解促進と更なる顧客の獲得に努め、一層の収益力の拡大と事業基盤の強化を目指してまいります。また、コーポレートPPAや蓄電池の活用等を小売事業と連携させ、質の高いサービスの提供に取り組んでまいります。
ディーリング事業は、近年、取引対象の拡大や取引インフラを整備し収益源の多様化と収益力の拡大を目指してまいりましたが、現状の取引市場規模は従来に比べ縮小傾向にあり、取引にかかるコストも海外を中心に年々上昇しております。そのため、事業間のシナジーや投下資本の効率等を改めて検討した結果、2年を目途にディーリング事業の規模を段階的に縮小し、トレーディング及びリスク管理ノウハウを電力取引関連事業に移行した上で最終的に廃止することを決定いたしました。これまで培ってきた取引に関する専門知識や経験等のノウハウを確実に継承してまいります。
上場企業として、再生可能エネルギー関連事業、電力取引関連事業、小売事業を展開する当社グループは、極めて公共性の高いビジネスの担い手であることを強く認識しております。そのため役職員一人ひとりに高いモラルが求められており、当社グループの全役職員に対して社内規程で法令等の遵守を求めるとともに、誓約書を提出させております。コンプライアンスについては、研修を行う等継続的な啓蒙活動とチェックが必要であり、引き続きその徹底を図ってまいります。
当社グループでは、事業別に業務データのアクセス権を細かく設定するだけでなく、情報にアクセスする場所やデバイスにおいても制限を設けることで、情報漏洩のリスクを低減させる取り組みを行っております。
さらに、役職員の高いセキュリティ意識が重要であるとの認識のもと、役職員全員を対象としたサイバー攻撃に関する訓練や研修を定期的に実施しております。今後も継続して役職員の意識の向上と啓発に努めてまいります。
当社グループは、規模に比べセグメント数が多いことから、株主や投資家の皆様からそれぞれの事業が分かりにくいとのご意見をいただいておりましたが、非中核事業からの撤退を進め、事業を集約してまいりました。
IRについては、月次での当社グループが保有する発電所の売電状況の開示、四半期決算の補足説明資料の公表、年に2回のオンライン決算説明会、年次の株主通信の充実、各種適時開示等を通じて、事業全体の関連性や状況をより分かりやすく可視化することに努めております。なお、2024年12月にはコーポレートサイト内に、サステナビリティに関する当社の考え方や取り組みを紹介するページを公開いたしました。今後もIRの一層の充実に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
企業活動は「環境・社会・経済」に大きな影響を与えるため、企業活動においてその影響を考慮することは、事業の長期的な維持及び継続には欠かせないファクターであります。また、当社グループは、これら3つの要素の持続可能性に貢献することを、企業経営上の重要な課題のひとつとして認識しております。企業価値を継続的に向上させるためにも、「環境・社会・経済」それぞれの観点から、長期的に良好な企業活動を維持し続けることを「サステナビリティ経営」と捉え、この経営方針を推進する体制を構築し強化してまいりたいと考えています。
サステナビリティ委員会は、代表取締役を委員長とし、気候変動や人的資本を始めとした重要課題(マテリアリティ)や基本方針を特定・定義の上、そのリスク管理状況等について、同委員会より取締役会に報告を行う体制となっております。
当社のサステナビリティ経営推進体制は以下のとおりです。

代表取締役は気候変動及び人的資本に関する当社方針に責任を持ち、これらに関するリスクと機会の評価と管理の責任を有します。気候変動、人的資本をはじめサステナビリティに係る当社の重要課題(マテリアリティ)に関するサステナビリティ委員会の対応等の報告を受け進捗状況を管理します。また、サステナビリティ委員会にリスク管理等に関する検討を指示します。
当社の事業が継続するための課題を分析し、気候変動や人的資本を始めとしたグループ全体の重要課題(マテリアリティ)を特定し、リスク分析、必要に応じ戦略、指標及び目標に関する検討を行い、サステナビリティに関する方針を策定します。各課題について全社的な取り組みを推進し、対応策の実行については執行役員会と協議を行い各事業部門が方針に従って実行します。取り組み状況やリスク管理状況等については、同委員会より取締役会に報告を行う体制としています。
当社グループは、サステナビリティ関連リスクとして認識される重要課題について、取締役会の監督のもと、サステナビリティ委員会において対応策の策定を行い、執行役員会及び関連部署とともに対応策を実行する体制となっています。
気候変動リスクと人的資本・多様性に関するリスクは、当社にとって重要なリスクの一つであるとの認識のもと、気候変動リスクについては当社が事業を推進する上で影響があり得る可能性のある事項について、公表されている関連報告書等も参考に評価を行うこととしています。
また、人的資本・多様性については、当社は管理職や中核人財の登用に際しては、男女差や国籍による区別は設けておらず、判断力・協調性・独創性等の人財としての総合力と様々な分野における専門性の2軸による評価を中心に判断することで、多様な価値観を持つ中核人財が活躍できる環境を整えております。さらに、2軸による人事評価制度に加え、高度専門性を別途評価する職群を定めた制度を採用すること等により、知識・経験の多様性の確保も図っております。人的資本・多様性に関するリスク管理に関しては、当社のこれらの体制のもと、人財の確保・育成を進めるためのリスクの評価を行っております。
当社は中期ビジョン2025に掲げる『総合エネルギー事業会社への変革』や『GXとDXの推進』を実現するため、従業員の個々のリスキリングを目的とした人財育成に取り組んでまいりましたが、新たに策定した中期ビジョン2028においては『働きがいの向上と人財の成長は「会社の成長」』という人事方針の下、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題にも記載のとおり、マネジメント人材の選抜・育成を通じた新たな経営体制の確立に取り組んでまいります。具体的には、会社全体の能力及び生産性の向上を目的とした階層別・分野別研修の充実、個々の専門性を適正に評価するための人事考課制度の見直し等を行い、個々の従業員が専門性を高めるためのインセンティブとすることを検討しております。
人財の多様性の確保については、これまで通り、性別・国籍・年齢等を問わず、能力・適性を判断した採用及び人事評価を行います。その結果として、当社における同一労働同一賃金を維持します。
採用はキャリア採用を中心に行い、多様な価値観を相互に尊重できる社内風土を醸成し、積極的に協力し合える活力のある組織を目指します。
多様な価値観を維持・尊重できる環境を整えることで、確保した人財の社外流出を防止するよう努めます。
加えて、適材適所のキャリア採用により歪みの生じた人口ピラミッドの適正化のため、全体バランスを重視した採用を進めてまいります。
従業員のエンゲージメントを高めるための施策を検討・導入するため、従業員満足度調査を行い、人事戦略の取り組みにおける成果の数値化を行います。
ハラスメント防止体制の確立やメンタルヘルス対策の拡充をはかり、従業員が安心して働ける環境を構築します。
受動喫煙の防止のため、職場内の分煙だけでなく、会食の場での受動喫煙の防止も励行します。
引き続き社内環境の整備・福利厚生の拡充を行い、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現を目指します。
炭素税やリサイクル規制の導入、再生可能エネルギー導入支援等、厳しい気候変動に対する対策を講ずることによって、気温上昇を2℃未満に抑えることが可能であると想定されつつ、慢性的な物理リスクとして気温上昇、急性的な物理リスクとしての気象変動の激甚化を想定しております。
リスク:
機会:
リスク:
機会:
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(連結ベース)
※1 当社グループの基幹職は、管理監督者の役割を任せることができる程度の知見を有する従業員を指します。
※2 2025年3月期の状況に「-」が表示されている指標は、新たに追加した指標です。
有価証券報告書に記載した当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、当社グループでは、事業等のリスクを、将来の経営成績に与えうる影響の程度及び発生の蓋然性等に鑑み、「特に重要なリスク」「重要なリスク」に分類しております。当社グループは、これらの重要なリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存ですが、これらのほかにも様々なリスクが存在しており、ここに記載されたリスクが当社グループの全てのリスクを表すものではありません。当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当社グループは、総合エネルギー事業をコアとし、金融及び市場取引分野において創業以来培ってきたノウハウを活用し事業を展開しております。
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における我が国の経済状況は、所得・雇用環境の改善などを背景に社会経済活動の正常化が進み、緩やかな回復基調が継続していますが、物価高の長期化を受けて個人の消費財消費の動きは弱い状況となっています。さらに、トランプ新政権の発足、中東・ウクライナ情勢の長期化、海外経済や物価動向、日銀の金融政策、円相場の急激な変動など、内外の不確実性が高く、先行きには、引き続き十分な注視が必要です。
このような中、当社グループは、2021年11月に策定した3.5ヵ年計画の「中期ビジョン2025」の方針に則り、目標に掲げている「総合エネルギー事業会社への変革」に向けて、引き続き下記項目に取り組み、当連結会計年度においては2)及び3)を中心に進めてまいりました。
1) 事業構造と経営資源配分の見直しに着手
2) 特別高圧・高圧市場の需要家向けマーケティングの更なる注力
3) 系統用蓄電池の事業化のアレンジメント
4) コア事業向けの資金調達等
---------------------------------------------------------------------------------
中期ビジョン2025:「事業の深化と進化」、「総合エネルギー事業会社への変革」
優先して取り組む事項:
1. 『電力利用の新しい日常』を創造
2. 電気は『つくって、ためて、賢く使う』時代を先取り
3. 蓄電池を活用した事業・ビジネスの拡大
4. 地域電力設立の支援強化(地域脱炭素化の支援)
5. 小売電気事業者様向マネジメントサービス提供型ビジネスの一層の拡大
2025年3月期における定量目標:
1. 連結営業収益 :200億円以上
2. 税金等調整前当期純利益:7億円以上
3. 一株当たり純資産額 :500円以上
---------------------------------------------------------------------------------
当連結会計年度は、中期ビジョン2025の最終年度であり、上記定量目標に向けてグループ一丸となって取り組んでまいりましたが、最終的に5事業のうち2事業がセグメント損失となり、3事業のセグメント利益で賄うことができず、全体としては前年比増収となったものの、誠に遺憾ながら最終赤字となり定量目標の2及び3を達成することができませんでした。
最終赤字となった主な要因は、ディーリング事業において、第1四半期連結会計期間は順調に利益を計上した一方、裁定取引における市場の歪みが当社の想定を超えて拡大したことにより第4四半期連結会計期間において大幅な評価損失を計上し、通期の営業収益が辛うじてプラスになる水準にまで落ち込みました。また、電力取引関連事業において、後段の<2 電力取引関連事業>にて補足説明しているとおり、電力のヘッジ取引に係る押し上げ押し下げ要因(前連結会計年度は営業収益及びセグメント利益は198百万円押し上げられていましたが、当連結会計年度は104百万円押し下げられている)の変動に加え、電力取引の流動性を高めるため取引量を増加させたことにより営業収益が大幅に増加した一方、取引手数料の増加や取引当たりの収益性が低下し減益となったことが要因です。なお後段の<2 電力取引関連事業>にて補足説明しているとおり、当事業のセグメント損失は104百万円利益が押し下げられており、押し下げ要因を勘案した損益は3百万円のセグメント利益でした。
他の3事業はそれぞれ前年比セグメント利益を増加させましたが、上記2事業のセグメント損失を補うことはできませんでした。
当社グループは、事業間のシナジーやリソースの最適化等を改めて検討し、アセット・マネジメント事業は他のセグメントとの今後のビジネスシナジーが見込み難いと判断し、2025年3月末をもって廃止することとしました。さらにディーリング事業についても、事業間のシナジーや投下資本の効率等を改めて検討した結果、2年を目途にディーリング事業の規模を段階的に縮小し、最終的に廃止することを決定いたしました。この事業を通じて培ってきたトレーディングおよびリスク管理ノウハウは電力取引関連事業に移行し、同事業の一層の拡充に活かしてまいります。
(単位:百万円)
※1 「法人税等合計」には、「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を含みます。
※2 当連結会計年度の営業収益における電力取引関連事業に係るヘッジ目的で行う電力先物取引による影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<2 電力取引関連事業>」をご参照ください。
セグメント毎の経営成績及び取り組み状況は次のとおりです。
セグメント利益:再生可能エネルギー関連事業、小売事業、アセット・マネジメント事業
セグメント損失:電力取引関連事業、ディーリング事業
(セグメント別営業収益・セグメント損益) (単位:百万円)
※1 当連結会計年度の営業収益における電力取引関連事業に係るヘッジ目的で行う電力先物取引による影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<2 電力取引関連事業>」をご参照ください。
※2 セグメント損益は、当連結会計年度の経常損益と調整を行っており、セグメント間の内部取引消去等の調整額が含まれております。各事業に帰属する特別利益及び特別損失は含んでおりません。
当事業は当社及びアストマックスえびの地熱株式会社が推進しており、当事業を通じて、更なる再生可能エネルギーの導入及び拡大に寄与する方針の下、2030年までに最大年間66,000トン(太陽光発電100MW相当)のCO2削減を目指しております。本事業を通じて、再生可能エネルギーの導入加速と電力系統の安定化に貢献するとともに、カーボンニュートラルの実現、GXの推進に取り組んでまいります。
2024年4月末日に栃木県大田原市内に約2.1MWの太陽光発電所が完工、運転を開始し、当事業が関与した完工済みの案件は合計33.5MWとなりました。
当事業では、長年に亘り培ってきた再生可能エネルギーに係るノウハウとネットワークに加え、小売事業部門と連携を取りながら潜在顧客の発掘とアプローチを行い、固定価格買取制度に頼らないFITモデルから非FIT又はFIPモデルへの転換により、事業採算性の向上に取り組んでおります。なお、熊本県菊池市の太陽光発電所(約8.1MW)は、九州再生可能エネルギー投資事業有限責任組合(LPS)を通じて保有しており、当社グループの持分比率は50.04%でしたが、同組合の契約期間満了に伴い同組合が保有していた持分を取得したことにより、2025年1月22日付けで当社グループが同発電所の持分を100%保有することになりました。
栃木県大田原市 出力規模:約2.1MW 2024年4月完工。当社が維持・運営管理(O&M事業)を行っております。
該当ありません。新たな案件についても精査を行っております。
当連結会計年度に入替を実施した案件はありません。
当社が開発に携わった案件等20サイト、合計31.6MWの太陽光発電所の維持・運営管理(O&M事業)を行っております。昨今の自然災害やケーブル盗難の増加に伴う保険料の上昇については、発電事業者様への説明を実施し、適正な価格転嫁の商談を進めております。
なお、当社グループが所有及び管理している栃木県の発電所(あくとソーラーパーク)で2024年2月に発生した電気ケーブルの一部が切断された被害については、2024年8月上旬に復旧工事が完了いたしました。発電停止期間の休業補償は2025年1月に受領し、第4四半期連結会計期間に計上いたしました。
当社は北海道山越郡長万部町と包括連携協定を締結し、「持続可能な街づくりと脱炭素化・再生可能エネルギー推進を同時実現することを目的とした事業」を協同で推進しており本案件は2023年3月期末に運転開始済です。
また、当社は株式会社熊谷組とコーポレートPPA事業の協業を開始いたしました。両社が匿名組合出資する合同会社ACEを事業主体とし、発電事業者としてPPA事業を展開いたします。2024年7月に静岡県富士宮市の民間企業とのPPA契約を締結し、2025年2月に運転開始いたしました。
このほか、当社が匿名組合出資をしております合同会社GreenPowerでは、第2四半期連結会計期間に民間企業との間で4件の運転を開始しており、今後も案件受注に向けて取り組んでまいります。
当社は大和エナジー・インフラ株式会社、芙蓉総合リース株式会社が主体となり共同で匿名組合出資する合同会社DAXより、北海道札幌市内にて開発中の系統用蓄電池(定格出力50MW、定格容量100MWh)事業のオペレーターとして、運転開始前は本事業の工程管理及び運用準備業務を、運転開始後は蓄電所の運営、維持・管理、AIを活用した需給調整や市場予測等の機能を活用した電力取引の業務を請け負います。当該系統用蓄電所は2023年度に着工し、工程はスケジュールどおり進捗しており、2025年秋の運転開始を予定しております。
また、当社で手掛けていた系統用蓄電池案件のうち1件をエリア分散の観点等から2024年12月に他社に譲渡したため、当連結会計年度において譲渡までのアレンジメント業務の対価に相当する151百万円の営業外収益(投資有価証券売却益)を計上いたしました。
なお、引き続き他のエリアでの展開も検討しており、幾つかの案件について具体的な事業化に向けて取り組みを進めております。
当事業では、ベースロード電源である地熱を利用した発電事業の取り組みも進めております。
宮崎県えびの市尾八重野地域では、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構による「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」(以下、「助成事業」という。)の採択を受け、2MW規模の地熱発電の事業化を目指して、2016年度~2018年度に3本の調査井を掘削、その後計画規模を4~5MWに拡大し、2019年度助成事業として4本目の調査井を掘削いたしました。これら4坑井(生産井2本・還元井1本・貯留層のモニタリング用井戸1本)から、発電事業に必要な能力を有するとした調査結果を得ており、事業化に向けて取り組んでおります。
当初より計画している2MW分については、2019年度に連系契約を完了しておりましたが、計画規模拡大後の追加容量については、度重なる制度改正等により手続きが非常に長期化しておりました。
この間、連系時期の不確実性や物価上昇等による建設コストの増加に伴い、並行して送電容量の拡大等見直しを行った結果、全体の発電容量は5MW未満のままとする一方、送電容量を0.4MW拡大し、合計4.4MWの送電計画といたしました。
追加容量を含めた全4.4MWの連系契約は当連結会計年度に完了し、現在は許認可手続き及び発電設備の工事契約等の準備を進めております。なお、運転開始時期は、上記のとおり度重なる制度改正や工事契約の納期等が長期化しているため、当初の予定より1年延長して2027年度を想定しております。
当社グループ所有の太陽光発電所が2024年4月に完工し売電を開始したことや、経済的出力制御(オンライン代理制御)による電力販売のマイナス調整負担が前年同期間比減少したこと等で、売電収入は前年同期間比増加しました。しかしながら前連結会計年度は系統用蓄電池事業開始に係るアレンジメント業務等により営業収益289百万円及び営業外費用60百万円を計上していたことから、当事業全体では営業収益は前年同期間比減少したものの、系統用蓄電池1案件の譲渡益(151百万円)や休業補償を営業外収益に計上したことからセグメント利益は前年同期間比増加いたしました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は739百万円(前年同期間比144百万円(16.3%)の減少)、135百万円のセグメント利益(前年同期間比8百万円(6.9%)の増加)となりました。
当事業は、当社が推進し、①小売電気事業者向け電力取引及び電力小売顧客向け固定価格取引等の提供、②需給管理業務を中心とした業務代行サービスの提供等を行っております。
①については、顧客毎の電力調達及びリスクヘッジニーズに対応し、電力現物先渡取引、デリバティブ取引である電力スワップ取引、電力先物取引に取り組んでおります。②については、既存顧客に対して安定したサービスの提供をしつつ、新規取引先の拡大を目指し、電力取引のリスク管理コンサルティング等を加え、顧客ニーズにあったきめ細かいサービスの提案を行っております。
電力取引の増加及び多様化に伴い、リスク管理の重要性が高まっていることを踏まえ、当社グループでは、リスク管理体制の強化も推進し、変動率が高い相場展開の中、リスクを適切に抑制しながら取引を実行しております。
当連結会計年度においては、電力取引の流動性を高めるため取引量を増加させたことにより営業収益が増加した一方、取引手数料の増加や取引当たりの収益性が低下し減益となったことに加えて、電力のヘッジ取引に係る押し上げ押し下げ要因(前連結会計年度は営業収益及びセグメント利益は198百万円押し上げられていましたが、当連結会計年度は104百万円押し下げられている)の変動によりセグメント損失となりました。
当連結会計年度末を越えて受渡しが行われる電力現物先渡取引は時価評価の対象ではありませんが、当該取引をヘッジする目的で行う電力先物取引はデリバティブ取引として時価評価の対象となります。電力先物取引のうち、一部取引所では取引所の規定によって3か月以上の期間のポジションは期末が近付いた段階で決済され、より短い期間の新たなポジションに分割されます。これに伴う決済損失148百万円(純額①-1)と、当連結会計年度末を越えて限月を迎える電力先物取引の時価評価益8百万円(純額①-2)は、当連結会計年度末を越えて受渡しが行われる電力現物先渡取引と同一の会計期間に認識されないため、純額では当連結会計年度の営業収益を押し下げ、電力取引関連事業のセグメント利益を減少させる要因となっております。
一方、同様の理由で、当連結会計年度に受渡しが行われる電力現物先渡取引をヘッジする目的で行われた電力先物取引に係る前連結会計年度に認識された決済損失10百万円(純額②-1)及び時価評価損24百万円(純額②-2)は当連結会計年度の営業収益を押し上げ、電力取引関連事業のセグメント利益を増加させる要因となっております。
上記①と②を総合すると、結果として当連結会計年度の営業収益とセグメント利益はそれぞれ合計104百万円(104=148(純額①-1)-8(純額①-2)-10(純額②-1)-24(純額②-2))押し下げられており、押し下げ要因を勘案した損益は3百万円のセグメント利益でした。
なお、前連結会計年度(2024年3月期)の電力取引関連事業の営業収益とセグメント利益はそれぞれ合計198百万円押し上げられておりました。
以上の結果、電力取引関連事業の当連結会計年度の営業収益は13,052百万円(前年同期間比4,897百万円(60.1%)の増加)となりましたが、101百万円のセグメント損失(前年同期間は382百万円のセグメント利益)となりました。
前連結会計年度まで新機能開発部で行っていた、系統用蓄電池事業で使用するAIアルゴリズムの開発等は当事業にて取り進めております。これは、系統用蓄電所の運転開始後に、電力需給バランスの安定化と電力供給の効率化を図るために必要なもので、需給調整や電力関連市場予測及び入札価格や入札量の最適化等の機能にAIを活用します。系統用蓄電池事業は当社グループにおいても優先課題の一つとなっており、再生可能エネルギー関連事業部と連携しながら取り組んでおります。
当事業は、当社及びアストマックス・エネルギー株式会社(以下「AEKK社」)が推進し、当社は特別高圧・高圧市場の顧客へ電力販売を行い、AEKK社は個人を中心とする低圧市場の顧客へ電力とガスの販売を行っております。
特別高圧・高圧の電力市場では電力価格の高騰により、2022年秋より実質的な市場連動型料金に変更しております。こうした動きもあり、特別高圧・高圧電力市場では市場連動型料金体系が従来に比べ一般的になり、当社は2022年夏より特別高圧・高圧向け「フリープラン」の営業に注力してまいりました。その結果、同プランの優位性が認知され、撤退する事業者の顧客引受や媒介店からの流入を中心とした新規顧客が大幅に増加し、2023年5月には特別高圧・高圧の顧客数(請求単位)が500件を超える水準となりました。2023年度以降は、2022年度のような最終保障契約からの流入は一巡し、顧客数の増加は鈍化傾向ではありますが、市場価格をベースとした「フリープラン」の競争力は比較的優位な状況を維持できていると判断しております。
2024年4月より開始した容量拠出金制度における負担転嫁を契機として、一部のお客様が他の小売電気事業者に切り替える動きが見られましたが、当社は従来より高圧のお客様に対して個別訪問やオンライン会議等を活用したニーズの把握に努め、使用電力量の分析やシミュレーション等の情報提供を通じて、当社サービスへの理解促進に努めており、新規顧客の獲得も徐々に進んでおります。結果として2025年3月末の特別高圧・高圧の顧客数(請求単位)は前連結会計年度末比横ばいの548件となりましたが、大口顧客の取引の増加や、猛暑による顧客の使用電力量増加により電力販売実績は前年同期間比増加いたしました。今後も一層のサービス向上と顧客獲得を目指してまいります。
なお、特別高圧・高圧の顧客への供給量増加に対応し、その電力仕入に係る資金を安定的かつ機動的に調達することを目的に、新たに4金融機関を加え、コミットメント金額を10億円増額した都市銀行4行を含む8金融機関による総枠30億円のコミットメントライン契約を2024年9月に締結し、27百万円の資金調達費用を一時費用として計上しております。
一方、低圧市場の事業環境は、2022年11月以降、みなし小売電気事業者から新電力への切替数が伸び悩む傾向にありましたが、2023年7月以降増加傾向に転じております。当事業では、2023年9月に低圧市場向け電力プランを「フリープラン」に一本化し、これにより一部既存顧客の契約解除もありましたが、一般的な固定単価の電気料金プランに対し、現在の市場環境においては当社のフリープランが比較優位にあるとの判断等から、高圧需要家からの低圧電力契約の引き合いが増加しました。また、販売強化策として、2024年8月からキャッシュバックキャンペーンを再開しました。さらに販売代理店拡充の一環として、2024年9月にポート株式会社と業務提携契約を締結し、12月よりポート社専用プランの販売を開始いたしました。ポート社を通じた販路拡大と当社サービスの認知度向上により、更なる顧客の獲得を目指して取り組んでまいります。
AEKK社では株式会社グローバルエンジニアリングのガス小売取次店として電気とガスのセット販売を継続しております。
以上の結果、引き続き顧客への電力供給が安定的に行われ、年間供給量が前年比増加したことから、小売事業の当連結会計年度の営業収益は6,861百万円(前年同期間比1,273百万円(22.8%)の増加)となり、158百万円のセグメント利益(前年同期間比33百万円(27.2%)の増加)となりました。
当事業は、当社とアストマックス・ファンド・マネジメント株式会社。(以下「AFM社」)が推進し、学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドの営業者としてファンド運営業務等を担うほか、2020年3月に運用開始した基金の安定運用のファンド、2022年10月に運用開始した学校法人東京理科大学が支援する再生可能エネルギーファンドの運用業務を行っておりました。
再生可能エネルギーファンドにおいては、「地域の地産地消のための再エネ導入」を、産官学連携の力も活用して行うことを目指しており、また、第3四半期連結会計期間に開始した新たな大学発ベンチャーキャピタルファンドについても、AFM社が支援を行うこととなり、当事業の利益増加に寄与することとなりました。
AFM社が営業者として運用しているファンドの運用資産は前年同期間比増加し、営業収益に計上する運用報酬額も前年同期間比増加していることから、2024年1月以降安定した利益を確保できる体制となっており、当連結会計年度も規模は小さいながらもセグメント黒字を継続いたしました。
なお、冒頭に記載のとおり、事業間のシナジーやリソースの最適化等を改めて検討した結果、当事業は他のセグメントとの今後のビジネスシナジー効果が見込まれ難いと判断したため、当連結会計年度末をもって廃止し、AFM社は当社グループの連結対象外となりました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は195百万円(前年同期間比9百万円(4.8%)の増加)となり、36百万円のセグメント利益(前年同期間比32百万円(838.4%)の増加)となりました。
当事業は、当社が推進し、OSE、TOCOM、TFX、CME、ICE、INE等、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、株価指数等の金融先物を取引対象とした自己勘定による裁定取引を主に行っております。
当連結会計年度のWTI原油市場は、原油需要伸び悩みへの警戒感、中東情勢などの地政学リスク等を受け、一進一退の動きの中で徐々に下落基調となり、NY金市場の価格は、最高値の更新を繰り返すなど高い水準で推移いたしました。
当連結会計年度においては、第1四半期連結会計期間は順調に利益を計上した一方、裁定取引における市場の歪みが当社の想定を超えて拡大したことにより第4四半期連結会計期間において大幅な評価損失を計上し、通期の営業収益が辛うじてプラスになる水準にまで落ち込み、大幅なセグメント損失となりました。
なお、当事業についても、事業間のシナジーや投下資本の効率等を改めて検討した結果、2年を目途にディーリング事業の規模を段階的に縮小し、トレーディング及びリスク管理ノウハウを電力取引に移行した上で最終的に廃止することを決定いたしました。
以上の結果、当事業における当連結会計年度の営業収益は89百万円(前年同期間比247百万円(73.5%)の減少)、231百万円のセグメント損失(前年同期間は14百万円のセグメント損失)となりました。
上記、セグメント損益は当連結会計年度の経常損益と調整を行っており、セグメント間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、2,747百万円(前年同期間比25.1%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主として差入保証金の増減額(△1,464百万円)、自己先物取引差金の増減額(1,365百万円)等により、△58百万円(前年同期は610百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得による支出(△403百万円)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出(△101百万円)、投資有価証券の売却による収入(450百万円)等により、△30百万円(前年同期は△515百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として非支配株主への払戻による支出(△626百万円)、社債の償還による支出(社債の発行による収入との純額は△340百万円)等により、△831百万円(前年同期は638百万円)となりました。
当連結会計年度における営業収益実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当社グループのアセット・マネジメント事業、ディーリング事業は生産・受注といった区分が困難であるため、「生産・受注及び販売の状況」に代わり「営業収益の状況」を記載しております。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
以下の表は、当社グループが保有する太陽光発電所の発電実績を示したものです。
(注) 1 環境省の制定する「CO2削減効果算定マニュアル」に基づき算出し、端数は四捨五入しています。
CO2排出係数(代替値):0.55kg-CO2/kWh
(注) 2.オンライン代理制御とは、オンライン制御事業者がオフライン制御事業者の代わりに出力制御を行い、オフライン制御事業者がオンライン事業者に対価を支払う経済的出力制御のこと。オンライン代理制御による調整電力量はおよそ3か月後に判明します。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、連結営業収益20,666百万円(前期比5,810百万円の増加)、営業費用20,843百万円(前期比6,667百万円の増加)、営業損失は176百万円(前期は679百万円の営業利益)、経常損失は146百万円(前期は512百万円の経常利益)となりました。
営業収益の増加は、小売電気事業の特別高圧・高圧向けの供給量増加に伴う売電収入の増加と電力取引関連事業で電力卸売取引が増加したことが主な要因です。また、営業費用の増加は、小売電気事業の供給量増加と電力取引関連事業の電力卸売取引増加に伴う電力仕入と支払い手数料の増加、加えて物価高による各種サービスの値上げや人員増に伴う人件費の増加が主な要因となっています。
税金等調整前当期純損失は134百万円(前期は499百万円の税金等調整前当期純利益)、法人税等合計は9百万円(前期比51百万円の減少)、非支配株主に帰属する当期純利益は2百万円(前期は7百万円の非支配株主に帰属する当期純損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は146百万円(前期は445百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。なお、電力のヘッジ取引に係る押下げ要因(※)の影響を排除した実質の親会社株主に帰属する当期純損失は42百万円です。
自己資本は2024年3月期末の5,426百万円から5,042百万円と384百万円減少しました。加えて、非支配株主持分の減少(541百万円)等もあり、純資産は5,042百万円となりました。
再生可能エネルギー関連事業では、当社グループ所有の太陽光発電所が2024年4月に完工し売電を開始したことや、経済的出力制御(オンライン代理制御)による電力販売のマイナス調整負担が前年同期間比減少したこと等で、売電収入は前年同期間比増加しました。しかしながら前連結会計年度は系統用蓄電池事業開始に係るアレンジメント業務等により営業収益289百万円及び営業外費用60百万円を計上していたことから、当事業全体の営業収益は前年同期間比減少しました。一方、営業費用については、従来より地熱開発を含む発電所の開発に係るコストを負担しており、また、O&M事業にかかる資材高、工賃の上昇、昨今の自然災害やケーブル盗難の増加に伴う保険料の上昇等のコスト負担増により増加いたしましたが、系統用蓄電池1案件の譲渡益(151百万円)や休業補償を営業外収益に計上したことからセグメント利益は前年同期間比8百万円増加の135百万円となりました。
2014年度から着手している宮崎県えびの市における地熱発電事業は、匿名組合契約を締結いたしましたパートナー企業である大和エナジー・インフラ株式会社様とJFEエンジニアリング株式会社様と共に、引き続き協働しております。噴気試験等の結果を受けた発電規模の拡大後の追加容量については、度重なる制度改正等により手続きが非常に長期化しましたが、全ての連系契約は当連結会計年度に完了し、現在は許認可手続き及び発電設備の工事契約等の準備を進めております。なお、連系時期の遅れや物価上昇等による建設コストの増加もあり、送電容量の拡大等見直しを行った結果、全体の発電容量は5MW未満のままとする一方、送電容量を0.4MW拡大し、合計4.4MWの送電計画として契約しております。運転開始時期は、上記のとおり度重なる制度改正や工事契約の納期等が長期化しているため、当初の予定より1年延期して2027年度を想定しております。
電力取引関連事業では、当連結会計年度は、電力取引の流動性の向上を目的とした新規取引先の開拓を進め、取引量を増加させたことにより営業収益が大幅に増加した一方、取引手数料の増加や取引当たりの収益性が低下し減益となったことに加えて、電力のヘッジ取引に係る押し下げ要因(※)により101百万円のセグメント損失となりました。電力のヘッジ取引に係る押下げ要因(※)の影響を排除した実質は3百万円のセグメント利益でした。
手数料の削減と競争力を高めるため取引先の変更に取り組む等、今後は、取引の“質”の向上につとめ、収益の改善を図ってまいります。
※当事業の当連結会計年度の営業収益における電力取引関連事業に係るヘッジ目的で行う電力先物取引による影響の内容については、「セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<2 電力取引関連事業>」をご参照ください。
小売事業では、特高・高圧需要家様の顧客数(請求単位)が前期末の550件超から当連結会計年度末548件と横這いとなりましたが、大口顧客との取引が増加し、電力販売実績は前年同期間比8.5%増となりました。電力販売量の増加に加え、経費率改善に向けコスト削減に努めた結果、当事業の営業収益は前年比22.8%増加し、158百万円のセグメント利益となりました。更なる顧客獲得を目指し、引き続き積極的な事業展開を進めてまいりたいと考えております。
アセット・マネジメント事業は、「1 「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおり、事業間のシナジーやリソースの最適化、投下資本の効率性等を改めて検討した結果、他のセグメントとのシナジーが見込み難いと判断し、2025年3月末をもって廃止いたしました。
ディーリング事業は、第1四半期連結会計期間は順調に利益を確保できましたが、長期保有を目的とした裁定取引における先物市場の歪みが当社の想定を大幅に超えて拡大したことにより、第4四半期連結会計期間に大幅な評価損失を計上することとなりました。この結果、通期の営業収益が若干のプラスになる水準にまで落ち込み、大幅なセグメント損失となりました。
当事業についても、「1 「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおり、事業間のシナジーや投下資本の効率性等を改めて検討した結果、今後2年間を目途に段階的に規模を縮小し、最終的に廃止することを決定いたしました。この事業を通じて培ってきたトレーディング及びリスク管理のノウハウは、今後は電力取引関連事業に確実に継承し、同事業の差別化要素の強化に活かしてまいります。
なお、当該評価損失は、当社の各事業から創出される基礎的収益とは異なる一過性の損失と認識しており、当社グループの持続的な収益性には影響を及ぼすものではないと判断しております。
なお、当連結会計年度の経営成績と事業の種類別セグメント情報の詳細やその背景となる当社を取り巻く環境等につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
また、財務の主要な指標による現状分析は以下のとおりです。
PBR:0.6倍水準と1倍未満で推移
ROE:ヘッジ損益補正後のROEは2年間5%強であったが、2025年3月期はマイナス
ROIC:2024年3月期にヘッジ損益補正後のROIC>WACC、2025年3月期にはROIC<WACC
これは、当社の損益は事業年度ごとの変動が大きいことに加え、成長戦略を十分に説明しきれておらず、また、バランスシートを意識した経営への取り組み開始が遅れたことも、要因であったと認識しております。
今後の対応策:
・事業ポートフォリオの見直しによる資本効率の向上
ディーリング事業に投下していた資本を電力取引関連事業等の成長のために再配分
・事業採算の分析強化
セグメント毎の投下資本配分の定期的な見直しを実施
業務効率の向上やコスト見直しにより、売上原価や販管費を削減
・基礎収益性の向上:事業戦略の着実な推進と実現
これらにより、WACCを上回るROICの水準を達成し、維持・向上させてまいります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、以下の事項であると考えております。
引き続き積極的に経営資源を投入し、太陽光発電事業の更なる拡大と地熱発電事業等への取り組みを継続するとともに、既存太陽光発電所の「FIP転+蓄電池」への転換を事業化、リパワリングに取り組むとともに、系統用蓄電池事業の取り組みに注力してまいります。並行して、電力の自家消費モデルを企業や、自治体へ展開していくことに取り組んでまいります。
なお、同事業は、市場の変動の影響を受けにくい安定収益源として営業収益への貢献が期待できる一方で、「事業等のリスク」に記載のとおり、過度な出力抑制や不測の事態が生じた場合は、同事業の業績にマイナスの影響を与える可能性があります。
当事業においては、国内における電力契約の切替ニーズの変化や小売電気事業者数の増減等が同事業の経営成績に影響を与える可能性があります。また、業務代行サービスを利用する顧客数及び顧客の取り扱う電力量や需給逼迫等による電力価格の高騰が経営成績に影響を与えることとなります。さらに、取引参加者の増加による市場競争環境の激化に伴って事業環境は厳しくなりつつあるものの、サービスの質の向上やコスト見直し等を通じ、収益性の向上を進めていきます。
当事業も、国内における電力契約の切替ニーズの変化や小売電気事業者数の増減等が同事業の経営成績に影響を与える可能性があります。また、当事業では2022年秋以降、特高・高圧需要家様向けの販売が順調に伸びた後は2024年4月から容量拠出金制度の運用が開始したこともあり、顧客数は横這いの状況ですが、2026年3月期も、当社サービスの認知により更なる特高・高圧の顧客獲得に努めてまいりたいと考えております。しかしながら想定以上に顧客の解約が発生する場合は経営成績に影響を与えることとなります。
当事業にとって、取引対象銘柄の出来高の大幅な減少や市場変動率の著しい低下(または、その反対に著しく急激な上昇)などの市場環境によって取引機会が減少する場合、同事業の業績は大きな影響を受ける可能性があります。2020年度に貴金属を中心とする銘柄は日本取引所へ移管が完了しましたが、東京商品取引所と大阪取引所の旧東京商品取引所銘柄を合算した日次出来高は前連結会計年度末の数字をやや上回る状況となっております。市場参加者の増加と市場流動性の向上を今後も期待するものの、市場参加者や市場の流動性が減少する場合は同事業の業績に影響を与える可能性があります。
経営者の問題認識と今後の方針については、以下のとおりであります。
当社の経営者は、現状の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めております。
当期は中期ビジョン2025の最終年度であり、「総合エネルギー事業会社」への変革に向けて取り組んできた結果、定性目標として事業基盤の変革と強化は実現しましたが、定量目標は未達となりました。しかしながら、基本方針は次期中期ビジョンである「中期ビジョン2028(Shift Up)」においても変わることなく、さらにギアをもう一段上げていく思いで「Shift Up」というスローガンを掲げております。当社グループは、強みである再生可能エネルギー開発・運用、BPOサービス、電力トレード及びリスク管理ノウハウをフルに活かし、発電事業者、小売電気事業者、電力需要家等のあらゆるニーズに応える「エネルギートータルソリューションプロバイダー」としてさらに成長いたします。
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画においては、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していくことが打ち出されており、電力システム改革においても電力供給のさらなる安定化・自由化を目指すことがうたわれております。こうした施策は当社グループにとって追い風であることは間違いなく、市場価格をベースとした電力価格での提供に強みを持つ当社グループは有利な位置にあると思っております。
当社は事業・財務・非財務の戦略の三位一体推進により、まずはPBR1倍超を目指してまいります。また、従来より続けております「事業の選択と集中」のさらなる推進、獲得キャッシュの成長投資と株主還元のバランスを考えた分配を行ない、ガバナンスの強化をもって取り組んでまいります。
現状認識に対する具体的な対応策は、「1 「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」(3) 中長期的な会社の経営戦略」及び「4 「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照ください。
一方、当社の各事業に関連する事業の成果は、内外の金融商品市場、電力関連市場及び商品先物市場等の動向の影響のほか、電力システムを取り巻く環境は、新たな市場や新制度の導入が諸々予定されており、注視が必要です。想定と異なる動きやそもそもの動きが想定できない可能性もあり、それらの影響を大きく受ける可能性があります。このため、これらの市場等に関する情報を幅広く入手し、市場動向に迅速に対応すべく努力することは以前にも増して重要となっております。
業績と事業計画に大きな乖離が生じる可能性がある場合には、事業計画を抜本的に見直すことも含めて、環境変化への対応を適切に行ってまいります。
当連結会計年度における総資産は、主に差入保証金の増加(1,473百万円)、営業未収入金の増加(450百万円)等により、14,961百万円(前年同期比4.7%増)となりました。
負債は、主に自己先物取引差金の増加(1,176百万円)、営業未払金の増加(411百万円)等により、9,919百万円(前年同期比19.1%増)となりました。
純資産は、主に非支配株主持分の減少(541百万円)等により、5,042百万円(前年同期比15.5%減)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、2,747百万円(前年同期間比25.1%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主として差入保証金の増減額(△1,464百万円)、自己先物取引差金の増減額(1,365百万円)等により、△58百万円(前年同期は610百万円)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得による支出(△403百万円)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出(△101百万円)、投資有価証券の売却による収入(450百万円)等により、△30百万円(前年同期は△515百万円)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として非支配株主への払戻による支出(△626百万円)、社債の償還による支出(社債の発行による収入との純額は△340百万円)等により、△831百万円(前年同期は638百万円)となりました。
再生可能エネルギー関連事業における資金需要については、主としてプロジェクトファイナンスによって投資資金を確保することを想定しております。なお、手元流動性を超える資金需要の増加が見込まれる場合におきましては、銀行借入れ等による財務活動を通じた資金調達も視野に入れております。
電力小売事業における資金需要については、手元流動性に加え、銀行借入れにより確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
当社グループでは、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に基づき、収益性が著しく低下した資産又は資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
また、地熱発電開発事業に係る固定資産の評価に関する会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社は、財務上の特約が付されたシンジケーション方式コミットメントライン契約を締結しております。
契約に関する内容等は以下のとおりです。
2024年9月26日
2024年10月1日~2025年9月30日
都市銀行、地方銀行、政策金融機関
① 2025年3月期末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を、2024年3月期末日における
連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%相当の金額以上に維持すること。
② 2025年3月期末日における連結損益計算書に記載される経常損益から電力ヘッジ取引による影響額を考慮した
実質的な経常損益を2期連続で赤字にしないこと。
該当事項はありません。