第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

社グループは、創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づいた経営理念のもと、健全な企業活動を通じて社会に貢献していくことが私たちの使命であると考えております。

 

①経営理念

   「お得意先・地域社会・社員の協業のもと、新しい価値を創造し、お客様への喜びと満足の提供を通じて、

かな暮らしの実現に貢献します。」

②行動指針

私たちは

お客様満足

常にお客様の視点に立ち、誠実に対応することで、信頼される存在であり続けます。

価値創造

技術と知識の向上に努め、新たな製品の開発とサービスの提供にたゆまず挑戦し続けます。

社会との調和

環境、地域社会、人との調和を考えて行動し、人と自然にやさしい企業であり続けます。

自己研鑽

自己研鑽に励み、互いに切磋琢磨し、働き甲斐のある企業風土を育みます。

 

 


③CSポリシー

      ・お客様満足を第一とし、“常にお客様の立場・視点で考え行動”しよう

    ・お客様の意見にを傾け、“期待や問題点をしっかり把握”しよう

    ・お客様の満足実現に向け、“創意・工夫で改善、提案”しよう

    ・お客様の“満足こそが仕事の成果”であると心がけよう

    ・お客様の満足を、“共にわかち合えることに感謝”しよう

 

(2)価値創造のプロセス

 当社グループでは、株主及びその他ステークホルダー、そして社会からの信頼を築き共に発展していくことを経営の基本方針としており、VISION2030に向けて、4つの事業を中心に自社の強みや財務・非財務の資本を投入し、価値創造プロセスを循環させ続けることで、当社グループの更なる企業価値を高めてまいります。

 


 

(3)当社グループの強み

各事業の強みは次のとおりであります

強み

建材事業

マテリアル事業

商業施設事業

国際事業

多角化したポートフォリオ

 

国際事業とのコラボレーション、日本、欧州、タイ、中国のグローバル拠点

 

 

②高い技術開発力

・「安心・安全・快適」な商品づくり

パイオニアとしての自然換気商品

業界トップシェアを誇る手すりの商品ブランド力

サッシ、玄関ドア、インテリアなどによる統合商品と特注品対応力

強み分野を持つオリジナリティの高い商品開発

最新技術の導入による省人化生産

・国内最大級の生産能力を持つ合金鋳造、形材押出、加工の一貫体制

・店舗用什器、サインともに業界トップクラスのシェア

・お得意先様の要望を具現化できる商品開発力

・合金鋳造、形材押出、加工の一貫生産体制

・各地域で同一製品を同一品質で供給できる体制

・自動車(EV)分野での先進的なアルミ形材の自動加工技術

 

③強固なビジネスパートナーネットワーク

・代理店様、販売会社様による全国の流通販売体制

・強固なパートナーシップを有する代理店販売網

・営業力と部材組立機能を有する代理店販売網

・施工店様と強いパートナーシップ

・多様なニーズに対応可能な合金、形状、構造などの提案力

・お得意先様の要望を具現化できる営業対応力

・全国一律サービスを提供するネットワーク

・24時間365日対応の店舗メンテナンスサービス

・中国上海での事業伸長

・日本、欧州、タイ、中国のグローバルな拠点

 

※植物工場事業など当社グループ全体のリソースを活用した新たなビジネス創出と展開

 

(4)ビジネスモデル

私たちの使命は、商品・サービスをはじめ、様々な企業活動を通じて、人々が暮らす快適な空間と満足される生活づくりに貢献していくことであり、人と社会にやさしい環境商品やサービスを提供することで、豊かな暮らしの実現を目指してまいります。

 


お客様の心で考える価値創造環境技術で新たなビジネスフィールドへ

 多様なニーズに最新技術でお応えするビル建材と省エネ・バリアフリー・高耐久を考慮した住宅建材、そして最新のデザインと高い品質を追求したエクステリア建材の提供を通じて豊かな暮らしの実現に貢献いたします。

 

ビル建材

 多くの人々が利用するオフィスビルや

集合住宅などのビル建築は、安全性や快適さ、

利便性に対して、より高い性能を求められ、

新築から改装まで幅広く高品質な商品を

提供しております。


 

住宅建材

 住まいが大切な財産として

長く受け継がれるよう、「人にやさしい」

「地球にやさしい」「安全・安心」を

コンセプトに商品をご提案いたします。

 お客様の様々なニーズに応えるため

ユニバーサルデザイン商品や、

強靭性・断熱性を向上させた商品などで

快適な居住空間を創造いたします。


 

エクステリア建材

 「青空の下 わくわくを 楽しもう!」
 空の下で光や風に包まれて過ごす豊かな

空間提案や、外部空間を多彩にアレンジできる

多機能的商品など、幅広いデザインと機能を

兼ね備えた魅力ある商品で、皆様に幸せと笑顔、

わくわくをお届けいたします。


 

 

 


素材をカタチにする』素材の無限の可能性を追求し、快適な環境づくりに貢献

 『アルミニウム』と『マグネシウム』素材・押出形材に
おける設計・試作・製造・デリバリーサービスまでの
トータルソリューションを提供しております。
 製品や物件の企画・設計段階から参画し、
お客様に寄り添い、最適なご提案をいたします。


 

 


人に快適な商業空間を創造するスペースクリエーター

 ショッピングセンター、コンビニエンスストア

ラッグストアなどの専門店、商業施設及び企業向けに、

品陳列什器、カウンター、ショーケースや内装仕上

工事、看板・サイン等の屋外広告物、店舗・関連設備の
ンテナンスサービスを提供しております。
 お客様にとって価値ある快適空間を創造するために、
売れる」店舗づくりのご提案から、
計・製作・施工・メンテナンスまで
ータルにサポートいたします。


 

 

 



ローバルサプライヤーとして高付加価値製品を追求

 欧州・タイ・中国にある海外拠点において、
ルミニウムの鋳造・押出・加工を行っております。
 日本・欧州のハイレベルな技術を他地域へ展開し、
ローバルサプライヤーとして高付加価値製品を

提供いたします。


 

 

 


続的な成長に向けて新しいビジネスモデルを構築

さらなる事業機会の創出を目的にオープンイノベーションの取り組みを強化し、より多くの異業種と連携を図ることで企業価値向上につながる新たなビジネスモデルの構築を目指します。

 

植物工場事業

 植物工場プラントメーカーとして、業界トップの生産能力を

持った栽培設備と圧倒的な栽培技術力、衛生管理や生産管理などの

工場運営ノウハウ、ネットワークを生かした販路紹介で、

不採算要因を取り除いた植物工場運営を支援いたします。


 

 

 

(5) 当社グループの将来戦略

①VISION2030 ~当社グループ企業としての持続的成長に向けて~
 当社グループは、2021年7月に長期ビジョン「VISION2030(2031年5月期)」を定めております。


1つ目は、
  サステナブルで豊かな暮らしに貢献
  ~環境に配慮した、安心で快適な社会の実現へ~

についてです。

 

環境にやさしく」、「安心な社会へ」、「暮らしを快適に」を軸とし、各事業活動を通じて魅力ある価値を創造してまいります

 

つ目は

 多角化した経営

 ~バランスの取れた事業ポートフォリオへ~

ついてです

 

建材事業を主力としてきた当社グループにとって、国内建設市場の長期的な縮小は大きな課題であり、将来的な事業環境変化に対応するためには、建材事業は引き続き中核事業として収益力向上を図るとともに、新たな成長分野を創出していく必要があります。このような事業構造の中で、2015年3月には、国際事業のM&Aにより、国内外のマテリアル事業を強化し、商業施設事業では、事業承継による規模拡大を図ってまいりました。

今後もさらに領域拡大を進め、建材事業に偏らない事業構成により、市場の変化に柔軟に対応できる経営基盤を構築し、持続可能な企業を目指すため、成長領域の事業拡大と安定収益基盤の強化に取り組み、持続的成長に向けた新たな事業ポートフォリオへ変革してまいります。

 

 

事業の具体的な方向性は以下のとおりであります

 

a.建材事業につい

今後、国内市場縮小が見込まれるため、市場競争力を高め、安定的な利益体質の構築を進めてまいります。

具体的には、市場変化に合わせた効率的な事業運営と、建材の中でも強い領域へ注力し、市場地位の維持向上を図ります。ビル・住宅部門においては、堅調な推移が予測される改装・リフォーム市場への対応強化に取り組み、引き続き収益改善に努めてまいります。エクステリア部門においては、事業ブランドコンセプト「ワンダーエクステリア」に基づいて、お客様に“わくわく”していただける商品提案や様々な施策を推進するなど、更なる拡販に向けて取り組んでまいります。また、既存事業の近接領域の開拓も進めてまいります。

 

b.マテリアル事業・国際事業について

マテリアル事業では、国際事業と連携し、国内・海外を含め輸送分野を中心としたグローバルシナジーを創出し、将来の中核事業の1つとして事業領域の拡大に努めてまいります。

具体的には、国際事業の取扱製品は海外でのマテリアル領域が主体であり、国内でのマテリアル領域と一体的な事業運営を図り、特に輸送分野における自動車のアルミ化・EV化需要の拡大に対して、自動車メーカーなどグローバルプレイヤー向けに部品・材料を供給できる体制を強化してまいります。

国際事業では、収益貢献する事業への変革を進め、欧州・タイ・中国の生産拠点を生かし、輸送分野における自動車のアルミ化・EV化需要の取り込みを中心に、事業成長を目指してまいります。

 

c.商業施設事業について

業界内での高いポジションを生かし、事業領域拡大を行ってまいります。

具体的には、小売業が新規出店から改装にシフトしていることや、人手不足を背景とした省人・省力化需要が高まっていることから、これらの変化によって生まれる需要の獲得を進めるとともに、小売店舗への総合提案化やサービス領域の拡大により市場拡張を図り、更なる事業成長を目指してまいります。

 

d.領域拡大について

植物工場事業においては、2017年4月より大和ハウス工業株式会社様と共同開発を進めてきた植物工場システム「agri-cube ID(アグリキューブ・アイディー)」を2019年10月1日より販売しております。当社は栽培技術・栽培サポートの提供を行っております。今後も企業様の新規事業創出提案、遊休不動産活用提案、自治体・農業生産法人の新たな農業事業創出提案などを行ってまいります。

植物工場市場は将来の成長が期待されていることから、引き続き事業拡大に向けた製品開発や弊社独自の営業活動も進めてまいります。

さらに、「高齢化」や「インフラ整備」などの社会的課題に対応する新規事業開拓や、既存事業の近接領域の拡大を進めてまいります。

 

e.全事業について

・サステナビリティ

(気候変動対応)

当社では、持続可能な社会への貢献を通じて企業の価値を高めるため、脱炭素社会の実現に向けて地球温暖化対策への継続的な活動を推進しております。自社の事業活動に伴う温室効果ガス排出量削減について、2023年に対象を当社グループ全体に拡大し、直接・間接的に排出される温室効果ガス削減の目標(Scope1・Scope2)を再設定し、2024年は、事業活動の上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス削減の目標(Scope3)を設定いたしました。世界規模のリスクである気候変動問題に対し、グローバルに事業を行う当社は、温室効果ガス排出量削減の目標設定を国外に広げ、グループ全体で気候変動対策に臨んでまいります。

 

 

(アルミリサイクルの推進)

脱炭素化の流れが加速し、使用したアルミニウムを素材として再利用する循環型サプライチェーン構築へのお客様からの要望が高まっており、アルミニウムの資源循環は従来よりも重要性が増しております。加えて、経済産業省策定の「成長志向型の資源自立経済戦略」の中に、国内でのリサイクルアルミの需要拡大を目指すことが提言されております。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の線形経済から、限られた資源の創出・利活用と価値売りを中心とする循環経済への転換が求められております。当社では、アルミニウムの資源循環に注力することにより、温室効果ガス排出量削減に貢献し、循環経済への移行を進めてまいります。

 

(人的資本対応)

人的資本は、当社グループにとって、サステナビリティの重要なテーマの1つとして捉えております。当社グループの持続的な成長を支え、お客様へ喜びと満足を提供するために、新しい価値を創造できる人材の育成とともに、安全で健全な働きやすい職場づくりを目指しております。また、人材の多様性は不可欠であり、女性社員の活躍推進に加え、高齢者、障がい者、外国人、キャリア採用者など、多様な人材の雇用拡大を図るとともに、それぞれの職場での活躍に向けた取り組みに注力してまいります。多様性や人権を尊重し人材育成を推進することで活力ある企業風土を創生し、豊かな暮らしを実現する原動力となる「人財」を未来につないでまいります。

 

・デジタル化への対応

中長期の事業環境変化に対応し、競争優位性を高めるためには、デジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデル、バリューチェーンの変革とともに、業務プロセス、組織、制度の変革をしていくことが必要であると考えており、中長期施策に応じたDX(デジタルトランスフォーメーション)構想を策定し、順次取り組みを具現化して推進しております。

 

②前中期経営計画(2022年5月期~2024年5月期)の総括

当社グループは、長期ビジョン「VISION2030」の実現に向けた第1段階として、2024年5月期を最終年度とする中期経営計画(2022年5月期~2024年5月期)を推進してまいりました。

『収益面での健全経営を確立し、安定的に成長する企業グループへ』を基本方針として、

1. 国際事業の改革完遂

2. 「強みへのフォーカス」と「効率化の追求」により、変化する国内市場へ対応

3. 長期成長への仕込み「サステナビリティの取り組み強化」・「新たな強みの創出」・「領域拡大」

を重点施策として取り組み、目標達成に向け進めてまいりましたが、コロナ禍や国際情勢の不安定さに伴う外部環境変化や予測を上回る地金価格などの高騰によって収益改善が図れず、最終年度では、

 売上高3,300億円、営業利益90億円、営業利益率2.7%の目標に対して、

 売上高3,530億円、営業利益38億円、営業利益率1.1%

となり、利益目標に対して大幅な未達となりました。

 

<施策状況>

1. 国際事業の改革完遂

施策

 

内容

結果

収益の安定化

国際事業

STEP-G(連結子会社であるSankyo Tateyama Europe BV及びその子会社)の機能集約・高付加価値化など事業構造改革推進

STEP-G:固定費削減、製品ミックス改善、収益改善などの事業構造改革の推進により損益分岐点が改善するも、欧州EV用部材の販売量減少などもあり、黒字転換には至らず

タイでの生産能力増強・市場拡大による収益力強化

タイでのアルミ押出ライン増設による生産能力増強

 

 

 

2.「強みへのフォーカス」と「効率化の追求」により、変化する国内市場へ対応

施策

 

内容

結果

強みへのフォーカス

建材事業

収益力の高い事業分野への資源シフト

収益性の高い事業分野での販売量減少

マテリアル事業

建材を中心とした既存領域での物量確保、お客様への価値提供によるビジネス拡大

建材分野、一般機械分野の需要が減少

商業施設事業

主要顧客を通じた受注領域拡大、隣接領域へのアプローチ強化

店舗の新規出店や改装の需要の取り込み

省人・省力化需要に対応した商材の投入

効率化の追求

全社

業務改革の推進と省人化・自動化

支店集約、バックオフィス拡大、生産自動化・省人化、生産・工場・物流拠点の再編を実施

デジタル化を活用した新たな働き方の構築

デジタル化推進に向け、デジタル人材育成やAI活用へのトライ

 

 

3. 長期成長への仕込み

 「サステナビリティの取り組み強化」・「新たな強みの創出」・「領域拡大」

施策

 

内容

結果

サステナビリティ取り組み強化

全社

環境・社会的課題に関する取り組み推進

2050年カーボンニュートラルに向けた長期ビジョン「サステナビリティビジョン2050」の外部公表

2021年12月TCFDへの賛同表明、気候変動に関するシナリオ分析を策定し、リスクと機会を特定

アルミリサイクルの使用促進、リサイクル技術構築の取り組み

2021年6月、サステナビリティ推進部・サステナビリティ政策委員会の設置

2021年6月、サステナビリティ推進部を設置、サステナビリティ政策委員会などサステナビリティ推進体制を構築

新たな強みの創出

建材事業

改装・リフォーム強化(差別化商品投入、施工体制強化、領域拡大)など

改装・リフォームは補助金政策により需要増。リフォーム玄関ドアのラインナップ充実

マテリアル事業

優位性の確立による輸送事業の拡大、環境・リサイクルニーズに対し、置換需要・用途開拓による市場拡大

EV市場に向けたアルミ押出ラインの増設着手

国立大学法人富山大学と共同でアルミリサイクル及び押出加工の革新研究を行うための共同研究講座を設置

商業施設事業

直販の強みと機会を生かした新規商材の具現化

隣接領域への事業拡大へのチャレンジ

領域拡大

新規事業

コア技術活用による新たな用途開発・事業展開

次世代事業の創出として産学連携によるテーマアップ活動を推進

植物工場事業での共同事業先との連携強化による実績づくり、販売体制の強化、栽培技術の構築

植物工場事業 栽培技術の高度化、Global GAP認証取得するも、大型案件2件、小型案件に留まる

協業先との連携強化による事業化を推進

介護リフォーム、首都高恒久足場は事業部へ引継ぎ。事業領域拡大のため異業種企業との交流を開始

樹脂サッシ、インテリア建材の相互供給

 

 

 

<経営指標>

 

 

79期目標

2024/5期

79期実績

2024/5期

売上高

3,300億円

3,530億円

営業利益(率)

90億円(2.7%)

38億円(1.1%)

自己資本比率

33%以上

33.2%

配当

安定配当を基本としつつ

業績・内部留保の充実と勘案

1株当たり20円

ROA

(純利益ベース)

1.9%

△0.4%

ROE

(純利益ベース)

5.9%

△1.1%

 

(注) 2024年5月期(第79期)目標は、2021年7月公表時のVISION2030及び中期経営

   計画(2022年5月期~2024年5月期)の経営指標の数値であります。

 

 

③中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)について

中期経営計画最終年度となる2024年5月期の業績結果と、2023年3月東京証券取引所より要請のあった「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」での現状分析より、当社においては『低収益事業の健全化』と『成長期待の信頼獲得』を課題認識しております。これらを踏まえ、新たな中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)は、「VISION2030」の実現を目指し収益基盤再構築と成長投資を優先する投資フェーズと位置づけ、「安定収益を確保し成長軌道に乗せる」を基本方針として、収益構造改革と成長への投資に取り組んでまいります。


事業の具体的な方向性は以下のとおりであります

 

a.建材事業につい

今後、建築コストの上昇もあり、新設住宅着工戸数の減少は加速することが見込まれるなど国内建設市場の縮小に対し、市場縮小を見据えた抜本的な構造改革と質的変革による収益基盤を再構築するとともに、環境に配慮した商品の開発など戦略領域での積極的なチャレンジによる安定した規模での収益率改善を目指します。一方、改装・リフォーム市場は、市場成長が見込まれることから引き続き対応強化に取り組み、収益改善に努めてまいります。

 

 

b.マテリアル事業について

国内の事業環境では、一般機械の需要が回復しており、またインフラのニーズも増加していると予測されております。さらに、自動車の事業環境では、軽量でリサイクルに適したアルミ部品の需要が拡大していくと見込まれております。

そのような事業環境の中、建材、一般機械などの既存領域での収益基盤を確立するとともに、将来の成長に向けた自動車分野拡大のための体制構築と、新湊東工場への大型押出機導入などに投資してまいります。

さらに、国際事業と技術連携をはじめとしたシナジーを創出し、自動車のアルミ化・EV化におけるグローバル供給体制を構築することにより、将来の中核事業の1つとして事業領域の拡大に努めてまいります。

 

c.商業施設事業について

国内においては、円安によるインバウンド需要に伴う小売業販売額の増加、既存店強化の改装や人手不足とエネルギー価格高騰を背景とした省人・省力化投資が継続すると予測しております。さらに、海外においては中国経済の先行き懸念とASEAN地域の堅調な経済成長が見込まれております。

そのような環境の中で、業界トップクラスのシェア、顧客要望を具現化できる営業対応力と商品開発力、全国一律のサービスを提供できるネットワークによって時代と共に進化する小売業市場に対応したソリューション型事業を目指してまいります。また、新たな領域への展開や調達・販売を中心に海外展開にも力を入れてまいります。

 

d.国際事業について

経済成長率については、欧州では、エネルギー価格高騰の緩和やインフレ率の低下により回復が見込まれるものの、中国では不動産業界の不振により鈍化、タイにおいても2025年には経済成長のペースが落ちると予測をしております。自動車の事業環境は、欧州・中国・タイとも自動車生産台数が緩やかに増加する見込みではありますが、欧州については、依然として厳しい事業環境が続くと予測しております。

そのような環境の中で、欧州は、自動車・航空分野などの付加価値領域への注力や、自動車依存度を抑えたポートフォリオの変革による安定化などにより、国際事業セグメント全体で確実に収益を確保できる体質に変革し、収益貢献事業へ進化いたします。また、タイにおいては、今後、脱中国によるASEANへの生産移転が拡大すると見込まれるため、積極的な事業展開を図ってまいります。

 

e.領域拡大について

新規事業分野では、社会的課題をテーマに企業価値向上に取り組むため、異業種企業との関係性を構築し、潜在的価値・需要を創出してまいります。また、植物工場分野では、収益事業化を実現し、新規事業領域の構築を目指してまいります。具体的には、大和ハウス工業株式会社様と大型案件の協業を継続するとともに、植物工場市場は将来の成長が期待されていることから、引き続き事業拡大に向けて、当社独自営業による小型案件の受注を推進し、事業の収益化を図るとともに、新たな収益源を構築してまいります。

 

中期経営計画の目標達成には、各事業の施策だけでなく、財務戦略、サステナビリティ(気候変動対応、アルミリサイクルの推進、人的資本対応)やデジタル化への対応が不可欠であります。

 

f.財務戦略について

財務の健全性を確保しつつ、成長事業への積極的な投資と株主還元の充実を両立してまいります。その中で、株主還元への充実として、従来の配当方針である安定配当を継続しつつ、還元の考え方として、配当金額には年間配当1株当たり25円の下限を設け、積極的に株主還元を強化してまいります。

 

 

g.サステナビリティについて

・アルミリサイクルの推進

国内のリサイクルアルミの需要拡大に向け、アルミリサイクル技術の高度化やリサイクル向上に向けた生産体制の構築に取り組んでまいります。具体的には、スクラップの安定的確保やアップグレードリサイクル技術により、アルミリサイクル率の向上を行い、循環経済への移行を進めてまいります。

建材向けアルミリサイクル率:2022年度実績 52% → 2030年度目標 80%

 

・人的資本への対応

人材戦略において、人的資本経営強化への基盤整備を進めてまいります。具体的には、人的資本への投資を行い、人材育成、人材確保・定着、多様な人材の活躍、健康・安全・働き方に力を入れ、従業員のエンゲージメント向上を行います。将来的には、社員一人ひとりが自ら成長し、自らの価値を高められる環境をつくり、労働人口減少時代に選ばれる、持続的成長可能な魅力ある会社の構築に向け、人的資本経営強化への基盤整備に取り組んでまいります。

なお、詳細については、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本 ①戦略」に記載のとおりであります。

 

h.デジタル化への対応について

デジタル化への対応として、事業戦略から「お客様とのつながりを強化」、「事業の革新を目指していく」、「働く基盤をつくる(働き方の改善)」の3つのDX戦略を策定し、事業の革新や働き方の改善を実施し、デジタル化推進による競争優位性を高め、業務効率化を実現することを目指してまいります。

そのために、高い付加価値を生み出し、事業のビジネスを変革する人材の育成、組織の柔軟性とイノベーション力の強化、そして安定したデジタル基盤の整備に注力してまいります。

 

これらの取り組みにより、最終年度となる2027年5月期(82期)には、売上高3,800億円、営業利益110億円、営業利益率2.9%、ROE6.0%、1株当たり25円を下限とする安定的かつ継続的な配当を目指してまいります。

 

<経営指標>

 

 

 

79期実績

2024/5期

80期計画

2025/5期

81期目標

2026/5期

82期目標

2027/5期

業績

売上高

3,530億円

3,600億円

3,700億円

3,800億円

営業利益/率

38億円/1.1%

40億円/1.1%

75億円/2.0%

110億円/2.9%

資本収益性

自己資本比率

33.2%

30%

30%

30%

ROA

△0.4%

0.5%

1.3%

2.0%

ROE

△1.1%

1.7%

4.0%

6.0%

D/Eレシオ

81.3%

100%

115%

115%

株主還元

配当

1株当たり

20円

1株当たり25円を下限とする

安定的かつ継続的な配当

配当性向

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 当社グループが長期的に目指す方向

当社グループは、従来よりCSRやSDGsに取り組み、環境や社会との調和を図ってまいりました。さらにそのことが強く求められる時代となっております。当社グループは、創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づいた経営理念のもと、健全な企業活動を通じて社会に貢献していくことが私たちの使命であると考えており、持続可能な社会を実現する取り組みとして、2021年に『サステナビリティビジョン2050 Life with Green Technology~「環境技術でひらく、持続可能で豊かな暮らし」を実現する企業グループへ~』を策定し、サステナビリティの活動をスタートさせております。

 

①ガバナンス

サステナビリティ推進体制として、気候変動対応などグループ全体に関わるサステナビリティ政策の意思決定を行うため、業務執行取締役からなるサステナビリティ政策委員会を設置しております。審議結果の内、グループ方針、マテリアリティ及び指標・目標、中期活動計画などの重要事項については、取締役会に提議し、決議を得ております。

また、サステナビリティ政策委員会で策定された方針・中期活動計画に基づき、具体的施策を計画し推進するサステナビリティ推進委員会を設置しており、推進委員会の下には、専門部会を設けて施策を実施しております。

サステナビリティ政策委員会及びサステナビリティ推進委員会は、四半期に一度の定期開催に加え、必要に応じて開催し、政策の意思決定を迅速に行う体制としております。

 


 

当連結会計年度のサステナビリティ政策委員会の開催実績は、以下のとおりであります。

 

<サステナビリティ政策委員会 当連結会計年度の開催実績と議題>

開催日

議題

2023年6月21日

1) 温室効果ガス排出量(Scope1・2)三協立山グループの削減目標設定について

 

2) 省エネ法 改正点と取り組み報告

 

3) 「CO2削減貢献量」の公表検討

 

4) サステナビリティに関するイニシアチブ調査・検討報告

2023年9月26日

1) 専門部会からの報告(温室効果ガス対策部会、環境配慮設計部会、樹脂資源循環ワーキング、梱包資材ワーキング、TCFD部会)

 

2) 重要テーマの中期評価及び次期中期計画の報告

 

3) 「デコ活」取り組み報告

2023年11月27日

1) 重要テーマの中期評価及び次期中期計画について

 

2) 温室効果ガス排出量(Scope3)及びアルミリサイクルについて

2024年3月26日

1) アルミリサイクル目標設定について

 

2) 温室効果ガス排出量(Scope3) 進捗報告

 

3) マテリアリティの見直しについて

 

4) 専門部会からの報告(サプライチェーンマネジメント部会、化学物質部会、廃棄物ワーキング)

2024年5月24日

1) マテリアリティ 次期中期計画について

 

2) 温室効果ガス排出量(Scope3) 三協立山グループの削減目標設定について

 

3) サステナビリティに関するイニシアチブ調査・検討報告

 

4) 専門部会からの報告(TCFD部会)

 

 

②戦略

当社グループは、長期的に目指す方向として『サステナビリティビジョン2050 Life with Green Technology~「環境技術でひらく、持続可能で豊かな暮らし」を実現する企業グループへ~』を掲げ、「カーボンニュートラルへの挑戦」「資源の循環」「人財を未来へつなぐ」を軸に、環境・社会課題の解決に貢献しながら、企業価値を高める取り組みを進めております。

 


 

マテリアリティの特定プロセス

当社グループのマテリアリティは、サステナビリティビジョン2050に基づき、持続可能な社会への貢献を通じて企業価値を高めていくために取り組むべき課題と定め、2030年を目標年として設定しております。

マテリアリティの特定は、Step1~4のプロセスで行います。Step1では、事業活動を行ううえで必要な事項や、ステークホルダーから要求されている項目をリストアップし、当社グループの経営理念や経営計画、サステナビリティに関する国内外のガイドラインと照らし合わせて重要性の高い項目を特定いたします。Step2では、マテリアリティマップを用いてステークホルダー視点での重要度と、当社グループにとっての重要度を、双方の視点で分析・評価し、優先順位付けを行います。Step3では、サステナビリティ推進委員会で審議を行い、Step4で、サステナビリティ政策委員会での審議を経て、取締役会で決定いたします。

また、当社グループに影響の及ぶ可能性がある事柄や社会から求められる事項の変化を捉えていくために、継続してマテリアリティの見直しを行ってまいります。

 


 

マテリアリティ

2021年5月期に特定したマテリアリティは、課題の分野をESGの観点で「環境への配慮」「従業員のエンゲージメント向上」「公正・誠実なビジネス」、そして事業活動の基盤として「事業活動の持続的な強化」に分類しております。

当連結会計年度における見直しでは、「環境への配慮」において、当社グループの事業が生物多様性に与える影響の確認、マテリアリティ・資源の有効活用での取り組みとして水資源保全に関する事項、「公正・誠実なビジネス」において、人権に関する事項を審議し、取り組みに追加いたしました。

 

課題の分野

マテリアリティ

主な取り組み

(E)環境への配慮

気候変動対応

温室効果ガス排出量の削減

温室効果ガスを削減する「気候変動対応」、事業の主原料であるアルミニウムをはじめとする「資源の有効活用」に取り組み、自然資源利用と環境負荷において生態系の健全性を損なわないこと(生物多様性)に配慮したうえで活動を行っております。

 

製品使用時CO2排出量の削減

資源の有効活用

循環アルミの使用を促進

 

樹脂の再資源化を推進

 

廃棄物削減活動の継続

 

水資源の保全

(S)従業員のエンゲージメント向上

働きやすい職場環境づくり

社員の意見を吸い上げる仕組みづくり

健康と安全に配慮した職場、多様性への対応によって、ポジティブに仕事に取り組める環境を醸成し、業績や企業価値の向上につなげます。

健康と安全

健康・安全な職場環境の整備

多様性と人材育成

創造性に富む人材の確保・育成

 

女性社員の活躍推進

 

シニア人材の活躍推進

(S)公正・誠実なビジネス

公正な取引・汚職防止

法令・コンプライアンスを遵守する文化の定着

法令遵守だけでなく、社会的な規範にも従い、公正・誠実に業務を行うことをビジネスの基本姿勢といたします。

サプライチェーンマネジメント

グリーン調達の取り組み

CSR調達の推進

人権デューデリジェンスの取り組み

 

 

 

 

事業活動の基盤

(G)事業活動の持続的な強化

コーポレート・ガバナンス

内部統制の強化

三協立山グループの事業活動の基盤となるテーマを、継続して強化してまいります。

サステナビリティ政策の推進

お客様満足の追求

お客様のCSR方針に応える商品・サービスの提供

 

お取引先様との協業による品質向上

製品の安全確保

製品含有有害化学物質の管理と削減

 

 

 

<強化する取り組み>

当連結会計年度は、当社グループの事業への影響が大きい、気候変動対応、資源の有効活用について2030年までの目標値を定め、取り組みを強化しております。

あらゆる産業で脱炭素への取り組みが推進されており、当社も事業での直接・間接的及び当社グループの事業活動に関連した温室効果ガスの排出量削減を進めております。当社の温室効果ガス排出量は、製品の主原料であるアルミニウムに関する温室効果ガス(Scope3カテゴリー1)が多く、グループ全体の90%超(2022年度実績)になっております。アルミニウムは新地金の製造に多くのエネルギーを使用しますが、アルミニウムをリサイクルする場合は、新地金から製造する場合に比べ、わずかなエネルギーで再生することができ、これが温室効果ガス削減につながります。当社グループでは、これまで資源循環の考え方からリサイクル材を活用しており、さらにこれを強化することで、温室効果ガス削減にも寄与してまいります。

また、建築・建設業界では、「建物の建設に際して発生する温室効果ガス」を削減するために、建物を構成する建築資材に対して、製品製造時の温室効果ガス排出量を明示することや削減することが求められております。このような建築・建設業界の脱炭素の動きに対応すべく、当社では2030年度に建材向けアルミリサイクル率80%とする目標を定め、温室効果ガス削減に努めてまいります。さらに、ニーズに対応する調達や生産体制、技術の整備によってリサイクル率100%を目指し、社会全体の温室効果ガス削減に貢献してまいります。

 

③リスク管理

マテリアリティは、サステナビリティ推進委員会に設置した専門部会において施策の実施、進捗状況の管理を行っております。専門部会で把握した発生し得るリスク等については、サステナビリティ推進委員会、サステナビリティ政策委員会へ報告され、重要と判断されたリスクについては、取締役会へ報告しております。特に、気候変動への対応の詳細については、「(2) 気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)③リスク管理」に記載のとおりであります。

また、当社グループでは、リスク管理の取り組み全体の方針・方向性及びリスクテーマ共通の仕組みの審議等を内部統制委員会で行っております。マテリアリティに関して特定したリスクについては、発生頻度、影響度から内部統制委員会へ報告すべきテーマを特定し、継続して報告しております。

なお、当社グループのコーポレート・ガバナンス体制図は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 <コーポレート・ガバナンス体制図>」に記載のとおりであります。

 

 

④指標と目標

当連結会計年度は、環境への配慮に関する指標・目標について、対象範囲の拡大や追加を行いました。当社グループの事業活動によって直接・間接的に排出される温室効果ガス(Scope1・2)及び事業活動の上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の海外子会社を含むグループ全体の削減目標を定めました。

また、循環経済への移行を促進するため、建材向けアルミリサイクル率の目標を新たに設定いたしました。アルミニウムは、調達や製造時に多くのエネルギーを使用し温室効果ガスを多く排出しますが、アルミリサイクルを進めることで、このエネルギーを抑制し、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を大きく削減することに繋がります。

 

課題の分野

マテリアリティ

範囲

指標及び2030年度目標

実績

環境への配慮

気候変動対応

グループ

・温室効果ガス排出量(Scope1・2):50%削減

2017年度比として、三協立山グループの事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1・2)の削減目標。

前連結

会計年度

(注)1

22%削減

グループ

・温室効果ガス排出量(Scope3):25%削減

2022年度比として、三協立山グループの事業活動の上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減目標。

資源の有効活用

提出会社

・建材向けアルミリサイクル率:80%(注)2

国内鋳造所で製造される建材向けアルミニウムを対象としたリサイクル材の使用比率。

前連結

会計年度

(注)1

52%

従業員のエンゲージメント向上

多様性と

人材育成

提出会社

・女性管理職比率:10%以上

2030年度までに課長級以上を10%以上とする。

当連結

会計年度

2.3%

 

(注)1.当連結会計年度の各実績は集計中のため、前連結会計年度の実績を記載しております。当連結会計年度の

     実績については、「三協立山株式会社統合報告書 2024」に記載予定であります。

   2.対象とする拠点は、国内鋳造拠点です。社内の製造工程で生じた端材を含みます。

 

(2) 気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)

気候変動は、当社グループにとって、サステナビリティの重要なテーマの1つとして捉えております。2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、気候変動に関するリスクと機会が、事業活動、経営活動、財務計画に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、情報を開示しております。

初めて分析を行った2022年に建材事業、2年目の2023年にマテリアル事業・商業施設事業、3年目の当連結会計年度に国際事業へと分析の範囲を広げ、事業に関する気候関連リスクと機会を特定しております。

 

①ガバナンス

ガバナンスについては、サステナビリティ推進体制に組み込まれております。2022年12月に、サステナビリティ推進委員会の専門部会としてTCFD部会を設置し、気候変動による事業へのリスクや、成長機会、重要課題を取締役会へ報告するための体制を強化しております。

サステナビリティ推進体制について、詳細は「(1)当社グループが長期的に目指す方向 ①ガバナンス <サステナビリティ推進体制>」に記載のとおりであります。

 

②戦略

気候変動によるリスクと機会の特定にあたり、建材事業、マテリアル事業、商業施設事業、国際事業の4事業のバリューチェーン全体を対象として、TCFDフレームワークに沿って整理し、重要性の評価を行いました。次に国際機関などが公表している外部シナリオをもとに、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つの将来世界観を描き、2030年時点における考慮すべき外部環境変化のシナリオを策定し、リスクと機会を特定いたしました。また、発生時期、事業収益にもたらす影響の大きさにより、大中小の3段階で分類いたしました。

 

■1.5℃シナリオ

環境政策及び規制が強化され、カーボンプライシングが導入される。再生可能エネルギー導入や低炭素技術、環境配慮商品供給への投資が要求されるため、エネルギー調達コストや原材料調達コストが増大する。一方、市場では脱炭素関連商材の需要が増加し、環境配慮商品へのシフトが大きく進む。再エネ、省エネに関する技術革新も進展する。

参考シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)ネットゼロ排出シナリオ

 

 

リスク

機会

インパクト

事業に及ぼす影響

発生

時期

影響度

建材

事業

マテリアル

事業

商業

施設

事業

国際

事業

移行

リスク

素税の導入

素税の導入による

操業コスト増加

中~

長期

大(注)1

材料への価格転嫁

ルミ地金の

調達コスト増加

中~

長期

大(注)1

ロカーボン対応の

建築基準法の施行

ーボンフットプリント

の削減要求を充足できず

販売機会を損失

中~

長期

サイクルアルミの

需要の増加

解炉ライン構想の

見直し費用の発生

中~

長期

機会

熱性向上のための

リフォーム需要の増加

断熱商品の需要の増加

短~

長期

サイクルアルミの

需要の増加

サイクルアルミを

使用した商品の需要の増加

中~

長期

(注)2

(注)2

 

発生時期:短期2022年~2024年(中期経営計画)、中期2025年~2030年(VISION2030)、

     長期2031年~2050年(サステナビリティビジョン2050)

(注)1.影響度は4つの報告セグメントを合わせて記載しております。

   2.定量化に必要なパラメータ不足により、財務影響は非算出のため影響度は記載しておりません。

 

■4℃シナリオ

環境政策及び規制の強化は先延ばしされ、温室効果ガス排出量の削減は進まず、カーボンプライシングも導入されない。そのため、地球温暖化がさらに進行することで、異常気象による台風や洪水などの深刻化・激甚化が進み、工場やサプライチェーンの維持コストが増加する。また、ナショナリズムが台頭し、地政学リスクが増加する。一方、激甚災害への備えが必要なことから、防災商品の需要が増加する。

参考シナリオ:現行政策シナリオ(CPS)、SSP3

 

 

リスク

機会

インパクト

事業に及ぼす影響

発生

時期

影響度

建材

事業

マテリアル

事業

商業

施設

事業

国際

事業

物理

リスク

常気象の深刻化・激甚化(水害の発生)

社工場被災による

売上機会の喪失

短~

長期

大(注)

候変動に起因する感染症の発生・増加

染症対策による国内と

海外のサプライチェーン

寸断

短~

長期

機会

常気象の深刻化・激甚化

防災関連商材の需要の増加

短~

長期

 

発生時期:短期2022年~2024年(中期経営計画)、中期2025年~2030年(VISION2030)、

     長期2031年~2050年(サステナビリティビジョン2050)

(注)影響度は4つの報告セグメントを合わせて記載しております。

 

<影響度の大きいリスクと機会への対応状況>

a.温室効果ガス排出量削減の取り組み

当連結会計年度は、当社グループ全体のScope1・2・3を算定することで、製品の主原料であるアルミニウムに関する温室効果ガスの排出量が多いことを把握いたしました。当社グループの温室効果ガス全排出量に占めるScope3の割合は90%超(2022年度実績)で、その多くが製品の主原料であるアルミニウムに関するものとなっております。アルミニウムは、調達や製造時に多くのエネルギーを使用し温室効果ガスを多く排出するため、リサイクルを進めることで、このエネルギーを抑制することができます。このことから建材向けアルミリサイクル率を高める目標を当連結会計年度に決定しており、温室効果ガスの排出削減と関連性が高いアルミリサイクルを進めることで、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減につなげてまいります。

また、日本やドイツの拠点でのCO2フリー電力の導入やタイの工場への太陽光発電の導入、照明のLED化などの設備更新、バッテリー式フォークリフトの導入などの具体的な削減計画を策定し、実行しております。日本国内においては、2022年6月に4工場、2023年6月に2工場をCO2フリー電力に切り替えており、6工場で年間約14,000トンの温室効果ガス排出量を削減しております。2024年6月には、高岡工場と奈呉工場の2工場をCO2フリー電力へ切り替えるなど、今後も温室効果ガス削減施策を実施してまいります。

 

 

b.リサイクルアルミの使用促進の取り組み

循環経済への移行を促進するため、リサイクルアルミの使用促進に取り組んでおり、当連結会計年度には、2030年度に建材向けアルミリサイクル率80%とする目標を設定いたしました。主要原材料であるアルミニウムのスクラップを再利用し、リサイクルを促進することで、資源の循環だけでなく、当社グループの温室効果ガス排出量(Scope3カテゴリー1)の削減と、低炭素商品の需要に対応してまいります。

また、リサイクル率向上の施策として、「スクラップの安定確保」「溶解能力の強化」「技術開発」に取り組んでおります。

・スクラップの安定確保

取引先やサプライチェーンとの連携した取り組みを進め、アルミスクラップの安定した調達を目指してまいります。

・溶解設備の増強

低炭素材商品のニーズの高まりを受け、リサイクル率の高い商品の提供を実現するため、当連結会計年度にスクラップ溶解炉の増強に20億円の設備投資を決定し、リサイクル材の使用促進を進めてまいります。

・技術開発

2022年8月に、国立大学法人富山大学等と共同で先進軽金属材料国際研究機構(注)に共同研究講座を設置いたしました。アルミスクラップの不純物制御に関する研究や超高強度アルミ合金の押出加工・熱プロセスに関する研究等を行い、資源循環に欠かせないリサイクル技術の構築を進めてまいります。

(注)2021年に日本初の軽金属国際研究教育拠点の構築を目的に国立大学法人熊本大学と国立大学法人富

   山大学が連携し設置した研究機構。文部科学大臣から共同利用・共同研究拠点として認定。

 

③リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ推進委員会に設置されたTCFD部会のもと、関連部署が参加し、直接操業や上流、下流のバリューチェーンに関連する気候関連リスクと機会について、発生頻度、影響範囲等から分析を行い、対応策等を総合的に評価し、優先度合いを決定しております。このプロセスに基づき特定した重要度の高いリスクと機会については、年4回定期開催されるサステナビリティ推進委員会及びサステナビリティ政策委員会へ報告しております。両委員会で重要と判断されたリスク及び機会については、取締役会へ報告するとともに、TCFD部会を通じて関連部署へフィードバックしております。また、進捗は定期的にサステナビリティ推進委員会、サステナビリティ政策委員会に報告し、取り組みに対するモニタリングを行っております。

 

④指標と目標

当連結会計年度は、気候変動への対応に関連性の高い「Scope1・2」、「Scope3」、「アルミリサイクル率」について、指標と目標を定めました。

 

気候変動への対応 リスク及び機会に関する指標

目標値

リスク

Scope1・2 温室効果ガス排出量

2030年度 50%削減 (基準年2017年)

Scope3   温室効果ガス排出量

2030年度 25%削減 (基準年2022年)

機会

建材向けアルミリサイクル率

2030年度 80% (注)

 

  (注)対象とする拠点は、国内鋳造拠点。社内の製造工程で生じた端材を含む。

 

 

(3) 人的資本

人的資本は、当社グループにとってサステナビリティの重要なテーマの1つとして捉えております。新たな中期経営計画では、中長期の人材戦略の方向性を設定いたしました。社員一人ひとりが自ら成長し、自らの価値を高められる環境をつくり、労働人口減少時代に選ばれる、持続的成長可能な魅力ある会社の構築に向け、人的資本経営強化への基盤整備に取り組んでまいります。

 

①戦略

当社は、中長期の人材戦略に対し、必要なタレントの確保と人材総合力の最大限の発揮と働きやすさを基盤とした成長・やりがいを伴う自己実現の場を構築していくとともに、従業員のエンゲージメント向上にも取り組んでまいります。必要なタレントの確保と人材総合力の最大限の発揮では、収益性を高める最適な組織体制と人員配置、多様(女性、高齢者、障がい者、外国人、キャリア採用者)かつ優れたスキル・キャリア保有人材の獲得と定着、個々の多様な強み・個性を認め・生かす企業風土、自ら考え・学び・役割を創造・成果を創出する自律的人材に溢れた企業を構築してまいります。働きやすさを基盤とした成長・やりがいを伴う自己実現の場では、社員が望むキャリアビジョンの実現支援、安全と健康に配慮した職場環境、成長を後押しする教育体系などに取り組んでまいります。


 

人的資本経営強化の取り組みへの体制について、2021年にサステナビリティ推進委員会で設定した人材活躍部会では、中長期的な方向性と戦略の策定及び推進により、社員一人ひとりが尊重され多様な人材が活躍することを支援しております。また、女性の活躍促進や障がい者の雇用促進を含むダイバーシティ推進の専任部署では、具体的な計画策定と施策を実施しております。さらに、今回設定した中長期全般の取り組みに対しては専任部署を設け遂行してまいります。一方で、戦略的人員配置を目指すために、業務の効率化にも取り組んでおり、業務改革の推進と省人・自動化、デジタルを活用した新たな働き方を構築しております。

 

<人材育成方針>

人材育成については、当社グループの持続的な成長を支え、お客様へ喜びと満足を提供するために新しい価値を創造できる人材の育成を目指しており、各種研修のほか、通信教育受講の奨励や社内e-ラーニングの提供、公的免許・資格取得に対する報奨金支給等の自己啓発やキャリア形成支援を行っております。今後も、創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づいた経営理念に表されるように、「自ら成長する意欲」を持った社員に対し、知識・能力・技術レベルに応じた多彩な教育プログラムを通じて、スキルアップ支援を実施してまいります。

 

社内環境整備方針

当社は、社員一人ひとりが、お互いの「違い」を尊重し合い、それぞれの「個性」を生かしつつ能力を発揮し、企業に貢献できる環境づくりに取り組んでまいりましたが、更なる雇用環境の整備のための行動計画を定めております。

 

主な取り組みは以下のとおりであります。

マテリアリティ

当連結会計年度の取り組み

2024年度以降の取り組み

a.働きやすい職場環境づくり

社員の意見を吸い上げる仕組みづくり

・従業員エンゲージメント調査実施

・管理者研修実施

人材確保・定着

・従業員エンゲージメント向上活動強化

b.健康と安全

健康・安全な職場環境の整備

・健康診断及び二次受診率向上の取り組み

・女性健康セミナーの実施

・ウォーキング大会の実施

・VR動画を活用した危険感受性を高める教育

健康・安全・働き方

・健康経営への取り組み推進

・男性育児休業取得率向上

・労働環境、条件改善

・VR動画を活用した危険感受性教育の継続

c.多様性と人材育成

創造性に富む人材の確保・育成

・経営リーダー研修

・人材育成、能力開発の支援

人材育成

・次世代リーダー育成や管理職研修の充実

・デジタル人材育成

・グローバル人材育成のための制度設計や運用実施

多様な人材の活躍

・タレントマネジメントシステムの導入

女性社員の活躍推進

・管理職登用の推進

・女性社員向けキャリアアップセミナーの実施

・心理的安全性セミナーの実施

多様な人材の活躍

・社内の意識や組織風土の改革

・女性社員の積極的なキャリア選択への啓発と支援

シニア人材の活躍推進

・シニア世代の活躍に向けた処遇の改善

多様な人材の活躍

・シニア世代の活躍に向けた処遇や意欲向上

 

 

当連結会計年度の主な取り組み

a.働きやすい職場環境づくり

当社グループでは、毎年全従業員に対するエンゲージメント調査を実施し、現状分析と課題認識を行い、改善に繋げております。経営トップからの全社的取り組みの表明や、職場風土に与える影響が大きくチームづくりの要となる管理職向けの啓発教育を実施しております。また、各職場の管理職に『コンプライアンス・ハラスメントの未然防止と心得』等をテーマに研修会を行いました。

 

 

b.健康と安全

基本理念

従業員の安全と健康は、企業の存立の基盤をなすものであり、安全衛生の確保は、企業の社会的責任であります。当社グループでは、人間尊重を基本理念とし、「安全第一」と「健康保持増進」を基に全員参加で安全衛生活動と健康経営を展開しております。

 

・健康経営の推進

2019年10月に健康経営宣言を策定し、健康経営推進体制として、代表取締役社長を健康管理推進委員長とした「健康管理推進委員会」を設置し、施策の立案、実行、効果の検証を行っております。


 

・健康経営の取り組み

当社は、社員の健康を重要な経営基盤と考え、2019年10月に、従業員の心身の健康の保持・増進に取り組む姿勢を示す「健康経営宣言」を策定いたしました。多様な人材の誰もが働きやすい職場環境づくりを目指して、仕事と生活の両立を図るワークライフバランスを推進し、有給休暇の取得率向上や長時間労働の削減、業務効率化に取り組んでおります。

また、健康経営の推進について経営会議で定期的に報告を行っており、取締役、執行役員へ健康に対する意識付けを行うとともに職場環境の改善へ繋げております。

 

・健康経営優良法人認定の取得

当社は、2024年3月に、経済産業省及び日本健康会議より、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として「健康経営優良法人2024(大規模法人部門(ホワイト500))」に認定されました。また、連結子会社のST物流サービス㈱は、同制度にて「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門(ブライト500))」に認定されました。

当社は「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に4年連続の認定で、ホワイト500には2度目の認定(2021年に1度目の認定)となります。連結子会社のST物流サービス㈱は「健康経営優良法人(中小規模法人部門(ブライト500))」に3年連続の認定となります。


 

c.多様性と人材育成

当社では、変化の激しい市場環境に対応し、常に迅速に新しい価値を創造するため、女性、外国人、様々な経験を持つキャリア採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行っております。今後は、それぞれの特性や能力を最大限生かせる職場環境の整備や管理職層の教育などの取り組みを進めてまいります。

 

・従業員教育

階層別教育

新入社員の早期戦力化、職場定着を目的にチューター研修をはじめ、入社から3年にわたり、段階的にフォローアップする研修を行っております。また、階層別に必要能力の組み込みを図るべく、各種研修を企画・実施し、事業環境を取り巻く様々な課題を的確に解決できる人材や、次代のビジネスリーダーの育成にも取り組んでおります。

 

選抜教育

将来の経営者や経営幹部候補者を対象に、経営リーダー研修や改革リーダー研修を実施しております。また、女性リーダーの更なる育成を目的とした外部研修への参加など、リーダーとしての資質を磨き、他業種の方との交流などを通じて新たな視点を持った人材の育成を行っております。

 

自己啓発支援

通信教育講座の受講奨励や社内e-ラーニングなどの自学手段の提供、公的免許・資格取得に対する報奨金支給など、従業員の自己啓発やキャリア形成をサポートしてまいります。

 

・女性社員の活躍推進

これまで働きやすい制度を整える取り組みを続けてきたことで、女性社員は増加・定着してまいりました。当連結会計年度は、「女性活躍を進めるための組織風土の改革」に向け、執行役員以上を対象に外部講師による『ウエルビーイング企業とは~幸せで生産的な人と組織をつくる~』をテーマに研修会等を行っております。また、女性社員に対しては、管理職として必要な知識や経験を学ぶ研修の受講促進や、積極的なキャリア選択支援などを行っております。

今後は、女性社員の業務領域を広げ、さらに女性社員の経験・スキル向上を目指した施策や全社的な教育などを軸に、各カンパニーの特性に応じた人材育成施策を展開してまいります。

 

キャリア採用

当社グループでは、即戦力となる実務経験者を年間を通して採用しております。Uターン、Iターン、Jターンを希望する方にも、全国に拠点を持つ強みを生かして積極的に対応しております。

また、業界未経験・他業種からの人材も積極的に採用し、それまでの知識・経験を生かして新たな価値創造に取り組んでおります。

 

障がい者雇用

障がい者雇用を進めることは企業の社会的責任であり、多様性を推進する上においても障がい者を含めたすべての人が活躍できる環境を整えていく必要があります。

当社グループでは以前から障がい者雇用に取り組み、様々な障がいのある社員が製品の加工、組立、梱包、管理や設計、業務、総務、人事部門等、様々な部署で日々活躍しております。

 

②指標と目標

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、女性社員の活躍を推進するために、「女性管理職比率」を掲げており、当連結会計年度では2.3%となっております。

当社においては、関連する指標のデータ整理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、「女性管理職比率」に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。


 

 

マテリアリティ

範囲

指標及び2030年度目標

実績

当連結会計年度

多様性と人材育成

提出会社

女性管理職比率:10%以上

2030年度までに課長級以上を10%以上とする

2.3%

 

 

3 【事業等のリスク】

価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります

お、記載した事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものでありますが、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません

 

(1) 経済環境に関するリスク

①景気動向

当社グループは、ビル建材製品、住宅建材製品、エクステリア製品の開発・製造・販売、アルミニウム及びその他金属の鋳造・押出・加工・販売、店舗用什器、看板の製造・販売、店舗及び関連設備のメンテナンスを主な事業としております。当社グループの製品は多岐にわたり、その多くは国内における建設業、小売業をはじめとした各種産業に使用されており、一部は海外で製造、販売されております。このため、当社グループの経営成績は主に、日本国内及び海外の景気動向、為替動向、資材価格市況、建設会社の建設工事受注高や住宅着工戸数の変動、国内鉱工業生産、民間消費動向等の影響を受ける可能性があります。

このような状況に対処するため、当社は事業セグメントとして「建材」「マテリアル」「商業施設」「国際」と幅広く事業展開することで、特定の経済環境変化により一部の事業が影響を受けてもその他の事業活動で補うことにより、リスクを最小限に抑えるような事業構造を目指しております。

 

②金利の変動

当社グループは、金融機関等からの借入金など有利子負債を有しております。金利が上昇した場合、支払利息が増加する等、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

金利上昇のリスクを抑えるため、金利スワップ等のヘッジ取引等により金利の固定化を行い、リスク低減に努めております。

 

③投資有価証券評価損の発生

当社グループは、重要な取引先の株式を中心に、長期投資目的の株式を保有しております。株式市況の低迷等により保有株式の価格変動が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、保有株式の有効性評価を定期的に行い、取締役会にて保有の適否を判断しており、不要と判断された株式は速やかな処分を行うこととしております。

 

④為替の変動

為替変動により、当社グループの外貨建取引から発生する資産及び負債、売上高等の円貨換算額が当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

米ドル、ユーロ、タイバーツ及び人民元等の主要通貨の変動の影響を最小限に抑えるため、金融機関等と為替予約等のヘッジ取引を行っております。

 

(2) 当社グループの事業活動に関するリスク

①原材料・資材などの価格変動

当社グループは、資材や部品等を調達しております。そのため、アルミニウム地金・鋼材等の原材料価格、電力や燃料等のエネルギー調達価格、労務費、物流費等の価格変動は、国内外の景気動向や為替変動、資材の需給バランス等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、主原材料であるアルミニウム地金についてはデリバティブ取引の導入や、安定調達と価格変動のリスク分散を目的に長期購入契約を行っております。また、部品の共通化や複数購買化、物流効率の改善等のコストダウンへの取り組みを推進して、原価の抑制に努めております。

なお、サプライヤーとの取引価格については、対話を重視して定期的に協議を行っております。

 

②製品開発力及び競合

当社グループは、積極的に研究開発を行い、市場のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに提供し、成長性及び収益性の維持・向上に努めておりますが、競合企業による新製品の投入や価格競争により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、市場分析を踏まえ、価格競争に巻き込まれにくい差別化製品及び高付加価値製品の開発に取り組んでおります。

 

(3) 海外事業に関するリスク

当社グループは、海外に販売拠点、生産拠点を有しております。進出各国における自然災害、政治的不安、伝染病、戦争、テロリズムその他の社会的混乱、物価上昇、ストライキ等の経済的混乱が発生した場合、海外における生産・販売活動の変動、事業活動の停止や復旧対応により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、政治情勢、財政情勢、政策変更等について、情報収集を実施し、政情不安等の兆候の早期把握に努めております。

 

(4) 法的規制・訴訟に関するリスク

①製品の欠陥

当社グループは、JISその他国内外の品質・性能基準及び社内の品質・性能基準に則って各種製品を製造しておりますが、重大な製造物責任賠償やリコールが発生した場合、多額の支払や費用の発生及び社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、開発及び設計の各段階で、リスクアセスメントによるリスク除去と低減、品質確認のための試験やユーザー視点での確認会を実施し、指摘された問題を解決しなければ次工程に進めることができないルールの設定と運用により、重大な製造物責任賠償やリコールにつながる可能性の抑制を行っております。

 

②公的規制(法規制)

当社グループは、事業の許認可や独占禁止、為替、租税、知的財産、環境、労働関連等、多くの法規制を受けております。将来のこれら法規制の改正、新規規制に伴うコスト増加等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、法令遵守に努めておりますが、法令遵守違反が発生した場合は、公的制裁や社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、各担当部署が中心となって、法令改正情報を収集し、適宜弁護士等の外部専門家を活用しながら当社グループ全体へ情報共有しております。また、「コンプライアンス推進基本方針」を定め、情報発信や各種研修による教育により、従業員一人ひとりの法令遵守に対する理解と意識の向上を図っております。グループ内で発生したコンプライアンス違反事案は、コンプライアンス委員会で情報集約、対応することで内部統制の強化を行っております。

 

 

③環境に関する規制や問題発生

当社グループは、産業廃棄物の処理に関する法律及び大気、水質、騒音、振動、土壌汚染等の環境諸法令遵守を徹底しております。しかしながら、人為的ミス等による環境汚染により社会的信用が失墜した場合や、関係法令等の変更によって新規設備の投資によるコスト増加が発生する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、世界的問題として取り組みが進められている、気候変動や温室効果ガス削減への対応が必要になっております。

このような状況に対処するため、気候変動対策や環境保全活動をはじめとしたサステナビリティ活動に関する方針の審議・策定を行う代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ政策委員会」と、具体的施策を策定し推進する「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。その中で環境保全に関する方針や方向性の策定を行い、方針に基づく様々な課題(エネルギー転換等による温室効果ガス対策、資源循環リサイクル、環境配慮設計、化学物質管理)に取り組んでおります。

当連結会計年度は、2021年5月期に特定したマテリアリティの見直しを行い、「環境への配慮」において、当社グループの事業が生物多様性に与える影響の確認、マテリアリティ・資源の有効活用での取り組みとして水資源保全に関する事項を審議し、取り組みに追加いたしました。当連結会計年度の取り組みは、「2サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)当社グループが長期的に目指す方向」に記載しております。また、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に基づき、当社グループに及ぼすリスクと機会の特定、分析、評価を行っております。当連結会計年度の取り組みは、「2サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)」に記載しております。また、主要な自社工場においては、ISO14001の認証を取得し環境管理や監視体制の強化、産業廃棄物管理の徹底に努め、問題発生の防止に取り組んでおります。

 

(5) 情報管理に関するリスク

当社グループは、業務に関連して多数の企業情報を保有するとともに、多数の個人情報を保有しております。これらの企業情報及び個人情報については、万全の管理に努めておりますが、予期せぬ事態により情報が漏洩した場合には、損害賠償の発生及び社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、グループ全体のセキュリティリスクの把握や対策を推進する「情報セキュリティ委員会」を設置し、学習管理システムを用いたセルフチェック、研修動画の視聴、ウイルスメール対応訓練などにより従業員のセキュリティ意識を向上させております。また、社外持ち出しPCへの暗号化ソフト導入、不審メール等の検知システム導入、アクセス時やアプリ利用に使用するIDの定期的な検証(利用者と権限)など仕組みの面でもセキュリティ対策を講じることで、社内情報流出など問題発生の抑制に努めております。

 

(6) 自然災害、事故及び感染症等の発生に関するリスク

地震・水害等の自然災害、火災・停電等の事故災害、感染症の拡大等によって、当社グループの生産・販売・物流拠点及び設備の破損や社員の感染による操業停止に陥る可能性があります。災害や感染症等による影響を最小限に抑える対策を講じておりますが、被害を受けた場合は、復旧対応や事業活動の停止により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、非常時の初期対応や報告経路、対策本部の設置と役割を定め、適切な対応ができるよう仕組みを構築しております。災害への対応については、災害防止や被害を最小限に抑えるために、定期的な防災訓練や設備の点検を実施しております。令和6年能登半島地震では想定以上の揺れにより、当社グループは大きな被害を受けました。この被災経験をもとに事業継続計画(BCP)の見直しを進めており、災害発生後に速やかに事業復旧が行えるよう、災害への対応力強化を図っています。感染症への対応については、社員の感染予防対策の実施及び感染状況に関する情報収集と対策実施が行えるよう備えております。

 

 

(7) 会計上の見積りに関するリスク

①債権劣化

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、貸倒見積高を算定し貸倒引当金として計上しておりますが、売掛・手形等の債権が回収不能となり貸倒れが当該前提等を大幅に上回った場合には、貸倒引当金の計上が不十分となる可能性があります。また経済状況の悪化や取引先等の信用不安等による前提条件等の見直しにより、貸倒引当金の積み増しを行う可能性があります。これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、取引先の信用力チェックや与信枠の設定に関して規程やマニュアルを整備するとともに、信用力についての調査と評価を実施し、経営改善状況やリスク低減策等のモニタリングを行っております。

 

②減損会計

当社グループは、事業用の不動産やのれんをはじめとする様々な固定資産を所有しております。こうした資産は、時価の下落や、期待しているキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなど、その収益性の低下により減損損失が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、減損の兆候等について定期的に取締役会に報告し、業績悪化の兆候を把握した際には適時に対策が打てるような体制を構築しております。

 

③退職給付会計

当社グループの退職給付費用は、退職給付債務の算出に使用する割引率が低下した場合や、年金資産の運用環境の悪化により前提条件と実績に乖離が生じた場合に、数理計算上の差異が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

このような数理計算上の差異の発生に伴う損益変動リスクに対応するため、年金資産の運用は安全性を考慮した投資配分に努めるとともに、定期的なモニタリングを行っております。また、退職給付制度には確定給付型と確定拠出型を組み合わせた制度を導入しております。

 

(8) 人的資源に関するリスク

当社グループが海外への事業展開を含め持続的に成長するためには人材確保が不可欠であり、雇用制度の充実や能力開発制度等を通じて雇用確保と人材育成に努めておりますが、少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり雇用競争の激化や退職率の上昇により有能な人材の獲得や流出防止が困難な場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況に対処するため、4月の定期採用に加えて通年のキャリア採用推進を行っております。また、高齢者や女性、外国人の人材確保等ダイバーシティの推進を行うとともに、各種研修プログラムの他にも通信教育受講の奨励や社内e-ラーニングの提供など自己啓発支援を行い、人材育成に努めております。また、仕事と生活の両立を目指した長時間労働削減(ワークライフバランス推進)や働きやすい職場環境を整えることで離職防止や生産性向上の取り組みを行っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く外部環境は、国内において、円安の進行やエネルギー、諸資材価格の高止まりの影響を受け、住宅投資や企業の設備投資は低調に推移しました。また、1月1日の令和6年能登半島地震の経済的影響もありました。海外においては、欧州経済はインフレによる低成長や足元ではEV市場の勢いの鈍化、タイ経済はインフレが沈静化したものの政策金利の高止まりもあり、景気回復の足かせとなる状況が続いております。

 

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高3,530億27百万円前連結会計年度4.7%減)、営業利益38億7百万円前連結会計年度42.6%増、経常利益38億80百万円前連結会計年度13.5%増)となりました。また、令和6年能登半島地震で建物や設備の修繕費等と工場の操業停止に伴う損失などとして特別損失2042百万円(災害による損失9億93百万円、災害損失引当金繰入額10億49百万円)を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は10億19百万円前連結会計年度は16億30百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 


 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 


 建材事業では、エネルギー・諸資材価格の高止まりという経営環境の中、三協立山の中核事業として安定黒字化を目指してまいりました。

 ビル建材事業では、中低層向け基幹サッシの拡販と改装リフォームの強化、住宅建材事業では、収益改善と2022年末より3省(経済産業省、国土交通省、環境省)の連携で行っていた住宅省エネリフォーム支援に対する後付樹脂内窓「プラメイクEⅡ」と新たに補助金の対象となった高断熱玄関ドアの拡販強化、エクステリア建材事業では、カーポート「FⅡ(エフツー)」やパネル材に業界初採用となる「ブラックポリカーボネート板」、人工木デッキ「ヴィラウッド」など新商品投入による売上拡大と事業領域拡大に向けた対応強化を進めてまいりました。なお、カーポート「FⅡ(エフツー)」は「2023年度 グッドデザイン賞」を受賞、人工木デッキ「ヴィラウッド」は「第17回キッズデザイン賞」を受賞いたしました。

 

 以上の結果、価格改定の浸透や「住宅省エネキャンペーン」によるリフォーム需要の獲得などがありましたが、依然として建設市場の低迷が続いており、売上高1,822億70百万円(前連結会計年度2.6%減)となりました。利益については、価格改定を含めた収益改善施策の効果などにより、セグメント利益22億28百万円前連結会計年度より23億46百万円の改善)となりました。

 

 


 


 マテリアル事業では、エネルギー・諸資材価格の高止まりや令和6年能登半島地震による厳しい経営環境の中、物量と利益確保を目指し、建材を中心とした既存領域のシェア拡大や高付加価値製品へのシフトに取り組みを進めてまいりました。一方で、将来の成長への事業基盤の構築として、自動車分野の拡大やカーボンニュートラル実現にむけたアルミリサイクル促進への取り組みに注力いたしました。また中長期で成長が見込まれるEV市場に向けたアルミ形材の供給への対応として、本年1月に新湊東工場に新たな押出ラインの増強を発表いたしました。

 

 以上の結果、自動車分野は国内生産の回復により需要が増加しましたが、建材分野、一般機械分野で需要の減少が続いていることやアルミ地金市況に連動して売上が減少したことにより、売上高530億85百万円(前連結会計年度比9.3%減、セグメント利益14億67百万円(前連結会計年度比54.3%減)となりました。

 

 


 


 商業施設事業では、小売業の業績がインバウンド消費の回復や物価上昇などにより堅調に推移しており、コロナ明け以降活発化した小売各社の投資需要の獲得を進めるとともに、顕在するニーズを的確に捉えた提案営業やサービス領域の拡大により、更なる事業成長を目指してまいりました。また、物流2024年問題への対応として拠点再編による物流最適化や、新規海外調達先の開拓など、環境変化に対応するための各種施策も推し進めてまいりました。

 

 以上の結果、積極的な投資を行っている小売業態を中心に店舗の新規出店や改装需要を取り込んだこと、価格改定の浸透などにより、売上高426億72百万円(前連結会計年度比2.5%増、セグメント利益15億34百万円(前連結会計年度比154.2%増)となりました。

 

 


 


 国際事業では、欧州・タイ・中国にある海外拠点において、自動車分野を中心にアルミニウムの鋳造・押出・加工を行い、高付加価値製品に注力してまいりました。特に欧州においては、収益化達成に向けて改革に取り組むとともに、EV案件の量産体制の確立と安定収益確保に努めてまいりました。

 

 以上の結果、為替影響により増収効果はあったものの、アルミ地金市況に連動する売上減少、ドイツ経済の低迷や政府補助金打ち切りによるEV向けの販売量の減少により、売上高746億36百万円(前連結会計年度比9.9%減となりました。利益については、販売構成の改善や欧州でのエネルギー・諸資材価格の上昇に対する価格転嫁等を進めましたが、売上高減少により、セグメント損失13億6百万円前連結会計年度はセグメント損失8億33百万円)となりました。

 

 


 

② 財政状態の状況

財政状態の状況については、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ28億57百万円増加233億12百万円(前連結会計年度比14.0%増)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2022年6月1日

 至 2023年5月31日

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

 至 2024年5月31日

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

△171

17,196

17,367

投資活動によるキャッシュ・フロー

△7,269

△8,620

△1,351

財務活動によるキャッシュ・フロー

10,554

△6,769

△17,323

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

3,528

2,782

△746

現金及び現金同等物の期首残高

16,926

20,455

3,528

現金及び現金同等物の期末残高

20,455

23,312

2,857

フリー・キャッシュ・フロー

△7,440

8,576

16,016

 

(注)フリー・キャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は、171億96百万円(前連結会計年度は1億71百万円の支出)となりました。これは、仕入債務の減少額78億2百万円があった一方で、減価償却費87億74百万円、災害による損失9億93百万円の計上や、売上債権の減少額83億67百万円、棚卸資産の減少額24億96百万円、災害損失引当金の増加額10億49百万円があったことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は、前連結会計年度に比べ13億51百万円増加86億20百万円(前連結会計年度比18.6%増)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出87億51百万円があったことなどによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は、67億69百万円(前連結会計年度は105億54百万円の収入)となりました。これは、長期借入れによる収入236億2百万円があった一方で、長期借入金の返済による支出185億26百万円、短期借入金の純減少額105億10百万円があったことなどによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

建材事業

80,293

92.4

マテリアル事業

46,415

91.9

商業施設事業

8,955

97.9

国際事業

70,494

89.3

その他

8

264.5

合計

206,168

91.4

 

(注) 金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

建材事業

61,734

94.2

マテリアル事業

281

97.1

商業施設事業

21,494

99.6

国際事業

344

124.9

その他

107

531.1

合計

83,962

95.8

 

(注) 金額は、実際仕入金額によっております。

 

c.受注状況

当連結会計年度における建材事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

建材事業

(ビル工事物件)

55,219

98.3

41,169

98.5

 

 

d.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

建材事業

182,270

97.4

マテリアル事業

53,085

90.7

商業施設事業

42,672

102.5

国際事業

74,636

90.1

その他

362

177.4

合計

353,027

95.3

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.概要

当連結会計年度の売上高は、3,530億27百万円(前連結会計年度比4.7%減)と減収となりましたが、営業利益38億7百万円(前連結会計年度比42.6%増)、経常利益38億80百万円(前連結会計年度比13.5%増)、親会社株主に帰属する当期純損失は10億19百万円前連結会計年度は16億30百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

b.営業利益

営業利益のセグメント毎の分析については、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

c.営業外損益と経常利益

経常利益は、38億80百万円となりました。

 

d.特別損益と税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、5億85百万円となりました。これは、災害による損失9億93百万円、災害損失引当金繰入額10億49百万円、減損損失9億39百万円などを特別損失に計上したことによります。

 

e.親会社株主に帰属する当期純損失

税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、14億58百万円非支配株主に帰属する当期純利益1億46百万円となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は10億19百万円となりました。

 

f.資産

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ70億42百万円増加し、2,899億75百万円となりました。増減の主な内訳は以下のとおりであります。

流動資産

現金及び預金が22億75百万円増加したものの、受取手形、売掛金及び契約資産が69億44百万円、商品及び製品等の棚卸資産が7億61百万円、それぞれ減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ55億84百万円減少1,456億84百万円となりました。

固定資産

退職給付に係る資産が83億60百万円、投資有価証券が24億8百万円、有形固定資産が16億62百万円、それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ126億27百万円増加1,442億91百万円となりました。

 

 

g.負債

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ2億27百万円増加し、1,904億92百万円となりました。増減の主な内訳は以下のとおりであります。

流動負債

未払金等のその他流動負債が48億40百万円、1年内返済予定の長期借入金が16億52百万円、災害損失引当金が10億49百万円、それぞれ増加したものの、短期借入金が100億22百万円、支払手形及び買掛金が42億60百万円、電子記録債務が29億28百万円、それぞれ減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ92億3百万円減少1,188億4百万円となりました。

固定負債

繰延税金負債が41億5百万円、長期借入金が40億6百万円、退職給付に係る負債が11億91百万円、それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ94億30百万円増加716億87百万円となりました。

 

h.純資産

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ68億15百万円増加し、994億83百万円となりました。これは、利益剰余金が15億57百万円減少したものの、退職給付に係る調整累計額が41億3百万円、為替換算調整勘定が18億30百万円、その他有価証券評価差額金が16億14百万円、繰延ヘッジ損益が7億38百万円、それぞれ増加したことが主な要因であります。なお、自己資本比率は33.2%(前連結会計年度末は31.6%)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況

当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資金需要

当社グループの資金需要のうち主なものは、生産能力増強、生産効率向上のための設備投資及び新商品開発投資等の長期資金需要と、製品製造のための原材料等購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。今後も、財務基盤の安定を図りつつ、収益基盤の再構築と成長・戦略投資、変化する国内市場への対応、さらにはカーボンニュートラルに向けた投資など長期的な視点の資金需要に対応する方針であります。

 

c.資金調達

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性の向上と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針として、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行などの金融機関からの借入、資本市場における社債の発行等により、必要資金を調達しております。当社は、運転資金は内部資金からの充当及び短期借入による調達を基本としており、設備投資やその他の投資資金の調達については、金融機関からの長期借入及び100億円の社債発行登録枠内での社債の発行等を基本としております。

また、流動性に関しては、財務柔軟性を確保するため、金融機関との借入限度額200億円のコミットメントラインの契約や、機動的に活用できる債権の流動化枠を確保することで調達手段の多様化を図り、現金及び現金同等物の残高が適正になるように努めております。

 

その結果、当連結会計年度末における借入金は、前連結会計年度末に比べ43億63百万円減少の781億88百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は233億12百万円となりました。

 

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件や仮定の変化により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)当社グループの将来戦略 ②前中期経営計画(2022年5月期~2024年5月期)の総括」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、2030年までの長期的に目指す姿としてVISION2030を定め、『サステナブルで豊かな暮らしに貢献』『多角化した経営』を掲げ、中期経営計画の基本方針のもと、「変化する国内市場への対応」「長期成長への仕込み」に向けた研究開発に取り組みました。

  その結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は2,320百万円となりました。

セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

(建材事業)

建材事業では、環境配慮とユニバーサルデザインを基本に、「性能」「機能」「ロングライフ」の3つの要素を使う人の立場に配慮して盛り込み、安心・安全で快適な空間と生活に寄与することを目指した商品開発を実施しております。

ル建材分野では、換気に関する商品ラインナップ強化として、主力サッシMTG-70R用網戸2種を開発いたしました。サッシ一体型網戸「ビルトイン網戸」は窓を開けるとネットが引き出せるサッシ一体型網戸で、窓を閉めた状態では網戸が露出しないため、網戸が汚れにくく、優れた意匠性や眺望性を確保いたします。「脱落防止用可動網戸」は中高層ゾーンを対象に、枠掛かりを強固にして、網戸の脱落を防止する安全仕様に加え、戸先自動ロックをオプション設定いたしました。

また、中低層ビル・マンション用のアルミ手摺として「N-SLIM(エヌスリム)」を開発しました。高性能手摺「FINEMASTER(ファインマスター)」の安心・安全設計を踏襲しており、接合部の負荷を軽減する部材形状や、ゆるみ止めねじを採用しながら、スリムでシンプルなフォルムを実現しております。

住宅建材分野では、2050年カーボンニュートラル実現に向け、開口部の高断熱化へのニーズが加速度的に高まっております。これは新築戸建て住宅だけでなくリフォームにおいても同様で、国策の活性化支援の「先進的窓リノベ2024事業」に代表されます。対応として新たに「ノバリス玄関ドア高断熱仕様」を開発いたしました。Sグレード対象の熱貫流率1.33W/㎡・Kと高い断熱性能に加え、様々な外観に調和するデザインとカラーが特長であります。

また主力玄関ドアでは、住まいを守るレジリエンス機能と上質な心地良さを兼ね備えた「ファノーバ2」へとモデルチェンジいたしました。近年脅威を増す暴風雨や台風から住まいを守るレジリエンス機能は、床下浸水を想定した浸水水位で、業界初の浸水防止性能Ws-1等級相当(土嚢レベル)を確保しております。さらにディテールにこだわった全69デザイン、木調感あふれる浮造りカラーを含めた全20色のバリエーションを設定いたしました。同時に施解錠システムもモデルチェンジいたしました。電気式・電池式ともに、キー設定したスマートフォンを携帯すれば、ドアに近づくだけで鍵が開くノータッチ解錠が可能で、タッチ操作やキーボタン操作など、使う人に合わせた施解錠方法が選べます。

エクステリア建材分野では、多様なニーズに寄り添う商品開発を進め、カーポート「FⅡ(エフツー)」で2023年度グッドデザイン賞、人工木デッキ「ヴィラウッド」で2023年度キッズデザイン賞を受賞いたしました。

エクステリア市場でもミニマルトレンドから、周辺環境との調和を求めるニーズが高まっております。「FⅡ(エフツー)」はフラットなアルミ屋根材と梁の一体化により梁部材の露出を抑制した業界初の新構造の採用と、従来型のサイドスクリーンを一新した屋根材とシームレスに繋がる壁型スクリーンの採用で住宅外観との調和を高めております。

「ヴィラウッド」は、天然木の木肌・色合いを再現し、天然木より優れた耐久性をもつデッキであります。育児や家事に追われる中で、安心して子どもと向き合える環境を目指し、太陽の下で子どもが遊べるようにデッキ表面の温度上昇や静電気の発生を独自の素材配合技術により軽減させ、安全に庭へ移動できるように段差が小さいデッキ構造としております。また、高齢者施設や保育園など非住宅にも使用可能な「高強度タイプ」をラインナップし、通常のデッキの鉛直荷重強度が1,800N/㎡に対し、高強度タイプは2,900N/㎡を実現いたしました。

研究開発費総額は1,456百万円であります。

 

 

(マテリアル事業)

マテリアル事業では、「ニッチトップの追求」を基本方針とし、基盤技術の強靭化と当社の成長に貢献し得る革新的な技術の創出を目指した研究開発活動を推進しております。

事業ターゲットとする輸送分野においては、押出用アルミニウム合金ラインナップの早期かつ効率的な拡充に向け、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)を積極的に活用する合金開発を引き続き推進、加速させております。さらには、押出形材を自動車の構造部材に提案、適用する上で不可欠となる、形材特性を解析し機能部材として設計する技術構築にも注力しております。

一方、カーボンニュートラルの実現に向けて、サステナブルな材料循環に資するアルミリサイクル技術の開発にも積極的に取り組んでおります。国立大学法人富山大学と連携し2022年7月に開設した共同研究講座において、アップグレードリサイクルの研究に着手、高度なリサイクル技術の研究開発はもとより、積極的な人的交流を通じて若い技術者の育成にも尽力しております。アルミニウム材料を扱う様々なお客様やサプライチェーンとの連携もさらに強化しながら、引き続き取り組みを推進してまいります。

マグネシウム関連事業では、NEDOプロジェクトで開発に成功した新規難燃性マグネシウム合金の早期実用化を図るべく、鉄道事業関連企業等と協働し次世代高速車両の外装・内装部材への適用技術開発を継続しております。

研究開発費総額は787百万円であります。

 

(商業施設事業)

商業施設事業では、環境配慮と市場環境の変化に対応した商品開発を推進しており、消費行動の変化に伴う決済サービスの多様化並びに労働人口減少、多国籍労働者の増加、働き方の変化に対応した商品開発、加えて再生可能エネルギーや樹脂資源循環など環境配慮に向けての課題に注力しております。

「省人化・省力化」の面では、重量センサーを搭載し商品の増減を感知できる無人販売什器をお客様と連携し設計開発に取り組みました。増え続ける医薬品により保管場所の不足や薬を処方する薬剤師の作業負荷が増大しており、収納量の拡大と機能性の向上に努め、品種・寸法設定を増やし働きやすい環境を提供できる『新型調剤什器』の拡充を行いました。

「省エネ化・省資源化」では、再生可能エネルギーであるソーラー技術を搭載しCO2排出量軽減に向けて、既存商品への融合を行うための研究・検証を進めております。樹脂の資源循環に関しては、工場端材をリサイクルした商品の検討、梱包プラスチック系副資材の紙化、再生材化、再利用化の調査・検討を行いました。

当社の主力得意先である量販店様に対し、決済サービスの多様化に伴うカウンターやセルフレジ什器など販売促進什器の新たな需要の取り込みに向け積極的に商品提案を行い、受注領域の拡大を図ってまいります。また樹脂資源循環やCO2排出量軽減など環境に配慮した商品開発を推進してまいります。

研究開発費総額は77百万円であります。

 

(国際事業)

欧州・タイ・中国に展開した押出事業においては、自動車・産業機械・鉄道・航空・建材を主要分野とし、各分野で顧客との密接なプロジェクトにより、顧客が将来に向け求める技術及び製品の開発、市場調査等を実施しておりますが、当連結会計年度に研究開発費として計上するものはありません。