第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づいた経営理念のもと、健全な企業活動を通じて社会に貢献していくことが私たちの使命であると考えております

 

①経営理念

お得意先・地域社会・社員の協業のもと、新しい価値を創造し、お客様への喜びと満足の提供を通じて、

豊かな暮らしの実現に貢献します。

②行動指針

私たちは

お客様満足

常にお客様の視点に立ち、誠実に対応することで、信頼される存在であり続けます。

価値創造

技術と知識の向上に努め、新たな製品の開発とサービスの提供にたゆまず挑戦し続けます。

社会との調和

環境、地域社会、人との調和を考えて行動し、人と自然にやさしい企業であり続けます。

自己研鑽

自己研鑽に励み、互いに切磋琢磨し、働き甲斐のある企業風土を育みます。

 

 


③CSポリシー

      ・お客様満足を第一とし、“常にお客様の立場・視点で考え行動”しよう

    ・お客様の意見にを傾け、“期待や問題点をしっかり把握”しよう

    ・お客様の満足実現に向け、“創意・工夫で改善、提案”しよう

    ・お客様の“満足こそが仕事の成果”であると心がけよう

    ・お客様の満足を、“共にわかち合えることに感謝”しよう

 

(2)価値創造のプロセス

 当社グループでは、株主及びその他ステークホルダー、そして社会からの信頼を築き共に発展していくことを経営の基本方針としており、VISION2030に向けて、4つの事業を中心に自社の強みや財務・非財務の資本を投入し、価値創造プロセスを循環させ続けることで、当社グループの更なる企業価値を高めてまいります

 


 

 

(3)当社グループの強み

各事業の強みは次のとおりであります

強み

建材事業

マテリアル事業

商業施設事業

国際事業

多角化したポートフォリオ

 

国際事業とのコラボレーション、日本、欧州、タイ、中国のグローバル拠

 

 

②高い技術開発力

・「安心・安全・快適」な商品づくり

パイオニアとしての自然換気商品

業界トップシェアを誇る手すりの商品ブランド力

サッシ、玄関ドア、インテリアなどによる統合商品と特注品対応力

強み分野を持つオリジナリティの高い商品開発

最新技術の導入による省人化生産

・国内最大級の生産能力を持つ合金鋳造、形材押出、加工の一貫体

・店舗用什器、サインともに業界トップクラスのシェア

・お得意先様の要望を具現化できる商品開発力

合金鋳造、形材押出、加工の一貫生産体

・各地域で同一製品を同一品質で供給できる体制

・自動車(EV)分野での先進的なアルミ形材の自動加工技術

 

③強固なビジネスパートナーネットワーク

・代理店様、販売会社様による全国の流通販売体制

・強固なパートナーシップを有する代理店販売網

・営業力と部材組立機能を有する代理店販売網

・施工店様と強いパートナーシップ

・多様なニーズに対応可能な合金、形状、構造などの提案力

・お得意先様の要望を具現化できる営業対応力

・全国一律サービスを提供するネットワーク

・24時間365日対応の店舗メンテナンスサービス

・中国上海での事業伸長

・日本、欧州、タイ、中国のグローバルな拠点

 

上記以外として当社グループの持続的な成長に向けて新しいビジネスモデルを構築すべく、社会的課題・成長分野をターゲットに「自社の強み×共創」により新規事業を発掘しております。その中で、植物工場事業のほか、事業機会の創出を目的にオープンイノベーションの取り組みを強化し、より多くの異業種と連携を図ることで、企業価値向上につながる新たなビジネスモデル構築を目指しております。

 

(4)ビジネスモデル

たちの使命は、商品・サービスをはじめ、様々な企業活動を通じて、人々が暮らす快適な空間と満足される生活づくりに貢献していくことであり、人と社会にやさしい環境商品やサービスを提供することで、豊かな暮らしの実現を目指してまいります

 


お客様の心で考える価値創造環境技術で新たなビジネスフィールドへ

 多様なニーズに最新技術でお応えするビル建材と省エネ・バリアフリー・高耐久を考慮した住宅建材、そして最新のデザインと高い品質を追求したエクステリア建材の提供を通じて、豊かな暮らしの実現に貢献いたします

 

ビル建材

 多くの人々が利用するオフィスビル

集合住宅などのビル建築は、安全性や快適さ、

利便性に対して、より高い性能を求められ、

新築から改装まで幅広く高品質な商品を

提供しております。


 

住宅建材

 住まいが大切な財産として

長く受け継がれるよう、「人にやさしい」

「地球にやさしい」「安全・安心」を

コンセプトに商品をご提案いたします。

 お客様の様々なニーズに応えるため

ユニバーサルデザイン商品や、

強靭性・断熱性を向上させた商品などで

快適な居住空間を創造いたします。

 

 

 


 

エクステリア建材

 「青空の下 わくわくを 楽しもう!」
 空の下で光や風に包まれて過ごす豊かな

空間提案や、外部空間を多彩にアレンジできる

多機能的商品など、幅広いデザインと機能を

兼ね備えた魅力ある商品で、皆様に幸せと笑顔、

わくわくをお届けいたします。


 

 

 


「素材をカタチにする」素材の無限の可能性を追求し、快適な環境づくりに貢献

 「アルミニウム」と「マグネシウム」素材・押出形材に
おける設計・試作・製造・デリバリーサービスまでの
トータルソリューションを提供しております。
 製品や物件の企画・設計段階から参画し、
お客様に寄り添い、最適なご提案をいたします。


 

 


人に快適な商業空間を創造するスペースクリエーター

 ショッピングセンター、コンビニエンスストア

ラッグストアなどの専門店、商業施設及び企業向けに、

品陳列什器、カウンター、ショーケースや内装仕上

工事、看板・サイン等の屋外広告物、店舗・関連設備の
ンテナンスサービスを提供しております。
 お客様にとって価値ある快適空間を創造するために、
売れる」店舗づくりのご提案から、
計・製作・施工・メンテナンスまで
ータルにサポートいたします。


 


 

 



ローバルサプライヤーとして高付加価値製品を追求

 欧州・タイ・中国にある海外拠点において、
ルミニウムの鋳造・押出・加工を行っております。
 日本・欧州のハイレベルな技術を他地域へ展開し、
ローバルサプライヤーとして高付加価値製品を

提供いたします。


 

 

 


続的な成長に向けて新しいビジネスモデルを構築

更なる事業機会の創出を目的にオープンイノベーションの取り組みを強化し、より多くの異業種と連携を図ることで、企業価値向上につながる新たなビジネスモデルの構築を目指します。

 

植物工場事業

 植物工場プラントメーカーとして、業界トップの生産能力を

持った栽培設備と圧倒的な栽培技術力、衛生管理や生産管理などの

工場運営ノウハウ、ネットワークを生かした販路紹介で、

不採算要因を取り除いた植物工場運営を支援いたします。


 

 

 

(5) 当社グループの将来戦略

①VISION2030 ~長期的に目指す姿~
 当社グループは、2021年7月に長期ビジョン「VISION2030(2031年5月期)」を定めております。


1つ目は、
  サステナブルで豊かな暮らしに貢献
  ~環境に配慮した、安心で快適な社会の実現へ~

についてです。

 

環境にやさしく」「安心な社会へ」「暮らしを快適に」を軸とし、各事業活動を通じて魅力ある価値を創造してまいります

 

つ目は

 多角化した経営

 ~バランスの取れた事業ポートフォリオへ~

ついてです

 

材事業を主力としてきた当社グループにとって、国内建設市場の長期的な縮小は大きな課題であり、将来的な事業環境変化に対応するためには、建材事業は引き続き中核事業として収益力向上を図るとともに、新たな成長分野を創出していく必要があります。このような事業構造の中で、2015年3月には、国際事業のM&Aにより、国内外のマテリアル事業を強化し、商業施設事業では、事業承継による規模拡大を図ってまいりました

今後もさらに領域拡大を進め、建材事業に偏らない事業構成により、市場の変化に柔軟に対応できる経営基盤を構築し、持続可能な企業を目指すため、成長領域の事業拡大と安定収益基盤の強化に取り組み、持続的成長に向けた新たな事業ポートフォリオへ変革してまいります

 

 

②中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期) 初年度の総括

社グループは、長期ビジョン「VISION2030」の実現に向けた2027年5月期を最終年度とする中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)を推進しております。収益基盤再構築と成長投資を優先する投資フェーズと位置付け、「安定収益を確保し成長軌道に乗せる」を基本方針として、収益構造改革と成長への投資に取り組み、「事業収益力の向上」と「成長への基盤構築」に向けた諸施策の展開を進めてまいりました

 


 

 

2025年5月期は、重点施策として「事業収益力の向上」「成長に向けた変革と挑戦」「経営基盤の強化」「サステナビリティ取り組み推進」を進めました。

 

<施策状況>

1. 事業収益力の向上

事業名

施策

主な取り組み

建材事業

抜本的な収益構造の変革、基幹事業の強化

生産機能集約による効率化

次期基幹サッシの生産体制確立

利益獲得に向けた戦略的営業活動の推進

基幹主力商品シェアアップ

戦略領域の育成・成長

リフォーム補助金活用による商材拡販

非住居木造物件の獲得

パブリックエクステリアの強化

総合販売力強化

マテリアル事業

既存領域の収益基盤強化

既存領域の質、量の確保

競争力強化、シェアアップ

加工品拡大

商業施設事業

既存領域の深化

新商材の開発やサービスの展開

調達・物流改革

国際事業

STEP-G(連結子会社であるSankyo Tateyama Europe BV及びその子会社)黒字化

固定費圧縮による体質改善

量確

ートフォリオの変革による安定

 

 

 

2. 成長に向けた変革と挑戦

事業名

施策

主な取り組み

マテリアル事業

自動車分野の拡大

自動車分野の押出機や加工ライン導入

新規市場開拓、新市場創出

商業施設事業

販路開拓、新領域へのチャレンジ

次世代技術との融合

クラウド活用サービスへのチャレンジ

海外事業拡大

ASEAN地域への販売拡大検討

国際事業

タイの事業と物量拡大

ASEANトップクラスの技術力・品質で需要の取り込み

自動車、電機分野などの新規案件獲得

旺盛な需要に合わせた生産能力増強

 

 

3. 経営基盤の強化

事業名

施策

主な取り組み

全社共通

社員の安全、安心、健康を重視した取り組み

労働災害撲滅

健康安全な職場環境の整備

コンプライアンス遵守

コンプライアンス意識、知識の浸透

コンプライアンスの活用促進

品質向上

顧客満足向上、品質啓蒙活動

 

 

4. サステナビリティ取り組み推進

事業名

施策

主な取り組み

全社共通

資源有効活用の促進

アルミリサイクル推進

リサイクル技術の確立

多様性と人材育成への取り組み推進

多様な人材が活躍できる職場への改革

人的資本の価値向上

 

 

期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)初年度としては

期初年度計画  売上高3,600億円、営業利益40億円、営業利益率1.1

績       売上高3,594億円、営業利益15億円、営業利益率0.4

なり、利益計画に対して課題を残しました

 

 

社グループは、長期ビジョン「VISION2030」の実現に向けた中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)を推進してまいりましたが、諸資材価格や物流費、労務費の上昇が継続する中で建設費の高騰などによる建築市場の縮小、また成長戦略であるEV市場の伸び率が鈍化するなど、取り巻く環境は大変厳しい状況が継続しております。このような状況の中で、主力である建材分野や輸送分野の生産量減少やそれに伴う販売構成の変化が想定を上回ったため、中期経営計画の見直しを行いました。2026年5月期(第81期)以降につきましては、成長事業に対する基本方針は維持しつつも早期業績回復に向けた収益構造改革に注力し、2030年5月期にROE6%以上を目指します

 


<収益構造改革のポイント>

① 間接コスト削減

② 業務・組織体制の効率化

③ 建材事業の構造改革

④ 製造体制の適正化

⑤ 欧州子会社の構造改革

 

 

目標とする経営指標

当社グループは、売上高、営業利益率をグループ全体の成長を示す経営指標と位置付けております。また、資産効率を測る指標としてROA(総資産利益率)、資本効率を測る指標としてROE(自己資本利益率)、財務体質の健全性を測る指標として自己資本比率を重視しております。中期経営計画の各指標の計画及び実績は以下のとおりであります。

 

 

第80期

2025年5月

第81期

2026年5月

第82期

2027年5月

計画

実績

計画

直し計画

計画

直し計画

業績

売上高

3,600億円

3,594億円

3,700億円

3,700億円

3,800億円

3,850億円

営業利益

/率

40億円

/1.1%

15億円

/0.4%

75億円

/2.0%

40億円

/1.1%

110億円

/2.9%

70億円

/1.8%

資本収益性

自己資本比率

30.0%

30.4%

30.0%

28.0%

30.0%

28.0%

ROA

0.5%

0.8%

1.3%

0.1%

2.0%

1.0%

ROE

1.7%

2.5%

4.0%

0.4%

6.0%

3.0%

D/Eレシオ

100%

95.6%

115%

110%

115%

115%

株主還元

配当

25円

25円

予定

1株当たり25円を下限とする

安定的かつ継続的な配当

 

(注)2025年5月期(第80期)、2026年5月期(第81期)、2027年5月期(第82期)計画は、2024年7月公表時

   の中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)の経営指標の数値であります

 

社グループは、創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づいた経営理念のもと、お客様に喜びと満足を提供する企業活動を展開することで、引き続きグループとして企業価値の向上を図ってまいります

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります

 

(1) 当社グループのサステナビリティの考え方及び取り組み

当社グループは、創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づいた経営理念のもと、健全な企業活動を通じて社会に貢献していくことが私たちの使命であると考えております。今、世界が抱える様々な環境・社会課題が深刻化しております。その課題に対し、当社グループはこれまで培ってきた技術・知識を更に追求することで解決し、豊かな環境を未来へ引き継ぎながら、産業と社会の発展に寄与し、成長を続けてまいります。

この考えを、長期的なビジョン『サステナビリティビジョン2050 Life with Green Technology~「環境技術でひらく、持続可能で豊かな暮らし」を実現する企業グループへ〜』として掲げており、企業活動を通じた持続可能な社会の実現に努めてまいります。

 


 

 

①ガバナンス

サステナビリティ推進体制

ステナビリティ推進体制として、気候変動対応などグループ全体に関わるサステナビリティ政策の意思決定を行うため、業務執行取締役からなるサステナビリティ政策委員会を設置しております。審議結果のうち、グループ方針、マテリアリティ及び指標・目標、中期活動計画などの重要事項については、取締役会に提議し、決議を得ております

た、サステナビリティ政策委員会で策定された方針・中期活動計画に基づき、具体的施策を計画し推進するサステナビリティ推進委員会を設置しており、推進委員会の下には、専門部会を設けて施策を実施しております

ステナビリティ政策委員会及びサステナビリティ推進委員会は、四半期に一度の定期開催に加え、必要に応じて開催し、政策の意思決定を迅速に行う体制としております

 


 

サステナビリティ政策委員会 開催実績及び議題

連結会計年度のサステナビリティ政策委員会の開催実績は、下表のとおりであります

開催日

議題

2024年9月30日

1) 当社の事業が生物多様性に与える影響及び取り組みの考え方について

 

2) 省エネ法 定期報告情報の開示について

 

3) 専門部会からの活動報告 (温室効果ガス対策部会、アルミ資源循環部会、人材活躍部会)

2024年11月26日

1)「ビジネスと人権」に対応した人権方針策定について 〔中間報告、検討〕

 

2) マテリアリティ見直し 重要度再評価、マテリアリティへの追加について 〔中間報告〕

 

3) サステナビリティ施策 上期実績、下期見直し計画について

 

4)「サーキュラーパートナーズ」 (注)への参画について

2025年3月26日

1)「三協立山グループ 人権方針」 〔審議〕

 

2) マテリアリティ 80期見直し結果 〔承認〕

 

3) 温室効果ガス削減 2035年目標について 〔中間報告〕

 

4) EPD (環境製品宣言)の認証取得に向けて (環境配慮設計部会)

 

5) 専門部会からの活動報告 (サプライチェーンマネジメント部会、化学物質部会)

2025年5月27日

1) TCFD提言に基づく情報開示 80期分析・開示内容について (TCFD部会)

 

2) 温室効果ガス削減 2035年目標について 〔中間報告〕

 

3) 各専門部会 80期実績見込・総括及び81期計画 〔承認〕

 

4) 専門部会からの活動報告 (樹脂資源循環部会、梱包資材部会)

 

(注)サーキュラーパートナーズ:経済産業省が2023年3月に策定した「成長志向型の資源自律経済戦略」に基づき、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、産学官の連携を促進するためのパートナーシップ

 

②戦略

マテリアリティの見直し

当連結会計年度は、中期経営計画との整合や外部環境の変化等を踏まえてマテリアリティを見直し、再評価を行いました。再評価の結果については、サステナビリティ政策委員会(2025年3月開催)で承認を受け、取締役会に報告しております。

 

a.マテリアリティとして新たに設定したテーマ

・人権尊重

当社グループは、すべての人々の基本的人権を尊重することを企業の社会的責任の原則に掲げて取り組んでまいりましたが、事業活動を取り巻く状況の複雑化及び人権に関する国際社会の動きから、国際基準を踏まえた「ビジネスと人権」の観点での企業姿勢・取り組みを明確に示すことが必要となってまいりました。

当連結会計年度においては「三協立山グループ 人権方針」を定め、本方針に基づく取り組みとして人権デュー・ディリジェンスの実施、社内教育やお取引先様へ人権尊重の理解を深める取り組みを推進し、事業活動に関わるすべての方々との信頼関係を築いてまいります。

 

・生物多様性の保全

環境課題の解決には、「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」の3つの要素を統合的に捉える必要性が強調されております。当連結会計年度は、マテリアリティの「気候変動への対応」「資源の有効活用」における取り組みとして、「生物多様性の保全」と相互に関係性があることを確認し、「生物多様性の保全」をマテリアリティに追加いたしました。

製品の原材料であるアルミのリサイクルを促進すること(「資源の有効活用」)は、アルミ新地金を精錬する際に発生するCO2を抑制すること(「気候変動への対応」)と深く関わっており、もう一方では、新たな鉱物資源採掘による生物の生息地喪失の低減につながります。同時に、温室効果ガス抑制は生態系の維持・保全との相乗効果をもたらします。環境課題の解決におけるこれらの関係性を認識し、取り組みを推進してまいります。

 

 

b.評価を更新したテーマ

・資源の有効活用

資源の有効活用、環境負荷の低減と経済成長を同時に実現するサーキュラーエコノミー(循環型経済)が注視される中、リサイクルにおいて優位性を持つアルミは、低炭素材料としての用途、再資源化の技術開発等、多くの可能性を持っております。中期経営計画では、アルミリサイクルの向上により循環型経済への移行を進めることを重要テーマとしており、マテリアリティの最重要テーマに位置付け、推進してまいります。

 


 

マテリアリティ

2030年を目標年とするマテリアリティは、「(E)環境への配慮」「(S)従業員のエンゲージメント向上」「(S)公正・誠実なビジネス」、事業活動の基盤として「(G)事業活動の持続的な強化」に分類し、課題の分野を明確にして取り組みを進めております

 

a.課題の分野

(E)環境への配慮

環境問題の解決には、「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」の3つの要素を統合的に捉えることの重要性を認識し、それぞれマテリアリティの「気候変動への対応」「資源の有効活用」「生物多様性の保全」として、当社グループの事業活動が環境に与える影響を特定し、課題に取り組んでおります。

 

(S)従業員のエンゲージメント向上

健康と安全に配慮した職場、多様性への対応によって、ポジティブに仕事に取り組める環境を醸成し、業績や企業価値の向上につなげてまいります。

 

(S)公正・誠実なビジネス

法令遵守だけでなく、社会的な規範にも従い、公正・誠実に業務を行うことをビジネスの基本姿勢といたします。

 

(G)事業活動の持続的な強化

社グループの事業活動の基盤となるテーマを、継続して強化してまいります

連結会計年度は、新たに「三協立山グループ 人権方針」を定めました。当連結会計年度における本方針制定の取り組みについては、「<当連結会計年度における重要な取り組み>b.「三協立山グループ 人権方針」の制定」に記載のとおりであります

 

b.マテリアリティ及び主な取り組み

課題の分野

マテリアリティ

主な取り組み

(E)環境への配慮

気候変動への対応

温室効果ガス排出量の削減

 

製品使用時CO2排出量の削減

資源の有効活用

循環アルミの使用を促進

 

樹脂の再資源化を推進

 

廃棄物削減活動の継続

生物多様性の保全

「生物多様性の保全」と相乗的に作用するマテリアリティ・取り組み

 

・資源の有効活用/資源循環による鉱物資源採掘の低減で生物生息地の喪失を抑制

 

・気候変動対応/温室効果ガス削減による生態系を維持・保全

 

水資源の保全

(S)従業員のエンゲージメント向上

働きやすい職場環境づくり

社員の意見を吸い上げる仕組みづくり

健康と安全

健康・安全な職場環境の整備

多様性と人材育成

創造性に富む人材の確保・育成

 

女性社員の活躍推進

 

シニア人材の活躍推進

(S)公正・誠実なビジネス

公正な取引・汚職防止

法令・コンプライアンスを遵守する文化の定着

サプライチェーンマネジメント

グリーン調達の取り組み

CSR調達の推進

 

 

 

事業活動の基盤

(G)事業活動の持続的な強化

人権尊重

人権デュー・ディリジェンスの実施

コーポレート・ガバナンス

内部統制の強化

製品安全・品質の向上

サステナビリティ政策の推進

お客様満足の追求

お客様のCSR方針に応える商品・サービスの提供

 

お取引先様との協業による品質向上

製品の安全確保

製品含有有害化学物質の管理と削減

 

 

<当連結会計年度における重要な取り組み>

a.中期経営計画期間(2025年5月期〜2027年5月期)における温室効果ガス削減目標

温室効果ガス排出量(Scope1・2)の削減について、2030年度までに2017年度比50%削減の目標を定めております。2024年7月に発表した中期経営計画においては、工場・設備の増強を計画しており、これに伴いCO2排出量も増大する見込みでありますが、2030年度目標を達成するべく、新規アルミ押出ラインを増設する新湊東工場増築(2025年10月竣工)における太陽光発電システム導入、CO2フリー電力の計画導入等の取り組みを進めております。

中期経営計画期間における目標等については、ニュースリリース「サステナビリティ・リンク・ローンの契約締結について」(2025年2月26日)及び㈱日本格付研究所 第三者意見「サステナビリティ・リンク・ローン原則への適合性確認結果」(2025年2月25日)の記載を参照ください

 

b.「三協立山グループ 人権方針」の制定

当社グループの事業活動を取り巻く状況の複雑化及び人権に関する国際社会の動きから、国際基準を踏まえて「ビジネスと人権」の観点での企業姿勢・取り組みを明確に示すことが必要となってまいりました。当連結会計年度は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権に関する状況、企業に求められる対応について理解を深めながら、「人権方針」の策定に取り組みました。

サプライチェーンを含む当社グループの事業活動を通じて、人権侵害を引き起こす、関与・助長する可能性のあるリスクを評価し、特に潜在的な影響や深刻度が高いものや優先的に取り組むべきことを重点課題として特定しました。サステナビリティ推進委員会・政策委員会での議論、専門家評価、社外取締役との意見交換を実施し、取締役会の承認を経て、2025年3月31日に「三協立山グループ 人権方針」を制定しました。

本方針に基づく取り組みとして、人権デュー・ディリジェンスの実施、社内教育やお取引先様への説明による人権尊重の理解を深める取り組みを計画しており、これらの活動を通じて事業活動に関わる全ての方々との信頼関係を築いてまいります。

なお、人権尊重に関する取り組みについては、取締役会の監督のもとに設置されたサステナビリティ政策委員会が本方針に基づき推進してまいります。

 

 


 

 

③リスク管理

マテリアリティは、サステナビリティ推進委員会に設置した専門部会において施策の実施、進捗状況の管理を行っております。専門部会で把握した発生し得るリスク等については、サステナビリティ推進委員会、サステナビリティ政策委員会へ報告され、重要と判断されたリスクについては、取締役会へ報告しております。特に、気候変動への対応の詳細については、「(2) 気候変動への対応(TCFD提言に沿った情報開示)③リスク管理」に記載のとおりであります。

また、当社グループでは、リスク管理の取り組み全体の方針・方向性及びリスクテーマ共通の仕組みの審議等を内部統制委員会で行っております。マテリアリティに関して特定したリスクについては、発生頻度、影響度から内部統制委員会へ報告すべきテーマを特定し、継続して報告しております。

なお、当社グループのコーポレート・ガバナンス体制図は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 <コーポレート・ガバナンス体制図>」に記載のとおりであります。

 

④指標と目標

課題の分野

マテリアリティ

範囲

指標及び2030年度目標

実績

環境への配慮

気候変動への対応

グループ

・温室効果ガス排出量(Scope1・2):50削減

2017年度比として、グループの事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1・2)の削減目標。

前連結

会計年度

(注)1

34.6削減

グループ

・温室効果ガス排出量(Scope3):25削減

2022年度比として、グループの事業活動の上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減目標。

前連結

会計年度

(注)1

16.1削減

資源の有効活用

提出会社

・建材向けアルミリサイクル率:80(注)2

国内鋳造所で製造される建材向けアルミニウムを対象としたリサイクル材の使用比率。

前連結

会計年度

(注)1

52.4

従業員のエンゲージメント向上

多様性と

人材育成

提出会社

・女性管理職比率:10以上

管理職全体に占める女性の課長級以上の割合。

当連結

会計年度

3.2

 

(注)1.当連結会計年度の各実績は集計中のため、前連結会計年度の実績を記載しております。当連結会計年度

     実績については、「三協立山株式会社統合報告書 2025」に記載予定であります。

   2.対象とする拠点は、国内鋳造拠点であります。社内の製造工程で生じた端材を含みます。

 

(2) 気候変動への対応(TCFD提言に沿った情報開示)

気候変動は、当社グループにとって、サステナビリティの重要なテーマの1つとして捉えております。2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、気候変動に関するリスクと機会が、事業活動、経営活動、財務計画に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、情報を開示しております。

初めて分析を行った2022年から2024年の3年間で、建材事業・マテリアル事業・商業施設事業・国際事業へと分析の範囲を広げ、当連結会計年度は気候関連リスク及び機会の特定と評価の精緻化、充実化を進めております。

 

①ガバナンス

ガバナンスについては、サステナビリティ推進体制に組み込まれております。2022年12月に、サステナビリティ推進委員会の専門部会としてTCFD部会を設置し、気候変動による事業へのリスクや、成長機会、重要課題を取締役会へ報告するための体制を強化しております。

サステナビリティ推進体制について、詳細は「(1)当社グループのサステナビリティの考え方及び取り組み ①ガバナンス <サステナビリティ推進体制>」に記載のとおりであります。

 

②戦略

気候変動によるリスクと機会の特定にあたり、建材事業、マテリアル事業、商業施設事業、国際事業の4事業のバリューチェーン全体を対象として、TCFDフレームワークに沿って整理し、重要性の評価を行いました。次に国際機関などが公表している外部シナリオをもとに、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つの将来世界観を描き、2030年時点における考慮すべき外部環境変化のシナリオを策定し、リスクと機会を特定いたしました。また、発生時期、事業収益にもたらす影響の大きさにより、大中小の3段階で分類いたしました。

 

■1.5℃シナリオ

境政策及び規制が強化され、カーボンプライシングが導入される。再生可能エネルギー導入や低炭素技術、環境配慮商品供給への投資が要求されるため、エネルギー調達コストや原材料調達コストが増大する。一方、市場では脱炭素関連商材の需要が増加し、環境配慮商品へのシフトが大きく進む。再エネ、省エネに関する技術革新も進展する

参考シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)ネットゼロ排出シナリオ

 

 

リスク

機会

インパクト

事業に及ぼす影響

発生

時期

影響度

建材

事業

マテリアル

事業

商業

施設

事業

国際

事業

移行

リスク

素税の導入

素税の導入による

操業コスト増加

中~

長期

大(注)1

材料への価格転嫁

ルミ地金の

調達コスト増加

中~

長期

大(注)1

ロカーボン対応の

建築基準法の施行

ーボンフットプリント

の削減要求を充足できず

販売機会を損失

中~

長期

サイクルアルミの

需要の増加

解炉ライン構想の

見直し費用の発生

中~

長期

中(注)1

機会

熱性向上のための

リフォーム需要の増加

断熱商品の需要の増加

短~

長期

サイクルアルミの

需要の増加

サイクルアルミを

使用した商品の需要の増加

中~

長期

(注)2

(注)2

 

発生時期:短期 現在~3年、中期 3年~10年、長期 10年~30

(注)1.影響度は4つの報告セグメントを合わせて記載しております。

   2.定量化に必要なパラメータ不足により、財務影響は非算出のため影響度は記載しておりません。

 

■4℃シナリオ

境政策及び規制の強化は先延ばしされ、温室効果ガス排出量の削減は進まず、カーボンプライシングも導入されない。そのため、地球温暖化がさらに進行することで、異常気象による台風や洪水などの深刻化・激甚化が進み、工場やサプライチェーンの維持コストが増加する。また、ナショナリズムが台頭し、地政学リスクが増加する。一方、激甚災害への備えが必要なことから、防災商品の需要が増加する

参考シナリオ:現行政策シナリオ(CPS)、SSP3

 

 

リスク

機会

インパクト

事業に及ぼす影響

発生

時期

影響度

建材

事業

マテリアル

事業

商業

施設

事業

国際

事業

物理

リスク

常気象の深刻化・激甚化(水害の発生)

社工場被災による

売上機会の喪失

短~

長期

大(注)

候変動に起因する感染症の発生・増加

染症対策による国内と

海外のサプライチェーン

寸断

短~

長期

機会

常気象の深刻化・激甚化

防災関連商材の需要の増加

短~

長期

 

発生時期:短期 現在~3年、中期 3年~10年、長期 10年~30年

(注)影響度は4つの報告セグメントを合わせて記載しております。

 

<影響度の大きいリスクと機会への対応状況>

a.温室効果ガス排出量削減の取り組み

社グループは、気候変動対応における2030年目標として、Scope1・2について2017年度比で50%削減、Scope3について2022年度比で25%削減を掲げております。一方、中期経営計画(2025年5月期〜2027年5月期)において、工場・設備の増強を計画しており、これに伴いCO2排出量も増大する見込みであります。この対応として、当連結会計年度は、2030年度目標を達成するべく施策を見直し、中期経営計画期間における温室効果ガス(Scope1・2)削減目標を定めました

この目標達成に向けて、各工場における省エネ施策(主に省エネ型設備への更新、設備の待機電力や圧縮空気の漏えい対策によるエネルギーロスの削減)を推進し、再生可能エネルギーの導入を進め、CO2排出量削減に取り組んでまいります。再生可能エネルギーにつきましては、CO2フリー電力の利用に加え、中期経営計画の投資の一つである新湊東工場(2025年10月竣工予定)の屋根にパネル出力約1MWの太陽光発電システムの導入を計画しております

お、当連結会計年度までに、日本やドイツの拠点でのCO2フリー電力の導入やタイの工場への太陽光発電の導入、照明のLED化などの設備更新、バッテリー式フォークリフトの導入などの計画を実施し、日本国内におけるCO2フリー電力の利用については、2022年6月に4工場、2023年6月に2工場、2024年6月に2工場で切り替えております

 

 

b.資源循環促進の取り組み

温室効果ガス全排出量(Scope1・2・3)に占めるScope3の割合は90%超(2024年5月期)となっております。その多くが製品の主原材料であるアルミニウムに関するものであります。アルミニウムは、調達や製造時に多くのエネルギーを使用し温室効果ガスを多く排出するため、リサイクルを進めることで、このエネルギーの使用を抑制することができます。このことから、建材向けアルミリサイクル率を高める目標を設定し、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減につなげる取り組みを進めております。

また、当社グループでは、リサイクルを主な取り組みとする「資源の有効活用」をマテリアリティの最重要項目と位置付けております。この背景には、環境負荷の低減と経済成長を同時に実現するサーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行について、日本国内における再生資源を十分に確保し、活用し、付加価値を生み出すことで新たな成長につなげる国家戦略を、産学官が連携して推進していることがあります。当社グループでも重要な事業機会と捉え、特にリサイクルアルミの使用比率を高めた低炭素商品の開発と、サプライチェーン連携による使用済み製品の回収・循環モデルの確立に注力し、資源循環の可能性に挑戦することで、当社グループの成長につなげてまいります。

これらの取り組みを強化するため、中期経営計画の最終年度にスクラップ溶解炉の設備投資を行ってまいります。

 

主な取り組み

1)サーキュラーパートナーズへの参画

経済産業省が「成長志向型の資源自律経済戦略」に基づき設立したサーキュラーエコノミーに関する産学官のパートナーシップ「サーキュラーパートナーズ」のメンバーとなり、循環モデルや技術の検討に参画しております

 


 

3)セブン-イレブンの閉店・改装店舗からアルミ棚を回収する水平リサイクルの運用開始

当社は、セブン-イレブンの閉店・改装店舗からアルミ棚を回収し、新しいアルミ棚を原材料の一部とする水平リサイクルの運用を開始いたしました。㈱セブン-イレブン・ジャパンと連携し、アルミ棚を選別して回収することで、品質が確保された良質なアルミスクラップを調達するリサイクルを可能にいたします。

 

4)解体建物からアルミ建材を回収する水平リサイクルの実証事業開始

当社は、明治安田生命保険(相)、㈱竹中工務店、㈱シンワ、㈱HARITA、㈲豊栄金属と共同で建物解体時に生じるアルミ建材の水平リサイクル実現に向けた実証事業を開始いたします。明治安田生命保険(相)が所有する建物の解体工事においてアルミ製カーテンウォールを単独解体・分別回収し、適切な保管・管理・運搬・高度選別を経て、トレーサビリティを確保した高品質な原材料として製造先へつなげる実証事業であります。建物解体時に発生するアルミ建材の水平リサイクルにおける課題抽出、手法確立の検討、実現により、新たな付加価値の提供を目指します。

 

 

③リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ推進委員会に設置されたTCFD部会のもと、直接操業や上流、下流のバリューチェーンに関連する気候関連リスクと機会について、発生頻度、影響範囲等から分析を行い、対応策等を総合的に評価し、優先度合いを決定しております。このプロセスに基づき特定した重要度の高いリスクと機会については、年4回定期開催されるサステナビリティ推進委員会及びサステナビリティ政策委員会へ報告しております。両委員会で重要と判断されたリスク及び機会については、取締役会へ報告するとともに、TCFD部会を通じて関連部署へフィードバックしております。また、進捗は定期的にサステナビリティ推進委員会、サステナビリティ政策委員会に報告し、取り組みに対するモニタリングを行っております。

 

④指標と目標

候変動への対応に関連性の高い「Scope1・2」「Scope3」「建材向けアルミリサイクル率」について、指標・目標を定めております

当連結会計年度は、「Scope1・2」の中期経営計画の最終年度目標を定めました。

気候変動への対応 リスク及び機会に関する指標

目標値

リスク

Scope1・2 温室効果ガス排出量

2030年度 50%削減 (基準年2017年)

2026年度 37%削減 (基準年2017年)

Scope3   温室効果ガス排出量

2030年度 25%削減 (基準年2022年)

機会

建材向けアルミリサイクル率

2030年度 80% (注)

 

  (注)対象とする拠点は、国内鋳造拠点であります。社内の製造工程で生じた端材を含みます

 

 

(3) 人的資本

人的資本は当社グループの価値創造プロセスにおいて最も重要な要素の1つであり、中期経営計画にて設定した中長期の人材戦略に基づき、その価値向上に向けて取り組んでおります。社員一人ひとりが自ら成長し、自らの価値を高められる環境をつくり、労働人口減少時代に選ばれる、持続的成長可能な魅力ある会社の構築に向け、人的資本経営強化への基盤整備を推進しております。また、人的資本に関する課題について分析・整理し、経営層と共有を進めてまいります。

 

①戦略

当社は、中長期の人材戦略として、必要なタレントの確保と人材総合力の最大限の発揮のため、働きやすさを基盤とした成長・やりがいを伴う自己実現の場の構築に取り組んでおります。必要なタレントの確保と人材総合力の最大限の発揮に向けて、収益性を高める最適な組織体制と人員配置、多様(女性、高齢者、障がい者、外国人、キャリア採用者)かつ優れたスキル・キャリア保有人材の獲得と定着、個々の多様な強み・個性を認め・生かす企業風土、自ら考え・学び・役割を創造・成果を創出する自律的人材に溢れた企業を目指して取り組んでまいります。また、働きやすさを基盤とした成長・やりがいを伴う自己実現の場として、安全と健康に配慮した職場環境の中で、社員が望むキャリアビジョンの実現支援、成長を後押しする教育体系の構築などにも取り組んでまいります。このような基盤整備や人的資本への投資から、従業員のエンゲージメント向上につなげてまいります


 

人的資本経営強化への取り組み体制

社では、2024年に設置した人事戦略部門と経営企画部門などが連携し、中長期的な方向性と戦略を策定した上で、社員一人ひとりが尊重され多様な人材が活躍することを支援・推進しております。また、女性の活躍促進や障がい者の雇用促進を含むダイバーシティ推進部門と、サステナビリティ推進委員会の人材活躍部会では、女性社員の活躍を妨げる要因の特定とその解消、人材育成などを含めた具体的な計画を策定し実施しております。全社的な戦略的人員配置を目指した業務効率化については、業務改革推進部門を中心に、省人・自動化、デジタルを活用した新たな働き方の構築を推進しております

 

<人材育成方針>

人材育成については、当社グループの持続的な成長を支え、お客様へ喜びと満足を提供するために新しい価値を創造できる人材の育成を目指し、階層別研修のほか、通信教育受講の奨励、社内e-ラーニング、公的免許・資格取得に対する報奨金支給等の自己啓発やキャリア形成支援を行っております。今後も、創業の原点である「お得意先」「地域社会」「社員」の三者が協力し共栄するという協業の精神に基づいた経営理念に表されるように、「自ら成長する意欲」を持った社員に対し、知識・能力・技術レベルに応じた多彩な教育プログラムを通じて、スキルアップ支援を実施することで、「お得意先」「地域社会」への貢献を目指します。

 

社内環境整備方針

当社は、社員一人ひとりが、お互いの「違い」を尊重し合い、それぞれの「個性」を生かしつつ能力を発揮し、企業に貢献できる環境づくりに取り組んでまいりましたが、更なる雇用環境の整備のための行動計画を定めております。

 

主な取り組みは以下のとおりであります。

マテリアリティ

当連結会計年度の取り組み

2025年度以降の取り組み

a.働きやすい職場環境づくり

社員の意見を吸い上げる仕組みづくり

・従業員エンゲージメント調査実施

人材確保・定着

・従業員エンゲージメント向上活動強化

b.健康と安全

健康・安全な職場環境の整備

・健康診断及び二次受診率向上の取り組み

・女性健康セミナーの実施

・男性育児休業取得率向上研修

・ウォーキング大会の実施

・VR動画を活用した危険感受性を高める教育

健康・安全・働き方

・健康経営への取り組み推進

・男性育児休業取得率向上研修

・仕事と介護の両立支援研修

・労働環境、条件改善

・VR動画を活用した危険感受性教育の継続

c.多様性と人材育成

創造性に富む人材の確保・育成

人材育成

・経営リーダー研修

・管理者研修

・人材育成、能力開発の支援

・デジタル人材育成

多様な人材の活躍

・タレントマネジメントシステムの導入準備

人材育成

・次世代リーダー育成や管理職研修の充実

・デジタル人材育成

・グローバル人材育成のための制度設計や運用実施

多様な人材の活躍

・タレントマネジメントシステムの導入、運用

女性社員の活躍推進

・管理職登用の推進

・女性社員向け管理職育成計画の実施

・D&I e-ラーニングの実施

・チームワーク向上セミナーの実施

多様な人材の活躍

・社内の意識や組織風土の改革

・女性社員の積極的なキャリア選択への啓発と支援

・チームワーク向上ワークショップの開催

・イクボス宣言の実施

シニア人材の活躍推進

・シニア人材の活躍に向けた処遇の改善

多様な人材の活躍

・シニア人材の活躍に向けた処遇や意欲向上

 

 

当連結会計年度の主な取り組み

a.働きやすい職場環境づくり

当社グループでは、毎年全従業員に対するエンゲージメント調査を実施し、現状分析と課題認識を行い、改善につなげております。また、職場風土に与える影響が大きくチームづくりの要となる管理職向けの啓発教育として毎年、労務管理やコンプライアンス遵守・ハラスメント防止、多様性推進のための女性活躍や障がい者雇用等に関する研修会を行い、管理職の意識向上を図るとともに働きやすい職場環境づくりを進めております。

 

 

b.健康と安全

基本理念

従業員の安全と健康は、企業の存立の基盤をなすものであり、安全衛生の確保は、企業の社会的責任であります。当社グループでは、人間尊重を基本理念とし、「安全第一」と「健康保持増進」をもとに全員参加で安全衛生活動と健康経営を展開しております。

 

・健康経営の推進

当社は、社員の健康を重要な経営基盤と考え、2019年10月に、従業員の心身の健康の保持・増進に取り組む姿勢を示す「健康経営宣言」を策定いたしました。健康経営推進体制として、代表取締役社長を健康管理推進委員長とした「健康管理推進委員会」を設置し、施策の立案、実行、効果の検証を行っております。


 

・健康経営の取り組み

当社は、多様な人材の誰もが働きやすい職場環境づくりを目指して、仕事と生活の両立を図るワークライフバランスを推進し、有給休暇の取得率向上や長時間労働の削減、業務効率化に取り組んでおります。

た、健康経営の推進について経営会議で定期的に報告を行っており、取締役、執行役員へ健康に対する意識付けを行うとともに職場環境の改善へつなげております

 

・健康経営優良法人認定の取得

社は、2025年3月に、経済産業省及び日本健康会議より、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。また、連結子会社のST物流サービス㈱は、同制度にて「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門(ブライト500)」に認定されました

社は「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に5年連続の認定となります。連結子会社のST物流サービス㈱は「健康経営優良法人(中小規模法人部門(ブライト500)」に4年連続の認定となります

 


 

c.多様性と人材育成

当社では、変化の激しい市場環境に対応し、常に迅速に新しい価値を創造するため、女性、外国人、様々な経験を持つキャリア採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行っております。今後は、それぞれの特性や能力を最大限生かせる職場環境の整備や管理職層の教育などの取り組みを進めてまいります。

 

・従業員教育

選抜教育

来の経営者や経営幹部候補者を対象に、経営リーダー研修や改革リーダー研修を実施しております。また、女性リーダーの更なる育成を目的とした外部研修への参加など、リーダーとしての資質を磨き、他業種の方との交流などを通じて新たな視点を持った人材の育成を行っております

 

階層別教育

新入社員の早期戦力化、職場定着を目的にチューター研修をはじめ、入社から3年にわたり、段階的にフォローアップする研修を行っております。また、階層別に必要能力の組み込みを図るべく、各種研修を企画・実施し、事業環境を取り巻く様々な課題を的確に解決できる人材や、次代のビジネスリーダーの育成にも取り組んでおります

 

デジタル人材教育

社では、DXを推進し企業変革を実現するため、段階的なデジタル人材育成を実施しております。全社員向けの基礎・初級レベルのe-ラーニングは完了し、次の段階として中級レベルの集合研修を通じ、高度な専門知識と実践的スキルを持つDXビジネス人材の育成に注力しております。これらの取り組みを通じて、当社の競争力強化と業務効率を図るとともに、デジタル技術を活用した新たな価値創造と事業成長を加速してまいります

 

自己啓発支援

通信教育講座の受講奨励や社内e-ラーニングなどの自学手段の提供、公的免許・資格取得に対する報奨金支給など、従業員の自己啓発やキャリア形成をサポートしております。

 

・女性社員の活躍推進

れまで働きやすい制度を整える取り組みを続けてきたことで、女性社員は定着してまいりました。当連結会計年度は、「女性活躍を進めるための組織風土の改革」に向け、主に課長職を対象に、外部講師による『三協立山を良くしていくための、チームワーク向上セミナー』と題し、心理的安全性やチームワークに関する研修会等を行いました。また、女性社員に対しては、管理職として必要な知識や経験を学ぶ研修の受講促進や、積極的なキャリア選択支援などを行っております

後は、女性社員の業務領域を広げ、さらに女性社員の経験・スキル向上を目指した施策や全社的な教育などを軸に、職務内容の特性に応じた人材育成施策を展開してまいります

 

キャリア採用

社グループでは、年間を通して即戦力となる実務経験者を採用しております。Uターン、Iターン、Jターンを希望する方にも、全国に拠点を持つ強みを生かして積極的に対応しております

た、業界未経験・他業種からの人材の積極的な採用や、アルムナイ採用を開始することで、それまでの知識・経験を生かして新たな価値創造に取り組んでおります

 

障がい者雇用

がい者雇用を進めることは企業の社会的責任であり、多様性を推進する上においても障がい者を含めた全ての人が活躍できる環境を整えていく必要があります

社グループでは以前から障がい者雇用に取り組み、様々な障がいのある社員が製品の加工、組立、梱包、管理や設計、業務、総務、人事部門等、様々な部署で日々活躍しております

 

②指標と目標

材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、女性社員の活躍を推進するために、「女性管理職比率」を掲げており、当連結会計年度では3.2%(出向を含む)となっております

社においては、関連する指標のデータ整理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、「女性管理職比率」に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております

 


 

 

 

マテリアリティ

範囲

指標及び2030年度目標

実績

当連結会計年度

多様性と人材育成

提出会社

女性管理職比率10

理職全体に占める女性の課長級以上の割合。

3.2

 

 

3 【事業等のリスク】

価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります

お、記載した事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものでありますが、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません

 

(1) 経済環境に関するリスク

①景気動向

社グループは、ビル建材製品、住宅建材製品、エクステリア製品の開発・製造・販売、アルミニウム及びその他金属の鋳造・押出・加工・販売、店舗用什器、看板の製造・販売、店舗及び関連設備のメンテナンスを主な事業としております。当社グループの製品は多岐にわたり、その多くは国内における建設業、小売業、自動車関連産業をはじめとした各種産業に使用されており、一部は海外で製造、販売されております。このため、当社グループの経営成績は主に、日本国内及び海外の景気動向、為替動向、資材価格市況、建設会社の建設工事受注高や住宅着工戸数の変動、国内鉱工業生産、民間消費動向等の影響を受ける可能性があります

のような状況に対処するため、当社は事業セグメントとして「建材」「マテリアル」「商業施設」「国際」と幅広く事業展開することで、特定の経済環境変化により一部の事業が影響を受けてもその他の事業活動で補い、リスクを最小限に抑えるような事業構造を目指しております

 

②金利の変動

社グループは、金融機関等からの借入金など有利子負債を有しております。金利が上昇した場合、支払利息が増加する等、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります

利上昇のリスクを抑えるため、金利スワップ等のヘッジ取引等により金利の固定化を行い、リスク低減に努めております

 

③投資有価証券の保有

社グループは、重要な取引先の株式を中心に、長期投資目的の株式を保有しております。株式市況の低迷等により保有株式の価格変動が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、保有株式の有効性評価を定期的に行い、取締役会にて保有の適否を判断しており、不要と判断された株式は速やかな処分を行うこととしております

 

④為替の変動

替変動により、当社グループの外貨建取引から発生する資産及び負債、売上高等の円貨換算額が当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります

ドル、ユーロ、タイバーツ及び人民元等の主要通貨の変動の影響を最小限に抑えるため、金融機関等と為替予約等のヘッジ取引を行っております

 

(2) 当社グループの事業活動に関するリスク

①原材料・資材などの価格変動

社グループは、資材や部品等を調達しております。そのため、アルミニウム地金・鋼材等の原材料価格、電力や燃料等のエネルギー調達価格、労務費、物流費等の価格変動は、国内外の景気動向や為替変動、資材の需給バランス等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、主原材料であるアルミニウム地金についてはデリバティブ取引の導入や、安定調達と価格変動のリスク分散を目的に長期購入契約を行っております。また、部品の共通化や複数購買化、物流効率の改善等のコストダウンへの取り組みを推進して、原価の抑制に努めております

お、サプライヤーとの取引価格については、対話を重視して定期的に協議を行っております

 

②製品開発力及び競合

社グループは、積極的に研究開発を行い、市場のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに提供し、成長性及び収益性の維持・向上に努めておりますが、競合企業による新製品の投入や価格競争により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、市場分析を踏まえ、価格競争に巻き込まれにくい差別化製品及び高付加価値製品の開発に取り組んでおります。また、アルミニウムの水平リサイクル技術の研究・開発を推進し、サーキュラーエコノミー実現に向けた製品開発に注力しております

 

(3) 海外事業に関するリスク

社グループは、海外に販売拠点、生産拠点を有しております。各国における自然災害、政治的不安、伝染病、戦争、テロリズムその他の社会的混乱、物価上昇、ストライキ等の経済的混乱が発生した場合、海外における事業活動の変動や停止、復旧対応により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、政治情勢、財政情勢、政策変更等について、情報収集を実施し、政情不安等の兆候の早期把握に努めております

 

(4) 法的規制・訴訟に関するリスク

①製品の欠陥

社グループは、JISその他国内外の品質・性能基準及び社内の品質・性能基準に則って各種製品を開発・製造しておりますが、重大な製造物責任賠償やリコールが発生した場合、多額の支払や費用の発生及び社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、開発及び設計の各段階で、リスクアセスメントによるリスク除去と低減、品質確認のための試験やユーザー視点での確認会を実施し、指摘された問題を解決しなければ次工程に進めることができないルールの設定と運用により、重大な製造物責任賠償やリコールにつながる可能性の抑制を行っております

 

②公的規制(法規制)

社グループは、事業の許認可や独占禁止、為替、租税、知的財産、環境、労働関連等、多くの法規制を受けております。将来のこれら法規制の改正、新規規制に伴うコスト増加等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、法令遵守に努めておりますが、法令遵守違反が発生した場合は、公的制裁や社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、各担当部署が中心となって、法令改正情報を収集し、適宜弁護士等の外部専門家を活用しながら当社グループ全体へ情報共有しております。また、「コンプライアンス推進基本方針」を定め、情報発信や各種研修による教育により、従業員一人ひとりの法令遵守に対する理解と意識の向上を図っております。グループ内で発生したコンプライアンス違反事案は、コンプライアンス委員会で情報集約、対応することで内部統制の強化を行っております

 

 

③環境に関する規制や問題発生

社グループは、産業廃棄物の処理に関する法律及び大気、水質、騒音、振動、土壌汚染等の環境諸法令遵守を徹底しております。しかしながら、人為的ミス等による環境汚染により社会的信用が失墜した場合や、関係法令等の変更によって新規設備の投資によるコスト増加が発生する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、世界的問題として取り組みが進められている、気候変動や温室効果ガス削減への対応が必要になっております

のような状況に対処するため、気候変動対策や環境保全活動をはじめとしたサステナビリティ活動に関する方針の審議・策定を行う代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ政策委員会」と、具体的施策を策定し推進する「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。その中で環境保全に関する方針や方向性の策定を行い、方針に基づく様々な課題(エネルギー転換等による温室効果ガス対策、資源循環リサイクル、環境配慮設計、化学物質管理)に取り組んでおります

連結会計年度は、中期経営計画との整合や外部環境の変化等を踏まえてマテリアリティの再評価を行い、新たに「生物多様性の保全」をマテリアリティに追加いたしました。また、サーキュラーエコノミーへの移行を進めることを重要テーマとし、資源の有効活用をマテリアリティの最重要テーマに位置付けております。

当連結会計年度の取り組みは、「2サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)当社グループのサステナビリティの考え方及び取り組み」に記載のとおりであります。また、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言」に基づき、当社グループに及ぼすリスクと機会の特定、分析、評価を行っております。当連結会計年度の取り組みは、「2サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)」に記載のとおりであります。また、主要な自社工場においては、ISO14001の認証を取得し環境管理や監視体制の強化、産業廃棄物管理の徹底に努め、問題発生の防止に取り組んでおります

 

(5) 情報管理に関するリスク

社グループは、業務に関連して多数の企業情報を保有するとともに、多数の個人情報を保有しております。これらの企業情報及び個人情報については、万全の管理に努めておりますが、予期せぬ事態により情報が漏洩した場合には、損害賠償の発生及び社会的信用の失墜等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、グループ全体のセキュリティリスクの把握や対策を推進する「情報セキュリティ委員会」を設置し、学習管理システムを用いたセルフチェック、研修動画の視聴、ウイルスメール対応訓練などにより従業員のセキュリティ意識を向上させております。また、社外持ち出しPCへの暗号化ソフト導入、不審メール等の検知システム導入、アクセス時やアプリ利用時に使用するIDの定期的な検証(利用者と権限)など仕組みの面でもセキュリティ対策を講じることで、社内情報流出など問題発生の抑制に努めております

 

(6) 自然災害、事故及び感染症等の発生に関するリスク

震・水害等の自然災害、火災・停電等の事故災害、感染症の拡大等によって、当社グループの生産・販売・物流拠点及び設備の破損や社員の感染による操業停止に陥る可能性があります。災害や感染症等による影響を最小限に抑える対策を講じておりますが、被害を受けた場合は、復旧対応や事業活動の停止により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、非常時の初期対応や報告経路、対策本部の設置と役割を定め、適切な対応ができるよう仕組みを構築しております。自然災害や事故の発生に備え、定期的な防災訓練や設備の点検等を実施しております。また、事業継続計画(BCP)を見直し、早期復旧ができる体制を再整備しております。感染症への対応については、社員の感染予防対策の実施及び感染状況に関する情報収集と対策実施が行えるよう備えております

 

 

(7) 会計上の見積りに関するリスク

①債権劣化

社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、貸倒見積高を算定し貸倒引当金として計上しておりますが、売掛・手形等の債権が回収不能となり貸倒れが当該前提等を大幅に上回った場合には、貸倒引当金の計上が不十分となる可能性があります。また経済状況の悪化や取引先等の信用不安等による前提条件等の見直しにより、貸倒引当金の積み増しを行う可能性があります。これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、取引先の信用力チェックや与信枠の設定に関して規程やマニュアルを整備するとともに、信用力についての調査と評価を実施し、経営改善状況やリスク低減策等のモニタリングを行っております

 

②減損会計

社グループは、事業用の不動産をはじめとする様々な固定資産を所有しております。こうした資産は、時価の下落や、期待しているキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなど、その収益性の低下により減損損失が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、減損の兆候等について定期的に取締役会に報告し、業績悪化の兆候を把握した際には適時に対策が打てるような体制を構築しております

 

③退職給付会計

社グループの退職給付費用は、退職給付債務の算出に使用する割引率や、年金資産の運用環境が前提条件と乖離した場合に、数理計算上の差異が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、年金資産の運用は安全性を考慮した資産配分に努めるとともに、運用状況の定期的なモニタリングを行っております。また、退職給付制度には確定給付型と確定拠出型を組み合わせた制度を導入しております

 

(8) 人的資源に関するリスク

社グループが海外への事業展開を含め持続的に成長するためには人材確保が不可欠であり、雇用制度の充実や能力開発制度等を通じて雇用確保と人材育成に努めておりますが、少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり雇用競争の激化や退職率の上昇により有能な人材の獲得や流出防止が困難な場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります

のような状況に対処するため、4月の定期採用に加えて通年のキャリア採用を推進しております。高齢者や女性、外国人の人材確保等ダイバーシティの推進を行うとともに、各種研修プログラムの他にも通信教育受講の奨励や社内e-ラーニングの提供など自己啓発支援を行い、人材育成に努めております。また、エンゲージメント調査を実施し、現状分析と課題認識を行い職場環境の改善につなげております。ストレスに関する調査を定期的に行い、必要に応じて産業医による面談を提供するなど、従業員の心と体の健康に配慮した取り組みを実施しております。仕事と生活の両立を目指した長時間労働削減(ワークライフバランス推進)や働きやすい職場環境を整えることで離職防止や生産性向上の取り組みを行っております

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります

 

① 経営成績の状況

連結会計年度における当社グループを取り巻く外部環境は、国内経済において、企業収益の改善を背景に堅調な設備投資がみられ、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しで緩やかな回復基調になりました。一方、諸資材価格や物流費、労務費の上昇が継続する中で、建設費の高騰などを背景に新設住宅着工戸数が弱含みになり、総じて厳しい事業環境が続きました。海外においては、ドイツ経済は製造業の低迷などにより回復が遅れました。タイ経済は自動車市場が低迷しましたが、輸出の拡大などによる景気回復がみられました

 

このような環境のもと、当連結会計年度の業績は、売上高3,594億24百万円前連結会計年度1.8%増)、営業利益15億45百万円前連結会計年度59.4%減、経常利益9億44百万円前連結会計年度75.7%減となりました。親会社株主に帰属する当期損失は23億36百万円前連結会計年度は10億19百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました

 

 


 

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 


 建材事業では、諸資材価格や物流費、労務費の上昇による建設費の高騰などを背景に新設住宅着工が弱含みになるという厳しい事業環境のもと、収益構造の変革、基盤事業の強化と新規・成長事業の育成にチャレンジしております。ビル事業では、より強固な収益基盤の確立と改修事業の拡大、住宅事業では、収益改善とリフォームや非住居木造物件対応など成長事業の育成、エクステリア事業では、基幹商品シェアアップ、パブリックエクステリア強化や事業領域の拡大への対応強化を進めてまいりました。特に高い意匠性と機能性を両立させたカーポート「FⅡ(エフツー)」のタイプ追加による拡充、カーポート型太陽光パネル架台「エネジアース」のリファインにより、価格・納期・品質の優位性を強化しました。なお、「エネジアース」は、「2024年度 グッドデザイン賞」を受賞いたしました。一方、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みとしては、住宅の高断熱化に寄与する業界最高水準の断熱性能と防災力を兼ね備えた高断熱玄関ドア「プロノーバ2」の発売や、東海旅客鉄道㈱、ジェイアール東海商事㈱との「東海道新幹線再生アルミ」を活用した建材の共同開発など、環境に配慮した商品の開発を進めてまいりました

 当連結会計年度の業績は、価格改定や2025年4月の建築基準法及び建築物省エネ法改正による一時的な新設住宅着工の駆け込み需要があったものの、エクステリア市場縮小の影響などにより、売上高1,786億52百万円(前連結会計年度2.0%減)となりました。 利益については、アルミ地金価格の上昇、物流費の増加などにより、セグメント利益2億36百万円(前連結会計年度89.4%減となりました。

 

 


 

 


 マテリアル事業では、アルミニウム押出形材市場における建材分野の縮小傾向が続いておりますが、輸送分野や一般機械分野、インフラ関連の需要増、軽量でリサイクルに適したアルミへの置き換え需要などにより長期的には需要が増加すると想定しております。このような事業環境の中、建材分野、一般機械分野など主力である既存領域での収益基盤を確立するとともに、将来の成長に向けた自動車分野拡大のための体制構築と積極的な投資を実行し、収益力を高めながら事業拡大を図っております。また、カーボンニュートラル実現に向けたアルミリサイクル促進への取り組みに注力いたしました

 当連結会計年度の業績は、建材分野や輸送分野の市場低迷による影響がありましたが、アルミ地金市況に連動した売上の増加により、売上高597億81百万円(前連結会計年度比12.6%増となりました。利益については、コスト削減効果や減価償却方法の見直しなどにより、セグメント利益26億2百万円(前連結会計年度比77.3%増)となりました。

 

 


 


 商業施設事業では、インバウンド需要や物価上昇などにより小売業販売額は堅調に推移しましたが、小売市場を取り巻く環境は人手不足などによる省人・省力化対応や消費者の多様化する生活スタイルに対応するため、競争力の維持と持続的な成長に向けた積極的な投資が行われております。その需要にお応えするため、ニーズを的確に捉えた提案営業や新たな領域への展開などにより、更なる事業成長を目指し取り組んでまいりました。

 当連結会計年度の業績は、小売業界における業態の枠を超えた競争の激化やインバウンド需要増加を背景に、新規出店や店舗改装の積極的な投資が行われ、その需要を取り込んだことで、過去最高の売上高445億22百万円(前連結会計年度比4.3%増となりました。利益については、物流費などの様々なコスト増加に対し価格改定を含む収益改善策が遅れたことにより、セグメント利益14億60百万円(前連結会計年度比4.8%減)となりました。

 

 


 

 


 国際事業では、ドイツ経済は製造業の低迷などによる景気停滞がみられ、建材やEV市場が低調に推移しました。また、タイ経済は輸出などの回復による成長がみられたものの、自動車市場が低迷する厳しい事業環境になりました。このような環境の中で、セグメント全体で安定的に収益を確保できる体質に変革するため、中長期案件の需要減少に備えた柔軟な体制構築に努めてまいりました。

 当連結会計年度の業績は、欧州子会社ではドイツのEV販売台数減少の影響が大きくありました。一方、為替影響による増収効果と卸売向け販売量の増加、タイ子会社での電子機器分野などの伸長により、売上高761億45百万円(前連結会計年度比2.0%増となりました。利益については、EV販売台数の鈍化に伴う販売構成の変化や製品不具合に伴う一時費用の発生などにより、セグメント損失25億98百万円前連結会計年度はセグメント損失13億6百万円)となりました。

 

 


 

② 財政状態の状況

財政状態の状況については、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ30億91百万円減少202億21百万円(前連結会計年度比13.3%減)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年6月1日

 至 2024年5月31日

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

 至 2025年5月31日

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

17,196

3,216

△13,980

投資活動によるキャッシュ・フロー

△8,620

△14,334

△5,714

財務活動によるキャッシュ・フロー

△6,769

7,470

14,239

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

2,782

△3,144

△5,926

現金及び現金同等物の期首残高

20,455

23,312

2,857

現金及び現金同等物の期末残高

23,312

20,221

△3,091

フリー・キャッシュ・フロー

8,576

△11,118

△19,695

 

(注)フリー・キャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は、前連結会計年度に比べ、139億80百万円減少32億16百万円(前連結会計年度比81.3%減)となりました。これは、退職給付に係る資産負債の減少額27億44百万円、仕入債務の減少額19億49百万円があった一方で、減価償却費82億71百万円の計上があったことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は、前連結会計年度に比べ57億14百万円増加143億34百万円(前連結会計年度比66.3%増)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出132億77百万円があったことなどによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、得られた資金は、74億70百万円(前連結会計年度は67億69百万円の支出)となりました。これは、長期借入金の返済による支出197億70百万円、短期借入金の純減少額65億22百万円があった一方で、長期借入れによる収入352億円があったことなどによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

建材事業

79,093

98.5

マテリアル事業

51,320

110.6

商業施設事業

9,855

110.0

国際事業

71,596

101.6

その他

8

99.0

合計

211,875

102.8

 

(注) 金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

建材事業

59,235

96.0

マテリアル事業

407

144.8

商業施設事業

22,697

105.6

国際事業

273

79.3

その他

100

94.1

合計

82,715

98.5

 

(注) 金額は、実際仕入金額によっております。

 

c.受注状況

当連結会計年度における建材事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

建材事業

(ビル工事物件)

54,555

98.8

40,948

99.5

 

 

d.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

建材事業

178,652

98.0

マテリアル事業

59,781

112.6

商業施設事業

44,522

104.3

国際事業

76,145

102.0

その他

322

89.0

合計

359,424

101.8

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.概要

当連結会計年度の売上高3,594億24百万円(前連結会計年度比1.8%増)と増収となりましたが、営業利益15億45百万円(前連結会計年度比59.4%減)、経常利益9億44百万円(前連結会計年度比75.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は23億36百万円前連結会計年度は10億19百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

b.営業利益

営業利益のセグメントごとの分析については、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

c.営業外損益と経常利益

経常利益9億44百万円となりました。これは、受取配当金4億19百万円、持分法による投資利益2億54百万円などを営業外収益に、支払利息16億10百万円などを営業外費用に計上したことによります。

 

d.特別損益と税金等調整前当期純損失

税金等調整前当期純損失は4億77百万円となりました。これは、投資有価証券売却益5億35百万円などを特別利益に、減損損失10億77百万円、固定資産除却損6億42百万円、環境対策費4億14百万円どを特別損失に計上したことによります。

 

e.親会社株主に帰属する当期純損失

税金費用(法人税、住民税及び事業税、過年度法人税等並びに法人税等調整額の合計額)は16億61百万円非支配株主に帰属する当期純利益1億96百万円となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は、23億36百万円となりました。

 

f.資産

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ104億78百万円増加し、3,004億54百万円となりました。増減の主な内訳は以下のとおりであります。

流動資産

現金及び預金が31億44百万円減少したものの、未収入金等のその他流動資産が36億33百万円、電子記録債権が19億14百万円、それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ20億26百万円増加1,477億10百万円となりました。

固定資産

有形固定資産が85億19百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ84億52百万円増加1,527億44百万円となりました。

 

 

g.負債

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ151億57百万円増加し、2,056億49百万円となりました。増減の主な内訳は以下のとおりであります。

流動負債

短期借入金が63億73百万円減少したものの、未払金等のその他流動負債が102億71百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ32億4百万円増加1,220億9百万円となりました。

固定負債

繰延税金負債が8億2百万円減少したものの、長期借入金が134億29百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ119億52百万円増加836億39百万円となりました。

 

h.純資産

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ46億78百万円減少し、948億4百万円となりました。これは、為替換算調整勘定が12億54百万円増加したものの、利益剰余金が30億60百万円、退職給付に係る調整累計額が24億96百万円、それぞれ減少したことが主な要因であります。なお、自己資本比率は30.4%(前連結会計年度末は33.2%)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況

当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資金需要

社グループの資金需要のうち主なものは、生産能力増強、生産効率向上のための設備投資及び新商品開発投資等の長期資金需要と、製品製造のための原材料等購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。今後も、財務基盤の安定を図りつつ、収益基盤の再構築と成長・戦略投資、変化する国内外市場への対応、更にはカーボンニュートラルに向けた投資など長期的な視点の資金需要に対応する方針であります

 

c.資金調達

社グループは、事業運営上必要な資金の流動性の向上と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針として、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行などの金融機関からの借入、資本市場における社債の発行等により、必要資金を調達しております。当社は、運転資金は内部資金からの充当及び短期借入による調達を基本としており、設備投資やその他の投資資金の調達については、金融機関からの長期借入及び100億円の社債発行登録枠内での社債の発行等を基本としております

た、流動性に関しては、財務柔軟性を確保するため、金融機関との借入限度額200億円のコミットメントラインの契約や、機動的に活用できる債権の流動化枠を確保することで調達手段の多様化を図り、現金及び現金同等物の残高が適正になるように努めております

この結果、当連結会計年度末における借入金は、前連結会計年度末に比べ90億31百万円増加の872億20百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は202億21百万円となりました。

 

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件や仮定の変化により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)当社グループの将来戦略 ②中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)初年度の総括」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

当社は、2025年7月10日の取締役会において、ST Deutschland GmbHが保有しているBonn工場の固定資産の一部を譲渡することを決議し、2025年7月11日に契約を締結いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、2030年までの長期的に目指す姿としてVISION2030を定め、『サステナブルで豊かな暮らしに貢献』『多角化した経営』を掲げ、中期経営計画の基本方針のもと、「持続的な成長」に向けた研究開発に取り組みました。

  その結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は2,548百万円となりました。

セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

(建材事業)

建材事業では、環境配慮とユニバーサルデザインを基本に、「性能」「機能」「ロングライフ」の3つの要素を使う人の立場に配慮して盛り込み、安心・安全で快適な空間と生活に寄与することを目指した商品開発を実施しております。

建築物の省エネルギー化が求められる中、ビル用・住宅用建材分野において、開口部の断熱性能向上が重要な課題となっております。当社では、この社会的要請に応えるべく、ビル用・住宅用共通の設計思想に基づいた次世代高断熱サッシの開発を進めており、高品質と生産性の両立を目指しております。

ビル建材分野では基幹サッシ「MTG-70R」、改修用アルミ樹脂複合サッシ「Grows(グラウス)-R」の個別防火認定品の仕様拡充を図りました。新型コロナウイルス感染症の流行以降いまだ換気に対する注目は高く、屋外側に面格子が取り付けられた状態でも開閉に支障のない採風窓として「防火型MTG-70R 上げ下げ窓」を開発いたしました。また、2022年9月に発売した「Grows(グラウス)-R」の強化として、FIX窓の個別防火対応、引違い窓のW寸法の拡大、レバレッジ引手の追加を行いました

住宅分野では断熱性能、レジリエンス機能に優れた玄関ドア「プロノーバ2」を開発いたしました。アルミ樹脂複合枠+高性能断熱パネルにより業界最高水準となる熱貫流率を実現した「Fクラス(ファーストクラス)」をはじめ、3つの断熱クラスから選べる体系といたしました。

一方、レジリエンス機能では、床下浸水を想定した玄関ドア下端から200mmにおいて、業界初の浸水防止性能Ws-3等級相当を確保しており、強風や突風時の急激なドアの開きによる衝突を防止するバックチェック機能付ドアクローザの標準装備や、最大瞬間風速57m/秒に耐える耐風圧性能S-4等級(片開きドア)など、住まいを守る防災力を追求いたしました。

エクステリア分野では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが広がるなか、ソーラーカーポート架台「エネジアース」のバリエーションを拡充し、産業用ソーラーカーポート分野に本格参入いたしました。積雪の少ない一般地域から多雪地域までの対応や、前方の柱がなく車の出し入れがしやすい後方支持式を開発いたしました。両面タイプの太陽光パネルを屋根材として組み込める一体型構造のスリムな屋根デザイン、優れた排水構造や高品質・高強度が評価され、2024年グッドデザイン賞を受賞いたしました。

研究開発費総額は1,660百万円であります。

 

(マテリアル事業)

マテリアル事業では、「成長を促す技術の強化」を中期基本方針とし、強みとする基盤技術の更なる強靭化と、当社の成長に資する革新的な新技術の開発を目指した研究開発活動を推進しております。

当社の成長事業と位置付ける自動車を中心とした輸送分野においては、競争力の高い高性能押出用アルミニウム合金の早期拡充に向けて、リサイクル性に優れる6000系アルミニウム合金を主体に、実験と計算科学の両面からのアプローチによる効率的な新合金開発を推進中であります。さらには、押出形材を自動車の機能部品に適用する上で不可欠な、形材特性から機能部品としての要求性能をシミュレーションする技術構築にも引き続き注力しております。

一方、カーボンニュートラルの実現に向けて、サステナブルな材料循環に資するアルミリサイクル技術の開発にも引き続き取り組んでおります。当連結会計年度は新幹線再生アルミをリサイクルし、製造時のCO2排出量を大幅に削減した低炭素アルミニウム合金を開発、サッシ等の建材への新規採用に貢献しております。また、2022年7月より開始した国立大学法人富山大学との共同研究講座では、アップグレードリサイクルの研究に精力的に取り組んでおり、産学連携による高度なリサイクル技術の研究開発を通じて若手技術者の育成にも尽力しております。アルミニウム材料を扱う様々なお客様やサプライチェーンとの連携もさらに強化しながら、引き続き取り組みを推進してまいります。

マグネシウム関連事業では、当社が開発した新規難燃性マグネシウム合金の早期実用化に向け、鉄道事業関連企業と協働した次世代高速車両の外装・内装部材への適用技術開発を継続しております。ターゲットとする部材を新たに追加するなど、実用化の実現を加速させております。

研究開発費総額は817百万円であります。

 

(商業施設事業)

商業施設事業では、環境配慮と市場環境及び自然環境の変化に対応した商品開発を推進しており、消費行動の変化に伴う決済サービスの多様化並びに労働人口減少、多国籍労働者・シニア労働者の増加など働き方の変化に対応した商品開発、加えて再生可能エネルギーや樹脂資源循環など環境配慮に向けての課題に注力しております。

「省人化・省力化」の面では、重量センサーを搭載し商品の増減を感知できる無人販売什器をお客様と連携し設計開発に継続的に取り組んでおります。増え続ける医薬品により保管場所の不足や、薬を処方する薬剤師の作業負荷が増大しており、収納量の拡大と機能性の向上に努め、品種・寸法設定を増やし働きやすい環境を提供できる「新型調剤什器」を発売いたしました。

「省エネ化・省資源化」では、CO2排出量軽減に向けて、再生可能エネルギーを活用するソーラー技術を商品に搭載するための研究・検証を進めております。また、急激に変化している自然環境に向けてバッテリー技術の研究・検証を進めるとともに、不具合検知システムの検討にも着手しております。樹脂の資源循環に関しては、工場端材をリサイクルした商品の検討、梱包プラスチック系副資材の紙化、再生材化、再利用化の調査・検討を行い、実用化に向け各種試験検証を進めております。

また、産学連携によるロボット技術の探求を進め、未来店舗の在り方を議論しております。

当社の主力得意先である量販店様に対し、決済サービスの多様化に伴うカウンターやセルフレジ什器など販売促進什器や、シニア労働者に向けた作業軽減アイテムなどの新たな需要の取り込みに向け、積極的に商品提案を行い、受注領域の拡大を図ってまいります。また、樹脂資源循環やCO2排出量軽減、アルミや紙などリサイクル素材の活用など環境に配慮した商品開発を推進してまいります。

研究開発費総額は70百万円であります。

 

(国際事業)

欧州・タイ・中国に展開した押出事業においては、自動車・産業機械・鉄道・航空・建材を主要分野とし、各分野で顧客との密接なプロジェクトにより、顧客が将来に向け求める技術及び製品の開発、市場調査等を実施しておりますが、当連結会計年度に研究開発費として計上するものはありません。