当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、果たすべき使命として「紙の可能性を追求し、多様な機能材との新結合を図ると同時に、環境との調和を目指した商品・サービスの提供を通じて、人類・社会に貢献すること」を掲げ、独自の製品・技術・サービスで世界一の会社を目指しております。
(2)経営戦略
当社グループは、長期経営について以下の基本方針を掲げております。
「新市場の開拓と事業領域の拡大」
「中核商品のグローバル市場における競争優位の追究」
「SDGsと高収益の両立」
「新市場の開拓と事業領域の拡大」については、マーケティングとベンチマーク活動、アライアンス戦略により、次世代中核商品の開発と生産体制を確立し、事業領域をさらに拡大してまいります。
「中核商品のグローバル市場における競争優位の追究」については、世界に浸透するブランドの構築により売上・利益の最大化を図ってまいります。
「SDGsと高収益の両立」については、当社グループはSDGsにおいて注力する10の目標を設定しております。当社は持続可能な社会の実現と利益追求の両立を目指し、優しい素材を使い、優しい機能を提供し、優しい社会を考え、目標達成を目指してまいります。
(3)経営環境
次期の見通しにつきましては、依然として原材料やエネルギー価格の高止まりや物流コスト、労務費、生産諸経費の上昇などコスト面での影響が見込まれます。当社グループを取り巻く環境におきましては、自動車関連資材の需要は底堅く、水処理関連資材は、引き続きアジア・中東地域を中心に需要は堅調に推移しております。なお、昨年からの在庫調整につきましては、下期に向けて一巡する見込みでございます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
第3次中期経営計画「AWA Breakthrough Plan」の最終年度となる当連結会計年度において、当社グループは計画の達成に取り組んでまいりましたが、売上げ利益ともに目標未達となりました。売上面においては、中国経済の低迷と中国内企業の攻勢の影響を受け販売が伸び悩み、加えて新製品の市場投入の遅れがありました。利益面においては、原材料価格や労務費、生産諸経費の上昇による影響を受けました。
このような状況に対応すべく、財務資本と知的資本をフル活用し、第4次中期経営計画(2024年4月~2026年3月)を推進してまいります。
第4次中期経営計画 参照 https://www.awapaper.co.jp/ir/library/material/
第4次中期経営計画では、「事業ポートフォリオの最適化」として、分離膜支持体の拡販強化、新たな顧客価値の創造、および国内生産体制の再構築に取り組み、加えて「経営基盤の強化」として、人的資本、知的財産、そしてパートナーシップを最大限に活用することにより、収益力向上と持続的な成長を目指してまいります。
① 収益基盤の強化
・分離膜支持体の拡販強化
当社はSDGsへの取り組みの一環として、増大する世界の水需要に対応するため、海水の淡水化や純水を製造する逆浸透膜(RO膜)などに使用される支持体用不織布を製造する新工場を、2024年12月完成目指して建設しております。これにより、主力製品である当該製品の生産能力倍増と生産性向上を実現し、競争優位を支えるための体制が整備できることから、今後は営業活動の一層の強化により収益基盤の強化を図ってまいります。
・販売価格の適正化によるコスト対応力強化
外部環境の変化に伴い、特に原燃料価格や人件費の上昇といったコスト構造の変化が当社の収益に影響を及ぼしております。かかる中、当社は販売価格の適正化を図りつつ、コスト構造の変化に対応すべく、生産プロセスの効率化、自動化の推進、生産技術の向上等による生産性向上に努めてまいります。
② 新たな顧客価値の創造
・成長ドライバーとなる新技術・新製品の開発
当社は、研究開発体制の強化を図り、外部の研究機関や大学との共同研究を積極的に行ってまいります。新たな技術の商用化を目指し、プロトタイプの開発から試験運用までのプロセスを短縮し、市場への導入を加速します。また、自社の持つコア技術の進化を図り、新たな製品開発を加速するために、製品設計とプロセス設計を同時に進め、開発期間の短縮と効率化を目指してまいります。
・既存市場への新たな価値創出
当社は、既存市場をさらに深掘りし、新たな展開を図ってまいります。従来の発想に捉われず、VA(価値分析)を用いた提案に加え、顧客にとって重要な環境面や機能価値の向上に注力してまいります。
さらに、自社だけでは達成困難な課題を、外部との積極的なアライアンスを通じて新たな価値に変え、顧客ニーズを超えることを目指してまいります。
これらの取り組みにより、顧客と共にさらなる価値の創出を図り、市場の開拓を図ってまいります。
・カーボンニュートラルに向けて
当社は、環境負荷の低減を企業戦略の重要な取り組みとして位置付け、カーボンニュートラルを目指します。製品ライフサイクル全体を通じた環境配慮への取り組みにより、持続可能な社会の実現に寄与することが、お客様や市場に対する新たな価値の提供につながると考えます。また、環境負荷の低減に寄与する製品開発に積極的に取り組むことで、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。
③ 人的資本の活用
・エンゲージメントサーベイの定期的な実施とフィードバックの活用
当社は、エンゲージメント向上が社員のウェルビーイングと組織の生産性向上に直結すると考えます。このため、全社員を対象としたサーベイを定期的に実施し、その結果を真摯に受け止め、具体的な改善策を速やかに実行に移すことで、エンゲージメントの向上に努めてまいります。
・社員一人ひとりのキャリアビジョンの設定と成長支援
当社は、社員一人ひとりが自らのパーパスを設定し、「何のために働いているのか」を自覚し、自らが考える「将来のありたい姿」の実現に向けて自発的にキャリア開発することを支援します。具体的には、目指す職務や職位などの目標に対して、必要なスキルや経験・至るまでの工程を明確化し、各個人の興味や強みを生かした研修やスキルアッププログラムを提供することで、それぞれの向上心やチャレンジ精神、専門性を高め、長期的な人財育成と定着を図ってまいります。
④ 知的財産の活用
当社は、培ってきたノウハウを見える化し、新事業創出のための「攻めの知財」と新製品を保護する「守りの知財」の活用を推進してまいります。
当社グループにおける当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当社は、以下のとおり「サステナビリティ基本方針」を制定し、3つの観点からサステナビリティに向けた活動に取り組んでいます。
<サステナビリティ基本方針>
当社は、「顧客に最適な機能を提供し、環境にやさしく、便利で快適な生活と文化を創造する」という企業理念のもと、百年以上の歴史を礎に、「経験」「知識」「発想」をさらに広げ、持続的な社会の実現に貢献します。
1. 社是に掲げる「道徳経済合一」主義のもと、自らを律して高い倫理観をもって、公正で誠実な事業活動を推進します。
2. ステークホルダーとの共創により新しい価値を生み出し、リスクと機会の両面からマテリアリティ(重要課題)に取り組み、中長期的な事業成長を目指します。
3. 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する社会的課題の解決に適切に対応し、従業員のエンゲージメント(自発的貢献意欲)の向上に取り組み、持続的な企業価値向上を目指します。
①ガバナンス
当社は、サステナビリティ基本方針に基づき、サステナビリティの視点を踏まえた企業活動を通じて社会的課題解決への貢献と企業としての持続的成長の両立を実現するため、代表取締役社長を委員長とし社内取締役及び執行役員で構成されたサステナビリティ委員会を設置しており、当該体制については「
サステナビリティ委員会は、ステークホルダーの視点から掲げたマテリアリティに対して、中期経営計画での取組みとKPIの設定を行いました。今後具体的な取組状況をモニタリングし取締役会に報告してまいります。
②戦略
当社は、サステナビリティ基本方針に基づき、ステークホルダーと当社事業へのインパクトの2つの視点から、サステナビリティに関する7つのマテリアリティを特定いたしております。マテリアリティの解決に向けた個別テーマの具体的戦略及びマテリアリティに対する取り組み指標(KPI)について、第4次中期経営計画に織り込みました。経営計画推進のなかでKPIの目標達成を図ってまいります。
(7つのマテリアリティ)
③リスク管理
当社は、サステナビリティ委員会において、サステナビリティに関連する様々なリスクを識別、評価、管理し、その活動結果を定期的に取締役会及び監査役会に報告してまいります。
④指標及び目標
当社は、第4次中期経営計画において、マテリアリティに対する取組指標を下記の通り設定いたしました。各指標の進捗状況をサステナビリティ委員会において適切に管理・評価してまいります。
※提出会社の状況を記載しております。
(2)人的資本
当社は、創業の精神・経営理念に基づき、「阿波製紙は、謙虚に学びつづけ、助け合い、自ら変化にチャレンジしていく人材を求める」とする人事理念を定めており、企業繁栄の根本は人材であり、人材は成長する資源であると認識しております。当社は、国籍や性別等を問わず従業員一人ひとりが成長することで仕事に対する誇りを感じ、職場の仲間との連帯感や信頼関係を持ち、いきいき、わくわくと働くことができる職場環境の実現を目指しております。
①戦略
a.人材育成方針
当社は、以下のとおり人材育成方針を定めております。
全従業員が創業の精神・経営理念を理解し、人事理念に則り、以下に定める育成目標に向かって、会社の業務遂行に必要な力量(知識および技量)を計画的に習得し、能力の向上を図っていきます。
また、従業員一人ひとりが自らのパーパスを見いだし、「何のために働いているのか」を自覚し、自らが考える「将来のありたい姿」の実現に向けて、一人ひとりの自発的なキャリア開発を支援していきます。
(育成目標)
・自ら変化にチャレンジしていく自律的な従業員の育成
・社会の要求にこたえられる従業員の人格形成に必要な能力、態度の習得
・品質の向上・維持のために常に改善意欲を持ち、顧客の信頼を創造する従業員の育成
・地域環境に感謝し、地球環境の保全、調和を目指す活動に自主的に取り組む従業員の育成
イ.個人の成長、自律化と組織の前進に向けたエンゲージメント(自発的貢献意欲)の向上
当社は、従業員一人ひとりが組織目標を共有し、問題意識をもって従業員自らが自発的に挑戦、努力、創意工夫する課題を設定するとともに、課題解決に向けて日々挑戦し、努力した取り組み過程(プロセス)を反省して次の取り組みに生かしていくことにより、日々の業務活動を通じて成長していくことを目指しております。
また、当社は、従業員が自律的に学び、成長し続けることが組織の前進、会社の持続的な成長に繋がると認識し、従業員自らがWill・Can・Mustの視点から、「仕事を通じて達成・実現したいこと」「現在自分ができること」「会社から期待されるためにやらなければいけないこと」を考え、「将来のありたい姿」のキャリアビジョンを描くため、従業員一人ひとりのキャリアビジョン行動計画(社員自らが考えるキャリア形成)の策定支援を行っております。
ロ.多様な人材採用
当社は、人事理念に基づき、常に新しい技術を生み出す創造力とグローバルな視点、そして自らの未知の分野を開拓する行動力と情熱を持って前進できる多様な人材の採用に取り組んでおります。
(求める人材像)
b.社内環境整備方針
当社は、以下のとおり社内環境整備方針を定めております。
イ.ダイバーシティ&インクルージョンの推進
ダイバーシティ&インクルージョンの推進により、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観等の多様性を尊重し、認め合い、従業員一人ひとりが成長することで仕事に対する誇りを感じ、職場の仲間との連帯感や信頼関係を持って、いきいき、わくわくと働くことができる職場環境の実現を目指していきます。
また、従業員一人ひとりが健全に、いきいき、わくわくと働き続けることが、会社の持続的な発展成長の実現に不可欠であると考えるため、ダイバーシティ&インクルージョンの推進とともに、ワークライフバランスの向上、ならびに健康経営の推進に取り組んでいきます。
ロ.ワークライフバランスの向上
仕事と育児・介護との両立、男性の家事・育児への参画を促進するため、多様で柔軟な働き方を推進し、男女が共に職業生活と家庭・地域生活等を両立することができる就業環境を整備していきます。
当社は、2021年に経営者・管理職が「イクボス宣言」を発信し、部下のワークライフバランスを考え、職場全体の業務効率の向上に努め、自らも率先してワークライフバランスに取り組んでいきます。
ハ.健康経営の推進
従業員が心身ともに健康で、いきいき、わくわくと働ける環境づくりを推進していくことが、企業価値の向上につながると考え、企業全体で健康経営の方針を共有し取り組んでいきます。
②指標及び目標
当社は、上記「①戦略」において記載しました人材育成方針及び社内環境整備方針に基づき、次のとおり指標及び目標を設定しております。
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目標 |
指標 |
2023年実績 |
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ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
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ワークライフバランスの向上 |
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健康経営の推進 |
健康維持・増進(疾病予防) |
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メンタルヘルス 対策 |
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エンゲージメント向上 |
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※提出会社の状況を記載しております。
(注)1.指標(実績)の中で、年次有給休暇取得率、特定保健指導該当率、運動習慣者比率については、
2022年度の実績であります。
(注)2.当社の採用している従業員エンゲージメント調査が4件法で実施していることから実績、目標値を4件法で表示しております。
当社グループは、事業運営及び展開において様々なリスクの発生が想定され、それらの想定されるリスクを事前に認識し、事実上可能な範囲で想定されるリスクの対応策を検討・実施しております。しかし、全てのリスクを低減または排除することは困難であり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態、社会的信用等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、以下において重要なリスクと判断した事項を記載しておりますが、事業に係るリスクをすべて網羅するものではありません。また、将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであり、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、経営成績等の状況に与える影響度につきましては、現時点では合理的な予測が困難であり、記載しておりません。
(1)事業環境変化に関するリスク
[概要]当社グループは、自動車関連資材及び水処理関連資材を主力製品としており、これらの市場はグローバルなサプライチェーンに組み込まれており、日本、北米、アジア地域をはじめとする世界経済の変動が、製品の販売動向等に影響する可能性があります。また、当社グループが主力とする分野では競合先が存在しており、今後競争が一段と激化した場合には、販売数量の減少及び採算の悪化により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、環境変化に対応するため、自動車関連資材においては海外連結子会社と緊密に連携し、環境負荷低減につながる商品開発や最適地生産によるサプライチェーンの見直し、グローバルな拡販活動や相互バックアップ体制の構築等を組み合わせ、付加価値向上による商品力強化に努めてまいります。水処理関連資材においては、顧客ニーズに合った商品開発及び積極的な拡販活動をグローバルに展開することで各地域でのプレゼンス向上と市場シェアの維持強化に努めております。また、生産面における原価低減活動や間接業務のIT化、業務プロセスの見直し等による収益力強化を図り、環境変化への対応力向上に努めてまいります。
(2)安定調達に関するリスク
[概要]当社グループは、主要原材料の木材パルプ、リンターパルプ等を海外(北米、南米、欧州など)から調達
しているため、国際輸送混乱による納入遅延の発生、産地での作柄による変動等が不可避となり、当社グループの
業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、主要原材料の代替材料の検討や調達における複数購買等による調達先の分散化及び適正在庫の確保等、グループ全体で安定的な事業継続に取り組む体制を構築しています。
(3)人財確保・育成に関するリスク
[概要]当社グループは、中長期的な企業成長のためには優秀な人財の確保・育成が重要であると認識しています。しかし、少子高齢化に伴う労働人口減少による人財確保難及び優秀な人財の社外流出、人財育成の遅れ等により人的資本の充実が進まず、高度な技術の承継にも支障が生じることにより、当社グループの業績と成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、多様な人財が集まり育つ人事制度として、新卒採用においてはインターンシップなどに注力し、専門性を持つ人財の中途採用は積極的に通年採用に努めています。また、幹部人財の育成プログラムを導入するとともに、ワークライフバランスの実践に向けた多様な働き方に対応した各種制度を整備してまいります。
(4)事業ポートフォリオに関するリスク
[概要]当社グループは、自動車関連資材及び水処理関連資材を主力製品としております。自動車関連資材については、今後、電気自動車や燃料電池車等の急な普及が予想され、当社グループのエンジン関連商品の需要が大きく減少する可能性があります。また、水処理関連資材については、新規参入企業や既存競合他社からの販売攻勢により、当社グループの分離膜支持体用不織布の市場シェアが大きく減少する可能性があります。
こうした状況が発生した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、主力製品に依存することによるリスクを軽減すべく、主力製品の更なる強化に努める一方、新事業の創出や事業領域の拡大にも注力することにより、事業の分散を図り、事業環境変化による影響の軽減に努めております。主な新事業領域の拡大としては、自動車動力源の電動化や発生する熱に対応する断熱材ブランド「M-thermo」の拡充を図っており、サーマルマネジメント分野における市場開拓に努めております。
(5)海外事業展開に関するリスク
[概要]当社グループは、海外連結子会社において製造販売及び研究開発活動を行うとともに、中国において駐在員事務所を設置し、販売支援を行っております。グローバルな事業活動を行うにあたり、各国の法的規制、経済情勢、政情不安、パンデミックの発生等事業環境の不確実性等のリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、内部統制システムの基本方針に基づき関係会社管理規程を制定し、海外子会社の情報収集や現地の経営環境に適した事業運営の管理強化に努めています。また、親会社の役員が子会社の役員に就任しガバナンスを強化するとともに、幹部社員を子会社に派遣する他、WEB会議やDXを活用した生産・販売部門等の相互連携強化による業務支援とオペレーショナルリスクの低減に取り組むなど、グループ管理体制の充実を図っています。
(6)自然災害・パンデミックに関するリスク
[概要]当社グループは、国内生産拠点の全てが徳島県内に集中しており、大規模地震による津波の発生及び地球温暖化による大型台風や洪水、異常渇水等の多様な自然災害の発生により生産活動に甚大な被害が発生する可能性があります。また、感染症の世界的な流行拡大等によるパンデミックの発生により、サプライチェーンの寸断や従業員の出勤停止等による工場の稼働停止が発生する可能性があります。このような事態が発生した場合には、生産能力の著しい低下や設備の復旧に伴う多大なコストの発生が見込まれ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、リスクマネジメント基本方針に基づき「緊急時対応マニュアル」を策定するとともに、大規模地震等の災害発生時にも事業活動を継続し、製品の安定供給が図れるようにBCP(事業継続計画)を策定し、定期的見直しを行っております。また、従業員や家族の安否確認、災害対応備蓄品等を備え、定期的な訓練及び設備の点検を実施しております。
また、感染症等のパンデミックへの対応については、基本的な感染予防対策の徹底に加え、リモートワークによる在宅勤務体制の推進、WEB会議やDXの活用等、グループ全体において可能な限りの感染防止対策に取り組んでおります。
(7)コンプライアンスに関するリスク
[概要]当社グループは、社是である「道徳経済合一」主義のもと、企業倫理規範を定めてコンプライアンス経営の徹底に努めております。しかし、重大なハラスメント、労働法令違反、人権問題等の重大なコンプライアンス違反が発生した場合、または産業廃棄物や工場排水汚染等、事業活動に関連する重大な法令違反等が発生した場合、行政処分等による生産活動の停止により社会的な信用を失墜し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、会社及び役員・従業員による法令と社内規程の遵守、環境保全に努めるとともに、内部通報規程を制定し、法令違反行為の早期発見と是正を図るためコンプライアンス体制の整備運用に努めております。また、定期的にコンプライアンス意識調査を実施し課題解決に努めるとともに、コンプライアンス情報の発信とセルフチェックの実践により、コンプライアンス教育の充実に努めております。
(8)品質保証に関するリスク
[概要]当社グループは、国内外のお客様に提供する多様な製品に品質問題が生じた場合には、お客様や社会から当社グループの信用を失墜し、企業ブランドや製品ブランドの価値を棄損するほか、損害賠償請求等が発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、品質方針を定め、全員参加で品質マネジメントシステム(QMS)に取り組んでおり、設備の改修も含め継続的な品質改善活動を実践しております。また、不良発生時は品質連絡会で課題として認識し、不良発生のメカニズムを徹底分析の上、発生工程への反映及び類似工程への水平展開を行い、再発リスクの低減や発生予防に努めております。
(9)環境問題に関するリスク
[概要]当社グループは、サステナビリティに関する活動が適切に遂行できず目標を達成できない場合、社会的評価の低下により当社グループの信用及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動への対応について、当社グループ事業と密接な関係を有する森林や水資源に関する環境破壊が世界規模で進んでおり、今後の事業を展開していくうえで重大なリスクと認識しております。
[対応]当社グループは、環境方針を制定し、事業活動全般を通じて地球環境に関するグローバルな社会課題の解決に貢献するための取り組みを推進するとともに、地球環境問題への取り組みを強化するため、2030年度に二酸化炭素排出量を2014年対比37%の削減目標をはじめ、環境保護に関する重要項目を設定しております。。また、効率的で実効性の高い事業活動を推進するため、環境マネジメントシステム(EMS)の認証を取得し、環境意識向上のための教育を行うとともに、グリーン調達基準を制定し、当該基準に適合した原材料の購入等、サプライチェーン各社との緊密な連携強化により持続可能な社会の実現に努めております。
(10)情報管理に関するリスク
[概要]当社グループは、システム障害やコンピュータウイルスの感染、不正アクセスによるサイバー攻撃、従業員等による個人情報の漏洩、会社機密情報の流出等の情報管理リスクが発生する可能性があります。その場合、当社グループの業績、財政状態及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、情報セキュリティ基本方針、個人情報保護方針等を制定し、情報管理を重要な企業活動として位置づけております。情報資産を保護すべく統合セキュリティシステムを最新の状態に保つとともに、重大なセキュリティインシデント発生に備えたサイバー保険を付保しております。さらに教育研修等を通じて情報セキュリティに関する重要性について周知徹底を図っております。
(11)知的財産権の侵害に関するリスク
[概要]当社グループは、当社グループが保有している知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、当社グループ製品の製品差別化や競争優位性が確保されず、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社グループが製造または販売する製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該製品の回収や販売中止を求められる他、損害賠償を請求される可能性があります。その場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、特許権や商標を含む知的財産権を適切に管理する体制を整え、継続的なモニタリングを実施することで第三者による知的財産権の侵害に注意を払っております。また、専門家、データベース及び調査機関を利用した調査に加え、発明協会等の研修受講による情報収集を強化することで、第三者の知的財産権の侵害防止に努めております。加えて、実際に知的財産権に係る係争が発生した場合は、関係者と協力して事業への影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。
(12)サプライチェーンの人権等に関するリスク
[概要]当社グループは、サプライチェーンを通じて、人権の侵害や人権を軽視した事象が発生した場合、社会的信用の喪失、あるいはお客さまとの取引停止や損害賠償責任などにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
[対応]当社グループは、企業倫理規範において「人権の尊重および差別の禁止」及び「公正な国際商取引と異文化の尊重」を定め、国内外の様々なサプライヤーとの取引に関する透明性等の確保に努めるとともに、人権デューディリジェンスに取り組むなど、サプライチェーンの人権等に関するリスクの回避・低減に努めてまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績等の状況
当連結会計年度における世界経済は、中東情勢やウクライナ情勢の緊迫化、米欧における高インフレと不動産市場の悪化等による中国経済低迷などから不安定な状況が続いております。
自動車関連部品市場における需要は、概ね堅調に推移しましたが、中国市場では建設土木需要の低迷により、一部建設機械・産業機械向けが影響を受けました。
水処理分離膜市場における需要は、海水淡水化プラント用途や工業用プロセス水、廃水処理用途の増加により堅調に推移しましたが、中国市場では経済低迷による影響を受けました。
このような状況下、当連結会計年度の売上高は、自動車関連資材について中国市場における主に建設機械向けのエンジン用濾材が減少し、水処理関連資材については中国市場における競争激化とそれに伴う在庫調整の影響を受け分離膜支持体用不織布が減少しました。
利益面では、原価低減活動や原材料価格の上昇に伴う価格改定に取り組みましたが、売上高の減少と労務費、生産諸経費の上昇による影響を受けました。
その結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高16,115百万円(前年同期比1,193百万円減、6.9%減)、営業利益354百万円(前年同期比21百万円減、5.7%減)、経常利益257百万円(前年同期比77百万円減、23.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は52百万円(前年同期比190百万円減、78.4%減)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産総額は、21,246百万円となり、前連結会計年度末より4,972百万円増加しております。主に建設仮勘定が新工場建設に伴い5,205百万円増加いたしました。
負債総額は14,362百万円となり、前連結会計年度末より4,556百万円増加しております。主に短期借入金が3,164百万円、設備関係電子記録債務が1,414百万円増加いたしました。
また、純資産につきましては、6,883百万円となり、前連結会計年度末より415百万円増加しております。非支配株主持分が232百万円、その他の包括利益累計額が173百万円増加いたしました。
以上の結果、自己資本比率は23.9%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は885百万円となり、前連結会計年度末と比較して、556百万円の増加となりました。
各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、792百万円(前年同期比29百万円増、3.9%増)となりました。これは主に仕入債務の減少額802百万円、棚卸資産の増加額175百万円の減少要因があったものの、減価償却費795百万円、売上債権の減少額725百万円の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、3,773百万円(前年同期比3,412百万円増、946.2%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出3,740百万円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、3,511百万円(前年は459百万円の使用)となりました。これは主に短期借入金の純増額3,145百万円があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
自動車関連資材(千円) |
8,448,041 |
△4.5 |
|
水処理関連資材(千円) |
7,199,419 |
0.1 |
|
一般産業用資材(千円) |
1,222,876 |
△10.6 |
|
合計(千円) |
16,870,338 |
△3.1 |
(注)1.当社グループは単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
2.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
自動車関連資材(千円) |
8,252,673 |
△6.0 |
|
水処理関連資材(千円) |
6,606,205 |
△7.8 |
|
一般産業用資材(千円) |
1,256,727 |
△7.7 |
|
合計(千円) |
16,115,606 |
△6.9 |
(注)1.当社グループは単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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株式会社サンコー |
4,805,521 |
27.8 |
4,265,831 |
26.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当連結会計年度の経営成績等について
2021年度から2023年度までの3年間を対象とする中期経営計画『AWA Breakthrough Plan』の最終年度となる当連結会計年度は、売上高、利益ともに目標未達となりました。売上面においては、中国経済の低迷と中国内企業の攻勢の影響を受け販売が伸び悩み、加えて新製品の市場投入の遅れがありました。利益面においては、販売価格の一部値上げを実施いたしましたが、原材料価格や労務費、生産諸経費の上昇による影響を受けました。
このような状況下、主力製品である分離膜支持体用不織布を製造する新工場を2024年12月完成目指して建設しております。新事業の創出につきましては、展示会への出展やWebサイトの活用により製品の魅力を伝えることで認知向上を図るとともに、市場の要求水準を満たす製品開発に努めております。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)による労働生産性向上につきましては、RPAを活用した定型作業の自動化やワークフローなどのクラウドサービスを利用した業務プロセスの見直しと効率化を進めております。
今後も更なる業務の効率化と生産性向上を図るとともに、既存市場の深掘りや研究体制の強化、パートナーシップの活用に取り組み、新たな顧客価値の創出を目指してまいります。加えて、持続的な成長に必要な人材確保と人材育成に注力し、社員のウェルビーイングと組織の生産性向上に努め、持続的な発展と高収益企業の実現を目指してまいります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える大きな要因として、主要市場における経済状況、原燃料の価格上昇、自然災害などがあります。
当社グループが関連する市場としては、主として自動車部品業界や水処理関連市場となりますが、成長市場であることから、今後もグローバル競争の激化や有力な新規参入の増加などが予想されます。こうしたなか、当社グループは、グローバル企業として成長していくため、高性能品の開発や商品ラインナップの拡充、安定供給体制の確立などに努めてまいります。
原燃料価格の変動については、円安の進行及び原油価格の上昇等の影響がありますが、加えて調達先の生産性低下、操業停止・工場閉鎖等による価格上昇の可能性が想定されます。当社グループは、調達先の多様化や調達方法の見直し、製品価格の是正などで生産効率の向上を図り、収益確保に努めてまいります。
自然災害については、当社グループの国内生産拠点が徳島県内に集中していることから、自然災害の発生により当社グループの生産体制に支障をきたす可能性が想定されますが、BCP対応に努め、災害時においても早期に安定供給体制が復旧出来るよう体制整備に取り組んでまいります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
当社グループでは、健全経営維持と企業価値向上のため、事業領域の拡大と収益性の向上を目標としております。また、資産効率と収益性の両面を測る指標として、「総資産経常利益率(ROA)」を経営の重要指標として位置付けております。
この指標を達成するために、当社グループとして「売上高経常利益率」や「総資産回転率」の向上に注力しております。具体的には、アライアンスを含めた新事業の創出、基盤事業の強化と収益改善、総資産の効果的かつ効率的な運用に努めております。
当連結会計年度におけるROAは1.4%(前年同期比0.7%減)となりました。引き続き指標の達成に向けて、グループ一丸となって注力しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料や副資材などの購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資や研究開発投資などによるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は7,747百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は885百万円となっております。
当社グループは、厳しい環境下においても将来を見据えた設備投資や研究開発投資を維持してまいります。必要な資金は営業活動により得られるキャッシュ・フローを基本に金融機関からの借入により調達していく方針であります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
この連結財務諸表の作成にあたりまして、経営者による会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.退職給付費用及び退職給付債務
当社グループは、簡便法を採用している連結子会社を除き、確定給付型制度の退職給付費用及び退職給付債務について、割引率等、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
b.固定資産の減損処理
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や経営環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
c.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の十分性により判断しており、課税所得の算定にあたっては、事業計画をもとに最新の経営環境に関する情報等を反映し見積っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(当座貸越契約)
当社は取締役会において、当社新小松島工場の建設資金として、新たに資金調達することを決議し、以下のとおり当座貸越契約を締結いたしました。なお、当該契約により調達する資金については、新小松島工場竣工後、長期の資金へ借換えを実施する予定であります。
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(1)契約先 |
株式会社阿波銀行 |
株式会社三菱UFJ銀行 |
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(2)借入極度額 |
4,000百万円 |
1,000百万円 |
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(3)契約日 |
2023年9月29日 |
2024年3月29日 |
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(4)契約期間 |
2024年9月30日まで(1年毎の更新) |
2025年3月31日まで(1年毎の更新) |
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(5)契約条件 |
固定金利 |
変動金利 |
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(6)担保の有無など |
無担保・無保証 |
追加担保不要 |
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(7)資金使途 |
設備投資 |
設備投資 |
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(8)取締役会決議日 |
2023年9月12日 |
2024年3月15日 |
研究開発の基本方針
当社グループは、保有している基盤技術の深耕による既存事業の拡大を図るとともに、マーケットイン型R&Dの実行による次世代中核事業の創造を研究開発の基本方針として、既存事業における次世代製品の開発ならびに新規事業の創出にかかる開発に取り組んでおります。
中期経営計画に定める中期事業戦略遂行のために、知的財産は重要な経営資源と捉えており、当社企業活動のさまざまな場面で創造される価値を当社の優位性に確実に結びつけるべく、知財活動に取り組んでおります。その範囲は発明生産支援、特許出願・権利化といった典型的な知的財産活動に加えて、共同開発により得た成果を事業化するために各事業部門との連携強化などが含まれます。
これまでのモノづくりで培ってきた知識・ノウハウ・特許を組み合わせた相乗効果の創出と活用により事業成長に貢献するとともに、ビジネスリスクの低減にも取り組み、企業価値向上を目指して参ります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1)自動車関連資材分野
エンジン用濾材は、用途として主に吸気用、潤滑油用、燃料用フィルターに使用されております。
天然パルプ、コットンリンター、ポリエステルなどの合成繊維を主原料として、空気中のゴミ、他車から排出されるスス、潤滑油中のカーボン粒子、燃料中のゴミ、水分などを取り除き、エンジンに清浄な空気、燃料を供給すること及び潤滑油の性能を維持することができます。当該分野では小型かつ高効率、ダストの高捕捉量を満たすフィルターが求められており、これらニーズに対応するための研究開発を行っております。
また今後の環境規制に対応すべく、さらなる高精度濾材の開発にも取り組んでおり、お客様から良好な評価結果を得ております。一部供給不安のあった原材料については、供給不安のない他メーカーへの切り替えを行うことで、お客様へ安定供給できております。またエンジン用濾材で培った、孔径や通気性・通気抵抗を制御・設計する技術を、他分野にも適用した開発にも取り組んで参ります。
(2)水処理関連資材分野
① 分離膜支持体用不織布
分離膜支持体用不織布は、主に世界の水処理用分離膜メーカーが製造する逆浸透膜モジュールに分離膜支持体として使用されております。
当商品は、専用の抄紙機及び加工機で製造されたポリエステル繊維100%の湿式不織布であります。耐水強度が高く、平滑性に優れることから水処理用の支持体として最適です。用途市場としては、海水淡水化や廃水処理などのインフラ用途をはじめ、工業用、家庭用浄水器など高度な水の需要に対応する分離膜に幅広く使用されており、高い伸び率で成長しております。
当連結会計年度においては、コストダウン品を開発しお客様へ提案しております。また、従来とは少し異なる設備で開発品は現行品よりも良好な評価をいただいております。
市場の幅広いニーズに対応するために、ポリエステル繊維以外を原料とした製品開発や、当社の優位性を高めるために、付加価値を高めた製品開発にも引き続き取り組んでおります。
② M-fine(エム・ファイン)
M-fine(エム・ファイン)とは、当社が提供するメンブレン(ナノレベルの微細な孔径を有する分離膜)及び水処理などのモジュール・ユニットの総称であります。
当社の事業領域の拡大の一環として、廃水処理に使用されるMBR(膜分離活性汚泥法)用浸漬膜及びユニットの事業化推進に取り組んでおります。品質のさらなる向上や高性能化に向けた開発を継続的に行っており、M-fine ユニット新型 Generation 2の開発に努めております。今回の新型は、特に散気量削減によるCO2削減効果が期待でき、またユニットの構造的にも当社の薄くて軽い膜の強みを生かした製品となっております。
排水、廃水の再利用、汚泥濃縮による廃棄物の削減等、様々なニーズにお応えできるよう事業の川下化に向けた取り組みを積極的に行ってまいります。
(3)一般産業用資材分野
一般産業用資材分野の電気・電子部品用機能紙は、主に電子機器などの断熱部材や放熱部材としてのいわゆるサーマルマネジメント材として使用され始めており、電子機器の過酷な発熱環境下における厳しい要求が強まり高い伸び率が期待されている分野です。また、主に耐熱プレス用の工程紙として使用される耐熱クッション紙や金型の製造工程で発生する粉塵を除去するためのワイヤーカット用濾紙などがあります。その他、食品用として主に加工食品の鮮度保持用に使用される脱酸素剤の包材として使用されております。
当連結会計年度においては、産業用フィルターの採用が1件と自動車の電動化による成長が期待されるサーマルマネジメント材(M-Thermo)のリチウムイオンバッテリー用断熱材に2件の採用が決まりました。
また、音響部材の振動板として炭素繊維やセルロースナノファイバー(CNF)を原料とした製品が採用されております。幕張メッセ及び東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド」(2023年9月及び2024年1月)に一部商材を展示し、顧客要求に直結した製品開発を行っております。