第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、果たすべき使命として「紙の可能性を追求し、多様な機能材との新結合を図ると同時に、環境との調和を目指した商品・サービスの提供を通じて、人類・社会に貢献すること」を掲げ、独自の製品・技術・サービスで世界一の会社を目指しております。

 

(2)経営戦略

 当社グループは、長期経営について以下の基本方針を掲げております。

 「新市場の開拓と事業領域の拡大」

「中核商品のグローバル市場における競争優位の追究」

「SDGsと高収益の両立」

 

 「新市場の開拓と事業領域の拡大」については、マーケティングとベンチマーク活動、アライアンス戦略により、次世代中核商品の開発と生産体制を確立し、事業領域をさらに拡大してまいります。

 「中核商品のグローバル市場における競争優位の追究」については、世界に浸透するブランドの構築により売上・利益の最大化を図ってまいります。

 「SDGsと高収益の両立」については、当社グループはSDGsにおいて注力する10の目標を設定しております。当社は持続可能な社会の実現と利益追求の両立を目指し、優しい素材を使い、優しい機能を提供し、優しい社会を考え、目標達成を目指してまいります。

 

(3)経営環境

 次期の見通しにつきましては、足元の金融政策の動向や為替の変動に加え、米国の関税政策や地政学的リスクの高まりなど、不確実性の高い事業環境が継続すると見込まれます。当社グループを取り巻く環境におきましては、自動車関連資材の需要は、電動化の流れが鈍化している影響もあり当面は底堅く推移するものと見込まれ、水処理関連資材については、引き続きアジア・中東地域を中心に海水淡水化や廃水処理用途を軸とした需要拡大が期待されます。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 第4次中期経営計画(2024年4月~2026年3月)の初年度となる当連結会計年度において、当社グループは「事業ポートフォリオの最適化」と「知的資本のフル活用による経営基盤の強化」を重点課題とし、主力製品の拡販と新製品の開発、国内生産体制の再構築、人的資本の強化等の施策を進めてまいりました。一方で、人手不足による人材の確保、為替の乱高下、市場競争の激化、サプライチェーンのリスク増大、米国関税政策による市場環境の不透明化等、不確実性の高い経営環境が続いております。

 このような中、当社は新工場の稼働を開始し、生産能力・供給体制の強化を進めるとともに、第4次中期経営計画に基づく各施策の推進を加速することで、企業価値の持続的向上を図ってまいります。

 

 第4次中期経営計画 参照 https://www.awapaper.co.jp/ir/strategy/plan/

 

Ⅰ. 事業ポートフォリオの最適化

 

① 主力製品の拡販と新製品の開発

・分離膜支持体の供給体制強化

 当社は、世界的な水資源問題へ対応すべく、需要が拡大する逆浸透膜(RO膜)用支持体の分野において、新工場の本格稼働により生産能力を増強し、安定供給体制を構築してまいります。

・分離膜支持体の拡販

 当社は、グローバル市場でのシェア拡大や多用途展開を図るべく、重点市場での営業体制強化とともに提案型営業の推進に取り組んでまいります。

・新製品の開発

 当社は、伸びゆくNEV(新エネルギー車)市場の熱課題に対応する耐火・断熱商品の拡販に取り組んでまいります。

・顧客対応力の強化

 当社の強みである品質の安定性、納期対応力、技術支援機能を生かし、顧客の課題解決や製品開発を支援することで、信頼性の高い関係構築と競争優位性の確立を目指してまいります。

・価格適正化と生産性向上によるコスト対応力強化

 当社は、原材料費・人件費が上昇する中、販売価格の見直しに加えて、生産現場における工程改善や省力化、自動化の推進、生産技術の高度化を通じて、更なるコスト競争力の向上を目指してまいります。

 

② 生産体制の再構築

 当社は、新工場の稼働を契機として、国内における生産体制の見直しと効率化に取り組んでおります。収益性の低い製品群や事業については段階的な縮小・撤退を進めるとともに、生産ラインの統合や稼働バランスの調整を通じて、コスト競争力の向上を図ってまいります。

 また、海外工場との連携を強め、グローバルな経営資源の再構築を通じ、収益力と生産効率の最大化を目指してまいります。

 

③ 新たな顧客価値の創造

・市場ニーズに対応した製品開発の加速

 当社は、研究開発体制を強化し、外部研究機関や顧客との共創型開発を推進することで、製品設計とプロセス開発の並行化を実現し、開発期間の短縮化と市場投入の迅速化を図っております。実証試験やプロトタイプ評価を早期に実施することで、顧客の期待に即応してまいります。

 また、当社の技術的強みを生かしながら、環境負荷の低減や持続可能な社会の実現にもつながる製品・技術を創出してまいります。

・既存市場の深耕

 当社は、顧客の環境対応ニーズに応える製品開発や提案型営業に注力し、協働によるVA(価値分析)や環境負荷の低減に配慮した製品を提案し、深耕を図ってまいります。

・カーボンニュートラルへの取り組み

 当社は、Scope1〜3の温室効果ガス排出量の算定を行い、全社的なCO排出の可視化を進めてまいりました。今後は可視化したデータをもとに、原材料の選定、物流の効率化、省エネ設計の推進など、製品のライフサイクル全体を通じた環境負荷の低減に取り組んでまいります。

 

Ⅱ.知的資本のフル活用

 

① 人財の確保

 当社は、持続的な成長に向けた人的基盤の強化を図るべく、人財の確保を重要課題の一つと位置づけています。採用競争の激化や地域の人手不足により、人財の確保が年々困難になっております。また、若手を中心とした人財流出も課題であり、採用から定着までを見据えた一体的な対応が求められております。

 現在は、採用広報の強化や制度・育成環境の見直しを通じて、確保と定着の両面から基盤づくりに取り組んでおります。

 

② エンゲージメント向上と組織力強化

 当社は、定期的なエンゲージメントサーベイを通じて、社員の意識や職場の課題を可視化し、キャリアや働き方に関する対話の促進、共通の価値観を醸成する仕組みづくりを進めることで、社員のウェルビーイング向上と組織の活性化を図ってまいります。

 

③ 社員能力開発と人財育成支援

 当社は、社員一人ひとりのキャリアビジョンの明確化と、その実現に向けた支援を重要な人財戦略と位置づけております。定期的な面談を実施し、自らの役割や将来像への理解を深める機会を設けるとともに、教育体系に基づいた研修プログラムを通じて、専門性と実行力を兼ね備えた人財の育成を進めています。こうした取り組みを推進することで、社員の成長意欲を引き出し、挑戦を後押しする組織風土の醸成と、持続的な人財の定着を図ってまいります。

 

④ 知的財産・パートナーシップの活用

 当社は、「守りの知財」と「攻めの知財」の両面からの活用を進め、技術競争力の維持・強化を図り、外部機関・顧客との連携によるオープンイノベーションを進めてまいります。

 さらに、当社製品に適した知的財産権の活用を進めるべく、外部の知見を習得し、社内で活用することにより、これまで以上に開発成果を知的財産権で保護し、当社技術力の強化に努めてまいります。

 

Ⅲ.サプライチェーンの強靭化

 

 当社は、環境規制の強化や原材料メーカーの再編など、従来の供給構造が大きく変化する中、原材料の安定調達を課題の一つと認識しております。調達先の多様化や代替検討を進めるとともに、安定供給体制の確保に向けた取り組みを強化してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループにおける当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

当社は、以下のとおり「サステナビリティ基本方針」を制定し、3つの観点からサステナビリティに向けた活動に取り組んでいます。

<サステナビリティ基本方針>

当社は、「顧客に最適な機能を提供し、環境にやさしく、便利で快適な生活と文化を創造する」という企業理念のもと、百年以上の歴史を礎に、「経験」「知識」「発想」をさらに広げ、持続的な社会の実現に貢献します。

1. 社是に掲げる「道徳経済合一」主義のもと、自らを律して高い倫理観をもって、公正で誠実な事業活動を推進します。

2. ステークホルダーとの共創により新しい価値を生み出し、リスクと機会の両面からマテリアリティ(重要課題)に取り組み、中長期的な事業成長を目指します。

3. 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する社会的課題の解決に適切に対応し、従業員のエンゲージメント(自発的貢献意欲)の向上に取り組み、持続的な企業価値向上を目指します。

 

①ガバナンス

 当社は、サステナビリティ基本方針に基づき、サステナビリティの視点を踏まえた企業活動を通じて社会的課題解決への貢献と企業としての持続的成長の両立を実現するため、代表取締役社長を委員長とし社内取締役及び執行役員で構成されたサステナビリティ委員会を設置しており、当該体制については「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等の(1)②ロ.コーポレート・ガバナンス体制」に記載しております。

 サステナビリティ委員会は、ステークホルダーの視点から掲げたマテリアリティに対して、中期経営計画での取組みとKPIの設定を行い、具体的な取組状況をモニタリングし取締役会に報告しております。

 

②戦略

 当社は、サステナビリティ基本方針に基づき、ステークホルダーと当社事業へのインパクトの2つの視点から、サステナビリティに関する7つのマテリアリティを特定しております。これらのマテリアリティの解決に向けた個別テーマの具体的戦略及びマテリアリティに対する取り組み指標(KPI)は、第4次中期経営計画に織り込み、経営計画推進のなかでKPIの目標達成に向けて注力しております。

 

(7つのマテリアリティ)

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③リスク管理

 当社は、サステナビリティ委員会において、サステナビリティに関連する様々なリスクを識別、評価、管理し、その活動結果を定期的に取締役会及び監査役会に報告しております。

 

④指標及び目標

 当社は、第4次中期経営計画において、マテリアリティに対する取組指標を下記の通り設定しており、各指標の進捗状況をサステナビリティ委員会において適切に管理・評価しております。

 第4次中期経営計画 参照 https://www.awapaper.co.jp/ir/library/material/

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※提出会社の状況を記載しております。

 

(2)人的資本

当社は、創業の精神・経営理念に基づき、「阿波製紙は、謙虚に学びつづけ、助け合い、自ら変化にチャレンジしていく人財を求める」とする人事理念を定めており、企業繁栄の根本は人材であり、人材は成長する資源であると認識しております。当社は、国籍や性別等を問わず従業員一人ひとりが成長することで仕事に対する誇りを感じ、職場の仲間との連帯感や信頼関係を持ち、いきいき、わくわくと働くことができる職場環境の実現を目指しております。

 

①戦略

a.人材育成方針

当社は、以下のとおり人材育成方針を定めております。

全従業員が創業の精神・経営理念を理解し、人事理念に則り、以下に定める育成目標に向かって、会社の業務遂行に必要な力量(知識および技量)を計画的に習得し、能力の向上を図っていきます。

また、従業員一人ひとりが自らのパーパスを見いだし、「何のために働いているのか」を自覚し、自らが考える「将来のありたい姿」の実現に向けて、一人ひとりの自発的なキャリア開発を支援していきます。

(育成目標)

・自ら変化にチャレンジしていく自律的な従業員の育成

・社会の要求にこたえられる従業員の人格形成に必要な能力、態度の習得

・品質の向上・維持のために常に改善意欲を持ち、顧客の信頼を創造する従業員の育成

・地域環境に感謝し、地球環境の保全、調和を目指す活動に自主的に取り組む従業員の育成

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イ.個人の成長、自律化と組織の前進に向けたエンゲージメント(自発的貢献意欲)の向上

当社は、従業員一人ひとりが組織目標を共有し、問題意識をもって従業員自らが自発的に挑戦、努力、創意工夫する課題を設定するとともに、課題解決に向けて日々挑戦し、努力した取り組み過程(プロセス)を反省して次の取り組みに生かしていくことにより、日々の業務活動を通じて成長していくことを目指しております。

また、当社は、従業員が自律的に学び、成長し続けることが組織の前進、会社の持続的な成長に繋がると認識し、従業員自らがWill・Can・Mustの視点から、「仕事を通じて達成・実現したいこと」「現在自分ができること」「会社から期待されるためにやらなければいけないこと」を考え、「将来のありたい姿」のキャリアビジョンを描くため、従業員一人ひとりのキャリアビジョン行動計画(社員自らが考えるキャリア形成)の策定支援を行うほか、定期的なエンゲージメントサーベイを通じて社員の意識や職場の課題を可視化し、キャリアや働き方に関する対話の促進に努めております。

 

ロ.多様な人材採用

当社は、人事理念に基づき、常に新しい技術を生み出す創造力とグローバルな視点、そして自らの未知の分野を開拓する行動力と情熱を持って前進できる多様な人材の採用に取り組んでおります。

 

 

(求める人材像)

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b.社内環境整備方針

当社は、以下のとおり社内環境整備方針を定めております。

 

1.ダイバーシティ&インクルージョンの推進

 ダイバーシティ&インクルージョンの推進により、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観等の多様性を尊重し、認め合い、従業員一人ひとりが成長することで仕事に対する誇りを感じ、職場の仲間との連帯感や信頼関係を持って、いきいき、わくわくと働くことができる職場環境の実現を目指していきます。

 また、従業員一人ひとりが健全に、いきいき、わくわくと働き続けることが、会社の持続的な発展成長の実現に不可欠であると考えるため、ダイバーシティ&インクルージョンの推進とともに、ワークライフバランスの向上、ならびに健康経営の推進に取り組んでいきます。

2.ワークライフバランスの向上

 仕事と育児・介護との両立、男性の家事・育児への参画を促進するため、多様で柔軟な働き方を推進し、男女が共に職業生活と家庭・地域生活等を両立することができる就業環境を整備していきます。

 当社は、2021年に経営者・管理職が「イクボス宣言」を発信し、部下のワークライフバランスを考え、職場全体の業務効率の向上に努め、自らも率先してワークライフバランスに取り組んでいきます。

3.健康経営の推進

 従業員が心身ともに健康で、いきいき、わくわくと働ける環境づくりを推進していくことが、企業価値の向上につながると考え、企業全体で健康経営の方針を共有し取り組んでいきます。

 

イ.ダイバーシティ&インクルージョンの推進への取組

当社は、多様な人材が能力を発揮できる職場づくりを目指し、取り組みを進めております。

特に女性の採用・登用に注力しており、女性が安心して働ける職場環境・制度を整備するほか、管理職登用も女性管理職比率5.0%以上を目標に強化しております。

 

ロ. ワークライフバランスの向上への取組

当社は、有給休暇取得率は90%超を維持しており、「イクボス宣言」のもと、短時間勤務制度や男性育児休暇・独自の有給育児休暇制度を導入するなど、育児・介護を両立できる柔軟な働き方を支援しております。

 

ハ. 健康経営の推進への取組

当社は、健康経営推進室を設置し、健康経営優良法人に認定されるなど、従業員一人ひとりが健康に働ける職場づくりを目指して、様々な健康キャンペーンを展開しております。

 

②指標、目標及び実績

 当社は、上記「①戦略」において記載した人材育成方針及び社内環境整備方針に基づき、次のとおり指標及び目標を設定しております。

目標

指標

2024年度実績

2025年度目標値

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

女性管理職比率

4.2

5%以上

障がい者雇用率

2.0

2.5%以上

ワークライフバランスの向上

年次有給休暇取得率

92.8(注)1

90%以上

男性育児休業取得率

100.0

100

健康経営の推進

健康維持・増進(疾病予防)

特定保健指導該当率

25.9(注)1

20%以下

運動習慣者比率

5.0(注)1

40%以上

メンタルヘルス

対策

ストレスチェック受診率

95.5

100

高ストレス者率

17.2

15%以下

エンゲージメント向上

従業員エンゲージメント値

(注)2

2.43

2.85

     ※各目標及び実績は、連結グループにおける記載が困難であるため、提出会社の状況を記載しております。

       (注)1.年次有給休暇取得率、特定保健指導該当率、運動習慣者比率については、2023年度の実績であります。

                  2.エンゲージメント値は、当社が採用しているエンゲージサーベイの4件法に基づくものであり、その数値を記載しております。

 

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループは、事業運営及び展開において様々なリスクの発生が想定され、それらの想定されるリスクを事前に認識し、事実上可能な範囲で想定されるリスクの対応策を検討・実施しております。しかし、全てのリスクを低減または排除することは困難であり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態、社会的信用等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、以下において重要なリスクと判断した事項を記載しておりますが、事業に係るリスクをすべて網羅するものではありません。また、将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであり、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、経営成績等の状況に与える影響度につきましては、現時点では合理的な予測が困難であり、記載しておりません。

 

(1)事業環境変化に関するリスク

[概要]当社グループは、自動車関連資材及び水処理関連資材を主力製品としております。これらの市場は、グローバルなサプライチェーンに組み込まれており、日本、北米、アジア地域をはじめとする世界経済の変動が、製品の販売動向等に影響する可能性があります。

 特に、米国政府の相互関税政策が発動された場合の影響は大きく、サプライチェーンへの重大な影響が及ぶものと懸念されております。

 また、当社グループが主力とする分野では競合先が存在しており、今後競争が一段と激化した場合には、販売数量の減少及び採算の悪化により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、環境変化に対応するため、自動車関連資材では海外連結子会社と緊密に連携し、最適地生産によるサプライチェーンの強化、グローバルな拡販活動、相互バックアップ体制の構築等を組み合わせ、付加価値向上による商品力の強化に努めてまいります。

 水処理関連資材では、増加する世界の水処理需要に応えるため、新小松島工場の稼働により、特に海水の淡水化や純水を製造する際に使われる「逆浸透膜支持体紙」の生産能力を増やし、生産性の向上に努めてまいります。

 

(2)安定調達に関するリスク

[概要]当社グループは、主要原材料の木材パルプ、リンターパルプなどを海外(北米、南米、欧州など)から調達しているため、原材料の不安定な生産及び為替の影響等を強く受けるほか、国内メーカーの生産停止等の影響を受ける可能性があります。

 こうした場合には、当社の生産調達体制に大きな影響を受け、当期の業績が低下することが懸念されます。

[対応]当社グループは、主要原材料の代替材料の検討や調達における複数購買等による国内外にわたる調達先の分散化及び適正在庫の確保等、グループ全体で安定的な調達に取り組む体制を構築しております。

 

(3)人財確保・育成に関するリスク

[概要]当社グループは、中長期的な企業成長のためには優秀な人財の確保・育成が重要であると認識しています。

 しかし、少子高齢化に伴う労働人口減少による人材確保難、人材の流動化に伴う社外流出の増加、人事制度の見直し遅れによるエンゲージメントの低下等により、人的資本の充実や高度技術の承継に支障が生じ、安定的な成長に影響が及ぶ可能性があります。

[対応]当社グループは、多様な人財を確保するため、新卒採用においてはインターンシップなどに注力するとともに、専門性を持つ人財の中途採用のため引き続き積極的に通年採用を実施してまいります。

 また、幹部人財の育成プログラムを導入するとともに、ワークライフバランスの充実に向けた多様な働き方や健康経営への積極的な取り組みの推進等、エンゲージメントの向上に注力してまいります。

 

(4)事業ポートフォリオに関するリスク

[概要]当社グループは、自動車関連資材及び水処理関連資材の製造・販売を主力の事業分野としております。

 自動車エンジン用濾材やクラッチ板用摩擦材等の自動車関連資材は、今後、電気自動車や燃料電池車等の普及拡大が予想されるため、需要が大きく減少する可能性があります。

 また、水処理関連資材については、新規参入企業や既存競合他社からの販売攻勢により、市場シェアが大きく減少する可能性があります。こうした状況が発生した場合には、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

[対応]当社グループは、主力の事業分野に依存することに伴う事業ポートフォリオリスクを軽減するため、当社の有する製品開発力や生産技術力を活かし、顧客ニーズに対応する高付加価値製品を提供してまいります。

 特に、今後の自動車のEV化進展を見据え、自動車動力源の電動化に伴い発生する熱に対応する断熱材ブランド「M-thermo」の販路拡大によるサーマルマネジメント分野を強化する等、新事業の創出や事業領域の拡大により、事業ポートフォリオの分散化を図ってまいります。

(5)自然災害・パンデミックに関するリスク

[概要]当社グループは、徳島県内に国内生産拠点の全てが集中しているため、大規模地震による津波の発生懸念及び地球温暖化による大型台風や異常渇水等の自然災害発生頻度が高まっている状況下において、生産活動に甚大な被害が発生する可能性があります。

 また、感染症の世界的な流行拡大等によるパンデミックの発生により、サプライチェーンの寸断や従業員の出勤停止等による工場の稼働不能に陥る可能性があります。

 このような事態が発生した場合には、生産能力の著しい低下や設備の復旧に伴う多大な費用の発生が見込まれ、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、「緊急時対応マニュアル」に基づき、大規模地震等の災害発生時にも事業活動を継続し、製品の安定供給を図るためBCP(事業継続計画)を策定しており、定期的に見直しを行うとともに、従業員や家族の安否確認、災害対応備蓄品等を備え、定期的な訓練及び設備の点検を実施しております。

 また、感染症等のパンデミックへの対応については、基本的な感染予防対策の徹底に加え、リモートワークによる在宅勤務体制の推進、WEB会議やDXの活用等、グループ全体において可能な限りの感染防止対策に取り組んでおります。

 

(6)海外事業展開に関するリスク

[概要]当社グループは、タイ国の連結子会社において製造販売及び研究開発活動を行うとともに、中国において駐在員事務所を設置し販売支援を行っており、グローバルに事業活動を展開するにあたり、各国の法的規制、経済情勢、政情不安、パンデミックの発生等事業環境の不確実性等のリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、関係会社管理規程に基づき、海外子会社の情報収集や現地の経営環境に適した事業運営の管理強化に努めております。

 また、親会社の役員が子会社の役員に就任しガバナンスを強化するとともに、幹部社員を子会社に派遣するなど、相互連携強化による業務支援とオペレーショナルリスクの低減に取り組み、グループ管理体制の充実を図っております。

 

(7)コンプライアンスに関するリスク

[概要]当社グループは、社是である「道徳経済合一」主義のもと、企業倫理規範を定めてコンプライアンス経営の徹底に努めておりますが、重大なハラスメント、労働法令違反、人権問題等の重大なコンプライアンス違反が発生した場合、または産業廃棄物や工場排水汚染等、事業活動に関連する重大な法令違反等が発生した場合、行政処分等による生産活動の停止など、社会的な信用が失墜し、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、朝礼において、創業の精神、経営理念、企業倫理規範、コンプライアンスチェックなどを日々周知徹底するともに、内部通報規程を制定し、風通しの良い職場風土の醸成並びにコンプライアンスリスクの未然防止に積極的に取り組んでおります。

 また、定期的にコンプライアンス意識調査を実施し、ハラスメントの防止などの課題解決に努めるとともに、コンプライアンス情報の発信とセルフチェックの実践による、コンプライアンス教育の充実に努めております。

 

(8)品質保証に関するリスク

[概要]当社グループは、国内外のお客様に提供する多様な製品において品質不良や不正などの問題が生じた場合には、お客様や社会から当社グループの信用が失墜し、企業価値や製品ブランドを棄損するほか、損害賠償請求等が発生し、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、品質方針を定め、全員参加で品質マネジメントシステム(QMS)に取り組んでおり、設備の改修も含め、継続的な品質改善活動の実践に努めております。

 また、原材料や製品の不良発生時には品質連絡会を開催し、課題を共有するとともに、不良発生のメカニズムを徹底的に分析・評価の上、発生工程への反映及び類似工程への水平展開を行い、再発リスクの低減や発生予防に努めております。

 

(9)環境問題に関するリスク

[概要]当社グループは、サステナビリティに関する活動のうち、気候変動緩和への対応であるCO₂排出量削減や化石化エネルギーの利用低減などの活動が適切に遂行できず目標を達成できない場合、社会的評価の低下及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、地球温暖化への対応については、当社グループ事業と密接な関係を有する森林や河川などの環境破壊が世界規模で進んでおり、今後の事業を展開していくうえで重大なリスクと認識しております。

[対応]当社グループは、環境方針を制定し、事業活動全般を通じて地球環境に関するグローバルな社会課題の解決に貢献するための取り組みを推進するとともに、地球環境問題への取り組みを強化するため、2030年度に二酸化炭素排出量2014年対比37%削減という目標をはじめとした、環境保護に関する重要項目を設定しております。

 また、効率的で実効性の高い事業活動を推進するため、環境マネジメントシステム(EMS)の認証を取得し、環境意識向上のための教育を行うとともに、グリーン調達基準を制定し、当該基準に適合した原材料の購入等、サプライチェーン各社との緊密な連携強化による持続可能な社会の実現に努めております。

 

(10)情報管理に関するリスク

[概要]当社グループは、システム障害やコンピュータウイルスの感染、不正アクセスによるサイバー攻撃、従業員等による個人情報の漏洩、会社機密情報の流出等の情報管理リスクが発生する可能性があります。その場合、当社グループの業績、財政状態及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、情報セキュリティ基本方針、個人情報保護方針等を制定し、情報管理を重要な企業活動として位置づけており、情報資産を保護すべく統合セキュリティシステムを最新の状態に保つとともに、重大なセキュリティインシデント発生に備えたサイバー保険を付保しております。

 さらに、教育研修等を通じて情報セキュリティに関する重要性について周知徹底に努めております。

 

(11)知的財産権の侵害に関するリスク

[概要]当社グループは、当社グループが保有している知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、製品差別化や競争優位性が確保されず、期待される収益が失われる可能性があります。

 また、当社グループが製造または販売する製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該製品の回収や販売中止を求められる他、損害賠償を請求される可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、特許権を含む知的財産権を適切に管理する体制を整え、継続的なモニタリングを実施することで第三者による知的財産権の侵害に注意を払っております。

 また、専門家やデータベース及び調査機関を利用した調査に加え、発明協会等の研修受講による情報収集を強化することにより第三者の知的財産権の侵害防止に努めるとともに、実際に知的財産権に係る係争が発生した場合は、関係者と協力して事業への影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。

 

(12)サプライチェーンの人権等に関するリスク

[概要]当社グループは、世界的な人権尊重の意識が高まる中、事業に関わるすべての人々の人権を侵害する場合や人権を軽視した事象が発生した場合には、サプライチェーンの寸断、訴訟などの法務リスクが発生し、社会的信用の失墜、あるいはお客さまとの取引停止や損害賠償責任等により、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、企業倫理規範において「人権の尊重および差別の禁止」を明確にし、人権方針を制定する等、企業としての人権尊重に努めております。

 また、国内外の様々なサプライヤーとの連携を強化し、人権デューディリジェンスを定期的に実施することにより、取引の透明性を確保する等、人権に関するリスクの回避・低減に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績等の状況

 当連結会計年度における世界経済は総じて回復基調にありましたが、一部の国や地域においては、需要の低迷や金融引き締め等を背景とする回復鈍化の傾向がみられるなど、不安定な状況が継続しました。また、足元では、米国の関税政策の影響により、地政学的および政策的な不確実性が増大しています。

 自動車関連市場においては、インフレの影響を受けながらも比較的堅調な需要が見られました。水処理用分離膜市場における需要は、海水淡水化プラント、工業用プロセス水、廃水処理用途などにおいて堅調に推移しました。

 このような状況下、当連結会計年度の売上高は、自動車関連資材については中国およびアジア地域の販売不振があったものの、北米の販売が好調だったことに加え、円安の追い風もあり増加しました。水処理関連資材については、市場の堅調な伸びに加え、拡販に努めた結果、分離膜支持体用不織布の売上が増加しました。

 利益面では、原材料価格上昇や在庫の減少による影響を受けたものの、原材料価格の上昇に伴う販売価格改定に取り組みました。

 その結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高17,124百万円(前年同期比1,008百万円増、6.3%増)、営業利益432百万円(前年同期比77百万円増、21.9%増)、経常利益279百万円(前年同期比21百万円増、8.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は35百万円(前年同期比16百万円減、31.6%減)となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における資産総額は、27,188百万円となり、前連結会計年度末より5,942百万円増加しております。新工場建設に伴い有形固定資産が4,401百万円、未収消費税等が856百万円増加いたしました。

 負債総額は19,605百万円となり、前連結会計年度末より5,243百万円増加しております。主に長期借入金が6,221百万円増加し、短期借入金が1,288百万円減少いたしました。

 また、純資産につきましては、7,583百万円となり、前連結会計年度末より699百万円増加しております。主に非支配株主持分が454百万円、為替換算調整勘定が221百万円増加いたしました。

 以上の結果、自己資本比率は19.6%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は739百万円となり、前連結会計年度末と比較して、145百万円の減少となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は、160百万円(前年同期比631百万円減、79.7%減)となりました。これは主に未収消費税等の増加額852百万円の減少要因があったものの、減価償却費660百万円、仕入債務の増加額501百万円の増加要因があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、5,179百万円(前年同期比1,406百万円増、37.3%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出5,076百万円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により得られた資金は、4,823百万円(前年同期比1,312百万円増、37.4%増)となりました。これは主に短期借入金の純減額1,295百万円の減少要因があったものの、長期借入れによる収入7,300百万円の増加要因があったことによるものであります。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

自動車関連資材(千円)

8,904,571

105.4

水処理関連資材(千円)

6,465,925

89.8

一般産業用資材(千円)

1,276,963

104.4

合計(千円)

16,647,459

98.7

(注)1.当社グループは単一セグメントであるため、品目別に記載しております。

2.金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

自動車関連資材(千円)

8,737,543

105.9

水処理関連資材(千円)

7,108,649

107.6

一般産業用資材(千円)

1,278,264

101.7

合計(千円)

17,124,457

106.3

(注)1.当社グループは単一セグメントであるため、品目別に記載しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社サンコー

4,265,831

26.5

4,523,573

26.4

旭洋株式会社

1,521,381

9.4

2,202,898

12.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.当連結会計年度の経営成績等について

 当連結会計年度は、第4次中期経営計画(2024年4月~2026年3月)の初年度であり、当社グループは「事業ポートフォリオの最適化」と「知的資本のフル活用による経営基盤の強化」を重点課題とし、主力製品の拡販と新製品の開発、国内生産体制の再構築、人的資本の強化等の施策を進めてまいりました。売上高については、中期経営計画の目標に対しては未達となりました。これは、重点市場において新規顧客開拓が遅延したこと、新規製品の販売遅延の影響によるものです。利益面では、原材料単価上昇に伴う販売価格改定や経費削減に取り組んだ結果、営業利益及び経常利益は目標を上回る水準となりました。

 かかる状況下、2025年3月に竣工した新小松島工場の稼働により、分離膜支持体用不織布の供給体制の強化と生産効率向上に取り組んでおります。また、高度化する顧客ニーズに対応すべく、研究開発機能を強化するとともに提案型営業を推進しております。さらに、DXの観点からは、RPAやクラウド活用による間接業務の効率化に加え、次期基幹業務システムの構築を進める中、生産現場のデジタル化や製造プロセスの可視化にも着手しており、業務全体の高度化を目指しております。

 今後は、重点市場での営業基盤強化と製品ポートフォリオの最適化を進めるとともに、人的資本投資を通じて組織力を高め、中長期的な企業競争力と収益の確保に取り組んでまいります。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える大きな要因として、主要市場における経済状況、原燃料の価格上昇、原材料の調達リスク、自然災害などがあります。

 当社グループが関連する市場としては、主として自動車部品業界や水処理関連市場となりますが、成長市場であることから、今後もグローバル競争の激化や有力な新規参入の増加などが予想されます。こうしたなか、当社グループは、グローバル企業として成長していくため、高性能品の開発や商品ラインナップの拡充、安定供給体制の確立などに努めてまいります。

 原材料については、原油価格の上昇に加え、調達先における生産性の低下や操業停止・工場閉鎖などの要因によって、さらなる価格上昇とともに調達リスクの顕在化も懸念されます。また、為替動向、とりわけ円安の進行もコスト上昇の一因となる可能性があります。当社グループは、調達先の多様化や調達方法の見直し、適切な製品価格の見直しを通じて収益性の確保に努めてまいります。

 自然災害については、当社グループの国内生産拠点が徳島県内に集中していることから、自然災害の発生により当社グループの生産体制に支障をきたす可能性が想定されますが、BCP対応に努め、災害時においても早期に安定供給体制が復旧出来るよう体制整備に取り組んでまいります。

 

c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について

 当社グループでは、健全経営維持と企業価値向上のため、事業領域の拡大と収益性の向上を目標としております。また、資産効率と収益性の両面を測る指標として、「総資産経常利益率(ROA)」を経営の重要指標として位置付けております。

 この指標を達成するために、当社グループとして「売上高経常利益率」や「総資産回転率」の向上に注力しております。具体的には、アライアンスを含めた新事業の創出、基盤事業の強化と収益改善、総資産の効果的かつ効率的な運用に努めております。

 当連結会計年度におけるROAは1.2%(前年同期比0.2%減)となりました。引き続き指標の達成に向けて、グループ一丸となって注力しております。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料や副資材などの購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資や研究開発投資などによるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は12,614百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は739百万円となっております。

 当社グループは、厳しい環境下においても将来を見据えた設備投資や研究開発投資を維持してまいります。必要な資金は営業活動により得られるキャッシュ・フローを基本に金融機関からの借入により調達していく方針であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 この連結財務諸表の作成にあたりまして、経営者による会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.退職給付費用及び退職給付債務

 当社グループは、簡便法を採用している連結子会社を除き、確定給付型制度の退職給付費用及び退職給付債務について、割引率等、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。

 

b.固定資産の減損処理

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や経営環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

c.繰延税金資産の回収可能性

 繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の十分性により判断しており、課税所得の算定にあたっては、事業計画をもとに最新の経営環境に関する情報等を反映し見積っております。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

研究開発の基本方針

 当社グループは、保有している基盤技術の深耕による既存事業の拡大を図るとともに、マーケットイン型R&Dの実行による次世代中核事業の創造を研究開発の基本方針として、既存事業における次世代製品の開発ならびに新規事業の創出にかかる開発に取り組んでおります。

 中期経営計画に定める中期事業戦略遂行のために、知的財産は重要な経営資源と捉えており、当社企業活動のさまざまな場面で創造される価値を当社の優位性に確実に結びつけるべく、知財活動に取り組んでおります。その範囲は発明生産支援、特許出願・権利化といった典型的な知的財産活動に加えて、共同開発により得た成果を事業化するために各事業部門との連携強化などが含まれます。

 これまでのモノづくりで培ってきた知識・ノウハウ・特許を組み合わせた相乗効果の創出と活用により事業成長に貢献するとともに、ビジネスリスクの低減にも取り組み、企業価値向上を目指してまいります。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は434,374千円、国内で出願された特許は5件、研究要員は32名であります。なお、当連結会計年度における品目別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。

 

(1)自動車関連資材分野

 エンジン用濾材は、用途として主に吸気用、潤滑油用、燃料用フィルターに使用されております。

 天然パルプ、コットンリンター、合成繊維を主原料としています。吸気用フィルターは空気中のゴミ、他車から排出されるスス等を取り除きエンジンに清浄な空気を送り込みます。潤滑油用及び燃料用フィルターは燃料燃焼スス、ダスト、水分を取り除き、清浄な燃料を供給すると共に潤滑油の性能を維持する役割を果たしています。当該分野では小型かつ高ろ過性能、ダストの高捕捉量を満たすフィルターが求められており、これらニーズに対応するための研究開発を行っております。

 また今後の環境規制に対応すべく、さらなる高精度濾材の開発にも取り組んでおり、お客様から良好な評価結果を得ております。一部供給不安のあった原材料については、他メーカーへの切り替えを行うことで、お客様へ安定供給できております。またエンジン用濾材で培った、孔径や通気性・通気抵抗の設計技術を、他分野にも適用し開発に取り組んでまいります。

 

(2)水処理関連資材分野

① 分離膜支持体用不織布

 世界の水処理用分離膜メーカーが製造する逆浸透膜モジュールに分離膜支持体として使用されております。

 当商品は、専用の抄紙機及び加工機で製造されたポリエステル繊維100%の湿式不織布であります。耐水強度が高く、平滑性に優れることから水処理用の支持体として最適であります。用途市場としては、海水淡水化や廃水処理などのインフラ用途をはじめ、工業用、家庭用浄水器など高度な水への要求に対応する分離膜に幅広く使用されており、高い伸び率で成長しております。

 市場の幅広いニーズに対応し、当社の優位性を高めるために、ポリエステル繊維以外の原材料や、付加価値を高めた製品開発にも引き続き取り組んでおります。

 

② M-fine(エム・ファイン)

 M-fine(エム・ファイン)とは、当社が提供するメンブレン(ナノレベルの微細な孔径を有する分離膜)及び水処理などのモジュール・ユニットの総称であります。

 当社の事業領域の拡大の一環として、廃水処理に使用されるMBR(膜分離活性汚泥法)用浸漬膜及びユニットの品質のさらなる向上や高性能化に向けた開発を継続的に行い、廃水の再利用、汚泥濃縮による廃棄物の削減等、様々なニーズにお応えできるよう取り組みを行ってまいります。

 

(3)一般産業用資材分野

 電気・電子部品用機能紙は、電子機器などの断熱部材や放熱部材のいわゆるサーマルマネジメント材として使用され始めております。電子機器分野は過酷な発熱環境下での耐熱・熱性能など厳しい要求が強まっており高い伸び率が期待されています。工程紙分野では耐熱プレス用の緩衝材として使用される耐熱紙、フィルター分野では金型の製造工程で発生する粉塵を除去するためのワイヤーカット用濾紙、食品用分野では加工食品の鮮度保持用に使用される脱酸素剤の包材があります。

 当連結会計年度においては、新規に産業用フィルターが採用されました。サーマルマネジメント材(M-Thermo)が、自動車の電動化による成長が期待されるリチウムイオンバッテリー用断熱材として複数用途で新規採用されました。

 また、炭素繊維複合材がEV専用スピーカー振動板として採用され、さらに様々な分野での用途展開を図っています。

 幕張メッセ及び東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド」(2024年9月及び2025年1月)に一部商材を展示し、顧客要求に直結した製品開発を行っております。