第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、「バイオで価値を創造する-こども・家族・社会をつつむケアを目指して-」を企業理念に、「こどもの力になること、こどもが力になれること」を経営ビジョンとして掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ医薬品の研究開発に関するノウハウ等を最大限活用し、2つの事業領域において研究開発を推進しています。

バイオシミラー事業では、より多くの患者様が安心して継続的な治療が受けられる環境の実現を目指しています。また、細胞治療事業(再生医療)においては、特に小児疾患や希少疾患に苦しんでおられる患者様やそのご家族、更には治療に携わる医療従事者の方々を支える革新的な治療法の開発に取り組んでいます。

 

(2) 経営環境

 「第1 企業の概況 3 事業の内容 (1)事業環境」に記載しております。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 バイオ医薬品の研究開発には膨大な時間と費用を必要とし、収益計上ができるようになるまでの期間が非常に長いため、短期的な経営指標による実績評価を行うことは一般的に適していません。そのため、当社グループにおいては、研究開発型バイオベンチャーとして、バイオシミラー事業及び細胞治療事業(再生医療)のそれぞれの事業特性に応じた中長期的かつ客観的な経営指標を設定しています。

 バイオシミラー事業においては、既に4製品が上市されており、パートナー製薬企業へのバイオシミラー原薬等の供給による販売収益、及びパートナー製薬企業の販売実績に応じたロイヤリティ収益を売上高として計上しています。一方で、「安定と成長の両立」の実現のためには、当該事業の更なる成長と安定的な収益獲得に向けて、上市済みバイオシミラーの安定供給体制強化及び収益性改善のための追加開発投資、そして継続的な新規バイオシミラー開発投資が欠かせません。そのため、バイオシミラー事業においては、効率的な開発投資の実行と、収益と開発投資のバランスを取ることを目的として、当該事業単独での継続的な営業黒字を経営指標として定めています。

 一方で、細胞治療事業においては、研究開発投資が先行する事業ステージにあることから、開発品ごとに研究開発費用及び中長期的な開発計画を策定し、その進捗・達成状況を経営指標としています。

 なお、バイオシミラー事業と細胞治療事業を含む当社グループ全体としては、事業の着実な推進と安定的な連結営業黒字化の実現を目指し、構造改革等を通じた事業間の連携強化、業務効率化、人的資源の最適化等にも取り組んでいます。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 上市済みバイオシミラーの安定供給体制の構築及び収益性の改善と、新規バイオシミラーの開発

バイオシミラー事業において、当社は上市済みバイオシミラーの原薬等をパートナー製薬企業に供給しておりますが、一部製品では需要が当初想定を大幅に上回って推移しており、安定供給を維持するためには、供給体制の再構築と運転資金の最適化が課題となっています。また、日本の薬価制度では、上市時のバイオシミラーの薬価は原則として先行品の70%に設定される上、医療機関との価格交渉等を受け、年次の薬価改定においてその薬価は頻繁に下落します。加えて、原薬製造を委託している海外市場における物価上昇や為替市場における円相場の下落 が製造費  用を上昇させ、当社の利益率に影響を及ぼしています。これらに対応し収益性を改善するためには、原価低減策の推進やバートナー製薬企業に対する供給価格等の調整も必要です。

既存バイオシミラーの安定供給維持及び収益性向上と並行して、バイオシミラー事業の更なる成長に向けては、これまでの開発・製造経験を通じて得たノウハウ等を活用して、新規バイオシミラーの開発にも注力する必要があります。既に、新規バイオシミラーの開発については、上述のとおりカイオムとMBIとの間でMaster Service Agreementを締結し、新規バイオシミラーの細胞株構築に着手しております。

更に、安定供給体制の強化に向けては、バイオシミラーの開発から製造・供給までをカバーする国内初のサプライチェーン構築と安定供給の実現を見据え、昨年よりアルフレッサ ホールディングス及びカイオムとの協議を開始し、加えて当社の取引先でバイオシミラーを含むバイオ医薬品の製造及び製造施設の整備に豊富な実績を有する台湾のCDMOであるMBIとも協業の可能性について協議を進めてまいりました。その後、上述のとおり厚生労働省「医療施設等施設整備費補助金(バイオ後続品国内製造施設整備支援事業)」に採択されたことを受け、同補助事業の目的であるバイオシミラーの原薬・製剤製造施設の国内候補地での整備を通して、国内産のバイオシミラーを安定供給できる体制構築に向けて取り組んでまいります。

また、事業価値最大化に向けては、日本市場への依存からの脱却も重要な課題です。上市済み及び新規バイオシミラーのいずれについても、売上拡大と製造規模の拡大による製造単価の低減、海外売上高と海外製造費の両立による為替変動リスクの緩和を目指し、パートナー製薬企業との協業を通じた海外市場への展開にも積極的に取り組みます。今後も限られた資金と人財をより効率的に活用し継続的な成長を実現できる事業モデルへの変革を推進してまいります。

 

② 再生医療等製品等の研究開発

 研究開発投資が先行する事業ステージにある細胞治療事業(再生医療)においては、資金調達とのバランスを強く意識した、効率的かつ適正な研究開発投資の実行が求められます。そして、早期にパートナー製薬企業と提携することで、エスカトルとしての開発費負担と開発リスクの低減を実現する必要があります。早期提携実現のためにも、SQ-SHEDに関する基礎研究、非臨床試験、製造プロセス開発、特許出願等に関する投資を継続してまいります。

 なお、世界的に十分な治療法がない疾患に対する医薬品の創出を目指す細胞治療事業において、海外展開は必須の取り組みです。既に米国食品医薬品局(FDA)のガイドラインに準拠したMCBの製造は完了しておりますが、今後、海外での臨床開発に向けて、海外製薬企業や医療機関、開発受託機関等との協議を推進してまいります。

 

③ 開発品ポートフォリオの最適化

 当社グループは両事業で複数の開発品目を保有しており、限られた経営資源を効率的に投下して最大限の成果を創出すべく、提携先の製薬企業等や業務委託先との協業の下、各開発品の価値最大化に努めております。一方で、バイオシミラー及び再生医療等製品を取り巻く環境は、市場動向、技術革新や各疾患領域における標準治療法の変化、更には競合他社の開発状況等、日々変化しています。当社グループは、これら社内外の様々な要因を総合的に勘案し、開発品目の優先順位の見直しや、新規テーマの立ち上げ、開発中止の判断等を適切に行い、開発ポートフォリオの最適化を継続的に図ってまいります。

 

④ 高品質な原薬等の安定供給体制の確立

 バイオシミラーや細胞治療(再生医療)を事業化する上で、高品質な原薬等の安定供給は極めて重要な要素です。当社は、バイオシミラー事業において、高品質な原薬の製造プロセス開発と安定供給体制の確立・維持に長年取り組んでおり、これまで日本国内において承認されているバイオシミラー19製品中4製品の開発と3製品の安定供給に携わってまいりました。これは、バイオベンチャーとしては類を見ない実績であり、当社の強みを形成する重要な基盤となっています。このようにバイオシミラー事業で蓄積した製造技術・品質管理等の豊富なノウハウ等を、エスカトルでの細胞治療事業に横展開することで、バイシミラー原薬等のみならず、再生医療等製品においても、高品質な原薬の安定供給体制の早期確立を目指しております。また、これにより、当社グループにおける開発品目の優位性を確立し、ひいては事業価値最大化を図ってまいります。

 

⑤ 提携による事業推進

 当社グループ開発品目の開発・事業化を円滑に進めるためには、当社グループの強みである製造プロセス開発・原薬製造を活かすために、開発品ごとに最適なパートナー企業、CDMO、臨床試験受託機関等との連携が必須です。また、細胞治療事業で取り組む研究活動においても、自社独自の発明技術を軸としながらも、アカデミアやバイオベンチャー等外部で生まれる新しい科学的知見や技術を積極的に取り込み、SQ-SHEDの強みと組み合わせることで、革新的で競争力のある再生医療等製品の創出につなげていきます。

 このような提携の効果は、研究開発力の強化や事業リスクの分散、資金調達の多様化等多岐にわたり、企業価値の最大化に直結します。今後も、バイオシミラー事業における新規バイオシミラーの開発や、細胞治療事業における革新的な治療法の創出に向けて、戦略的なパートナリング活動を積極的に展開してまいります。

 

⑥ コンプライアンス・リスク管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化

 当社グループが円滑にパートナー企業等との提携関係を構築・維持し、研究開発活動を推進していくためには、社会的信用の維持・向上が不可欠であると認識しております。当社の取引先は上場企業や公的研究機関といった高い社会的信頼性を有する組織が多く、こうした企業や機関と信頼に基づく健全な取引関係を維持していくためには、当社グループの信用力が重要となります。このような認識の下、当社グループは小規模な組織ではありますが、コンプライアンス意識の醸成とリスク管理体制の強化に継続的に取り組んでおります。また、全てのステークホルダーに対して組織的かつ的確に対応できる体制を構築するため、コーポレート・ガバナンスの改善を進め、経営の公正性・透明性を高めてまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 当社グループは、「バイオで価値を創造する〜こども・家族・社会をつつむケアを目指して〜」の企業理念の下、創業以来培ってきたバイオ医薬品に関する技術や開発ノウハウ等を最大限活用し、病気に苦しむ患者様に新たな治療薬・治療法を提供することで、こどもはもちろんのこと、こどもを支える大人を含むすべての人々が幸せに明るく暮らせる社会の実現に貢献することを目指しております。また、バイオベンチャーである当社グループにおいても、中長期的な企業価値の向上に向けた事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することが非常に重要であると考えております。

 現時点ではサステナビリティに関する基本方針を定めておりませんが、企業活動全体においてサステナビリティを意識した経営に努めており、今後は当社グループが取り組むべき課題の明確化と基本方針の策定に向けた検討を継続してまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めておらず、サステナビリティ関連のリスク及び機会、管理するためのガバナンス過程、統制及び手続等の体制をその他のコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりません。

 詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)戦略

 当社グループでは、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の戦略における、リスク及び機会に対処するための重要な取り組みは検討中であります。

 しかしながら、開発リスクが限定的であるバイオシミラー事業で安定的な収益基盤を築きながら、細胞治療事業(再生医療)に取り組むことで高い成長性を追求し安定と成長の両立」を目指す、ハイブリッド型の事業モデルにおいて、その事業活動を支えるのは、バイオ医薬品はじめ、細胞医薬等の新規創薬モダリティを含むバイオ医薬品に関する高度な専門知識、技能や経験を有する多様なバイオ人財です。そのため、当社グループでは、そのようなバイオ人財の採用及び育成活動の改善に努めるとともに、その能力を最大限発揮できる創造性とイノベーションにあふれる組織風土を基盤として、「病気に苦しむ患者様、特に病気のこどもたちに、早期に新たな治療薬・治療法を提供し、みんなが幸せに明るく暮らすことができる社会の実現に貢献する」という使命を実現するべく、以下を含む、各種人事制度及び組織体制の整備に取り組んでいます。

 

① 専門性の高い人財の確保

・バイオ医薬品に関する知識・技能・経験を有するバイオ人財の採用

・海外での事業推進を見据えたグローバル人財の採用

・競合他社と比べても遜色ない報酬制度の構築

 

② 多様性、創造性・革新性、自主性を評価し、失敗を恐れずチャレンジができる環境の確保

・多様性(性別・年齢・国籍・価値観)を認め、尊重する企業文化の醸成

・創造的・革新的な取り組みや、自主的な取り組みを評価する人事評価制度の策定

・機動的かつ適正な人事配置・キャリアデベロップメントプラン(人財育成計画)の策定、実行

 

③ 従業員一人ひとりを尊重した働き方の確保

・一人ひとりのキャリアプランを尊重した人財育成計画の策定、実行

・それぞれ異なるワーク・ライフ・バランスの実現に向けた柔軟な働き方の導入とインフラ整備

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連のリスク管理における記載はいたしませんが、リスク・コンプライアンス委員会によるリスク管理体制を構築しております。

 詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の指標及び目標の記載はいたしません。具体的な指標及び目標については、今後、サステナビリティの基本方針の策定と併せて検討を進めてまいります。

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業展開その他に関連して、リスク要因と考えられる主な事項を以下に記載しております。これらには、現時点で当社グループが必ずしも重要なリスクとは考えていない事項及び実際に具体化する可能性が高くないと想定される事項も含まれておりますが、投資判断や当社グループの事業活動への理解を深めていただく上で重要と捉え、情報開示の観点から開示しております。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その回避及び発生時の適切な対応に努めてまいります。ただし、株式への投資判断は、以下の事項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載のうち、予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、特段の記載がない限り、本書提出日現在において判断したものであり、不確実性を内包しているため実際の結果とは異なる可能性があることにご留意下さい。

 

1.法的規制等に関する事項

(1) 許認可等に関するリスク

 当社グループは、主にバイオシミラー原薬等の販売に当たり、医薬品医療機器等法その他の規制を受けますが、これらについて法令違反があった場合、あるいは必要とされる資格を保有する人財が離職しその補充ができない場合には、監督官庁から業務の停止や許認可の取消し等の処分を受けることになり、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、業務の停止や許認可の取消し等の処分を受ける原因となる事由は発生しておりません。

主な許認可等の状況

許認可等の名称

所管官庁等

許認可等の内容

有効期限

取消し等となる事由

医薬品販売業許可

東京都

東京都保健所長

許可

(5302250083)

2031年4月30日

(6年ごとの更新)

医薬品医療機器等法、その他薬事に関する法令若しくはこれに基づく処分に違反する行為があったとき、医薬品医療機器等法第75条第1項により、その許可が取り消されまたは期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命じられることがある。

 

(2) 医薬品の研究開発における医薬品医療機器等法その他の規制に関するリスク

 当社グループが業を営む医薬品業界では、研究、開発、製造及び販売の各段階において、国内外の薬事に関する法令、薬事行政指導、その他関係法令等により様々な規制を受けております。当社グループは、日本国内市場に留まらず欧米を含む国外市場への進出も想定して各開発品の研究開発を進めておりますが、これらの開発品を医薬品として上市させるためには、パートナー製薬企業等との連携の下、各国の薬事に関する法令、関連するガイドライン及びその他の規制に準拠して製造販売承認の申請を行い、同企業が規制当局から承認を取得することを想定しております。このため、臨床試験等において、医薬品としての品質、安全性及び有効性等を示すことができない場合には、承認を得られず、上市できないため、当社グループの事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、現在の日本の医薬品医療機器等法においては、原薬等の外部委託製造が可能となっておりますが、今後このような外部委託製造に関する規制や海外品の輸入等に関する規制が改定された場合、当社グループの事業活動に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 医療制度改革の影響に関するリスク

 日本では、医療費の抑制を目的とした薬価改定等の医療制度改革が進められており、高齢化社会に対応するため、今後も継続されると考えられます。その結果、当社グループ開発品の上市後に当該医薬品の薬価が影響を受ける可能性があり、これにより当社グループがパートナー製薬企業に販売するバイオシミラー原薬等の価格や、パートナー製薬企業の販売実績に応じて当社グループが受領するロイヤリティ収益にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

2.医薬品開発事業に関する事項

(1) 医薬品開発事業全般に関するリスク

 医薬品の研究開発は、基礎研究から製造販売承認の取得、上市に至るまで、段階的なプロセスを踏む必要がありますが、非臨床試験や臨床試験において予期せぬ副作用が発生した場合や期待する治療効果が確認できない場合には、当該開発品の研究開発が中止される可能性があります。当社グループの開発品について、これらの理由により研究開発が中止された場合、事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、研究開発の進行において計画通りの結果が得られない場合や、各種試験の開始または完了に遅延が生じた場合、あるいは治験薬製造等において問題が発生した場合等には、製造販売承認の取得が遅れる可能性があります。当社グループは、このような事態を極力回避すべく、各開発品の評価及び進捗管理を適切に実施し、必要に応じて追加の経営資源を投下する等の対策を講じております。しかしながら、研究開発が計画どおりに進行しない場合には、事業計画並びに財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 医薬品の品質・副作用に関するリスク

 当社グループが開発に関与する医薬品の安全性に関する情報は、限られた被験者を対象に実施した臨床試験から得られたものであり、上市前に副作用の全てを把握できない可能性があります。現時点において、当社グループは、直接医薬品を販売する計画はありませんが、パートナー製薬企業によって販売される製品について、上市後に予期せぬ副作用が発生する可能性を完全には否定できません。重篤な副作用が発生した場合、製品の回収あるいは販売中止を余儀なくされ、当社グループの原薬等の販売についても継続することが困難となり、以後の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(3) 医薬品業界における競合に関するリスク

 国内外の製薬企業、バイオベンチャー、アカデミア等の研究機関がそれぞれ独自に、または協力して医薬品の研究開発を行っており、同じ疾患を対象とした開発品が複数存在することは珍しくありません。この競合環境において、他社の開発品が市場で優位性を示した場合、当社グループの開発品の研究開発が中止を余儀なくされる可能性があります。当社グループでは、競合環境を綿密に調査し、開発品の選定・優先順位付けを行うことでリスクの低減に努めていますが、競合品の新規参入等による影響により、当社グループの事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、バイオシミラー事業においては、2019年に上市したダルベポエチンアルファのバイオセイム以降、新たなバイオセイムの上市はなく、当社第3製品のラニビズマブバイオシミラー及び第4製品のペグフィルグラスチムバイオシミラーについても、現在のところ他社のバイオシミラーは上市されておりません。しかし、今後バイオセイムや他社のバイオシミラーが上市された場合、営業活動を通じた市場シェア争いが激化し、薬価下落や市場シェアが低下し、当社グループの事業計画及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 細胞治療事業(再生医療)における新規開発品の創出に関するリスク

 細胞治療薬をはじめとする新たな創薬モダリティの領域では、革新的技術の創出や、複数の先端技術の融合による進展が急速に進んでおります。当社グループは、自社独自の発明技術を軸としながらも、他のバイオベンチャーやアカデミア等の研究機関との連携を含むオープンイノベーションを通じて、新規開発品の探索及び創出を推進しております。しかしながら、これらの取り組みにより、常に新規開発品の創出が実現するとは限らず、想定通りの成果が得られない可能性もあります。仮に、何らかの要因によりこれらの活動に支障が生じた場合、当社グループの事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.事業モデルに関する事項

(1) 収益計上に関するリスク

 医薬品の基礎研究開始から上市に至るまでには通常10年以上の年月を要し、研究開発の成果が事業収益として計上されるまでには長期間を要します。また、医薬品開発の成功確率は近年低下傾向にあり、上市に至らないケースも多いため、最終的に事業収益が計上されない可能性もあります。そのため、当社グループは、自社で臨床開発や製造販売を実施せず、パートナー製薬企業に臨床開発以降のプロセスを主導してもらうことを基本方針とし、契約一時金や開発マイルストンペイメントの設定による早期収益化を目指しています。また、バイオシミラー事業と細胞治療事業の組み合わせによるハイブリッド型事業体制を構築し、当社グループ全体として、またそれぞれの事業において開発品ポートフォリオの最適化に取り組むことで、開発リスクと収益計上リスクの分散を図っています。しかしながら、提携時期や研究開発の遅延、研究開発の中断等が発生した場合には、当社グループの事業計画や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) パートナー製薬企業との契約に関するリスク

 当社グループは、研究開発の基本方針として、臨床開発以降のプロセスをパートナー製薬企業が主導することを想定しています。そのため、適切なパートナーが見つからない場合には、有望な開発品であっても開発が遅延し、または当該開発品の開発中止を判断することになります。このようなリスクを低減するため、当社グループは、国内外の製薬企業との定期的な面談を通じて、幅広いネットワークの構築と関心領域の把握に努めるとともに、バイオシミラー事業においては新たな開発候補品の選定・細胞株の構築段階から、細胞治療事業においては基礎研究・製造プロセスの開発段階から、パートナー製薬企業候補との協議を開始することで、早期提携に向けたパートナリング活動を推進しています。しかし、パートナー製薬企業との契約締結に至らない場合には、当社グループの事業計画や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) パートナー製薬企業の方針変更等に関するリスク

 当社グループは、バイオシミラー事業及び細胞治療事業において、パートナー製薬企業と提携し、協働で開発活動を行っておりますが、提携先企業の経営環境の変化や経営方針の変更等、当社グループが制御し得ない要因によって、開発活動が中断あるいは中止になる場合、または当該契約が解除された場合には、当社グループの事業戦略や事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、現在バイオシミラー事業においては、パートナー製薬企業の販売方針と需要予測に基づき、上市済みバイオシミラー原薬等の製造をCDMOに委託していますが、何らかの理由により当該販売方針が変更され、需要予測が大幅に下方修正された場合には、原薬等の製造・納品計画についても修正を求められる可能性があります。その際、CDMOとの製造計画の調整が進まない場には余剰在庫が発生し、当社グループの経営成績や資金繰りに重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) バーチャル型研究開発に関するリスク

 当社グループは、開発品ごとに最適な外部機関と連携し研究開発体制を構築する、「バーチャル型」の研究開発体制を構築しています。この体制は、限られた経営資源を効率的に活用し、柔軟かつ迅速な開発を可能にするという利点がありますが、連携先の外部機関において、品質や納期、技術的対応に問題が生じた場合、当社グループが直接コントロールできないため、研究開発スケジュールに遅れが生じるリスクがあります。特に、当社グループが取り組むバイオシミラーや再生医療等製品のように高い専門性が求められる分野では、代替機関の確保や技術移管が容易ではなく、場合によっては研究開発の中断や中止を余儀なくされ、当社グループの事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 更に、バイオシミラー事業においては、上市済みバイオシミラーの原薬等の安定供給を担っていますが、CDMOでの安定的な商業製造や、CROでの品質試験が滞る場合には、当該バイオシミラーの供給不足が発生し、これにより、売上機会の損失やパートナー製薬企業からの信頼低下を招き、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 知的財産権に関するリスク

 バイオ医薬品の分野では、先行する製薬企業を含む複数の第三者が特許権等の知的財産権を保有していることが一般的です。当社グループのバイオシミラー事業活動においても、候補品の選定時だけでなく、開発の各段階で国内外の特許調査を継続的に実施し、関連する第三者の特許権等を特定し、侵害行為が発生しないように努めております。

 しかしながら、開発の途中で第三者特許権等が判明した場合や、既存特許の解釈が変更された場合には、開発の遅延や中止を余儀なくされ、特許権者とのライセンス交渉や損害賠償請求への対応が必要となる場合には、当社グループの事業計画に大きな影響が及ぶ可能性があります。

 同様に、細胞治療事業(再生医療)においても、技術の高度化と複雑化により、多数の特許が存在する領域であるため、研究開発の各段階で特許調査を行い、関連しうる第三者特許権等の侵害の回避に努めておりますが、万が一侵害が発生した場合には、開発の中断や訴訟リスクが生じ、事業への影響は避けられません。このような観点を踏まえて、細胞治療事業では、自社開発品の特許出願を通じて知的財産の保護と競争力を高めることにも注力しております。現在出願中の特許出願については、戦略的な観点からその成立を目指していますが、かならずしも成立が保証されるものではなく、仮に成立しても、その保護範囲が限定的であったり、代替技術の存在により充分な競争優位性を確保できない可能性があります。更に特許権が成立した後は、その権利を侵害する第三者に対して法的措置を講じる必要があり、紛争の規模によっては解決に多大な時間と費用を要する可能性があります。

 なお、本書提出日現在、当社グループの事業活動において使用している知的財産は、当社グループが権利を保有または出願中であるもの、第三者から適法に使用許諾を受けたもの、または権利が既に消滅したものであると認識しています。また、現時点において知的財産権に関する第三者との紛争は発生しておりません。

(6) 研究所の使用に関するリスク

 当社グループは、札幌市及び東京都江東区に研究所を置いております。札幌研究所は北海道大学創成研究機構生物機能分子研究開発プラットフォーム推進センターが民間企業との共同研究等のために設けているオープンラボラトリスペースの一部を、東京研究所は三井不動産株式会社が運営するレンタルラボ施設を使用しております。このため、共同研究契約あるいは賃貸借契約の終了等何らかの理由により、同施設の使用ができなくなった場合には、研究所の移転を余儀なくされ、追加的な設備投資や賃借料の発生等によって、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.業績等に関する事項

(1) 財政状態及び経営成績に関するリスク

 当連結会計年度においては、バイオシミラー事業の急激な成長に加え、研究開発費の適正化及び一部期ずれを主な要因として、上場来初の全社ベースでの営業黒字を確保しております。一方で、事業収益や製造運転資金とのバランスを取りながら、適正な範囲でバイオシミラー事業と細胞治療事業(再生医療)の事業価値最大化に向けた研究開発投資を積極的に行っていくため、現時点では安定的な連結営業黒字を計上することができておりません。

 当社グループは、2026年度以降に安定的な連結営業黒字を実現することを目標に収益基盤の強化に取り組んでいますが、事業計画が想定通りに進捗しない場合には、連結黒字化の時期が遅れたり、繰越利益剰余金がマイナスからプラスに転じる時期が遅れる可能性があります。

 

(2) 特定の販売先への依存に関するリスク

 当社グループの売上高の大半はバイオシミラーの原薬等の供給にかかる売上であり、特にラニビズマブバイオシミラーのパートナーである千寿製薬、ペグフィルグラスチムバイオシミラーのパートナーである持田製薬に対する依存度が非常に高い状況です。今後、新規バイオシミラーまたは再生医療等製品等を新規パートナー製薬企業と開発することで、特定の販売先への売上依存度の引き下げを図る方針でありますが、開発が想定どおりに進まない可能性があります。また、現在契約を締結している販売先との契約解消等が生じた場合には、当社グループの経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(3) 資金調達に関するリスク

 バイオシミラー事業においては、上市済みバイオシミラーの需要が拡大し事業収益が大きく成長しました。その一方で、パートナー製薬企業向けの原薬等の製造量が増加したことに伴い、CDMO等に対する支払い増加により現預金残高が減少し、売掛金や仕掛品といった製造運転資金を構成する資産は増加傾向にありました。これらの資産が再度現金化されるまでには一定の期間を要することから、事業の拡大が短期的には製造運転資金の増加を招き、資金繰りに影響を与え、財務の柔軟性の低下や資金調達の必要性を高めるリスク要因となります。

 このような状況を踏まえ、当社では2023年度以降パートナー製薬企業との間で支払い条件の変更等に取り組み、19億円超の製造運転資金の圧縮を達成しましたが、バイオシミラー事業の収益が引き続き拡大傾向にある状況において更に資金繰りを安定させるためには、引き続き金融機関からの借入が不可欠です。特に借入額の拡大のためには、財務健全性の指標である負債資本倍率の改善を求められることがあり、その対応として増資による資金調達が必要となる可能性があります。なお、増資によって調達した資金は、バイオシミラー原薬の製造や新規バイオシミラーの開発活動に充て、企業価値の増大を図りますが、実施の際に発行済株式総数が増加するため、企業価値の増加が相対的に小さい場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 細胞治療事業においては、引き続き研究開発投資が先行している状況にあり、2024年4月以降は、当社から分社化したエスカトルと協力して、事業会社との資本業務提携や、ベンチャーキャピタル等との連携を通じた資金調達に取り組んでいます。このため、増資による資金調達が実施された場合、エスカトルに対する当社の持分比率が低下します。当社グループでは、調達資金を活用し、再生医療等製品等の研究開発活動を推進することで、企業価値の向上と当社が保有する持分価値の増大を図ってまいります。しかしながら、増資に伴い発行済株式総数が増加することから、企業価値の拡大が十分でない場合には、1株当たりの価値が希薄化し、当社の持分価値が減少する可能性があります。加えて、当初の想定を上回る研究開発資金等が必要となり、迅速な資金調達が困難となった場合には、研究開発活動等の継続が困難となり、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

 

(4) 財務制限条項への抵触リスク

 当社の一部借入金には財務制限条項が付されており、当該条項に抵触した場合、期限の利益を喪失し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 為替レートの変動に関するリスク

 当社グループは、バイオシミラー事業において、原薬の製造費用を外貨建てで海外CDMOに支払っており、売上原価の一部が為替レートの変動に影響を受けます。当該事業の製品売上が拡大する中、海外CDMOに対する外貨建て払いは増加しており、為替変動の収益性に対する影響も増しています。また、細胞治療事業においても一部の試験を海外のCROに委託しているため、為替レートの変動は研究開発費の増加要因にもなり得ます。

 今後は、海外市場への事業展開に取り組み外貨建ての売上高を得ることで、為替レート変動の業績への影響を一部相殺できるようにするとともに、パートナー企業等との契約においても、為替レート変動に伴う製造費用の増減について取り決めることで、業績への影響を抑える方針です。しかし、事業規模の拡大に伴い、更に外貨建取引の規模が大きくなった場合や支払サイトの長い外貨建取引を行う場合には、為替レートの変動が当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 投資有価証券の価値変動に関するリスク

 当社グループは、本書提出日現在において投資有価証券を保有しております。このため、当該投資有価証券の価値変動に伴い評価損が計上された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 配当政策に関するリスク

 当社は、創業以来配当を実施しておらず、本書提出日現在においても、会社法上の配当可能利益が計上されていないため、配当を実施可能な状態にはありません。当連結会計年度(2024年度)では上場来初の連結営業利益を計上しておりますが、2025年度には細胞治療事業(再生医療)の臨床開発の推進等、研究開発投資を積極的に行う計画であり、連結営業損失を見込んでおります。このため、安定的な営業利益の確保は2026年度以降になる見通しです。

 このような状況を鑑み、当面は収益基盤の確立と財務体質の強化を最優先とし、内部留保を活用した研究開発活動への再投資を重点的に行う方針です。一方で、株主への利益還元についても重要な経営課題と認識しており、将来的には財政状態や経営成績を総合的に勘案した上で、配当の実施を検討する予定です。

 ただし、利益計画が想定どおりに進捗せず、安定的に利益を計上できない状態が継続した場合には、配当を通じた株主還元が困難となる可能性があります。

 

5.その他

(1) 情報流出に関するリスク

 当社グループは、研究開発の過程で得られるノウハウ等、重要な機密情報が多数保有しております。これらの情報が外部へ漏洩した場合には、当社グループの信用や事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、厳格な管理が求められます。当社グループでは、役職員お及び取引先との間で秘密保持契約を締結し、情報の取り扱いに関するルールを設定するとともに、一般的なリスク管理手法を踏まえ、アクセス制限や監査体制の整備等、技術的及び組織的な対策を講じています。

 しかしながら、役職員や取引先がこれらの規定を遵守しない場合には、重要な機密情報が流出し、当社グループの事業活動や競争優位性に重大な影響を与える可能性があります。

 

(2) システム障害等に関するリスク

 当社グループはシステム障害、セキュリティ侵害等を未然に防止するための対策を講じておりますが、ウイルス感染、不正アクセス、自然災害、通信障害あるいは電気障害等によるインシデント発生の可能性を完全に排除することは困難です。これにより、当社グループが保有する重要な情報の喪失または漏洩が発生した場合、データ復旧に係る金銭的・時間的負担や、研究開発の遅延、更には取引先からの損害賠償請求等が生じる可能性があります。これらの事象は当社グループの信用失墜や社外提携関係への悪影響を及ぼし、事業計画の遂行に重要な影響を与える恐れがあります。

 

(3) 訴訟等に関するリスク

 当社グループは、法令遵守や契約管理の強化等を含むコンプライアンス体制の構築に努めております。しかしながら、知的財産権の解釈や技術の重複等を巡り、製薬企業等から特許侵害等を理由として損害賠償請求を受ける、または訴訟を提起される可能性があります。また、製造物責任、環境関連問題、労務管理等を含む事業活動に付随する分野においても、第三者との間で訴訟が発生する可能性があり、これらの訴訟の結果によっては、当社グループの社会的信用が損なわれるだけでなく、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 小規模組織であることに関するリスク

 当社グループは、開発品ごとに最適な外部機関と連携し研究開発体制を構築する、「バーチャル型」の研究開発体制を構築しています。このため、高度な専門知識、技能や経験を有するバイオ人財による少人数組織体制を前提としています。しかしながら、バイオ医薬品の研究開発経験を有する人財は限られており、想定どおりに人財の確保ができない場合、あるいは人財の流出が生じた場合には、研究開発の推進や社外との提携関係の構築に支障が生じ、当社グループの事業計画や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、事業の拡大に伴い、内部管理体制の強化も求められる一方で、少人数の組織であることから、管理部門の人財確保や体制整備が遅れるリスクがあります。このため、人財の確保が想定どおりに進まない場合や流出が生じた場合には、内部管理体制の質の低下を招き、当社グループの社会的信用を損なう可能性があります。

 

(5) 企業再編、企業買収、合併等に関するリスク

 当社グループは、企業価値向上を目的として、技術力や資金力等の補完、事業領域の拡張、効率的な経営体制の構築等を視野に入れ、将来的に他社との経営統合や企業買収等の実施を検討する可能性があります。この際、経営統合や企業買収等にかかる費用が、一時的に当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。また、当該経営統合や企業買収等が計画どおりに進捗しない場合や、統合後の組織運営や人財・文化の融合が想定どおりに進まない場合には、業務の非効率化や意思決定の遅延、従業員の離職等が発生し、統合効果が十分に得られない可能性があります。更に、事業環境や競合状況の著しい変化により、期待していた効果が得られない場合には、投資価値の減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの経営成績、財政状態に様々な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 災害及びパンデミック等の緊急事態に関するリスク

 当社グループは、事業活動の中心となる事業所を東京都と北海道に設置し、地理的なリスク分散を図っております。また、研究開発活動の一部を外部の受託機関に委託しており、実質的にはより分散した体制が構築されている状況です。しかしながら、これらの地域において大規模の地震等や災害、あるいは新型コロナウイルス感染症に類するパンデミック等が発生した場合、設備等の損壊やインフラの機能停止等により、当社グループの事業活動が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは小規模組織であるため、限られた人員や設備に依存した業務が多く、代替手段の確保が困難な状況です。そのため、緊急事態が発生した場合には、研究開発の遅延、提携先との関係悪化、財務面での負担増加等が生じ、当社グループの経営成績及び企業価値に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 継続企業の前提に関する重要事象等について

 当連結会計年度において、当社グループは上場来初の営業利益を計上いたしました。一方、今後も適正な範囲でバイオシミラー事業と細胞治療事業(再生医療)の事業価値最大化に向けた研究開発投資を積極的に行っていくため、一時的に期間損益がマイナスとなる可能性があり、継続企業の前提に重要な疑義を生じる状況となっております。これに対し、内部留保で対応することに加え、金融機関からの借入等による適時調達を行い、事業継続に必要な資金を確保しております。その結果、継続企業の前提に関する重要な不確実性は存在しないと判断しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度との比較分析は行っておりませんが、参考情報として一部、前年同期の提出会社個別の財務諸表との比較を記載しております。

 

① 経営成績の状況

 当社グループの連結業績につきましては、売上高5,082,053千円、研究開発費767,877千円、営業利益27,882千円、経常利益5,187千円、親会社株主に帰属する当期純損失21,140千円となりました。

 バイオシミラー事業においては、バイオシミラーの需要拡大を踏まえ、原薬等の製造及び納品スケジュールについて継続的にパートナー製薬企業及びCDMOと調整を重ねた結果、予定通りに製造及び納品を完了いたしました。また2023年度以降、一部製品で製造運転資金の効率化を目的に実施していた支払い条件変更に伴い、製造原価部分を除いた粗利益相当額のみを売上高に計上処理しておりましたが、当第3四半期末には通常の支払い条件に戻り当該影響が減少されました。更に、海外での物価上昇及び円安により増加した製造費用について、バイオシミラーの販売を担うパートナー製薬企業との供給価格改定交渉の一部が奏功した結果、売上高は前年同期比で大きく伸長いたしました。また、細胞治療事業においては、エスカトルが開発を進めている脳性麻痺を対象とした再生医療等製品(開発コード:GCT-103)について、持田製薬との共同事業化契約の締結により契約一時金を受領しています。一方で、研究開発活動の進捗及び事業性に基づく開発品の優先順位の見直しと、研究開発費の適正化に加え、一部費用の計上が2025年度以降にずれ込んだ結果、研究開発費は前年同期比で大きく減少しています。

 以上から、バイオシミラー事業の売上高増加と利益率改善、細胞治療事業での契約一時金受領、及び研究開発費の減少が寄与し、当グループ連結での営業利益並びに経常利益は、上場後初となる全社ベースでの黒字化を達成いたしました。一方、最終的な親会社株主に帰属する当期純利益については、バイオシミラー事業の黒字拡大による税金費用等の増加が影響し、依然赤字の状況となっております。しかしながら、バイオシミラー事業単体を指す当社単体決算においては、引き続き黒字を確保している状況です。

 

 当連結会計年度における各事業の進捗状況は以下のとおりであります。

 

イ バイオシミラー事業

 当該事業の事業進捗として、まず主にGBS-007とGBS-010に対する堅調な需要拡大に伴う製造運転資金増加に対応するため、支払条件等の見直しについてパートナー製薬企業との交渉に取り組みました。この結果、売上高が大きく増加した期間において、これまでに19億円を超える製造運転資金の圧縮を達成しております。また、海外における物価上昇及び円安の影響を受けて増加した製造費用については、供給価格への一部反映を実現いたしました。今後も、外部環境の変化等に応じた製造運転資金及び供給価格の適正化に取り組んでまいります。

 更に、当社はかねてより一部バイオシミラー原薬等の安定供給体制の強化・維持、及び製造原価低減等を目的とし、新規CDMOへの技術移管・製造プロセス開発等にも注力してまいりました。承認取得時期は当初計画より半年程遅延しましたが、当該新規CDMOの追加について独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認を2025年5月に確認し、これによる当該バイオシミラーの原価率低減を通じた当社の利益率改善は2026年度から実現する見込みであります。

 加えて、新たな収益源の創出を通じた当該事業の更なる成長を目指し、当社は、2024年6月、抗体医薬品の新薬開発に強みを持つカイオムとバイオシミラーの開発に関する業務提携契約を締結いたしました。本契約に基づき、両社で合意した新規バイオシミラーの開発候補品については、両社のバイオ人材、バイオ医薬品の開発ノウハウや経験等を組み合わせ、また開発費用を分担し、主に細胞株や製造プロセス等の共同開発を進めてまいります。また、この協業によって開発された細胞株や製造プロセス等を製薬企業等へ導出あるいは譲渡した場合に得られる収益や、当該製薬企業等への開発支援に伴う業務提供による収益は、両社でプロフィットシェアする形とし、効果的にシナジーを生み出す協業モデルを目指します。なお、既に当該業務提携に基づき新規バイオシミラー開発計画の具体化を進めていましたが、2025年5月にカイオム、MBIとの間でMaster Service Agreementを締結し、当該新規バイオシミラー細胞株構築に着手しました。既に、新規バイオシミラーについてはパートナー候補である複数の国内外製薬企業等と秘密保持契約下での協議を進めており、海外市場における事業展開も見据えた共同事業化契約等を2025年9月末までに締結することを目指しております。

 また、今後更なる需要拡大が想定されるバイオシミラーについて、開発から製造・供給までをカバーする国内初のバイオシミラーのサプライチェーン構築と安定供給の実現を見据え、昨年よりアルフレッサ ホールディングス及びカイオムとの協議を開始し、更に当社の取引先でバイオシミラーを含むバイオ医薬品の製造及び製造施設の整備に豊富な実績を有する台湾のバイオ医薬品製造受託機関であるMBIとも協業の可能性について協議を進めてまいりました。こうした各社との協議をベースに、国内製造施設の整備・稼働に協働して取り組むことに合意に至り、先般、厚生労働省「医療施設等施設整備費補助金(バイオ後続品国内製造施設整備支援事業)」に係る公募への共同申請に至りました。2025年5月の採択を受け、今後は4社の協働により、同補助事業の目的であるバイオシミラーの原薬・製剤製造施設の国内候補地での整備を含むバイオシミラー事業を推進に取り組んでまいります。

ロ 細胞治療事業(再生医療)

 細胞治療の研究開発活動においては、これまでSQ-SHEDの特徴に基づきその治療効果が期待できる疾患として脳性麻痺(遠隔期)、骨疾患等を選択し、研究を進めてまいりました。その成果として、脳性麻痺については、名古屋大学と共同で実施中の臨床研究において、SQ-SHEDが初めてヒトに投与されました(ファースト・イン・ヒューマン)。本研究では自家SQ-SHEDを3例の患者様に投与する計画で、これまでに全例の患者様への投与が完了し、観察が進行中です。更に、構築済みのMCBを用いた、日本国内における同疾患を対象とした同種SQ-SHED(当社開発コード:GCT-103)については、2025年3月に持田製薬との間で共同事業化契約の締結に至りました。今後は持田製薬が治験等を、当社グループがSQ-SHEDの製造等を主な役割として共同で開発を推進します。

 一方、海外市場におけるGCT-103の臨床開発に向けては、海外開発受託機関等との契約を締結し、治験責任医師や治験実施施設の選定含む開発体制の構築等に取り組んでいます。その取り組みの一環として、海外治験開始に向け、当社グループが保有する非臨床試験データと構築中の製剤製造プロセス、及び今後の試験計画について海外大手CROにて充足性の評価を実施し、必要なデータ取得及びプロセスが順調に進んでいることを確認しました。

 骨疾患については、これまでの北海道大学との共同研究成果に基づき、2024年9月に新たに獨協医科大学及びHOTSと虚血性骨疾患の新規治療法開発を目指した共同研究契約を締結し、実用化に向けた共同研究に取り組んでいます。

 SQ-SHEDの次世代大量製造技術開発についても独自に取り組みを進めており、世界的な培養機器メーカーである米国のコーニング社の協力の下、新たな大量培養製法の開発に成功し、2025年5月に米国で開催された国際細胞治療学会(ISCT)にて同社と共同で発表を行いました。更に、後期臨床試験及び商用製造への適用に向け、本格的なプロセス開発を進めるべく、製造受託事業を展開するニプロと共同開発契約を締結し、エスカトルからの技術移管を完了しました。今後も引き続き、各社と協働の下、次世代製造体制の構築に向けた開発を進めてまいります。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における総資産の残高は、7,008,496千円となりました。

主な内訳は、現金及び預金が2,995,435千円、仕掛品が1,475,092千円、売掛金が1,267,189千円であります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債の残高は、5,597,518千円となりました。

主な内訳は、当連結会計年度において、上市済みバイオシミラーに関連する製造費用について、パートナー製薬企業との交渉を通じ、製造運転資金の効率化を目的とした支払条件の変更が一部実施されました。パートナー製薬企業との協議は継続しておりますが、結果として契約負債(前受金)は2,970,000千円、長期借入金(1年内返済予定を含む)が1,337,960千円であります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、1,410,977千円となりました。

主な内訳は、資本金2,317,578千円、資本剰余金が11,623,179千円、利益剰余金が△12,730,223千円であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、2,995,435千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により増加した資金は936,707千円となりました。

これは主に、棚卸資産の増加が599,438千円、売上債権の増加が385,782千円あったものの、契約負債(前受金)の増加が1,852,225千円あったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により増加した資金は65,077千円となりました。

これは主に、投資有価証券の売却による収入が88,948千円あったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は240,061千円となりました。

これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入が505,286千円あったものの、長期借入金の返済による支出が737,040千円あったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

バイオシミラー事業

3,441,934

 

原薬等販売収益

3,441,934

合計

3,441,934

(注)当社グループは当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期比については記載しておりません。

 

b.受注実績

 フィルグラスチムバイオシミラー及びラニビズマブバイオシミラーにつきましては、ロット単位での受注であり、各ロットの生産高に応じて売上高が変動し、受注金額を確定できないことから、記載を行っておりません。

 なお、上記以外の品目につきましては、研究開発段階での売上であり、その不確実性に鑑み、記載を行っておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

区分

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

バイオシミラー事業

4,930,345

 

原薬等販売収益

4,718,876

 

知的財産権等収益

211,469

細胞治療事業(再生医療)

151,707

 

知的財産権等収益

151,707

合計

5,082,053

(注)1.当社グループは当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期比については記載しておりません。

2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

千寿製薬㈱

2,832,962

55.7

持田製薬㈱

1,652,622

32.5

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高5,082,053千円(前年比109.03%増)、営業利益27,882千円(前年は1,335,597千円の営業損失)、経常利益5,187千円(前年は1,389,601千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失21,140千円(前年は1,422,078千円の純損失)となり、収益性が大幅に改善しております。なお、前年(2024年3月期)の数値は非連結決算であり、参考値として扱っています。

売上高は前年の2,431,236千円から2,650,817千円増加し、5,082,053千円となりました。主な要因は、バイオシミラー事業におけるGBS-007及びGBS-010の需要増に対応する形で原薬等の製造・納品が計画通りに完了したこと、更にパートナー製薬企業との供給価格等の調整が進んだことによるものです。加えて、細胞治療事業(再生医療)においては、持田製薬との共同事業化契約の締結により契約一時金を獲得したことが売上高増加に寄与しています。

営業利益は、前年の営業損失1,335,597千円から1,363,479千円改善し、27,882千円の営業利益を計上しました。これは売上高の増加要因に加え、研究開発活動の優先順位見直しによる支出の適正化や、一部費用の翌期以降への計上繰越が影響しております。なお、営業利益の黒字化達成は当社の上場来初であり、2023年度以降の経営改革、事業構造改革の成果が明確に表れたものと考えております。

経常利益も同様に、前年の経常損失1,389,601千円から1,394,788千円改善し、5,187千円の黒字を計上しました。営業利益の改善に加え、財務費用の抑制や為替差損の縮小等が寄与しています。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前年の当期純損失1,422,078千円から1,400,938千円改善し、当期純損失21,140千円まで赤字幅が縮小しました。当社単体での当期純利益に対する税務負担の影響で依然として連結ベースでは損失を計上するものの、財務体質の改善が進んでおり、今後の黒字化に向けた基盤が整いつつあります。なお、当連結会計年度における主な特別損益として、保有する投資有価証券の一部売却により66,330千円の特別利益(投資有価証券売却益)を計上した一方、投資有価証券の評価損として31,128千円の特別損失も計上しております。これらの特別損益は、当期純損失の縮小に一定の影響を与えましたが、本業の収益改善が主因であることに変わりはありません。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、研究開発費を除く事業活動に関しては、バイオシミラー事業における上市済バイオシミラーの販売収益等を財源として安定的に運営しております。しかしながら、2023年度においては、GBS-007及びGBS-010がそれぞれの当初需要想定を大きく上回るペースで成長したことによる原薬等の製造追加等に伴う製造運転資金の確保や、海外での物価上昇及び円安の影響による製造コスト増加に対応する必要がありました。そのため、2023年7月には第三者割当による第18回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、未行使である新株予約権を除いて約10億円、更に金融機関からの借入による10億円、総額約20億円規模の資金を調達いたしました。

一方で、第18回新株予約権の発行を受けて下落した株価の回復及び中長期的な株価の適正化に向け、資金調達手段の見直しについて継続的に検討を進めてきました。まず、資金調達手段の見直しに向けた第一歩として、バイオシミラー事業の売上高成長に伴い大きく増加した製造運転資金の適正化を目的に、パートナー製薬企業との間で支払い条件の見直し等に関する協議・調整を重ねた結果、19億円以上の製造運転資金の圧縮を達成しております。また、当該製造運転資金の圧縮に伴う資金ニーズの削減を受けて、2024年12月26日に、第15回及び第18回新株予約権(既存予約権)の買入消却と第23回及び第24回新株予約権(新規予約権)の発行(リファイナンス)を決議しました。

本リファイナンスにおいては、上述の資金ニーズ削減に沿って発行規模を縮小することで、株式価値の希薄化に配慮しました。また、本リファイナンスにより、行使価格と株価との乖離によって長期化している既存予約権による資金調達を中止し、当社株価実勢に合わせた行使価格での新規予約権に置き換えることで、株式市場からの資金調達の早期完了を目指しています。資金調達を早期完了させることで、オーバーハング懸念の軽減に伴う

当社株式の需給バランスを改善させ、当社の事業成果が適切に株価に反映される環境を整えることに努めております。なお、本有価証券報告書開示時点では、第24回新株予約権のすべてについて行使が完了し、既存の第4回無担保転換社債型新株予約権付社債の一部転換が進む等、着実に資金調達の実現とオーバーハング懸念の軽減が進んでおります。

以上の通り、当社グループは資金流動性の確保に取り組む一方、バイオシミラー事業及び細胞治療事業の成長に必要な研究開発投資は継続して行う必要があります。そのための資金確保手段として、開発パートナー企業等との資本業務提携や契約一時金の獲得、各種助成金等の活用を想定する他、必要に応じた間接金融等から借入等、資金調達手段の多様化と最適化を2025年度も継続いたします。また、両事業において、研究開発活動の進捗及び事業性に基づいて開発品の優先順位を機動的に見直すことや、早期のパートナリング等による役割と費用負担の分担を進めること等を通じて、メリハリのある研究開発投資の実行と研究開発投資リスクの低減に取り組み、将来の成長性を毀損することなく、「安定と成長の両立」に向けたバランスの良い財務基盤の確立を目指します。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。これらの見積りには不確実性が伴うため、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。

 

 

5【重要な契約等】

(1) 原薬販売に関する契約

契約書名

売買基本契約書

相手先名

富士製薬工業株式会社

契約締結日

2013年2月25日

契約期間

フィルグラスチムバイオシミラー製剤の製造販売承認取得日(2012年11月21日)から7年間。ただし、当該有効期間満了日の6ヶ月前までに終了の合意が無い限り、更に1年間自動延長されるものとし、以後もこの例による。

主な契約内容

富士製薬工業株式会社がフィルグラスチムバイオシミラー製剤を日本国内で商業的に製造販売するため、当社は、フィルグラスチムバイオシミラー製剤の原薬を継続的・安定的に同社に売り渡し、同社はこれを独占的に買い受ける。

 

(2) ライセンスインに関する契約

契約書名

ライセンス契約書

相手先名

Dong-A ST Co., Ltd.(旧東亜製薬株式会社)

契約締結日

2008年1月21日

契約期間

本契約に定める各地域(日本、米国、台湾及び一部地域を除く欧州)での販売開始後10年間とし、一方の当事者から更新拒絶の意思表示がない限り、以後1年毎に自動更新される。ただし、日本地域に限り、当社の販売提携先が販売を継続する限り有効とする。

主な契約内容

① フィルグラスチムバイオシミラーを産生する細胞及び技術に対する独占的実施権の許諾を受ける。

② 上記実施許諾により得られたフィルグラスチムバイオシミラーの原薬または製剤を、医薬品用途において使用、製造、販売及び譲渡を行う権利を受ける。

③ 契約一時金、開発段階に応じたマイルストン契約金及び上市後におけるロイヤリティを支払う。

 

(3) 共同開発に関する契約

契約書名

ダルベポエチンアルファバイオ後続品 国内サブライセンス及び共同開発契約書

相手先名

株式会社三和化学研究所

契約締結日

2014年1月21日

契約期間

本契約締結日からロイヤリティの支払いが終了する日まで

主な契約内容

① 株式会社三和化学研究所がDong-A ST Co., Ltd.から許諾を受けたダルベポエチンアルファバイオシミラーの国内開発権の再許諾を受け、本製品の国内開発を共同で実施する。

② 開発マイルストン等の支払いを行い、上市後はロイヤリティを受領する。

 

(4) 共同事業化に関する契約

契約書名

日本国内向け共同事業化契約書

相手先名

千寿製薬株式会社

契約締結日

2016年5月12日

契約期間

本契約締結日から、開発を中止または販売を終了する日まで有効

主な契約内容

千寿製薬株式会社がラニビズマブバイオシミラーを日本国内で商業的に製造販売するため、当社は、ラニビズマブバイオシミラーの半製品を継続的・安定的に同社に売り渡し、同社はこれを独占的に買い受ける。

 

(5) 原薬販売に関する契約

契約書名

ペグフィルグラスチム商業用原薬供給契約

相手先名

持田製薬株式会社

契約締結日

2023年8月8日

契約期間

契約締結日から本バイオシミラーに係る共同事業化契約が終了する日まで有効

主な契約内容

持田製薬株式会社がペグフィルグラスチムバイオシミラーを日本国内で商業的に製造販売するため、当社は、ペグフィルグラスチムバイオシミラーの原薬を継続的かつ安定的に持田製薬に供給することを目的として、商業用原薬供給契約を締結しており、持田製薬は当社からの供給を前提として製品製造を行う。

(6) 第三者割当による第4回無担保転換社債型新株予約権付社債(転換社債型新株予約権付社債間限定同順位特約付)に関する買取契約

契約書名

Securities Purchase Agreement

相手先名

CVI Investments, Inc.

契約締結日

2022年6月23日

契約期間

本契約に基づき発行された転換社債は、2022年7月14日を払込期日とし、2026年8月6日に額面金額で償還される予定です。

主な契約内容

本契約は、当社の資金調達及び資本政策の柔軟性向上を目的としており、契約に基づきCVI Investments, Inc.に対して新株予約権お及び転換社債を発行することに合意しています。契約には、転換価額の調整条項が含まれており、発行された社債は一定の条件の下で株式に転換可能です。また、発行条件に従って権利行使が行われることで、CVI Investments, Inc.は当社株式を取得することが可能となります。更に、契約の履行にあたり、当社は契約の有効性お及び履行能力に関する表明保証を行っております。

財務特約の内容

本契約においては、当該社債の償還に関しては、契約条項に定められた義務の不履行や、転換権の行使に関連する条件を未達した場合には、社債の金額100円につき100円及び未払経過利息の合計額を0.9で除した金額で償還する義務が生じる旨が定められております。

これらの特約は、金融庁が2023年12月22日に公表した「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正」に基づく有価証券報告書の記載ガイドラインにおいて、社債の発行に付された財務特約として開示が求められる内容に該当するものであり、当社はこれに準拠して開示を行っております。

 

(7) 財務上の特約が付された金銭消費貸借契約について

 2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約等については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、バイオシミラー事業及び細胞治療事業(再生医療)において、それぞれ異なるリスク・リターン特性を持つ研究開発活動を展開しています。これらの事業は、単なる事業領域の多角化ではなく、経営資源の配分と成長戦略のバランスを意識した「安定と成長の両立」を実現するための戦略的ポートフォリオとして位置づけられています。

 

(1) 自社研究開発体制

 当社グループでは、主に細胞治療事業の研究開発活動として、札幌研究所にて神経疾患、骨疾患、がん等を対象とした基礎研究、非臨床試験及び製剤製法研究等を、東京研究所にて細胞外小胞やSHEDの新規アプリケーション探索研究等を行っております。加えて、CRO等の外部委託先を活用し、効率的かつ迅速な研究開発を推進しております。

 

(2) 共同研究開発体制

 当社グループは、バイオベンチャー企業であり、限られた経営資源で事業を推進しております。このため、早期の段階から、各分野に専門性を有する社外の研究機関や製薬企業等と提携することにより共同研究開発体制を構築し、当社グループ経営資源の効率的な活用と、社外技術等の有効活用を図っております。また、多額の開発費用を要する商業用規模での製法・品質の検討、非臨床試験及び臨床試験の開発段階においては、製薬企業との協業を基本とし、共同研究開発契約等による契約一時金や開発マイルストン収益の獲得、または共同研究開発に伴う役務収益等の獲得を通じて、研究開発費の負担軽減を図っております。

 

(3) 研究開発活動の概要

 当連結会計年度における研究開発費の総額は767,877千円となりました。

 研究開発活動の概要については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(4) 主な開発品の進捗状況

 主な開発品の進捗状況については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (4) 主力上市品・開発品」に記載のとおりです。