当社グループのパーパス、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「ものづくりによる信頼、真摯な技術、自由な創造力で、次世代の豊かな未来をカタチづくる」ことをパーパスに掲げ、持続的な企業価値の向上に努めております。また、ものづくりへの貢献によって、暮らしの当たり前を支えるとともに、新しい価値の創造で世界のニーズに応え続けることで、社会の持続可能な発展に貢献し、全てのステークホルダーに寄り添い、共に歩み、社会に価値を提供する誇りを持つ企業であり続けるために、「パンチグループの約束」を明示しております。
(パンチグループの約束)
①お客様へ
パンチグループのものづくりソリューションで、成長を支えます。
常にお客様の期待を上回る価値を提供します。
②社員へ
誇りをもって働くことができる環境を提供し、一人一人の成長と自己実現を支援します。
③社会へ
自然環境・社会の変化に向き合い、次世代へより良い未来を繋ぎます。
(2)経営環境
①企業構造
プラスチック・プレス金型部品を中心に、さまざまな金型に必要となる、汎用性が高く高品質な標準製品やお客様のニーズにきめ細かくお応えすることが可能な特注品を豊富にラインアップし、金型部品単一セグメントとして、国内事業及び海外事業を展開しております。
②市場環境
当連結会計年度における世界経済は、全般的に緩やかな回復基調にありますが、その一方で、原材料・エネルギーコストの高止まり、物価の上昇、地政学的問題などにより、依然として先行きは不透明な状況が続いております。また、アメリカ大統領の交代による政策転換により、特に中国との貿易において多大な影響が予想されることから、関係各国における景気停滞が懸念されております。加えて、中国では精密機器や電気自動車の輸出が好調な反面、長引く不動産不況と対中直接投資の大幅な減少により国内需要が低迷し、景気停滞が継続しております。
③お客様動向
当社グループは、主として自動車関連、電子部品・半導体関連、家電・精密機器関連の分野において、国内外で1万社を超えるお客様にお取引を頂いておりますが、特定業種の景気変動の影響を受けにくいバランスのとれたポートフォリオであるとともに、近年は食品・飲料関連、医療関連、航空宇宙関連といった新分野への拡販にも注力しております。
④競合他社の状況
当社グループは金型部品事業を主たる事業としておりますが、当該事業には高額な設備や高い技術力を有する加工者の確保等を必要とすることから、比較的参入障壁が高くなっております。
そうしたなかで、標準製品については、お客様のニーズに応じた製品開発やWeb受注などの顧客利便性の向上を図るほか、製造原価の低減にも積極的に取組んで競争力の強化に努める一方、特注品については、高い技術力に裏打ちされた一気通貫の生産体制と顧客密着型の営業体制をより強化することで、他社との差別化を図っております。
(3)経営戦略等
当社は2025年5月に、当社グループ長期ビジョン「Vision60」を策定・公表しました。
「Vision60」は、パーパスの実現へ向けて、10年後の当社グループの「ありたい姿」を示し、そこへ至る3つの中期経営計画の戦略をバックキャスティングにより定めたものです。絶え間なく変化し益々見通し難い経営環境の中、「Vision60」の下に経営と社員とが心を合わせ、今後もステークホルダーの皆様のご期待に応えられるよう、事業の一層の発展と企業価値の向上に努めてまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
「Vision60」では、当社グループのパーパスと取り巻く環境の将来予測に基づき、10年後の「ありたい姿」として「脱・金型部品依存」を掲げ、事業領域の拡大を図りながら、絶えず変化する社会の多様なニーズに応える企業グループを目指してまいります。
具体的には、金型部品事業の持続的な成長とともに、成長事業と位置づけるFA事業のさらなる拡大を図り、さらに第三の柱となる新たな事業の開拓・育成を推進することで、FA事業及び新規事業の売上高構成比を高め、2035年3月期には連結売上高800億円を目指してまいります。
そして、「Vision60」を達成するための原動力として、当社グループの企業アイデンティティである「パンチスピリット(チャレンジ・創意工夫・自由闊達)」の精神にもさらに磨きをかけてまいります。
なお、「Vision60」の詳細につきましては、当社Webサイトをご参照ください。
(URL:https://www.punch.co.jp/ir/newsData/20250523_ir_news_1.pdf)
また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、継続してROIC経営に取組み、財務基盤の健全性を確保しながら、経営効率を高め、営業活動から得られた資金を、株主還元とさらなる成長投資へ適切に分配していくことで、企業価値の向上を目指しております。
なお、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の詳細につきましては、当社Webサイトをご参照ください。
(URL:https://www.punch.co.jp/ir/newsData/20250523_ir_news_2.pdf)
具体的な取組み内容及び各種資本収益性の指標につきましては、2027年3月期を初年度とする次期中期経営計画にて公表する予定としております。
当社グループでは、中期経営計画「バリュークリエーション(以下、VC)2024」において、経営基盤強化策の一つとして「サステナビリティ」を掲げ、続く「VC2024 Revival」においてもこれを継続いたしました。また、現在は次期中期経営計画の策定に向けた検討期間にありますが、引き続き「サステナビリティ」は重要な経営基盤の強化策と位置付けております。
現在の企業には「ビジネス環境」のみならず「社会環境」や「地球環境」との共存が求められていることを認識し、これらにおいて発生しているさまざまな課題の解決に取組むと同時に、そうした取組みを通じて当社自身の事業にも波及効果を得ることで、企業価値の向上を図っていくことが重要であると考えております。
ここでは、当社グループのサステナビリティ全体に係る(1)方針、(2)マテリアリティ、(3)ガバナンス体制、(4)リスク管理体制を記載した後、(5)戦略、指標及び目標の項目において、①気候変動対応、②人的資本、③人権尊重の個々のテーマに対する戦略(リスクと機会、取組み、方針)、指標及び目標を記載します。
(1)当社グループのサステナビリティ方針
私たちは、世界のものづくりを支えることを通じて、たゆまぬ成長と企業価値の向上を実現し、社員やサプライチェーンに関わる全ての人々の暮らしと地球環境を守る企業を目指します。
(2)当社グループのマテリアリティ
当社グループでは、優先的に取組むべきことを、「ビジネス環境」「社会環境」「地球環境」における課題も踏まえて検討した結果、「地球環境への配慮」「人権の尊重」「人的資本への取組み」「『製品・サービス』を通じた社会への貢献」「コーポレート・ガバナンス」の5つをマテリアリティ(重要課題)として特定しました。これらマテリアリティに対して、部門横断的に組成した3つのタスクフォースと各業務担当部門にて、解決に取組んでおります。
(3)ガバナンス
当社グループのサステナビリティに係るガバナンス体制は以下のとおりです。
サステナビリティ委員会は、社長執行役員を委員長、各執行役員を委員とし、サステナビリティ全般に関する基本方針の策定やマテリアリティの特定、マテリアリティごとの活動計画や目標の設定並びにその進捗管理、それらの情報開示に関する事項等の審議及び業務指示を行い、定期的に取締役会へ報告・提案を行います。
取締役会は、サステナビリティ委員会から報告を受け、サステナビリティ課題に対する指示・監督を行います。
<当事業年度の活動状況>
開催頻度:4回
審議内容:マテリアリティごとの活動計画及び指標・目標設定、活動の進捗確認、個別事情への対応など。
取締役会への報告:2回
(4)リスク管理
当社グループのサステナビリティリスクを含めたリスク管理体制は以下のとおりです。
<リスクの識別・評価プロセス>
サステナビリティ委員会は、各タスクフォース及び業務担当部門(事業部門・管理部門・グループ会社)(以下、「タスクフォース等」という。)が認識しているサステナビリティ関連リスクの識別・報告を指示します。
その後、報告されたリスクの発生可能性と影響度を評価し、タスクフォース等に対し、リスクを最小化するための具体的対策の取組み及び全社的な指標・目標の設定を指示します。
<リスク管理プロセス>
タスクフォース等は、サステナビリティ関連リスクへの取組み状況を、定期的にサステナビリティ委員会に報告します。
サステナビリティ委員会は、取組みに対する進捗状況をモニタリングし、その結果を取締役会に報告します。
<総合的リスク管理への統合>
サステナビリティ委員会は、サステナビリティ関連リスクの管理状況を、四半期ごとに開催されるリスクマネジメント委員会に報告します。
リスクマネジメント委員会は、すべての経営リスク・事業リスクを総合的に管理しており、ここにサステナビリティ関連リスクを統合することにより、これら全リスクに関する第三者評価の取得を行い、リスク管理上の課題・対応策を審議し、その状況について取締役会に報告します。
(5)戦略、指標及び目標
①気候変動への対応
イ.リスクと機会
気候変動が当社グループの事業活動に与えると想定されるリスクと機会について特定し、財務に与える影響を評価しました。これらのリスクの軽減とビジネス機会の獲得に向けた対応策を検討、実施してまいります。
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区分 |
分類 |
リスク/機会 |
事業活動への影響 |
時間軸 (注)1 |
評価 (注)2 |
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移行リスク |
政策・法規制 |
炭素税・排出権取引の導入 |
炭素税や排出権取引によるコスト増加 |
短 |
中 |
|
省エネ・排出量等環境関連規制 |
排出規制等による事業活動の制限 |
中 |
中 |
||
|
技術 |
低炭素製品への移行にまつわる競争力低下 |
既存技術・製品の競争力低下 低炭素素材の調達・開発コスト増加 低炭素素材の調達・開発失敗 低炭素・高効率化機械の価格上昇 |
短 |
中 |
|
|
市場 |
原材料・生産コスト増加に伴う製品価格上昇による顧客離れ |
気候変動対応技術・製品の価格上昇による顧客離れ |
中 |
大 |
|
|
輸送手段の脱炭素化にともなうコスト増加 |
ガソリン価格の上昇、低燃費車導入による輸送コスト増加による顧客離れ |
中 |
中 |
||
|
気候変動対応遅れによるサプライチェーン(川上・川下含む)からの排除 |
取引選定基準への不適合による取引停止 |
短 |
大 |
||
|
評判 |
気候変動対応遅れ、情報開示不十分による企業価値の毀損 |
ステークホルダーからの評価低下 |
短 |
中 |
|
|
物理的リスク |
急性 |
風水害の激甚化による自社への影響(従業員の安全含む) |
生産拠点の被災による事業停止 生産拠点以外の被災による機能停止 |
短 |
大 |
|
風水害の激甚化によるサプライチェーンへの影響 |
生産・物流の停止 |
中 |
大 |
||
|
慢性 |
海面水位上昇による拠点・調達網の移転・見直し |
拠点・調達網の見直し、移転に掛かるコスト増加 |
長 |
大 |
|
|
気温の上昇によるエネルギー使用量の増加 |
エネルギー使用量の増加に伴うコスト増加 空調設備設置のコスト増加 |
短 |
小 |
||
|
気温の上昇による従業員の健康面への影響 |
体調不良者の続出による事業停止 |
長 |
中 |
||
|
機会 |
資源の効率化 |
再エネ・低排出エネルギー利用による補助金等支援政策活用 |
税制特例・補助金等の享受 |
短 |
小 |
|
高効率設備による操業コストの低減 |
製造コストの低減による販売機会・利益の拡大 |
短 |
中 |
||
|
物流の効率化・モーダルシフトによる運送コストの低減 |
物流コストの低減による販売機会・利益の拡大 |
中 |
中 |
||
|
エネルギー源 |
低価格エネルギー利用による操業コストの低減 |
製造コストの低減による販売機会・利益の拡大 |
短 |
小 |
|
|
低排出エネルギー利用による補助金等支援政策活用 |
税制特例・補助金等の享受 |
中 |
小 |
||
|
製品/サービス |
環境対応・気候変動対応製品・サービスの提供 |
顧客の生産工程削減や省エネ・CO2排出量削減に貢献する製品の需要拡大 |
短 |
小 |
|
|
脱炭素関連製品における部品需要の取り込み |
EV化による半導体・電子部品等の需要拡大 |
短 |
中 |
||
|
市場 |
サーキュラーエコノミーへの対応製品による新ビジネス |
新規事業、新市場への参入 |
中 |
中 |
|
|
レジリエンス |
自社及びサプライチェーンの強靭化による差別化 |
災害に強い工場・物流拠点構築による事業継続 |
中 |
大 |
(注)1.発生が見込まれる時期が5年以内を「短」、5~10年を「中」、10年~30年を「長」と定義。
2.利益への影響額が1億円以下を「小」、1~2億円を「中」、2億円以上を「大」と定義。
ロ.取組み
当社グループは、世界において異常気象による自然災害が多発するなか、温室効果ガス排出の削減を重要な課題と捉え、事業活動における環境負荷の低減に取組んでいます。具体的には、当社単体においてLED照明の導入や高効率の空調設備(GHP・EHP)への更新を実施するとともに、一部事業所において再生可能エネルギーを導入し、使用電力の脱炭素化を進めています。また、中国やベトナム、マレーシア所在の海外グループ会社においては太陽光パネルを設置し、再生可能エネルギーの活用による温室効果ガスの排出抑制に努めています。今後も継続的に省エネルギー対策及び再生可能エネルギーの導入を推進してまいります。
ハ.指標及び目標
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GHG排出量 |
2018年実績 (基準年) |
2023年実績 |
2024年実績 |
2030年目標 |
2050年目標 |
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当社 Scope1・2 |
7,871tCO2e |
6,329tCO2e 2018年比19.59%削減 |
5,785tCO2e 2018年比26.50%削減 |
2018年比 30.0%削減 |
グループ全体でカーボンニュートラル |
|
グループ Scope1・2 |
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2018年比6.00%削減 |
2018年比6.27%削減 |
- |
|
|
当社 Scope3 |
- |
37,844tCO2e |
36,332tCO2e |
- |
- |
(注)1.Scope1・2は、各エネルギー源の排出係数、原単位の見直しにより、2023年実績を前回報告から修正しました。
2.Scope3は、当社(パンチ工業株式会社)単体のCategory1~7を算定しております。Category8・11・13・14・15については、当社の事業活動に該当する排出が存在しないため、対象外としております。また、Category9・10・12については、算定に必要なデータの収集が困難であることから算定しておりません。
3.GHG排出量算定について
①準拠ガイドライン
・「GHGプロトコル」及び環境省・経産省発行「サプライチェーンを通じた温室効果ガス算定に関するガイドライン(Ver.2.7)」に基づき算定しております。
②排出原単位
・「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.5)」を使用しております。
②人的資本への取組み
イ.方針及び具体的な取組み
当社グループでは、人的資本に関する方針に基づき、「人財育成方針」「社内環境整備方針」「健康経営基本方針」を策定し、これらをもとに、多様な人財の活躍、エンゲージメント向上、生産性の向上を目指して、さまざまな施策に取組んでいます。
具体的な取組みとしましては、人財の育成においては、社内研修機関であるパンチアカデミーを中心として、職位に沿った階層別研修や女性活躍セミナー等の各種研修を実施するほか、特定の技術や語学の習得に対する支援制度の拡充なども図っております。社内環境整備につきましては、創業50周年を機に、経営と社員が心を合わせて将来に向かうものとして、パーパスを策定、また、”Well-Being”な職場環境を目指した種々の取組みに対しては、厚生労働省の「えるぼし」や「くるみん」などの認定を頂いております。健康経営では、“生活習慣病の予防”“メンタルヘルスの推進”“女性の健康づくり”を3つの柱に据えて社員の健康増進に努めており、グループ統一禁煙デーや、国際女性デーへの賛同を含めた取組みに、経済産業省及び日本健康会議が共同で認定を行う「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を頂いております。
ロ.指標及び目標
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指標 |
目標 |
実績 |
||
|
前事業年度 (2024年3月期) |
当事業年度 (2025年3月期) |
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5.1% |
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|
|
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|
15.0% |
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|
|
|
|
100% |
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|
|
73.8% |
|
|
|
|
|
77.1% |
|
|
|
|
うち正規雇用労働者(注)4 |
- |
77.1% |
77.5% |
|
|
うちパート・有期労働者(注)5 |
- |
54.9% |
49.0% |
(注)1.上記指標及び目標は、提出会社の状況であります。連結ベースでの目標及び指標は定めておりません。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しております。
4.正規雇用労働者の男女の賃金差異の要因として、女性の管理職比率が小さい(全管理職中女性5.1%)、単身赴任者(単身手当付与)に男性が多い(全単身赴任者中、女性8%)、夜勤労働者(深夜残業手当付与)に男性が多い、などが影響しております。
5.パート・有期雇用労働者については、パートタイマーは女性が多く、労働時間も短く、賃金もフルタイムよりも少ない一方で、有期雇用労働者の多くを占める嘱託社員(定年後の再雇用社員)が男性のみのため、男性の賃金の方が女性よりも高い傾向にあります。
③人権の尊重
イ.方針
当社グループでは、「
そこでは、すべての人々の人権を尊重する経営を行うことを企業の果たすべき責任と認識するとともに、事業活動全般において人権尊重に向けた取組みを推進し、人権を巡るあらゆる課題の解決を通じて、誰ひとり取り残さない世界の実現へ向けて尽力することを約束しています。
ロ.取組み、目標
その実現のために、当社グループやサプライチェーンに対して、定期的な「人権デューディリジェンス」の実施に着手いたしました。また、社員の人権意識を高めることを目的として、全社員を対象とした「人権基礎研修」のほか、専門の弁護士を招き、管理職向けに「ビジネスと人権研修」を実施いたしました。
今後は、当社研修で使用した資料をサプライヤーにも展開し、サプライチェーン全体の人権意識向上にも取組むほか、予防・是正措置や救済措置についても検討していく予定です。これらの活動状況については、随時公表してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)リスクマネジメント体制
当社グループは、全執行役員等で構成されるリスクマネジメント委員会を定期的に開催し、グループのリスクについて慎重かつ適正に審議を行っております。当委員会では、組織に関係する様々なリスクを一元的に洗い出し、その中でも当社グループとして事業に与える影響が大きなリスクを特定し対応策を講じるとともに、そのリスクの継続的なモニタリングを実施しております。また、リスクの発生可能性と影響度合いは、様々な社会環境の変化に応じて常に変動しているため、グループとして認識するリスクは定期的かつ必要に応じ随時見直しを行っております。
(2)経営環境関連リスク
① 中国におけるカントリーリスクについて
当社グループは1990年より中国事業を行っており、商慣習や雇用面で日本と異なる環境の中にあって、これまで事業の撤退や大規模な雇用調整もなく現在に至っており、連結営業利益の重要な基盤となっております。今後とも、新たな加工技術の開発や成長が期待できる分野への販売強化により、事業の拡大を見込んでおりますが、政情不安、通商上の摩擦、反日感情の高まり、都市開発政策による立退き命令、人件費の高騰等、事業環境に大きな変化があった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対し、政治・経済情勢、事業活動を規制する法律や政策、都市開発政策等について注視する一方で、何らかの変化・変更があった場合には迅速に対応する体制としております。現状の中国情勢を勘案するとこれらリスクの発生可能性はあるものの、影響の程度については、限定的と認識しております。
② 東南アジア及びその他の地域におけるカントリーリスクについて
当社グループは、2013年のマレーシアパンチ完全子会社化を契機に、その後ベトナムに工場を設置するなど東南アジアでの事業を拡大しているほか、インドや欧米での事業展開にも取組んでおりますが、現地の政情不安、規制強化、経済状況の変化、通貨不安等により事業環境に大きな変化があった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対し政治・経済情勢、事業活動を規制する法律や政策等について注視し、何らかの変化・変更があった場合には迅速に対応する体制としておりますが、顕在化するリスクやその影響は様々であると認識しており、海外グループ会社の所在国の現状を考慮すると、いずれのリスクも顕在化する可能性は低いと考えております。
③ 為替相場の変動について
連結決算においては、海外グループ会社決算を現地通貨から邦貨換算いたしますので、制度的に人民元、米ドル、インド・ルピー、マレーシアリンギット等による為替変動リスクがあります。
また、グローバル展開にともない、外貨建取引が増加し、また当社においては借入金等の外貨建債権債務を有しており、為替が大きく変動した場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対しては取引通貨毎の債権債務のマリーや、先物為替予約等によるリスクヘッジ策を講ずるとともに、為替変動に左右されにくい体質づくりに取組んでおります。為替変動による影響額の予測は困難でありますが、連結決算における人民元の変動による換算額への影響額は、当連結会計年度において為替レートが1人民元あたり1円変動した場合、売上については約13億円、営業利益については約7千万円程度となります。
④ 有利子負債について
当社グループでは、事業拡大にともなう生産設備等への投資の実施により、相応の有利子負債残高を有しており、金融情勢や金融機関等の融資姿勢の変化により資金調達が困難となる場合や、市場金利の上昇等により資金調達コストが増大した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、主要取引金融機関とのコミットメントライン契約に「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載のとおりの財務制限条項が付されております。これに抵触した場合には最大で24億円の借入金について期限の利益を喪失することとなり、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対し当社グループでは、利益の確保や運転資金の圧縮による自己資金の創出により有利子負債依存度の軽減を図るほか、金融政策動向のモニタリングの実施や資金調達先の多様化の推進、取引金融機関との良好な関係を維持することで、資金調達リスクの低減を図っております。これらの影響については、顕在化するリスクの内容により、その影響額は様々であると認識しておりますが、昨今の金融情勢や金融機関等の融資姿勢を考慮すると、いずれのリスクも顕在化する可能性は低いと考えております。また、財務制限条項については、その遵守条件を充足するよう適切な事業運営を行っており、抵触する可能性は低いものと考えております。
(3)業界及び事業関連リスク
① 顧客の属する業界の動向について
当社グループは、国内外で1万社を超える顧客と取引をしており、特定の顧客グループへ依存することのない、バランスのとれた顧客構造であると考えております。一方、これらの顧客の属する業界は、自動車関連、電子部品・半導体関連、家電・精密機器関連が多く、従って、これらの業界の市況や価格動向、競争激化等が、生産動向や設備投資動向を左右し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、顧客及び顧客の属する業界の動向については、日常の営業活動による情報収集を基に分析等を行い、大きな変動が予見される場合は、営業政策や生産体制の変更を含む適切な対応策を講じております。なお、リスクの具現化の内容や規模により影響額は様々であり、また、経済情勢や顧客の属する業界の状況により発生可能性も異なるため、リスクの程度を予測することは困難であると考えております。
② 競合について
当社グループの事業である金型部品事業につきましては、技術面、価格面、納期面等において同業他社との競合がありますが、策定した事業戦略が計画通り進捗しない場合や、想定を超えた同業他社の動き等があった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。競合リスクについては日常的に顕在化する可能性があり、その影響については顕在化する内容により変動するため合理的に見積ることは困難であると考えております。現状の対応として、標準製品については、顧客ニーズに応じた製品開発やWeb受注などの顧客利便性の向上を図るほか、製造原価低減に積極的に取組み競争力の強化に努める一方、特注品については、高い技術力に裏打ちされた一気通貫の生産体制と顧客密着型の営業体制をより強化することで差別化を図っております。また、同業他社の1社と資本業務提携契約を締結し、両社の成長発展と社会貢献を企図し、新たな取組みをスタートさせております。従って、資本業務提携が計画通り進捗しない場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 主要原材料の仕入れについて
当社グループは、主要原材料である鋼や超硬材等の仕入れの多くを特定の専門商社やメーカーに依存しております。当社グループは、これらの仕入先から、安定的に供給を受ける体制を構築しておりますが、仕入先の経営戦略の変更や取引条件の大幅な変更、業績変動などが、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これら仕入リスクについては主要仕入先との関係の維持・強化を図っており、現状、仕入先との友好的な取引関係に変化はなく安定的な原材料供給体制を維持・継続しております。従いまして当該リスクの顕在化の可能性は低いと考えております。
④ 製品の品質について
当社グループは、国際的な品質管理基準に基づき、製品の品質確保に万全を期しておりますが、製品の不具合による重大な事故、クレーム等の発生により損害賠償請求訴訟等が生じた場合、多額の補償費用等が発生する可能性があります。また、当該問題により、対象製品のみならず、当社グループの製品全体の評価にも重大な影響を与え、ブランドイメージの低下、顧客の流出などを招き、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状においては、当社グループは品質管理基準の適切な運用を実施しており、品質に関するリスクの顕在化の可能性は低いと考えております。
⑤ 未開拓・新分野事業について
当社グループは、既存のプラスチック金型部品やプレス金型部品に加え、今後の成長戦略として未開拓事業や新分野への事業参入を計画する場合がありますが、経済状況の変化、関連する技術革新の動向、競合他社等の動きによって計画が想定通り進捗しない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。未開拓や新分野事業に進出する場合は、ある程度リスクを受容することも必要と認識しておりますが、進出の際には当社の強みを活かせる分野に的を絞るほか、市場規模の算定や戦略体系の構築、競合先の状況把握等、事業シミュレーションを十分に行いリスクに備えております。これらのリスクが具現化した場合、その影響額は新規事業の規模や投資額等により異なるため予測は困難であると認識しております。
⑥ 債権回収について
当社グループは、国内外で1万社を超える顧客と取引をしており、それぞれの顧客に対して与信管理を徹底しておりますが、顧客の経営状態の悪化などにより債権回収が困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。債権回収リスクに関しては、顧客の経営状態の把握や、売掛金年齢管理による回収促進の徹底、取引信用保険等の債権保全策の導入など対策を講じておりますが、そのリスクを完全に回避できるものではなく、経済情勢等によっても変化するものと認識しております。しかしながら当社グループの取引先は数も多く分散していることから、リスクが顕在化した場合、その影響額は限定的であると認識しております。
⑦ 国内物流体制について
当社グループは、国内物流について、外部物流会社への業務委託により東京ロジスティクスセンター(以下、TLC)にて一括集中管理体制で運営することを基本とし、一部地域を除き翌日配送体制となっております。しかしながら、TLCでの何等かのトラブルや自然災害等による物流業務上での支障が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、TLCにおける物流業務については、当社社員が常駐し委託先である外部物流会社と定期的な打合せを実施する一方で、トラブル発生時や自然災害発生時の物流対応についてルールを策定するなど業務上のリスク回避に向けた取組みを行っており、当該リスクの発生の可能性は低いと考えております。
⑧ 情報システムについて
当社グループの事業は、販売管理システム及び生産管理システムをベースにオペレーションが行われているほか、様々な業務管理システムとコミュニケーションツール等を利用して日常業務が行われており、これらのシステムの運用上の安全性は十分に確保されていると考えております。しかしながら、自然災害、ハードウエア・ソフトウエアの不具合等を原因とするシステム障害や、ネットワークへの不正アクセス、コンピューターウイルスの感染等による情報漏洩など、予測不可能な事象が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、当社グループでは、各管理システムの安定稼働を維持するためデータセンターの活用を進めるとともに、情報システムの安全性や情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、グループが保有する情報を適切に管理しております。また、昨今、在宅勤務等の拡大もあり、通信ネットワークの監視を通じた外部からの攻撃への対応等を強化するとともに、従業員の情報セキュリティ意識の向上を図るため教育・訓練を実施し、リスクの低減を図っております。これらの対応策により当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。
⑨ 固定資産について
当社グループは、顧客の幅広いニーズに対応すべく多くの生産設備等の固定資産を保有しております。これらについては「固定資産の減損に係る会計基準」を適用し、現時点で必要な減損処理は実施しておりますが、今後当社事業所及びグループ会社における損益やキャッシュ・フローの状況等によっては、さらに減損処理が必要となり当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、現時点で当該リスクの顕在化による当社グループへの影響は限定的であると認識しておりますが、今後、経営環境の変化を注視しながら、さらなる受注獲得やコスト低減に取組んでまいります。
(4)その他のリスク
① 人材について
当社グループは、優秀な人材の確保と育成を重要課題としております。グループの人事制度に基づいた人事諸施策を実施し、必要に応じ社外からの有能な人材を確保するとともに、グループにおいて定めた人材育成方針に基づき、多様な施策や取組みから人材の育成を行っております。しかしながら、これらの諸施策が有効に機能しなかった場合や、人材市場の状況により必要人材のタイムリーな確保ができない場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状においては、社員の働き方を改革し、ワークライフバランスの最適化やダイバーシティ経営の実現に向けた取組み等を推進しております。また採用計画に基づく適切な採用活動を通じて安定した人材確保に努めており、これらのリスクが顕在化する可能性は低いと考えております。
② 重要な訴訟等について
当社グループが、国内外で事業を行っていくうえで、各国の法制度の違いなどにより、知的財産権に関する訴訟の当事者となる可能性があります。このほか、事業を行っていくうえで重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいては、保有する知的財産権の維持・保護には最善の努力を尽くしており、また事業に係る法律関連事項については専門家と十分協議して推進しており、現状、第三者との間で訴訟に発展するような案件が発生する可能性は低いと考えております。
③ 税制度について
当社グループは、各国の税法を遵守し事業活動を行っておりますが、事業のグローバル化の進展にともない、特に海外において、税制の改正や税務行政の変更、また、税務申告や移転価格税制における各国の税務当局との見解の相違等により、予期せぬ税負担が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらの対策として、各国の税制の理解や新たな税制改正の内容を正確に把握するなどグループ内の情報共有を緊密に行い、また、移転価格税制については、適宜専門家とも協議しながら移転価格ポリシーの整備等を進めており、これらのリスクが顕在化する可能性は低いと考えております。
④ 環境対策について
当社グループは、企業の社会的責任として、環境問題への取組みを非常に重要な課題と位置付けておりますが、予期せぬ環境問題が発生した場合や、関連法規などの改正等により、生産設備の変更や廃棄物処理方法の変更が必要となった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現状、当社グループにおいては、「環境理念」や「環境行動指針」を定めるなど、環境問題に積極的に取組んでおり、当該リスクの顕在化の可能性は低いと考えております。
⑤ 災害・感染症等について
当社グループは、日本国内の他、中国・東南アジア・インド・米国に製造・販売拠点等をもって事業を運営しておりますが、これらの事業拠点において、地震、台風等の自然災害や火災等の事故災害が発生した場合、あるいはそれらの災害により電力供給や通信インフラ等に深刻な支障が生じた場合、また、戦争・テロ等の勃発や感染症が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらの災害等のリスクに対しては、被害の最小化と早期復旧を目的に、災害対応規程やBCP対応ガイドラインを定め、危機管理の徹底と速やかな対応体制の整備を図っております。また、感染症が発生した場合の対応策として、従業員の健康維持と感染拡大の防止を目的に、在宅勤務やWeb会議等の積極的な活用や従業員の体調管理の徹底を行うこととしております。これら災害や感染症等のリスクについては全てを回避することはできず、また、リスクの影響額を予測することは極めて困難であると考えております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の状況)
原材料・資源価格の高騰や部品不足等、協力工場からの仕入品の更なる価格上昇やエネルギーコストの高止まり等が継続し、日本においては前期を下回る実績となった一方、中国においては自動車関連の不振や景況悪化等による低迷からの回復の兆しがみられたほか、東南アジア地域、欧米他地域では積極的な展示会出展や代理店との関係強化により、前期実績を上回りました。なお、当社及びアスク、ピンテック、インドパンチを除くグループ各社の決算期は12月となっており、2024年1月から12月の業績が当連結会計年度の業績となります。また、ピンテックにつきましては、2024年11月に清算を結了しております。
この結果、国内売上高は11,613百万円(前期比6.6%減)、中国売上高は23,383百万円(前期比14.4%増)、東南アジア地域の売上高は1,951百万円(前期比2.6%増)、欧米他地域の売上高は3,873百万円(前期比8.8%増)となり、連結売上高は40,822百万円(前期比6.5%増)となりました。
また、業種別では、自動車関連は17,194百万円(前期比4.0%増)、電子部品・半導体関連は6,990百万円(前期比0.9%増)、家電・精密機器関連は3,836百万円(前期比5.2%増)、その他は12,800百万円(前期比14.0%増)となりました。
利益面につきましては、中国での売上増加や2023年9月に実施した経営合理化による効果等により、営業利益は1,685百万円(前期比35.9%増)、経常利益は1,613百万円(前期比13.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は868百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失577百万円)となりました。
なお、資本効率につきましては、投下資本利益率(ROIC)が6.0%(前期4.5%)となり、前期からは改善したものの目標(10%以上)には届きませんでした。
(財政状態の状況)
a. 資産の部
当連結会計年度末における総資産は32,970百万円となり、前連結会計年度末と比較し3,320百万円の増加となりました。これは、主として投資有価証券の増加、売掛金の増加等によるものであります。
b. 負債の部
総負債は10,931百万円となり、前連結会計年度末と比較し32百万円の増加となりました。これは、主として支払手形及び買掛金の増加等によるものであります。
c. 純資産の部
純資産は22,038百万円となり、前連結会計年度末と比較し3,287百万円の増加となりました。これは、主として親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加、新株の発行に伴う資本金及び資本剰余金の増加、為替換算調整勘定の増加等によるものであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ446百万円増加し、6,450百万円となりました。
a. 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは2,271百万円の収入(前期は1,276百万円の収入)となりました。
これは、税金等調整前当期純利益1,491百万円、減損損失107百万円及び減価償却費1,177百万円の非資金項目の他、法人税の支払額509百万円、仕入債務の減少額247百万円によるものであります。
b. 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは2,415百万円の支出(前期は680百万円の支出)となりました。
これは、投資有価証券の取得による支出1,268百万円の他、有形固定資産の取得による支出1,019百万円等によるものであります。
c. 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは181百万円の収入(前期は2百万円の支出)となりました。
これは、新株の発行による収入1,269百万円、短期借入金の純増による増加額900百万円、長期借入金の返済による支出1,355百万円、配当金の支払額470百万円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業ごとに示すと、次のとおりであります。
|
事業の名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
||
|
|
4,407 |
92.1 |
||
|
|
13,992 |
112.8 |
||
|
|
18,399 |
107.1 |
(注)1.当社グループは、金型部品事業の単一セグメントであるため、「第1 企業の概況 3.事業の内容(2)当社グループの事業内容」に記載の国内事業及び海外事業の別に記載しております。
2.金額の表示は製造原価によっており、事業区分間の取引については相殺消去しております。
b. 受注実績
当社では標準製品の場合、受注から製造、出荷までを1日から数日で完了いたします。また、特注品でも、おおむね2週間以内の出荷となっております。したがって、受注残高は軽微であり受注実績の記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業ごとに示すと、次のとおりであります。
|
事業の名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
||
|
|
11,738 |
92.4 |
||
|
|
29,083 |
113.4 |
||
|
|
40,822 |
106.5 |
(注)1.当社グループは、金型部品事業の単一セグメントであるため、「第1 企業の概況 3.事業の内容(2)当社グループの事業内容」に記載の国内事業及び海外事業の別に記載しております。
2.事業区分間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(当社グループの当連結会計年度の経営成績等及び経営成績に重要な影響を与える要因)
当連結会計年度においては、2023年7月から2025年3月を計画期間とする中期経営計画「VC2024 Revival」に取組んでまいりました。「VC2024 Revival」では、付加価値の高い特注品ビジネスにより特化するとともに、FA領域の“特注品”の販売拡大によって、持続的な利益成長を目指すことを方針としています。最重点施策に「国内事業の再整備」並びに「海外事業での成長」を掲げ、国内事業においては2023年9月に希望退職者の募集・連結子会社の解散を含めた経営合理化を行い、事業体制の再整備を行う一方、海外事業においては中国での総合機械部品企業への進化への取組み、インド市場への再注力、販売拠点及び販売代理店の新設検討などの成長戦略に継続して取組んでまいりました。
また、「VC2024 Revival」の方針をより強力に推し進めるべく、2024年10月には、株式会社ミスミグループ本社(以下、ミスミグループ)との資本業務提携契約を締結しました。両社は、当社グループの保有する高度な精密加工技術と顧客ニーズへのきめ細かい対応力、ミスミグループの持つ先進的なデジタル技術とグローバル確実短納期の供給力といった強みを最大限活かすべく、共同で取組みを進めています。この提携を通じて、自動化装置やその周辺部品、金型部品に限らず、標準品から特注品までの幅広い金属加工分野全般において、それぞれの得意分野の商品の相互供給や物流インフラの有効活用等を通じて相互に補完・強化しながら、ともに成長・発展することを目指しています。
「VC2024 Revival」における2025年3月期の経営数値目標としては、売上高38,500百万円、営業利益2,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,200百万円を掲げておりました。
これに対して経営成績は、売上高40,822百万円、営業利益1,685百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は868百万円となり、目標に対して増収減益という結果となりました。
財政状態につきましては、前連結会計年度末に対して、投資有価証券の取得等により総資産が増加した一方で、利益剰余金の増加や新株の発行等により自己資本が増加し、自己資本比率が66.7%(前連結会計年度末は63.1%)まで増加するなど、財務基盤の健全性維持が図られた結果となりました。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループとしましては、事業の収益性評価基準として「売上高営業利益率」を、総合的な経営効率の評価基準として「自己資本利益率(ROE)」及び「投下資本利益率(ROIC)」を重要な経営指標と定め、その向上に努めることを目標としております。
特にROICについては、「ROIC経営」の実践を通じて、稼ぐ力の強化によりROICの向上を図るとともに、「加重平均資本コスト(WACC)」の低減により、両数値の差であるEVAスプレッドを拡大することを目指します。なお、ROICの目標としては、「10%以上」としております。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
当連結会計年度において、通常の設備投資に加え、投資有価証券の取得により、フリー・キャッシュフローは▲143百万円となりました。
(財務政策)
当社グループが事業活動から得た資金については、健全な財務基盤を維持しつつ、成長戦略投資と株主還元に最適なバランスで分配することを方針としております。資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を通じて、中長期的な企業価値向上と持続的な成長を実現するために現状を分析・評価し、改善に向けて取り組んでまいります。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取組み
(財務課題の現状分析)
当社グループの、直近のPBR(株価純資産倍率)は0.6倍前後で推移し、足元では0.5倍以下となっており、1倍割れが続いております。また、ROE(株主資本利益率)は株主資本コストを、ROIC(投下資本利益率)は
WACC(加重平均資本コスト)をともに割り込む数値で推移しております。すなわち、当社グループにおいては、資本収益性と株式市場での評価の両面において改善が必要な状況であると分析出来ます。
これに対しては、営業利益や資産回転率を引き上げてROE・ROICを改善すると同時に、株式市場における当社グループへの成長期待を浸透させることが課題であると考えております。
(課題解決への取組み)
具体的な取組みといたしまして、下図ロジックツリーの通りPBRをROEとPER(株価収益率)に分解したうえで、ROEとPERそれぞれの向上を図ることでPBRを改善いたします。
ROEの向上策としては、これまで取り組んで来た「ROIC経営」を継続し、資本収益性の向上を図ります。
具体的には、原価低減・収益構造改革により稼ぐ力を強化する一方、設備投資等の投資効果のモニタリングを強化するなどの取組みにより、資産効率を高めてまいります。加えて、適正な自己資本比率を確保しつつ、株主還元に積極的に取り組むことで財務レバレッジを適正化してまいります。
PERの向上策としては、株主・投資家の当社グループに対する成長期待を醸成することで市場評価を高めてまいります。具体的には、長期ビジョンや中期経営計画を通じて当社グループの成長ストーリーを積極的にアピールするとともに、M&Aなどのインオーガニック投資等の施策でしっかりと成果を出してまいります。
また、取締役会の実効性向上によるガバナンス強化や、IR活動の強化にも取り組んでまいります。
これらの取組みによりPBR1倍以上を目指し、さらに継続的な企業価値の向上を図ってまいります。
(キャピタルアロケーションの基本方針)
資本コストや資本収益性を意識した経営の実現のためには、「キャピタルアロケーション」の考え方を明確化し、バランスシートやキャッシュ・フロー配分の最適化を図る必要があると考えております。そのため、今般「キャピタルアロケーションの基本方針」として、4項目を定めました。
本方針においては、あくまでも中長期的な企業価値最大化を最終目的としております。その上で、成長投資を最優先に実施すること、株主還元にも積極的に取り組むこと、資金調達は必要に応じて有利子負債等を活用すること、これらの施策の基本として適正な手許流動性を確保し、最適資本構成と財務基盤の健全性を維持する方針です。
(キャピタルアロケーションのイメージ)
成長投資を通じて事業価値を高め、次の投資の原資となる営業キャッシュ・フローを継続的に創出していくことが事業の基本になります。
一方で、M&Aなどのインオーガニックな成長投資には、内部からの営業キャッシュ・フローだけでは不足する場合も想定されますので、積極的に有利子負債の活用も考えてまいります。
さらには、安定的・継続的な配当に加えて、成長投資の残余金については機動的な自己株式取得などを通じて、積極的に株主還元を実施してまいります。その際に、適正な手許流動性、最適資本構成、財務基盤の健全性の維持に常に配慮していくことが重要なポイントであると認識しております。
当社は、2024年10月7日開催の取締役会において、当社及びミスミグループの間での資本業務提携契約(以下、本提携契約)を締結すること並びにミスミグループに対する第三者割当による新株式の発行(以下、本第三者割当)を決議し、本提携契約を締結いたしました。
2024年10月23日にミスミグループからの払込が完了しております。
① 資本提携の内容
当社は、本第三者割当により、ミスミグループに対して、当社普通株式3,000,000株を割り当てました。
② 業務提携の内容
当社とミスミグループは本提携契約を通じて相乗効果を生み、両社の業績向上に寄与するよう、互いに協力してまいります。まずは国内において商品の相互供給等の協業によりシナジーの早期実現を目指します。
また、今後は成長が期待される海外市場において、両社のネットワークを活用し、共同で市場開拓を進めることで、新たなビジネスチャンスを創出してまいります。
当社グループは、品質、納期、コストそれぞれの面でお客様の満足度を高めていくことで企業価値の持続的向上を目指し、グループ横断的な研究開発機能の強化やグローバル市場へ向けた高付加価値製品の開発にも取組んでおります。
主たる内容としては、景気変動を受けにくく、将来の拡大が見込まれる業種、具体的には「食品・飲料関連」及び「医療関連」分野との取引拡大を目指すとともに、金型部品、FA部品・機器の製造で培った技術力を活かし、金属部品加工や金属一体化技術「P-Bas」による新素材開発、また今後さらなる発展が見込まれる航空宇宙産業への取組みを通じて、得られた技術を既存事業や新規事業に活用してまいります。
当連結会計年度における研究開発費は
今後とも当社グループが長年培ってきた「ものづくり」へのこだわりを更にグローバルに発揮するため、新事業領域への積極的参入や成長領域への重点投資を実施し、収益性・効率性の向上を目指してまいります。