第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当第1四半期連結累計期間において、当四半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

 

継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは創薬ベンチャー企業です。

医薬品の研究開発には長期に及ぶ先行投資が必要であり、ベンチャー企業として医薬品の開発に取り組んでいるため、期間損益のマイナスが先行する結果となっております。

当四半期連結累計期間においても営業赤字が継続しているため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況となっておりますが、2013年2月13日の東京証券取引所マザーズ市場への上場に伴う資金調達及び上場以降適時に実施してまいりました資金調達により、研究開発活動を展開するための資金は確保できており、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないと認識しております。

当社は、当該状況を解消すべく、提携済みパイプラインからのマイルストン収入や新たな事業提携による契約一時金収入等の事業収益と、適時適切な財務活動による資金調達を組み合わせて、事業基盤並びに財務基盤の強化を図り、当該状況の解消、改善に努めてまいります。

 

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

本文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

 

当第1四半期連結累計期間において、当社グループでは独自の経皮製剤技術であるILTS®(Ionic Liquid Transdermal System)やNCTS®(Nano-sized Colloid Transdermal System)を中心とした医薬品製剤技術を用いて、低分子から高分子に至る様々な有効成分の経皮吸収性を飛躍的に向上させることにより新しい付加価値を持った医薬品を開発することを事業の中核に据え、製品化に向けた開発を推し進めるとともに提携候補先との契約交渉を行うなど事業の拡大を図ってきました。

開発が最も進んでいる「MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤)、商標名Lydolyte」について、2023年3月に米国規制当局であるアメリカ食品医薬品局 (FDA: Food and Drug Administration) に新薬承認申請書 (NDA: New Drug Application) を提出し、9月にFDAから審査完了報告通知(CRL: Complete Response Letter)を受領しました。CRLにおいて非臨床の一部のデータをFDAの指示に従って再提出するよう求められ、データ再解析を進めて2024年1月にNDAを再提出し、同月に申請受理されました。審査終了目標日は、2024年7月11日に設定されています。承認取得後、2024年内の上市を計画しています。

MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)」「MRX-9FLT:中枢性鎮痛貼付剤(フェンタニルテープ剤)」の2つのパイプラインについて米国での臨床開発を実施中であり、「MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)」についても治験許可申請をFDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ています。また、米国の創薬ベンチャーAlto Neuroscience, Inc.との提携下で開発が進められている「Alto-101:統合失調症治療薬(PDE4阻害貼付剤)」については、臨床第1相試験で好結果が示され、統合失調症患者に対するPOC(Proof of Concept)試験が2024年上半期に開始される予定です。

当社グループではこれらの貼付剤パイプラインとは別に、無痛での自己接種が可能で従来の接種方法と比べて高い免疫応答が期待できる、ワクチン等の投与デバイスであるマイクロニードルの研究開発に取り組んでいます。世界でまだ数ヶ所しかない医療用医薬品/ワクチン用途のマイクロニードル治験薬工場を稼働させており、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。

 

当社グループの主要パイプラインの開発進捗状況は、以下のとおりです。

 


 

<開発コード MRX-4TZT:痙性麻痺治療薬(チザニジンテープ剤)>

ILTS®を用いて中枢性筋弛緩薬であるチザニジンのテープ型貼付剤を製剤開発したものです。米国における筋弛緩薬市場は、2023年において約2,100億円(1,519 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。筋弛緩薬の経皮製剤が存在しない中、チザニジンを経皮製剤化することにより経口剤と比較して、有効血中濃度の持続性、眠気や口渇等の副作用の低減等の利点が期待されます。

2017年4月からインドの製薬会社 Cipla Ltd.(インド マハーラーシュトラ州ムンバイ、以下「Cipla」)の100%子会社であるCipla Technologies, LLC(以下「Cipla Tech」)との間で世界的な開発・販売ライセンス契約(ただし、東アジアを除く)を締結していました。しかし、2020年2月のCiplaの全社戦略変更(中枢神経関連の開発候補品については、資金投入を抑制してアウトライセンスする方針)を受けてCipla Techと協議を続けた結果、1日でも早く開発再開することで本パイプラインの価値向上を図りたい当社グループとして、2023年4月に「ライセンス終了合意契約」を締結し、MRX-4TZTに関する全ての権利が当社に返還されました。

臨床第1相反復PKPharmacokinetics)試験(P1b)が成功裡に完了しており、臨床第2相試験(痙性麻痺患者を対象とした最長4週間の用量増加試験)の準備を進めています。

 

<開発コード MRX-5LBT:帯状疱疹後の神経疼痛治療薬(リドカインテープ剤、商標名Lydolyte)>

ILTS®を用いた新規のリドカインテープ剤であり、帯状疱疹後の神経疼痛を適応症としているリドカインパップ剤Lidoderm®の市場をターゲットとして、第一に米国で開発を進めている製品です。米国におけるリドカイン貼付剤市場は、2023年において約270億円(193 million USドル)と推計されています(出所:IQVIA)。2020年4月に株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所(愛知県名古屋市、D. Western Therapeutics Institute、以下「DWTI」)と米国における共同開発契約を締結して以降、DWTIと共同で開発を進めています。MRX-5LBTは、これまでの臨床試験結果より、先行指標品であるLidoderm®より「皮膚刺激性が少なく」「貼付力に優れ」「運動時においても貼付力を保持できる」より良い製品として市場浸透することが期待されます。

2023年3月に新薬承認申請書(NDA)を提出し、9月にFDAから審査完了報告通知(CRL)を受領しました。CRLにおいて非臨床の一部のデータをFDAの指示に従って再提出するよう求められ、データ再解析を進めて2024年1月にNDAを再提出し、同月に申請受理されました。審査終了目標日は、2024年7月11日に設定されています。承認取得後、2024年内の上市を計画しています。

 

<開発コード MRX-9FLT:中枢性鎮痛薬(フェンタニルテープ剤)>

フェンタニルは、オピオイドの一種で、医療用麻薬に指定されており、米国においては重度の急性疼痛、慢性疼痛及び癌性疼痛に貼付剤としても広く使用されています。フェンタニル貼付剤においては、患者の使用後の貼付剤を幼児・小児が誤って噛んだり貼付したりすることで死亡する誤用事故が報告されており、米国で社会的な問題となっています。

当社グループでは、オピオイド貼付剤における誤用事故の抑制・防止を目的とした独自技術を開発しており、その技術を適用したフェンタニルテープ剤についてFDAと面談会議を実施し、幼児・小児に対する誤用事故防止機能を持った貼付剤は重要で価値のあるゴールであることを確認した上で、本格的な開発に取り掛かりました。2020年3月にFDAに治験許可申請(IND:Investigational New Drug application)を提出し、2020年9月に最初の臨床試験結果を得ました。予備的な臨床薬物動態(pilot PK:Pharmacokinetics)試験により、MRX-9FLTが参照製品と同様の血中濃度推移を示すことが確認できました。また、in vitro(実験室レベル)や動物実験で確認してきた誤用事故防止機能についても、ヒトでの有用性を予備的に確認することができました。2021年7月には、MRX-9FLTが持つ誤用事故防止機能が評価され、FDAからファスト・トラック指定(重篤または生命を脅かす恐れのある疾患やアンメット・メディカルニーズの高い疾患に対して治療効果が期待される新薬を優先的に審査する制度。開発から審査までの迅速化を目的としている。ファスト・トラック指定により、臨床試験に関する相談などFDAと協議する機会がより多く与えられる)を受けています。現在、参照製品との生物学的同等性を示すための検証的な比較臨床試験、及び、誤用事故防止機能を検証するための試験に関して、FDAとも協議しながら開発を進めています。

米国におけるフェンタニル貼付剤市場は、2023年において約250億円(179 million USドル)と推計されており(出所:IQVIA)、誤用事故防止という高付加価値化により、現市場の置き換えと更なる市場拡大を企図しています。

 

<開発コード MRX-7MLL:アルツハイマー治療薬(メマンチン貼付剤)>

当社では、ILTS®とは別に、薬物をナノコロイド化することにより経皮吸収性を飛躍的に向上させる独自の経皮製剤技術NCTS®を用いた経皮吸収型医薬品の研究開発にも取り組んでいます。MRX-7MLLは、NCTS®を用いてアルツハイマー治療薬であるメマンチンを含有した貼付剤を製剤開発したものです。FDAに対して治験前相談(pre IND meeting)を実施し、新薬承認取得に向けて、メマンチン経口剤との生物学的同等性を示すことができればMRX-7MLLの有効性を示す臨床試験(臨床第2相試験、臨床第3相試験)は必要ないことを確認しています。

2021年11月に治験許可申請(IND)をFDAに提出して、臨床試験開始の許可を得ました。一方で、INDの申請過程におけるFDAとのやりとりの中で製剤改良に関する示唆・助言を得たため、FDAからの示唆・助言を反映する形での製剤改良を行ってきました。製剤改良は完了し、一部の非臨床試験を追加実施中です。2024年第3四半期にP1a(臨床第1相単回PK(Pharmacokinetics))試験を開始することを計画しています(当初は2024年第2四半期に開始する計画でしたが、第28回新株予約権による資金調達が当初想定ほどには進んでおらず計画変更しました)。 

2023年において米国アルツハイマー治療薬市場は約365億円(261 million USドル)であり、そのうちメマンチン経口剤が約73億円(52 million USドル)を占めています(出所:IQVIA)。1日1回の経口剤に対して、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者が投薬状況を目視確認できる、3日に1回あるいは1週間に1回の貼付剤という選択肢を提供することにより、アルツハイマー患者さん及びケアに当たるご家族や医療従事者のQOL(quality of life)及びコンプライアンスの向上(飲み忘れ等の防止)に貢献したいと考えています。

 

<開発コード MRX-6LDT:慢性疼痛治療薬(ジクロフェナック・リドカインテープ剤)>

米国における疼痛管理薬市場は2023年において約6,400億円(4,582 million USドル)であり、その50%超をジェネリック医薬品が占めています(出所:IQVIA)。慢性疼痛市場にはジェネリック医薬品を含め多数の薬剤が存在し、新たなブランド薬が確固たる地位を築くことは容易ではありませんが、一方で、米国での慢性疼痛治療の基盤ともいえるオピオイド鎮痛薬の乱用リスクに対して米国社会全体から厳しい視線が集まっており、乱用リスクがなく有効性と安全性・忍容性に優れた慢性疼痛治療薬には大きな事業機会/潜在市場があると考えています。

MRX-6LDTは、当社独自の経皮製剤技術ILTS®を用いて、消炎鎮痛作用を有するジクロフェナックと局所麻酔作用を有するリドカインの両薬物ともに高い経皮浸透を実現させるべく製剤開発したテープ型貼付剤であり、両薬物の相加的或いは相乗的な疼痛治療効果を最大限に発揮させることを企図しています。米国における大きな事業機会/潜在市場に向けて、まずは非臨床試験とそれに続く臨床第1相試験を実施して、MRX-6LDTの高い経皮浸透性及び製品ポテンシャルをヒトでのデータをもって確認することを計画しています。
 

<開発コード Alto-101:統合失調症治療薬(PDE4阻害貼付剤)>

2023年9月に、Alto Neuroscience, Inc.(米国カリフォルニア州ロスアルトス、以下「Alto」)と、当社独自の経皮吸収技術を適用した中枢神経領域の新規医薬品候補(Alto-101, PDE4阻害剤)に関する提携契約を締結しました。Altoは、個別化された高効果の治療選択肢を開発するために神経生物学を活用して精神医学を再定義することをミッションとした、ニューヨーク証券市場に上場している臨床開発ステージの創薬ベンチャーです。AltoのPrecision Psychiatry PlatformTMは、脳波記録、神経認知評価、ウェアラブルデータなどを解析することにより脳のバイオマーカーを計測して、それぞれの患者に合うAltoの薬を提供することを目指しています。

2024年4月に、新規のPDE4阻害剤であるAlto-101に関して、健常人を対象とした臨床第1相試験において、経皮吸収製剤により投薬した際に経口剤と比べて優れた忍容性と改善された薬物動態を示す、という好結果が得られました。この経皮吸収製剤Alto-101は、十分な量の薬物を体内に到達させた上で、PDE4阻害剤を経口投与した際によく見られる副作用を低減させました。今後はAltoが、統合失調症に関連した認識機能障害に対するPOC(Proof of Concept)試験を2024年上半期に開始して2025年下半期に結果速報を得ることを計画しています。

 

<マイクロニードルアレイ>

マイクロニードルアレイ(Micro Needle array、以下「MN」という)とは、生体分解性樹脂等から成る数百μmの微小針の集合体で、当社開発品は生け花に用いる剣山を数百μmレベルに縮小したような形状です。MNは、注射しか投与手段のないワクチンや核酸医薬・タンパク医薬等の無痛経皮自己投与を可能にし、またワクチンや免疫性疾患においては「従来の注射剤と比べて高い免疫効果」が期待される、有望な投与デバイスとして注目されています。当社のMN技術は、鋭い針先と工夫された応力制御機構を持つアプリケータ(挿入器具)による「簡便で確実な投与」を特徴としています。

臨床試験等においてヒトに投与できるGMP(Good Manufacturing Practice)規格品を製造するMN治験薬工場が、ワクチンに用いられる病原性のある細菌やウイルス、遺伝子組み換え生物等の取り扱いを可能にするためのバイオセーフティ対策を整備した上で稼働しています。現在、量産化に向けた技術開発と並行して、国内外の複数の製薬会社・ワクチンベンチャー等とフィージビリティスタディ(実現可能性を検討する研究)を実施しながら、事業提携を模索しています。フィージビリティスタディの一つとして、株式会社ファンペップ(大阪府茨木市)と抗体誘導ペプチドMN製剤についての共同研究を、コロンビア大学(米国ニューヨークシティ)と免疫賦活剤および抗がんペプチドとMNを組み合わせた乳がん治療のための共同研究を実施中です。

当社グループでは、自己投与可能なワクチンMN製剤が、パンデミック発生時の医療体制堅持や医療インフラ未整備地域での公衆衛生向上に貢献できるものと確信しており、実用化に向けた研究開発に取り組んでいます。

 

上述した開発候補品以外にも、製薬会社等と共同で、あるいは当社グループ独自で医薬品等の製剤開発を進めています。

 

れらの結果、当第1四半期連結累計期間の売上高はなく(前年同期は6百万円)、研究開発費用とその他経費を合わせた販売費及び一般管理費は176百万円(前年同期は299百万円)を計上しました。営業損失は176百万円(前年同期は294百万円)、営業外収益として、中小企業庁事業再構築補助金52百万円、為替差益2百万円等を含め55百万円を計上、営業外費用として、主に行使価額修正条項付第28回及び第29回新株予約権の発行に係る営業外支払手数料7百万円等を含め7百万円を計上し、経常損失は127百万円(前年同期は289百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失は128百万円(前年同期は290百万円)となりました。この結果、1株当たり純損失は3円33銭(前年同期は9円61銭)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

(資産)

当第1四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べて130百万円減少し、1,921百万円となりました。これは現金及び預金が97百万円減少したこと、未収入金が28百万円減少したこと等によるものです。

流動資産は1,665百万円となりました。主な内容は、現金及び預金1,623百万円等であります。固定資産は255百万円で、主な内容は建物及び構築物165百万円、長期前払費用45百万円及び差入保証金38百万円等であります。

(負債)

負債は、前連結会計年度末に比べて61百万円減少し、65百万円となりました。これは主に未払金の減少59百万円、未払法人税等の減少4百万円等によるものであります。

流動負債は37百万円となりました。主な内容は未払金31百万円、未払法人税等3百万円等であります。固定負債は27百万円となりました。内容は資産除去債務22百万円、繰延税金負債4百万円であります。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べて68百万円減少し、1,855百万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する四半期純損失128百万円により利益剰余金のマイナスが128百万円拡大したこと、行使価額修正条項付第28回新株予約権の行使に伴い資本金及び資本剰余金がぞれぞれ28百万円増加したこと等によるものであります。以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の90.6%から92.9%となりました。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当第1四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(4) 研究開発活動

当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は121百万円であります。

 

(5) 主要な設備

該当はありません。

 

3 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。