第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

<経営理念>顧客の成功と利益

情報技術を駆使し、高品質かつ柔軟性・拡張性のあるシステム構築を通して、お客様に最適なソリューション   を提供するトータルなシステムインテグレーションサービスを実現します。

<基本方針>

①品質及びサービスの向上

当社は、提供するシステムを安心してご利用いただくため、国際品質保証規格「ISO9001」、情報セキュリティの認証規格「ISO27001」を取得しております。また「プライバシーマーク」を取得し、個人情報保護方針を定め適切かつ的確な個人情報保護の管理を実施し、お客様の信頼にお応えしております。当社はこれからも、より高品質なシステム開発とサービス提供の維持向上に取り組んでまいります。

②お客様と共にさらなる成長

当社は1974年1月の設立以来、「顧客第一主義」をモットーに事業の運営を行ってまいりました。2001年1月に現社名へ商号変更し、2013年3月には東京証券取引所マザーズに上場(2022年4月グロース市場へ移行)いたしました。お客様と共にさらなる成長を続ける為に、お客様のニーズに適応できる体制づくりを推進し、これからも迅速な意思決定・業務執行を図ってまいります。

③社会変化への対応及び貢献

社会は常に変化し、その変化の中でIT技術は極めて重要な役割を担っています。社会に貢献し、企業価値を高め、存在意義のある企業をあるべき姿として捉え、これからも積極的に社会変化に対応した新分野にチャレンジしてまいります。

 

(2) 経営環境

わが国の医療分野のICT化が進展していく中、当社は医療情報システムを事業の柱として、市場の成長をとらえた事業の推進を図ってまいりました。近年、医療機関の経営はより一層の効率化と質の高い医療サービスの提供が求められており、医療情報システムの役割も、単なる診療データの記録という一次的な利用だけでなく、医療従事者の働き方改革による負担軽減、また医療情報の共有化によるデータの統計・分析など、二次利用(データの利活用)へも繋がっております。昨今医療機関では、ICT等を活用したDXの推進が喫緊の課題となっており、当社のWeb型電子カルテをはじめとした医療情報システムは、その根幹となるシステムとして益々重要性が増しております。医療情報の共有化と地域医療連携による質の高い医療の提供を目指す上では、当社のクラウドをベースとしたWeb型システムは、広域ならびにグループにおける医療情報の連携を容易にすることで貢献します。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上の課題

①品質、お客様満足度の向上

当社は長年蓄積されたノウハウを活かし、医療機関のニーズに応え、また国の医療政策に適応すべく、システムの開発、機能強化を進めてまいりました。今後も、顧客ニーズに適合したさらなる品質の向上を図るとともに、生成AI等の新しい技術の研究に取り組み、安全性と信頼性のある製品の提供に努めてまいります。またシステム稼働後の保守サービス体制を強化し、変化する顧客ニーズと医療機関を取り巻く環境に十分応えられる専門性の高いカスタマーサービスを行い、「お客様満足度向上委員会」を中心に全社一丸となってお客様の満足度を高めてまいります。

 

②営業基盤、導入体制の強化

当社は、営業基盤の強化、導入サポート技術部門の強化等、全国の医療機関へサービスを提供できる拠点の整備を行うことで、営業活動及びアフターサービスの充実と、新規顧客獲得における戦略的な営業展開を図ってまいります。また独創性を市場にアピールできるクラウド型システムの提案を積極的に展開し、市場シェアの拡大に取り組みます。導入作業に関しては、作業の標準化・効率化を図るとともに、他社との提携をなお一層推進してまいります。併せて、生産性の向上を図るため、それぞれの課題の共有を円滑に行うことのできる横断的かつ即時性のある組織を目指し、組織の再編を進めてまいります。

 

③医療DX推進における機能強化

「PlusUsシリーズ」において、診療支援機能の強化、診療報酬請求業務の効率化を目指します。

電子カルテシステム

電子カルテシステムを用いた医師の処方指示の際、その処方内容から想定される候補病名を情報として提示する診療支援機能開発を計画しております。これにより、医師の診察時における病名登録の効率化が期待されます。

また生成AIを活用した文書作成支援(診療情報提供書、退院サマリ等)の研究を開始しております。電子カルテに入力された患者の診療録情報を、生成AIの言語処理によるサマリ化等を行うことで、医療文書作成における医療従事者の作業時間短縮を目指してまいります。

 

医事会計システム

電子カルテに記録された診療情報をもとに、医事会計システムで作成するレセプト業務において、レセプトデータ作成にあたり、必要な病名の登録有無を即座にチェックし、その候補病名を情報として提示する診療報酬請求業務支援機能開発を計画しております。これにより医療事務従事者の病名確認作業の時間を軽減し、また医師の病名登録業務の効率化を目指してまいります。

 

④人材の採用、育成

医療情報システムへのニーズの拡大に伴う新規導入案件の増加に対応するには、開発、技術、営業各部門の人材の確保が必要不可欠となります。今後とも、積極的な採用活動による人員の増強を図ってまいります。

また社内においては、労働環境の向上をより一層進めつつ、人材の適正配置による企業基盤の強化に努めるとともに、社員一人一人のやりがいや達成感を重視した教育を実践してまいります。

さらに医療DXに関する理解を深めるための専門の部署を設け、新しい情報を遅滞なく全体で共有、学習するとともに、サービスの多様化やシステムの機能拡張へ対応すべく、社員の知識・スキル向上に必要な環境を整備することで、顧客ニーズに応えられる価値ある人材の育成に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

当社は経営理念である「顧客の成功と利益」のために、医療情報システムの提供を通して、重要な社会インフラである医療の質と安全の確保、また医療DXの推進による医療機関の健全な経営活動に貢献することで、国民医療費の増大といった社会課題の解決に取り組んでまいります。

 

(1) ガバナンス

当社は、全てのステークホルダーの皆様から常に信頼される企業であることを目指すため、継続的なコーポレート・ガバナンスの強化を重要な経営上の課題のひとつとして認識しております。サステナビリティ関連のリスク及び機会を把握し管理するため、サステナビリティに関する考え方や取組については、取締役会及び経営会議等において協議し決定いたします。取締役会は、当社のサステナビリティ課題への対応方針及び実行計画等についての審議・監督を行います。当社のガバナンス体制に関しては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

(2) 戦略

当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

当社は、経営方針、経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するため、人的資本の充実を重要な課題としており、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する取り組みを推進してまいります。

具体的に、人材育成に関しては、研修の実施、資格取得制度など社員の知識・スキル向上の為に必要な教育環境の整備に取り組んでまいります。また社内環境整備に関しては、テレワーク勤務、時短勤務制度などにより柔軟な働き方を可能とするとともに、各種福利厚生制度の拡充など、多様な人材が健康で意欲的に、やりがいをもって働ける環境の整備に取り組んでまいります。

 

(3) リスク管理

取締役会のほか、コンプライアンス委員会などの各種会議体において、具体的な執行内容の決定と進捗管理が行われ、必要に応じてリスク管理体制の見直しを行っております。各部門においては、決定された事項、具体的な施策及び効率的な業務の執行と進捗の報告が行われており、リスクに応じた適切な対応を行っております。

 

(4) 指標及び目標

当社では上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、管理職に占める女性労働者の割合を指標として用いておりますが、現状サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、当該指標に関する目標は定めておりません。当社の事業環境の変化やリスク項目の見直しにおいて必要と認められた場合には、適時に必要な指標及び目標等を定めるものとしております。

なお、女性管理職比率については、第1 企業の概況 5 従業員の状況 (3)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異に記載しております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 医療分野の変化と動向について

当社のシステム事業の対象である医療分野、特に医療機関につきましては、少子高齢化等に起因する社会保障制度の変化、医療制度の改革により経営環境は厳しさを増しております。

医療機関の対策としては、診療業務の効率化により医療の質を高め、患者サービスを向上させることが重要視されております。電子カルテシステムやオーダリングシステムは、医療機関のこのようなニーズに合致したものであり、医療情報システムの市場は今後順調な成長が進むと考えております。しかし、法規制、医療制度改革等の動向によって、市場の成長が進まない場合は、当社の業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクを踏まえ、市場に関する情報収集を行い、市場に即した営業活動を行う等により、医療分野の変化と動向に迅速な対応ができるよう運営しております。

 

(2) 競合状況及び競争政策について

現在、当社が販売する医療情報システムの市場は、大手コンピュータメーカー、医療情報システム会社などがしのぎを削り、厳しい競合状況にあります。病床規模別のセグメントでは、400床以上の病院のみならず399床以下の病院での導入が促進されており、従来の競合状態が変化しつつあります。将来的に、競争環境の変化による製品価格の低下等があった場合は、収益性が低下し、当社の業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社は、長年にわたり蓄積された技術とノウハウ、営業基盤を背景とした顧客満足度向上への取り組み並びに開発から導入サポートまでを自社で一貫してできる強みを生かし、競合他社との差別化を図っております。

 

(3) 診療報酬の改定について

高齢化社会の到来とともに、医療費は増大傾向にあります。このような状況のもと、財源の確保、財政の健全化を踏まえ、厚生労働省は医療制度運営の適正化と医療供給面の取り組みに重点を置いた、医療費適正化の方針を打ち出しております。今後、診療報酬のマイナス改定等が行われた場合、当社の主要顧客である医療機関の経営を圧迫することとなり、医療機関の投資意欲が萎縮するような影響を及ぼす可能性があります。その結果として、当社が提供する医療情報システムの導入を中止、延期する医療機関が発生し、当社の事業活動及び業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクを踏まえ、医療情報システム関連団体や医療機関から情報を収集し、診療報酬改定への迅速な対応を図っております

 

(4) 法的規制について

現時点では、当社の事業を制限する法的規制は存在しないと考えておりますが、当社の総合医療情報システム「PlusUs」は、製品自身の適合性に加え、システムのインフラストラクチャ(ハードウェア、ミドルウェア、データベース)及び関連システム群との連携により、機能面あるいは運用面での性能保証を求められております。今後も様々な仕様・規格の標準化等の法規制が行われる可能性があり、それに伴いシステムの新規開発あるいは改変作業が発生します。法規制の対応に遅れる、或いは適切に対応できなかった場合、当社の業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクを踏まえ、医療情報システム関連団体や医療機関から情報を収集し、法規制への迅速な対応を図ります。

 

 

(5) 知的財産権について

当社は第三者より知的財産権に関する侵害訴訟等を提起されたことはありませんが、ソフトウェアに関する技術革新の顕著な進展により、当社のソフトウェアが第三者の知的財産権に抵触する可能性を的確に想定、判断できない可能性があります。また、当社の業務分野において認識していない特許などが成立している場合、当該第三者より損害賠償及び使用差し止めなどの訴えを起こされる可能性、並びに当該訴えに対する法的手続諸費用が発生する可能性があります。このようなリスクを踏まえ、知的財産に関する社内教育を行うとともに、当社の知的財産権の出願・取得を推進いたします。

 

(6) 人員の確保、育成について

当社では、今後の事業拡大及び技術革新に対応できる優秀な人材を継続的に確保し、育成していくことが重要な課題であると認識しております。様々な市場ニーズへの対応や、付加価値の高い製品・ITサービスを提供していく上で、急速なIT技術の進歩への対応や、高度な開発技術を有する人材の確保が必要となり、これらの新しいIT技術への対応に遅れが生じる場合や、高度技術を有する人材が計画通りに確保できない場合は、当社の業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社では、定期的な新卒採用や積極的な中途採用の受け入れ、必要に応じて専門知識を有する人材の適宜採用に取り組んでおります。また市場に対し、より付加価値の高い製品やITサービスの提供を行っていくことを目的として、新技術取得に向けた技術者教育を行うとともに、新技術・新分野に対する研究開発活動を推進する等、積極的な技術投資を行っております。

 

(7) 情報システムの障害について

電子カルテシステムをはじめとする医療情報システムは、医療機関の業務を支えるインフラとして重要な役割を果たしております。しかしながら、お客様に提供した情報システムに予期し難い欠陥や不具合が発生した場合、当社の社会的信用は低下し、お客様に対する賠償責任が発生する可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社では、情報システム構築にあたっては、品質管理部門を設け、ISO9001に準拠した開発プロセスの運用により、品質向上等に努めております。

 

(8) コンピュータウィルス等について

コンピュータシステムは、常にコンピュータウィルス等の脅威にさらされております。コンピュータウィルス等は、日々、新種が発生しており、その時点で考え得る万全の対策を行っていたとしても、当社が感染源となり、ユーザーが感染する可能性があります。この場合、ユーザーより損害賠償請求を受け、損害賠償金及び訴訟費用を必要とする可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社では、サーバ及び各端末に最新のアンチウィルスソフトウェアを適用させるとともに、外部とのメールのやりとりによる当社への感染防止、また、当社が感染源にならないためのセキュリティシステムを構築するなど、各種対策を講じております。また、昨今医療機関での被害が増加しているランサムウェア等へのセキュリティ対策につきましても、積極的に推進しております。

 

(9) 情報漏洩について

当社の業務遂行上、当社従業員が、個人情報をはじめ顧客医療機関の保有する診療情報や一般企業の保有するさまざまな機密情報を取り扱う機会があり、これらの情報にアクセス可能な環境下にあります。万が一、当社からの情報漏洩が発生した場合には、当社の社会的信用は低下し、お客様に対する賠償責任が発生する可能性があります。このようなリスクを踏まえ、当社では、「プライバシーマーク」の認証および、「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」の認証を取得し、従業員の情報管理教育を強化し、当社内部からの情報漏洩を未然に防ぐ措置を講じております。

 

(10) 自然災害及び感染症蔓延等について

大規模な震災や津波、台風、洪水等の自然災害や感染症が発生した際は、当該事象が発生した地域の医療機関が対策を実施することにより、システムの導入中止や延期が発生することが想定され、また当社の事業所が存在する場合、閉鎖等事業活動が制限されることにより、当社の業績に影響を与える可能性があります。このようなリスクを踏まえ、お客様医療機関からの情報の収集体制及び防災に対する適切な管理体制の構築を行うとともに、リスク発生時には対策本部を設置し、迅速な対応ができる体制を整備しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要等により、緩やかな回復基調となりました。一方で、ウクライナ情勢の長期化や中東地域をめぐる国際情勢不安に起因し、エネルギー資源や原材料の高騰による物価高および円安などの課題に直面しており、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。
当社が事業展開している医療機関におきましても、高齢化の進展による医療需要の拡大は見込まれるものの、より質の高い医療の提供、医療従事者の人材確保、医師の働き方改革など、重要な課題に直面しており、経営環境においては様々な判断が求められる不安定な状況です。
このような環境下において、喫緊の課題として医療サービスの質の向上と効率的な医療提供体制の構築が挙げられ、いわゆる「骨太方針2024」におきましても政府を挙げて医療DXを推し進める方針が改めて示されております。現在は「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化」、「診療報酬改定DX」など様々な取り組みが進行中で、その中核を担う電子カルテシステム等の医療情報システムの重要度は増し、普及拡大の進む中での需要は引き続き強く、当社が事業を展開するにあたって、大きな追い風となっております。
当社が長年培ってきたクラウド技術は自然災害による患者情報の消失リスクの回避や、昨今多発しているサイバー攻撃に対する有効な防御策としてより一層重要性が増しております。また、研究を進めている生成AIなどの最新テクノロジーは、医師や看護師などの医療従事者にとって働き方改革を進める医療現場の業務効率アップに貢献することが期待されています。
このような状況の下、当社は主力製品であるWEB型電子カルテシステムを新規顧客へデータセンターを利用したパブリッククラウドおよびグループ病院へのプライベートクラウド(※)の提供により競争の厳しさを増す市場において独自性を示し、更に既存顧客のリプレイス需要の取り込みに注力しております。それに加え医療DX関連のシステムの開発、販売、導入及び保守を継続してまいりました。受注高はクラウド化の進展もあって好調に推移いたしました。また、開発・技術部門におきましては、顧客のニーズに沿ったシステム機能の充実と信頼性の向上という方針を継続し、システムの機能強化とバージョンアップを促進するとともに、他社との連携を充実することで先進的なテクノロジーを使った医療プロジェクトを強化し、顧客満足度の向上に努めてまいりました。

 
(※)パブリッククラウド:外部のデータセンターを利用して電子カルテ等を使用すること

プライベートクラウド:グループ病院内の病院や診療所等のワンサーバーでのクラウド環境で電子カルテ等を使用すること

その結果、新規導入案件や既存顧客のリプレイス需要は顕著に増し、当事業年度の業績は売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも上場以来過去最高となりました。

当事業年度の業績は、売上高5,428,986千円(前期比3.2%増)、営業利益662,531千円(前期比14.0%増)、経常利益700,949千円(前期比11.9%増)、当期純利益480,154千円(前期比6.0%増)の増収増益となり、いずれも上場以来過去最高となりました。また、受注高は過去最高の5,320,454千円(前期比28.0%増)となり、引き続き堅調に推移しました。

 

なお、財政状態につきましては、後記の「第2  事業の状況  4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容  a.財政状態の分析」をご参照ください。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末より470,992千円増加し、2,346,044千円となりました。

なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動により得られた資金は、663,976千円(前事業年度は232,544千円の収入)となりました。主な要因は、棚卸資産の増加625,066千円などの資金減少があったものの、税引前当期純利益の計上700,949千円、売上債権の減少468,919千円、仕入債務の増加405,428千円などの資金増加によるものであります。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動により使用した資金は、92,760千円(前事業年度は11,606千円の支出)となりました。主な要因は、投資不動産の賃貸による収入57,593千円などの資金増加があったものの、投資有価証券の取得による支出47,986千円、有形固定資産の取得による支出38,135千円などの資金減少によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動により使用した資金は、100,223千円(前事業年度は200,041千円の支出)となりました。主な要因は、短期借入金の100,000千円などの資金増加があったものの、長期借入金の返済による支出17,520千円、配当金の支払179,786千円などの資金減少によるものであります。

 

 ③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当事業年度の生産実績を示すと、次のとおりであります。

事業部門

当事業年度

(自  2024年 1月 1日

至  2024年12月31日)

システム事業

生産高 (千円)

前年同期比 (%)

4,378,419

122.0

 

(注) 金額は当期総製造費用によっております。

 

b.受注実績

当事業年度の受注実績を種類別に示すと、次のとおりであります。

種類別

当事業年度

(自  2024年 1月 1日

至  2024年12月31日)

受注高
(千円)

前年同期比
(%)

受注残高
(千円)

前年同期比
(%)

ソフトウェア

3,712,893

137.3

2,533,982

195.7

ハードウェア

1,607,560

110.5

920,465

143.1

合計

5,320,454

128.0

3,454,448

178.3

 

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績を種類別に示すと、次のとおりであります。

種類別

当事業年度

(自  2024年 1月 1日

至  2024年12月31日)

販売高 (千円)

前年同期比 (%)

ソフトウェア

2,473,415

99.8

ハードウェア

1,330,436

103.3

保守サービス等

1,625,134

108.7

合計

5,428,986

103.2

 

(注) 当事業年度の保守サービス等には、損益計算書上の売上高区分の「商品売上高」46,527千円が含まれております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、本文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

(資産)

 当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ、流動資産が761,511千円、固定資産が55,376千円増加した結果、816,887千円増加し、7,535,616千円となりました。流動資産の増加は、主に売掛金が468,781千円減少したものの、現金及び預金が531,010千円、仕掛品が625,216千円それぞれ増加したことによるものです。一方、固定資産の増加は、無形固定資産が9,792千円減少したものの、投資その他の資産が44,161千円増加したことによるものです。

(負債)

 当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ、流動負債が528,532千円増加、固定負債が9,690千円減少した結果、518,841千円増加し、4,017,898千円となりました。流動負債の増加は、主に買掛金が95,934千円、未払消費税等が47,631千円それぞれ減少したものの、支払手形が501,363千円、短期借入金が100,000千円それぞれ増加したことによるものです。また、固定負債の減少は、主に退職給付引当金が11,494千円増加したものの、長期借入金が17,520千円減少したことによるものです。

(純資産)

 当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ、298,045千円増加し3,517,717千円となりました。その主な要因は、当期純利益の計上480,154千円、配当による利益剰余金の減少179,970千円によるものです。なお、自己資本比率は46.7%となりました。

 

b. 経営成績の分析

(売上高)

売上高は、医療DX関連のシステム需要の高まりや大型案件の受注売上に加え、導入件数の増加に伴う保守を含めた売上の伸長の結果、前事業年度に比べ168,255千円増加し5,428,986千円(前期比3.2%増)となりました。種類別の内訳では、ソフトウェアが0.2%減少の2,473,415千円となったものの、ハードウェアが3.3%増加の1,330,436千円、保守サービス等が8.7%増加の1,625,134千円となりました。

(売上総利益)

売上総利益は、売上高の増加168,255千円から売上原価の増加61,948千円を差し引き、前事業年度に比べ106,307千円増加し1,672,060千円(前期比6.8%増)となりました。システム売上原価の内訳では、当期製造費用において労務費及び経費の構成比が低下したものの、売上高の増加に連動し、材料費及び外注費の構成比が上昇しました。

(営業利益、経常利益)

営業利益は、販売費及び一般管理費が25,020千円増加したものの、売上総利益が106,307千円増加したことにより、前事業年度に比べ81,286千円増加し662,531千円(前期比14.0%増)となりました。さらに営業外損益の38,418千円(益)が加わり、経常利益は、前期比11.9%増加の700,949千円となりました。

 

(当期純利益)

税引前当期純利益は、経常利益の増加により、前事業年度に比べ74,631千円増加し700,949千円(前期比11.9%増)となりました。当期純利益は、法人税、住民税及び事業税が24,948千円、法人税等調整額が22,302千円増加したものの、6.0%増加の480,154千円となりました。

 

c. 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社は、事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる事項及び投資家の投資判断、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、リスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

なお、詳細につきましては、本書「第2  事業の状況  3  事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

d. 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について

当社は、経営資源を総合医療情報システムの開発、販売、導入指導に集中させ、その基幹システムであるWeb型電子カルテシステムの市場拡大に取り組んでまいりました。近年、医療機関をとりまく環境は大きく変わろうとしており、より質の高い医療サービス、システムが求められております。中でも、医療分野のICT化は国の掲げる政策であり、ICTの普及による医療の効率化、医療費の削減が喫緊の課題となっております。このような環境下、当社では、ICT化の代表的な指標である医療機関における電子カルテシステムの稼働施設数のアップを推進してまいります。このような導入推進とともに、システムの機能強化、次世代システムの開発に取り組むことが、当社の更なる成長の基盤となる見通しです。

なお、詳細につきましては、本書「第2  事業の状況  1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の当事業年度のキャッシュ・フローの状況は、本書「第2  事業の状況  4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。

当社の資金需要は、主に運転資金、設備資金需要ですが、今後の事業展開を考慮しますと、研究開発資金需要が増えることが想定されます。運転資金、設備資金については、自己資金で賄うことを原則としておりますが、場合により銀行借入による資金調達も選択肢の一つとしております。また研究開発資金については、有価証券発行による資金調達も視野に入れ、総合的にその調達先を判断する方針であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たっては、会計方針の選択・適用、資産・負債、収益・費用の金額など開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社は、医療現場における診療業務の効率化と患者サービスの向上を実現するために、電子カルテシステムをはじめとした総合医療情報システムの商品価値、機能向上に向けた最新技術の導入に関する研究開発に取り組んでおります。

当社の研究開発体制は、システム開発部署が担当し、研究内容に応じ社内横断的なプロジェクトチームを編成しております。

当事業年度の主な研究開発活動は、電子カルテシステム等の機能強化に係る開発であり、研究開発費として29,504千円計上しております。