文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当第3四半期累計期間(2018年7月1日から2019年3月31日)において、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPS(Peptide Discovery Platform System)を活用した3つの事業戦略:①創薬共同研究開発契約、②PDPSの技術ライセンス、③戦略的提携による自社パイプラインの拡充を進めてまいりました。
当社では、2019年3月31日現在、98のプログラムが進行しております(2018年12月末比4プログラム増加)。下表は、各研究開発ステージにおけるプログラム数を2018年12月末時点のものと比較したものです。
【プログラム数の推移】
1つ目の事業戦略であるPDPSを活用した国内外の製薬企業との創薬共同研究開発契約については、2019年1月23日に、当社は塩野義製薬株式会社(以下 塩野義製薬)との間で、ペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate、以下 PDC)の共同研究に関する契約締結を発表いたしました。本契約は、脳移行性に関わることが知られている複数の標的分子に対し、当社がPDPSを用いて、医薬品及び医薬品候補化合物の脳移行性を向上させるカーゴペプチドを見出し、塩野義製薬が選定した医薬品または医薬品候補化合物に当該カーゴペプチドを付加することでPDC医薬品を創製することを目的としています。本契約の締結に伴い、当社は塩野義製薬から第3四半期に契約一時金を受領いたしました(金額は非公開)。今後、共同研究費や非臨床及び臨床試験の進捗状況に合わせて目標達成報奨金(マイルストーンフィー)、製品化後は売上金額に応じたロイヤルティーが当社に支払われます。なお、本契約とは別に2016年2月から両社で取り組みを進めている創薬共同研究開発契約も引き続き継続されます。
また、第3四半期においても創薬共同研究開発契約企業から複数のプログラムに対し研究開発支援金を受領いたしました。当社は、現在進行しているプログラムにおいて、さらなるマイルストーンが達成され、パートナー企業の許諾を得た上で、新たな進捗の報告をできるものと考えております。加えて、当社は創薬共同研究開発に関心のある複数の企業と新たな契約締結に向けた交渉を進めております。
2つ目の事業戦略であるPDPSの技術ライセンスについては、2019年3月31日現在、7社;米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(2013年)、スイス・ノバルティス社(2015年)、米国リリー社(2016年)、米国ジェネンテック社(2016年)、塩野義製薬(2017年)、米国メルク社(2018年)、ミラバイオロジクス(2018年)と非独占的なライセンス許諾契約を締結しております。同事業については、技術移管先企業がマイルストーンを達成するまでは、どのような発見が行われ、開発が進んでいるかについて当社は知らされませんが、これらライセンス先企業から技術ライセンス料とともに開発プログラムの進捗ごとのマイルストーンフィーが当社に支払われます。また、当社はPDPSの非独占的ライセンス許諾に関心をもつ複数の企業との交渉を継続的に進めております。
3つ目の事業戦略は、世界中の特別な技術を有する創薬企業・バイオベンチャー企業及びアカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)の拡充を図ることです。この事業は当社の将来の業績をけん引するものと予想しております。当社は新しい本社・研究所が神奈川県川崎市に完成し、2017年8月に移転したことで、必要とされていた研究スペースや新たな設備に関するボトルネックが解消し、当社の同事業のプログラム数は大きく拡大いたしました。同事業の目標は、当社の強力な製薬企業とのネットワークを活用して、これらのプログラムを少なくとも第Ⅰ相に入る段階もしくは、第Ⅰ相に入った後、可能であれば第Ⅱ相に入った後まで開発することにより、通常の開発候補品よりも収益性の高い契約条件で大手製薬企業にライセンスアウト(導出)することです。当社では、PDPS技術を用いて同定したヒット化合物を、①特殊ペプチド医薬品、②ペプチド-薬物複合体(PDC医薬品)、③低分子医薬品という3カテゴリーの医薬品群として開発する創薬能力を拡充しております。戦略的パートナーの独自の技術・ノウハウと当社の技術を組み合わせることで生まれたプログラムでは、開発費用を両社で負担することにより、開発に成功した場合には、通常の創薬共同研究プログラムと比べてより高い比率の売上ロイヤルティーが支払われます。
戦略的提携による創薬については、当社はこれまで5社(JCRファーマ株式会社、モジュラス株式会社、英国Heptares Therapeutics社、米国Kleo Pharmaceuticals社、日本メジフィジックス株式会社)との戦略的提携を発表しております。また、川崎医科大学とは難治性希少疾患に対するペプチド創薬に関する共同研究を実施し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からは結核及びマラリア感染症の新規治療薬に関する研究開発助成金を受領しております。
2019年3月27日に、当社はポーラ化成工業株式会社(以下 ポーラ化成工業)との間で、ペプチドを用いた化粧品、医薬部外品および医薬品の研究開発、商業化に関する覚書締結を発表いたしました。当社のPDPS技術を活用することで、ポーラ化成工業における医薬部外品や化粧品の素材開発に拡大するとともに、ポーラ化成工業との協業により、皮膚に効果のある医薬品シーズの創出などに取り組んでまいります。
JCRファーマ株式会社(以下「JCRファーマ」)とは、血液脳関門(Blood-Brain Barrier:BBB)通過を可能とするキャリアペプチドの創製を行っております。開発されたペプチドに低分子医薬品やペプチド医薬品、抗体医薬品を中心とするタンパク製剤などを結合することにより、これまでBBBを通過できなかった薬を脳内に届けることが可能となり、神経疾患や骨格筋疾患における新たな治療薬開発の加速につながるものと期待しております。現在、疾患モデル動物等を用いた試験によって安全性や有効性の評価を進めており、評価を確認でき次第、製薬企業等へのライセンスアウトを進めていく計画です。BBB通過を可能とするキャリアペプチドに関心を持つ企業からは既に数多く問い合わせを受けており、今後、JCRファーマとの間でライセンスアウト戦略に関する詳細検討を進めてまいります。
モジュラス株式会社(以下 モジュラス)とは、これまで開発が難しかった創薬ターゲットに対する低分子医薬品候補化合物の開発を進めております。モジュラスは最先端の計算科学を駆使した高速かつ効率的な低分子医薬品候補化合物のデザインに関する技術を有するベンチャー企業です。両社は開発コストを分担し、得られた成果も両社で共有いたします。当社はPDPSを用いてキナーゼの変化の影響を受けないATP-非競合型インヒビター(アロステリックインヒビター)であるキナーゼ阻害剤の候補となるヒットペプチドをすでに数多く同定しております。両社は得られたヒットペプチドの立体構造情報から計算科学を用いて低分子医薬品候補化合物をデザインする能力を高める取組みを進めております。また、当社は2018年8月、モジュラスの資金調達(シリーズA)において2億円を出資いたしました。
英国Heptares Therapeutics社(以下 ヘプタレス)とは、疼痛、がん、炎症性疾患など複数の適応症において既に検証されているGタンパク質共役受容体(GPCR)として知られるプロテアーゼ活性化受容体(PAR2)を標的として新規治療薬の研究開発・商業化を目的とした戦略的共同研究を行っております。この共同研究では、両社のもつ業界屈指のプラットフォーム技術を融合いたします。両社で選択したGPCRターゲットに対して、ヘプタレス社のStaRプラットフォームを用いて安定化し、当社のPDPSを用いてヒット化合物を得ることで、新たな治療薬の開発を進めてまいります。本契約のもと、両社はコストを分担し、得られたすべての成果を共有いたします。2018年5月に報告いたしましたとおり、両社はPAR2に対し、高い親和性と選択性を有するペプチド・アンタゴニストを同定しており、このプログラムは現在、Hit-to-Leadのステージに入っております。
米国Kleo Pharmaceuticals(クリオ・ファーマシューティカル、以下 クリオ)とは、複数の適応症でがん免疫治療薬の共同研究開発を行っております。クリオが選択した複数のがん細胞表面及び免疫細胞表面の受容体ターゲットに対して当社のPDPSを用いて特殊環状ペプチドを同定し、最適化を実施いたします。それらとクリオが有するAntibody Recruiting Molecules(ARMs)、Synthetic Antibody Mimics(SyAMs)およびMonoclonal Antibody Therapy Enhancers(MATEs)という新たながん免疫療法のプラットフォーム技術を用いてPDC医薬品候補化合物を創製いたします。当社は製品開発の貢献度に応じて、すべての製品から生じる一定の収益を得る権利を有しております。両社はすでにいくつかの有望なリード化合物の合成を完了しております。また、当社は2018年11月7日、クリオの資金調達(シリーズB)において10百万米ドル(約11億円)を出資いたしました。クリオは、今回の調達資金を当社と共同研究開発を進めている医薬品候補化合物の臨床開発入り(2020年を予定)を加速する目的に使用する計画です。
日本メジフィジックス株式会社(以下 NMP)とは、特殊ペプチドにラジオアイソトープ(RI:放射性同位元素)を標識した治療薬および診断薬の創製に向けた戦略的共同研究開発および商業化の枠組みに関して基本合意に至り、覚書を締結いたしました。当社はPDPS技術を活用し、特殊ペプチドを用いたペプチド-薬物複合体(PDC)の研究開発を進めております。またNMPは「治療と診断の融合(セラノスティクス)」の実用化を目指しており、治療用および診断用の放射性医薬品を開発するための新たな研究製造拠点の整備に着手しています。今回の覚書締結を機に、当社が持つ特殊ペプチドにNMPが持つ放射性核種を標識する技術を組み合わせることにより、セラノスティクスの実現につながる新たな治療薬および診断薬の創製を進めてまいります。本取組みによって得られるRI標識ペプチドの開発および製品化の技術は両社で共有し、日本を含むアジア、ならびに欧米等において共同開発またはライセンスの導出を進めてまいります。
川崎医科大学とは、難治性希少疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するペプチド医薬品の共同研究開発を行っております。DMDは進行性の筋力低下を特徴とする遺伝疾患であり、いまだ有効な治療法が確立されておりません。共同研究開発では、マイオスタチンを標的タンパク質としたペプチド医薬品候補化合物がDMDのモデル動物に投与した際に筋力低下を有意に改善することが確認されており、革新的な筋萎縮阻害剤の開発につながりうるものと期待しております。現在、前臨床試験を進めており、近い将来に臨床試験を実施できるよう全力で取り組んでまいります。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下 ゲイツ財団)とは、世界の最貧国において大きな問題となっている2つの感染症である結核及びマラリアを治療するための新規特殊環状ペプチドを見出すことを目的とした複数のプログラムにつき、ゲイツ財団からの助成金による研究開発を行っております。この助成金により開発される治療薬は、ゲイツ財団との合意に基づき、貧しい国においては安価で提供されることになっております。一方、先進国においては、ペプチドリームが自社での製品化及び自由なライセンス活動の権利を有しております。
当社は今後も特定の分野で世界をリードする優れた技術を有するバイオベンチャー企業やアカデミア等の研究機関との戦略的提携を通じて、次世代のファーストインクラス(first-in-class)及びベストインクラス(best-in-class)となる優れた治療薬の開発に向けた取組みをさらに加速してまいります。
当社は塩野義製薬、積水化学工業株式会社と合弁で特殊ペプチド原薬の製造プロセスに関する研究開発、製造及び販売を行うCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品開発製造受託機関)・ペプチスター株式会社(以下 ペプチスター)を設立いたしました。ペプチスターは国内の様々な会社が有する技術を融合し、高品質、高純度でしかも製造コストを大幅に低減する最先端技術を開発、提供することを目指しております。ペプチスターは当社の創薬共同研究開発企業だけでなく、戦略的提携により自社開発品の製造も請け負うことが予想されます。同社の工場は大阪府摂津市に建設を進めており、2019年秋から商業生産を開始する計画です。
当社はサステイナビリティへの取り組み(ESG)に関して、当社の基本方針、重点取組み、主要データ/指標についての情報開示を目的に、自社WEBサイト上に専用ページを開設しております。当社は地球環境への配慮、社会・従業員に関する取り組み、企業統治(ガバナンス)に関して業界トップクラスの水準を目指して引き続き取り組んでまいります。
当社の従業員は2019年3月31日現在で103名(派遣を含む。女性社員比率は約4割)となります(2018年12月末比3人増)。取締役7名を含めると総勢110名の体制となりました。なお、中国でアミノ酸や低分子化合物の合成や製造等を委託しているCRO内では当社専属で15名が勤務しております。
以上の結果、当第3四半期累計期間における売上高は2,926,210千円(前年同四半期比1,788,994千円増加)、営業利益675,984千円(前年同四半期は営業損失1,328,643千円)、経常利益914,066千円(前年同四半期は経常損失1,192,287千円)、四半期純利益694,902千円(前年同四半期は四半期純損失831,384千円)となりました。
なお、当社の事業は単一のセグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(2) 財政状態の分析
当第3四半期会計期間の総資産は16,590,132千円となり、前事業年度末と比べて87,867千円増加しました。その主な要因は、売掛金が3,072,506千円減少したものの、現金及び預金が2,509,807千円増加、投資有価証券が1,309,898千円増加したこと等によるものです。
負債は1,197,516千円となり、前事業年度末と比べて596,033千円減少しました。その主な要因は、前受金が204,788千円増加したものの、未払法人税等が605,472千円、未払費用が220,321千円減少したこと等によるものです。
純資産は15,392,616千円となり、前事業年度末と比べて683,900千円増加しました。その主な要因は、四半期純利益により利益剰余金が694,902千円増加したこと等によるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第3四半期累計期間における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ2,509,807千円増加し、6,015,156千円となりました。
当第3四半期累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額970,757千円等があったものの、税引前四半期純利益914,066千円の計上、売掛債権の減少額3,072,506千円等により、3,753,858千円の収入(前年同四半期は778,336千円の支出)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出1,336,298千円等により、1,362,821千円の支出(前年同四半期比1,174,786千円の支出減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、新株予約権の行使による株式の発行による収入15,458千円等により、15,308千円の収入(前年同四半期比156,229千円の収入減少)となりました。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期累計期間において、当社が対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5) 研究開発活動
当第3四半期累計期間における研究開発費の総額は、774,910千円であります。
なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
2019年1月23日に塩野義製薬株式会社との間で、脳移行性を向上させるカーゴペプチドを含む、複数のペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)創製に関する包括的な共同研究契約を締結いたしました。