第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

当社グループでは、「医療のあり方や患者さんの人生に変革をもたらす次世代医薬品の創出」をグループ全体のミッションとして掲げております。当社の独自技術である世界最先端の創薬プラットフォームシステムPDPSを基盤に、革新的医薬品の研究開発を先導するとともに、放射性医薬品領域におけるPDRファーマの有する専門性を融合することで人々の健康と医療の発展に貢献し、全世界の病気で苦しんでいる方に「ありがとう」と言ってもらえる仕事に取り組んでまいります。

 

(2) 経営戦略等

当社グループは、2つの戦略領域である放射性医薬品(RI)領域とNon-RI領域で医薬品等の研究・開発・製造・販売等に従事しています。RI領域では日本国内で放射性医薬品事業を推進する上で必要となる創薬研究・開発から製造、販売に至るまですべての機能を一気通貫で有し、自社プログラムまたは提携プログラムとして革新的な放射性治療薬・診断薬の創製・開発を実施しています。腫瘍の縮小効果をもつ放射性核種をがん細胞に選択的に送達するためのキャリアとして環状ペプチドの有用性が次々と示される中、ペプチドリームとPDRファーマのシナジーを最大限発揮することにより、革新的で高付加価値の放射性医薬品を開発・販売するとともに、海外の製薬企業から有望な放射性医薬品を導入することにより放射性医薬品領域での成長を目指しています。Non-RI領域においてはPDPSを中核とし(1) ペプチド医薬品、(2) 環状ペプチドをキャリアとして他の有効成分と結合させたペプチド-薬物複合体(PDC)、(3) 異なる機能を有する環状ペプチドを結合させて複数の機能を有する多機能ペプチド複合体(MPC)の創薬におけるリーディング・カンパニーとして①グローバルの大手製薬企業や戦略的提携先との共同研究開発、②自社創薬及び戦略的提携先との共同研究開発、③PDPSの非独占的技術ライセンス等を実施しており、ペプチドを用いた次世代の革新的医薬品の創製・開発を目指しています。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、収益性の向上を目指しており、経営指標として売上収益、Core営業利益及びCore営業利益率を重視しております。2024年12月期は売上収益35,000百万円、Core営業利益10,900百万円、売上収益Core営業利益率31.1%を目標としております。

 

 

(4) 会社の対処すべき課題

(A) 放射性医薬品(RI)領域

当社グループの放射性医薬品事業においては、①既存製品の価値最大化、②今後成長が期待される中枢神経領域での事業拡大、③がん領域を中心に中長期的な成長を牽引する新たな放射性治療薬の開発、の3つを戦略フォーカスとしています。


 

当社グループでは、短期的には放射性診断薬を中心とした既存薬の適応拡大・剤形追加、これらの製品に対するデジタル・ソリューションの拡張等を通じて売上収益の拡大を図ってまいります。2023年にはテクネフチン酸キット、ミオMIBG-I123注射液、アミヴィッド静注の適応拡大を進めてまいりました。また、株式会社RYUKYU ISGから医療デジタル・ソリューション関連製品の譲受を行いました。

さらに当社グループは、アルツハイマー病領域のPET診断薬であるアミヴィッド静注と18F-フロルタウシピルの成長にも注力しています。アミヴィッド静注は脳内アミロイドβプラーク、18F-フロルタウシピルは脳内の異常蓄積タウタンパク質による神経原線維変化(NFTs)を可視化するPET診断薬です。日本国内で新たな認知症治療薬が承認され、また今後は18F-フロルタウシピル承認の可能性もある中、当社グループはアルツハイマー病領域のPET診断における2大分野の両製品を提供できるようになる立ち位置を活かし、アルツハイマー型認知症の可能性がある患者さんへの治療方針を決定する上で有用な情報を医療関係者の皆さまに提供することが可能になるものと期待しています。

 

中長期的には、がん領域を中心とする新たな放射性治療薬の開発が成長を牽引していくものと考えています。当社グループは、日本国内で放射性医薬品を開発・製造・販売するためのインフラや専門性、新規の放射性治療薬を創製・開発する技術や専門性、さらにこれまでに構築してきた強力なグローバルネットワークを活用し、継続的に開発パイプラインや製品ポートフォリオを拡大していくビジネスモデルを構築しています。これまで、放射性医薬品市場では診断薬が市場の多くを占めていましたが、新たな標的型放射性治療薬の時代に入り、革新的な放射性治療薬・診断薬の創製・開発を通じて、当社グループは将来的な成長を加速するとともに、当該分野における医療の進歩に大きく貢献できるものと考えています。2023年には、CA9プログラム・RayzeBio社プログラム・Novartis社プログラムの3つのプログラムにおいて開発候補化合物を特定することができました。これらのプログラムでは早期の臨床入りを期待しています。また、リンクメッドとの提携により新たな臨床プログラムとしてATSMプログラムを追加いたしました。2024年にはさらなる臨床プログラムの追加を期待しています。

 

 

(B)Non-RI領域

当社のNon-RI領域は、PDPSを基盤技術として用い、(1) ペプチド医薬品、(2) PDC、(3) MPCの創薬開発において提携先との提携・ライセンス契約に加え、自社プログラムとしての開発も進めており、これらのプログラムを前臨床~臨床~上市へと順次ステージアップさせていくことを目指しています


上図の通り、ペプチドリームは多くの提携プログラムを実施し、早期の研究/前臨床段階から臨床段階、商業化へとプログラムを推進することに注力しています。これらのプログラムは、当社グループの将来の収益拡大に向けて重要な成長ドライバーになるものと考えています。2023年には、Amolyt社のGhRアンタゴニストプログラムやMSD社との提携プログラムの臨床試験開始など、大きな成果を得ることができました。さらに小野薬品との新たな提携や、アステラス製薬との新たな標的タンパク質分解誘導剤に関する提携を開始し、また複数の提携プログラムでマイルストーンの達成を発表いたしました。今後も継続的に、ペプチドリームが取り組むプログラムの価値最大化に向けて、創薬・早期開発段階から臨床段階へとプログラムを推進していきます。


上図の通り、2022年にPDRファーマ社がグループに加わったことにより、ペプチドリームは、早期の創薬活動に注力する成長ステージ(「プラットフォーム」)から、それに加えて上市製品や臨床段階のパイプラインを保有する成長ステージ(「プラットフォーム+ポートフォリオ」)へと成長モデルをシフトしてきました。当社グループは、放射性医薬品事業の日本国内におけるユニークな立ち位置および数多くの創薬パイプラインを活用し、臨床段階のプログラムを拡充することを計画しています。こうしたハイブリッド・モデルにより、収益の安定性向上とともに成長機会の最大化を実現し、持続的で力強い成長を積み重ねていきます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りです。文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティの考え方

当社グループは「医療のあり方や患者さんの人生に変革をもたらす次世代医薬品の創出」というミッションのもと、世界中の人々の健康及び医療・社会の持続的な発展に貢献することを目指しています。革新的な治療を患者さんに届ける事業そのものが、より良い医療・社会を創っていくことに直結していると考えています。

自社と社会の双方にとっての重要度の観点から取り組むべき課題として11のマテリアリティ(重要課題)を特定し、取締役会での議論・承認を経て、当社のサステナビリティの取り組みの指針としています。創薬研究の最前線で革新の波を連続的に創出するためには、健全なガバナンスのもとで、イノベーションを創出し、イノベーション実現のための人材・組織の向上を図ることが当社の価値の源泉です。これらに社会からの要請の高い環境(気候変動対策)の取り組みを加えた、以下の3つのアプローチを通じて、自社の持続的な成長と持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

 


 

① 革新的医薬品の創出によるアンメットメディカルニーズへの挑戦

当社は、アンメットメディカルニーズに対し、独自の創薬開発プラットフォームを活用し、画期的なペプチド医薬品の研究開発を進めています。また、PDRファーマを通じて放射性医薬品を創出し、患者さんに広く届き渡るよう努めています。創薬基盤技術の拡張・強化、共同研究開発プログラムの進展、自社パイプラインの構築を通じて革新的な医薬品を創出することは、当社の存在意義であるとともに、適切な対応を実施しない場合、新たなモダリティの台頭に伴う既存ビジネスモデルの陳腐化やビジネスチャンスの逸失、優秀な人材の流出を招くリスクがあります。

 

② イノベーション実現のための組織風土・中核人材の多様性

当社の成長を支えるイノベーションを継続的に生み出すためには、多様な人材の確保・育成、イノベーションを加速させる社内環境の整備が不可欠です。人的資本経営・多様性への取組を怠れば当社の事業の継続性に対して脅威となり得るとともに、人的資本への投資は新たなビジネスチャンスへの対応力の強化など更なる成長の機会に繋がると捉えております。

 

③ 環境(気候変動対策)

パリ協定採択を機に、世界的に脱炭素社会に向けた動きが広がっています。既に近年では地球温暖化の影響と考えられる自然災害が頻発・激甚化しており、当社は、気候変動に関連する政策・法規制のリスクや洪水などの自然災害の影響を受ける可能性があります。また気候変動は最も緊急性の高い環境問題の一つであるとともに、人類が直面している最大の健康上の脅威となっています。気候変動に取り組むことは患者さんのためになることであり、重要な社会課題だと認識しています。気候変動による事業環境の変化への適応に努めるとともに、2030年までのCO2をはじめとする温室効果ガス(GHG)排出量削減目標と具体的な対応を実行することで企業価値向上に繋げていきます。

 

(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス、リスク管理、戦略及び指標と目標

① ガバナンス

当社では、取締役の諮問委員会としてサステナビリティ関連のリスクと機会を審議・モニタリングする「サステナビリティ・ガバナンス委員会」(四半期に一度開催)、サステナビリティに関連するリスクと機会の特定や評価、対応を推進する専任組織である「サステナビリティ・ガバナンス推進室」、及び環境関連課題に対する現場レベルでの取り組みを推進する「ESGタスクチーム」を設置しています。サステナビリティ・ガバナンス推進室にて検討された結果は、サステナビリティ推進室担当者を通して四半期に一度、取締役会に報告しています。

詳細は当社「サステナビリティレポート 2023」P.4をご参照ください。

 

② リスク管理

当社のリスク管理を強化するために、「コンプライアンス・リスクマネジメント委員会」(四半期に一度開催)を中心としたリスク管理体制を構築し、 PDCAサイクルによる効果的かつ総合的なリスク管理を実施し、その進捗を適宜取締役会に報告しています。詳細は「3 事業等のリスク」をご参照ください。

気候関連問題の評価にあたっては、IEA等の各種シナリオを参照し、必要に応じて関連する部門及びグループ会社にヒアリングを行い、適宜見直しを実施しています。詳細は当社「サステナビリティレポート 2023」P.20及びウェブサイトをご参照ください。

 

③ 戦略、指標及び目標

自社と社会の双方にとっての重要度の観点から取り組むべき課題として11のマテリアリティ(重要課題)を特定し、取締役会での議論・承認を経て、当社のサステナビリティの取り組みの指針としています。また、マテリアリティ毎のリスクと機会をそれぞれ分類し、サステナビリティ・ガバナンス委員会で審議するとともに、定期的な見直しを実施してまいります。詳細は「サステナビリティレポート2024」にて開示していきます。

 

 

(3) 人的資本経営・多様性に関する戦略及び指標と目標

① 人・組織の目指す姿

ペプチドリームでは、「高い専門性・情熱・誠実」の3つのバリューを柱とする10の行動指針を全役職員で共有し大切にしていくことで、コーポレートカルチャーとしてバリューや行動指針が根付いた人・組織の実現を目指しています。

 



研究開発型のイノベーションカンパニーを目指す当社にとって、一人ひとりがもつ「高い専門性」が重要な人的資本となるのはもちろんのこと、創薬開発という長い道のりを最後までやり遂げ、また道中にある多くのチャレンジを克服していくためには、自分たちの仕事の先に世界のどこかで患者さんが待っていることを忘れないこと、たとえ困難な課題であっても、粘り強く考え努力すること、同時に失敗を恐れずにクリエイティブなリスクを積極的に歓迎していくマインドセットが重要になるものと考えています。各領域で高い専門性を有する研究者が、次世代医薬品創出に向けた「情熱」を持ち、社内外・国内外を問わず互いの専門性を引き出し合い協働していく先にイノベーションの創出があり、またそうした協働の場を作っていく前提として、互いの専門性や仕事を尊重し合い、直面する課題に対して一人ひとりがオーナーシップをもって取り組む「誠実さ」が重要な基盤になるものと考えています。

当社においてパイプラインの価値は企業価値の中核といえます。パイプラインの価値を高めていくためには、当社が有するプラットフォームの強みを軸に、新規プログラムを継続的に創出し(裾野の広さ)、また各プログラムの付加価値を継続的に向上させていくこと(山頂の高さ)が重要な要素となります。この2つの要素を持続的に回していくためには、ペプチド創薬のグローバルハブとしてのポジションを確立し強化し続けていくことが鍵となり、これを実現していくためには、上記のバリューが根付いた協働の場を環境として整え、また組織全体のコーポレートカルチャー醸成につながる形で人的資本の向上に資する取り組みを進めていくことが重要と考えています。


人財育成・社内環境整備の方針及び指標

a. 専門性の獲得と向上

ペプチド創薬のグローバルハブとしてのポジションを確立・強化し、上記のバリューが根付いた協働の場を環境として整えることで高い専門性を獲得し、向上していけると考えています。

具体的には、

・高度専門家・海外勤務経験者の採用強化:

数多くのプログラムに関わり、また国内外の最先端研究チームと協働しグローバル水準の創薬開発に従事する機会を通じて、研究者として質の高い経験を多く積むことができるのは当社の特徴の一つです。創薬開発ではグローバルに競争が行われることが多く、国内はもちろん、海外の有用な情報についてもタイムリーに取得し、最先端のアイデアや技術を取り入れながらイノベーション創出に取り組むことが重要になります。このような環境で能力を発揮する高度専門家(各領域でのPh.D.取得者など)や海外で創薬開発の経験を積んだ人財(博士研究員や海外製薬企業での勤務経験者など)の採用を積極的に進めています。

・エキスパート・キャリアトラックの整備:

各領域での専門性の追求を志向する研究者の育成・登用を積極的に進めています。キャリア開発の考え方や志向が多様化しつつある中、従来型のキャリアトラックの考え方に縛られることなく、一人ひとりのニーズや価値観にフィットした自己実現の機会を整備していくことを目的に、従来のマネジメント・キャリアトラックに加え、チームマネジメントの業務負荷を軽減し、高度な専門性を追求していくことを後押しするとともに、高い専門性を発揮する社員を登用するエキスパート・キャリアトラックの運用を進めています。

・学びあいと能力開発サポート制度の整備:

専門家の集まる組織ではそれぞれの専門領域に閉じてしまいがちな側面もあることから、領域横断的に研究者同士が新しいトピックや研究成果を定期的に発表し、多様な研究者同士が学びあう機会を積極的に設けています。また、自ら能力開発に取り組む社員を支援し、一人ひとりの専門性の確立と向上を支援するための能力開発サポート制度(Self-Development support制度)の運用を進めています。

 

b. 人財多様性からのイノベーション

創薬開発はチームワークが基本であり、多面的な着想やアイデアの融合がイノベーションの源泉になるものと考えています。国籍・人種・性別・年齢などの属性面のみならず、研究者一人ひとりの専門性やサイエンティフィックな感性の多様性を重視し、その多様性をイノベーションに繋げていくことを重要な価値観とするコーポレートカルチャーの醸成に取り組んでいきます。

具体的には、

人財の多様性の確保

国籍・人種・性別・年齢などの属性に捉われず、求める専門性や業務内容に基づくジョブ型の採用や登用を行っています。また、若手研究者ならではのフレッシュな感性や、女性研究者ならではの着眼点を大切にする観点から、中核人財における若手や女性の占める比率を目標指標として策定しています。

・チームワークやロールモデルを重視した人事制度:

多様な人財が協働するコーポレートカルチャーを醸成していくためには、チームワークを大切にし、リーダー自らがロールモデルとして率先垂範を実践していくことが重要と考えています。こうした価値観を組織全体で共有し、それを体現するリーダーの登用を進めていくため、Values & Behaviorsの考え方を中核においた人事評価や報酬制度を策定し、役員から従業員まで一貫した形での運用を進めています。

・組織エンゲージメントの見える化:

定期的なサーベイを実施することで、組織のエンゲージメント状態を可視化し、経営・マネージャー・チームメンバー間のコミュニケーションを促進するツールとして活用しています。チームマネジメントのあり方に唯一解は存在せず、各チームのメンバー構成や特性などの複合的な要素を勘案しながら継続的にエンゲージメント向上に向けた取り組みを積み重ねていくことが重要と考えています。エンゲージメントを単に測定するだけでなく、チームごとのベストプラクティスの抽出や横展開にもつながる形での運用を進めています。

 

c. サステナブルな働き方

多様な人財が能力を発揮し活躍するためには、一人ひとりのキャリアにおける長期的な成長や成果の最大化が鍵であり、その前提としてサステナブルな仕事環境を整備することが重要と考えています。当社では、メリハリある働き方、ライフイベントのサポートを重視した職場環境作りに取り組んでいます。

具体的には

・メリハリある働き方の促進:

当社では、フレックスタイム制を採用することで、コアタイムを中心にパフォーマンスを発揮しやすい時間帯での勤務を推奨しています。一日の中でも、オン・オフを明確にした働き方を重視し、パソコンの持ち帰りやスマートフォンによる帰宅後の業務対応は原則なし。ラボワークが中心のため、在宅ワーク制度はあえて運用せず、会社ではしっかりと業務に集中し終業後はプライベートな時間を大事にする働き方を推奨しています。また、一年の中でも、年2回の長期休暇を組み入れたカレンダーを運用し、半期毎に一生懸命業務に取り組んだ後はリフレッシュし、またしっかり働くというメリハリあるワークスタイルを目指しています。

・ライフイベントのサポート:

平均年齢が若く、子育て世代の社員が多いこともあり、育休取得を積極的に支援しています。女性はもちろん男性の育休取得率も高く、一般社員から管理職まで様々なポジションでの育休取得実績があります。多様な働き方を支援する短時間正社員制度や、時短勤務による給与減を支援する育児介護短時間サポート手当を独自に設けています。育児や介護など様々なライフイベントの中でも就業を継続し、キャリアを構築できる働き方をサポートしています。

 

 

③ 上記方針に関する指標と目標

上述の「目指す人と組織の姿」実現に向けて、指標と目標を以下の通り設定し、進捗をモニタリングしています。

 

2023年12月期

2030年目標

◆中核人材(上席研究員以上)において下記の占める比率

博士号取得者

54.0%

50%以上

外国籍又は海外勤務経験者

32.0%

30%以上

20-30代(若手)

24.0%

30%以上

女性

16.0%

30%以上

◆エンゲージメントサーベイで着目するキードライバーのスコアの維持・向上

やりがい

上昇トレンドの維持

職場環境への満足

ミッション・ビジョンへの共感

 

(注)エンゲージメントサーベイスコアは測定方法の変更を予定しているため、指標の開示は2024年12月以降を予定しております。

 

(4) 環境(気候変動)に関するガバナンス、戦略及び指標と目標

① ガバナンス

当社の気候変動に係るリスクと機会への対応方針やCO2をはじめとするGHG排出量の削減目標・取り組みについては、サステナビリティ関連のリスクと機会の一つとして前述サステナビリティ全般のガバナンスにおいて統合的に管理・監督しております。

 

② リスク管理

当社の事業に対する財務又は戦略面での重大な影響を及ぼす気候変動関連リスク・機会については、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ・ガバナンス委員会において、財務的な観点を含めて総合的に審議し、定期的に取締役会で見直し、決定しています。

 

③ 戦略

当社は、気候変動関連のリスクと機会をそれぞれ分類し、サステナビリティ・ガバナンス委員会で審議するとともに、随時見直しを実施しております。

 

a.気候変動に関する移行リスク(1.5℃から2℃シナリオを使用)

移行リスク

説明

政策及び法規制のリスク

・気候変動問題への対策として、日本では「地球温暖化対策税」が導入されています。当社は事業活動に伴う電力消費が避けられないため、今後税率が引き上げられた場合には財務インパクトが生じうるリスクがあります。またカーボンプライシング制度や排出量取引等が日本に導入された場合、当社は事業活動に伴う電力消費によるCO2をはじめとするGHG排出が避けられないため、設備投資コストが拡大するリスクがあります。

・近年、世界的に環境配慮の意識が高まっています。そのため、法令を遵守している場合においても環境配慮の取り組みが遅れることにより訴訟が提起されるリスクがあります。

技術のリスク

近年、世界的に環境配慮の意識が高まっており、クリーンエネルギー技術の普及により、グループ全体における再生可能エネルギー、自社発電、蓄電池などの導入に係る設備投資コストが拡大するリスクがあります。

評判上のリスク

近年、世界的に環境配慮の意識が高まっており、ESG投資では、投資の基準に企業の環境への取り組みが組み込まれています。そのため、環境関連情報の開示が遅れることにより投資適格性を失うと、当社への投資が減少するリスクが存在します。

 

 

b.気候変動に関する物理的リスク(4℃シナリオを使用)

物理的リスク

説明

急性リスク

当社は、神奈川県川崎市川崎区殿町に本社・研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しています。周辺には多摩川が流れており、気候変動に伴う洪水や津波などの水害等の自然災害が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

慢性リスク

気候変動により、近年、世界的に感染症の発生リスクが高まっています。当社は、事業活動や研究開発活動に必要な設備及び機能が本社・研究所に集中しており、在宅勤務等へのシフトによって本社研究所以外の場所で継続できる業務が一部のオフィス業務に限定されます。指定感染症等が発生し、本社・研究所の一時閉鎖等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

c.気候変動に関する機会

切り口

説明

製品及びサービス

気候変動による気象パターンの変化により、感染症のみならず呼吸器疾患、心臓疾患、メンタルヘルスに影響を及ぼす病気が拡大し、健康に被害を及ぼしています。当社の創薬開発プラットフォームを用いた新薬共同研究開発ニーズの拡大(製薬企業等との契約機会の拡大)になり、収益に好影響を及ぼす可能性があります。

評判

気候変動対策への貢献を通じて、ステークホルダーからの信頼が高まり、外部からの評価が向上した場合、より多くの投資が得られるようになる可能性があります。このようなESG投資額の増加を機会として想定しています。

 

 

④ 指標と目標

当社では、CO2をはじめとするGHG排出量の削減・気候変動対策を重要な経営課題の一つとして認識しています。パリ協定に整合した1.5℃目標の達成に向けて、当社では、2022年から2026年までに5年間の中期目標として「カーボンニュートラル」を達成することを2021年に掲げ、CO2排出量の削減に積極的に取り組んでいます。結果として、4年前倒しでペプチドリームにおける事業活動のScope1及び2におけるカーボンニュートラルを実現させており、進捗を確実なものにしています。

また、サプライチェーンでのCO2排出量の削減に向けて、2030年までに2023年対比で20%削減する目標を設定し、サプライヤーをはじめとするステークホルダーとともに取り組みを推進しております。

2023年12月期における当社Scope1、2、3の数値及び第三者保証の詳細につきましては、「サステナビリティレポート 2024」と第三者検証意見書をご参照ください。

 

<ペプチドリームグループCO2排出量削減目標>

目標年

2030年

削減目標

① Scope1+2  △100%(2023年比)

② Scope3   △ 20%(2023年比)

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はございません。また、以下の記載内容は当社グループのリスクすべてを網羅するものではございませんのでご留意ください。

なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性もございます。

 

(1) リスク管理体制

当社のリスク管理体制は以下のとおりです。

<会社の機関・内部統制の関係図>

詳細については、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b リスク管理体制」をご参照ください。

 

 

(2) 主要な事業等のリスク

経営者が経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要な事業等のリスクは以下のとおりです。各リスクについて発生可能性、影響度の観点から評価した結果を一元的に管理するために、同一のリスクマップに掲載しております。

<主要な事業等のリスク一覧> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成

リスク

No

内容

(ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク

医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク

副作用・製造物責任に関するリスク

安定供給・製造仕入れに関するリスク

薬価引き下げに関するリスク

(ⅱ)事業内容に関するリスク

PDPS技術の競争優位性に関するリスク

知的財産権に関するリスク

共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク

収益認識に関するリスク

(ⅲ)その他に関するリスク

保有投資有価証券に関するリスク

10

のれん・無形資産に関するリスク

11

債務保証に関するリスク

12

資金の借入コストに関するリスク

13

外国為替相場の変動に関するリスク

14

新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク

15

人的資本に関するリスク

16

ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

17

環境(気候変動)に関するリスク

18

コンプライアンスに関するリスク

19

重要な契約の解除・終了に関するリスク

20

法的な紛争に関するリスク

 

 

<主要な事業等のリスクマップ> ※当社グループ見解に基づく/当社グループ作成


 

(ⅰ)医薬品の研究開発・製造販売事業一般に関するリスク
(1) 医薬品開発・薬事承認の不確実性に関するリスク
当社グループでは、独自のPDPSを活用し、生体内でのタンパク合成に利用される20種類のアミノ酸と、非天然型のアミノ酸から構成される環状ペプチド医薬品の探索・開発を行っております。PDPSでは、短期間に標的タンパク質に対する高い結合性・選択性等、多くの特長を有する環状ペプチドを創製することができ、有望な医薬品候補化合物が取得できることから、多くのパートナーとの契約に至っております。また近年では環状ペプチドを起点にした低分子医薬品や、PDC、MPCといった様々なモダリティの探索・開発にも取り組んでおります。

上記に加えて、当社グループは医薬品の臨床開発、製造、販売を行っております。PDRファーマはRI領域における製造販売業者として半世紀近い歴史・経験を有し、臨床開発、薬事機能など医薬品上市に必要な機能を有しております。

一方で、一般に医薬品の開発には多額の研究開発投資と10年以上の年月を要します。また、研究開発の初期段階において有望とされた化合物であっても、前臨床試験や臨床試験の結果によっては研究開発が予定通りに進行せず、開発の延長や中止の判断を余儀なくされる可能性がございます。さらには、臨床試験を完了しても、当局の定めた有効性と安全性に関する審査によっては、医薬品の上市が承認されない可能性もございます。

これらのことから当社グループの研究開発活動は一定の不確実性を伴っており、この不確実性が当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 
(2) 副作用・製造物責任に関するリスク

当社グループは、医薬品の臨床開発、製造、販売を行っておりますが、医薬品には予期せぬ副作用が発現するリスクがあります。当社グループでは、発売後の医薬品について製造販売業としての医薬品安全性監視を行うことで患者様の健康被害リスクを最小化する活動を実施する等、医薬品使用に関連するリスクの回避と軽減に努めております。また、医薬品の開発、製造販売を行う製品が、必要な品質及び安全性の基準を満たさない場合、これを原因とした製造物責任を負うリスクがあります。当社グループでは、製品の安全、品質への取り組みをマテリアリティの一つに掲げており、従業員への教育、製造・品質保証体制の整備に努めております。これらの取り組みにも関わらず、副作用等が発現し、製造販売の中止、製品の回収、薬害訴訟の提起等が惹起される場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(3) 安定供給・製造仕入れに関するリスク

当社グループは、放射性医薬品の製造販売を行っており、その社会的責任から安定供給をマテリアリティの一つに掲げております。一方で、放射性医薬品の文字通り核となる放射性核種は、原子炉や加速器といった特殊な設備で、希少な放射性原料から製造されることが多く、海外サプライヤーを中心とする特定の供給元に依存しております。また放射性医薬品の製造・輸送も、多くの規制を受けるため、許認可を受けた工場・業者以外では実施することができません。そのため地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの取引先や、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等の損害が発生した場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(4) 薬価引き下げに関するリスク

当社グループは、医薬品の製造販売を行っております。国内における医療用医薬品の販売価格は、厚生労働大臣が定める薬価基準によって定められますが、医療費高騰等による薬剤費引き下げ政策がすすめられており、2年に一度行われる薬価改定に加え、直近では2021年度に導入された中間年改定が2023年度も実施されております。薬価引き下げ政策が拡大し、当社グループの放射性医薬品の薬価が大きく引き下げられる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

 

(ⅱ)事業内容に関するリスク

(5) PDPS技術の競争優位性に関するリスク
当社グループのPDPSは、非常に高い多様性をもつペプチドライブラリーを構築し、その中から高い結合性と選択性を有するペプチドを取得できる技術が組み込まれており、重要な要素技術全てにおいて、他のペプチド創薬技術に対する優位性を持っていると認識しております。また、当社グループではPDPS技術の改善・向上のための研究開発に積極的に取り組んでおります。

一方で、AIや計算化学といったin silico技術も含め、当社グループの特許技術に抵触しない優れた創薬技術が開発される可能性は否定できません。その場合、当社グループの競争優位性が低下することにつながり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(6) 知的財産権に関するリスク

当社グループのPDPSを始めとする様々な技術や、医薬品候補化合物・製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって一定期間保護されております。

当社グループでは特許権を含む知的財産権を管理し、当社グループが事業を展開する市場における第三者の知的財産権や、第三者からの侵害状況を継続的にモニタリングし、知的財産権に関するリスクの回避・軽減に努めております。しかしながら、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合や、無効審判を受ける等して取得した特許を適切に保護できない場合、あるいは当社グループの製品・技術が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(7) 共同研究開発先の研究開発進捗・方針に関するリスク

当社グループの創薬開発事業においては、パートナーとの共同研究開発契約から計上される収益が主であり、事業収益の相当程度が共同研究開発先(パートナー)の研究開発の進展に伴って計上されます。

当該収益は原則的には、(A)契約一時金、(B)研究開発支援金、(C)研究マイルストーンフィー、(D)開発マイルストーンフィー、(E)売上ロイヤルティー、(F)販売マイルストーンフィーで構成されております。

上記の中で(A)(B)(C)は当社グループの事業活動に依拠する部分が大きいものの、(D)(E)(F)はパートナーの研究開発・事業活動に依拠する部分が大きく、当社グループでその進捗を管理・制御することは困難です。加えて、研究開発方針を両社で協議しながらプロジェクトを推進するため、必ずしも当社の意向通りに個々のプロジェクトへのリソース配分や、研究開発方針を決定できない可能性がございます。

また、自社パイプラインについては導出または共同開発契約等を実施し、パートナーが臨床開発・商業化を行うことを想定しております。その際も、パートナーの研究開発・事業活動の進捗と結果に当社グループの収益は大きく依拠致します。

そのため、パートナーにおける研究開発の進捗が遅れた場合やパートナーの研究開発方針に変更等があった場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(8) 収益認識に関するリスク

当社グループの事業収益の相当程度は、数多くのパートナーとの共同研究、共同開発に関する契約から計上されます。それらは国際会計基準(IFRS)における収益認識基準に従い、必要に応じて個別に監査法人とも確認を取りながら計上しております。

当社グループではIFRSの収益認識基準の原則や背景にある考え方の理解に努め、適切な収益認識を行ってきておりますが、監査法人との協議の結果等から、当社の想定と異なる収益認識が必要となった場合、例えば一時金として想定していた収益を長期間にわたって分割計上する必要が生じる等して、年間に計上する売上額が大きく変動する可能性がございます。そのため、一定以上の事業収益に対する収益認識の変更や修正を余儀なくされる場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

 

(ⅲ)その他のリスク

(9) 保有投資有価証券に関するリスク

当社グループでは、共同研究開発を加速させる目的での戦略的提携先への出資等を通じ、投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は、株式発行会社の財政状態・経営成績等の状況によって判断されるため、実質価額の低下により減損損失を余儀なくされる場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(10) のれん・無形資産に関するリスク

当社グループは、企業買収等を通じて獲得したのれん及び無形資産を計上しております。これらの資産については計画と実績の乖離等により価値が下落した場合には減損損失の計上等、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(11) 債務保証に関するリスク

当社グループは、一部の投資先に対して、債務保証を行っております。当社グループは投資先の経営状況をモニタリングするとともに、必要な施策を実施し、リスク低減に努めておりますが、将来的にこれら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(12) 資金の借入コストに関するリスク

当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達しています。今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの事業戦略及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

また、当社グループの借入金には財務制限条項が付されています。業績の悪化等により当該借入金の期限前弁済義務が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(13) 外国為替相場の変動に関するリスク

当社グループのパートナーには海外の製薬企業が含まれていることから、事業収益の一部が外国通貨建て(主に米ドル建て)となっており、為替変動の影響を受けます。当社グループでは短期的な為替変動に対応するため、適宜為替予約を用いて影響の最小化に努めておりますが、為替相場が一定以上変動した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼすことになります。

 

(14) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化に関するリスク

当社グループは、役員及び従業員に対し新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社グループ株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性がございます。

 

(15) 人的資本に関するリスク

当社グループは、多くの国内外パートナーとの共同研究開発を行っております。そのため、事業を展開し発展させていくために、様々な分野で高い専門性や能力を有しグローバルで活躍できる人材の、採用・育成・確保が必要です。一方で、そのような優秀人材の数は有限であり、社会全般に優秀人材の流動性は高まっている傾向にあります。また、当社グループは海外拠点を保有していないためにグローバル人材の採用に一定の制限があることから、人的資本が充分に確保できないリスクがございます。

当社グループでは、優秀人材の獲得のため、賃金水準の上昇や働き方の多様化といった社会変化への対応に常に先行して取り組み、また従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みを開始する等、採用競争力の強化や人材確保に努めております。さらに「高い専門性、情熱、誠実」という3つのバリューと、その体現の為の10の行動指針を「Values & behaviors」として定め、コーポレートカルチャーとして定着させることを目指し、人材育成と社内環境整備を進めております。

こうした取り組みが機能せず、人材活用が充分に実施できない場合や、人材流出、採用の不調、役員や中核ポジションにおける後継者育成・獲得の停滞を招く場合、当社グループの人的リソース・機能が棄損し、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(16) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

当社グループは、被検者・患者さん等の社外ステークホルダーの個人情報や、パートナーの技術・知的財産情報を含む、多様かつ重要な秘密情報を取り扱っております。近年、サイバー攻撃は年々高度化・巧妙化しており、それにより秘密情報が漏洩した場合、ステークホルダーが重大な損害を被るリスクや、当社グループの社会的信用が大きく損なわれるリスクや、競争力が低下するリスク等がございます。

当社グループでは、サイバーセキュリティに関するポリシーを制定し、技術・社会環境の変化に合わせた適切な技術・サービスの導入、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策の実施や、社員を対象としたトレーニング等継続的な対策強化を行っております。

これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃等によるシステム障害や事故等の原因により情報の改ざん、漏えい等が発生した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(17) 環境(気候変動)に関するリスク

「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 環境(気候変動)に関するガバナンス、戦略及び指標と目標」に記載の通りです。

 

(18) コンプライアンスに関するリスク

当社グループの事業の推進にあたっては、薬事規制や製造物責任、独占禁止法、個人情報保護法、放射性同位元素等の規制に関する法令等の様々な法的規制や、GMP、GQP、GCP、GLP等のガイドラインの遵守が必要です。また、当社グループの事業活動は、協力関係にある多数のサプライヤー等の第三者による業務遂行によって、大きく影響を受けます。当社グループは、コンプライアンス・リスクマネジメント委員会を設置してコンプライアンス推進体制を整備し、当社グループおよび関係する第三者の事業活動が法令および社内規定を遵守して実施されるよう努めております。

しかしながら、当社グループの従業員や、関係する第三者がこれらの法令等に違反した場合や、社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、規制当局による処分、訴訟の敵を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

(19) 重要な契約の解除・終了に関するリスク

当社グループの事業展開上重要な契約が、相手方の経営方針の変更等何らかの理由で、解除・終了する場合、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。なお、原則として、パートナーとの共同研究開発契約に係る受領済みの収益は、当社グループが契約を中途終了する場合でも、当社グループは返還義務を負っておりません。

 

(20) 法的な紛争に関するリスク
当社グループが事業を展開する上で、第三者の権利若しくは利益を侵害した場合又は侵害が疑われる場合には、損害賠償の請求訴訟を提起される等の法的な紛争が生じる可能性がございます。
本書提出日現在、法的な紛争は生じておりませんが、今後、当社グループと第三者との間に法的な紛争が生じた場合、紛争の解決に多大なリソースと時間を要するほか、法的紛争に伴うレピュテーションリスクにさらされる可能性があり、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性がございます。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループのセグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度(2023年1月1日から2023年12月31日)において、当社グループは2つの戦略領域である放射性医薬品(RI)領域とNon-RI領域(ペプチド医薬品、PDC医薬品、MPC医薬品等)で着実に進捗を重ねています。

 

(A)放射性医薬品(RI)領域

当社グループは、日本国内で放射性医薬品事業を推進する上で必要となる創薬研究・開発から製造、販売に至るまですべての機能を一気通貫で有しています。ペプチドリームの100%子会社であるPDRファーマでは、放射性治療薬・診断薬および関連製品の製造や販売等を行っています。また、ペプチドリームではPDRファーマとの連携により、自社プログラムまたは提携プログラムとして革新的な放射性治療薬・診断薬の創製・開発を実施しています。腫瘍の縮小効果をもつ放射性核種をがん細胞に選択的に送達するためのキャリアとして環状ペプチドの有用性が次々と示される中、両社のシナジーを最大限発揮することにより、革新的で高付加価値の放射性医薬品を開発・販売するとともに、海外の製薬企業から有望な放射性医薬品を導入することにより放射性医薬品領域での成長を目指しています。

 

(A)-1  当社グループが販売している放射性医薬品

PDRファーマを通じて当社グループが日本国内で販売している製品は以下の通りです。(2023年12月末時点)

    ヨウ化ナトリウムカプセル:甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺がん及び転移巣の治療、シンチグラムによる甲状腺がん転移巣の発見。37MBqから1.85GBqまで5種類の製品規格を展開。ヨウ化ナトリウム(131I)カプセル。

    ライアットMIBG-I131静注:MIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫・パラガングリオーマ。3-ヨードベンジルグアニジン(131I)。

    ゼヴァリンインジウム(111In)静注用セット:イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認。111In標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。

    ゼヴァリンイットリウム(90Y)静注用セット:CD20陽性の再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療。90Y標識抗CD20抗体。製造販売元はムンディファーマ株式会社。

    オクトレオスキャン静注用セット:神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ。ソマトスタチン受容体を標的とするペンテトレオチドの111In標識注射液。Curium Pharma社からの導入品。

    テクネDMSAキット:腎シンチグラムによる腎疾患の診断。ジメルカプトコハク酸99mTc注射液 調整用。

    テクネDTPAキット:腎シンチグラフィによる腎疾患の診断。ジエチレントリアミン五酢酸99mTc注射液 調整用。

    テクネMAAキット:肺シンチグラムによる肺血流分布異常部位の診断。テクネチウム大凝集人血清アルブミン99mTc注射液 調整用。

    テクネMAG3注射液/テクネMAG3キット:シンチグラフィ及びレノグラフィによる腎及び尿路疾患の診断。メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン99mTc注射液。

    テクネMDP注射液/テクネMDPキット:骨シンチグラフィによる骨疾患の診断、脳シンチグラフィによる脳腫瘍及び脳血管障害の診断。メチレンジホスホン酸99mTc注射液。

    テクネピロリン酸キット:心シンチグラムによる心疾患の診断、骨シンチグラムによる骨疾患の診断。ピロリン酸99mTc注射液 調整用。

    テクネフチン酸キット:肝脾シンチグラムによる肝脾疾患の診断、乳がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頚部がん(甲状腺がんを除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィ。フィチン酸99mTc注射液 調整用。子宮頸癌、子宮体癌、外陰癌及び頭頸部癌(甲状腺癌を除く)におけるセンチネルリンパ節の同定及びリンパシンチグラフィについては2023年3月に適応拡大の承認取得。

    テクネゾール:脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液。

    ニューロライト注射液第一/ニューロライト第一:局所脳血流シンチグラフィ。[N,N’-エチレンジ-L-システイネート(3-)]オキソ99mTc、ジエチルエステル注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。

    カーディオライト注射液第一/カーディオライト第一:心筋血流シンチグラフィによる心臓疾患の診断、初回循環時法による心機能の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺機能亢進症における局在診断。ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル) 99mTc注射液。Lantheus Holdings社からの導入品。

    ミオMIBG-I123注射液:心シンチグラフィによる心臓疾患の診断、パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィ、腫瘍シンチグラフィによる神経芽腫、褐色細胞腫の診断。3-ヨードベンジルグアニジン123I注射液。パーキンソン病及びレビー小体型認知症の診断における心シンチグラフィについては2023年12月に適応拡大の承認取得。

    塩化タリウム-Tl201注射液:心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断、腫瘍シンチグラフィによる脳腫瘍、甲状腺腫瘍、肺腫瘍、骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍の診断、副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺疾患の診断。塩化タリウム(201Tl)注射液。

    ウルトラテクネカウ:脳腫瘍及び脳血管障害の診断、甲状腺疾患の診断、唾液腺疾患の診断、異所性胃粘膜疾患の診断、医療機器「テクネガス発生装置」との組合せ使用による局所肺換気機能の検査。過テクネチウム酸ナトリウム(99mTc)注射液ジェネレータ。

    フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」:悪性腫瘍の診断、虚血性心疾患(左室機能が低下している虚血性心疾患による心不全患者で、心筋組織のバイアビリティ診断が必要とされ、かつ、通常の心筋血流シンチグラフィで判定困難な場合)の診断、難治性部分てんかんで外科切除が必要とされる場合の脳グルコース代謝異常領域の診断、大型血管炎の診断における炎症部位の可視化。フルデオキシグルコース(18F)注射液。

    アドステロール-I131注射液:副腎シンチグラムによる副腎疾患部位の局在診断。ヨウ化メチルノルコレステノール(131I)注射液。

    イオフェタミン(123I)注射液「第一」:局所脳血流シンチグラフィ。塩酸N-イソプロピル-4-ヨードアンフェタミン(123I)注射液。

    クエン酸ガリウム-Ga67注射液:悪性腫瘍の診断、腹部腫瘍、肺炎、塵肺、サルコイドーシス、結核、骨隨炎、び漫性汎細気管支炎、肺線維症、胆嚢炎、関節炎などにおける炎症性病変の診断。クエン酸ガリウム(67Ga)注射液。

   アミヴィッド静注:アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化。フロルベタピル(18F)注射液。アルツハイマー病を疑う軽度認知障害については2023年8月に適応拡大の承認取得。Eli Lilly社からの導入品。

 

 

(A)-2 放射性医薬品(RI)領域の開発パイプライン

当社グループにおける放射性医薬品(RI)領域の開発パイプラインは以下の通りです。(2024年2月末時点)


 

    64Cu-ATSMプログラム
適応症:グリオーマおよび他の悪性脳腫瘍
モダリティ:64Cuで標識したジアセチルビスN4-メチルチオセミカルバゾン
提携先:リンクメッド株式会社(「リンクメッド」)
 開発ステータス:64Cu-ATSMは現在、国立がん研究センター(jRCT2091220362)で、すでに標準的な治療を受けている再発悪性脳腫瘍(膠芽腫・神経膠腫・PCNSL、悪性髄膜腫)の患者さんを対象に安全性を確認するための第1相臨床試験(医師主導治験)を実施中です。本試験はオープンラベルの用量漸増試験であり、主要評価項目は用量制限毒性(DLT)発現割合、副次評価項目は奏効割合、無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)、内部被ばく評価による推定実効線量、有害事象の発現割合、ステロイド非増量割合、カルノフスキーの一般全身状態スコア(KPS)非悪化割合となっており、2024年前半の試験完了を予定しています。

プログラム詳細:多くの腫瘍においては、がん細胞の急速な増殖と、新生血管からの不十分な酸素供給により腫瘍内部が酸素の乏しい低酸素状態になっていることが知られています。64Cu-ATSMは低酸素状態の組織に集積する性質を有することから、がん細胞のDNAにダメージを与え細胞死へ導く64Cuを腫瘍に送達することを可能とし、各種腫瘍への治療効果が期待されています。悪性脳腫瘍は、日本国内だけでも、毎年約4,000~5,000例が罹患すると報告されています。5年生存率は約15.5%、生存期間の中央値は約18カ月、再発率が約51%と非常に予後の悪いがんの一つとして知られています。現状、外科手術、放射線治療、化学療法等の既存の治療法で十分な効果が得られず再発した場合には、有効な治療法が確立されていません。2023年12月に発表した通り、当社グループはリンクメッドと戦略的パートナーシップに合意しました。今後の開発・商業化において必要となるコストおよび製品上市後に得られる収益を両社間で分配します。リンクメッドが主体となって64Cu-ATSMの開発を進め、PDRファーマが主体となって国内での承認申請および商業化にむけた準備を進めていきます。

 

    177Lu/68Ga-Integrin(FF58)プログラム
適応症:進行固形がん(膵管腺癌、胃食道腺癌、多形性膠芽腫)
モダリティ:インテグリンαvβ3/5を標的とし、177Lu(治療用)または68Ga(診断用)で標識した低分子化合物
提携先:Novartis社(Novartis社は海外の開発販売権を保有し、PDRファーマは日本の商業化に関する権利を保有しています。)
開発ステータス:177Lu-Integrinは、進行固形がんの患者さんを対象に安全性・忍容性・線量測定、初期的な効果の確認のための第1相臨床試験を行っています (NCT05977322)。
 プログラム詳細:第1相臨床試験の目的は、インテグリンαvβ3とインテグリンαvβ5として知られるタンパク質を発現する進行/転移がんを有する患者さんに対し、放射性リガンド療法である177Lu-Integrinの安全性・用量検討を確認するための試験です。また、イメージング剤である68Ga-Integrinのがん病巣を同定する効果や安全性について同時に確認します。本試験は用量漸増試験と拡大試験の2つのパートから成ります。両パートにおいて、患者さんに対してまず68Ga-Integrinを用いたPET/コンピュータ断層撮影(CT)またはPET/磁気共鳴画像(MRI)スキャンを行い、177Lu-Integrinによる治療の適格性を判断します。用量漸増パートでは、177Lu-Integrinの投与量を漸増させ、推奨量を決定します。拡大試験では、用量漸増試験で決定した推奨量の177Lu-Integrinを投与し、安全性と予備的有効性を検討します。拡大試験パートの患者さんの80%以上のフォローアップが完了したか何らかの理由により中断された場合、全患者さんの治療と36ヵ月の長期フォローアップ期間が終了した場合、またはその他の理由により早期に試験が中止された場合、試験は終了します。

 

    225Ac/68Ga-GPC3(RYZ-801/811)プログラム
適応症:肝細胞がん(「HCC」)
モダリティ: 225Ac (治療用)または68Ga (診断用)で標識したグリピカン-3(GPC3)を標的とする環状ペプチド
提携先:RayzeBio社(RayzeBio社は225Ac/68Ga-GPC3の全世界での開発販売権を有しており、ペプチドリームは日本の開発販売権に関するオプション権を保有しています。2024年2月にRayzeBio社はBristol-Myers Squibb社(BMS社)に買収されました。)
開発ステータス:68Ga-GPC3は現在第0相臨床試験を米国外の複数の医療機関で実施中です。(2023年9月時点で、47例以上のHCC患者さんに投与され、約90%の患者さんで腫瘍特異的に薬剤が取り込まれたこと、また特段の有害事象(SAE)が観察されていないことが報告されています)。また、225Ac/68Ga-GPC3のIND申請のための試験を並行して実施しています。2024年上半期にIND申請を予定しており、HCC患者における225Ac/68Ga-GPC3の安全性を確認する第1相臨床試験を開始する予定です。
 プログラム詳細:肝臓がんは米国におけるがんによる死因の中で6番目に多く、年間死亡者数は29,380人と推定されています。肝臓がんの患者さんにおける5年生存率は約20%であり、特に肝臓がんが進行した患者さんでは生存率が低いことが知られています。GPC3は、75%の肝細胞がんで過剰な発現が認められるがん胎児性タンパク質であり、正常組織では全くまたは僅かしか発現が見られません。225Ac-GPC3は治療薬として開発を進めており、HCCに225Acを送達するためにGPC3を標的とする、新規・独自のペプチドです。HCC異種移植腫瘍モデルの前臨床試験において、GPC3結合ペプチドは特異的な腫瘍取り込みを示し、225Acまたは177Luを送達する単回投与により、退縮を含む有意な腫瘍増殖阻害作用を示しました。68Ga-GPC3は、225Ac-GPC3と同一のペプチドで68Gaを送達するPET診断薬であり、臨床試験や治療の際に、225Ac-GPC3による治療効果が得られる可能性が高いGPC3を発現するHCCの患者さんをスクリーニングし、特定することを目的に開発されています。

 

    225Ac/64Cu-CA9(PD-32766T/PD-32766D)プログラム
適応症:淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)等のがん
モダリティ: Carbonic Anhydrase IX (「CAIX」)を標的とし、225Ac(治療用PD-32766T)または64Cu(診断用PD-32766D)で標識した環状ペプチド
提携先:ペプチドリームが全世界の商業化権を保有
開発ステータス:225Ac/64Cu-CA9は現在IND申請に向けた試験を実施中であり、2023年11月に発表された通り、国立がん研究センターと協働し、ccRCC患者を対象とした64Cu-CA9の第0相臨床試験を2024年上半期に開始することを予定しています。
 プログラム詳細:CA9は炭酸脱水酵素ファミリーの一員であり、RCC、膠芽腫、トリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、大腸がん等の様々な固形がんで発現していることが知られています。米国内のがん患者数において9番目に多いことが知られており、全世界でがんと診断されて亡くなられる患者さんの約2%を占めています。また、5年生存率は12%と、予後の悪いがんとしても知られています。2020年には全世界で431,288人の患者さんが腎臓がんと診断され、そのうち約9割が腎細胞がんと推定されています。RCCには主に ccRCC、乳頭状(pRCC-type1およびtype2)、嫌色素性(chRCC)等があり、RCC症例の約70%をccRCCが占めています。CAIXはccRCCに高発現(95%以上)する細胞表面のがん抗原で、正常細胞ではほとんど発現しないことから、ccRCCの診断・治療における重要な標的として注目されています。RCC異種移植腫瘍モデルの前臨床研究において、CA9結合ペプチドは特異的な腫瘍取り込み、および単回投与による退縮を含む有意な腫瘍増殖阻害を示しました。治療薬と同じペプチドを用いたPET診断薬は、臨床試験や治療において、225Ac-CA9治療に良好な反応を示す可能性が最も高いCA9発現がんを有する患者さんを選別、特定することを可能にすると考えています。従来のがん治療薬に対して標的型の放射性医薬品を開発する重要な利点は、治療薬と同じペプチドを用いた診断薬で対象となる患者さんのイメージングデータを早期に取得する (第0相試験)ことで、薬剤の生体内分布・薬物動態・がん組織への集積等に関する情報を得ることができ、診断薬の有用性や治療薬の有益性の可能性について初期的な知見が得られるという点です。さらに、その際に得られる情報を活用しその後の第1相臨床試験および第2相臨床試験をデザインすることで臨床開発を加速することができるという利点もあります。

 

    Novartis社プログラム1

適応症:がん
モダリティ:環状ペプチド(放射性核種・標的は非開示)
提携先:Novartis社(Novartis社は同プログラムの全世界商業化権を保有。)
開発ステータス:2023年10月よりGLP安全性試験を実施中です。

 

    225Ac-Cadherin3(PPMX-T002)プログラム
適応症:固形がん
モダリティ:カドヘリン3(P-カドヘリン/CDH3)を標的とするモノクローナル抗体。放射性治療薬として開発中であり、90Yで標識しておりましたが225Acまたは177Luに変更する計画です。
提携先:株式会社ペルセウスプロテオミクス(「PPMX」)
開発ステータス:90Y-Cadherin3は、がん患者さんを対象とした第1相臨床試験の拡大パートにおいて、がん組織への特異的な蓄積を示し、標的への送達能力が確認できたことから継続的な取り組みを進めています。
 プログラム詳細:抗CDH3抗体はPPMXによって創製され、本プログラムの開発および導出活動はPPMXが主導しています。CDH3は卵巣がん・胆道がん・頭頸部有棘細胞がん等多くのがんで過剰発現し、ほとんどの正常組織で発現が低いことが知られています。

 

    RayzeBio社プログラム2:適応症:固形がん
モダリティ: 225Ac (治療用)または68Ga(診断用)で標識した環状ペプチド(標的は非開示)
提携先:Rayzebio社(RayzeBio社は全世界の開発販売権を保持しており、ペプチドリームは日本の開発販売権に関するオプション権を保有しています。2024年2月にRayzeBio社はBristol-Myers Squibb社(BMS社)に買収されました。)
開発ステータス: 2022年12月に臨床候補化合物が同定され、両社で次の開発ステップを検討しています。
 プログラム詳細:2024年中に本プログラムに関するさらなる発表を予定しています。

 

    18F-フロルタウシピル(Tauvid)プログラム
適応症:アルツハイマー型認知症の患者さんの脳内における異常蓄積タウタンパク質による神経原線維変化(NFTs)を可視化
モダリティ:18Fで標識されたフロルタウシピル(PET診断薬)
提携先:Eli Lilly社
開発ステータス:非開示
 プログラム詳細:18F-フロルタウシピルは、脳内に蓄積したタウタンパク質のNFT沈着を可視化するPET診断薬としてFDAから承認されています。18F-フロルタウシピルは2020年に米国でアルツハイマー型認知症と診断された成人の患者さんの脳内のタウタンパク質によるNFTの密度と分布を確認するためのPETイメージング剤として承認されました。当社グループは、PDRファーマのすでに承認されているアミヴィッドと共に、18F-フロルタウシピルが承認されることにより、アルツハイマー病の診断および経過観察においてPET診断薬の使用が大きく拡大すると期待しています。

 

    18F-PD-L1(BMS-986229)プログラム:
適応症:がんのイメージング
モダリティ:18Fで標識されたPD-L1(programmed death ligand-1)を標的とする環状ペプチド(PET診断薬)
提携先:BMS社
 開発ステータス:18F-PD-L1は現在患者さんの食道癌、胃癌、胃食道接合部癌の状態を診断し病状を継続的に確認するための実用性・安全性を確認するための試験が実施されています(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04161781; 2019年11月に開始; 米Memorial Sloan Kettering Cancer Centerで実施)。18F -PD-L1は、腫瘍細胞に発現されるPD-L1を一般的にPET診断薬として用いられるフルオロデオキシグルコース(FDG)より鮮明に可視化し、医師がPD-L1阻害薬を用いた治療を選択する際に活用できます。

 

(A)-3 放射性医薬品(RI)領域の前臨床・創薬プログラム:

上記の臨床ステージプログラムに加えて、ペプチドリームは標的型ペプチド-放射性核種複合体(RI-PDC)の創薬パイプラインを広範囲に有しており、Novartis社(2019年)、BMS社(2020年)、Genentech社(2023年)と複数の標的を対象とするRI-PDCに関する創薬分野の提携を行っているほか、自社開発プログラムも拡大しています。これらの取り組みから生まれたプログラムのうち、臨床候補化合物の選定/IND申請のための試験開始等の段階まで進んだものについてパイプライン表/リストに掲載しています。また、ペプチドリームはBMS社およびGenentech社とのすべての提携プログラムについて、日本国内での商業化に関するオプション権を保有しています。

 

(A)-4 放射性医薬品(RI)領域の臨床段階の導入プログラム:

当社グループは、放射性治療薬や、国内で開発・商業化するための放射性医薬品の導入/提携の機会を積極的に検討しています。PDRファーマが当社グループに加わった2022年にはPET診断薬である18F-フロルタウシピルの日本の開発と商業化のためにEli Lilly社と共同開発契約を締結し、2023年には放射性治療薬64Cu-ATSMの日本での開発と商業化のためにリンクメッドと戦略的パートナーシップに合意しました。標的型放射性医薬品を開発する企業は世界的に急速に増加し続けており、その大半が米国市場に注力していることから、当社グループはそれらの企業が日本での製品化を望む場合の「パートナー・オブ・チョイス」となる、ユニークな立ち位置の構築を進めています。また、高付加価値プログラムの戦略的導入/提携は、当社グループの自社・共同研究による創薬活動との補完的な位置づけとして重要な戦略となっています。

 

(A)-5 放射性医薬品(RI)領域:その他

PDRファーマは日本で様々な放射性医薬品領域の付随的な製品・支援サービスを提供しています。2023年10月に、医療被ばく線量管理の完全自動化・デジタル化を可能とし、医療機関の業務効率化による医療事故リスクの低減に寄与する4つの商品(「Bridgea GATEWAY」、「Bridgea TIMER」、「onti」、「ankan」)に関連する資産を株式会社RYUKYU ISGから取得しました。PDRファーマは、これらの商品の製造・販売・保守サービス等を行っています。

 

 

(B)Non-RI領域

当社グループは、放射性医薬品事業に加え、PDPS(Peptide Discovery Platform System)を中核とし(1) ペプチド医薬品、(2) PDC、(3) MPCの創薬におけるリーディングカンパニーとして各種事業を展開しています。グローバルの大手製薬企業や戦略的提携先との提携・ライセンス契約に加え、自社プログラムも拡大しており、ペプチドを用いた次世代の革新的医薬品の創製・開発を目指しています

 

(B)-1 Non-RI領域の開発パイプライン

当社グループにおけるNon-RI領域の開発パイプラインは以下の通りです。(2024年2月末時点)


 

    GhRアンタゴニスト(AZP-3813)プログラム
適応症:先端巨大症
モダリティ:成長ホルモン受容体アンタゴニスト(GHRA)である環状ペプチド
提携先:Amolyt Pharma社 (Amolyt社)
開発ステータス:GhRアンタゴニストは、現在第1相臨床試験を実施 (2023年6月に開始)しており、健常被験者における単回および反復漸増投与後のGhRアンタゴニストの安全性・忍容性・薬物動態・薬力学を検討しています。先端巨大症の治療においてソマトスタチンアナログと併用される可能性を想定しており、第1相臨床試験の結果が2024年の第1四半期に得られることを見込んでいます。
 プログラム詳細:ペプチドリームとAmolyt社は2020年12月に戦略的共同研究開発およびライセンスオプション契約を締結し、本契約に基づいてGHRAである環状ペプチドポートフォリオの全世界の権利のライセンスを受けるオプションを2021年9月に行使しました。Amolyt社は、2023年の欧州内分泌学会(ECE)や内分泌学会大会(ENDO)で前臨床試験の結果について発表しました。

 

    PD-L1阻害薬プログラム:
適応症:がん
モダリティ: PD-L1阻害環状ペプチド
提携先:BMS社
開発ステータス: PD-L1阻害ペプチドは、現在、健常ボランティア136例を対象に安全性・忍容性・薬物動態を検討する第1相臨床試験 (ISRCTN17572332; 2022年4月開始;英国でQuotient Sciences Limitedにより実施; コードQSC203717)が実施されており、臨床試験の報告書が2024年上半期後半に予定されています。
 2023年10月に発表されたとおり、BMS社は現在健常人を対象に実施している第1相臨床試験が完了した後は、第2相試験以降の開発は自社では継続しないことを決定しました。BMS社は、今回の決定はあくまでビジネス判断によるものであり、本薬剤自体の安全性に関する懸念によるものではないと明言しています。ペプチドリームは、第1相臨床試験の結果報告書の内容をBMS社と確認した上で、将来性の高い本プログラムの別の形での開発継続の可能性について検討していきたいと考えています。

 

 

    CD38-ARM(BHV-1100)プログラム
適応症:多発性骨髄腫
モダリティ:CD38を標的とする環状ペプチドとIgGを標的とする環状ペプチドを結合させたヘテロ二量体のペプチド複合体
提携先:Biohaven, LTD. (「Biohaven社」)
開発ステータス:BHV-1100は、BHV-1100とCIML-NK細胞を投与する第1a/1b相臨床試験(オープンラベル; 単一施設(Dana-Farber Cancer Institute); ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04634435; 2021年10月より開始)を実施しています。本試験はサイトカイン誘導性メモリー細胞様(CIML)ナチュラルキラー(NK)細胞とBHV-1100および免疫グロブリン(IVIG)とのex-vivo併用製剤と低用量IL-2を初回または2回目の寛解期の微小残存病変陽性(MRD+)である多発性骨髄腫(MM)の患者さんに投与し、細胞表面にCD38を発現している骨髄腫細胞を標的とする治療において、安全性の確立と有効性の探索を主要目的としています。
 プログラム詳細:BHV-1100+自己NK細胞治療は、2020年9月8日にオーファンドラッグ指定を受けています。

 

    MSD社プログラム1
適応症:未公開
モダリティ:環状ペプチド治療薬(標的は非開示)
提携先: Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA (MSD社)
 開発ステータス:MSD社が2018年に実施したPDPS技術ライセンス契約に基づきMSD社がペプチドリームのPDPSを用いて見出した環状ペプチドは、現在第1相臨床試験を実施しています(2023年7月開始)。

 

    S2-タンパク質阻害薬(PA-001)プログラム
適応症:新型コロナウイルス感染症
モダリティ:新型コロナウイルス感染症ウイルスの表面に発現するS2タンパク質を阻害する環状ペプチド
提携先:ペプチエイド
開発ステータス:2022年8月に日本の健康成人男子ボランティア30名に対する臨床研究法に基づく特定臨床研究(「臨床研究」、dRCTs031210601)を実施し、探索的単回用量漸増試験において化合物に関連する有害事象もなく、安全で忍容性も良好であり、明確な用量依存性の薬物動態プロファイルが得られました。ペプチエイドは2024年にPA-001のIND申請を米国FDAに提出する準備を進めています。
 プログラム詳細:PA-001プログラムは2023年に日本医療研究開発機構(AMED)の研究事業に採択され、補助金の支援を受けています。

 

    マイオスタチン阻害薬プログラム
適応症:肥満、DMD(Duchene muscular dystrophy、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、SMA(Spinal muscular atrophy、脊髄性筋萎縮症)および他の筋疾患
モダリティ:マイオスタチン阻害環状ペプチド
提携先:自社品(ペプチドリームが全世界の商業化権を保有)
開発ステータス:GLP-1デュアルアゴニストとの併用で肥満治療に使用するための前臨床試験を追加で実施し、臨床候補化合物を選定中
 プログラム詳細:マイオスタチン(成長分化因子8、またはGDF8としても知られる)は、筋細胞で産生・放出されるタンパク質で、筋細胞に働きかけ筋細胞の増殖を抑制します。多くの前臨床および臨床試験により、マイオスタチン阻害薬によって筋肉量の増強、身体強度の改善、内臓脂肪量の減少、インスリンによる血糖値低下等の代謝機能障害の改善につながることが示唆されており、マイオスタチンが様々なSMA・FSHD(Facioscapulohumeral muscular dystrophy、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)・DMD等の筋ジストロフィー、他の筋肉消耗を伴う疾患、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病等の創薬ターゲットとして重要であることを示すエビデンスが蓄積されてきています。ペプチドリームは、2023年10月にWorld Muscle Society(「WMS」)2023でマイオスタチンプログラムの前臨床試験の結果を発表しました。

 

    cKIT阻害薬(MOD-B)プログラム
適応症:マスト細胞により引き起こされる免疫炎症性疾患・アレルギー疾患
モダリティ:KITを阻害する低分子化合物
提携先:アリヴェクシス株式会社(「アリヴェクシス」、旧モジュラス株式会社)
開発ステータス:2023年8月に臨床候補化合物の同定を発表しました。本開発候補化合物は、マスト細胞により引き起こされる炎症経路において重要な役割を果たすキナーゼであるKITに対して選択的阻害活性を示す新規の低分子化合物(MOD-B)であり、マスト細胞により引き起こされるアレルギー疾患を含む様々な免疫炎症性疾患などの治療への活用が期待されます。今後、アリヴェクシスが主導し本化合物の臨床入りに向けたIND申請の準備を進める予定となっています。
 プログラム詳細:アリヴェクシスはMOD-Bプログラムの提携・導出活動に積極的に取り組んでいます。

 

(B)-2 Non-RI領域の前臨床・創薬プログラム:

上記のプログラムに加えて、ペプチドリームは、(1)ペプチド医薬品、(2) PDC」および(3) MPCの3つのモダリティにわたって、提携プログラム・自社プログラムの両方で広範囲にわたる前臨床プログラムのパイプラインを有しています。これらの非常に多様なパイプラインについて臨床候補化合物の同定、臨床試験を進めていくことがペプチドリームの成長および価値創出に貢献するものと考えています。これらの取り組みから生まれたプログラムのうち、臨床候補化合物の選定/IND申請のための試験開始等の段階まで進んだものについてパイプライン表/リストに掲載しています。

 

ペプチド医薬品領域:ペプチドリームは、ペプチド創薬の分野において世界的なリーディングカンパニーの一社であり、様々な疾病領域・治療メカニズム・投与経路について、多数の提携を通じて、多くの有望なプログラムを実施しています。2023年にはペプチド医薬品の領域についても多くの進展があり、特に経口剤の領域で進展がありました。

 

PDC領域:細胞を傷害する放射性核種や抗がん剤、組織に作用する核酸医薬など、様々な治療薬ペイロードを目的の標的に送達するために環状ペプチドが理想的であるということが明らかになってきており、ペプチドリームはPDC領域を主導しています。幅広い前臨床段階のプログラムを塩野義製薬株式会社(「塩野義製薬」、2019年、組織を標的としたPDC)、武田薬品工業(2020年/2021年、ペプチドリームがJCRファーマと共同で見出したトランスフェリン受容体結合ペプチドを用いた筋組織・中枢神経を標的としたPDC)、Alnylam Pharmaceuticals, Inc.(Alnylam社、2021年、組織を標的としたPDC)、Eli Lilly社(2022年、組織を標的としたPDC)、MSD社(2022年、がんを標的としたPDC)などの提携先と進めています。

 

MPC領域:過去10年間のうちに二重特異的抗体が承認され、また最近では複数の抗原に同時に結合することのできる三重・多重特異的抗体が登場してきている中、新たな治療薬としてMPCの可能性が拡大しつつあります。環状ペプチドを複数結合させることで多重特異的抗体と同様な多機能分子を作成することができます。ペプチドリームはすでにBiohaven社や参天製薬とMPCプログラムを実施していることに加え、自社プログラムも実施しており、その数が拡大しています。ペプチドリームは、MPCが二重特異的抗体や他の多機能分子と比べ優れたモダリティであると考えています。ペプチドリームは、T細胞およびNK細胞を標的とする新規のペプチドの同定に注力しており、これらのペプチドを上述のがんを選択的に標的とするペプチドと結合させることにより、新たなクラスのT細胞・NK細胞エンゲージャー分子を創出することが可能となり、非常に有望な治療薬の領域になるものと期待しています。さらにペプチドリームは環状ペプチドの用途を拡大し、標的タンパク質分解誘導剤の領域においてアステラス製薬との提携(2023年7月)を発表しました。

 

 

(B)-3 Non-RI領域の主なトピックス(2023年12月期)

1月:参天製薬との包括的創薬共同研究開発プログラムにおいて見出された多機能ペプチド複合体(MPC)がリードクライテリアを達成

3月:小野薬品工業との新たな創薬共同研究契約締結を発表

4月:Bayer社との創薬共同研究開発においてマイルストーンを達成

6月:Amolyt社によるAZP-3813の先端巨大症を対象とした第1相臨床試験の開始

7月:MSD社によるPDPSを用いて見出したペプチド医薬品の第1相臨床試験の開始

7月:アステラス製薬との新規の標的タンパク質分解誘導剤創出に向けた共同研究およびライセンス契約締結を発表

8月:アリヴェクシスとの間で実施している戦略的提携プログラムから1つ目の開発候補化合物選定を発表

8月:ペプチエイドが開発するPA-001がAMEDの事業に採択されたことを発表

12月:Janssen社との創薬共同研究開発プログラムにおいてマイルストーンを達成

12月:ポーラ化学工業との共同研究におけるリードクライテリアを達成

 

(B)-4 PDPSの技術ライセンス

2023年12月31日現在、11社;BMS社(2013年)、Novartis社(2015年)、Eli Lilly社(2016年)、Genentech社(2016年)、塩野義製薬(2017年)、MSD社(2018年)、ミラバイオロジクス株式会社(2018年)、大鵬薬品工業株式会社(2020年)、Janssen社(2020年)、小野薬品工業株式会社(2021年)、富士レビオ株式会社(2022年)との間で非独占的技術ライセンス契約を締結しています。同事業においては、ペプチドリームは、各ライセンス先企業から技術ライセンスフィーに加えて開発プログラムの進捗に応じてマイルストーンフィー、および上市後の売上高に応じた売上ロイヤルティーを受領する権利を有します。なお、マイルストーンを達成するまでの間は、ライセンス先企業での研究内容や進捗についてペプチドリームに知らされることはありません。また、ペプチドリームはPDPSの技術ライセンス契約に関心をもつ複数の企業との交渉を継続的に進めています。

 

(C)  当社グループの戦略的投資先・関連会社

当社グループの戦略的投資先・関連会社は以下の通りです(2023年12月末時点)。

 

ペプチグロース株式会社(「ぺプチグロース」):ペプチドリームの出資比率は39.5%

ペプチグロース(本社:東京都)は、ペプチドリーム三菱商事との間で細胞治療・再生医療等製品や成長市場である培養肉等の製造等に使用される、細胞培養向け培地の重要成分である、成長因子を代替するペプチド(「代替ペプチド」)の開発・製造・販売を行う合弁会社として2020年に設立しました。成長因子は、ヒトを含む動物の体内に広く存在し、細胞の成長・増殖や、またiPS細胞・ES細胞等の幹細胞を神経細胞や血液細胞等へと分化誘導させる際に重要な役割を担うタンパク質です。現在は、動物血清からの抽出物、あるいは組み換え技術によって製造されたものが主に使用されていますが、不純物混入による安全性上のリスク、製造ロット間の品質のばらつき、高額な製造コスト等が、医薬品産業が直面する課題となっています。ペプチドリームがPDPSを用いて、成長因子と同等の機能を有する代替ペプチドを同定し、動物血清や組換え技術を用いず化学合成による新規製造手法を開発します。ペプチグロースが商業ベースでの製造工程・体制を確立することで、品質面においては高純度で製造ロット間のバラつきも無くし、またコスト面の合理化も実現していきます。また、三菱商事が代替ペプチドの販売及び市場拡大を積極的に図っていきます。ペプチグロースは現在、9つの製品を販売しています。2021年に、HGF代替ペプチド(PG-001)とTGFβ1阻害ペプチド(PG-002)の販売を、2022年にBDNF代替ペプチド(PG-003)、BMP4,7阻害ペプチド(PG-004)、BMP7選択的阻害ペプチド(PG-005)、BMP4選択的阻害ペプチド(PG-006)の販売を、2023年にVEGF代替ペプチド(PG-007)、Wnt3a代替ペプチド(PG-008)、合成EGF(PG-009)の販売を開始しました。今後も順次新たな製品の開発・上市を計画しています。

 

ペプチエイド:ペプチドリームの出資比率は約39.4%

ペプチエイド(本社:神奈川県)は、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を目的として、2020年にペプチドリーム富士通株式会社(「富士通」)、株式会社みずほフィナンシャルグループの連結子会社であるみずほキャピタル株式会社(「みずほキャピタル」)、株式会社竹中工務店(「竹中工務店」)、及びキシダ化学株式会社(「キシダ化学」)との間で設立した合弁会社です。ペプチドリームは、PDPSを用いて、コロナウイルスがヒト細胞に侵入する際に必須となるスパイクタンパク質を創薬ターゲットとした、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発候補化合物の同定を実施し、PA-001を見出しました。ペプチエイドは、2021年3月23日に、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発候補化合物の特定を完了し、開発候補品PA-001の非臨床試験を開始したことを発表しました。国立感染症研究所等と共同で化合物の評価を進めてきましたが、PA-001は従来型のSARS-CoV-2だけでなく現在同定されているすべての変異株(アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株)に対しても同様に高い抗ウイルス活性を有することを確認しています。また、現在緊急使用許可承認を得ている新型コロナウイルス感染症治療薬との併用において、in vitro試験での高い相加効果を確認しています。各種一般毒性、安全性薬理、遺伝毒性試験等から構成されるPA-001の非臨床試験が予定通りのスケジュールで完了し、PA-001の高い安全性が確認されました。2022年2月より臨床研究を実施しました。臨床研究では、健常人に対するPA-001の用量漸増単回投与を静脈内注射により実施し、有害事象の有無・注射部位反応・バイタルサイン等の評価を行いました。2022年8月10日に公表した通り、PA-001の投与による有害事象等は確認されず、良好な安全性プロファイルが確認されました。また、PA-001の用量依存的な血中濃度プロファイルの相関を確認する結果が得られました。2023年5月15日、PA-001の開発はAMEDの事業に採択され、ペプチエイドは第1相試験等の実施に向けた補助金を受領することが決定しました。現在PA-001について、米国FDA(食品医薬品局)へのIND(新薬臨床試験開始届)申請の準備を進めており、2024年にはPA-001の第1相臨床試験開始を予定しています。

 

ペプチスター株式会社(以下 ぺプチスター):ペプチドリームの出資比率は15%未満

ペプチスター(本社:大阪府)は、ペプチドリーム塩野義製薬積水化学工業株式会社と合弁でペプチド原薬の製造プロセスに関する研究開発、製造及び販売を行うCDMO(Contract Development and Manufacturing Organization:医薬品開発製造受託機関)であるペプチスター株式会社(「ペプチスター」)を2017年9月に設立しました。ペプチスターは国内の様々な会社が有する技術を融合し、高品質、高純度でしかも製造コストを大幅に低減する最先端技術を開発、提供することを目指しています。同社の製造工場は、大阪府摂津市に設立されています。

 

リンクメッド:ペプチドリームの出資比率は15%未満

リンクメッド(本社:千葉県)は、『革新的な「見える」がん治療』をいち早く社会にお届けすることを目指し、量子科学技術研究開発機構(QST)の研究をもとに2022年に設立された放射性医薬品の開発を行っている研究開発型企業です。ペプチドリームは2023年12月に、リンクメッドによるシリーズA関連資金調達の実施に参画したことを発表しました。

 

アリヴェクシス(旧モジュラス):ペプチドリームの出資比率は5%未満

アリヴェクシス(本社:東京都、ボストン)は、2016年に設立された最先端の計算科学を駆使した高速かつ効率的な低分子医薬品候補化合物のデザインに関する技術を有する創薬企業です。

 

以上の結果、当連結会計年度における創薬開発事業の経営成績については、売上収益12,702,965千円(前年同期比2,703,143千円減少)、セグメント利益6,387,902千円(前年同期比2,792,008千円減少)、放射性医薬品事業の経営成績については、売上収益16,009,228千円(前年同四半期比4,562,906千円増加)、セグメント利益475,145千円(前年同四半期比239,237千円増加)となり、当社グループ全体としては売上収益は28,712,194千円(前年同期比1,859,763千円増加)、Core営業利益7,165,554千円(前年同期比2,471,879千円減少)、営業利益6,773,047千円(前年同期比2,207,148千円減少)、税引前利益4,353,469千円(前年同期比2,299,855千円減少)、親会社の所有者に帰属する当期利益3,035,832千円(前年同期比4,518,525千円減少)となりました。

当社グループは、IFRS業績に加えて、会社の経常的な収益性を示す指標として非経常的な項目をNon-Core調整として除外したCoreベースの業績を開示しています。当該Coreベースの業績は、IFRS業績から当社グループが定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。

Core営業利益は営業利益から企業買収に係る会計処理の影響及び買収関連費用、有形固定資産、無形資産及びのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益、非経常的かつ多額の損益、個別製品又は開発品導入による無形資産の償却費を控除して算出しております。

 

なお、Core営業利益から営業利益への調整は以下のとおりです。

(単位:千円)

 

2022年12月期

2023年12月期

前年同期比

Core営業利益

9,637,433

7,165,554

△2,471,879

△25.6

企業買収に係る会計処理の影響

及び買収関連費用

622,643

346,381

△276,261

△44.4

有形固定資産、無形資産及び

のれんに係る減損損失

損害賠償や和解等に伴う損益

非経常的かつ多額の損益

個別製品又は開発品導入による

無形資産の償却費

34,593

46,125

11,531

33.3

営業利益

8,980,196

6,773,047

△2,207,148

△24.6

 

 

当社グループは当第3四半期連結累計期間において2,021,149千円の条件付対価に係る金融費用を計上いたしました。当該金融費用の計上は、2022年3月に実施したPDRファーマ株式会社の株式取得に際し、2024年4月30日までに脳内アミロイドβプラーク可視化を行うPET診断薬であるアミヴィッド静注の軽度認知障害への適用拡大が日本国内で承認された場合、4,000,000千円の追加支払いが発生する旨の条件付対価が設定されておりましたが、2023年8月31日に一部変更承認を取得し、「アルツハイマー病による軽度認知障害又は認知症が疑われる患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化」が新たな効能又は効果として追加されたことに伴い、富士フイルム株式会社に対する4,000,000千円の条件付対価の支払いが確定したことによるものです。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度の生産実績は以下のとおりです。

報告セグメント

金額(千円)

前連結会計年度比(%)

創薬開発事業

153,634

147.0

放射性医薬品事業

13,741,635

134.1

 

(注)金額は販売価格によっております。

② 受注実績

当社グループの創薬開発事業及び放射性医薬品事業は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

創薬開発事業

12,702,965

82.5

放射性医薬品事業

16,009,228

139.9

合計

28,712,194

106.9

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

 

相手先

前連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

販売高

(千円)

割合

(%)

公益社団法人
日本アイソトープ協会

8,428,641

31.4

甲社(注)

7,757,559

28.9

乙社(注)

4,138,511

15.4

 

(注)顧客との共同研究開発契約においては秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。

 

相手先

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

販売高

(千円)

割合

(%)

公益社団法人
日本アイソトープ協会

11,158,137

38.9

Genentech, Inc.

5,809,200

20.2

アステラス製薬株式会社

2,949,999

10.3

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度の総資産は69,464,013千円となり、前連結会計年度末と比べて5,598,812千円増加しました。その主な要因は、営業債権及びその他の債権が11,618,285千円減少したものの、現金及び現金同等物が14,260,196千円増加、その他の金融資産が5,678,991千円増加したこと等によるものです。

負債は29,114,303千円となり、前連結会計年度末と比べて2,709,431千円減少しました。その主な要因は、借入金が1,172,255千円増加したものの、未払法人所得税等が1,321,177千円減少、その他の金融負債が2,092,816千円減少したこと等によるものです。

資本は40,349,709千円となり、前連結会計年度末と比べて8,308,243千円増加しました。その主な要因は、当期利益により利益剰余金が3,956,351千円増加、投資有価証券の評価替えによりその他の資本の構成要素が4,804,168千円増加したこと等によるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ14,260,196千円増加し、19,507,861千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払による支出3,667,008千円等があったものの、営業債権及びその他の債権の増減額11,618,285千円等により、12,420,969千円の収入(前年同期は82,929千円の支出)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出1,212,857千円等があったものの、投資有価証券の売却による2,864,600千円収入等により、1,302,539千円の収入(前年同期は27,377,217千円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出2,340,000千円等があったものの、長期借入れによる収入4,000,000千円等により、264,191千円の収入(前年同期比20,525,259千円の収入減少)となりました。

 

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金は、手許資金を中心としながら必要に応じて借入による資金調達を行っております。

主な資金需要につきましては、運転資金として製造原価、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金として、研究開発のための設備投資等があります。

有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。

 

(5) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 、 3 重要な会計方針 及び 4 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

(6) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおりであります。

当連結会計年度においては、売上収益30,000,000千円、Core営業利益6,700,000千円、売上収益Core営業利益率22.3%を目標としておりましたが、売上収益は28,712,194千円Core営業利益7,165,554千円、売上収益Core営業利益率25.0%となり、Core営業利益及び売上収益Core営業利益率は目標を上回る結果となったものの、売上収益は目標を下回る結果となりました。引き続きこれらの指標について、向上できるよう努めてまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1)  基盤技術に関する独占ライセンス契約

相手先の名称

ニューヨーク州立大学

国立大学法人東京大学

契約名称

Patent License Agreement(独占ライセンス契約)(注)2

独占ライセンス契約

主な契約内容

①許諾内容

第三者に対する再実施権を含めた独占実施・許諾権

②対象となる特許・発明

下表参照

③契約期間

下表参照

①許諾内容

第三者に対する再実施権を含めた独占実施・許諾権

②対象となる特許・発明

下表参照

③契約期間

下表参照

 

 

 

対象発明の名称

出願者

出願日

登録日

登録/公開番号

契約期間

Ribozymes with Broad tRNA Aminoacylation Activity(注)2

ニューヨーク州立大学

2003年2月18日
2002年2月15日
2003年2月18日

2003年2月18日

2010年2月26日

2009年11月24日

2009年7月29日

2012年4月17日

特許第4464684号

US 7,622,248 B2

EP 1483282 B1

CA 2476425

2007年3月21日

から特許権の存続期間終了の日まで

多目的アシル化触媒とその用途

国立大学法人東京大学

2005年12月6日
2006年12月5日
2006年12月5日

2012年11月2日
2012年5月29日
2012年8月1日

特許第5119444号
US 8,188,260 B2
EP 1964916 B1

2006年12月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

N末端に非天然骨格をもつポリペプチドの翻訳合成とその応用

国立大学法人東京大学

2006年11月17日
2007年11月13日
2007年11月13日

2013年2月22日

2013年10月15日

2013年8月21日

特許第5200241号
US 8,557,542 B2

EP 2088202 B1

2006年12月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

環状ペプチド化合物の合成方法

国立大学法人東京大学

2007年3月26日
2008年3月26日2008年3月26日

2014年10月15日

2015年7月28日

2016年7月27日

2017年5月3日

2017年6月28日

特許第5605602号

US 9,090,668 B2

EP 2141175 B1

EP 2990411 B1

EP 3012265 B1

2008年2月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

新規人工翻訳合成系

国立大学法人東京大学

2010年8月27日
2011年8月26日
2011年8月26日
2011年8月26日

2015年5月27日
2017年7月11日


2015年9月8日

特許第5725467号
US 9,701,993 B2
EP 2610348 A4
CN 103189522 B

2011年3月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

N-メチルアミノ酸及びその他の特殊アミノ酸を含む特殊ペプチド化合物ライブラリーの翻訳構築と活性種探索法

国立大学法人東京大学

2010年9月9日
2011年9月8日
2011年9月8日

2015年11月18日
2016年8月9日
2017年11月1日

特許第5818237号
US 9,410,148 B2
EP 2615455 B1

2011年3月10日

から特許権の存続期間終了の日まで

安定化された二次構造を有するペプチド、及びペプチドライブラリー、それらの製造方法

国立大学法人東京大学

2010年12月3日
2011年12月5日
2011年12月5日
2015年9月8日

2016年10月5日
2017年5月23日
2019年10月8日
2019年2月27日

2015年11月25日

特許第6004399号
US 9,657,289 B2

US 10,435,439 B2
EP 2647721 B1
CN 103328648 B

2011年3月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

ペプチドライブラリーの製造方法、ペプチドライブラリー、及びスクリーニング方法

国立大学法人東京大学

2010年3月12日
2011年12月5日
2011年12月5日

2017年10月4日
2019年2月5日

2019年6月19日

特許第6206943号
US 10,195,578 B2
EP 2647720 B1

2011年3月10日

から特許権の存続期間終了の日まで

アゾリン化合物及びアゾール化合物のライブラリー、並びにその製造方法

国立大学法人東京大学

2012年3月9日
2012年3月9日
2012年3月9日

2018年5月11日

2019年4月26日

2019年2月5日

2018年12月5日

特許第6332965号

特許第6516382号

US 10,197,567 B2
EP 2684952 B1

2011年3月10日

から特許権の存続期間終了の日まで

pH依存的に標的分子に結合するペプチドのスクリーニング方法

国立大学法人東京大学

2012年6月6日
2013年6月6日
2013年6月6日

2022年3月30日
2017年2月21日
2018年10月24日

特許第7049569号

US 9,574,190 B2
EP 2868744 B1

2012年8月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

 

 

対象発明の名称

出願者

出願日

登録日

登録/公開番号

契約期間

MATE活性阻害ペプチド

国立大学法人東京大学

2012年7月31日

2017年11月15日

特許第6229966号

2013年3月8日

から特許権の存続期間終了の日まで

ヘテロ環を含む化合物の製造方法

国立大学法人東京大学

2014年3月7日
2014年3月7日
2014年3月7日

2017年12月15日
2019年6月25日

2018年2月21日

特許第6257054号

US 10,329,558 B2
EP 2966174 B1

2013年3月8日

から特許権の存続期間終了の日まで

大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法

国立大学法人東京大学

2013年8月26日
2014年8月26日
2014年8月26日

2020年8月27日

2019年3月19日

2023年12月13日

特許第6754997号

US 10,234,460 B2
EP 3040417 B1

2013年8月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

c-Metタンパク質アゴニスト

国立大学法人東京大学

2014年10月15日
2014年10月15日
2014年10月15日

2018年11月2日

2018年6月12日
2020年8月26日

特許第6426103号

US 9,994,616 B2
EP 3059244 B1

2014年3月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

アゾール誘導体骨格を有するペプチドの製造方法

国立大学法人東京大学

2015年2月3日
2015年2月3日
2015年2月3日

2020年1月9日

2017年10月10日

特許第6643763号

US 9,783,800 B2
EP 3103881 A4

2014年3月1日

から特許権の存続期間終了の日まで

D-アミノ酸及びβ-アミノ酸の取り込みを増強するtRNAのD及びTアームの改変

国立大学法人東京大学

2018年8月28日

2022年5月24日

特許第7079018号

US 2020308572 A1

EP 3699276 A1

SG 10202203885P

2018年3月1日から特許権の存続期間終了の日まで

N-メチルアミノ酸の取り込みを増強するtRNAのTステムの改変

国立大学法人東京大学

2019年11月19日

特開2021-78428

US 17/777770

EP 4063377 A1

SG 11202205202R

2021年5月26日から特許権の存続期間終了の日まで

ライブラリーの製造方法、環状ペプチド、FXIIa結合剤、及びIFNGR1結合剤

国立大学法人東京大学

2020年8月6日

2020年12月25日

2020年12月25日

特開2021-106565

US 2023117920 A1

EP 4101929 A1

2023年4月27日から特許権の存続期間満了の日まで

 

(注)1.上記契約の対価として一定料率のロイヤルティーを支払っております。

2.提出日現在において、契約期間が満了しております。

 

(2)合弁契約

相手先の名称

合弁会社名

事業内容

設立年月日

塩野義製薬株式会社

積水化学工業株式会社

ペプチスター株式会社

特殊ペプチド原薬の研究開発、製造及び販売

2017年9月1日

三菱商事株式会社

ペプチグロース株式会社

細胞培養向け成長因子代替ペプチドの開発、製造及び販売

2020年4月1日

富士通株式会社

みずほキャピタル株式会社

株式会社竹中工務店

キシダ化学株式会社

ペプチエイド株式会社

医薬品の研究、開発、製造、販売及び輸出入

2020年10月14日

 

 

(3)子会社における経営上の重要な契約

会社名

相手先の名称

契約名称

契約締結日

主な契約内容

PDRファーマ
株式会社

公益社団法人日本

アイソトープ協会

製品供給基本契約書

2014年2月18日

放射性医薬品の売買に

関する基本事項

PDRファーマ
株式会社

Lantheus Medical Imaging, Inc.

LICENSE AND DISTRIBUTION AGREEMENT

2013年1月1日

Cardiolite及びNeuroliteに関する

ライセンス契約

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、放射性医薬品(RI)領域においてはPDPSを活用することによる自社プログラムまたは提携プログラムとして革新的な放射性治療薬・診断薬の創製・開発を実施しています。また、ペプチドリームの100%子会社であるPDRファーマを通じてこれらのプログラムや海外製品の導入により、国内における放射性医薬品の臨床開発を実施しています。Non-RI領域については、PDPSを活用することによる自社創薬及び世界中の特別な技術を有する創薬企業、バイオベンチャー企業、アカデミア等と戦略的な提携を組むことで、ペプチド医薬品、PDC、MPC等に関する創薬研究開発を実施し、パイプライン拡充を図っています。

 

自社/戦略的提携プログラムについての主な進捗は下表のとおりです。

 

(A)放射性医薬品(RI)領域

治療薬・セラノスティクス

ターゲット/作用機序

適応症

モダリティ

主な進捗

64Cu-ATSM

グリオーマ及び他の悪性脳腫瘍

RI-低分子

・2023年12月にリンクメッドと戦略的パートナーシップに合意、PDRファーマが国内の承認申請及び商業化を実施する予定

225Ac/68Ga-GPC3

肝細胞がん

RI-PDC

・RayzeBio社との戦略的提携プログラム

・当社創製ペプチドを用いたRI-PDC

・2023年3月に開発候補化合物を選定

225Ac/ 64Cu-CA9

腎細胞がん

RI-PDC

・当社創製ペプチドを用いたRI-PDC、2023年11月に開発候補化合物を選定

・2023年11月より国立がん研究センターと早期実用化に向けた臨床研究等の取り組みを開始

非開示

がん

RI-PDC

・RayzeBio社との戦略的提携プログラム

・当社創製ペプチドを用いたRI-PDC、2022年12月に臨床候補化合物を選定

・GLP安全性試験-INDステージ

 

診断薬

ターゲット/作用機序

適応症

モダリティ

主な進捗

18F-flortaucipir

アルツハイマー

RI-低分子

・2022年11月よりEli Lilly社と日本における共同開発を開始

 

 

(B)Non-RI領域

ターゲット/作用機序

適応症

モダリティ

主な進捗

S2-protein阻害薬

新型コロナウイルス
感染症

Peptide

・2024年に米国FDAにIND申請を提出する準備を実施中

Myostatin antagonist

肥満/SMA/DMD/筋疾患

Peptide

・GLP-1デュアルアゴニストとの併用で肥満治療に使用するための前臨床試験を追加で実施し、臨床候補化合物を選定中

Glypican-3

肝臓がん

RI-PDC

・RayzeBio社との戦略的提携プログラム

・臨床候補化合物の選定完了(2023年3月)

・GLP安全性試験-INDステージ

c-Kit antagonist

アレルギー性疾患

低分子

・アリヴェクシスとの戦略的提携プログラム

・キナーゼに対する選択的低分子阻害剤を当社のPDPS技術で得られたヒットペプチドの活用により開発

・パートナリング協議中

 

 

こうした活動の結果、当連結会計年度における研究開発費は3,155,366千円、売上高研究開発費比率は11.0%となりました。